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【LFA198】MMA3戦目へ、女子柔術GOAT=ビア・メスキータ「護身で柔術のリアリティを感じた」

【写真】必死になってチャレンジしていることが、心底楽しそうなビアだった(C)MMAPLANET

6日(金・現地時間)にカリフォルニア州コマースのザ・コマース・カジノ&ホテルでLFA198「Miranda vs Oyarzun」が開催される。
Text by Manabu Takashima

2025年、25度目のイベントとなるLFA198のメインで予定されていたLFAフェザー級王座統一戦=正規王者アライジャ・ジョンズ×暫定王者レリアン・ドゥグラスの一戦は正規チャンピオンがファイトウィークに入って体調を崩し延期となった。

そんな今年最後のLFAにムンジアルの黒帯で世界一に輝くこと7度、ADCCも制しているIBJJF殿堂入りを果たしているビア・メスキータが3度目となるMMAをフェルナンダ・アラウージョと戦う。

また競技柔術の頂点を究めたメスキータだが、セルフディフェンスとしての柔術、グレイシー柔術の本質に触れることで「柔術のリアリティ」を知り、より理解が深まったという。

33歳、柔術界の真のレジェンドが向き合う柔術のリアリティと、MMAのリアルとは──。


──2度の無差別制覇を含め、ムンジアル黒帯で7度の世界王者。IBJJFの殿堂入りを果たしたBJJ Lady Greatest of all timeの異名をとるビアが、33歳を迎える年にMMA転向を果たした。正直、ちょっと信じられなかったです。

「とにかく、もっと何からにチャレンジしたかったの。一言で言えば、そういうことになるかしら。私は柔術を愛している。5歳から始めて、柔術は私の人生だと言えるわ。でも、もう柔術では燃えるような熱さを自分のなかに感じることができなくなって。ムンジアル、ADCCを制してチャレンジ精神が柔術では沸き起こってこない。でも、再びファイトを通して燃え上がるような熱を自分に感じたかった。その熱をMMAで戦えば、また感じられると思ったの。

柔術のように素晴らしいキャリアを築くことができるのかは、分からないわ。だからこそ、MMAを戦おうと思ったの。自分がどうなるのか。それを知りたかったから。MMAを戦うとなるとムエタイ、ボクシング、今より上のレスリングと多くの新しいスキルを身に着ける必要がある。柔術にしても、そう。パンチがあるなかで、いかに私の柔術を使いこなせるのか。そのために厳しい練習が必要で。そうなると私はまた、競技者として自分のなかの炎をたぎらせることができるはず。そう……MMAに向かい合うことで」

──柔術は今もMMAに欠かせない要素であり、グレイシー柔術がなければ今のMMAも存在していません。ただし、多くの柔術スクールはIBJJFの競技柔術のトレーニングをする場所です。そしてビアはヒクソン&ホイラー系といっても過言でないウマイタ系の柔術家です。もう10年以上前になりますが、サンディエゴのグレイシー・ウマイタを訪れた時、皆がクローズドガードからの柔術を懸命に習っていました。とはいえムンジアルに勝つには護身ではなく、競技柔術のトレーニングに専従する必要があるかと思います。MMAのルーツといえる護身術であるグレイシー柔術の稽古をビア自身は、行って来たのでしょうか。

「長い間、セルフディフェンスについては考えたこともなかったわ。子供の頃から、競技者として柔術で勝つことに集中していたから。ムンジアルの黒帯で優勝するころになって、パリのマーシャルアーツの祭典のような催しに柔術代表として招かれ、レティシア(ヒベイロ。ホイラーの教え子で、女子柔術を牽引してきたビアの師匠)と柔術を紹介するうえで、護身術のデモンストレーションをしたことがあったぐらいで。その時に少しだけ、セルフディフェンスの知識を身に着けたけど、継続して学ぶことはなかった。

それが2019年の1月に……まだ5年前ね。もう何度も黒帯でムンジアルを制していたけど……、そんな時にホイラーが10日間のセルフディフェンス・コースに招待してくれたの。それまで私はブラジルに住んでいて、1月に米国にいることがなくて。米国に移り住むようになって、初めてホイラーに護身を教わる機会を得ることができた。

