更新すっごい遅いよ問題は常々何とかしなければと考えているのですが、平日は仕事→電車に揺られて帰宅となると、どうしてもPCを立ち上げるのが遅くなってしまいます(某Z李のように複数で運営できれば強いのですが)
マックス・ホロウェイがジャスティン・ゲイジーを仕留めた瞬間💥
— UFC Japan (@ufc_jp) April 14, 2024
まさにBMF👊#UFC300 pic.twitter.com/hjam6hkHdu
マックス・ホロウェイがジャスティン・ゲイジーを仕留めた瞬間💥
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【写真】トプリアが右を当てるまでの過程には、他の選手では突くことができないホロウェイの一瞬のミスがあった(C)Zuffa/UFC
過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura
大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾、良太郎というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は良太郎氏が選んだ2024年10月の一番──10月26日に行われたUFC 308のイリャ・トプリア×マックス・ホロウェイ、世界最高峰の打撃戦となった一戦を語ろう。
――10月の一番としてトプリアとホロウェイの試合をピックアップしていただきました。これはもう即決というセレクトですか。
「結構前からこのカードが決まっていて、この企画が始まったときから、どう転んでも(取り上げる試合に)入るだろうと思っていました。あの大会は好カードが多くて(スピニングバックフィストでKOした)シャラブジン・マゴメドフもいいなと思ったのですが、トプリアとホロウェイの打撃の技術が最近の試合では頭一つ抜けてるところがあるし、戦前の予想やお互いのキャラクターも踏まえて、この試合に決めました」
――やはりこの試合の立ち技のレベルは最高峰レベルでしたか。
「MMAという競技の中で、トプリアとホロウェイの立ち技の技術を比べた時に、完成度で言えばトプリアの方が上です。ホロウェイは細かいテクニックもあるけれど、前回の(ジャスティン・)ゲイジー戦のように、相手を自分の戦いに巻き込んで、最後にとんでもないKOで勝つ強さがある。そんな2人の試合だったのですが、結果的にはトプリアが完全に実力でねじ伏せた試合でした。個人的にはホロウェイの戦いの方が好きなのですが、トプリアはここ数年、歴代のトップ選手たちを見ても、MMAにおけるボクシング&レスリングの最高点に近いぐらいのレベルの高さにいると思います。特にボクシングスキルはずば抜けてますね」
――フィニッシュはトプリアのKO勝ちでしたが、そこに至るまでにどんな攻防があったのでしょうか。
「パターンで言ったらトプリアが右カーフキックで削って、みんなも予想していた右を当てて…という展開でした。あの右はスイング気味というかクロスカウンターに近い被せる打ち方で、ポイントはトプリアの構えなんです。トプリアの構えは真っ直ぐに身体が立ってない、右脇を絞って、やや右斜めに身体を傾けるように構えるんです。ようは右の拳をいつでも打てる位置に置く=ミサイルの発射台を常に設置しているようなイメージです。
逆にホロウェイは頭頂部から一本棒が通っているように身体が真っ直ぐに立っていて、両手を前に出して触手のように伸ばして制空権を取りにいきます。しかもホロウェイはリーチが長くて左手を自由自在に使えて、高速ジャブ、フリッカー気味のジャブ、スマッシュ気味のジャブ…左を使い分けてヒット数を稼ぎつつ、試合を作っていく。左を伸ばすと、ホロウェイにとって左側のテンプルが空くのですが、ホロウェイはバックスピン、ミドル、関節蹴りを使って、そこを狙わせないようにする。それがホロウェイの基本的な戦い方です。
トプリアもそれを理解したうえで試合をしているわけですが、トプリアはあえてホロウェイに左ジャブを出させる・左手で自分を触らせておいて、ホロウェイの空いている左側のテンプルを右で狙う、先ほど説明した右のミサイルを常に打てる状態をキープしていました」
――トプリアはいつでも右フックを被せることが出来るように構えていたのですね。
「はい。しかもトプリアは右脇を絞って構えるので右腕が真っ直ぐ立っていて、相手が三日月蹴りなど蹴りでボディを狙って来てもヒジでディフェンスできるんですよ」
――蹴った方が足を痛めるパターンですね。
「そうです。しかも右の被せるフックが直撃しなくても、そこから返しの左フックが打てるので、被せる右で仕留める、もしくは返しの左フックで仕留める。そういう戦いができます。またそこへの布石として、トプリアは右のカーフでホロウェイの前足(左足)を削っていて、あれが当たり始めてからホロウェイは焦っていたと思います。普通の選手だったら、あの右カーフで完全にペースを取られるのですが、ホロウェイも右の関節蹴りでリズムを取り返そうとするんです」
――2Rにホロウェイの関節蹴りがモロに入っていましたよね。
「あれで少しホロウェイも旗色が良くなっていました。ただそこでトプリアも改めて右カーフを効かせてペースを譲らなかったわけです。トプリアの仕留め方としては、いいタイミングで右のスイングフックが入って、そこから左ボディを効かせて、最後は右から返しの左フックでフィニッシュだったんですけど、勝負を決めたのは最初の右のスイングフックだったと思います。あの場面をスローで見てもらうと分かるのですが、ホロウェイはスイッチ&右の関節蹴りの流れのなかで足が揃うことがあって、あの時も一瞬だけホロウェイの足が揃ったんです。そこをトプリアが右でぶち抜きました。あの右はアレックス・ヴォルカノフスキーをKOした時と同じで、本能なのか体に染みついたものなのか分かりませんが、トプリアの必殺技です。ホロウェイが打たれ強いので、あの右をもらってからもしばらく戦っていましたが、並みの選手ならあの右一発で終わっていたと思います」
――まさに一瞬のスキを突いた一撃ですか。
「本当に一瞬なんですが、ホロウェイが右の関節蹴りを多用し始めてから両足が揃う場面があるので、ぜひ試合映像を見返してみてください。ホロウェイとしては右の関節蹴りで展開を変えて、ちゃんと足を戻して左ジャブから試合を作り直しかったんだと思います。ただ試合をトータルで振り返るとホロウェイは1Rにトプリアにタックルに入られている。そのくらいトプリアのプレッシャーが強くて、右カーフも効かされていたじゃないですか。ああやってホロウェイにプレッシャーをかけて前足を潰しておくと、ホロウェイもずっと同じスタンス・構えではいられないので、どこかでスイッチすることになる。そうなると両足を揃うミスが起こりうるわけで、トプリアの必殺の右が当たる可能性が上がりますよね」
――ホロウェイの反撃のきっかけだった関節蹴りが実は狙われていた、と。しかも1Rのテイクダウンと右カーフがそこにつながっているのは奥が深いですね。
「そうですね。試合が始まった直後、トプリアは前手=左手でホロウェイの前手を押さえるボクシング的な動きを見せていて、そこからタックルに入る・右のカーフを効かせていましたが、使っている技はそのくらいなので、やっていること自体は超シンプルです。そのシンプルな攻撃でホロウェイを削って削って、ホロウェイの土俵には上がらずに戦っていましたよね」
――その展開の中でホロウェイが3Rに足を揃えるミスをしてしまった、と。
「ただあれもミスじゃないと言えばミスじゃないんです。あの一瞬で右を合わせるボクシングスキルがあるトプリアが相手だったからこそミスに見えるわけで。トプリア以外であの右を合わせられる選手はいないと思います」
