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【Nagoya Fight Fes】坪井淳浩GSB代表に訊く中部MMAの現在「長い間、通常運転を続けてきた」

【写真】イベント当日は主催者、セコンドと大忙しの坪井代表(C)TAKESHI SATO

8日(日)、愛知県名古屋市中区の若宮大通公園若宮広場で野外格闘技イベント「Nagoya Fight Fes.19」が開催される。
Text by Shojiro Kameike

この大会で開催される種目は多岐にわたる。ストライキングチャレンジ(アマチュアキックボクシング)、アマチュアDEEP(MMA)、MMA甲子園ワンマッチ、アマチュアシュートボクシング、そしてジュニアの試合まで――まさに名古屋におけるアマチュア格闘技の祭典だ。Nagoya Fight Fesの主催者である坪井淳浩氏は、SBとMMAで戦いながら自身のジム「グラップリング・シュートボクサーズ」を運営し、さらに大会開催にも携わってきた。2011年の現役引退後も裏方として活躍する坪井氏に、中部格闘技界の現在と今後について訊いた。


――現在、坪井さんが中部の格闘技界で担っている役割は多いです。プロ&アマを含めたDEEP、シュートボクシング、そしてMMA甲子園と……。

「あとは韓国キックボクシングのMAX FCですか」

――体は大丈夫ですか。MMA甲子園の設立記者会見の時、明らかに疲れ果てた様子で会場入りしていました。

「アハハハ! あの時が一番疲れていましたね」

――そのうち、どれか一つを誰かに任せるわけにはいかないのでしょうか。


リングを使用した勝川大会とケージの刈谷大会(C)TAKESHI SATO

「もともと全て他の人に任せているものであったり、皆と連携しているものですよ。僕が独り占めしているわけではなく、たまたま今は僕が上の立場で動かないといけない状況にあって」

――今は坪井さんが統括して、そこにスタッフや協力してくれる方々がいると。

「そうですね。一緒に協力しているのは今、ネックススポーツ(梅村寛代表)とスプラッシュ(木部亮代表)、新しくファイトサイエンス(野田カズヤ代表)が出来たりとか。いろんな方たちが手伝ってくれて回すことができている状態です」

――なるほど。坪井さんが現役時代を含めて格闘技界に携わって何年が経ちますか。

「もう30年ぐらい経ちました。現役を引退したのが2011年で、そこからは完全に裏方としてやってきています」

――その30年間で、中部の格闘技界はどのように変化してきたのでしょうか。

「まず競技人口が増えましたよね。もともと僕が裏方もやるようになった目的だし、その点は良かったです。最近は少し飽和状態といえるぐらい、ジムも急激に増えました。僕と同じ世代の人たちが現役を続けながらジムを開いて、今は僕たちの次の次ぐらいの世代がジムをやっていますから。それはMMA、キックボクシングを問わず。もうすぐ、その次の世代が入ってくるでしょう」

――それだけジムも競技人口も増え、これまで愛知県内で数多くのMMAイベントが行われてきました。そのなかでDEEP NAGOYAが定着し、愛知県内で定期的にイベントを開催し続けることができているのか。その理由を知りたいと思っています。

「一番は愛知県内だけでなく東海地区の皆さんが協力してくれること。まぁ定着というか……DEEP NAGOYAはもともとネックスの梅村さんが主催していて、僕のシュートボクシング中部大会と提携して一緒にやっていたんですよね。でも梅村さんが体調を崩して興行から離れることになり、開催を止めないために僕が引き継いだという形で。重要なのは、どれだけ長い間、通常運転を続けてきたかということだと思うんです」

――通常運転からDEEPやシュートボクシングの冠を外し、自身で独立した大会を開催しようとは考えませんでしたか。

坪井氏はシュートボクシング協会中部事務局も担っている(C)TAKESHI SATO

「ないです。それが一番大事なところなんですよ。DEEPがどう、SBがどうということではなく、まずコンセプトが何なのか。僕はストライキングチャレンジやアマチュアDEEPをはじめ、底辺拡大をコンセプトにやってきました。この点は何も変わっていなくて。底辺拡大をしつつ、育った選手のために次のステージを用意したい。

