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ACA Brave CF Interview LFA ONE Special UFC ブログ 平良達郎 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その弐─平良達郎✖前田吉朗─02─「完全に通行手形じゃん?」

【写真】平良を例に、日本人選手がUFCで戦うためのキャリアップ方法を模索 (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

引き続き2021年3月の一番、第ニ弾は20日に行われたShooto2021#02から平良達郎✖前田吉朗──日本人選手の育成環境──について語らおう。

<青木真也が語る平良達郎✖前田吉朗Part.01はコチラから>


──修斗、パンクラス、DEEPの段階である程度以上の国際戦ができていた。コロナ後に、そのようなJ-MMAとなれるのか。そうならないのであるなら、端的な表現をするとUFCで勝てる選手をどのように育てるのか。

「もう招聘できなくなっていますからね。だから元UFCとかではなくて韓国、グアム、フィリピンから強くなるための対戦相手を呼ぶことができるのか」

──若い選手が世界と戦える力をつけるために韓国、グアム、フィリピンから将来のUFCファイター、ONEアスリートになるような素材を招聘して、切磋琢磨できる環境を創る。その通りですね。日本で世代越えをしても、それが力の立証にはならないようになっていますし。

「今、後楽園ホールの大会で出てきてくれる上の世代は、言い方は悪いですけどピークを過ぎている。なのでキャリアアップが難しい。

矢地(祐介)選手とか田中(路教)選手って、割と早い段階にPXCに行きましたよね。当時は裏口入学的なメジャーの狙い方でしたが、そういうキャリアアップの仕方というのがあったと思うんです」

──あぁ、私は先見の明があると思いました。海外のフィーダーショー、そして日本で戦えない相手と戦ういう点のおいて。

「ハイ。日本で見られた旧来の手順とは違う。海外の大会でベルトを巻いてUFCを狙っていました。そして田中選手はラッセル・ドーンに勝って、矢地選手はアレックス・ヴォルカノフスキーと戦っている」

──両選手とも後のUFCファイター、ヴォルカノフスキーに至っては元フェザー級世界王者です。

「そういう選手たちとPXCで戦っていた。海外の大会からUFCへというのをやったのが田中選手と矢地選手で。彼らが走りだったと思います。今、海外のフィーダーショーで試合をするというのはコロナで難しいですけど、往来ができるようになれば、そこはしっかりと見ておく必要があるかと思います」

──それが現状の平良選手にも当てはまると、青木選手は考えていますか。

「ハイ。修斗のチャンピオンになった時点で、UFCから声が掛かれば──現状の力云々でなく行くべきです。ただし、そうでないなら、海外で結果を残すことが必要かと思います。海外を経験する、外国人選手と戦っておくという以上に、現状ではUFCは日本国内を評価していないわけじゃないですか」

──ハイ。コロナ禍でも韓国人選手や中国人選手の新しい契約は進んでいますが、日本人選手は村田夏南子選手だけで。村田選手はInvicta FCで結果を残し、コロナ以前からリストに入っていました。

「日本で戦っていても、評価はされない。ここですね、僕が強く思うところは。日本人選手が評価されていないから、日本人選手に勝っても次に繋がらない。僕らの頃のように繋がっていれば、海外に行ったり、外国人選手に勝つことに拘る必要はないわけで」

──車のレースだと、F1を頂点にF2、F3というステップアップカテゴリーが存在し、F3は日本にも選手権があります。

「……」

──ただ日本のF3で結果を残しても、ステップアップ先は欧州のF2ではなく、もう一度欧州でF3のシリーズに参戦することになります。日本のF3王座は欧州のF3へ行くため。つまり、同じ土俵で戦うために日本でF3を戦います。

「あぁ、つまり日本のレースは本場では評価の遡上にならないのですね。う~ん、MMAでいっても評価されない──評価基準になる選手がいないということですしね。そんななかで海外に出て勝負しているのが韓国人だと思います。

UAEウォリアーズやBRAVE CFという今も国際戦が組まれている中東の大会に彼らは出て行っていますからね」

──PFLも韓国人選手が出場します。それは韓国にはRIZINのような規模の大会がないことも関係していると思います。

「そうですね。国内にメジャーがない。ROAD FCの調子が良かった時は、多くの選手がROAD FCを目指していたと思うんです。中東に行かなくて」

──UFCでないゴールがありました。

「今は韓国にはそこがない。だから、彼らは海外に出て行っている」

──平良選手もまずは修斗のベルトと考えているでしょうが、その先の青写真はしっかりと描く必要があるということですね。

「修斗って、特別なベルト、歴史がある。これは特別だという見せ方がありました。でも今ではどこかに行くためのベルトじゃないですか。

『お前が言うなよ』と指摘されることは承知のうえで、だったら最初から通行手形だって言えば良いのにって思います」

──その通りですね。同時に修斗も戦うという姿勢を持っているのは、ストロー級王者の箕輪ひろば選手だけだと思います。他のチャンピオンはONEやRIZINで戦い、ベルトは返上という選択をしていますし。

「なら、完全に通行手形じゃん? もう通行手形だって言えば良いのに。いつまでがプレミアムなベルトだったのかって。だから今の選手は自分の見ている先を考えると、そこまでベルトに拘る必要があるのかと」

現在開催されているBRAVE CFフライ級王座決定トーナメントに参戦中のアリ・バガウディノフ(C)BRAVE CF

──一応ONEは王者になれば、契約という話がありました。そしてUFCは通行手形になっていない。

「だから僕なんかは、ベルトに拘る必要なく田中選手がPXCに行ったような選択を修斗で戦っている選手も選択して良いと思います。今の感じだと」

ACAフライ級王者はHEATに来日経験のあるアザマット・カレフォフ(C)ACA

──例えばBRAVE CFだとフライ級にはアリ・バガウティノフ、ホゼ・トーレス、ダスティン・オーティズというUFCベテラン、そしてムハマド・モカエフのようなダイヤの原石がいます。

王者→UFCもしくはBellatorというレールが最も明白なLFAのフライ級王者はヴィクター・アルタミラノだ(C)LFA

「ハイ、BRAVE CFのフライ級はレベルが高いです。バガフティノフに勝ったのは誰だといえば、堀口選手になるわけで。そういう話なんですよね。

それか評価の遡上に確実になっているロシア、ACAへ行くとか。田中選手みたいにLFAを選ぶとか。勝って、そこからUFCへ行く──そういうことを考える時代だと思います」

──それが日本の現状だと。

「良い、悪いではなくて、結果としてどこもが内向きになっています。内向きになるのは商売のことを考えると、悪くはないです。でも同時にリスクもある。尻つぼみにはなっていくんです。そこはバランスで、内向きになりつつ外もある程度見ておかないと、選手も頑張れなくなるかも──と僕は思います」

