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J-CAGE News ONE Road to ONE04  エリッキ・シウバ ブログ 青木真也

【Road to ONE04】大会スポンサーより3選手にボーナス。「表現として質を大事にします」(青木真也)

【写真】青木に満面の笑みと拍手を送られるのは誰になる?!(C)ONE

22日(月)、東京都渋谷区TSUTAYA O-EASTで開催されるRoad to ONE04「Young Guns」でNext Young Guns Awardが設けられることが決まった。

5年後の日本の格闘技界を考える──というテーマを持った今大会にはONE本戦ファイターの平田樹を筆頭に修斗、パンクラス、キック、そしてONE Warrior Seriesで戦う(主に)若い選手が集まっている。



そんなYoung Gunsの集いに相応しいボーナスが決まった。今回のNYGAは今大会のメインスポンサーである㈱CLASTYの長安蒜貴紀代表取締役社長が出場選手から2名、大会当日にABEMAで解説を行う青木真也が1名を選出し、各自に10万円のボーナスが贈られるという。

今回のアワードに関して、主催者からリリースされた長安氏と青木のコメントは以下の通りだ。

長安蒜貴紀CLASTY代表取締役社長
「今回このCLASTY Presents Road to ONE4th; Young Gunに出場する選手から、優秀な選手を選ばせて頂くことは大変名誉なことと感じています。これから日本の格闘技界やファンの希望を背負い、強烈な印象を与えた選手や未来に繋がる、期待の持てる選手に応援の気持ちも含めて、選びたいと思います。選手たちの活躍を楽しみにしています。」

青木真也
「この度、大会の優秀選手を選考するとのこと。様々な評価基準が存在しますし、表面的な格闘技ブームなのか的外れな価値基準が多いと感じています。その中でファイターが評価するファイターの重要度が増しているように思います。格闘技として、表現として質を大事にします。上手、綺麗は要りません。凄みを見せてください。仕事しろよ。仕事の報酬は仕事で返ってくるからね」

■視聴方法(予定)
2月22日(月)
午後4時15分~ ABEMA格闘チャンネル

■Road to ONE04 対戦カード

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
平田樹(日本)
中村未来(日本)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
長田拓也(日本)
葛西和希(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
小川徹(日本)
山中憲次(日本)

<キックボクシング54キロ契約/3分3R>
有井渚海(日本)
平松侑(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
吉野光(日本)
野瀬翔平(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
岩本達彦(日本)
中田大貴(日本)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
安芸柊冬(日本)
山北渓人(日本)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
風間敏臣(日本)
前田浩平(日本)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
田上こゆる(日本)
リトル(日本)

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Interview Special ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─弐─カーフキック「楽をした結果がMMAにおけるカーフ」

【写真】ムエタイをこよなく愛し、組み技がずば抜けている青木にとってカーフキックとは (C)TITAN FC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2021年1月の一番──は3試合とも話してもらった。が、ここで青木が「話題にするのは恥ずかしいですけど」と──カーフキックについて語り始めた。月刊、青木真也──今月は2度目の番外編としてカーフキックについて語らおう。


「話題にするのは恥ずかしいですけど(笑)。今、カーフキックって流行っていますよね」

──ハイ。大流行です。記事でもタイトルにカーフを持ってくればPV数が上がるパワーワードになっています。

「ただ、飯村(健一)さんとも話していたんですけど、カーフって理屈上はミドルで腕を蹴っているのと一緒だよなって」

──というのは?

「腕を蹴っている方が、ダメージがあって。例えばシャーウス・オリヴェイラとか、あのレベルでミドルで相手の腕を蹴ると、腕は折れてしまうんじゃないのかって。足より腕の方が弱いじゃないですか」

──ハイ。

「カーフだとカットできるけど、腕はできないから。カットしないからカーフはあれだけ効かされて。だからミドルを腕で受けていると、それは腕が行ってしまうだろうって僕は思っています。

そういう部分でいえば、シャーウス・オリヴェイラはマイケル・チャンドラーとかには一番相性が良いかもしれないです。しっかりとミドルを蹴ることができる選手というのが」

──腕のブロックはカットではない。その通りですよね。ならスウェイで避けないと。

「ハイ。カーフってカットされると、骨を蹴って自分が痛めちゃいます。だから裏の筋肉を蹴っている」

──Calf(脹脛)であって、Shin(脛)キックではないです。

「まぁ危ない技ではあります」

──ただ、私はMMAというのはレスリングも一要素で踏み込むスタイルというのがある。だから前足でカットしづらい。ボクサーでもそうですよね。クラウンチングの。それが、最近は立ち技系でカーフで決着がつく試合があると聞いて、驚いたんです。なぜカットしていないのか、不思議で。

「それはもうK-1はローキックとパンチだからなんです。蹴りを掴んじゃダメで。手で受けろ──回し受け、もしくはカットというルールなんです。

そして、カーフがそのルールの穴が生んだ攻防です。だって蹴りをカットするより、受けてパンチで行った方が勝てるから。しかも3分3Rだし、余計にパンチでいきますよね。ボクシング&ロー、魔裟斗がまさにそうで。あの影響を受け、引継ぎ──カーフキックになったと思います。

と同時に今、MMAでこれだけ知っているはずなのに、なぜ付け焼刃的にカーフを使い始めて決まるのか……それは構造的な問題で。ワイドスタンスでテイクダウンを切ってパンチ、もう組まない。近距離でソレをやっているから、構えの構造でカットはできない」

