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Interview Special UFC カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:10月─その弐─ヌルマゴメドフ×ゲイジー「引退は信じちゃダメ」

【写真】スクランブル全盛時代、スクランブルにならない強さを持つヌルマゴメドフだった (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年10月の一番、第2 弾は24日に開催されたUFC254からガビブ・ヌルマゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジーの一戦を語らおう。


──10 月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「ヌルマゴメドフとゲイジーですね。この試合で面白いと思ったのは、やっぱり総合格闘技だということ。ヌルマゴメドフって打撃が粗いと思うんです。でも、だからって打撃が上手じゃないってことではなくて、組みありきだから。それであれだけプレッシャーを与えることができる。あの個体の強さがあって、組むまでにあの打撃があれば無敵だと思いました。

あれだとゲイジーは前に出られない。出ると殴られるし、倒される。それでヌルマゴメドフが押し切っちゃいました」

──あのジャスティン・ゲイジーを相手に……。

「ハイ。ゲイジーが疲れるって、凄いモノを見ましたね」

──テイクダウンも強いですが、テイクダウンをしてからも強かったです。

「ヌルマゴメドフの一番の強味は寝かせる技術です。今回の試合はあまりなかったですけど、倒してから寝かせることができる。だから殴って、極めもある。でも、今回はゲイジーが殴る前から消耗していて。

フォークスタイルはスクランブルがあるといっても、あれだけ力の差があるとゲイジーは無理でしたね。ただヌルマゴメドフも正直、初回は効いていたと思うんです。それでも前に出続けることができる強さ……新しいスタイルじゃないんですけどね」

──新しいスタイルではないというのは?

「凄くテクニカルにMMAを戦うわけじゃないです。GSPよりの前の世代というか。スタイルとして前の世代で、アレは新しいとか最先端ではない」

──打撃からテイクダウンで倒されない。倒されても直ぐ立つ。だから今のスクランブルMMAの時代になったのですが、ヌルマゴメドフは倒して抑えることができてしまう。

「ハイ。GSPはもっとテクニカルで、ジャブも綺麗でレベルチェンジも素晴らしい。そしてレスリングもテクニカルでした。だから参考にしたくなりますけど、ヌルマゴメドフを参考にしようとは思わないですよね」

──確かに、その通りですね。

「結論として、ヌルマゴメドフが強いからってことで他の選手がやってもああはならない。ヒョードルっぽいですよね。マネできるものじゃない」

──そのヌルマゴメドフが無敗のまま引退を決めました。

「あぁ、なんでしょうね……UFCのシステムだと次のスターが生まれるから、また次の戦いが見られる。ヌルマゴメドフがいなくなったからって、UFCがつまらなくなると思わないです。どんどん、出てくるでしょう。マイケル・チャンドラーもいるし、階級を上げたり、落としたりっていう選手もでてくるだろうから。

ゲイジーもまだやるだろうし、ファーガソンもいる。他のロシア人や中央アジア人も出てくるでしょう」

──ただしUFCとしては痛くないでしょうか。

「えっ、なぜでですか」

──ヌルマゴメドフがここまでの存在になったのは、コナー・マクレガーがいたから。ヌルマゴメドフはその彼に勝った。いわばレガシーを継いだ。青木選手やコアファンは、強いファイターが出てくると楽しめる。ただし、UFCに必要な一般層は、そういうレガシーを継ぐ選手なのではないかと。

「あぁ、でもヌルマゴメドフは勝ったままいなくなるってことですね。引継ぎができなかった。そうですね、マクレガーが今、試合をしてもタイトル戦の軸にいないし。そこが継げる選手は出てこないわけだ」

──BMF路線は名実ともにトップにはなれないです。人気は抜群であったとしても。

「そうですね。そもそも僕にとってマクレガーはチャド・メンデス、ジョゼ・アルドまでで。ネイト・ディアスとの時はいわばBMF路線でしたよ。でも、一般の人はそこが必要なんですよね、UFCといえども。タイトル戦の抱き合わせっていうPPVじゃない王者がいなくなるわけだ。

でも、ヌルマゴメドフもまた出てきますよ」

──引退撤回しますか。

「マクレガーにしても一生食えるのに出てくるって……明確にファイトジャンキーですよ。覚せい剤と同じなんでしょうね、やったことないから分からないけど(笑)」

──アハハハハ。例え話でないと、人生破滅です。

「要は快楽ですよ。快楽が欲しくなればヌルマゴメドフも戻ってきます。格闘家とミュージシャンの引退は信じちゃダメです(笑)」

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Interview Special アレックス・オリヴェイラ シャクハト・ラクモノフ ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:10月─その壱─ラクモノフ×オリヴェイラ「多様化はすさまじい」

【写真】 無敗のM-1王者とはいえ、UFCデビュー戦でオリヴェイラに一本勝ちというのは……予想外だ(C) Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年10月の一番、第一弾は24日に行われたUFC254からシャクハト・ラクモノフ✖アレックス・オリヴェイラ戦について語らおう。


──10月の青木真也が選ぶ、この一番。まず第1試合目は?