この10日間で私の柔術に関する考え方は、変わった。護身的な柔術はマットの上だけでなく、人生を助けるものだと理解できた。だってストリートで襲われた時に、引き込むことはできないでしょ(笑)。ホイラーに教わって、私の考えはクリアになったの。

その後、ATTでMMAのトレーニングをするようになってからは、車で40分でいけるヴァレンチ・ブラザースに通うようになり、ペドロ・ヴァレンチ(※父ペドロ・ヴァレンチSrはエリオ・グレイシーの愛弟子で、ファダ柔術との対抗戦にも出場。今年の5月に逝去)に、本格的な護身術の指導を受けるようになったの。

ホントにいくつかのクラスに出ただけで、完全に柔術への捉え方自体が変わったわ。護身で柔術のリアリティを感じたって感じで。『セルフディフェンスは退屈。あんなの現実的じゃない』なんて意見もよく聞かれるけど、それは誰の指導を受けたかによってくると思う。ペドロにセルフディフェンスを教わると現実しかないし、学んで楽しいものだったわ。

ペドロは私のMMAデビュー戦もサポートしてくれて、プライベートで指導を受けることができた。MMAを戦ううえで必要になってくる自分の身を守る術を何通りも、細かいディテールまで教えてくれた。最高の教えよ。私は自分では技術的に、柔術の理解度は十分にあると思い込んでいたの」

──いやいやムンジアルで7度も優勝しているのですから。それはそうですよ。

「いいえ、ペドロに指導を受けて私は柔術の細かい部分が分かっていないことに気付かされたわ。しかも何も複雑じゃなくて、凄くシンプルなことで。特にMMAを戦ううえでペドロは道着のない──体しか掴むところがない状況での身の守り方、戦い方の教えを受けて。『えっ、それだけのことでこんなに簡単に技ってかかるモノなの』って」

──そのペドロの指導を受けたMMAデビュー戦では、全く危なげなくRNCを極めて勝利しました。そして2戦目はLFAと契約し、今回が3戦目となります。以前だとミシェル・ニコリニ、最近ではヴィアンカ・バシリオを初めて複数のトップ柔術家がONEと契約し好待遇を受けています。ビアなら、同じような条件でMMAを戦うことができたのではないでしょうか。

2017年のADCCで60キロ級で優勝。2位はヴィアンカ・バシリオ、3位はミシェル・ニコリニだ

「私はMMAで戦うことを決めた時から、LFAでキャリアを積むって決めていたわ。

UFCで戦うために、一番クリアな道がLFAだから」

──つまり明確なゴールがあるわけですね。

「だってUFCがワールドベストでしょ? ベストファイターがベストファイターと戦い、ベストが決まる。MMAを戦うなら、私もベストを目指す。なら、その場はUFCだけ。最終目標はUFCのチャンピオンになること。確かにMMAを戦い始めたのは遅いけど、それまでに私は柔術家、アスリートとして多くの経験を積んできた。だからUFC世界チャンピオンになるという目標も現実的だし、必ず実現すると信じているわ。

そのUFCと契約できる力をつける場所、経験を積めるプロモーションがLFAで。対戦相手、ファイトウィークの過ごし方からUFCで戦うための準備になる。LFAの試合はUFC Fight Passで中継されているし、私のゴールに近づくには最適で。そうデビュー前から決めていたけど、試合の方が決まらなかったから、アンデウソン・シウバとチェール・ソネンのボクシングマッチを組んだイベントで戦っただけで。最初からLFAでキャリアを積むつもりだった。

10月にLFAで勝って、すぐにでもまた戦いたいと伝えていたら、本当に1週間後に今回のオファーが来たの(笑)。LFAにはイージーファイトはないから、今の自分を知ることができる。それこそUFCと契約するために必要な経験で。でも急いではいないわ。しっかりと力をつけるために、LFAで試合を重ねてLFA女子バンタム級のベルトを巻くこと。LFAのベルトは、次のレベルに進むことができる証明書ね」

──それが実感できる前回のLFA初陣だったかと。殴られ、カットし流血もありました。デビュー戦はリング、LFAは当然ケージで。スタンドでのバックを制してのマタレオンは、まるで金網をマットに見立てて極めたような感じでした。

