【写真】クレイ・グィダ戦後の日沖発、ドミニク・クルーズ戦後の…
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カテゴリー: 青木真也
【写真】格闘技に正解も不正解もない。勝てば正解、負ければ不正解。ただし、取り組み方には正解、不正解はあり、とことんやりこむ青木の「技術信仰は一つの宗教。そこを信じるかどうかというのは」という言葉は説得力に溢れている(C)MMAPLANET
青木真也から東京都世田谷区のロータス世田谷で剛毅會空手の手ほどきを受けるという連絡を貰い、5月24日(月)──見学させてもらうことにした。
青木は以前より岩﨑達也氏の打撃や武術論よりも、モノの見方に興味を持っており、プライベートで会いたいということを言っていた。コロナ禍ということもあり、会食云々でなく取材として4月23日発売のFight&Life誌で対談という形で意見交換を両者にしてもらった。
そこから彼らの親交が進み、今日の技術交流が実現した。まずは青木が興味を抱いた「置く、突き」に関して、パンチの打ち方、当て方という部分で両者のやりとりは始まった。
置く、突きの理論を知るために青木のパンチの打ち方や体の使い方をまず探り、ここから突きだけでなく左ミドル、前蹴り、三日月とミット打ちや組手で確認作業が進んだ。
組手では当然のように相手が必要で、そこは武術空手の原理原則をMMAに誰よりも落とし込めている松嶋こよみが務めた。
松嶋の存在が、より青木の理解を深める速度を上げ、岩﨑氏の説明を迅速にした。
打撃のための打撃の構えと、組みも交えた時の打撃の構えでは、青木の歩幅や角度が変わり、動きをコントロールする足も前足と後ろ足で変化が見られた。
移動で創るエネルギー、養成したエネルギーを移動させる違い──ここをより理解するために、ロータスのグラップリング・スパーリングに参加して、この模様を眺めていた岩本健汰も加わった。
非常に興味深いもので、組み有りの組手になると、打撃だけの時よりも青木のパンチが良いタイミングで松嶋を捉えるようになった。
パウンド、グラウンドでのエルボーはそもそもボクシングにも、ムエタイにもない技術だ。ここに青木が「置く、突き」に着眼し、その原理原則を採り入れられるかを試みた。
武術とは本来、攻防を生まない。戦いでいえば失点しないのが原則だ。しかし、MMAは加点しなければならない。そのために武術をMMAに落とし込む必要がある。
それには武術的に正しい姿勢、体の使い方を体得するのが近道だ。そして、自分の体の使い方、姿勢が乱れていないのか、自身にサインを身の内から送ることができるのが型稽古だ。
青木は何かアドバイスを受けるたびに、体を動かすのを一旦止めて頭を働かせていた。疑問を感じると、すぐに質問し納得しようとしていた。青木真也という組み技、ムエタイをやり込み、MMAに落とし込んできた格闘家だからこそ、武術空手の動きを自らが持ちうる技術の上積みにするのではなく、原理原則の自身が培ってきた技術の細部に生かすことができる。
そんな風に思えた約2時間半の稽古で見られた、究め方は違っても、強くなることを考え続ける両者、そして松嶋&岩本を含めた4人の濃密なやり取り。改めて取材という形で深堀りできれば。さぞかし楽しいだろう。
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【写真】まさに絶頂期を迎えつつあっただけに、一つのジャンルの浮沈が関わるゴードンの事実上の引退発表だ(C)MMAPLANET
20日(木・現地時間)、ゴードン・ライアンが自らのSNSで胃の不調=胃不全麻痺により競技生活から離れることを発表した。
「人生で一番辛い知らせをしないといけない」と書きだしによるインスタグラムでのポストで、ゴードンの胃は練習に耐えられるもものでなく、競技生活から離れる必要があることを明かした。
今後の競技生活に関しては、確かなことはいえず競技者を引退しても、指導者としてラップリングに関わっていくとゴードンは書き記している。
ゴードンはONEと契約し、グラップリングとMMAを戦うこと明言しており、8月27日(金・同)には青木真也とグラップリングマッチをサークルケージで行うことが発表されていた。
また5月28日(金・同)にはWNO09でルイス・パンザと戦うことが決まっていただけに、ゴードンもこの発表をこのタイミングで行ったことが予想される。
2019年ADCC世界大会99キロ級&無差別級優勝、2018年にはIBJJFノーギワールズでも2階級制覇を成し遂げている現代ノーギグラップリング最強の男。盛り上がりを見せるグラップリング界の象徴ゴードンは、青木戦以外にもドリームマッチの実現がグラップリング、そしてMMAで期待されていた。それだけに、返す返すも残念な事実上の引退宣言だ。
なおWNO09ではクレイグ・ジョーンズが、ゴードンの代役でパンザと戦うことが決まっている……。
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【写真】グラップリング戦が決まったゴードン・ライアンと青木(C)MMAPLANET
10日(火・現地時間)、ONE Championshipのチャトリ・シットヨートンCEO&会長が自らのSNSでブレイキングニュースと銘打ち、8月27日(金・同)にグラップリングの無差別級スーパーマッチとして、ゴードン・ライアン青木真也戦を組むことを発表している。
4月にエドゥアルド・フォラヤンとの3度目の試合で圧勝した青木が、現代グラップリング界最強の男ゴードン・ライアンと戦うことが決まった。
大会開催地、大会名とも明らかになっていないが、恐らくはシンガポール、そしてケージでサブオンリーになることが予想される。
それにしてもゴードン・ライアンとは……。ゴードン・ライアンはヒールが解禁になる前のIBJJFノーギワールドでもADCCと同様に頂点に立っており、ポイントも取れるグラップリング・スキルの持ち主だ。2019年にはヒザの負傷から復帰して間もないというのに、99キロ級に続き──マーカス・アルメイダ・ブシェシャを下しADCC無差別級王者=二冠に輝いている。
