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【UFN212】オクタゴン2戦目=アスンソン戦へ、ビクター・ヘンリー「そんなことは全く関係ない」

【写真】1月にハオーニ・バルセロスを相手に番狂わせといっても良い勝利を挙げたビクター。このような見方があることが、彼のアスンソンに対する捉え方の要因になっているのだろう(C)Zuffa/UFC

15日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで行われるUFN212:UFN on ESPN+70「Grasso vs Araujo」にビクター・ヘンリーが出場し、ハファエル・アスンソンと対戦する。

1月のUFC初陣でハオーニ・バルセロスを破り、9カ月振りの第2戦でアスンソンというベテランと戦う。現状、4連敗のアスンソンに勝つことで上位進出が見込まれる試合だが、ヘンリーは対戦相手がそのような立場にあると考えることはないという。

自らのキャリアを振り返り、アスンソンが踏み台のように考えることはできないヘンリーから彼自身だけでなく師匠ジョシュ・バーネットと共に日本で積んだキャリアがあるからこそ──という言葉が聞かれた。


──UFCで2試合目となるハファエル・アスンソン戦を控えているビクターですが、1月のハオーニ・バルセロス戦との勝利から9カ月もインターバルが空きました。

「何か問題があったわけじゃないよ。ずっとジムで練習はしてきたし。まぁケガの回復に当てていた時期もあるけどね。UFCからは7月に試合をしないかと声を掛けてもらっていたけど、ちょっと首に問題があって見合わせたんだ。ケガをしている状態でファイトキャンプに突入したくなかったんだよ。それにチームメイトのファイトのサポートをしたり、そういうことでこれだけインターバルが空いたけど、この試合に向けてグッドシェイプで準備してきたことを強調させてもらうよ」

──長らく日本をベースに戦ってきましたが、UFCのファイトウィークはビクターにとって、新鮮だったのではないですか。

「UFCと日本のファイトウィークは凄く違うよ。UFCはファイトに必要な食事、サプリメントを提供してくれる。素晴らしいよね。それが良い面だ。一方で、時間の制約が厳しい。この時間にどこそこにいないといけない──ということが、とても多いんだ。日本は体重を落とすことさえ守れば、自分の時間を自由に過ごすことができる。ちゃんと戦えば、何も言われない。僕は日本で、自由を楽しんでいた。まぁUFCは何か気になることがあると、全てにおいて答が用意されている。そこはUFCの過ごし良さかな。

UFCはさ、色々な場所で数多くのイベントを開いているけど、日本の大会は日本だけのモノだから。そこに足を踏み入れるだけで、楽しいことだらけだった。当然なことだけど、米国で試合をすると常に米国のカルチャーの中にいるわけで。僕はそういう環境で育ってきたから慣れ親しんだ場所でしかない。その点、日本はいるだけで特別な空間だったんだよ。

日本で戦う機会を得られ、ファイティングスピリットが養われた。僕は日本人じゃないけど、相当に日本人的だと思っている」

──その通りだと思います。ではアスンソンの印象を教えてください。

「アスンソンはUFCでずっと長い間戦ってきているから、それだけ経験値も高い。レスリングができて、打撃ができるブラジリアン柔術の黒帯だ。アスンソンがファイトを仕掛けてくると、とてもデンジャラスなファイターになる。顔面を狙って殴って来るか。テイクダウンをして、UFCに残るためにずっと抑えようとしてくるのか。どちらの展開になっても、大丈夫なように準備をしてきたよ。

いずれにしても、アスンソンは自分の能力の全てを使って倒しに来るか、勝ちに来るだろうね」

──サバイブを目指したファイトと、当たって砕けろ的なファイト。どちらの準備もしているビクターですが、どのアスンソンで来て欲しいですか。

「もちりん、当たって砕けろ──だよ。彼がそうくれば、僕も自分の全てをぶつけることになる。でも、レスリングをして抑えてくると退屈な試合になってしまうね」

──プロモーターはエキサイトな試合を望みますが、サバイブしてくる相手とはそういう試合ができず評価にも影響する難しさがあります。

「その通りだ。プロモーターはエキサイティングな試合を求める。UFCだけでなく、全てのプロモーションがチケットを売るというビジネスを第一に考えているからね。そのビジネスがお金を生む。退屈な試合をすると、誰も見てくれない。RIZINで戦っている時も、僕は常にフィニッシュ・ボーナスを稼ごうと思っていた(笑)。出場フィーだけじゃなくて、もっとお金が欲しいからね。戦うだけより、フィニッシュしてより多くの収入を得る。それがプロフェッショナル・ファイターだろう?

どんなに強い相手と戦っても、僕が目指すところはフィニッシュさ。それはアスンソン戦も変わりないよ。アスンソンがテイクダウンからコントロールを狙っても、それを避けてエキサイティングな試合をする。ただ、打撃戦だから面白い試合になるってことはない。距離を取って、ジャブだけっていう退屈な試合はいくらでもあったからね」

──確かにその通りですね。

「多くの選手が今、戦っている試合ではなく次、次、次っていう思考があるんだ。だからあんな試合をしてしまうんだよ。ファイターは相手を倒すために、戦わなければならないのに」

──まさにビクター・ヘンリーのファイト・アイデンティティですね。ところでアスンソンは今やステッピングボード的なポジションにあり、彼に勝てばより上の位置で戦うことができる目安のようになっています。そのようなアスンソン戦、ビクターにとってUFCでのキャリアップを考えると、どのような意味を持つ試合になるのでしょうか。

「僕はアンダードッグに慣れているからね。この試合でアスンソンがそういうポジションになるかどうかも意識していなかった。僕こそ、ステッピングストーンという役割を強いられてきたから。だから、僕は対戦相手をそういう風に思いたくないんだ。アスンソンがそういう役割になっているとも思いたくないし、UFCにどういう思惑があろうが……例えば『40歳のアスンソンを35歳のヴィクター・ヘンリーがぶっ飛ばすのか』なんて風に組まれることがあるかもしれないけど、そんなことは全く関係ない。目の前にいる対戦相手と戦うだけだから。そして、ファイトマネーを手にするんだ」

──フィニッシュを目指すと既に断言しているビクターですが、土曜日はどのような試合をファンに見せたいですか。

「UFC初戦とは全く違った姿を見せたい。日本のファンは僕の打撃、レスリングの進化を見てくれていた。KOする姿、チョークアウトする姿、レスリングを見続けてくれていたよね。日本のファンが見てきた、米国で戦っているファイターとは一味違うファイターだということを試合で示したい」

