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ONE Fight Night 27:第7試合・デニス・ザンボアンガ vs. アリヨナ・ラソヒナ

女子アトム級暫定王座決定戦5分5R。ザンボアンガ2位、ラソヒナ4位。

王者のスタンプ・フェアテックスが負傷欠場中のため、暫定王座戦が組まれた。当初は10月に組まれていたが、ザンボアンガの負傷で延期となっていた。

フィリピンのザンボアンガは昨年6月、スタンプのタイトルに挑戦予定だったが、スタンプ負傷欠場のためにワンマッチとなりノエル・グランジャンに判定勝ち。ONE6勝2敗で、アトム級タイトルマッチでハム・ソヒに敗れてMMA初黒星を喫したが、ザンボアンガが勝っているという意見も多く、翌年ダイレクトリマッチが組まれたものの、その時は完敗している。その後3連勝中。27歳。

ウクライナのラソヒナは2021年のONEデビュー戦でいきなりスタンプにと対戦。スタンプがテイクダウンでリードしていたが、終盤にラソヒナがギロチンに捕らえると、スタンプがタップの動きを見せて一本負け。タップしていないと抗議するも後の祭りで、スタンプにMMA初黒星をつけている。同年に開催されたONE女子アトム級GPの一回戦でダイレクトリマッチが組まれると、スタンプがグラウンドでポジションを取り優勢な展開から終盤ラソヒナが腕十字を取りかけるも、脱出されて判定負け。その後出産のために欠場しており、約3年のブランク。34歳。

詰めてくるラソヒナにジャブを入れるザンボアンガ。ラソヒナがパンチで出ながら組もうとするが組ませない。お互いジャブを打ち合うが、ヒットはザンボアンガが上。カーフを蹴られて掴もうとしたラソヒナ。ラソヒナが出るところにまたカーフ。ラソヒナ詰めた。組んでコーナーに押し込むが、脇を差したのはザンボアンガ。ヒジを入れたザンボアンガ。ラソヒナもヒジを返すが、ダブルアンダーフックから足をかけてテイクダウン。ラソヒナ腕十字を狙うが、立って防いだザンボアンガ。スタンドに。ラソヒナシングルレッグ。切ったザンボアンガが上になりサイドを取った。残り30秒。腕を狙いつつボディにヒジを入れる。ゴング。

2R。パンチで出てくるラソヒナに右を当てるザンボアンガ。ラソヒナのタックルを潰して上を取るザンボアンガ。パウンドを打ち込む。足で距離を作ったラソヒナ。蹴り上げがヒットするが、ザンボアンガまた上から押さえ込んでハーフにして殴る。またガードに入って殴ると、ラソヒナが足関を狙う。ヒールを狙う。腕でクラッチを掴んで外したザンボアンガがパウンドを落とすが、ラソヒナまた足関からバックを狙う。回転してサイドについたザンボアンガ。パウンドを入れると腕十字を狙いつつヒジ・パウンド。ヒジ・パウンドラッシュ。動けず打たれ続けるラソヒナを見てハーブ・ディーンストップ!

ザンボアンガ、フィリピン人女性初のMMA世界王者に。

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【RIZIN LANDMARK10】2年振りの復帰戦に臨む浜崎朱加─01─「柔道時代の貯金とポテンシャルだけで」

【写真】写真は今年1月、クレア・ロペス戦に向けたインタビュー時のもの(C)SHOJIRO KAMEIKE

17日(日)、名古屋市港区のポートメッセなごやで開催されるRIZIN LANDMARK10で、浜崎朱加が韓国のシン・ユリと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

これまでジュエルス、Invicta FC世界アトム級、そしてRIZIN女子スーパーアトム級のベルトを巻いている浜崎は日本の女子MMA史上、最高位の実績を残しているファイターの一人だ。しかし2021年大晦日から伊澤星花に2連敗を喫し、さらに翌年のRIZIN女子スーパーアトム級GPでは準決勝でパク・シウに敗れ、その試合で左腕を骨折したためブランクをつくってしまう。
そんな浜崎は当初、今年2月にRIZIN LANDMARK佐賀大会で、クレア・ロペスを相手に復帰戦を行う予定だった。MMAPLANETでも1月、浜崎にインタビューを行っていたが、その後またも左腕を骨折したことにより試合の中止が発表される。
今回はまずは前編として、1月のインタビューからRIZIN参戦以降について訊いた内容を掲載したい。


負けた相手にリベンジしたい、という気持ちはあります

――MMAPLANETに浜崎選手のインタビューが掲載されるのは2018年1月以来、6年振りになります。個人的には2016年3月、インヴィクタ世界アトム級王座の初防衛に成功した後のインタビューが最後で、あれからもう8年が経ちました。

「あぁ~、もうそんなに経つんですね」

――2018年から浜崎選手がRIZINに参戦して以降、浜崎選手を取り巻く環境も大きく変わったかと思います。

「RIZINに出て、ガラッとではなく徐々に変わっていきましたよね。簡単にいうと知名度が上がったというか。私を知ってくれている人が多くなり、街や会場でも声を掛けられることも多くなりましたし」

――浜崎選手はパク・シウ戦で負った怪我のために1年半のブランクがあります。この期間はどのように過ごしていたのですか。

「動けない期間は、ずっと休んでいました。パクちゃんとの試合で蹴りを受けた時、左腕を骨折して。我慢して試合を続けたら粉砕骨折していて……試合翌日に入院、その翌日に手術しましたね。それが2022年の9月で、12月ぐらいから軽いウェイト程度はやっていました。MMAの練習は年明けから再開していたと思います」

――その状態から復帰まで1年近い期間があるのは、試合に出る状態仕上げることに時間を要したのでしょうか。

「いえ、試合はできましたけどオファーがなくて。だから堂々と休んでいました(笑)」

――オファーがなかった……、どうしても女子の選手層の問題はありますよね。定期的に、もう対戦経験のある選手ばかりという状態になってしまう。

「そうなんですよ。あの時はグランプリだったけど、もう対戦相手も一周してしまっているし、私が休んでいる間も停滞している感はありました」

――特に浜崎選手の場合は、対戦相手選びも難しくなるとは思います。GP前に伊澤星花選手に2連敗を喫している。かといって、GP後の復帰戦で誰と対戦するのか。

「分かります。今もなかなか相手はいない状態ですよね。特に日本人相手だと」

――RIZINの女子スーパーアトム級トップグループで、対戦していないのはRENA選手ぐらいでしょう。

「そうなりますね。RENAとの対戦について、求められていることは感じます。でも……試合したいか、したくないかでいえば、やりたくはないですよ。やっぱり仲間だから」

――RENA戦を求める声は大きいですか。

「大きいです。自分の中でも興味はありますよ。RENAも強くなっていますし。正直、何年か前だったら、RENAと試合をしても普通に勝っていたとは思います。でも今は分からないですね。RENAには一発があるし、寝技も強くなっていて――MMAファイターとして成長していますから」

――では伊澤選手との2連戦があり、ジェシカ・アギラーやパク・シウと対戦したあと、「次は誰と戦えば良いのだろう?」とは考えませんでしたか。

「その時は別に、次のことなんて考えていなかったです。気づいたら対戦相手がいなくなっていたというか。昔から私の中で『誰と対戦したい』という気持ちはなくて。でも負けた相手にリベンジしたい、という気持ちはあります。負けている以上、私に発言権はないけど」

インヴィクタに出ている時よりは、いろんなことを知ろうとする気持ちが増えた

――2019年の大晦日、ハム・ソヒに敗れてRIZINのベルトを失いました。そのハム・ソヒはコロナ禍を経て、2021年からONE女子アトム級GPに出場しています。浜崎選手としては、同じくONEのGPに出場してハム・ソヒにリベンジしたいとは思わなかったのですか。実際、浜崎選手のGP出場を望む声もありました。

「あぁ~、あの時は私もハムちゃんを追っかけてONEに行こうかとも考えたんですよ。判定の内容はどうあれ負けたことは悔しかったし、このままじゃモヤモヤするだろうと思って。実は当時、RIZINとの契約も終わってフリーだったし、ONEとも話をしました。でも私はRIZINで戦い続けることを選んで」

――その時、RIZINで戦うことを選んだ理由は何だったのですか。

「そもそもインヴィクタのベルトを返上して、日本で戦うことを選んだ理由が『応援してくれる人たちの前で試合をしたい』ということでした。さらに一度契約が終わった後も榊原(信行RIZIN CEO)さんからも『RIZINで戦ってほしい。浜崎が必要だ』と言われたことに誠意を感じて。あとは『いつかまたハム・ソヒを呼んでリベンジの機会をつくる』とも言われたから。今となっては難しいと思うので、仕方ないですけど」

――一方で当時、伊澤星花選手の存在に対して、どのように見ていたのでしょうか。伊澤選手はまだプロで4試合しか経験しておらず、パク・シウに勝っているとはいえ2021年大晦日に浜崎選手と対戦するのは意外でした。

「まぁ、何て言うんでしょうね……私も相手がいなかったですし」

――ジュエルス、インヴィクタ、そしてRIZINのベルトを巻いていた浜崎選手にとって、当時のモチベーションは何だったのでしょうか。

「モチベーションかぁ……、最初の伊澤戦は、さすがにちょっとヘコみましたよね」

――えっ!? 初戦のほうが負けてヘコんだのですか。

「初戦しかヘコんでいないです。2試合目はむしろ自分に可能性を感じたというか。今まであんまり、ちゃんと練習していなかったんですよ」

――……!?

