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お蔵入り厳禁【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:4月:ヴォルカノフスキー✖ジョン・チャンソン

【写真】ここ最近の水垣氏の言葉深みは一体どうしたことか……(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ水垣偉弥氏が選んだ2022 年4 月の一番。4月9日に行われたUFC273で組まれたUFC世界バンタム級王座統一戦=アルジャメイン・ステーリング×ピョートル・ヤン戦から──UFC世界フェザー級選手権試合=王者アレックス・ヴォルカノフスキー✖挑戦者ジョン・チャンソン戦について語らおう。

<月刊、水垣偉弥のこの一番:4月:アルジャメイン・ステーリング×ピョートル・ヤン戦はコチラから>


──チャンピオンに近い選手と、チャンピオンになる選手の違い……とは、ズバリ何になるのでしょうか。

「ジョン・チャンソンはタイトルに挑戦するまでも勝ってはいるのですが、こうやって戦績を眺めてみると、どこがピークだったか分からないところがあります。ジョゼ・アルドに挑戦したが8年8カ月前なんです。

UFCの世界王座に2度挑戦した。それは、もう本当に凄いことで。多くのファイターは1度すらない。だからチャンピオンに近い選手が決してダメだということじゃないんです。ただし、チャンピオンになる選手はそれ以上だということで」

──ハイ。分かります。

「明確に何かということはできないのですが、明らかなのは気持ちでは埋められないということかと思います……」

──そこはもうメチャクチャ実感がこもっていますね。その言葉にここまで重みがでるのは、日本では岡見勇信と水垣偉弥だけではないでしょうか。

「いやか……。ジョン・チャンソンって負けもあるけど、とにかくあのスタイルでトップを張り続けた。だから、もらう度に弱っていった。今回の試合に関しては3Rで止めてほしかったです。

セコンドもタオルを投げられない空気があったんでしょうね。これが最後のチャンスだって。そんな状況でヴォルカノフスキーが凄まじかったです。打撃をまとめていればTKOだっていうシーンは何度もあったと思います。そこをサクッとテイクダウンにいく。

これだから負けない。チャンピオンに君臨できるんだと感じました。エグいです。パプニングの一切が起きないように戦う。一か八の正反対にあります。そこからのパウンドもリーチを生かして……ジョン・チャンソンの良さを全て封じ込むと戦い方でしたね。

スタンドで仕留めにくれば、ジョン・チャンソンもワンチャン──逆転の可能性が出てきます。そうはさせないという完璧な戦い方をしました。隙を見せない。ヴォルカノフスキーのレコードが良いのが理解できますよね」

──そんなUFCフェザー級タイトル戦線、次は7月2日にマックス・ホロウェイの挑戦を受けます。2020年7月以来、3度目の対戦ですね。

「ほとんど差がない試合でしたよね。あそこからホロウェイはカルヴィン・ケイター、ジャイー・ロドリゲスにファイト・オブ・ザ・ナイトを取りながら、危なげなく勝っている。めちゃくちゃ強いです」

──いうなればチャンピオンになれる者同士の世界戦ということですね。

「フェザー級はこの2人が抜けちゃった感がありますね。ブライアン・オルテガが、その線に入って来るかと思ったら、半歩下がったので。やっぱり抑えるところを抑える……そこは大きいのかもしれないです。攻撃力の強さは当然として」

──そう考えると、コンテンダーシリーズから契約した選手は、フィニッシュ至上のファイトをしないといけない戦いを引きずると、安定した成績は残せないような気もします。

「結果として、それも出ていますよね。コンテンダーシリーズの戦い方だと、ある程度までいくとスタイルを変えないとダメだと思います。インパクトを残した選手が、上まで上り詰めることができていない。

それこそコンテンダーシリーズからは、防御力があって隙のないファイターは生まれないと思います。よほど、あの場だけと割り切ってスタイルチェンジをしないと」

──とはいえ、MMA業界がLFAのタイトル戦といいコンテンダーシリーズ・ファイト化していないでしょうか。

「UFCと契約するためには、そこが必要なわけですからね。ただ、ずっとあのままではなくてプレリミの間に、勝ちながらスタイルを変えていかないといかないです」

──いやぁ、めちゃくちゃ難しいことですよ。評価される勝ち方をしていながら、アジャストする。

「だから最初から、そういう設計図を書いておく必要があるかと思います。コンテンダーシリーズの戦い方で勝っても、それを自分のスタイルの軸にするのではないという風に。

それはこの2年間、ほぼ国際戦がなかった日本の選手にも当てはまることだと思うんです。僕が実際にそうだったので。日本で戦っている間は3Rの間、打撃戦を続けていればKO勝ちができるし、少なくともダウンを取って優勢に進めることができるという絶対の自信がありました。

でもミゲール・トーレスと戦った時に『あぁ、コイツは倒れない』と実感しました(苦笑)。何かが根本的に違う。そこからアジャストして、次のジェフ・カーラン戦なんかは打撃でリードしても、トップで漬けるという展開に持っていきました。それでも最後に三角絞めを貰いかけたのですか(笑)。

そういう別の引き出しを持っていないと、WECで勝つことはできないと最初の試合で思い知らされたんですよね。自分が得意なところだけで勝つことはできないことを身をもって体験して。

だからひたすらレスリングを頑張るという……。それがゴールとして正しかったのか分からないですけど、今思えばもっと柔術的な動きだってやるべきだったかもしれないと感じています。

だから僕はアルジャメインにテイクダウンをされるとバックを取られる戦い方をした。そこで背中をマットにつけても勝負できるなら、アルジャメインとの試合展開も変っていたはずです」

──下になるとラウンドを落とすという状況では、なかなかそこに時間を費やすことはできなかったかと思います。

「そこなんですよね。まぁ難しいです。でもアラン・ナシメントみたいな選手もいるわけで。関節技とスイープ、スクランブルに持ち込んで上に居続ける。下になっても、必死に上になる。いやぁ、本当にMMAは難しくて面白いですね」

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o Road to UFC UFC UFC275 YouTube   中村倫也 堀内佑馬 宇佐美正パトリック 宇野薫 平良達郎 水垣偉弥

5月23日18時より『UFCってなんだ?:リターンズ』がYouTubeでライブ配信/平良達郎がゲスト出演




チュートリアル福田充徳と西山茉希がMCを務める『UFCってなんだ?』が一夜限り(?)の復活! 5月23日(月)18時より、ライブ配信〓

今回の特別編は『UFCってなんだ?:リターンズ』と題して、6月にシンガポールで開催する『ROAD TO UFC』および『UFC 275』の見どころを取り上げつつ、先の5月15日にオクタゴンデビュー戦で初勝利を遂げた平良達郎も出演し、初陣の感想や今後の展望などについて語っていただく予定です。