「ケージで戦うことは正直、練習を始めた頃は簡単じゃなかった。金網があるから、私の柔術はアジャストが必要だと考えていて。でもホントに今言われたように、ケージを使うことで多くが解決できた。練習でバックに回ろうといて、相手が立ちあがって私を金網に押しつけてきた時に、『あぁケージが私を助けてくれるわ』って(笑)。

実際に前の試合でも、ケージを背中してスタンドでRNCを極めることができた。ただ、試合自体は簡単じゃなかった。左を2発被弾し、頭がクラクラしてしまって。とにかく休まないといけないって思って必死だった」

──懸命に組みついていきましたね。

「実はあの時に両手の開いて、相手の拳の前に置くようにして圧力をかけて前に出たんだけど、あの動きこそペドロに習ったセルフディフェンスだったの」

──おお、そうなのすか!! 必死になって距離を詰めていたのかと思っていました。

「必死にはなったいたのは事実だけど(笑)。そうやって組んでもテイクダウンを奪うことはできずに離れられてしまったけど、あの押し込んでいる時間でダメージを抜くことができたわ。それでも余裕は全くなくて『少しでも早くテイクダウンを奪わないといけない』って動いていると、また殴られて(苦笑)。

あそこで前に出たことは、色んな人から間違っていると指摘されたわ。ただ、前に出ないともっと殴られていたはず。今から振り返ると、あの時間こそ私に必要だった経験で。柔術では絶対的にディフェンスには自信があるから、私はどんどん積極的に前に出ることができるけど、打撃だと前に出るだけでなく、頭を動かして後ろもサイドも使わないといけない。

私自身がパンチを打つことも必要で。同じテイクダウンでも、そこまでのプロセスや必要な情報量は全く柔術とは別モノで。最初から打撃を進化させないといけないことは分かっていたけど、あの経験をしてより真実味が増すことになったわ」

──この1カ月少しのインターバルの間も、打撃に重点を置いてきたのでしょうか。

「すぐに成果が出るということじゃないけど、試合の直後からボクシングの練習を再開させたわ。金曜日の試合では、少しでも練習をしてきたことが出せればなって思っている。どれだけ、打撃の間合いで自分の戦いができるのか。しっかりと上体を起こして構えて、相手を見ることがでできるのか。肩を使って、頭を守ることができるのか。習得中の打撃をいかに試合で使えるのか。そこが一番大きなチャレンジね。

前回の試合よりは上手くなっているけど、相手が違うから。相手の動きが違うと、自分ができることも変わって来る。その部分で、私はまだまだ経験不足。でも、練習してきた打撃とテイクダウンを組み合わせて戦いたいと思っている。倒してしまえば、私には柔術がある。いかに速く動き、疲れないで組みつけるのか。

今は柔術が絶対的な武器だけど、このままではUFC世界チャンピオンにはなれない。テイクダウンできなければ、強いパンチを当てることができるようにならないと。それがあれば相手は打撃の防御が必要になってくる。なら、テイクダウンも仕掛けやすくなる。次の試合もそうだけど、実戦こそ一番の練習・経験になるわ」

──と同時に観客の前で戦うプロの試合です。

「私が期待されているのは、またサブミッションで勝つこと。フィニッシャーだし、私自身フィニッシュして勝ちたいと思っている。勝利への近道が、柔術で勝つことだし。コンプリートファイターにならないといけないけど、私は柔術を背負って勝っていきたい。金曜日の試合も1Rで一本勝ちするわ。RNCになるか分からないけど、とにかく試合を楽しみにしてほしいわ。会場のファンだけでなく、日本のファンにも。

もう10年も前になるけど、日本に行って本当に皆が歓迎してくれたの。私の柔術キャリアを後押ししてくれた日本の皆に、今後は私のMMAキャリアをサポートしてほしい。次の試合も、愛する日本の皆に応援してもらいたい」

■視聴方法(予定)
12月7日(土・日本時間)
午後12時00分~UFC FIGHT PASS

■ LFA198メイン対戦カード

<ライト級/5分3R>
リッチー・ミランダ(米国)
ウーゴ・オヤルスン(チリ)