興行を開催します、というと最初は皆の協力を得ます。でも自分のジムの選手が増えて、そこからチャンピオンが出ると、たとえばマッチメイクの片側が全て自分のジムの選手にすることもできる。これは格闘技の興行あるあるですよね。ただ、自分のジムの選手は増える時もあれば減る時もあるから、いずれ衰退してきます。僕は最初から自分のジムの選手だけで大会をやるつもりはなくて」

――はい。

「まず底辺拡大のために、アマチュア大会を始める前に月2回、格闘技練習会を開いていました。打撃のスパーリングを3時間ぐらい。まだストライキングチャレンジを始める前ですね。『どのジムから参加してもOKで、ぜひ声をかけてください』と。ストチャレを行うことで、さらに練習会の参加者も増えていきました。同じように他の地域でも開催するようになって――基本的に『自分だけ潤えば良い』という考えはないです。

これはね、お金じゃないんです。もちろんお金は残さなきゃいけないけど、お金だけの話ではない。練習会、アマチュア大会を開催して、選手が増えてきたらプロ興行に出られるよう声を掛けていきます。どのジムであろうと一生懸命、頑張っている選手が東京や大阪のDEEP、SBの大会にも出られるよう協力する。これって格闘技の底辺を拡大していくために、当たり前のことだと思うんですよ」

自分たちは何のために始めたのか――常に自分に対して問い正していかないといけない

――坪井さんの中でプロモーターとしての自分と、ジム運営から選手を育てていく自分との間にビシッと線引きはできているのですか。

「仕事としては完全に分けていますよ。でも中部の格闘技界で底辺を広げ、選手を育てていくコンセプトとしては、どちらも変わらないんです。

たとえばプロモーターとして、愛知県をはじめ中部の選手を中心に興行を開催する。その相手を探して、他のエリアのジムにお願いすることはあります。でも、チケットが売れるからという理由で他のエリアの選手を中心に試合を組むことはない。チケットが売れさえすれば良い、という話ではないですから。

このコンセプトが崩れないかぎり、僕は今のまま続けることができる。コンセプトが崩れるようになったら、僕はやらないです。それじゃ意味がないんですよ」

――だとすれば、坪井さんが開催しているDEEP NAGOYAは、東京や大阪、浜松などで開催されているDEEPとも違うものですか。

「違います。でもDEEPに還元できるよう選手を育てていく、というコンセプトで開催しています。立ち技に関しても、ウチの興行でどんなルールの試合をしようと、必ずSBに還元できるように話を進めていますね」

――もう一つ、MMA甲子園が設立された時、坪井さんが真っ先にNagoya Fight Fesでプレマッチ開催を決めました。

初のMMA甲子園プレマッチはNagoya Fight Fesで行われた(C)MMA KOUSHIEN

「MMA甲子園というコンテンツが、ゆくゆく伸びているだろうと思いました。そのあとRIZINがRIZIN甲子園を発表したじゃないですか。でも高校生の大会について、MMA甲子園とRIZIN甲子園が出場者を取り合うとは考えていないので。それこそRIZINが高校生の大会をやってくれれば、このジャンルにもっと注目が集まる。我々もMMA甲子園を続けていくことで、中部に選手が集まってくるはずですし。

このMMA甲子園の中部地区についても、別に僕がやらなければいけないことはない。今アマチュアDEEPを担当してもらっている木部君に、そのまま引き継いでもらってもいいです。まず形が出来ていれば、他の誰かが引き継ぐことができる。MMA甲子園については早く形をつくるために、プレマッチをやらせてもらいました」

