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【ADCC2022】77キロ級 ミカ・ガルバォンの1回戦&準々決勝。柔術の神の子の神技=腕十字

【写真】レスリングの強くなり、かとって守勢ではなく攻め続けたミカ・ガルバォン。準決勝新出を決めた(C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第3 回は77キロ級──最注目、柔術の神の子ミカ・ガルバォンの1回戦と2回戦の模様をお伝えしたい。


<77キロ以下級1回戦/10分1R>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def.5-0
オリバー・タザ(カナダ)

今年初出場でムンジアルを制し、史上最年少王者となった注目のミカの相手は、オリヴァー・タザ。両者は昨年のWNO 10でも対戦しており、当時17歳だったミカはやや体力で押されつつも、要所で非凡な切り返しを見せて判定勝利している。

前回とは違いスタンドで積極的に前に出るミカ。下がりながら対処するタザは、前転しつつ足を取りに。ミカはその動きに逆らわず、マットとタザの背中の間に体を滑りこませてのバック狙い。あいかわらず流れに身を任せつつの見事な体捌きだ。が、タザは体をずらして正対するとバタフライガードに入った。

ハーフで低く体を預けるミカは、やがてヒザを入れての侵攻を狙う。タザは腕のフレームと左のニールドで防ぐ。

ボディロックをとったミカは、横に体を滑り込ませるように再びバック狙いへ。そして、それを嫌うタザの動きに反応してマウントを奪ってみせた。動き続けるタザだが、ミカは四の字ロックを入れる。それでもタザは動き続けて正対すること成功、やがて両者は座って向き合った。

加点時間開始の直前に一旦シットアップしたタザは、改めてミカの足を狙う形で下に。失点かと思いきや、ポイントは宣告されず。ミカが上からプレッシャーをかけてゆくが、タザはフレームとニーシールドで防いで距離を取り、両者は立ち上がった。スタンド戦。またしても前に出るミカに対して、タザはミカの首を弾きながら下がる。

残り2分で、お互い頭を抱え合う近い距離から飛び込んだミカは、タザの左足を抱えて立ち上がる。片足で耐えるタザだが、ミカは前にドライブしながら右足でタザの両足を刈ってテイクダウンに成功する。右手でマットをポストして距離を作ろうとするタザだが、重心の低いミカはしっかり密着し、背中をマットにつけさせた。

それでも動き続け、タザはなんとか4点ポジションへ。しかしレフェリーは3秒以上コントロールが成立したと判断し、ミカに2点を与えた。

残り1分。背中につくミカに対し、動かなくてはならないタザが腰を上げるが、瞬く間にバックに飛びつかれたフックを完成される。

0-5で劣勢のタザが首を守りながら動こうとすると、ミカはその左腕に十字狙いへ。うつ伏せで極めに来るミカに一瞬腕を伸ばされかけたタザだったが、ステップオーバーして脱出した。

上になったタザは足を捌こうとするが、脱力したミカは柔軟な両足を使って無難に対処。そのまま試合終了した。

一本勝ちこそできなかったものの、ポジショニングで完全に制圧してみせたミカの完勝。一昨年の対戦時にはまだ両者の身体の完成度に差があり、ミカは後半は下がり気味となりカウンターの切り返しに頼っていた。対して、今回は積極的に前に出て圧力でタザを下がらせた上で、反撃に来たタザの動きに合わせたカウンターを決めるなど、自ら攻撃を仕掛けて試合を有利に進めた。

17歳から18歳の身体的な成長を感じさせつつ、さらに待ちのカウンターから攻めのカウンターへと打撃選手のような進化も見せ、ミカが二回戦へと駒を進めた。

<77キロ級2回戦/10分1R>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def. 1分59秒by 腕十字
ヘナート・カヌート(ブラジル)

ミカの準決勝の相手は、2021年の世界柔術王者ヘナート・カヌート。

一回戦では打倒JTの有力候補の一人と目されていたニッキー・ライアンと対戦。レスリング力の向上で注目されていたニッキーとスタンドで互角に渡り合ったカヌートは、終盤になるにつれて勢いを加速。終盤にシングルレッグからバックフックを奪って5-0で快勝している。

一回戦と同様、首を取って前に出るミカ。30秒経過時、一瞬のアームドラッグのフェイントから小内でドライブしてカヌートを崩したミカは、立ち上がりかけたカヌートの背後に凄まじいスピードで飛び乗る。そのまま首を狙うミカだが、カヌートは頭を下げてミカを前に落としてみせた。

