お知らせ
— ONECHAMPJP (@ONECHAMPJP) October 5, 2024
箕輪ひろばがファイトウィーク中の練習以外での怪我により欠場となりました。 https://t.co/upDnTG25Ox
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お知らせ
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箕輪ひろばがファイトウィーク中の練習以外での怪我により欠場となりました。 https://t.co/upDnTG25Ox
【写真】その端麗な容姿を褒められると、照れたようにお礼の言葉を発する。実はシャイかもしれないバンマードォーチーだった(C)ONE
5 日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されるONE Fight Night25。三浦彩佳の対戦相手のジヒン・ラズワンがハイドレーションがパスできず試合が中止になり、ムエタイでも同様に1試合がキャンセルに。他にもハイドレーションをパスすると体重がリミットまで落ちない選手が2名出るなど、ONE計量=ハイドレーションの効果が薄まる中で、その数値で是非を決めるシステムにほころびが感じられつつある。
Text by Manabu Takashima
そのハイドレーションをパスするために、体重オーバーとなった1人がダニエル・ウィリアムスと対戦するバンマードォーチーだ。中国のイケメンファイターは、実に15カ月振りの実戦となる。驚いたことにロングレイオフには、映画出演が関係しているというバンマードォーチーに話を訊いた。
――バンマー、今週末にダニエル・ウィリアムスと対戦します(※取材は2日に行われた)。ところで去年の7月にヴァウテル・ゴンサウベスに勝利して以来、15カ月振りの試合となります。これだけの間、試合をしなかったのは何か理由があったのでしょうか。
「ONEからは一度オファーがあったけど、体重が落とせないから断ったんだ。今年に入ってからは、しっかりと練習はしたけど……ちょっとしたことがって試合からは遠ざかってしまっていた」
──ちょっとしたの詳細を尋ねることは控えますが、体重が落ちないから試合を断ったというのはショートノーティスでのオファーだったのですか。
「そうだね、カタール大会の3週間前だった。ちょうど映画の撮影が終わったばかりで、あの期間で体重の調整は難しかった」
──映画に出ていたのですか!!
「そうなんだ、中国で最初のボクシング世界王者になった人物を題材とした映画に出演していたんだよ」
──バンマーはどのような役を演じていたのでしょうか。
「主役だよ(笑)」
──えぇ、バリバリのムービースターではないですか。
「そうかもしれないね(笑)。他にも映画出演はしているし、TVにも出ている。でも、僕の目標はチャンピオンベルトを巻くことで銀幕のスターになることではない。MMAで成功したいんだ。
なぜ僕が映画に出たり、TV番組に出演できてより大きな額の報酬を手にできるのか。それは僕がMMAファイターだからだよ。監督やプロデューサーがMMAの試合を通じて僕のことを知ったのだから。MMAファイターだから、この機会を手にすることが可能になった。8歳からやってきたMMAこそが僕の人生。漢として、MMAやマーシャルアーツでキャリアアップすることを諦めたくないんだ。
それに映画界やTV業界で活動したことで、僕は人として成熟できた。ムービーワールドとMMAワールドは関わっている人間が違う。本当に違うんだ。彼らと会話したり、現場の様子をこの目で見て違う世界を知ることができた。僕の試合を通してMMAを知った人もいる。責任感が増したよ」
──なるほどです。この間、バンマーが所属するエンポ―・ファイトクラブ所属のスムダーチー、イー・チャアやロンチュウというファイター達は上海や米国で練習するようになっていますが。バンマーは、ずっとエンポー・ファイトクラブでトレーニングを続けてきたのでしょうか。
「そうだね。エンポー・ファイトクラブでの練習は、良い指導者に恵まれているし満足している。ただ、この試合後は、僕も新しい技術を身に着けるために米国で練習しようかとも考えているよ」
──では、ダニエル・ウィリアムスの印象を教えてください。
「素晴らしいストライカーだ。これまでもストライカーを相手に、良い試合をしてきた。それに僕の友人のツオロンチャアシーに勝っている。同時に僕も打撃には自信を持っている。この試合は互角の展開になるだろう。技術的にも、互角だと思う。ただ、この試合はMMAだからね。打撃だけでなく、グラップリングでも華麗な動きを披露したい。MMAの神髄とは何かが分かる。そんな試合になるだろう」
──ところでDJが引退をしました。フライ級王座を巡っての戦いは激化するかと思います。
「DJはいつだって僕のアイドルだった。大好きで、本当に尊敬していたんだ。DJの試合から学ぶことは本当に多かった。なぜ引退するのか驚いたよ。今も完璧なアスリートなのに……。ただ僕に関しては、この試合が終わるとストロー級に戻そうと思う。今年になるのか、来年になるのか分からないけど次の試合はストロー級で戦うつもりなんだ。ストロー級の黄金のベルトが僕のゴールだ」
■視聴方法(予定)
10月5日(土)
午後8時45分~U-NEXT
■放送予定
10月5日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT
■対戦カード
<ONEキックボクシング世界ライト級選手権試合/3分5R>
[王者]アレクシ・ニコラ(フランス)
[挑戦者]レギン・アーセル(スリナム)
<ムエタイ・ライト級/3分3R>
シンサムット・クリンミー(タイ)
ユセフ・アスイック(デンマーク)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
アレクセイ・バリカ(ロシア)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
マンスール・マラチェフ(ロシア)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ジョハン・エストゥピニャン(コロンビア)
ザカリア・ジャマリ(モロッコ)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
箕輪ひろば(日本)
サンザール・ザキロフ(ウズベキスタン)
<ムエタイ119.25ポンド契約/3分3R>
エイミー・ピルニー(英国)
シール・コーエン(イスラエル)
<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
トンプーン・PKセンチャイ(タイ)
ルイ・ボテーリョ(ポルトガル)
<136.25ポンド契約/5分3R>
バンマードォーチー(中国)
ダニエル・ウィリアムス(豪州)
【写真】 溢れる自信というか、自信しかなかったザキロフ(C)ONE
5日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE Fight Night25で、箕輪ひろばと対戦するサンザール・ザキロフを初インタビュー。
Text by Manabu Takashima
キャリア10戦10勝、フィニッシュ率90パーセントの脅威の20歳は3月に対戦した本田良介、今回戦う箕輪ひろば、そしてONE世界ストロー級王者ジョシュ・パシオを弱いと一刀両断した。
――サンザール、ONE FFでの試合を見ても輝かしい将来が待ち受けているであろう20歳のファイターが、初めてONE本戦といえるFight Nightショーで戦います。今の気持ちを教えてください。
「これまでの試合を振り返って、どうこういうつもりはない。まだ序の口だよ。全てはここから始まると思っている。今週末のビッグショーが、待ちきれないよ」
――過去の試合を振り返って何かいうつもりはないということですが、申し訳ないです。3月の本田良介選手との試合を振り返っていただけないでしょうか、あの試合は日本のファンに大きな衝撃を与えました。
「まぁ、ぶっちゃけていうと3月の試合は本当にイージーだったよ。そして、今週末の試合も同じだ。イージーファイトになる。それは言っておくよ」
――何と!! 自信満々のサンザールですが、いつ頃から格闘技を始めたのでしょうか。
「両親が5歳の時に僕をテコンドーのクラスに連れて行った。それからハマって、僕が成長するのと時を合わせてウズベキスタンでファイト・ビジネスが成長をしたことは、とても幸運だったと思う」
――テコンドーがベースなのですね。大会での優勝経験などもありますか。
「ここまでに獲得したタイトルは多すぎて、全てを話すにはインタビュー時間が足らないよ。そのなかで、伝えるべきなのはウズベキスタンにあるユニバーサル・ファイティングのナショナル選手権で5度優勝していることかな」
――ユニバーサル・ファイティング? 大会名なのですか。
「ノー。そういうルールの戦いだよ。ハンド・トゥ・ハンドコンバットでコンバットサンボに似ているけど、道着は上下とも長袖で……半パンではない。ただ本当にコンバットサンボに似ている」
――それはプロMMAファイターになるために、ユニバーサル・ファイティングを戦っていたということですか。
「ウズベキスタンでMMAが公に開催されるようになったのは、2020年なんだ。それまでMMAの練習をしていても、戦えるのはハンド・トゥ・ハンドのユニバーサル・ファイティングだけだった。だから僕はロシアに移り、MMAの練習をして試合にも出ていた時期がある。
そしてウズベキスタンでMMAが認められるようになり、母国に戻ってキャリアを積むようになったんだよ」
