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【DEEP JEWELS48】前QOP重田ホノカが初参戦。Road to RIZIN第一弾はHIMEと。東よう子は2年4カ月振り

【写真】この試合は得意分野より、不得手分野での成長が問われる一戦か(C)MMAPLANET

20日(月)、DEEPより3月23日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS48の対戦カードが発表された。同日は恒例のDEEP Tokyo Impactとのダブルヘッダーで、JEWLES48は夜開催となる。
Text Manabu Takashima

昨日、修斗後楽園ホール大会で23日には新宿FACE大会が行われることが明らかとなっているが、この日は午後5時スタートでONE172がさいたまスーパーアリーナで開かれる。立ち技中心とはいえ若松佑弥がアドリアーノ・モライシュに挑戦するONE世界フライ級選手権試合や、青木真也×エドゥアルド・フォラヤンIIIIが組まれており、全くもって格闘メディア泣かせの1日になる。

そんな格闘の日のJEWELS48、前フライ級QOP重田ホノカが初参戦しHIMEと戦う一戦などアマを含め11試合が決定している。


プロ4戦目でベルトを巻き、昨年7月の初防衛戦で杉山しずかに敗れた重田はこの試合前から「自分の憧れはRIZINのベルト」と話し、ストロー級やスーパーアトム級で戦っていくことを明言しつつJEWELS参戦の青写真を描いていた。

そしてHIMEとの一戦は50キロキャッチウェイト、スーパーアトム+1キロとなっており、まさに重田にとって願ってもない体重といえよう。とはいってHIMEは厳しい相手になることが予想される。戦績5勝4敗ながら3年間、濃密な時を過ごしてきた。デビュー戦でケイト・ロータス、2戦目で藤田翔子に勝利すると3戦目で本野美樹に初黒星。しかし、4戦目で大島沙緒里に大金星を挙げ、3連敗を経験しているものの相手は万智、パク・シウ、中井りんという顔ぶれだった。

昨年9月には彩綺に殴り勝ち、拳の強さは絶対のHIMEは組みへの対応力も上がっている。これまで組み勝つ戦いをしてきた重田だが、HIMEのようなハードパンチャーは未経験だ。いきなりの猛者との戦い、それが重田にとってRoad to RIZINとなる。

(C)DAVE MANDEL/INVICTA FC

HIME×重田と並び3回戦で組まれたのはバンタム級の東よう子×MANA、青野ひかる×彩綺の49キロ契約マッチだ。

東は過去2年、PFLとInvicta FCで戦ってきたが健闘しつつも3連敗、2年4カ月ぶりのJEWELS登場でキャリアの再構築を図るMANA戦となる。

(C)SHOJIRO KAMEIKE & MATSUNAO KOKUBO

上記にあるようHIMEに殴り負けた彩綺は、桐生祐子を打撃で制し再起戦で勝利して今回の青野戦を迎える。

ねちっこい組みが信条で、昨年9月にはサダエ☆マヌーフとのグラップラー対決で生き残っている青野。いえばクラシカルなストライカー×グラップラー対決、自らの強い部分を相手に押し付ける我儘ファイトができた者が勝つ──そんな一戦になりそうだ。

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【Banana Oil 2025─04─】”UFCを絶対の価値”とした場合、日本のベルトは「意味がない」を受け入れる

【写真】ベルトに意味がない──UFCで戦うために、武器にならないということ。武器になるのは、強さのみ(C)MMAPLANET

日本の現状をMMA界の名伯楽であり、頑強なリーダーシップを誇る──プロフェッショナルMMAファイター集団=キルクリフFCのヘンリー・フーフト総帥が取材中に発した2つのショッキングな言葉を紹介した。UFCを絶対の価値とした場合に、その強さを追求できる状況にない。それが日本のMMA界の現状であり、現実だ。
Text by Manabu Takashima

「日本人選手の5勝1敗は、米国では2勝1敗」

「修斗、パンクラス、DEEPのタイトルはUFCで戦える力をつけるために、意味はない」

前者に関しては、レスリング無き打撃戦の奨励という形が進む日本のMMAに危惧を覚えるものの、技術的に北米及び世界との差は存在しているのだから、厳しい現実でも受け入れやすい。対して、この後者に関しては……反論材料はいかようにも用意できる人が、J-MMA界には揃っているだろう。


UFCに絶対に価値を置きたくても、できない。それでは食えない。それが日本のMMA界だからだ。だからこそ、ここではヘンリーの言葉を受け入れて、日本のプロモーションのタイトル戦線の様子を眺めてみたい。

ヘンリーがいうように修斗、パンクラス、DEEPだけでなくRIZIN以外、日本のMMA王座はさらなる上の舞台を目指すための材料でしかない。強い選手が揃っている。待遇面が良い。そういう場に進むためのチケットだ。現状では上記の老舗プロモーションだけでなくGrachan、HEAT、Gladiator、NEXUSらのベルトは全て、次に進むための通行手形として存在している。

それらのベルトを巻いたファイターはRoad to UFCか、RIZINというネクストターゲットとなる名を挙げる。とはいえ、そのベルトがどれだけ「行きたい先」の評価の対象となっているのだろうか。地方大会のワンオフ、あるいはエクスクルーシブでないRIZINはともかく(だからこそ、待ち状態のファイターの心理は辛いのだが……)UFCは、Road to UFCにしても基本は他の選択肢はない。

2022年のRoad to UFCに出場した日本勢は堀内佑馬、野瀬翔平、風間敏臣、中村倫也、SASUKE、松嶋こよみ、宇佐美正パトリック(計量失敗で欠場)、鹿志村仁之介(ライト級で代替出場)、内田タケル(ワンマッチ出場)の9選手でタイトルホルダーは修斗フェザー級王者のSASUKEだけだった。

2023年の第2回は鶴屋怜、野瀬翔平、上久保周哉、SASUKE、神田コウヤ、丸山数馬、原口伸の8選手で鶴屋がパンクラス、SAUKEが修斗、神田がDEEPのチャンピオン、原口がGrachan王者としてトーナメントに挑んだ。

前回は松井斗輝(計量失敗で欠場)、透暉鷹、野瀬翔平、小崎連、河名マスト、原口伸、本野美樹、雑賀ヤン坊達也(ワンマッチ出場)の8選手中、透暉鷹とヤン坊がパンクラス、河名がGladiator、原口がGrachanと4選手がベルトを巻いていた。

Road to UFCはその出場基準自体があやふやで、他のタイトルホルダーが出場を撥ねられるケースはいくらでも見られる。それでも出場を狙ううえで、選手たちがタイトルを保持したくなるのは十分に理解できる。いうと……絶対ではないkが、Road to UFCへの出場権獲得には効用があるやもしれない。ただし、出場してしまえばあとは実力勝負だ。

3度のトーナメントでUFCと契約した日本人3選手中、ベルトを持っていたのは鶴屋怜1人だけだった。日本の各プロモーションのベルトを持つことで、8人トーナメントを勝ち抜く力を有しているという保証になるのか。それは否、だ。

ベルトとは強さの象徴だが、今や国内の各プロモーションの陣容と国際戦の減少を見ればチャンピオンになったからといってRoad to UFCを勝ち抜ける力がついたことにはならない。”UFCを絶対の価値とする”と、RIZIN以外のベルトは世界に挑戦できるだけ力を持ったことの証明とはならない。

前戦で負けた選手が、タイトル戦に出てくる。前回はノンタイトル戦で白黒がついているのに、ダイレクトリマッチでタイトルが賭けられる。タイトル戦出場選手が欠場となり、下の階級で連敗している選手にいきなりタイトル挑戦権が与えられる。ランキングはタイトル挑戦の優先権で、上がいなくなると必然的に挑戦権は回って来る。特にJ-MMAのフィーダーショー化が明確になった以降、王者がステップアップした場合、王者越えを果たしてベルトを巻く選手は相当に少なくなってきた。王座決定戦と暫定タイトル戦が、スパイラルを描くように組まれ続ける。

