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【UFC310】3回戦の方が見応えがあったような……コメインでラクモノフがギャリーを下しタイトル戦当確

<ウェルター級/5分5R>
シャクハト・ラクモノフ(カザフスタン)
Def.3-0:48-47.48-47.48-47
イアン・マシャド・ギャリー(アイルランド)

慎重な立ち上がりの中、様子見の打撃戦もそこそこラクモノフが組んでクリンチに。ダブルアンダーフックでケージに押し込まれたギャリーは、ケージに持たれてテイクダウンを防ぐ。小外から右腕を差し上げて倒しにいったラクモノフに対し、切り返して上を取りに行ったギャリー。ここでラクモノフがバックを取る。力のこもったテイクダウンの攻防は、続いてギャリーが大内刈りへ。決まったかと思われたが、ラクモノフが耐える。

残り40秒、打撃の間合いに戻るとラクモノフが右ストレートをヒットさせる。そのまま組んだラクモノフは、ケージにギャリーを押し込む。ギャリーが押し返したところで時間に。右一発で、ラクモノフのラウンドを取った。

静かな打撃戦に終始する2R。ラクモノフがジャブを伸ばし、ギャリーがローを蹴る。ハイキック、ボディを殴ったギャリー、右を被弾しラクモノフが圧を高める。続く左リードフックをかわしたギャリーが組んで、クリンチへ。ヒザを突き刺したギャリーだがケージを背負った状態が続く。ラクモノフはボディロックからワキを潜ってバックに。最後打撃の間合いに戻ると、残り5秒を切ってラクモノフも左とギャリーの右が交錯した。

3R、左ハイミドルのギャリー。続いて左右のローで前足を蹴って行く。さらに左ミドルを入れるなど蹴り重視、そしてラクモノフは見る展開が続く。ギャリーは関節蹴りを繰り出し、ラクモノフも右オーバーハンドをかわしてヒザを見せる。距離を詰めるラクモノフだが、パンチは当たらずクリンチへ。ケージにギャリーを押し込むと、ねちっこい展開に残り70秒でレフェリーブレイクを命じた。

離れた直後にギャリーが左ハイを繰り出す。ジャブの差し合い、ラクモノフの後ろ回し蹴り&スピニングバックフィストは空振りに。直後に左ジャブを入れたラクモノフは、ギャリーのスピングバックフィスト後に右をヒットさせた。

4R、ギャリーは右カーフ。ラクモノフは右を振り、スピニングバックキックで今度は腹を狙う。カーフを再び入れたギャリーの上への蹴りに、ラクモノフが右を合わせようとする。スッと入ってクリンチにいくラクモノフは、離れるとシングルレッグで潜り込みテイクダウンを決める。それだけタイミングが良かったのか、あっさり下になったギャリーは鉄槌に背中を見せて立ち上がる。乗り過ぎて前方に落ちたラクモノフに対し、ギャリーはニンジャチョークを仕掛ける。ラクモノフは頭を抜き、姿勢が乱れたギャリーのバックへ。正対したギャリーは、スピニングバックフィストを空振りしてダブルレッグでこの回2度目のテイクダウンを許す。しなるような鉄槌を振り落とすラクモノフは、腕十字を凌いでラウンドを明確に取った。

最終回、恐らくラクモノフが3つのラウンドを取っており、勝利にはフィニッシュが必要なギャリーが、ラクモノフの執拗なテイクダウン狙いのなかでバックを奪いグラウンドへ。ギャリーは両足をフックして、ボディトライアングルに取る。アゴの上からRNCをセットしたギャリーがパームトゥパームからワンハンド、そしてRNCに組み替えて絞めていく。耐えたラクモノフが胸を強引に合わせていくが、ボディトライアングルがまだ効いている。それでも正対したラクモノフは、四の字でクローズドガードから起き上ってリバーサルを狙ったギャリーを潰す。

オープンから下がってスペースを作って立ち上がったギャリーが、クリンチへ。押し込み返したラクモノフは、そのまま時間を使う。最後に離れた両者、ギャリーのスピニングバックフィストは空を切り、タイムアップとなった。

1Rの力のこもったクリンチの攻防、そして終盤2Rは攻め合ったが、途中の2・3Rのペース争いを考えると3回戦で良かった──と思わせるコメインは、ラクモノフが3-0の判定勝ちを収めケージインしたベラル・モハメッドと、世界タイトルを掛けて戦うことが決まった。


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【UFC310】朝倉海のUFC初戦=パントージャ戦=世界フライ級王座挑戦が、正式発表。破格のデビュー戦

【写真】朝倉海のUFCデビューが決定。大手・電気通信会社が後押しするという話もある2025年のUFC日本大会、ついに実現に向かうのか(C)Zuffa/UFC

12日(土・現地時間)に12月7日(土・同)にネヴァダ州ラスベガスのTモバイルアリーナで開催されるUFC310で朝倉海が、UFCデビュー戦でアレッシャンドリ・パントージャの持つUFC世界フライ級王座に挑戦することが発表されている。
text by Manabu Takashima

6月のUFC挑戦宣言以来、ついに朝倉のオクタゴンデビューが世界王座挑戦という形で実現することが正式発表された。RIZINのリングでUFC挑戦を宣言した直後に朝倉は当時のバンタム級王者ショーン・オマリーへの挑戦を匂わせる発言をしていたが、Fight&Life誌の表紙を飾ったポートレイト撮影時に、「バンタム級としては、小さいです」という言葉が聞かれていた。

撮影後のインタビューでは「アッと驚くデビュー戦になる」とも話していた朝倉だが、恐らくはこの時点からパントージャへの挑戦という話が存在していたか、方向性を持っていたに違いない。

奇しくも一戦、一戦と実績を積んできた平良達郎がUFC世界フライ級1位のブランドン・ロイヴァル戦を戦う日に朝倉の王座挑戦が明らかとなったわけだが、THE BLACKBELT JAPAN陣営では日本時間の9月11日には「恐らくは」という状況で、朝倉の挑戦の話が届いており、平良はそこを受け止めてのロイヴァル戦で精神的な動揺はないと想像される。


ともあれ日本人ファイターのUFC初戦でタイトルショットは2001年2月の宇野薫(バンタム級王座決定戦=ジェンス・パルバー戦)、翌2002年3月の桜井マッハ速人(UFC世界ウェルター級王者マット・ヒューズに挑戦)以来、22年9カ月振り。日本人ファイターのUFC世界タイトル挑戦は2015年4月に堀口恭司がデメトリウス・ジョンソンにチャレンジして以来、9年8カ月振りとなる。

Zuffa体制序盤は2001年2月にジル・カスティーリョが、UFC世界ミドル級王者デイブ・メネーに挑戦した一戦や2003年11月にWFAウェルター級王者だったフランク・トリッグが、マット・ヒューズの持つウェルター級のベルトに挑むなど、初オクタゴンが世界戦という例は見られた。