――なるほど、20歳のサンザールにはそのような格闘技歴があったのですね。つまりMMAは10戦でもハンド・トゥ・ハンド・コンバットの経験は豊富だったと。ところで今もウズベキスタンで練習を続けているのですが。
「ウズベキスタンとダゲスタンを行き来している。試合前になるとダゲスタンで練習をすることが多いかな」
――サンザールは打撃とテイクダウンにタイムラグがなく、一つの動きになっていることがとても印象に残っています。特にミドルから着地した直後にダブルレッグに入ったのは驚きでした。
「それが可能になったのはテコンドー時代から、柔道、グラップリング、サンボ、ハンド・トゥ・ハントと自分を律してコンバットスポーツに向き合ってきたからだろうね。それらの技術をスピードに乗ったまま合体させることができる。
そういう風に印象に残る動きをするのも、僕の仕事だ。と同時に対戦相手次第だよ。どういう動きができるのかも。直近の3試合で、まともに僕と打撃の攻防ができた相手は1人だけだった。他の2人は1発か2発しか、僕を殴ることができなかった。つまり、対戦相手が強くないと自分の攻撃を仕掛けることが可能になる。でも、ファンが驚くような動きをこれから見てもらえるようになるに違いないよ」
――では今週末の試合ですが、相手は日本の箕輪ひろば選手です。イージーファイトになるという言葉が既に聞かれていますが……。
「僕らは同じレベルにはない。現実的に彼は僕と互角の攻防を繰り広げ、ファンが喜ぶような試合はできない。すぐにフィニッシュして、5万ドルのボーナスを手にする。作戦的にはプレッシャーを掛けて、そこからより戦略的な動きを見せつつ、最後はボコボコにしてフィニッシュだよ」
――この試合はタイトルショットに近づくためには欠かせないトップ5入りが掛かった試合といえます。
「う~ん、現ストロー級王者のジョシュア・パシオと僕を比べることはできない。アイツは弱すぎる。ジャレッド・ブルックスは対戦相手として考えても、楽しみな相手だ。ブルックスこそトップで、僕が戦いたいと思うファイターだ。彼との試合はタフで、それだけリスクの高い戦いになるだろうね」
――サンザールはウズベキスタンでも特別な存在だと、ホッとします。逆にウズベキスタン人選手は皆がサンザールのようにポテンシャルが高いのであればゾッとします。
「ウズベキスタンには本当に多くのグッドファイターがいる。ただ、僕はウズベキスタンで最強の1人だと思う。皆が僕のレベルに至ってはいない」
――それは良かったです(苦笑)。では最後に改めて土曜日の試合に向けて、意気込みをお願いします。
「打撃を見せたい。ボーナスを取る可能性が高くなるからね。作戦に則して戦いつつ、ファンが喜ぶ華麗にファイトを見せたい」
■視聴方法(予定)
10月5日(土)
午後8時45分~U-NEXT
【写真】箕輪のMMA観が、どんどん明確になってきた (C)SHOJIRO KAMEIKE
5日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE Fight Night25で、箕輪ひろばがサンザール・ザキロフと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
7月にジェレミー・ミアドを下して3年振りの勝利を得た箕輪。次は早くも9月のONE168米国デンバー大会でザキロフとの試合が決まれていたものの、この時はザキロフのビザ取得問題で試合が延期となっている。改めてタイでザキロフと相対することになった箕輪がチームメイト山上幹臣の勝利と、自身も連敗脱出で見えてきたものを語った。
――ミアド戦の勝利で連敗を3で止めました。大きな勝ち星だったかと思います。
「そうですね。勝つことが3年振りでしたし。それと『俺、昔は頭良く戦っていなかったな』ということを思い出したことも大きかったです」
――「頭良く戦っていなかった」とは?
「ONEに来てアディワン、シウバと戦って、2試合とも上手く作戦がハマッたんですよ。真っ向勝負したわけではなく、アディワンの嫌な距離をつくって、アディワンが入ってきたところに合わせてテイクダウンを奪う。そこから箕輪ひろばのフィールドで戦う。シウバ戦も相手に寝技をさせるけど、一本を取らせないところで殴り続ける。スクランブルし続ける。その作戦が上手くハマって。だから上手く作戦を立てて、それを実行に移せれば勝てるというふうに思い込んでいました
だけど修斗で戦っていた時は作戦云々じゃなくて、キツイところに突っ込んで行って勝つという試合だったんですよね。それが修斗の勝ち方だと思うんですよ。シンドイ試合をして勝つ。僕たちはそういう試合を視て育ってきましたから」
――かつての北沢タウンホール大会は、そういった試合で溢れていました。
「もっと掘り下げると、アマチュア修斗があるじゃないですか。1日で6試合から8試合ぐらい戦って、その中で勝ったヤツだけがプロに行ける。そういった試合を経て、自分もシンドイところに突っ込んでいけるところが強みでした。でもONEに来て最初の2試合で、頭良くスカして勝つような戦い方を覚えてしまって。
それはそれで良いんですよ。しっかりと作戦を立てて実行することを捨てたわけじゃないです。でも僕の場合は前提として『シンドイところで勝負できないと勝利に繋がらない』と改めて思いました」
――3連敗中は、シンドイところで勝負できていなかったのですね。
「圧倒的なレスラーと、バックボーンのない僕が戦う場合は、ずっと『レスリングじゃない部分で戦う』と言ってきました。でも、そうじゃない。MMAという競技で戦う以上、レスラーだろうがストライカーだろうが、各々のフィールドで戦って勝負できないと『総合』にならないと思い始めたんです」
――レスラーがストライカーを相手に打撃で上回らないと組むことができない。それが現在のMMAだと思います。
「そう考えると、さらにMMAと競技が確立してきていますよね」
――ミアド戦では思い出した部分だけでなく、自分自身の進化を出すことはできましたか。
「ミアドって見たとおりのストライカーじゃないですか。そこに対して『もらいたくないから打撃の攻防をしない』『パンチを当てに行かないで寝技に行く』という展開ではなく、しっかりミアドと打撃の展開をしたことですね。
キチッと打ち合ったなかでテイクダウンする。本当は一本取りたかったけど、そこで取れなかったのは反省点です。でもスクランブルでキチッと対処できたことで、『これがMMAだよな』って改めて思いました」
――1Rにダウンを喫したこともあり、「なぜミアドを相手にここまで打ち合うのだろう?」とヒヤヒヤした気持ちもありました。箕輪選手にとっては、その打撃の攻防が自分にとってやるべきことだったのですね。
「自分の課題としていたのは、相手の強いところから逃げないことでした。もちろんダウンさせられたのは良くないです。でもあのダウンがあっても尚、僕がストライキングで押すことができました。自分からパンチを当て、プレッシャーをかけてから寝技に持って行くことができた。打撃を嫌がっている状態では、絶対にあの展開にならない。だから結果オーライかな、と考えています」
――あの試合展開でスプリットになるのは怖くないですか。
「その怖さはあります(苦笑)。3人のジャッジのうち1人は1Rのダウンのみでミアドが勝ちだと判断した――ダメージに判定を持っていかれすぎだろとは思いますよ」
――現在のMMAはダメージ重視というか、コントロールよりも手数のほうが重視される傾向にあります。その判定基準について考えたり、対策を施すことはありますか。
「ジャッジメイクについてですよね。もちろん考えます。自分はフィニッシュを狙ってはいるけど、スパッとしたKOもできないし、ルオトロ兄弟みたいな一本も取れない。誰が見ても『ルオトロが勝っているよね』と思われるような寝技の展開もできない。そんななかで、最近は圧倒的に箕輪が勝っているという展開がないと、判定に影響しない。難しいですね。
今、僕の中ではテイクダウンして、スクランブルを起こさないほうが良いのかなとも思っています。スクランブルって先にアクションを起こしているほうが取っていると考えていたけど、おそらく『どっちつかず』の状態なんですよ。どんなに良いスクランブルの展開をつくっていても、最後に下になっていたらジャッジメイクで弱いですし。そのあたりは頭の中に入れていますね」
――ONE参戦以降、勝っている試合は全てスプリットの判定勝ちです。毎試合、判定がどうなるのだろうとヒヤヒヤしませんか。
「僕の中では3-0なんですよ。3-0で圧倒的に勝っている試合をして、それでギリギリ、スプリットなんですよね。だから『ギリギリどちらが勝ったのかな?』みたいな試合はやめようと思います」
――なるほど。そのミアド戦から当初は2カ月の試合間隔で、9月にザキロフと対戦する予定でした。今回は試合オファーが早かったのですね。
「実はミアド戦でタイに行った時、もう次の試合の話はありました」
――それはONEから評価されているということでしょうか。
「いや、相手を上げたいマッチメイクだと思いますよ。マネージメントサイドとマッチメイカーがしていた話なので、僕は全て直接知っているわけではないけど……。本当ならミアドに勝ったあとは、もっとランキングが上の選手と試合したかったです。でも米国大会に出たかったので、短い間隔でもザキロフとの試合を受けました。
ザキロフが強い相手だということは分かっています。ノーランカーだけどFFで3連勝していて、リスキーな相手ですよ。だけど自分も米国大会で試合がしたくて、もしミアド戦で怪我をしていても僕は米国大会に出ていたと思います」
――しかし相手のビザ問題で試合は中止に……。
「アッタマに来ましたね。しかも試合の2週間前、渡航する3日前で。いつもは5日前に現地入りするんですけど、開催地は標高が高い場所だから早く行って体を慣らしておこうと思って。それが――米国で着るために、10万円以上するスーツを買った直後ですよ」
――というと?