そのようなタイトルマッチを実施するために、組まれたタイトル戦に掛けられたベルトが強さの象徴となりうるわけがない。ヘンリーの「ベルトは無意味」という言葉の通りだ。

ヘンリーは実際、日本のMMA界に向けてのみこのように口にしたわけでない。「修斗、パンクラス、DEEPのタイトルはUFCで戦える力をつけるために、意味はない。それは米国のローカルショーでも同じことだ。〇〇〇だけ、その価値がある。それは〇〇〇でベルトを巻けるなら、UFCでも戦えるだけの力があると認められるからだ」と、ベルトでなくUFCで戦えるだけの力を有する経験が必要だと訴えていた。

くどいように書き記している”UFCを絶対の価値とする”ことがない選手にとって、ベルトは違う価値を持つ。経済的に生活が一変することがなく、未来を切り開くことにならなくても手にしたい。ベルトとは、日頃の努力が実を結んだことが目にできる結晶だ。ベルトを巻いて、応援してくれる人たちと喜びを分かち合いたい。最高に素敵なMMAを戦う理由になる。

プロモーションとしてもリスクのあるビジネスを成立させるうえで、タイトル戦が欠かせない要素なら組んで然りだ。

ただし、UFCとの契約を勝ち取るため、UFCで世界の頂点を目指すためにMMAを戦っているのであれば、必要なのは力かベルトか。何が必要なのか。

そこはもう自明の理なのだから、目的達成のために明確なビジョンを持ち、目的と手段を混同しないキャリアアップの青写真を描くのみ。この青写真がないと、限られた時間を無駄に使うことになる。同時にMMAPLANETは、メディアとして──UFCで戦う下準備になる戦い模様を届けていきたいと思っている次第です。

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【Column】マカオで11年振りにUFCを取材して……何だかんだと、詮無いことを考えてしまった

【写真】本当にすさまじい盛り上がり方だった (C)MMAPLANET

23日(土・現地時間)にマカオのギャラクシー・アリーナで開催されたUFN248:UFN on ESPN+106「Yan vs Figueiredo」。メインのピョートル・ヤン×デイヴィソン・フィゲイレドの激闘に沸き返る1万2000人超の館内をケージサイドから眺めて、「全然違う」と素直に思わされた。
Text by Manabu Takashima

何が違うのか。過去のマカオ大会とは、明らかに別モノだった。UFCが前回マカオでイベントを行ったのは2014年8月23日、もう10年以上も前になる。

ギャラクシー・マカオとアヴェニーダ・シダージ・ノヴァを隔てたザ・ベネチアン・マカオのコタイ・アリーナに7000人強のファンを集めたUFN48のメインは、奇しくも今大会でカラーコメンテーターを務めたマイケル・ビスピンが、カン・リーと相対した一戦だった。

マカオに初めてUFCが進出したのは、その2年前。2012年11月10日のUFC Macao(UFC Fuel TV06)で五味隆典、水垣偉弥、手塚基伸、漆谷康宏、福田力と日本人5選手も出場した。同大会での中国人ファイターの出場はジャン・ティエチュエンの1選手のみ。それでもコタイ・アリーナに8000人のファンを動員し、日本大会と並びアジアで定期的にイベントが行われるという期待が寄せられた。

この後、今はUFCを去ったマーク・フィッシャーを長とするUFCアジアは、TUF Chinaを軸とした中国人選手の育成という命題を挙げ引き続き2 度に渡りコタイ・アリーナ大会を取り行っている。2014年3月のTUF China Finale大会では、そのTUF Chinaウェルター級決勝戦でジャン・リーポン×ワン・サイが組まれ、ジュマビエク・トルスンと3人の中国人ファイターと共に日沖発と徳留一樹が参戦した。

上記にあるUFN48ではTUF Chinaフェザー級決勝ニン・グォンユ×ヤン・ジェンピン、ジャン・リーポンとワン・サイ&ヤン・ジークイと中国人選手は5人に増え、日本人出場選手は安西信昌と佐々木憂流迦の2人だった。

これら過去のマカオ3大会の集客数は6000人から8000人、コタイ・アリーナの一部を使用するスケールでイベントは実施された。3大会連続出場はキム・ドンヒョン。特に中国がフューチャーされるという風ではなく、アジア大会という空気感だったことが思い出される。

あれから10年、UFCにおける中国の存在感は比較にならないほど、重要になっている。

世界女子ストロー級王者ジャン・ウェイリは当然として、男子でもバンタム級のソン・ヤードンやウェルター級のリー・ジンリャンが北米要員として地位を確立。20人に及ぼうかという契約配下選手の多くは、上海PIで最先端のトレーニング環境が与えられ、現地のローカルショーからRoad to UFCという道を経て最高峰に辿り着いている。

フロリダのキルクリフFC、サクラメントのチーム・アルファメールと中国人選手が米国のジムで練習、所属することは何も珍しくなくなった。

今回のマカオ大会には上に名前を挙げた中軸ファイターの出場はなかったが1カ月に 3度から4度、世界のとこかで見られるUFCの日常的なイベントで、中国のファンたちはお祭り騒ぎ状態だった。

UFC300でジャン・ウェイリに挑戦したイェン・シャオナンを始めとする10人の同朋に、1万2000人越えの大観衆は「加油(チャーヨー」と、力いっぱい叫び続けた。特別でなく、ご当地ファンを応援する。そして世界のトップに声援を送るという──熱狂がギャラクシー・アリーナに渦巻いていた。

メディアの数は昨年、一昨年のシンガポール大会とは比較にならないほど多かった。プレスルームもそれだけ巨大だ。ざっと見まわして、中国メディアの数は80を下らなかっただろう。

それだけ投資をした結果といえばそれまでだが、お祭りでなく日常がビジネスになることは、大きい。何よりマカオ大会の熱狂は中国の人々のUFCを見る目が肥え、UFCを楽しめるようUFCが手を尽くしてきたからこその結果だ。

天文学的な額の投資やその勢いを買うだけの経済基盤が、かの国にある。だから時間を掛けることができた。投資を回収できないのであれば事業の見直すことになることも承知し、それだけ費やしてきた。残念ながら、我が国の経済はそのような余裕はない。プロモーターやファイター、ジム関係者、専門メディア、皆がそうだ。いうと一国全自転車操業状態。だから、目の前の利益を追求する必要がある。

複数の日本人ファイターがUFCのメインカードに名を連ね、サッカーのプレミアリーグで活躍したり、MLBでレギュラーを務める選手のような名声を得るにはどうしたら良いのか。そのような日はやってくるのか。

強さを追求しているだけでは食っていけないという言い訳をやめて、格闘技の本質を曲げないでいられるのか。あるいは強さが絶対の価値観を持つMMA界とするために、投機できるビリオンネアーが現れるのを待つのか。ギャラクシー・マカオを闊歩する大陸からやってきた人達を眺めつつ、そんな現実離れした考えしか思い浮かばなかった。

それでも今、日本のMMA界に奇跡的な神風が吹こうとしている。朝倉海のUFC世界フライ級王座挑戦は、特別なことだ。9年振り9カ月振りの日本人のUFC世界王座挑戦が、デビュー戦。彼の日本における影響力の大きさとフライ級の現状が合致した特別な世界王座挑戦に加えて、このチャレンジに化学反応を示す下地が今は少なからずある。

格闘技・冬の時代と呼ばれた頃に、「UFCで戦いたい」と猫も杓子も口にしていたのとは違う──本気で強さを追求することで、選択肢がUFC一択となったファイター達が存在している。平良達郎、中村倫也、鶴屋怜、木下憂朔、風間敏臣、井上魅津希──そんな面子に、Road to UFCと同時開催なんてことがあるなら強さを追求する純度と強度が高まるイベントの実現も可能になるに違ない。

この動きを一過性でなく、恒常性とするには……強さが軸となるマッチメイクをプロモーターが組める仕組みを構築すること。それにはファイターとプロモーターが対等の立場になる環境創りが欠かせない。過去の慣例に縛られない。過去の成功例でなく、今の成功例に目をやること。

近い例でいえば、それこそ朝倉海の大抜擢だ。なぜ、デビュー戦&世界挑戦が現実のモノとなったのか。彼はRIZINが求めることをやり抜き、UFCが求めるモノを追求してきた。その姿勢を学ばずに「RIZINで戦いたい」、「UFCと契約する」と口にしても、正直どうしようもない。

Road to UFCも然りだ。入口に立つことが大切なのは、UFC本大会であってRoad to UFCではないはず。出場を目指してレコードを綺麗にするために、強い相手との対戦を避けるような姿勢では、豪州が加われることが予想される次回大会を勝ち抜くことができるだろうか。