――Nagoya Fight Fesは、どのような経緯で始まったのでしょうか。

「まず僕たちはずっと大会会場を探しているんですよ。もともとは公武堂MACSのリングで大会を行っていたけれど、参加者も増えて会場に入りきらなくなった。で、『これを屋外で開催したら、どうなるだろう?』と思って場所(若宮広場)を抑えたんですよね」

――若宮広場は高速道路の高架下にあります。こちらはどこの管轄になるのですか。

「名古屋市です。毎年必ず抽選で抑えています」

――最初に申請する時、格闘技イベントを開催することで何か懸念はありませんでしたか。

「何もないですよ。別にコンテンツは何でも良くて、大切なのはその場所を正しく使うこと。近隣に迷惑をかけず、大会が終わったらキチンと清掃する。そうしていけば、ずっと続けることができますし、何よりも続けることが大事ですから。そのためには大会を開催するためのプランニングも重要で」

――先ほど独立した大会を……という点について訊きましたが、多くの場合は続けることよりも大きくすることを優先しますよね。

「結局、理想が先に走ってしまうことが多いじゃないですか。たとえば自分のジムにチャンピオンが生まれたから、大きな会場で大会を開催する。それは一度ぐらいならできます。でも僕たちがやってきたことは違いますから。自分たちは何のために始めたのか――どれだけ盛り上がっても、常に自分に対して問い正していかないといけない。周りに何を言われようとも、それは変えませんよ」

結局、自分はオタクなんだと思いますよ

――坪井さんの中で「今後こうしていきたい」といった目標はありますか。

アマチュアDEEP大会は公武堂ファイトから始まった(C)TAKESHI SATO

「アマチュアについては、また新しいプランを立てていることがあります。今のところは企業秘密ですけど(笑)。どれくらいの年月が掛かるか分からないですけど、ハマれば大きなものになると思うので」

――そう考えると、アマチュアDEEPは名古屋発信のものでしたよね。

「いろいろやってきましたね。グラップリングツアーとか」

――グラップリングツアー! 年間を通して優勝者と優勝アカデミーを決める、当時としては斬新な大会でした。

「あれはグラップリングツアーの前に、柔術の団体戦を開催していて。あれは梅村さんが全てやっていましたけど、早すぎました(苦笑)」

――柔術団体戦、ストライキングチャレンジ、アマチュアDEEP、グラップリングツアー、そしてMMA甲子園と、坪井さんが携わってきたことは今のNagoya Fight Fesに詰まっています。ちなみに野外イベントですが、雨が降った時はどうするのですか。

青空イベントのNagoya Fight Fes。会場の目の前に格闘技ショップ公武堂、その先には日本最大の商店街「大須商店街」がある(C)TAKESHI SATO

「屋根(高架)があるので、それほど激しい雨風でなければ大丈夫です。まぁ我々の念が強いのか日頃の良いのか、そんな天候に見舞われたことはないですね。たぶん僕以外のスタッフの徳が高いのだとは思います」

――アハハハ。

「今はこのNagoya Fight Fesが年4回、プロは勝川で年3回と刈谷で年1回——今は来年のスケジュールをどうしようか考えているところですね。結局、自分はオタクなんだと思いますよ。格闘技の仕事オタク、かな」

――格闘技の仕事オタク!

「先日の大会(8月26日、DEEP Nagoya Impact#03&04)でいえば、まず空手出身の寺崎昇龍は強かったですよね。北陸の選手だけど、刈谷市の大会でも応援団が多く来ていて。負けた脇田仁も強い選手ですから。第3部のメインで勝った畠山祐輔も強かった。

大野さん(マユミ・グラップリングシュートボクサーズ)もそうですけど、『この選手がどうやったら成長し、輝いていくかな』とマッチメイクなどを考えるのが凄く楽しいです。別にウチで育ったあと、どこで試合をしてくれても構わないですしね。大切なのは自分のコンセプトを変えないし、曲げないことですよ」

