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【Pancrase340】12・24を読む ベルトを賭けて河村泰博と戦う透暉鷹─02─「相手の戦績に説得力がない」

【写真】体重を落とすことで練習内容も変わってきたという透暉鷹(C)MMAPLANET

24日(日)、横浜市中区の横浜武道館で開催されるPANCRASE340で、空位のバンタム級王座を賭けて河村泰博と対戦する透暉鷹のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

1年振りの試合、バンタム級転向初戦でタイトルマッチ――それもフェザー級時代の実績があってこそ。そのタイトルマッチの相手であり、煽りコメントも目立つ河村のことをどのように見ているのか。そんな質問に対し、透暉鷹は「全く気にしていない」と言い切った。


――バンタム級転向初戦で、いきなりタイトルマッチになるとは考えていなかったのではないですか。

「それはなかったですね。もちろんバンタム級に転向しても、パンクラスで試合をしたいと思っていました。でも『すぐにタイトルマッチをやらせてほしい』という気持ちは全くなかったです。ただ、バンタム級なら中島太一選手と試合がしたいとは思っていたんですよ。でも暫定王座決定戦になり、さらに中島選手がベルトを返上して正規王者の決定戦になって。その経緯は仕方ないですが、パンクラスが実力を認めてくれているのか――バンタム級に転向していきなりタイトルマッチというのは本当に嬉しいです」

――「実力を認めてくれるのか」とは、昨年4戦4勝で3試合でフィニッシュし、ベルトを獲得している選手が何を言っているのですか(笑)。

「アハハハ。ありがとうございます」

――もちろん評価されているでしょうし、転向初戦がタイトルマッチでも不思議には思わない実績です。ただ、その対戦相手が河村選手になるとは予想もしていなかったでしょう。

「そうですね。オファーが来た時はビックリしました。試合をしていない間も、ランキング上位の選手はチェックしていたんですよ。そこで河村選手が飛び出してくるとは考えていなくて。井村選手との試合も、井村選手が勝つかなって考えていました。でも一発で決めて――そういう力は警戒しています」

――河村選手の煽りに対しては、どのような印象を抱いていますか。

「煽ってきますねぇ(笑)。SNSもそうですし、記者会見でも煽ってくれているので、ありがたいです。実際はすごく良い人で」

――記者会見のフェイスオフでも、表情に良い人ぶりがにじみ出ていました。選手としての印象はいかがですか。

「不思議な感じですよね。とにかくフィニッシュする、狙ってくるという印象はあります。う~ん、どうなんだろう? 何ていうのか……」

――ここは正直な印象を聞かせてください。

「はい。あんまり相手のことは気にしていないです(笑)。河村選手がこれまで日本のトップ中のトップに勝っていたら、気にはなりますよ。でも、そうではなくて。だから煽られても気にならないし。要は、どれだけ言っていても河村選手の戦績に説得力がないわけで」

――……。

「本当は良い人だし、格闘技を盛り上げるために煽ってくれていることは分かります。盛り上げ方は人それぞれで。だから、それはそれで良いことだと思いますよ。たとえば選手として、極めが強い。フィニッシュを狙ってくる――といっても、自分も今まで練習で積み重ねてきたものがあります。だから今までやってきたことを確認するとしても、何か特別に河村選手の対策を組むということはないですね」

――では透暉鷹選手にとって、この試合の意味とは何でしょうか。

「対戦相手どうこうではないです。河村選手が相手だから――ということはなくて。自分がどれだけ試合に向けて練習できたか。そして、今までやってきたことを試合で出せるかどうか。今後のことを考えたら、自分自身がどうするのかっていうほうが大事ですよね」

――確かに。1年のブランクは気にしていないとのことでしたが、初のバンタム級戦という点はいかがですか。

「実は……完全にバンタム級でやると決めていたわけではなかったんですよ」

――えっ!?

「まず一度バンタム級で試合をしてみる。バンタム級のリミットまで落とすことは問題なくて。でも落としたことで動きが悪くなっていたら、バンタム級で戦う意味はないですよね。正直、そう思っていました。でもフェザー級のベルトを返上して、バンタム級でもタイトルマッチが組まれて――」

――もうバンタム級でやっていかざるをえなくなったと(笑)。

「アハハハ。とにかく、まずはバンタム級で試合をしてみてから――という感じです。もちろんベルトを獲ったらバンタム級で防衛戦をしないといけませんし。ただ、この階級で戦うことに対して不安はなくて。まずはこの1年間、自分がやってきたことを試合で出す。だから次のタイトルマッチは、試合内容を見てほしいです」

――この1年間で何が変わってきましたか。

「やっぱり体が軽くなると、スピードも動きも全然違います。逆に体重を落としても、組み力や体幹などは変わっていませんね。それだけ動きが良いと、スパーリングでも自分から先にペースを作っていくことができているんですよ。そうなると自分はスタミナが落ちず、反対に相手が疲れてくる。だから体重を落としたことで、どんどん自分のレベルも上がっていると思います」

――反対に、通常体重から減らしていることでストレスはないですか。

「それは無いです。ちゃんと管理栄養士さんと相談しながら、何か食べないとか無理をしているわけではないので。好きなお菓子を食べることが減ったぐらいですかね(笑)」

――それは良かったです(笑)。では最後に、次の試合への意気込みをお願いします。

「1年振りの試合で、初のバンタム級戦です。手術をして試合ができない間も、たくさんの方にサポートしていただきました。そうして応援し続けている方たちに恩返しができるような試合を見せたいです。よろしくお願いします!」

■視聴方法(予定)
2023年12月24日(日)
午後1時15分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

■ 対戦カード

<ウェルター級KOPC/5分5R>
[王者] 林源平(日本)
[挑戦者] 住村竜市朗(日本)

<フライ級暫定王座決定戦/5分5R>
伊藤盛一郎(日本)
有川直毅(日本)

<バンタム級王座決定戦/5分5R>
河村泰博(日本)
透暉鷹(日本)

<ライト級次期挑戦者決定戦/5分3R>
粕谷優介(日本)
雑賀“ヤン坊”達也(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
沙弥子(日本)
V.V Mei(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
ジェニー・ファン(台湾)
SARAMI(日本)

<フェザー級/5分3R>
亀井晨佑(日本)
平田直樹(日本)

<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍(日本)
キム・サンウォン(韓国)

<フェザー級/5分3R>
Ryo(日本)
栁川唯人(日本)

<フライ級/5分3R>
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
松井斗輝(日本)

<71.5キロ契約/5分3R>
近藤有己(日本)
美木航(日本)

<バンタム級/5分3R>
田嶋椋(日本)
笹晋久(日本)

<ウェルター級/5分3R>
川中孝浩(日本)
佐藤生虎(日本)