【番組概要】
番組タイトル:『UFCってなんだ?:リターンズ』
日時:2022年5月23日(月)18時よりライブ配信(3時間程度を予定)
MC:チュートリアル福田充徳、西山茉希
出演:ケンドーコバヤシ、サバンナ高橋茂雄、ジョビン、高阪剛、宇野薫、水垣偉弥、市場里奈(WOWOWアナウンサー)
UFCファイター:平良達郎
ROAD TO UFC出場選手:堀内佑馬、中村倫也、宇佐美正パトリック

(諸事情により出演者が変更となる場合がございます)

 というわけで、5月23日18時から『UFCってなんだ?:リターンズ』がYouTubeでライブ配信されます。続きを読む・・・
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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:4月:ステーリング✖ヤン「肉体的ダメージはない。でも……」

【写真】出来ていたことが、できなくなる。実体験をもとに水垣氏がピョートル・ヤンの心理面にメスをいれた (C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2022 年4 月の一番。4月9日に行われたUFC273で組まれたUFC世界バンタム級王座統一戦=アルジャメイン・ステーリング×ピョートル・ヤン戦について語らおう。


────水垣さんが選ぶ2022年4月の一番をお願いします。

「アルジャメインとピョートル・ヤンのUFC世界バンタム級王座統一戦です。アルジャメインは自分が戦ったことがあり、ヤンは反則負けから王座を明け渡し暫定王者になっての再戦ということで注目をしていました。

1回目は最後に反則のグラウンドでのヒザがなかったら、ヤンの勝利はまず間違いなかったでしょうし、あの試合を踏まえて今回もヤンが有利だと思っていました」

──それは多くの人がそうだったはずです。実際、初回のヤンは良かったです。

「1Rは様子見をするのがヤンのパターンなんですが、結構前に出ていました。レスラーのテイクダウン狙いをストライカーが切ることができるのは、前に出ている時だと思います。下がると、取られやすいです。そこをしっかりとヤンはできていました。

それが2Rに流れのなかでテイクダウンからバックを取られ、3分ほどキープされて時間になりました。ラウンドを失いましたけど、肉体的なダメージはなかった。でも、そこがヤンの精神面に大きく影響を与えることになりました。実は僕がアルジャメインと戦った時も、こういう流れでした」

──ワンテイクでその後の流れが決まった? 水垣さんと戦った時は両手も突いて座るような低い位置からローシングルに入ったシーンが思い出されます。

「あれでダブルに移行され、ケージに押し込まれたところからテイクダウンされバックを許して……。最後は胸を合わせていったのですが、下から肩固めのような形で極められてしまいました。

あの試合、序盤はテイクダウンを切れていたのですが、一度組まれてしつこくされ、『嫌だな』と思ってしまって。そうなると、それまで前に出てプレッシャーを掛けることができていたのに、できなくなってしまったんです。心理面がその原因だったと思います」

──その前までできていたので、テイクダウンやバックを取られても『コレはコレ。この展開もある』いう風に割り切ることは難しいのですね。

「そうなんです。本当にほんの少しのことなんです。プレッシャーの掛け方の違いで。お互いが『取られるとマズい。取れるなら行く』という心理面のなかで、その気持ちがほんの少し揺らぐだけで、アルジャメインは足が触りやすくなったと思います。それが勝負の行方を分けてしまった」

──身体的なダメージでなく、内面……心の襞の部分なのですね。

「僕がヤンと同じことができるということではなく、あの心理面は理解できるというか……。『足を触られたくない』と思わされた時点で、メンタルの争いで遅れを取ったのだと思います。

実際ヤンは1試合目ではほぼ組まれていない。その戦いがデキていたのに1度倒されて、バックを取られたままラウンド終了を迎えた。ブザーで救われた形というのは、心理面でのダメージを与えた。『こうなると危険だ』と思わせたアルジャメインの勝ちでしたね」

──ステーリングはそこが得意なので、やられないようだけでなくバックに回られることも想定し、対策練習をしてきているかと思います。それでも、そこまで崩れるものなのですか。

「ホント、難しいですね。まず尻もちをつかされないことが第一で。スタンドをキープすること。だから立ちに行って、あの形になったので……これは結果論ですが、ガードポジションを取れば良いというメンタルの選手ならまた違ってくるかもしれないです。

と同時に時間も関係してきますが……下を続けるとラウンドを失いますし、ハーフで一本腕を差して立ち上がろうとしたり、レッスルアップからシングルとかを狙うとダースやギロチンが待っています」

──逃げ道が閉ざされ続ける。それは恐怖です。

「アルジャメインは、その形が出来上がっている。だからこそ、足を触らせてはいけないっていう心理になっていったのだと思います。それに4Rまで全てを失っている展開だと、最後は思い切った動きに出ていたかもしれないです。ただ2Rと3Rは失っても、4Rは取っていた。1Rはどうだろうかという風な心理では、賭けのような勝負には出られなかったのかもしれないです」

──いやぁ、深い。技術面と心理面が繋がっている試合だったのですね。本当に強い選手揃いのバンタム級だからこそ、王座挑戦までに潰し合いが続き、結果としてこの両者は二強になったような気もしますが、次の防衛戦が楽しみになりますね。

「僕はジョゼ・アルドが見てみたいです。ここにきてチート・ヴェラ、ペドロ・ムニョス、そしてロブ・フォントに勝って3連勝なんですよ。アルドは前に出てテイクダウンを切るだけでなく、シングルに取られても凄い反応で頭を押して後ろ向きから足を抜くのが上手いじゃないですか。

それにいざとなるとクローズドガードを取る。アルジャメインのテイクダウンに対して、ちょっと違った戦いを見せてくれるんじゃないかと。1周回ってアルドってなると、本当に凄いことですし……アルドはWEC勢最後の砦ですからね、タイトル戦線を争える。

WEC経験者としてはジョン・チャンソンが同じ大会でアレックス・ヴォルカノフスキーに切ない負け方をしてチャンピオンに近い選手と、チャンピオンになる選手の違いというか、そういうモノが見えたような気もしました」

<この項、続く>

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Brave CF DEEP IMMAF MMA MMA Super Cup MMAPLANET o Progress Special UFC UFC273 アリーサ・ベルトソ アルジャメイン・ステーリング アルマン・オスパノフ キック ザクシノフ・アイマハノフ パンクラス ピョートル・ヤン ボクシング ムハマド・モカエフ ラマザン・ギチノフ 中島太一 修斗 山口怜臣 水垣偉弥

お蔵入り厳禁【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:3月:MMA SUPER CUP─02─「目を瞑っちゃあ……」

【写真】目を瞑ってはいけない現実が、MMA界に存在した(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2022 年4 月の一番。4月9日に行われたUFC273で組まれたUFC世界バンタム級王座統一戦=アルジャメイン・ステーリング×ピョートル・ヤン戦について語らう前に──掲載が遅れていた2022 年3月の一番、3月9~10&12日に開催されたMMA SUPERCUPについて引き続き語らおう。