――先ほど解説していただいたトプリアの構えの解説も非常に興味深かったです。あの構えがトプリアの強さを生んでいると言ってもいいのでしょうか。
「右脇を絞って右フックを打てるように力を溜めつつ右のカーフも蹴れる。前手=左手を前に出して左側にフレームが作れているから左フックも返せる。そういう構えでもあります。あとは相手からすると左手が前に出る&フレームが出来ていて、体を右に傾けられると思った以上にトプリアの顔が遠いんですよ。だからジャブを当てづらい。そこにプラスしてトプリアは倒せる右を持っているから、その右も警戒しないといけないので、なおさらやりにくいですよね」
――向かい合った時に感じるやりづらさがありそうですね。
「ホロウェイもいつのもようにジャブが当たらなくて打撃の火力を出すまでに時間がかかっていましたからね。だからこそ右の関節蹴りに切り替えて活路を見出したホロウェイはすごいし、それを上回ったトプリアはもっとすごいんです。トプリアの練習動画を見てもボクシングスキルが尋常じゃない。立ち技の試合にポンっと出してもすぐチャンピオンになると思いますね。ボクシングをやってもかなり強いと思います。しかもトプリアはグレコローマンレスリング出身で柔術も黒帯じゃないですか。それであのボクシングスキルだから……ちょっと訳が分からない強さですね」
――パンチのKOが続いていますが、相手によっては組み主体で戦うこともできると思います。
「テイクダウン主体で寝かせにくる選手が相手になってもトプリアは対応できますからね。組みで展開を作れないグラップラーは前に出られなくなるので、そうなるとトプリアの打撃のプレッシャーを受けて下がってしまって仕留められるでしょう。例えばマラブ・デヴァリシビリはひたすらタックルに入ってテイクダウンを狙い続けますが、トプリアは『こっちはいつでもテイクダウンできるよ』や『もし組みに来ても対応できるよ』があったうえで、あのボクシングスキルでKOを狙うので、タイプが違う強さですね」
――ヴォルカノフスキーとホロウェイをKOして王座に君臨しているので、現時点ではフェザー級で無敵状態ですよね。
「穴もあるんでしょうけど、それを補う波に乗っているというか。アレックス・ペレイラもそうですけど、手をつけられない波に乗っている感じはありますよね。トプリアの打撃スキルは立ち技の選手が見ても勉強になるレベルだと思います」
The post 【Special】月刊、良太郎のこの一番:10月 トプリア×ホロウェイ「トプリアの構え、ホロウェイのミス」 first appeared on MMAPLANET.【写真】ショートインタビューだったが、早口で多くを話してくれたゲイジー。しゃべりも勢いがあります (C)MMAPLANET
23日(土・現地時間)、マカオはコタイにあるギャラクシー・アリーナで開催されるUFN248:UFN on ESPN+106「Yan vs Figueiredo」にジャスティン・ゲイジーが、ディエゴ・ロピスと共にゲストファイターとして訪れている。
Text by Manabu Takashima
もはや東洋のラスベガスといっても過言でないマカオ・コタイ地区のナイトライフを楽しんでいると公言するゲイジーに、そのファイトスタイルとBMF王座、そしてUFC世界ライト級タイトルの関係性について尋ねた。
――ジャスティン、実はWSOF時代に日本のGONGマガジンのインタビューをラスベガスでさせていただいたことがありました。もう10年も昔の話になりますが……。
「10年っていうことはないだろう。15年は昔だよ(※ゲイジーのMMAデビューは2012年)」
――とにかく大昔ですね。お父さんやおじいさんが銅の採掘をしていたという話をしてくれました。
「あぁ、アリゾナのモレンシー銅山で穴を掘っていたんだ」
――あの時、D-1オールアメリカン・レスラーのジャスティンに「なぜ、テイクダウンを使わないのか」を尋ねました。そうすると「レスリングじゃない。プロのファイトはファンをエキサイトさせないといけない」という風にジャスティンが返答してくれた記憶があります。
「それが俺のファイトだからね。レスリングをやるためにMMAファイターになったわけじゃない。ファイトをして稼ぐためにMMAを戦ってきたんだ」
――ハイ。そのスタイルをWSOFで3年間続けてUFCに転じた時は、正直なところジャスティン・ゲイジーもいよいよ戦い方を変える時がきたと思っていました。世界最高峰であの戦いを続けることはできないだろうと。それが……。
「ノー。俺は変わらない。これまでも、これからも。心配しなくて良いよ。俺はずっと、このままだ(笑)」
――いや、体のことは心配しますよ(笑)。
「アハハハハ。そこも心配しなくて構わない。なぜなら、俺が選んだことだから。レスリングは疲れる。レスリングをやると、バテて試合も勝てない。だから、殴り合っているんだ。それが俺の勝ち方で。レスリングをやっても、俺は勝てない」
――D-1オールアメリカン・レスラーが、本当にそうなのでしょうか。
「ファンだって、こっちの方が良いだろう? 俺もこっちが好きなんだ。レスリングじゃない、ファイトが」
――もちろんファンも、プロモーターもその方が良いです。では家族はどうでしょうか。
「おお、そっちか……。でもさ、マムが双子の俺たちにレスリングをやらせたんだ。4歳の時にゴルフキャップを持ってきて、ゴルファーになるか、レスリングをやるのかって尋ねられた。俺たちはゴルフを選ぶ気は一切なかった。でも、こうやって自分のスタイルを続け、いつだって求められた試合をしてきたことで今の俺がある。ファイトしてきたから、皆が俺を認めてくれたんだ」
――確かに普通のUFCファンは、世界王者を全て知っているわけではないですしね。
「でも、俺のことは忘れないだろ。それは俺があの戦いを続けてきたからだ」
――そこでジャスティンに尋ねたいことがありました。BMFのタイトル戦を戦う時と、UFC世界ライト級選手権を戦うときは気持ちの面など違いはあったのでしょうか。
「う~ん、リアルベルトが掛かっている時はプレッシャーがより大きかった。だって、勝つしかないだろ? チャレンジャーは。1試合、1試合がそれぞれしっかりと経験になるのは絶対だ。ただし勝って手にしてきてモノは、負けると全て奪われる。だからこそ、全ての試合で新しい経験ができる。そして、試合が終わると自分が何者が再確認できるんだ。全てが経験値を高めてくれる。それでも、世界タイトル戦のプレッシャーは群を抜いている」
――その点でいえば、BMFタイトル戦は戦う意思を見せ続ければ試合に負けても、敗者はいない。そんな印象を与えることができる戦いになります。
「うん、その意見は正しいな。ファイトはファンが喜ぶためにあるからね。そうだな……逃げずに、真っ向から戦う姿を見せることができればファンは文句を言わない。そして俺は自分がやりたいように戦っている。俺のファイトを、俺のことを皆がいつまでも覚えてくれるような戦いを続けたい。それには、インパクトのあるフィニッシュが欠かせない。
俺はマックス・ホロウェイでKOされた。ただし、そこには勝敗を超越した何かがあって……その何かを皆に見てもらうことはできたはずだ。それでも勝者と敗者は違う。負け喜んでいるヤツはない。ただし、ファンに認められているなら敗者はいないという意見は正しいと思う」
――ではジャスティンはUFC世界王座挑戦と、BMFタイトル挑戦を二者択一ということが起こった時には、どちらにチャレンジしたいと思うのでしょうか。
「もちろんライト級のワールドタイトルだ」
――それでも戦い方は変えない?