<女子バンタム級/5分3R>
ビア・メスキータ(ブラジル)
フェルナンダ・アラウージョ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
コール・ラーセン(米国)
イライ・ブラジライ(イスラエル)

<女子ストロー級/5分3R>
シドニー・トリーヨ(米国)
ステファニー・ネイヤン(米国)

<ウェルター級/5分3R>
アルトゥル・バホス(ブラジル)
タイ・ミラー(米国)

<フェザー級/5分3R>
クリス・マカーテ(米国)
シャヒーン・サンタナ(米国)

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ONE ONE Empower Report デニス・ザンボアンガ ブログ ミシェル・ニコリニ

【ONE Empower】これはもう恐怖判定。ダメージ無し、TD決めたザンボアンガがハム・ソヒに敗れる

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
Def.2-1
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

サウスポーのハム・ソヒが左ストレートを当てる。ザンボアンガの前進に距離を取り直したハム・ソヒは、ジャブの叩き合いから組まれヒザを入れる。ケージに押し込んだザンボアンガは、ボディロックからテイクダウンを狙う。金網を使って耐えたハム・ソヒは。正対してきたザンボアンガの頭を押してパンチを打っていく。

首相撲でヒザを入れたハム・ソヒだが、ザンボアンガも頭をつけてボディチェンジ──ダブルレッグへ。シングル、ダブルにしっかりと対応するハム・ソヒに対し、ザンボアンガもヒザを入れる。残り1分、ザンボアンガが押し込んだ状態が続き、ハイクロッチもウィザーで耐えたハム・ソヒだが、最後の最後にボディロックで尻もちをつかされた。

2R、サンボアンガが右を伸ばす。ハム・ソヒは左を入れ、ザンボアンガが右を返す。左から組みに行ったハム・ソヒ、切ったザンボアンガの組みをハム・ソヒも防ぐ。ハム・ソヒの左、ザンボアンガの右が交錯する。サンボアンガは臆することなくハム・ソヒと立ち合い、右を伸ばす。最小限のステップでかわすハム・ソヒは、左を当てる。ザンボアンガは右を返し、ハム・ソヒがダブルレッグを防ぐ。直後にダブルレッグから走ったザンボアンガが、テイクダウンを決める。

ハム・ソヒもすぐに立ち上がるが、ケージに詰められた状態が続く。必死でダブルレッグを防ぐハム・ソヒは、ヒザをボディに2つ受け、エルボーを打たれる。残り30秒でレフェリーがブレイクを命じる。ハム・ソヒの左、ザンボアンガの右とこれまでと同じ交錯が見られタイムとなった。

最終回、叩き合いからハム・ソヒが左、かわしたザンボアンガの右も当たらない。左と右を打ち合い、ザンボアンガが前蹴りを入れる。どちらもミドルを蹴らない展開のなか、ザンボアンガが左ジャブを届かせる。ハム・ソヒも左フック、右を返したザンボアンガはこの回は組みにはいかない。

コンビネーションがなく、ほぼ左だけで戦うハム・ソヒ。その左を振るって前に出ると、ザンボアンガも右からダブルレッグを仕掛け、両者の頭がぶつかる。ハム・ソヒは左目尻を切り、ザンボアンガは額から流血が見られる。

ザンボアンガにドクターチェックが入る。長引く中断後、再開するとザンボアンガ右を振るって前に出て、ダブルレッグからリフトアップしてテイクダウンを決める。ハーフからクローズドを取ったハム・ソヒだが、このままでは判定で厳しくなる。流血のザンボアンガがパンチを落とす。ハム・ソヒの顔が返り血で真っ赤に染まる。

サンボアンガはガードの中で、細かいパンチを落とし続ける。ハム・ソヒも下からパンチを入れるが、反撃ならず時間に。

ハム・ソヒのコスチュームが真っ赤になっているなか、ジャッジの裁定が読み上げられる。と、判定はスプリットに割れ──なんと、ハム・ソヒに凱歌が挙がる。この裁定は理解不能。パンチのヒット数に差があったのかもしれない。ただし、ダウンを奪ったわけでも、ザンボアンガにダメージもなかった。頭が当たった時も、ザンボアンガに非があるという指示も見られなかったはずだ。この試合展開でテイクダウンとトップが評価されないのであれば、これはもうMMAではない──ミステリー裁定、いや恐怖判定だ。