<フライ級/5分3R>
眞藤源太(日本)
梅原規祥(日本)

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【Pancrase340】ヤン坊と挑戦者決定戦、粕谷優介「別にやりたくもないし、あのパンチは避けられない」

【写真】試合前は弱気一点張りの粕谷だが、ケージに入ると覚悟が決まるという (C)MMAPLANET

24日(日)に横浜市中区の横浜武道館で開催されるPancrase340で、雑賀“ヤン坊”達也とライト級KOPアキラへの挑戦権を賭けて戦う粕谷優介。
Text by Manabu Takashima

モチベーションは勝利後の子供たちとの記念撮影。そんな粕谷のMMA観は、タイトル戦線に戻ってきても何ら変わっていなかった。


――UFC後、パンクラス参戦から序盤は1勝4敗と黒星先行で厳しい状態でしたが、ここのところは3連勝で王座挑戦権を賭けて戦うまで復調しました。

「結果が出ていなかったときは、日々忙しいというのが一番でした。会社員をやりながら道場を経営して、試合に向けて調整する。そこに関して自分でも内心、『限界はあるよな』とは思っていました。道場も忙しく、仕事も忙しい。そうですね、限界かなと」

――限界を感じてもプロ格闘家を続けました。

「2年前にある日突然、格闘家ではなくて会社員であることに限界がきました。13年間働き、そこそこ責任のある立場だったのに会社を素通りして家に戻ってしまったことがあったんです。その日は休ませてもらったのですが、立場があるのにこれを繰り返してはいけないと思いました。

そのある程度の立場になったことで、仕事に対してモチベーションを保つことができなくなっていました。社長にも『ウィンカーを出したのに、会社に入れなかった。これはもう続けることはできないです』と説明をして。会社の方も相当に引き留めてくれましたが、もう行くことができなかったです」

――サラリーマンとしての収入をなくしても、道場でやっていけるということ算段は?

「う~ん、実際にやっていけるというのではなくて見込みがあるという状態でしたね。『なんとかなるかな』って。結果、仕事を辞めると単純に練習時間が増えて疲れも取れるようになりました」

――そこが好調の原因だと。

「まぁ、それだけが理由で勝てているのかは分からないですけど、シンプルに格闘技のことを考えている時間は増えました」

――プロ練習や出稽古は?

「やっていないです。時間がないので。会社員を辞めて時間が取れると思ったのですが、思いのほかパーソナル・トレーニングの予約が入ってきて」

――経営者として良いことですが、ファイターとしては以前と変わらないのでは?

「いえ、それが僕のやっているパーソナルは、は時代と逆行して『ゲロを吐くまでやらせる。優しくしないパーソナル』なんです。追い込みまくる(笑)。それなのに、なぜか受けてくれる人が多くて。パーソナルの時に僕自身も相当に体を動かしているので一石二鳥になっているのかもしれないです(笑)。

それだけで、何も新しいことをやっているわけではないので、結果が残せている理由は自分でも分からない。ガチスパーもやっていないですし、ずっと打ち込みばかりをしていて。ヘロヘロになるまで打ち込みをやる。逆にガチスパーをやっていないので、ケガがなくなったということはありますね。前回の試合は少しあったのですが……」

――では対策練習は?

「なんとなくやる程度です。結局、できることは限られてきてしまうので。くっついてバックに回る。それを確認する作業……ですね。ただ柔術は週に6度練習しています。試合のためでなく、子供たちとただ楽しくやっているようなものでも柔術の技術に関しては『よく、何もしらないでやっていたな』と以前の自分のことを思うようになりました。

それとヴァンガード柔術のレアンドロ・オカモト先生のところ……秦野には通っています。オカモト先生と生徒さんと2時間、バッチリと練習するためにその日だけはパーソナルはお断りしています。それも楽しいから行っているのですが――。

MMAのスパーリングは前回の試合前も、道場生と3回か4回やっただけですね。プロ練習のような強度の高いスパーリングは大事だと思います。でも、もう13年もやってきているので、そこはイイかなと。その分、柔術の練習で極められまくりますし。未だにエビすら、真っ当にできないので日曜日に子供と3人でやっています。柔術は強くなるためでなく、知らないことを教えてもらえるから楽しい。そうやって考えると、格闘技をやる楽しさを思い出したから、試合も戦おうと思えるようになったのかと」

――その結果の3連勝で、今回は挑戦者決定戦を戦います。

「まぁランキング的にはソロソロかとは思っていたのですが、如何せん……UFCから松嶋(こよみ)君、ISAO選手と4連敗をしたことは引きずってきました。あの4連敗を経験して、続けているということが一番自慢できることです。心は完全に折れていて、辞めたいとしか思っていなかったんです。でも、続けることができたので」

――UFCの負けの一つはアレックス・ヴォルカノフスキーが相手ですし。

「子供がUFCの凄さを理解できるようになり始めた時に『このメチャクチャ殴られているの、パパだよね』って言ってきて(苦笑)。勝った試合より、その負けが凄いと。子供たちは柔術を5年ぐらいやっているので、分かるようになったんですよね。『エビができていない』、『なんで足関節にいく?』とか『なんで、普通のフックスイープをしないの?』なんて言われています。勝ち負けでなく、そういうことを言ってくるんですよ。

でもちゃんと教えている通りに、自分も動かないといけないなって思わされます。キッズには一番安全なことを指導しているので、それは自分も同じじゃないかと。あと自分の子供は週に4日、柔術の練習をしています。土曜日は柔術と空手の2部練習。子供が週に4日やっているなら、選手としてではなく親として週に5度は練習しないといけないです。そして子供たちが頑張れという限りは、自分も頑張る。その頑張りが一番伝わるのが試合だから出ているんです。

だから試合に勝った後の記念撮影は、すぐに退場ってマイクで急かさないでもう少し時間が欲しいです(笑)。思い出創りなので、もう少し待ってくださいって。ただ試合をする限り勝ちにはこだわりますし、戦うからには強い人とやりたい。怖いからこそ、そこと戦わないと」

――結果、試合は嫌だと以前と同じことを口にする?(笑)。

「今日も会見でヤン坊選手と向き合って、嫌でした(笑)。別にやりたくもないし、あのパンチは避けられない。絶対に貰うので」

――組んでバックが勝利の方程式ですが、粕谷選手は打撃戦も展開します。

「まぁ、貰う覚悟というか殴られる前提で戦っているので」

――そこで怖さというのは?