──組まない。ガツガツの打撃戦をしない。だから距離的にもカーフになると剛毅會の岩﨑達也さんも言われていました。

「あぁ、確かに。結局、楽をした結果がMMAにおけるカーフになったと。クリンチをしたら貰わないんです。でも、暫らくもらう人が出続けるでしょうね」

──ハイやミドルが綺麗な選手が、そこまでカーフを蹴る必要があるのかという試合もありました。他で組み立てられるだろうと。

「そうなんですよね。だから楽しちゃっている。で、また誰かが足を折って下火になるんじゃないですかね。

カーフを蹴っても基本はミドルとハイが上手な選手が、しっかりと蹴りで試合を支配できると思います。パンチ&カーフだと、組みが強くないといけなくなってくる。結果、そんな甘いモンじゃないってことですよ。これからはカーフに対して防御もそうだし、構え自体が変わって来るでしょうね」

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Interview Special  ソン・ソンウォン ブログ 石原夜叉坊 祖根寿麻 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その参─祖根寿麻✖石原夜叉坊「堕落に任せている」

【写真】勢いでなく、覚悟を決めて戦った祖根 (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年1月の一番、第三弾は31日に行われたShooto2021#01から祖根寿麻✖石原夜叉坊戦について語らおう。


────青木真也が選ぶ2021年1月の一番、3試合目をお願いします。

「祖根✖夜叉坊です。あの試合、正直どう見ていましたか?」

──試合前に、どちらが勝つと思っていたということですか。

「ハイ」

──それは正直、夜叉坊です。と同時、個人的には祖根選手に何か見せてほしいと思っていました。意地のようなモノを。

「夜叉坊ですよね。僕もそう思っていました。やっぱ、そうですよね。なんか、そう考えると2年間試合をしていないというのは大きいですね」

──そこでいえるのは2年間試合をしていないという部分とともに、2年間の過ごし方はどうだったのかということかと。

「そうっスね。試合勘と別に、日々の練習でどれだけ創ってきたのか。そこの部分は関係してくるでしょうね。夜叉坊は打撃の選手なので、打撃の切り返しとかそういうことはしていたと思うんです。でも組んだり、鎬を削る練習をどこまで日常に採り入れてきたのかとは感じました」

──結果論で突っ込むのは反則かもしれないですが、最後の局面にテイクダウンへ行った。夜叉坊という選手は本当に気持ちがストレートに表れる。だから、負ける時はやってはいけないことがそのまま出ることが多いです。今回も最後に祖根選手の跳びヒザに対して、テイクダウンへ行った。いやポイントメイクでなく、倒す意志が必要な場面でしょうと。

「その前にもテイクダウンを狙って、がぶられて押し込まれる途中で崩れてバックに取られました。

テイクダウンに行った時のギロチンの取られ方も……良くなかった。ああいう組みの脆さを見ると、日々が出るのかなとは感じましたね」

──と同時に祖根選手が昨年4月に後藤丈治選手と戦った時と比較すると、コンディションが体も気持ちも違っているように感じました。

「祖根選手は去年の4月は動けていなかったけど、今回は気合が入っていました。要は不利なマッチアップで、皆が夜叉坊の勝利を願っている──祖根陣営以外は。

そういう試合で1Rが終わってから、祖根選手がガードを固めてゆっくり、ゆっくりと距離を詰めていきました。バッと行くんじゃなくて。あの試合をするってことは、頑張っている証拠です。

アレはなかなかできることじゃないし、今回の祖根選手は格闘家が評価する格闘家のソレだったと思います」

──最高の誉め言葉ですね。

「ほんと竹中大地選手とか、祖根さんとはタイプは違いますけど、アベレージが高くて格闘家が評価する格闘家だと思うんです。そういうのが、祖根選手にありました」

──対して夜叉坊は……個人的に夜叉坊と安藤達也選手は才能の塊だと思うんです。

「……あのう、それ……その2人で括るの止めてくださいよ(笑)。それ言っちゃいけない2人ですよ。肉体的にも精神的にもピークにいられる年齢です。でも肉体的に落ちていたり、気持ちで対戦相手に負けるって」

──練習していない、という結論を用いてしまいそうです。

「いや、でも練習しないほうが本来は体は消耗しないんですよ。ケガもしないし。だから、なんでなんだろうって。堕落に任せているのかなって。

でも、それでも通用しちゃうところがあるので。それが問題なんですよね。ヤバイと思います。この間の修斗は、色々とレベル的には感じ入るモノはありました。西川大和選手が絶賛されていたけど、それはヤバイですよ。18歳、北海道っていうバイアスをかけていると」

──ケージにそのようなバックグラウンドは関係ないですしね。我々、メディアはそこで盛り上げていきますけど。

「それはそこで、分かってやっていることだし。だからこそ団体やジム関係者はしっかりと見極めないといけない。そういう点においても、今回は祖根選手が頑張って、堕落せずに逆風のなかで戦って結果を残した。気持ちというモノは難しいですけど……そこをどう評価するのかは。ただし祖根選手は確かに気合が入っていました」

──気持ちは一定でないから難しいですね……確かに。次の祖根選手が、青木選手のいう格闘家が評価する格闘家でいられるのか……。

「今回はSNSでの賑やかしもなかったですよね。そこまで入っていたし、これが正念場だったのでしょうね。だからこそ、次にチャンスが回ってくると同じことができるとは思わない。と同時に祖根選手は世界一になるとか、そういうことでやっているわけではなくて、気持ちの良い格闘技を見せてくれていますよね」

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Interview Special ダン・フッカー ブログ マイケル・チャンドラー 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その弐─マイケル・チャンドラー✖ダン・フッカー「重心」

【写真】チャンドラーが初回KO勝ちとなったフッカー──。もう少し、組みも踏まえた攻防も見てみたかった(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年1月の一番、第ニ弾は24日に行われたUFC258からマイケル・チャンドラー✖ダン・フッカー戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、2試合目をお願いします。