さらに女子では2013年2月にStrikeforce世界バンタム級王者ロンダ・ロウジーがUFC女子世界バンタム級王者に認定され、初防衛戦の相手リズ・カモーシェが挑戦者という立場で初めてオクタゴンに足を踏み入れている。

2017年12月にTUF26決勝が初代UFC世界女子フライ級と女子ストロー級王座決定戦だったためニコ・モンターニョとロクサン・モダフェリ、カーラ・エルパルザとローズ・ナマジュナスも初戦でタイトル戦を経験している。とはいえ、近年は朝倉のようなデビューは異例中の異例だろう。

UFCアジアをリードするケビン・チャンは、今回の朝倉の挑戦に対し「我々のマッチメイカーがカイ・アサクラを即タイトル戦に起用したのは過去3年、日本から質の高いトップレベルファイターたちが生まれていたからだ。タツロウ・タイラ、リンヤ・ナカムラ、レイ・ツルヤらは、日本のMMAに再び黄金期が訪れることを示唆している」とプレスリリースにコメントを寄せている。

UFC310のメインはUFC世界ウェルター級王者ベラル・モハメッドにカザフスタン人ファイターのシャクハト・ラクモノフが挑戦する。東と中央の違いはあれど、アジア人ファイターが同日に頂点に挑む。そんなUFCにとっても歴史的なイベントでデビュー、そしてタイトル挑戦を迎える朝倉海のコメントは以下の通りだ。

朝倉海
「UFCフライ級を盛り上げるためにやってきました。12月7日、日本時間では8日(日)にラスベガスのT-Mobileアリーナで開催されるUFC 310でフライ級王者のアレシャンドレ・パントージャ選手と戦うことが決まりました。デビュー戦がタイトルマッチということで、不利だという声も多いかとは思いますが、必ず勝って、UFC初の日本人チャンピオンになりたいと思います。そして、UFCファンの皆さんに今まで見たことのないエキサイティングな試合をお見せすることを約束します。楽しみにしてください!」

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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:7月 エドワーズ×モハメッド「モハメッドの良さを伝えたい」

【写真】決して派手なスタイルではない。だからこそモハメッドの試合にはMMAの奥深さが詰まっている(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾、良太郎というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2024年7月の一番──7月27日に行われたUFC 304「Edwards vs Muhammad 2」のレオン・エドワーズ×ベラル・モハメッドについて語ろう。


――7月の一番として、レオン・エドワーズ×ベラル・モハメッドのUFC世界ウェルター級選手権試合を選んでもらいました。この試合を選んだ理由を教えてもらえますか。

「僕はモハメッドの地味強感が好きというか、彼はフィジカル的にすごく優れているわけでもないし、リーチが長かったり、なにか特徴があるわけでもない。バックボーンはレスリングですが、決してエリートレスラーというわけでもなくて、そういう選手がMMAファイターとしてUFCのトップ戦線で戦っている。しかもフィニッシュするのではなくて、5Rフルに使って戦って勝つというのが非常に僕好みですね。

今回はエドワーズ相手にモハメッドの良さがすごく出ていて、こういう試合をみなさんに伝えられたらなと思って選びました。おそらくもっと派手な試合、例えばエドワーズのKO勝ちを期待したファンの方も多いと思うんですけど、僕的には見たいものを見ることが出来た試合です」

――この取材前にモハメッドのプロフィールを調べたら、モハメッドは高校時代にレスリングをやっていたくらいの経歴なんですよね。それで開始早々にモハメッドがテイクダウンするという展開でスタートしました。

「まずそこがすごく驚きました。エドワーズのここ数戦を見て カマル・ウスマンやコルビー・コヴィントンといったテイクダウンが強い相手に対して(エドワーズは)はほとんどテイクダウンを許してないんですよ。そのエドワーズ相手にモハメッドは開始早々テイクダウンをとってるんですよね。その作り方もすごく上手いですし、この最初のテイクダウンが活きて、その後のラウンドも有利に試合を進めていくので、試合の作り方の上手さも感じました。

もちろん1個1個の格闘技の技術もバランスよく使うものは持ってるんですけど、それ意外の部分での試合巧者というか、相手の心理を読むというか。そういう心理戦がすごい上手いんじゃないかなと思います。それがまさに最初のテイクダウンで、あれはほぼファーストコンタクトに近いようなタイミングでのタックルでしたが、おそらくエドワーズはああいうタックルはが来るとは思っていなかったと思います」

――結果的に最初にモハメッドがテイクダウンを取ったことで、エドワーズはモハメッドのテイクダウンを警戒せざるをえなくなりましたよね。逆にモハメッドはテイクダウンだけでなく打撃でもいけると踏んだと思いますし、まさにあの一発目のテイクダウンが25分間の試合の流れを決めたと思います。

「そうなんですよ。エドワーズはいきなり予想外のタックルに入られて、焦ってテイクダウンを取られてしまった。 それで打撃・スタンド勝負でも、モハメッドは楽になったと思うんですよね。それで1Rの終わりぐらいにモハメッドが打撃をまとめるシーンがあるんですよ。あれはおそらくエドワーズがテイクダウンを警戒して自分の打撃ができなかったところに、モハメッドがパンチを当てて、明らかにエドワーズが嫌がったんです。

ここでモハメッドは打撃で攻めるんじゃなくて、もう一回タックルに入るんですよ。で、そこでもまた1発でテイクダウンを決めました。そういった試合運びの巧さというかクレバーさ。フィッシュを狙うファイターであれば、打撃であそこまで行けたら そのまま打撃で行くと思うんですよね。でもそこで自分がやることを明確にして、打撃からテイクダウンに切り替えることが出来る。相手が打撃を嫌がって意識が上に行ったら、タックルに行くという。そこをパっと切り替えられることの凄さですよね」

――またモハメッドは上(打撃)と下(テイクダウン)の散らしが絶妙ですよね。

「僕もモハメッドのテイクダウンの何がいいのかを考えて、僕は理由が2つあると思うんですよ。まず1つは位置取りですよね。モハメッドはたまにスイッチを使いながら、 ナチュラルに相手にケージを背負わせるんですよ。それで相手のバックステップを殺しておいて、パンチかタックルの2択にして、パンチを散らしてタックルって入っていますよね。あともう1つは左手=前手の使い方がすごく上手いです。ジャブだけじゃなく、アッパーも打ったり、左のパンチを散らすことができる。その2つの要素がモハメッドの試合の作りにすごく関係している気がします」

――エドワーズからすると知らないうちにケージに詰められていて、打撃を散らされてテイクダウンに入られていたわけですね。

「おそらく打撃の1発はそんなにないと思うんですよね。いざ打てば強いかもしれないですけど、そういう打ち方をしていない。相手としては(モハメッドのパンチを受けて)これなら大丈夫かなと自然にステップしていたら、いつの間にかケージを背負っていって『あっ!』と思った時には、目の前で左のパンチを散らされている。今度はそれを鬱陶しいなと思ったら、タックルに入られているみたいな。そういう作りが完成されている気がします」