パンデミック後は今年に入ってからも、2月26日(金・現地時間)に、プロ・グラップリング大会=Who’s Number One06で、新鋭ロベルト・ヒメネスを腕十字で一蹴。さらに3月26日(金・現地時間)にはWNO 07でヴァグネウ・ホシャを相手に──中継席にあらかじめフィニッシュを明示した封筒を置き、そこに示されたように三角絞めで一本待ちを収めている。そんな芸当が可能なゴードン・ライアンとの組み技マッチを求められること自体が青木真也の真価であり、八面六腑の活躍ぶりの象徴といえる。
しかし、体重差はおよそ20キロ、上からも下からも圧倒的な圧力を持つゴードン・ライアンとのグラップリングは、青木にとって2017年11月のベン・アスクレン戦を遥かに上回る、勝ち目のない戦いといえる。それゆえに青木道を全うしているといえるが、そんな青木は今回の試合について以下のようにコメントをくれた。
青木真也
「最初は驚きました。でも、そこでやらないとは言えない。一座の人間として、完全にゴードン・ライアンのお披露目会でピエロの役割を演じろと言われれば、それはノーとは言わないです。皆でやっている──一座の人間だからピエロは嫌だと言わない。
勝負としても厳しいことは分かっています。でも、やっぱり『やらない』とは言わない。それに何だかんだと言って、世界一の人間と肌を合わせることができるのだから、それはやってみたいです。でも、その前に7月にMMAを戦わせてくれということは伝えてあります」
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【写真】なぜ、このような凄惨なシーンが生まれたのか…… (C)Zuffa/UFC
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
引き続き2021年4月の一番、第三弾は24日に行われたUFC261からユライア・ホールクリス・ワイドマン戦について語らおう。
──青木真也が選ぶ2021年4月の一番、最後の試合をお願いします。
「ユライア・ホール×クリス・ワイドマンですね」
──目を背けてしまうフィニッシュになりました。
「まぁワイドマンですけど、あの蹴り方をよくするなって思います。あれってサッカーボールキックみたいに直線的に下から蹴り上げていて。やっぱり、あの蹴り方はまぁせんよねって。
日本でもする人がいますけど、摺り上げるように蹴るという……。あれは危ないです。危ない。基本を無視した蹴りです」
──チェックというか、カーフに対してホールも若干踏み込んだ。そこでスネとスネが当たり、蹴った方のワイドマンが骨折した。結果的にスネ受けをしたような形になりました。
「あの蹴り方は、もう運任せで。ホールが少し踏み込んでいないと、脹脛を蹴ることができて、効かしていたということなんでしょうけど。そんな危ない蹴り方をよくするなって思います」
──あの試合の後も、蹴り下ろすのは当然として、青木選手のいうところのサッカーボールキックのようなカーフローを蹴る選手は続いています。
「続いていますか……。外側を叩き蹴るってことなんでしょうけど、下からふわっと蹴ってあの受け方をされると折れますよ。それと相手のスタンスを見て、蹴り方を考えないと。ホールのように立ち気味だったら、チェックもされますしね」
──蹴りが飛んでくる方にスネを向ければ良いわけですしね。
「ハイ。その通りです。僕もアップライトで構えますけど、チェックできるし。そういう選手にはあの蹴りは出せなくなるはずです」
──ここまでMMAが進化して、28年の歴史にあってなお蹴りは言ってみると基本的な技術が伝わっていなかったということでしょうか。
「まぁ米国は、ムエタイ文化がある国じゃないですしね」
──もうこれは1970、1980年代からキックも空手もロー、下段なしルールが多かった歴史もあります。
「だからコリー・サンドヘーゲンとかは、キックボクシング文化で育っているから、ああいう蹴りは使わないです。スネなんか蹴らない」
──コロラド州デンバーはムエタイとキックが他より盛んで、サバキチャレンジという大会がメジャーで、二宮城光氏の円心会館空手も根づいています。
「サンドヘーゲンもそうだし、カーロス・コンディットも蹴らなかった。もちろんケニー・フロリアンも蹴らなかったじゃいないですか」
──ケンフロはボストンにあるシットヨートン・ジムでムエタイを学んでいましたね。
「彼らのように蹴りを習ってない──蹴りの文化がなかったからこそ、ワイドマンのような蹴りを使うのでしょうね。ATTにしてもモハメド・オワリがいた時なら、カーフを蹴らせていなかったかもしれないです」
──なるほどぉ、そうですね。
「堀口選手も蹴っていましたけど、あれはもうカーフ以前にカーフを蹴ることができる要因がありますからね。立ち位置として外を取れているので、結果的にカーフなだけで。構え、立ち位置、距離、間……です。
堀口選手はディスタンスとアングルに長けているので、あそこまで外して蹴ることができる。別に殴ることだってできますからね。その状態で、足を蹴っただけで。効いたから続けた。堀口選手のカーフはそういうことだと思います」
──堀口選手は1月にインタビューをさせていただいた時に、彼自身がカーフを蹴られても、スネ受けすれば良いだけだと言っていました。
「その通りです。なんで、アレを貰うんだよって思います。アレは良くわからないです。K-1とかキックだと、構えが前足重心で、爪先もボクシング的に内側を向いているから皆が使っているけど」
──言ってみれば、脹脛を最初から晒しているわけですね。
「そうです。だから今のK-1やキックは、カーフを蹴っているけど、MMAは色々な構えがあるわけで。そういう基本的なことを知っておかないといけないです。
距離とアングル、基本的なことを考えないとダメです。基本を知って、技のメリット、デメリットを知る。食材の良さと悪さを知らないと、料理ができないのと一緒ですよ」
──そうですね、毒を持つ生物はいるわけですし。何でもかんでも見様見真似で、美味しいぞって焼いて食べるわけにはいかないです。
「パンチだってどこを当てるか、どこで打つのか。そうやって殴っているわけだし。朝倉海堀口恭司でいえば、朝倉選手がボクシングに傾倒して、そういう構えになっていましたしね。よくあるパターンです。
それにボクシングに傾倒すると、僕はパウンドも弱くなると思います」
──というのは?
