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【RIZIN48】キム・スーチョル解剖─02─最強の兄弟子イ・ユンジュン「スーチョルが負ける可能性は…」

【写真】病に倒れ、僅かキャリア13戦11勝2敗で引退を強いられたイ・ユンジュンはスーチョルのまさにブレインだ(C)MMAPLANET

29日(日)、埼玉県のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN48で、キム・スーチョルが井上直樹とRIZINバンタム級王座決定戦を戦う。
Text by Manabu Takashima

RIZINを舞台にその実力を日本のファンに見せつけるスーチョルだが、彼にはイ・ユンジュンという欠かせない兄弟子が存在している。元Road FCバンタム級王者イ・ユンジュンは、KTTからコリアンゾンビMMAを経てRoad Gym Wonju=Team Forceに合流し、若き日のスーチョルと切磋琢磨しあった。

技術的には明らかにスーチョルより優れていたユンジュン。病により絶頂期を迎える前に現役生活から身を引くことになった悲運はファイターは、スーチョルのRIZIN及びRoad FCでの躍進に欠かせないキーパーソンであることは間違いない。

MMAPPLANETではこの兄弟子を現地取材──キム・スーチョル徹底解剖第2弾イ・ユンジュン編をお伝えしたい。


──個人的にイ・ユンジュンこそK-MMA史上、一番のウェルラウンダーだったと思っています。同じバンタム級にはキム・スーチョルがおり、スーチョルはユンジュンと比べる荒くて勢いのある選手でした。そんなスーチョルのことをユンジュンはいつ頃から知っていたのでしょうか。

「もともと2人ともウォンジュ出身なので高校生の時から知っていました。違うジムだったのですが、キム・スーチョルというもの凄く強い子がいるということを聞いていました」

──4歳年下のスーチョルのことを高校生の時から知っていたのですね。

「ハイ、その頃から知っていましたね。彼がジョン・ムンホン代表の下で練習をしていて、自分はゴンクウォンユスル(空拳柔術)を習っていた頃ですね」

──デビューの年も同じですが、ユンジュンがKTTから独立したジョン・チャンソンの指導を受けてRoad FCで戦うようになった時にはスーチョルは、既にONEを舞台に海外でキャリアを積んでいました。やはりジムの力の差というのはあったと思いますが、同じバンタム級で年下の同期のシンガポールにおける活躍をどのように感じていましたか。

「当時、自分はまだRoad FCでデビューしたばかりの選手で、ONEで活躍していたスーチョルは自分よりずっと良い選手、素晴らしい選手だと思っていました」

──ちょっと変わった人間だなとは(笑)。

「まだ親しい仲ではなかったのですが、若いのにハゲているのが印象的でしたね(笑)」

──アハハハ。その後、ユンジュンがRoad FCバンタム級王者になり、スーチョルがONEから戻ってきた時に、日本を凌駕しつつあった韓国のMMAはこの両者が担って行くと感じました。そして、この2人が戦えばどのような試合になるのだろうと。当時、スーチョルのことはライバル視していたのでしょうか。

「スーチョルと戦ったらどうなるのか。そこは、本当に良く考えていました。打撃戦だと自分が少し有利で、レスリングになると互角。なので、かなり面白い試合になるんじゃないかと想像はしていました」

──打撃は自身の方が上というのは、当時のスーチョルは粗かったということでしょうか。

「当時を思い出すと、スーチョルの打撃はテイクダウンを取るための打撃でした。対して自分の打撃はキックボクシングを取り入れたダメージを与える、相手を倒す打撃でした」

──つまりは自分の方が強いと思っていたわけですね(笑)。

「もちろん。あの時はそう思っていました(笑)」

──Road FCではユンジュンがチャンピオン、スーチョルは海外勢と戦い再び国外を目指す。そのような構図だったと記憶していますが、両者が戦うというプランは存在していなかったのでしょうか。

「そうですね、自分ももうジョン・ムンホン代表に弟子入りして一緒に練習をするようになっていましたからね。ジョン代表が2人を戦わせることはないだろうと、スーチョルとも安堵していました。あの時は、もう同じチームのチームメイトでしたからね」

──いつ頃から練習を一緒にするようになっていましたか。

「自分がコリアンゾンビのジムを追い出されたのは、27歳の時でした。アハハハハ。ちょうど10年ぐらい前ですね」

Road FCフェザー級王者チェ・ムギョムとのチャンプ・チャンプでも勝利していたユンジュン

──タイトルを獲得したイ・ギルウ戦(2014年12月)。

そしてフェザー級王者とのスーパーファイト、チェ・ムギョム戦(2015年5月)の頃はもう一緒に練習していた?

「その通りです」

──対戦することがないなら、互いが強くなるために最高のトレーニングパートナーだったわけですね。

「親しいチームメイト。もう兄弟のようでしたね。自分自身、練習一本槍の生き方をしているつもりでしたが、スーチョルは練習一本鎗の上のレベルをいっていました」

──スーチョルの練習量はやはり尋常でなかったのでしょうか。

「あの時の自分の体力、スタミナはスーチョルから遅れを取っていました。スーチョルは練習量が半端でないので、そこは敵わなかったです」

──スーチョルも植毛をして、髪の毛が増えてきたころですね(笑)。

「ハゲているのは、男性ホルモンが溢れ出ているからという話がありますが、キム・スーチョルは確かに男性ホルモンの塊でした(笑)」

──スーチョルのことをハゲといえる人は、そうそういないかと(笑)。

「アハハハハ。血と涙を一緒に流していた仲間ですからね。自分たちはそういう間柄です」

──その後、ユンジュンはMMAを続けられなくなりましたが、アックジョンのジムを仕切るようになりました。その時点で、スーチョルとの練習はどのようになっていったのでしょうか。

「自分がRoad ジム・ロデオを任せるようになった5年前からで。その時から、今も毎週金曜日のプロ練習にスーチョルは来ています」

2016年5月、元UFCファイター=ジョージ・ループに1RTKO勝ちした試合が、ユンジュンにとって最後のMMAに。まだ27歳、これからがピークだったはず……

──ジムを任される前……2017年の終わりにスーチョルは一度、現役から退くことを表明しました。

実際に4年5カ月、MMAの試合に出場しなかったです。自らの意思でなく、病によってMMAが続けられなかったユンジュンからすると、あの引退宣言は複雑ではなかったですか。

「スーチョルをずっと見てきた自分からすると、彼は追い込み方が尋常ではなかったので『こんなことを続けていると、死んでしまう』という想いもあったんです。だからスーチョルが自ら引退を口にして、休息したことは本当に嬉しかったです。

スーチョルは自分から休むことが絶対にない。自分としては休むことに全く異論はなかったので、『しっかりと休め』という風な声を掛けていました」

──ではいずれガムバックすることは、既に分かっていた?