「ケージに入ると覚悟は決まります。入るまでは殴られたくないし、ずっと寝技だけをやっていたい。でも、分かりやすく強いのはMMA。そうなると試合をするしかないですよね。殴られるのは嫌ですけど、けっこう殴られてきました。殴られることから逃げていると、勝てないです。で、そこで倒されてもそこまでの技量しかない。そうですね……勝ちたいですけど、道場で教えている人間としては勝ちも負けも両方を見せるしかない。ほんと、だから今はメチャクチャ辞め時かなって。キッズたちは『先生、結構強いぞ』と思ってくれている今こそ、そのタイミングなんじゃないかと」

――タイトル挑戦、ベルト奪取。そこから先に何を目指すのかと尋ねようと思っていたのですが……(笑)。

「でも、辞める辞める詐欺になりますよ(笑)。辞めたいけど、どうせやるんだろうって。結局、環境のせいにしたり諦めちゃう人が多い世の中なので、諦めないでズルズルやっている人もいるよ――というのを見てくれる人がいれば。別に勇気や希望を与えたいわけじゃない。見たかったら、見てくださいというテンションでしかないです。辞めないのは、他に頑張ろうと思えるものを探してもなかなか見つからないです。

こういうことを言うと『舐めている』とか『本気じゃない』って言われますけど、僕の中では全部本気でやっています。ずっと、本気でやってきました」

■視聴方法(予定)
2023年12月24日(日)
午後1時15分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

■ 対戦カード

<ウェルター級KOPC/5分5R>
[王者] 林源平(日本)
[挑戦者] 住村竜市朗(日本)

<フライ級暫定王座決定戦/5分5R>
伊藤盛一郎(日本)
有川直毅(日本)

<バンタム級王座決定戦/5分5R>
河村泰博(日本)
透暉鷹(日本)

<ライト級次期挑戦者決定戦/5分3R>
粕谷優介(日本)
雑賀“ヤン坊”達也(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
沙弥子(日本)
V.V Mei(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
ジェニー・ファン(台湾)
SARAMI(日本)

<フェザー級/5分3R>
亀井晨佑(日本)
平田直樹(日本)

<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍(日本)
キム・サンウォン(韓国)

<フェザー級/5分3R>
Ryo(日本)
栁川唯人(日本)

<フライ級/5分3R>
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
松井斗輝(日本)

<71.5キロ契約/5分3R>
近藤有己(日本)
美木航(日本)

<バンタム級/5分3R>
田嶋椋(日本)
笹晋久(日本)

<ウェルター級/5分3R>
川中孝浩(日本)
佐藤生虎(日本)

<フライ級/5分3R>
眞藤源太(日本)
梅原規祥(日本)

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ARAMI DEEP DEEP JEWELS MIYU MMA MMAPLANET o PANCRASE Pancrase340 RYO SARAMI V.V mei YouTube   キック キム・サンウォン ジェニー・ファン パンクラス ムハンマド・サロハイディノフ 亀井晨佑 伊藤盛一郎 住村竜市朗 佐藤生虎 修斗 沙弥子

【Pancrase340】12・24を読む 王座決定T準決勝でV.V Meiと対戦、沙弥子「苦行を乗り越える」

【写真】「ベルトは選ばれた人間にしか乗り越えられない苦行の先にある大事なもの」。こんな言葉でベルトへの道のりを語った。(C)TAKUMI NAKAMURA

24日(日)、横浜市中区の横浜武道館で開催されるPANCRASE340。女子アトム級王座決定トーナメント準決勝で沙弥子がV.V Meiと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

2022年9月にパンクラスでMMAに復帰し、その時から「アトム級のベルトが欲しい」と発言していた沙弥子。今回の王座決定トーナメント開催は、自分の発言がきっかけになったという自負と共に「私はパンクラスでチャンピオンになりたい」という強いこだわりがある。

準決勝の相手は進退をかけてトーナメントに挑む第3代DEEP JEWELSフェザー級王者のV.V Mei、逆ブロックからは第2代修斗女子世界スーパーアトム級王者のSARAMI×昨年12月に一本負けしているジェニー・ファンの勝者が勝ち上がってくるという茨の道が待っている。沙弥子は厳しい戦いだからこそ「このベルトには価値がある」と言う。


――7月のPANCRASE 335ではMIYU選手に判定勝利という結果でした。改めてあの試合を振り返っていただけますか。

「周りからも快勝を期待されていた試合で、『勝たないといけない』『試合をしなきゃいけない』という気持ちが強すぎて、気負いすぎていましたね。試合を楽しむということを忘れていた試合でした」

――昨年12月にジェニー・ファン選手に一本負けして以来の試合ということで、固くなってしまった部分もあったのでしょうか。

「MIYU選手は年下かつキャリアも下で、どう転んでもフィニッシュしなきゃいけない試合だったと思うんですよ。そこを考えすぎてしまい、自分でもどうしていいか分からなくて焦ってしまいました」

――再起戦ならではのプレッシャーがあったんですね。

「あとは相手がキック出身ということで、テイクダウンしたら暴れて立ってくると思っていたんです。それで打撃から組んで投げる、立たれても組んで投げる、暴れるところで一本取る、そういう展開をイメージして練習していたんですね。でもいざ試合になるとテイクダウンした後、スクランブルの攻防にならず、しがみつかれる時間が長かったんです。それが自分的には想定外だったので、余計に何やればいいんだろう?と混乱してしまって、何回もセコンドの(伊藤)盛一郎くんを見てしまったり……。自分らしさが出せない試合でしたね」

――どんな局面が訪れるか分からないことがMMAの奥深さだと思いますが、まさにそれを痛感した試合だったようですね。

「はい。かなり勉強になったし、自分の課題やできないことをジムで共有できたことが大きいです」

――そして今大会から沙弥子選手が待ち望んでいた女子アトム級王座決定トーナメントがスタートします。最初にこの話を聞いた時はどう思いましたか。

「やっと来たか!って気持ちと自分のために創られたベルトだという高揚した気持ちがありました。パンクラスのアトム級は選手が少なかったので、私が『ベルトが欲しい』と言わなかったら、参戦選手も増えないし、ベルトが創られることはなかったと思うんです。私は他団体に行くつもりはなくて、パンクラスでチャンピオンになりたかったから(ベルトが欲しいと)言うだけ言おうと。それがこういった形で実現してよかったです」

――記者会見のコメントを聞いていても、沙弥子選手は他の選手とは違う意気込みでトーナメントに向かっている印象です。

「他の選手は『ベルトが欲しくて、パンクラスからチャンスが来た』だと思うんですけど、私は『パンクラスに出て、パンクラスのベルトが欲しい』なんです。だからこのトーナメントへの気合いの入れ方は別格ですね」

――ずばりパンクラスのベルトが欲しい理由はなんでしょう。

「パンクラスは歴史がある団体ですし、ベルトもかっこいいですよね。グランドスラムに移籍して復帰する時にも自分から勝村(周一朗)さんに『パンクラスに出たいです』とお願いしましたし、一度はあのベルトを巻きたい。そのくらい強い想いがあります」

