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【RIZIN LANDMARK10】フライ級がヤバい!! 伊藤裕樹戦へ、イ・ジョンヒョン「自分にとって丁度良い獲物」

【写真】伊藤の情報を入手しまくり。パチンコネタで計量を盛り上げた(C)SHOJIRO KAMEIKE

RIZINフライ級戦線が熱い。豊富な日本勢に加え、海外勢の来日が増えている。明日17日(日)に名古屋市港区のポートメッセなごやで開催されるRIZIN LANDMARK10にイ・ジョンヒョン、アリベク・ガジャマトフ、そしてトニー・ララミーが来日する。
Text by Manabu Takashima

ダゲスタンのガジャマトフ、カナダのララミーに続き、今回は韓国のイ・ジョンヒョンのインタビューを掲載したい。コロナ禍のK-MMAが生んだ新鋭は、3分✖3Rで寝技限定という速攻型&打撃重視のMMA=ARCで4連勝を飾り、ROAD FCにステップアップを果たす。ここでも3連勝、2試合がKO勝ちというレコードを築き、19歳の若者は自らを「天才」と呼ぶようになっていた。

しかし、Road to UFCでは初戦でマーク・クリマコに敗れ、母国での再起後は今年4月にRIZINに初来日をしたものの神龍誠にキャリア初の一本負けを喫した。この2つの敗戦で自らの力不足を実感したイ・ジョンヒョンだが、今回の伊藤祐樹戦には絶対の自信を見せ、ビッグマウスも復活している。

その自信の裏には、チームAOMのイ・ユンジュン監督の気持ちを削り続ける猛トレーニングが存在した。


──RIZIN LANDMARK10で伊藤祐樹選手と対戦するイ・ジョンヒョン選手です。MMAPLANETには今から2年半前に初めてインタビューをさせて以来の登場となります。当時は戦績7勝0敗でまさに怖いモノ無し状態でしたが、昨年のRoad to UFCで初めて挫折を味わいました。Road to UFCの経験は如何に生きていますか。

「あの負けは、しばらくはトラウマになっていましたね……。デビューから無敗で……ずっと勝っていたので、心が折れて。格闘技を辞めようかと思い詰めるような状況に陥っていました。

でも、せっかく始めた格闘技です。初心に返るということではないですが、やっぱり自分は格闘技が好きですし、自然とやりなおそうと思えるようになりました。同時にあの敗北から、自分はまだまだ十分でないことを学びました。誰にも負けない自信を持っていたのですが、経験、スタミナ、パワーと足らないところだらけでした。だからこそ、もっと頑張ろうと思えるようになれました」

──その後Road FCで一度戦って、今年の4月にRIZINに初来日を果たしましたね。それこそ前回のインタビュー時に那須川天心選手と戦いという発言も聞かれました。

「Road to UFCを選んだということではなくて、オファーがRIZINより早かったから出場しました。日本のMMAには強い選手が多いですし、RIZINで自分の力を見せたいと思ってRIZINで戦うことを決めました」

──そして強い日本人、神龍誠選手に敗れました。

「十分に勝てると思っていました。結果的にRoad to UFCの時と同じですが、自分はまだまだ不足しているところが多いと勉強させてもらいました。RIZINという大舞台、そしてリングで戦うことも初めてだったので、経験不足を感じましたね」

──テイクダウンのある相手に、自分の打撃ができない。マーク・クリマコ戦、神龍誠戦はそのように見えました。これらの敗北を経て、レスリングに力を入れるなどトレーニングに変化はありましたか。

「正直、Road to UFCの時に相手選手の戦い方が怖いと感じていました。チームも移ったばかりで慣れないことが多く対処しきれていなかったですし、レスリングが強いことを意識過ぎて、持ち味である打撃の威力が半減してしまっていました。それ以前に、自分のファイトスタイルは完成度が低かったです。ただ、神龍戦以降の練習で打撃の感覚も取り戻し、レスリングは攻めも防御も成長したので今回の試合は大丈夫です」

──以前はフリーで活動していましたが、Road to UFCの時は特定のジムに所属していたのですね。

「2年前は確かにフリーでした。今はイ・ユンジュン監督のチームAOM(Art of MMA)で練習しています。金曜日のプロ練習にはキム・スーチョル選手のような王者クラスの選手や、外国人選手も来ているので良い練習ができています。

フリーで出稽古をしていた時も、自分では頑張っているつもりでした。でも、結果的に追い込めていなかったことは多々あると思います。今はイ・ユンジュン監督から、しっかりとプロの一流選手と同じだけの練習を課されています。力を抜くことなど一切できない。もの凄く追い込まれています。その結果、ようやくMMAが少しだけ分かってきたような気がします」

──イ・ユンジュン監督はキム・スーチョル選手によると「メチャクチャ、追い込まれる」という話ですが、相当に厳しい指導者なのでしょうか。

「いや、スーチョルさんより自分の方がもっと鍛えられていますよ(笑)。スーチョルさんは体力面、自分は精神面で鍛えられてきました。試合は5分✖3Rです。でも、イ・ユンジュン監督は僕らに5分✖3Rのスパーリングを3本やらせてから、6分✖3Rのスパーをするように命じています。その間、相手は5人も入れ替わるんです。

そんなスパーを週に2度……続けていると、本当に気が狂いそうになります。結果、スタミナもメンタルもメチャクチャ強くなりました。なのでイ・ユンジュン監督には感謝しています。

試合まで3週間残っていますが(※取材は10月24日に行われた)、試合の心配だけでなく……明日も6分✖3Rのスパーリングの日なので……もう、そっちの方に気持ちがいってしまって憂鬱でしょうがないです(苦笑)」

──それだけ厳しい練習を繰り返していると、2年前のインタビュー時とは違う自信を手にできているのではないでしょうか。

「自分はRoad to UFCでも、神龍戦でも結果を残せなかったです。もうRIZINで戦う機会は与えられないかもしれないと思っていました。だから、伊藤選手との試合は自分のMMAファイター人生で本当に大切な試合になります。緊張感を持って、戦うことができるはずです。

伊藤選手はストライカーです。でも自分の打撃は以前より、ずっと成長しているので必ずKOします。それに次の試合はケージなので、伊藤選手に本当のMMAを教えてやります」

──その打撃ですが、イ・ジョンヒョン選手はスイッチヒッターで伊藤選手はサウスポーです。

「サウスポーは苦ではないです。打撃で、伊藤選手を圧倒できると思います。伊藤選手はRIZINの中ではストライカーで通っていますが、自分にとっては丁度良い獲物になりますね」

──サウスポーと対戦する時に、相手の前足の外に立って中心軸をキープしたいかと思います。つまりスイッチをすると、その中心軸が変わって来るので、逆に中心を取られることもあるかと思います。そうならないように構えだけでなく、スイッチすると位置取りも変えていますが、そこは自然に動けているのか、意識して動いているのでしょうか。

「無意識ですね。自分は背も低いですし、リーチも短いです。なので距離を詰めて、自分も相手のパンチを被弾する距離で戦います。なので、それだけ動かないといけない。動くから、あの距離で戦うことが可能になるんです」

