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【Pancrase347】劣勢だった佐藤が3Rに押忍マンをパウンドアウト、新ウェルター級KOP王座に就く

【写真】必殺の左が炸裂してベルトを巻いた佐藤。これぞ佐藤らしい勝利だ(C)MMAPLANET

<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
佐藤生虎(日本)
Def.3R by TKO
押忍マン洸太(日本)

サウスポーの佐藤に対し、押忍マンがジャブを突いて前に出る。押忍マンがインローと右の前蹴り、佐藤がそれをキャッチして左フックで一気に前に出る。ここから打撃戦になると押忍マンが左フックでダウンを奪い、一気にパウンドを連打する。

押忍マンは佐藤の右足をまたぐ形でトップキープし、細かく左ヒジを入れる。佐藤が体を起こそうとすると、押忍マンは佐藤を寝かせながら肩固めを狙う。佐藤が押忍マンの左腕にキムラを狙うと、押忍マンは左手を股の中に入れてディフェンスし、木村をキムラを外して一気に左ヒジを落とす。

2R、押忍マンが右ミドルと右前蹴り、右ヒザ蹴りも突き刺す。佐藤はそこに右フックを狙うが、押忍マンは再び右ヒザ蹴りを狙う。佐藤はそのまま突っ込んで押忍マンに尻餅をつかせるが、すぐに体を起こした押忍マンがテイクダウンを奪って、佐藤の左足を超えてハーフガードでトップキープする。

佐藤が亀になって起き上がろうとすると、押忍マンは佐藤の体をケージに押し付けて、ボディにヒザを入れる。尻餅をつく形の佐藤に対し、押忍マンは腰を引いて寝かせる。

今度は佐藤の右足を超える形のハーフガードになった押忍マンは左ヒジとパンチを連打。佐藤がケージに体を預けて立ち上がると、押忍マンはそのまま殴り続ける。佐藤もパンチを返して両者の距離が離れる。

佐藤が左ストレートから右フック。押忍マンは右ミドルと右ヒザ蹴りを返し、佐藤が左ストレートで飛び込んだところでバッティングが起きてしまい、押忍マンにインターバルが与えられる。再開後、押忍マンがインロー右の三日月蹴りを見せた。

3R、佐藤が右フックから左ストレートで前進。そのままパンチで前に出て、左フックの連打で押忍マンが後方に倒れる。押忍マンはすぐに組みつき、佐藤がそこにパンチを連打する。佐藤のパンチが後頭部に当たり、レフェリーが注意を促す。

そのまま試合は続行となり、佐藤は亀になると押忍マンにパウンドを連打。押忍マンの動きが止まったところでレフェリーが試合をストップし、佐藤がウェルター級KOPのベルトを巻いた。

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o 佐藤生虎

PANCRASE347:第13試合・押忍マン洸太 vs. 佐藤生虎

ウェルター級王座決定戦5分5R。

オーソドックスの押忍マンに佐藤はサウスポー。距離を取りガードを下げた構えで様子を見る佐藤に押忍マンはインローを入れる。蹴り足をキャッチした佐藤がパンチを入れる。一瞬聞いた押忍マンにパンチで攻める佐藤。が、押忍マンが左右のフックを返すと左がヒットし佐藤仰向けにダウン!押忍マンパウンドを打ち込む。ハーフで押さえ込んだ。両者回復を図っている。押忍マン肩固めのセットに入るが解除した。佐藤はハーフガードからキムラを狙う。しかし外れた。ハーフからパウンドを打ち込む押忍マン。ヒジ!ホーン。

1R三者押忍マン。

2R。ガードを下げたまま詰めていく佐藤。押忍マンがテンカオをヒットさせるが、佐藤押し倒して上に。パウンドを打ち込むが、押忍マンが起き上がりタックルに入るとテイクダウン。ハーフで押さえ込む押忍マン。また肩固めを狙っていく。上半身を起こしてケージを背にした佐藤。片膝を立てて立とうとしたが、押忍マンは寝かせると左のパウンドを連打。右腕でコントロールしながら殴る押忍マンだが、佐藤立つとアッパーを返し離れた。残り1分。パンチで飛び込む佐藤だが、頭が押忍マンの顔面に当たりバッティングでタイムストップ。再開。両者見合いが続く。牽制の蹴りを入れる押忍マン。ホーン。

2R三者押忍マン。

3R。佐藤がパンチ連打で出た。ケージ際で距離を取ろうとした押忍マンだが、佐藤の左が入って倒れ込んだ。タックルで凌ごうとする押忍マンに佐藤パウンド連打!後頭部にパンチが入っておりレフェリーから注意が入る。亀で動きが止まった押忍マン。佐藤がバックからパウンドを打ち込み続けるとレフェリー止めた!

3R0分30秒、佐藤逆転KO勝利!第17代ウェルターキング・オブ・パンクラシストに。

「第17代キング・オブ・パンクラシストになりました佐藤生虎です……これからも勝ち続けるので、よろしくお願いします」

新王者は劇的な逆転KO勝利にも大きく喜ぶこともなく、淡々とマイクで述べて退場した。

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45 ARAMI KAREN MMA MMAPLANET o PANCRASE pancrase347 SARAMI YouTube   エジナ・トラキナス カリベク・アルジクル・ウルル ギレルメ・ナカガワ ソルト パンクラス ホン・イェリン ホン・ソンチャン 万智 久米鷹介 井村塁 佐藤生虎 天弥 安藤武尊 押忍マン洸太 栁川唯人 武尊 沙弥子 泰斗 海外 渡邉史佳 端貴代 粕谷優介 糸川義人 葛西和希 藤野恵実 野田遼介 雑賀ヤン坊達也

【Pancrase347】ホン・イェリン戦前のアトム級QOP SARAMI「塩漬けです。もう、ああいう勝ち方はない」

【写真】有終の美ではないかもしれないが、終わりを見て現役生活を全うしている (C)MMAPLANET

本日29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、アトム級QOPのSARAMIがホン・イェリンとノンタイトル戦で戦う。
Text by Shojiro Kameike

3月に同王座決定トーナメント決勝で沙弥子を48秒で下したSARAMIにとって、あの右ストレートで一発の勝利は何を意味したのか。その後、パンクラスイズム横浜を離れ、毎日のように違う場所でトレーニングの日々を送る。

「この生活も長くは続けられない」というSARAMIに3月のKO劇と今、そして──これからについて尋ねた。


――もう次の日曜日にホン・イェリン戦を控えているSARAMI選手ですが、今一度3月のアトム級王座奪取について話をきかせてください。見事過ぎる右ストレート一発のKO劇。格闘技生活で、一番の喜びようだったのではないかと。

リモート取材を行った24日の時点では、藤野恵実につけられた傷が残っていた

「あの瞬間は『嘘でしょ!!』っていう感じでした」

──そこから笑顔の時間が、凄く長かったです。

「アハハハハハハ。北岡(悟)さんや、矢澤(諒)君は『パンチで倒す』と思っていたらしいです。いつか、パンチで倒すと。北岡さんにはずっと前から言われていました。でも、私はできないだろうって思っていたんです。女子で一発KOなんて、ないじゃないですか。まさか自分がするなんて思っていなくて(笑)。打撃に自信があるわけじゃないので」

──ただ、あのパンチです。練習をしてきて、成長しているという風に自分で感じることはなかったですか。

「自分の右のパンチが凄く強いという実感はありました。打ち方とかも、凄く考えてきたので。それは分かっていたけど、試合でソレを出せるとは思っていなかったです」

──あの勝ち方をこれからも続けたいという想いは?