「ラクモノフ✖オリヴェイラですね。正直、ラクモノフはノーマークでした。しかもオリヴェイラが3ポンドの体重オーバーで。ラクモノフってM-1からなんですね。M-1のウェルター級チャンピオンで。この試合を見ると、M-1も普段からフォローしないといけないなって思ってしまいますよね」

──どこかACA、Fight Nightに続くロシアのプロモーションというイメージに落ち着いてしまっていましたが。

「そうなんですよ。ACAはもうUFCのチャンピオンですし、でもM-1も全然違うんだなって。だってアレックス・オリヴェイラってUFCで18試合もして、トップ中のトップじゃないけどウィル・ブルックスとかカーロス・コンディットに勝っている選手ですよ。今も連勝中で──代役とはいえ、ラクモノフが勝つなんてまるで思っていなかったです。

この選手はロシア系でなくモンゴロイド、アジア系の顔で親近感がわくなぁって。でも体力のある感じで。カザフスタンって余り勉強できていないんですけど、柔道も強いですしね」

──カザフは資源が豊富で中央アジアでは断トツでGNPの高い国だという記憶があります。そして中央アジアの国においてはイスラム教徒とロシア正教の人口比が近いという。

「国土もデカくて。でもロシアと中国に挟まれて、ちょっと危ういですよね。中国が100年計画で進行しようとするルートにありますよね」

──と同時にロシアも北部をウクライナ化しようとしたり。

「危ういけど、そりゃ強いですよ。中国のMMAってもともとウィグル人、モンゴル人が多くて漢人はさほど多くなかったじゃないですか」

──ウィグル人だとジュマビエク・トルスン、リー・ジンリャンを代表する内モンゴルの人はいくらでもいる印象です。

「顔が上海の人たちと違いますもんね。僕たちが思う中国と、本当の中国は違うってことなんですよね。圧倒的に漢人が強い、民族の集合体で。裏を返すと、ソ連と同じで……、これって怖いですね。ゾッとしますね。なら中国もやっぱり出てくるのかって。

ただし中国って、スポーツは国威発揚のためじゃないですか」

──ハイ。その通りですね。だから五輪スポーツのトップが流れてくることってないと思います。

「でも中央アジアはMMAとしてはロシアの文脈で。それに旧ソ連の国ってレスターとかお金のある国に買われて、国籍を移してスイス代表とかカナダ代表とか、国籍が変わることもあります。でも、MMAは国威発揚に関係ないし」

──ハイ。選手も自由に米国、北欧、東南アジアを行き来して練習もできるから国籍を移す必要もない。

「そうなんです。つまりは金になるから、国内に留まったトップ・アスリートがMMAに回ってくる。コンバットサンボという前段階もロシア繋がりでありますし。それを考えると怖いですよ、本当に。

2、3年前にロシアは掘っちゃダメだっていっていたのが、もう普通に世界中にロシア人選手が見られるようになった。なら、ここからは中央アジア選手が普通に拡散していくのでしょうね」

──UFCのヴァレンチーナ・シェフチェンコ、ラファエル・フィジエフと同様にONEにもキルギス国籍のウェルター級王者キャムラン・アバソフがいて、カザフスタンでは元フライ級王者のカイラット・アクメトフがいます。

「そうなんですよ。今、やたらとインドって聞きますけど、それは市場であって競技レベルの話じゃないじゃないですか」

──ほぼほぼ他の格闘技で国際的な活躍が聞かれないですしね。男女レスリングに少しはあっても。

「インドと中央アジアとは違いますよね。ただし、中央アジアも市場がないと、いくら強くても人数制限が掛かってくる。そこにムスリムという文脈を切り取るとどうなるのか(笑)。この辺りの多様化はすさまじいものがありますね、コロナで。機会を得るだけでなく、こうやって勝ってしまうんですから。ちょっと……ラクモノフを見ていても、ゾッとします」

──青木選手はMMAに歴史を重ねて見るのが好きなようですね(笑)。

「僕は歴史、そして物語が好きで。ただ試合をして勝ち負けを見るより、その選手の名前から人種や民族を考えてしまうタイプです(笑)」

──ラクモノフは試合から見て、どこに強さが感じましたか。

「第一に体が強い。突出した部分があるわけではないですが、しっかりとテイクダウンが切れていますし。打撃も下手で威力がある。誰がきても平気という雰囲気で戦っていますよ。佐藤天と戦うとどうなるのか。どっちがアジア一番かって……でも今やオリヴェイラに勝ったからラクモノフの格上になってしまいます」

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Interview ONE ONE Inside the Matrix ONE113 タン・リー ブログ マーチン・ウェン 青木真也

【ONE113】いきなり青木真也が予想したONE世界フェザー級選手権試合──勝者:タン・リー「UFCの……」

【写真】フェザー級世界戦について、意気揚々と青木は話し始めた (C)ONE & MMAPLANET

いよいよ本日、 30日(金・現地時間)にイベント開催となるONE113「Inside the Matrix」。

4大タイトルが組まれた今大会、同階級で戦う選手に世界戦を予想してもらう──ということで、ONE世界ライト級選手権試合の行方を占ってもらった青木真也が「でも……僕はこの試合より面白いなぁって思っている試合があるんです」と発言。青木が気になる試合はONE世界フェザー級選手権試合、その気になり方もまた青木らしかった。

<青木真也のONE世界ライト級選手権試合の予想はコチラから>


青木真也の予想
勝者:タン・リー
理由
「僕、ライト級よりもフェザー級のタイトル戦の方が興味深いんです。タン・リーはLFAで暫定チャンピオンだった。彼に勝った選手も負けた選手もUFCで戦っています。彼に勝ったケヴィン・アギラーはUFCでは2勝3敗で。だからタン・リーってUFCのプレリミの選手だと思うんです。

その選手がONEの世界チャンピオンとやるっていうのは興味深いですね。結構、もつれるんじゃないかと思っています。サイズ的にタン・リーは少し大きいし。僕的にはウェン有利とは思えないです。逆にコンディション云々はあるんですけど、タン・リーじゃないでしょうか。