「もちろんです」

──その後も練習を続けてきたユンジュンですが、かつてしのぎを削っていた頃と、今のスーチョルの力量を比較してもらないでしょうか。

「自分は引退した人間です。選手でない立場なので、昔のスーチョルが懐かしいです。あの頃のスーチョルは獣のような荒いファイターでした。あのワイルドな一面が、魅力的でした。技術面では今の方がずっと上です。でも、自分としてはあの頃のスーチョルが懐かしいですね」

──成熟したという風に捉えることができるかと思います。荒々しかったスーチョルと、成熟したスーチョル。MMAファイターとして、どちらの方が強いですか。

「曖昧な答えになりますが、今のスーチョルの方が強いと断言できます」

──では奥さんと出会い、結婚して父親になったスーチョルのことを人としてどのように思っていますか。

「本当に大人になりました。もう人としては、スーチョルの方が先輩のようです。自分は子供が生まれたばかりですが、彼は子供をしっかりと育てています。家庭人として自分の先輩ですが、若かった頃も今もMMAへの情熱は一切変わりないです」

──3週間後に井上直樹選手と王座決定戦を戦うスーチョルとは、対策練習などをしているのでしょうか。

「普段と余り変わらないのですが、グラップリングに重きを置いて練習をしています。井上選手は全てにおいて優れた選手ですが、打撃やレスリング、そしてダーティーボクシングではスーチョルが圧倒できるはずです。それでも寝技では、一発で逆転される可能性は残っています。その可能性を無くすために、寝技のパーセンテージを高めた感じですね」

去年の10月、Road FCグローバルTで優勝したスーチョルを支えたユンジュン。その兄弟子にマスクを取って欲しいとリクエストすると、なぜかスーチョルが自らの口を手で覆ってしまう(笑)

──スーチョルのベルト奪取を信じて疑わない口振りですね。

「その通りです。井上選手は素晴らしいウェルラウンダーです。でも総合的に判断して、スーチョルが一枚上だと思います」

──一番のアドバンテージはどこだと思っていますか。

「スーチョルも自分と同じように自信を持っていると思いますが、クリンチをした時のダーティーボクシングがずば抜けて強いです。首相撲でヒザ、ボディアッパーで削ると、もう井上選手は思うように動けなくなるでしょう。そうさせることにスーチョルは秀でています。クリンチ、首相撲での打撃を使えば勝てます」

──世界最高峰で戦うイ・チャンホ、Road to UFCで最高峰を目指すユ・スヨンら韓国人バンタム級ファイターと比較して、スーチョルの実力はいかほどのモノだと思っていますか。

「イ・チャンホ選手も、ユ・スヨン選手も凄く成長しています。目に見えて強くなっている──良い選手だと思っています。ただ、完成度の高さではスーチョルに及ばないです。彼らに対してスーチョルは完成しています。鋼鉄のような硬いファイターになりかけています。そういう部分でもスーチョルの方が少し上だと思っています」

──ズバリ、試合の行方を占ってもらえますか。

「井上選手は凄くしつこい選手です。スーチョルが負ける可能性としては先ほども言いましたが、ラッキーパンチか一発逆転のサブミッションでしょう。この2つが現実とならなければスーチョルが判定勝ち、もしくは最終回にフィニッシュすることになるでしょう」


■RIZIN48視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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【RIZIN48】2年2カ月振りの再戦=元谷友貴戦へ、太田忍「スキルは追いつかないけど、当たったら倒せる」

【写真】戦闘態勢になくても、強さ、ヤバさが伝わってくる(C)TAKUMI NAKAMURA

29日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われるRIZIN48にて、太田忍が元谷友貴と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

昨年10月の佐藤将光戦ではスプリットでの判定負けを喫して以降、3連勝と勝ち星を積み重ねている太田。今年4月には元RIZINフェザー級王者の牛久絢太郎に判定勝利し、6月の海外遠征=Bellator CSダブリン大会ではローゲル・ブランケから一本勝ちを収めた。

今大会では2022年7月に敗れている元谷との再戦を迎え、年内での王座挑戦という目標を達成すべく「いい勝ち方をすることが最低条件」と語った。


――6月のBellator CSダブリン大会ではローゲル・ブランケにノースサウスチョークで一本勝ちでした。大会直前に対戦相手がフランチェスコ・ヌッツィからブランケに変更になるアクシデントもありましたが、あの試合を振り返っていただけますか。

「ヌッツィがサウスポーだったのでずっとサウスポー対策をやっていて、ブランケはオーソドックスだったんですけど、試合の時に(ブランケが)スイッチしてミドルを蹴ってきたんです。だから事前にやっていたサウスポー対策は出た試合だったかなと思います」

――向かい合った時にいけるという感覚はありましたか。

「そうですね。前日計量の時点で相手はリミットをアンダーしていたので、通常体重がそのくらいの選手だったと思います。だから組みになったら体格差・フィジカル差が出るだろうと思っていて、いざ試合で組んでテイクダウンした時に、これだったらいけるなと思いました」

――ヌッツィ戦に向けて準備していて、そこで身についたもの・プラスになったものはありますか。

「ヌッツィは打撃をメインに組み立てて、テイクダウンの処理もできる相手だったんです。4月の牛久(絢太郎)戦はテイクダウンしてトップキープ出来たんですけど、そこがより強くなったかなと思います。自分のMMAが世界に通用するかどうかだったところで、それが世界にも通用できる準備はできていたと思います」

――前回のインタビューでは「今はMMAのMぐらいまではできるようになってきた」という言葉もありました。そこの理解度は上がっていますか。

「徐々に、ですね。僕はなんだかんだで次がMMA11戦目で、試合の感覚とか、場慣れはしている思います。ただ客観的に自分を見てMMAファイターとしてレベルが低いと思うので、MMA全体のスキルで見たときにはまだまだですね」