──では恒例になっている言葉もありますが、日本のファンに一言お願いします。

「恒例になっている(笑)。そうだね、日本の皆のことを愛している。日本でゴリラカレーをまた食べたい。皆、ゴーゴーカレーで一緒に食べよう!!」

──ゴーゴーカレーがLAのリトルトーキョーに出店してほしいですね。

「そうなれば、毎日通うよ。ところで、イノキ・メモリアルには行くのかい?」

──? そういうものがあるのでしょうか。私はMMAの記者なので畑違いですから、訪れることはないと思います。

「そうなのかい。世界中のコンバット・アスリートは繋がっている。サブミッション・レスリングとプロレスリングにも繋がりがある。僕自身、イノキ・サンを直接知っているわけでないし、年を重ねている人はいつか亡くなるものだと思っている。でもイノキ・サンはジョシュ(バーネット)の恩人だから。

イノキさんがジョシュのキャリアをサポートして、今のジョシュがある。そうジョシュが言っているんだ。今の僕があるのはジョシュのおかげだ。恩人の恩人は僕にとっても恩人だ。だから、ジョシュと12月ぐらいに日本を訪れようと思っているんだ。そういえば、今年の8月にジーン・ラベールも亡くなったよ」

──ハイ。

「彼もイノキ・サンのようにオールドスクールのレスラーだった。ジーンもイノキ・サンと同様にジョシュに大きな影響を与えた人物だからね。ジーンからはロンダ・ラウジーもインスパイアされていた。まあ、この世代の人々が亡くなる……しょうがないけど、悲しいことだよ。でも僕だっていずれそういう世代になる。だから、僕らもジーンやイノキ・サンのように次の世代に火を灯す存在でありたいね」

■視聴方法(予定)
10月16日(日・日本時間)
午前5時00分~UFC FIGHT PASS

■UFN212対戦カード

<女子フライ級/5分5R>
アレクサ・グラッソ(メキシコ)
ヴィヴィアニ・アロージョ(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
ジョナサン・マルチネス(米国)
カブ・スワンソン(米国)

<フライ級/5分3R>
アスカル・アルカロフ(ロシア)
ブランドン・ロイヴァル(米国)

<ミドル級/5分3R>
ドゥスコ・トドロビッチ(セルビア)
ジョーダン・ライト(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
ミシャ・サークノフ(カナダ)
アロンゾ・メニフィールド(米国)

<バンタム級/5分3R>
マナ・マルチネス(米国)
ブランドン・デイヴィス(米国)

<バンタム級/5分3R>
ハファエル・アスンソン(ブラジル)
ビクター・ヘンリー(米国)

<ミドル級/5分3R>
ニック・マキシモフ(米国)
ジェイコブ・マルクーン(豪州)

<フェザー級/5分3R>
ジョアンデウソン・ブリト(ブラジル)
ルカス・アレッシャンドリ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ピエラ・ロドリゲス(ベネズエラ)
サム・ヒューズ(米国)

<フライ級/5分3R>
CJ・ヴェルガラ(米国)
平良達郎(日本)

<ウェルター級/5分3R>
マイク・ジャクソン(米国)
ピート・ロドリゲス(米国)

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INVICTA MMA o UFC   ケイ・ハンセン ピエラ・ロドリゲス

UFCがケイ・ハンセンをリリース


Kay Hansen(Sherdog)

 UFCがケイ・ハンセンをリリースしたことをMMAFightingが確認したとのこと。

 ケイ・ハンセンはゲート収入22歳のアメリカ人でMMA戦績7勝6敗(UFC戦績1勝3敗)。Invicta FCが主戦場でしたが2020年6月の『UFC on ESPN 12: Poirier vs. Hooker』で行われたジン・ユ・フレイ戦でUFCデビュー。3Rアームバーで勝利しています。しかしその後は3連敗していました。先日行われた『UFC 273: Volkanovski vs. The Korean Zombie』のピエラ・ロドリゲス戦では118.5ポンドと契約体重を2.5ポンドオーバーした上に判定負けしたことが決め手になったようです。


 しかしハンセンはツイッターで「22歳と若いし、私のキャリアは始まったばかりよ」と前向きです。続きを読む・・・
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LFA MMA MMAPLANET o UFC UFC273 ケイ・ハンセン ピエラ・ロドリゲス

【UFC273】LFA王者→コンテンダー→UFCデビューのロドリゲスが、ケイ・ハンセンに逆転判定勝ち

<118.5ポンド契約/5分3R>
ピエラ・ロドリゲス(ベネズエラ)
Def.3-0:29-28.29-28.29-28
ケイ・ハンセン(米国)

ハンセンの計量オーバーでキャッチウェイトとなった一戦。LFA王者からコンテンダーシリーズを経てUFCと契約したロドリゲスのデビュー戦だ。ワンツーで前に出るロドリゲスをパンチで待ち受けるハンセン。左フックから組んできたロドリゲスに対し、ハンセンがボディにヒザを入れる。両者が踏み込み、パンチのコンビが交錯する。続くハンセンのステップインにロドリゲスが左から右とコンビでカウンターを狙う。

ダブルレッグからケージにロドリゲスを押し込み、シングルでテイクダウンに成功したハンセンが、スクランブルでバックを伺う。ウィザーで耐え、胸を合わせて立ち上がったロドリゲスは大内刈りで倒されても、バタフライスイープでスクランブルに持ち込みスタンドに戻った。残り90秒、パンチの交換からハンセンが再びダブルレッグを決め、ロドリゲスのバタフライスイープにも反応してトップをキープする。腰を上げて左のパンチを入れ、一気にパスを決めたハンセンは、ブリッジを許さず肩固めを狙う。ロドリゲスは肩固めを防ぎ、足を戻したがラウンドを落とした。

2R、左フックを2つ入れたハンセンは、蹴りを見せつつパンチに移行する。ロドリゲスは左フックから右アッパーを返すが、右ミドルをキャッチされケージに押し込まれる。シングルからボディロックに移行しようとしたハンセンは、再びシングルへ。さらに頭を挙げて右腕を差すもロドリゲスも差し返す。離れたハンセンを追いかけたロドリゲスだがパンチは届かず、続いてステップインからコンビを繰り出す。

ダブルレッグ&大内刈りでテイクダウンを狙ったハンセン。ケージに押し込まれたロドリゲスが、体を入れ替えてシングルで逆に尻もちをつかせる。ハンセンのキムラからのフリップをすかしたロドリゲスが背中を見せたハンセンからバッククラブを取る。ダブルアンダーフックから、ロドリゲスがRNCを狙う。ハンセンは体をずらずしていくと、マウントに移行しようとしたところでハーフに戻す。ハンセンは残り5秒でヒールを仕掛ける。ロドリゲスのトーホールド狙いに、ハンセンもトーホールドに入り時間となった。