「チャンドラー✖フッカーですね。チャンドラーは色々な見立てがあると思いますが、僕自身は試合前にはダン・フッカー有利だと思っていたんです。ゴメンナサイ(笑)。

チャンドラーはあれだけ破壊力のある打撃の持ち主ですが、相性的には最悪じゃないかって。フッカーが真っ直ぐに真ん中から当てたら、終わるだろうと」

──確かにチャンドラーの踏み込みも、UFCのトップどころに通じるのかという見方もあったかと思います。

「チャンドラーとフッカーだと、あれだけリーチ差がありますしね。戦略が勝敗を分けるような階級において、これはフッカーだろうと」

──それが蓋を開けて見れば、と。

「ホントに失礼しました(笑)。構え方でいえば、チャンドラーはスタンスが広いオールドスタイルです。

レスリングのように腰を低くして、両足で踏ん張った状態で前後の移動ができる。いわばステップのない堀口恭司選手のような感じですよね」

──それは言い換えると、如何に堀口選手の前後移動がテイクダウンに適しているのかという。

「そうなんですよね。その分、体へ負担は相当あると思います。どうしてもストップ&ゴーなので。そこでいうと、チャンドラーはあのワイドスタンスで歩けるという強さがありますよね」

──堀口選手は、左右の足を使って鋭い踏み込みを見せる。それは全体運動でもあると思います。手を振ったりして。ただし、チャンドラーはもう足腰のみというような。

「強靭な肉体というと雑になってしまいますけど、レスリングが強いということに尽きると思います。MMAPLANETで空手の岩﨑さんが仰っていた『組みは打撃』ということで。組みが強いから打撃が生きる。その理屈を体現しているように思います。

何と言っても個体の強さがあります。パンチがどうこうというよりも、あの低い重心で動けるのかっていう部分で」

──しかも、左フックですから、縦移動に横回転が混ざる。もう自然の摂理に逆らった強さかと。

「そこは前傾姿勢で入っているから、誤魔化していると思います。前に倒して重さをつけている」

──それにしても、ダン・フッカーは過去にUFCで組みの強い選手とも戦ってきましし、このような負けは予想外でした。

「ジム・ミラーやドゥリーニョに勝っているわけですからね。僕はダン・フッカーの評価が凄く高かったので、もうこなるとチャンドラーとゲイジーが見たくなっちゃいます。ダでもスティン・ポイエーがマクレガーに勝っちゃったので、そこがゲイジーとやるのか。どの辺はUFCのセンスはどうなっているのか、ちょっと分からないですね」

──キーポイントはチャンドラーの組みが強いうえの、パンチ力ということですね。

「あのチャンドラーの突進を止めるには、蹴る。それが僕の理屈──あくまでも理屈上ですよ。あの低い前進は蹴りで止める……でも、それができるヤツがいるのかと。そうなるとシャーウス・オリヴェイラとか、興味深いですね。蹴りが映えるし、ヒザもある」

──下になっても構わない。下も上もどちらでも極めの強さがあります。

「テイクダウンされても構わないから、思い切り蹴ることができるだろうし。そうなるとチャンドラーがブロックしようもののなら腕を潰すこともできるじゃないかって。

今、カーフキックって流行っているけど……、カーフキックの理屈はミドルで腕を蹴るのと同じ。オリヴェイラがあの勢いでミドルを蹴って、チャンドラーが腕で受けると折れるんじゃないかって思います。

人間は基本的に、足より腕の方が弱いし、カットもできない。ならスウェイがバックステップでないと」

──でもあのワイドスタンスだと、スウェイではなくてブロックしてくるでしょうしね。

「そうなんですよ。だから、オリヴェイラとチャンドラーでオリヴェイラのミドルが見られないなかって。そこを見てみたいですね」

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Interview ONE Special ザキムラッド・アブデュラエフ ゼバスチャン・カデスタム ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:1月─その壱─アブデュラエフ✖カデスタム「尿比重と階級down」

【写真】テイクダウンからバック奪取、あっという間にネッククランスを極めたアブデュラエフ (C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

今月も変則的に番外編からお届けしたが、今回から従来の形式通りに、背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年1月の一番、第一弾は22日に行われたONE116 Unbreakable からザキムラッド・アブデュラエフ✖ゼバスチャン・カデスタム戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年1月の一番、最初の試合をお願いします。

「ザキムラッド・アブデュラエフ✖ゼバスチャン・カデスタムですね」

──ジェイム・ナカシマ戦の2試合前に行われた試合です。

「ハイ。僕はカデスタムと同じ控室というか、弁当箱の仕切りみたいな感じで、一つの場所で間仕切が十字になっていて、そこで彼とは同じだったんですよね。出入り口にモニターとバンテージチェックの場所があり、そこだけは皆が共有するという感じで。他の選手と接触することもなかったです」

──控室の状況もコロナ前とは違うわけですね。ワクチンが普及するまで、そのような状態が続くかもしれないです。

「続くんですかね。ワクチンも綱引きで、分からないですよね。根気勝負か、開き直るのか。でも、シンガポールにいると日本は事実上開き直っていると思いましたよ」

──人々のモラルに頼って。

「そこがなぁなぁになっていますしね。良心になぁなぁになっているから、また難しくなっている」

──コロナ談義は取り敢えず置いておき、アブデュラエフです(笑)。

「僕はカデスタムが強いと思っていたんです。元々PXCのチャンピオンで、ONEでもサッポにKO勝ちしている。ONEっぽくスタンドが上手なファイターで。縦ヒジとかも使う。マグワイアに勝ったことが意外だったから、あの勝利で凄く彼の評価は高かったんです。

そうしたら、『えっ?』と。スウェーデンって、完全に共生する選択をしてロックダウンも、自粛政策もとらなかったら、エライことになっていて。だから、彼がどういう風に練習ができていたのか。その辺の時世も関係してくるのだとは思いますけど、それにしてもワンサイドでアブデュラエフが取ってしまうのは──ちょっと分からないです。