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J-CAGE Special ブログ 前田吉朗 平良達郎 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その弐─平良達郎✖前田吉朗「恐ろしいモノを見た気が──」

【写真】平良がケージで見せた恐ろしいまでの強さ。その強さを北米と比較するための物差しが今のJ-MMAはない(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年3月の一番、第ニ弾は20日に行われたShooto2021#02から平良達郎✖前田吉朗について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年3月の一番、2試合目をお願いします。

「平良達郎選手と前田吉朗選手の試合ですね。平良選手はまず体がデカいです」

──大きかったです。本来はフライ級ですが、当日計量でバンタム級というコロナ禍ウェイトでの試合でした。

「ということは前日計量で、リカバリーをしたらもっと大きくなる可能性もあるっていうことですよね。前日計量で56.7キロだったら、下手すると当日は64とか65キロぐらいになるかもしれない。

1階級上でもリカバリーがないことを考えると、当日計量の方がちょっと小さいんじゃないかって思います」

──いわゆるONE階級なのですが、ONEは前日に計量とハイドレーションが終わります。現実的にリカバリーがあるので、現状の日本の当日計量は海外のどこにも当てはまらない計量方式です。ハイドレーション・チェックもないですし。

「平良選手は『半身浴して1キロぐらい落として計量に行った』ってnoteに書いてあったんです」

──えっ? 免疫力の低下を避けるために水抜き減量はせずに1階級上というのが前提だったかと。

「そうなんですよ、当日でも水抜きしてんじゃんって(笑)。だから当日計量でも2キロとかなら水抜きしていく選手は、今後も出てくるでしょうね」

──なるほど、修斗は次回の5月大会から前日計量に戻すそうですが、パンクラスの5月大会はどうなるのか。

「こうなると計量に関しては、前提が変わっていますよね。それに、前日計量に戻すとまた失敗する人間が出てくるだろうし」

──それこそ通常ということですね。ところで平良選手のパフォーマンスは、どのように感じられましたか。

「恐ろしいモノを見た気がしました。当たり前のことを当たり前にやる凄さ。結局、格闘技って当たり前のことを当たり前にやって勝つことが一番強いし、大切だと思うんです」

──それを攻撃だけで、攻防がなくやり切っていました。

「つまり凄く基本的なことを全部やっていることになります。パンチを当てて、蹴って、クリンチしてバックを取る──みたいな。それが基本通り出来ている強さを凄く感じましたね」

──UFCを熱望する平良選手ですが、前田選手に見せたあの強さを海外勢にも同じように見せることができるのか。なかなか今の日本で戦っていると、計れない部分があります。青木選手がUFCへ行こうと考えていた時期は、国際戦というのは……。

「僕、キース・ウィスニエフスキーぐらいでした。菊池(昭)選手に勝って修斗の世界チャンピオンにはなっていたのですが」

──その菊池選手がジェイク・シールズに勝っていたのですね。

「ハイ。まぁUFCも時代が違っていましたけど、当時の修斗のベルトは通行手形にはなっていましたよね。実際に、僕自身もできるんじゃないかって思っていましたし。それに世界的に見ても、UFCがまだ断トツの一番とかじゃなくて、カウンターカルチャーとしていくのが面白いと思っていました。

2回ぐらいトントンって勝てば世界に挑戦できるんじゃないかって。結局、僕はUFCに行かなかったけど、DREAMの時とかに北米との物差しになる相手とは、結構やっているんですよね」

──エディ・アルバレス、ギルバート・メレンデスを筆頭に修斗ではUFCに行く前のジョージ・ソティロポロス、DREAMでWEC王者だったロブ・マックロー、今やAJ・マッキーの父という肩書のアントニオ・マッキー戦は、体温が上がりました(笑)。

「マーカス・アウレリオ、リッチ・クレメンティ、ライル・ビアボーム、ONEでもカマル・シャロルスと戦わせてもらいました。

今はこれだけ世界中でレベルが上がってしまったMMAなので、平良選手がどれだけできるのかって分からないですよね……正直」

──物差しになる海外勢との戦いが、それでなくても少なくなったのがコロナ禍では、いよいよ望めない状況です。

「そういう意味では、僕らの頃は日本で戦っていてもUFCでやれるという手応えを感じることができる試合ができました」

──ハイ、だから『UFCに行かないのか』という声が聞かれたわけで。『UFCに行ってほしい』とか『行かせてあげたい』ではなかったですよね。

「今の子たちは、それができない。そして、当時と今が違うのは、あの頃は軽量級は日本がリードするぐらいの状況だった。UFCである程度活躍した選手を招聘しても、前は勝てました。でも、今それが可能になったとしても、ライト級とか誰も歯が立たない。

ジェニー・ケースとか、本来は階級が下のディエゴ・ブランダォンに勝てないのが現実です」

──ばかりか、今は世界中のどこでも強い選手が生まれています。

「だから世界との実力差とか踏まえると、選手を育てていく環境なんか……危うくなっています」

<この項、続く>

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Interview Special アルジャメイン・ステーリング ピョートル・ヤン ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その壱─ステーリング✖ヤン「片ヒザをついてのシングル」

【写真】独特のシングル、そこにいくまでの打撃の組み立て方に工夫が見られたステーリング。反則で王座を失ったピョートル・ヤンはこれまで見たことがない攻撃と防御を駆使して戦っていた (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年3月の一番、第一弾は3月6日に行われたUFC259 からUFC世界バンタム級選手権試合=アルジャメイン・ステーリング✖ピョートル・ヤン戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年3月の一番、最初の試合をお願いします。

「ハイ、アルジャメイン・ステーリング×ピョートル・ヤンですね。この試合は『アルジャメインがある』って言っていたじゃないですか。で、結果的にアルジャメインだったと(笑)」

──本当に結果的に……でした。

「ただアルジャメインって、ヒザをついた状態からシングルレッグに入るじゃないですか、アレは盲点をついていて面白いと感じました。あの組み方を多用していると、相手は戦い辛いですよね。北米ルールだと、ヒザをキャンバスについている選手にヒザも蹴りも入れることができないから。

水垣さんも、あのヒザつきから組まれたんですけど、アレを身に着けることができれば強力な武器になると思ったんです」

──それは北米ルールならということですよね。

「ハイ。北米ルールだと凄く有効な策だと思います。日本国内では北米ルールを視野に入れている選手が、極端に少なくなっているかもしれないですけど」

──アルジャメインのようにそこから先があれば大丈夫ですが、それがないと打撃戦を避けているという風にとられないでしょうか。

「今のMMA、格闘競技でいうとそうなります。それでも凄く有効なテクニックだし、そこにいくまでもアルジャメインは組み立ても工夫している。そのための打撃も凄く良かったし。