――MMAでは初の海外遠征で勝利したことで得られたものはありますか。

「ファイターとしてスキルが実力が飛躍的に変わったというのはないんですけど、世間の評価は変わりましたよね。Bellator CSに出て勝ったという部分で。そういう評価は得られた試合だったかなと思います」

――今大会では元谷選手と約2年2カ月ぶりの再戦となりました。太田選手にとってはリベンジマッチにもなりますが、オファーを受けた時はどんな心境でしたか。

「対戦カードが決まる時に、ここで勝ってタイトルマッチへという雰囲気もあったので、リベンジマッチですけどタイトルマッチにつながるステップの試合をやっと組んでもらえたなと思いました」

――最近の元谷選手にはどんな印象を持っていますか。

「全体的にレベルが高くてトータルファイターだと思います。今まで寝技の極めは強かったけど、あまり自分からテイクダウンしにいくタイプじゃなかったと思うんです。でも最近の試合は自分からテイクダウンにいくようになって、あの年齢ですけど、米国に行って戦いの幅が広がったなと思います。今年の5月にうちの平松(翔)とやった試合を見るとボクシングに穴があるし、撃たれ弱くなっていると思いますが、そこをリカバリーできる経験値もあって強い選手だと思います」

――太田選手自身は前回と今回ではどこが変わったと思いますか。

「打撃ですね。まだスキルの部分は追いつかないですけど、当たったら倒せる自信はついてきました」

――太田選手は純粋な打撃は誰の指導を受けているのですか。

「内山(高志)さんにボクシングを教えてもらっています。内山さんの指導はすごく分かりやすいんですよ、こういう動きのときはこういう対処をするとか。あとはどういうパンチが当たりやすいとか。まだまだ自分のスキルが高くないので、どこにどういう風に当てればいいとか、パンチの打ち方そのものも教えてもらっています」

――それまで打撃の練習はどうされていたのですか。

「ジムにいるムエタイのコーチにミットを持ってもらったり、選手同士でミットを持ったりですね。内山さんにはデビュー戦の前に教えてもらっていたんですけど、それをまた再開した感じです」

――打撃が伸びたことでMMAとして戦いの幅が広がった部分はありますか。

「パンチがあることを相手に印象づけられれば、自分の得意なテイクダウンにも有効だと思います。今までは相手が消耗していないところで組んで、決めきれないことがあったんですけど、今は打撃で相手を消耗させてから自分のいいところを出せるようになったかなと思います」

――今大会では同じ階級=バンタム級の王座決定戦として井上直樹×キム・スーチョルが組まれていますが、どちらと戦いたいですか。

「自分は今回元谷選手を倒して、チャンピオンになりたいので、勝った方とやりたいです。そこに関してはどちらでもいいですね。ただ井上選手には一度試合を飛ばされているから、そこを倒したいという気持ちもあるし、僕がタイトルマッチをやるなら井上選手と日本人対決をやった方が盛り上がるかなと思います」

――太田選手は2024年内にRIZINのベルトを獲るという目標を立てていますが、ここまでは計画通りに来たという感覚ですか。

「井上選手は年間の試合数が少ない方だから、大晦日にすぐ防衛戦をやるかどうか分からないし、ス―チョルもこの試合のあとにROAD FCのGlobalトーナメントを控えているので、年内に自分のタイトルマッチが組まれるかどうかは分からないですよね。ただ自分が今回いい勝ち方をして見たいという声が大きかったら実現する可能性もありえるので。まずは元谷戦でいい勝ち方をすることが最低条件ですね」

――今年のパリ五輪ではレスリングの日本代表がメダルを多数獲得しました。太田選手も元レスリングの銀メダリストとして刺激は受けましたか。

「凄すぎましたね。言い方は変かもしれませんが、僕からするとこいつらバカじゃねえの?と思うぐらい凄すぎます(笑)。僕は必死こいて銀メダルを獲ったのに、みんな金メダルをポンポン獲っちゃうから、凄いとしか言いようがないです」

――今のレスリングはルール的に日本人が勝ちやすいという側面もあるのでしょうか。

「僕が出た時とはあまりルールが変わっていないので、そこはないのかなと思います。メダルを獲った選手はそのための準備ができていたんだと思います。五輪は本来の力を出せない選手が多いので。僕がメダルを獲った時も、僕が強かったからメダルを獲れたというよりも、五輪というタイミングで自分が持っている力をすべて出すことができたからメダルを獲れたと思っています。今回はみんなそれができていたってことですよね」

――五輪は大会そのものが4年に1度ですし、そこに選手としてのピークを持っていけるかどうか。ライバルたちの仕上がりがどうかも影響しますよね。

「そうなんですよ。五輪にドン!とピークを合わせるには、そのための準備が必要だし、逆に五輪の合間の世界選手権を3連覇していても、オリンピックに出られない選手もいるわけですよ。そういう巡り合わせもあるだろうし、いろんな要素がピタッとハマらないと五輪で結果を出すことは難しいと思いますね」

――こういったお話を聞くと、改めて太田選手のファイターとしてのポテンシャルの高さを感じさせられます。ご自身でもまだまだ伸びしろがあると感じますか。

「伸びしろしかないと思います。僕は2020年にMMAに転向して、年齢的に若くはないし、MMAを始めたのも遅いです。でも言ったらMMAをやってまだ4年、4年生なんですよ。算数でいったらようやく3桁の割り算をやっているとか、そういうレベルじゃないですか。ようはまだ算数の段階で数学にすらいけてないわけですよ。そのくらい僕はMMAファイターとしてやらなきゃいけないことだらけです。

自分は去年・今年と定期的に試合が続いて、試合のための練習が中心になっていて、その準備のなかで強くなってはいますけど、MMAファイターとして自分を強化するための時間がどうしても少ない。試合を定期的に組んでもらえるのはありがたいことなんですけど、将来的にはバランスを見ながら試合をしていきたいです」

――もちろん元谷戦もそうですが、ここから太田選手がどう変化・進化していくかも楽しみにしています。

「僕はRIZINで戦う上で今年が一つの勝負だと思っています。僕は年内もう1試合やるつもりでいますし、そのなかで成長して、ファンの期待に応えられるかどうかも勝負だと思っています」