最終回、イーブンとなった最後の5分──圧をかけるロドリゲスが左ハイ。ハンセンはショートのワンツーを繰り出す。ロドリゲスはハンセンの左ローにテイクダウンを合わせて、トップを取る。ニーシールドのハンセンの潜りに対し、ロドリゲスは立ち上がりローを蹴っていく。立ち上がったハンセンは大振りになりかけたが、すぐに修正する。ロドリゲスは右ハイを蹴り、蹴り足を前に着いたスイッチで左フックを入れる。

そのままクリンチ合戦となり、ロドリゲスはケージに押し込んだ状態でパンチを入れていく。ヒザを見せるハンセンに、左エルボーを入れたロドリゲスがシングルにスイッチ。すぐに頭を起こしたロドリゲスの2度のシングルを切ったハンセンがギロチンを狙う。ケージに押し込まれて窮屈な状態では形に入れず、ロドリゲスがケージに押し込んだ状態とシングルレッグの狙いが続く。

前蹴りから離れたハンセンだが、蹴りにダブルレッグを合わされボトムでタイムアップを迎えた。初回を落としたロドリゲスだが、2Rと3Rを取り返しデビュー戦で判定勝ちを手にした。


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【UFC273】トーレス戦を控えたマッケンジー・ダーン─02─「KOで勝っても、私は柔術を代表している」

【写真】フェイスオフでは、この後に笑顔で言葉をかわし握手をしたマッケンジーとトーレス(C)Zuffa/UFC

9日(土・現地時間)、フロリダ州ジャクソンビルのヴィスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナで開催れるUFC273で、ティーシャ・トーレスと戦うマッケンジー・ダーン・インタビュー後編。

柔術家がMMAに転向する際、グラスルーツショー→フィーダーショーという道順でなく、ONEのようなビッグショーと契約することが増えてきた。対してマッケンジーはフィーダーショーで経験を積みUFCとサインを果たした。

それこそ──柔術界で成し遂げたように、じっくりと腰を据えてMMAの世界でも頂点に立つことを目標する彼女の姿勢の表れだった。

<マッケンジー・ダーン・インタビューPart.01はコチラから>


──柔術の練習は続けていますか。

「柔術は試合の直前になってから始めることが多いわ。今回も父(メガトン・ディアス)とファイトの4週間前になってから練習を再開した形ね」

──トップ・グラップラーがMMA転向する際、柔術家としてのネームバリューを生かしマッケンジーのようにLegacy FCやLFAなどフィーダーショーでキャリアを積むことなくONEやBellatorなどビッグプロモーションと契約するケースが増えています。

「良いことだと思うわ。ONE Championshipがグラップラーに支払うファイトマネーは高いって聞くし。彼らがどれだけシリアスにMMAファイターとして成功を収めようとしているのかは私は分からないし、経験してみたいってことだと思うの。実際、ほとんどが柔術から離れているわけじゃないし。私は柔術を愛しているわ。そして柔術界で頂点を極めた。最高のキャリアを築き、最高の時間を過ごしたわ。

セミナーをたくさんして。試合もたくさん出た。ビッグトーナメント、スーパーファイトで戦い続けたわ。だから十分にお金を得ることもできた。私は柔術を離れ、MMAでトップを目指しているの。ベルトを巻くまで、時間をじっくりとかけてね。MMAでも柔術と同じように大きなことをやり遂げたいと思っている。

ONEのような大きな舞台でグラップラーが、良いファイトマネーを得ることは素晴らしいことよ。だって彼らはそんなに長い間、MMAを戦うつもりはないだろうし。なら条件の良いところ、グラップラーの価値を認めてくれるところで戦うべきよ。

UFCは最もタフなファイターが集まっている場所で、レベルも最高に高い。ここで戦いたいなら、戦場を変えるでしょうし。何より、皆がONEで良い活躍ができていることはグラップリング界や柔術界のためにも素晴らしいことだと思うわ」

──ただしマッケンジーはそうはしなかったということですね。

「ファンの皆は私のキャリアを追っている方が楽しいんじゃない? だって皆にMMAファイターとしての成長過程も見てもらっているのだから。ONEで戦っているグラップラーは、私のようにスタンドファイトをしていないでしょ? 彼らは即グラウンドで戦おうとしているわ。それはそれで凄いって思うけど、皆はグラップラーのスタンドでの成長だって見たいだろうし。私が鼻を骨折して戦う姿とか──それでも私が負けずに戦い続ける姿を、ね」

──ノー。マッケンジー、激しい戦いは見たくても鼻の骨を折るところなんて見たくないですよ(笑)。ケガをせずに戦って欲しいとファンも思っています。

「アハハハハ。きっと、そんなところが好きファンもいるわよ(笑)。私は母であり、妻でもある。そんな1人の女性が色々と学ぶ過程で、鼻を折ったわけだし。それも私の成長を見てもらっていると思っているわ。そして、その試合よりも次の試合で成長した姿を見てもらう。私の試合を見てくれる人のなかには、柔術を練習している人だっているはず。そんな人たちの中には少数でも『自分だって練習すれば、ああやって戦えるようになる』と思ってくれる人もいるでしょうし。私にインスパイアされる人がいる……だから私はいつだって柔術、グラップリングを代表してMMAを戦っているつもりよ。

KOで勝っても、私は柔術ガールを代表しているの。柔術を練習している誰もが、ベストの中をベストを目指して練習すれば、私のように打撃も成長できるから」

──そんなマッケンジーにこういうことをいうのは失礼かもしれないですが、パンデミック以降WNOのようなグラップリングのプロ大会が盛んになってきました。マッケンジーはああいうトップグラップリング・イベントで戦うことは考えていないですか。

「100パーセント、戦ってみたいわよ。私も柔術よりもグラップリングの試合を視ることの方が多くなっているし。グラップリングは柔術と違うプラットフォームのイベントを確立させたわよね。もちろんMMAにプライオリティをおいているけど、グラップリング大会からのオファーをいつだって待っているわ。MMAの試合がない時なら、グラップリングのスーパーファイトをぜひとも戦ってみたいって。

特にめきめきと力をつけている新しい世代のグラップラーたちと、競い合いたいと思っているの。そういう機会があれば、グラップリングに戻ってみたいわ」

──WNOにナンバーワンが戻って来る。最高ですね、そんな機会が巡ってくると。

「ありがとう。そう言ってもらえて、凄く嬉しいわ。私もその日が来るのが願っているわ」

──そんな日を夢見ながら、土曜日の試合です。マッケンジーが言ったようにタフな試合になることが予想されます。とはいえティーシャはトップどころに負け、それ以外には勝つというハッキリした結果が出ています。つまり彼女に勝たないとトップの1人して認識されません。