「ないです」

──本当ですか。それを想って戦えないかもしれないですが、どこか少しでも残っていないですか。

「えぇぇ……。また、したい気持ちはありますけど。アレを狙うと、絶対にできないです。自分の攻めをしているなかで、ああいう偶然が起これば良いかなって。あのパンチを狙うと、自分のスタイルが崩れてしまいます。私の試合はドロドロで、勝つ時も負ける時も。殴り合いって誰でもできるので、それは余り格好良いとは思えないんです」

──練習仲間、女子選手たちの反応はどうでしたか。

「びっくりしていました。練習では私は打撃が上手くはないので。男子も女子も当てっこゲームが上手な人が、練習では打撃は上手です。思い切り打てないから、試合とは違うと思っています」

──ぶっちゃけてKO勝ちとタイトル奪取、どちらの方が嬉しかったですか。

「一発KOです」

──ずっと練習を続けてきて、あのKO劇があって良かったと本当に思います。

「私の人生にこんなことがあるんだって。本当に。私、格闘技の試合で勝って、お客さんが盛り上がる瞬間──あの気持ち良さって多分、結婚式をする時の気持ち良さよりも上だと思うんです。なのに、あんなKO勝ちしちゃうと、もう最高ですよ」

──そんなタイトル奪取後、所属先が整体北西に変わりました。

「もともとトーナメント中もパンクラスイズムで練習するのは1度か2度で。ジムの面子も変わっていく中で、私が格闘技をやる場所はイズムではなくなってきたように思えたんです」

──練習場所が所属名になったわけではないですよね。

「ハイ。私がずっと体を見てもらってきた整体です。北西(英司)さんはパンクラスができた頃から、選手の体を診ていて、格闘技の試合も物凄く見ている人で。フォースタンス理論に出会えたから、こっちに出てきて少し結果を残せたと思っています」

──イズムを離れる時、どこかジムの所属になろうと考えることはなかったですか。

「それは今も迷っています。決まった練習場所があることは大切だと思うので。ただ試合がもう決まっていたから、そこままという感じできました」

──今、練習場所はどういう風になっているのでしょうか。

「なかなか、色々なところに行っています。行動範囲は相当に広いですよ(笑)。女子選手がいるところに、練習に行かせてもらっていて」

──では万智選手ばりに1週間のルーティンをお願いします。

「月曜日は朝から仕事をして、夜は坂口道場に行きます。火曜日は昼ぐらいにKRAZY BEEに行き、夕方は元町にあるクロスフィットでパーソナルトレーニング。夜はカルペディウム三田のレスリングクラスに参加したり、しなかったり。水曜日は1日仕事をして、行けたらファイトベースに。木曜日も1日仕事して夜に東中野のトイカツ道場。金曜日は昼にマスタージャパンでグラップリング、夕方は国立に体の使い方のコンディショニング・トレーニングに行って、夜に整体をして帰って来ます。

土曜日は朝から仕事をして、夕方に千葉の市川市にあるトランセンド・ジムでロッキー川村さんにミットを持ってもらっています。で日曜日の朝にJTTに女子練習ですね(笑)」

──仕事をしながら……ですよね。1週間で7位置の練習を。

「やばいですよね(笑)」

──その原動力は何なのでしょうか。

「不安だから。やらないと不安なんです。もちろん毎週 、完璧にやっているわけじゃないですけど、この生活と練習を維持するには心もお金も、体力も大変です」

──そうですよね。

「だから、これをずっとやっていられないなって。引退も近いのかなって思っています」

──それでも結婚式よりも嬉しいモノがMMAでの勝利なわけですよね。

「結婚式をしたことないんですけどね(笑)。私は結婚して子供も欲しい。だからずっとできない」

──そうなると限られた試合のなかで、今回はタイトルマッチでないですが、その辺りはどのように思っているのですか。

「ホン・イェリン戦が用意されたことに、全く不満はないです。ちゃんと強い相手ですし、国際戦が戦いたかったので。用意してもらった相手に、今の全てをぶつけます。対戦相手の格とか関係なく、準備したことを全て出します」

──それは右ストレートですね(笑)。

「違います(笑)。塩漬けです。もう、ああいう勝ち方はないし、一度したから思い切り漬けにいけます(笑)」

──女子は比較的行き来ができていますが、これからのキャリアをどのように考えていますか。

「目標がなんなのかよくわからない状況ではあるんですけど、海外でやりたいです。もう日本人は皆やったし、今さら新しい子とやる必要はないかなって。めちゃくちゃ強い外国人にメチャクチャにやられたら、辞めることができるかなって」

──刹那的ですね。

「もう私、敵わないんだっていう経験をしたら辞められるかなって」

──その将来を望むとしても、メチャクチャ強い外国人を戦うためには次の試合でしっかりと勝つ必要があるかと思います。どのような試合にしたいですか。

「…………(じっくりと考えて)、攻め続ける。とにかく攻め続けます」

■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT

■Pancrase347 計量結果

<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也:70.15キロ
[挑戦者] 久米鷹介:70.3キロ

<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト:51.95キロ
[挑戦者] 藤野恵実:52.1キロ

<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太:76.95キロ
[挑戦者] 佐藤生虎:77.1キロ

<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希:70.55キロ
天弥:70.65キロ

<女子アトム級/5分3R>
SARAMI:48.05キロ
ホン・イェリン:47.75キロ

<バンタム級/5分3R>
井村塁:61.4キロ
カリベク・アルジクル・ウルル:61.65キロ

<ライト級/5分3R>
粕谷優介:70.7キロ
ホン・ソンチャン:70.5キロ

<女子フライ級/5分3R>
端貴代:56.65キロ
渡邉史佳:56.8キロ

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN:52.1キロ
エジナ・トラキナス:51.9キロ

<フェザー級/5分3R>
糸川義人:65.9キロ
栁川唯人:65.95キロ

<ストロー級/5分3R>
野田遼介:52.5キロ
船田侃志:52.55キロ

<バンタム級/5分3R>
安藤武尊:61.45キロ
ギレルメ・ナカガワ:61.55キロ

<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大:56.7キロ
山﨑蒼空:57.1キロ

<フライ級/5分3R>
時田隆成:56.95キロ
齋藤楼貴:56.95キロ
 
<バンタム級/5分3R>
友寄龍太:61.1キロ
渡邉泰斗:61.5キロ

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【Pancrase347】葛西和希と挑戦者決定戦へ、天弥「アイツは持ってるみたいに言われるの、すっげぇ嫌」

【写真】 どれだけ女性の前で下ネタをしようが、これだけ格闘技について熱く語ってくれるのはMMAPLANETでは◎です(C)MMAPLANET

29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、天弥がライト級次期挑戦者決定戦で葛西和希と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

3月のパンクラス立川大会で天弥は松本光史と対戦し、2Rに松本をストップ寸前まで追い込み、文句なしの判定勝利を収めた。わずかキャリア4戦目で、元修斗王者にして30戦以上のキャリアを誇る実力者を下したことはアップセットと言っていい勝利だったが、天弥自身は「1㎜も負けるとは思わなかった。立ちでもスクランブルでも組みでも負ける気はしなかった」と言ってのける。

葛西戦は同じ日に決まるライト級王者(雑賀ヤン坊達也×久米鷹介の勝者)への挑戦権をかけた一戦。天弥はさらにその先を見据えたうえで、葛西戦での勝利、そして王座奪取を目論んでいる。


どっちが世界でやっていけるか

――今大会では葛西選手とライト級次期挑戦者決定戦として試合が決まりました。試合が決まった時はどんな心境でしたか。

「自分が松本(光史)選手とやったあとに葛西選手と丸山(数馬)選手の試合が決まっていて、次はその試合で勝った方になるんじゃないかなってパンクラスさんから伝えられていたんですよ。もし丸山選手が勝っていたら次期挑戦者決定戦じゃなかったと思うんですけど、自分的には試合経験を積みたかったんで(葛西✖丸山の)勝った方とやることはOKしていました。それで葛西選手になったって感じですね」

――葛西選手との対戦は想定していたわけですね。ファイターとしてはどんな形で印象を持っていますか。

「結構(試合を)長い間やっていて、11勝3敗って、そうそう簡単な数字じゃないと思うんですよ。そういうレコードを残して、これだけ長い間ずっとトップ戦線にいるんで、油断できないですよね。でも自分としては倒さなきゃって感じです」

――油断できない相手ではありつつ、倒して勝つことは今回のテーマのようですね。

「ですね。葛西選手が丸山戦後のマイクで『俺もトップ戦線でやっていける。世界と戦うんだ』と言って、僕と久米(鷹介)さんの名前を出したと思うんですけど、自分の方が歳も若いし、世界でやるのは俺の方が先だよって思ったので、だから実際に試合をやって、どっちが世界でやっていけるか(を見せたい)って気持ちもありますね」

――天弥選手としては受けて立つくらいのつもりだ、と。前回の松本戦は天弥選手の評価を変える試合だったと思うのですが、ご自身では勝つ自信を持って戦った試合だったのですか。

「世間はそういう予想だったと思うんですけど、自分の実力は自分が一番分かっているんで、1㎜も負けるとは思わなかったです。立ちでもスクランブルでも組みでも負ける気はしなかったです」