――技術的なところで言えば、股下で腕をクラッチして相手を持ち上げるテイクダウンが目立っていました。

「僕はあれをクレイ・グイダ・スローと呼んでいるんですよ。クレイ・グイダがネイト・ディアスを投げた時の技があれだったので(笑)」

――確かにクレイ・グイダがやっているイメージがあります(笑)。

「ハイクロッチから股下でクラッチして持ち上げる技なんですけど、あれはサクラバアームロック(キムラロック)を取られた時のカウンターでやると有効なんですよね」

――モハメッドはバックを取った時でも、すぐに両足フックせずにレスリング的なコントロールで上手く時間を使っていました。

「時間の使い方もすごい上手いですよね。バックキープはしつつも、あまりそこには固執せず。下になったシーンもありましたけど、基本的にはもう1回上を取りに行っている。あの辺りのポジションコントロールも、いい意味でフィニッシュにこだわりすぎていない。 本人もインタビューで言っているように、ドミネイトして制圧して強さを見せることが好きなんでしょうね。僕もそういう戦い方は好きですね」

――しかもそういった試合運びをエドワーズにやったことがすごいと思います。

「エドワーズはウスマンやコビントンのテイクダウンを切って、逆にテイクダウンするぐらいの選手なので、このレスリング力で、あの打撃があったら、なかなか崩せる選手はいないだろうなと思っていたところで、モハメッドが開始早々にテイクダウンを取って。モハメッドがMMAというものを見せてくれた感じがして、すごくよかったです」

――年齢的にも36歳での王座戴冠でした。

「階級がウェルター級なので、軽量級よりも多少は競技寿命が長いと思うのですが、身体能力に頼った戦い方ではないですよね。反射神経や瞬発力に頼らず、試合運びや駆け引きを武器として戦ってる選手なので、基本的な技術プラス試合作りが上手いですよね。その試合作りで言うと、3Rにエドワーズにバックを取られた時点で、僕はモハメッドがラウンドを捨てたような印象があるんですよ。このラウンドを取られてもいいから、体力回復にあてよう、みたいな。だから僕は5Rこそモハメッドの良さが出る気がしています」

――ポイントを計算できるからこそ、そういった戦い方もできる、と。

「3Rも最初はモハメッドが攻めに行って、スクランブルの攻防でバックを取られちゃって、その瞬間に、フィニッシュさえされなければいいやと思ったんじゃないのかなと。僕は見ていてそう感じていて、そういったラウンドを捨てる潔さもいいなと思いました。

例えなハビブ(・ヌルマゴメドフ)の過去の試合を見てみると、試合中に休むんですよね。1・2Rを明確に取ったら3Rは休む、みたいな。ただハビブの場合はポジションを許して休むのではなくて、攻めのテンションを一旦落ち着けて休むみたいな戦法で。モハメッドの場合は先に攻めたんだけど、守勢に回る展開になって、そこで休むことを選択したように見えました。そこでの切り替えの良さというか、すごくクレバーだなと思いましたね」

――なるほど。3Rはサブミッションさえ凌いで休めればいいという判断だったんですね。

「僕はそう思いました。バックを取られて相手に首を絞められたり、うつ伏せで潰されてしまうとダメですが、モハメッドのようにエドワーズを下にして、自分が天井を見ているような状態でバックを取られている分には強い打撃をもらうことはないと思うんです。

だからダメージもそんなに受けないし、サブミッションだけ気をつけていれば意外に疲れないのかなと。もちろん寝技が超一流の相手にバックを許して休むのは危険ですけど、エドワーズからはそういった危険を感じなかったと思うんですよね。だから一本を取られないようにディフェンスして、休もうという感覚もあったのではないかと思います」

――少し話題はずれますが5Rにモハマッドがバックを取っていて、最後の最後にエドワーズが正対して肘で流血させたじゃないですか。ああいう展開でエドワーズにポイントが入ることもありえそうですね。

「それはあると思います、ダメージ重視の視点でいくと」

――バックを取られて相手に攻めさせないで守るというのも戦法の一つとしてありえるのかなと思いました。

「自分と相手の技量を比べて極められない自信があって、ポイント的にもリードしているという、非常に限定されたシチュエーションにはなりますけど、5Rマッチであればそういう選択もありなのかもしれません。

もちろんモハメッドがバックを取られた状態から粘るのが得意だったのかもしれないし、その辺も含めて自分が持ってる引き出しと使い方、それを完全に熟知して戦っていると思います。ずば抜けて特別なものを持った選手ではないけれど、自分が持っている引き出しをどう使えばいいかを分かっている。だから勝つ。そういう選手なんだと思います。僕もそういう戦い方をしたかったので、モハメッドにはすごく惹かれますね」

――今のUFCチャンピオンの顔ぶれを見ると、また新たな個性を持ったチャンピオンが誕生しましたよね。

「ぶっちゃけ人気は出ないと思うんですよ(笑)。PPVが売れなくて、ダナ・ホワイトがキレる姿を想像しちゃいますけど、間違いなく通好みの選手ではあるので。MMA好きはチェックすべき試合、選手だと思います」

――確かに派手さはないかもしれませんが、例えば選手サイドからすると参考になる点が多い選手かもしれませんね。

「この企画でも以前話したことですが、教科書にしていい選手としちゃいけない選手がいて、ショーン・オマリートやコナー・マクレガーを真似するのは相当難しいと思うんです。そういう選手に憧れる気持ちは分かりますが、僕のような凡人が(笑)憧れる選手、見本とする選手は今回のムハマッドだったり、僕は結構ベンソン・ヘンダーソン戦い方が好きだったんですけど、そういう真似できる可能性がある選手を見るべきだと思いますね」

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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC304 ベラル・モハメッド レオン・エドワーズ

【UFC304】全ラウンドでTD奪ったモハメッド。逆転狙うエドワーズを振り切り、僅差の判定で勝ちで初戴冠

<UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
ベラル・モハメッド(米国)
Def.3-0:49-46.48-47.48-47
レオン・エドワーズ(英国)

サウスポーのエドワーズが右ジャブを伸ばす。距離を詰めたモハメッドは、スイッチしてダブルレッグで飛び込み、リフトアップして背中を着かせた。トップを奪ったモハメッドに、場内からブーイングが飛ぶ。下から両腕を差し上げて抱え込むエドワーズが立ち上がり、ケージまで下がり切り返した。頭をおっつけ、ダブルレッグに切り替えるも切られる。モハメッドが離れると、エドワーズは離れ際に左ヒジを見せた。