──押忍。ではインタビュー時間が無くなってきました。最後に日本のファンにどのような試合が見せたいか。教えてください。

「神龍戦の後、組み技の克服に努めてきました。ただ、伊藤選手との試合はその必要がなかったと思うほど、伊藤選手は寝技が下手です。今回はケージですし、ベストバウトを戦うつもりでいます。2025年にRIZINでフライ級GPがあるならぜひとも参戦したいですし、キックでもシン・ジョンミン選手を破った那須川龍心選手と戦いたいと思っています。驚くほど沢山、応援してくれる日本のファンの皆さんに感謝しています」

■視聴方法(予定)
11月17日(日)
午後1時00分~ABEMA、U-NEXT、RIZIN100CLUB、スカパー!、RIZIN LIVE

■ 対戦カード

<フェザー級/5分3R>
ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
摩嶋一整(日本)

<バンタム級/5分3R>
昇侍(日本)
芦澤竜誠(日本)

<女子スーパーアトム級/5分3R>
浜崎朱加(日本)
シン・ユリ(韓国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イゴール・タナベ(ブラジル)
マルコス・ヨシオ・ソウザ(ブラジル)

<フライ級/5分3R>
伊藤裕樹(日本)
イ・ジョンヒョン(韓国)

<フライ級/5分3R>
柴田“MONKEY”有哉(日本)
ヒロヤ(日本)

<フライ級/5分3R>
村元友太郎(日本)
トニー・ララミー(カナダ)

<フライ級/5分3R>
北方大地(日本)
アリベク・ガジャマトフ(ロシア)

<バンタム/5分3R>
アラン“ヒロ”ヤマニハ(ブラジル)
山本聖悟(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
加藤久輝(日本)

<バンタム級/5分3R>
白川ダーク陸斗(日本)
マゲラム・ガサンザデ(アゼルバイジャン)

<ライト級/3分3R>
キム・ギョンピョ(韓国)
倉本大悟(日本)

<フェザー級/5分3R>
鈴木博昭(日本)
秋元強真(日本)

<バンタム級/5分2R>
窪田泰斗(日本)
日比野“エビ中”純也(日本)

<ヘビー級/5分2R>
稲田将(日本)
佐々木克義(日本)

<フェザー級/5分2R>
TATSUMI(日本)
平松翔(日本)

<キックボクシング55キロ契約/3分3R>
としぞう(日本)
JIN(日本)

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45 AB BELLATOR DWCS LFA LFA192 MMA MMAPLANET o Road to UFC UAEW UFC アイザック・トムソン アジス・オソルベク・ウウル エジソン・バルボーサ カーロス・ヘルナンデス ケヴィン・ボルハス ジャスティン・スコッギンス フィリッピ・エスティビス マーク・クリマコ ユライア・フェイバー ヴィクトル・ジアス 上久保周哉 松嶋こよみ 鶴屋怜

【LFA192】RTU=マーク・クリマコ×DWCS=ヴィクトル・ジアス。バンタム&フェザー級も見逃せない

【写真】Road to UFCからUAEW、そしてLFA。UFCを目指し、流離いつつLFAに戻ってきたクリマコ (C)MMAPLANET

13日(金・現地時間)、カリフォルニア州サンタクルーズのカイザー・パーマネンテ・アリーナでLFA192「Climaco vs Dias」が開催される。
Text by Manabu Takashima

メインでは昨年のRoad to UFCフライ級準決勝で鶴屋怜に判定負けを喫したマーク・クリマコが地元といって良い北カリフォルニアのサンタクルーズで、ヴィクトル・ジアスを迎え撃つ。


ヒザの負傷で万全でなかったとはいえ、クリマコは鶴屋にとってUFCデビュー戦のカーロス・ヘルナンデスと並びフィニッシュできなかった対戦相手だ。加えてヘルナンデスよりも拮抗したファイトになっていた。

そんなクリマコにとって北カリフォルニアで試合は2018年5月のBellatorサンノゼ大会以来、実に6年4カ月振りとなる。Road to UFC後はUAEWで南アフリカのフライ級の新鋭トゥメロ・マニアマラにスプリット判定勝ちして以来の実戦となる。

対するジアスは柔術黒帯でマルロン・モラレスやエジソン・バルボーサと同郷のファイターで、両者を追ってATT所属となっている。クリマコが10勝3敗なのに対し、ジアスは10勝2敗でTitan FCでフライ級王者となり、昨年のコンテンダーシリーズに出場している。しかし、ペルーのケヴィン・ボルハスに判定負けを喫してUFCとの契約はならなかった。

それでも今年の6月にはジャスティン・スコッギンスをRNCで破り、LFAから世界最高峰を目指すことを選んだ。いってみるとRoad to UFCとDWCSで躓いたファイター同士が、ノンタイトルの今後を大きく左右する一戦に挑むことになる。

また本日、松嶋こよみと上久保周哉のLFAとの契約が発表されたが、そうなるとフェザー級とバンタム級はマストウォッチとなる。

コメインで組まれたキルギスのアジス・オソルベク・ウウルとブラジルのフィリッピ・エスティビスのバンタム級戦は前者の計量失敗で138ポンドのキャッチウェイト戦で実施される。

フェザー級ではチーム・アルファメール所属のダウンアンダー=アイザック・トムソンがイズラエル・デルガドと戦う。

プロ3戦目からLFAで戦うトムソンは、まだ22歳ながらユライア・フェイバーがその将来性の太鼓判を押す完成度の高いウェルラウンダーだ。しかし、4月のシャヒーン・サンタナにまさかのスプリット判定負けを喫している。この一戦に敗れ、コンテンダーシリーズ出場を逃したといっても過言でないトムソンの再起戦──対戦相手のデルガドを含め、松嶋の対戦相手になる可能性があるだけに、上記の138ポンド契約戦となったオソルベク・ウウル×エスティビスと共に見逃せない。

オロルベク・ウウル×エスティビス戦以外もミドル級のランデル・ウォレス×ヘナト・ヴァレンチ、女子ストロー級のケンドラ・マッキンタイヤー✖クリスザイダ・アデームスも共に前者が体重をリミットまで落とせず契約体重マッチとなっている。

6試合のメインカード中3試合がキャッチ戦、常にそうではないが体重超過率は高い──それもLFAの現実として知っておく必要があるだろう。

■視聴方法(予定)
9月8日(土・日本時間)
午前11時00分~UFC FIGHT PASS

■ メイン対戦カード

<フライ級/5分3R>
マーク・クリマコ(米国)
ヴィクトル・ジアス(ブラジル)

<138ポンド契約/5分3R>
アジス・オソルベク・ウウル(キルギス)
フィリッピ・エスティヴィス(ブラジル)

<189.6ポンド契約/5分3R>
ランデル・ウォレス(米国)
ヘナト・ヴァレンチ(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
アイザック・トムソン(豪州)
イズラエル・デルガド(米国)

<116.8ポンド契約/5分3R>
ケンドラ・マッキンタイヤー(米国)
クリスザイダ・アデームス(米国)

<ミドル級/5分3R>
テオ・ヘイグ(米国)
ディラン・ダイビッツ(米国)