<月刊、水垣偉弥のこの一番:3月:MMA SUPER CUP Part.01はコチラから>


──水垣さんが見たカザフスタンの強さとは。

「バーレーンのダゲスタン人選手が見せていた近い距離に入ると組んでテイクダウンを仕掛けるという感じではなく、打撃も多かったですね」

──裸のコンバットサンボのようにも見えました。

「あぁ、確かに。あの中島太一選手を後ろ回し蹴りでKOしたアルマン・オスパノフのように遠い距離で後ろ回し蹴りを使ったり、寝技ではサブミッションという感じでしたね。繰り返しになってしまいますけど、この強さでアマチュアで。しかもバーレーンと違った帰化選手とかでなく、純粋にカザフスタンの人達なわけですよね?」

──ハイ。ただもう国か企業の援助があって、世界選手権の時などは合同合宿とかして早目に現地入りしているそうです。

「う~ん、上手く言えないのですが……体も強いし、纏まったMMAとも少し違う。日本ではアマチュアMMAってプロになるため。その資格を手に入れるための大会じゃないですか。対してIMMAFは違う価値のあることをやっているような気がします。

ボクシングだと五輪があって、そこに出場する選手たちって普通にジムでボクシングを始めてプロテストに受かってデビューした選手たちより、レベルが上で。彼らがプロになるなら、このIMMAFのSUPER CUPで戦っている選手達……いわばIMMAFの世界大会で上位の戦績を残している選手達は、MMAの世界でそんな風になっていくのではないかと感じました」

──ファイトマネーを得て試合をするからプロMMA。ただし、それで生活ができない選手が大半という世界に対し、バーレーンやカザフスタンの選手は試合で収入はなくても、これで生きていけている。

「そういうことですよね。多くの国のMMAと逆パターンですね。バーレーンとの準決勝でラマザン・ギチノフから先に大内刈りでテイクダウンを奪った選手(※ザクシノフ・アイマハノフ)とか、逆転されましたけど強かったです。あの2人の試合って、プロでもけっこう上のレベルだなって(苦笑)。

これまでIMMAFにさほど注目していなかったのですが、しっかり見てみるとレベルが高くて試合が面白いんですよね。ルール的にヒールと顔面へのヒザ蹴りがないのですが、カザフスタンの選手たちはヒザ蹴りが解禁されれば、さらに強くなると思います。

逆にバーレーンのダゲスタン勢は、顔面へのヒザ蹴りがないルールだからこそ、ここまで強さ発揮しているという見方ができるかと思いました」

──他の国でも気になったところはありましたか。

「決勝でバーレーンと戦ったアイルランドとか今のMMAに近くて、完成度も高かったです。ただし、バーレーン勢とはこのルールだと相性が悪い(笑)。ごり押しで負けてしまっていましたよね。バーレーンの選手はとにかくレスリングが強いです。

あのダゲスタン系の選手って、フォークスタイルとは違うけどコントロールという部分で似たレスリングに感じました。

僕は以前からフォークスタイルとダゲスタン・レスリングは繋がっていると思っていたんです。ダニエル・コーミエとカビブ・ヌルマゴメドフが同じAKAということもあったのもしれないですが、ケージレスリングで結構同じポジションを取って、同じように殴っていたので」

──バーレーンの選手たちが、UFCレベルのMMAファイターの打撃があっても、あのレスリングのごり押しスタイルで戦えるのか。

「実際、カザフスタンの選手にハイキックで負けた選手がいますよね。それほど打撃をやり込んでいるようには見えないです。女子のアリーサ・ベルトソとかは元々ブラジルで打撃をやり込んでいたので通用すると思うのですが、男子の選手はあのレスリングだけだとどうなるのか。

このルールだから圧倒的に有利で、一部のアマトップの国の選手以外にはアレで楽勝できるんでしょうね。でも、この先を見るとどうなるのか」

──バーレーン人選手はそこからBRAVE CFでプロデビューをしている選手もいます。もちろん他の国の選手もそうですよね。IMMAFの世界チャンピオンだとムハマド・モカエフなどが既にBRAVE CFを経てUFCファイターになっています。

「モカエフは僕もUFCで試合を見たのですが、IMMAFの大会で20数戦戦っていて無敗なんですよね。それだけキャリアがあって、プロになるとデビュー戦扱いなんですから、それは強いです。世界大会で初戦や2回戦はそれほどではなくても、準決勝や決勝は今回のSUPER CUPのレベルはあるでしょうから……それはもう経験値も積んでいます」

──先ほど水垣さんが言われた日本でプロのなるためのアマチュアMMAで成績を残した選手、こういう場で国際戦を経験する手はあるのではないかと思った次第です。

「その経験って、かなりデカいと思います。日本のMMA界はもっとIMMAFを視野に入れないといけないと感じました。最終的にUFCへ行きたいのであれば、レコードは大切です。なら、プロ戦績として結果が残らないアマチュアの大会で国際戦を経験すると、10戦分だとか力をつけてプロデビューできるかもしれない。そのアドバンテージは考慮しても良いんじゃないかと思いました。

かなりの状態に仕上がって、プロデビュー戦を迎えることになりますからね。あるいはIMMAFの実績で、もう普通に10戦、15戦のキャリアのある選手とプロデビューを行うとか、そういう日が来るかもしれない。そうなるとステップアップも早くなるという考え方もできます。さきほど名前が出たモカエフは6戦目でUFCと契約したわけですしね」

──IMMAFを重視する必要性は、本当に大ありだと私も現地で感じました。

「逆にいえば、ここに対して目を瞑っていると遅れを取ります。あの場を利用しない手はない。日本チームとして出られるなら、ぜひこの場を日本のレベルアップに使うべきだと思います。プロのレコードに傷つかないで、この経験ができるメリットを考えると、本当にそうです。

アマ修斗、アマ・パン、DEEPのフューチャーキングT優勝者が今回の大会に出ていたとして、チーム・オセアニアやアイルランドに勝てるとは限らないと思いました。もちろんバーレーンやカザフスタンは言わずもがな、です。準決勝以上の戦いはプロと比較しても、相応なレベルの高さでした。

これも繰り返しになりますが、バーレーンとか見ていると練習体系が出来上がっていないと、ああいう風に皆が似たスタイルにならないと思うんです。どういう練習をしているのか、凄く気になりますね」

──上久保選手が、KHKジムで練習がしてみたいと言っていました。

「あっ、僕も上久保選手とPROGRESSのグラップリングマッチの音入れで会った時に『ダゲスタンとかで練習したら良いのに』って言っていたんです。でも、現状はもうダゲスタンに行くこともできないでしょうし。ならバーレーンっていうのはありますよね。