再びプレスをかけていくモハメッドのボディに、エドワーズが左ヒザを突き刺す。左に回ったモハメッドの顔面に、エドワーズが左ストレートを伸ばす。ショートレンジのパンチを狙うモハメッドだが、エドワーズにクリンチで凌がれてしまう。エドワーズが左ストレートでモハメッドのアゴを跳ね上げた。エドワーズにケージを背負わせたモハメッドは、パンチを上下に散らしながらダブルレッグで組み、またもリフトアップからグラウンドに持ち込み削っていった。

2R、開始早々から両者が至近距離からパンチを繰り出す。エドワーズは下がってローを見せるも、モハメッドのパンチを受けてしまう。右ストレートからレベルチェンジしニータップで組んだモハメッドが、粘るエドワーズをグラウンドに持ち込む。バックに回ったモハメッドも足を差し入れることはできず、エドワーズが立ち上がった。しかしモハメッドはバックをキープし、リフトしてテイクダウンした。すかさずバックマウントを奪取したモハメッドに対し、エドワーズも立ち上がる。

ヒザを突き上げてバックから引き倒すモハメッド。立ち上がるエドワーズに対し、ハイクロッチに組み替えてリフトアップからバックマウントを狙う。バックコントロールを続けるモハメッドに場内からブーイングが飛ぶ。残り1分で立ち上がったエドワーズが正対した。切り返して右腕を差し上げたエドワーズが、グラウンドに持ち込みバックへ。モハメッドはケージに背中を着けて正対する。立ち上がるモハメッド、エドワーズは左足を差し入れてラウンドを終えた。

3R、左ハイを放つエドワーズをケージまで追い込んだモハメッドが、ダブルレッグからグラウンドへ。エドワーズはバックに回って左足を差し入れる。モハメッドの足を開いて倒したエドワーズが、バックマウントを奪取して左腕を首に回した。モダメッドのディフェンスに対し、四の字フックで固めたエドワーズは体を起こしたモハメッドのバックから離れない。そのままバックをキープし続けた。

4R、モハメッドがエドワーズにケージを背負わせた。左ハイから右に回ったエドワーズを追いかけるモハメッド。ガードを固めるエドワーズに対し左アッパー、右ボディストレートを当てたモハメッドが、ボディロックで組みバックに回る。四の字フックで固めたモハメッドは、オタツロックからパンチで削り続ける。残り30秒で反転したエドワーズがトップへ。さらにバックに回ってラウンドを終了のホーンを聞いた。

最終回、モハメッドが左ジャブを突くと、エドワーズも左ストレートを返す。エドワーズは左ハイから左ボディ。モハメッドはニータップをスプロールされるも、エドワーズをケージに追い込みパンチを浴びせる。ボディロックで組んだエドワーズがバックに回る。グラウンドに引きずりこんだモハメッドが四の字フックからパンチで削っていく。しかしまたもモハメッドは、トップを奪われてしまう。エドワーズが左ヒジでエドワーズの額を切り裂いた。大出血のモハメッドはボトムからしがみつき、試合終了まで凌いだ。

裁定は全ラウンドでテイクダウンを奪ったエドワーズが、毎回盛り返したエドワーズを振り切り判定勝ち。2021年3月の初戦はサミングによりノーコンテストとなったが、今回はエドワーズが勝利するとともに初めてベルトを巻いた。


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45 Preview UFC UFC304 ブログ ベラル・モハメッド レオン・エドワーズ

【UFC304】展望 この惑星で一番の地味強決定戦。ミドル級王者エドワーズ✖モハメッド=制空権✖突破力

【写真】MMAの軸となる攻防が、25分間続く──かもしれない世界の頂上争いだ(C)MMAPLANET

27日(土・現地時間)、英国・マンチェスターのコープライブにてUFC 304「Edwards vs Muhammad 2」が行われる。アーリープレリムにムハマド・モカエフ×マネル・ケイプという注目のフライ級ランキング戦、そしてコメインに王者トム・アスピナルがカーティス・ブレイズの挑戦を受ける暫定ヘビー級タイトル戦を従えた今大会のメインイベントは、地元英国出身の王者レオン・エドワーズがベラル・モハメッド相手に3度目の防衛戦を行うウェルター級タイトル戦だ。
Text by Isamu Horiuchi

エドワーズは、 2022年8月のUFC 278にて当時絶対王者として君臨していたカマル・ウスマンに挑戦。王者のテイクダウン&コントールの前に劣勢を強いられる展開のなか、最終5R残り約1分のところで左ストレートからの左ハイ一閃。ウスマンは昏倒し、まさに世界を震撼させる大逆転劇となった。

直後に感涙とともにエドワーズがオクタゴンで発した「誰もが俺には無理だと言った。人生でずっと虐げられてきたんだ! でも今の俺を見ろ! 今の俺を見ろ! 俺を見ろ!」という魂の叫びは、鮮烈なKOシーンとともにUFC史上に残る名場面だ。


勝てば、GSPに並ぶ王者エドワーズ

新王者は、昨年3月のUFC 286でウスマンと再戦。今度はテイクダウン防御に何度も成功して打撃を当て、2-0の判定勝利で堂々の初防衛に成功した。さらに昨年12月のUFC 296では、暴言王コルビー・コヴィントンと対戦。終始距離を支配してテイクダウンを許さず、3-0の判定で完勝して二度目の防衛を果たした。

この試合後インタビューでもエドワーズは「俺にとってすごく感情的な試合だった。奴は俺の父が殺されたことをエンターテインメントに使いやがった!(※) あの後俺は怒りのあまり号泣し、感情を沈めるのに苦労したんだ。奴は優れた選手だけど、汚い人間だ」と生々しい感情を吐露した。

(※試合前記者会見の言い合いにてコヴィントンは、13歳の頃に父親を射殺されて失っているエドワーズに対し「お前を地獄の7丁目に引きずり込んでやる。そこでお前の父親に一緒に挨拶しようじゃないか」と発言。激怒したエドワーズは次の瞬間ペットボトルを思い切りコヴィントンに投げつけた)

試合ぶりは理詰めで堅実。普段は派手な言動もなく、ボソボソと聞き取りにくい独特の話し方をすることもあり、あまり注目を集めない王者エドワーズだが、試合後に溢れる感情をぶつけるように吐き出すその言葉には、多くの人の心を揺さぶる力がある。

ここまで(一つのNCを挟んで)ウェルター級で11連勝中。今回の試合に勝てば、伝説の王者GSPが残したUFC同級12連勝の記録に並ぶことになる。

対する挑戦者モハメッドも、この5年間負けなしだ。2022年10月のUFC 280ではデビュー以来15戦全勝のショーン・ブレイディのテイクダウンを切ってはスタンドで強烈な圧力をかけ続けて2Rに強烈な右をヒット。そのまま畳み掛けて見事なTKO勝利を挙げている。昨年5月のUFC 288ではタイトル挑戦経験もあるジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズと対戦。スタンドの圧力と手数で終始上回って3-0で勝利し、こちらも王者同様に「一つのNC」を挟んで9連勝目を記録。今回満を持してのタイトル挑戦となった。