――なぜそこまでパンクラスが好きなのですか。

「団体の雰囲気がかっこいいというか渋いというか、独特のものがあるじゃないですか。あれが好きなんですよね」

――以前MMAPLANETで取材した亀井晨佑選手は「僕はパンクラスの硬派なところに誇りを持っている」と話していました。それに似た感覚でしょうか。

「まさにそうですね。その硬派な雰囲気が自分には合っていると思います」

――対戦相手のV.V Mei選手にはどんな印象を持っていますか。

「トータル的に何でも出来る、バランスのいい選手だと思います。あとはベテラン選手らしく、力の使い方や試合運びも上手いですよね。試合の中で相手に合わせて戦う時間もあれば、自分から積極的に戦う時間もある。伊達にキャリアが豊富で、色んな強豪と戦ってきた選手じゃないな、と。Mei選手と戦いたい選手もたくさんいる中で、自分が試合出来るのもうれしいですし、色んなことを学びたいです」

――トーナメントの準決勝であると同時に、今の沙弥子選手がトップファイターのV.V Mei選手に勝てるかどうかが試される試合です。そういう意味でもこの試合はターニングポイントだと思いますか。

「まさしくそう思います。私とMei選手のキャリアや経験の差は埋められないものなので、そこは気力と体力で対応します。色々と対策を練っていますが、いざ自分と向き合った時にMei選手がどんな戦い方をしてくるかは、その時にならないと分からないので、大まかな流れとイメージは持ちつつ、臨機応変な戦いもしようと思います。自分が想定していないことをやってくることも想定して、自分がやりたいことをやって勝ちます」

――決勝はどちらが上がってくると予想、もしくはどちらと戦いたいですか。

「誰が来ても勝たない限り、ベルトが手に入らないので、どちらが来ても誰が来ても勝ちます」

――キャリア的には準決勝・決勝ともに厳しい戦いが続くことになりますが、それも覚悟の上ですか。

「簡単に手に入ったら面白くないですからね。ベルトは選ばれた人間にしか乗り越えられない苦行の先にある大事なものなので、このくらい厳しくしてもらわないと。自分自身、この苦行を乗り越えないとベルトを巻く価値はないと思います」

――12月も色んなMMAの大会がある月ですが、沙弥子選手はどんな試合を見せたいですか。

「今回ベルトという大きな目標があって、ベルトを巻きたいという一心で、無駄な感情を捨てて練習することが出来ました。7月の試合からこんなに人は成長できるんだって姿を見せたいです」

2023年12月24日(日)
横浜市中区
横浜武道館
Pancrase340

■視聴方法(予定)
2023年12月24日(日)
午後1時15分~ U-NEXT 、PANCRASE YouTube メンバーシップ

■ 対戦カード

<ウェルター級KOPC/5分5R>
[王者] 林源平(日本)
[挑戦者] 住村竜市朗(日本)

<フライ級暫定王座決定戦/5分5R>
伊藤盛一郎(日本)
有川直毅(日本)

<バンタム級王座決定戦/5分5R>
河村泰博(日本)
透暉鷹(日本)

<ライト級次期挑戦者決定戦/5分3R>
粕谷優介(日本)
雑賀“ヤン坊”達也(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
沙弥子(日本)
V.V Mei(日本)

<女子アトム級王座決定T準決勝/5分3R>
ジェニー・ファン(台湾)
SARAMI(日本)

<フェザー級/5分3R>
亀井晨佑(日本)
平田直樹(日本)

<フェザー級/5分3R>
高橋遼伍(日本)
キム・サンウォン(韓国)

<フェザー級/5分3R>
Ryo(日本)
栁川唯人(日本)

<フライ級/5分3R>
ムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)
松井斗輝(日本)

<71.5キロ契約/5分3R>
近藤有己(日本)
美木航(日本)

<バンタム級/5分3R>
田嶋椋(日本)
笹晋久(日本)

<ウェルター級/5分3R>
川中孝浩(日本)
佐藤生虎(日本)

<フライ級/5分3R>
眞藤源太(日本)
梅原規祥(日本)

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【Pancrase340】12・24を読む 伊藤盛一郎「ベルトは強さの証明と自分の可能性を広げてくれるもの」

24日(日)、横浜市中区の横浜武道館で開催されるPANCRASE340で、伊藤盛一郎がフライ級暫定王座決定戦で有川直毅と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

ZST・RIZINでの戦いを経て、昨年12月からパンクラスに定期参戦している伊藤。一時は3連敗と結果が振るわない時期もあったが、現在は4連勝と絶好調で、試合結果もすべてフィニッシュによるものだ。キャリア初期に勢いのままに巻いたZSTフライ級のベルトと違い、パンクラスのベルトは連敗や怪我を乗り越えて巡ってきたチャンス。伊藤にベルトへの想いを訊いた。

――パンクラス3戦目でタイトルマッチが決まった伊藤選手です。練習後のインタビューですが、コンディションも良さそうですね。(取材日は11日)

「今回は怪我もなくて、本当に調子がいいので、直前で体調を崩したりしないように気をつけています」

――最近は怪我があって試合をすることもあったのですか。

「パンクラスの2試合はどちらも試合前に怪我をしていて、それも結構とてつもない怪我だったんですよ(苦笑)。勝村さんと相談して「試合の何日前までに状態を見て、試合するか欠場するかを決めよう」と話すくらいの状態で。結果的にどちらも勝つことが出来てラッキーでしたね」

――パンクラスでは2連続一本勝ちだったので、そんな状況で試合をしていたのは意外でした。

「試合当日は動けたんですけど、MMAのスパーリングは一カ月近くできなかったですし、ぶっつけ本番のやるしかないと覚悟を決めてやりました」

――伊藤選手は2020年11月の浜本”キャット”雄大戦から4連勝していますが、ご自身では何が要因だと思っていますか。

「浜本戦の時から『これで結果が出なかったら最後』『ここで負けたら終わり』と思うようになって、試合当日の気持ちや覚悟が変わったと思います。あとはグランドスラムもプロ選手が増えて、フライ~バンタム級が多いんですよ。練習仲間が増えたというのも大きいですね」

――浜本戦は3連敗で迎えた一戦でしたが、当時はどんな心境で試合に臨んだのですか。

「連敗はしてたんですけど、ボロ負けという感じではなくて、ワンミスでやられた、惜しいところで勝てないという試合だったんです。だから勝ち方が分からないというか、勝てるのに勝てない。そんな時期でしたね。そういう中でも浜本戦はパンチで倒してパウンドで勝てて、漠然とですが勝つ時ってこうやって勝ってたよなという感覚を思い出しました。それからは試合前に怪我もあったので、試合をやると決めたらやるしかないだろと腹をくくって思い切り戦えたのがよかったと思います」