それに2人ともベトナムって言っているけど、ベトナムを離れた人ですよね。あの黄色に赤線3本の旗の方が大切な。そういうことか見ていると、このカードが4つの世界戦のなかで一番興味深いですね」

■ONE 113 Inside the Matrix対戦カード

ONE世界ミドル級(※93.0キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]オンラ・ンサン(米国)
[挑戦者]ライニア・デリダー(オランダ)

<ONE世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]クリスチャン・リー(米国)
[挑戦者]ユーリ・ラピクス(モルドバ)

<ONE世界フェザー級(※70.3キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]マーチン・ウェン(豪州)
[挑戦者]タン・リー(米国)

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者]ティファニー・テオ(シンガポール)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
アントニオ・カルーゾ(豪州)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
リトゥ・フォーガット(インド)
ノウ・スレイ・ポブ(カンボジア)

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Interview ONE ONE Inside the Matrix ONE113 クリスチャン・リー ブログ ユーリ・ラピクス 青木真也

【ONE113】青木真也が予想するONE世界ライト級選手権試合──勝者:クリスチャン・リー「ワンサイド」

【写真】ハッキリとユーリ・ラピクスは強くないと断言した青木 (C)ONE & MMAPLANET

いよいよ本日、 30日(金・現地時間)にイベント開催となるONE113「Inside the Matrix」。

4大タイトルが組まれた今大会、同階級で戦う選手に世界戦を予想してもらう──シリーズ第7回目は、青木真也がONE世界ライト級選手権試合、王者クリスチャン・リー✖挑戦者ユーリ・ラピクスの勝利者予想とその理由を語った。

青木真也の予想
勝者:クリスチャン・リー
理由
「クリスチャンのワンサイドだと思います。ラピクスはあんまり強いと思っていないです。だってシャノン・ウィラチャイと3R戦っているんですよ。本当に強ければ、ウィラチャイは試合になっていないはずです。

それがズバリなところで。無敗とかっていう勢いを望むONEらしいタイトル戦ですよね。だいたい次の挑戦者は下石(康太)選手とフォラヤンに勝ったピーター・バウシュトだと思っていましたからね。ラピクスが来るとはホントに思っていなかったです。ONEの悪いところであり、良いところでもありますよね──こういうタイトルマッチは。

クリスチャンは僕、そしてダギ(ザイード・フセイン・アサラナリエフ)を越えています。僕以上にダギだと思うんです。でも、結果的にクリスチャンを一番追い詰めたのは俺になるなって思っていて……。クリスチャンとラピクスはMMAとして違いがあります。体格差もラピクスが思っているほどないだろうし。クリスチャンが圧倒して途中で仕留めるかなって。

でも……僕はこの試合より面白いなぁって思っている試合があるんです」

<この項、続く>

■ONE 113 Inside the Matrix対戦カード

ONE世界ミドル級(※93.0キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]オンラ・ンサン(米国)
[挑戦者]ライニア・デリダー(オランダ)

<ONE世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]クリスチャン・リー(米国)
[挑戦者]ユーリ・ラピクス(モルドバ)

<ONE世界フェザー級(※70.3キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]マーチン・ウェン(豪州)
[挑戦者]タン・リー(米国)

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者]ティファニー・テオ(シンガポール)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
アントニオ・カルーゾ(豪州)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
リトゥ・フォーガット(インド)
ノウ・スレイ・ポブ(カンボジア)

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Interview Special ブログ 中島太一 堀江圭功 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:9月─その参─中島太一×堀江圭功「鈍感力、ガッツ」

【写真】試合前の青木の予想は、堀江の一方的になることもあるというものだった…… (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年9月の一番、第3 弾は27日に開催されたPancrase318から暫定フェザー級王座決定戦=中島太一✖堀江圭功の一戦を語らおう。


──9月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目は?

「中島太一✖堀江圭功戦です。中島選手とは今は練習していないですけど、堀江選手とは練習させてもらっていることがあって、組んだ感じでいえば『これは本当に強いな』と思ったんです」

──その発言は試合後の中島太一選手のインタビューで引用させていただきました。

「堀江選手はちょっと才能とか素質的にも一つ抜けていると感じていました。相当に強くて上手いです」

──では青木選手は試合前の見立ては堀江勝利だったのでしょうか。

「そうですね。堀江選手が勝つと思っていました。最初に組み合って中島選手が崩されると、勝負の行方は決まる。堀江選手のワンサイドになると」

──打撃ではなく、組みで戦局が読めると

「ハイ。中島選手が良い形で最初に組めないと、堀江選手のペースになり試合にならないかというぐらいでいました」

──組みの前に中島選手が懐に飛び込むタイミングを掴めず、無理やり行くと一発入る。そんな予想も私はしていました。

「あぁあ……KOがあるとすれば、堀江選手が仕掛けてカウンターを狙う。そういうことならあるかと思っていました。中島太一は打撃で仕掛けることはないと予想していたので。中島がするのはベタベタした試合で10-9.9を3つ狙うような」

──組ませないで、下がって殴る。それができるのか堀江選手だと私は予想していたんです。

「まぁ堀江選手の方が強いと思っていましたよね。実際に試合を見て中島選手が強いと感じたのは、凄く分かりやすいのですが……彼は怖がらずに前に出ていた部分で」

──やはりそこですか。

「そこ、そこだけだと思います。中島選手が勝っている部分は少ない」

──試合後のインタビューでは『遠い距離の方が嫌だった。近くで戦ってくれて良かった』と言っていました。

「遠い距離、近い距離……それ、中島選手はそう見えているかもしれないですけど、距離が近いか遠いかは、どっちが前に出て、どっちが下がるか。あれは中島選手が前に出た結果で、あそこで堀江選手が大きいのを入れることが出来れば、中島選手が下がる展開になっていたはずです。

つまり堀江選手は最初に入れることができなかった。そこがずっと影響してしまいました。とにかく中島は肝が座っていましたよ」

──実はテイクダウンは1度、ボディロックの展開にもほぼほぼ持ち込めていないのに、押し込みで判定勝ちができました。

「そうなんですよね。クリンチでちょっと優位なところを取っているだけで。主導権をほんの少し握っていた。結果10-9.9の試合をやり通したけど、やっつけてはいないです。

決して自分の試合じゃないし、有利になっていると言い切れる試合でもない。でも、あの戦いを3R通して実行できる。これは、良い意味での鈍感力です。今の世の中では、言い方を考えないといけないけど、戦いってバカになる必要があると思います」

──バカになる?