まぁピョートル・ヤンの方が強いとは思うんだけど、その工夫が見られて良かったです」

──反則負けになってしまったのですが、ピョートル・ヤンの方が完全に盛り返していました。

「ピョートル・ヤンは完全に顔を覆う防御が興味深かったです。あれにはムエタイの影響が強いし、まだ倒されてないという強さが出ている戦い方だと思います。

そのうえで大外刈りを決めて。ロシアン・レスリングというか、ロシアン柔道というか……民族格闘技の集合体がサンボというのに通じていて、組み技の集合体を見せていますね」

──そのうえで2人とも妙なリズムの試合だったように感じました。ステーリングにしても、積極的な攻めは序盤に限られ、ピョートル・ヤンは戦い方自体がまるで変わってしまっていました。

「ピョートル・ヤンは練習環境が変わったというのも関係しているかもしれないですね。アルジャメインも5Rということがあったでしょうね。でも、僕はあのぐらいの試合で十分に満足できました。

ピョートル・ヤンのロシアっぽさと、アルジャメインの米国レスリングらしさが見られて。今、UFCでも世界戦で注目されても……アデサニャ×ブラボビッチがそうだったように、試合内容では引っ張ることができていないですよね」

──確かにその通りです。試合自体もペース配分が目立ちます。

「ハイ、だからMMA世界一を決めるっていう盛り上がりは試合内容からは感じられない。疲れないことが前提になっていると、ボクシングっぽいですよ。退屈になっていってしまうからこそ、ルールの改正はあるかもしれないです」

──それにしても青木選手が着眼するのは、他がやらない技術、青木選手も使っていない技術ということでしょうか。

「まさにアルジャメインのヒザをついてからシングルレッグは、そうですね。ONEルールだと、グラウンドでのヒザが認められているので──無理ですよね。向いていない。じゃあONEのルールだと何が向いているのかっていうことは考えています」

──MMAはここまで進化して、ルールに則して勝つ必要がある状態ですし、北米ルール、ONEルール、リング使用かケージ使用、そしてサッカーボール有りなど、MMAという一言では済まされない。そのルールに特化した勝ち方、技術体系ができてきていると思うのですか。

「もう別物です。立ち技だとK-1ルールが、独立したように。ムエタイとK-1は別物で。だからMMAも北米ルール、ONEルールという風に違ったモノになるかと思います。サッカーボールキックの有無もそうだし、ブレイクのタイミング、スクランブルの評価も含めて戦い方も違ってきますしね。RIZINのように背中をつけて良いなら、理屈では引き込んでも良いということですよね」

──それはONEにも当てはまるのではないでしょうか。テイクダウンを重視しないのであれば、引き込みをマイナス評価するべきでないと。

「だからこそ、引き込むという策もありで。ただし、実は一旦下になってすぐに起き上るというのはレスリング、それは北米MMAですよね。だから、そのような理屈の攻撃をガードポジションをとるのではなく、片ヒザをついた状態から組んでいっているアルジャメインが、発想として面白かったです。王道の勝ち方は存在しますが、それだけでない。だからこそ研究の余地が残っている」

──このルールの間を行き来できる選手と、そうでない選手が出てきそうです。

「行き来できない人間はいますね。僕はどっちに向いているというのもない。どっちにしてもない、技術体系なので。性格的にも何が向いていて、何が向いていないのかを見るのは得意なので。それをいじって分析したいですね」

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ABEMA GONG KAKUTOGI Interview J-CAGE ONE ブログ 平田樹 青木真也

【ONE】3月23日(火)発売GONG#313から。青木真也✖平田樹、番外編。青木が3月11日を語る……

【写真】ライル・ビアホーム戦は東日本大震災から1カ月もしないうちに行われ、青木真也は米国の記者に震災について尋ねられ──思いもしない返答をした (C)MMAPLANET

青木真也が、平田樹に格闘技、MMAとは何か熱弁を振るった。題して青木塾、開校。そんな両者にとって初めてのロング対談の模様を3月23日(火)発売のGONG格闘技ではABEMAとタッグを組み、共同取材を行った。

スペースの都合上、泣く泣くカットした──青木真也と北岡悟が、どれほどだったか理解できるエピソードをここで紹介したい。

あの日の練習──青木真也が2011年3月11日を振り返った。


――今日は3月11日ということで……本当に久々に思い出したのですが、青木選手が東日本大震災から1カ月も経っていない4月9日にサンディエゴで試合をしました。

青木 はい。ライル・ビアホーム戦でした。

――あの時は川尻達也選手と髙谷裕之選手も出場Strikeforceのビッグショーで。ギルバート・メレンデスと戦う川尻選手と、青木選手が現地の記者の取材を受けたんです。川尻選手は茨城だったから、その時の大変な状況を話して『みんなに勇気を』という話をして。

平田 ハイ。

──至極真っ当ですよね。その時に青木選手は「関係ないよ。地震で親が死のうが、別にオレは試合するよ。勝てば良いんだろ」って。

青木 ハハハハハ。

――米国のメディアは皆が取材の後で「アイツは頭がおかしいんじゃないか?」と私に話しかけてきて。こういう青木選手のメンタルをどう思いますか。

平田 変わっているなぁって……。

一同 爆笑

青木 でもね、3月11日は練習していたもん。地震が起こった時に八隅さんのところで。

平田 私はまだ小学生でした。ちょうど休みだったか何かで。自分とお母さん、お母さんのお姉さんとで大阪に行っていたんです。だから、あまり地震を体験していないんです。東京に戻れなくなったなぁって言っている時に、津波の映像が流れてきて……。

青木 僕は練習していてさ。第一波の時にすごく揺れて。「何だよ」って思いながらバックを取っていたの。で、北岡は横で誰かをガブッていたの。揺れても、誰も外に出ようとしない(苦笑)。すっごく揺れていたのに。

――当時のロータスは、私の自宅に今より近いので、どれだけ揺れたかは想像がつきます。家の庭とコンクリの部分が何かの遊戯マシーンと思えるほど、ズレて揺れ続けていましたから。

青木 僕らは「ヤバいんじゃない? でも良いか」と思ってスパーしていたら、宇野薫はやっぱりまともで。宇野さんが「やめて、すぐに出ろ!」って叫んで。それで何人か外に出たんですよ。それでも北岡はまだガブっていて、オレはバックについていて(笑)。で、「お前ら出ろ!」って宇野さんが怒ったんですよ。宇野さんが絶叫したのは、あの時だけ。