「ちゃんと頭を使って練習していなかった、というのが正しいのかな。初戦のあと、いろいろ初めてのことをやり始めました。柔術の強い人に技術を教わり始めたり、福山BURSTの佐々木信治さん藤井惠(佐々木惠)さんにも、いろいろと教わって。だから2試合目は新しくできたことも多かったし、『なぁんだ。新しいことを覚えたら、まだまだ試合で出せることは多いんだな』と思いました(笑)」

――その状態で、よくインヴィクタの世界王者になりましたね(笑)。

「アハハハ! あの時は本当に柔道時代の貯金とポテンシャルだけで。あと勢いで戦っていましたね」

――年齢のことを言うのは恐縮ですが、40歳まで貯金とポテンシャルだけで戦う選手は、なかなかいないと思います。

「もちろん今までAACCでも教わっていたはずなんですよ。それがインヴィクタに出ている時よりは、いろんなことを知ろうとする気持ちが増えた気はします。いまだにMMAについて知らないことだらけで、驚かれることもあるぐらいで。ただ、今のほうが吸収する力はあると思う。

だけど、とにかく次のクレア・ロペス戦で勝たないと今後も厳しいとは思っています。だから勝ちにこだわりたいですね」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
11月17日(日)
午後1時00分~ABEMA、U-NEXT、RIZIN100CLUB、スカパー!、RIZIN LIVE

■ RIZIN LANDMARK10対戦カード

<フェザー級/5分3R>
ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
摩嶋一整(日本)

<バンタム級/5分3R>
昇侍(日本)
芦澤竜誠(日本)

<女子スーパーアトム級/5分3R>
浜崎朱加(日本)
シン・ユリ(韓国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イゴール・タナベ(ブラジル)
マルコス・ヨシオ・ソウザ(ブラジル)

<フライ級/5分3R>
伊藤裕樹(日本)
イ・ジョンヒョン(韓国)

<フライ級/5分3R>
柴田“MONKEY”有哉(日本)
ヒロヤ(日本)

<フライ級/5分3R>
村元友太郎(日本)
トニー・ララミー(カナダ)

<フライ級/5分3R>
北方大地(日本)
アリベク・ガジャマトフ(ロシア)

<バンタム/5分3R>
アラン“ヒロ”ヤマニハ(ブラジル)
山本聖悟(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
加藤久輝(日本)

<バンタム級/5分3R>
白川ダーク陸斗(日本)
マゲラム・ガサンザデ(アゼルバイジャン)

<ライト級/3分3R>
キム・ギョンピョ(韓国)
倉本大悟(日本)

<フェザー級/5分3R>
鈴木博昭(日本)
秋元強真(日本)

<バンタム級/5分2R>
窪田泰斗(日本)
日比野“エビ中”純也(日本)

<ヘビー級/5分2R>
稲田将(日本)
佐々木克義(日本)

<フェザー級/5分2R>
TATSUMI(日本)
平松翔(日本)

<キックボクシング55キロ契約/3分3R>
としぞう(日本)
JIN(日本)

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45 MMA MMAPLANET o ONE ONE167 デニス・ザンボアンガ ノエル・グホンジョン ハム・ソヒ ボクシング 澤田千優

【ONE167】代役グホンジョンを左ジャブでコントロール。ザンボアンガが捌ききってユナニマス判定勝ち

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)
Def.3-0
ノエル・グホンジョン(フランス)

ザンボアンガが左ジャブを突いてグホンジョンを下がらせる。左ジャブからワンツーでグホンジョンに中に入らせない。グホンジョンの右に右ストレートを合わせるザンボアンガ。グホンジョンもザンボアンガの左ジャブに右ストレートを被せに行くが届かない。グホンジョンの右カーフを当て、左ジャブを上下に散らしたザンボアンガの右ストレートがグホンジョンの顔面を捉え始めた。グホンジョンの足払いで体勢を崩したザンボアンガだが、すぐに立ち上がる。

下がりながら左ジャブで距離をつくるグホンジョンが組みつくと、グホンジョンが首投げへ。しかしグラウンドでザンボアンガがバックに回る。ザンボアンガはバックマウントからパンチで削りながらRNCを狙う。グホンジョンの体を伸ばし、さらに四の字フックで固めたザンボアンガが削り続ける。右腕をグホンジョンの首に回すも、凌ぐグホンジョン。ザンボアンガは左腕に切り替えて絞り上げるが、ここはグホンジョンがラウンド終了まで耐えた。

2R、グホンジョンがガードを固めて距離を詰める。ザンボアンガがワンツーで下がらせた。グホンジョンはザンボアンガの左ジャブに右を被せ、さらにザンボアンガのローにも右を合わせた。しかしザンボアンガがグホンジョンのローに右ストレートを合わせて顔面を跳ね上げる。左ジャブ、右ストレートをボディに集め始めたザンボアンガ。グホンジョンも距離を詰めて左右のパンチを振るうがクリーンヒットはない。強引に組みつくグホンジョンだが、ザンボアンガに振り払われてしまう。

ザンボアンガはコツコツと右ストレートをグホンジョンの顔面に当てる。左右ストレートを上下に散らすザンボアンガに対し、グランジャンも距離を詰め切ることができない。サークリングから左ジャブでコントロールするザンボアンガは、グホンジョンのダブルレッグを切った。ケージ中央でザンボアンガの右ミドルをキャッチしたグホンジョンだが、グラウンドに持ち込むことはできず。なおも距離を詰めてくるグホンジョンに、ザンボアンガが左ジャブを突き続けた。

最終回、ザンボアンガの左ジャブに対してグホンジョンも左の突き合いを挑む。ザンボアンガも左ジャブから左右のボディを当て、右ストレートから右ローへ。ショートの連打から離れてアウトボクシングを展開するザンボアンガ。グホンジョンに右ミドルハイを打ち込んで下がる。グホンジョンもローを繰り出すが、グホンジョンの動きを止めることができない。ザンボアンガの右が幾度もグホンジョンの顔面を捉える。残り2分でグホンジョンが組みつき、ボディロックでケージに押し込むも、すぐにザンボアンガが切り返して離れた。左ジャブと右ローでグホンジョンを中に入れさせないザンボアンガは、そのままグホンジョンに組ませることなく試合終了のゴングを聞いた。

負傷欠場のスタンプの代役として出場したグホンジョンに対し、左ジャブからボディにパンチを集めるなど試合をコントロールしたザンボアンガが判定勝ちを収めた。次の相手はハム・ソヒか、あるいは澤田千優か。


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ONE167:第5試合・デニス・ザンボアンガ vs. ノエル・グランジャン

女子アトム級。サンボアンガ2位。

フィリピンのサンボアンガは当初スタンプ・フェアテックスの王座に挑戦予定だったが、スタンプが膝の負傷で欠場。ノンタイトル戦に。ONE5勝2敗で、負けた相手はいずれもハム・ソヒ。初戦は判定負けしたがサンボアンガが勝っていたという声も大きく、ダイレクトリマッチが組まれている(再戦も判定負け)。V.V Meiにも勝利している。27歳。

代役出場のグランジャンは先月澤田に判定負けしたばかり。澤田戦はテイクダウンされるとリカバリーできないまま、3RにマウントからのパウンドラッシュでほぼKOという状況に追い込まれたが、ハーブ・ディーンの遅いストップに救われて判定に持ち込んでいる。その前の試合では、第2試合で平田と対戦したビクトリア・ソウザに判定勝ちしていてONE2勝2敗。バックボーンは柔道。28歳。

ジャブを出していくサンボアンガ。ワンツー。リーチに劣るグランジャンはパンチが届かない。大外刈りでテイクダウンを狙ったグランジャン。バランスを崩したザンボアンガだが離れた。組んだザンボアンガを首投げで投げたグランジャン。が、袈裟固めに捕らえられた体勢から両足をフックし、首を抜いてバックマウントに。バックから殴るザンボアンガ。四の字バックに。チョークを狙う。ローリングして凌ぐグランジャン。足でグランジャンの右腕を巻き込んでロックしてチョーク!しかし喉元に入っておらずゴング。