――その自信は日々の練習で身につくものでしょうか。

「練習のメンツがメンツですからね。基本はHEARTSとNEVER QUITで、たまに(中村)K太郎さんのところに行って、ですね。よくMMAスパーリングするのは安藤晃司さん、菊入正行さん、ISAOさん、江藤公洋さん。海外でも戦ってきた日本のトップ選手たちと毎週練習しているんで(対戦相手が)この人たちより強いのかよ?って思っちゃいます。例えば安藤さんと5分間殴り合ったりしたら、他の選手はこんなことやれないだろうと思うんで、やっぱり自信になりますよね」

――それだけ自信があったからこそ作戦や対策を立てるのではなく、全局面で勝つという意識だったんですね。

「はい。作戦は特になくて、全力でぶつかってやろうって感じです」

――その一方で元修斗世界王者で、40戦近いキャリアがある松本選手に勝てたことは自信になったのではないですか。

「それはありますね。やっぱ元(修斗)チャンピオンに勝ったんで。『これいけちゃうんだ、俺』って思いました」

――試合内容もフィニッシュではなかったですが、松本選手にしっかり勝つという内容だったと思います。

「KO勝ちって見た目も派手だし、完全決着がつくものですけど、見る人によっては『一発当てただけじゃん』とか『マグレじゃん』みたいに言う人もいるわけですよ。あと『アイツは持ってる』みたいに言われるのも、すっげぇ嫌で」

――勢いで勝っていると思われるのは心外だ、と。

「全部それで片付けられちゃうのはどうなの?って。それだったら3Rフルに使って、しっかりボコボコにしてやろうと。松本戦は、自分から行き過ぎて後半はバテちゃったんですけど、最後まで圧倒して勝とうと思っていました。自分は勝った試合が1RKOだったから、僕の評価って『キレる打撃を持っている』ぐらいだったと思うんで、それを変える試合だったと思います」

キツイ際の攻防は自信があるんで

――では3Rフルでやれたことも意味がありますよね。バテたことも経験と言えば経験ですし。

「そうですね。KO勝ちしちゃうと、逆に3Rやる機会がないんで。ある意味試合でバテたっていうのも経験と言えば経験なんで。あとは3Rのゲームメイクというか、そこも実戦で学びましたね。ああいう展開になって3Rをどうゲームメイクするか」

――松本選手はキャリアもあるので戦い方や試合運びも上手いですよね。

「そうなんですよ。やっぱり後半の方が戦い方が上手かったですよね。でも僕も2RにKO寸前まで追い込んで、3Rはポイントアウトしながら寝かせて、バック取ってパウンドみたいな戦い方をしたじゃないですか。あれも大沢さんの指示だったんですよ」

――どういう指示が出ていたのですか。

「2Rが終わったあとのインターバルで、大沢さんから『疲れただろ?』と言われて。やっぱり2Rの最後にフィニッシュしようと思ってダッシュしたから(スタミナを)使っちゃったんです。そしたら『3Rは戦い方を切り替えよう』と言われて、自分もそれが出来る自信があったから『分かりました』って答えて、3Rはああいう戦い方をしました」

――なるほど。でもああいう切り替え方ができことも驚きでした。

「そこは大丈夫です。キツイ際の攻防は自信があるんで」

――松本選手に勝ったことでライト級の国内トップにいるという意識も出てきましたか。

「今の自分はそのくらいにいるんだなって思います。次も組みでいくなら組みでもいいし、特に作戦も練っているわけじゃないんで、僕は練習してきたものを出そうかなぐらい、です」

――天弥選手は将来的に海外で戦うこと、UFCを目標にしていると思います。そこを目指す以上、国内では全局面で勝つつもりでやるという考えもあるのですか。

「そういうのはあるんですけど……まだ自分自身にそこまで自信を持ってないというか。松本選手に勝ったとはいえ、 やっぱり普段の練習では公洋さんたちとか、あのレベルの選手になるとやっぱりやられるんですよ。で、みんな世界でやっているわけじゃないですか。そういうメンツとラウンドをこなすと、みんなラウンドごとに違うんです──味が」

――まだ練習では差を感じる部分はある、と。

「でもそういう相手に対して、ようやく色々できるようになってきているんですよ」

――何か分かり始めた部分もあるんですね。

「はい。なんかUFCにはUFCなりの打撃の流れというか、ラウンドごとのポイントの取り方や作りがあるじゃないですか。それはBellatorにもONEにもあると思っていて、戦う舞台によって試合の組み立ても違うんだなって」

――それは戦況によっても変わりますよね。

「それを体で味わえているんですよ。だから試合で出していけたらな──ぐらいには思っているんですけど、葛西選手が出させてくる相手なのかなって思ったら、そうは思わないんで、全力でやりきります」

――試合で強さを見せる一方、普段の練習で自分の未熟さを感じることが出来る。いい意味で天狗になれない環境は選手にとっては最高だと思います。

「鼻を伸ばそうと思っても壁があって伸びません(笑)。あの先輩たちと練習していたら、天狗になれないし(格闘技の)厳しさを教えてくれる人たちなんで、ありがたいです」

個人的には久米選手とやりたい

――この試合に勝てば、次は雑賀ヤン坊達也×久米鷹介の勝者に挑戦する形になります。

「僕的にはヤン坊選手の方が楽で、久米選手の方がしんどい試合になるだろうなぐらいの想定なんですけど、個人的には久米選手とやりたいですね」

――それは久米選手のこれまでのレコードや実績を考えてですか。

「久米選手はアキラ選手に負けるまで7年ぐらいベルトを持っていたし、あれだけキャリアが長いのに(実力が)落ちないじゃないですか。前回も粕谷(優介)選手を3R圧倒していましたよね」

――久米選手は息の長い選手ですし、年齢・キャリアを重ねてもパワフルなファイトスタイルが変わらないところも特徴的です。

「なんか久米選手を倒して日本から出たいんですよ。久米選手はライト級で日本最強なんじゃないかと言われた時期もあったじゃないですか。そう言われる選手ってやっぱり何か特別なものを持っていると思うんで、そういう相手を倒したいです」

――フィニッシュするだけじゃなくタフな展開になっても競り勝つ強さも持っていますよね。

「日本でああいうタフなMMAができる選手って久米選手くらいじゃないですか。あの辺もちょっと経験したいですね」

――マッチメイク的な部分でいえば、ヤン坊選手と戦った方がKO決着必至のエキサイティングな試合になりそうです。

「打撃戦になると思うんで、どっちが立っていられるか試合になるでしょうね」

――例えばどちらの選手とも戦いたかったりしますか。

「やりたいっす。自分は日本のトップ選手とバンバンやりたいし、そうやって経験を積んで、海外にいきたいです」

――そういう意味でもベルトを巻くことでマッチメイク的な可能性が広がっていくと思いますし、やはりベルトは必ず巻きたいですか。

「ベルト……そうっすね。まあ獲っておきたいっす。やっぱりベルトを巻けば、僕の名前がパンクラスとか格闘技の歴史に刻まれるわけじゃないですか。僕がネオブラを獲ったのも、アマチュア修斗・アマチュアパンクラスの全日本を獲ったのもそうで、自分の名前を検索した時に出てくる獲得タイトルとかレコードって、自分を知ってもらうのに1番分かりやすいじゃないですか。『ベルト巻いてんだ』、『あの大会で優勝しているんだ』みたいな」

――天弥選手は必ずターニングポイントになるところで獲るべきものを獲ってきたわけですね。今日本から色んな選手たちが海外の団体に出ていて、今年のRoad to UFCでは日本人選手が全員ベスト4敗退という厳しい現実もあります。天弥選手も海外での活躍を目指す選手として、この結果をどう受け止めましたか。

「RTUに出ていた日本人選手はみんなレスリングが強かったじゃないですか。で、日本国内だとやりたい試合が出来ていたと思うんですけど、RTUでは出来ていなかった。そこら辺のゲームメイクが最近は大事だなと思っていて、打撃をポンポン当ててテイクダウンを取るのと、テイクダウンを見せて打撃を当てるって簡単なリズムではあるんですけど、それを試合で出すのが難しいんですよ」

――それが出来たとしても、どちらか一方になってしまいますよね。

「そうなんですよ。だから河名(マスト)選手も原口(伸)選手も、結局組んで抱きついて止まっちゃうじゃないですか。だったらもうちょい打撃の時間を割いてやった方がいいと思いました。だから僕自身は全グラフを均等に大きくしていって世界に出て、打ち合いが強い・打撃が強い選手なら組みを見せて削って、打撃で倒すみたいな。そういう全局面できる選手になって世界に出たいです」