「MMAってクレイジーなんだ。俺が(シャーウス)オリヴェイラにレスリングを仕掛けてどうなる? ヤツの庭に自分から飛び込んでいくようなモノだろ? 一発、アイツの頭にパンチをぶち込んだら勝てる。殴り倒してからも、寝技をさせないためにパウンドにもいかなった。オリヴェイラが背中をつけていたから。それでも、俺は負けた。クレイジーだよ」
――オリヴェイラがスタンドで待つジャスティンに右を当ててダウンを奪ってから後ろ三角、そしてRNCで逆転勝ちでした。となると、さきほどレスリングをすると疲れると言っていましたが、例えばダゲスタンのレスラーとレスリングを使って戦うのも手ではないでしょうか。
「そりゃあ、使うだろう。ただしテイクダウンを奪うことだけがレスリングじゃない。テイクダウンを切るのもレスリングだ。レスリングはオフェンスとディフェンスがある。俺はレスリングを立って戦い続けるために使う。KOするために。足を蹴って頭を殴って倒すために、ね」
――そんなジャスティンの試合を次に見られるのは、いつ頃だと期待して良いですか。
「3月だ。俺は3月に戦いたい。相手は分からないけど、UFCが決めることだ」
――またビッグファイトになりそうですね。
「そりゃあ、そうだ。俺はいつだってビッグファイトをやってきたから」
■視聴方法(予定)
11月23日(土・日本時間)
午後5 時00分~UFC FIGHT PASS
午後4時45分~U-NEXT
■UFN248対戦カード
<バンタム級/5分5R>
ピョートル・ヤン(ロシア)
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
<女子ストロー級/5分3R>
イェン・シャオナン(中国)
タバタ・ヒッチ(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
ソン・ケナン(中国)
ムスリム・サリコフ(ロシア)
<女子フライ級/5分3R>
ワン・ソン(中国)
ガブリエラ・フェルナンジス(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オズデミア(スイス)
カーロス・アルバーグ(ニュージーランド)
<ライトヘビー級/5分3R>
オジー・ディアス(米国)
チャン・ミンヤン(中国)
<Road to UFCバンタム級決勝/5分3R>
ユ・スヨン(韓国))
チィルイイースー・バールガン(中国)
<Road to UFCフライ級決勝/5分3R>
チェ・ドンフン(韓国)
キル・シン・サホタ(英国)
<Road to UFC女子ストロー級準決勝/5分3R>
シー・ミン(中国)
フン・シャオカン(中国)
<フライ級/5分3R>
カーロス・ヘルナンデス(米国)
ニャムジャルガル・トゥメンデムベレエル(モンゴル)
<フライ級/5分3R>
ロナー・カヴァナ(英国)
ホセ・オチョア(ペルー)
<バンタム級/5分3R>
シャオ・ロン(米国)
クァン・リー(ベトナム)
<ライト級/5分3R>
マァフゥシャトゥ(中国)
ニコラス・モッタ(ブラジル)
<UFC世界フェザー級選手権試合/5分5R>
イリャ・トプリア(スペイン)
Def.3R1分34秒by KO
マックス・ホロウェイ(米国)
両手をぶらりと下げて、いきなりホロウェイを挑発したチャンピオン。ホロウェイはこっちに来いと応じず、両者の戦いが始まった。距離を取り、蹴りを使うチャレンジャーに対し、トプリアは一気に踏み込んでパンチを振るう。ロー、ワンツーのホロウェイに対し、トプリアが一気にダブルレッグを決める。ボディロックで立ち上がったホロウェイを崩したチャンピオンだが、すぐにホロウェイが立ち上がる。
ここでホロウェイのジャブにも、踏み込んでいくトプリアはローを蹴られる。王者はローを返し、右を当てる。ここからパンチを纏めさせず、サイドに回ってかわしたホロウェイだが右カーフで姿勢を乱される。トプリアはジャブを伸ばし、前へ前へと圧を掛ける。これを前蹴りとジャブ、左ハイで突き放すホロウェイはワンツーをかわして、逆にワンツーを入れる。右エルボーを入れたホロウェイのジャブが続くが、スピニングバックキックをかわしたトプリアが右を受けたホロウェイがスリップ気味に倒れた。
2R、なかなか踏み込めないトプリア。逆にジャブからワンツーをホロウェイが繰り出す。蹴りとジャブのホロウェイは、それでも前に出てくるトプリアにはサークリングで対処。トプリアは右カーフを蹴り、ここから右オーバーハンドにつなげたい。右で前に出たトプリアが左フックをヒットさせる。さらにワンツーの左を入れ、前に出るトプリアに対し、右ショートを返したホロウェイがハイキックを繰り出す。
チャンピオンもジャブから右を当て、腹を殴られても前に出て右ボディを返す。カーフを蹴られながら、前足重心のチャレンジャーを右を打ち込む。場内、どちらの名前を呼んでいるのかも判別できないほどの大歓声のなかで、ホロウェイが関節蹴りを繰り出す。この回も空間支配はホロウェイだったか。
3R、期待に応える打撃戦を繰り返す両者。トプリアがジャブを当て、ホロウェイが関節蹴りから左ミドルを入れる。左ボディを入れたチャンピオン。ホロウェイはワンツーから左ミドルを決める。トプリアは右カーフ、ホロウェイがサイドキックで2度関節を蹴る。直後に、トプリアが右を当てる。グシャというような音を立てて下がったホロウェイに、トプリアがパンチを纏める。
ホロウェイはボディは殴られても、顔面への追撃には左に回って間合いを取り直す。ここでトプリアはワンツーで前に出ると、ヒザ蹴りを打ったホロウェイの顔面を左フックで打ち抜きダウンを奪う。鉄槌の連打でホロウェイの意識を飛ばしたトプリアが王座防衛に成功した。
「正直、なんと言って良いのか分からない。マックス・ホロウェイのようなレジェンドと戦えて……僕の全キャリアもそうで、僕らの世代の良いお手本だったんだ。僕は今、この世代を代表している。偉大なマックス・ホロウェイのように、自分も次の世代に少しでも何か分け与えたい。右を当てた後、マックス・ホロウェイが過去に見せたことがないように下がった。コーナーから『攻め続けろ』という声があり、プレッシャーをかけ続けてKO勝ちできた」と話したチャンピオンの前に、前王者アレックス・ヴォルカノフスキーが現れる。トプリアは「彼は7度も防衛をした。彼が望むなら再戦しよう」と非常に紳士的な言葉を残した。
【写真】ホロウェイはテクニックに裏付けされた喧嘩ができる男。王者トプリアはタフな終盤戦に持ち来れ込んだ時、喧嘩ができる気持ちの持ち主なのか(C)Zuffa/UFC
26日(土・現地時間)、アラブ首長国連邦アブダビのエティハド・アリーナにてUFC 308「Topuria vs. Holloway」 が行われる。ロバート・ウィティカーとカムザット・チマエフによるミドル級戦をコメインとする今大会のメインは、無敗の新王者イリャ・トプリアにBMF王者マックス・ホロウェイが挑戦するフェザー級タイトルマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi
トプリアは2020年10月に、8戦全勝の戦績をもってUFCデビュー。当時は強力なテイクダウンから肩固め、RNC、ギロチン、ダースといった見事な首技の連携を駆使するハイレベルグラップラーのイメージが強かったが、やがて立ちで距離を詰めてからの強烈かつ正確無比な拳のコンビネーションでKOを量産するようになった。
昨年6月にはランキング5位のジョシュ・エメットと戦い、幾度となくダウンを奪って5R判定で圧勝、今年の2月に絶対王者アレックス・ヴォルカノフスキーに挑戦する機会を得た。2Rに王者の右ジャブをかわしたトプリアは、瞬時に距離を詰めて右ボディから左フック。次の右ストレートは外れたものの、すぐに角度を調整しての右フックが炸裂。パウンドフォーパウンドランキングのトップに君臨し続けていた世界最高峰のMMAストライカーを圧巻のコンビネーションで葬り去り、15戦全勝の戦績で(15歳の頃から住んでいる)スペイン初のUFC王座に輝いた。
対して生粋のハワイアンのホロウェイは、2016年12月にアンソニー・ペティスを倒してフェザー級王座を獲得。4度の防衛を重ねるが、2019年12月にヴォルカノフスキーに5R判定で敗れて王座転落した。