「ハイ。色々と考えたり、周囲の評価を気にしているのではなく、何も気にせずに自分を無条件に信じる。鈍感力であり、勘違い。だって上手い相手、予備知識がある相手じゃないとフェイントは引っ掛からなないですよ。どんくさいヤツはフェイントに掛らない。

僕はもう、当たるわけないじゃんっていう手だけバタバタした動きをしているんですけど、あれだとクロスカウンターを合わせられるリスクもないし、相手の綺麗なリズムが崩れます。だから、わざと下手でいるんです」

──青木選手は意識をしてそうしていますが、そうでない選手もいるということですね。

「中島選手もそうですよ。それって言いかえると才能、天才です。本当にリズムが全然違う。トンパチだから、レコードもトンパチで、ロシアに行ってしまうのもトンパチ。ACAの経験で強くなれたと思い込める。それだって……こういうと、思い込む力です。

堀江選手は逆に受けちゃいますよね。練習でもずっと受けている。テイクダウンを切る練習をして……僕らとやっている時は受けるだけで、攻めていなかった。受けが強いことで、僕らもより強く感じる。

でもMMAは喧嘩というか、最初に『この野郎』っていかないと。それが出来れば堀江選手のゲームで始めることができる。結果論ですけど、中島選手はガッツでいった。そこが勝敗の分かれ目になりました」

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Interview Special コルビー・コビントン タイロン・ウッドリー ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:9月─その弐─コビントン×ウッドリー「ここが残っているのは」

【写真】レスラー対決、テイクダウンを決めたのはコビントンだった (C) Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年9月の一番、第2 弾は19日に開催されたUFN178からコルビー・コビントン✖タイロン・ウッドリーの一戦を語らおう。


──8 月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「コビントン✖ウッドリーですね。コビントンがいきなりダブルレッグでテイクダウンを決めた。アレが全てだと思います。あんな風にすぐに取れちゃうんだって。ウッドリーってD1レスラーなのに、MMAだとあんなに簡単にテイクダウンを取られる……こんなに差があるのかと驚かされました。

同時にローリー・マクドナルドと戦った時と同じぐらい、ウッドリーが動けていなかったです」

──この試合はアブドゥルバクヘヴァ✖サルナフスキーの対極にあるように感じました。ロシア人は5分✖5Rをガツガツとやり合っています。対して、コビントン✖ウッドリーは燃費合戦になっていました。

「ボクシングを軽くやって、一つのテイクダウンが大きくモノをいうという試合ですね。省エネファイトになるのは、USADAがテストをするようになって変わったというのはないですか」

──ACAにチェックがなく、ああいう試合になるかもしれないという点を差し引いても、コロナ禍のUFCの5Rはこの傾向が強いように感じます。

「そうですね、もたなくなっていますね。練習環境が整っていないというのはあったかもしれないですね。ウッドリーは優しい感じが出ています。もう、何が何でもという風になっていない。その気持ちは試合でも出ています。スクランブルすら応じなくて、馴れ合い感すらありました。『もうイージーで良いや』っていう」

──その割には試合前と試合後の方が、言葉のやり取りが盛んにあって。コビントンのトラッシュトークも、もうスクリプト感すらあってあまり乗れなかったです。

「それでもテイクダウンを取るんだってってのはありましたけど、そこからはコビントンもつまらないですからね(笑)。今のUFCウェルター級はしんどさがありますよ、この上がカマル・ウスマンですし。映えるファイターはウスマンやコビントンに消される。結果、ここが残っているのはどういうことだというのは示せているような気がします」

──ならアスクレンには劇的ではあったけど、躓かないで彼らと戦ってほしかったという想いも出てきます。

「そこはですね、レスリングは素晴らしくてもアスクレンはMMAにフォーカスしていないから、打撃でプレッシャーをかけることもできないし。コビントンとかウスマンはそれができているから、映える選手に勝てるわけですし。

MMAだとアスクレンは、ウスマンやコビントンにテイクダウンを奪われるかもしれないし。いえばウッドリーだって、レスリングだけだったらコビントンにテイクダウンされないかもしれない」

──この次の週のライトヘビー級とミドル級の世界戦が打撃で決着がついたのですが、レスリングという要素がないファイトでした。

「そうなんですよね。結局、打撃が強いレスラーは押し相撲ができる。打撃だけだと、それはないので凄い勝ち方をしていても、大切なところで勝てないということはでてくる。対して、押し相撲ができる選手は安定していますよね。

MMAならウッドリーがテイクダウンを奪われる。当たり前のことをコビントンとの試合でまた学習できました」

──その興味でウスマン✖コビントンも楽しめますか。

「ウスマンの方が打撃もレスリングもできるし、そこで勝ってきたコビントンがどうなるのか。策で返すのか、技術でごまかすことができるのか、そこは興味深いです。コビントンが上を取られて、『もっと動けよ』ってなるのか。それすらない、お互いが出ない試合になるかもしれないですし。