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45 LFA MMA MMAPLANET o Road to UFC Road to UFC2023 Road to UFC2023Final Special UFC チーニョーシーユエ ハニ・ヤヒーラ マーク・クリマコ ユライア・フェイバー 大沢ケンジ 柏木信吾 水垣偉弥 鶴屋怜

【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:2月 鶴屋怜×チーニョーシーユエ「どう原石が磨かれるか」

【写真】練習仲間たちは、まさに渡辺を送り出す。そんな空気に包まれていた(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2024年2月の一番──2月4日に行われたRoad to UFC2023Finalの鶴屋怜×チーニョーシーユエ戦について、担当・中村の「取材は3月31日だったのでギリギリOK」という言い訳と共に語らおう。


――取材日が3月31日ということで……ギリギリ2月の「今月の一番」で間に合ったということでよろしくお願いします(笑)!今回は鶴屋怜×チーニョーシーユエをピックアップしていだきました。

「トーナメント全体を見て鶴屋選手の強さが際立っていたと思いますし、特化している技術でトーナメントを勝ち抜いた凄さもあったと思います。これからUFCで試合を重ねていくことで、21歳の彼がどう仕上がっていくのかを楽しみにしています。この試合そのものを推したいというよりも、これからの鶴屋選手への期待感も込めて、この試合をセレクトしました」

――鶴屋選手はレスリングのバックボーンがありますが、テイクダウン&トップキープという手堅い戦い方ではなく、色んなことにトライする思い切りのよさが特徴的なファイトスタイルだと思って見ていました。

「だからこそ準決勝でマーク・クリマコとフルラウンド戦ったことが大きな経験になったと思っていて。あの思い切りのいいスタイルをUFC本戦でもやりきるのは大変だと思うんですよ。Road to UFCの選手たちは決してトップレベルではないですし、それで今のスタイルをやりきれている部分もあると思うので。逆にクリマコはLFAでもキャリアがある選手なので、ああいった試合の経験も踏まえてUFCでどんな戦い方をするのか注目したいです」

――例えば首投げからの袈裟固め。あれは鶴屋選手の必殺技であり、得意な形である一方、UFCの本戦レベルの選手に対してはリスキーな技なのかなとも思ってしまいます。

「そうなんですよ。ただ、今の鶴屋選手はダイヤの原石だと思うので、ここからどう原石が磨かれていくかですよね」

――自分の武器をどうぶつけるか。ユニファイドルールや北米の選手と戦ってどう勝つか。UFCにチャレンジする選手はそのバランスが一つの壁だと思っています。

「今のスタイルのままでいくと、いずれ大きな壁にはぶつかると思います。それは本人もチームのみなさんも考えていることだと思いますし、UFCのトップ選手たちと戦う前にUFCでの戦い方・勝ち方を身につけてほしいです。UFCとしても鶴屋選手を将来性のある存在的な扱いで、ちゃんと段階を踏んだ相手を用意してくれると思うので、そこで一戦一戦成長しながら勝っていく。

そして最終目標までたどり着いてほしいです。だからこそ鶴屋選手のUFCデビュー戦が決まる前にRoad to UFCの試合を再チェックしておくと、鶴屋選手の進化や変化も分かって、日本のUFCファンにとってはすごくいい楽しみ方もできると思います」

――そういう意味ではいきなり本戦契約するのではなく、Road to UFCから実績を積んでトップ選手と勝負できる環境は遠回りのように見えて充実したキャリアの作り方とも言えますね。

「はい。それこそ僕はCAGE FORCEのトーナメントで優勝して、WECデビュー戦の相手がミゲール・トーレスでタイトルマッチでしたからね(笑)」

――北米デビュー戦の相手がいきなり当時の軽量級世界最強(笑)。

「すごく貴重な体験でした(笑)。今はUFCのオペレーションのなかで、試合が決まる→試合までの練習・準備をする→試合当日を迎えるという流れを経験できる場があるので、それはすごく大きいと思いますね」

――UFCというピラミッドの一番下からキャリアを積み重ねることは決してネガティブではない、と。

「むしろポジティブな要素の方が多いと思います。しかも今UFCで戦っている日本人はみんな若いですし、慌てて試合を重ねるのではなく、今のUFCのレールに乗って、キャリア相応の相手と戦って、着実に上に上がっていくといいと思いますね。平良(達郎)選手はまさにそうじゃないですか。2人とも同じフライ級で、同門のような存在だと思いますが、この2人がランキングを駆け上がってUFCのベルトをかけて戦うことになったら、日本のMMAは盛り上がると思います」

――水垣選手の戦績を振り返ると、WEC・UFC参戦当初は勝ち負けを交互に繰り返して、徐々に勝ち星を伸ばしていくキャリアだったんですね。

「今は契約満了まで試合をやらせてもらえることも多いですが、当時は2連敗したらリリースされるという暗黙のルールのようなものがあったので、毎回崖っぷちの感覚で試合をして、何とかサバイブしていましたね。だから一戦一戦を何としてでも勝たなければいけなかったし、そのプレッシャーも大きくて、自分を成長させる余裕や時間はなかったなとも思います。もう少し時間的な余裕があって、自分を成長するための時間を作れたら、もうちょっと変わった自分を出せたのかなとも思っていて。そういう意味で鶴屋選手はすごくいい環境にいると思うので、自分を磨いて強くなって欲しいなと思います」

――水垣選手がWECで戦ってきた相手も錚々たる選手たち(ミゲール・トーレス(戦)、ジェフ・カラン(戦)スコット・ヨルゲンセン(戦)ハニ・ヤヒーラ(戦)ユライア・フェイバー(戦))ですし、あそこで米国で勝つ術を覚えたことがUFCでの5連勝にもつながったと思います。

「WECの5戦は本当にきつかったですけど、自分を成長させてくれた試合でしたね。WECは一階級の契約選手が20選手くらいで、当時のバンタム級のトップ20人が集まっているような状況だったので、毎回がトップランカーとの対戦だったんです。なかなかタフな戦いでしたけど、今思えば一番充実していた、楽しかった時期だったかもしれないです」

――今回も水垣選手らしいコメントをありがとうございました!

「Road to UFCという注目される舞台を経てUFCで戦う。そこで選手が成長していく、チャレンジしていく過程を見ていくのは今のUFCの楽しみ方だと思うので、鶴屋選手の成長とチャレンジにも注目したいと思います」

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45 AB LFA LFA176 MMA MMAPLANET o Road to UFC UFC   アライジャ・ジョンズ アルフレッド・ウォーカー アン・トゥアン・ホー ブルーノ・ソウザ マーク・クリマコ 河名マスト

【LFA176】河名マストのライバル?! ジョンズが3度目の正直へ。RTU2024出場はあるか、アンにも注目

【写真】計量は既に終了しておりジョンズが144.6pポンド、ウォーカーがリミット丁度の145ポンドでパスしている。如何ににも2人とも戻してきそうな感じだ(C)LFA

9日(金・現地時間)、アリゾナ州フィニックスのアリゾナファイナンシャル・シアターでLFA176「Johns vs Walker」が開催される。
Text by Manabu Takashima