――このタイミングでタイトルマッチが決まったことをどう感じていますか。

「去年12月にパンクラスに初参戦して2位の上田将竜選手に勝って1位になったのですが、すぐタイトルマッチが組まれることはないと思ったんです。それで6月に秋葉太樹選手に勝てたので、僕としては12月にタイトルマッチをやりたいと思って準備をしていました」

――対戦相手の有川選手にはどんな印象を持っていますか。

「有川選手とは同い年で一緒に練習したこともあるし、仲がいいんですよ。有川選手がグラジエイターで試合が決まった時には『頑張ってよ』と声をかけたり。ちょっとやりづらさもありますけど、試合は試合としてきっちりやります。対戦相手としては何でもできるけど、どちらかというと打撃の選手という印象ですね」

――有川選手もZSTで戦っていた時期がありますが、その相手とパンクラスのベルトを争うのは不思議な感覚もありますか。

「僕自身、パンクラスの会場に行くことは多かったんですけど、ずっとZSTで試合していたこともあって、自分がパンクラスで試合をするイメージがなかったんです。だから初めてオファーを受けた時も『ああ…パンクラスで試合やるのか』みたいな不思議な感じでした」

――伊藤選手としてはZSTが開催されなくなり、次の主戦場を探していた部分もあったと思います。そこでパンクラスを選んだ理由はなんですか。

「なかなかRIZINで試合が決まらなかったり、幾つか他に試合のオファーもあったんですけど、自分的にはあまりピンと来るものがなくて。そんな時にパンクラスから声をかけてもらって、砂辺(光久)さんや周りの先輩たちがパンクラスのチャンピオンになっているので、自分も同じベルトを巻きたいと思うようになりましたね」

――ベルトがかかった試合は2度目だと思いますが、2015年にZSTでベルトを巻いた時と今回では心境が違いますか。

「あの時はデビューしてからポンポンポン!と勝って、21歳でチャンピオンになったんですよ。今思うとクソ弱かったです(笑)」

――クソ弱くてチャンピオンにはなれないでしょう。

「実は僕アマチュアの試合に出たことがなくて、代打出場でいきなりSWAT!でデビュー戦が組まれたんですよ。そこでいい勝ち方をして、どんどん試合が決まっていてタイトルマッチという流れだったんです。それからRIZINに出て、怪我で試合が出きないこともあったし、3連敗も経験したし、色んなことがあったんですけど、またこうして勝ちを重ねて掴んだタイトルマッチのチャンスなので、ZSTでベルトを巻いた時とは重みが違いますね」

――怪我をしていた時期や勝てなかった時期に心が折れそうにはならなかったですか。

「しょっちゅう思っていましたよ(苦笑)。怪我で試合ができないし、試合をやっても勝てないし…………ぶっちゃけ格闘技が好きじゃない時期もありましたよ」

――それが変わったのは何がきっかけだったのですか。

「仲間の成長と活躍を近くで見ていたのが大きいですね。自分が試合するときは『どうにでもなれ!』って感じでやるんですけど(笑)、仲間たちには絶対に勝ってほしいって思うんですよね。みんな試合が決まってから、どういう気持ちで練習や相手と向き合って過ごしているかを知っているから、自然にそういう気持ちになるんです。それで実際に勝つ姿を見ると、やっぱり格闘技はいいなと思うし、自分も負けられないという刺激にもなるし。そうやって自然に気持ちが上向きになっていきましたね」

――今の伊藤選手にとってベルトはどんな存在ですか。

「やっぱりベルトは強さの象徴だし、団体から『あなたは強いです!』と認められた証だと思うんですよ。ただ勝ち続けているだけでは『俺って本当に強いのかな』と疑問になることもあるけど、ベルトを巻くことができたら、そうじゃない。特にパンクラスは30年という歴史と伝統があるベルトなので、そのベルトを巻いて自分の強さを証明したいです」

――そのベルトの先、2024年はどんな目標を持って戦っていきたいと思いますか。

「今はあんまり考えてないです。これからどんな目標を持って戦っていくかは分からないですが、フライ級キング・オブ・パンクラシストになることはすごく大事だと思うんですよ。ベルトは強さの証明であり、自分の可能性を広げてくれるもので、僕は決して残りの格闘技人生は長くないと思っているので、その格闘技人生をいいものにするためにも、絶対にベルトは欲しいです」

――フライ級は国内外の様々な団体で活躍している選手がいますが、他の選手の試合を見て刺激になりますか。

「はい。先日もUFCで平良達郎選手がKO勝ちしていて、僕は日本を代表として海外で戦っている選手たちがかっこいいと思うし、海外で試合にも興味はあります。でもそれもすべて次の試合で勝たないことには先が開けないので、今はパンクラスのベルトを巻くことしか見ていないです」

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IMMAF MMA MMAPLANET NEXUS o PANCRASE Pancrase340 YouTube チャンネル パンクラス ボクシング ムハンマド・サロハイディノフ ライカ 井村塁 伊藤盛一郎 住村竜市朗 佐藤生虎 川中孝浩 有川直毅 村山暁洋 松井斗輝 林源平 河村泰博 田嶋涼 笹晋久 美木航 藤田大 近藤有己 透暉鷹

【Pancrase340】横浜武道館大会の追加対戦カード発表。透暉鷹がバンタム級暫定王座戦へ

【写真】会見はYouTubeで中継(C)MMAPLANET

15日(水)、都内にて12月24日(日)に横浜武道館で開催されるPANCRASE340の追加対戦カード発表記者会見が行われた。
Text by Shojiro Kameike

会見は1部と2部に分かれ、パンクラスのYouTube公式チャンネルでも中継されている。今回の記者会見で発表されたのは次の7カードだ。

ウェルター級KOP選手権試合:林源平×住村竜市朗
バンタム級暫定王者決定戦:河村泰博×透暉鷹
フライ級暫定王座決定戦:伊藤盛一郎×有川直毅
フライ級:ムハンマド・サロハイディノフ×松井斗輝
バンタム級:田嶋涼×笹晋久
71.5キロ契約:近藤有己×美木航
ウェルター級:川中孝浩×佐藤生虎


バンタム級転向のために保持していたフェザー級のベルトを返上していた透暉鷹が、転向初戦で暫定ながらタイトルマッチに挑む。対戦相手は現NEXUS王者であり、今年9月に井村塁をギロチンで秒殺してランキング1位に昇ってきた河村だ。透暉鷹にとっては2階級制覇、河村にとっては2冠王者を目指す戦いとなる。

ウェルター級は今年6月に村山暁洋を判定で下し、新王者となった林源平に住村竜市朗が挑む。野球のヘルメットを被って会見に臨んだ住村は、ややスベり気味――しかしこれが、関西特有のスベり芸なのか。ともあれ、右主体のストライカーだった林は村山戦で鋭い左ジャブでアウトボクシングを展開。一方の住村も「塩漬け上等」と言いながら9月の藤田大戦は怒涛のパウンドアウトと、新しい一面を見せ続けている両者だけに、どのような展開になるか楽しみだ。