その後ヴォルカノフスキーに2度挑戦するもいずれも5R判定負けを喫し、王座復帰は遠のいたかに見えた。しかし昨年アーノルド・アレンとコリアンゾンビことジョン・チャンソンに完勝して健在を示すと、4月のUFC 300にて一階級上のBMF(Baddest Motherfucker=最高にヤバい奴)王者ジャスティン・ゲイジーに挑んだ。
ホロウェイは1R終盤にバックスピンキックでゲイジーの鼻を破壊すると、その後は打撃戦で終始主導権を握る。そして最終ラウンド残り10秒の時点でオクタゴン中央で床を指差し、俺と打ち合えと咆哮。それに応じたゲイジーが振り回す拳よりも高い回転力でパンチの連打を繰り出し、最後は右フックをスマッシュヒット。残り1秒でゲイジーが前のめりに失神するUFC史上最高のKOシーンをもってBMF王者に輝いた。
間違いなく自分が勝っている試合で、最後の10秒にて階級上の超弩級の強打者と足を止めて殴り合いを挑む──常人にはまったく考えられない、これ以上BMFに相応しい行動は存在しないほどの超BMFぶりを見せつけて会場を熱狂の渦に叩き込んだホロウェイは、その場で「エル・マタドールよ!」とトプリアのニックネームをコールアウトすると「お前はこのブルから逃げている! 145パウンドのベルトを賭けて俺と戦え!」と対戦表明した。
それに応じたトプリアは「ああ、ホロウェイと防衛戦をやろうじゃないか。ただし奴がBMFベルトも掛けた場合のみだ」と発言。しかしその案はUFCから却下されたのか、今回トプリアのフェザー級王座のみが掛かったタイトル戦が実現の運びとなった。
さて今回の試合に先立ち、UFCの企画にてトプリアの住むスペインとホロウェイの住むハワイを二画面で繋いでの同時インタビューが行われている。その際トプリアは、フェザー級ベルトだけでなくBMFベルト(のレプリカ)まで入手して部屋に飾って登場し「マックスは今回このベルトを掛けなかったけど、今回勝てば事実上俺がBMFさ」と不敵に微笑みながら挑発してみせた。
ホロウェイが「お前はそれわざわざ買ったんだろ、俺のファンだからだよな」と聞くと、トプリアは「ああ、正直ファンだったよ。あんたは俺ら新世代にとってのグレイト・イグザンプル(偉大なる模範)だった」とリスペクトを示す。が、その後は薄笑いを浮かべながら
「でも今は俺の時代さ。試合が終わったら、あんたが俺のファンになるだろうよ。そもそもあんたはキャリアで7敗。俺は無敗。戦ったらどうなるかは分かるだろ?」
「あんたが75分間も使ってできなかったこと(=打倒ヴォルカノフスキー)を、俺はたった7分間でやってのけたんだぜ」
「ところで俺は最近老人ホームをオープンしたんだよ。ヴォルクがすでに入居した。あんたにも一部屋用意してあるぜ。試合後すぐに放り込んでやるよ。あ、心配しなくてもいい、料金は一切無料だから」と知的にして絶妙に無礼な挑発を繰り返し、トラッシュトークに興味を示さないホロウェイを苛立たせたのだった。
さらにトプリアはホロウェイのBMF戦に触れて「ありゃすごく退屈だった。エキサイティングだったのは最後の10秒だけだ。戦略もテクニックもまるでない酒場の喧嘩だね。最後の10秒もそうだ。ゼロ・テクニックだ。俺みたいな技術とパワーを持った選手を倒すことはできないな。嘘だと思うなら、あれを俺らの試合の最初の10秒でやってみるってのはどうだい?」と不敵な提案をする。
そこでホロウェイが「そりゃお前にとってはなんとも都合のいい話だな。お前は試合ですぐに疲れちまう(get tired)んだから」と反応すると、トプリアは微笑みを崩さず「ああ、俺は確かにget tiredするよ。相手をKOすることにget tired(=うんざり)しているんだ。だから今回はあんたをサブミットすることにするかな」と言い返した。
第一言語ではない英語でのやりとりにおいて、この見事な切り返しは特筆に値する。実際トプリアはホロウェイに「何を言っているんだ、ちゃんと話せ」と言われた時にも余裕の表情で「おいおい、俺はあんたの言語で話してやっているんだぜ。じゃあスペイン語がジョージア(グルジア)語かロシア語かドイツ語で話そうか」と言うと、おもむろに(おそらくホロウェイには理解できないだろう)流暢なスペイン語を披露し、言語マウントを取ったのだった。
放映後、この両者のディベート対決(?)の勝敗を判定するメディアがいくつかあったが、ほぼ満場一致でトプリアに軍配を挙げていた。もっともホロウェイ自身が相手を言い負かすことに興味を示しておらず、勝敗を付けること自体に無理はある──とは言え、トプリアは母語でない英語を用いて、英語ネイティブのホロウェイを翻弄してみせた。
ジョージア系の両親のもとドイツに生まれジョージア、スペインと移住を繰り返す中で身に付けた多言語能力と知性は「俺は打撃、レスリング、グラップリングと全てにおいてネクストレベルにあるし、パワー、テクニック、ファイトIQとあらゆる面で卓越している」と豪語する新王者の強さの一端なのかもしれない。
閑話休題。
この試合に誰もが期待するのは、卓越した二人のMMAボクサーである両者による最高レベルの打撃戦だ。両者の戦績だけを見ると、本人が挑発的に語っていたように──ホロウェイが3回戦って倒せなかったヴォルカノフスキーをトプリアは2RでKOしており、新王者有利という見方が成り立つ。しかし両者と戦った張本人のヴォルカノフスキーが、この三段論法を否定してホロウェイ有利を予想している。
曰く「イリアには相性が悪い試合だと思うよ。マックスは5Rずっとペースが落ちないから、イリアが勝つには序盤でKOする必要がある。もちろんその力はあるよ。でもマックスはとにかく打たれ強いから、難しいんじゃないかな。テイクダウンディフェンスや立つ力も抜群だから、寝技でマックスをフィニッシュするのも困難だ。
そして、試合が長引くとイリアにはスタミナの問題が生じてくる。序盤はイリアがマックスの打撃をしっかりガードして有利に進めるだろう。でも相手がいつまでも倒れない、テイクダウンできない、自分の呼吸が上がってくる、となると話が変わってくるのさ。中盤以降はマックス有利になるだろうね。僕が思うに、一番可能性が高いのはマックスの判定勝利だ。あるいは4、5ラウンドにマックスが大量のパンチを当ててTKOするかもしれないね」
この前王者の鋭い予想にさらに注目点を付け加えるなら、それはスタンド戦における両者の距離とケージ上の位置取りだ。180センチの長身を誇り、自分のパンチが当たる絶妙の間合いを保つことに長けているホロウェイ。対する王者トプリアは身長173センチ。頭を振りながら間合いを詰め、懐に入り込んでのパンチコンビネーションを決め技とする。果たして自分の得意な距離を作るのはどちらか。
また、ホロウェイは(前回のBMF戦でゲイジーに大ダメージを与えた)バックキック、トプリアは強烈な右カーフを持っている。パンチの間合いの取り合いにおいて、これらの足技を両者がどう用いるかも興味深い。
そしてトプリアの拳が最も威力を発揮するのは──前戦でヴォルカノフスキーを倒した時のように──相手をケージ際に追い詰め、下がるスペースを無くした時であることに留意したい。アーノルド・アレン戦でスイッチや横への動きを巧みに使ってみせたホロウェイを、新王者がいかなるステップで金網を背負わせるのかは、この試合の重要ポイントとなる。
上述のように、トプリアは開始10秒間、ケージ中央での足を止めての殴り合いを提案している。対するホロウェイは「(BMF戦での)あの瞬間は理由があったから成立したんだ。エキサイティングな戦いで俺が勝っていたから、ジャスティンにチャンスを与えた。もともと彼が階級下の僕に戦うチャンスをくれたのだからね」と、理由もなく闇雲に打ち合うことには興味を示さない。
それでも世界最高のMMAボクサー二人によるこの試合が、開始直後からまったく目を離せないものであることに変わりはない。
■視聴方法(予定)
10月26日(土・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
10月27日 午前3時~PPV
午後10時 30分~U-NEXT