メインイベントはLFAフェザー級王座決定戦=アライジャ・ジョンズ✖アルフレッド・ウォーカーの一戦だ。ジョンズにとっては3度目の正直なるかというタイトル戦となる。


2022年8月に河名マストに圧勝したことで、その強さが日本にも一部伝わっているジョンズだが、それ以前の2021年3月にブルーノ・ソウザ、そして昨年7月にバスケスとベルトを賭けて戦い敗れている。

ただしバスケス戦は2Rに肩固めを仕掛けられた際、アゴを腕の下に戻し、ヒジを押すという動作に入っているにも関わらずレフェリーが落ちたとした試合をストップ。見るからに誤審ではあったが、試合結果はノーコンテストに覆ることはなかった。

当初の予定では、今大会でそのガルシアとダイレクトリマッチが組まれていたが、王者はTUF出演が決まりベルトを返上した。

大会1週間前のこの判断を支持するのが、米国フィーダーショーだ。彼らの興行はUFCに選手を送り出すという大前提があって成り立っている。ステップアップのチャンスをプロモーション側が契約や口約束を盾に阻むことはない。フィーダーショーの価値はいかにファイターをメジャーに送り込むか。そこが徹底されている。

そのために彼らのベルトは存在しており、UFCへの道が開くとTUFだろうが、コンテンダーシリーズがファイターのステップアップを後押しする。J-MMA界はその可能性がある選手の試合が組まないという対策が取られているが、米国ではメインイベントが変更されても、自らのショーからUFCファイターが生まれることが尊重される。

結果、ジョンズとしては新たな対戦相手を迎えるわけだが、そこも彼らのメンタルでは『勝ってUFCに歩を進める』ことがプライオリティで、あれこれと考えることもないのだろう。

ジョンズにとっては、これが最後のステップアップのチャンスという覚悟の方が大きいはずだ。

そんなメインが組まれた同大会で、もう1人注目したいのがコメインのフライ級でミゲール・サンソンと対戦するアン・トゥアン・ホーだ。

フェニックス郊外のグレンデール在住で、MMA Labの一員のアン・トゥアン・ホーだが、生まれはホーチンミン近くタンビエン県のタイニン──というヴェトナム系米国人だ。

つまり──前回のRoad to UFCフライ級トーナメントにフィリピン代表としてマーク・クリマコが参戦していたように、アン・トゥアン・ホーがここでキャリア6連勝を飾れば──誰が当確するか分かっていないが──日本勢のライバルになる可能性がある。全くの仮定の話だが、万が一ということもあるのでRoad to UFC参戦に動いているフライ級選手は、この試合に目を通して損はないだろう。

■視聴方法(予定)
2月10日(土・日本時間)
午後12時~UFC Fight Pass

■ LFA176メイン対戦カード

<LFAフェザー級王座決定戦/5分5R>
アライジャ・ジョンズ(米国)
アルフレッド・ウォーカー(米国)

<フライ級/5分3R>
アン・トゥアン・ホー(ベトナム)
ミゲール・サンソン(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
レスリー・ヘルナンデス(米国)
ブリトニー・カモージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
アリク・ロレンツ(米国)
モンテ・ディオン・オグバナモリソン(ナイジェリア)

<女子ストロー級/5分3R>
マンスアー・アブドゥルマリク(米国)
アラン・センジェレイ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ホビソン・ジュニオール(ブラジル)
カルロ・リッチ(ベネズエラ)

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45 AB KAREN MMA MMAPLANET o ONE RIZIN Road to UFC Road to UFC2023 Special UFC イ・チャンホ スムダーチー チーニョーシーユエ マーク・クリマコ ムハマド・モカエフ ライカ 修斗 太田忍 平良達郎 松井斗輝 根井博登 神龍誠 秋元強真 鶴屋怜

【Special】J-MMA2023─2024、鶴屋怜─02─「達郎君だけでなくライバルに『負けろ』という気持ちはある」

【写真】準決勝、マーク・クリマコ戦の鶴屋怜。完全にZONEに入っている (C)MMAPLANET

J-MMA 2023-2024、第五弾・鶴屋怜、後編。
Text by Manabu Takashima

2月4日、ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるRoad to UFC2023Finalでフライ級決勝に挑む鶴屋怜だが、チーニョーシーユエとの決勝の勝利はデフォルトで既にUFCでどのように戦っていくのか青写真を描いていた。

<鶴屋怜インタビューPart.01はコチラから>


──Road to UFCは自分の動きができれば、負けることはない。一貫して、その想いを持続できているようですね。

「そうですね。マーク・クリマコは自分と似ている部分もあるので、ちょっと警戒していました。それ以外はストライカーが多くて、普通にやれば一本勝ちできるかと思っています」

──UFCとの契約はデフォルトという怜選手ですが、もう契約後のことも青写真を描いているのでしょうか。

「自分、1戦目からランカーとやりたいぐらいの勢いではいます。例えば中国のスムダーチーとか、UFCがやらせてくれるのかは分からないですけど。あの選手もストライカーで寝技もそんなにできない。UFCで最初に戦うには良い相手かなって思っています。どうなるのか分からないですけど、15位とかそこぐらいのランカーと一発目から戦いたいです」

──子供の頃から「日本人初のUFC世界王者」を目標に格闘技に取り組んできました。そのなかで、UFCフライ級戦線では平良達郎選手が、5戦5勝で世界が注目する存在となっています。その辺り、どのように感じていますか。

「今、UFCフライ級ではムハマド・モカエフも5連勝していても、タイトルマッチに届いていないです。達郎君もここから2年は掛かると思います。僕は年齢も2歳下でデビューも2年半遅い分、現時点で達郎君が先を行っているのは当然です。でも、この2年の間に自分が一気に近づく、追い越すぐらい勝って行けばと思います。でも、焦っているということはないです」

──いじわるな質問ですが、自分が先にUFC世界王者になることを考えると、平良選手の試合を見ていて「負けろ」と思うこともありますか。

「それは達郎君だけでなく、チャンピオンになる力に持っていそうな選手……ライバルになる選手が試合をする時は『コイツ、負けろ』という気持ちはあります。同じ階級で同門以外の選手は、負けた方が良いというのは──。それは達郎君に限ったことじゃないです」

──なるほど、これだけ近しいパラエストラ千葉ネットワークとザ・パラエストラ沖縄であっても同門ではないと。

「ハイ。毎日、一緒に練習している選手が僕にとって同門──チームメイトです。達郎君は他のジムの選手ということでもなくて、なんていうのか……家族ではなくて、親戚のような感じですね」

──ではタイトル戦でなくても、対戦相手の一人として戦うことができる?