また、近藤有己が71.5キロ契約で、これが約7年ぶりのMMAを戦う美木航を迎え撃つことに。「2年ぐらい前から試合用の練習をしていた」という美木は、これがパンクラス初参戦となる。さらにIMMAF世界王者で、9月にパンクラスでプロデビューしたサロハイディノフと、プロデビューから6連勝中の松井斗輝が対戦することも決定している。

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MMA MMAPLANET o PANCRASE Pancrase334 パンクラス 伊藤盛一郎 海外 秋葉太樹 鶴屋怜

【Pancrase334】ノンストップ・アタック! 伊藤が腕関節→パウンド→RNCで秋葉を仕留める

【写真】伊藤のパウンドが強烈で、的確。一瞬にして秋葉の表情が変わっていた (C)MMAPLANET

<フライ級/5分3R>
伊藤盛一郎(日本)
Def.1R4分39秒 by RNC
秋葉太樹(日本)

体勢を低く構えた秋葉に、伊藤がダブルレッグで飛び込んだ。立ち上がる秋葉を、伊藤がボディロックからケージに押し込む。ヒザを突き上げながらグラウンドに持ち込もうとする伊藤は、離れて立ち上がった秋葉を再びケージに押し込んでいく。左腕を差し上げていた伊藤だが、ここで離れた。右スピニングバックフィストから距離を詰めた伊藤が組みつく。しかし秋葉がトップを奪った。

伊藤が下から右カカトを叩きつける。さらに下から伊藤が仕掛けようとしたところで秋葉が立ち上がった。足を捌いてパスを狙うも、伊藤が下からパンチを叩きつける。さらに秋葉のパスに合わせて腕十字を狙い、外したもののトップに回った。秋葉の左腕を抑えながら右腕を抱え、アームロックを狙った伊藤。秋葉は腕を抜き、伊藤の左足へヒールフックを仕掛ける。

これを凌いだ伊藤がマウントを奪取し、パウンドを連打する。秋葉はスクランブルに持ち込むも、スプロールした伊藤がパンチを連打しながらRNCに移行してタップを奪った。

伊藤はこれでパンクラス参戦後、2戦ともRNCで勝利を収めた。「しっかりランキング1位の実力を見せようと思いました。パンクラスに来たからにはチャンピオンを目指して頑張っています。今チャンピオン(鶴屋怜)は海外で頑張っていますけど、僕も年内にベルトを狙いたいです」とアピールした。


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MMA MMAPLANET o UNRIVALED UNRIVALED02 伊藤盛一郎 野村優眞

【Unrivaled02】アクロバチック柔道。投げと受けで野村と伊藤が魅せまくり、野村が伊藤を下す

【写真】意地の一本狙いの野村に対し、この逃げ方。投げられる力を利用したアクロバチック柔道を伊藤が見せた(C)MMAPLANET

<フェザー級/15分1R>
野村優眞(日本)
Def.4-マイナス2
伊藤盛一郎(日本)

試合早々、伊藤が飛びつき十字を狙い、そのままに下から極めを狙う。ここを防がれるとスタンドに戻るが、マイナス2Pとなり野村が試合をリードする。

伊藤はさらに払い腰を仕掛け、耐えた野村がバックに。すぐさま起き上った伊藤は、ポイント無視の一本狙いか。

柔道なら野村も負けていない。鋭い対落としを仕掛けると、伊藤は腹ばいになって背中をつかせない。

伊藤は引き込みから三角狙いも、腕を引き寄せた野村が許さない。ここでマイナス4Pなった伊藤は、パスを狙われ下からニンジャチョークを仕掛ける。タイトに絞まりかけたが、サイドに回り込んだ野村が解除し、パス。

バックに回り両足をフックして2+2で4Pを加算、マイナス分と合わせて8Pの大量リードを奪う。

伊藤は胸を合わせて、トップを取り2Pを挽回する。野村はラペルを取り、スクイットガードからワームライダーへ。

伊藤は飛び込んでキムラを仕掛ける。そのアームロックの支点を利して、上を取り返した野村。伊藤も続いてスタンドに戻る。狙いも、そのロックを支点に上を取り返した。

野村はシングルからレッグリフト、同時に大内刈り。伊藤はここも腹ばいで耐える。立ち上がった伊藤が飛びつき三角も決まらず、再びマイナスで2Pを失う。

ここから道着ルールのみ一本勝ちがあるアンライバルド、柔道出身の野村が背負いを2度見舞うものの伊藤が頭をついて跳ね上がるように耐え、決して背中から落ちない。しかも腹ばいになった野村に、先に起き上がってバックに回るという信じがたい動きを見せる。下ろされ、腕十字も防がれスランブルから立ち技に戻る。

野村はここで足払いを決めたが、伊藤は半身で受け身を取るように投げられると同時に反転して起き上る。

さら体落とし、背負いと投げられつつもその瞬間に側転をするように回避を図る伊藤。

ついにはダブルレッグから朽木倒しのようにテイクダウンを仕掛けると、今度は野村が腹ばいで耐え、最後は自ら背中をつけてガードを取ったところで時間に。

2点を挽回した伊藤だったが、野村が逃げ切りフリースタイル柔道かアクロバチック柔道かという戦いを制した。


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MMA MMAPLANET o UNRIVALED UNRIVALED02   アンドリュー・タケット イゴール・タナベ ウィリアム・タケット コンバット柔術 ジェセフ・チェン ジョセフ・チェン ムリーロ・タケシ・ソウザ 上久保周哉 伊藤盛一郎 吉岡崇人 岩本健汰 河名マスト 猿田洋祐 石黒翔也 須藤拓真

【Unrivaled02】岩本健汰&タケシ・ソウザと対戦。あっかるいウィリアム&アンドリュー・タケット兄弟

【写真】19歳と21歳、実はヘアスタイルと髭の違いだけで2人はそっくり (C)MMAPLANET

明日26日(日・現地時間)に東京都世田谷区のiTSCOMA STUDIO&HALL二子玉ライズで開催されるUnrivaled02。

国内トップ柔術家、グラップラー、MMAファイターだけでなくグラップリング先進国=米国からウィリアム&アンドリューのタケット兄弟、ジェイコブ・カウチが参戦する。

世界のトップが垣間見える大会に出場し、それぞれが岩本健汰、そしてムリーロ・タケシ・ソウザと対戦するウィリアム&アンドリューのタケット兄弟にインタビュー。心の底かあっかるいグラップラー兄弟の夢であった日本で戦う直前の心境と、これからについて尋ねた。