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45 DEEP DEEP Nagoya Impact2024#03 GINJI MMA MMAPLANET o ONE でDEEP Nagoya Impact2024#03 ブログ マユミ・グラップリングシュートボクサーズジム 寺崎昇龍 畠山祐輔 神田麻梨乃 脇田仁

【DEEP Nagoya Impact2024#03&#04】空手出身の寺崎が脇田をKO。マユミGSBは神田をヒールで秒殺

【写真】フルコン空手からMMAに転向した寺崎は、インパクト大のプロデビュー(C)NOB YASUMURA

25日(日)、愛知県刈谷市の産業振興センターあいおいホールでDEEP Nagoya Impact2024#03ならびに#04が開催された。中部のファイターを中心に、昼夜に分けて組まれた今大会から3試合についてお届けしたい。
Text by Shojiro Kameike


<バンタム級/5分2R>
寺崎昇龍(日本)
Def.1R4分54秒 by TKO
脇田仁(日本)

サウスポーの寺崎がプレスをかける。脇田は左ジャブを突きながらサークリングする。脇田が右ストレートを放った瞬間、寺崎が右ショートを合わせてダウンを奪う。すぐさまトップを奪った寺崎がパウンドを連打すると、脇田はZハーフからガードに戻した。脇田の頭を抱えて左ヒジを打ち込む寺崎。さらに足を上げてくる脇田の顔面に鉄槌を落とした寺崎が、足を捌いて左パウンドを直撃させた。

ここで寺崎が立ち上がり、レフェリーがブレイクを促す。スタンドに戻ると、脇田が右ストレートを伸ばして距離を詰める。寺崎は脇田の右をバックステップでかわし、ボディロックで組むとグラウンドに持ち込んだ。ハーフガードの脇田に対し、寺崎は左腕を差し上げてパスを狙う。

ケージ際で抑え込んだ寺崎が左ヒジで削り、マウントに移行した。脇田はケージキックから回転して左足を取るも、寺崎がトップをキープ。ガードに戻った脇田の十字をかわした寺崎は、強烈の左パウンドから鉄槌を連打し、レフェリーストップを呼び込んだ。

寺崎はフルコンタクト空手からMMAに転向し、今回プロデビュー戦をKO勝利で飾った。空手時代は2018年、JFKO全日本大会の男子軽量級で準優勝(決勝の対戦相手は秋元皓貴)。翌年の同大会では3位入賞で、2020年に開催が予定されていたWKO世界大会への出場件を獲得していた(大会はコロナ禍のため延期に)。

その後MMAに転向し、アマ修斗やアマDEEPを経てプロデビューへ。スタンド、グラウンドともに正確で強烈なパンチを見せており、今後のキャリアが楽しみだ。



<グラップリング 56キロ以下契約/5分2R>
マユミ・グラップリングシュートボクサーズジム(日本)
Def.1R0分36秒 by ヒールフック
神田麻梨乃(日本)

開始直後、ダブルガードからマユミが神田の右足首を持ってベリンボロのように前転しながらヒールフックへ。マユミのクラッチに左手を差し込みディフェンスする神田。マユミはキス・オブ・ドラゴンへ。これを潰されると神田の左足を抱えながら、右足で相手の胸を押して仰向けに。回転して逃れる神田の左足をサドルで捕らえた神田が、すぐさまヒールで絞り上げてタップを奪った。


<フェザー級/5分2R>
畠山祐輔(日本)
Def.1R2分50秒 by RNC
GINJI(日本)

昼の部メインは開始早々、サウスポーの畠山に対し、GINJIが一気に距離を詰めた。しかし畠山が頭を振りながらプレスをかけて押し戻す。GINJIが右ストレートのフェイントを見せると、畠山はバックステップからニータップで飛び込む。これをかわしたGINJIが畠山にケージを背負わせる。

ケージ中央に戻った両者。GINJIが左ジャブを突くと、畠山もテイクダウンを狙うが、かわされてしまう。GINJIの左フックが畠山の顔面をかすめる。畠山のシングルレッグをスプロールしたGINJIは、右ストレート、右ローを見せた。強烈なGINJIの右ローの音が場内に響く。畠山は左ストレートから右フック、さらにワンツーでGINJIの顔面を跳ね上げて一気に前に出る。