■ UFC308対戦カード
<UFC世界フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者] イリャ・トプリア(スペイン)
[挑戦者] マックス・ホロウェイ(米国)
<ミドル級/5分5R>
ロバート・ウィティカー(豪州)
カムザット・チマエフ(スウェーデン)
<ライトヘビー級/5分3R>
マゴメド・アンカラエフ(ロシア)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)
<フェザー級/5分3R>
レローン・マーフィー(英国)
ダン・イゲ(米国)
<ミドル級/5分3R>
シャラブジン・マゴメドフ(ロシア)
アルメン・ペトロシアン(アルメニア)
<ライトヘビー級/5分3R>
イボ・アスラン(トルコ)
ハファエル・セルケイラ(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
ジェフ・ニール(米国)
ハファエル・ドスアンジョス(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
ミクティベク・オロルバイ(キルギス)
マテウス・レンベツキ(ポーランド)
<ヘビー級/5分3R>
ケネディ・ンゼチェクウ(米国)
クリス・バーネット(米国)
<バンタム級/5分3R>
ファイト・バシャラット(アフガニスタン)
ヴィクトー・ウゴ(ブラジル)
<ミドル級/5分3R>
ブルーノ・シウバ(ブラジル)
イズミール・ヌルディエフ(オーストリア)
<ウェルター級/5分3R>
リナット・ファクレトディノフ(ロシア)
カルロス・レアル(ブラジル)
【写真】心技体の合計点。高いのどっちだ (C)Zuffa/UFC
26日(土・現地時間)、アラブ首長国連邦アブダビのエティハド・アリーナにてUFC 308「Topuria vs. Holloway 」が行われる。新王者イリア・トプリアにBMF王者マックス・ホロウェイが挑戦するフェザー級タイトルマッチをメインとするこの大会のコメインは、元世界王者のロバート・ウィティカーとプロ無敗のカムザット・チマエフが激突する大注目のミドル級トップコンテンダーマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi
ウィティカーは2017年の7月、ヨエル・ロメロとの5Rの激闘を制してミドル級暫定王者に就くと、同年末には当時の正規王者ジョルジュ・サンピエールのタイトル返上&引退を受けて正規王者に認定された。2019年10月にイスラエル・アデサニャに敗れて王座を失ったが、その後も常にミドル級トップ戦線で戦い続けている。
昨年7月には現王者のドリキュス・デュプレッシーに2RTKO負けを喫したものの、今年に入って2月にパウロ・コスタに判定3-0で快勝し、さらに6月にはUFC無敗のイクラム・アリスケロフと対戦。1R早々に必殺の飛び込んでの右ストレートを当てると、さらに右ハイ、そして右アッパーをスマッシュヒットして圧巻のKO勝利を飾っている。
対するチマエフはこれまでプロ13戦全勝。昨年10月には元ウェルター級王者のカマル・ウスマンに判定3-0で快勝し、UFC7連勝を飾った。ウィティカーとの試合は今年の6月に予定されていたが、チマエフの体調悪化により中止となり、上述のようにウィティカーは代役のアリスケロフに鮮烈な1RKO勝利。4ヶ月後の今回、両者の試合が改めて組まれた。
UFC王者BMF王者という豪華メインイベントに劣らぬ注目を集めているこの一戦。その理由は何よりもまず、チマエフが途轍もなく高い戦闘能力と心身の不安定さを併せ持つ、色々な意味で目の離せない存在であることだ。そしてウィティカーこそチマエフのキャリア上最強の相手であり、今回ついにその「底」が露呈する可能性が少なくないことだ。
2020年7月、チマエフは(コロナ禍による米国入国規制に対応して開催された)アブダビのファイトアイランドことヤス島大会に登場し、ジョン・フィリップスとのミドル級戦において2Rダースチョークで圧勝して鮮烈なUFCデビューを飾った。
その10日後には同会場に行われた大会にも欠場選手の代打としてウェルター級戦=リース・マッキー戦に登場。1RパウンドによるTKOで相手を葬り去り、10日で2勝という(ワンデートーナメント廃止以降の)現代UFCにおける最短記録を──しかも2階級をまたいで──樹立してのけた。
さらにその2ヶ月後には再びミドル級戦に登場し、今度はわずか17秒でジェラルド・マーシャートからKO勝ちを収め、66日で3連勝という新たな現代UFC記録をも達成した。
結果以上に圧巻だったのがこの3戦の内容だ。最初の2戦は試合開始と同時に距離を詰めてテイクダウン。そのまま相手を逃さず強烈なパウンドや肘で削り、一方的に攻撃してフィニッシュした。3戦目も試合開始直後から前に出て、テイクダウンを警戒する相手を右ショート一発で昏倒させた。
問答無用のテイクダウン力と相手に何もさせない圧倒的コントロール力、さらに精度と破壊力を併せ持つ打撃まで備えた男が、試合開始と同時に様子見を一切せず相手に迫り、一片の躊躇もなくフルスロットルで攻撃し続け、最短距離で粉砕する──見る者全てを戦慄させる戦いを披露したチマエフは、当然のようにデビュー3連続でパフォーマンス・オブ・ザ・ナイト・ボーナスを受賞した。
その言動も超攻撃的な戦い方に相応しく、二戦目の勝利後には「俺は全ての相手を破壊する!」と絶叫し、三戦目の前には「お前の顔面を粉砕してやる」と相手を挑発すると、17秒でその通りに実行。こうしてチマエフは、UFCデビューから僅か2カ月にて世界で最も熱い注目を浴びる若手MMAファイターの座に駆け上がったのだった。
3カ月後の12月には早くもウェルター級トップランカーのレオン・エドワーズとの対戦が組まれたが、両者とも新型コロナウィルスに感染して試合は延期に。その後この試合は二度リスケジュールされたものの、チマエフの回復が遅れて実現せず。21年3月にチマエフは肺の合併症を理由にSNSで「もう終わりだと思う。みんながっかりすると思うけど、僕の心と体が僕に全てを語っている」と引退の意志を表明し、洗面台に吐いた血を写したショッキングな写真を投稿した。
が、チマエフを治療のためにベガスに呼んだデイナ・ホワイトUFC代表は、これは一時的な気持ちの揺れによるものと説明して引退を否定。実際やがて症状が改善したチマエフは、2021年10月にリー・ジンリャンと対戦した。以前同様、開始同時に距離を詰めて組みついてチマエフは、ジンリャンをリフトしたままケージの中を歩きながらケージサイドのホワイト代表に向かって「俺が王者だ! 全員殺してやる!」と叫んでからテイクダウン。そのまま強烈なパウンドとチョークを織り交ぜて一方的に攻撃し、3分過ぎにジンリャンを絞め落として破天荒極まりない復活を遂げた。
が、その後チマエフは2022年9月に大会目玉カードのニック・ディアス戦を体重超過で飛ばしてしまう。そこで急遽組まれたケヴィン・ホランド戦に圧勝すると、試合後のインタビューでは謝罪するどころか「ウェイトオーバーなんてどうでもいい! 俺は落とせたのに医者に止められたんだ!」と前代未聞の開き直りを見せた。
次戦の昨年10月の元ウェルター級王者のカマル・ウスマン戦は快勝。が、今年6月に予定されていたウィテカー戦は、キャンプ途中で原因不明の体調不良に襲われて回復せず、キャンセルを余儀なくされた。
比類なき戦闘能力とアグレッシブネス、その激しさを反映するが如き精神面健康面の脆さも併せ持ったチマエフは、「次にいつ試合するのか」、「どんな戦いを見せるのか」、「そもそも本当に試合をするのか」とさまざまな形でファンの興味を掻き立て続ける存在だ。
ちなみに近年チマエフは、米国入国に必要なビザが降りないとのことで、昨年のウスマン戦はアブダビ大会、6月に予定されていたウィティカー戦はサウジアラビアのリヤド大会、今回改めて組まれたウィティカー戦は再びアブダビでの試合となる。ビザが降りない理由は、(18歳でスウェーデンに移住した)チマエフの生まれ故郷であるチェチェン共和国の首長ラムザン・カディロフ──米国当局からは人権侵害に関与したとして入国禁止の制裁対象とされている──とチマエフがごく親しい間柄であるためだと報道されている。