「クレジットカードを切った直後に連絡が来たんです。マジかよって(苦笑)。米国大会に出たいからザキロフ戦のオファーを、しかも2カ月の試合間隔でも受けたわけで。それをスライドされたら――ちなみに、そのスーツ購入の模様はYouTubeチャンネルで公開する予定なので、ぜひ視てください。試合延期の連絡が来るところも入っていますから(笑)」
――アハハハ、それはぜひ拝見します。ただ、9月の試合に向けて仕上げていたわけなので試合が1カ月後にスライドされるのは何か影響はありませんでしたか。
「メンタル面で『ふざけんな、マジかよ』という気持ちはありましたけど、山上さんの試合もあったりして。体重も1カ月前には創っていましたから、そこからカツカツで減量する必要もなく。特に今思ってみれば影響はなかったと思います。ただただ頭に来たという」
――今、名前が出た山上選手ですが、9月22日に修斗で約11年振りの勝ち星を得ました。
「いやぁ……、……、……嬉しかったです。僕は3連敗したあと、ミアド戦が3年振りの勝利だったじゃないですか。山上さんは10年かけて3連敗から脱出して。僕、山上さんが2014年の最後に出たROAD FCも現地へ一緒に行っているんですよ。それで今年のグラジの復帰戦もセコンドに入っていて……今までセコンドとして勝つ姿を見たことがなかったんです。
観客として会場に行っている時は勝っていて、僕がセコンドとして入るようになってからはずっと負けていました。試合前はセコンドも含めて皆で「ヨッシャ、行くぞ!」と気合を入れて、試合が終わると2人でバスの中で何も言わない時間が続くんです。前回も大阪で負けて、2人で何も言わないままタクシーで帰っていて。……本当に今回、勝てて良かったです。とにかく、それに尽きます」
――本来の試合スケジュールでいえば、箕輪選手がザキロフと試合をしたあとに、山上選手が修斗で試合をするはずでした。運命のいたずらか、山上選手が先に勝利することで、箕輪選手も勇気をもらったのではないですか。
「それは間違いないです。そもそも今年1月、山上さんが復帰することが決まっていたなかで、自分が負けて『バトンを渡せなかったなぁ……』と思っていたら、山上さんが大阪で負けました。あの時はもう最悪の気分で――だけど7月に僕が勝つことができて、次も僕の試合があったじゃないですか。もう一度自分が勝ってエンジンをかけたいと思っていたら試合がなくなって。山上さんが一緒にヘコんでくれましたよ。『なんで米国大会じゃねぇんだよ』って(笑)。僕は『もう自分の試合に集中してください』と伝えました。
今回の試合、ハンパないプレッシャーを感じていたと思うんですよ。相手は若くて勢いがあるベテラン喰いの選手で、何よりも失うものがない。たぶん山上さんにしてみれば、あと2年したら戦いたくない相手じゃないですか。それだけまた成長しているはずで。あの年齢の頃の僕たちも、そんな感じだったんですよ。ガンガン大物を喰っていって。それが分かっているから、一番怖い相手でした」
――グラジでの復帰戦も同じ状態でした。
「技術面や体力面は問題なかったと思います。でも感覚的な部分で、1Rにあの展開で仕留めきれない。生物としての勝負勘は戻ってなかったです。それこそ10年前は道場でも『ブッ殺してやる』って感じで練習していて。たとえ試合前でもぶっ壊されるほうが悪いと思っていましたから。
でも10年経って練習体制も変わり、相手のことを労りながら『なるべく長く怪我もストレスもなく続けていきましょう』と練習できる環境が整ってきたんですよ。そんななかでの復帰戦だったから、最初から『感覚的なものは戻らないまま試合するしかないんだろうな』とは思っていました」
――……。
「でも、それって試合をしながら感覚を戻していくしかないんですよ。だから復帰戦で負けて、もう一度取り戻しながら勝つことができて良かったです。近年の風潮って、何でもスタイリッシュでコンパクトに――という感じじゃないですか。何でも便利になって、いらないものはそぎ落とす。もちろん、それだけ便利になって助けられている面もありますよ。でも僕は昔の殺伐した雰囲気も好きで。そのピリピリしていた道場に憧れて入ったところもありますからね。僕は便利ではないハーレーも、昔から変わらない革ジャンも好きなんです。
何でもかんでも最先端にすれば良いってものじゃないから。MMAも同じで、何でもスタイリッシュでそぎ落とせば良いわけじゃない。無駄なこともやってきたからスタイリッシュになってきている面もある。そこのバランスが一番大事なんだろうと思います」
――一見そぎ落としているようで、実際は端折っているも増えました。それは何が無駄で、何が無駄ではないのかを認識できるような経験を積んでいないと、区別がつかないのも当然のことです。結果、効率化の名のもとに端折るしかなくなっている。
「やっぱり何事も経験だと思うんですよ。自分の場合は、これまで人生で3連敗を経験したことがなかったので、逆に20代のうちに3連敗していて良かったと今は思っています。今が26歳で、これから3連敗したあとに戻してタイトルマッチ――となったら、そのタイトルマッチで終わっちゃいますからね」
――今回のザキロフもプロデビュー以来12連勝中で、若く勢いがあって失うものはないであろう一番怖い相手です。
「おいしくない相手ですよ。若くて、強くて、地位だけない(苦笑)。ただ、噛み合う気はしています。お互い、やっていることはMMAじゃないですか。お互い何か一つだけ要素が飛び抜けているタイプではなくて。
テイクダウンの入り方もレスラーっぽくなく、ちゃんとMMAとしての入り方をしてくる。巧いファイターですね。今回の結果がどうあれ、この先もマークしておかなくてはいけない選手だと思いますよ」
――そのザキロフを相手に、どのような試合を見せたいですか。
「相手が打撃と寝技、どっちで来るかヤマをはらない、というのがポイントかもしれないです。たぶん出たとこ勝負になるんですよ。僕の試合映像はたくさんあるけど、相手の映像はない。そのなかで、どちらの適応能力が上回るか。
ファーストコンタクトで決まると思っています。最初に相手のペースになったら、戻すのは大変になるでしょうね。逆にコッチがペースを握れば、そのまま押しつぶしていける展開になる。今回は1Rの出だしが遅れたほうが負けるんじゃないか、と」
――なるほど。
「お互い最初に打撃がハマッたからといって、ずっと打撃で攻めるようなタイプでもない。それはお互いに。『寝技で逃げられたから、もうテイクダウンには行かない』ということもない。おそらく判定決着になるとは思うし、お互いにシンドイ試合になりそうですね。でも僕は前回の試合で学んだとおり、相手の強いところから逃げないですから」