「この試合で勝てば、私は次のレベルへ進むことができる。女子MMAのなかでも、今いる場所とは、一段違う場所へ進める。それぐらいの感覚でいるわ。トップの戦い──私が目指してきた場所へね。凄く大切な試合だし、PPVカードになっていることも重要で。私のことを知らない人にも、試合を視てもらえる。そして、一風変わった戦い方をする女子ファイターは、チャンピオンになる可能性を持っているって思ってもらえるようになる」

──ティーシャは常にアグレッシブなので、危険な相手ではありますが、逆に組みやすい相手かもしれないです。ジャブで突き放して、テイクダウン防御に徹する相手よりも。

「その通りよ。だから、この試合が楽しみだったの。彼女は動きが多いファイターよ。攻めるために動いている。グラップラーは、そういう相手の方が戦いやすいから。それに彼女は私より背が低い、だからパンチを当てるために近づいてくることは確実で。

そこを捕獲するわ。テイクダウンの絶好の機会になるし。そうね……この試合で、私は一本勝ちするわ。未来の世界チャンピオンがここにいる──そういう試合を世界に披露しようと思っている」

──マッケンジー、今日もありがとうございました。最後に日本のMMAファン、柔術好きの人たちに一言お願いします。

「アリガト。皆の応援に感謝しているわ。最高の試合を皆のためにするわ。ファンの皆の存在が、強くなろうというモチベーションになっているの。I LOVE JAPAN、皆のために戦うわ!!」

■視聴方法(予定)
4月10日(日・日本時間)
午前7時00分~UFC FIGHT PASS
午前11時00分~PPV
午前11時00分~WOWOWライブ

■UFC273計量結果

<UFC世界フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ヴォルカノフスキー: 144.5ポンド(65.54キロ)
[挑戦者]ジョン・チャンソン: 144.5ポンド(65.54キロ)

<UFC世界バンタム級統一戦/5分5R>
[正規王者]アルジャメイン・ステーリング: 134.5ポンド(61.0キロ)
[暫定王者]ピョートル・ヤン: 134ポンド(60.78キロ)

<ウェルター級/5分3R>
ジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ: 170ポンド(77.11キロ)
カムザット・チマエフ: 170ポンド(77.11キロ)

<女子ストロー級/5分3R>
マッケンジー・ダーン: 115.5ポンド(52.38キロ)
ティーシャ・トーレス: 115.5ポンド(52.38キロ)

<ライト級/5分3R>
ビンチ・ピチェル: 155.5ポンド(70.53キロ)
マーク・マドセン: 155ポンド(70.31キロ)

<ウェルター級/5分3R>
イアン・ギャリー: 170.5ポンド(77.34キロ)
ダリアン・ウィークス: 170.5ポンド(77.34キロ)

<ヘビー級/5分3R>
ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク: 252.5ポンド(114.53キロ)
マルチン・ティブラ: 253ポンド(114.75キロ)

<女子バンタム級/5分3R>
アスペン・ラッド: 136ポンド(61.69キロ)
ラケル・ぺニントン: 134.5ポンド(61.0キロ)

<ウェルター級/5分3R>
ミッキー・ガル: 170.5ポンド(77.34キロ)
マイク・マロット: 170.5ポンド(77.34キロ)

<ヘビー級/5分3R>
アレクセイ・オレイニク: 244ポンド(110.67キロ)
ジャレッド・ヴァンデラ: 266ポンド(120.65キロ)

<ミドル級/5分3R>
アンソニー・ヘルナンデス: 186ポンド(84.37キロ)
ジョシュ・フレムド: 185.5ポンド(84.14キロ)

<女子ストロー級/5分3R>
ピエラ・ロドリゲス: 115ポンド(52.16キロ)
ケイ・ハンセン: 118.5ポンド(53.75キロ)

<バンタム級/5分3R>
ジュリオ・アルセ: 136.5ポンド(61.91キロ)
ダニエル・サントス: 135ポンド(61.24キロ)

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『UFC 273: Volkanovski vs. The Korean Zombie』前日計量動画/2選手が計量ミス

UFC 273 weigh-in results: Two fighters miss weight but key bouts official(MMAJunkie)
MAIN CARD (Pay-per-view, 10 p.m. ET)

・Champ Alexander Volkanovski (144.5) vs. Chan Sung Jung (144.5) – for featherweight title
・Champ Aljamain Sterling (134.5) vs. interim champ Petr Yan (134) – for bantamweight title
・Gilbert Burns (170) vs. Khamzat Chimaev (170)
・Mackenzie Dern (115.5) vs. Tecia Torres (115.5)
・Mark Madsen (155) vs. Vinc Pichel (155.5)

PRELIMINARY CARD (ESPN/ESPN+, 8 p.m. ET)

・Ian Garry (170.5) vs. Darian Weeks (170.5)
・Jairzinho Rozenstruik (252.5) vs. Marcin Tybura (253)
・Aspen Ladd (136) vs. Raquel Pennington (134.5)
・Mickey Gall (170.5) vs. Mike Malott (170.5)

PRELIMINARY CARD (ESPN+, 6 p.m. ET)

・Aleksei Oleinik (244) vs. Jared Vanderaa (266)
・Josh Fremd (185.5) vs. Anthony Hernandez (186)
・Kay Hansen (118.5)* vs. Piera Rodriguez (115)
・Julio Arce (136.5)** vs. Daniel Santos (135.5)

 『UFC 273: Volkanovski vs. The Korean Zombie』前日計量結果。ジャルジーニョ・ホーゼンストライク vs. マルチン・ティブラはどちらもパスしていますが、既報通りその後ティブラの体調不良で中止されています。また、アーリープレリミナリーカードでピエラ・ロドリゲスと対戦するケイ・ハンセンが118.5ポンドと2.5ポンドオーバー、ダニエル・サントスと対戦するフリオ・アルセが136.5ポンドと0.5ポンドオーバー。どちらも出場給の20%を譲渡し試合は行われます。




 前日計量動画。


UFC 273 predictions: Who are our two unanimous picks in Jacksonville?(MMAJunkie)