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9.29『RIZIN.48』の試合順が決定

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 RIZINが9月29日にさいたまスーパーアリーナで開催する『RIZIN.48』の試合順を発表しています。続きを読む・・・
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【RIZIN48】井上直樹とバンタム級王座決定戦、キム・スーチョル「距離を潰し、攪乱することが一番大事」

【写真】一心不乱にミット、パッド、スパーリング相手に向かっていくキム・スーチョル、3時間動き続けた(C)MMAPLANET

29日(日)、埼玉県のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN48で、キム・スーチョルが井上直樹とRIZINバンタム級王座決定戦を戦う。
Text by Manabu Takashima

ゲーム好きは日本のファンには浸透した。その裏でMMAの強さとは裏腹に、脆い人間性があったキム・スーチョル。2017年末の引退宣言と長期離脱にこそ、彼の陰陽──強さと脆さが表裏一体であったことが分かる。

そんなスーチョルを支えた内助の功と、自己啓発。そして自身を律する精神性が、RIZIN王座獲得直前という状況まで彼を引き上げた。MMAPPLANETでは本人、師匠、兄弟子を現地取材──3度のインタビューに分けて、キム・スーチョルを解剖したい。

第1回はキム・スーチョル自身が、今の強さと充実した人生を振り返る。


何年振りか、練習中に泣かされていますね(苦笑)

──1カ月後に井上直樹選手とRIZIN王座決定戦を戦いますが、今の調子の方はいかがでしょうか。

「練習がハードなので、体は疲れているのですが日程的にも大丈夫なように頑張っています」

──今日のスパーリングもハードでしたが、MMAのスパーリングはどれぐらいの間隔で行っているのですか。

「週に2、3回。3回ぐらいはやっていると思います」

──3度もあの打撃有りのスパーリングを!!

「かなり疲れています(苦笑)」

──トレーニングメニューは誰と考えているのですか。

「一応、ジョン・ムンホン代表が創ってくれています。代表が自分の状態を見て『そろそろ限界だな』と思われると、そこからさらに追い込まれています」

──体力的に相当に追い込まれる練習が控えているのですね。

「そうですね。今日も練習前から表情が暗かったのは『今日は死ぬな』って思っていたからでした(苦笑)。しんどい練習が続くから、しっかりしないとダメだと自らを鼓舞しました。精神的には追い込まれています」

──今日のスパーは打撃が多かったですが、MMAの経験値が高い選手とMMA全般のスパーリングを行うことは?

「できるだけ多くしたいと思っています。今日のようなスパーリングを始めて4週目に入っていますが、これからも続きます」

──Road gymウォンジュのスパーリングパートナーは、いつも今日と同じ顔触れなのですか。

「いつも同じではないですが、週に1、2度は今日の選手とやっています。彼ら以外にも他の地域、外国から来た人ともスパーリングをしようと思っています」

──この試合に向けて練習は、ほぼRoad gymウォンジュで行っている感じでしょうか。

「Road gymウォンジュが中心ですが、イ・ユンジュン監督の下に黒帯柔術家が4人いるので彼らとも週に10ラウンド以上のスパーリングをしていて、そこも厳しいスパーリングになっています」

──イ・ユンジュンさんのところ、つまりRoad gymロデオを拠点とするTeam AOMでの練習のために週に1度ソウルのアックジョンに行っているということですね。

「週に1度、寝技の練習をするのですが黒帯が多いので……シャークタンクのようになっています」

──獰猛なサメの生き残り合戦だと(苦笑)。イ・ユンジュン監督ともスパーリングを?

「ハイ。グラウンドで追い込まれた状態で、イ・ユンジュン監督とは打撃のスパーリングをして、食らっています(笑)。何年振りか、練習中に泣かされていますね(苦笑)」

──イ・ユンジュン監督……今も強いですか。

「まだバリバリの現役です(笑)」

──あの優しげなイ・ユンジュンも指導になると鬼コーチになると?

「自分だけにかもしれないですが、結構厳しいです(笑)。他の選手には厳しくないですが、自分にだけは厳しい叱責があります」

──それは古くからの仲だからでしょうか。

「中島太一選手に勝った(4月29日)後、ジョン・ムンホン代表とイ・ユンジュン監督に3時間ぐらい怒られ続けました。今も怒られ続けています」

──2人とも、そこまで追い込んでもスーチョル選手はやり抜くと思っているからではないですか。

「きっと2人のなかでどこまで戦えるのか設定を設けていて、その基準を満たさないと精神が擦り切れるまで怒られます」

──イ・ユンジュン監督はMMAを続けることができていれば、韓国でも最高のファイターになっていたと思います。彼の知識というのは、作戦面でもスーチョル選手の力になっているのでしょうか。

「KO率が高くなったのは、全てイ・ユンジュン監督のお陰です。ただ、監督は子供が生まれたばかりで次の試合はコーナーについてもらえないんです。残念なんですけど、しょうがないと思っています」

──イ・ユンジュン監督が来日できないことに不安を感じることは?

「ぶっちゃけ不安です。アハハハハハ。でも、こういう機会こそ自分の真価が問われる時だと思います」

トラクターは田んぼで稲作をするための乗り物

──このところ、インタビューの受け答えが本当にしっかりとしてきたスーチョル選手ですが、練習や試合の話になるとトーンが以前に戻ってしまいますね(笑)。

「今日の練習のように、ジョン・ムンホン代表がスパーリングの途中で怒鳴り始めると、なんでこんなにできないんだろうと落ち込みます。そこを解決するために、読書をするようにしています。最近は神田昌典の本がお気に入りで、たくさん読んでいるのですが、読書は自分を落ち着かせるために一番適していると思います」

──試合前になると不安を感じたり、感情にブレが生じしますか。

「自分は人間とは生きている間は、ずっとストレスと戦い続けると思っています。ストレスを解消するために瞑想とか、勉強や読書をしています。そうすることができていなかったら、今のキム・スーチョルは存在していないです。

正直なところ、最近の自分は収入が凄く増えていて感謝しています。その収入とともに、今の自分があるのは妻の内助の功があるからです。それとチームのサポートです。妻、チームに続いて読書や瞑想が自分の人生に欠かせないです」