バランスを崩しながら下がるGINJIに、畠山がダブルレッグで組みついた。スプロールするGINJIのバックに回った畠山は右足を差し入れる。さらにスタンドのまま左足を入れ、背中に乗った状態で首に右手を回しRNCを極めた。

これで3試合連続の一本勝ちとなった畠山はタイトル挑戦をアピールした。

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45 DEEP MMA MMAPLANET o RIZIN TATSUMI YouTube でDEEP Nagoya Impact2024#03 キック ボクシング 寺崎昇龍 神田麻梨乃 脇田仁 鶴斗

【DEEP Nagoya Impact2024#03】寺崎昇龍戦へ、脇田仁「アパレルの仕事だと格闘技は難しい」

【写真】深夜1時のインタビュー。早朝からの仕事なのに、ありがとうざいました (C)SHOJIRO KAMAIKE

25日(日)、愛知県刈谷市の産業振興センターあいおいホールでDEEP Nagoya Impact2024#03ならびに#04が昼夜に分けて開催される。昼の部となる#03では、脇田仁が寺崎昇龍と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

脇田は地下格闘技を経て、2023年8月にDEEP NAGOYAでMMAデビューし、プロでは2連勝中だ。その間に『格闘代理戦争 THE MAX』にも出場して1勝1敗の戦績を残している。テイクダウンとパウンド、そして試合前後に見せる気合いの表情が印象的な脇田だが、その言葉からは真っ直ぐさがうかがえる。そんな脇田が地下格闘技で培い、そしてプロデビューと格闘技代理戦争を経て得たものとは。


――仕事と練習を終えて、日付が変わってからのインタビューとなります。試合直前ですが、毎日このスケジュールをこなしているのでしょうか。

「いつも仕事と練習が終わって自宅に戻るのは、これぐらいの時間ですね。今回は試合が日曜日なので、金土日と休みをもらっています」

――翌朝、何時から仕事が始まるのですか。

「足場の仕事をしていて、朝は6時30分か7時ぐらいから――日によって違いますけど」

――それは大変なスケジュールですね。格闘技を始めたのは足場の仕事に就いた後ですか。

「今年23歳になるんですけど、格闘技を20歳か21歳ぐらいの時です。小学5年生の時にキックキックボクシングをやっていた経験はあって。キックボクシングを辞めたあとに、当時人気だった地下格闘技の存在を知りました。その頃から地下格闘技には興味がありましたね」

――小学校の時、地下格闘技に興味を持ったのですか。現在出場しているDEEP NAGOYA大会のようなMMAの試合ではなく……。

「はい。キックボクシングの前は、ずっとサッカーをやっていました。根は普通というか、不良とか悪い人に憧れを抱いている少年という感じで。試合の時と普段が全く違うとは、よく言われます」

――なるほど。そこから実際に地下格闘技をやるために、現在のジムに入ったのですね。

「所属しているのはCOMRED(カムレッド)といって、『戦友』という意味です。足場の仕事に就く前は、アパレルの仕事をしていたんですよ。ずっと地下格闘技の試合に出たいと思っていたけど、アパレルの仕事だと格闘技は難しいじゃないですか」

――アパレルというのは、ショップ店員さんだったのでしょうか。

「そうです。練習や試合で顔を腫らせたまま店に行くわけにもいかないので……。そのアパレルの仕事も『合わないな』と思って辞めたあと、紹介で今の足場の仕事に就きました。職場の先輩に地下格闘技をやっている人がいて、観戦にも行ったし、『興味があるなら練習に来てみれば?』と言われたんですよ。そこで練習に行ってみたら『センスがあるな』と褒めてもらえて」

――おぉっ!!