「これは松嶋(こよみ)選手と話していたんですけど、ボクシングのパンチはパウンドに応用できないよねって。ボクシングは普通に考えて、体を使って、コンビネーションがあってのパンチなので」
──移動で出すパワーですね。対して、パウンドはその場で出る力です。
「ハイ、そうだと思っています。だからこそ、実はグラウンドのパンチは空手の突きなんじゃないかと。近い距離でインパクトがある。Fight&Lifeの対談で岩﨑達也さんが言われていた、置くという話に通じているんだと思います」
──エルボーをそうじゃないですか。ムエタイのヒジ打ちとは違います、グラウンドでのヒジは。
「ハイ。ムエタイのエルボーって、点で当ててスッと抜けていく。それをグラウンドのヒジでやると、回ってしまいそうで」
──頭より向うにヒジを持っていくことはできないし、バランスを崩すということですね。
「だからヒジも置く感じですよね。僕も勉強した結果、前腕のヒジよりの部分で当てるだけで良いって思うようになったんです。それって置くだけなんですよね。
パンチに関して言うと、グラウンドでのパンチはバックコントロールから殴る時以外は、ボクシング的な体の使い方はない──そう思います」
──振ったら、姿勢が乱れて返される恐れがでますし、頭を動かして殴るというのは、グレイシー柔術がマウントパンチを世に出した時には、なかった打ち方ですね。よく手打ちとか言われていましたが……。カーフ論から、パウンド論、ボクシングを接点に両者の非常に興味深い話を聞かせてもらえました。
「試し割りとか、寸勁とかそういうことかもしれないですね。力の伝え方で。その瞬間、ストンと置いている。その場で力を出す、そういうことなんじゃないかって松嶋選手と話していました」
──その場の力が出るということですね。青木選手の組み力と、空手の論理が融合すると──またMMAは進化しそうで楽しみです。
「そこは松嶋選手の方が進んでいますよ。彼に話を聞いてみてください。きっとそういうことだと思うんです。ただし……練習で本気で打つことができない……。試合だと実感がないから分からない──けど、多分そうだと思うという話を2人でしていたんです」
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【写真】青木がONEで頭抜けていると評したクリスチャン (C)ONE
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
2021年4月の一番、第ニ弾は8日に行われたONE世界ライト級選手権試合=クリスチャン・リーティモフィ・ナシューヒン戦について語らおう。
──青木真也が選ぶ2021年4月の一番、2試合目をお願いします。
「クリスチャン・リーティモフィ・ナシューヒンです。クリスチャンは試合時間の短さもそうですけど、何よりも嗅覚が良いですね。あのフィニッシュどころの」
──畳みかける攻撃ですね。
それを嗅ぎ分けていて。そこの有無が上に行くか、行けないのかの差だと思います。この嗅覚がないと深追いしてしまいます。それをしっかりとクリスチャンはフィニッシュに結びつけている。そこは頭抜けています」
──自らが攻勢の時だけでなく、青木選手との試合では寝技で攻め込まれたときに防御力の高さを見せ、ダギ・アルサナリエフとの試合ではドロドロの勝負で勝ち切る強さがありました。
「だから生物的に強い。喧嘩が強いのでしょうね。根性があって、耐える力もある。厄介な存在だと改めて思いました」
──喧嘩の強さって、ハングリーさとは関係ないのでしょうか。クリスチャンは裕福な家庭で育ち、生活苦のようなことは人生で1度として経験していないと思います。
「お金のためにどこまでハングリーになれるのかっていえば、限界があると思うんです。裕福になるために戦うのには限界があって、彼はそういうことがなくて戦えているので。
日本は最低限の暮らしができる国だと思います。だから、困窮さで養われるハングリー精神なんてない。それでも頑張る人がいる。それは格闘技だけでなくて、どの分野でも経済的なハングリーさでないモノが根底にあるはずです。好きだとか、生まれながらの持ちえた感覚が。あとは育ってきた環境ですよね」
──お父さんのケンさんがマーシャルアーツや護身に通じていて、自らのスタイルをクリスチャンやアンジェラの幼少期から教え込んでいたということが大きいということですね。
「そこに持って生まれたのか、養われたのか嗅覚がある。2年前に『この子は強くなる』って、言ってみれば引っ張ったわけじゃないですか。その目は間違っていなかったと思います(笑)。強くなり続けています」
──また悪い癖ですが、UFCをスケールにするとクリスチャンの実力をどのように評価していますか。
「僕の感覚でいえば、凄く期待されている契約をして、真ん中ぐらいから創られていくと、もしかするともしかするぐらいの力があると思います。まだ22歳ですしね。フェザー級でやるより、ライト級で戦うことを選択して体調も良いみたいで、そこも正解だった。
ちゃんと大きくなっているので、これで水抜き有りのライト級で戦っても、相当にいけるでしょうね。KO負けもまだ1度、それも5年前とか。効かされてギロチンっていう負けだし、ダメージも蓄積していなくて、なんせ10代の時からこれまでキャリアを積んでいますからね。