――今日は東京でセミナーを行いました。他の取材で終了間際のフリースパーしか拝見できなかったのですが、セミナーには満足できましたか。

ウィリアム 最高だったよ。グレートだった。本当に熱心な人達が来てくれたから。

アンドリュー そんな皆が楽しそうに、そして嬉しそうだったから僕らも凄くハッピーだよ。日本は最高だ。みんな規律を持って生きていて、凄く親切で。本当に成熟した国民性なんだって驚かされた。

ウィリアム 岩国にも行ったけど、本当に素晴らしい経験ができた。皆が大歓迎してくれたよ。

──それは嬉しい限りです。そしてもう3日後に試合は迫ってきました(※取材は23日に行われた)。

アンドリュー 日本からオファーがあって、凄くエキサイトした。僕は日系ブラジリアンのムリーロ・タケシ・ソウザと戦うけど、彼にとって日本はホームと言って良いだろう。きっと戦いやすいはず。でも日本までやってきて、色んな経験ができた僕らの方が気持ちは盛り上がっているよ。当然、自信を持って試合に臨む。

ムリーロの試合をチェックしたけど、全て道着の試合だった。彼がどれだけノーギで戦えるのは分からないままだよ。ただし、道着であれだけできる選手はノーギだってできる。ただ、ノーギに転用すれば良いだけだから。彼はヘビーガードプレイヤー。テイクダウンからパスという展開で盛り上がるに違いないよ。彼も常に一本を狙っている。僕も同じだ。絶対にエキサイティングな試合になる。自分の力をより出せるゲームプランを持ち、実行できた者が勝つだろうね。

──ではウィリアムは対戦相手の岩本健汰選手のことをどのように思っていますか。

ウィリアム ケンタはとても落ち着いていて、我慢強い試合をする選手だ。絶対にタフな試合になる。楽しみでしょうがないよ。ケンタはADCCでは同じ階級で、オセアニア・アジア予選に出ていたから、その時から試合をチェックしてきた。ジョセフ・チェンを始めとする強い選手に勝って本戦出場を決め、テキサス州オースチンのBチームで練習するようになった。

僕のジムから20分しか離れていない(笑)。だから、米国での彼の試合も見ているよ。何よりノーギワールドでアンドリューと戦っているからね(アンドリューが2-2、アドバン5-3で勝利)。

岩本に勝ち、ジェセフ・チェンと1勝1敗。スーパーな19歳

アンドリュー だからウィリアムには、個人的にケンタが如何に強いかをアドバイスできている。僕も2人の試合を見るのが楽しみなんだ。

──では引き込みに-2Pとなるルールセットはどのように感じていますか。

アンドリュー それにコントロールから逃れるとポイントを挽回できる。このポイントがあることで、ハイペースな試合になるだろう。 

ウィリアム 引き込んで、膠着すると面白くない。テイクダウンやスクランブルで動きが多くなるし、見ている人にとっても良いルールだ。それだけでなく、実際にグラップリングを戦う人間にも良いルールになっているよ。

──私の個人的な印象なのですが、サブオンリーは上の選手がリバーサルを耐えることが少なく、下に簡単になるので柔術の一つの見所であるスイープの攻防が面白くなくなる一面があるかと。

アンドリュー その通りだよ。そして、このルールはストールを許さない。立たれるとポイントを挽回されるから、トップでもずっとプレッシャーを掛ける必要があるしね。実はサブオンリーのストールって、トップの人間のホールディングで生まれることが多い。だからトップで戦い続け、ポイントを取り続けて、例え1P差でも最高の勝利が手にデキる──そんなハイペースマッチがしたい。

ウィリアム 僕は本当にエキサイティングな試合をして、皆に喜んでもらいたい。そして、8歳から13年間、ずっとハードな練習をしてきた成果を見せたい。8歳の時から日本に来ることが夢だったんだ。多くの練習、たくさんの試合を経験した。夢だった日本で、今の僕ができるベストを尽くしたい。日本のファンの期待に応えたいと思っている。

──ADCCイヤーの前の年に岩本選手と戦うことは、どのような意味がありますか。

ウィリアム 凄く良い経験になる。手強い選手と戦うことで、自分も成長できるから。ルオトロ兄弟と戦った時、良い試合ができなかった。でも、あの試合を経験してずっと強くなれたんだ。負ける度に強くなれる。それって、強い選手と戦う経験が僕を強くしてくれるってことで。だからケンタもそうだし、同じ階級の強い選手と戦うことは僕を助けてくれていると考えている。ここで良い試合をしたいし、この試合をすることで僕はより強くなれると思っている。

アンドリュー 兄ちゃんの言う通りだ。ここでの経験は絶対に将来に役立つ。それに試合をするだけでなく、日本で経験できた全てが僕のためになる。だからこそ全力を尽くして皆が気に入る試合をして勝ちたい。 

──この試合を経て、今年はどのような活動をしていこうと考えていますか。

アンドリュー 次はコンバット柔術ワールドに出るよ。

──おお、それは楽しみです。

アンドリュー アンライバルドだと引き込むと減点だ。コンバット柔術だとスラッピングが待っている(笑)。これって、同じ発想だと思うんだよ。コンバット柔術で戦うことも凄く楽しみだよ。

まだ21歳のウィリアム。でも、しっかりとアンドリューに対してお兄ちゃんでした

ウィリアム 僕はADCCオープン、そしてADCCトライアルかな。

──掌底有りは戦いたくない?(笑)。

ウィリアム アハハハ。時が来ればね。体重、ファイトマネー全てを考えて決めたいと思う。ただし、今はADCCトライアルに向けて色々な場所に行ってしっかりと練習したい。実はペンシルバニア州立大で、フォークスタイルレスリングの練習に参加する予定なんだ。そんな風に柔術とは違う文化圏の人達、競技者から学びたい。そして、どんな試合でも対応できるようになりたいんだ。そうやって練習しつつ、WNOかADCCオープンで試合経験を積んで行こうと思う。

■視聴方法(予定)
2月26日(日)
午前11時00分~ スポーツブル

■ UNRIVALED02対戦カード

<ミドル級/15分1R>
ウィリアム・タケット(米国)
岩本健汰(日本)

<90キロ契約/15分1R>
ジェイコブ・カウチ(米国)
イゴール・タナベ(ブラジル)

<ウェルター級/15分1R>
アンドリュー・タケット(米国)
ムリーロ・タケシ・ソウザ(ブラジル)

<バンタム級/15分1R>
猿田洋祐(日本)
石黒翔也(日本)

<フェザー級/15分1R>
野村優眞(日本)
伊藤盛一郎(日本)

<フェザー級/15分1R>
上久保周哉(日本)
吉岡崇人(日本)

<ライト級/15分1R>
河名マスト(日本)
須藤拓真(日本)