――不謹慎かもしれないですが、良い話です。

青木 揺れが収まってから、もう1回練習していたんですよ。やっていて、余震が来てもう「打ち止め、まぁしょうがないか」って感じで終わった。それだけ、変わらず練習していたんですよ。あの時のメンバーは、10年経ってもまだやっているから。

平田 ……。

青木 それぐらい、みんな好きだったんですよ。

――あの揺れは本当に凄かったですけどね。

青木 僕たちは本当に……次の日は、僕と北岡さんだけだったかな。2人だけで練習して。狂っていましたね。あっ、あともう1人いたけど、誰かは思い出せない。地震の翌日も練習していて、物がないのよ。水がないとか。コンビニに何も売っていなくて。

そうしたら北岡さんは、麦茶でプロテインを割って飲んでいて。「水が売ってねぇよ!」ってキレていましたけど、「いや、プロテインを飲まなくてもいいだろ」みたいな話をしていた記憶があります(笑)。それだけブレていなかったと思います。

――いや、ブレていないですね。でも人としてはどうかなということですけど。「親が死んでも戦って勝つんだよ」って平田さんは言えますか。

平田 ……、いやぁ。

青木 でも僕、それは思っていますよ。いまだに。この仕事は親の死に目に会えない仕事だと思ってやっている。僕、祖母がDREAMのマッハ戦の前に亡くなったんですよ。「どうするの? 帰ってくる?」と聞かれても「帰るわけないでしょ」って。ウチの親もそう思っている。「帰らないよね」って。そんな感じのテンションでいるので。

――その想いはあっても、地震で日本のことを心配してくれている記者に対して、わざわざああいうことを言うかなとは正直感じました。

青木 僕が逆にビビッたのは、「じゃあ僕に何を求めているのかな?」って。「試合しないで帰ります」と言ったら困るだろって(笑)。

――川尻選手は「被災者の皆のために戦う」と言っていて、凄く対照的だったんですよね。

青木 僕は「みんなのために戦う」って思ったことがないんですよね。自分のために、自分が好きだからやりたいので。何もないんですよ。だから、そんなにのめり込まないほうがいいよ。好きになっちゃうと、困っちゃうから。

※距離、バック奪取から襷掛けの是非、首投げと袈裟固め、試合に向けての気持ちの作り方と追い込み、プロとしての境遇と立場、セージ・ノースカット戦、平田樹が強くなる──などなど、90分に渡るインタビューの要点は23日(火)発売のGONG格闘技でお楽しみください。

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ABEMA GONG KAKUTOGI Interview ONE ブログ 平田樹 青木真也

【ONE】3月23日(火)発売GONG#313から。「俺は世界って言わない」青木塾、開校。受講者は平田樹

【写真】Road to ONE04メインで戦った平田に声を掛ける青木。意外にもロング対談は初めてとのこと (C)MMAPLANET

青木真也が、平田樹に格闘技、MMAとは何か熱弁を振るった。題して青木塾、開校。そんな両者にとって初めてのロング対談の模様を3月23日(火)発売のGONG格闘技ではABEMAとタッグを組み、共同取材を行った。

日本格闘技界の未来に対し、苦言、奨励の声を掛けた青木。ここでは本誌内に掲載しきれなかった「選手とは格闘技の話をしない」という青木が世界と言わなくなった理由、2005年のADCC挑戦や平田と同じようなキャリアの頃を振り返った言葉を紹介したい。


青木 だからね、やっぱりどんどん格闘技の話をしなくなっていくの。これはもう本当に。北岡さんとか、八隅さんとか、本当に格闘技が好きな人間とは「こうなっていて、こうなんだぁ」みたいなものを喋っているけど、他の選手とはどんどん格闘技の話をしなくなっていくんだよね。

俺、「世界」って言わないじゃん。「世界チャンピオンになる」、「世界で一番になる」とか言わないでしょ。「世界で戦う」とか。それはADCCがあって……マルセロ・ガウッシアって分かる?

平田 ……いえ。

青木 マルセロ・ガウッシアっていうのは2003年にシャオリン・ヒベイロをアームドラックからバックを取って絞めて、グラップリングの世界観を変えた人で。シャオリンって分かる?

平田 聞いたことはあります。

青木 修斗のチャンピオンだったヴィトー・シャオリン・ヒベイロから、アームドラッグからのチョークで取って勝ったんだけど、これが革命で。

で、僕はADCC世界大会への2005年に行って1回勝って、次にマルセリーニョとやって。もう相手にされなくて。

――1回戦で戦ったマルコス・アヴェランも米国のトップ・グラップラーでした。青木選手は相手おフィールドでしっかりと勝っています。

青木 NAGAって分かる? 分からないか(笑)。

平田 ハハハ。

青木 NAGAっていう大会があって、マルコス・アヴェランはNAGAのチャンピオンだったんですよ。マルコス・アヴェランとデイビッド・アヴェランというのは、グラップリング・シーンですごく有名で。当時はコブラカイのジョー・スティーブンソンとか、僕がすごく影響を受けた選手もいて。

階級別でマルセリーニョにやられて、次は無差別でホジャ―・グレイシーとやって。ホジャ―・グレイシーは分かるでしょ? ホジャ―・グレイシーにも負けて。

ADCC後もグラップリングではクロン・グレイシー、ゲイリー・トノンにも負けて。MMAの世界でいうトップどころでじゃ、エディ・アルバレスもそうだし。ギルバート・メレンデスに負けた。そこが結構すごく大きくて。

当時のギルバート・メレンデスは、世界で一、二の選手だったと思っているから、そこで負けた経験があるから、何かこう……「世界って何だ」というものを、僕は弁えている。

――平田樹選手は柔道からMMAに来て、今は色々なことを学びたい。色々なことを消化したい時期にあるかと。青木選手の3戦目の頃ってどうでしたか。

青木 中尾(受太郎)さんが2戦目です。だから、僕は平田さんとすごく近いよ。キャリア的には。あなたのほうがどんどん先に行っているけど。僕も男子の中では……堀口選手はピャーっと行ったけど、僕もDEEPでデビュー2戦して、すぐ修斗に行って5戦目でチャンピオンだから。