──そのような状況で、RIZINのタイトル戦のオファーがあった時はどのように思いましたか。

「自分はやるべきことのリストを創っています。このタイトル戦が決まる前に、2024年にRIZINのチャンピオンになるとリストに書いていたんです。そして自分で書いた言葉を1日に100回、1000回と読み続けてきました。それぐらいの気持ちでいたので、RIZINからオファーが来た時には『やっと来たか』という想いでいっぱいになり、本当に嬉しかったです」

──そこまでするのは、自己暗示を掛けているということでもあるのでしょうか。

「書き続け、読み続けているのは自分の人生の目的を明確にするためです。例えばトラクターは田んぼで稲作をするための乗り物で、道路を走るためではないですよね。自分も目的を忘れず、常に目的に進む為にメモをして、常に考え、俺はこういう人生を生きて行くんだと、自分に言い聞かせています」

──続けることで、気持ちがより固まるということはありますか。

「周波数を合わせてラジオを聞くように、自分の意識を一点集中させています。自分の目標はただ2024年中にRIZINのチャンピオンになることなんです」

自分が井上選手より強いというより、自分の強味は井上選手に得意な形にさせないで戦うこと

──改めて井上直樹選手の印象を教えてください。

「若いのに、何でもできる選手です。リーチが長くて、スタミナもある。経験豊富なウェルランダ―ですね」

──打撃の距離を創るのが上手いという印象があります。

「井上選手は確かに距離を取るのに長けています。ただし、そこを気にしすぎると自分の体が反応し辛くなります。実はもう、それを崩す方法も見つけていますし、潰すこともできます。井上選手のやりたいことをさせないよう戦うことも十分に可能だと思っています」

──それは練習で確認できたように圧を掛けて、動き続けて手を出し続けることに関係していますか。

「井上選手の距離を潰し、攪乱することが一番大事だと思います。今日のスパーリングでも、自分と相手が互いの距離を取ることをシミュレーションしていていました。その状況で、どう制圧していくのかを。自分の好きな(堀口)恭司選手、扇久保(博正)さん、デメトリウス・ジョンソンの動きを参考にしています。

そのために自分が好きな選手を参考にして空手やボクシング、ムエタイと全て融合した複雑な動きを見せようと思います」

──構えた時の手の位置、ここにも工夫が表れているかと思いました。

「今言った選手たちの動きを真似して、自分だけのスタイルを創るよう努力しています。そのプロセスにある間は体力的には厳しいですが、同時に凄く楽しめています」

──井上選手の動きで、最も警戒するのはどこになりますか。

「打撃を使ってもスタミナが落ちないところです。そこは気を付けないといけないですし、加えてバックを取るのが上手いです。しっかりと時間を掛けて、井上選手の戦いをさせないよう対策をしてきたので不安が半分、自信が半分です」

──ここだけは井上選手に負けないという部分は、どこに持っていますか。

「自分が井上選手より強いというより、自分の強味は井上選手に得意な形にさせないで戦うこと。その自信がつきました」

──なるほどです。ところで日本でのタイトル戦はデビュー戦以来かと思います。

「そうです。あの時以来、初めてです」

──大阪の小会場でデビューをして、何万人という観衆の前でタイトル戦を戦う。そんな未来がやってくると思っていましたか。

「ジョン・ムンホン館長も『中学生のキム・スーチョルと今のキム・スーチョルもあまり変わらない』と言っていましたが、その通りです。一つだけ言えることは、自分はこの仕事がメチャクチャ好きだということです」

──日本ではスーチョルがニンテンドースイッチをいつ買ってもらえるのかという話題になります。その自信の程は?

「それが話題になるんですか(笑)。ニンテンドースイッチ本体だけでなく、やりたいゲーム・リストがあるんです。その全てを妻の財布から取り出す自信もあります」

──とはいえ井上直樹選手という強豪とのタイトル戦を終えると、1カ月後にはROAD FCグローバル63キロ級トーナメントの準決勝が控えています。このトーナメントに関しては、どのような想いを持っているのでしょうか。

「Road FCのトーナメント戦のことは、今は考えないようにしています。RIZINのベルトを巻いてからの楽しみとし、同時に心配しようと思います。ROAD FCのタイトルのことは、RIZINのタイトルを取った後で考えます」

──そこを考えると、タイトルマッチに集中できなくなる?

「周波数を間違えた所に合わせると音がちゃんと聞こえないですよね。自分が目指す目標も見えなくなります。目指した周波数の音をちゃんと出して、その後、次の周波数に早く合わせて次の音を聞くことが大事だと思います」

──では最後に改めて、井上選手とのタイトル戦の意気込みをお願いします。

「日本のファンの皆さんには感謝の気持ちしかありません。でも自分はそんなに大した人間でもありません。自分のことを実物以上に評価してくださる人たちがたくさんいます。日本のファンの皆さんが、自分のことを本当に高く評価してくださってくれて心より感謝しています。

自分は日本のファンに恩があります。今回は死ぬつもりで試合をするので、見届けてください。カムサハムニダ(ありがとうございます)」


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井上直樹とサトシソウザ RIZINのリングで海外強豪選手を迎え撃つ決意【RIZIN.48】

「RIZIN.48」でキム・スーチョルとバンタム級王座をかけて戦う井上直樹が、ホベルト・サトシ・ソウザと共にRIZINでの戦いへの想いを語りました。井上は「アメリカに行くんじゃなくて、こっちに来てほしい」と述べ、海外強豪選手を日本で迎え撃つ姿勢を強調しました。

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井上直樹 朝倉海UFC移籍に対する本音とRIZINバンタム級への強い思い【RIZIN.48】

「RIZIN.48」でキム・スーチョルとのバンタム級王座決定戦に挑む井上直樹が、UFCに移籍した朝倉海への思いを明かしました。「今はRIZINでは戦えないんで、UFCでチャンピオンになってほしい」とエールを送りつつ、「自分はRIZINで頑張ります」と語り、今後のRIZINでの活躍を約束しました。

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『RIZIN CONFESSIONS』第160回動画

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 『RIZIN CONFESSIONS』第160回動画。今回は9.29『RIZIN.48』の見どころ紹介です。続きを読む・・・
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【RIZIN48】太田忍、井上直樹、そして牛久絢太郎戦。佐藤将光「強い相手ばかりで、ありがとうございます」