あの練習があれば、彼らのようなスタイルでない選手が、あのテイクダウンとコントロールを手にすることができる。それこそベルトソのように、ですね」

──このIMMAFで世界王者を目指し、今やタイのAKAタイランド所属で練習している山口怜臣選手がいます。

(C)REO YAMAGUCHI

「以前、パンクラスで表彰とかされていた選手ですよね。

いやあIMMAFの大会に挑戦し続けているって、凄く良い経験になっていると思います。ただし、今の日本のアマMMAで優勝した子を集めて、ここに行っても勝てないですね……。ぶっちぎりで優勝した子、修斗で新人王トーナメントMVPになるだろうって思われるような。そんな選手とか、それこそ髙谷さんと岡見選手がやっていたLDHのオーディションで勝ち抜いた子が、プロになるのを一旦置いて。合宿とかしてIMMAFに挑まないと相当に厳しい。でも、それがあると僕は日本の強化につながると思いました。そして山口選手のこれからにも期待したいですね。

とにかく良い経験ができて、負けてもレコードに傷つかない。TUFのようで凄く良いことかと思います」

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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:3月:MMA SUPER CUP「彼らはアマチュアなんですよね?」

【写真】元日本のエースを驚かせた──アマチュアファイターたち (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2022 年3月の一番……は、9・10&12日に開催されたMMA SUPERCUPについて語らおう。


──水垣さんが選ぶ2022年3月の一番をお願いします。

「今回、1試合というのではなく大会単位になるのですが、MMA SUPER CUPでも構わないでしょうか」

──もちろんです。逆にそこを語ってくれますか!! バーレーンで行われたIMMAF上位国によるチーム対抗戦、アマチュアMMAになります。

「ハイ、高島さんがバーレーンに行くってSNSで書かれていて……F1のバーレーンテスト云々と」

──はい、4月1日でもないのにカマしていました(笑)。実際は今、水垣さんが言われたMMA SUPER CUPとBRAVE CF57からなるBRAVE International Combat Weekの取材のためにバーレーンを訪れました。同じ週にF1のバーレーンテストが行われていて、翌週がバーレーンGPだったのでふざけてSNSに書くと、信じてしまう人がままいて……猛省しています。

「アハハハ。でも僕なら絶対に足を伸ばしちゃいますよね。F1のシーズン前のテストを見ることができるチャンスなんて、滅多にないですから(笑)」

──確かに滞在していたマナーマ市内から車で30分ほどの距離にバーレーン・インターナショナル・サーキットがあり、自分が空港に到着した時もF2やF3のボードを持って客待ちしているグループがありました。

「えぇ、そうなんですか。凄いですね。F1は盛り上がっていましたか」

──砂漠の国なので昼に人が外を歩くということが風習としてあまりないようで。ただ空港や街中はF1のビルボードとかもよく見られました。ただ自分が滞在したホテルや近くのモールはBICW一色でした。

「ところでバーレーンは、コロナの方はどうだったのですか」

──グリーン指定の国なので、屋内ではマスク着用。もう、それ以外の規制はなかったです。入国に陰性証明も要らないですし、SUPER CUPもBRAVE CF57も揃って選手、運営陣、メディアのテストもありませんでした。

「えぇ、でもF1ではアストンマーチンのセバスチャン・ベッテルが陽性で欠場になり、ニコ・ニュルケンベルグが代役出場していたじゃないですか」

──ハイ。コントロールできていると判断されている国だから入国に検査もなく、入国できます。そこでプロ&アマ4日間の大会ですし、食事はビュッフェ・スタイル。『これはいつ感染してもおかしくない』って思っていました(苦笑)。

「ですよね。いやぁ、それは怖いですよね」

──そうですね。症状以上に帰国できない。帰国後1週してシンガポールに行くので、隔離になりたくないという気持ちでした。取材以外はスーパーへの買い出しと、最後の晩にお世話になった関係者と食事をした以外はホテルの部屋から出なかったです。そういえばバーレーン入りした便に、メキシコ人がたくさんいて凄く盛り上がっているから、チェコ(セルジオ・ペレス)の応援団かと思っていたら、SUPER CUPの出場選手でした。

「アハハハハ。僕はIMMAFのことは名前程度しか知らなくて、SUPER CUPのことも知らなかったです。で、MMAPLANETに旅日記調で触れられていて、どういうものかIMMAFのサイトにマンスリー会員になって映像を視てみたんです」

──スバリ、どうでしたか。

「正直、驚かされました。色々と驚かされたことはあるのですが、彼らはアマチュアなんですよね?」

──ハイ。

「いやぁ、バーレーンやカザフスタンの中心選手はプロレベルというだけでなく、既に相当なレベルにあるように感じました。レスリング、ケージ・スクランブルも慣れたモノで。それだけでなくアイルランドやチーム・オセアニア勢もしっかりとMMAが出来ている。ウェルラウンディットという意味ではアイルランドとオセニアは、バーレーンやカザフスタンよりも現代MMAでした」

──実は現地入りしてからもBRAVE CFの取材がメインで、SUPER CUPはついで。そういう意識でいたのですが、アイルランド✖チーム・オセアニアの準々決勝を見て、認識が変わりました。SUPER CUPも可能な限り取材をしようと。

「分かります。僕もあの試合から映像を確認したのですが、アイルランドの選手達って、普通にスイッチを使いこなしていて。

組んでもMMAとして形になっている。アイルランドだから、それだけ地盤があるのでしょうけど、レベル的にはもう相当でしたね。レガースを着けていることに、違和感がある。それが第一印象です。プロじゃないのか……というのが。

それとトーナメントなのでケガをせずに戦うということなのか、テクニック優先でラフなことがない。ただ激しくないということではないです。あと、気になった選手は名前など覚えますけど、これだけ選手が出ていた名前と顔が一致しないなかでチームが統一のユニファームで戦うのは分かりやすくて良かったです。

あれは日本人チームとか誕生すると、見ている人も感情が搔き立てられると思います。

まぁバーレーンはダゲスタンとブラジルの連合チームじゃないかって思いますけど(笑)」

──そこはバーレーン流と言いますか(笑)。以前、サッカーのW杯アジア予選で日本と戦ったバーレーン代表はナイジェリアから2人、モロッコ、チャドとアフリカからの帰化選手がいました。これは中東全般でも見られ、バーレーンだけでなくオマーン、バーレーンの陸上選手はケニア、エチオピア、ウガンダ、タンザニアからの帰化選手が目立っています。ブラジル人はともかく、ダゲスタンの選手はイスラム教徒でしょうし。まだ共通点があるのかって感じですね(笑)。

「そのダゲスタン勢が強かったです。みな、レスリングがデキる。いえ、デキる以上ですね。準々決勝を終えて、そういう印象を持ったのですが、最初に出てきた女子選手にも驚かされました」

──アリーサ・ベルトソですね。

「立ち上がりを見て、ジャブが伸びてワンツー、ローや前蹴りを繰り出す選手。ブラジルのMMAファイターだし、下もそこそこできる打撃&柔術という風に勝手に予想を立てていました。でも──あの打撃から前に出ると、バシッとダブルレッグでテイクダウンを決めていましたね。あれは意外でした。

あの打撃スタイルの選手は、普通は遠くからの打撃戦で削って、相手のテイクダウンを切る。テイクダウンされても、下で戦える。そういう選手が多いじゃないですか。でも、彼女は打撃で勝っていてもテイクダウンに行きました。