下になったミカは対し、ヒザを入れて侵攻を試みるカヌート。が、ミカは右足首を自らの足首に引っ掛けて浮かすと、自らの左足を絡めて外掛けを作りそのまま外ヒールへ。危険を悟り、横回転を繰り返すカヌートに付いていくミカ。場外際に来たところで、カヌートは足を引き抜くことに成功した。

中央から再開。シッティングを取るミカは、下からカヌートの右ヒザをたぐる。

それに反応したカヌートが鋭いニースライスに出ると、ミカは一瞬でファーサイドにあるカヌートの右腕に絡み、一気にその腕を伸ばす。

すぐにまたいで逃げようとしたカヌートだが、次の瞬間タップ。極められたカヌートが悔しそうに両手を打つリアクションをして離れたのを見て、はじめて何が起きたかを悟った場内から大歓声が挙がった。

試合序盤から恐るべきキレの連続攻撃を繰り出した挙句、最後はあまりの速さに、見る者には何が起きたのかすら分からせないフィニッシュ。これぞ神技──ベテランの柔術世界王者相手に圧巻の極めの速度と精度と威力を見せつけ、ミカが準決勝進出を決めた。

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ADCC2022 JT・トレス MMA MMAPLANET o PJ・パーチ YouTube   アンディ・ヴェレラ ウィリアム・タケット エスペン・マティエセン クレイグ・ジョーンズ ダンテ・リオン ダヴィ・ハモス トミー・ランガカー ニッキー・ライアン ヘナート・カヌート ロベルト・ヒメネス 堀内勇 岩本健汰

【ADCC2022】高橋サブ&堀内勇がADCCを深掘り─03─。77キロ級、トップ4の力有り?! 岩本健汰

【写真】組み合わせは次第、力はベスト4に肉薄しているか──岩本健汰(C)HUYNH NGUYEN

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第3弾は77キロのJT・トレスの対抗馬から、日本から出場する岩本健汰について話を続けてもらった。

<高橋Submission雄己&堀内勇、ADCC深堀対談Part.02はコチラから>


──おお、ニッキー・ライアンですか。

堀内 ダンテ・リオン戦でケガをして、その後にもう一度ヒザをやったようで。本当に復帰直後で、100パーセントとはいえないのでしょうが、「この2、3年レスリングを強化してきて、レスリングには本当に自信がある。ハンド・ファイティング、立ち技で相手を疲れさせることが重要だ。僕はJTと戦っても、レスリングで疲れさせることができて、もしかしたらレッスルアップもできるんじゃないか」という風に言っていました。

一方でミカの方は「JT、強いねぇ。1回戦でも決勝でも戦うのが楽しみだよぉ(笑)」っていう感じなんです(笑)。皆、それぞれがJT対策を練っているようです」

──ニッキーとJTが対戦して……ハンド・ファイティング、つまり組手争いをするということですよね。それが10分とか延長戦まで続くと思うと……。

堀内 アハハハハ。「加点でない時間帯は疲れさせる」と言っていたので、あとからチェックして最初の5分は早送りで良いかと思います(笑)。

高橋 アハハハハ。やっぱりケイドとニッキーかと思います。JTの嫌なことができそうなのは、ケイド。かき回してくれそうです。あとニッキーはB-TEAMのYouTubeとか視ていると、めちゃくちゃレスが強くなっていますね。ADCCルール的にレスリングの地力でJTに勝つこともあり得るかと。ミカ以外の対抗馬は僕もケイドとニッキーかなという感じです。

そういうなかでルーカス・レプリが欠場という残念な情報を見ました。

──レプリは実戦の感がどれだけ戻っているのかというのがあったのですが、残念です。JTのADCCの勝ち方でルールを理解して纏めてくる。それはIBJJF的フィロソフィーだという部分、実は岩本健汰選手に話題が進まないかと振りでした。

堀内 そういうことだったのですか(笑)。

──優勝、JT越えが現実的な話題かどうかは、さておいて日本からたった1人の出場選手で、B-TEAMで鍛えて本戦に挑む岩本選手に言及して欲しかったです。

高橋 う~ん……。

堀内 僕がスッと岩本選手の名前が優勝候補やそこに勝つというところで出てこなかったのは、やはり岩本選手と世界のトップの試合を見ていないからであって期待をしていないということは絶対にないです。

ツイッターを見せていただくと、B-TEAMで指導を代行したり、本当に凄いことだと思います。あのトップどころに短期間でそこまで認められて。ベン・エディにも勝っていますし。