「でも最初の練習でボコボコにされて『やっぱり格闘技は無理だな』と思っちゃったんですけど(苦笑)。だからフィットネス感覚で練習に行きながら、1カ月ぐらいしたら辞めるつもりでした。でも、なかなか辞めると言いづらくて、ズルズルと続けていたら試合に出るようになったんです。そうしたら格闘技が楽しくなってきました。

ひとつ大きいのは、ジムのMMAクラスで指導してくれているのが、アラン・ヤマニハ選手なんですよ。僕がジムに入って少し経ってから、ヤマニハ選手がクラスを受け持ってくれるようになって。地下格闘技でガチガチのRIZINファイターの指導を受けている選手も、なかなかいないと思いますよ」

――つまり地下格闘技を目指してジムに入ったあと、ずっとMMAの指導を受けていたということですね。練習ではボコボコにされながらも。

「小学5年生の時以来の格闘技の練習でしたからね。やっぱりパンチって当たったら気持ち良いけど、当てられたら痛いじゃないですか。しかも食らったことのないレベルのパンチで(苦笑)。

最初の頃は週1回、練習に行っていたぐらいでした。でもいざ地下格闘技の試合に出てみると3連敗して。そこから真面目に練習し始めて、試合に出ると開始1分くらいで勝つことができて――だから真剣に練習し始めたのは、ここ2年ぐらいです」

――脇田選手は殴り合いではなく、どちらかというと組んで勝負するタイプです。地下格闘技の試合に出ていた頃から、そのスタイルだったのですか。

「練習していて『自分はパンチや蹴りは得意じゃないなぁ』と思いました。その時に考えたのは――昔から喧嘩で、組んだり投げたりしていたんですよ。柔道をやっている人に投げ技を教えてもらったり、中3の時に期間限定の部活で相撲をやっていて。おかげで投げや組みは得意だったので、それを格闘技の試合でも使おうと思ったんです」

――そんななか、月イチのペースで地下格闘技の試合に出ていたそうですね。それだけ試合をこなしていて、大きな怪我はなかったのでしょうか。

「僕はあんまり怪我がなくて、だから『とにかく試合に出たい』という感じでした」

――その地下格闘技から2023年8月、DEEP NAGOYAでプロデビューしています。プロのMMAを戦うキッカケは何だったのですか。

「あの頃、周りにいた同い年の選手が地下格闘技のチャンピオンになり始めて、自分だけベルトを獲れていないのが凄く悔しかったんですよ。チャンスも貰っていたのに、それを生かすこともできずに『なんで俺だけ獲れないんだろう?』と思っていました。

そろそろ本当にベルトが欲しいと思っていた時に、2023年3月に初参戦なのにタイトルマッチを組んでくれて、そこでベルトを巻いたんです。あの時は少しファイトマネーが出たのですが、自分のなかではプロの試合だとは思っていないです。そこからも地下格闘技に出て連勝していると、DEEP NAGOYAからオファーが来て。その時に『プロでも頑張ってみよう』と思いました。もともとプロを目指していたわけじゃないけど、自然と流れでそうなったという感じですね。

プロデビューしてからは、地下格闘技には出ていません。本当は出たい気持ちもありますけど、地下格闘技で怪我したりするとプロモーターさんにも迷惑をかけちゃうと思いますし」

――とはいえ、試合出場のペースはさほど変わっていないですよね。4月19日に放送された格闘代理戦争の初戦を視た時、「あれ……この選手、どこかで視たことがある」と思っていたら、12日前にDEEP NAGOYAで試合をしていて。

「ありがとうございます。覚えてもらっていて嬉しいです(笑)」

――さらに1カ月後には格闘代理戦争の準決勝戦を控えているのに、初戦の1週間後にはHEATでMMAグローブ・キックボクシングを戦っていました。

「あれは大会直前、仕事中にジムの代表から電話が掛かってきて『試合が決まった』と。そういうのは僕も慣れているので、相手のことも聞かずに『分かりました』と答えて、夜にジムへ行って練習しました。