MMAが強い……僕らの思うMMAの一つ上を行っているというか、全てが融合されたMMAを体現しています。そして喧嘩が強くて、フィニッシュ能力がある。本当に強いと思います」
──自らの階級ですか、ONEライト級戦線で抜けている感はありますか。
「戦績的にも、力としても抜けていますよね」
──フォラヤン戦当日のインタビューで、結果を残していけば「またある」という主旨の発言を青木選手はしていました。
「ハイ。それまでいますかね。なんか、そんな気はします」
──そこまで強いと、やはりUFCに行きたくなるというものですよね。
「そうだと思います。ONEでは抜けていますから。ホントは……たらればになりますけど、そこを考えるとエディ・アルバレスがオク・レユンに勝って、クリスチャン・リーエディ・アルバレスは画として見たかったですね」
──その画として見たいということが、市場の関係しているわけですしね。
「ハイ、査定になります。それはチョット見たかったです」
──私も悪い癖でUFC以外で結果を残している選手に、すぐに『UFCで戦いたくないか』と尋ねてしまうのですよね。でも、まぁプロモーションを代表している選手は、競合プロモーションのことですから、話しづらいでしょうね。
「クリスチャンも、もうONEを代表する選手になっているし、そこは聞きづらいし、彼も答えづらいはず。でも、クリスチャンはUFCで勝ち抜ける力があると思います。絶対的に強いダギに勝ち、ラピクスもナシューヒンも短時間でフィニッシュした。それに、徳留(一樹)を普通に1Rでやっつけている。そんな選手がどれだけいるのかっていうことですよね。それはUFCでやっても……まぁ、まぁ、まぁと思いますよ」
──そこまでクリスチャンのことを買っているのであれば、これは打撃でゆっくり戦えて、自分の戦いをさらに正常進化させた青木真也との再戦が見てみたくなってきます。1回目の組みで勝つにしろ、一度逃れられて仕切り直しの局面でも同じように立ち技を続けることができれば──青木真也の勝利もあると期待してしまうのですが。
「クリスチャンは……これ、まだ言ったことないのですが、ケージで戦いたいという気持ちがあります。ぶっちゃけ、ロープ掴みがないから。あの時の試合に関して、悔いがあるとすれば『ロープ、掴むなよ』というのは凄くあったので……テイクダウンの時に。
だから、ケージでやらせて欲しい──という気持ちは正直あります」
──その言葉を聞けて嬉しいです。
「なんで、ですか?(笑)」
──あの敗北に対して悔しさを持っているということが分かって、嬉しいです。
「でもリングだから負けたとは言えないですよ。それを言うと、ホントにこっちの負け。絶対に言ったらいけないことです。リングだから負けた──というのは。だから、ケージでやりたいよね、とは思いますけどね」
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【写真】ミキーニョとDJの一戦から、脱線した話が非常に面白いです (C)ONE
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。
青木が選んだ2021年4月の一番、第一弾は4月8日に行われたONE TNT01 からONE世界フライ級選手権試合=アドリアーノ・ミキーニョ・モライシュデメトリウス・ジョンソン戦について語らおう。
──青木真也が選ぶ2021年4月の一番、最初の試合をお願いします。
「アドリアーノ・モライシュデメトリウス・ジョンソンですね。DJは僕の見立てだと年齢が35歳になるし、消耗が激しいんじゃないかとは思っていました」
──それはやはり軽い階級だからというのはありますか。彼は実際、この試合までKO負けもなかったわけですが。
「そうですね。ONEにやってきたのが32歳とかのタイミングで、いつ負けるのかっていうのはあったかと思います。金属疲労みたいな話で、ダメージはなくても運動量や反応という部分で長い間戦い続けてきて、疲れているという印象は受けました。特にあのスタイルですしね」
──UFCではヘンリー・セフードに王座を明け渡してからのONEとの契約ですが、実際にはその前には話がもうできていた。そしてセフードにはリベンジを許しました。
「フライという階級でのスプリットというのは、もうジャッジ次第という部分はあるかと思いますけど。競り合いは多い選手だったとしても、僕的には和田(竜光)選手にバックを取られたのを見ても、もういつ負けるのかという風に捉えるようになっていましたね」
──一昨年の8月に堀口恭司選手にインタビューを行った時に、『弱くなっている』と断言していました。
「そうなると思います。こういうと失礼な言い方になってしまいますけど、若松佑弥、和田竜光、ダニー・キンガドというのは、彼のキャリアにおいて評価の対象になる相手ではなかったはずです」
──つまりはあのままUFCに残っていると、DJはどうなっていたのかと。
「ハイ、もたなかったと思います。だからこそ、ONEに来て良いキャリアを過ごせたように感じます」
──試合前の予想というのは、どうしても過去の実績重視という部分もありますし、DJ有利という声が圧倒的でした。