実際カディロフの二人の息子にMMAを指導し、長男のデビュー戦ではセコンドに付いたチマエフは、現在も頻繁にSNSでカディロフと親しくしている写真を投稿している。当然ファンからは批判の声も挙がっているが、本人は気にかける様子もなく、冗談めかして「(ホワイト代表と親しい)ドナルド・トランプが大統領になってくれない限り、僕は米国に入国できずにUFCタイトルに挑戦できないかもしれない。でも気にしないさ。僕はどこでも戦うし、ベルトなき王者というだけだ」と語る。このような政治的事情も、チマエフの激しくも儚く、そして危なっかしいイメージを増幅させている。
そんなチマエフの前に今回立ちはだかるウィティカーは、全く対照的なイメージを纏っている。常に若者のロールモデル(模範)であることを心がけ地域貢献活動にも精を出し、対戦相手へのトラッシュトークなどは一切行なわず、誰からも好かれ尊敬される存在だ。チマエフも以前ウィティカー戦との対戦可能性について聞かれた際に「できれば別の選手とやりたいよ。ロバートは良い人間で尊敬している。もっと憎むことのできる相手と対戦して殴りたい。彼とはむしろ一緒に練習したい」と語っており、両者の間には遺恨らしきものは存在しない。
下馬評では無敗のチマエフ(ミドル級ランキングは13位)が現在ランキング3位のウィティカーより有利と出ているが、チマエフ危うしとの声も小さくない。
最大の疑問は、チマエフの一番の強みであるテイクダウン&コントロールが、ウィティカー相手にどこまで通用するかだ。ウィティカーは、これまでウェルターとミドルを行き来してきたチマエフがはじめて戦う真のミドル級の体格のトップランカーだ。2014年から10年間ミドル級で戦い続けており、ヨエル・ロメロをはじめとする何人もの強力なレスラーのテイクダウンを凌いで勝利した実績がある。
レスリングの練習に余念のないウィティカーは「私はなかなかテイクダウンされないし、抑え付けるのも困難だよ」と自信を覗かせている。試合開始と同時に暴風雨のような攻撃を繰り出すチマエフは、これまで全ての相手から1R早々にテイクダウンを奪っている。が、仮に今回同じことをできたとしても、これまでのどの対戦相手よりも高い身体の出力を持つウィティカーをコントロールし続け、フィニッシュあるいは大ダメージを与えることができるのか。チマエフの攻撃力が最大値にある1Rの攻防こそ、一番の見どころだ。
もしウィティカーがチマエフの序盤の猛攻を凌いだ場合、ウィティカー有利説のもう一つの根拠=この試合が5R制だということが大きな意味を持ってくる。ウィティカーが何人ものミドル級トップ勢と5Rフルに戦い、制しているのに対して、チマエフはジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ戦とウスマン戦で3R判定の試合を二度経験しているのみ。この二戦ともに2R以降はノンストップラッシュを控えてペースを抑え、反撃をもらう場面もあった。試合が4、5Rに突入してもスタミナが残せるのか、フタを開けてみなければ分からない。
また、長期戦になればなるほどチマエフが距離を詰めてテイクダウンを取るのは困難となり、必然的にウィティカーが望むスタンドの攻防が多くなるだろう。そこでは近距離を得意とするチマエフの拳より、蹴りを多用して距離を保つウィティカーが、遠い間合いから一気にブリッツして(=飛び込んで)放つ必殺の右が炸裂する可能性が高い。チマエフも「もしロブがテイクダウンだけを警戒するのなら、僕のライトハンドでKOされる可能性もあるよ」と打撃戦にも自信を覗かせているが、どう出るか。
チマエフは前回の体調悪化を踏まえ、今回ロシアのコーカサス山中にある五輪選手用の訓練施設オゾン・ヴィレッジでキャンプを張った。世界レベルのレスラーやコーチ陣と練習を重ね、万全の調整ができた模様だ。試合前記者会見では、五分刈りではなく自然な短髪&眼鏡を着用して登場。今までのヤンチャなイメージから一変して、物静かにしてきわめて温厚な調子で受け答えをしたこと自体が反響を呼んでいる。
長年ミドル級世界トップに君臨する超実力者ウィティカーとの対戦で、底知れぬ強さを見せてきたチマエフの底が割れる日がついに来るのか、それとも予測不可能にして危険極まりない男チマエフがまたしても世界を震撼させるのか。興味は尽きない。
■視聴方法(予定)
10月26日(日・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
10月27日 午前3時~PPV
午後10時 30分~U-NEXT
【写真】スクショを撮る際に、5秒以上も目を剝いて待ってくれていたタルボット。実はいいヤツ (C)MMAPLANET
29日(土・現地時間)、米国ネヴァダ州ラスベガスのT-モバイル・アリーナで開催されるUFC303「Pereira vs Prochazka 2」で、ペイトン・タルボットがヤニス・ゲムリと戦う。
Text by Manabu Takashima
2023年のコンテンダーシリーズでUFCと契約し、2試合連続でKO勝ちのタルボット。キャリアは8戦8勝、負け無しの新鋭は自らの一番の武器はペースだと言い切った。
――今週末にヤニス・ゲムリ戦を控えたペイトンです。調子はいかがですか(※取材は26日に行われた)。
「最高だよ。ヤニス・ゲムリとは良い顔合わせだと思う。殴り合って、エキサイティングなファイトをするよ」
──UFCで2度戦って2つのKO勝ち、判定勝ちだったコンテンダーシリーズのファイトも素晴らしいパフォーマンスでした。そんなペイトンのことを我々は、まだまだ分かっていないのですが、なぜMMAを始めたのですか。
「2017年、18歳の時にコナー・マクレガーの影響を受けて、試しにジムに行くようになった。すぐにマーシャルアーツに夢中になったよ。トレーニングをしていると、試合に出るようになって。そうなると、日に日にMMAへの想いが強くなっていった」
──MMAを始める前に格闘技の経験はあったのでしょうか。
「凄く小さな時にボクシングをやったことがあったけど、全然ダメで2カ月ほどで辞めてしまった。経験という経験があったのはレスリングだけで。レスリングはハイスクールを中心に4年ほどやっていた。けど、コレといって目立った戦績は残していない」
──それでもレスリングというベースがあったのですね。ファイトスタイルから、打撃系格闘技の経験の持ち主だと勝手に思っていました。
「う~ん、打撃が自分の一番の武器だとは思っていないよ」
──そうなのですか。
「僕の武器は体力だ。ハイペースで15分間、戦い続けることができる。結果、対戦相手は疲れて僕の打撃の餌食になるんだ」
──まさに現代MMAの申し子ですね。
「だって皆、それが見たいだろう? テイクダウンをされて、ガードの中に相手を入れて止まるなんて試合は誰も見たくないはずだ。MMAに求められるのは、アクションだから。それにケージのなかでは動きが多い方が、勝つ確率も高くなる。だから、常に動いてペースの速い試合を心掛けている」
──そして、フィニッシュを狙うのがコンテンダーシリーズ世代ですね。
「もちろん、フィニッシュを狙うのは当然だ。もともと、組んで倒してコントロールする試合なんか、好きじゃなかったし。そうやって勝つファイターがいることは分かっている。それはそれで構わないけど、そんなことがしたくてMMAを戦っているわけじゃないから。
結果的に僕は自分がやりたいことをするためにオクタゴンに上がっている。それこそが、コレをやって金を稼ぐのに相応しいファイトだと思っている。安全なポイントゲームなんて、やりたくない」
──それこそ、コナー・マクレガーに感化されてMMAを始めたペイトンらしいファイト・フィロソフィーですね。
「実際にMMAのトレーニングを始めてからも、コナーから受けた影響は大きい。あとはマックス・ホロウェイ、そしてネイト・ディアズ……でも、子供の頃に日本のアニメから受けた影響も絶大だよ(笑)。ドラゴンボールZに、幽遊白書からファイティング・スプリットとは何かを学んだんだ」
──なるほどぉ。では日本のMMAに興味を持ったことは?