――今は判定でもダメージが重視される傾向にありますが、天弥選手はもともとそういったダメージ重視の考えなのですか。

「やっぱり相手からしたらダメージを食らうのが1番嫌じゃないですか。よくRNCでも口塞いだりする選手とかいますけど、ああいうのを淡々とできる選手って強いと思います。頭の回転も速いだろうし。テイクダウンを狙ってしがみついて何とかとする、上を取ったままキープして終わる選手が多いけど、そういう選手は何を目的にやっているんだろうと思っちゃうんです。

あれはただ時間が過ぎていくだけじゃないですか。試合はパフォーマンスを見せる場なのに。自分はそういう考えが…ちょっと分からないです」

――なんにせよ格闘技は強さを示す競技。ジャッジする側がこのところコントールよりも加打に重きを置いていますね。

「最初から判定を狙って戦うことが評価されなくなってきて、自分はそれが本来のMMAなんじゃないかなと思います。組み技・寝技になったらサブミッションを狙う、パウンド出来るポジションを探す…そういう練習が必要だと思います」

――逆に組み技出身の選手が殴る意識を持てばスクランブルや寝技の動きも変わるでしょうね。

「絶対それがあるはずなんですよ。それこそレスリングとか柔道とか組み技のバックボーンがある選手は“殴る”ことを頭に置いていれば、それができる場面ってたくさん出てくると思いますよ。僕が打撃出身だからそう思うのかどうかは分からないですけど」

――天弥選手からすると「なぜ、ここで殴らないの?」と思うことも多いですか。

「逆に組み技出身の選手からすると、同じ場面を見ていても『ここで殴るの?』と思うことがあるだろうし、もしかしたらそこは打撃系と組み技系で分かり合えないのかもしれないですね」

――それは天弥選手が打撃格闘技出身で、そこからMMAに入って組み技を覚えたからこその感覚かもしれないですし、天弥選手にしか見えないMMAの世界もありそうです。

「自分はあると思っています。例えば相手を寝かして、相手が立ち上がろうとする瞬間、絶対に顔(のガード)が空くんです」

――顔をガードしたまま立ち上がるのは無理ですよね。

「絶対マットに手をついて立つんだから。だったらそこで寝かせにいくより、殴ってダメージ与えた方がいいじゃんって思うんです。がぶってコンロールするより、殴っておいて上体が浮いたところでまた下にテイクダウンに入れば削れていきますよね。自分はそういう見方をしているから、発想そのものが違うんだと思います」

――それがさきほどの「打撃系と組み技系で分かり合えないのかもしれない」ですね。今は組み技出身選手が海外の団体に挑戦するパターンが多いですが、天弥選手のような打撃出身選手が世界に出ていく姿も見たいですし、今のMMAにおいては天弥選手のように、組みを踏まえて“殴る”意識を持つことが必要だと思います。

「僕はそこが大事だと思うし、その意識が日本人には必要だと思います。この前のオリンピックを見ても、日本ってあんなにレスリングが強い国じゃないですか。絶対にダメージを与える意識を持つ選手が増えれば、その先(コントロールの先)にいけるはずなんで。自分も今後はレスリングもやっていくだろうし、練習環境ももっともっと整えて日本人が世界で勝っていきたいですよね。で、自分はそこにいく確信を持っているんで、みなさんも楽しみにしていてください」

■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT

■Pancrase347 対戦カード

<ライト級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也(日本)
[挑戦者] 久米鷹介(日本)

<ストロー級QOP選手権試合/5分5R>
[王者] ソルト(日本)
[挑戦者] 藤野恵実(日本)

<ウェルター級KOP選手権試合/5分5R>
[王者] 押忍マン洸太(日本)
[挑戦者] 佐藤生虎(日本)

<ライト級次期挑戦者決定/5分3ラウンド
葛西和希(日本)
天弥(日本)

<女子アトム級/5分3R>
SARAMI(日本)
ホン・イェリン(韓国)

<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
カリベク・アルジクル ウルル(キルギス)

<ライト級/5分3R>
粕谷優介(日本)
ホン・ソンチャン(韓国)

<女子フライ級/5分3R>
端貴代(日本)
渡邉史佳(日本)

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(日本)
エジナ・トラキナス(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
糸川義人(日本)
栁川唯人(日本)

<ストロー級/5分3R>
野田遼介(日本)
船田侃志(日本)

<バンタム級/5分3R>
安藤武尊(日本)
ギレルメ・ナカガワ(ブラジル)

<2024年ネオブラッドTフライ級決勝/5分3R>
岸田宙大(日本)
山﨑蒼空(日本)

<フライ級/5分3R>
時田隆成(日本)
齋藤楼貴(日本)
 
<バンタム級/5分3R>
友寄龍太(日本)
渡邉泰斗(日本)

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45 MMA MMAPLANET o PANCRASE Pancrase342 ボクシング 佐藤生虎 和田良覚 長岡弘樹

【Pancrase342】これぞタフファイト。耐える長岡に左とヒジを当て続けた佐藤が初の判定勝ち

【写真】これぞ長岡ファイト。そして佐藤も疲労を乗り越えた(C)MMAPLANET

<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(日本)
Def.3-0:29-28.29-28.28-29.
長岡弘樹(日本)

共にサウスポー。サークリングしながら右を突く佐藤は、長岡が距離を詰めて来ると左を振るう。下から、さらに上から左を伸ばし、さらに右ジャブを突いていく。長岡もワンツーからから距離を詰めるも、組みつこうとした長岡に左ストレートから乱打を浴びせた。長岡も顔面に左を受けながら組み付き、ケージに押し込んだ。両脇を差し上げて押し返す佐藤。長岡はダーティボクシングに持ち込むが、佐藤が体勢を入れ替えた。左腕で長岡の頭をなぎ倒してから、佐藤が離れる。佐藤がケージ中央で左ストレートを幾度も叩き込むが、長岡は倒れない。ならばと佐藤の右フックが長岡の顔面を捉える。頭を振って近づく長岡に右ジャブを叩きこむ佐藤は、右ヒジから左を突き刺した。しかし長岡は前に出続ける。ケージ中央で組んだ両者、佐藤が離れながらヒジとストレートを繰り出すも倒せず、初の2Rに突入する。

初回はジャッジ3者が佐藤の10-9とした。

2R、長岡が右ジャブで佐藤の顔面を跳ね上げる。佐藤が左右のパンチから突進すると、和田良覚レフェリーが巻き込まれかけた。ケージ際で体勢を入れ替えた長岡がシングルレッグで組むも、佐藤が手首を抑える。すると長岡はバックに回り、さらに左足をすくって背中を着かせた。バックを奪った。立ち上がって正対した佐藤を、長岡がケージに押し込む。シングルレッグからバックに回った長岡の左腕を取った佐藤が、キムラでリバーサルしてバックマウントへ。長岡はスクランブルからダブルレッグで組むと、再び佐藤は長岡の左腕をキムラで抱える。長岡はシングルレッグから、しっかりと佐藤に背中を着かせた。ハーフガードの佐藤を、長岡がパウンドで削りラウンドを終える。

2Rはジャッジ3者が長岡の10-9とつけた。

最終回、長岡のテイクダウンを切った佐藤が左跳びヒザで飛び込む。それをキャッチした長岡が佐藤をケージに押し込んでいった。右腕を長岡のアゴを上げ、左ヒジを叩き込む佐藤。この一撃で長岡は一瞬下がるも、すぐに組みついた。ケージ中央で押し合う両者、佐藤は長岡の左手首を掴み、左ヒジを叩き込む。さらに左ストレート、右アッパーで顔面を跳ね上げるも、長岡は組みついていく。首相撲からヒザを突き上げた長岡は、さらに右フックを放つ。長岡の投げを耐えた佐藤は、長岡の右ジャブに右アッパーを合わせた。ワンツーから長岡をケージに押し込み、左を入れる。体勢を入れ替えた長岡はダブルレッグへ。佐藤が長岡の右腕を抑えると、長岡は右腕を差し上げてバックを狙うも、佐藤がそれを許さず。ケージから離れた両者は、ケージ中央で打ち合い、組合をてんかいし、最後は佐藤が左を顔面に叩き込んだ。

1Rと3Rを佐藤が取ったか。判定勝利を収めた佐藤は、体力を全て使い切ったようにケージ中央に倒れた。誰もがそれを理解できるほどのタフファイトだった。マイクを持った佐藤は「シンドイです。勝てて良かったです」と語ってケージを後にした。


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【Pancrase342】長岡弘樹戦へ。柔道出身の剛腕、佐藤生虎「……次の試合も殴ります」