2R。またジャブを入れていくザンボアンガ。グランジャンも出るが、ザンボアンガのパンチを貰う。ジャブ、ボディを入れるザンボアンガ。グランジャンも前に出てパンチを打ち込むが、ザンボアンガ距離を取る。組んでまた投げを狙ったグランジャンだがザンボアンガ離れる。ワンツーを打ち込んでいくザンボアンガ。グランジャンもパンチを返すが空振り。詰めていくグランジャンだが、ザンボアンガがジャブ・右ストレートを当てていく。グランジャンタックルに行くが組めず。また組みからの投げを狙ったグランジャンだが、投げに入る前に引き剥がすザンボアンガ。ゴング。

3R。ザンボアンガがジャブを入れるが、グランジャンのジャブはバックステップでかわされる。右ボディから左ストレートを入れるザンボアンガ。徹底して組ませないザンボアンガ。ワンツー、ハイ。前に出るグランジャンだが、ザンボアンガはサークリングで距離を取ると、出てきたグランジャンにパンチを当てていく。ワンツー。ボディ・顔面と打ち分ける。出るところにジャブをもらってスリップダウンしたグランジャン。残り2分でグランジャン組み付くことに成功。ケージに押し込む。が、すぐに入れ替えて離れたザンボアンガ。またパンチを入れていく。グランジャンが組みに行くがクラッチさせずに離れるザンボアンガ。ジャブ、ワンツーを入れ続けるザンボアンガ。グランジャン出ていくが、ザンボアンガが下がりながらジャブを入れ続ける。タイムアップ。

判定3-0でザンボアンガ勝利。

距離を取りジャブを入れ続けた。グランジャンはジリ貧のまま打開できなかった。

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【ONE167】ヴィクトリア・ソウザとの再起戦へ、平田樹「自分1人で戦っているのでなくーー」

【写真】Are You Ready? ――と書かれているTシャツ。平田は仲間たちとともに準備してきた(C)MMAPLANET

8日(土・現地時間)、タイはバンコクのインパクト・アリーナで開催されるONE167で平田樹が、1月日本大会=三浦彩佳戦の敗北から再起を期してヴィクトリア・ソウザと対戦する。
Text by Manabu Takashima

その他に例のないMMAデビューとステップアップ方法で、浸透度は抜群の平田だったが、MMAファイターとしてハッキリと壁に当たっている。そこを打開すべき、和術慧舟會HEARTSで練習をするようになった平田は、「今は目立ちたくない」と数字や知名度でなく純粋は結果を求めるようになった。自分を支えてくれる人達への想いを乗せて、サークルケージに戻る平田樹の想いとは。


──1月の三浦彩佳戦以来の試合が、約10日後に迫ってきました(※取材は5月28日に行われた)。この試合が決まったのは、いつ頃ですか。

「試合自体は日本大会の直後、次の日かに3月のカタール大会でオファーがあったんです」

――カタール大会は山北渓人選手も出場していましたが、敗戦直後にオファーがあったのですね。

「日本人選手が毎大会出場するという事情があるのかもしれないですけど、選手としてはありがたいです。自分としても試合をどんどんやっていきたいと思っていますし。ただ3月がまとまらず、4月に希望を出していたのですが、対戦相手のことなんかもあって、結果6月になった形です」

――ヴィクトリア・ソウザはONEで1勝2敗、故ヴィクトリア・リーとノエル・グホンジョンに負けている選手です。

「勝たないといけない相手ですよね。内容的にも強さを見せないといけない。自分にプレッシャーを掛ける意味でも、ここで負けているようじゃ『終わりじゃね』って思っています」

――逆をいえば知名度とプッシュされるという部分で、底上げされてきたキャリアが本来の位置に戻ったように感じます。

「そうですね、私は飛び級中の飛び級で。他にはないケースだったと思っています。ただ、だからといってこの相手のレベルで戦っていて良いという風には捉えていないです。

組みも打撃も気が強くて、振ってくる相手で。気持ちが切れれば、持っていかれる相手だとしても。自分の欲次第、勝ちたいという欲求がないと。なんとしてでも勝たないといけない。振り返ると……『どうやって勝とう』とか考えると、インターバル中でも気持ちが切れるようなところがあるので。

試合になると、そういう練習では出ない部分が出てくることがあって」

――相手があってのことで、思い通りにならない部分で競い合うのが格闘技ですし。

「そこは練習中にも考えるようになりました。疲れた時に、いく。大沢(ケンジ)さんからも『ここ、取られているぞ。行けッ!!』って言われています。絶対に取らないといけないラウンドだっていう気持ちのまま行け、って。それが出来たのって、ナイリン・クローリー戦かと思います」

――個人的に調子に乗りまくれたクローリー戦より、アリス・アンダーソン戦。ダウンを乗り越えた試合かと。

「あぁ、そっかぁ。でも、もう2年も前なんですよ。試合数も少ないけど、その後の試合ではスタートも遅いし、やり返す気持ちも出ていない。やってやれっていう……気持ちが入って戦えていないんですよ。負けを経験して……『このままだと負ける』って考えちゃうと、頭ばっかりで体が動かなくなっていました。

簡単じゃないことは分かっているんですけど、自分で思っている以上に動けない。立ち位置としても難しくなっていることは感じています。ここからやらないといけないという人もいれば、『平田樹の名前があって、この相手か』という人もいます」

――まぁMMAPLANETは一般の人向けのサイトというつもりは一切ないのですが、直樹選手のインタビューを樹選手が触れてくれるとXのリーチ数の桁が違ってくるんですよね。あれは今さらながら驚かされています。

「アハハハハ。直樹のためになるなら、いくらでも自分の名前は使います。でも、数字で評価されてもって……思うようになりました。私自身、勝っている間は数字とか知名度って考えていなかったです。でも勝っていないと、そこがあって良いのかって考えるようになってきて。それで良い人もいるんだろうけど、自分的はもう目立ちたくなくなってきました。

今は直樹の陰に隠れている感じで。何か発信していこうとも思えないですし。だから、試合に勝たないと。自信がないのに、そういうことはできないです。名前が売れているのに、結果がついていないのは格好悪い。試合内容も微妙だし、自信を持って自分が格闘家だと発信できない。そういう自信って、勝たないと補えないと思っています」

――そうなると結果もそうですが、試合で何ができるのかということも大切になりますね。ならば、それこそ今回の試合は現状に適した対戦相手かと。

「前回の試合が終わって、ONE FFでも良いから試合をたくさんしたいと伝えていて。ここで名前のある相手と戦いたいなんて思っていなかったですし。そういう状況で組まれた試合だし、とにかくこういう試合を積み重ねていきたいと思っています。直樹なんて。1年で4試合もしていて。アイツは連勝していて、ちょっと自分にもイラついています(笑)。

こういう試合で勝って行って、また名前のある選手、強い選手とやりたいと言えるようになりたいです。だからこそ今回の試合は、自分の精一杯をぶつけます」

――そもそも平田樹という選手は突然、スッとMMA界からいなくなるかもと思い続けてきました。でも、結局のところずっと残っている。

「辞めるのは簡単なことです。両親も『辞めたいなら、続けなくて良い』と言っていたので。だからハム・ソヒ戦のあとは、カフェをやりたいなとか思ったこともありました」

――まぁご両親としては、子供の意思を尊重する。見返りを求めないのが親なので、そう言いますよ。でも、本音は諦めるな。やり始めたことはとことんやれという想いもあったかと。それはなんのためでなく、平田樹という人間のために。

「柔道の時も、同じでした。で、自分はきっぱりと辞めて格闘技を始めた。あの時も『辞めるな』って言わないんだとは思いました。まぁ辞めるなといっても、辞めるんだし……。

でも、そうですね……『辞めて良い』って言っていても、絶対に辞めるなと思っていたんだろうなと……そういう気がします。特に母親の方は。私が負けて、一番悔しいのはママだと……。絶対、続けろとは言わないけど……。本当に親って、ありがたいなって……」

――頑張ってほしくても頑張れってあまり言わないのは、頑張らなくても付き合うのはご両親だけだからで。

母のことを話平田の目に涙がーー(C)MMAPLANET

「負けて、誰よりも悔しそうにしているのが両親で。勝った時に一番うれしそうなのが、やっぱり両親で……。絶対に次は喜んで欲しい。負けて支えてくれる人が、悔しそうにしていて……次の試合は絶対に勝って、皆の喜ぶ顔が見たいです」

――そのために次の試合で、出したい自分は?