地下格闘技でも大会前日に試合が決まることはあったし、急きょ試合をするということに対して恐怖心はないんです。当時すごく練習していた打撃の技があって、それを早い段階で試せる――というのが率直な気持ちでした。ただ、格闘代理戦争の間だから番組制作者の方には失礼だったとは思います。とにかく番組には迷惑をかけないようにと気をつけて」

――格闘代理戦争に出場して、何か変化はありましたか。

「う~ん、皆から『見たよ』と言われることはあります。でも2試合目で負けちゃったので、それを言われるんですよね。『あの試合で勝っていたらなぁ~』とか。自分自身でも勝てた試合だったと思うし、その点は心残りもあって。

大きく変わったとすれば、気持ちの面ですね。自分としてはプロデビューと格闘代理戦争を通じて、試合に向けて覚悟を決めることを、ちゃんと知りました。この試合に命を賭けて挑むという気持ちを知ったというか。そういう気持ちを持って練習にも臨みますし、今は毎日どの時間でも試合のことしか考えていないです」

――そしてプロ3戦目で、寺崎昇龍選手と対戦することになりました。

「相手はデビュー戦みたいですね。フルコン空手出身の方みたいで。僕としては相性が良い相手だと思います。でも、そう考えて油断してもいけないので。僕自身は過去イチ練習してきました。当日の動きもメチャクチャ良いでしょうし、豪快な一本を見せられると思います」

――あえて殴り倒したい、という気持ちはないですか。

「試合になると一本を取りに行っちゃいますよね。プロの試合に出るために初めてキツイ減量を経験して、練習も本当に気合いが入りました。あと試合をしてみて気づいたのは、もちろん対戦相手あっての試合だけど、最大の敵は自分だと知ったんです。特に4月の試合は勝った時、叫びながら涙も出てきて……

地下格闘技出身の選手って、殴り合う試合が多いと思うんですよ。僕も今までスタンドの失神KO勝ちとかないので、そういう試合もしてみたいとは思います。でも僕は試合で勝つと同時に、そういう己に勝ちたいんです」

――相手に勝ち、そして己にも勝つ。素晴らしいことだと思います。最後に今後の目標を教えてください。

「一番はRIZINのような大舞台に立って、注目される選手になりたいです。でも理想は、世界で活躍できるような選手になりたいです。そのためにもまず、大きな舞台で戦えるよう必死に食らいついて、結果を残していかないといけない。上ばかり視ていても仕方ないですからね。1試合1試合、大切に戦っていたら自然と道は出来てくると思うので」

■DEEP Nagoya Impact2024#04視聴方法(予定)
8月25日(日)
午後16時30分~NAGOYA FIGHT FES YouTube Channel

■ 対戦カード

<フェザー級/5分2R>
TATSUMI(日本)
ヴィニシウス(ブラジル)

<ライト級/5分2R>
今村滉(日本)
Street♡★Bob洸助(日本)

<グラップリング56キロ契約/5分1R>
マユミ・グラップリングシュートボクサーズジム(日本)
神田麻梨乃(日本)

<フェザー級/5分2R>
石田ガリット勝也(日本)
平澤克明(日本)

<バンタム級/5分2R>
大岩翔哉(日本)
Akiyoshi(日本)

■DEEP Nagoya Impact2024#03視聴方法(予定)
8月25日(日)
午後12時30分~NAGOYA FIGHT FES YouTube Channel

■ DEEP Nagoya Impact2024#03対戦カード

<フェザー級/5分3R>
GINJI(日本)
畠山祐輔(日本)

<フライ級/5分2R>
廣瀬裕斗(日本)
髙村友晴(日本)

<バンタム級/5分2R>
脇田仁(日本)
寺崎昇龍(日本)

<54キロ契約/5分2R>
鶴斗(日本)
太一(日本)

<バンタム級/5分2R>
太田翔一郎(日本)
時任流架(日本)

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