「ハイ、勿論です。僕も何だかんだと言ってもDJが有利だと思っていました。それはアドリアーノが、そこまでだという風に評価していなかった部分があるので。やはりDJと比較するとジェヘ・ユースタキオやカイラット・アクメトフとイーブンで戦ってきたわけじゃないですか。
だから、2年の間に強くはなっていたかとは思います。あんな風に大きな何かが試合で起こるという風にも見ていなかったですけど、だからといってDJの負けはビックリすることでもなかったです」
──なんとなく分かります。勝利者予想を一つだけしろと言われるとDJの判定勝ちになるのですが、その裏では負けることも、ままあるという予想になるような。
「そうです。DJが勝つだろう──でも、アドリアーノが持っていくことも十分にありうる勝負で。ONEに来てからは、誰に負けるのかという部分であったので。
アドリアーノにしても試合の間隔がこれだけ開いていて強くなっているとすれば、取り組み方が凄かったことになりますね。そことATTの充実振り、勢いというのは関係しているような気がします。そうですね、彼の成長はATTという部分が大きいような気がします」
──ONEとしてグラウンドのヒザという北米のプロモーションでは反則になる技でミキーニョが勝ったことは、他とプロモーションとの差別化を図ることができたのではないでしょうか。
「う~ん、まず試合はヒザではなくても、その前のアッパーで決まっていたと思います。致命傷は最後のヒザではなく、アッパー。サッカーボールキックと同じで、あのヒザもその前にダメージがあるから、当たったようなモノで。
それとグラウンドのヒザ蹴りで、他とONEは違うって言う風に米国のファンが見て『凄い』と思うようなら、格闘技はRIZINルールとか、ミャンマー・ラウェイの方が激しいし、そういうモノの人気が高くなるかと思います。
米国のファンがONEとUFCを見て、別物と思えるほど目が肥えているとは思えないんですよね。そもそも、そこをターゲットにしていないだろうし」
──う~む、ONEの番組の創りもそこを強調してはいなかったですね。グラウンドのヒザ蹴り、直角エルボーが許されているんだという説明VやGGがあったわけでもないですし。
「ルールの違いで言うと、話がズレてしまうのですが……」
──大歓迎です(笑)。
「今日も練習していて松嶋(こよみ)選手と、僕の試合でのエルボーの話になったんです。で、RIZINはリング使用でヒジは互いがOKなら使えるというルールですよね。それはもう別物だよなって」
──合意制なのですね。クロン・グレイシーの試合はヒジがなかったですよね。
「ホベルト・サトシがヒジに認めないとかも。昔、PRIDEで体重差があるとグラウンドのヒザは選択できたのと同じです。で、ヒジでいえばグラウンドでエルボーがないって、もう僕らは考えられないなっていう話になったんです。
レスリングやグラップリング軸になると、拳で殴るのはバックコントロールからだけで、マウントとかハーフでトップだとその距離を創ることはできないから」
──ハイ、そのスペースがあると立たれてしまいます。
「だからエルボーを打ち、下もヒジに反応することなる。そうなればRIZINのルールって、別物だよなっていう話をしていたんです」
──PFLもヒジなしで、ハーフで潜るとなかなか有利なんですよね。
「もうヒジがないと別競技です。でも、お客はそうは見ない。MMAだ、同じだっていう見方かと思います。だってUFCとRIZIN、ONEを別物としては見ていないですよね」
──あぁ、なるほど……そうですよね。立ち技なら、もうムエタイとK-1で統一ランキングなどできないわけで。でも、MMAはヒジの有無、グラウンドでのヒザの有無、サッカーボールキックの有無で別物という風にはならないと。
「だと思いませんか? そこまでお客さんの目が肥えていると凄いですよね」
──米国だとリングなら別物という風に捉えられるかもしれないですね。
「それでもグラウンドでパウンドがあれば、MMAっぽくは捉えられるかもしれないし。ただ、まぁリングでMMAはやりたいくねぇって思っちゃいます(笑)。今はONEもずっとケージでできているんで──ヒジ無しになったり、ケージでないというのは考えたくなくなりますね」
──ONEのムエタイをMMAグローブのケージでやることが定着したのだから、それを逆に立ち技系での特色としてMMAファイターのためにもケージを続けてほしいですね。そして、最後にモライシュについて尋ねたいのですが、これから若松佑弥選手がその座を目指すことになるのと思うのですが、そこに関してどのように青木選手は見ていますか。
「ハッキリ言ってしまえば、あまり興味はないです」
──……。
「なぜ、それを言っちゃえるかというと明確な理由があります」
──ハイ。
「若松佑弥がアドリアーノ・モライシュに挑戦することで世界に繋がっているのか……という風に疑ってしまっているからです」
──若松選手は繋がっていると思っているはずです。
「彼がそう思っているのであれば、本当にしっかりと現状を見て自分のキャリアを考えるべきだし、周囲もそう言ってあげるべきだと思います。この戦いが世界に繋がっているのか──DJが負けたことで、難しくなっちゃいましたね」
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【写真】青木真也の創る物語が、再びONEというプロモーションのなかでも点から線になりつつある (C)ONE