楽しむとすれば戦略的なことを考える。試合を見るだけでなく、試合前から楽しめる試合ですよ。その結果は『こうなるよな』ってことで終わったとしても。なんかサッカーみたいですよね、試合前に戦略が記事になる」

──確かにサッカーの専門誌はフォーメーションと出場予想選手を並べて、キープレイヤーなどプレビュー記事にページを割いています。

「そういうことですよね。MMAもそういう愉しみ方ができる。MMAを戦術、戦略、組み立て方で楽しめる。そういうフェーズに入ってきましたね(笑)」

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ACA111 Interview Special アブドゥルアジス・アブドゥルバクヘヴァ タイガー・サルナフスキー ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:9月─その壱─アブドゥルバクヘヴァ×サルナフスキー「ロシア同士」

【写真】新ACAライト級王者となったアブドゥルバクヘヴァ(C) ACA

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年9月の一番、第一弾は19日に行われたACA111からアブドゥルアジス・アブドゥルバクヘヴァ✖タイガー・サルナフスキーのACAライト級王座決定戦について語らおう。


──9月度の青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合をお願いします。

「ACAのアブドゥルバクヘヴァ✖サルナフスキーですね」

──おお、ロシア・ライト級最強の座を表す一番です。

「ACAライト級は3強ですね。アリ・バゴフ、エドゥアルド・ヴァルタニャン、アブドゥルバクヘヴァの3人でタイトルが行ったり来たりしていて。バゴフはライト級王座を返上してウェルター級に転向したけど、タイトルを取れなかったから次はどうなるのか」

──バゴフが抜けて、ユーサップ・サイソフをそこに収めたかったような気がします。

「フェザー級チャンピオンから上げてきましたよね。でもACAのライト級ってACB時代にアブドゥルバクヘヴァはバゴフに勝って、ヴァルタニャンを相手に防衛した。そしてバゴフとの2回目に負けた。そういう戦いに入って来られるのか……。フェザー級で圧倒的でもなく、ゴリゴリで勝ってきたのでライト級では分からない部分はありました。

結果、今大会のセミでカザフスタンの選手(アルテム・ラズニコフ)に負けちゃって……。まぁACAとしては痛い敗北だったでしょうね」

──それでいえばサルナフスキーの挑戦は妥当だったのかと。現在のサルナフスキーはちょっと届いてない選手かという気もしていました。

「そうですね。実際にヴァルタニャンに負けているし。でも、このところ盛り返してはきていた」

──ロシア人相手でなく国際戦で連勝し王座決定戦という流れですね。

「37勝8敗で凄いレコードだけど、ADW(※UAEW)でマカコと競い合ったり、Bellator以降はあの頃のような強さはないです」

──だからアブドゥルバクヘヴァが圧勝するかと予想していました。

「それでもサルナフスキーも下がって老獪に戦っていました。やられないように戦って」

──そうしていると2Rにアッパーを当ててアブドゥルバクヘヴァの動きを止めるとう場面も。

「そでもアブドゥルバクヘヴァは下がらない。ジャブを突いて、前に出て。2R終盤にグラつかされたので、さすがに3Rの動きは悪かった。でも前に出るので盛り返してしまう。クリンチをしてヒジを打ったり、そこも上手かったです。離れ際のアッパーも。回復力と早さで、結果的には3Rと4R、最後も取ってしまった。あの前にでる強さは安藤(晃司)みたいですよね」

──UFCがロシアを掘り、ACBの景気が良かったときに一気にロシアの恐怖が世界に広まりました。結果、掘ってしまったが故に強いは強いですが、幻想が現実になったことで落ち着いた感があります。

「僕はそれが面白いですね。もうロシア同士でやってくれた方が、ブラジルや元UFCファイターが混ざってくるのより面白い。ACAに関しては、ですよ」

──ACAになってからは派手な国際戦は減り、加えてコロナ禍で米国やブラジル人ファイターの出場が途絶えました。メディアとしては比較対象がないとファンに浸透し辛くなってしまって。

「あぁ、僕にはそういう感覚はないなぁ。ただタイ人の名前は覚えられるけど、ロシア人の名前は覚えられないですよね(笑)」

──風貌もスキンヘッドか短髪、そして髭がしっかりと生えている。でも試合は高レベルで。皆が強いからガツガツ&ドロドロの展開になる。

「皆が強くて、真っ向勝負。完全にタフファイトで。試合だけでいえば面白いです。スクランブルもUFC並みに見られます。それにピョートル・ヤンやマゴメドシャリポフみたいにACA(※ACB時代も含める)のチャンピオンは、UFCで強さを見せつけているから、UFCをリリースされた選手との国際戦より、ロシア人同士でやっていて構わないと思います。ACAはACAで、ロシア人同士でやっている方が楽しめます」

──コロナ禍でもACAで出ている旧ソ連勢が、台頭してきている感もあります。

「現にライソフに勝ったカザフスタン人がいて、タジキスタンとか、なんとかスタンっていう中央アジアが出てきている。それも楽しいじゃないですか」

──モスクワの大会でも、やけにタジキスタン選手に声援が集まっていました。

「ロシア国内での民族闘争みたいな感じで、盛り上がっている。僕はもうそこが面白いです。政治も絡んでいる感じで(笑)。ロシアを掘ったら、中央アジアが出てきた。アジアといってもヨーロッパ寄りでレスリングが強くて、ボクシングも強い。国威発揚のための格闘技強化……社会主義時代の貯金が中央アジアの格闘技には残っている。そこが出てくるのは楽しみです」