今やコンテンダーシリーズもそうだが、Road to UFCという「勝てば官軍」的なトーナメントで生き残るのは綺麗なレコードは当たり前。それも強い相手を食って、綺麗なレコードである必要がある。

韓国人ファイターだが、ユ・スヨンは昨年12月のNAIZA FCの敗北後に1月にBlack Combatでキム・ミウ戦と戦った。結果はNCだった。この2試合を経てRoad to UFCに出場できなかったかもしれない。

と同時に、この2戦を経験していないと今の強さがなかったかもしれない。要はユ・スヨンはRoad to UFCで戦う権利を得るために、チャレンジをした。

チェ・ドンフンは強いが試合が面白くないという韓国内での評判を、Gladiatorの2戦で払拭した。日本での試合は、現状を変えるために必要だった。

倒せる武器があることを自認し、準決勝まで勝利を最優先とした。そしてファイナルは見事なKO勝ちを飾った。彼もまた昨年12月と今年の2月と日本で戦って、Road to UFC出場権を得ている。

レコードが汚れるリスクを冒して、戦績を積んだうえでRoad to UFCに出場しても勝てないこともある。実際に河名マストや本野美樹はそうだったと言える。だからこ、その姿勢を評価する業界になることが、日本が強くなる第一歩ではないだろうか。

頂きを目指すには、登山口がどこにあるのか。そのルートをしっかりと確認、精査しないと登山はできない。その挑戦が成功例も失敗談も将来に活かすことはできないままで終わる。

根本として、日本を強くするのはプロモーターではない。ジム、そしてファイターだ。それを評価するのがプロモーターの役割で、さらに商売にする才覚が求められる。中継パートナーも同様だろう。ではメディアの役割とは何か……正直、専門メディアの役割など、もうとうになくなったのではないかと思っている。

フォロワーが多いインフルエンサーに、しっかりと格闘技を伝えてもらう方がよほど、Yahooへの転載でPV数を増やしてGoogle広告で生き永らえようとする専門メディアより影響力があるはず。影響力のある有名人や中継局、大手メディアに対して、情報提供でなく知識の共有を目指した記事を書く。それが、実はネット時代になる以前と変わらぬ専門メディアが果たすべき役割だ。


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【DEEP JEWELS46】彩綺戦へ、HIME「ストライカー対決であっても、ストライキングだけで終わりたくない」

【写真】 パンチ力があるからこそ、寝技で極める機会もでてくるでしょう(C)SHOJIRO KAMEIKE

8日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS46で、HIMEが彩綺と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

2021年のプロデビューから8戦で4勝4敗。戦績はイーブンでありながら、その対戦相手が凄まじい。ケイト・ロータス、藤田翔子、本野美樹、大島沙緒里、桐生祐子、万智、パク・シウ、そして中井りんと戦いながらストライカーのイメージを確立してきた。そのHIMEが語るMMAキャリアと理想、そしてリングネームの秘密に迫る。


もともとは寝技でバックを取るのが得意なタイプでした

――今回がMMAPLANET初インタビューとなります。まずはこれまでのキャリアについてお聞きしますが、格闘技を始めたキッカケから教えてください。

「格闘技を始めたのは5年前ぐらいです。それまでは小学4年生からずっとバスケットボールをやっていました。バスケがキッカケで山口県に来たんですよ」

――バスケがキッカケで山口県に、というと……。

「出身は愛知県ですけど、大学の先生に『バスケで就職したい』と相談したんです。そうしたら山口県の大学の先生と繋がりがあり、こちらでバスケのチームを持っている会社を紹介してもらいました」

――バスケに詳しくなくて申し訳ないのですが、そのチームはプロなのですか。それとも実業団なのでしょうか。

「いわゆる社会人チームですね。プロチームのようにバスケ専業というわけではなく、会社の仕事をしながらバスケをやるという感じでした。でも31歳ぐらいの時に、監督から『子として終わってください』ということを告げられて」

――そこで他のチームに行くという選択肢はなかったのですか。

「自分としてはバスケを続けたいと思っていました。でも、そういう形でチームを離れることになって……。このままバスケを続けても、復讐心が残ると思ったんですよ」

――元のチームを見返してやろう、と。

「はい。そんな気持ちでバスケを続けても楽しくないないだろうと思っていた時に、毛利道場に入りました。とにかく体は動かしていたいので、フィットネスジムを探して。あの頃はバスケを続けたいという気持ちもありつつ、道場に通うようになりました」

――そこからMMAでプロデビューするまで、どのような経緯があったのでしょうか。

「最初は週2回のフィットネスクラスだけで、ミットを打つのがメインのクラスだったんですよ。その後にあったのが、プロの人もいるキックボクシングのクラスで。『次のクラスにも参加してみなよ』と誘われて、モジモジしながら参加してみたのが最初です(笑)」

――社会人チームでバスケをプレーしていたのであれば、他の一般会員さんよりも体力や体の動かし方などは、HIME選手のほうが上だったのではないですか。

「動けるね、体力はあるねとは言われていました。でも自分の中ではメッチャ辛かったです。バスケとは使う筋肉が違うというか、瞬発力から筋持久力に変わるので。ただ、飲み込みは速かったみたいで、例えば寝技の練習でエビをやってみても困ることはなかったですね」

――やはり凄い。しかし、その時点ではまだ選手になろうとは思っていなかったのですね。

「ジムに入ってから半年ぐらいで、アマチュアDEEPに出るお話をもらったんですよ。同じ時期に入会した、ちーちゃん……和田千聖選手の試合があって『同じ大会に出る?』と声をかけてもらいました。

その試合で負けて、『もっとMMAをやりたい』と思って、アマ修斗にも出たあとDEEPジュエルスでプロデビューすることに――ただ、当時はプロ選手になりたいと思っていたわけではないんです。そんな気持ちのまま、プロの肩書がついたというか……」

――そのなかでプロデビュー翌年には長いリーチを生かしたパンチ中心のファイトスタイルで、前年にDEEPジュエルスのアトム級王者となっていた大島選手に、ノンタイトル戦で勝利しました。もともと格闘技経験がないなかで、なぜ打撃中心のファイトスタイルを選択したのでしょうか。

「自分の中では、選択したわけではないんですよね。大島選手との試合も『打撃が得意だから打撃で行く』のではなく、『寝技じゃ絶対に勝てないから打撃で――』という感覚に近いですね(苦笑)」

――えっ! そうだったのですか。

「もともとは寝技でバックを取るのが得意なタイプでした。だから藤田さんとの試合もバック奪取からコントロールしたり、本野さんとの試合でもグラウンドの展開があって」

――そういえば……大島戦以降は打撃の印象が強すぎて、HIME選手のグラウンドについて頭から抜けていました。本野戦ではボトムからの展開もありましたし。

「アハハハ。まぁ『グラウンドもゼロではない』というぐらいで。寝技も好きなんですよ」

――一方で大島戦の後は桐生選手に秒殺KO勝利を収めたものの、続いて万智戦とパク・シウ戦で連敗を喫しました。

「万智選手との試合は負けたことより、自分のやりたいことが出せなかったことが悔しいです。それと、あの試合から『もっとグラップリングをやりたい』と思いました。パク・シウさんとの試合も『打撃の試合になるだろう』と期待してもらっていましたけど、実際は打撃勝負ではなくMMAで負けたわけですよね。パク・シウさんも試合前から『私がMMAで勝ちます』と言っていましたし」

――……。

「今、ストライカーとして評価してくれるのは嬉しいです。でもやっぱりトータルで強くなりたいですね。パク・シウさんは本当に圧も凄くて、こちらが打撃で行きたくても行けませんでした。でも逆に、あのプレッシャーを受けて『KOできなかったけど、KOされなかった。もう怖いものはない』と思ったんですよね。負けたけど凄く自信になった試合でした」

――なるほど。その自信を胸に、中井りん選手の対戦相手として立候補したと。

「行けるだろ、みたいな(笑)」

――実際のところ中井戦で敗れはしましたが、HIME選手がパンチで中井選手を削ることができていました。打撃の面で何か新しく取り組んだことはありましたか。

「打撃の当て方ですね。それまでは『綺麗に速く打つ』というイメージでパンチを打っていました。でも最近は、相手の急所を自分の拳の効くところで殴ることを意識しています」