「UFCならしょうがないです。日本の団体とかで達郎君と戦えと言われると違うかなって思うけど、UFCなら一発目で平良戦が組まれても……。別にランカーが相手になるわけだし、それはそれで自分的にはオイシイんで、やって勝ちたいです」

──平良選手が勝ち星を重ねる間にも、UFCフライ級はブラジルや中央アジアから続々とポテンシャルの高い選手が集まってきています。

「そうっすね。自分、まだ21歳でMMA的には全然完成していなくて。自分がUFCで2年ぐらい経験を積めば、今の自分とは全然違うようになっていると思います。今、こういうことを言っても信じてもらえないだろうけど、2年間UFCと絡めば中央アジアとかのヤツにも負ける気はしないです」

──日本でもフライ級は層が厚く、その日本のトップとの対戦がないことで怜選手の能力に関して、懐疑的な目が向けられることもあります。そのような意見に対して、また日本のフライ級戦線に関してどのように思っていますか。

「う~ん、これから何が起こるのかは分からないですけど……交わることは、今のところはない。そう思っています。別に神龍にライバル心はないし、そっちに行ったんだなって思っていますし」

──日本のフライ級の話題になると、対象はいきなり神龍誠選手ですか(笑)。

「神龍はUFCに行きたいって言っていて、CFFCとかで試合までしたけどUFCと契約できなかったわけじゃないですか。UFCで戦いたいなら、なぜ面倒くさがらずRoad to UFCに出なかったのか。そこに出ないで、僕からすると近道を選んで契約はできなかったからRIZINで戦っている。もう同じ道を歩いているとは思っていないです。

もちろん堀口選手は日本のトップで、世界のトップです。僕自身、堀口選手を越えないといけないことは分かっています。ただ、今の僕には堀口選手を越えるために日本で戦うという道にはいないです。だから、日本で戦うことを選ぶ選手と交わることは──今はないと思っています。

『鶴屋怜、日本で誰と戦ったんだ?』という声があっても、僕はUFCに行って、UFCでチャンピオンを目指します。UFCでチャンピオンになれば、誰も文句は言えなくなる。誰も、何も言えなくなる。僕が目指すのは、そこなんです。だから『日本で強い選手と戦っていない』と言われれば、そうです。そこを見ていないので」

──押忍。あと一点、怜選手はチームメイトのセコンドに就くことが多いですね。週末には連日で、また1日で会場を変えても怜選手が会場にいてセコンドをしているということがありました。

「なんか、頼まれるんですよ(笑)。太田忍さんとかも、毎試合のように『怜、就いてもらえる?』って感じで。KAREN、松井斗輝君、秋元強真もそうですね。チームメイトのセコンドに就くと、勝って欲しいから本当に緊張します。自分の試合であんな風になることがないのに、セコンドだとメチャクチャします。

将来的に自分の試合でも、そんな感じで緊張することもあるだろうし。皆、そこは乗り越えるしかない。そんなときに、セコンドをしていて凄く緊張し、乗り越えた経験は生きてくるのかもしれないです。とにかく、あの感覚は何とも言えない嫌な感じなので。

ただ、それはあくまでも付随してくるもので、チームメイトに勝って欲しいからセコンドをやっています。一緒に練習している仲間だし。それに圧勝とかすると、俺もこの勢いで行くぞって思えますし。ただ負けた時は……これが勝負なんだと、気分が落ちないように自分に言い聞かせています」

──そういえば1月28日に修斗新人王トーナメントのストロー級決勝で、麻生Leg Lock祐弘選手と戦う根井博登選手のセコンドにも就いていますね。

「あぁ、根井は中学の頃からレスリングを習いにきていて。自分がコーチをしていたんです(笑)。それで高校でレスリングをやるとかでなく、MMAをやるようになって」

──2006年6月生まれ。まだ17歳の根井選手ですから、そういうこともあるのでしょうね。既に次世代が育ってきている怜選手ですが、2月4日のRoad to UFC決勝に向けて、一言お願いします。

「一発目、しっかりとインパクトを残す勝ち方をして、自分はUFCでも通用するんだと思われるような試合をします。正直、4階級とも中国人選手が決勝戦で出てきます。フェザー級は2人とも中国人で、凄い勢いになっています。だから俺が中国人選手を止めないと。」

──バンタム級決勝で戦う韓国のイ・チャンホも、韓国と日本がしのぎを削り合って成長し中国に負けないようにしないといけないということを言っていました。

「ハイ。そのインタビューは自分も読みました。ここで中国を止めないと、これからどうなってしまうのかという危機感もあるし。バンタム級は韓国の選手も頑張ってもらう。ライト級で原口(伸)選手にも勝ってもらって──フライ級は絶対に俺が勝ちます」


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【Special】J-MMA2023─2024、鶴屋怜─01─「ラスベガスになったことで気持ちは楽になりました」

【写真】デビュー当時の幼さがすっかりと影を潜めてきた鶴屋怜。この2年の経験が、顔つきをよりシャープにした (C)MMAPLANET

2023年が終わり、新たな1年が始まるなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、始まったばかりの1年について話してもらった。
Text by Manabu Takashima

J-MMA 2023-2024、第五弾はRoad to UFCフライ級決勝戦を控える鶴屋怜に話を訊いた。キャリア6勝で迎えたUFCへの道、その最終関門は日程変更などでゴタゴタもあった。そして右ヒザの負傷もあった昨年をまず振り返ってもらった。


――12月9日に上海で予定されていたRoad to UFCフライ級ファイナル=チーニョーシーユエ戦が2月4日のラスベガスのAPEXに変更されるなど、少しごたつきました。あの時はどのような心境だったのでしょうか。

「僕らの試合がなくなったことすら、全然連絡がなかったです。でも上海の大会がなくなったのは事実で、代わりの大会では僕らの試合は組まれなくて。試合がいつになるのかも分からないから、体重を戻すこともできなかったです。1週間後のラスベガス大会になるとうい話もあったので。そこで食べたりしたら、調整が大変になるから食べるのも我慢していたら、代わりの大会の1週間ぐらい前に決勝戦はそこでは行われないという発表がありました」

──結果、2月にラスベガスに戦うことが決まった時の気持ちは?

「まず中国でなくなったのは、良かったと思いました。相手も中国人で、効かない攻撃でもファンが声を挙げてジャッジが影響を受けるかもしれないので」

──逆に怜選手の有効な攻撃も会場はシーンとしてしまって。

「ハイ。向うの攻めは空振りでもわくでしょうし。まぁ一本、フィニッシュすれば関係ないという風には考えていたのですが、やっぱりラスベガスになったことで気持ちは楽になりました。アウェイ感は嫌だったので、これで僕も彼もイーブン。ハンデはなくなりました。それとラスベガスは1カ月滞在したことで気候とかも分かるし、何を持って行けば良いのかとか準備する面でも気持ちが楽です。APEXでUFCを観戦したことがあるので、その空気感も分かるし、自分に有利な方向に進んでいるような気がします。

いつもは試合が決まると無我夢中になっていて、気がつけば試合の日になっているような感じなんです。今回も普通に勝たないといけない試合で、勝つんですけど──ベガスになって不安要素がなくなったというか。やっぱり少しでも不利なことは減らしたいし、相手が飛行機に乗らないだけでも減量などを考えると有利なわけじゃないですか。中国で戦うということだけで、パフォーマンス的にも相手の方が力を発揮しやすい。それでも負ける気はなかったですけど、ベガスでやる方が気持ち的に楽になりました。

あと2カ月、時間ができたことで時々痛みを感じていたヒザの調子が以前と同じところまで戻せたのも大きいです。12月だと90パーセントだったのが、2月になったので100パーセントで戦えます」