平田 へぇ……。

――今とは時代が違いますが、青木選手がADCCに出る前ぐらいからジムの垣根を越えたプロ練習が始まりました。

青木 それ以前はなかったですねぇ。DEEPの時は、今成さんたちとのスポセン軍団です。僕はチームROKENだった。

──懐かしい。

青木 そこからパラエストラへ行って……でもこれは不思議で、本当に今もソックリ。格闘技を教えてもらえると思って行ったの。所属になった。2004年から2005年頃。でも、いまだに1回も教わったことはない。正直、誰からも……ですね。八隅さんっていう、すごく優秀なコーナーマンがいて、そして北岡さんがいて。「どうなんですかねぇ」みたいなことを、ずっと試行錯誤しながらやってきた。

いまだに「先生は誰ですか?」と言われても、いないもん。だから、平田さんとは凄く似ていると思う。

――とはいえ、あの頃と違い今は強くなるテキストブックがあります。

青木 ありますね。あの頃は、ただスパーリングをやるだけで。ドリルもなかった。技術練習もなかった。皆がヒザ立ちからスパーリング。確かに立ちからやっていた僕たちは、珍しいほうでしたね。

※距離、バック奪取から襷掛けの是非、首投げと袈裟固め、試合に向けての気持ちの作り方と追い込み、プロとしての境遇と立場、セージ・ノースカット戦、平田樹が強くなる──などなど、90分に渡るインタビューの要点は23日(火)発売のGONG格闘技でお楽しみください。

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Interview Special   ブログ 北岡悟 大原樹里 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その参─大原樹里✖北岡悟「若くして亡くなるのとは違う」

【写真】青木真也だからこそ、語ることができる北岡悟論 (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年2月の一番、第三弾は21日に行われたDEEP100から大原樹里✖北岡悟について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年2月の一番、最後の試合をお願いします。

「北岡さんと大原樹里の試合ですね」

──試合が終わってから、北岡選手とは話をされましたか。

「喋りましたよ。いつもの感じです」

──いつもとは?

「そこは北岡さんに尋ねてくださいよ」

──確かに仰る通りです。あの敗北、盟友・青木真也とすればどのように見ましたか。

「ファイターとしての活動を人生で例えると、30代後半は80歳を超えて、40代って90歳以上だと思うんです。寿命でいえば。で、そういう年齢で人が亡くなった時って、20代や30代で亡くなった場合とは周囲の人の気持ちは違うじゃないですか」

──確かに大往生という言葉がありますし、悲しいけど笑顔で送ることができるというのは、私も経験上あります。

「若くして亡くなるのと、違いますよね。悲しいけど、そういう感覚ってあるじゃないですか。北岡さんに関しては、そういう感覚に近いです。これまで日本の格闘技を盛り上げてきた人の節目の試合になるかと思って、会場に行きました。だから北岡さんの敗北を目の当たりにしても残念、悲しいという感覚とは少し違っていました。

できることを一生懸命やって、この試合まで取り組んできた。だから、ここで一つの区切りにして良いと思いました」

──頑張ってとか、まだやれるとか気楽にいう間柄ではないですよね。最後かもという気持ちは周囲にもあるかと思いますが……。この試合が最後になるかも、というのは取材をしていても感じてきたことです。

「それは選手の後半戦を見ていると、誰にでも感じることじゃないですか」

──その通りですね。心の準備をして、違う結果になれば次がまた見られるという感覚はあります。

「この試合に関しても楽観論があって。僕も正直、あった。でも練習を一緒にしていて、コンディション的なことも含めて、甘くないぞという風になっていきましたね。ただし、北岡さんには『イージー』って言い続けましたよ。あのタイミングで危機感を煽ってもしょうがないし。

それと同時にあの試合を競技的に見ると、北岡さんの試合の時の体の張りが凄いなと思いました」

──私は前日の計量で北岡選手の体を見て、シェイプされているなと感じていて。そしてケージの中に入ると、ここまでリカバリーするのかと。

「あぁ、僕は逆ですね。北岡さんだけでなく、元谷選手や昇侍選手にしても計量の写真を見て、目がくぼんでいるって驚いたんです」

──そこに関していうとコロナ禍の国内MMAは当日計量+1階級上という大会が増えて、前日計量の様子とリカバリー具合を見る機会が激減しているかもしれないです。

「あぁ、だから北岡さんのリカバリーが浮き出て見えたんだ。普段を見ている僕とは逆だったわけですね。ただ、他の選手の体とかみても、やっぱり異常です。単純に危ないって。体を仕上げることと、健康はまた別ですしね」

──健康維持でなく、命を削って戦っているという姿勢の表れかもしれないのですが、最近の風潮の使っていた私は改めてリカバリーのすさまじさに驚いてしまいました。ただし、そこに後バンテージを見出しているのであれば、格闘家はやるのだと思います。

「僕は……アレをやる自信はないです。フェザー級に落とした時に、『これは何回もできない。死んじゃう』と思ったので」

──減量とリカバリー以外に、技術的な部分で青木選手に伺いたいことがあります。

「ハイ、どんなことですか」

──北岡選手が仕掛けたヒールなのですが……極まらなかったという結果論を承知で、大原選手の対応の仕方を見ると回転して、ズバッと足を抜くというモノではなく、殴るために離れなかった。対処として、逆に回っている場面もありました。そして思い切り殴られるまで時間もままあったので、足を組み替えて内ヒールに移行することもできたのではないかと。

「そこは僕も岩本(健汰)さんとも話したのですが、内ヒールは逃げられるモノと思っています。実際に大原が防ぐことができたかどうかは別ですが、今成さんに一発でもっていかれたこともあるし。ただし、内ヒールはもう掛からない──そう思っている方が良いと思います。

だから、あの外掛けの外ヒールは間違っていない。ただし、右ワキで抱えて左に回る──のではなくて、左に体をかぶせて極めにいくというのが今の外ヒールのセオリーですね」

──捻る方向と、体重を掛ける方向が逆になると。

「ハイ。そうなんです」

──それはズバリ、北岡選手は足関節のアップデートができていなかったということでしょうか。

「ハイ。でも、それは北岡さんに限ったことではないです。選手の多くは技オタクではないですから。何よりも外ヒールが悪いわけでなく、そこから移行させることを頭に入れることが大切で。

MMAならスイープが一番ですよね。そしてスクランブルからバックを取る。それがMMAにおける足関節に効用として、一般的かと思います。

それと北岡さんの外ヒールも若い時の勢いがあれば、極まっていたんじゃないかと思います。でも、そこができなくなったのは年齢を重ねたということで。

これもMMAの選手に多いけど、MMAとグラップリングを切り分けたというのはあると思います。グラップリングのためのグラップリングを意識していることはなかったはずです」

──グラップリングの試合を見ていると、例えばクレイグ・ジョーンズの取り方は、MMAだと殴られます。ただし、あの極め方を見て、MMAに採り入れることもできるとは思うんです。