両者の連勝に挟まれる「一つのNC」こそ、2021年5月の二人の初対戦によるものだ。この時モハメッドは、カムザット・チマエフの代打として試合3週間前のオファーを受諾し、初のメインイベントに臨んだ。

同病相憐だったはず?──王者に対する、挑戦者モハメッドの複雑な心境

が、試合はエドワーズが初回から終始距離を支配。なかなか前に出られないモハメッドにガードの上から強烈な左ハイをヒットさせてぐらつかせ、その後も左を中心にプレッシャーを掛けて続けて試合を優位に進めた。しかし続く2R開始早々、左ハイを出す際に伸ばしたエドワーズの左手の指先がモハメッドの目に痛烈にヒット。完全に視界を失い、生涯初のビッグチャンスを失う悔しさにモハメッドが泣き叫ぶなか、無情のNCが告げられた。

試合後、(意図的ではない)反則決着については遺憾の意を示したエドワーズだが、モハメッドとの決着戦については「1Rは自分が圧倒していたし、どちらが上かはすでに証明した」と興味を示さず。その後ネイト・ディアスとのビッグファイトを制し、絶対王者ウスマンへの挑戦を実現。前述の通りの大番狂わせを演じて世界の頂点に立ち、その後二度の防衛に成功して現在に至る。

この件をいつまでも引きずっているのがモハメッドだ。エドワーズに対する敵愾心を隠そうとしないモハメッドは、その理由を改めて聞かれると

「奴と俺は、これまでタイトルに向けて非常に似た道を巡ってきた。お互い誰からもリスペクトされず、なかなかチャンスを与えられないまま戦い続けた。そんな俺は(エドワーズとの初対戦で)初めてメインイベントのチャンスを提示された。だからショートノーティスで試合を受けた。そこで奴は反則を犯し、俺のチャンスを奪った。なのに奴は俺とのリマッチを受けなかった。『どうせ自分が勝っていた』とか言いやがって。俺はその後も連勝を続けたのに、奴もそのコーチも俺のことを認めず、別の相手との試合を選び続けたんだ」と語っている。

アイポークへの恨み節もさることながら、いくら勝ち星を重ねても十分な評価を得られなかったことへの不本意さ、何より同病相憐れむ──ではないが、自身と同じように「地味強」だったのに頂点を制したエドワーズへの複雑な感情が入り混じった、リアルにして強い思いがそこにある。

この試合の下馬評は、王者エドワーズ有利の声が大きい。3年前の両者の対戦においてエドワーズが明らかに優勢だったこと、そしてエドワーズがここ2戦、モハメッド以上に強力なレスリングベースを持つ──ウスマンとコヴィントンのテイクダウンを見事に防いで完勝していることを踏まえれば、自然な評価だ。

特に近年のエドワーズが見せる空間の支配力は圧巻だ。巧みなスイッチや横へのステップで優位な角度を作っては、鋭く強烈無比な左の蹴りとパンチを繰り出し、それまでウェルター級のツートップだったウスマン、コヴィントンを寄せ付けなかった。

よって、この試合の最初の見どころはモハメッドが、3年前には全く突破できなかったエドワーズの制空圏をいかに切り崩し、圧力をかけてゆくことができるかだ。

モハメッドの真骨頂は、洗練を極めたエドワーズの足捌きと比べると遥かに無骨ながらも、巧みにスイッチを駆使して相手の逃げ道を塞ぎつつ、前に出て手数を繰り出し、相手を追いつめてゆくところにある。

もしモハメッドがスタンドでエドワーズに圧力をかけて下がらせることができれば、いずれテイクダウンに入るチャンスが出てくる。金網際のテイクダウンディフェンスの上達も著しいエドワーズだが、下がらされ守勢を余儀なくされる展開が続けば体力は徐々に消耗してゆくだろう。

そうなった時に、それまで圧倒していたネイト・ディアス戦で試合終了直前に攻め込まれた時の、またウスマンに挑戦した際に4Rまで試合を支配されていた際の、相手に気力で圧されて覇気のないエドワーズが再び顔を出す可能性は否めない。

対するモハメッドは、全ラウンドを通して止まらず前に出続ける体力と意志の力では誰にも負けないと自負を持っている。

「3年間ずっと奴のことを研究してきた」と語り、親しくするカビブ・ヌルマゴメドフからも作戦を授けられたというモハメッド。どのような方法で距離感の達人エドワーズとの間合いを制するつもりなのか、刮目したい。

ところで今大会は、王者エドワーズにとってはウスマンとの初防衛戦に続く母国凱旋マッチだ。家族や友人が見守る中、地元の期待を背負っての試合となるだけに負けられないという意識は強いだろう。

対する挑戦者は、戴冠を果たして自分のルーツであるパレスチナの旗を掲げることを至上の目標としている。実際に最近ガザで爆撃を受けて重傷を負い、母親を失ったパレスチナ人の幼い少年と父親を米国に呼び、家族同然に面倒を見ている姿が共感を呼んでいるモハメッドは「日々苦しんでいる彼らの戦いと比べたら、俺らファイターの戦いなどなんでもない。自分が勝つことで、せめて彼らに何らかの形の勝利を捧げることができればと思う。そのために全てを賭けて戦う。スタミナも全て使い果たす」と話す。

派手なパーソナリティも大きな話題性もないが、実力で世界最高峰の舞台に上り詰めた両者の戦いが、この21世紀の国際社会の現実の中で行われているという事実は、我々格闘技好きも改めて留意しておきたいところだ。

■視聴方法(予定)
7月28日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC304対戦カード

<UFC世界ウェルター級選手権試合/5分5R>
[王者]レオン・エドワーズ(英国)
[挑戦者] ベラル・モハメッド(米国)

<UFC世界暫定ヘビー級選手権試合/5分5R>
[暫定王者]トム・アスピナル(英国)
[挑戦者] カーティス・ブレイズ(米国)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
パディ・ピンブレット(英国)

<ミドル級/5分3R>
クリスチャン・レロイ・ダンカン(英国)
グレゴリー・ホドリゲス(ブラジル)

<フェザー級/5分3R>
クリスチャン・アレン(英国)
ギガ・チカゼ(ジョージア)

<フェザー級/5分3R>
ナサニエル・ウッド(英国)
ダニエル・ピネダ(米国)

<女子ストロー級/5分3R
モリー・マッキャン(英国)
ブルーナ・ブラジル(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
キャオラン・ローラン(アイルランド)
ジェイク・ハードリー(英国)

<ライトヘビー級/5分3R>
モデスタス・ブカウスカス(リトアニア)
マルチン・プラチニオ(ポーランド)

<ウェルター級/5分3R>
オーバン・エリオット(英国)
プレストン・パーソンズ(米国)