──左ヒザの負傷で、準決勝は組み技や寝技の練習ができない状態で挑みましたが、そこも12月の時点で90パーセントまで回復できていたのですね。

「朝、起きた時にちょっと痛みが出てきそうだって感じることがあって。そういう日は練習内容を変えていたのですが、今はほぼなくなりました。ラントレもグラップリングも、十分に取り組むことができています。

準決勝前は組み技の練習はできなかったです。テイクダウンにしても踏ん張るとヒザが痛かったので、ぶっつけ本番でした。結果、初回から腕がパンパンに張ってしまいました。それまで、あんな風になったことはなくて。足を使うことが、やっぱり怖くて腕に頼ってしまいましたね。それでも試合になると意外と動ける……一方で、怖かったです」

──そのような状況で準決勝を乗り切れたことによって、何を得ることができましたか。

「マーク・クリマコはLFAとかで試合をやってきた選手で、全て判定勝ちというしっかりと勝ちに来る相手でした。そういう選手とあの状況で戦って、自分の力を出せることが分かりました。万全の状況だったら、圧勝できたと思えるし。あの状況を乗り越えることは大きかったです」

──準決勝が終わった時点で、恐らく次は12月の上海だろうという話になっていたのですが、ヒザの復調具合はいかがでしたか。

「試合後、少し違和感がありました。日本に戻って来て、2日後にはボクシングの練習を再開しましたけど、2週間ほどはヒザを使わないトレーニングだけをしていました。それから様子を見つつ、動かせるようになれば少しずつ組み技の練習をやるようにして。正直、痛みが出たりもして……でも試合が決まっていたので無理をした部分もありました。そのなかで、強度を徐々に高くしていきました」

──では、改めてチーニョーシーユエの印象を教えてください。

「ストライカーなんですけど、KOでなくポイントで勝って来る選手ですね。KO勝ちできるタイプではないと思います。ただワイドスタンスでこれまで戦ったことがない構えなので、ちょっと戦いづらいかもしれないです」

──サウスポーで奥手、奥足を使うイメージがあります。しかも、変則的に。

「たまにオーソドックスにもなるのですけど、ほぼサウスポーですよね。負ける気はしないんですけど、やりにくい……やりにくそうだなっていうのはあります。テイクダウンを切られたら、ちょっとやりにくいかもしれないですけど、試合で入りにくいと思ったことがないので。

あの選手に準決勝で負けた韓国のチェ・スングクも、正直あまり強くない。あの選手に判定勝ちだったので、大したことはないかなって。う~ん、まぁ、どうなんですかね」

──Road to UFCに出ているフライ級ファイターは、眼中にないですか。

「チェ・スングクが前回のRoad to UFC決勝で負けた相手、パク・ヒョンソンは戦績が自分と同じで。スタイルも似ていました。あの選手が3RにRNCで一本勝ちしているんですけど、それと同じようになるんじゃないかと。

普通にテイクダウンからコントロールして、一本を取れれば良いかなって。1Rで一本勝ちできるかもしれないですけど、時間を使って3Rにフィニッシュするのが理想的な勝ち方です」

<この項、続く>


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AB K-MMA MMA MMAPLANET o ROAD FC Road to UFC UFC イ・ジョンヒョン キック キム・スーチョル クォン・アソル ボクシング マーク・クリマコ

【Road FC67】イ・ジョンヒョンの再起戦は100秒キックの前座に。K-MMA界の老舗は、どこへ向かう

【写真】どのような気持ちで、ケージに足を踏み入れるのだろうか(C) Zuffa/UFC

明日16日(土・現地時間)、韓国はソウルのスイスグランドホテル・エメラルドホールにてRoad FC67が開催される。
Text by Manabu Takashima

10月大会で2階級のグローバルトーナメントが終幕、キム・スーチョル✖原口央の激闘は今も記憶に新しい。あれから1カ月半、Road FC2023年最後の大会は韓国版Breakingdownというべきファイター100ルールが適応された2試合がメインとコメインに組まれている。


ファイター100ルールとは元Road FCライト級王者クォン・アソルが主導する100秒(延長100秒)のキックボクシングマッチだ。最終試合は80キロ契約で韓国からユン・ヒョンビン、その1試合前にはクォン・アソルが95キロ契約マッチに出場し、日本から遠征する醤油ニキ、かずややねんけどと戦う。

残り6試合はMMA、注目は第4試合に組まれたイ・ジョンヒョンの再起戦だ。Road FCフライ級の超新星はRoad to UFCに出場も5月の上海大会にマーク・クリマコの前に、フルマークの判定負けを喫しMMAとしてのトータル的な強さが不足していることを露わにした。

あれから半年、ケージに戻ってくるイ・ジョンヒョンの相手となるイ・ギルスはMMA戦績1勝1敗ながら、全国大統領杯を制するなど著名なアマボクサーだった選手だ。

もちろんMMAとボクシングは違う。そして、イ・ジョンヒョンがキャリアの序盤に戦っていたARCの3分3R&寝技30秒ルールもあくまでもモディファイドMMAでしかない。クリマコ戦の敗北の要因がARC出身というのは暴論だが、テイクダウンを打撃と融合させた北米MMAファイターを相手に打撃を使いこなせなかったのも事実だ。

そんな超新星を生んだRoad FCが、自らのイベントのなかでファイター100ルールを組む。K-MMA界の老舗は、どこに向かっているのだろうか。

■視聴方法(予定)
12月16日(土・日本時間)
午後4時~ KAKAO TV、AFREECA TV

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【Road to UFC2023Ep05】鶴屋怜が振り返る、クリマコ戦─02─「やっと”MMAをやった”感がありました」

【写真】笑顔、安堵感の岡田遼&鶴屋浩。そして、テンションが高いままの鶴屋怜。良い感じだ(C)MMAPLANET

8月27日(日・現地時間)、シンガポールのシンガポール・インドアスタジアムで開催されたRoad to UFC 2023Ep05のフライ級準決勝で、マーク・クリマコから判定勝利を収めた鶴屋怜インタビュー後編。
Text by Nakamura Takumi

左ヒザを負傷し、PRP注射の効果もあってRoad to UFC準決勝ラウンドを勝ち抜くことができた鶴屋が、父・浩と共にクリマコ戦を振り返る。父と息子、岡田遼、陣営の合致した考え、加えてプレイヤーに対し勝利を掴むためのコーナーマンの仕掛け等々、心理面、技術面からMMAの醍醐味、そして核心に触れたい。

<鶴屋怜インタビューPart.01はコチラから>


――2Rを終えた時の心境はいかがでしたか。

「ちょうどセコンドと会話しているのが映像にも残ってるんですけど、僕が岡田さんに『僕、勝ってますか?』と聞いたら、岡田さんから『2Rは取られているかもしれない』と言われて、思わず『フォーー!!』と叫んじゃったんです(笑)」

――あれは見ているこちらも驚きました(笑)。

鶴屋浩 僕としてはポイントはイーブンだと思ったから、3Rは無理して極めにいかなくてもいい、テイクダウンして手堅くいかせたかったんです。それで2Rは取られたと伝えたら、なぜか興奮して叫んでいました(笑)。普段はあんなこと言わないのに。