29日に開催されたONE119:ONE TNT04で、エドゥアルド・フォラヤンを1R4分20秒、腕十字で下した青木真也インタビュー最終回。
勝利から13時間後に訊いた青木の心境──最終回はフォラヤンへの想いから一転、人が変わったような口調で行った秋山成勲へのアピールの真意と、青木真也のこれからのストーリー創りについて尋ねた。
<青木真也インタビューPart.02はコチラから>
──パス回しですか(笑)。色々なところに布石を打っているなぁと感心しました。
「コレもいつでもデキるんでっていうのは、示しておきました(笑)。でも、もうちょっとフレッシュ感のある試合がしたいですね。時間がないから、そういう風に思います」
──あの発言により、『なら青木秋山だ』という流れが生まれることも考えられます。
「多分、秋山さんがやらない。僕はそう思います。逆にいえば、ちゃんとそう見ている上でのマイクです。秋山さんからすると、僕と戦っても何も得がないから」
──青木選手の方が組まれた場合、スピンオフのような物語を創ることができると思いますが、逆に秋山選手の方がそこ一本みたいになるとやり辛いというはあるかもしれないですね。
「いや、そうだと思いますよ。それが明確に分かっているから、特にあそこからやりとりもないですし。僕も……なんだろうな、今のONEのなかで誰とやりたいかって聞かれて、誰かの名前が明確に出るってあんまりないですよね。
まぁ秋山さんがやらないってことは、皆分かっていると思います。秋山さんは韓国を何とかしたいと思っていて、僕とやる必要がない。それをいうとエディ・アルバレスだって、別にやりたいわけじゃないと思っていますし……そういうことをやりたいわけじゃないので」
──今日のエディ・アルバレスの敗北を受けて、青木アルバレスIIIが組まれたらレジェンドマッチになってしまうようになりました。
「見ていて、心配になりました。もう打撃で攻めることができなくて、クリンチで攻めていた。以前は打撃のためのクリンチがだったのが、クリンチのための打撃になっていましたからね。打撃があるからこそのテイクダウンだったのに……今回、負けたことでエディ・アルバレスも難しくなっちゃいましたね。階級を落とすとかしないと、物語が創れないですね」
──ONEもあれだけアルバレス推しが凄まじかっただけに、厳しいですね。
「あの1Rのダウンで終わったと思いましたよ。止めかけているのに、止めない(笑)。面白かったです」
──あれはレフェリーが忖度したような感じでした。結果的にアルバレスがあそこから戦えたので不問というか、正当なレフェリングにならなかったかもしれないですけど。それにオンラ・ンサンが返り討ちにあい、二冠揃って失うなど色々とあったイベントでした。
「あのンサンに勝ったオランダの柔術家は面白いですね。強い弱いでなくて、あのスタイルは珍しい。ンサンの相性が激悪でした」
──重い階級も物語を創作するのが難しい展開になってきていますが、青木選手もカードが決まってから動き出すという受け身の展開ですね。
「そういう意味でも、今回は相手も代わってやり抜いた。それが嫌だということじゃなくて、色々とあってもやり通せたので、次はフレッシュな相手とやらせてねっていう感情はありますけどね」
──そこに北米色があればなおさら、で。
「またUFC系、北米の選手が入ってくると思います。アルバレスがこうなってしまって、TNTの数字がそこそこ良かったというのを聞いて──そこはあるかなって期待しています」
──セイジ・ノースカット戦の決定から、いろいろとあってフォラヤンと戦い完勝。そして彼への心温まる気配りがあった今大会での戦い、青木選手自身は物語として満足感はどれぐらいありますか。
「なんか……しんどいッスよ、正直いって。色々な人に協力をしてもらって、責任を背負うことで踏み出すみたいなことこをやっているから。これはこれで楽なモノじゃない」
──このところは、プロモーションサイドと手を取り合って物語を創るという手法を用いなくなっています。
「もう業界を変えようというテンションは全くないです。自分の好きなことを頑張ってやりましょうっていう考え方で。でも、そこを協力し応援してくれる人がいるので、なんだかんだとプレッシャーはあります。それがあるから頑張ることができているんですけどね」
──以前と比べて、純粋に応援したいという関係者が増えていないですか。
「きっと格闘技を真面目にやることで、そこを応援したり、伝えたいという人が回りにいてくれるようになったかと。真面目にやってきたことを理解して、評価してくれる人たちですね」
──そんななかいきなりですが、次はいつ頃と考えていますか。
「どうなんですかね(笑)。5月の終わりは女子大会、そこから録画放送がある。そうなると8、9月ですかね。まぁ年内にもう1試合はあるかなって。ONEも人手不足だから、勝っていると組まれるという感覚はあります」
──勝ち続けることで、世界戦に繋がるのであれば。またその道も見てみたいものです。
「それには……理屈が合うよう、説得力が持てるようにしたいです」
The post 【ONE TNT04】フォラヤン戦から13時間後の青木真也─03─「多分、秋山さんがやらない。逆にいえば……」 first appeared on MMAPLANET.