「使えるモノはいくらでもあります。グラップリングの理屈をMMAの理屈に置き換えると、使えるモノはヒールだけでなくかなり存在しています。だからベーシックな技術と流行ものの技術を両方を見ないといけないです。捨て置けない技術であることは間違いなく、それをゲイリー・トノンは証明していると思います」

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Interview Special コリー・サンドハーゲン フランキー・エドガー ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その弐─サンドハーゲン✖エドガー「本当に強い」

【写真】勝ち方がえげつなかったサンドハーゲン (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年2月の一番、第ニ弾は6日に行われたUFN184からコリー・サンドハーゲン✖フランキー・エドガー戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年2月の一番、2試合目をお願いします。

「コリー・サンドハーゲン✖フランキー・エドガーです」

──なんとなく意外な気がします。青木選手はフランキーに想い入れがあるようにも思えないですし。

「エドガーは僕的に言うと、BJに勝ったのが大きい選手です」

──2010年4月のUFC112と8月のUFC118における2連戦ですね。MMAを変えた一戦といっても過言でないと思います。

「そもそも、僕はあの2試合でBJが負けたと思っていないですし」

──ということなんですよね。あの時、『なんだ、これは戦いか』と思いました。実際、BJにインタビューした時にはフランキーのことを「あれではUltimate Fightingではなくて、Ultimate Fitnessだ」って批判していたんです。

「倒すんじゃなくて、ポイントゲームをあそこまで明確にしたのはエドガーが最初でしょうね。しかも、ジャッジがその手数とテイクダウンを取ったということで、MMAの潮目が変わった」

──ハイ。あの時、マモル選手から『あの戦いを受け入れないと、進化についていけなくなりますよ』と言われたことがあって。BJが倒せなかったのは事実で、自分のやりたいことをやらせてもらえなかったんだと思うようになったんです。

「あぁ……僕は、あの時もエドガーを認めることはなかったです。戦っていないじゃんって。でも、グレイ・メイナードとの2試合で変わりました」

──2011年1月のUFC118と10月のUFC136における2連戦で、ドローとKO勝ちでした。

「試合つまんねぇじゃんってのが、凄い試合をやって。ああいう戦いができる人間が、ポイントゲームでBJに勝った。もうこっちも文句は言えないし、自分のやっていることに言い訳でもできないなって」

──なるほどぉ。いやぁ、そうやって認めざるを得なかったわけですね。

「もうね、あの試合をやられると──ですよ。ただ凄い絶対手王者のイメージがあるけど、実はBJとメイナードの3試合だけなんですよね、防衛したのは」

──それが10年以上前で、サンドハーゲン戦の負け方を見ると……。もう、良いのではないかと思ってしまいます。

「でも、その前にはペドロ・ムニョスに勝っているし。負けたといってもホロウェイとも5Rを戦っていますしね。UFCがこういう厳しい試合をやらせるのも分かります。厳しい試合を組んでいますよ。

でも39歳か、鉄人ですね。ここまで来たら、やれるところまでやりたいのかなって思います。と同時に、今回のように木っ端みじんにやられてしまうと、スッキリするのかなっていうのもありますね」

──木っ端みじんにしたサンドハーゲンについては。

「いや、強いですよ。強い。サンドハーゲンのスタイルは、最後は蹴りに繋げるんですよね。タッチボクシング&蹴りというスタイル、あれはなかなかないですね」

──これはそんな言葉はないのかもしれないですが、コロラドMMAというか。2005年以前にキック&ムエタイと柔術を融合させたような立った構えで組まれると下になって柔術をするというドウェイン・ラドウィック、クリスチャン・アレン、アルヴィン・ロビンソン、ドナルド・セラーニの系統というか。

「日沖発っぽい感じですか」

──当時は今のセラーニや日沖選手よりテイクダウンには行かず、立って打撃、組まれると下になるという。それがコロラドのローカルプロモーションでK-1やムエタイとMMAのミックス興行だったRing of Fireという大会で育った選手に共通している部分ではありました。

「サンドハーゲンは、その系統ということなのですか」

──ハイ、クリスチャン・アレンの教え子なんです。

「へぇ、そうなんだぁ。それは面白いですね。なんか、パンチはリーチがあって手打ちっぽくて、タッチボクシングに蹴りが混ざっている。最後は蹴りで攻撃を終えるというスタイルで。何か、独特だと思ったんですけど、そういう系統があったのですね」

──もちろん、そこに蹴りが得意、パンチが得意というのはあるかと思いますが。

「それでサンドハーゲンは蹴りで。まぁ何といってもバンタム級では異常って言って良いほどデカいですね。180センチだから、ジャブも腰を入れなくて打てるし、蹴りも弾くように蹴っている」

──相手を触らせないですね。

「そうなんです。アルジャメイン・ステーリングには触られてやられましたけど、突き放す感じなんでムエタイっぽくはないです。捌いて横に立って、強振をするというのではない。ヒザもその場で打つようなヒザ蹴りで。ここにきて、トップコンテンダー争いに厄介なのが出てきたと思います。

本当に強いです。戦っている相手も強くて、マルロン・モラエスに勝つって尋常じゃないですからね」

──田中路教選手もステーリングに負ける前から、「一番強いのはサンドハーゲン」というようなことを言っていました。

「そうなんだ!! ポテンシャルがそこまである……やっぱ、そうなんだ。技もそうだし、あのサイズですよね。61キロでライト級でも長身だろうって。エドガーはライト級であれだけ出来ていて、でも体重を落とすと──ライト級ほどでなくなったのが、また興味深いですね。どの階級が自分に一番あっているのかって、また分からないモノです」

──そして今週末にはピョートル・ヤン✖アルジャメイン・ステーリングがあります。青木選手の見立ては?