「興奮してたんだよ、きっと(笑)」

――その3R、ここも鶴屋選手がテイクダウンに入り、グラウンドでフルバックをとりました。ボディで足を四の字フックをして、左足をクリマコの右足にかけた状態です。この時に首を抱えて極めに行っていますよね。

「1Rとは逆でこの態勢から首をひねって変形ツイスターみたいな形で極まることがあるんですよ。ただクリマコの左腕が曲がった状態で僕の内側に来ていて、本当はこの腕が伸びた状態で僕の外側に抜けていたら極まるんですよ。でも僕も焦っていたので強引にいきすぎましたね」

――このあとクリマコは何度か正対しようとしてきますが、足が一本深くフックできていればバックキープできるものですか。

「四の字ロックをしている僕の足が相手の対角の足まで引っかかってるんで、これがかかっていればバックキープできるんで大丈夫でした。ただ、1Rと同じようにクリマコは手首を持ってはがして、しつこくディフェンスしてくるんで、これは嫌でした。おそらくクリマコもここを何とかしのいでスタンドの一発にかけようって気持ちだったと思うんですよ。だから必死だったし、徹底していましたよね」

――残り1分、1Rと同じように鶴屋選手がクリマコの左腕を小手に巻いて投げから足関節を狙い、スクランブルの攻防になってお互いに立ち上がります。

「ちょうどこの攻防をしているところから時計が見えて、残り50秒くらいだったんです。だからスタンドになった時に打撃で一発かますか、テイクダウンに入ったら終わるだろうなと思っていたら、あんなことになりました(苦笑)」

――クリマコの右ミドルが鶴屋選手のダブルレッグにカウンターで合う形になり、鶴屋選手がダウン気味に倒れました。あの場面は覚えていますか。

「ダブルレッグに入った時に蹴りが来たのが分かったんで、蹴りに反応して後ろにのけぞろうとしたんです。それと相手の蹴りのタイミングが合って、後ろに吹っ飛ばされたみたいになりました。実際、蹴りは腕に当たっていたし、ダメージはなかったんですよ。そのあとの右アッパーも見えていたから自分から寝転がって、もらわないようにしたんですけど……見栄えはむちゃくちゃ悪かったです(苦笑)」

――そしてここで追撃しようとしたククリマコから上を取り返すわけですけど、これはいわゆる柔術のホレッタスイープですよね。

「この時はあまり何も考えてなかったですね。とりあえず上を取ろうと思って必死に動いていた感じです」

鶴屋浩 20年くらい前にホレッタ・マガリャエスが来日したとき、僕が彼を国内の色んな道場に連れて行ったり、一緒に教則本を作ったりしたんです。その時に本人からホレッタを教えてもらって、僕も道場でも教えていました。きっとそれが試合で自然に出たんでしょうね。

「スイープの形は覚えてないですけど、後ろ袈裟で抑えるのは好きなんですよ。パスガードするときもこっち(後ろ袈裟)で抑えるのが多いんで、だから最後は自分の得意な形に収まりました」

――最後は横三角の形から足関節を狙いに行って試合終了となりました。これは最後まで攻め続けようという意思の表れですか。

「お父さんがずっと『極めろ! 極めろ!!』って言ってるんですよ。内心この時間で極められねえだろと思いつつ(笑)、ヒザ十字を狙ってみようとは思いました」

鶴屋浩 万が一、あの打撃でポイントがついていたら、3Rに試合をひっくり返されちゃうわけじゃないですか。極めるのが難しいのは分かっていましたが、最後まで攻めさせました。

決勝の相手はチーニョーシーユエ。決戦の日時は12月9日、その舞台は上海は梅賽徳斯-奔馳文化中心=メルセデスベンツ・アリーナか

――最終的にクリマコに判定勝利して決勝進出を決めました。

怪我があったなかでの試合、そして初めてフルラウンド戦っての勝利と多くの経験値を積むことができた試合だったと思います。

「初めて3R戦えたし、しかも3Rを取ったほうが勝つという展開で、お互い勝負をかけるラウンドを経験できたのもよかったです。何か僕としてはやっと“MMAをやった”感じがしました。こういう試合はいずれ経験しなきゃいけないと思っていて、UFCに行く前に経験できたことは本当に大きかったですね。次の試合までにヒザをしっかり治して、もっといい状態に仕上げて決勝に臨みたいと思います!」

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【Road to UFC2023Ep05】クリマコ戦を鶴屋怜が振り返る─01─「ツイスターは展開を創ることが目的」

【写真】戦った本人、そしてセコンドの父。両者の言葉で、試合を振り返ります。これがJ-MMAのチャレンジです(C)MMAPLANET

8月27日(日・現地時間)、シンガポールのインドアスタジアムで開催されたRoad to UFC 2023Ep05のフライ級準決勝で、マーク・クリマコから判定勝利を収めた鶴屋怜。
Text by Nakamura Takumi

左ヒザの怪我により組み技・寝技の練習がほぼゼロという状況での一戦となったが、結果的にはフルラウンド戦い抜いての勝利というKO、一本勝ち以上に大きな経験値を積む試合となった。この試合後のインタビューでは組み技、寝技の攻防を中心に鶴屋が何を考えて戦っていたかを訊いた。


組み技の練習再開したのは8月17日、この時点でも本当に様子見だった

──今回はRoad to UFCフライ級準決勝の振り返りインタビューとなります。

MMAPLANETの試合レポートに書かせてもらいましたが試合前に左ヒザを負傷し、ほとんど組み技・寝技の練習ができないまま試合したそうですね。

「事前のインタビューで『今回は打撃を多めにやった』と言ったのは、あれはヒザの怪我で打撃の練習しかできない状況だったんですよ。走ることもできないのでスタミナにも心配があって。もし試合中にヒザを痛めたらどうしようとか、負けることへの不安よりも自分が動けなくなる不安が大きかったです」

――実戦的な練習ができないことはもちろん減量の問題はなかったですか。

「試合間隔が短かったので、試合が終わっても体重を戻りすぎないようにしてたんです。そうやって体重をキープしていた状況で怪我をしたので、減量の幅が少なかったのは不幸中の幸いでした」

――今までにない不安があったなかでの試合だったと思います。

「でもいざケージに入ったら一切不安がなくなって、普段の試合よりも集中していましたね」

――もうここまで来たらやるしかないと。

「はい。多少試合中は無意識にヒザをかばう場面もありましたけど、気持ち的には吹っ切れていましたね」

――では試合の細かい部分についてもお聞きしたいと思います。

まず1Rに鶴屋選手がダブルレッグからテイクダウンを奪い、スタンドでシングルバックを取ってツイスターを狙っていきます。前回の試合でもツイスターを狙っていますが、得意技の一つですか。

「これはツイスターを狙っていたというよりも、この形(シングルバック)からテイクダウンしたり、色んな展開を創ることができるんですよ。

みんなスタンドでバックを取ると前に倒してテイクダウンするんですけど、僕はツイスターの形で後ろに倒すのも得意ですね。

ここも結果的にツイスターは極められなかったですけど、僕が上になったじゃないですか。僕的にはこれでもオッケーなんですよ」

――ツイスターを失敗したわけではないんですね。

「失敗じゃないです。ここから展開を創ることが目的なので。バックをとった時に腕の力を使いすぎると、後半のラウンドでしんどくなるじゃないですか。ツイスターは腕の力を使わなくても、しっかり足の形が出きていたら力を使わずに相手をコントロールできるんで、腕と足を使うバランスを考えながらやってます」