ああいうことが今、ONEのトップ戦線は多いですね。オンラ・ンサンの負けもそうですし」

──そもそも元チャンプとダゲスタンの新鋭と戦う。なかなかシビアなカードでした。

「そう取ります? アブデュラエフはウォリアー・シリーズ上がりだから、カデスタムのアップだと僕は思っていました。彼はウォリアーでも判定勝ちだし」

──確かに代役ですし、そこまで考えいなかったかもしれないですね。

「そうですね。そうだ、代役ですよね。最初はレイモンド・マゴメダリエフが相手で。ロシアからロシアという代役で。マゴメダリエフも強い選手だったけど、その代役が取ってしまう。分からないものですよ」

──アブデュラエフはライト級でも戦えると宣言していました。

「そこは……ナカシマもそうですけど、この計量システムだと落とせると思っちゃうんですよね。でも、そんなにうまくいってない。階級を落としてもパフォーマンスがどうなのか。

尿比重の検査があると、階級の移動は難しくなるかもしれないです。要は余分に体重を落として、水を飲む。僕は逆にリミットより下だから、76キロになるまで水を飲むと、尿比重の値は本当に小さくなります。

だから食事もできているけど、食べないで水を飲んで尿比重を下げている選手は栄養素が抜けちゃっている状態だから。それが1日のリカバリーで戻るのかなって。

水抜きをした選手、実際に動けないことが多いじゃないですか。それと同じことが、ONEの計量でも起こっているかと」

──つまりは普段と同じ体重でないと──ということですか。

「僕の理屈では、そうです」

──最近思うのですが、日々の生活や練習というのもあるのですが、水抜きをして普段大きくなっている35歳以上の選手と青木選手のコンディションが違うように感じてきました。

「あのう……それはあると思います。年を取るのが遅いです。あのフェザー級に落とした経験が、凄く響いています。あの時、これをやっていると死んじゃうわって。ハードな水抜きをやると……コンディションを本当に気を付けた方が良いと思います」

──コロナ計量といえる、当日で一階級上の計量になり選手はギリギリでも取材を受けてくれる状況が多くなりました。

「あぁ、なるほど。取材する立場だからこそ、分かる話ですね。でも僕は尿比重があると基準が2つできてしまうから、なら77と尿比重よりも、尿比重なくて70.3キロだけで合わせる方が楽じゃんっていう気持ちがあります。

それは僕の減量が厳しくないからだと思います」

──青木選手だからこそ、分かる話ですね。

「まぁアブデュラエフがこのままライト級でできるかというのは分からないし、ただ簡単ではないと思っています」

──ではウェルター級では?

「もうカデスタムに勝ち、ナカシマが抜けたんだからタイトル・コンテンダーですよね。ただチャンピオンのキャムラン・アバソフもいえばロシア人、マゴメダリエフにアブデュラエフ、ロシア人だらけですよ。手塚に勝ったムラット・ラマザノフもいるし。ロシア人以外はマグワイアぐらいじゃないですか。あとはサッポと。

マッチメイクする方も、もうちょっと考えないといけないですよね(笑)。逆にいえばロシア人を一つ崩せば、日本人もウェルター級レギュラー枠になれるかもしれない。実はチャンスかもしれないですよ。タイトル・コンテンダーになるには」

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Interview Special ブログ 石井逸人 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─石井逸人✖よしずみの試合後「アホなことするな」

【写真】お茶目なトンパチだったら、良いのだが。境界線を理解することも必要だ (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2021年1月の一番──だが、先月に続き本来のピックアップされた3試合からではなく、いきなりの番外編として1月31日に行われたShooto2021#01第1部で行われた石井逸人✖よしずみ戦について語らおう。


──いきなりの番外編ということで、青木選手に石井逸人選手の勝利後の……についてお尋ねしたいと思います。

「そこ来ますか(笑)。あれ、話題になっていないし……ただ嫌やヤツになっていますよね。あんなことしても、損するだけだと思います」

──損得勘定でなく、戦った相手に勝負がついた後にあのような行為をする必要があるのかということをお伺いしたいです。

「そういう部分では、彼がアレをやる意味が分からなかったです」

──それをあなたの口からどう言えるのか……という部分で、今の青木選手にお伺いしたいです。

「やってはいけないことです。やってはいけないけど……何と言ったら良いのか、石井逸人は何を考えているのか分からない。僕のことに関しては、一つの表現としてアレがあったから今の僕があるというのは間違いなくあると思うんです。今となっては経験として、肥やしにはなっています。

でも、あの当時は色々なことの狭間に自分があって、しっかりと世間からも叩かれました。だから良い経験になった──良い経験にしたということに落ち着いてしまいますけどね」

──それは青木真也が異質であり、他にない路を進むことができているという点でそうかもしれないです。ただし、今も昔も試合が終わって、中指を立てた云々でなく対戦相手を侮辱する行為は許されるモノではないです。

「それはその通りなんです。世の中に対して、そんなモノを見せる必要もないですし」

──実際、ギリギリで戦った試合でもジェイムス・ナカシマの尊厳を無視するような行為は当然行っていません。

「ハイ、死者に鞭打つ行為はできないです。やってはいけないことだし、やる意味がないことです。中指でなくても、バカヤローって言うのも同じようなモノで。マテウス・ガムロがノーマン・パークに試合後にマイクで謝罪を求めるとか……それはしなくて良いです」

──ガムロ✖パークは虚実入り乱れるというか、試合を盛り上げるための行為とそこで戦う人間の感情が入り混じった感がありました。それは青木真也✖廣田瑞人戦も然りで。

「あれは……加藤さんとかに追い詰められ過ぎて……。毎晩のように『俺たちが行くんだ』みたいなノリで電話がかかってきて。団体間というか、色々な作用があって。あの時は終わった後とか、本当にしんどかったし。

当時の心境でいえばDREAMは絶対に戦極に負けちゃいけなかった。負けることは許されていなかったんです。僕の周囲の空気として。そういう想いが、廣田という個人でなく戦極というものに出た。そして悪いのは青木真也になった。