■視聴方法(予定)
10月5日(土)
午後8時45分~U-NEXT
2024/07/24
0:00朝倉未来 那須川天心 インライ 細川バレンタインを斬る
6:29 手越祐也 国歌独唱中に朝倉未来 平本蓮が反応
9:28 超RIZIN出場選手 大モメ
14:01 朝倉海 UFCの洗礼を受ける
15:25【18禁】青木真也 慰謝料不払い
19:25 モラレス 王座戦。トイレ掃除は当たり前。ケイプ「作り話」
21:10【18禁】堀江圭功
22:28 伊澤星花 RENAに
22:51 カード決定。ロッタン。安本はると。ミックス。箕輪ひろば。瀧澤謙太。
25:26 菅原美優 二串ダンゴ
26:08 ガルシア 超RIZIN決定
26:40 ストラッサー ガキええ加減にせぇや
#朝倉未来 #平本蓮 #那須川天心
【写真】スプリットになる理由が分からないほど箕輪が攻め切った(C)ONE
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
箕輪ひろば(日本)
Def.3-0
ジェレミー・ミアド(フィリピン)
サークリングする箕輪が左インローを蹴ると、ミアドが『来い、来い』と挑発する。箕輪は左右のステップからダブルレッグで組んだ。ロープに押し込まれながらスプロールしたミアドが、右に回って離れる。リング中央で左フックを当てたミアドは、打ち合いで箕輪のアゴを跳ね上げた。箕輪も打ち合いに応じるも、ミアドの右を受けてダウンしてしまう。ミアドは追撃のヒザを狙ったが、すぐに立ち上がった箕輪が組んで、ミアドをロープに押し込んだ。ここでミアドがロープを掴んだとして、イエローカードが提示される。
再開後、箕輪がボディロックからグラウンドに持ち込むも、立ち上がったミアドがバックに回る。離れた箕輪は距離を詰めていく。左目付近に腫れが見られる箕輪だが、ダブルレッグでミアドに尻もちを着かせた。そのまま背中まで着かせるものの、スクランブルからトップを奪われてしまう。箕輪もスクランブルに持ち込むが、ミアドが左腕を差し上げてスプロールする。なおもシングルレッグで押し込んでいく箕輪は、再びミアドに背中を着かせた。ロープから頭を乗せたミアドに対し、パスした箕輪。しかしミアドが頭をロープ外に出しているため、パンチを打ち込めずに終わる。
2R、リング中央からサークリングする箕輪。箕輪の右カーフにミアドが左フックを合わせる。パンチで下がらせてからシングルレッグで組んだ箕輪が、背中を着かせてパスする。レフェリーはミアドの頭がロープ外に出ないよう、ドントムーブでリング中央に向けた。スクランブルからガブった箕輪が右ヒザを突き刺し、さらにシングルレッグで押し込んでいく。箕輪はシングルレッグ、ダブルレッグ、ガブりからのヒザと切り替えながら攻め込んでいく。
スプロールしたミアドが立ち上がり、箕輪をコーナーに押し込む。切り返した箕輪は、離れたミアドを追いかける。疲労が見られる両者だが、箕輪が打ち合いからダブルレッグで押し込んだ。シングルレッグ、ボディロックと揺さぶっていく箕輪は、小外刈りでグラウンドへ。細かくパウンドと鉄槌を連打すると、やはりミアドが頭をロープ外に出す。再びレフェリーがミアドの頭をリング中央に向け、箕輪が連打していった。
最終回、ミアドが左ジャブを突く。頭を振って前に出る箕輪が右を当てた。さらに左フックでミアドのマウスピースを吹っ飛ばした箕輪がダブルレッグで組む。背中を着かせた箕輪はパスして、サイドからパンチを落としていく。上半身を起こそうとしたミアドを抑え込む箕輪。ミアドは右腕を差し上げて、エビからガードに戻した。一度立ち上がった箕輪は、ミアドの足を捌いて逆サイドに回る。
Zハーフのミアドの顔面に鉄槌を落とす箕輪は、ミアドがロープ際まで下がるとマウントへ。しっかり抑え込みながら右ヒジを落とす。ミアドはハーフに戻し、右腕を差し上げてリバーサルを狙ったが、箕輪顔面にヒザを打ち込んで起き上がらせない。明らかに嫌がる表情を浮かべているミアドに、箕輪がサイドからパンチとヒザを叩き込み続ける。残り10秒でミアドが立ち上がるも、箕輪がロープに押し込んでいった。
【写真】今回の部屋は角部屋、ドアをあけて角があり──幅がほぼベットの長さ。まさにカド番。ここから脱さなければ (C)MMAPLANET
6日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されるONE FN23「Ok vs Rasulov」に箕輪ひろばが出場し、ジェレミー・ミアドと対戦する。
Text by Manabu Takashima
リト・アディワン、元世界王者のアレックス・シウバに勝利してスタートを切った箕輪のONEでのキャリアだが、その後は3連敗と苦戦を強いられている。
動きは悪くない。しかし、試合中に急所蹴りや頭突きを食らう。そしてリズムが乱れ、集中力も下がる。そんな2試合が続いたことで、箕輪のメンタルが変わった。さらにいえば9年5カ月振りの復帰戦を戦った──背中を追い続けてきた山上幹臣のTKO負けを見て、自身の立ち位置を再確認できた。
小賢しくMMAをしないこと。全力投球、気落ちで負けない箕輪ひろばが、ミアド戦で戻って来る──のか。
「そうなんですよね。互いに3連敗同士だし、向うがそうでなくても僕が3連敗している時点で対戦相手云々は何も言えないです。妥当なマッチメイクだと思っています。僕、ランカー以外と戦ったことがなかったんです。
だからこそ、差はハッキリさせないといけないと思っています。前回の試合の時も言っていたんですけど」
──ジャレッド・ブルックス、ボカン・マスンヤネ、グスタボ・バラルトとレスリング……特に後者2人は徹底してレスリング+打撃というファイターだったのが、今回はボクサー&寝技のミアドです。この辺りで、戦い方が変わってくるということはありますか。
「ここ3試合、レスリングがあったのでテイクダウンされないように……やられないようというゲームプランでした。それが良くなかった。だからスタンドでも殴って、テイクダウンしてもパウンド、一本とフィニッシュを狙っていきます。
やられなければ良いというのとは、わけが違う。その辺りの考えは改めました。勝ちに行く姿勢よりも、リスク回避をしていて。結果、チャンスから生まれなかった。それが現実なので、リスクを背負っても勝負をしないといけないです」
──ボクサーに対して、リスクのある攻撃とは?