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【ONE Empower】ヂィンナンに挑戦、ミシェウ・ニコリニ「柔術で勝つとかは、関係ない」

【写真】挑戦者、でも女王の風格(C)MMAPLANET

本日3日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE「Empower」のメインで、ムンジアル黒帯8冠&DACC優勝のミシェウ・ニコリニが、ONE世界ストロー級王者シィオン・ヂィンナンに挑戦する。

組み技で彼女に比肩する選手はONEには存在しない。それでもMMAを戦う彼女にとって柔術は、勝つための一つの要素であることを明言した。

鍵は打撃。そんな世界挑戦を前にニコリニに話を訊いた。


──シンガポール入りして、今の調子はいかがですか(※試合は8月27日に行われた)。

「全てにおいて良い感じね。2日前にシンガポールに着いて快適に過ごしているわ。ホテルのバブルにいて、外出はできないけど問題ない。トレーニングもできているし、今もプールで泳いできたばかりなの。ファイトウィークだし、これで十分よ」

──フラストレーションはなさそうですね。

「この状況だしね。外をで出歩くことがショーを開くことに対して、どれだけ危険かは分かっているから。私はブラジルに住んでいるし、COVID19と向き合うには本当に色々な制約があることを経験してきたわ。シンガポールで試合をする。そのために必要な感染予防対策に従うのは当然の話よ」

──さすが大人ですね。ブラジルでは、大変なことを乗り越えてきたかと思います。

「そうね。今は練習も自由になったわ……でも、ようやくね。ブラジルでは国民の大体50パーセント以上がワクチン接種を済ませたから、よりオープンになってきていて。人々も以前のような生活を求めてワクチン接種を受けているわ」

──つまり、ワクチン接種が進むまで多くの制限があったということですね。

「今でも自主的に信頼のおける少人数のグループで練習をしているけど、街中はよりオープンになっているわ。1年半前、ブラジルでコロナ感染が爆発的に広まる前に、私はタイトル挑戦が決まっていて。パンデミックが始まった時も、懸命に練習だけは続けていたの。ずっとトレーニングパートナーと2人っきりで。来る日も、来る日も何カ月間と、彼女と2人で練習を続けたわ。8カ月前に練習場所が開放されるまで」

──パンデミック後、ブラジル国内でグラップリングの試合に出るようなこともなかったのでしょうか。

「ブラジルでは今年になるまで、ほとんどコンペティションが行われていなかった。私にとって、今回のタイトル戦はCOVID19が広まってからは初めての試合よ」

──今大会はONEで初めての女子だけのイベントになります。

「アメージングね。このショーのヘッドライナーになれて、凄く嬉しいわ。何より、本当に素晴らしい選手が揃っていることが最高ね。アトム級GPがあって、私はストロー級。アトム級のように層が厚いということはないけど、シィオン・ヂィンナンがいて、アンジェラ・リーもチャレンジした。これからストロー級にも強い選手が集まってくると思うわ。そうそう、名前は忘れたけど良い日本人選手(※三浦彩佳)もいるし。あの子も凄く良い選手だし、これからはストロー級の戦いも面白くなってくるはず。私自身、楽しみでしょうがない気持ちね」

──ではその頂点にあるチャンピオン、シィオン・ヂィンナン選手の印象を教えてください。

「個人的には知り合いじゃないんだけど、皆からとても良い人だと聞いているわ。打撃はもちろん、グラウンドゲームもできるし、上手く試合をまとめることができる選手ね。動きも速い。とても尊敬しているけど、ケージのドアが閉められたら倒すべき相手。どうなるのか、楽しみにしてほしいと思っている」

──いくら彼女が寝技ができても、ミシェルの寝技と比肩できる選手はONEにはいません。とはいえ、あのストライカーを相手にどれだけに寝技に持ち込むことができるのか。テイクダウンが鍵を握ってくると思いますし、そのためには打撃も必要です。