まぁ、やってはいけないことなんですけど、あの時は正直『悪いのは俺であって、DREAMではないんだな』っていう気持ちもありましたよ」

──悪くないわけではないです。

「そうですね。悪くないわけはないけど……だったら、ちゃんと着地させてくれよっていうのはありました」

──今となっては、あの行為が青木真也という人間の一面であっても全てではなかった。当時は、全面のように見えていましたが。

「だから本音をいえば石井逸人は怖くて触れられない。何ていうのか、ただ戦った相手ですよ。そこに勝って、唐突にあんなことをしてしまうのは……う~ん、意味が分からないです。対戦相手に何か感情的なモノがあったようにも見えなかったし。試合後とかどうでしたか?」

──「興奮しちゃいました」と反省しきりでした。長南さんにも注意されたようで。

「反省するんですよね。でも、やっちゃうから。そこなんですよね、問題は。彼には例の件があるじゃないですか。あの時に彼が言っていたことも、こういうことを繰り返すとお前の言っていたことはどうなの?ってなりますよね。

それが僕の正直な想いです。あの時は逸人が言っていたことを皆が耳に傾けていたけど、今の彼だったらあそこまで皆が真剣に意見を聞かなかったと思いますよ。

だからチョット危ないっていうのか……でもね、試合を見るとあの運動能力とか素晴らしいモノが見られて。練習でも、強いというか運動能力がある。そりゃあ、ああいう素材が地方にいると抜群に惚れ込むと思います。だから、彼に対しては皆がちゃんと言ってあげたほうが良いです。早い段階で。俺もあの後、凄く怒られましたからね」

──怒られることは必要かと思います。

「あの時は複雑で……石井逸人と違って、状況も状況で謝ることができなかった。だって僕が謝ると、DREAM勢が謝ることになるから、『謝らせるな』ということがあった。だから叱られるだけっていうのを経験して……それをさっきもいったように肥やしにできましたけどね。

だから石井逸人も選手として、あれだけの能力を持っているのだから、皆が早めに注意をして、導いてやるべきだと思います。

そんな感じかなぁ。良い素材だから、伸ばさないと。そう思っています。石井逸人と野尻定由とか楽しみだし、そこで勝った人間が田丸匠とやるとか。そんな風に国内で強くなる試合が組まれればと思います。

まぁアホなことするなというか、若さの発露なんだろうけど……反省して、また頑張ってほしいですね」

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ONE Result ONE Unbreakable ONE116 ザキムラッド・アブデュラエフ ジェイムス・ナカシマ ブログ モン・ボー リト・アディワン 川原波輝 青木真也

【ONE116】試合結果 青木真也がナカシマに一本勝ち、川原波輝はアディワンにKO負け

【写真】コロナ時代のMMAファイターを地で行った川原波輝。敗れはしたが、目標を目指せる位置に立てることになったのは絶対だ(C)ONE

22日(金・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたONE116「Unbreakable」。

セミで青木真也がジェイムス・ナカシマに激勝、9日のオファーを受けた川原波輝はリト・アディワンにKO負け、ザキムラッド・アブデュラエフというダゲスタンの恐怖が初陣を飾った同大会の試合結果は以下の通りだ。

ONE116「Unbreakable」
<キックボクシング世界バンタム級選手権試合/3分5R>
○カピタン・ペッティンディーアカデミー(タイ)2R1分56秒
KO
×アラヴェル・ラマザノフ(ロシア)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
○青木真也(日本)1R2分42秒
フェイスロック
詳細はコチラ
×ジェイムス・ナカシマ(米国)
<キック・ヘビー級/3分3R>
○ラーデ・オバチチッチ(セルビア)2R1分11秒
判定
×ブルーノ・スサノ(ポルトガル)
<<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>>
○ザキムラッド・アブデュラエフ (ロシア)1R2分08秒
ネッククランク
詳細はコチラ
×ゼバスチャン・カデスタム(スウェーデン)
<54.8キロ契約/5分3R>
○モン・ボー(中国)3R
判定
詳細はコチラ
×サマラ・サントス(ブラジル)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
○リト・アディワン(フィリピン)2R2分02秒
KO
詳細はコチラ
×川原波輝(日本)

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Interview ONE ONE Unbreakable ONE116 ジェイムス・ナカシマ ブログ 青木真也 飯村健一

【ONE116】イベント終了直後の青木真也─03─「僕には僕の理屈があって。それが出せたのが良かった」

【写真】打撃、組み技、普段から磨いてきたモノが見られたナカシマ戦の勝利──日々の表れだった(C)ONE

22日(金・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたONE116「Unbreakable」でジェイムス・ナカシマをネッククランクで一蹴した青木真也を大会終了直後にABEMA TVとMMAPLANETが共同で行った単独インタビュー最終回。

青木のなかでの達成感は、他から理解を得ることができていないかもしれない飯村健一氏と積み上げてきたムエタイだった。

<青木真也インタビューPart.02はコチラから>


──結果論として話すのに外れてしまっているので、おかしな話ですが……テイクダウン&コントロールのナカシマ相手にグラップリング用のグラップリングで培ってきた技術が生きるのかと思いました。しかし、スクランブルにすらならなかったです。そこがスクランブルMMAへの青木選手のアンチテーゼのようにも感じられました。

「う~ん、そう言われればそうですけど……。スクランブルゲームは極力したくないというのもあったし。スクランブルを仕掛けられなかった弱さがありますけどね」

──あぁ……。

「自分からいけなかった」

──と同時にナカシマにその展開に持ち込ませなかったです。スタンドでバックをとると、前方に落とされるケースも少ないなから立ったままでRNCを極めました。

「あれは岩本(健汰)選手と何回も練習してきて。岩本さんに教えつつ、教わるような。岩本選手は『青木さんに習った』と言うと思います。でも、それはチョット逆で。岩本選手に指導すると対策されて、教わっているというのがあるんです」