<フライ級/5分3R>
ムハマド・モカエフ(英国)
マネル・ケイプ(ポルトガル)

<ウェルター級/5分3R>
サム・パターソン(英国)
キーファー・クロスビー(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ミック・パーキン(米国)
ウーカシュ・プジェスキ(ポーランド)

<女子ストロー級/5分3R>
ショーナ・バノン(アイルランド)
アリチェ・アルデラン(ルーマニア)

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45 AB BELLATOR INVICTA MMA MMAPLANET o ONE PFL UFC UFC300 アスペン・ラッド アルジャメイン・ステーリング イェン・シャオナン イリー・プロハースカ クリス・サイボーグ ケイラ・ハリソン コディー・ガーブラント シャーウス・オリヴェイラ ジム・ミラー ジャスティン・ゲイジー ジャン・ウェイリ ダナ・ホワイト デイヴィソン・フィゲイレド ニュース ベラル・モハメッド ホーリー・ホルム ボクシング ボー・ニコル マックス・ホロウェイ ラリッサ・パチェコ

【UFC300】ケイラ・ハリソンがUFCと契約。実力者揃いのALLSTAR戦=UFC300でホーリー・ホルム戦決定

【写真】PFLの顔だったケイラ・ハリソンが、このタイミングでUFCへ。33歳、バンタム級転向は最後の勝負か(C)PFL

23日(火・現地時間)、ダナ・ホワイトが自身のXでブレイキング・ニュースとしてUFCがケイラ・ハリソンと契約し、UFC300でホーリー・ホルムと対戦することを発表している。
Text by Manabu Takashima

さらにダナは動画で「皆、UFC300の新しい情報だ。2022年のボクシング殿堂入りのホーリー・ホルム。女子バンタム級で最多勝記録4位タイ、有効打撃6位、テイクダウン防御4位とその歴史を創ってきた彼女は、これまでボクシングとMMAで世界最高のファイターと戦い続けてきた。たった一人を除いて。米国の柔道史上、唯一の五輪二連覇を達成したケイラ・ハリソンとUFCは正式に契約した。16勝1敗、テイクダウンからのパウンドがヤバすぎる彼女は初めてバンタム級で戦うことになった。この試合はUFC300で行われる」と興奮気味に語っている。


ロンドンとリオの女子柔道78キロ級の金メダリストであるケイラは2016年にWSOFと契約し、女子ライト級を開拓していくという発言をしていた。

その後、WSOFを買収したPFLで2018年6月にデビューを果たすと3連勝し、PFLは2019年に女子ライト級を創設した。まさにケイラのための階級と呼ばれた女子ライト級2019年シーズンを制すると、コロナ禍でPFLは1年間活動を休止する。同年11月にケイラはフェザー級の試し切りを行うようにInvicta FCに参戦し、FFCフェザー級王者コートニー・キングをパウンドアウト──この試合が、現時点まで彼女にとって唯一のPFL以外でのMMA戦となっていた。

その後、PFLがフェザー級を開設かという憶測のなか、2021年もライト級でシーズンは実施されケイラが2連覇を達成し、PFLとの契約が切れてBellatorとサイン──と思いきや、マッチング期間に当たりPFLと再契約、女子ライト級2022年シーズンに参戦した。

しかし、11月の決勝でラリッサ・パチェコと3度目の対戦で判定負けを喫し、キャリア初黒星を喫した。2023年にPFLはライト級に代わり、女子フェザー級シーズンを採用したもののケイラは不参加。11月のファイナル大会に出場すると、150ポンド契約戦でアスペン・ラッドから判定勝ちを収めている。結果的にこの試合がPFLでのラストマッチとなった。

今回のケイラのUFC入りと、バンタム級転向は大きなトピックだが、Bellatorを買収したPFLでクリス・サイボーグとの一騎打ちが期待されていただけで、肩透かしを食らった感もある。いずれにせよ、PFLでは勝っても負けても女王、試合も横綱相撲だったケイラだが、UFCではOne of themとまではいかないが、オクタゴン内での特別扱いはない。そして、柔道時代と比較すると16キロも軽くなるバンタム級で、どのようなパフォーマンスを発揮することができるのか。そこはそこで、興味深い。

なおUFC300は4月13日にラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されレオン・エドワーズ✖ベラル・モハメッドのウェルター級と、女子ストロー級ではジャン・ウェイリ✖イェン・シャオナン──というUFC史上初の中国人同士の──世界タイトル戦2試合が組まれており、さらにジャスティン・ゲイジー✖マックス・ホロウェイのBMFタイトル戦も行われる。

イリー・プロハースカ、シャーウス・オリヴェイラ、アルジャメイン・ステーリング、ボー・ニコル、デイヴィソン・フィゲイレド✖コディー・ガーブラント、ジム・ミラーら実力者が勢ぞろいのオースターの様相を呈しているが、ケイラとホルムの女子バンタム級戦は同大会に巨大な華を添えるこのなる。

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MMA MMAPLANET o UFC UFC288 ジルベウト・ドゥリーニョ ジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ ベラル・モハメッド

【UFC288】左が使えなくなった?? ドゥリーニョを淡々としたファイトでベラル・モハメッドが下す

<ウェルター級/5分5R>
ベラル・モハメッド(米国)
Def.3-0:50-45.49-46.49-46
ジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ(ブラジル)

構えを変えるドゥリーニョ、左回りのドゥリーニョが右を伸ばして前に出る。続いてドゥリーニョ右カーフを蹴ると、モハメッドのパンチをアックステップでかわす。左ハイから左ストレートを入れたモハメッドは、サウスポーに構えると、右ミドルを蹴られる。攻撃を散らすなかで、右ストレートを狙うドゥリーニョ。モハメッドの左ミドルにテイクダウンを合わせる。尻もちからすぐにモハメッドは立ち上がり、間合いを測りながら左ローを蹴る。ドゥリーニョは右で飛び込むと左ミドルを入れるが、左を被弾しパンチを2発、3発と受ける。それもドゥリーニョは右ミドルを繰り出し、掴まれても足を引き抜く。最後の10秒、右に左ハイを合わされたドゥリーニョがマットに手をついた。

2R、ドゥリーニョが右カーフを蹴り、左ミドルを捌く。ステップインからドゥリーニョは右を決め、モハメッドは左ハイをガードの上から蹴る。まだ爆発力を抑えた打撃戦のなかで、ドゥリーニョが右オーバーハンドを当てた。中盤、間合いを測り動きが減った両者。モハメッドの左ローに左を合わせに行ったドゥリーニョが、続いて右をヒットさせる。モハメッドは左ミドル、もう一発腹を蹴ってショートコンビを繰り出す。

腹が効いているのか、窮屈で詰まったような上半身の動きになったドゥリーニョが、パンチから肩で当たっていくが、モハメッドも左を振るう。モハメッドが圧で上回った2Rだった。