【写真】知性と殺気の融合体。それが佐藤将光。写真は3月のLADNMARK出場時の公開計量から(C)SHOJIRO KAMEIKE

29日(日)、埼玉県のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN48で、佐藤将光が牛久絢太郎と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

佐藤にとってRIZIN3戦目の相手は、元フェザー級王者の牛久に決まった。今年3月に井上直樹に敗れたあとに発した「殺しの部分」の意味とは――。さらに取材前日に行われたあの記者会見についても意見を聞かせてくれた。


——牛久戦を控えている佐藤選手ですが、SNSで昨日の会見(※取材は6日、アンチ・ドーピング会見の翌日に行われた)について触れ、多くの反響があったようですね。

「アハハハ。最初は会見について触れていたわけではないんですよ。全く別のことで投稿したら、そういう受け取り方をされて。まぁ、ちょうど会見があった時でしたからね。

僕としては『今さら感』というか――この問題って、ずっと格闘技界の陰で存在しているものじゃないですか。そこまで細かいドーピング検査はUFC意外では行っていない。試合前だけドーピング検査を行っても、その時点で抜いていれば陰性で通ってしまう。これが一般の方には伝わっていない状態だったものが、今回明るみに出て皆が知ったことで大きな騒ぎになってしまったというか。そもそも他のスポーツ、野球でもサッカーでも『ドーピング検査で陽性』云々は聞かないですし」

——はい。これはRIZINだけでなく、それこそ世界中の全スポーツに関わる問題であり、簡単な話でないことだけは事実です。そんななかでRIZINに出場しているファイターとして、RIZINが改めてアンチ・ドーピングに取り組むことを発表したことについては、どのように感じますか。

「メチャクチャ良いことだと思います。でも『どうやって実現するんだろうか?』とは考えちゃいますよね。すごく費用が掛かることだし、試合前だけ検査しても意味がないとすれば、抜き打ち検査をすることになる。そうすると選手が試合前に、いつどこにいるのかを把握しないといけない。そこに派遣される人の人件費も必要で――どこからその費用を捻出するのかとなると、選手のファイトマネーが下がるか、スタッフさんの給料が下がるか、あるいはチケット代が上がるのか。

そこまでしても実施すべきと、皆が思うことができたら良いです。でも僕は今までずっとドーピング検査なしで試合をしてきましたから。もしかしたら、ドーピングをしていた対戦相手もいたかもしれない。実際にドーピング検査をしていても、なかなか結果が公表されなかったりする。だから僕は、半ば諦めてしまっていました」

——ある意味、MMAを戦っていく部分で使わない派は諦めと割り切りが必要で、使う派は開き直るという……。

「これは凄く難しい問題で、本当に専門家の意見を聞かないと分からないことです。どのような検査が必要で、その検査にいくらぐらい費用が掛かるのか。日本国内だと、これぐらいの規模の検査はできる――とか。そういうことが分からないと判断できないし、簡単に発言できるような問題じゃないんですよ。

もちろん理想論でいえば、ドーピング検査は行われたほうが良いに決まっています。今回のことを機に、どれだけ変わることができるのか。もっと良い方向に進んでくれたら最高ですけどね」

——ありがとうございます。実際に戦っているファイターの貴重な意見を聞くことができて良かったです。もう一つ、今回に限らず試合直前のファイターにとって、このような騒ぎが起こることについて、正直なところ試合に注目してほしいとは思いませんか。

「あぁ、確かに選手としては大会のプロモーションに専念してほしいとは思います。でも今回は大切な問題だから、取り上げて議論してほしいですね。僕としては試合に向けてやることは変わらないので」

——なるほど。では改めて試合に関して……まず牛久選手との対戦が決まった時は、正直なところ意外な印象でした。

「僕も牛久選手と組まれるとは思ってもみなかったです。彼はフェザー級に戻すと思っていたので。あと牛久選手は太田選手に負けていて、僕はその太田選手に勝っていますからね」

——そこで佐藤選手と牛久選手の試合が組まれるなど、現在のRIZINバンタム級戦線が混沌とした状況にあります。

「ただ、今はそんなに序列を気にしなくなりましたね。『俺はこの選手に勝っていて、なぜアイツと対戦しなきゃいけないんだ』とかは、もう考えないです。単純に1試合1試合、自分のパフォーマンスを出せるかどうかのほうが大事で。若い時よりも『ベルトが欲しい!』という気持ちは薄まってきました」

——ということは、以前は序列なりライバル意識のようなあったわけですね。

「はい。ONEに出ていた頃は、そういう気持ちも強かったです。RIZINに出るようになってからは、強い相手に対して自分のパフォーマンスを出すことだけに集中しています。もちろん『このレベルと戦わないといけないの?』という相手だったら違和感を抱くかもしれないけど、そもそも牛久選手は強いですから。これまで太田選手、井上直樹選手、そして次は牛久選手と強い相手ばかりで、『ありがとうございます』という感じです」

——いかに自分のパフォーマンスを出すか。そのためには前回のインタビューで仰っていた「殺しの部分」が必要になりますか。

「太田戦も、もっと行きたかったんですよ。削って削って——その先も見せたかったです。でも削りきる前に試合が終わってしまって。もっと自分から速い展開をつくっていくとか、しっかりと明暗が見えるような試合をしないといけないですね」

——今のRIZINの判定基準を考えると、それこそRIZINで求められている試合内容なのかもしれません。

「RIZINの判定基準は、試合全体を見てダメージで差がつかなかった場合、フィニッシュに近いダメージがないとイーブンになる。次に評価されるのはアグレッシブで――選手にとっても、お客さんにとっても分かりづらい部分があると思います。観ている人たちもモヤッとする判定もあったり。RIZINはRIZINの特色を推し進めたいでしょうし、選手も選手が分かりやすい試合をすれば良いのでしょうけど……」

——佐藤選手としては「殺しの部分」を見せることで、より明暗が見える試合になると思いますか。

「もちろんそういう部分が出てくれば、ちゃんとダメージを与えることができると思います。でも、そこに至るまでにやらないといけないことがある。たとえば、試合っていきなり右ストレートをぶん回すわけではなく、ジャブや崩しのような動きがあって初めて右ストレートを打つことができる。