【写真】生虎(しょうご)という名前の由来は、「正午に生まれたことから当て字で……という説があります」とのことでした(C)SHOJIRO KAMEIKE

28日(日)、翌29日に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase342の計量が行われ、出場選手全員がクリアした。明日の第10試合試合では佐藤生虎が長岡弘樹と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年プロデビュー以来3試合連続、1ラウンドKO勝ちをマークしている佐藤。しかも合計タイムは3分と、1ラウンド分にも至っていない。特に左ストレートを軸に戦っているが、もともとは柔道ベースだというから驚きだ。なぜ佐藤がこれまでに左ストレートで倒しまくるようになったのか。その秘密をひも解く。豪快なKOの裏には、試合スタイルからは想像できない佐藤の性格が関係していた(※取材は4月24日に行われた)。


――MMAPLANETでは初のインタビューとなりますが、宜しくお願いいたします。

「……、……」

――すみません、ちょっと音声が小さいようですね。

「(マイクを口に近づけて)聞こえますでしょうか?」

――ありがとうございます。聞こえました。もしかして今は職場ですか。

「はい、そうです」

――もしかして小さな声で喋らないとか……。

「そんなことはないのですが――ちょっと周りから見られています(笑)。でも大丈夫です。すみません」

――いえ、職場でインタビューを行わせていただき、ありがとうございます。会社の方にも宜しくお伝えください。

「アハハハ、分かりました(笑)」

――改めて、プロデビュー以来3試合で合計3分ほどしか戦っていない佐藤選手です。

「えっ、そんなに短いですか」

――これまでのKOタイムが1分1秒、35秒、1分22秒ですから、正確には2分58秒です。ご本人としては意識していないのですか。

「そうですね。まぁ、たまたまというか……」

――あれだけ左ストレートを軸に戦っていて、「たまたま」ではないでしょう(笑)。

「いや、もう必死に戦っているだけで(苦笑)。自分でもよく説明できなくて――喋るのも下手なので、すみません」

――いえいえ。あれだけの剛腕っぷりを見せていながら、ベースは柔道なのですよね。

「柔道は10歳から28歳までやっていました。もともと兄が柔道をやっていたので、僕も同じ町道場に入れられて。28歳の時に柔道を辞めて、MMAを始めました」

――28歳というと大学を卒業してから、どこか企業で柔道をやっていたのでしょうか。

「いえ、警察です」

――警察ですか! 大学までの優勝実績などは……。

「特に無かったです。高校の時に県大会で優勝したり、大学も全国大会に出たぐらいで。そこから警察の柔道部に入りました。ずっとMMAは好きで、大学を卒業した時点で柔道を続けるか、MMAを始めるかは一度考えました」

――そこで柔道を続けた理由は何だったのでしょうか。

「……母の反対ですね(苦笑)。今もMMAをやることは反対されています。でも警察の柔道部って定員があり、毎年誰かが引退して誰かが入るということが繰り返されるんです。柔道部の先生から『今年で引退してほしい』と告げられて。柔道部にいられないなら警察にいる理由もないので辞めました」

――柔道部を辞めたとしても、警察には残ることはできるわけですよね。

「はい。もともとMMAをやりたくて、ずっと柔道を続ける気持ちはなかったんです。だから先生から告げられた時に踏ん切りがついたといいますか。ちょうどコロナ禍で試合もできない時期でしたし」

――では警察を退職して、すぐにMMAを始めたのですか。

「MMAを始めようと思ってジムを探した時、自分が柔道出身なので組み技が強いパラエストラ松戸(現THE BLACKBELT JAPAN)に入りました。そのあと去年の3月に、講道館の柔道クラブ時代の先輩である中村K太郎さんと宮澤元樹さんがいる、ユナイテッドジムに移籍してプロデビューしました」

――なるほど。2022年にパンクラスのアマチュア全日本を制してプロデビューに至るわけですが、当時から今のように左をバシバシ当てていたのでしょうか。

「いえ、最初はとにかく組みついていました。それがアマチュア全日本の時に、減量で水抜きしすぎてヘロヘロになってしまい、試合では組めない――スタミナがもたないと思ったんです。それで殴りに行ったら『当たるなぁ』という感じで」

――減量ミスから生まれた左ストレート! 最初に仰った「たまたま」というのは、そういう意味だったのですね。

「アハハハ、そうなんです。自分自身でもグラップラーだと思っていましたけど」

――結果、プロデビュー以降はストライカーで行くと。プロの3試合はほぼ組みに行っていません。それはまだ組みの実力……つまり本当の力を隠しているということではないですか。

「いや、それはないです」

――ハッキリと否定しましたね(笑)。

「もう本当に、いつも限界で。毎試合ギリギリの状態でやっています」

――確かに1戦目と2戦目は、とにかく左を振り回している感もありました。しかし3戦目の川中戦は完全に左ストレートを軸に戦うように進化していたように思います。相手の頭の位置を見ながら、左ストレートを急所に叩きこんでいくという。

「ありがとうございます。でも、それも意識したことはなくて……。ただ、今はボクシングで日本と東洋太平洋のチャンピオンだった柴田明雄さんの指導を受けて、打ち方と位置取りは変わってきていると思います。前回の試合は、とにかく相手の左側に回ろうと柴田さんから言われていて――相手との距離、自分の位置については考えるようになりました」

――なるほど。川中選手をKOしてパンクラスのウェルター級5位にランクインしました。そして次は大ベテランの長岡戦で、この試合をクリアすればベルト挑戦も射程圏内に入っくると思います。

「ベルトは意識していますが……う~ん、自分が上がってきているという実感はないですね。次の試合も不安しかないですし(苦笑)」

――浮かれているよりは良いと思いますが、それにしても自信のあるコメントは出て来ないですね。

「長岡選手はキャリアも凄くて、削り合う試合になると思いますし――引き出しの要素も全て、僕が負けていますからね。試合になると、いつも不安しかないです」

――その不安は、どのように解消するのですか。

「ケージに入るまで不安ですし、ケージに入っても頭が真っ白になって。あとは『やるしかない』という気持ちになって試合をするだけです。自分がやらないと、やられてしまう。その気持ちが一番大きいですね。

――では次の長岡戦、どのような試合をしたいですか。

「……次の試合も殴ります。長岡選手って打たれ強いと思うんですけど、それでも殴ります」

■視聴方法(予定)
4月29日(月・祝)
午後1時30分~U-NEXT

■Pancrase342 計量結果

<ストロー級暫定王者決定戦/5分5R>
黒澤亮平(52.15キロ)
リトル(52.05キロ)

<ライト級/5分3R>
粕谷優介(70.70キロ)
久米鷹介(70.70キロ)

<ウェルター級/5分3R>
佐藤生虎(77.55キロ)
長岡弘樹(77.35キロ)

<女子ストロー級/5分3R>
KAREN(52.05キロ)
ホン・イェリン(51.40キロ)

<ライト級/5分3R>
松岡嵩志(70.40キロ)
ホン・ソンチャン(70.00キロ)

<フライ級/5分3R>
砂辺光久(57.00キロ)
前田浩平(57.20キロ→57.10キロ)

<ストロー級/5分3R>
寺岡拓永(52.25キロ)
氏原魁星(52.10キロ)

<フェザー級/5分3R>
糸川義人(65.85キロ)
櫻井裕康(66.50キロ→66.10キロ)

<バンタム級/5分3R>
坂本瑞氣(61.35キロ)
谷内晴柾(61.25キロ)
<ネオブラッドT 2回戦 フライ級/5分3R>
饒平名知靖(56.65キロ)
名久井悠成(56.55キロ)

<ネオブラッドT 2回戦 フライ級/5分3R>
山崎蒼空(56.85キロ)
AXEL RYOTA(56.95キロ)

<フライ級/5分3R>
田中亮祐(56.35キロ)
齋藤桜貴(57.15キロ)

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『PANCRASE 340 ~PANCRASE 30周年記念大会 Vol.2~』試合結果

まんがでわかる 30歳から伸びる人、30歳で止まる人



第14試合 メインイベント パンクラス・ウェルター級チャンピオンシップ 5分5R
×林 源平(和術慧舟會IggyHandsGym/王者)※初防衛戦
○住村竜市朗(TEAM ONE/2位、元DEEP王者)
5R 2’09” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)
※住村が王者に

第13試合 コーメイン パンクラス・フライ級暫定チャンピオンシップ(王者決定戦) 5分5R
○伊藤盛一郎(リバーサルジム横浜グランドスラム/1位、元ZSTフライ級王者)
×有川直毅(K-PLACE/3位)
2R 3’05” 裸絞め
※伊藤が暫定王者に