――拳の効くところ、つまりナックルを正確に当てるということですね。

「そうです。おかげで左ジャブを効かせることができるようになりましたね。中井選手との試合でも左ジャブと右アッパーを出していて――そこから右ストレートを当てたかったです。でも『このスタイルで、この距離を保つことができたら』という手応えはありました。

階級が上の選手で、負けたけど試合をやって良かったと思います。あれだけプレッシャーが凄い選手と向かい合って、自分もパンチで攻め込むことができました。『これでまた49キロで試合をしたら、どうなるんだろう?』と楽しみです」

――次の試合は49キロ契約で、「ストライカー対決」と言われています。

「ストライカー対決であっても、ストライキングだけで終わりたくないです。ストライカーである自分も好きではあるんですけど(笑)」

――今はストライカーの自分と、寝技をやりたい自分では、どちらが上ですか。

「あぁ、際どい! どっちなんでしょうね。今はストライカーの自分のほうが好きかもしれないけど、綺麗に寝技で極めることがあれば、また変わると思います」

『姫か殿か、どちらか選んでいいよ』と

――なるほど。ちなみに対戦する彩綺選手がブレイキングダウン出身であることについて、何か意識したりはしますか。

「特にないですね。『次の相手は?』と訊かれて『ブレイキングダウンに出ていた彩綺選手だよ』と答えたほうが分かってもらえることもある程度で。もうDEEPジュエルスで何戦もしている選手ですし、私たちが戦うのはMMAなので。自分もMMAで勝ちます」

――最後に、HIMEというリングネームの由来は何なのでしょうか。

「バスケの時のコートネームがHIMEだったんですよ。バスケでは試合中、互いに呼びやすいよう2文字ぐらいの名前をつけることがあって、それをコートネームと言うんです。大学でコートネームを決める時、私はカッコいいのが良かったのに、先輩が悪ふざけで『姫か殿か、どちらか選んでいいよ』と言ってきて」

――アハハハ! ゆくゆくはMMAのリングネームがTONOになる可能性もあったのですね。

「いやぁ、そうなると選択肢は一つしかないじゃないですか。でも当時から私はボーイッシュで、『見た目がボーイッシュでコートネームがHIMEなら笑いが取れるじゃん』という先輩の言葉に乗ってしまいました(笑)。今もリングネームがHIMEなのにストライカーで、あの時にHIMEを選んで良かったと思います」

■DEEP JEWELS46視聴方法(予定)
9月8日(日)
午後5時10分~U-NEXT、YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、サムライTV

■DEEP JEWELS46 対戦カード

<ストロー級/5分3R>
万智(日本)
スーリ・マンフレディ(フランス)

<49キロ契約/5分3R>
HIME(日本)
彩綺(フリー)

<アトム級/5分3R>
村上彩(日本)
桐生祐子(日本)

<ミクロ級/5分2R>
山崎桃子(日本)
知名眞陽菜(日本)

<60キロ契約/5分2R>
斎藤百湖(日本)
MANA(日本)

<アトム級/3分2R>
LIBBY(日本)
須田美咲(日本)

<バンタム級/5分2R>
Te-a(日本)
鈴木”BOSS”遥(日本)

<アトム級/5分2R>
上瀬あかり(日本)
サラ(日本)

<フェザー級/5分2R>
超弁慶(日本)
近藤セリナ(日本)

■DEEP Tokyo Impact2024#04視聴方法(予定)
9月8日(日)
午後12時35分~U-NEXT、YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ

■DEEP Tokyo Impact2024#04対戦カード

<バンタム級/5分3R>
魚井フルスイング(日本)
梶本保希(日本)

<フライ級/5分3R>
渋谷カズキ(日本)
原虎徹(日本)

<フライ級/5分2R>
マサト・ナカムラ(日本)
濱口奏琉(日本)

<フライ級/5分2R>
松岡疾人(日本)
安永吏成(日本)

<フライ級/5分2R>
加藤瑠偉(日本)
渡邉龍太郎(日本)

<フェザー級/5分2R>
水野新太(日本)
石塚一(日本)

<バンタム級/5分2R>
岩見凌(日本)
湯浅帝蓮(日本)

<68キロ契約/5分2R>
滝田J太郎(日本)
宮本誠一(日本)

<バンタム級/5分2R>
山口コウタ(日本)
フェルナンド(ブラジル)

<フェザー級/5分2R>
アシルベック(ウズベキスタン)
雄大(日本)

<フライ級/5分2R>
武利侑都(日本)
濱口麗地(日本)

<ライト級/5分2R>
宇良拳(日本)
渡部智偉(日本)

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【RTU】透暉鷹、本野美樹、原口伸、河名マスト、日本人4選手全員が決勝進出ならず

344: 実況厳禁@名無しの格闘家 2024/08/24(土) 09:07:39.00 ID:2SMvgbr70
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【Road to UFC2024 Ep06】本野美樹、シャオカンのロングリーチ&打撃を攻略できず判定で敗れる

<Road to UFC女子ストロー級準決勝/5分3R>
フン・シャオカン(中国)
Def.3-0:30-27.29-28.29-28.
本野美樹(日本)

サウスポーの両者、シャオカンが右ミドルを蹴る。前に出るシャオカンが左ロー、右の前蹴りとミドル、本野は左ストレートを見せる。身長とリーチで勝るシャオカンは左ローを蹴って、ジャブと左ストレート、本野はシャオカンの右ミドルを蹴ってテイクダウンを奪う。

ここで本野がマットに手をついている=グラウンドの状態でシャオカンが顔面を蹴ってしまう反則で本野にインターバルが与えられ、試合はスタンドで再開となる。

シャオカンが圧力をかけて左ストレートから右フックを当てる。本野も右の蹴りを見せて組み付こうとするが距離が遠い。最後はシャオカンが右フックから左ストレートを伸ばした。

2R、ここもシャオカンが前に出てジャブと左ロー、左ストレートにつなげる。なかなか距離を詰められない本野に対し、シャオカンがジャブから左ローと左フックと打撃の手数を増やす。シャオカンが右フックから左ストレート、下がる本野をパンチで追いかけて、右ハイを蹴る。

本野もシングルレッグで組みついて足をかけてテイクダウンを狙うが、シャオカンはスタンドをキープする。距離が離れて試合がスタンドに戻ると、シャオカンがインロー、左ストレートから返しの右フックを当てる。

本野もパンチを見せて組み付こうとするが距離が遠い。残り30秒でシングルレッグから組みついて投げを狙うが、ここもシャオカンは倒れない。逆に離れ際にシャオカンが右フックを当てた。

3R、シャオカンがジャブと左ストレート、本野がワンツーを見せるとバックステップでかわす。逆にシャオカンが左ストレートと右フック、続いて右フックから左ストレート、本野のステップインに左ストレートを合わせる。

距離を詰める本野はシャオカンの左のテンカオ。組んだ本野が左脇を差してテイクダウンを狙う。シャオカンが小手を巻いて投げる。ケージに押し込んで、大外刈りでテイクダウンする。一度トップキープする本野だが、シャオカンがケージに体を預けて立ち上がって離れる。

シャオカンがジャブ、ワンツーで前進。本野も左ストレートを見せて組み付こうとするが、ここも距離が遠い。シャオカンはジャブと右の前蹴りで距離を取って、左ストレートにつなげる。

本野が前足へのシングルレッグでテイクダウンを奪い、離れたところからパスガードを狙ってギロチンへ。一気にマウントを取って絞め続けるが、シャオカンも必死に耐える。

ここで試合終了となり、シャオカンが判定勝利。最後の最後でチャンスを作った本野だったが、シャオカンのロングリーチからの打撃を攻略できず、準決勝敗退となった。


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【Road to UFC2024 Ep05 & Pancrase347】「タイミング」透暉鷹&久米鷹介「その道を進んでいる」対談

【写真】凄く良い関係なのが、伝わる両者のやりとりでした (C)MMAPLANET

23日(金・現地時間)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでRoad to UFC2024 Ep05 & Ep06=Road to UFC Season03 Semi Finalsが開催され、Ep05のメイン=バンタム級準決勝で透暉鷹がシェ・ビンと戦う。
Text by Manabu Takashima