RIZINの試合では、それまでのプロセスの部分で終わってしまうことが多かった。でもプロセスの先を見せることができれば自然とポイントも取れるとは思います。どうしても僕って技術先行というか、テクニカルな選手という印象を持たれていますよね。それはそれで嬉しいけど、ちゃんとフィニッシャーとしての一面もあることを知ってもらいです」

——牛久選手もまた、あれだけのポテンシャルを持ちながら、それだけの「殺しの部分」を見せることができていないファイターかと思います。

「そうですね。激闘になっている試合はないかもしれないです。お互いがやり尽くした――という試合は。それだけ、やりづらい相手だとは思っています」

——「牛久選手はフェザー級に戻すと思っていた」というのは、フェザー級時のほうが強かったと感じているのでしょうか。

「前回の1試合だけでは分からないですよね。タイプ的に太田選手とのマッチアップでは、彼の強い部分が出ないというのも理解できるんですよ。彼がフェザー級のコンディションのままバンタム級で、太田選手と対戦しても同じ結果だったのかどうか……相性の問題もありますからね。だからあの1試合だけでは『まだ分からない』としか言えないです」

——確かに太田戦だけでバンタム級の牛久選手を推し測るのは難しいです。では今回、牛久選手がフェザー級のコンディションで、バンタム級に適応させてくると思いますか。

「2回目のバンタム級ですし、より順応してくると思いますよ。またバンタム級でやるということは、順応できると踏んでいるはずなので」

——対して佐藤選手は、どのような試合を見せたいですか。

「相手が一つひとつ、どういう技を出してくるかは分かりません。でも試合の流れ、基本的な組み立て方は見えているので、しっかりハメて戦いたいです。

僕の中では牛久選手は強いし1階級上のチャンピオンになっているのに、あまり評価されていないところが引っかかっています。今回は彼の強い部分を引き出し、全て受けて僕が倒したいです。彼のミスではなく、僕の実力で勝ったという試合を見せたいですね」

■RIZIN48視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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【RIZIN47】仮想スーチョル=水垣偉弥が語る井上直樹「酷い目にあったので勝ってもらわないと困る」

18日(水)都内にて、29日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われるRIZIN48に出場する選手たちの合同公開練習が行われた。
Text by Takumi Nakamura


ファン公開形式で行われた今回の公開練習は全14選手が参加。新井丈のミット打ち&木下カラテによる空手の型からスタートし、RIZIN初参戦の秋元強真がJTTのエリーコーチとのミット打ちを披露する。

3組目から6組目までは対戦相手が見ている前での公開練習となり、宇佐美正パトリックのシャドー→矢地祐介ミット打ち、佐藤将光と高橋遼伍によるMMA形式のマススパーリング→牛久絢太郎のミット打ち、太田忍の気配斬り→元谷友貴のミット&打ち込み、浅倉カンナと重田ほのかのMM形式のマススパーリング→伊澤星花とCOROのグラップリングスパーリングと続いた。

そして練習仲間でもある高木凌と井上直樹は揃ってミット打ちを見せた。キム・スーチョルとのバンタム級王座決定戦を控える井上のミットを持ったのはMMAPLANET「今月の一番」シリーズでもおなじみの水垣偉弥。井上曰く、水垣が仮想スーチョルとしてトレーニングパートナーを務めているそうだが、公開練習のミット打ちはあくまで軽めのもの。

公開練習後に水垣にコメントを求めると「今回、仮想スーチョルとして頑張りました。最後の方は色々な攻撃を当てられまくって酷い目にあったので、仕上がりはいいと思います。これで仮想の相手を出来るのはもう最後かもしれないくらい出し切ったので、勝ってもらわないと困ります」と井上の仕上がりの良さを教えてくれた。

そして締めに登場したのはルイス・グスタボとの防衛戦を控えるライト級王者のホベルト・サトシ・ソウザ。柔術衣を着てマットに表れたサトシは原点回帰ともいえる柔術形式のスパーリングで「久しぶりの試合、タイトルマッチです。絶対にベルトを守ります。日本の名前とRIZINの名前を守ります」と意気込みを語った。

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【DEEP121】バンタム級王座を賭けた福田龍彌戦へ、瀧澤謙太「理想のスタイルは固まってきました」

【写真】幼少期の学んだことは残る。そして生かされる(C)SHOJIRO KAMEIKE

16日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP121で、瀧澤謙太が福田龍彌と空位の同バンタム級王座を争う。
Text by Shojiro Kameike

DEEP初参戦となった今年7月のCORO戦で判定勝ちを収めた瀧澤は、2戦めでベルトに挑むこととなった。連敗を脱したものの、本人としてはCOROとのタフファイトは「苦戦だった」と振り返る。しかし、そんな苦戦の中で見せた自身が理想とするスタイルとは。


フィジカルとスタミナの2つが伴ったことで、メンタルも良くなった

——前戦から2カ月後の試合となります。これだけ早いペースで試合をすることは瀧澤選手からの希望だったのですか。

「たくさん試合したいと思っていたので、良いペースです。今回勝てば年内にもう1試合やりたいという気持ちではいます」

——そしてDEEP2戦目がタイトルマッチとなりました。

「ベルトを巻くのは早いに越したことはないですが、2戦目というのはラッキーな巡り合わせですね」

——結果的にタイトル前哨戦となったCORO戦の感想を教えてください。

「1戦目よりも苦戦してしまった——倒し切れなかったです。1戦目は1~2Rと完全に支配して最後に倒すという、自分のやりたいことしかしていなかった試合で。今回は1Rにダウンを取り、2Rに相手が盛り返してきて、最終回に僕が手数で勝ったという感じでした。もうちょっと綺麗に勝ちたかったですね」

——なるほど。同時に、タフな試合で削り勝つことができた。それは今までの瀧澤選手の試合にはなかった、良い面だったのではないかと思います。

「ありがとうございます。実は試合の1週間前に、綺麗に風邪や喘息が治ったんですよ。もともと小児喘息があり、今も風邪をひいたら症状が出てしまう時があって。一度出ると、咳が治まるまで1カ月ほど掛かってしまうこともありました。そうなると練習にも支障が出たり、インターバル中にも咳が出てしまうこともあって」