<ライト級/15分1R>
樋口翔己(日本)
村山大介(日本)

<バンタム級/15分1R>
ハワード颯真(日本)
時任飛鳥(日本)

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【UNRIVALED02】死の恐怖を乗り越えたイゴールがカウチと。上久保参戦、河名マスト✖須藤拓真も決定

【写真】イゴールがカウチ、上久保✖吉岡など4試合の追加カードがあった(C)MMAPLANET&ONE

13日(月)、UNRIVALED実行委員会から26日(日)に東京都世田谷区のiTSCOM STUDIO & HALL 二子玉ライズで開催されるUNRIVALED02の追加カードの発表があった。

ウィリアム・タケット✖岩本健汰、石黒翔也×猿田洋祐、野村優眞×伊藤盛一郎戦に加え、ムリーロ・タケシ・ソウザ、須藤拓真、吉岡崇人、河名マスト、イゴール・タナベ、アンドリュー・タケット、ジェイコブ・カウチらの出場がアナウンスされていた同大会だが、その出場予定選手のカードが──新たな参戦選手の発表とともに決まった形だ。

まず90キロ契約でジェイコブ・カウチ✖イゴール・タナベ、ウェルター級でアンドリュー・タケット✖ムリーロ・タケシ・ソウザ、ライト級で河名マスト✖須藤拓真、そしてフェザー級で上久保周哉✖吉岡崇人が決まった。


上久保はONEとの契約が満了し、マッチング期間も終了したことでUFCとの契約を目指すなか、Unrivaled初参戦が決まった。この翌週、3月5日にはFINISH10で石橋佳大と戦うことも既に発表されており、2週連続でグラップリング戦を戦うこととなる。

マット&ポイント制のUnrivaledでの黒帯柔術家との対戦から、ケージ&サブオンリーで元MMAファイターとのマッチアップと同じグラップリングとはいっても相当に性格は違ってくる。それでも上久保はかすかに笑みを浮かべながら「やることは同じです」という一言を言い放ちそうだ。ともあれ打撃がなくとも、実戦の場に上久保が戻って来ることは嬉しい限りだ。

上久保と同様にMMAを戦うイゴールは、ここでカウチという新生との戦いを迎える。「巌流島でメルビン・マヌーフと戦うことで、人生で一番の恐怖を感じ克服した」と言うイゴール。決してグラップリングを軽視するわけでなく、命を落とす怖さのないなかで世界の一流グラップラーと組み技戦を楽しむ姿勢で挑む。

MMAではフェザー級のバンタム級の河名と須藤の戦いも興味深い。ケージグラップリング& ポイント制のプログレス・フォークスタイルグラップリングで河名は自分の戦いを貫き森戸新士にポイント勝利。一方、同ルールの森戸戦で須藤は自らの戦いを続けポイント負けを喫した。河名は組んでも相手のグラップリングゲームに付き合わずトップを取ることで勝利し、須藤は下になってからの足関節の仕掛けを森戸に凌がれて敗れた。

アンライバルド・ルールは下になるとマイナス2Pで、抑え込まれた形から脱出して立ち上がると1Pを挽回できる。とはいえ抑え込んでくれば須藤も、足関節に限らず柔術で攻めることも可能だが、河名はここでタイトな寝技をするとは思えない。立ち技でも飛びつき系や引き込み系の技をセットできる状態で、河名が組むことがあるのか。その辺りのルールの使い方が、両者の技量以上に勝敗を争う鍵となりそうだ。

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【UNRIVALED02】アンライバルド再始動はウィリアム・タケット×岩本健汰から。カウチも初来日

【写真】ポイント有り、アグレッシブかつギリギリのポイントメイクが見られるか(C)CLAYTON JONES & SATOSHI NARITA

26日(木)、UNRIVALED実行委員会から2月26日(日)に東京都世田谷区のiTSCOM STUDIO & HALL 二子玉ライズでUNRIVALED02の開催とカード発表があった。

テイクダウンP有り、引き込み減点の全局面グラップリング・イベント=UNRIVALEDの第2回大会が2021年11月以来、1年3カ月ぶりにスケールアップ――いや、当初の予定通りコロナの入国制限の撤廃を受けて海外大物グラップラーを招聘して行われる。

その海外大物グラップラーとはウィリアム・タケット、アンドリュー・タケット、そしてジェイコブ・カウチの3選手だ。


ウィリアム・タケットは10代の頃からFight to Winで注目され、2021年3月にはマニュエル・ヒバマーをヒールで粉砕。同大会10勝目を挙げると、Third Coast Grappling、WNOと戦うステージを上げ、ADCC2022米国西海外予選のウィナーとなった。

しかし、世界大会ではマテウス・シュゼシンスキの前にまさかのストレートフットロックで1回戦負けに。そのタケットの再起戦の相手は、同じくADCC世界大会77キロ級にエントリーし、初戦で大健闘の末JTトレスに敗れた岩本健汰だ。

B-teamで出稽古を行い、MMAからグラップリング一本に原点回帰した岩本。先のGladitoar020で組まれたプログレス・フォークスタイルグラップリング・ウェルター級王座決定戦で森戸新士を圧倒し、腕十字で王者に就いたジョゼフ・チェンを昨年のADCCオセアニア&アジア予選準決勝で、延長戦で下していることで、岩本は新ためて国内では頭抜けた存在であることを印象付けた。

気になるのは両者の試合がミドル級(83.9キロ)で実施される点だ。1年前までMMAでは65キロで戦っていた岩本が、この体重設定では何キロに調整するのか。いずれにせよタケットと岩本は新・足関時代からレッスルアップ&パスの時代へ移った史上最強の世界標準グラップリングを見せてくれることは間違いないだろう。

この他、石黒翔也×猿田洋祐、野村優眞×伊藤盛一郎という柔術家×MMAファイター対決なども決定しているUNRIVALED02にはムリーロ・タケシ・ソウザ、須藤拓真、吉岡崇人、河名マスト、イゴール・タナベ、矢野トミーらが出場することも明らかとなっている。

一番の注目はやはりジェイコブ・カウチだろう。カウチは廃コインランドリーの建物にマットを敷いた道場に寝泊りし、練習漬けの日々を送っていた組技集団=デイジー・フレッシュことペディゴ・サブミッション・ファイティングに所属している。ホドリゴ・バギの黒帯ヒース・ペディゴの指導の下、茶帯時代にWNOミドル級Tに出場し、ロベルト・ヒメネスをヒールで下し一躍注目を集めるようになった。

昨年のノーギワールズを制して、黒帯になったカウチの対戦相手が誰になるのか。続報が気になるUNRIVALED02は、FITE TVでの中継が決まっており、当日にはアマチュア大会=ALTANAも開かれる。

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