 MMAJunkieスタッフによるメインカード勝敗予想。

・アレックス・ヴォルカノフスキー vs. ジョン・チャンソンは11人全員ヴォルカノフスキー支持。

・アルジャメイン・スターリング vs. ピョートル・ヤンはスターリング支持4人、ヤン支持7人。

・ギルバート・バーンズ vs. カムザット・チマエフはバーンズ支持4人、チマエフ支持7人。

・マッケンジー・ダーン vs. ティーシャ・トーレスはダーン支持9人、トーレス支持2人。

・ヴィンス・ピチェウ vs. マーク・マドセンは11人全員マドセン支持。続きを読む・・・
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BELLATOR Cage Warriors MMA MMAPLANET o UFC UFC273   アレクセイ・オレイニク アレックス・オリヴェイラ アレックス・ヴォルカノフスキー イアン・ギャリー カムザット・チマエフ ケイ・ハンセン ケヴィン・ホランド コナー・マクレガー ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク ジョン・チャンソン ジルベウト・ドゥリーニョ ティーシャ・トーレス ピエラ・ロドリゲス ピョートル・ヤン ボクシング マイク・マロット マッケンジー・ダーン マーク・マドセン

【UFC273】新型マクレガー=イアン・ギャリー─01─「カレッジを辞めて、MMAにJUMP INした」

【写真】キレキレの打撃とは対照的に、少年のような口調で語るイアン・ギャリー=アイリッシュMMAファイターが何もマクレガー流を踏襲するだけでないことが、よ~く理解できた(C)MMAPLANET

9日(土・現地時間)、フロリダ州ジャクソンビルのヴィスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナでUFC273が開催される。

UFC世界フェザー級選手権試合=王者アレックス・ヴォルカノフスキー✖挑戦者ジョン・チャンソン、UFC世界バンタム級王座統一戦=正規王者アルジャメイン・ステーリング✖暫定王者ピョートル・ヤンの2つの世界戦に加え、ジルベウト・ドゥリーニョ✖カムザット・チマエフという注目カードが組まれた今大会のプレリミマッチにヒューチャーの異名を取るイアン・ギャリーが出場、UFC2戦目=ダリアン・ウィークス戦に臨む。

1997年11月生まれの24歳は、19歳でアマMMAを始め5年で最高峰に辿り着いた。コナー・マクレガー後のアイリッシュMMA、いや世界のMMAをリードする可能性すらあるMMAの未来=イアン・ギャリーに初インタビュー。コナー・マクレガー、そのやり口をコピッたBellatorのジェイム・ギャラガー、アイルランドMMA界の新鋭は──マクレガーへの憧れでいっぱいという内面のなかで、その真逆の感性を持っていた。


――パンデミック以前は欧州のMMA大会は、日本では深夜2時や3時のスタートで終了時がUFCのスタートと重なるためにストリーミングがあっても、ほとんど見過ごしていました。それがコロナ禍で世界各国のMMAが活動休止になり、決して多くないプロモーションが無観客で活動を再開。その頃からCage Warriorsも可能な限り視聴するようにしていたのですが、そこで見た──飛び切り活きの良い選手がイアンでした。すると7戦目でウェルター級王者になり、8戦目でUFCデビューと瞬く間に世界の最高峰に到達しました。

「おお、日本ではそんな真夜中にCage Warriorsは中継されているんだね。いやぁ、それなのに僕の試合を視てくれていたなて嬉しいよ。本当にありがとう」

──いえ、フィーダーショーから可能性のある若い選手が出てくるのを見るのが、楽しくてしょうがないんですよ。ところでアイルランドは今やMMAのパワーハウスの一つですが、イアンがMMAを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「MMAに興味を持ったのは、コナー(マクレガー)の影響だよ。彼の活躍と成功をずっと追っていて、試合も夢中になって視ていた。そして『僕もMMAをやりたい』って思うようになったんだ。その時はカレッジの学生だったけど、学校を辞めてMMAファイターになることを決めたんだ。このスポーツに身を置きたいと思ってね。

コナーを見ていたら、自分がカレッジでやっていることってなんなんだろう?って感じるようになった。そうしたら、『こんなことやっていられない。これ以上、ここに居たくない』って居ても立ってもいられなくなったんだ。そしてジムにジャンプインした(笑)。

テレビで視ていた本当に美しい戦いを習うことができるようになって。僕はコナーと同じ道を歩み始めたんだって──最高の気持ちになったよ。練習は凄く楽しかったよ」

──大学を辞めた? 

「そうだよ。自分で決めた。父にも母にも相談せずに学校を辞めたんだ」

──OMG!! 

「ジムに通うようになってから4~5年でUFCとサインできた。UFCデビュー戦はMSGだった。そして2戦目のPPV大会に出場できている。楽しい人生だよ」

──それまでに格闘技の経験はあったのですか。

「柔道だよ!!」

──えっ、いやあれだけシャープな打撃の持ち主なのにベースは柔道なのですか。

「ボクシングはやっていたよ。10歳から14、15歳までボクシングをしていて──父親に連れられて始めたんだけど、なんで人を殴って自分も殴られるようなことをやっているのか、どういう意味があるだって考えるようになっていたんだ。顔を腫らして、さ。そんなときに柔道と出会った。見た感じでも、柔道はイカしていたよ」

──柔道がクールだったのですか。

「そうだよ。学校が終わって宿題を家でやっているより、ずっとクールだったよ。すぐに週に3回か4回は柔道場に通うようになった。柔道を習っていたことでマーシャルアーツに欠かせない規律、尊敬心を学ぶことができたんだ。それはMMAを始めてからも生きているよ。アイリッシュ・クラブというアイルランドで一番の柔道クラブで練習できていて……18歳で黒帯になったんだ。練習するメンバーのなかでも、トップの連中は日本に行って練習していたよ。

僕も彼らと一緒に日本で稽古したいと思っていたけど、それは実現しなかった。僕にはそれに見合った力がなかったからね。日本まで行って練習していた友人たちは五輪を目指すようなレベルだったんだ。それに僕にとって柔道はどれだけ懸命にやっても、返って来るものは少なかった。国際大会で戦ったことはないし、せいぜいイングランドまで遠征して試合に出ていたぐらいかな。それでも柔道の試合に出ることが大好きだった。それは今、MMAをやっていて最高の気分でいるのと同じことで。

ただし、僕が柔道の試合に出ている期間はそれほど長くなかった。黒帯になってから、翌年にはアマチュアのMMAにデビューしたからね。でも、僕にとってオリンピックに出て活躍する柔道家は本当の天才なんだよ。そんな柔道をやっていたことで、学べた心境というのは何物にも代えがたいモノなんだ。

今はMMAに専念しているけど、いずれMMAで第一線から退く時が来る。その時はまた柔道の練習をして、日本で試合をしたいと思っている。それに柔術だって続けたいし、日本で柔道や柔術の試合に出ることだってあるかもしれないよ」