その透暉鷹は週に2度、グラップリングと柔術で肌を合わせているのが、9月29日(日)に立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で雑賀ヤン坊達也の持つ、ライト級KOPのベルトに挑む久米鷹介だ。

出会いから5年、互いを尊敬する11歳違いの練習仲間に次戦ついて尋ねた。


──Road to UFCを控えている透暉鷹選手ですが、渡米はいつ頃になりますか(※取材は14日に行われた)。

透暉鷹 今週の日曜日になります。試合が現地時間で金曜日、計量も木曜日なので。

久米 今度の日曜日に? へぇ、頑張って。

──軽いですね、久米選手(笑)。ところで2人が練習をするようになったのはいつ頃なのでしょうか。

久米 トッキーが(日沖)発さんのパーソナルを受け始めてからですね

透暉鷹 デビュー直後ぐらいからですかね、stArtでパーソナルを受けるようになったのは。4年前ぐらいですかね。

久米 もっと前だよ。北岡(悟)さんとの試合の時に(※2020年9月)、普段はMMAの練習はやっていなかったけど、背格好が似ているから対策練習の相手をしてもらったので。松本(光史)選手、いやトム・サントスとやった時ぐらいからは、もう選手練にいたと思います。

透暉鷹 あぁ、そうですね。発さんのパーソナルを受けるようになったのはコロナ前からだったし。それから金曜日のグラップリングの選手練習に参加するようになって、久米さんと練習をさせてもらうようになりました。

そうですね……。グラップリングと柔術なので週に2度、今も続けさせてもらっています。それまでMMAのことを全然知らなかったので、久米さんのことはメッチャ凄い人っていう風に思っていました。

──知らないのでメッチャ凄い人。良いですねぇ(笑)。

透暉鷹 そういうイメージがあるだけだったのですが、実際に練習をさせてもらうとゴリゴリで、ハルクみたいでした。

──ゴリゴリ(笑)。

久米 人として喋りはまだまだですけど、ゴリラ界で言えば一番喋ることができるので(笑)。でも真面目な話、トッキーは11歳年下で世代が全く違っていたので、それまでは全然知らなかったです。発さんから『一生懸命やる子がいて、選手練に参加していくから』っていう風に聞かされたのが、最初でしたね。

──実際に肌を合わせた時は、いかがでしたか。

透暉鷹 今もそうですけど、全然歯が立たなかったです。

久米 僕は最初の頃のことは余り覚えていないのですが、身体能力が高かったですね。技術的にも甘いところがあって。どんどん上がって来て強くなっています。もう今では、僕のことなんて踏みにじっていきます。

透暉鷹 いやいや……。いつも、やられています。

久米 純粋に強さを求めている。そういう価値観を持っていて、人柄としてもまっすぐで。グラップリングの練習でも、MMAに有効かどうかを考えながらやっていて、その部分でも本当に強くなっています。僕自身、トッキーが頑張っている姿に、本当に良い影響を受けていますね。

──現状として一緒に練習をしているのはグラップリングと柔術でMMAではないということですね。

透暉鷹 1週間のルーティンでMMAのスパーリングは木曜日にISHITSUNAの後輩とやって、土曜日に寒天FIGHT SPRITの合同練習という風になっていて。

──久米選手は寒天プロ練習の参加は?

久米 僕の方もMMAスパーリングは土曜日の夜にALIVEでやっている形なので。やっぱり朝と夜にMMAスパーを連続でやることはできないですね。僕の場合は月、水、金、土と発さんとStartでやっていて、水曜日はALIVEの夜の練習も指導が発さんなので、コマ数でいえば週に5度指導をしてもらっています。

発さんからは学ぶことばかりです。スパーの相手もしてくれますし、以前ほどゴリゴリでなくアドバイスをくれることが増えました。自分が強くなるために、発さんの指導が一番だと思っています。そういう発さんと普段から、これだけ一緒に練習ができている状態なので、またトッキーとは違うよね。

透暉鷹 ハイ。だからこそ、僕は発さんのパーソナルを受け続けているというのはあります。

久米 僕も試合前になるとプライベートの指導もしてもらっています。ゲームプランも発さんに任せているので。

透暉鷹 自分の方はISITSUNAの林代表とメインで考えて、発さんがそれをサポートしてくれる形ですね。

──ではRoad to UFC準決勝に向けて、仕上がり具合の方は?

透暉鷹 バッチリです。

久米 1回戦の時より、メンタルが良くて。動きもどんどん良くなっています。

──メンタル?

久米 公表していなかったですけど、体調面に問題があって。よく、しっかり勝てたなと思います。試合ができるかどうか、それも直前まで続いていたので。精神的にも体重を創るのもしんどかったと思います。

──そういう状況だったのですね。戦っていて、影響を感じることはありましたか。

透暉鷹 それは……ありました。行かないといけないところで、行けないとか。水抜きの幅が大きくて、試合当日も動けていなかったです。

久米 それでも完勝でしたし。底力があると思えました。やっぱり技術的にどんどん修正ができていて……試合だけでなく、普段から修正力が高くて。僕なんかより、全然自在に体を操れるタイプなんです。

──試合後はそれでも納得がいかないという表情でした。

透暉鷹 自分が理想とするフィニッシュする形を創ることができなかったので。あの舞台でそれができなかったのが、悔しかったです。

──Road to UFCは勝てば官軍ですが、そういう部分に拘りがあるのですね。

透暉鷹 UFCの映像を視て、やっぱりフィニッシュは意識しているようになっているのかと思います。沸かせる試合はしたい。視ている人たちにつまらない試合は見せたくない。でも、そこに行くために勝利が絶対で。前回の試合は、行けなかったことが悔しかったです。

久米 ポイントにしても制圧をしているのだから、立派な勝利です。

──沸かせる試合という透暉鷹選手の発言に関しては、どのように考えていますか。

久米 僕はどんな試合でも勝つことが一番大切だと思っています。そういうタイプなので……そんな風に思えなくなったら自分は試合に出るべきでないと考えています。それから一本やKOが究極系としても、相手を制圧することが第一という考えです。

自分の場合は、沸かせようと思って試合をすることがないです。結果的にそうなっているのは、自分がやられてしまっているからで(苦笑)。

──そこなんですよね。久米選手は出ることができる。そして、被弾もする。透暉鷹選手が言われた、行く・行けないの是非ではないですが、良し悪しというのか。

久米 僕は逆に行き過ぎる。それで、やられている。食らうと、コントロールできなくなるんです。結果、皆に心配させてしまうし。トッキーだって、そうでしょ? 俺の試合を見ていると……。

透暉鷹 ……そうですね。ヤバいです。凄く感動しますけど、やっぱり怖いですよね。

久米 心から応援してくれる人は、「もう辞めて」と言ってくれて。そう言ってくれる人の意見は、しっかりと受け止めてやっていこうと思っています。

──日本では勝つと沸かせる試合が、別モノとして捉えられているかと思います。あと勝ち負けよりも、良い試合という意見もあります。半面、もうUFCで戦う選手たちのなかでは、エキサイティングな試合をして勝つことが当然で。エキサイティングな戦いが自然とできるメンタルと、技術が合致しているように感じるようになってきました。だから、成績に安定性は欠ける。それでも中には、それで勝ち続けることができる選手がいる。それがショーン・オマリーかと。

久米 自分が発さんに教えてもらっていることは、実はそこに近いと思います。フィニッシュに向けての制圧ですし、ただ闇雲に攻めないということで。バチバチにいってしまうのですが……。コントロールするのは、フィニッシュするためです。それでも自分のコントロールができなくて、結果的に試合もコントロールできなくなってしまうということなんです。

例えばショーン・オマリーもそうかもしれないですが、綺麗なカウンターで勝つって、何もその場の閃きじゃないと思うんです。しっかりと組み立てていて、そのカウンターが入る展開にしている。そういうことを自分は発さんに、教わってきました。

トッキーもそうです。フィニッシュをする練習をして、それで判定になることもあるということで。こないだの試合はコンディションのこともあって、それができなかった。だから、悔しかったんだと思います。

透暉鷹 そうですね、自分でもフィニッシュにいけるタイミングがあるっていうのは分かります。それは、そこまでコントロールできているわけで。自分のなかでコントロールという部分では、RYO戦の敗北ですね。あの試合で、本当に自分を見つめ直すことができました。あれから自分が変わることができるようになりました。

──相手の技量にもよりますしね。

久米 だからこそ1Rと2Rと取っていても、攻める気持ち、フィニッシュする考えでないと、守りに入って逆に反攻を許すこともあると思うんです。相手がフィニッシュできる場合は、特にそうですよね。だからアタックする姿勢は持ち続けないと。攻撃は最大の防御──というのは、そういうことだと思います。

透暉鷹 1Rと2Rと取ると、相手はもうフィニッシュしかない。そうなるとコントロールしてのフィニッシュではないので。相手の動きも本来の動きではないと思います。

──そういうなかでシェ・ビン戦です。

透暉鷹 やはり削って、フィニッシュを狙いたいです。テイクダウン防御力は、上久保選手との試合を見ても高いと思います。テイクダウンを決める力も強い。そこを切って、向うがやりたいことをさせないことが一番大切だと思います。

テイクダウン後の動きは分からないですが、これまでの相手と違うと思って──しっかりと柔術、グラップリングをやってきたので。そのために久米さんにボコられてきて(笑)。

久米 いや、もうボコるなんて。ボコることはできなくなっています。

透暉鷹 僕のなかでは、まだボコられていると思います。

久米 2階級違うので。

──その久米選手との練習で養えることもあると?