──それがこれからのACAの楽しみ方だと。

「ハイ。それとライト級ではヴァルタニャンです。柔道の香りがして、MMAで内股を決める。ヴァルタニャンがもう1回、タイトルに絡んで来て内股が見たいです(笑)」

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Interview ONE Road to ONE03 ブログ 江藤公洋 青木真也

【Road to ONE03】青木真也に訊いた──さいたま発言の真意「そんなの出るわけねぇじゃん。話題創りです」

【写真】試合後、興奮状態にあるようでいて──さいたま発言の真意からも、感情的な本音の連続だったように感じられた (C)MMAPLANET

10日(木)、東京都渋谷区のO-Eastで開催されたROAD TO ONE 3rd :TOKYO FIGHT NIGHT。同大会のメインで青木真也が江藤公洋を3R判定で下した。

3R、15分ほぼバックを制して勝利が確定的だった青木は、勝ち名乗りを受けるまでにグローブを叩きつけ、江藤のコーナーである大沢ケンジを罵倒し、ウィナーコール後もONE JAPAN 秦英之代表に厳しい表情で何やら言い放っていた。

そしてマイクを握って、「5年振りにさいたまスポーツアリーナで戦いたい」と発言した青木に控室で、その真意を尋ねた。


──かなりお怒りモードの試合後でしたね。

「だって勝負する気ないじゃん。あんなに動かないんだったら、試合にならないッスね。分かります? 俺の気持ち!!」

──青木選手の気持ちは分かるとはいえないですが……。

「ハイ」

──ただONEはラウンドマストではないし、3Rは逆転を賭けた動きをしてほしかったですね。でも、最後の方に青木選手も隙を与えて動かそうとしてしましたが。

「そう……でも、ぜんっぜん動かない。大沢もクソ。偉そうなこと言いやがって。大沢はね、俺に五分の口を聞ける格じゃないッスよ。分かりますよね? この俺の言っていることは。ABEMAの意向もあるんだろうけど、生意気いうじゃねぇよって。

『勝てるかも知れない』とかってお前、何言ってんだよ。誰に口きいてんだよって、ずっとムカついていました」

──いや、それは言うのではないですか。

「ふざけんなよ、テメェバカ野郎。〇してやるぞ、お前って」

──いやいやいや、試合前の対戦相手のチームの指導者ですよ。それは言いますよ。

「ふざけんじゃないって、この野郎」

──いや、大沢さんの立場でそう言わないわけがないではないですか。なのに、その言いようは大沢さんが気の毒ですよ。

「まぁ、そうですけどね……。ハッキリいえば、それぐらいのテンションになっていたってことなんです、俺は。ふざけんじゃねぇよ、この野郎っていう。それだけ俺も必死だったということですよね……俺も必死だった」

──試合の流れとしてバックを制して、仕留め切れない。良い流れではなかったです。

「あれでしょ、青木の負けパターンですよね。だから1Rが終わった時点で、変な話……山は創ったじゃないですか。2Rはテイクダウンしたら、3Rはこれで良いと思っていたので。フィームーで逃げるみたいな。お前がそんなんやるなら、これで良いよってなりましたね」

──何かしないといけないけど、それができなかったのでしょうね。

「それでも、ないです。アレはない」

──ところで、そんなにイライラしていて戦えるものなのですね。

「いや、試合中は逆に凄く冷静です。ふざけんじゃねぇって。でも、俺だってレフェリーが注意できないレベルで汚いこともしていましたよ。それぐらい必死だったし。それだけ勝ちたかった」

──江藤選手が最後まで勝ちに来なかったことに関しては。

「それは俺の都合じゃないですよね。取れるなら、取れるし」

──ところで、試合中はセコンドの北岡選手の声が凄く良かったように見えました。

「力使うなってね、北岡さんが。だから、全く息があがることなかったです」

──そして、試合後に一気に怒りが出たわけですか。それにしても、記念撮影の時も秦社長に険しい表情で何か言っていましたね。

「俺が何で、この試合をしたのか分かっているよねって伝えただけです。だって俺以外、みんな満額ですよ。で、俺の残りカス食って。いや、この大会があって、ここまで創ってくれたことには凄く感謝しています。本当に多くの人に……皆に感謝しています。

そりゃさ、俺は那須川天心みたいに全てを仕上げることはできないですよ。堀口恭司とか武尊とかみたいに……残念ながら。それはこれまでの歴史を見れば分かることじゃないですか。でも俺、精いっぱい自分の可能性以上に背伸びしています。

俺は……自分のできること精いっぱい背伸びしていますよ。これ以上できないくらい。これ以上、誰にも文句言われないぐらい格闘技が好きで。格闘技好きとか、愛しているとか皆が言うけど、俺はその気持ちだけでもっているから。だから、分かっているなんて思わると……嫌な気持ちにはなります」

──そのなかでONEの日本人選手は、ここでなくシンガポールを見ているという部分でも苛立ちはありましたか。

「10月を待っているでしょ? じゃぁ、これで俺はケガがないから10月に試合ができますって言うじゃないですか。これで俺を使わないなら嘘になりますよね」

──その気持ちが、最後のマイクの発言になったのでしょうか。

「あっ、さいたまですか? あんなの見出しに決まっているじゃないですか(笑)。一番インターネットがザワザワするでしょうし(笑)」

──人が悪い。乗らされてしまいましたよ(笑)。

「だって……そんなの出るわけねぇじゃん。ふざけんじゃねぇよって(笑)。話題創りですよ。日本ではONEよりRIZINの方が大きいから、話題になるでしょ。食いついてもらって。確かに猿田✖のび太とか、凄く良い試合でした。のび太が凄く頑張って、良かった。でも、それ以上の話題にするには……それぐらいニュースになって、形に残って、自分の物語にするのに必死ですよ。