──ぜひ講道館を案内します。

「おお、サンキュー。ホント、そういう日が来るのも楽しみだよ。講道館で稽古がデキれば最高の経験になるね(笑)。今、MMAをやっていて柔道で学んだ技術云々よりも、柔道で身に着けることができた人間の内面性が凄く役立っていると思う」

──とはいえ規律、尊敬心といってもコナー・マクレガーがケージ内外で見せていたことは、全く真逆のことだと思うのですが……。

「ホント、その通りだ(笑)」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
3月10日(日・日本時間)
午前7時00分~UFC FIGHT PASS
午前11時00分~PPV
午前11時00分~WOWOWライブ

■UFC273対戦カード

<UFC世界フェザー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ヴォルカノフスキー(豪州)
[挑戦者]ジョン・チャンソン(韓国)

<UFC世界バンタム級統一戦/5分5R>
[正規王者]アルジャメイン・ステーリング(米国)
[暫定王者]ピョートル・ヤン(ロシア)

<ウェルター級/5分3R>
ジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ(ブラジル)
カムザット・チマエフ(スウェーデン)

<ウェルター級/5分3R>
ケヴィン・ホランド(米国)
アレックス・オリヴェイラ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
マッケンジー・ダーン(ブラジル)
ティーシャ・トーレス(米国)

<ライト級/5分3R>
ビンチ・ピチェル(米国)
マーク・マドセン(デンマーク)

<ウェルター級/5分3R>
イアン・ギャリー(アイルランド)
ダリアン・ウィークス(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ジャイルジーニョ・ホーゼンストライク(スリナム)
マルチン・ティブラ(ポーランド)

<女子バンタム級/5分3R>
アスペン・ラッド(米国)
ラケル・ぺティントン(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ミッキー・ガル(米国)
マイク・マロット(カナダ)

<ヘビー級/5分3R>
アレクセイ・オレイニク(ロシア)
ジャレッド・ヴァンデラ(米国)

<ミドル級/5分3R>
アンソニー・ヘルナンデス(米国)
ジョシュ・フレムド(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
ピエラ・ロドリゲス(ベネズエラ)
ケイ・ハンセン(米国)

<バンタム級/5分3R>
ジュリオ・アルセ(米国)
ダニエル・サントス(ブラジル)

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Bu et Sports de combat MMA UFC アンドレ・イーウェル クリス・グティエレス ピエラ・ロドリゲス 剛毅會 岩﨑達也 武術空手 海外

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。グティエレス✖コラレス「答が必要」

【写真】今回は定位置で養成されたパワーを繰り出すことはできなかったグティエレス (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たクリス・グティエレス✖フィリップ・コラレスとは?!


──グティエレスは移動のパワーでなく、定位置でエネルギーを養成することができる珍しい選手だということでしたが、今回はコラレスの蹴りの前にその良さが出せていなかったように見えました。

「結論から言いますと、グティエレスはコラレスをビビっていました。ただし、蹴りに対してではないです。パンチが怖いから、下がってカウンターで倒そうとしていました」

──蹴りで養成したエネルギーを出す機会を奪われたのではなく?

「コラレスの蹴りは、足でペチャンって出しているだけで威力はないですよね。あれは効かないです。拳(ケン)にチンクチが掛かるかのように、蹴りも爪先やカカトという先端部分までエネルギーが伝わっているかどうかで、威力も決まります。

コラレスの蹴りは当たった時に足首から先がプラプラァとしていて、体のエネルギーが爪先まで伝わっておらず、質量が低い蹴りなんです。ですから、効かない蹴りよりもコラレスの前進してからのパンチを嫌がっていた。コラレスもパンチでいけば良かったのですが、カウンターのパンチを嫌がっていたのかもしれないです」

──ともあれグディエレスがアンドレ・イーウェル戦で見せた定位置でのエネルギーの養成もなかったということですね。

「定位置でエネルギーを養成するという部分では、止まった位置で力を創っているのですが、それを運ぶという作業、エネルギーで前進するという点ではピエラ・ロドリゲスの方が上です。そして今回の試合ではただ単に下がってしまっていました。だからエネルギー云々という部分では、グティエレスは話にもならないです。

コラレスの方が質量が高くて、そこに対してただ下がる。それは無防備で下がっている危険な行為です。選択したのが、下がって一発狙い。結果、決して褒められた前進ではないコラレスを勢いづけています。その前進により、コラレスの質量は上がっていました」

──それでもグティエレスが2-1の判定勝ちを収めます。

「それがもう分からないです。1Rと2Rはグティエレスがどう勝とうとしていたのか。3Rはもうコラレスが疲れたのか、右を打たれてからはグティエレスの試合になりました。でも最後の30秒か、言ってみると10秒の間だけです」

──岩﨑さんの見立てだと29-28でコラレス。同じ裁定のジャッジが1人いました。ただ、残りの2人は30-27なんです。

「30-27でグティエレスというのは……それはもう全然分からないです。明確なのは3Rですけど、あのラウンドのグティエレスは良かったんです。ただし、1Rと2Rのカウンターを取りに行った作戦は失敗です。カウンター狙いが逃げになっていたので。それでもグティエレスになるのは……分からないです。

そして定位置でエネルギーを養成できるというのも、そこには法則性がなかった。でも法則性があっても、相手や自分のコンディションで発揮できないことは多々あります。それに定位置でエネルギーを養成していることを指導者が良いと判断していないと、続けられることもないです。

だから私は選手が型をやる必要はないと思っています。でも指導する側は私の場合は型ですが、なぜこうなったのかという答が必要なんです。答を持っているのかどうかで、指導は変わってきますからね」

──と同時にこの試合でグティエレスは勝った。なら指導は間違っていないという見方が成り立ちます。

「勝てばハッピーです。それはコーチも。と同時に、ダメだったところは洗い出さないといけない。試合は勝つためにやります。なので武術の本質をそこで取り入れ、追及することで負けてしまっては何もならない。

明確にジャッジの裁定基準が、空振りでも手数を出して前に出ていると勝てるのであれば、私も試合ではそうさせます。試合は勝つために戦うものなので。そのなかで前進すれば勝てるけど、前進するリスクと危険性を指摘できるようでいたいです。

そのうえで前進して、試合に勝たせに行きます。空振りでも評価されるなら、空振りもさせます。勝つことが一番大切なことですから。それが武術と競技の違いです。だから武術の叡智を生かすのは、テクニックや動作だけではない。これだけ厳しい競技をやっているなかで、自分の持っている武という部分からも、その過酷さを説き、精進させることだと思っています。