透暉鷹 それは発さんとも同じですが、行くことできる……極めることができるタイミングを養うことができていると思います。そうでなくて、拘っていると「技術的に切り替えた方が良い」というアドバイスを発さんにしてもらえて。

そこが「今後のために必要になって来る」という風に指導してもらっています。

久米 厳しい戦いにはなると思いますが、やってくれるはずです。純粋に強さと向き合ってきているので。何より、僕が辿り着かなったところに……純粋に向き合っているので、何が何でも掴みとって欲しいです。

託すなんて言えないですけど、この道で頑張っている子には自分も自然と感情が入り、良いモチベーションを貰えます。ありがたいですし、より応援したくなる。そういう気持ちはあります。

──引退した選手みたいなコメントですが、9月に大一番=雑賀ヤン坊達也選手に挑むライト級KOPCが控えています。

久米 雑賀選手と同じスポンサーで、向う側だよね(笑)。

透暉鷹 いえ、そこはそこで(苦笑)。久米さんには絶対に勝って欲しいです。

久米 雑賀選手にしても、結果として再戦することになったのですが、5月のRoad to UFCのワンマッチから掴みとって欲しかったです。やっぱり、そっちの道を往く日本人選手のことは心から応援してきたので。

僕自身、前回は勝ってはいますが雑賀選手の怖さは誰よりも知っているつもりです。あの一発を味わっているからこそ、気持ちが引き締まります。

──そんな久米選手のチャレンジ、透暉鷹選手は何を見せて欲しいですか。

透暉鷹 何時も凄く感動をもらっているのですが、もう危ない試合は見たくないです。

久米 僕が半面教師になるので(笑)。トッキーもそうですが、若い子たちが僕の試合から何をかを感じて、学んでくれることは嬉しいです。

──では最後に透暉鷹選手、シェ・ビン戦への意気込みをお願いします。

透暉鷹 本当に1試合、1試合、賭けてやってきたので。1日、1日の積み重ねてきたことを試合で出して絶対に勝ちます。

久米 本当に調子が良いので、自分を信じてぶつけて欲しいです。

■視聴方法(予定)
8月24日(土)
Ep05午前10時~UFC Fight Pass
Ep06午後12時~UFC Fight Pass
Ep05&06午前9時45分~U-NEXT

■ROAD TO UFC 2024 Episode06計量結果

<Road to UFCフェザー級T準決勝/5分3R>
シェ・ビン: 146ポンド(66.22キロ)
河名マスト: 146ポンド(66.22キロ)

<Road to UFC女子ストロー級準決勝/5分3R>
ドン・フアシャン: 115ポンド(52.16キロ)
シー・ミン: 115.5ポンド(52.38キロ)

<Road to UFCフェザー級準決勝/5分3R>
チュウ・カンチエ: 145.5ポンド(66.0キロ)
原口伸: 146ポンド(66.22キロ)

<Road to UFC女子ストロー級準決勝/5分3R>
フン・シャオカン: 116ポンド(52.62キロ)
本野美樹: 116ポンド(52.62キロ)

<ウェルター級/5分3R>
サマンダル・ミュロドフ: 170ポンド(77.11キロ)
ジョナサン・ピアースマ: 174ポンド(78.92キロ)

■ Road to UFC2024 Ep05対戦カード

<Road to UFCバンタム級T準決勝/5分3R>
透暉鷹: 136ポンド(61.69キロ)
チィルイイースー・バールガン: 136ポンド(61.69キロ)

<Road to UFCフライ級準決勝/5分3R>
チェ・ドンフン: 125ポンド(56.7キロ)
アンガド・ビシュト: 125ポンド(56.7キロ)

<Road to UFCバンタム級準決勝/5分3R>
ユ・スヨン: 136ポンド(61.69キロ)
ダールミス・チャウパスゥイ: 135.5ポンド(61.46キロ)

<Road to UFCフライ級準決勝/5分3R>
キル・シン・サホタ: 125.5ポンド(56.92キロ)
ルエル・パニャーレス: 126ポンド(57.15キロ)

<女子フライ級/5分3R>
ダニー・マコーミック: 126ポンド(57.15キロ)
ヤン・チーフイ: 125ポンド(56.7キロ)

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Road To UFCシーズン3準決勝:オッズ

フライ級

②キルー・シング・サホタ 1.22
 ルエル・パニャレス 4.50
④チェ・ドンフン 1.29
 アンガド・ビシュト 3.75

バンタム級

⑤中西透暉鷹 1.80
 バーエゴン・ジェライスー 1.95
③ダーエミィスウ・ザウパースー 1.69
 ユ・スヨン 2.15

フェザー級

⑩シエ・ビン 1.54
 河名真寿斗 2.55
⑧ズー・カンジエ 2.65
 原口伸 1.49

女子ストロー級

⑨ドン・フアシャン 1.22
 シー・ミン 2.60
⑦フォン・シャオツァン 1.45
 本野美樹 2.80

ワンマッチ・女子フライ級

①ヤン・チーフイ 1.59
 ダニー・マコーマック 2.40

ワンマッチ・ウェルター

⑥ジョナサン・ピエルスマ 6.50
 サマンダー・ムラドフ 1.13

丸数字は試合順。

日本勢は全試合中国人ファイターとの対戦。透暉鷹・原口がフェイバリット、河名・本野はアンダードッグ。

第1試合開始は24日10時から。第6試合は12時開始。

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【Road to UFC2024 Ep06】準決勝&リベンジ、シャオカン戦へ。本野美樹「徹底して有利なポジションを」

【写真】ある意味、去年戦っていて負けているというのが本野の運でもあるかと (C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(金・現地時間)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでRoad to UFC2024 Ep05 & Ep06=Road to UFC Season03 Semi Finalsが開催され、Ep06の第2試合=女子ストロー級準決勝で本野美樹がフン・シャオカンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

本野はRTU初戦で中国のフォン・フェイアールと対戦予定だったが、フェイアールが計量オーバーに。そこで本野サイドはキャッチウェイト戦ではなく、試合をせず準決勝に進出することを選んだ。優勝すればUFCとの契約に至るトーナメント戦では、当然の選択といえる。もう一つ——昨年11月に敗れているシャオカンとの再戦を、無傷で迎えられたことも本野にとって良い結果だったのではないだろうか。

そんな本野が前回の計量現場とシャオカンとの初戦を振り返り、リベンジと決勝進出を賭けた一戦について語る。


――5月はフォン・フェイアールの計量オーバーで初戦突破となりました。まずは現場がどのような状況だったか教えていただけますか。

「相手は最初の計量で350グラムぐらいオーバーだったと思います。計量のリミット時間まで1時間半もあったし、私は絶対に落としてくると思っていました。私も計量会場でリカバリーしながら待っていたんですけど、フェイアールは時間になって戻ってきたら全く体重が落ちていなくて……」

――ということはギリギリの減量をした結果、350グラムオーバーだったのでしょう。

「計量オーバーの時点で、フェイアールは気持ちが折れていたと思います。『もう体重を落とすために体を動かしたくない。汗は出ない』と言っていて。これは聞いた話ですけど、最初は計量会場の奥でしゃがみこみ、落とすことを諦めていたらしいです。