第12試合 パンクラス第5代バンタム級チャンピオンシップ(王者決定戦) 5分5R
×河村泰博(和術慧舟會AKZA/1位、Fighting NEXUS王者)
○透暉鷹[ときたか](ISHITSUNA MMA/2位、元パンクラス・フェザー級王者)
1R 4’45” 肩固め
※透暉鷹が王者に

第11試合 パンクラス・ライト級王者挑戦者決定戦 5分3R
×粕谷優介(CROWN/1位)
○雑賀 ヤン坊 達也(DOBUITA/4位)
判定0-3 (出口27-30/荒牧27-30/松井27-30)

第10試合 パンクラス初代女子アトム級(47.6kg)王者決定トーナメント一回戦 5分3R
○沙弥子(リバーサルジム横浜グランドスラム/2位)
×V.V Mei[ヴィーヴィーメイ](フリー/元DEEP JEWELSアトム級王者、元VALKYRIEフェザー級(52kg)王者)
判定2-1 (大藪28-29/山崎29-28/梅木28-29)

第9試合 パンクラス初代女子アトム級(47.6kg)王者決定トーナメント一回戦 5分3R
×ジェニー・ファン(台湾/AACC/1位)
○SARAMI(パンクラスイズム横浜/修斗女子スーパーアトム級(50kg)世界4位・元王者)
判定0-3 (27-30/27-30/27-30)

第8試合 フェザー級 5分3R
×亀井晨佑[しんすけ](パラエストラ八王子/2位、ネオブラッドトーナメント2018同級優勝)
○平田直樹(トライフォース柔術アカデミー/5位)※フリーから所属変更
判定0-3 (27-30/27-30/27-30)

第7試合 フェザー級 5分3R
△高橋遼伍(KRAZY BEE/元修斗環太平洋王者)
△キム・サンウォン(韓国/コリアントップチーム/8位、元Double G王者)
3R 負傷判定1-1 (梅木28-30/荒牧30-28/出口29-29)

第6試合 フェザー級 5分3R
○Ryo(グランドスラム/RINGS/6位、元THE OUTSIDER 70-75kg級王者)
×栁川唯人(K-PLACE/11位、ネオブラッドトーナメント2023同級優勝)
3R 0’33” 腕ひしぎ十字固め

第5試合 フライ級 5分3R
○ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン/カトランジム/5位、IMMAF 2022 世界選手権フライ級優勝)
×松井斗輝(パラエストラ柏/8位)
判定3-0 (30-27/30-27/30-27)

第4試合 71.5kg契約 5分3R
×近藤有己(パンクラスイズム横浜/元ミドル級・ライトヘビー級・無差別級王者)
○美木 航(NATURAL9)
判定0-3 (27-30/27-30/27-30)

第3試合 バンタム級 5分3R
○田嶋 椋(OOTA DOJO/5位・元暫定王者、ネオブラッド・トーナメント2022同級優勝&MVP)
×笹 晋久(パラエストラ柏/6位、修斗2017同級新人王)
判定3-0 (山崎29-28/出口29-28/大藪29-28)

第2試合 ウェルター級 5分3R
×川中孝浩(BRAVE/元GRAND王者)
○佐藤生虎[しょうご](UNITED GYM TOKYO)
1R 1’21” TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)

第1試合 プレリミナリーファイト フライ級 5分3R
○眞藤源太(KINGCRAFT)
×梅原規祥[みさき](リバーサルジム武蔵小杉 所プラス)
1R 1’51” 裸絞め

 遅ればせながら12月24日に横浜武道館で開催された『PANCRASE 340 ~PANCRASE 30周年記念大会 Vol.2~』の試合結果。メインイベントのウェルター級チャンピオンシップは住村竜市朗が林源平に5R TKO勝ちし新王者に。セミファイナルのフライ級暫定王座決定戦は伊藤盛一郎が有川直毅に2R裸絞めで勝利。第12試合のバンタム級王座決定戦は透暉鷹が河村泰博に1R肩固めで勝利しています。続きを読む・・・
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【Pancrase340】12・24を読む サロハイディノフと対戦、松井斗輝「みんなが言うほど強い相手じゃない」

【写真】スッキリした表情で自信をのぞかせた(C)SHOJIRO KAMEIKE

23日(土)、東京都目黒区のU-NEXT内カンファレンスルームで、翌24日に横浜武道館で開催されるPANCRASE340の計量が行われた。
Text by Shojiro Kameike

計量では14試合=28選手のうち、フライ級暫定王座決定戦に出場する有川直毅が再計量でクリア。計量終了後、ムハンマド・サロハイディノフと対戦する松井斗輝に試合直前の意気込みを訊いた。


――先ほど計量が終わり、松井選手は56.95キロでクリアしました。

「いつも結構ギリギリですけど、今回は余裕を持ってクリアできました」

――計量後のフェイスオフでは、突然サロハイディノフに持ち上げられましたね。松井選手は挑発に乗りませんでしたが……。

「アハハハ、あれはビックリしました。僕は別に何とも思わないけど、相手は顔が赤くなっていて――自分でやって恥ずかしかったのかなって(笑)」

――今回、サロハイディノフ戦のオファーが来た時は、どう思いましたか。

「たぶんサロハイディノフと対戦することになると思っていたので、『やっぱり来たか』という感じでしたね。今回はランキング上位の選手と試合をさせてほしいと伝えていて」

――サロハイディノフはまだプロで1試合しか経験していませんが、評価が高い選手です。

「そうですね。確かに強いです。でも、みんなが言うほどでは――と思いますよ」

――おっ!! 周囲が抱いている印象と、松井選手の印象とはどのように違いますか。

「確かに勢いは凄いし、ずっと攻め続けてきますけど、細かい技術はそうでもないんじゃないかって思います」

――ご自身については、いかがでしょうか。先ほど計量後のコメントでは「前回の試合より2倍強くなっている」と仰っていました。

「半年前からフィジカルトレーニングをやり始めて、ここ2~3カ月でフィジカルも強くなってきたと実感していますね」

――半年前というと、7月の大塚智貴戦はフィジカルトレーニングを始めた直後ぐらいですか。

「そうです。あの試合は、ちょうどフィジカルトレーニングの効果が出始めたぐらいですね。今までは自重のトレーニングぐらいしかやっていなくて。それがビッグ3(ベンチプレス、スクワット、デッドリフト)を中心に、ガンガン重さを上げて鍛えてきました。おかげで大塚戦は、今までの試合よりも安定した試合運びができたんじゃないかと思っています」

――それだけ鍛えると、通常体重が増えていませんか。

「増えましたけど、それでも1~2キロぐらいですね。これからフライ級で上に行くには、しっかりと筋量を増やしていきたいと考えています」

――他に新しく取り組んでいることはありますか。

「打撃の練習量を増やしました。MMAを始めてから、ほとんど打撃の練習はやっていなくて、ほぼ寝技の練習だけでした。打撃に関して言えば、今までの貯金で戦っていたようなもので。でも最近その貯金も無くなってきたというか、うまく行かないことも増えてきたんですよ」

――うまく行かないこと、というのは……。

「パンクラスでの2試合は、どちらも3R戦ったじゃないですか。あれは正直、流してしまったんです。初戦はKO勝ちできたけど、2戦目は完全に『ポイントで勝っているからいいや』という感じで。でも試合内容を考えると、まだまだ気持ちもスタミナも足りないところがある。もう一度、しっかり倒せるようになりたくて打撃の練習量を増やしました」

――……と、いま画面越しに見える耳の湧き方が凄いです。打撃だけでなく、それだけ組みの練習もしてきたということですね。

「そういうことです(笑)。正直、サロハイディノフにはテイクダウンされるかもしれません。でも倒されてから立ち上がる練習をガンガンやってきたので、大丈夫だと思います」

――なるほど。この試合に勝てばランキングも上がり、タイトルマッチも見えてくるかと思います。今大会では伊藤×有川のフライ級暫定王座決定戦も行われます。どちらと対戦したい、という希望はありますか。

「自分にとって相性が良いのは、有川選手だと思います。でも今回は伊藤選手が一本勝ちするんじゃないかと予想していて。そうなれば伊藤選手に挑むことになることになるかもしれませんが、どちらでも構わないです。今回勝ったら、次はタイトルマッチやりたいですね」

■視聴方法(予定)
2023年12月24日(日)
午後1時15分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