後から出てきた男子選手の戦い方を見ていると、あの女子選手も同じジムで練習しているんですよね?」

──ハイ。KHKジムで練習をしています。ダゲスタン出身、BRAVE CFスーパーライト級王者エルダル・エルダロフがヘッドコーチです。エルダロフはキャリア13勝1敗、18歳の時にキャリア6戦目のカビブ・ヌルマゴメドフに唯一の黒星を喫した現役ファイターでもあります。

「なるほどぉ。そういうコーチがいるから、テイクダウンの仕掛けが強いんですね。そこがないと、あの打撃があってテイクダウンにいくという戦い方にはならないと思います。そこが印象的でしたね。

しかもこのベルトソは下になった場面でも、どんどん極めを仕掛けて。下からも強かったです。打撃と下かと思うと、テイクダウンができた。だから寝技は上攻めかと思ったら、下からもキレキレで──結局、全部できるのかと」

──それでもアマチュアです。

「もう、日本のアマチュアとは比較にならないです。正直、レベルは日本だとプロのベルトを争えるレベルだと。その次に出てきたビア・バジリオも、強烈な極めの強さでサクッと腕十字で勝ちました」

──彼女は2019年のADCCの女子60キロ級で優勝している選手です。

「えぇ、そうなんですか。寝技が強くて当たり前じゃないですか。もちろん、彼女もブラジル人ですよね。いやぁ……そこから出てきた男子はハジ・モハメド・アリ、ラマザン・ギチノフとか本当にレスリングが強かったです。特にラマザンはエグイですね。相手も強かったですけど、アナコンダでしっかりと勝って。

このブラジル&ダゲスタン連合のバーレーンがぶっちぎりだと思ったら、準決勝で彼らと戦ったカザフスタンが……また強かったです」

<この項、続く>

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お蔵入り厳禁【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:2月:ジム・ミラー✖ニコラズ・モッタ─02─

【写真】その生きる様子を眺めるだけで、心が豊かになれる。そんなジム・ミラーだ (C) Zuffa/MMA

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2022 年2月の一番=19日に行われたUFN201からジム・ミラー×ニコラズ・モッタ戦を引き続き語らおう。

<月刊、水垣偉弥のこの一番:2月:ミラー✖モッタPart.01はコチラから>


──狙い通りに、と。

「そこを完全に狙っていたかどうか。ジム・ミラーの打撃の精度だと分からないですが、結果的だろうがそうなったのは凄いことです」

──今のMMAは常にアグレッシブに戦う姿勢を見せる戦いに変化しつつありますが、基本的に間を置くことが許される数少ないコンバットスポーツでした。加えて修得する技術も多く、選手寿命も自然と長くなる。改めて38歳です。ジム・ミラーは。

「でもUFCですからね。そこが嬉しいです。ジム・ミラーが勝つと、古くからのMMAファンが盛り上がります。クレイ・グイダ、レオ・サントスに並ぶモノがあります。彼らが勝つとタイムラインがざわつく、それが個人的に嬉しいです。とはいえここで勝つということは関脇とまでいかなくても、前頭の上の方の相手が次戦では用意されます」

──それがUFCです。

「どんな相手との試合が決まるのか。楽しみであり、厳しいなという気持ちはします(苦笑)。UFCでこれだけキャリアを積んでいると、生活の心配なんてないでしょうし、『できるだけUFCで試合をしたい』と言っていますよね。

楽しめている。生活が懸かっているのと、楽しめるのは違います。それと大金を手にしてダメになるファイターもいるじゃないですか。要はお金がモチベーションの。ただミラーのように成功を収めても、きついのに次、次へと挑戦するのは根本的にMMAを楽しめているからですよね」

──子供4人に食事を創らないといけないから──と試合後のインタビューで言うのも素敵です。

「格好良いです。自分が出来なかったことをジム・ミラーはできている。憧れでもあります。僕の場合は子供が生まれて、穏やかになってしまった……そういう面はありました。

僕もMMAが好きだし、楽しいし。できれば長く続けたいというのがありましたけど結果が出なくなってしまって……KO負けも多くなってしまった。だから引退を決めたのですが、ジム・ミラーはやり続けている。

僕は続けたいけど、『もう、やっちゃいけない』という気持ちになりました。練習が100パーセントできないなら、試合に出ることはできない。最後はそういう感じになっていました」

──原稿を書くのは逃げ道を創れますけど、MMAファイターは違いますよね。休むと落ちて、相手に食われますしね。

「100じゃない状況、気持ちで試合を戦っている時に、過去の試合中には一度もなかった『シュン』となってしまったらどうしようと怖かったです。自分に対して残念で傷つくだろうなと。そんな風になるぐらいの覚悟しか持てなくなるなら、もう辞めようって思いました」

──試合が怖くなっていきましたか。若い頃は全く平気だったじゃないですか。

「年を取ると入場直前に『いなくなりたい』とか(苦笑)。最後の方はそうなります。怖くなかったものが、怖くなる。それは身を引くきっかけにはなりますね。当然、人それぞれだとは思います。若い頃から怖くて、それを克服して。勝った時の気持ちが何よりも優るから続けられる人もいるだろうし。ミラーもどういう心境で戦い続けることができるのか、それは彼に聞かないと分からないです」

─ジム・ミラーは10年以上、同じフィジカルコーチに見てもらっている。殴る、蹴る、極めるという練習より憂鬱になりがちがトレーニングを20代の時から同じ人物の指導を受け続けるというのも凄いことだと感じました。

「その辺りが長く続けることができる秘訣かもしれないですね。フィジカルコーチが同じというのは凄いです。試合が日常になっているのか。僕にとって試合は非日常の勝負を賭けるところでした。

ただ柔術とグラップリング、タイ人のムエタイとか毎月戦うことができる。そういう感覚をミラーは持てているのかもしれないですね。僕はそういう感覚は持ち合わせていなかったです。何カ月かに1回、その瞬間に研ぎ澄まされた感覚で戦う。

だから試合の時は100の状態でいること。できることを全部やって100で挑む。そういう風でいた。逆に日常になれば、80とか90でも戦い続けることができるのかもしれないです。それが日常──準備が整うかどうか、気持ちが創れるかどうか。その部分が、日常なら上下するのは当然なので。そうやって試合に出ているから、試合を楽しめるのかと思います。

それをUFCでやっているんです。チャンピオンでなく、ずっと平幕で。十両まで落ちないから、UFCで戦い続けている。UFCのチャンピオン、メインイベンターで活躍し続けるって立派です。ただ一般人としてジム・ミラーのような人に憧れます」

──一般人?