「それは……余りないかなぁ。なんか、凄いステージがあって、ダンスをしたりしているのは受けたけど(笑)。ファイターでは、UFCとサインをしたばかりの……。そう、カイ・アサクラだ。彼のハイライトは見たよ。良い選手だよね」
──では同じバンタム級でUFCデビューを果たし、連勝中の中村倫也選手の印象を教えてください。
「う~ん、ちょっと分からないなぁ……。あのレスラーかい?」
──そうです、レスリングがベースです。
「まぁ、視界に入ってくれば気にかけるようにするよ」
──……押忍。では、土曜日に戦うゲムリの印象は?
「きっと、たくさん蹴ってくるだろうね。そしてカウンターの一発を狙って、我慢強く戦ってくるはずだ。ちょっとフラストレーションがたまる試合になるかもね。あの動きを僕のグルーブに誘い込むのは、ちょっと面倒くさいと思う。
ちょっと変な打撃だろう? なんか蹴りとパンチのコンビネーションがおかしいんだよ」
──確かに。構えも特徴的で。ただ、時折り力強いクリンチゲームも展開します。
「あんまり寝技の展開は見たことがないけど、上半身を固める組みを使うのは確かだ。でも、あんな風に固めてくるとスタミナを無駄にするだけだ。そこから先は、彼のやりたい試合にはならない。まぁ、何分間も相手をケージに押し込むようなヤツだよ。
だからこそ、動きまくって肉弾戦を皆に見てもらいたい。まだ僕のことを認識していないファンがいれば、きっと考え方が変わる試合になる。もう意識しないわけにはいかなくなるよ。しっかりと皆が喜ぶ試合をし続けるよ」
──その先に狙うは、タイトル挑戦と。
「そうだね、上手くいけば1年半後ぐらいにはトップに立っているだろう」
──ペイトン、今日はインタビューに時間を割いてくれてありがとうございました。最後に日本のファンに一言お願いします。
「ハイ。アリガトゴザイマス。オヤスミ」
■視聴方法(予定)
6月30日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT
■ UFC303対戦カード
<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] イリー・プロハースカ(チェコ)
<ライト級/5分3R>
ブライアン・オルテガ(米国)
ディエゴ・ロピス(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
アンソニー・スミス(米国)
ロマン・デリツ(ジョージア)
<女子バンタム級/5分3R>
マイラ・ブエノ・シウバ(ブラジル)
メイシー・シェエソン(米国)
<ウェルター級/5分3R>
イアン・ギャリー(アイルランド)
マイケル・ペイジ(英国)
<ミドル級/5分3R>
ジョー・パイファー(米国)
マフクアンドレ・バリユー(カナダ)
<フェザー級/5分3R
カブ・スワンソン(米国)
アンドレ・フィーリ(米国)
<フェザー級/5分3R>
シャルル・ジョーダン(カナダ)
ジアン・シウバ(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
ペイトン・タルボット(米国)
ヤニス・ゲムリ(フランス)
<女子ストロー級/5分3R>
ミッシェレ・ウォーターソン・ゴメス(米国)
ジリアン・ロバートソン(カナダ)
<ヘビー級/5分3R>
アンドレイ・オルロフスキー(ベラルーシ)
マルティン・ブダイ(スロバキア)
<フライ級/5分3R>
カーロス・ヘルナンデス(米国)
鶴屋怜(日本)
<バンタム級/5分3R>
リッキー・シモン(米国)
ヴィニシウス・オリヴェイラ(ブラジル)
フェザー級。バルボーザ12位。マーフィーは以前はランキングに入っていたが、スターリングやディエゴ・ロペスに押し出されて現在はノーランカー。
バルボーザはUFCデビューから14年目のベテラン。これが30戦目で、ここまで18勝11敗。打撃の攻撃力の高さが武器で、パンチ・蹴り・ヒザでKOが取れる。反面、打たれ弱さも持ち合わせており、打撃をもらうと効かされることが多い。前戦もソディック・ユサフ相手に1R序盤にパンチでダウンを喫するピンチに陥ったが、ダメージを負いながらも凌いで、2R以降スタミナ切れしたユサフを逆転。最後は5年ぶりにテイクダウンを奪い、グラウンドに持ち込んで必死に勝ちをもぎ取った。今回のイベントに向けた記者会見では、マックス・ホロウェイとBMF王座を賭けての対戦をアピール。ランキングは関係がないのがBMF王座で、実際組まれたら激しい試合になりそうだが、反面スター選手同士の対戦で組まれるタイトルなので、バルボーザが挑戦できる可能性は低そう。フェザー級ランカーではジョシュ・エメットに次ぐ年長の38歳。
マーフィーは初メイン。元ボクサーのストライカー。スタンドでの打撃、テイクダウンしてからのパウンドが武器。13勝中7KOで、一本勝ちはない。UFCデビュー戦でズバー・ツフゴフ相手にドローだったが、その後5連勝。キャリアでもまだ負けなしだが、ランカーとの対戦もこれが初めてとなる。UFCデビューからコロナ禍の間はずっとアブダビ大会に出場し、コロナ後地元イギリスでの開催が復活してからはロンドン大会のみの出場で、アメリカでの試合はこれがキャリアで初となる。ボクシングを始める前はサッカーをしており、地元マンチェスターのマンチェスター・ユナイテッドの下部組織で練習していたこともあるが、16歳の時に膝を負傷し、サッカー選手の夢を諦めている。32歳。
オッズは若く無敗のマーフィーがフェイバリット。
飛び込んだマーフィーにバルボーザのインローがローブローに。再開。打撃戦。右を打ち込むマーフィー。バルボーザも右を返す。強烈なローを入れたバルボーザ。ジャブを突いて出る。バルボーザのインローにマーフィーは右を合わせる。インローに右を合わせた。右フックがヒットし距離を取るバルボーザ。マーフィー左ミドル。ワンツー。両者カーフキックを入れる。ジャブで詰めたバルボーザ。右フックから首相撲に捕らえてヒザ。しかしスリップして下になる。パウンドを入れるマーフィーだが、最後にバルボーザの蹴り上げがヒット。終了後、ちょっと効いているマーフィー。
最後のグラウンドかかと落としでのダメージがあるとみなされれば、バルボーザのラウンドか。
2Rj.マーフィーがパンチを打ち込む。バルボーザも詰めていくが、ジャブをもらった。またロー。お互いの右が交錯。また右を入れるマーフィー。ジャブ。プレスしてきたマーフィー。左右のフック。サークリングでかわしたバルボーザだが、マーフィーすぐに追う。ワンツーからさらに左。マーフィーまた飛び込むと今度はタックルへ。バックに回る。前に崩して倒そうとするマーフィー。ケージでこらえるバルボーザ。放した。左右のパンチで出たマーフィー。パンチをもらってバルボーザ効いたか。右がヒット。縦肘がガードの間からバルボーザの顔面を取られる。ケージを背負うバルボーザにパンチ・肘のラッシュ。バックスピンキックを狙ったバルボーザだが、足がついていかずにスリップダウン。バックに付いたマーフィー。離れ際にヒザ。ホーン。
2Rマーフィー。
3R。バルボーザが出ていくが、マーフィーのパンチを被弾。右をもらった。手を出していくバルボーザ。マーフィー右ハイ。バルボーザの右ミドルがヒットするが、マーフィーパンチで詰めてきた。ケージを背負うバルボーザ。左右のフックからタックルへ。シングルレッグ。離れたバルボーザだが、マーフィーすぐに追って間合いに入る。左ストレートがヒット。右ハイ。ケージ際から抜け出せないバルボーザ。マーフィーまたタックルに。リフトしてテイクダウン。すぐに立つバルボーザだが、スタンドバックに。離れたが、すぐに追うマーフィー。バックスピンキックをボディに入れた。動きが止まったバルボーザにパンチの連打がヒット。パンチをかわせなくなっているバルボーザ。サークリングしてもすぐに追うマーフィー。タックルへ。バルボーザがぶって切る。立って離れる。マーフィーまたバックスピンキックからパンチを入れる。ホーン。
3Rもマーフィー。
4R。マーフィーカーフキック。ワンツー。バルボーザはミドルを入れる。マーフィー右オーバーハンドから返しの左をヒット。ジャブを入れるマーフィー。ワンツーからロー。ジャブを突かれてぐらついたバルボーザ。動きが落ちている。サークリングしてもすぐ追っていくマーフィー。バルボーザのバックスピンキックがボディにヒットしたが単発。ジャブから右フック。全部もらっているバルボーザ。またバックスピンキックを放つが浅い。右がヒット。組んでいったマーフィー。スタンドバックに。正対して離れたバルボーザ。ホーン。
4Rマーフィー。当然KOするしかないバルボーザ。
5R。マーフィーの左フックでぐらついたバルボーザ。マーフィータックルで組み付く。バックについたが離れたバルボーザ。マーフィーの右フックがヒット。マーフィーも疲れがあるのか、ややペースが落ちている。それでもワンツーを打ち込むマーフィー。左フック。時間がなくなってくる。バルボーザのバックスピンキックが脇腹にヒットしたが、マーフィーすぐにタックル。テイクダウン。バックに回るが、バルボーザ立ち上がる。スタンドバックで時間を使うマーフィー。バルボーザ耐えるのみになっている。残りわずかで正対したバルボーザ。タイムアップ。
50-45×2、49-46でマーフィー勝利。
The BADDEST of the night 〓〓〓@Justin_Gaethje & @BlessedMMA take home the #UFC300 FOTN!