【写真】戦った者同士というよりもジャンル、興行を背負ってきた者同士だから青木はフォラヤンに感じ入るモノがあった (C)ONE
29日に開催されたONE119:ONE TNT04で、エドゥアルド・フォラヤンを1R4分20秒、腕十字で下した青木真也インタビューPart.02。
勝利から13時間後に訊いた青木の心境──第2弾は勝利者インタビューで話したフォラヤンへの感謝の言葉、そして次の試合に関して挙げた2人の選手についてお届けしたい。
<青木真也インタビューPart.01はコチラから>
──マウント&ヒジ打ちの連続で、フォラヤンの気持ちは「もう楽になりたい」という風に。
「ハイ。肩固めは絶対に嫌だっただろうし、背中も向けたくない。だからマウントを取った形で、ずっとヒジを落とすことができました。気持ちが折れているということまでは言わないですけど、かなり参っているという感じは伝わってきていました」
──もうヒジで勝負がついていたということですね。
「肩固めができて、背中を向けることを嫌がる相手にはエルボーは有効な攻撃ですね。そこからは肩固めとバックチョークを警戒しているから、もう腕しかないですよね。最後はバーバルタップだったので、腕が入っていてタップできなかったというのもありますけど、割と観念した感はありました。だから、もうきつくはしなかったです」
──支点を作って、バチっと可動範囲が大きいケガをする腕十字ではなく、じわりとしぼるような。
「そうですね。痛くなる前に諦めているし、ケガもなかったと思います」
──試合後のエドゥアルドへの発言は、お互いが相手も代わって同じ境遇で仕事を全うしたことに関して、労いの言葉だったのでしょうか。
「それもありますし、僕は2016年に彼に負けて。フォラヤンはそこでチーム・ラカイも一緒に上がった。彼はそこから先頭を走ってきたから。あのポジションの厳しさも分かりますし。フィリピン大会は必ず出場するわけで。どう考えても、消耗しているじゃないですか」
──そうですね。
「フォラヤンには献身という部分があると思っていて。僕もそういう立場にあって──この5年間、お互い良い時と悪い時があったし、『まぁ、大変ッスよね』みたいな気持ちになっていました。同じ階級で、同じような立ち位置で。フォラヤンがやってきたことは大変だと思います。
マーチン・ウェンに負けて、アミールに勝った。そのあと、僕とやってくれた。そこからもタフな試合が続いている。結構、しんどいはずです。だからケージの中でも『もう1回』って言って、向うも指さして笑っていて。そうやって別れたんですけど……。
それは言葉通りの『もう1度戦おう』ということではなくて、これからも格闘技を頑張って続けていると、またどこかで会えるよね──という感じなのかと思います」
──好きなことを続けていると、また巡り合う。つまり『お前、辞めるなよ』というメッセージですね。良い話だ。
「なんだろう……川尻さんとか、北岡さんとか、宇野さんに感じるモノに通じていますね」
──もう、エドゥアルド・フォラヤンも戦友なわけですね。ところで、ここ2試合の勝ちっぷりを見て、国際実況陣からは『クリスチャン・リーと』という発言も聞かれます。きっと勝利者インタビューでも、ベルトに挑戦という言葉が欲しくて『次は?』という問いがあり、そこでの返答がまずセイジ・ノースカットでした。
「セイジは一応決まっていたことだから、やれればねということで。そこまで強く思ってのことではないです。でも、若くてUFCにいた選手とは戦ってみたいですね」
──クリスチャン・リーという名前が出ないのは、もうタイトルとは違うところで戦っていきたいという気持ちの表れなのでしょうか。
「クリスチャンとは、一度白黒ついてしまっているから。そこらへんは弁えているつもりです。僕が26歳ぐらいだったら、この4連勝でクリスチャンとやりたいと言っても筋が通ると思いますけど……年を喰っているので。もう一度、クリスチャンとやるには、それこそセイジやダギ、オク・レユンなんかに勝つ必要があるかと。今の立ち位置でそれを言っても説得力がないです」
──では、若くて台頭してきた選手に勝てばクリスチャンとの再戦もあるということですか。
「あると思います。オク・レユンやダギ、セイジに勝って『クリスチャンとはやりません』というと、もうストーリーラインがおかしくなって、なら『お前はONEでなくて他でやっていろ』ってなりますよね」
──クリスチャンとやる、やらないも青木真也としてのそこで戦う理屈が必要ということですね。
「勝ち続けているうえでタイトルがあるのは、理屈に合うので。ただし次にタイトルとかっていうのは全くないです。別に是が非でもということではないから。自分で言っていることだから、他の人がどう考えるのか分からないですけど、理屈は合っていると思います」
──ONEのことだから、『次!』って言うこともあり得るかと。
「でも僕より優先順位が先の人がいますよね。それは素直に想います。僕、この試合の前に4年前にやってもらったインタビューを読み返していて。マラット・ガフロフとグラップリングマッチを戦う前のインタビューで、『ONEにおけるグラップリングはレジェンド同士になりがちだから、レジェンドマッチになってしまうのか』ということが書かれていて。そこに抗いたいという話をしているんです」
──いやぁ、抗い続けてきたということですね。
「そうなんですよ。4年前も同じことを言ってるわって(笑)。それをシンガポールに来る前に読んでいて、抗い続けることができるなら、もうちょっと抗いたいなって」
──青木選手は減量や階級、好きなこと続けるという精神衛生上の良さもあって、同じ世代の選手よりも心身ともにフレッシュですよね。
「エディ・アルバレスとか見ちゃうと、そう思いますね」
──それでもシンガポールに渡る前日の練習を見せてもらうと、非常に厳しい表情で。好きなことを続けていても、雰囲気が違うんだと感じました。
「試合前は粛々とやるようになります。試合がないときは冒険して足関節とか、スクランブルで逃がすとかできるんですけど、試合前になるとそれがなくなります。足関節でも、ここで極めるっていう入り方で。だから、試合があると練習は面白くないです。格闘技をフレッシュに楽しむということでいえば、試合が終わった直後が一番面白い。
ファイトするってなると勝つことを考えるので。リスク背負えないから、面白くないです」
──それが試合前の素なのですね。ところで勝利者インタビューもセイジ・ノースカットまで純粋に青木真也だったのが、秋山成勲選手の名を出すやいなや、雰囲気が変わり青木選手は演者になりました。