武術とは生きる、死ぬというなかで生まれたものです。生死が掛ったところの深刻さから生まれた叡智を格闘技で生かすというのは、そういうところでもあるはずです。だから辞めるなら辞めれば良い。そんなことしないでも格闘技の試合は出ていけます。でも、UFCだ、海外だっていうのなら、それぐらいの気持ちでないとあの連中を相手にして、やり合うことはできない。

私は競技をやってきたけど、殺し合いは経験していないです。だから武術を勉強するんです。

武術をやっていない人間だって、実社会でえげつないことを平気でやっています。それはルールがあって、時間があり、審判がいる格闘技とは比べモノにならない、残酷なことをやります。その残酷極まりなさを考えることで、戦わない平和を追求できると思います。実社会は性悪説のえげつないところです。武術はそういう場で、平常心でいられるよう鍛錬するものです。海外で、UFCで勝つという目的を持った馬鹿者には、武術の叡智が5分✖3Rの戦いで生かせることができればなと。それは男の浪漫。格闘浪漫です」

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Bu et Sports de combat LFA ピエラ・ロドリゲス ブログ ヴァレスカ・マシャード 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ロドリゲス✖マシャード「法則性と再現」

【写真】UFCとの契約に向けて意識の高さと、重心のコントロールに良さが見えたロドリゲスだが、前回の試合のようにエネルギーで前進するという動きはできていなかった (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たピエラ・ロドリゲス✖ヴァレスカ・マシャードとは?!


──ピエラ・ロドリゲスが4月にLFA女子ストロー級王者になった試合で、岩﨑さんは『ロドリゲスは前進した時に質量が上がる。エネルギーが出ている移動。それがなくて前に出ると相手のパンチを被弾するだけ。しかもロドリゲスは前進してエネルギーを伝えるのではなくて、エネルギーで前進していて参考になる選手』と言われていました。今回の試合では、そのエネルギーで前進するということができていたのか。

「結論として、なかったです。今回は重さのロドリゲスと前進のマシャードという試合でした。ただロドリゲスはパンチを打つ際のヒジの角度が良かったです。MMAグローブで戦う上で理想に近い打ち方でした。

クロスレンジという打ち合いのなかで、有効なパンチでした。ただし、そこを狙い過ぎていた感がありました。その狙い過ぎが影響しているのか、エネルギーで前進するということは今回の試合ではなかったです。

そして試合は前進している方が有利になります。マシャードという選手はまるで知らなかったのですが、コンテンダーシリーズという一発勝負のオーディション番組で、もう殺るか殺られるかという意識でまず戦っています。

そのなかでロドリゲスは最初、頭の位置が後ろで。顔面攻撃のある試合で、相手が前に出てくる。それなのに頭の位置が後ろにあると、もう下がるしかできなくなります。いきなり受けに回っており、最悪の姿勢といえます」

──ハイ。

「ところがロドリゲスが1Rの中盤にワンツーから3発目の右クロス──返しの右を当てて、ダウンを奪います。この選手は重心のバランスがある。自分でコントロールしていましたね。ただし今回の試合もLFAのタイトルマッチもロドリゲスは激闘になっています。そこをどう見るのか。工夫して、一方的な試合にしろというのが本来の格闘技の捉え方だと思いますが、このオーディション番組では激闘が喜ばれ、慎重に戦うと評価されないという背景がありますよね。

だから今のトレンドでもある蹴りの距離にならないのか。蹴りがとにかくなかったです。上と下の連動が2人ともなかった。あの距離だからテイクダウンにも入りやすかったですし、ちょっと以前のようなMMAに感じましたね。

ただ、それでも蹴りは使えますが、そのような練習環境にないのかもしれないです。まぁアグレッシブネスが最重視されているということなんでしょうね。距離を取って脹脛の蹴り合いだと、契約してもらえないと」

──その通りですね。

「良い試合だった。良かったねぇということが一般的になってきて、そこから反省をするというのが難しくなっていると思います。私の場合は空手を教えてくれる先生が、自己否定から入る方でした。それはもっと良くなると信じているからこその裏返しなんです。

ロドリゲスがそういう環境にあるのか。ただし、ロドリゲスには『この人に殴られたくない』っていうパンチがあります。簡単にいえば魅力的です。打撃の質量に関しては、1Rの中盤から3Rまで通して、ロドリゲスにありました。

結局のところは、その使い方なのでしょうね。良いのに、なぜか攻められるという……」

──途中で足を負傷したというようなことを試合後のコメントで口にしていました。

「あぁ、そういうことですか。それでもUFCに行くために、アレだけ戦ってしまう。凄いですね。凄い話です……」

──そこに前回の試合のように、エネルギーで前進することが常にできれば、と。

「前回の試合でエネルギーで前進できていたことが、再現できない。それが格闘技の特徴です。再現性がない、確認が試合でしかできていないからです。前回はデキた、今回はデキなかった。技術的なことではなく、そこがエネルギー的なモノであると結果論で判断するしかない」

──対して武術には……。

「ハイ、型があります。型があればなぜ、それができなかったのか。なぜ、できたのかという要因が分かります。型には法則性があるので。ただしロドリゲスの前回の試合と今回の試合をみると、法則性がないので再現できない──という風に結論づけることはできます」

──この日はデキた。次の日はデキなかったと。

「ハイ。自転車が乗れる日と乗れない日があっては、自転車レースには出られないです。法則性があれば自転車に乗れない日はなくなります。そこが何度も言ってきましたが、武術と格闘技の違いになります」

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DWCS S05 Ep08 MMA ピエラ・ロドリゲス ヴァレスカ・マシャード

【DWCS S05 Ep08】激しい試合で勝ち切ったピエラ・ロドリゲス──「ダナ、一緒に金儲けしようよ」

<女子ストロー級/5分3R>
ピエラ・ロドリゲス(ベネズエラ)
Def.3-0:29-28. 29-28. 29-28
ヴァレスカ・マシャード(ブラジル)

距離を取ってロー、左ストレートを伸ばすマシャードが、飛び込んでボディフックを放つ。ジリジリと近づいていくロドリゲスは左に左を合わせる。右を受けて、手をマットについたマシャードはすぐに立ち上がるが、前蹴りから右を打たれる。ワンツーにダブルレッグを決めたロドリゲス、マシャードも即立ち上がる。ロドリゲスは距離を取り直し、ワンツーに左フックを合わせる。さらにマシャードのステップインにカウンターを合わせるロドリゲスは、ステップインから切れのあるワンツーを振るう。