「今までの僕だと、相手がストライカーだとテイクダウンをして一本を取りに行くことを主眼としていたはずです。でも3連敗をして、特にここ2試合ですね。ボカンとバラルトと戦って相手の得意なところを消して戦うことが、ベストの選択なのかと。MMAファイターである以上、MMAレスリングで対抗できないといけない。それが本当の意味で、総合力で勝つということだろうと思うようになりました。
MMAになったら、五輪レスラーともレスリングはできる。それも感じました。相手のバックボーンとやり合わないのは、MMAとしてはないと。ただ、強力なバックボーンがあることは確かで。そこに無策で挑んでもしょうがない。でも、逃げるような立ち振る舞いはもうしたくないと思っています」
──ミアドと打撃を交換しないのもMMA。ミアドとボクシングをするのもMMAです。
「言葉にするのは難しいですけど、とにかく逃げるようなゲームプランにはしたくない。ひたすらテイクダウンを狙い続けるような展開でない方が、勝ちやすい。僕が殴るという風に思わせた方がテイクダウンも入れる。そうなると、逆に打撃も当たる。寝技に思い切り振るのもありですが、そうするとKO勝ちという勝ち方を捨てることになります。そうなってしまうと、MMAではない。
僕は修斗をずっとやってきたことで、打撃からテイクダウン、寝技で一本という固定概念を持っていました。でも、それだけじゃない。打撃でKOをすることもそう、レスリングでドミネイトをすることもそう。パウンドアウトも一本も、なんでもできてMMAの可能性を広げないといけない」
──狭まっているより、広がっている方が何かと対処できますしね。相手の攻撃に対して。
「まぁ、勝つしかないですよ。リト・アディワンやアレックス・シウバに勝って、ちょっとMMAとは……なんて考える風になってしまっていたんです。シウバと戦った時は、彼の得意なグラウンドでどんどん戦っていたし、アディワンの時もパンチの交換ということではないですけど、相手の土俵で戦っていました。
彼が打てないところにいて、我慢できないで出てくるように仕向けてテイクダウンを仕掛けるとか。逃げたり、避けたりするんじゃなくて。そういう戦いが、ここ2試合はできなくなっていた。上手く戦おうとして、リスク回避をする。でも、それじゃ勝てないという結論がでました。
なら、バカになって勝てば良い。あの頃のように。MMA IQ──打倒極の偏差値って、一つを上げれば合計点は上がる。そのなかで全体的に上げる、その大切さを再確認しました」
──そんななか背中を追いかけてきた山上幹臣選手が、復帰戦でTKO負けを喫しました。あの試合は、何か精神的な部分で影響はありましたか。
「僕は……引退したら、復帰はしないです」
──アハハハハ。
「僕が1月に負けて、山上さんは『俺の背中を見とけ』という気持ちだったと思います。で、僕の7月に繋げると。でも山上さんの試合結果を見て、今は僕が山上さんを奮い立たせないといけないって感じるようになりました。
憧れの人で追いかけ続けていたけど……本当に強かったから。今だから余計に分かると思うんですよ、当時のMMAファイターがキックのチャンピオンとやり合えるとか、凄まじいですよ。体調がピークだった時なら、絶対に韓国でも負けていなかった。だいたいヘルニアが酷い状態でマモルさんと戦っても、一発も貰ってないんですよ。まぁ、僕も山上さんもローブローに弱いですけど(笑)」
──ハハハハ。しかし、箕輪選手はやはり山上選手への憧れは絶対ですね。
「でも、いつまでもそれじゃあダメなんです。山上さんが現役に戻って来たのだから、俺が引っ張らないと。山上さんの背中を追いかけているのではなくて、自分で自分の道を走らないといけない。そうすること山上さんがやる気になってくれることこそ、本当の意味で良い関係だと思います」
──その通りですね。では改めて、必勝のミアド戦に向けて一言お願いします。
「これまでの僕だと、確実に勝ちに行っていたと思います。きっと、こういう機会でも『最低でも勝ちに行きます』なんて言っていたはずです。でも、最低でも勝ちなんて言っているヤツは勝てないですよ。
完全決着を狙って、フィニッシュ。最高で完全決着……というか、最高の結果しか考えないです。最低でもなんて口にするだけで、落としどころを求めているということなので。フィニッシュができる人間は、『できないから固めておこう』とは思わないです。絶対に。フィニッシュして勝っているヤツのメンタルはそうじゃない。フィニッシュできなくても、最後まで終わらせようとしている。そういう選手は殴られても、突っ込んできます。
僕は器用な選手じゃないです。それなのに最近は、器用ぶっていました。そんなヤツが、小賢しくリスク回避とか考えていた。そうじゃなくて、フィニッシュを狙ってMMAを戦う。そういう風に今は思っています。
何より……ここで勝って……。今回は角部屋を用意されたので……そうじゃない普通の部屋に戻れるように絶対に勝ちます」
■放送予定
7月6日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT
■ONE Fight Night23対戦カード
<ONEライト級暫定王座決定戦/5分5R>
オク・レユン(韓国)
アリベグ・ラスロフ(トルコ)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ニコ・カリーロ(英国)
セーマーペッチ・フェアテックス(タイ)
<サブミッショングラップリング186ポンド契約/10分1R>
タイ・ルオトロ(米国)
ジョセフ・チェン(ドイツ)
<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
カン・ジウォン(韓国)
キリル・グリシェンコ(ベラルーシ)
<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
ルーク・リッシ(米国)
バンパラバムパラ・クヤテ(フランス)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
和田竜光(日本)
シェ・ウェイ(中国)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
アリ・サルドエフ(ロシア)
ブラック・パンサー(タイ)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
箕輪ひろば(日本)
ジェレミー・ミアド(フィリピン)
<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
アリーフ・ソー・デチャパン(マレーシア)
エリス・バルボーサ(英国)
<キック・ヘビー級/3分3R>
オマル・ログログ・ケニ(セネガル)
ブシェ・ケチャップ(セネガル)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
アレクセイ・バリカ(ロシア)
ステファン・コロディ(アイルランド)
【写真】なぜ、19歳でここまで理路整然としているのか。データと実戦に戻づいた強さ、ルオトロ兄弟はそこに発想の自由さがある。本当に楽しみにな一戦だ (C)MMAPLANET
6日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されるONE FN23「Ok vs Rasulov」で、ジェセフ・チェンがタイ・ルオトロと対戦する。
Text by Manabu Takashima
ONEサブミッショングラップリング世界ウェルター級王者にして、グラップリング界最高のアイドルといっても過言でない21歳のタイに、19歳のジョセフが挑む。
この一戦の僅か2週間前の時点でジョセフはWNOではADCC米国東海岸予選77キロ級優勝のアライジャ―・ドーシーをRNCで下し、他の大会でアンディ・ヴァレラに勝利している。そのジョセフ、ADCC欧州&アフリカ一次予選の77キロ級を制しているが、世界大会でなくB-TEAMの盟友であるクレイグ・ジョーンズ率いるCraig Jones Invitational出場を選択した。
組み技ファン垂涎のタイ×ジョセフだが、当のジョセフにとってはこの試合も結果が全ての勝負の時に向けてのプロローグ──。そう割り切ることができるからジョセフとの戦いだからこそ、タイにとってもONEで初めて苦戦する可能性が生まれてくる。
――ジョセフ、今もまだオースチンなのですか(※取材は6月29日に行われた。
「明日、テキサスをでるよ。香港経由でタイまで、24時間のフライトが待っているんだ(笑)」
──おお……それは大変です。タイ・ルオトロとの戦いが迫っていますが、直近でも試合に出て続けていますね。
「先週の木曜日にWNOではアライジャ―・ドーシー、日曜日にアンディ・ヴァレラと戦ったよ」
──WNOの方は映像をチェックさせていただきました。ADCC米国東海岸予選77キロ級優勝者を相手に、見事な大内刈りからパス、そしてワンアームからRNグリップを組んでチョークで一本勝ち。でも、その3日後にもう1試合戦っていたとは……。
「メインキャラクター柔術っていうローカルショーに出て、ウェルター級のベルトを賭けて戦ったんだ。ポイント勝利だけどベルトを巻いたよ」
──それはおめでとうございます。
「ありがとう。予行演習を兼ねた実戦もこなし、しっかりとB-TEAMで練習もできているし、凄く調子は良いよ。技術的なことを磨くだけでなく、ハイペースで戦うことにも重点を置いてきた」
──仮想タイとなる練習相手は、B-TEAMでもなかなかいないのではないかと思ってしまうのですが……。
「そんなことはないよ。チームではハイペースの練習をしてきたんだ。タイはスピードがあって、凄くアグレッシブな柔術家だから。ダースもそうだし、肩固めも本当に強い。そこの対策もB-TEAMでしっかりとできているよ。タイの試合運びにも十分に対応できるはずだよ」
──タイもケイドも、あれだけ積極的なのにミスがないように見えます。ただしONEでのルオトロ兄弟は、観客にグラップリングの面白さを見せるために、必要以上に動くというか。そこまでしないで良いだろうというぐらい動いています。
「アハハハハ。それでミスをしてくれることを願っているよ(笑)。でも、あのダイナミックな動きこそルオトロ兄弟の持ち味で、それこそリスクのある攻撃をしている。それは本当に防御能力が高いから可能になるんだ。
下になっても、ずっと攻めているからね。そうだね、そういう展開になってミスがあれば良いけど、とにかくディフェンスも固いから。ルオトロ今日は受けに回っても、本当に強い」
──日本のグラップリングファンは、今もProgressルールでの森戸新士選手との試合。そしてQuintetで見せた動きを忘れていないです。パスの強さ、トップゲームの的確さが特に印象残っています。あの頃と比較して、今のジョセフはどこか一番進化しているのでしょうか。
「あの頃と比べると、レスリングは相当に伸びたと思う。以前は引き込んでガードゲーム、Kカードなんかと多用していた。でも、今はレスリングの組手が強くなり、あの頃よりも全然クリンチが得意になった。
タイは基本的にトップゲームを仕掛けてくるだろう。いずれにせよ、トップもボトムもしっかりと練習を重ねてきた。試合になっても、その時の判断で上でも下でも戦うつもりさ」
──ではリングでの戦いというのは?