「アハハハ。それは秋山さんが解説するって知っていたから、そっちにもパスを回さないとなって」
<この項、続く>
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【写真】この試合後の表情からも青木自身にとっても、会心の勝利だったのではないだろうか (C)ONE
29日に開催されたONE119:ONE TNT04で、エドゥアルド・フォラヤンを1R4分20秒、腕十字で下した青木真也。
鮮やか、そして完成度の上がったファイトでの勝利から13時間後に現地で隔離措置中、最後のPCR検査を終えたばかりの青木に話を訊いた。
打撃の組み立て、テイクダウンの引き出し、そして腕十字という流れとこれからについて、共同会見とは少し違った青木の声をお届けしたい。
──フォラヤン戦の勝利から13時間ほど経過しました。
「昼間の試合ってやっぱり難しいですね。初めてだったし。コロナ禍でもあって、試合が終わって宿に戻ってきたのが朝の10時で(笑)。どう1日を過ごせば良いのか……生活リズムが狂っちゃいますよね。
試合に向けての調整も難しくて、これはどうしたものか。興味深いところでもありました。朝の調整も興味深いです」
──今の雰囲気も、試合当日とは思えない落ち着きようです。
「テンションも解放感も夜の試合の時と違いますね。なんか別競技かっていう感じで。夜に試合をがした時は朝まで寝られないタイプなんですが、そこは変わらなずここまでは寝ていないです。でも、普通に夜中になって眠ることになると思います」
──現地でリードカードは8時半の開始で、青木選手も9時半ごろには試合をしていた。そもそも会場入りは何時だったのですか。
「6時45分で、起きるのは5時半でした。エディ・アルバレスはインタビューで、米国にいるときと時間を変えないと言っていましたけど、彼の場合はそのままで良くて」
──ハイ、なんせ米国時間に合わせてイベントがあるわけですから。
「でも、僕はシンガポールと1時間の時差の日本で普通に生活していて、こっちに来てから早く寝るようにしたり調整が必要になってきて」
──時差はないけど、生活リズムを現地で変える必要がある。アジアの利点がなかったわけですね。
「ほんと、これどっちが良いんだろうってありましたね。調整にしても、日本にいる時には朝の8時から練習に来てほしいって言えないですからね。
それに栄養の接種の仕方とかも変わってきます。僕は最近では胃の中を空っぽにして試合がしたくて。そうなると、朝の試合だと朝食を殆ど取れなくて」
──夜の試合だとしっかりと朝食が摂れるので、当日のエネルギー補給で問題がでますね。
「ハイ。エネルギーを蓄えようと思うと、朝の3時とか4時に起きないといけなくなって。そうなると普段と生活リズムが違い、バイオリズムも違ってきますね」
──いやぁ、なかなか大変です。でも、そういう変化があったとは思えないほど、試合は完璧でした。
「どこまでいっても試合は恐怖を感じるし、怖いモノだと再確認できましたけどね」
──スタンドで非常に落ち着いていました。
「そこは開き直りというか、もう自分が信じた戦い方でやる──この宗教でやるんだって。MMAPLANETの岩﨑さんの武術で見るってヤツを読ませてもらいましたけど、腹が据わるということなんですかね。
岩﨑さんの理屈は、僕も分かっている理屈で。あのパンチを出させないというのは……相手にパンチを出させたのは、僕のミス。僕がプレッシャーをかけて、岩﨑さんのいう質量で上回って気圧せていたら、相手は出せないはずなんで。でも岩﨑さんの理屈でいうと完全に下がらせないといけないから、ケージのなかで実践できるかというのは別の話です。理屈としては凄く分かります。
僕も出させてしまったことは悪いけど、相手を褒めてほしい(笑)。
あの状態でよく出したな……みたいなところはあります。なんだかんだでフォラヤンはガッツがあると思いました」
──組みにいくまでがガムシャラ感がないです、今の青木選手は。
「ハイ、そこはゆっくり創って見えているというか。古い言い方ですけど、打・投(倒)・極というところには近づけている気はします。でも20年やって、ですからね(苦笑)」
──それはそこまで積んできた結果で、成果が出たのだから良いではないですか。ここまで続けてきたから、できるようになってきたという見方ができると思います。
「それは凄く良い見方をしてもらっています(笑)。もうチョット早い段階で、これができていたら身の振り方も変わっていたと思います。やっぱり蹴りや距離、時間が掛かることを選択してしまったので、そこは仕方ない部分ですかね」
──時間を掛けて身につけたものは、直ぐに失わないです。
「そうなんです。時間をかけてやってきたものは、相手が研究し辛いし、真似できないですよね。パッとできるものって、真似しやすいじゃないですか。だからなかなか真似をしづらいモノではあると思います」
──今回の試合、組む前よりも、組んだ後で離れられることが一番怖かったです。
「分かります。僕も嫌です。だからこそ、そうなることを想定して覚悟もしていて。そのために、いくつかの引き出しも用意していましたしね」
──あそこで飛びついてガード、フォラヤンが寝技に行きたくないから踏ん張る。その刹那、着地して小外という流れは、用意されていたものなのですね。
「もうジャンピンガードでもないですよね。2005年にマッハさんと戦ったときに、飛びつきガードしてポスチャーされると投げるとかやっているんです」
──修斗での桜井マッハ速人戦ですね。
「グラウンドに行きたく相手、ポスチャーに対してああいう動きは壁レスで練習中にもしていて。しっかり抱き着いてしまうと、相手の重心も真ん中にあるので着地しても簡単に倒せない。だから、引き込むようにする。そうすると、相手はポスチャーして重心が後ろになるから、着地して倒すことができます。
グラップリングがあるからこそなんですが、レスリングでもなく柔術でもない──MMAでしかない攻防だと思います」
──青木真也のMMAですよね。寝技に持ち込まれたなくない相手、テイクダウンの対処をしてきた相手にアレができるのは。それと最後の腕十字、こういうと申し訳ないのですが青木選手らしくないフィニッシュでした。マウントから腕十字は。
「アレはもうエルボーですね。腕十字は外されると下になるからリスキーなんですけど、フォラヤンにそれだけの戦意は残っていなかったです。
ヒジで削っていたので。もう取ってくださいいう精神状況だったと思います」
<この項、続く>
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