3R、2カ月連続のビッグマッチにやや覇気に欠けるようにも映るドゥリーニョが、右カーフから右ミドルを蹴る。急所だとアピールしたモハメッド、ドゥリーニョが頷き試合が続く。モハメッドが常に圧を掛けるよううになり、ドゥリーニョはケージの前を移動する。モハメッドも用心深く戦い、右ハイを2発。さらに右ストレートを伸ばす。ドゥリーニョも右を返すが単発だ。左ミドルでガードが一瞬落ちたドゥリーニョに対し、モハメッドは左ハイを狙う。手数が増えないドゥリーニョに対し、モハメッドがジャブ、ストレートからミドルハイを蹴っていく。初回のドゥリーニョのダブルレッグ以来、組みのないままこの回も終わった。

4R、ドゥリーニョが右カーフ、モハメッドは左ミドルを蹴り、左につなぐ。ドゥリーニョも右を振るうが、左はない。どこかで負傷したか、右一本では思ったように戦えておらず、精神的にも内燃エンジンに燃料が送られないようだ。変わらずモハメッドが左ミドルを入れる。常に前に出るのがモハメッドで、ドゥリーニョはケージの前を移動する。足を取りかけたドゥリーニョは、右を打ちこむ。2分を切り、シングルレッグもすぐに足を離したドゥリーニョは、動きが重い。なかなか大きな動きがないなから、終盤になりドゥリーニョが右をヒットさせると、モハメッドがミドルを返すが動き&手の少ない5分だった。

最終回、ドゥリーニョのダブルレッグを切ったモハメッドが右ミドルを決める。最後の5分も、両者の動きは大きな変化は見られず、ステップインとバックステップ、そしてサークリングを繰り返す。ドゥリーニョは右ミドルから右を届かせる。ショートのコンビ、右を伸ばすモハメッドは、蹴りにつなぐ。手数で上回るモハメッドは勝っており、これで良いだろう。何とかしたいのはドゥリーニョだが、勝負を仕掛けることはできないまま時間となり、会場は大ブーイングに包まれた。

オファーを受けた時は「やれる」という想いしかなかっただろうが、試合になると別。左手の状態が気になるが、そこを越えて勝利を得るという風にはなれないまま試合は終わった。結果は3-0でモハメッドに凱歌が挙がったが、その勝者にしても特別なインパクトはなく勝利という実を得たファイトだった。


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MMA MMAPLANET o Road to UFC UFC UFC283 UFC287 UFC288 uFC289 イリャ・トプリア クレイジソン・ホドリゲス シャーウス・オリヴェイラ ジョシュ・エメット ジルベウト・ドゥリーニョ ジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ ダナ・ホワイト ニール・マグニー ベニール・ダリューシュ ベラル・モハメッド ホルヘ・マスヴィダル 平良達郎

【UFC288】ダナ・ホワイトが5月6日大会にドゥリーニョの2カ月連続PPV大会出場発表。モハメッドと対戦

【写真】短距離走で突っ走るかのようなドゥリーニョ(C)Zuffa/UFC

20日(木・現地時間)にダナ・ホワイトがインスタライブで、5月6日(土・同)のUFC288「Sterling vs Cejudo」のコメインイベントでベラル・モハメッド✖ジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズの一戦を組むことを発表した。

同大会のコメインはシャーウス・オリヴェイラ✖ベニール・ダリューシュのライト級戦が組まれていたが、前者の負傷で消滅。今回のモハメッド✖ドゥリーニョの戦のアナウンスと同時に、オリヴェイラ✖ダリューシュが6月10日(土・同)のUFC289「Nunes vs Pena3」のコメインで実現することも明らかとなっている。


3年振りのニュージャージー大会で、驚きのドゥリーニョの連投だ。今月4日のUFC287でホルヘ・マスヴィダルを判定で下したばかりのドゥリーニョは、1月のUFC283でもダブルタイトル戦の一つ前の試合で、ニール・マグニーと戦い肩固めで一蹴している。

半年間で3度の試合、さらに全てがPPVイベントのメインカードで、次戦はタイトル戦でないのに5Rマッチが組まれる。今なぜか、オクタゴンでドリーニョ・ブームという風な登用のされ方だ。

対してモハメッドは昨年10月のショーン・ブレディ戦以来、約半年半ぶりの試合となる。驚愕のオクタゴン8連勝中のモハメッドは、打撃で突き放してテイクダウンに長けているファイター。とはいえドリーニョとしては組まれても構わないし、その前のジャブ多用のスタイルをインファイトで切り崩すことができれば、2021年2月以来の王座挑戦が見えてくる。

また今回のスペシャルアナウンスのなかで平良達郎が、クレイジソン・ホドリゲスとオクタゴン4戦目を戦う6月24日大会が、UFC ABCとしてフロリダ州ジャクソンビルで実施され、当然のように地上波ABCでフリー中継されることも決まった。ちなみに同大会のメインはジョシュ・エメットとイリャ・トプリアのフェザー級マッチが組まれる。

さらに7月22日にはロンドンO2アリーナでUFC FNが行われることも言及されている。4月から5月20まで5連戦、1週間のブレイクを挟んで(この間にRoad to UFC開催)6月3日から現時点で6連戦が予定されるUFCだが、この間に平良以外の日本人ファイターの試合がどこに組み込まれるか、楽しみだ。

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MMA MMAPLANET o UFC UFC280 ショーン・ブレイディ ベラル・モハメッド

【UFC280】モハメッドがTDディフェンス→パンチ連打でブレディをストップし、NCを挟みオクタゴン8連勝

【写真】集計でパンチ数は同じだったが、モハメッドのほうが的確で効かせた結果となった(C)MMAPLANET

<ウェルター級/5分5R>
ベラル・モハメッド(米国)
Def.2R2分47秒 by TKO
ショーン・ブレイディ(米国)

開始早々、モハメッドが前傾姿勢で距離を詰める。ブレイディは下がりながらローを散らす。体を振り、フェイントを繰り返す両者。ブレイディの右ローにモハメッドが左ジャブを合わせた。ブレイディの左でモハメッドが下がる。しかしモハメッドの前進は止まらない。サウスポーにスイッチしたモハメッドの左ヒザ蹴りをすくい上げたブレイディが、そのまま押し込むもモハメッドは倒れず。立ち上がりケージ中央に戻す。

プレッシャーをかけるモハメッドに、ブレイディはワンツー。モハメッドは時おりスイッチして左の前蹴り、あるいは左ミドルハイからサウスポースタンスへと変わる。右ストレートが当たり始めたブレイディがモハメッドの右ローの打ち終わりに組みついたが、モハメッドをテイクダウンすることはできない。左オーバーフックで防いだモハメッドが右クロスを返す。ブレイディもサウスポーから左ストレートを当てた。