「リングで試合をするのは始めてだし、リングを使った練習はしたことがあっても、普段からやってきたことではない。でも90度のコーナーがある戦いがどうなるのか、楽しみだよ(笑)。
ロープがあることで、どのような展開になるのか。リングでの試合が僕にとって最高の戦いやすい環境になる必要はないし、どんどん動き回るつもりだよ。でもルンピニーで戦うことも、とても興味深い」
──グラップリングの超新星もルンピニーに想い入れがあるのですか。
「うん? ないよ。ムエタイのメッカで、僕が戦ことが面白なって思っているだけで(笑)。でも歴史のある有名な会場だから、戦えて光栄だよ」
──なるほど。ところで84キロという契約体重は、77キロ以下で戦うことが多いジョセフにとっては重くはないですか。
「最初はもっと軽い体重で話は進んでいたんだ。たしか80キロとか81キロで。そうしたら急に86キロになるって話が変わって。ノーノ―(笑)。それだと重すぎるから、83キロでは──とか、色々をあった。その結果、84キロになったんだ。
今もそうだけど、僕は普段から82キロだから通常体重で戦うことになるね。僕の柔術をタイにぶつけたい。ルオトロ兄弟ほど派手に動き回ることはないかもしれないけど、精度の高い動きで、非効率的にならないように戦う僕のスタイルを貫きたいね。
戦術的にはパーフェクトなテクニックが重要になってくるのではなくて、絶対的に確実な技術が重要になってくる。それこそが、最高レベルの相手と戦う時に必要なことだから」
──タイとの試合は楽しみでならないですが、8月にADCCでなくCJIを選択した理由を尋ねても構いませんか。
「理由はいくつかある。もちろん、マネーもその一つだ。そしてCJIが何をしようとしているのか。そこに関心があった。柔術の試合に出て、出場するだけで1万ドルが支払われる。こんなに素晴らしいことはない。そして、多額の資金がグラップリングに投入され、アスリートにも回って来る。そんな背景があるトーナメントだから、心が搔き立てられるよね」
──意義のある大会に出場すると。
「ADCCは1990年代から、優勝賞金が変わっていない。しかも貨幣価値は変わっているんだから、事実上の減額だよ。クレイグは出場費を払うことで、グラップリングの規模の拡張にトライしている。
それにクレイグはYouTubeでの無料配信を決めた。よって、より多くの人がグラップリングのトーナメントを視聴することになるに違いない。彼は他にないグラップリングのトーナメントを開こうとしている。Flo Grapplingはグラップリングの発展に大いに役立ってくれたけど、ファンを増やすという点において、無料配信は大きいよ。
プレーはしないけど、ただグラップリングを見るだけのファンがこのスポーツが大きくなるために欠かせないんだ。見る人が増えること。それがグラップリングの発展に欠かせないことだから」
──盟友の岩本健汰選手を始め、ADCCに残る選手もいます。
「ケンタは僕の上の部屋に寝泊まりしているんだ(笑)。まだ朝の8時過ぎだから、きっと寝ているね。本当にテイクダウンとスクランブルが強くて。ケンタは僕にとって最高のトレーニング・パートナーだよ。
ケンタがADCCに残ることは理解できる。僕も悩んだし、両方の良さが分かっているから。だからCJIの80キロ以下級も、ADCCの77キロ級も良いメンバーが集めっているんだ。どちらもハードなトーナメントになることは間違いない。
前回のADCCウィナーのケイド・ルオトロはCJIに出る。ただし準優勝のミカ・ガルバォン、3位のダンテ・リオンはADCCに出場する。出場選手のアベレージはCJIの方が高いだろう。でも頂点はとても似通っている。
ケンタがADCCに出ることで、僕的には彼と戦う可能性がゼロになった。そこは気が楽だよ。これは凄く個人的なことだけど、ケンタは必ずやってくれる。それが楽しみで。WNOのミカ・ガルバォン戦を見る限り、ケンタが世界のトップにあることは間違いからね。
ファンの立場からすると金曜日はCJI、土曜日は見たい試合をピックして視聴する。日曜日はADCCと、最高の試合を3日連続で楽しむことができるし、良いことじゃないかなって。ライブで観戦するにしても、会場は車で7分しか離れてないしね」
──いやジョセフ、そこに関していうと77キロの真の世界一は2024年には生まれないことになります。結果、どこかでADCCウィナーとCJIウィナーの戦いが組まれそうですが。
「う~ん、クレイグが同じ週末にCJIをぶつけたのは、ADCCに異議を唱えているということなんだ。ADCCという組織が、これでどう変わっていくのか。このままADCCの独占状態だったら、選手の待遇はずっと変わらないだろう?」
──我々のなかで、グラップリング競技で食べていくことは難しいという風に固定概念になっていたことを、クレイグは崩そうとしているのですね。
「そうなんだよ。クレイグが動いたことで、ADCCは出場費として2500ドルを選手に支払うことを決めた。過去には見られなかった変化が、既に起こっている。このスポーツにとって、素晴らしいことだよ。
これまで世界トップのグラップラーが試合をするのに出場費が支払われないばかりか、参加費を払う必要があったんだ。そうでなくショーペイがあるなら、選手は大歓迎さ。僕は、この方向にこのグラップリングが進んで欲しいと願ってやまないよ」
──純粋にアスリートとして、CJIで戦っておきたい相手は誰になりますか。
「う~ん、そうだなぁ……PJ・バーチとダンテ・リオンはADCCに残ったし──そうだねっ、アンドリュー・タケットとは戦いたいと思っている。彼とは1勝1敗で……まぁCJIに限らず、アンドリューとはこれから何度も顔を合わせることになるだろう」
──タイとONEで戦うという経験が、CJIで戦う時に武器になると考えていますか。
「そうなって欲しいね。僕は試合によってプライオリティが違う。勝つことが大切な試合と、そこで経験を積むことを重視している試合があるんだ。勝つことが絶対的な目標なのはADCCであり、今回はCJIなんだ。そのために、どれだけ自分を仕上げることができるか。ADCCはトーナメントに勝って、スーパーファイトで戦う。それが一番価値のあることだから、そこを目指していて。
ONEでタイと戦うことで、凄く確かな情報が僕に入ってくる。結果、CJIで最高の動きができるようになるはずだから」
──今回の試合の位置づけもそこなのですね。ところでONEで戦うと、ADCCやCJI以外の試合に出られなくなるのでは?