──ケージ側にあった右足でワンフックを取った。逆側で横に倒れて寝技というのではなくて。

「利き足が右足だというのはあります。左足を入れる時に襷にしない。ボディロックにしていて、足をフックできてからシートベルトにする。そうすれば左足はいつかは入る。そういうバック・クリンチのドリルをずってやってきていて、そこは大切にしてきたところです。そういう部分を出せて良かったです。

それでも今回は打撃の立ち姿勢が全てだったと思います。僕は他の人は違う打撃のスタイルをやっているから、直接言われることはないけど『お前、違うだろ』っていう考えの人もいると思います。それは当然、分かっています。でも、僕には僕の理屈というか、考え方があって。それがちゃんと出せたのが良かったと思いました」

──信じているからできることですよね。

「ハイ。僕は信じているし、飯村さんの影響も凄く強いです。実際にイヴォルブにいた時にナムサックノーイやアタチャイというクラスの人に触れさせてもらった。そこで『こういう理屈、こういうことができるんだ』っていうのが、やっぱりあったんです。

それがあるから、その部分を今回の試合で出せたのが良かったかなと思います」

──バック・クリンチにしても、構えにしても積んできたことが試合で出たということになりますね。青木選手はラッキーという表現を使いますが。

「勝負だから、当たるっていうことはラッキーで。やんなきゃ、それは……やっているから土俵に立てるというのはあります」

──やっていないとラッキーもないと。ところで勝負論のある試合と同時に、その後に秋山選手との対戦を考えるということは、日本を活性化……揺り起こしたいという気持ちがあるということでしょうか。

「う~ん、揺り起こしたいっていうよりも……結局、皆が一生懸命やってくれないというのはありますよね。だったら、僕には関わってくれている人がいる以上、自分のできることはやったほうが良いなぁという感じですよね。

でも、元気なうちに勝負論のあることをその前にやっておきたいです。なんか、本当にもっとタフなファイトになって、顔がボロボロになり、体が削れるというイメージでいたので……。だから、本当にラッキーだなって思っちゃいます」

──そうならないのが青木選手の試合だということですよね。

「そう言う意味ではヒクソンのようなモノを見せた試合でした。ゲームの作り方が、そうでした。25年ぐらい前のMMAを見てきた人間の発想でしたか」

──立ち方の件も含め、見る者が考える試合をしてくれたと思います。

「『立ち技が綺麗』という言う人間はいないですよ。今はMMAで強くなる王道スタイルのようなモノが確立されていますが、川原波輝選手の試合とか余計にそう思っちゃいました」

──どういうことでしょうか。

「ああいう形の打撃戦になってしまうんだなって。もっと、武器がある選手だし。メチャクチャ上手だと思うんですよ。それでも右のストレートも当ていたし、KO勝ちもできる試合でした。だから、もうちょっとやりようがあったかとは思います」

──力を発揮したとは言い難い試合でした。結果が出てしまったことなので、言ってもしょうがないことになりますが。

「でも、川原選手はもっと強いですよね」

──もっと強いはずです。

「上手くやろうとしているのか。もっとファイトすれば良いのに。僕らはどうしても外見に騙されちゃうけど、凄く真面目な人じゃないですか。う~ん、もっとやりようがあったのに……」

──そこは川原選手がいかに軌道修正していくのか、ですね。しかし青木選手、今回は本当に良いモノを見せてもらいました。感謝しています。

「こちらこそ、元日からありがとうございました。これから、旧正月だと思ってください(笑)」

■ONE Unbreakable II視聴方法(予定)
1月29日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE Super App

■ONE Unbreakable II対戦カード

<ヘビー級(※120.2キロ) 5分3R>
マウロ・チリリ(イタリア)
アブドゥルバシール・ヴァガボフ(ロシア)

<ヘビー級(※120.2キロ) 5分3R>
アラン・ンガラニ(香港)
ウマウ・ケニ(セネガル)

■ONE Unbreakable III視聴方法(予定)
2月5日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE Super App

■ONE Unbreakable III対戦カード

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
佐藤将光(日本)
ファブリシオ・アンドラジ(ブラジル)

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Bu et Sports de combat Interview ONE116 ジェイムス・ナカシマ ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手 青木真也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。青木真也✖ナカシマ「武術的には突きの選手」

【写真】武術的な観点に立つと、青木のパンチは組みと融合することで質量が非常に高く間を制することができる。それでも青木が言う『ラッキー』の意味とは(C)ONE

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──ONE113における青木真也✖ジェイムス・ナカシマとは?!


──青木選手が見事にネッククランクで勝利をしたのですが、スタンドでバックを取る前に両ワキを差せた。その組みに行くまでのスタンドの攻防をどのように見られましたか。

「青木選手がムエタイ志向であることは、私も承知しています。そして最初の構えが非常に落ち着いて、よく見えていたと思います。ムエタイの蹴りは私が分かるとは言えないのですが、蹴って終わりにしなかったことが良かったのではないでしょうか」

──それはどういうことでしょうか。

「右のミドル自体は、状態は崩れているといっても良い蹴りです。ただし、青木選手は組まれてから強いから構わない。あの蹴りをグラップリングが弱い人は使ってはいけないかと。あれで相手が入ってきても、組めば自分のフィールドですから。そこまで考えて使っているのだと思いました。特に青木選手はテイクダウンとトップが強いだけでなく、下もできますからね。

MMAを見ていて下が強いって凄いなって、シミジミと感じるようになったんです。とにかく単純な算数としてナカシマの質量に対して、青木選手の質量が優っていました。その大きな要因は突きからのシングルですね」

──フィニッシュに結びついたのは、ナカシマの左をかわしてからの組みでした。そして、その前に右フックを当てていますが、シングルは取りに行っていませんが……。

「ハイ。開始30秒ぐらい、蹴りの後に見せた右。あそこは武術空手の理がMMAで生きるという部分に非常に似ていました。最初にシングルに行った時、サウスポーの構えから、右足で踏み込んで右のパンチを出し、左手で左足を触りに行っています。つまり右の追い突きになっていたんです。