「あぁ、でも若い頃は自分は特別だと思っていました

──そりゃあ無類のハードパンチャーですから。

「でも米国で戦うようになって、ほんのちょっと人より優っている。ほんの少しの特別具合……『いや普通だな、俺』って考えるようになりました。普通にどこにでもいる人。でも、この中に入るとむしろ弱い方だっていう感じになっていました。

だからジム・ミラーもそうですが、僕のなかではフランキー・エドガーから特に影響を受けました。エドガーって特別ではないですよね。でも気持ちと技術で勝ち、チャンピオンになった。僕と同じ普通の人間なのに」

──あのう……水垣さんは普通じゃないですよ。特別ですよ。そうでないと、他の日本人選手がMMAを続けられなくなってしまいます(笑)。

「アハハハハ。ありがとうございます。でもあの輪に入ると……」

──あの輪に入ることができる……それが特別なんです。

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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:2月:ジム・ミラー✖ニコラズ・モッタ「なぜKO勝ちできるのか」

【写真】自身のキャリアを重ね合わせ、興味深い話が聞かれました (C) Zuffa/MMA

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2022 年2月の一番は19日に行われたUFN201からジム・ミラー×ニコラズ・モッタ戦について語らおう。


──水垣さんが選ぶ2022年2月の一番をお願いします。

「ジム・ミラー×ニコラズ・モッタですね。まぁ、言うとジム・ミラーの話になります。38歳、UFCで39戦目。そして23勝目を挙げた。何より、ここにきて2連続KO勝ちというところに注目したいです。

普通、年齢を重ねると反射神経が衰え、パンチに対して反応ができなくなる。打撃でやり合うことは厳しくなってくると思うんです。それなのにジム・ミラーは2試合連続でKOして勝っている。スタイル的にはローキックが強く、一発でKO勝ちということもあったとしても、ストライカーではないですよね。ジム・ミラーの何が変わったのか。

テイクダウンの圧力があることは確かです。それに今も言ったようにローは強い。それでも、こういう風に当てることができるようになったのはどういうことなのか。自分のなかでも、要因が見つかっていません。テイクダウンにしても、打撃と同じスピードで動くので、加齢とともに組みつけなくなり、打撃を被弾するケースが増えてくると僕は思っていました。それがジム・ミラーは連続KO勝ちで」

──自身のキャリアと比べてしまうところはありますか。

「ハイ。僕自身、スタンドの反応の遅れで打撃でやりあうと勝てなくなりました。だからテイクダウンしてトップコントロールで勝とうと修正を図ったのですが、やりきれなかったです。それがグラップラーのジム・ミラーが、年を重ねて打撃で勝っている。僕がやったことの逆をいっていて、そんなことができるのかと」

──水垣さんは打撃に秀でていました。あの距離で北米のファイターとやりあえる。だから、その反応の遅れが非常に大きなファクターになったかと。ただ、ミラーはストライカーでなく、そのズレがあっても鈍感にいけるということはないでしょうか。

「アハハハ。もとから打撃としては崩れているので。でも、ああいう風に当てられることが、僕の中では腑に落ちないんです(苦笑)」

──最近のMMAは寝技の攻防のなかで極めるということは、本当に少なくなっていると思います。いわばノーギ柔術+パウンドが続くということはない。サブミッションは打撃を効かせたあとのフィニッシュで。だからこそ、対戦相手が極めに秀でていると、そこにいかないという気持ちが大きくなるのか。

「それはあるのかもしれないですね。だからこそ、組まれたくない。倒されたくない。寝技はしたくないと思い過ぎて、打撃を受けてしまったというのはあるかと思います。

実際、僕はテイクダウンされることを徹底的に嫌がっていて、レスラーに対する苦手意識を持っていました。下になるとまずいから、テイクダウンを切って打撃を入れる。そういう練習に精を出していました。ただ、それって相手ありきで本来の自分ではなくなってしまうんです。

グラップリングの試合にMMAファイターが出て、足関節に恐怖心がある。そこに対応することばかりを考えると、自分の持っている組みが出せないのと同じですね」

──相手の間で戦う、居着くということですかね。

「あぁ、分かります」

──?

「武道との繋がりはあると思います。僕は剣道をやっていたので、居着くという言葉は身近なんです。居着きまくりの剣道人生を送っていたので(笑)。出小手って剣道にあるんですけど……」

──でごて?

「ハイ、面を打ちに行って腕を上げようとした瞬間に小手を打たれる。出後手でやられると、その恐怖心が続き面が打てなくなります。結果、動けなない。自分の動きが何もできなくなって負けてしまう。居着いていた……今、そのことを思い出しました。過信ということではなくて、やるべきことに対して、少し自分に傲慢になって戦うぐらいの方が良いのかもしないです」

──仮にモッタがミラーの組みに対して居着いていたなら、興味深いのは左でなくて、右のカウンターで倒されたことかと。

「サウスポーに対して、やはり気にするのは左ですからね。でも、ミラーは右を右で迎え撃った。そうですね。モッタはもう自分の動きができておらず、右への警戒心は薄い。そこで意識してかどうか。意識していると凄いですけど、とにかくミラーは右でKOしたと。本当に興味深いですね」

<この項、続く>

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AJ・マッキー BELLATOR Bellator273 MMA MMAPLANET o RIZIN Special VTJ その他 エンリケ・バルゾラ ジェイムス・ギャラガー スコット・コーカー ダリオン・コールドウェル ニキータ・ミハイロフ ベラトール マイケル・ペイジ 柏木信吾 水垣偉弥 海外

お蔵入り厳禁【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:1月:バルゾラ✖コールドウェルからのミハイロフ

【写真】GPに入ってもおかしくない力をベラトール参戦後の2試合で見せているミハイロフ (C) BELLATOR

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、柏木信吾氏が選んだ2022年1月の一番。29日に行われたBellator273より、エンリケ・バルゾラ✖ダリオン・コールドウェル戦に──続き、ニキータ・ミハイロフやバンタム級ワールドGPについて語らおう。


――実はファイト&ライフ誌で水垣偉弥さんにBellatorバンタム級ワールドGPの優勝者予想をしてもらったところ、コロナ禍で何が起こるか分からない。補欠戦に入れば、バルゾラ優勝もある、大穴だという話になりました。ジェイムス・ギャラガーより全然、強いのではないかと。

「でもギャラガーは本来、あのメンツに入る実力はないです。バルゾラの方が強い。ただし地域的、そして放送環境的に外せないんだろうなと。ギャラガーは普通に残れない。彼を残すなら、ベラトールが戦略的にトーナメント枠を組むしかないと思います。ただ誰と当てても勝てない……という感覚ではいます(笑)」

――力はそこそこあると思います。ただし、キャラ優先であることは間違いないですよね。

「ギャラガー1人いれば、アイルランド大会やUK大会は大成功です。そう考えると、凄い選手ではあるんです。ベラトールが大切にする理由は凄くよくわかります」

――とはいえ純粋にファイターの技量としては、AJ・マッキーと同時期に注目され始め明白に差がでました。

「実はずいぶんと昔からアントニオ・マッキーに『俺の息子は凄いんだ』と言われていたのに、スルーしていたんですよね(苦笑)。『お前の息子だろうッ!!』って」

――いやいや、失礼な。かの実力者アントニオ・マッキーを捕まえて。

「強いです。強いですけど、まぁまぁまぁ……試合が……(笑)」

――アハハハハ。

「でもあの時からマッキーは『息子は俺とは全然違う。蹴りだってフライングニーや、スピニングシットが好きなんだ』って言っていたんですよね。2012年、もう10年近く前でVTJの招聘をしていた時期ですけど、『俺の息子は世界チャンピオンになる』って言っていました」