——それはキツい……。

「今回もスタミナがヤバいかなと思っていたら、1週間前に風邪と喘息が止まったので、メチャクチャ自信ができました。ずっとフィジカルトレーニングとスタミナのトレーニングはやっていて、数値的には自分の最高記録を更新することができていたんです。そのフィジカルとスタミナの2つが伴ったことで、メンタルも良くなって。

CORO戦では最初のインターバルが終わって2Rが始まる時、次のインターバルから最終回に臨む時に『これは動ける!』と思いました。セコンドからも『ガンガン前に出て、確実に最終ラウンドを取れ!』とも言われていましたし、しっかり動くことができましたね」

——それは直近の試合で味わったことのない感覚でしたか。

「そうですね。まず井上直樹戦(2022年大晦日に一本負け)はあまり体調が良くなくて、さらに削られてスタミナもキツかったです。太田忍戦(2023年7月にTKO負け)は1Rで終わってしまいましたし、野瀬翔平戦もスタミナはキツかったですね。そこから集中してスタミナとフィジカルに取り組んで、CORO戦ではその2つが挙がったことを実感できました。

でもCORO戦より今回のほうが、スタミナもパワーも自信があります。試合まで残り1週間——今すごく体の調子が良くて、このまま自信を持って臨むことができます」

——今挙げた試合と比較して、CORO戦は自身が先手をとって試合をつくることができていました。

「やはりスタミナとフィジカルが伴うと、試合も自信を持って臨めますよね」

——もう一つ、試合中はずっとスイッチし続けていましたね。あれはテイクダウンディフェンスであり、CORO選手対策だったのでしょうか。

「あれは僕がずっとやりたかったことなんです。やっと試合で出すことができました。今までも練習仲間の対戦相手がサウスポーなら、僕もサウスポーで構えたりとか、対策練習でサウスポーになることはあって。だけど、いずれ試合でも実際に出したいとは考えていたんですよ。でもサウスポーになるとオフェンスはできても、オフェンスが甘くなったりすることもあって。オフェンスもディフェンスもできるようになったら試合で出そう、とはずっと考えていました。今後はオーソドックス、サウスポー両方出していきたいです」

福田選手が持っている戦いのメカニズムが分かってきました

——すり足でスタンスを変えるのは、スイッチというよりも空手の足捌きですよね。

「そうなんです! 僕はフルコンタクト空手をやっていて、相手との距離が近いフルコン空手では、オーソドックスかサウスポーかという概念が無いというか――流れの構えが入れ替わる、足が交差する場面は多くて。だから昔からオーソドックスでもサウスポーでも、攻めることはできていました。でもMMAだと顔面打撃とテイクダウンがあるので、そのディフェンスが試合でも出せるようになったということなんです」

——高校時代はレスリング部に所属していたとのことですが、空手のあとにレスリングを経験してスタンスに影響を及ぼしたのでしょうか。

「そういうわけではないですね。MMAを見越してレスリングを始めたので、打撃でいえばオーソドックス——左足前でレスリングもやっていました。オーソドックスのままテイクダウンに入れたほうが良いかなと思っていて」

——今回タイトルを賭けて戦う福田選手はサウスポーです。サウスポーに対しても、同じような足捌きで戦うことはできるのですか。

「もちろんです。自分の中で理想のスタイルは固まってきました。福田選手の場合は、どの展開で何が理に適っているか、理解して戦っている。試合映像を視ていると、福田選手が持っている戦いのメカニズムが分かってきました。分かっている技は掛からないとは思っていますね。福田選手のメカニズムにハマらないよう、自分から早く仕掛けていきたいです」

——瀧澤選手の視点が、まるで武術家のようです。

「あぁ、どうなんですかね。あまり人の試合は視ないんですよ。どちらかといえば練習で自分の攻撃が良い感じで当たった時、なぜそうなったのかを見直したりするほうが多いです。当たるパンチ、倒せるパンチって何かしら理由がある。そのパンチを分析して自分のモノにしたりするのが好きなんですよ。それこそが自分にとっての格闘技の楽しさであって。あとは試合が決まったら対戦相手の映像を視て、自分の技術を適応させていきます」

——その点では福田選手も同じタイプのファイターだと思います。今回の対戦が楽しみですね。

「そうですね。福田選手との試合は、いろんな展開を考えています。エキサイティングな試合をする選手だと分かっていますけど、漬けてくる場面もあるかもしれない。特に打撃勝負をして、分が悪いと感じたら——そういう展開も想定していますね。僕はKOを狙いますが、実は今までプロの試合で一度も自分からテイクダウンに行ったことがないんですよ」

——えぇっ!? そうだったのですね。

「アハハハ。自分からテイクダウンに行くことなく、ベルトを獲得できるのかどうか検証したいです」

——次の福田戦で初めてテイクダウンを狙おうとは思っていないのですか。

「いずれテイクダウンを混ぜていきたいとは思っていますが、いつにするのかは分からないです。自分の場合は寝技と打撃であれば、打撃のほうが勝つ確率は高い。でもテイクダウンに行くのはリスクも生まれるじゃないですか。もしかしたら今回テイクダウンを狙うかもしれないし、テイクダウン無しでベルトを獲るかもしれません。まだ見せていない部分は、メチャクチャあります。僕の試合を楽しみにしていてください。全て見せた時は、みんな驚くと思いますよ」

■DEEP121 視聴方法(予定)
9月16日(月・祝)
午後5時35分~U-NEXT、YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、サムライTV

■DEEP121 対戦カード

<DEEPバンタム級王座決定戦/5分3R>
福田龍彌(日本)
瀧澤謙太(日本)

<DEEPライト級選手権試合/5分3R>
[王者] 江藤公洋(日本)
[挑戦者] 野村駿太(日本)

<メガトン級/5分3R>
水野竜也(日本)
大成(日本)

<フライ級/5分2R>
KENTA(日本)
渡部修斗(日本)

<フライ級/5分2R>
関原翔(日本)
杉山廣平(日本)

<フェザー級/5分2R>
五明宏人(日本)
相本宗輝(日本)

<バンタム級/5分2R>
雅駿介(日本)
谷岡祐樹(日本)

<バンタム級/5分2R>
力也(日本)
鹿志村仁之介(日本)

<ストロー級/5分2R>
多湖力翔(日本)
中務修良(日本)

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