■ 対戦カード/計量結果

<ウェルター級KOPC/5分5R>
[王者] 林源平:76.90キロ
[挑戦者] 住村竜市朗:77.10キロ

<フライ級暫定王座決定戦/5分5R>
伊藤盛一郎:56.65キロ
有川直毅:57.5キロ → 再計量 56.70キロでクリア

<バンタム級王座決定戦/5分5R>
河村泰博:61.20キロ
透暉鷹:61.05キロ

<ライト級次期挑戦者決定戦/5分3R>
粕谷優介:70.40キロ
雑賀“ヤン坊”達也:70.05キロ

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
沙弥子:47.70キロ
V.V Mei:47.90キロ

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
ジェニー・ファン:47.45キロ
SARAMI:47.85キロ

<フェザー級/5分3R>
亀井晨佑:66.05キロ
平田直樹:66.10キロ

<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍:66.10キロ
キム・サンウォン:65.90キロ

<フェザー級/5分3R>
Ryo:65.95キロ
栁川唯人:65.95キロ

<フライ級/5分3R>
ムハンマド・サロハイディノフ:57.15キロ
松井斗輝:56.95キロ

<71.5キロ契約/5分3R>
近藤有己:70.90キロ
美木航:71.30キロ

<バンタム級/5分3R>
田嶋椋:61.15キロ
笹晋久:61.40キロ

<ウェルター級/5分3R>
川中孝浩:77.20キロ
佐藤生虎:77.30キロ

<フライ級/5分3R>
眞藤源太:56.55キロ
梅原規祥:57.00キロ

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【Pancrase340】12・24を読む ベルトを賭けて河村泰博と戦う透暉鷹─02─「相手の戦績に説得力がない」

【写真】体重を落とすことで練習内容も変わってきたという透暉鷹(C)MMAPLANET

24日(日)、横浜市中区の横浜武道館で開催されるPANCRASE340で、空位のバンタム級王座を賭けて河村泰博と対戦する透暉鷹のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

1年振りの試合、バンタム級転向初戦でタイトルマッチ――それもフェザー級時代の実績があってこそ。そのタイトルマッチの相手であり、煽りコメントも目立つ河村のことをどのように見ているのか。そんな質問に対し、透暉鷹は「全く気にしていない」と言い切った。


――バンタム級転向初戦で、いきなりタイトルマッチになるとは考えていなかったのではないですか。

「それはなかったですね。もちろんバンタム級に転向しても、パンクラスで試合をしたいと思っていました。でも『すぐにタイトルマッチをやらせてほしい』という気持ちは全くなかったです。ただ、バンタム級なら中島太一選手と試合がしたいとは思っていたんですよ。でも暫定王座決定戦になり、さらに中島選手がベルトを返上して正規王者の決定戦になって。その経緯は仕方ないですが、パンクラスが実力を認めてくれているのか――バンタム級に転向していきなりタイトルマッチというのは本当に嬉しいです」

――「実力を認めてくれるのか」とは、昨年4戦4勝で3試合でフィニッシュし、ベルトを獲得している選手が何を言っているのですか(笑)。

「アハハハ。ありがとうございます」

――もちろん評価されているでしょうし、転向初戦がタイトルマッチでも不思議には思わない実績です。ただ、その対戦相手が河村選手になるとは予想もしていなかったでしょう。

「そうですね。オファーが来た時はビックリしました。試合をしていない間も、ランキング上位の選手はチェックしていたんですよ。そこで河村選手が飛び出してくるとは考えていなくて。井村選手との試合も、井村選手が勝つかなって考えていました。でも一発で決めて――そういう力は警戒しています」

――河村選手の煽りに対しては、どのような印象を抱いていますか。

「煽ってきますねぇ(笑)。SNSもそうですし、記者会見でも煽ってくれているので、ありがたいです。実際はすごく良い人で」

――記者会見のフェイスオフでも、表情に良い人ぶりがにじみ出ていました。選手としての印象はいかがですか。

「不思議な感じですよね。とにかくフィニッシュする、狙ってくるという印象はあります。う~ん、どうなんだろう? 何ていうのか……」

――ここは正直な印象を聞かせてください。

「はい。あんまり相手のことは気にしていないです(笑)。河村選手がこれまで日本のトップ中のトップに勝っていたら、気にはなりますよ。でも、そうではなくて。だから煽られても気にならないし。要は、どれだけ言っていても河村選手の戦績に説得力がないわけで」

――……。

「本当は良い人だし、格闘技を盛り上げるために煽ってくれていることは分かります。盛り上げ方は人それぞれで。だから、それはそれで良いことだと思いますよ。たとえば選手として、極めが強い。フィニッシュを狙ってくる――といっても、自分も今まで練習で積み重ねてきたものがあります。だから今までやってきたことを確認するとしても、何か特別に河村選手の対策を組むということはないですね」

――では透暉鷹選手にとって、この試合の意味とは何でしょうか。

「対戦相手どうこうではないです。河村選手が相手だから――ということはなくて。自分がどれだけ試合に向けて練習できたか。そして、今までやってきたことを試合で出せるかどうか。今後のことを考えたら、自分自身がどうするのかっていうほうが大事ですよね」

――確かに。1年のブランクは気にしていないとのことでしたが、初のバンタム級戦という点はいかがですか。

「実は……完全にバンタム級でやると決めていたわけではなかったんですよ」

――えっ!?

「まず一度バンタム級で試合をしてみる。バンタム級のリミットまで落とすことは問題なくて。でも落としたことで動きが悪くなっていたら、バンタム級で戦う意味はないですよね。正直、そう思っていました。でもフェザー級のベルトを返上して、バンタム級でもタイトルマッチが組まれて――」

――もうバンタム級でやっていかざるをえなくなったと(笑)。

「アハハハ。とにかく、まずはバンタム級で試合をしてみてから――という感じです。もちろんベルトを獲ったらバンタム級で防衛戦をしないといけませんし。ただ、この階級で戦うことに対して不安はなくて。まずはこの1年間、自分がやってきたことを試合で出す。だから次のタイトルマッチは、試合内容を見てほしいです」

――この1年間で何が変わってきましたか。

「やっぱり体が軽くなると、スピードも動きも全然違います。逆に体重を落としても、組み力や体幹などは変わっていませんね。それだけ動きが良いと、スパーリングでも自分から先にペースを作っていくことができているんですよ。そうなると自分はスタミナが落ちず、反対に相手が疲れてくる。だから体重を落としたことで、どんどん自分のレベルも上がっていると思います」

――反対に、通常体重から減らしていることでストレスはないですか。

「それは無いです。ちゃんと管理栄養士さんと相談しながら、何か食べないとか無理をしているわけではないので。好きなお菓子を食べることが減ったぐらいですかね(笑)」

――それは良かったです(笑)。では最後に、次の試合への意気込みをお願いします。

「1年振りの試合で、初のバンタム級戦です。手術をして試合ができない間も、たくさんの方にサポートしていただきました。そうして応援し続けている方たちに恩返しができるような試合を見せたいです。よろしくお願いします!」

■視聴方法(予定)
2023年12月24日(日)
午後1時15分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

■ 対戦カード

<ウェルター級KOPC/5分5R>
[王者] 林源平(日本)
[挑戦者] 住村竜市朗(日本)

<フライ級暫定王座決定戦/5分5R>
伊藤盛一郎(日本)
有川直毅(日本)

<バンタム級王座決定戦/5分5R>
河村泰博(日本)
透暉鷹(日本)

<ライト級次期挑戦者決定戦/5分3R>
粕谷優介(日本)
雑賀“ヤン坊”達也(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
沙弥子(日本)
V.V Mei(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
ジェニー・ファン(台湾)
SARAMI(日本)

<フェザー級/5分3R>
亀井晨佑(日本)
平田直樹(日本)

<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍(日本)
キム・サンウォン(韓国)

<フェザー級/5分3R>
Ryo(日本)
栁川唯人(日本)

<フライ級/5分3R>
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
松井斗輝(日本)

<71.5キロ契約/5分3R>
近藤有己(日本)
美木航(日本)

<バンタム級/5分3R>
田嶋椋(日本)
笹晋久(日本)

<ウェルター級/5分3R>
川中孝浩(日本)
佐藤生虎(日本)

<フライ級/5分3R>
眞藤源太(日本)
梅原規祥(日本)

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【Pancrase340】ヤン坊と挑戦者決定戦、粕谷優介「別にやりたくもないし、あのパンチは避けられない」

【写真】試合前は弱気一点張りの粕谷だが、ケージに入ると覚悟が決まるという (C)MMAPLANET

24日(日)に横浜市中区の横浜武道館で開催されるPancrase340で、雑賀“ヤン坊”達也とライト級KOPアキラへの挑戦権を賭けて戦う粕谷優介。
Text by Manabu Takashima