オーバーしているグラム数でいえば、私が相手のファイトマネーから何パーセントかもらって試合できる範囲ではありました。でも、こちらから『体重を落とさないと試合はしない』と伝えてもらったら、体を動かしに行っていましたね」

――RTUはトーナメント戦ですから、相手の計量失敗なら次戦に進むことができる。そこで体重を落とせなければ試合をしない、というのは当然の判断だと思います。

「まずは優勝することが目標ですからね。トーナメントだから無傷で上がったほうが良いわけで。チームからも『絶対に上に行ったほうが良いから、試合は受けなくて良いんじゃないか』と言われて、試合はしませんでした」

――それだけ非情な面もあるのが勝負の世界です。それこそフェイアールが体を動かしに行った時、「このまま体重が落ちなければいいのに」とは考えませんでしたか。

「いえ、私としてはそこで気を抜きたくなかったです。350グラムだから落とせると思ったし、絶対に落としてくると考えていました。

フェイアールは過去に打撃が――特にヒジでカットしている試合もあったので、私自身も怪我をすることを覚悟して臨んでいたんです。結果、計量オーバーで……無傷で準決勝に進出できたのだから『ラッキーだった』と気持ちを切り替えました。周りの方からも『運も実力のうちだよ』と言ってもらえて、私も『次、頑張ろう』と」

――自身の試合こそなかったものの、現地でRTUを観た感想は?

「やっぱり皆がUFCを目指して戦っていて――河名マスト君の試合とか、お互いに立っているのがギリギリという状態だったじゃないですか。会場の雰囲気も凄くて、良い大会でした。私も戦う準備をして行ったし、『この舞台で試合をしたかったなぁ』と思って(苦笑)」

――アハハハ、それも当然の気持ちだと思います。ただ、準決勝で対戦するシャオカンの試合は、現場で観ても参考にならなかったのではないですか。

「はい(笑)。あの試合は実力差がありすぎて、シャオカンはノーダメージで準決勝に進出しました。もともとシャオカンが優勝候補と思われているのでしょうけど、あの組み合わせで、いろいろ察しましたね」

――シャオカンとは昨年11月に中国で対戦し、3Rに腕十字で敗れています。その初戦については前回のインタビューで語ってもらっていますが、改めて試合映像を振り返ると、とてつもなくケージが広くなかったですか。

「メチャクチャ広かったです! RTUが行われたUFC PIのケージはそこまで大きくなくて」

――UFC APEXのケージも、かつてWECで使用されていたサイズのオクタゴンですよね。やはりケージの広さは試合に大きく影響しますか。

「小さいと組む側からすると組みやすくなるし、相手からすれば打撃で詰めやすくもなるので。お互いの良いところ、悪いところに関しては少し影響が出るのかなって思います」

――シャオカンは回って距離を取るタイプではなく、プレスを掛けながら、あの長いリーチとコンパスから打撃を繰り出してくるタイプです。

「蹴りは鞭のように飛んできますよね。蹴りがあるからパンチが飛んでくる。でも、その蹴りをもらうのも私のポジションが悪かったからだと思います。試合中にカットもしていなくて。試合が終わったら足が真っ青になっていて、歩けないぐらいでした。今回はその蹴りももらわないように動かないといけないですね」

――ポジションが悪かったというと?

「前回は左右への動きを徹底することができていませんでした。シャオカンが圧をかけてきた時に、サウスポーの自分は右側に動いてしまったんです。しかも、たまにフワッと動いてしまっていて、相手からすれば打ちやすいポジションにいたと思いますね。今回は一方だけに動くことがないよう、徹底して自分に有利なポジションを取ることを考えています」

――1Rはテイクダウンを奪い、パスにも成功して、相手がブリッジしたらシングルバックまで至った。今回はあの動きを続けることができたら……。

「そうですね。もともと触れば倒せるという感覚はありました。でも倒したあとに、どうしても取り急いでしまう。極めに行こうとしすぎるし、殴ろうとしすぎてしまうんです。そこは自分の良いところでもあるとは思いますけど、今回は焦らずに戦いたいです」

――準決勝は中国でもアジアでもなく、ラスベガスのUFC APEXで行われます。米国で、しかもラスベガスで戦うことについてはいかがですか。

「場所については、特に気にしていないです。PIは設備も整っていましたし、APEXであれば――使用できるかどうかは分からないですけど、いろんな設備が使えたらコンディションは整えやすいだろうとは思います。ただ、ラスベガスには以前、修行で行っていて」

――ABEMA TVの海外武者修行プロジェクトですね。

「はい。UFCに興味を持ち始めた頃にラスベガスで練習させてもらい、APEXでDWCSを見せてもらいました。その時に改めてUFCを目指したくなったので、自分がそのケージで試合をできるのは嬉しいです。そんな場所でシャオカンにリベンジする。優勝候補を倒してUFCに近づくことができれば、自分にとっては最高ですね」

――UFC PIと比べて、APEXのケージはどうですか。

「広すぎるよりは良いです。もちろん相手のプレッシャーを感じる場面もあるとは思います。でもシャオカンが圧をかけてきたら自分が行くんだ、と全てプラスに考えるようにしていますね。『相手のプレッシャーも自分のチャンスに変える』という気持ちで、初対戦の時よりも仕上がって臨むことができると思います」

――なるほど。最後に意地悪な質問かもしれませんが……、『シャオカンも計量失敗しないかなぁ』とは思いませんか。

「いやぁ、さすがにソレはないです(苦笑)。2試合連続の計量失敗で決勝へ行くのは嫌ですね。勝ってUFCとの契約を掴まないと、周りから認めてもらえない気がします。自分はもちろん、シャオカンにもしっかり計量をクリアしてほしい。そこで私がリベンジして、決勝に進みますよ」

■視聴方法(予定)
8月24日(土)
Ep05午前10時~UFC Fight Pass
Ep06午後12時~UFC Fight Pass
Ep05&06午前9時45分~U-NEXT

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【Colors03】パク・ボヒョン戦へ、失明覚悟のMMAファイター人生=渡辺彩華「なぜこの試合なんだろう?」

【写真】愛犬のエルモちゃんと。犬種は分からないのですが、マルチーズかマルプーからマルポメでしょうか(C)SHOJIRO KAMEIKE

8月3日(土)、東京都新宿区の新宿FACEで開催されるColors03で、修斗女子世界スーパーアトム級王者の渡辺彩華が、韓国のパク・ポヒョンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

渡辺にとっては昨年10月、RIZIN LANDMARKで万智に敗れて以来10カ月振りの復帰戦となる。万智戦で負った眼窩底骨折の治療のために戦線を離脱していた渡辺は、その間の国内女子MMAをどのように見ていたのか。その中で本野美樹に帯同し、現地で見たRoad to UFC——海外での戦いについても語った。


失明する可能性が高くなる。格闘技を続けるなら、そのリスクは分かっておいてほしいと

――万智戦後に眼窩底骨折で入院、手術したあと、いつ頃から練習を再開できたのですか。

「手術して1カ月後に有酸素運動はOKが出ました。格闘技の練習ができるようになったのは手術から3カ月後ぐらいで、スパーのOKが出たのは半年後でしたね」

――スパーを始める時、手術した箇所を打たれることに対し、恐怖はなかったでしょうか。

「怖さはなかったです。でも、まぁ失明寸前だったと言われましたからね。病院では『運が良かった。今後も格闘技を続けるかどうか、一度しっかり考えてほしい』と言われて」

――それは「格闘技を続けてはいけない」という意味ですよね。

「それもあるし、格闘技を続ける場合は術式も違うらしくて。いずれにしても自分の場合は、手術をしても普通の人より失明する可能性が高くなる。格闘技を続けるなら、そのリスクは分かっておいてほしいということでした。

このままMMAを続けていたら、別に強い相手じゃなく誰と対戦しても――それこそ練習しているだけでも失明のリスクがある。そのことは頭の片隅に置きながら練習しています。ただ、自分が失明することよりも、それで家族やチームの皆に迷惑をかけるほうが嫌だという気持ちはあって。だけど今のままじゃ終われない。ずっとその葛藤があります」