青木選手本人はそう思っていないでしょうが、武術的に見ると青木選手は突きの選手です。パンチではなく、突きです。重心が突きなので、蹴りから突きはできない。ただし、フルコンタクト空手はその重心で蹴りが出せるのが特徴です。

オランダのキックボクサーは、極真の影響を受けて始まったこともあり、突きの重心で蹴りが出せ、蹴りの重心で突きが出せる。そこが米国のストライカーとの違いですね。米国のストライカーは蹴りとパンチにギアチェンジが必要で、タイムラグがある。なかったのはTJ・ディラショーでした」

──そうなると青木選手の突きと組みは、タイムラグがないわけですか。

「ハイ。非常に組みと突きの相性が良いです。青木選手が追い突きを意識することはないでしょう。でも、この追い突きはダメージを与えるということではなく、試合を進めるうえでとても有効でした。完全に入ることができていました。

組みから離れた後に右フックを当てました。間が青木選手だったんです。あの時ナカシマは右足を触られると思っていたのではないでしょうか。青木選手は殴って組む、組もうとして殴るという2つのパンチを出すことができます。

その後、組んでから両差しも完全に青木選手の間であり、質量も青木選手の方が高いままでした。ナカシマがもっとガムシャラに打撃を出して、どんどん組んでいけばまた流れも変わり、あのように落ち着いついていられなくなったかもしれなかった。でも、ナカシマはずっと青木選手を落ち着かせたまま戦っていました」

──青木選手は、ナカシマは10月30日のタイトル戦に負けた試合の影響もあるだろうと言っていました。

「そういう分析力が青木選手にはあるかと思います。自分の試合を他人のことのように分析できるのでしょうね」

──ただし青木選手は右フックが当たったことをラッキーだと言い続けています。

「青木選手のなかで右フックが当たったことは法則性がない。だからラッキーだと考えているのだと思います。理(ことわり)があることを法則性と言います」

──青木選手は技術を語る時に、理という言葉を良く使っています。理があるから信頼があるという風に。

「本当にそうなのでしょう。青木選手は左ストレートも良いモノを持っています。例えば……ベン・アスクレンを倒せるような左の持ち主です。でも、その左ストレートも信じていない。信頼していない。

ベン・アスクレン戦の左ストレートやナカシマ戦の右フックが、猛ラッシュをかけてきたクリスチャン・リーに当たっていたら絶対に倒せています。でも、青木選手自身がそう思っていないだろうから、そこは栓無きことで。

あれだけ組みが強い選手だから、勝負の軸を崩すことはできないでしょうし、そうすることもない。ナカシマ戦の右フックは青木選手のなかでは理……法則性がないモノだから再現できない。結果ラッキーだったことになる。逆にバックに回ってしまえば、完全に法則性があるから、一連の動きはいくらでも再現できる。理があるんです。でもあんな強さ、他の選手に見たことないですよ(笑)。それが青木選手の形(かたち)で、あんな風に勝てる人は地球上にそうそういないということです」

──なるほどぉ。

「それと格闘技とは自分が全面に出る。自己顕示欲のぶつかり合いです。でも、青木選手がマイクで話したこと。人への感謝の気持ち、喜んでほしいから戦うという感情、利他(りた)──他を利する。他人の幸福を願うようになる。自分だけ楽しくてもしょうがない。自分だけ凄くでもしょうがないという風になれる。

きっと他を圧倒するグラップリング力があり、孤独だったと思います。誰にも負けない、達人だっていうのは20代なら悦に入れるかもしれないけど、それだけでは決して幸せな人生にならない。そういうことも気付いているのでしょうね」

──自分だけ凄くて、他が笑っていないって怖いですよね……考えると。

「その通りです。それは本当に不幸です。そこに気付いた──苦労がそれだけあったのでしょうね」

──その青木選手がムエタイを追求していて、武術空手の要素が突きと組むという部分にあった。非常に興味深い話でした。

「ムエタイを追求している青木選手も、武術空手を追求する我々も頭があって胴体から手が2本、足が2本出ている人間です。そのなかでやることですから、ムエタイ、空手、キックといっても違いはそれほどでない。

そのなかで武術空手と格闘技の違いは……格闘技って人によって意見が違うものですよね。一つの攻防に関しては、考え方は三者三様です。そして、どれか合うモノを採り入れれば良くて。でも型は全員が同じことをするモノなんです。ちゃんと折らないと紙飛行機は飛びません。誰が折っても、正しい順序を踏んでいれば折り鶴は美しい──それが型、理(ことわり)です。

そこには再現性、普遍性。客観性がある。いつ何時、誰がやっても同じ事象が起こる。試合でやることは、型を形にしないといけないということなんです。そして、バックからあのように勝てる、それが青木選手の形なんです。青木真也の形が発芽した。そういう花が咲いた試合ということではないでしょうか」

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Interview ONE ONE Unbreakable ONE116 ジェイムス・ナカシマ ブログ 青木真也

【ONE116】イベント終了直後の青木真也─02─「俺はもう頑張れない」&「頑張る理由がないんだもん」

【写真】青木真也は辞める理由を見つけるのではなく、戦い続けるための理由を創り続けている(C)ONE

22日(金・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたONE116「Unbreakable」でジェイムス・ナカシマをネッククランクで一蹴した青木真也を──ABEMA TVとMMAPLANETが共同&単独インタビュー第2弾。

前回の立ち技の攻防から、話題は『下がれない環境を創って、試合に挑む』という試合の臨む尋常でない背景を青木が語った。

<青木真也インタビューPart.01はコチラから>


──両ワキを差してバックに回りました。

「多分、さっき言ったように右が効いていたんだと思います」

──ナカシマから受けのプレッシャーはなかったですか。

「なかったですね。きっと前の試合でTKO負けしていて、あの試合が大きいんだと僕は思います。岡見選手との試合を見ていると、もっともっと来る選手のはずなので。あの前戦でリズムを崩したんじゃないかと」