皆が言うほど俺、余裕ないッスよ。本当に15年とか、ずうっとドロドロのことをしていますよね。辛かったです。今日も昨日も辛かった。でも明日も明後日も辛いんでしょうね」

──そういう真意があっての発言というか、次はつまり……。

「10月、やりますよ。俺が10月に使われないなら、言っちゃうと要らないってことになるし(笑)」

──ONEのスマートさと、青木選手のドロドロさは少し平行線のように感じます。青木選手のやり方が理解できると日本定着に通じると思うのですが。

「まぁ本音と建て前ってのが、ありますからね(笑)」

──我々の国は(笑)。青木選手はジャパニーズMMAですからね。もう今や1人ジャパニーズMMAです。これが他の国の人に理解してもらうのは困難かもしれないですが。

「アレなんだよ。佐藤大輔に人生狂わされましたよ。あれを5、6年やりましたから。いっつもですよ、『青木、今回はヒールね。今回、ベビーね』って(笑)。俺、そんなに人格ないんですけどねって……」

──ただし、今や若い選手から相当に尊敬されているじゃないですか。

「あっ、あのABEMAの映像?」

──ハイ。

「アレは……若い人たちは……名須川さんは僕よりも大きなことをやっているけど、平田の言葉とか、アレは涙が出ないぐらい響いた。『ありがとう』って。本当に響いた。ありがとう、感謝している。本当に皆に感謝しています──ありがとうって」

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ONE Report Road to ONE03 ブログ 江藤公洋 青木真也

【Road to ONE03】バックを取り続けた青木真也、判定勝ち。そして「5年振り、さいたま」をアピール

【写真】青木のさいたまスーパーアリーナ宣言=RIZIN出場アピールはどのような波紋を広げるのか(C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
Def.3-0
江藤公洋(日本)

左ジャブから右を伸ばした江藤が青木の最初の組みからシングルに反応するが、直後に青木が左足を触って肩を押し込みテイクダウンを決める。江藤の左足を束ねて、そのままバックに回った青木は時間をかけてコントロールする。足のフックを耐える江藤を後方から殴った青木が両足をフックする。

残り3分、上体を潰していく青木は江藤の手首を掴んでエルボーを落とす。左の連打、右エルボーを入れると江藤が頭を下げる。防戦一辺倒の江藤は、耐えどころだ。側頭部にヒジを入れる青木はワキの下からアッパー、頭を抱えるようになった江藤にエルボーを断続的にいれる青木は、2Rになることを頭に入れたようなラウンド終盤だった。

2R、右から組むフェイクを見せた青木が、ヒザ蹴りをキャッチするが江藤がバックに回る。前方に落とされるのを嫌がった着地した江藤に対し、ボディロックから青木が背中に回る。手首を掴んで絞めの防ぐ江藤。青木は右手首を掴む江藤の左手首を右手で掴んでクラッチを外しにかかる。

ワキの下と上の上から左でパンチを入れる青木はパンチを続け、絞めの機会を伺う。青木の右手を掴んで、防御に徹する江藤。残り30秒、青木はそのままペースを変えずラウンド終了まで背中に乗って殴り、ラスト10秒になりパンチの回転数を上げた。

最終回、江藤は前蹴り、青木はケージの前を左に回る。右ミドルを空振りした江藤の左足を挟むようにボディロックテイクダウンを決めた青木が、バックへ。自らマットに背中をつけた青木が、四の字フック。喉に腕を入れられないよう守る江藤に、青木は左のパンチを続ける。

強力な四の字フックに胸を合わせに行けない江藤──時間は90秒を切る。青木はもう負けはないという時間と態勢いになり、江藤を動かせにいく。徹底してサバイブファイトに江藤が、最後の5秒で胸を合わせに行ったが、青木が許さず時間に。

グローブを叩きつけた青木が当然、判定勝ちし「蓋開けてみたら、ここまでの貧乏くじを引かされると思わなかったよ。日本の格闘技を盛り上げるというなら、俺がここで試合をしているのはおかしいだろう。俺は5年振りにさいたまスーパーアリーナで戦いたいんだ。関係者、偉そうに格闘技を盛り上げるっていうなら、このカード実現させてみろ」と今度はマイクを叩きつけた。


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News ONE Road to ONE03 グンダー・カルンダ ブログ 今成正和 内藤のび太 手塚裕之 根津優太 江藤公洋 猿田洋祐 青木真也

【Road to ONE03】記者会見─03─猿田「コスプレじゃない」。カルンダ「I love Ramen」

【写真】メディアもソーシャルディスタンスを忘れてしまう件…… (C)MMAPLANET

8日(火)、10日(木)に東京都渋谷区のTSUTAYA O-EASTで開催されるRoad to ONE 3rd TOKYO FINGHT NIGHTの記者会見が港区の東京ミッドタウン・カンファレンスROOM7行われた。

ここではMMAファイターと記者の質疑応答の模様を振り返りたい(※要約)。

──猿田選手とのび太選手に質問なのですが、珠理奈さんにも注目の試合に挙げられていました。今の心境を教えてください。

内藤のび太 ありがとうございます。ちょっと照れる感じです。なんか男性からのラブコールを受けたみたいで、嬉しいです。あっ、ちょっと気持ち悪い感じになっちゃうんですけど……。凄く嬉しい──と思います。ハイ。

猿田洋祐 自分が長年、修斗時代から戦いたいと思っていた試合が──自分だけでなく、回りの人も思ってくれるようになった。そこまで持ってこられたのが良かったなと思います。自分のなかで成長できたなと思います。