――父親の印象が強すぎて、大魚を逃してしまいましたね。

「マッキーのところに、なぜかハワイアンがいて。カナ・ハヤットをVTJに呼んだころですね。成績は綺麗でなくても、面白い試合をする選手が多かったんです。あの時に父親の方がそういう風に言っていて、いやぁ懐かしいですね」

――これぞ秘話ですね。いずれにせよ、ギャラガーは難しいと。

「ハイ、連勝はしていたけど、明らかに勝たせるマッチメイクで。誰だコイツっていう相手が多くて。マイケル・ペイジも序盤はそうでしたよね」

――とはいえ、ギャラガーやMVPの価値を欧州であげた。それこそベラトールの面白い点かと思うんです。軸が北米にただ一つ存在するのではなくて、欧州は欧州で機能している。

「ハイ、結果がマイケル・ペイジのように強い人は強い、北米レベルにある人間を育てているわけですしね。ベラトールには米国とヨーロッパという2つの軸があり、そのうえでドミナンスMMAマネージメントから、××××フっていう名前のコーカサスの選手も増えてきている。アリ・アブデルアジスが連れてくる──そういう選手もいるので、しっかりとした選手が今のベラトールには揃っています」

──ついつい話が逸れてしまいますが、バルゾラにしてもニキータ・ミハイロフにしても、既にポスト・ワールドGPが動いているような。

「ミハイロフに関しては、ヒョードル軍団って重い選手ばかりだと思っていたら、あんなに良い軽量級の選手がいるのですね。普通に強い。倒せる打撃を持っているのに、どこでも戦える」

──打撃に関しては、ちょっと貰うことがあるかと。

「そうなると、組んで勝てる。ガチでいけば、ワールドGPにバルゾラとミハイロフが入っている方が自然だと思います。ただ彼らにはスコット・コーカーの好きな華が欠けています。今はチームで色々と修正も見られますが、スコットは本来そういう華の部分が好きですよね」

──それは決して男前とか、ルックスではないですよね?

「そういうわけではないです(笑)。ただしバルゾラとミハイロフを入れて、彼らが勝ち進むとどうなるんだという風になるのも分かります。現在のGP出場のメンバー8人は、これまでベラトールのバンタム級を温めてきた選手たちですしね」

──逆に出ない方が、その後が楽しみなるという風な気もします。

「ホントにその通りで。GPが始まってもいないのに、他の選手が活躍して『この選手たちが見たい』という意見が挙がるぐらいですからね。

でもタイガー・マゴメドフとニキータ・ミハイロフが戦えば、どんな試合になるんだろうとか、凄くワクワクしてきますよね。でもマゴメドフの方が、上ですかね。あの打撃を潰していくか。ブレイン・シャットに入れた最初の右ストレートなんて強力でしたよ」

──その楽しみなベラトールのバンタム級ファイターとRIZINバンタム級ファイターが絡むことは?

「絡みたいです。当然、GPの補欠に関しては『RIZINにもバンタム級には良い選手が揃っている』という話をしています。日本から米国に行くのは可能で、何かをしたいということは常にスコットと話しています。

野望……希望として、絡みたいです。ぜひ絡みたい。日本人同士でしのぎを削ってきたなかで、次は海外に挑む、迎え撃つというのは選手のモチベーションも上がるし、良いコンセプトです。日本のMMA界が一つになれる機会でもあるので、GPの補欠、その他に日本の選手がチャレンジしていければと本当に思っています」

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BELLATOR MMA MMAPLANET o   キック ジェイムス・ギャラガー ラフェオン・スタッツ 水垣偉弥

【Fight&Life】「一番イージーな相手は……」ワールドGPに向け、ラフェオン・スタッツって何者?

【写真】確かな目と、技術、そして身体能力の高さは驚異だ(C)BELLATOR

24 日(木)発売されるFight&Life#89にBellatorバンタム級ワールドGPに出場するラフェオン・スタッツのインタビューが掲載されている。

MMA戦績17勝1敗、高いテイクダウン能力とコントール力を誇るスタッツは、1988年生まれの32歳、26歳でMMAデビューと活動開始は非常に遅い。今回の新たビューで、スタッツはMMAに転じた背景、そしてGP出場について語っている。

ここではスペースの都合で、誌面では紹介しきれなかったフォークスタイルとフリースタイルの違い、GP出場選手のなかでもっとイージーな相手についてのスタッツの言葉をお届けしたい。


──なるほど、大学の間でもフォークスタイルだけでなくフリーやグレコも練習環境と試合の機会があるということですね。フォークスタイルレスリングが盛んなことが、米国のレスリング上がりのMMAファイターのアドバンテージになると思っています。

「フォークスタイルもフリースタイルもテイクダウンまでは同じだよ。ただし、そこから先は違う。フォークスタイルはコントロールするためのレスリングで、フリースタイルはコントロールや削るということは考えないよね。バックに回ることが主流だ。そこから相手をコントロールすることは考慮していない。でもコンバットサンボの方がMMAにずっと近いよ」

──コンバットサンボは打撃がありますからね(笑)。その打撃という面では、デューク・ルーファスはキックのスペシャリストであり、MMAの打撃を心底理解している指導者です。

「デュークは知識が豊富で、僕のような優れたレスラーがどのように打撃を使うのかを指導してくれる。そこで僕に合ったツールを与えてくれるんだ。デュークは型にはまった打撃ではなくて、目的を果たすためのパンチや蹴りの打ち方、使うタイミング、距離の取り方を教えてくれる。科学だよ。彼は打撃の指導者かもしれないけど、僕のなかではウイニング・コーチなんだ」

──勝利に導く指導だと。

「そうだよ。勝つためのノウハウ、相手を支配する戦い方が分かっている。デュークの指導はただ動きを見せるだけでなく、そこに必ず理由があり、理を説明してくれる。デュークの高いファイトIQは、いくつもあるパーツを正しい位置において、MMAで勝つというパズルを完成させる。そうやって僕らは勝利を手にすることができるんだよ」

──同門のセルジオにインタビューをした時、戦うことになったら戦う。お互いそう思っていると言っていました。

「僕らが戦うならファイナルが一番相応しいよね。セルジオは僕にとって厄介な相手になることは間違いない。あのスタイルは倒すことが困難だから」

──トーナメント戦を勝ち上がるには、枠順も大きく関係してきます。優勝するためには最もイージーな相手と初戦で当たる方が良くないですか。

「確かに!! 一番簡単な相手を選ぶのは、それこそ簡単だ。タフな相手の名前を挙げるより、ずっとイージーだよ。一番楽なのは間違いなくジェイムス・ギャラガーだよ。ジェ~イムス・ギャ~ラガー。 アッハッハッハッハ。