「ここ(HEARTS)で練習してきたことを出したいです。さっきも言ったように思い通りになっていないときに、どう戦うか。大沢さんの声を信じて、戦います。1月の時と違って、大沢さんのアドバイスに反応できるようになっているはずです。ここでやっていると、自分1人で戦っているのでなく、頼ることができる人がいるって思えるんです。

皆を信じて練習して、大沢さんを信じて戦えます。勝ちたい欲と気持ち。泥臭くて、汚くても良いからとにかく勝ちたいです」

■放送予定
6月8日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

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【ONE167】ノエル・グホンジョン戦へ、デニス・ザンボアンガ「ここで勝って、次は暫定世界戦」

【写真】ザンボアンガにとっても昨年4月のジュリー・メザバルバ以来の試合となる (C)MMAPLANET

8日(土・現地時間)、タイはバンコクのインパクト・アリーナで開催されるONE167でデニス・ザンボアンガがノエル・グホンジョンと戦う。
Text by Manabu Takashima

当初、同大会でサンボアンガはONE世界女子アトム級王者スタンプ・フェアテックスに挑戦予定だったが、スタンプのヒザの負傷で世界挑戦はお預けとなった。そもそも両者の世界戦は一度、3月のカタール大会で組まれていたが、リスケされていた。

延期と負傷、結果的に世界戦の機会を失したザンボアンガは、5月のFN大会で澤田千優に敗れたグホンジョンとサークルケージで相対することとなった。ザンボアンガはかつての練習仲間を決して軽視しないと言いつつも、20分弱のインタビューの間に「ここで勝って、次は暫定世界戦」という言葉を繰り返した。そして──その相手に澤田の名前を挙げていた。


──デニス、スタンプではなくノエルと2週間後に戦うことになりました。

「とにかくスタンプとの世界戦が流れたことは、悲しかったわ。でもONEチャンピオンシップが、代役の選手を探して試合機会を創ってくれたことには感謝している。ここまで試合に向けて積んできたトレーニングを無駄にしたくなかったから」

──スタンプとの世界戦は3月のカタール大会でも組まれていたものが今大会にスライドされていたので、2度に渡りキャンセルされたことになります。

「3月の試合が延期になった理由はハッキリと聞かされていなかったけど、とにかくバンコクで試合を組みたかったんだと思っていたの。そっちの方が盛り上がるのは間違いないので」

──そのスタンプとの試合が行われる前に、彼女が9月の米国大会でストロー級世界王座に挑戦することが発表されていました。あの発表には、気持ちがざらつくことはなかったですか。

「スタンプはスーパースターだから、そこは理解しているわ。まぁ、私の立ち位置はそういうことだから(笑)」

──理解しているではなく、理解しないといけないということでしょうか(笑)。

「まぁ、そういうことね(笑)。ただ、私の試合がなくなったわけでもなかったし、アトム級王座を狙う位置にいたことは変わりないから」

──結果、スタンプの負傷より、ノエル・グホンジョンと戦うことになりました。ただノエルは5月4日に澤田千優選手に負けたばかりです。

「他の相手……トップファイターは、ショートノーティスで試合を受けなかったはず。私もできれば暫定王座が掛った試合がしたかったけど、それは難しいとは分かっていたわ」

──この短期間だとタイ在住の選手に限られてきますしね。

「そう、本当にその通り(笑)。だから代役を見つけること自体が困難だったはず。そういうことだから、今回の試合に勝てば次は暫定王座決定戦を戦いたいわ」

──そのうえでノエルの印象を教えてください。

「彼女とは以前、フェアテックスで一緒に練習していたの。寝技がとても強くて、スタンドもできる選手よ。私はどの試合でも自分を信じて、自信を持って戦っているけど、自信過剰にならないようにしているの。

ファイトは何が起こるか分からないし、とにかく勝利を手にすることに集中しているわ。フィニッシュしたいけど、何よりも取りこぼしの無いように戦うことが大切で。そうすることで、次の試合で暫定王座を掛けて戦うことができるようになるはずだから」

──いずれにせよ、デニス自身も1年2カ月振りの試合になります。

「前回の試合後から、ノンストップで練習をしてきたから私のMMAは凄く成長しているわ。打撃もそうだし、柔術もそう。特に今年の1月から常に、スタンプ戦を想定して自分を追い込み、高めてきたから」

──今回の試合に向けての練習内容は?

「所属しているT-REXジムで、MMAは兄のドラックスと。打撃はフィアンセのフリッツ・ビアグタンと練習をしてきた。フリッツはWBCムエタイのフィリピン王者でONE FFで2勝1敗(2019年4月にRIZINで那須川天心に敗れている)、彼のおかげで打撃は本当に上達したわ。

柔術は出稽古をしていて……フィリピンも黒帯の柔術家が増えて国全体でグラップリングのレベルが上がっていると思う。グラップリング自体もそうだし、MMAファイターの組み技のスキルも随分と進歩しているわ。私も何人かの黒帯に協力してもらっているから、柔術も自信を持って成長したと断言できるわ。

今もチーム・ラカイやライオン・ネイションMMAというバギオのチームがフィリピンをリードしているけど、マニラの選手たちだって力をつけて、世界の舞台に出て行けるようになっている。そういうなかで、私は1日に2度の練習を続けてきたの。

練習をしないのは教会にお祈りにいく、日曜日だけね。日曜日は心身ともに休息日にしているわ」

──先ほどから次は暫定王座で戦いという発言が聞かれています。その相手は誰が相応しいと考えていますか。

「スタンプのリカバリーには時間が掛りそうだから、暫定タイトル戦を戦いたくて。相手はトップファイターなら、誰でも構わないわ。対戦相手は選ばない。ONEの選択に従うだけで。確かなことは、誰だろうがベルトを巻く準備はできているっていうことね(笑)」

──ハム・ソヒと3度目の対戦は希望しない?

「名前を挙げるのではなく、相応しい相手は1位の選手と3位の選手よ」

──つまりデニスは現在ランク2位で。1位はハム・ソヒ、3位は澤田千優選手ですね。もう澤田選手はタイトルが射程圏内に入っていることが裏付けられるデニスの意見です。

「彼女は十分にトップファイターでしょ。前回のノエルとの試合を見てもそう。さっきも言ったけど、私はノエルと一緒に練習していた時期があるから、その実力を理解している。ノエルは実力者よ。そのノエルにしっかりと勝っているサワダの力がどれほどなのか、私には分かるから。

しかもランキングも3位だし、暫定タイトル戦を戦う資格を十分に持っているわ」

──アトム級でも小さな澤田選手ですが、それだけデニスも認めているのですね。

「リング上の彼女を見ていると、小さいなんて全然思わないわ。本当に彼女は小さいの?」

──ONE女子アトム級に合わせて、体を創っているはずです。

「でも、凄く強いじゃない? 実際にテイクダウンからグラップリングでノエルを圧倒しているわけだし」

──では、なおさら今回の試合で澤田選手に負けないパフォーマンスが必要になってきますね。

「私はノエルのグラップリングの強さを認めているし、そのノエルをドミネイトしたサワダの強さも認めているわ。でも、私はチャンピオンになるために戦っていて。今回の試合でフィニッシュすれば、ベルトが懸かった試合がまた組まれるはず。だからこそノエルを殴って、組み伏せて、フィニッシュするわ」

──デニス、今日はありがとうございました。最後に日本のファンに一言お願いします。

「まず、最初にスポンサーの皆にお礼を言わせてもらっても良い? この試合の機会を得ることができたのも、彼らのサポートがあってのことだから。そして、もし日本に私のことを応援してくれる人がいるなら、ありがとうと伝えたいわ」

■放送予定
6月8日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

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【ONE FN22】本戦2戦目、グホンジョン戦1カ月前に澤田千優が話していたこと「油断せず、フィニッシュ」

【写真】収録は3週間前、澤田の打撃は伸びしろばかりだが、その伸びが期待される打撃を使うことが絶対でないのがMMAの面白さ(C)SHOJIRO KAMEIKE

3日(金・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FN22で、澤田千優がノエル・グホンジョンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

今年に入りONE本戦契約を得た澤田は、3月にONEアトム級5位のジヒン・ラズワンを判定で下した。前日計量をクリアできず、ハイドレーションテストもクリアできなかったなかで迎えたラズワン戦。澤田以上に体重をオーバーしていたラズワンに勝利した澤田は、その戦いの中で何を得たのか。改めてラズワン戦を振り返るとともに、グホンジョン対策も語ってくれた。


――1カ月前の試合になりますが(※取材は4月8日に行われた)、ラズワン戦の勝利おめでとうございます。

「ありがとうございます!」

――ONE出場は約1年振り、本戦契約の初戦となりました。改めて感想を教えてください。

「当然のことではありますが、ラズワン選手は今まで戦ってきた相手よりもパワーがありましたし、レベルも高かったです。これからもONEでレベルの高い相手と戦えることはワクワクしています。ランク5位のラズワン選手があれだけ強いのであれば、その上にいるハム・ソヒ選手やチャンピオンのスタンプ選手は、もっともっと高いレベルにいる。私もそのレベルの選手になれるように頑張らなきゃ、って思いました」

――勝利は勝利ですが、試合前の計量とハイドレーションテストはクリアできませんでした。どのような状況だったのでしょうか。

「やはりハイドレーションテストで難しい面はありました。今回の要因としては、提出の際に尿が出なかったことです。体重は予備計量でクリアしているかどうかは分かりますよね。でもハイドレーションテストの尿は……数値的なものは分からないので、クリアできるものかどうか色で判断していたんです。『今のは濃かったかなぁ』と考えたりしていると――」