モチベーションは勝利後の子供たちとの記念撮影。そんな粕谷のMMA観は、タイトル戦線に戻ってきても何ら変わっていなかった。


――UFC後、パンクラス参戦から序盤は1勝4敗と黒星先行で厳しい状態でしたが、ここのところは3連勝で王座挑戦権を賭けて戦うまで復調しました。

「結果が出ていなかったときは、日々忙しいというのが一番でした。会社員をやりながら道場を経営して、試合に向けて調整する。そこに関して自分でも内心、『限界はあるよな』とは思っていました。道場も忙しく、仕事も忙しい。そうですね、限界かなと」

――限界を感じてもプロ格闘家を続けました。

「2年前にある日突然、格闘家ではなくて会社員であることに限界がきました。13年間働き、そこそこ責任のある立場だったのに会社を素通りして家に戻ってしまったことがあったんです。その日は休ませてもらったのですが、立場があるのにこれを繰り返してはいけないと思いました。

そのある程度の立場になったことで、仕事に対してモチベーションを保つことができなくなっていました。社長にも『ウィンカーを出したのに、会社に入れなかった。これはもう続けることはできないです』と説明をして。会社の方も相当に引き留めてくれましたが、もう行くことができなかったです」

――サラリーマンとしての収入をなくしても、道場でやっていけるということ算段は?

「う~ん、実際にやっていけるというのではなくて見込みがあるという状態でしたね。『なんとかなるかな』って。結果、仕事を辞めると単純に練習時間が増えて疲れも取れるようになりました」

――そこが好調の原因だと。

「まぁ、それだけが理由で勝てているのかは分からないですけど、シンプルに格闘技のことを考えている時間は増えました」

――プロ練習や出稽古は?

「やっていないです。時間がないので。会社員を辞めて時間が取れると思ったのですが、思いのほかパーソナル・トレーニングの予約が入ってきて」

――経営者として良いことですが、ファイターとしては以前と変わらないのでは?

「いえ、それが僕のやっているパーソナルは、は時代と逆行して『ゲロを吐くまでやらせる。優しくしないパーソナル』なんです。追い込みまくる(笑)。それなのに、なぜか受けてくれる人が多くて。パーソナルの時に僕自身も相当に体を動かしているので一石二鳥になっているのかもしれないです(笑)。

それだけで、何も新しいことをやっているわけではないので、結果が残せている理由は自分でも分からない。ガチスパーもやっていないですし、ずっと打ち込みばかりをしていて。ヘロヘロになるまで打ち込みをやる。逆にガチスパーをやっていないので、ケガがなくなったということはありますね。前回の試合は少しあったのですが……」

――では対策練習は?

「なんとなくやる程度です。結局、できることは限られてきてしまうので。くっついてバックに回る。それを確認する作業……ですね。ただ柔術は週に6度練習しています。試合のためでなく、子供たちとただ楽しくやっているようなものでも柔術の技術に関しては『よく、何もしらないでやっていたな』と以前の自分のことを思うようになりました。

それとヴァンガード柔術のレアンドロ・オカモト先生のところ……秦野には通っています。オカモト先生と生徒さんと2時間、バッチリと練習するためにその日だけはパーソナルはお断りしています。それも楽しいから行っているのですが――。

MMAのスパーリングは前回の試合前も、道場生と3回か4回やっただけですね。プロ練習のような強度の高いスパーリングは大事だと思います。でも、もう13年もやってきているので、そこはイイかなと。その分、柔術の練習で極められまくりますし。未だにエビすら、真っ当にできないので日曜日に子供と3人でやっています。柔術は強くなるためでなく、知らないことを教えてもらえるから楽しい。そうやって考えると、格闘技をやる楽しさを思い出したから、試合も戦おうと思えるようになったのかと」

――その結果の3連勝で、今回は挑戦者決定戦を戦います。

「まぁランキング的にはソロソロかとは思っていたのですが、如何せん……UFCから松嶋(こよみ)君、ISAO選手と4連敗をしたことは引きずってきました。あの4連敗を経験して、続けているということが一番自慢できることです。心は完全に折れていて、辞めたいとしか思っていなかったんです。でも、続けることができたので」

――UFCの負けの一つはアレックス・ヴォルカノフスキーが相手ですし。

「子供がUFCの凄さを理解できるようになり始めた時に『このメチャクチャ殴られているの、パパだよね』って言ってきて(苦笑)。勝った試合より、その負けが凄いと。子供たちは柔術を5年ぐらいやっているので、分かるようになったんですよね。『エビができていない』、『なんで足関節にいく?』とか『なんで、普通のフックスイープをしないの?』なんて言われています。勝ち負けでなく、そういうことを言ってくるんですよ。

でもちゃんと教えている通りに、自分も動かないといけないなって思わされます。キッズには一番安全なことを指導しているので、それは自分も同じじゃないかと。あと自分の子供は週に4日、柔術の練習をしています。土曜日は柔術と空手の2部練習。子供が週に4日やっているなら、選手としてではなく親として週に5度は練習しないといけないです。そして子供たちが頑張れという限りは、自分も頑張る。その頑張りが一番伝わるのが試合だから出ているんです。

だから試合に勝った後の記念撮影は、すぐに退場ってマイクで急かさないでもう少し時間が欲しいです(笑)。思い出創りなので、もう少し待ってくださいって。ただ試合をする限り勝ちにはこだわりますし、戦うからには強い人とやりたい。怖いからこそ、そこと戦わないと」

――結果、試合は嫌だと以前と同じことを口にする?(笑)。

「今日も会見でヤン坊選手と向き合って、嫌でした(笑)。別にやりたくもないし、あのパンチは避けられない。絶対に貰うので」

――組んでバックが勝利の方程式ですが、粕谷選手は打撃戦も展開します。

「まぁ、貰う覚悟というか殴られる前提で戦っているので」

――そこで怖さというのは?

「ケージに入ると覚悟は決まります。入るまでは殴られたくないし、ずっと寝技だけをやっていたい。でも、分かりやすく強いのはMMA。そうなると試合をするしかないですよね。殴られるのは嫌ですけど、けっこう殴られてきました。殴られることから逃げていると、勝てないです。で、そこで倒されてもそこまでの技量しかない。そうですね……勝ちたいですけど、道場で教えている人間としては勝ちも負けも両方を見せるしかない。ほんと、だから今はメチャクチャ辞め時かなって。キッズたちは『先生、結構強いぞ』と思ってくれている今こそ、そのタイミングなんじゃないかと」

――タイトル挑戦、ベルト奪取。そこから先に何を目指すのかと尋ねようと思っていたのですが……(笑)。

「でも、辞める辞める詐欺になりますよ(笑)。辞めたいけど、どうせやるんだろうって。結局、環境のせいにしたり諦めちゃう人が多い世の中なので、諦めないでズルズルやっている人もいるよ――というのを見てくれる人がいれば。別に勇気や希望を与えたいわけじゃない。見たかったら、見てくださいというテンションでしかないです。辞めないのは、他に頑張ろうと思えるものを探してもなかなか見つからないです。

こういうことを言うと『舐めている』とか『本気じゃない』って言われますけど、僕の中では全部本気でやっています。ずっと、本気でやってきました」

■視聴方法(予定)
2023年12月24日(日)
午後1時15分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

■ 対戦カード

<ウェルター級KOPC/5分5R>
[王者] 林源平(日本)
[挑戦者] 住村竜市朗(日本)

<フライ級暫定王座決定戦/5分5R>
伊藤盛一郎(日本)
有川直毅(日本)

<バンタム級王座決定戦/5分5R>
河村泰博(日本)
透暉鷹(日本)

<ライト級次期挑戦者決定戦/5分3R>
粕谷優介(日本)
雑賀“ヤン坊”達也(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
沙弥子(日本)
V.V Mei(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
ジェニー・ファン(台湾)
SARAMI(日本)

<フェザー級/5分3R>
亀井晨佑(日本)
平田直樹(日本)

<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍(日本)
キム・サンウォン(韓国)

<フェザー級/5分3R>
Ryo(日本)
栁川唯人(日本)

<フライ級/5分3R>
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
松井斗輝(日本)

<71.5キロ契約/5分3R>
近藤有己(日本)
美木航(日本)

<バンタム級/5分3R>
田嶋椋(日本)
笹晋久(日本)

<ウェルター級/5分3R>
川中孝浩(日本)
佐藤生虎(日本)

<フライ級/5分3R>
眞藤源太(日本)
梅原規祥(日本)

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