— UFC (@ufc) April 14, 2024
[ B2YB @ToyoTires ] pic.twitter.com/BjFCUSl1fn
Two UNFORGETTABLE performances tonight 〓@BlessedMMA & @Jiri_BJP take home the POTN bonuses 〓
— UFC (@ufc) April 14, 2024
[ B2YB @PrimeHydrate ] pic.twitter.com/eX5c3ck7cw
<BMF選手権試合ライト級/5分5R>
マックス・ホロウェイ(米国)
Def.5R4分59秒by KO
ジャスティン・ゲイジー(米国)
ジョー・ローガンが「バイオレンスなだけでなく、もっとも技がある」と評した王者ゲイジーが、開始直後からやや近い距離で圧を掛ける。ジャブから左ミドルのホロウェイが、ゲイジーの右をかわす。右カーフを蹴ったゲイジーに対し、ホロウェイが構えを変えてフェイクからジャブを伸ばし、右ローへ。ステップインから左を届かせたホロウェイだが、右カーフで体が流れる。左リードを当てたホロウェイに対し、じっくりと構えたゲイジーは右アッパーを被弾して、直後に右を当てるが左を打たれる。ゲイジーは右カーフを蹴り、やや粗いワンツーを振るう。
ホロウェイは左ボディストレートを当て、右アッパーに続ける。しっかりとゲイジーの動きを見るホロウェイが、カーフをチェックする。それでも痛そうなホロウェイは、左ハイをガードすると右アッパーを放つ。そしてカーフをチェックしてワンツー、ゲイジーが右を思い切り振るう。飛び込みざまにスリップしたゲイジー、足下は滑りやすいか。と前蹴りを入れたホロウェイは、最後に思い切り前にでてきたゲイジーの腹にスピニングバックキック、頭を下げていためヒザが鼻に当たりカットを誘った。
2R、ホロウェイが左三角蹴り、ゲイジーが左ローを蹴る。右から左を振るったゲイジーだが、右ミドルを蹴られる。ガードの隙を見つけて、射抜くような攻撃を見せるホロウェイはカーフもしっかりとチェックしている。ゲイジーの右にエルボーを打とうとしたホロウェイだが、その前にアイポークがあり試合が中断する。1分ほどのインターバルで試合は再開、ここからも慎重な戦いが続く。ホロウェイが右ボディ、右ミドル蹴り、ワンツー。ゲイジーが右からの右カーフが決まった。と続くパンチの応酬で、再びアイポークがあり試合は2度目の中断に。
ここもすぐにリスタートとなり、両者の動きのギアが一段上がったか。ゲイジーが左リードフックから右を振るう。カーフで姿勢が乱れたホロウェイはオーソのまま左足を蹴られる。残り5秒、蹴りからワンツーをホロウェイが入れた。
3R、右ボディを殴ったホロウェイだが、右カーフを蹴られる。ゲイジーは前蹴り、ホロウェイが右ミドルハイを返す。さらにホロウェイが左ミドルを入れ、ゲイジーは右カーフを蹴っていく。前に出てくるゲイジーに左フックを被せるホロウェイの左足はいつまで持つのか。ゲイジーが左フックを当てるも、ホロウェイはワンツーからスピニングバックキック、さらに左ジャブでゲイジーが動きを止める。それでも右カーフを返したゲイジーだが、スピニングバックキックでまたも腹を蹴られる。
残り80秒、ゲイジー・チャントのベガスのファンだが、右を受けたゲイジーが顔をガードで覆う。そこからボディを放ったゲイジー。ホロウェイはゲイジーのステップバックのタイミングで踏み込んで、右を伸ばす。ホロウェイの距離で3Rが終わった。
チャンピオンシップラウンドの4R、ゲイジーがまず右前蹴りを蹴る。ホロウェイも右前蹴りを駆使し、右ボディへ。さらに左ハイを狙ったホロウェイだがワンツーを打たれる。テイクダウン狙いのフェイクを見せたゲイジーが、左を当てる。直後に右を打ち返したホロウェイ、ゲイジーが動きを止め左ジャブでも足が止まる。すぐに前に出てきたゲイジーが右カーフ、ワンツーをかわしたが自らも左を空振りする。
ゲイジーの空振りの後に右をヒットさせたホロウェイが、右ヒザをボディに突き刺す。カーフに左フックを合わせたホロウェイだが、右一発でダウンを喫する。立ち上がったホロウェイにラッシュをかけると思いきや、ここでも間合いを測ったゲイジーがジャブ。ボディを打ったホロウェイは、右をテンプル付近に被弾したが、ダメージはなかった。
最終回、ゲイジーがジャブを当てる。ボディから右も、ホロウェイがまたもスピニングバックキックを放つ。前に出るゲイジーに対し、回るホロウェイが右をヒット。さらにワンツーから右を当てると足がふらついたゲイジーがケージまで下がる。パンチのラッシュ、ヒザを入れたホロウェイは間合いを取り直して、スピニングバックキック。
ラフな打ち合いに持ち込ませないホロウェイが、またも右を当てる。ゲイジーが左を返すが、すぐにワンツーをホロウェイが放つ。残り90秒、左ボディを入れたホロウェイが関節蹴り、前に出てくるゲイジーにスピニングバックキクを放つ。ゲイジーは前に出て右オーバーハンドも腹を殴られる。距離、タイミングを考え、高度な打撃戦を繰り広げた両者。最後の10秒で足を止めての打ち合いになると、軸が乱れパンチが空を切るゲイジーに対し、ホロウェイがボディから右で顔面に打ち抜く。ゲイジーが頭から崩れ、タイムアップ1秒前のKO決着となった。
このまま判定でも勝利を手にしていたであろうホロウェイは、最後に打ち合いに応じKO勝ち。まさにBaddest Motherfucker、最高にヤバいヤツが、最高にイカした勝利を手にした。
「ゲイジーは本当のBMFだ。彼はこの試合で何も失っていない。エルマタドール(イリャ・トプリア)は逃げた。イスラムでも構わない。145ポンドでも155ポンドでもタイトルを賭けて戦う。俺はここにいるぞ。これが本当のBMFだ。この機会を与えてくれた皆、ダナに感謝している。俺は誰とでも戦う」とBMF王者が咆哮が館内に響き渡った。