マシャードは持ち味である前足のハイを蹴る。ダブルを切ったマシャードだが、接近戦でワンツーを被弾。近い距離は組まない限りにロドリゲスの空間だ。続くクリンチに、アゴを押して距離を取ったマシャードがヒジを入れる。左を打って離れたロドリゲスは右アッパー、マシャードが右を当てる。続く右フックにダブルレッグを合わせたロドリゲスだが、切り返したマシャードが上を取りそうになる。ここを粘り、ケージまでマシャードをロドリゲスが押し込み、時間となった。

2R、ワンツーで前に出たマシャードが、3発目の右を当てる。スイッチを織り交ぜるロドリゲスは左リードフック、さらに右ストレートを打ち込み、返しの左を当てる。左を被弾しながら右を返したロドリゲスは、左ミドルにも右を伸ばす。マシャードは踏み込んでパンチを見せ首相撲。ロドリゲスは逆にヒザを入れて離れると、ワンツーを決める。

ダブルを防いだマシャード、首相撲から離れて左ジャブをヒットさせる。さらにワンツーで前に出るとロドリゲスのスピニングバックフィストに合わせ組みつく。ボディロックでケージにロドリゲスを押しこんだマシャードだったが、ポジションを入れ替えられる。十分の形で組んだロドリゲスは時間を使い、シングルへ。体が伸びたマシャードがケージを背にして時間まで耐えきった。

3R、テイクダウンを凌いだが攻められていたことは変わりないマシャード。逆転にはフィニッシュが必要だ。まずロドリゲスが左ミドルハイを繰り出す。さらに前蹴りでマシャードの前進を止める。マシャードはそれでも前に出てワンツー、ロドリゲスは右に回るマシャードに組みつく。ロドリゲスは首相撲にもエルボーを返すが、離れたところでマシャードが右を当てる。

ここで圧が落ち、やや逃げ気味のテイクダウン狙いを切られたロドリゲスだったが、そのままケージに押し込みダブルレッグを決める。ケージ際まで移行して立ち上がったマシャード。ロドリゲスはヒザをボディに突き刺す。離れると圧を掛けるのはマシャードで、ロドリゲスはここもダブルレッグからドライブもマシャードが切る。

前蹴りに右を打っていったマシャードが、今度は組んでケージにロドリゲスを押し込む。ここは離れて打撃戦の方が良いかと思われたマシャードは、体を入れ替えられ2度目のテイクダウンを許してしまう。残り40秒、立ち上がり際にバックに回ったロドリゲスは胸を合わせたマシャードをダブルレッグで倒し、マウントを奪う。最後の5秒でエルボーからパンチを連打したロドリゲスの勝利に対し、ダナ・ホワイトは「What a fight」と呟いた。

「KOかTKOしたかったけど、良い試合だった。ダナ・ホワイトも皆も楽しんでくれたと思う。ケニー・ジョンソンが私のレスリングを成長させてくれた。私はコーチを信じている。足を負傷したけど、人生最大のチャンスに動きを止めることはできなかった。ダナ、一緒に金儲けをしようと」とロドリゲスは話した。


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DWCS S05 Ep08 LFA MMA UFC ピエラ・ロドリゲス ヴァレスカ・マシャード 修斗

【DWCS S05 Ep08】LFA女子ストロー級王者、倒せる拳を持つ女子=ピエラ・ロドリゲスがマシャードと対戦

【写真】気合の入った表情を見せるロドリゲス (C)LFA

19日(火・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでDana White’s Contender Series S05 第8週が行われる。

前週では体重オーバーで勝利した選手が契約を勝ち取り、スポーツとして一線が崩れた感のあるコンテンダーシリーズだが、当然のようにそんなことはお構いなく虎視眈々とUFCファイターになれる可能性が最も高いステージには10人の選手が集結する。


今大会は4試合組まれた男子選手の試合には、有力フィーダーショーのチャンピオンクラスの出場はなく、登竜門大手の大会でキャリアを積んでいるのはメインに登場するソロモン・レンフロがCage Fury FC、オープニング・ファイト出場のノヴァウニオンファイター=ペドロ・ファルカォンが修斗ブラジルの常連というぐらいだ。またカイオ・ボハーリョは第5週にミドル級で出場し、判定勝ちもサインとはならず2度目のチャンスがライトヘビー級で与えられた。

そんななかコ・メインでヴァレスカ・マシャードと対戦するピエラ・ロドリゲスはキャリア6勝0敗のLFA女子ストロー級チャンピオンだ。4月23日のLFA105でホドリゲスはATT所属のウクライナ女子スヴェトラナ・ガツサイクを5RTKOで破り、LFAのベルトを巻いている。LFAのチャンピオンでもコンテンダーシリーズという最後の難関が必要という状況はタフファイトをやり損とも取れるが、やはり他のローカル団体で巻いたベルトとLFAやTitan FC、CESなどでベルトを手にするには経験値が違ってくるという見方はできる。

実際にホドリゲスも、ガツサイク戦での5R途中までの攻防で得た経験値は絶対的に彼女を強くしたはずだ。パンチの力のあるガツサイクを相手に、気迫あふれるファイトで思い切り踏み込んで威力のあるパンチを打ち込んでいた。

それを可能にさせたのも、課題だった組みの展開でテイクダウンを許さず、引き込んでから腕十字を得意とするガツサイクの極めのトライを遮断できたからだ。

対して対戦相手のマシャードはロー、ミドルと前足の蹴りに切れがあり、ジャブも伸びる。その一方で近い距離での打撃戦ではガードが疎かになる傾向にある。パンチの力の弱い相手なら首相撲からヒザにスイッチできるが、ロドリゲスのパンチを被弾すると──危ない。前進しながら打ちこむロドリゲスは女子では珍しいKOパワーの持ち主だけに、マシャードは乱打戦でなく、距離をとって蹴り中心のファイトで前足を削るべきだろう。

■視聴方法(予定)
10月19日(水・日本時間)、午前9時~UFC FIGHT PASS

■DWCS S05 Ep08 対戦カード

<ウェルター級/5分3R>
ソロモン・レンフロ(米国)
ジョニー・パーソンズ(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
ヴァレスカ・マシャード(ブラジル)
ピエラ・ロドリゲス(ベネズエラ)

<ライトヘビー級/5分3R>
カイオ・ボハーリョ(ブラジル)
ジェシー・マーリー(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
アルメン・ペトロシアン(アルメニア)
カロヤン・コレフ(ブルガリア)

<バンタム級/5分3R>
ジェイムス・バーンズ(米国)
ペドロ・ファルカォン(ブラジル)

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