高橋 地力は間違いなく、トップレベルに追随しています。僕も身をもって岩本さんの強さをロータスの練習で知っているけど、如何せん比較対象となるJTやミカと肌を合わせたわけでないので、肌感覚物差しでは話せない。そうなると過去の試合を見て、客観的な分析からルールに合う部分を揃えて勝敗予想をしていきたいですけど、こっちの物差しで測ろうとすると岩本さんの試合データがなかなかなくて、比べることが難しい状況です。

──となると、過去の実績で評価してしまうのが世の常ですね。それとアジア&オセニア予選の優勝者が、過去にどういうリザルトだったのかが判断材料になってしまいます。

高橋 ただB-TEAMで認められていて、組み技のレベルとしてトップグループに追随している。あとスタイル・マッチアップを考えると岩本さんはサブオンリーでなく、ADCCルール向きです。この条件でいうと、ベスト4候補のニッキーと練習して認められている。しかもニッキーに立ち技を教えていたりしています。そうなるとスタイルはADCCにバッチリ合っていて、組み技のレベルでトップに追随しているという理屈だと、ベスト4に食い込んでくる候補として挙げても良いのかもしれないとは思います。

──ベスト4候補というのは、ベスト4に入る力の持ち主ということですね。ただし、組み合わせで次第で、それこそ初戦でJT、ミカ、ケイド、ニッキーと当たることもあります。

堀内 アジア&オセアニア予選の優勝者は第1シードか第2シードに当てられる印象が強いです(苦笑)。

高橋 そこを乗り越えても、消耗するだろうし不利になってきますね。

──ではトーナメント枠を取っ払って16人の枠のなかで順位をつけるとすれば、現在の岩本選手は何位になると思われますか。

高橋 ベスト4はあると思います。

──堀内さんは?

堀内 僕は……そこは分からないです。でも、本当に期待しています。最後にエントリーされたマジット・ヘイジとかには勝って欲しいです。他の選手もトミー・ランガカー、オリヴィエ・タザ、ウィリアム・タケット、先に名前が出ていてもおかしくないロベルト・ヒメネス、ラクラン・ジャイルズ、ダヴィ・ハモス、ヘナート・カヌート、PJ・パーチ、アンディ・ヴェレラは少し落ちるかもしれないですけど。

──言うて石井慧選手にSUGで勝っていますし。

堀内 それだけ凄い選手しか、いないってことなんですよね。

高橋 俺、今挙がった中の選手だったらヴェレラ、バーチ、タケット、なんならラクランだと岩本さんが勝つかなって思っています。ただ、そこと1回戦で当たることがないんですよね。でもフラットに見たら、それぐらいの強さを岩本さんは持っていると思います。

──ならADCCだけでなく、世界のプロ・グラップリングの場に挑戦する姿も見たいですね。

高橋 ただしADCCルール向きというのは有ると思います。ルール云々でなく、組み技全体の総合力という部分では、岩本さんはトップレベルにいるんじゃないかと……いて欲しいという希望的観測はあります。触れてみて、凄く強いと思うから。岩本さんがボコボコにされたら、そのレベルってどうなんだって──となってしまうので。

堀内 ブラジル、そして米国ばかりだったころに北欧からランガカー、エスペン・マティエセン、豪州からラクランとクレイグ・ジョーンズが出てきたように、極東から岩本選手がバーンと来たら、本当に夢がありますよね。

──この場で、このメンバーと戦って、勝負論まで語ることができる日本人グラップラーが過去にいたのかということですし。

高橋 本当にそうですよね。

<この項、続く>

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【ADCC2022】高橋サブ&堀内勇がADCCを深掘り─02─。77キロ級、柔術の神の子とADCCルール王

【写真】巧さは強さなのか。そして強さは巧さにどう対抗するのか(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING& SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターで開催される2022 ADCC World Championship。2年に1度のグラップリング界最大のトーナメントが、コロナの影響で3年振りに開催される。

グラップリング界においても特殊なポイント制が用いられながら、世界最高峰の組み技の祭典を高橋Submission雄己とMMAPLANETグラップリング・ライター堀内勇氏が、独断と偏見と愛情をもって深堀り。第2弾は66キロの米国勢から、77キロ級の2人の優勝候補の対照的なスタイルについて話を続けてもらった。

<高橋Submission雄己&堀内勇、ADCC深堀対談Part.01はコチラから>


──話を蒸し返すと、ONEでトップグラップラーのグラップリングが頻繁に視られるようになるのは嬉しいのですが、それでもADCC欠場はやはり勘弁してくださいと気持ちになります。

堀内 やっぱりマイキーは個性が際立っていますからね。最近も『僕はピザとパスタしか食べない』なんてことを言いだして。朝はアサイーを食べて、毎日同じピザを食べているという話で。毎日ピザを食べて世界一になるって、ダイエット界や栄養学界の常識を覆しているんじゃないかって。

高橋 アハハハハ。

堀内 そういう彼が抜けるのは残念ですが、今大会はファブシリオ・アンドレイとかベイビーシャークなど、新しい力を知るきっかけになりますね。

──きっと勝てないという意見もありますが、そうなると『ちゃんと負けろよ』と思ってしまうんですよね。バトンタッチしてくださいって。ただ、チャトリはADCCで優勝した人間全員とサインするぐらいのつもりでいるんじゃないかと思います。マイキー不出場はさておき、他に66キロで注目すべき選手は?