――結果、提出のタイミングで尿が出なくなってしまったと。澤田選手がそのような状態にあるなか、ラズワンはハイドレーションテストをクリアしたものの、体重は2キロオーバーでした。

「相手のほうが先に計量を終えていて、ハイドレーションテストはクリアしていたから、体重を落とすのは諦めたのか……。私はクリアするために3時間ぐらい計量会場にいたのですが、ラズワン選手はもう戻ってきませんでした。

ただ、私も計量オーバーしているので、試合を拒否することはできなかったです。どちらもオーバーしているから平等である、という捉え方でした。さらにONEのルールではハイドレーションテストが優先されるので、あとはキャッチウェイトで戦うしかなくて」

――計量オーバー、ハイドレーションテストの失敗は試合に影響を及ぼしましたか。

「コンディションも良く、作戦を変えることはなかったです。ただメンタル面については……。小さい頃から体重に関してはシビアに考えていて、今回は『やってはいけないことをやってしまった』と考えました」

――……。

「でもセコンドの良太郎さんや松嶋こよみさんから『ここで泣いていても仕方ない。あとは勝つしかない。勝って状況を変えよう』と言われて、気持ちを切り替えることができました」

――確かに試合が成立すれば、あとは戦うしかありません。その点は海外の選手はハッキリしているように思います。

「あぁ、そうですよね。『何が悪いの?』というぐらいの感じの選手もいますし」

――試合では1Rに攻め急いでいる印象を受けました。それは計量オーバーが何か関係あったのでしょうか。

「計量オーバー云々ではなく、私の場合はよくあることなんですよね。もちろん良いことではないですけど(苦笑)。突っ込みすぎちゃったり、良いポジションを取りたいという気持ちが出すぎて、体が前のめりになってしまう。結果、三角に入られたりとか。

でも視野が狭くなることはなく、セコンドの声も全て聞くことはできていました。だから自分の中では冷静に戦うことはできていたんです。2R、3Rと進むにつれて落ち着きは出てきたと思います。でも視ている側からすれば、ヒヤヒヤしてしまう内容になりましたよね」

――2Rから何か変わったというのは、1R終了後のインターバルでセコンドからどのような声を掛けられたのでしょうか。

「まずスタンドの攻防は悪くない。だから安心して相手の動きを見ながら、ミットで練習したとおりにフェイントをかけて、タイミングが合えばテイクダウンに行け――という指示でした。そう言われて『いつも練習でやっていることが通用する相手なんだ』と思うことができて、私もいつもどおりの試合運びができたのかなって思います」

――ラズワンの打撃をかわしたり、相手に打撃を出させないようにしてテイクダウンに入る。それがチーム・アカツキのミット練習でやってきたことの成果だったのでしょうか。

「その成果が出た――と言っていいのでしょうか。あの試合内容であれば」

――そう言える試合内容だったと思います。

「ありがとうございます。しっかりとスタンドの攻防をしつつ、自分の良いところを出せたのは良かったですね。それが1Rだけでなく2R、3Rも続けることができましたし」

――一方で、ONE本戦契約の初戦として一本勝ちできず悔しいのか。あるいは勝つことができてホッとしているのか、どちらでしょうか。

「フィニッシュはしたかったです。でも相手のレベルが高いことは分かっていたし、まずは勝たないといけないっていう気持ちのほうが大きくて。もちろんフィニッシュして、目立つ試合をしなきゃいけなかったとは思いますが、まずは勝てたこと――しかも完封できたので良かったとは思っています。ファイターとしては完封したうえでフィニッシュすると、高望みしないといけないんでしょうけど(苦笑)。ただ、何より勝てて安心しました」

――前回の試合から2カ月のスパンでオファーが来たということは、ONEから評価してもらえているとのではないでしょうか。

「評価してもらえていると嬉しいです。特に前回はランキングに入っている選手に勝ったので、『サワダってどんな選手なんだ!?』と気になってくれているんじゃないかという手応えもあります。ラズワン戦の直後に、会場の廊下でマッチメイカーの方とすれ違って。その時に『おめでとう! またすぐ試合できるかい?』と訊かれたんです」

――おぉっ!? それは凄いですね。

「その時点では即答できなかったんですけど、帰国してからONEジャパン経由で正式なオファーが届いて、今回の試合が決まりました。やっぱり勝っただけじゃなく、すぐ次のオファーが来たことも安心できた理由でしたね」

――ラズワン戦と同日にグホンジョンはヴィクトリア・ソウザに判定勝ちを収めています。ONEとしても同日に同じ階級の試合で勝った者同士の試合は組みやすかったでしょうね。

「そのほうが選手側もそうですし、観ている人にとっても分かりやすいですよね。次の試合が想定しやすくて」

――ご自身の試合前に、グホンジョンに対して「勝てば次はこの選手かなぁ」と意識しましたか。

「絶対にこの選手と対戦するだろうとは思っていなかったです。でも体の大きさや動きも近い部分があって。控室も同じだったのでグホンジョン選手を見ながら『やっぱりラズワン選手は大きいなぁ』と考えていました(笑)」

――アハハハ。確かに澤田選手、グホンジョン、そしてソウザはフレームも近かったですね。ただただラズワンがONEアトム級の中では大きすぎるという。

「グホンジョン選手の試合を視て、MMAファイターとして全てできるというよりは柔道ベースで腰が重く、一発一発のパンチに体重が乗っていると思いました。一発もらったら危ないなという印象です。足さばきや組みついた時の投げも無意識でやっているように感じますね。あとはスイッチせずに自分の構えを貫きながら前に出てくるタイプなので、そこは警戒しつつ、私も相手の得意な部分に付き合わず戦いたいです」

――グホンジョンの特徴として相手がテイクダウンに来た際、自身がどんな体勢でもカウンターで投げてきます。今まであのようなタイプはいなかったのではないですか。

「今までは相手が投げのムーブに入ったとしても、その前に私が組みきっているからテイクダウンできていました。グホンジョン選手は投げの体勢に入るまでのスピードが速いので、警戒しないといけないですね。特に相手が投げの体勢に入れないよう、私から動いていきたいです。

あと、たとえば私の体が浮いてしまっていると、相手は投げやすくなってしまうじゃないですか。そこは気をつけて丁寧に倒していきたい。それとMMAなので、相手の意識を投げ以外に散らすことができるような打撃を出していきます」

――なるほど。では最後に、次のグホンジョン戦への意気込みをお願いします。

「2戦目で、まだまだ世界に強い人はたくさんいます。油断せず、フィニッシュして『この選手の試合を見たい』という勝ち方をして日本に帰ってきたいです」

■放送予定
5月4日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

■ ONE22対戦カード

<ONEムエタイ女子世界ストロー級選手間試合/3分5R>
[王者]スミラ・サンデル(スウェーデン)
[暫定王者] ナタリア・ディアチコワ(ロシア)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
アクバル・アブデュラエフ(キルギス)
ハリル・アミール(トルコ)

<ムエタイ・ライト級/3分3R>
シンサムット・クリンミー(タイ)
ドミトリー・メンシコフ(ロシア)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
モーリス・アベビ(スイス)
ジャン・リーポン(中国)

<キックボクシング・バンタム級/3分3R>
秋元皓貴(日本)
ウェイ・ルイ(中国)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
リース・マクラーレン(豪州)
フー・ヤン(中国)

<キック・ライト級/3分3R>
ルンラーウィー・シッソンピーノン(タイ)
ボグダン・シュマロフ(ブルガリア)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
澤田千優(日本)
ノエル・グホンジョン(フランス)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
トンプーンPK・センチャイ(タイ)
ザガリア・ジャマリ(モロッコ)

<サブミッショングラップリング132ポンド契約/10分1R>
市川奈々美(日本)
ビアンカ・バシリオ(タイ)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ショーン・クリマコ(米国)
ホシュエ・クルス(メキシコ)

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【Special】J-MMA2023─2024、三浦彩佳「国内にはもっと強い女子ファイターがたくさんいますから」

【写真】三浦にここまで言わせる──やはり、凄まじいマッチアップだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

2023年が終わり、新たな1年が始まるなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、始まったばかりの1年について話してもらった。
Text by Shojiro Kameike

J-MMA2023-2024、第十三弾は28日のONE日本大会で平田樹戦に臨む三浦彩佳に話を訊いた。昨年4月のモン・ボー戦で2年6カ月振りとなる勝利を挙げた三浦は、その2カ月後にONEアトム級で平田と対戦することに。「山本アーセンの元カノ&今カノ対決」という煽り、ONEストロー級で戦い続けてきた三浦がアトム級で戦う現実——複雑な気持ちを吐露した。それでも三浦は、前を向いて戦う。シャオ・ヂィンナンとの再戦を目指して。