──10月30日にキャムラン・アバソフとヒザからパウンドを受けてTKO負けですしね。

「あの試合の影響はあると思います」

──それはあったとしても完璧な一本勝ちでした。ところで今回の試合も青木選手はやるだけやれば勝敗はついてくるものという発言をしていますが、実は青木選手ほど負けられない試合、負けると失うモノが多い状態で試合をしている選手は国内にいないと思います。

「確かにそうかもしれないですねぇ」

──論客というポジションも、選手であるうちは勝っていないと説得力はなくなる。そしてABEMAではMMAを数字で引っ張らないといけない。そのために積み上げてきたもの、これからやっていくことが敗北で崩れてしまう。この状況で、よくあの勝ち方ができたと感心しました。

「それで言うと……普通じゃ頑張れなくなっていると思うんですよ。普通じゃ、俺はもう頑張れないんです。色々な人を巻き込んで下がれない理由を創らないと、下がっちゃうと思います──正直(苦笑)。

ここまで試合前のプロモーションを含めて、色々と付き合って頑張らせてもらったこともあるし。ホント、DDTのレスラーの皆さんにも協力してもらっているから僕、下がれないんですよ。

勝ち負け……何だろうな、負けても意地を見せることができなかったら。寝ました、ゴロンって倒されましたってことをやったら、ちょっとなぁっていうことを想っちゃうから。意地──なんか下がれないような状況を創らないと頑張れないのかもしれないです」

──格闘技が好きなだけなら、練習して、指導をしていうことだけでも続けることはできます。

「ですよね。それは皆が続けることができる(笑)」

──けれども引き下がれない状況を創ってまで勝負へ挑むのですね。

「もう無理ですね。そういうことをしないと、頑張れないです。例えば意地悪な言い方になってしまいますけど、修斗で1試合──休憩前にただ試合をするっていうんだったら頑張れないと思います」

──人を巻き込んで、その人たちのためにも勝つという気持ちがあるのは、自分のためだけに戦うよりも粘ることができると個人的に思っています。だから、青木真也は強さをキープできているのかと。

「ホント、もう頑張れないと思います。頑張る理由がないんだもん、正直言うと。2003年から試合をやってきて、55戦、56戦目とかですよね。『取りあえずベルトも獲って、防衛とかもして。地上波にも出て──もう良いじゃない、あんた』って若い子は思っちゃいますよね。

回りが『もう良いじゃん』って思っていると僕も流されちゃうから、頑張れるために人を巻き込んで担がれないと頑張れない」

──神輿に乗せてくれる人がいるから、頑張ることができる?

「ハイ。若い子たちはそういう意味では凄いですよ。自分を認めさせたいとか、そういうことで頑張れる。僕もそれでやって来たけど、いつしか……それだとしんどくなりますからね」

──そこが青木選手は団体と一緒に何かを創っていくという風に人を巻き込んでいました。ONEともABEMAの中継が始まり、日本大会が始まる時にそのように創ってきました。今回はそうではなく青木選手個人の物語という体でしたが、大会前のシンガポール本隊の青木選手の試合のプッシュは相当なモノに感じました。この経験を経て青木選手個人のストーリーとONEの日本での活動がリンクしてくることはあるでしょうか。

「言うたら4回とかチャンピオンシップで勝ってきたので、『俺たちのチャンピオンだ』という風に想ってくれているのは感じました。10年、やってきましたからね。それだけの想い入れを持ってくれていることは、凄く有難いと思います」

──それは日本にいる時よりもシンガポールでより感じられた部分でしょうか。

「まぁ来たら、来たで人当りは皆良いから。良くしてくれるし。必要としてくれたら頑張ります。ただ無理にやっていこうという意識はそれほどないです」

──北岡選手がABEMAの解説で、この相手にこの勝ち方ができる青木真也を日本で格闘技を生業にしている人間は無視するなというようなことを言っていました。

「難しいこと言いますね(笑)。真っ直ぐですよね。そこでいうと僕は思ったことを言い続けます。正しいと思ったことを言うし、僕は頑張っている。ただし、それを認めてほしいとはあまり思っていないかな」

──では共同会見で秋山選手の名前を対戦相手候補として挙げていました。あれは国内を揺り起こす方向へ発言かと捉えたのですが。

「日本でやるなら、そういうことをしないとダメじゃないですか。でも、今は秋山じゃないです。正直な話をすると。だからといってクリスチャンとやりたいというのは正直ない。1回やっているし。あの試合は僕の中で割と大きくバトンタッチをしたという要素もあるから。だから1、2回、勝負論のある試合をできるうちにさせてもらったら良いかな。秋山はその後で」

──タイトルは目指さないですが、ナカシマ戦のようなONEのなかで負けたら終わりという勝負論のある試合を望むと。

「タイトルとか全然思っていないから。でも、下りたくない。いつだってレジェンド枠というか、わちゃわちゃイージーなファイトに切り替えて見せるのは、別に苦手じゃないからできるとは思っています。でも、もうちょっとやっておかないと。できるうちにやっておくと、良い厚みがつくからやっておきたいです」

<この項、続く>

■ONE Unbreakable II視聴方法(予定)
1月29日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE Super App

■ONE Unbreakable II対戦カード

<ヘビー級(※120.2キロ) 5分3R>
マウロ・チリリ(イタリア)
アブドゥルバシール・ヴァガボフ(ロシア)

<ヘビー級(※120.2キロ) 5分3R>
アラン・ンガラニ(香港)
ウマウ・ケニ(セネガル)

■ONE Unbreakable III視聴方法(予定)
2月5日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE Super App

■ONE Unbreakable III対戦カード

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
佐藤将光(日本)
ファブリシオ・アンドラジ(ブラジル)

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