――ちなみにここでツイスターを極めるとしたら、どういう形だったら極まっていたのですか。

「まず僕の左足のフックが浅いですよね。相手の右ヒザより上で組めていればよかったんですが、そこで組めてなかったんで、ここはツイスターにいくよりも、トップを取りに行こうと頭を切り替えました」

――残り1分30秒、スクランブルからクリマコにややバックを許す形になり、鶴屋選手はクリマコの左足に投げを仕掛け、前転して足関節を狙いに行きます。

「事前の試合の映像を見て、クリマコが相手の右ワキを差すのが得意なのは分かってたんですよ。なので右ワキを差して来たら、小手を巻いて攻防しようと思いました。ここはこだわろうと。最初は相手の左足を払ってるんですけど、本当はここから奥の足=右足をとってシングルレッグのような形で倒したかったんです。でも相手もそれを警戒して右足をとらせなかったんですよね。それで無理して右足を取りにいかずに、左足にヒザ十字にいきました。ヒザ十字自体は結構極まっていて、技に入った時に『バキ!』って音がしたんですよ。このままいったら極まるかなと思ったんですけど、抜けちゃったので上をとりにいきました」

――1Rを終えたセコンドとはどんな会話をして、2Rに臨んだのですか。

「相手のディフェンスが固くて、1Rと同じように極めにいったらスタミナを使いそうだなと思って。細かいところなんですけど、こっちがバックをとっても絶対に腕をたすき掛けさせないように、僕の腕をワキの下に挟んだままにしたり、必ず僕の手首を掴んできたり。それをはがして組んで……を繰り返すと腕が張りそうだなと。それで試合前にも話していたんですけど、2Rは打撃の攻防を多くしようと思いました」

――2Rに打撃の時間が長くなったのは想定内だったのですね。

「はい。右アッパーからの左ストレート、左のオーバーフック、合わせの右フックは練習していたものが出ていたと思います」

――2Rの2分過ぎ、スタンドのシングルバックの状態からクリマコに正対され、テイクダウンを許しました。

「これはセコンドの位置からだと、僕が両ワキ差されているよう見えたらしいんですよ。でも実際僕は右ワキだけ差されていて、左はクリマコの右腕と右ヒザを抱えてクラッチしてたんです」

鶴屋浩 いつもだったら尻餅をつく前の段階で倒れないんですけど、あれで倒れてしまったのは怪我している左ヒザが痛かったからだと思います。テイクダウンされたあとを見ても左足が伸びちゃっているので、曲げられなかったんです。

――そうした事情もあったのですね。ただ初めて尻餅をつかされた場面でしたが、上手く後方にクリマコを返して立ち上がることができています。

「この状態になると相手を僕の背中をマットにつけさせようとするじゃないですか。だからそれに逆らわずに、相手が寝かせようとするタイミングに合わせて自分も転がって相手を後ろに返したという流れですね」

――相手の力は使わずに返せたということですか。

「はい。強引に返すというよりも相手が寝かせるタイミングと合わせて僕も一緒に転がった感じです」

<この項、続く>

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【Road to UFC2023Ep05】鶴屋怜、クリマコのヒザにあわやの場面も判定勝利で決勝進出

【写真】フィニッシュこそ逃したもののフルラウンド戦った経験値は大きい(C)MMAPLANET

<Road to UFCフライ級準決勝/5分3R>
鶴屋怜(日本)
Def.3-0:30-27.29-28.29-27
マーク・クリマコ(米国)

ともにサウスポーに構える両者。クリマコが右ミドルを蹴る。鶴屋はクリマコの左ローにダブルレッグを合わせて、テイクダウンする。背中を見せて立ち上がるクリマコに対し、鶴屋は腰をクラッチして足を一本入れてコントロール。ここから鶴屋はツイスターも狙いつつ、バックコントロールを続ける。

クリマコが正対するとダブルレッグに入る鶴屋。これでクリマコをテイクダウンし、ハーフガードでトップキープ。体を起こしてパンチを落とす。クリマコも脇を差して立ち上がり、鶴屋は差された腕を小手を巻いて内股気味の投げを狙い、前転して膝十字からヒールホールドと足関節を仕掛ける。これを外される鶴屋だがスクランブルで上を取り、シングルレッグからバックについた。

2R、鶴屋がジャブを伸ばして距離をとる。クリマコが左ミドルを蹴ると、鶴屋は左のロングフックを放つ。クリマコの左ローに右フックを狙う鶴屋。クリマコは左ロー・左ミドルを蹴りつつ、鶴屋はそれをキャッチしてテイクダウンを狙う。これは失敗した鶴屋だが、前足へのシングルレッグに入り、クリマコをケージに押し込んでバックにつく。

1Rと同じく右足を内側に入れてコントロールする鶴屋だが、クリマコも正対してケージを背負う鶴屋にダブルレッグに入る。鶴屋は一度自分が下になってスクランブルに持ち込み、最終的に立ち上がる。スタンドではクリマコが左ローを当て。鶴屋もジャブを返すが、クリマコが右フックを当てる。終了間際、鶴屋の左ストレートとクリマコの右フックが交錯する。

3R、鶴屋がジャブとタックルのフェイントを見せ、シングルレッグに入る。クリマコもギロチンを狙うが、鶴屋はクリマコの身体を持ち上げ、ケージまで押し込んでダブルレッグに移行してテイクダウンを奪う。ここから鶴屋はクリマコのバックについて足を四の字ロック。クリマコが正対しようとしてもバックコントロールを続ける。

この時間が長く続くが、残り1分でクリマコも立ち上がって正対。半身になった鶴屋が自ら回転して足関節を狙いつつバックへ。両者が立ち上がり、試合がスタンドに戻る。ここで鶴屋がテイクダウンを狙ったタイミングでクリマコが右ミドル。これがカウンターのヒザ蹴りのような形になり、鶴屋が後方に倒れて一瞬ガードポジションを取る。あわやの場面を迎えた鶴屋だったが、すぐに組みついてスクランブルに持ち込んでサイドポジションで抑え込む。ここから横三角を狙い、最後はクリマコの上体に足を絡ませて、後ろから足関節を狙うような態勢で試合終了となった。

判定は3-0で鶴屋が勝利。クリチコの打撃にヒヤリとさせられたものの、テイクダウンとグラウンドで主導権を握り、決勝進出を決めた。試合後「極めたかったけど、判定になって悔しいです。相手は力も強くて極めきれなかったですが、攻め勝てたところは成長できたかなと思います。(決勝の相手は)どちらが来ても気にしないです。決勝は一本勝ちします」と話した鶴屋。

実は大会1カ月前に左ヒザを負傷して、試合直前までほとんどレスリングの練習ができず、蹴ることもできない状態だったという。そのなかでも掴んだ勝利、そしてトーナメント決勝の切符は大きい。

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