■2023年三浦彩佳戦績

2月25日 ONE FN07
●0-3 ダニエル・ケリー(米国)※サブミッショングラップリング戦

11月3日 ONE FN16
○1R2分09秒 by スカーフホールド・アメリカーナ モン・ボー(中国)


――改めて2023年は、三浦選手にとってどのような1年でしたか。少なくとも2023年より、2024年は良い気持ちで迎えることができたのではないでしょうか。

「う~ん……」

――えっ、意外と暗いトーンですね。

「ギリギリですね。ギリギリ良い気持ちで2024年を迎えられたとは思います。MMAを1試合戦って、勝ててホッとしました」

――平田戦のオファーが届いたのは、モン・ボー戦の直後だったのですか。

「あの時はまだ『話があった』というぐらいで、私としてはシャオ・ヂィンナン戦があると思っていました。シャオ・ヂィンナン戦と平田戦っていうお話があり、正式なオファーは平田戦だったので『何でかなぁ?』と……」

――その部分で複雑な気持ちのまま新年を迎えたのですね。

「そうですね。1月末が試合なので、年末年始も落ち着いて休むことはできませんし」

――三浦選手にとっても予想外すぎたマッチメイクだったのでしょうか。

「一番意外だったのは、アトム級での試合という点です。以前から言っていたとおり、私はストロー級でシャオ・ヂィンナンと再戦するのが目標で。それが平田選手とアトム級で対戦する、というのは……ビックリしました」

――そのオファーを断るという選択肢はなかったのですか。

「……ここで断ると、いつ次の試合があるか分からないので」

――どちらかといえば平田選手との対戦よりも、アトム級でのオファーに対して合点がいかないということですか。

「私はONEストロー級の選手なのに、なぜアトム級のオファーが来るんだろうって……。自分としてはストロー級でもアトム級でも戦えます。ダニエル・ケリー戦は119ポンド契約で、期間もあったので落とすことはできました。それが1月28日にアトム級というのは――」

――前回のインタビューでもONEストロー級が自分に合っていると仰っていました。おかげで調子が出て来た、と。しかしアトム級で平田戦というのは、つまり平田選手を軸に組まれた試合ということです。

「はい。『こう来るんだぁ……』という気持ちはあります。とにかく胃が痛いですね(苦笑)」

――公式トレーラーで、三浦選手は「私がやってきたことはエンタメではない」と発言していました。山本アーセン選手の元カノ&今カノ対決という煽りも含めて、エンタメといいますか……。そこで今の三浦選手の言葉を聞いていると、この試合に対するモチベーションはどこにあるのかと気になります。

「ひとつは、すぐにONEが試合を組んでくれたことは嬉しいです。たとえ前回はモン・ボーありき、今回は平田選手ありき――であったとしても。試合は試合として、私は勝つと信じています。だからまず試合が組まれたことには感謝しています。

それとポジティブに考えるなら、『私はストロー級とアトム級、どちらでも戦えるぞ』とアピールする機会だと思うんですね。減量に関しても、アトム級というお話があった時にトレーナーさんに相談したら『絶対にアトム級の体をつくることができる。安心しろ』と言われて。その言葉を信じて、この試合は『私はいつでも何処でも戦える』とアピールできるチャンスだと考えることができるようになりました」

――ということは平田戦に向けて減量も順調なのですね。

「すごく順調に落とすことができています」

――なるほど。この試合で平田選手に勝利し、ストロー級でもアトム級でも戦えるとアピールした先に何があると思いますか。

「ストロー級でヂィンナンと再戦したいです。でも今は、とにかく与えられたことをやっていこうと考えていますね。それと平田選手は注目度が高いし、私が勝ってちゃんと……」

――ちゃんと?

「いや、ちゃんと――ではないですね。SNSで注目を集めるということが、よく分からないんですよ。TRIBEにはSNSをやっている人が少なくて(笑)」

――アハハハ。

「TRIBEには強いのに認知度が低い選手が、たくさんいると思うんです。だから私が注目度の高い平田選手に勝つことで、もっとTRIBEが認知されて、ONEという大会が日本でも注目されたら――と思っています。

私って、『没頭する力』は人より高いとトレーナーさんにも言ってもらえていて。そういうポジティブな言葉を信じて、今は試合に向けて練習しています」

――ポジティブな気持ちを持っていても、インタビュー映像で泣くのはデフォルトになっているのですか。

「アハハハ! あれって確か、カットと言われたあとに泣いているんですよ。だから『撮っているんかい!』と思って(笑)」

――三浦選手が泣くのを待っていたのかもしれません。

「そうなんでしょうねぇ(笑)」

――試合の話に戻すと……もともと階級も違いましたし、この試合のオファーが来るまで平田選手は視野に入っていなかったのですよね。

「視野には入っていなかったです。正直、平田選手にはファイターというイメージを持っていなくて。ファッションやSNSとか『今時の子』という印象でした。今回、煽り映像のインタビューでも『日本の女子MMAナンバーワンを決める』みたいなことを訊かれたんですよ。私は、全然そんなことは思っていなかったです。国内にはもっと強い女子ファイターがたくさんいますから」

――……。

「だから――何とも言えないところはあります。今回は自分自身への挑戦だと思っていて。かといって相手のことをナメているとか、そういう気持ちは一切ありません。ちゃんと集中して試合に臨む。それは今までの試合と変わらないし、これからもずっと同じです」

――対戦が決まるまで、平田選手の試合は視ていましたか。

「全部ではないけど、視ている試合もあります。でもハム・ソヒ戦は何がしたいのか分からなかったし、他の試合も――与えられている環境はすごく良いし、素質もある選手なのに『アレッ?』という感じで。いつも綺麗に戦おうとしすぎているというか。そこが皆さんも『う~ん……』と思う要因なのかもしれないですけど」

――確かに今は、デビュー当時ほどの爆発力は感じられなくなっています。

「指導者が固まっていなかったという理由もあると思うんですよ。私もいろんなところへ出稽古に行きますけど、最後は長南(亮TRIBE代表)さんが締めてくれるので。周りに厳しく言ってくれる人が多くて、ありがたい環境だなって実感しています」

――体重を落とすことはできたとしても、アトム級でもストロー級と同じ出力で戦えるかどうかという不安はありませんか。

「今もパワーは落ちていなくて、練習で男子選手を極めることがあります。だから、その点で不安はないですね。むしろ今までやってきたこと――体の使い方とか繋がってきたものもあるので。堀江(登志幸)トレーナーが、トレーニングの年間スケジュールを立ててくれているんですよ。ここまでに、これができるようになる。次は……って。階級は別として、そうやって繋がってきたものを次の試合で見せることはできるんじゃないかと思います。反対に『平田選手のほうがアトム級まで落とせるのかな?』って、よく言われますね(苦笑)」

――では対戦相手として、ファイターとしての平田選手の印象を教えてください。

「私よりも柔道の素質はあると思います。でも、どうなんですかねぇ……。勝ちにこだわる執念は、絶対に私のほうが上だと思います。私は勝てれば良い。綺麗に戦おうとは思っていないので。もし1Rでグチャグチャした展開になっても、2Rでスクランブルになったら私のほうが強いんじゃないかと考えていますね。

先ほども言いましたけど、油断はしていません。『もしかしたら、すごい武器を持っているんじゃないか』という最悪のケースまで想定して、一切の油断なく仕上げていますから」

――平田選手にとっては10カ月振りの試合になります。この10カ月の間に新しい武器を身につけている可能性はあります。

「彼女がMMAに対して本気で向き合っていた10カ月間であれば、その可能性はありますよね。本気で向き合っていたとしたら――ですよ。ただ、MMAを知っている方は分かってくれると信じています。とにかく1月の試合が無事に終わってほしい(苦笑)。いろんなことがありすぎるので、私も勝って少しゆっくりしたいです」


■視聴方法(予定)
1月28日(日・日本時間)
午後5時00分~ABEMA格闘チャンネル
午後6時30分~ABEMA PPV

■ONE165対戦カード

<ONEキックボクシング世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者] スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
[挑戦者]武尊(日本)

<ONEサブミッショングラップリング世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/12分1R>
[王者]ケイド・ルオトロ(米国)
[挑戦者] トミー・ランガカー(ノルウェー)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
青木真也(日本)
セイジ・ノースカット(米国)

<スペシャルルール187.25ポンド (※84.94キロ)契約/3分3R>
秋山成勲(日本)
ニキー・ホルツケン(オランダ)

<キック156.5ポンド(※70.99キロ)契約/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
シッティチャイ・シッソンピーノン(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
マーチン・ウェン(豪州)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
平田樹(日本)
三浦彩佳(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
若松佑弥(日本)

<キック・ヘビー級/3分3R>
ラデ・オパシッチ(セルビア)
イラジ・アジズプール(イラン)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
山北渓人(日本)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
グスタボ・バラルト(キューバ)
箕輪ひろば(日本)