高橋 ONEへの恨み節に関しては、ルールが違うから良いじゃないかなって。そりゃあ見たかったですけど、別競技といって良いほど違う。まぁサブオンリーのレフ判も納得できるルールではあるし、ソレはソレ。コレはコレじゃないでしょうか。

──じゃあRoad to ADCCに出るなよって……ってまだ恨み節が続いてしまいます。

高橋 それは……確かに(笑)。でも、やった相手がジオですからね。66キロ級で注目したい他の選手は、ゲイリー・トノンですかね。なんか期待値が高いです。66キロ級に落としてきて体が大きいから、細かい技術はさておき、立ち技も強いだろうし、極め力でいえば抜けている気がします。

あとトノンと同様に米国勢だと、コール・アバテは注目ですね。

優勝候補とまでは言えないですが、若くてそれなりに66キロ級のなかではデカい。伸びしろの多さも期待して、コールがどんなもんなのか凄く気になりますね。

堀内 僕もコール・アバテは楽しみにしています。17歳で、最年少です。

ベイビーシャークは20歳なのに子供に見えて、コール・アバテは17歳なのにやたらと落ち着いていて。態度も凄く偉そうだし(笑)。ただ戦い方は兄弟子のタイナン・ダウプラを彷彿させるというか。もの凄く圧力がある戦い方で、極めも正確でガチッと入る。力強くて楽しみです。

なんかお父さんが結構熱心で、子供の頃からやっていたようですね。そのお父さんがガレージで、『我々は過去のADCCの66キロ級の試合は全て見た』とか言っているんですよ(笑)。そうとうにお父さんが賭けているというのが伝わってきました。

高橋 僕もコールは期待で。後は敢えて名前を出すなら、イーサン・クレリンステンですかね。

堀内 トライスタージムでフィラス・ザハビの下で学び、その後はザハビの師匠格といえるジョン・ダナハーの指導を受けた選手ですね。

高橋 結局、ブラジル✖米国の様相になっていて、ADCCルールにおいてはブラジルが育んできた柔術スタイルが優る。そう思います。

──では77キロに移らせていただきます。世界中の誰もが見たい選手と、試合は別に見たくないけど勝てる選手。そのどちらが強いのか。

高橋 その通りですね(笑)。

堀内 見たい選手がミカ・ガルバォンで。この対談を万が一、あまり柔術に興味がない人が読んでくださっているとしたら、ミカ・ガルバォンの凄さってどういう風に伝えることができるんだろうって考えました。

──ありがたい限りです。

堀内 そして思い出したのが、コナー・マクレガーの言ったことだったんです。マクレガーがジョゼ・アルドを倒した時、「精度とタイミングはパワーとスピードを打ち負かす」という素晴らしい言葉を残しています。つまり精度とタイミングを持っている人間は、パワーとスピードがない。でもミカ・ガルバォンはその4つの全てを持っている。

──おおっ!!

堀内 柔術家に良く見られる、問答無用の重厚な圧力。ベースが強くて、プレスがもの凄く強い。

1度体重を掛けられたら、対戦相手はもうどうにもならない。ああいうファンダメンタルの柔術の圧力がありながら、反応速度が素晴らしく良い。相手の体に一瞬に反応して、素晴らしい体捌きで技を決めます。精度もスバ抜けて高い。それを全て持っているのは、ズルいんじゃないかっていうぐらいで(笑)。

他の人にはない。ちょっと人間離れしたモノを見ることができる。そんな喜びをミカの試合からは感じます。

──反応の良さは、道着でモダン柔術の攻防になった時も際立つようにも感じます。

堀内 タイ・ルオトロとは2度試合をして、ノーギでは競り負けて、道着だとボコボコにしている。それを見ても分かるように、ミカが柔術の神の子たる所以、強さが最も出てくるのは道着の試合ですよね。道着があって滑ることなく、相手がなかなか逃げられないので。ノーギだとタイのようにバランスの良い選手は、そこを凌ぎ切って自分のペースに持ち込むこともできないことはない。そしてノーギのなかでもサブオンリーの方が、ADCCより適しているんじゃいかと思います。

──それは?