「ONEとの契約に関しては、本当に慎重に判断をした。だから1試合契約で、ノンタイトル戦なんだ。チャンピオンになると契約が延長されるから。その結果のキャッチウェイト戦だし。そこはクレイグを始め、色んな人が進言してくれたよ」
──ではCJI後にまたジョセフの雄姿が日本で見られるかもしれないですね。
「本当は柔術のアジアオープンに出たかった。来年のアジアには出場するつもりだ。それにProgress、あのケージで戦うグラップリングはルールやポイント制も凄く楽しかった。僕はいつだって、日本を訪れたいという気持ちでいる。試合に出るかどうか分からないけど、ケンタと練習するためにも年内にはまた日本を訪ねたい」
■放送予定
7月6日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT
■ONE Fight Night23対戦カード
<ONEライト級暫定王座決定戦/5分5R>
オク・レユン(韓国)
アリベグ・ラスロフ(トルコ)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ニコ・カリーロ(英国)
セーマーペッチ・フェアテックス(タイ)
<サブミッショングラップリング186ポンド契約/10分1R>
タイ・ルオトロ(米国)
ジョセフ・チェン(ドイツ)
<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
カン・ジウォン(韓国)
キリル・グリシェンコ(ベラルーシ)
<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
ルーク・リッシ(米国)
バンパラバムパラ・クヤテ(フランス)
<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
和田竜光(日本)
シェ・ウェイ(中国)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
アリ・サルドエフ(ロシア)
ブラック・パンサー(タイ)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
箕輪ひろば(日本)
ジェレミー・ミアド(フィリピン)
<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
アリーフ・ソー・デチャパン(マレーシア)
エリス・バルボーサ(英国)
<キック・ヘビー級/3分3R>
オマル・ログログ・ケニ(セネガル)
ブシェ・ケチャップ(セネガル)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
アレクセイ・バリカ(ロシア)
ステファン・コロディ(アイルランド)
【写真】後輩、箕輪ひろばと復帰に向けて練習を積む山上。箕輪は「ONEストロー級ならボカン・マスンヤネ、グスタボ・バラルトと普通にやれます」という(C)MMAPLANET
5月5日(日)に大阪府豊中市の176BOXで開催されるGLADIATOR026。12日(金)、GLADIATORより、同大会で山上幹臣が9年5カ月振りに復帰、今井健斗と対戦するフライ級3回戦と中川晧貴水野翔のフェザー級3回戦という追加カードが発表された。
Text by Manabu Takashima
同大会では既にGLADIATORフライ級王座決定戦=NavEオトゴンバートル・ボルドバートル戦、バンタム級の竹本啓哉デッチプール、フェザー級のチハヤフル・ズッキーニョスアドニス・セビジェーノという国際戦3試合が明らかとなっていたが、山上の現役復帰というサプライズマッチが組まれた。
山上は2007年の全日本アマ修斗フライ級(※52キロ=現ストロー級)3位、翌年8月にプロデビューし同年のストロー級新人王に。その2008年にはRISEのアマチュア部門KAMINARIMONの55キロ級トーナメントで優勝を果たし、プロのリングも経験してきた。
当時、MMAファイターが純粋な立ち技にキックボクサーとして出場するケースは稀で、その打撃のセンスはMMAにおいても誰もが認めるところだった。その後山上は2011年に周囲の期待通り修斗世界ストロー級王座を獲得し、フライ級でUFCを目指すように。
VTJでフライ級の先駆者マモル越えを果たすも、当時から腰のヘルニアに苦しみ続けていた山上はUFCを睨み、経験を積みつつ実績を残すためにRoad FCに挑む。しかし、チョ・ナムジン戦とユ・ジェナム戦と連敗。この間、ヘルニアの手術をしていた山上だが、ユ・ジェナム戦を敗北を受け──人生のプライオリティを家庭に置き、2014年12月を最後にケージを離れる決意をした。
それから9年と5カ月、山上が実戦復帰を決めた。1月のTOPBRIGHTSで現役復帰という噂も流れてきた山上だが、現役復帰の場は意外にもGLADIATORを選択。DEEPとパンクラスで6勝3敗の戦績を残す、今井健斗と戦う。山上の後輩で修斗ストロー級王座を継ぎ、現在はONEで戦う箕輪ひろばは「体力面には不安は残ります。だからとってMMAファイターとして力が落ちているわけじゃない。強いです」と復帰に太鼓判を押す。
とはいってもこの10年でMMAは正常進化を果たしてきた。技術は成熟し、フィジカル強化が進み──山上の閃きが、体力に掻き消される戦いとなっている。そんなかで10年近いブランクを経てなお、山上は「初戦を終えるまで、これからのことは見えない。でもGLADIATORに出る限りはGLADIATORのベルトを獲りたい。チョット、モンゴル人と戦ってみたいですね」と、掴み損ねた国際戦での星を取り戻す意向を見せている。
山上×今井がGLADIATORにとって突然変異的なサプライズだとすれば、中川水野は昨年から始まったアジアのフィーダーショー化という路線で生まれた必然的な一戦といえる。日本人同士の戦いが、なぜフィーダーショー化を表す戦いなのか。
フェザー級のみならず、フライ級からミドル級まで今のGLADIATORはアジア勢、特に韓国&モンゴル勢の勢いに飲み込まれている。そのなかで中川はチョ・ソンビン、バットオチル・バットサイハンに連敗、逆に水野はデビューイヤーで4連勝を飾っている。
対アジア勢に向かうために、日本勢同士の生き残り合戦が馬得るのは必然で、逆に今のGLADIATORに欠かせない対戦軸といえる。なお今回のリリースに寄せられた出場4選手のコメントは以下の通りだ。
山上幹臣
「まずは、オファー頂きありがとうございます。対戦相手も若くて勢いある選手で申し分ないので、しっかり倒して10年振りの復帰戦、勝利で飾ります!」
今井健斗
「海外からの選手なども多く、今凄く盛り上がっているGLADIATORに参戦できて嬉しいです。初出場ですが、1番インパクトのある試合を見せられたらと思います。対戦相手の山上選手について、実力も実績もある強い選手ですが、大チャンスをモノにできるように頑張ります」
中川晧貴
「今は外国人選手に2連敗と負けが続いていますが、試合に出させて貰っているGLADIATORの櫻井代表に感謝しています! ありがとうございます! 今回の相手は若手の選手で5連勝中らしいので、ここらで連勝を止めてやろうと思っています。今までは追い掛ける立場だったのが、今は若手選手に追い掛けられる立場になったと自分では思っていて、絶対に負けられないと言う気持ちがより一層強くなりました。今回の試合でしっかりと自分の強さを見せつけて、また追いかける立場に戻りたいと思っています。チャンピオンや上位で戦っている選手に『胡座をかいて待っとけよ!』、俺が居るって分からせたいと思っています。それを見せつけられる試合をしたいと思っています。初心を忘れずにアグレッシブに戦って行きたいです! reliableの看板を背負うと言う責任感を持ってリングで暴れます」
水野翔
「格闘技&プロレス二刀流の水野翔です。この試合は僕にとってめちゃくちゃチャンス! 4連勝の勢いのままぶっ倒します。
ここで勝って一気にタイトル戦線に絡んでいきます」
■放送予定
5月5日(日)
午後12時30分~THE 1 TV YouTubeチャンネル
17日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FN19にて猿田洋祐が約1年10カ月ぶりに復帰し、マンスール・マラチェフと対戦する。
Text by Takumi Nakamura
2022年4月にグスタボ・バラルトに敗れたあと、自らのジム「Fight Beat Workout」をオープンした猿田。2年弱のブランクを作ることになったが、この時期に「Fight Beat Workout」をオープンしたのはONEとの契約を考慮し、復帰を見越しての選択だった。
対戦相手のマラチェフはランキング5位という数字以上の強さを持つ強敵だが、猿田は「強い相手を避けて今勝てるような相手を探すつもりはないし、そういう選択は僕らしくない」と語った。
──約1年10カ月ぶりの試合が決まりました。改めて復帰を決めた理由は何だったんですか?