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【Special】J-MMA2023─2024、平田樹「アーセン云々なんて触れないで、無意味な試合と言いたいです」

【写真】気を張っていない平田樹の表情が見られたような気がします。現状MMAトレはHEARTSのみ。グラップリングをトライフォース、ムエタイをクレインで練習しているそうだ (C)MMAPLANET

2023年が終わり、新たな1年が始まるなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、始まったばかりの1年について話してもらった。
Text by Manabu Takashima

J-MMA2023-2024、第十弾は28日(日)に東京都江東区の有明アリーナで開催されるONE165「Superlek vs Takeru」で三浦彩佳と対戦する平田樹に話を訊いた。

ファイト周辺の派手な言動と繰り返された計量失敗、彼女に対する反発は業界内から強い。それに故に練習場所を固定できず、明確なビジョンも練習に持ち込むことが困難だった平田が、自らの意志で大沢ケンジ率いるHEARTSでトレーニングを行うようになった。

ハム・ソヒ戦後に引退を真剣に──いや、それ以上に自然と考えた平田がこの場に戻ってきたのは人を殴りたいという衝動と、MMAを楽しみたいという本能だった。山本アーセンの元カノ&今カノ対決というエグすぎで専門メディアが料理できないマッチアップを消化する必要がある平田の胸中とは。

■2023年平田樹戦績

3月25日 ONE FN08
●0-3 ハム・ソヒ(韓国)


――大沢ケンジさんが2021年10月のリトゥ・フォーガット戦前(※平田が体調不良で欠場)にミット打ちを一緒にやっていた時とは全く違って、凄く熱心に練習をしていると言われていました。

「そうです。ちゃんとやっています(笑)。自分から大沢さんにお願いして」

──練習環境などで平田選手からアクションを起こすのは、過去にあまり記憶になかったです。

「初めてです。去年の10月ぐらいに日本で練習をしていくなら、大沢さんが私の試合を一番多く見てくれていると思って。実はハム・ソヒ戦が終わった後、4月に直樹がパンクラスで試合をした時に会場で大沢さんと少し話をして。あの時、私はもう引退を考えていて。それを話すと、皆が反対するなかで大沢さんが『良いんじゃない。一回辞めても良い。若いし。やりたくなったら、復活するから。一回、離れるのも良いよ』って言ってくれたのが心に残っていて。やっぱりMMAをやりたいと思った時に大沢さんに教えてほしいなってなりました」

──平田樹がカフェでカプチーノを淹れている取材をするのが、楽しみでした(笑)。正直、ハム・ソヒ戦の敗北で辞めるかもしれないなと思っていたので。

「私も、そう思っていました。両親も柔道の時はあれほど辞めるなと言っていたのに、『辞めて良いよ』という感じだったし」

──もう長い間、平田選手の表情や言動からMMAファイターをやっていて幸せなのかなという疑問がありました。で、どこかで会った時に「カフェをやりたい」と言っていたので、それで良いのではないかと。

「米国で練習して勝てなかった。色々と言われて……『だったら、もうイイよ』って。デビューの頃は勝って、皆が凄いねって言ってくれました。でも、負けると全く違う世界が見えてしまって……。子供の格闘技と一緒で勝っているから楽しくて、負けたら楽しくないから辞めたいって(苦笑)」

──ハム・ソヒに負けるのは致し方ないですけど、普段から目立っている分……何より試合前に弱い言葉を発せない分、跳ね返りも大きかったです。それもまた致し方のない、キャリアの積み方をしてきたので。

「そういうのは、自分も色々と感じていて。でも自分で選んだことだし頑張ろうって、やってきたけど、あの負けで全部が弾けた感じがしました。こんなに早く辞めたいと思う日が来るなんて、全然考えたこともなかったです。もっと長くやって『もう良いかな』っていう風になるのかと思っていたので。

ハム・ソヒ選手との試合は、本当に強さを見せつけられて。試合中もどうしたら良いのか、分からない。誰を頼って良いのかも分からない。でも戦うしかない。凄く心細くて、本当にしんどかったです。だから、もうMMAに関係のないことをやりたいって思ったんです。お母さんがパン屋さんの店長で、朝早くから真剣に働いていて。何か、格闘技以外であんな風に没頭したいと思いました。本当に辞めるモードで、練習もホントにやっていなくて」

──それでも続けようと思うようになったのは?

「やっぱり直樹の試合を見て……なんか、悔しくて。『あれっ? 何か悔しいな』ってホント思ったんです。嬉しけど、悔しい。自分の方が勝ち続けていたのに……」

──それは直樹選手が、真面目にMMAに取り組んできたからではないですか。

「そうなんですけど、なんか悔しくて。でもMMAでなくトライフォースの柔術でも良いかなかって思って、グラップリングから練習をするようになりました。そうなると、何か違うんです。極めるとかだけじゃ、何か物足りなくて。やっぱり、殴りたい。直樹の試合を見ても思ったんですよ。漬けて漬けてっていう試合をしているから、『もっと殴れよ』って。そうなった時、こうやって想う自分がいるんだから──まだできるわって。

その時に『辞めたら』と言ってくれた大沢さんに習いたいな、と。なんかハム・ソヒ戦後に休んでいる期間に色々と気付くことがありました。普通の休みじゃなかったですね。運動をする格好にもならないし、シューズも履かなかった。普通の人みたいに毎日、化粧をして。でも、気がつけばここに戻ってきて……。

直樹もそうだし、(鹿志村)仁之介もそうだけど、選手に対して皆が一つになっている。あれが凄く羨ましくて。ああいうモノが創れそうだったのに、自分で壊しちゃダメだと思うと『また、やりたい』という気持ちが大きくなりました。『勝たなきゃ』、『勝たないとダメだ』っていう気持ちになっていたのから、『戦いたい』という気持ちに戻ったというか。

もう試合に向けてというよりも楽しさを取り戻す──じゃないけど、最初は体を動かすことが楽しい、練習することが楽しいっていうところからやり直しました。以前は試合が近づくほどに楽しみが大きくなっていたのが、最近は試合が近づけば近づくほど気持ちが落ちてしまっていました。今回の試合も勝ちたいけど、やりたいことをやりたい。試合をすることが、楽しくなっています」

──まぁ楽しくないから辞めていると、それこそ先ほど話に出た子供の習い事で。辞めたいという気持ちから、戦うことを楽しみたいと思えるようになったのは平田樹が本当の意味でMMAファイターになってきたということではないのでしょうか。

「そうなんですかね(笑)。でも、やりたいことをやるって楽しいなって、練習をしていて想うようになりました。これだけ基本から教えてくれる人がいるのだから、また前に進もうと。すると、またメチャクチャ楽しくなって。試合に向けても……どうせ試合はしんどくなるから、練習を思い切り楽しんでやろうと。

MMAを続けるなら、楽しみたい。今は本当にそういうつもりです。母親も『樹は楽しんでいる時が、一番強い』って言っていて。確かに、その通りだし。楽しんでやることが一番大切で、当然しんどいこともあるけど、今は楽しいことの方が多いです」

──なるほど。そうこうしていると、ONE日本大会で三浦選手との試合が決まりました。

「最初は違う相手を聞かされていたので、『えっ?』と思いました。階級は向うが上だし、『やる意味、なくない?』って思いつつも、決まったことなんで。だから、この先のことを頭に入れての練習もたくさんやっています。次は投げとアヤカ・ロックだけ、そこだけなんで」

──皆が分かっているのに、極めてしまうのは凄くないですか。跳ね返された試合もあったのに、またそこで勝つのは驚異的ではないかと。負けてもサブミッショングラップリングでダニエラ・ケリーと戦った時に、三浦選手の組みの強さを見た想いがしました。今回の試合は、決して簡単なファイトになるとは思えないです。

「う~ん、でも……なんでアレが極まるんですかね。逆に。アレを極めることができるって、自分とは違う世界を生きている人なんだろうなって思うんです。求められているモノが、自分と違う。あそこ止まりで良いと皆は思っているわけじゃないですか」

──凄く上から目線ですね(笑)。

「だって、自分だってアレで良いならアレで貫き通したかもしれないし。でも『首投げ止めろ』、『MMAを戦え』という声があったわけで。それで、私はMMAを戦いたくなりました」

──きっと三浦選手も言われていて、それでも貫き通しているのかと。

「でも、あんまり輝いているとは思えないですね。アレしかないですからね」

──う~ん、とことん来ますね(笑)。アレしかない人のアレって、凄く強いと思わないですか。

「う~ん、でもアレが極まらないと負けるじゃないですか。ティファニー・テオと戦った時は首を抜かれて、打撃でやられて。シィォン・ヂィンナンにも組めなくて、打撃の圧でやられました」

──パンダやテオのような試合を平田選手はできる、と?