「逆にどう思いますか?」

──短時間ならステーリング、3R以降になるならヤンかと思っています。

「あっ、そうなんだ。僕はステーリングが行っちゃうんじゃないかと思っています。レスリング力で倒してしまうし、ヤンがそれほどトップどころとは余り戦っていないというのを見てしまうんですよね」

──ジョゼ・アルド、ユライア・フェイバー、ジミー・リベラは十分に強いとは思うのですが、それでもサンドハーゲンとは違いますね。

「アルドも落として来た時ですしね。微妙な感じはします。ピョートル・ヤンもそうだし、アルジャメイン・ステーリングともう1度やると、サンドハーゲンは勝てる力があると思います。どっちと戦っても面白いでしょうね」

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Interview Special  グラチアン・サジンスキ ファブリシオ・アンドラジ ブログ 佐藤将光 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その壱─アンドラジ✖佐藤将光「ダーティボクシングと首相撲」

【写真】 離れてダイナミックなパンチや蹴り。そして、ゼロ距離でのエルボーヒジとアンドラジが佐藤を相手に強さを見せた(C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年2 月の一番、第一弾は1月22日に行われ、2月5日に中継されたONE116 Unbreakable03 からファブリシオ・アンドラジ✖佐藤将光戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年2月の一番、最初の試合をお願いします。

「アンドラジと佐藤将光の試合は1月に行われたのですが、大丈夫でしょうか」

──ハイ、初見が2月になってしまうのでどうしようもないですしね。ただし、アンオフィシャルでも私どもは試合結果は中継日でなく、実際に試合が行われた日時で整理したいとは思っています。それはともかく、アンドラジと佐藤選手の試合は青木選手がジェイムス・ナカシマに勝ったのと同じ日に同じ会場で行われ、同じファイトウィークをシンガポールで過ごしていたことになります。

「ハイ。帰国する便は同じだったんですけど、1週間シンガポールに滞在していて佐藤選手の顔を見たのはPCR検査と計量の時だけでしたね。試合当日は会うこともないし、結果も知らないという感じで。

だから今のONEのイベントは誰が試合をしているのか、全体を選手は知る由がないので。スタンプが自分と同じ日に試合をしていたとか、知らなかったです」

──コロナ禍とはいえ、歪さは感じます。録画中継でもやはり〇月〇日に行われた試合というのを知らせるのが、我々の慣例だったので。

「まぁ、でも戦う当人としてソコは気にならないですよ。あまり感じないです。通常の大会でも形式上、誰がいて、誰と戦って、結果がどうなったのかということが目や耳に入ってくるから知っているだけで。それを知らなくても、困らないですしね」

──なるほど。選手としてはそういうモノかもしれないですね。そういうなか、なぜアンドラジ✖佐藤将光が今月の一番に選ばれたのでしょうか。

「佐藤選手は──実はONEで鎬を削った試合ってハファエル・シウバ戦だけだった。だから、ビビアーノに挑戦できなかったとか話題になっても、相手はマーク・アベラルドとクォン・ウォンイルなんだから、そりゃあ勝つだろうっていう相手です。この3勝でチャンピオンシップってそんなに甘いのって、正直思っていたんです」

──とはいえ与えられた相手に3連続フィニッシュ、1つはハファエル・シウバです。そしてビビアーノ✖ベリンゴン時代が続いたバンタム級戦線で、次期チャレンジャーに目されるのは普通のことではないでしょうか。

「そこで世界挑戦っていうテンションなのかって、周囲も含めて。リネケル、ベリンゴンに勝ったわけじゃない。そこに勝つと説得力が違ってきますよね」

──ONEはランキング1位が世界挑戦という風ではなく、タイミングで組んでいく風ではあるかと思います。

「だからチャンスがあれば──というのはあるとは思います。ビビアーノがやるなら、世界戦だったでしょうし。そこでアンドラジが相手になった。結果論として、どうせ負けるならリネケルとかの方が良いですよね。

でも試合前は佐藤選手のイージーファイトになると思っていました。アンドラジは中国で負けているし、レコードもそれほど良くない。ONEで勝った相手もアベラルドですからね。そういう風な気持ちは正直ありました」

──未知の部分が多く、不気味な相手。ただしMMAだから佐藤選手が勝つという想いでした。

「それがワンサイドでしたね、実質は。良いところを消された感じで。3Rを佐藤選手が盛り返せたのも、アンドラジがセーフティリードを築いて戦ったからだというのもありますし」

──アンドラジの良さはどこでしたか。

「間が良かったです。反応も良かった。クリンチのエルボーも上手だし、ONEのルールに適していましたね。クリンチで打撃を入れることができて、アクションが大きい打撃も持っていました。ジャブにしても、攻撃している感のある攻撃です。踏み込みとかアクションが大きくて、あの戦い方はONE向きです」

──クリンチの攻防なのですが、佐藤選手は組みと打撃の融合という部分で本当に考えて、練習でも実践してきた。ただし、タイ・クリンチに勝てなかった。

「だってダーティーボクシングとタイ・クリンチじゃ歴史というか、積み重ねてきた年月が違いますよね。いくらダーティーボクシングって言っても、ここ何年かの話じゃないですか。でもムエタイの首相撲は歴史が有効性を証明している。だから、僕はダーティーボクシングっていうモノは、どこまで有効かという風には感じちゃっています」

──ただ高度な首相撲は、未だに足に組んで良いMMAでそれほど見られるモノではないです。

「う~ん、僕は凄く基本的な技術として、MMAにおいて首相撲は大切になってくると思ってきました。ジャブやダブルレッグのように。ただし、首相撲もグラウンドも──いってみれば即効性が少ないから、それほど日本では流行らないと思います。パンチ&ローとテイクダウンディフェンスというスタイルが主流のままで。

そういうなかでMMAでは名前が知られていなかったアンドラジは、首相撲をしっかりとやってきていた選手だった。引き出しを持っていましたね。とはいってもリネケルとやるとリネケルだし。それはラカイからやってくるスティーブン・ローマンにしても、良い選手かもしれないけどBRAVE CFで誰と戦ってきたのかっていうことになりますよね」

──……。4月29日に組まれるローマンのONE初陣ですが、荷が重いと?

「そもそもリネケルの実績と比較すると、失礼だろうと思います。2枚……いや3枚は落ちます。それはアンドラジも対しても、同じことが言えて。格が違うと思います。リネケルに対して、アンドラジやローマンでは。スミマセン、盛り上げるようなことがいえなくて──本当の気持ちを話してしまって……」

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Interview News ONE セイジ・ノースカット ブログ 青木真也

【ONE】TNT中継第4弾でセイジ・ノースカット戦が発表された青木真也「UFCを遠くに見ることができる」

【写真】Road to ONEを解説で盛り上げ、リードした青木は既に次戦が決まっていた (C)

25日(木・現地時間)、ONE Championshipが4月29日(金・同)にセイジ・ノースカットが青木真也と対戦することをオフィシャルSNSで発表した。

日付は4月28日(木・同)となっているが、これは米国TNTで中継される時間だ。いずれによせ、ジェイムス・ナカシマに続き、次はノースカットと青木と北米MMAのマッチアップが続いており、これは今の青木にとっても意味のあるマッチアップといえる。


今回のオファーが青木に届いたのは2月4日のこと、いつも通り彼にノーという選択はなかった。ライブ・イベント前の今後の方針の発表という最近のONEの流れで、先の女子アトム級GP開催と合わせて、ここでTNTカード第4弾のカード発表として青木✖ノースカットが明らかとなった。