「ずっと試合はやりたかったし、それと同じように自分のジムもやりたかったんですね。それで前回のバラルト戦で負けた時点で契約(試合数)が結構残っていて、それを消化し終わってからジムをやるとなると、かなり時間がかかってしまうので、それだったら一度試合を休んでジムを始めて、それから試合に復帰しようという考えになりました。結果的に1年10カ月で戻ってこれてよかったなと思っています」
――契約の状況を知らなかったのでバラルトに負けてジムを出して、1年以上試合から遠ざかっているとなると現役生活に区切りをつけることも考えていたのではないかと思っていました。
「ずっと復帰のタイミングは自分の中で探っていて、ジムの方も少し安定して任せられる人も出てきたので、そろそろ(復帰する)タイミングかなという時期です、今は」
──ご自分のジムを持ったということで、選手としての練習や生活リズムも変わったと思いますが、今はどういうスケジュールで練習しているのですか。
「ジムをオープンする前の練習量と比べると、年齢的に同じような練習はできないというのがあるし、自分のジムを持っている責任もあるので、自分の練習量は少なくなっています。メニュー的には自分のジムでフィジカルや基礎練習をやって、今までと変わらずHEARTSでスパーリングをやっています」
──やはり練習の強度そのものは落としているのですか。
「3回目のジョシュア・パシオ戦やバルラト戦を振り返ると、やりすぎている感覚というか。オーバーワークぐらいのスパーリングの量だったし、それでも『もっとできるんじゃないのか?』というぐらい突き詰めていく段階だったんで、試合が終わった時に体の限界は感じていました」
──猿田選手は練習の虫というか、練習量を多くやりたいタイプですか。
「そうですね。いつでも練習できるように、HEARTSの真裏に住んでいましたから。でも子供が生まれたタイミングでジムをオープンして、今も自分のジムから徒歩1分ぐらいの所に引っ越して、今もいつでも練習できる環境です」
──自分のジムを持ったことで練習に対する意識はどう変わりましたか。
「もちろん練習の強度は違いますし、より頭を使ったり、必要な部分だけを自分で探りながらやったりしている感じですかね。昔からそうですが、今はより初心に戻るというか基礎の部分、打撃もレスリングも柔術もそうですけど、そこを意識した作動だったり、フォームチェックだったり。フィジカル面でも縄跳びを長い時間跳ぶとか、そういうことをやっているうちに感覚を取り戻しています。スパーリングだけやっていると、体の負担やダメージも大きいので、上手くダメージが蓄積しないような練習をする。それが年齢に合った練習っていうんですかね? それができてきたかなという感覚があります」
──いい意味で自分のペースで、無理をしすぎない練習ができているようですね。
「今の練習スタイルに切り替えてから、もう2部練とか3部練はできないだろうと思ったんですけど、結局試合前にトレーニングに集中していたら、1日2回~3回は練習していますね。強度は違っても」
──例えばHEARTSでの対人練習で変化を感じることはありますか。
「なんていうのかな。正直、試合をやってみなきゃ分からない部分はあります。実戦と練習は違うので。最初はプロ練に参加するだけで結構きつかったんですよ。でもしっかり基礎をやっておいたおかげで前に戻ってきたというか、以前と同じ強度の練習ができたりとか、今のHEARTSの風間敏臣、木下カラテ、新井丈と練習しても普通に戦えるなっていうぐらいまでは持ってこれています」
──復帰戦の相手がマンスール・マラチェフに決まりました。対戦相手としての印象はいかがですか。
「本当に未知の強豪というか、パシオに敗れるまで無敗で、そのパシオ戦を見てもユニファイドルールだったら勝ってる内容だったし、復帰戦で凄いのを引き当てたなっていう感じです。穴という穴が見つからないというか、レスリングもしっかりできて、打撃も器用なタイプじゃないですけどパンチはしっかり伸びてくる。首系のサブミッションも持っているし、バランスの良い強いファイターだなっていう印象です」
──純粋に攻略が難しいスタイルだと思います。どんな試合をイメージしていますか。
「いろんな戦略や戦術の部分もあるんですけど、基本的には全局面で勝負しようと思っています。レスリングもそうですし、イメージ的にはスクランブル合戦というか攻守が激しく入れ替わるような、そういう試合をしていこうと思っています」
──テイクダウン&トップキープが強いタイプですが、そこを避けて戦おうとは思っていないですか。
「どこかを捨ててどこかで勝負するという感じじゃないですね。トータル全てで勝負して、苦しい時間帯も出てくると思うんですけど、そこで盛り返すのが自分の強みでもあるんで、それが出せればなっていう感じですかね」
──間違いなく強敵ですが、これからのキャリアのなかで、こういった相手と一戦一戦勝負していきたいですか。
「世界の強い選手とやりたいという理由でONEに来たわけで、強い相手を避けて今勝てるような相手を探すつもりはないし、そういう選択は僕らしくない。ジムをやっているからとか、年齢を重ねたからとか、オファーを断る・辞める理由は探せば出てくると思うのですが、客観的に見ても猿田洋祐という選手はそうじゃないんです。修斗の頃もそうでしたが、僕は相手を選ばずにどんな相手でもオファーを受けてきたし、誰よりもキツい道を選んでやってきたつもりなので、これから先もそういうチャレンジを続けたい。そしてONEでキャリアを終えたいという気持ちが強いので、復帰戦でこういう相手を用意してくださってありがとうございますっていう感じですね」
──先日の日本大会でも猿田選手と同階級の箕輪ひろば選手と山北渓人選手が敗れて、日本のファイターがなかなか勝てない状況が続いています。そのうえで猿田選手はどんな試合をしたいですか。
「色々と考える時間は長かったのですが、僕はONEでタイトルマッチを3回やらせてもらって、復帰してすぐ(ベルトに)挑戦したいとか挑戦させてほしいというつもりはないです。僕も自分のジムを出して、今後指導者として選手育成をやっていくうえで、30歳を超えた選手や自分と同じぐらいの年齢になった選手に対して、どういう練習をすればいいのか。そういう指導ができる人は少ないと思うんですよね。やっぱり20代とは違うアプローチをしないといけないし、疲労を抜きながら練習しないといけない。そういうことを含めて、自分の身体を使って経験していくような感覚なんです。だからこそ、結果が欲しくて、こういう取り組み方をしたらこういう結果が出るんだよ、30代後半でも結果を出せるんだよという道を作っていきたいです」
──ジムを始めたからこそ、そういう考えになったのですか。
「それもあると思います。あとは試合間隔が空いたことで、さっきも言った通り、いきなりトップ選手たちとの練習に戻ることができなくて、そこを指導してくれる人がほとんどいなかった。30代を過ぎてから盛り返す、トップ戦線に戻る。僕はまだ自分が行けると思っているので、色々な取り組み方をして、どういう結果が出るのかを自分の体を使ってやっていく。それが面白いなと思っています」
──もちろん猿田選手は現役ファイターなので結果を出して高みを目指してほしいです。それと同時に日本人が海外で勝っていく方法を示してほしいという気持ちもあります。
「もちろん勝負なので、勝つためにやるのですが、それだけじゃなくて今後の人生や今後の指導にもプラスになるようなことを意識しながら、自分でいろいろ試しながらやっている段階です」
──では今回の復帰戦、どんな試合をファンのみなさんに見せたいですか。
「自分はもともと器械体操をやっていて、体操は相手と戦う競技じゃなくて、自分との戦い。練習でやってきたことを試合で出せるかの勝負なので、ある意味自分との勝負なんです。その感覚で格闘技に入ったので、もしかしたら他の選手とは感覚が違うかもしれないです。そのうえで今僕が考えていることは今日のインタビューで話したようなことで、それを僕が試合で見せることができたら、自分と同じように30代半ば~後半の選手たちにととって何かのきっかけになると思うし、そういう選手たちにも目が向くきっかけになるのかなと思っています」
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