「ブラジルでずっと打撃の練習をしてきたわ。去年、シィオン・ヂィンナンと戦うことが決まってから。私のスタンドゲームは成長した。でもパンチを打たなくて、柔術に持ち込めるならそうするわ(笑)。彼女と私の距離が近づいた時、何かが起こるから。そこは期待してほしいわ」

──グラップラーが序盤からテイクダウン&コントロールしても、フィニッシュできないと疲れてガスアウト状態に陥るという試合は幾千と行われてきました。

「大丈夫よ。5Rのスパーリングを2度、3度と1日に行ってきたから、スタミナには問題はない。全てで、上手く仕上げることができてから。スタミナがどれだけもつか。多くの人はスタミナをつけるために走れというわ。でもファイターのスタミナはランニングではなくて、スパーリングで養われるもの。リアルなシチュエーションでのスパーリング、ケージのなかで起こる全てのことを予想し、全ての動きを使ったスパーリングでしかMMAファイターのスタミナは創れないと私は思っているの。

なにより、今回の試合にむけてデミアン・マイアとずっと練習してきて、ずっとアドバイスを受けてきたの。動き、技、思考とあらゆる面でデミアンはリードしてくれて。ずっとストライカーやレスラーと戦ってきたから、私にとってデミアン以上に参考になる選手はいないわ。彼は私のアイドルよ」

──デミアン・マイアは今も、そしてこれからもケージのなかで最高の柔術家です。ただし、彼はUFCで戦ってきました。ONEではグラウンドのヒザがあります。ここはどのように捉えていますか。

「グラウンドでのヒザは、私にとって追い風よ。寝技でのオプションが増えるし。使われることより、使う機会が断然多いはずだしね」

──ではデミアンのように引き込むことも考えていますか。

「デミアンのように引き込むのではなくて、私の戦い方として引き込むことはあるでしょうね。とにかくタイトに戦って、アタックすることが私を勝利に導いてくれることは確かよ」

──ところでミシェウは柔術の優秀性を示すためにMMAで戦う……という気持ちを持っていますか。

「ノー。そんなことは考えていないわ。私にとって本当に柔術は大切なものよ。簡単に身につくものじゃない。だからといってMMAを戦う上で、柔術は全てじゃない。私自身MMAを戦う時は、他のスタイルのトレーニングにより時間を割いているし。ボクシング、ムエタイ、レスリング、テコンドー、それらを混ぜた練習を、ね。

もちろん私は柔術のトレーニングをストップすることはないし、試合前以外は道着を着た練習も週に2、3度続けている。道着を着ることで、細かなディティールを知ることができるし、絶対に欠かせないわ。繰り返すけど、私にとって柔術はとても大切なもの。私は生涯、柔術家よ。

それは変わることはない。でも、打撃で勝つのか、柔術で勝つのか──とか、そういうのは関係ないの。勝つことが最大の目標だから、勝ち方にはこだわらない。ボクシングが成長しているから、そこを見せて勝ちたいとも決して思わない。私がウェルラウンダーだと試合で証明したいなんて考えていないし。チャンスがあれば柔術に持ち込んで、柔術で倒す。それで勝てるから。試合は勝つために戦うのよ。」

──ミシェル。色々と興味深い話、ありがとうございました。

「アリガト。日本の皆が私の試合を楽しんでくれることを願っているわ」

■視聴方法(予定)
9月3日(金・日本時間)
午後8時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後8時30分~ONE Super App

■ONE Empower 対戦カード

<ONE世界女子ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィオン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者] ミシェル・ニコリニ(ブラジル)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
ハム・ソヒ(韓国)
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
アリョーナ・ラソヒーナ(ウクライナ)
スタンプ・フェアテックス(タイ)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
モン・ボー(中国)
リトゥ・フォーガット(インド)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP準々決勝/5分3R>
平田樹(日本)
アリス・アンダーソン(米国)

<キックボクシング女子アトム級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
クリスティーナ・モラレス(スペイン)

<ムエタイ女子ストロー級/3分3R>
ジャッキー・ブンタン(米国)
ダニエラ・ロペス(アルゼンチン)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP補欠戦/5分3R>
VV.Mei(日本)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)

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