なぜ、このタイミングで青木なのか。アジア最大のMMAプロモーション=ONEであっても、北米ではまだまだ新興勢力だ。アジアのMMAに興味を持たないライト層こそ、UFCやBellatorが必要としている市場だ。そんな米国のTNTによるONE中継でエディ・アルバレス、デメトリウス・ジョンソンに次ぎ、青木の試合の視聴者数が多いという話も伝わってくる。

オンラ・ンサンやリー姉弟ではなく、シンヤ・アオキの存在を米国マニア層は求めているからこそ、このタイミングでのノースカット戦が組まれたという憶測はそれほど外れてはいないだろう。

正式発表の2時間30分前に改めて尋ねた青木のノースカット戦へ思いは、以下の通りだ。

青木真也
「良い試合ですね。オファーを貰った時は──『あぁ、そうですか』と他人事でした。そうなんだっていう感じで。最後とは言わないですけど、このタイミングでセイジ・ノースカットがあるのは何かあるんだろうなと思います。

ファイターとしては対戦すると思ったことがなかったので……ただUFCというモノを遠くに見ることができるカードだと思うので、やる気になりますよね。向うのワンサイドになるかもしれないし、こっちのワンサイドになるかもしれない。

まぁセイジ・ノースカット云々ではなく、この先にUFCの世界観が見えることだけにワクワクしています。もちろん、強い相手です。ただし、楽しめるのは北米で期待されていた選手が相手だからということですね。ONEの米国での視聴率に僕が必要? これは良くも悪くも、ONEのなかでの青木真也、ONEで評価された青木真也というのはまるで意識しないです。まったくネガティブでも、何かをくさすということでもなく、試合の機会が巡ってきて青木真也が試合をするということで。

北米の中継でラインナップに入った──でも、これ以上の知名度が欲しいわけじゃないし、有名になりたいわけじゃない。自分の深いお客さんがいてくれれば良いので、TNTのライブ中継というのも関係ないです。北米のお客さんが僕を見るかどうかって、すなわちはUFCで通用するかしないか──だから。そこが評価ですよね。UFCで戦う力があるんだと思われるのか。そこだと思っています」

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Fight & Life Interview Special ブログ 青木真也 飯村健一

【Fight & Life】青木真也&飯村健一「ゆっくり」、「しっかり」、「綺麗に」 スロー格闘技のすゝめ

【写真】対談では青木の創り上げてきたムエタイ式打撃のMMAにおける効力、構えの大切さ。キャッチされても殴られない、倒されないミドルの蹴り方などが語られています(C)t.SAKUMA

明日24日(水)発売のFight&Life#83に1月22日、シンガポールで開催されたONE Championshipで北米世界標準の強豪ジェイムス・ナカシマを1R2分42秒、ネックロックで一蹴した青木真也とムエタイの師・飯村健一氏の対談が掲載されている。

ナカシマを相手にムエタイ流の構えで、蹴り、パンチ、首相撲を見せていた青木の口から、試合終了後のインタビューで「綺麗な構えでゆっくり、近くに行ってしっかり見る」という言葉が聞かれた。

ハイペース、ラッシュの連続という現代MMAにあって、青木と飯村健一が創り上げてきたスタイルとは何かを尋ねる対談の終盤に、格闘技を長く続けるチョイスにプライオリティを置いている青木と、彼を支えリードしてきた飯村氏が、日本の格闘技界にも訪れるであろう──えぐい未来について語った箇所をここで抜粋してお届けしたい。


──ムエタイのMMAにおける有効性は分かるようになってきました。それでも、MMAファイターとしてムエタイをやり込むことは異質です。

青木真也 これをやろうとする人が極端に少ないのは、時間がかかるからです(笑)。

──対してMMAは即効性のあるモノが求められますよね。やるべきことが多いので。

青木 MMAだけでなく、K-1もRISEも──キック系にも横たわる問題だと思います。

飯村健一 やはりガチスパーは強くなるのが早いので。そこをやらせるようになるのでしょうね。

青木 ガチスパーをやると、早く良くなるって聞きます。

──と同時に練習でダメージが蓄積するかとも……。

青木 だから長くやるつもりがないんですよ。20代後半で引退するのであればガチスパーをやれば強くなれると思います。

飯村 MMAファイターもガチスパーが多いと思います。ボクシングやK-1のジムで練習しますしね。

青木 なので、長く続けるには僕は自分がやっているスタイルだと思っています。信仰だから、自分の信じたことをやれば良いけど、特効薬のようなガチスパー信仰は、それはそれで危うくて怖いです。

──その危うさというのは?

青木 ガチスパーとストレングスで強くなろうとすると、技術の差がなくなります。そうなると那須川天心選手や堀口恭司選手のような異常な才能を持っていないと、そういう選手の生贄になっていくだけで(笑)。

──MMAって工夫と努力で探求できるところがあったはずなのに。100メートル走ではなくて、中間距離の障害物競争のようなところがあったかと思うんです。

飯村 ハイ。ボクシングやK-1って体育の通信簿が5の人が上に行けるスポーツなんです。でもMMAやムエタイって体育が3の人間でもチャンピオンになれるもので。

青木 駆け引きと経験が生きるし、技術もゆっくりとしっかり身につけることができるから。ストレングスとハードな打撃を詰め込んでやると、体にダメージを与えますよ。

──ライフとして取り組む格闘技と、20代で稼げるだけ稼ぐ格闘技では、その目的が違うから手段も違う。

青木 えぐめの話をするとストレングスを究めていくなら、ステロイドに頼るっていう風に近々なっていくと思います。格闘技に関しては、日本人はやっていないって信じたい部分があったじゃないですか。

──ハイ。確かにあります。

青木 でも、ガチスパーをやっていく思想はダメージの回復力も含めてステロイドに近づくと思います。

──喘息の薬を入れて、気管支を広げて練習するとか……。

青木 一財産を築いて辞めれば良いのだから。そうなっていくかと。

飯村 いやぁ、もう考えも及ばないところに来ているのですね……。

──それもライフといえばライフで。ただし、稼ぎきれなくてずっと続けるとどうなるのだろうかと。

青木 そこも、そうなっていくと思います。稼ぐ、稼げないだけでなくて勝ちたいと思うと、そっちに走る人間だっているんだろうなって。格闘技って人生を豊かにするモノであってほしいから、そういう破滅的な方向には本当はいってほしくないのですけどね。僕は理屈をもって格闘技をやっていきたいので。

※24日発売のFight & Life#83は、上記以外に4ページに渡り両者の格闘技との向き合い、勝ち方など興味深いやり取りが掲載されています。

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