――『今のままじゃ終われない』というのは……。

「ファイターって皆、応援してくれる人がいるじゃないですか。その数が多い、少ないは関係なく。それだけ背負っているものがある。自分も愛知から東京に出てきた無名時代から支えてくれている人たちがいます。スポンサーさんや、AACCの人たちとか。そういう人たちに対して、ここで辞めるのは失礼だなと思ったんです」

――……以前と比べて話し方も考え方も大人になりましたね。

「アハハハ!!」

――以前、あれだけ暴言を吐いていたファイターとは思えません(笑)。

「落ち着いたかもしれないですね、アハハハ。この10カ月の間、ジムの先輩がいろんな試合に出ていて。それを自分がファイターとして見るのと、戦線離脱した状態で見るのとでは違うと思うんですよ。もちろん自分が戦線離脱していることに対して焦りはあります。だけど……、それこそ本野美樹さんは待って、待ち続けてRoad to UFCが決まったじゃないですか。そういうチームメイトを見ていると、自分も頑張らなきゃいけないって思うんです」

――チームメイトとしては本野選手のRTU、大島選手のInvicta FC、杉本選手の修斗世界タイトルマッチ、そしてRENA選手のRIZIN復帰などもありました。その中でご自身の意識、目標が変わって面はありますか。

(C)AYAKA WATANABE

「あぁ~。

タイに行って『世界はヤバいな』と思いました」

――7月にタイガームエタイへ行っていたそうですね。

「本野さんがRTU準決勝の前にまたタイへ行くということで、自分も気持ちを挙げるために付いていったんですよ。その時タイガームエタイにいたストロー級の女子選手が、その選手がヤバいぐらい打撃が凄くて。『日本にこれだけ打撃が凄い女子ファイターいる?』と思うぐらいでした。自分はMMAでもテイクダウンさせず、打撃で攻めるタイプじゃないですか。だけど、その選手と練習する時は私のほうがテイクダウンを狙ってばかりで」

――その選手の名前は?

(C)AYAKA WATANABE

「ファラ、ですね(※注)。

寝技できないけど、とにかく打撃が強い。同じ日にオクタゴンという大会で試合をするそうです」

※ファリダ・アブドゥエバ。ファラは愛称。キルギスのMMAファイターで、昨年11月のRIZINアゼルバイジャン大会ではアナスタシア・スヴェッキスカと対戦している(腕十字で一本負け)。現在MMA戦績4勝1敗。

「自分よりも打撃ができる選手と向かい合ったのが初めてで、衝撃を受けました。あとONEに出ているモン・ボー選手もいて、メチャクチャ打撃が強かったです。自分も『このままじゃ世界に出られない』と思いましたね」

――その経験を楽しそうに語れるのが、ファイターとしての本質なのだと思います。

「いやぁ、直後はナイーブになりましたよ。タイにいる間、本野さんに『大丈夫! 大丈夫だから』と慰めてもらっていました(苦笑)」

――アハハハ。

「もう毎週、ボディでKO寸前まで追い込まれて……。日本の女子MMAって、グラップラーが多いじゃないですか。その中で自分は打撃で勝っていた。でも本当に全部できないと世界じゃ勝てないんだなって痛感しましたね。7月上旬から3週間行っていて、先週日本に戻ってきたんですよ。そこから日本の選手と練習しても圧力は感じなくて。それを試合前に経験できたのは、本当に良かったです。なんだか安心しました(笑)」

アイツ、いつも良いところで負けていますよね

――一方、10カ月の間、日本の女子MMAは大きく動いていました。

「……万智、負けるなよ。アイツ、いつも良いところで負けていますよね。松田戦は万智が勝っていたとは思ったし、Xでもそう投稿しましたけど」

――万智選手に勝利した松田亜莉紗選手の印象はいかがですか。

「トータルバランスは良いけど、長けているものはないっていうイメージです。飛び抜けているものがない。悪くいえば、特徴がない」

――悪く言うのですね(笑)。

「アハハハ。パク・シウ選手だったら打撃、万智なら寝技っていうイメージじゃないですか。松田選手は怖さを感じないですね」

――ではパク・シウ×万智の試合については?

「凄い試合でしたね。MMAとして2人とも完成度が高いと思いました」

――ちなみに万智選手とは、直接対決の後も仲良くはなっていないのですか。

「全然! 今でも万智のことは嫌いですよ。仲良くなることはないし、一緒に練習することもないです。対戦直後にSNSで『IGLOOで待っています』とか投稿していたけど、行くわけないだろって(笑)。他のAACCの選手がよく一緒に練習しているみたいで、その選手のSNSを見て『あぁ生きているんだな』と知るぐらいです。アハハハ」

RIZIN、ROAD TO UFC、その前に万智はコテンパンにして泣かしますよ(笑)

――なるほど。修斗では藤野恵実選手がベルトを巻き、続いてパンクラス王座に挑みます。SARAMI選手もパンクラスのベルトを巻きました。

「自分もそこに絡んでいきたかったです。だから今回の対戦相手は、自分もあまり乗り気じゃなくて……」

――対戦するパク・ポヒョンも韓国Double-Gのベルトを獲得しているとはいえ、これまでのキャリアを考えれば、渡辺選手の有利は動きません。前戦では古賀愛蘭選手に敗れていますし。

「う~ん‥…、そういうことじゃないんですよ。『普通にやれば負けることはないでしょう』とか言われます。でも勝負事に絶対はない。まず自分自身がアップセットを起こし続けてベルトを獲りましたからね。ファイターって相性があるし、今回はケージではなくリングという違いもある。そんななかで次の試合は足元をすくわれず、フィニッシュします。

それとは別に、私は今までずっと強い相手と試合させてもらってきたじゃないですか。でもこの10カ月の間に、松田選手が万智に勝ってベルトを巻いた。万智とパク・シウ選手の試合も視ていて刺激になったし、藤野さんは修斗のチャンピオンになっていて。そこで『なぜ自分はこの試合なんだろう?』と思ってしまったんです。それだけ動きがあるなかで、自分だけ取り残されてしまっているというか」

――10カ月間、負傷で試合から離れていたことも大きいと思いますが……。

「それはそうなんですよ。でも今は、いつ失明するか分からないから後悔しないMMA人生を送りたい――もともと強い相手と試合がしたいとは思っていたけど、手術以降はよりその気持ちが強くなっていて。この人との試合、あるいはその試合のために練習しているなかで失明しても、納得できるような相手と試合をしたいんです。

よくレコードを綺麗にしたい選手がいるじゃないですか。私はそこに一切こだわりはなくて。『その相手、誰?』と思うような選手とばかり試合をして、レコードは綺麗だけどベルトは巻いていないとか。そんな選手にはなりたくない。限りある中で、どれだけ自分が満足するMMA人生を送ることができるか」

――……。

「まぁ綺麗なレコードを求めていたら、2戦目で藤野さんと試合していないですよ(笑)」

――確かに綺麗なレコードを求めるなら3戦目で黒部三奈選手、4戦目でSARAMI選手、そして5戦目で一階級上の万智選手とは対戦していないでしょう。

「そうそう(笑)。おかげさまで濃い、怒涛の日々を過ごさせてもらっています」

――今後はストロー級で戦っていくのでしょうか。

「そうですね。スーパーアトムは対戦相手がいないですし。今は通常体重を増やしています。万智の試合では、やっぱりストロー級との差は感じたので。修斗ならストロー級で、リベンジも賭けて藤野さんのベルトに挑みたいです。初戦の時より自信はあります」

――本野選手に帯同して、現地で目撃したRTUに挑みたいとは思いますか。

「周りから見て、『やってみたほうがいいんじゃない?』という声が挙がれば、挑戦してみたいです」

――というと?

「現時点で自分の体格や、タイで経験した打撃の圧力とかを考えたら、あの舞台で戦える自信はないです。でも、いつかはあの舞台で戦えるような――格闘技を見ている人たちに、それぐらい期待を持ってもらえる結果を残していきたいですね。

第三者から見て、期待できるかどうかがファイターとしての需要だと思っています。RIZINなら伊澤星花との対戦が期待されるかどうか。RTUは『渡辺なら優勝して、UFCでも勝てる』と期待してくれるかどうか。まぁ、その前に万智はコテンパンにして泣かしますよ(笑)」

■視聴方法(予定)
8月3日(土)
午後6時00分~ABEMA格闘チャンネル

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