前に出るモハメッドの右が、ケージを背負ったブレイディにヒット。ブレイディの左ハイをブロックしたモハメッドだが、パンチを食らう場面が出て来る。しかしモハメッドも右クロス。ブレイディは下がりながら左フックを当てたが、モハメッドがパンチの連打で攻め立てた。

2R、ブレイディが右ローを当てるが、ここでもモハメッドが距離を詰めて来る。ブレイディは下がりながら左インロー。モハメッドの右がブレイディの顔面をかすめた。右ローからワンツーを見せたモハメッドは、ブレイディのテイクダウンを防ぎ続ける。ブレイディも左の蹴り上げから、左フック、左ストレートを当てる。しかしモハメッドがパンチを打ち返し、ケージを背負わせるように。

ブレイディの顔面に出血が見られる。左右のステップを踏むブレイディだが、ケージを背負う場面が多い。ケージ中央からシングルレッグで飛び込んだブレイディ。これもモハメッドはスプロールした。お互いにスイッチを繰り返しながらパンチと左ミドルを繰り出すなか、ブレイディがボディロックで組みつくも、これも切られた。ブレイディの左ローでモハメッドがバランスを崩す。しかしすぐに立ち上がったモハメッドが右ストレートを効かせ、手が止まったブレイディにパンチの連打を浴びせてレフェリーストップを呼び込んだ。

モハメッドはこれでオクタゴン5連勝、ノーコンテストを挟んで3年負けなしとなった。


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AJ・ドブソン Brave CF IMMAF LFA MMA MMAPLANET o TJ・ディラショー UFC UFC280   アルジャメイン・ステーリング アルメン・ペトロシアン イスラム・マカチェフ カイオ・ボハーリョ ケイトリン・チューケイギアン シャーウス・オリヴェイラ ショーン・オマリー ショーン・ブレイディ ダナ・ホワイト ニキータ・クリロフ ピョートル・ヤン ベラル・モハメッド マテウス・ガムロ マノン・フィオホ マルコム・ゴードン ムハマド・モカエフ 平良達郎

【UFC280】セレモニアル計量終了 プレリミ出場ダゲスタン系英国人モカエフもメイン級の声援集める

【写真】将来的に平良との対戦が実現することも十分にありうるモカエフ――凄まじい僧帽筋だ(C)MMAPLANET

22日(土・現地時間)、UAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUFC 280「Oliveira vs Makhachev」のセレモニアル計量が21日(金・同)に同所で行われた。

昨日の会見以上にファンが集まったセレモニアル計量は、輪をかけてアラブ&ダゲスタンのイスラム連合の声援が大きくなっていた。


なかでもプレリミ2試合目のフライ級マッチでマルコム・ゴードンと戦うムハマド・モカエフ:への声援はPPVカード出場選手に見劣りしないものだった。

ダゲスタンで生まれ、幼少期を過ごしたモカエフは家族ともに英国に移住。英国籍も取得しているが、コーカサスの戦闘民族の血は確実に流れており、イギリスで始めたレスリングですぐに頭角を表し、パリ五輪候補ともいわれている。

IMMAFにユース時代から出場し、2度世界王者に輝くとアマMMA22連勝でバーレーンのKHKジム所属ファイターとなり、BRAVE CFでプロデビューを飾った。5連勝で今年の3月にUFCデビューを飾り、2戦目にはLFAフライ級王者だったチャールス・・ジョンソンを破っている。

そのモカエフ、大声援にすっかり気を良くしたのか、フェイスオフではゴードンに拳をつきつけ、ダナ・ホワイトが急ぎ割って入る場面も。

平良達郎のライバルになることは間違いないモカエフ、まだ喧嘩的な強さをオクタゴンの中で見せていたが、ゴードンを相手にしても淡々、堅実な試合展開に持ち込むことができるか――注目だ。

コメインのUFC世界バンタム級選手権試合は王者アルジャメイン・ステーリング、挑戦者TJ・ディラショーの両者にブーイングが送られるという珍しい状況に。

フェイスオフで激しく言葉を交わした両者、まずディラショーが「俺はケージの中で勝負にしにきた。あのマ〇ーフ〇ッカーを眠らせるよ」と話すと、さらに大きなブーイングを浴びたステーリングは「アブダビ、皆、来てくれてありがとう。凄いカードが揃ったグレートなショーだ。明日は〇ザー〇ァッカーを倒す」とコメントした。

メインのUFC世界ライト級王座決定戦に出場するイスラム・マカチェフを大チャントで迎えた会場のファン。そのマカチェフとシャーウス・オリヴェイラはフェイスオフでは鼻が触れるまで超接近していた。

まずマイクを握ったマカチェフは「アブダビ、思い切り応援してほしい。インシャラーラー(アラーの意思があれば)」と短いマイクに、対してオリヴェイラは「ライト級のライオンは、まだ吠え続けている」とポルトガル語でまくしたてると、訳を待たずにステージを下りた。

■視聴方法(予定)
10月22日(土・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
午前3時00分~PPV
午前11時00分~WOWOWプライム

■UFC280計量結果

<UFC世界ライト級王座決定戦/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ: 154.5ポンド(70.08キロ)
イスラム・マカチェフ: 154.5ポンド(70.08キロ)

<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]アルジャメイン・ステーリング: 135ポンド(61.24キロ)
[挑戦者]TJ・ディラショー: 135ポンド(61.24キロ)

<バンタム級/5分3R>
ピョートル・ヤン: 136ポンド(61.69キロ)
ショーン・オマリー: 135ポンド(61.24キロ)

<ライト級/5分3R>
べニール・ダリューシュ: 156ポンド(70.76キロ)
マテウス・ガムロ: 156ポンド(70.76キロ)

<女子フライ級/5分3R>
ケイトリン・チューケイギアン: 127.5ポンド(57.83キロ)
マノン・フィオホ: 125.5ポンド(56.92キロ)

<ウェルター級/5分5R>
ベラル・モハメッド: 170ポンド(77.11キロ)
ショーン・ブレイディ: 171ポンド(77.56キロ)

<ミドル/5分3R>
マフムド・ムラドフ: 185ポンド(83.91キロ)
カイオ・ボハーリョ: 186ポンド(84.37キロ)

<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オズデミア: 206ポンド(93.44キロ)
ニキータ・クリロフ: 206ポンド(93.44キロ)

<ウェルター級/5分3R>
アブバカル・ヌルマゴメドフ: 170.5ポンド(77.34キロ)
ガジシ・オマルガジシエフ: 171ポンド(77.56キロ)

<ミドル級/5分3R>
アルメン・ペトロシアン: 186ポンド(84.37キロ)
AJ・ドブソン: 185ポンド(83.91キロ)

<フライ級/5分3R>
ムハマド・モカエフ: 126ポンド(57.15キロ)
マルコム・ゴードン: 126ポンド(57.15キロ)

<女子バンタム級/5分3R>
リナ・ランズバーグ: 135ポンド(61.24キロ)
カロル・ホザ: 135ポンド(61.24キロ)

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