──青木選手に質問です。青木選手は格闘技界自体をプロデュースして生きてきていると思うのですが、そういう立場になるなかで青木選手と今成選手だけ、この場にいて違和感のある馴染まない雰囲気です。昔から一緒にやってきた今成選手とこのタイミングで同じ大会で試合をする。プロデューサー的な立場でなく、青木真也個人としてどのような気持ちですか。

青木真也 まず一つ言えるのが、好きだと思うんですよ、格闘技が。格闘技が好きで、別に世界だとか一番だとかってことをやっていないけど、格闘技が好きと思ってくれるだけで、なんか僕は許せるというか。

ここにいるとさ、皆が格闘技好きです、尊敬していますっていうわけなんですよ。色々言いますよ。でも、そんなの向き合い方で分かるから。格闘技が好きっていう気持ちを持ってくれている──僕も格闘技が好き、それだけが全てじゃないかな。色々なんかあって、僕も人と上手くいかなかったりするけど、格闘技が好きなヤツは許せる。そこに尽きると思います。

──今成選手、今の青木選手の言葉を受けて一言お願いします。

今成正和 凄く良いこと言うなぁって思います(笑)。

──手塚選手に質問です。ソーシャルディスタンスのなか既に触れあってしまったのですが、実際に触れてみてグンダー・カルンダ選手の圧力、肉体力はどのように感じましたか。

手塚裕之 まぁそうッスね。凄い勢いで突っかかってきて……こっちの方が強いかなって感じですね。食っているモンも、やっているモンも。こっちの方が上のことをやっているので。

──手塚選手はお米を作って、お米で体を作っています。カルンダ選手は日本で何を食べて体を作っていますか。

グンダー・カルンダ アイ・ライク・ラーメン(笑)。ラーメン、スシ、フィッシュ、ウォーター。

──のび太選手と猿田選手へ。今回は入場に気合を入れるとか。意気込みがあれば教えてください。

内藤のび太 そこの対決はないかなと思います(笑)。

──コスプレはしない?

内藤のび太 コスプレっていうか、いつもしているのでアレはやると思います。

猿田洋祐 コスプレじゃないんで。忍者なのでやります!!

──青木選手に質問です。格闘技好きという言葉がありましたが、逆にABEMAの中継を通して格闘技がそこまで好きじゃない世間一般にはどのような受け入れられ方をしたいと思いますか。

青木真也 そもそも格闘技が世間に届いているかといえば、首を傾げることが多いじゃないですか。なんかこう、格闘技が世の中に届いています──メジャーですって。

格闘技をメジャーにしたいってやつ100パーセント信用していなくて。そもそもメジャーにならないし、サブカルチャーというか……サブカルチャーだからこそできる、自分で表現できるというのは多分にあると思うので、メジャーにしたいという考えがそもそも余りないです。

結局、格闘技を外に伝えたいときに、何を伝えるかというとコレに尽きると思います。僕の場合は生きろってことで、要約すると。凄く雑な言い方ですけど、どう生きるんだ。お前はこの世の中とどう組み合って、生きていくんだっていうメッセージを伝えたいですね。

それがない格闘技なんて、ただ運動の得意な人が取っ組み合っているだけだからさ。そんなもん、なんの価値もないからさ。何か自分がやっていることで、主義主張はしてほしいね──と思って、伝えたいと思います。ハイ。

──誰にとか、どういう人に向かってとか青木選手はありますか。

青木真也 俺は……僕は別にヒーローになりたいとか思っていないから。子供のヒーローになりたいとか全く思っていない。世の中の人って失敗したりだとか、コミュニティからあぶれたりとか、そういうこと……失敗することの方が多いんですよ。ここにいる人間も全員が強いわけではなくて、ただ強さに憧れて、自分の弱さを認められない人間なわけですよ。そういうなかで、僕の場合は世の中からあぶれたり、上手くやっていけない人間の、転がっている奴らの希望でありたいとは思っています。

なので、潤風満帆な人は見なくて良いです。

──江藤選手は何か伝えたいモノはありますか。

江藤公洋 自分自身は試合に向かうなかで怖さだったり、恐怖心を凄く感じるタイプなので。それを乗り越えて試合に向かう、どういう結果になるかは分からないですけど、今回の試合に向けての取り組みと試合のなかでどういう風なことを周りに感じてもらえるのか。恐怖を乗り越えた結果をどういう風に受け止めてもらえるか。そのために準備をしてきたので何かを感じてもらえればとは思っています。

──青木選手という存在は恐怖ですか。

江藤公洋 それもありますけど、試合は誰と戦っても恐怖は感じるので。それは青木選手だから、とかではないと思います。

──青木選手が言われたことに対して、のび太選手も取り扱われ方も特殊な、内気な感じの生き方があるかと思うのですが……。そういう同じような引き込まってしまう人に、何かを見せたいというのはあったりするのですか。

内藤のび太 そういう人たちには、そういう人たちの色々なアレがあると思うので、そういう人たちに見て欲しいということではないですけど、そういう人たちが見た時に、何かを感じてくれれば良いなというのはあります。ハイ。何が糧になるかとか、分からないですが。

──根津選手に質問です。青木選手がうだつの上がらない人に試合を見て欲しいと言われましたが、根津選手は明日の活力にしてほしいというモットーで戦っていますが、今回、この状況でどういう人の活力になるような試合をしたいですか。

根津優太 この状況ですから、全ての人が皆もう頑張っているので。だからチョット頑張り疲れた人達に『もう1回、明日も頑張ろう』とか思ってもらいたいですね。