もうアイツが何者でもないことは、世界中でバレてしまった。日本の皆だって、そう思っているはずだ。一番楽な相手と初戦は戦うべきだというアドバイスに従うなら……アッハッハッハ、ジェイムス・ギャラガー以外に考えられないね。

僕は世界のベルトを目指し、100万ドルを手にするために戦う。ジェイムス・ギャラガーはどういうつもりで、このGPに出てくるんだろう……まぁ、僕は世界のベストになるために誰とでも戦うよ。だから最強の相手と戦うつもりで準備をする」

※MMAを始めたきっかけ、Bellatorを選択した理由。そして来るべきGPで戦うことになるライバル達についてスタッツが話したインタビュー、そして水垣偉弥のワールドGPの予想などが掲載されたFight&Life#89は24日より発売です。

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BELLATOR LFA LFA122 MMA MMAPLANET PFL Special UFC イスラム・マメドフ カルロス・モタ チャールズ・ジョンソン ベンソン・ヘンダーソン 堀内佑馬 水垣偉弥

【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:1月:ジョンソン✖モタ─02─「打ち合いなさいという打ち合い」

【写真】MMAに限らず、プロスポーツは観客の見たいモノ、求めるモノで変貌していくと思います。ビジネスとして拡大してきた今、MMAは変革期を迎えているのかもしれない(C) LFA

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2022 年1月の一番は1月21 日に行われたLFA122からLFAフライ級選手権試合=チャールズ・ジョンソン×カルロス・モタ戦について引き続き語らおう。

<月刊、水垣偉弥のこの一番:1月:チャールズ・ジョンソン✖カルロス・モタPart.01はコチラから>


──クローズドになって時間が過ぎたからではなく、クローズドになったからという風にも見えました。そういう意味ではBellatorでイスラム・マメドフがベンソン・ヘンダーソンに負けた試合など、もうテイクダウン・ディフェンスがしんどくてギロチンを仕掛けて下になり、立てないで下で勝った。アレが他の試合でも続けば、MMAは別物になってきますね。

「まだ初回のギロチンは分かります。ニアフィニッシュという風に捉えて、あの展開だとベンヘンにつくのは。ただし3Rはギロチンで引き込んで、極まらなかった足関節でポイントがつくというのは、これまでにはなかったことですね。

マメドフがケガをしたり、ヒヤッとしたモノでもなかったです。それで、あれが有効なのかと」

──観客の声に惑わされた一過性の裁定だと信じたいです。マメドフには気の毒ですが。

「これが続くと、やはりMMAが違ってきますよね。ギロチンで下になり、そのままで勝てるならレスリングの攻防がなくなるかもしれない。それはLFAやコンテンダーシリーズの戦い方を助長することもありえますね」

──我々が好きだったMMAは、もう無くなってくのかもしれない……と。

「いやぁ、寂しいです。そうなると。僕もやはり強烈なテイクダウン能力を誇る選手と如何に戦うかと、そこを考えて打撃をやってきたので。これってまた車のレースの話になりますけど……」

──ぜひともお願いします。そこに反応してくれるMMAファンがほぼほぼいないのですが(笑)。

「そうなんですよね。MMA好きって、レースが好きな人少ないですよね(笑)。テイクダウンの要素をなくしたMMAが存在するって……今のレースのオーバーテイクのシーンを感じさせるんですよね」

──と言いますと?

「ずっとレースって、前の車の後ろにつき空気抵抗を無くしたスリップストリームでオーバーテイクをしてきたじゃないですか。それが、空力を追求し過ぎて難しくなった」

──前者の真後ろにつくと、空気がなくなって引き寄せられていたのが、空力が複雑になり過ぎて乱気流が起こったり、空気の抜けがあってアンダーが出たり、今では近づけないという状況になっています。

「そこでパスを増やすためにオーガナイザーが採用した手段が、一時的にエンジンの出力を上げるプッシュ・トゥ・パス、もしくはウィングを可変させドラッグ(空気抵抗)を低減させるDRSでした。パスの瞬間だけ、前と後ろの車の特性を変えて後ろの車が前者を抜けるようにしたんです」

──前者がプッシュ・トゥ・パスを押せない、DRSを使えない場合は、エンジン出力と空力特性が違うようになり後者が圧倒的に有利なる。もう、駆け引き無しに抜けます。

「ハイ。どんどん抜けるようにした……。そこに別の駆け引きが生まれている。テイクダウンとコントロールを排除したMMAは、そこに通じているのかと思います」

──手っ取り早く打撃戦にするには、本来ある要素を抜くと。

「ハイ。打ち合いなさいっていう打ち合いって、なんか乗れないんですよ。そこにテイクダウンがあり、倒されないように戦って打ち合いになるなら分かりますけど」

──打撃で勝ってきた水垣さんが言うと、本当に重い一言です。

「僕はそこで勝負して、打ち勝つたないと勝てないから打撃戦をしていました。だから、そこで負けると試合も負ける。対して他に勝てる手、引き出しがある選手が打撃だけにしぼった戦いをするのは、勿体ないです。MMAを狭いモノにしている。そういう違和感が、ジョンソンがモタにテイクダウンを仕掛けられた時の反応の仕方に顕著に感じられました。

『足を取ってテイクダウンしても良いよ、どうせスクランブルゲームになるでしょ。で、立っちゃえば打撃戦で行けるから』というようなところです、ね。1度テイクダウンを許せば、そのままラウンドを失うかもしれないっていう緊張感もMMAにあるんです。この試合はいくら打撃で打ち合っても、そういう緊張感がない戦いになっていました」

──ジョンソンからすると堀内佑馬選手に勝って暫定チャンピオンになった時、UFCから声が掛からなかった。だけど嘘か真か『もう1つ勝利が欲しい。ショートノーティスで見たい』というリクエストがあり、王座獲得から2カ月弱で初防衛戦を戦い、パウドアウトで勝った。それでもUFCは契約を結ばなかった……。

「あぁ、だからもうあの戦い方でアピールをするしか、選択肢がなかったのですね。しかもジョンソンがフェザー級の選手だったらPFLもBellatorもあります。バンタム級でもBellatorがある。でも、フライ級だからUFCしかない。もう、ああいう試合をやるしかないという心境だったとすれば……」

──いやぁ、切ないですね。それは。

「辛いですよねぇ。MMAファイターとしてジョンソンは今も成長しているし、強いです。スイッチワークも堀内選手と戦った時とは違って、スムーズになっていました。なぜUFCがジョンソンとサインをしないのか。

個人的にはUFCにいっても、ランキングに入れる力があるかと思うんです。そういう選手と堀内選手が次はどう戦うことができるのか。ジョンソンにはUFCという舞台で戦わせてあげたいという気持ちがある一方で、冷徹にも堀内選手と強いジョンソンとの再戦が見てみたいです」

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