「やってみたいですね。ソレをやらないと意味がない。いつも通りの試合をして、柔道対決とかってなると一番つまらないし。このカードを組まれたなら、MMAを戦って盛り上げる。MMAをやりたい。HEARTSでやっているMMAを見せたいです」

──そんな平田樹✖三浦彩佳戦ですが、煽り方が中途半端というか。やるとなったら、この試合はアーセンの元カノ✖今カノ対決で全面的に売らないのかと。ABEMAの煽り映像に乗っかって、申し訳程度に触れてんじゃないよ──と素直に思います。

「アハハハハ」

──この下品なカードは、ここで騒ぎ立てようやとは?

「ならないですね。私はアーセン云々なんて触れないで、無意味な試合だって言いたいです」

──それを平田選手も三浦選手も言って良いと思います。ただし、この試合を盛り上げるにはそこは避けては通れない。

「そうですよね。でも、自分的には騒ぎ立てられなくて良いです!!」

──ひょっとして、怒っていませんか……。

「お互いに求めていないカードだと思うし。向うも自分とやりたいなんて思ってなかっただろうし」

──自分の進みたい道を進むために、勝たないといけない試合になったわけですね。

「まぁ、そうなんですけど……。自分的には、大沢さんとのコミュニケーションがどれだけ取れるのか。そこが楽しみです。セコンドの声を聞いて、どれだけ動けるのか。前に就いてもらった時(※2021年2月22日、中村未来戦)は、そういう風にできなかったので。そこは自分にとって試合中の課題で。そこも踏まえて、成長が感じられる試合にしたいです。

これまで気持ちでやってきた部分があったけど、それじゃあ勝てないレベルの相手になってきています。心が折れても、サポートしてくれる人がいてくれる中で戦う。だからこそ気持ちと同時に、技術面でしっかりと魅せたいです」

──三浦選手に触れられると明白に不機嫌でしたが、そうでない部分では久しぶりに平田選手の表情が明るいですね。

「そうですか。今はMMAのことを話すのが楽しいし、練習が楽しいです。一歩、踏み出せたかなって。これまで他のジムに行っても、自分は目立っていて遠慮されていたことが多いと思います」

──まぁ所属もしていないですし、本当の関係は築けないかもしれないですね。大人の関係のような感じで。

「両親も『樹が行くことで、負けさせられないという思いになって所属するのは難しいかもね』って心配をしていました。自分は自分で『強くないといけない』とか思って、気が張ってしまっていて。皆が見ている平田樹はこうでないといけない、とか。同時に私が関わることで、ジム自体がアンチの標的になってしまうことが嫌で」

──そんなことまで危惧していたのですね。

「それがHEARTSだと、皆が茶化してくれて(笑)。(吉村)天弥君とか、『で、アーセンとはどうなの?』とか言ってくるし。なんか、それが楽しくて。ボコボコにやられても、気持ちが良いから、練習時間が長いとか思わなくなりました」

──三浦選手との試合を前にしてですが、今も頂点──現状はスタンプ・フェアテックスが目標なのでしょうか。

「やるからには上を目指すというのはありますけど、まずはランクに入らないといけない。それ以上にもっと場数を踏みたいです。だから、日本の団体だったらもっと試合ができるのかなって思ったりもしました」

──それでも平田樹という選手のポジションは特別で、他の選手より恵まれているという風に思うことは?

「まぁ、知らない人は分からないことだけど……色々と経験してきているので(笑)」

──その結果の今。この試合で何を見せたいと思っていますか。

「MMAです。コーチとのコミュニケーションも含め、全体的に総合力が上がった自分を見せたいです。これまで欠けていた部分がメチャクチャあったので。その欠けていた部分が補えて来た──MMA選手らしい試合をしたいです」

──ところで、体重の方は?

「あと2.5キロです(※取材は12日に行われた)。ここにいると『お前、体重落とせよ』って、皆に言われます(笑)。そんな皆に囲まれているからこそ、今回のように無意味だと思っている試合も、あとになれば意味があるんだろうなって思えるようになりました」

■視聴方法(予定)
1月28日(日・日本時間)
午後5時00分~ABEMA格闘チャンネル
午後6時30分~ABEMA PPV

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【ONE166】初のカタール大会、重要拠点構築へ豪華カード。スタンプ×ザンボアンガが追加、タイも投入

【写真】4つ目のMMAの世界タイトル戦 in カタールが決定した(C)ONE

16日(火・現地時間)、ONEが3月1日(金・同)にカタールの計画都市ルサイルのルサイル・スポーツ・アリーナで開催されるONE166「Quatar」でONE世界女子アトム級選手権試合=王者スタンプ・フェアテックス×挑戦者デニス・ザンボアンガ、サブミッショングラップリング世界ウェルター級選手権試合=王者タイ・ルオトロ×挑戦者アイザック・ミッチェルを組むことを発表した。
Text by Manabu Takashima

ONEにとって新たな投資筋というだけでなく、カタールは欧州標準時間帯と3時間しか変わらずヨーロッパという新たなマーケット開拓への足掛かりとなる大切なイベントだ。カタールを今後、拠点とできるのか。その重要度たるや、既に発表された試合からも十分に伝わってくる。


ONE世界ミドル級選手権試合王者ライニア・デリダーが、ライトヘビー級王座を失った相手=ヘビー級&ライトヘビー級2冠王アナトリー・マレキンにリベンジに挑む――誰がどのベルトを巻いているのか、謎解きのような――王座防衛戦。またデリダ―×マレキン1と同様に2022年12月4日のフィリピン大会と立場を変えて再戦となるのが、世界ストロー級選手権試合=王者ジャレッド・ブルックス×挑戦者ジョシュア・パシオの一戦だ。

パシオは10月にマンスール・マラチェフのTD&トップコントロールに苦戦を強いられたが、ギロチンの仕掛けを評価され、リベンジ戦にこぎ着けた。対してチャンピオンはベルトを巻いてからMMAの試合は1年以上なく、8月にマイキー・ムスメシのサブミッショングラップリング世界フライ級王座にチャレンジし、腕ひしぎ腕固めに敗れて以来の実戦となる。

さらに、これも2022年8月以来の再戦となるのが世界フェザー級王座統一戦=正規王者タン・カイ×暫定王者タン・リーのタンタン対決だ。前回は王者タン・リーが、挑戦者タン・カイのカーフで削られジェネラルシップを譲ってベルトを手放した。その後、7月にリマッチが組まれていたが、王者の負傷欠場によりタン・リーは、イリャ・フレイマノフと暫定王座決定戦を戦い、内ヒールで斬って落とした。

このように既報の世界タイトル3試合のテーマが再戦なのに対し、スタンプ×ザンボアンガは初顔合わせとなる。といっても彼女たちの間に因縁がないかといえば、そうではない。彼女たちはフェアテックスジムで共に汗を流した期間のあり、元チームメイト対決となる。

さらにいえばコ2020年2月28日にV.V.Meiを破ったザンボアンガは時のチャンピオン、アンジェラ・リーへの挑戦権を獲得したが、ロナ禍によりイベントスケジュールが大幅に狂い権利を行使できないまま挑戦権を賭けたアトム級GPが開催され、そこ参戦することとなった。

そのGPで優勝したスタンプは、アンジェラにONE Xで挑戦も逆転負けを喫し、アンジェラ引退により王座決定戦が組まれると、ザンボアンガと因縁少なからずのハム・ソヒをボディで沈めベルトを手にした。

ザンボアンガはGPでハム・ソヒを相手に大論争となった判定負けをし、再戦も接戦ながら返り討ちとなった。ハム・ソヒと接戦だったザンボアンガ、仕留めたスタンプ。現状の両者には、それだけの差は存在すると思われる。が、圧倒的なフィジカルを誇るスタンプに引けを取らないザンボアンガだけに、三段論法は当てはまらない可能性もある。

アブダビでなくカタールで行われるサブミッショングラップリングの世界戦。ルオトロ・ブラザースの兄=タイに挑むミッチェルは2022年の茶帯ノーギワールド優勝しており、昨年11月のADCCアジア&オセアニア予選88キロ級を制したばかりの豪州人組技師だ。

アジア&オセアニアを無双するミッチェルが、世界の最高峰に如何に挑むか。とはいえサークルケージやリングでタイが最近戦ってきた(つまりONEでの試合)相手はロシア系やMMAファイターのデリダ―で、いわゆるADCCを頂点とした組技ヒエラルキーのトップにある選手たちではなかった。

いってみるとタイは一昨年9月のADCC世界大会でニコラス・マレガリに敗れて以来、世界の潮流にある選手と戦ってこなかったになる。ミッシェルはダナハー門下であった当時に、米国に拠点を置きWNOの人材発掘リアリティショーなどで、しっかりと経験を積んでいる。ネームバリューとタイトル歴以上の強敵であり、タイにとってADCCイヤーの幕開けに相応しい、タフな挑戦者といえよう。

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