堀内 やはり圧倒的なレスリング力があるとは、言えないので。そうなった時に、同じノーギでもADCCルールの権化のJT・トレスと戦うとどうなるのか。試合は別に見たくないと言われたJTとミカは対照的な2人なので、本当に興味深いです。

高橋 そうですね、ミカはレスだとたまに転がされている場面を見ますよね。しかも77キロ級だと身体的な圧力は他の選手より劣るような気がします。本当に堀内さんの見立て通りだと思います。

──JTの強さはともかく、彼の試合のどこを楽しめば良いでしょうか。

高橋 トーナメント全体の見方として、誰がJTを倒すのか。それで良いと思います。ディフェンディング・チャンピオンだし、何が凄いってルールへの対応力。

組み技の質量、技量は皆が高いレベルで拮抗している。そこでJTが勝ち抜き続けているのは、勝負どころを見極め、自分だけでなく相手の特性を理解している試合運びの上手さがあるからで。ここは受けて、ここでは2Pを取るという判断と実行力がともに正確です。そこが絶対王者たる所以で。

対抗馬としてスタイル的にも対照的なのが、ミカですよね。ミカを筆頭に、誰がJTを打ち破るのか。JTはちょっと可哀そうですけどヒール的な見方をしてもらうのが楽しいのではないかと思います。JTを優勝させたら、つまらなくなるぞ──みたいな(笑)。

──JT・トレス=北の湖ですね。

堀内 アハハハハ。

──ルールもポイントも違いますが、ルールを研究し抜いて、ルールに合った技を駆使してギリギリで勝つ。それってフィロソフィーとしては、完全にIBJJF柔術の強い人のソレではないでしょうか。そうなると、JTとの競り合いに負けないのは、同じフィロソフィーの持ち主──IBJJFルールに強い柔術家なのかと。JTは柔術では準決勝ぐらいで勝ち切れなくなることが多い印象がありますし。

高橋 確かに、ホントにそうですね。

堀内 FLOGRAPPLINGが77キロ級出場の各選手の練習風景を追っているカウントダウン映像を流していたのですが、そこで主要メンバーがお互いの印象を話しているんです。だいたい皆がJTに関しては、高橋選手が言ったように隙の無さ、ルールを知り尽くした戦い方だと言っています。

そのなかでケイド・ルオトロはATOSの後輩で「JTのことは尊敬している。JTは隙が無くてペースを掴むのに長けている。でも俺はそのペースを乱すことができる手が、いくつかあるんだ」って話しているんです。ケイドは凄く動きますから、JTの不動のペースを乱すよう、色々と仕掛けてくるのかと。特にスタンドが注目です。あと、もう一人はニッキー……ニッキー・ライアンでねす。

<この項、続く>

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F2W180 F2W182 MMA UFC イスラム・マカチェフ エドウィン・ナジミ ケネディ・マシエル サミール・シャントレ ジアニ・グリッポ ジェレミー・ケネディ ジャクソン・ナガイ ジョニー・タマ ダンテ・リオン ダヴィ・ハモス ニッキー・ライアン ペドロ・マリーニョ ロベルト・ヒメネス

【F2W182】ベイエリアのF2Wはハモス✖リオン、ナジミ✖ナガイ、グリッポ✖シャントレ!!!

【写真】50/50からバックとか、足関節を軸に色々な攻防が見てみたいグリッポ✖シャントレ (C)MMAPLANET

28日(土・現地時間)、カリフォルニア州バーリンゲームのハイアットリージェンシー・サンフランシスコ・エアポートでF2W182「East Bay」が開催される。

今大会のメインではADCC2015の77キロ級優勝でUFCファイターのダヴィ・ハモスが、2019年のADCCでルカス・レプリ越えを果たしたことで名前を挙げたカナディアン=ダンテ・リオンと対戦する。

とはいうものの、この両者は最近の試合では勝ち星から遠ざかっており、崖っぷち対決ともいえる。


ハモスはパンデミック後、UFCでは昨年7月にアルマン・ツァルキャンに判定負け、グラップリングでもこの7月にF2W177でペドロ・マリーニョの敗れている。さらにいえば2019年も9月にUFCでイスラム・マカチェフに敗れ、11月にはF2W132でゲーリー・トノンに下るなど、実に2年3カ月間勝利の美酒に酔っていない。

一方のリオンも対戦相手がトノン、ロベルト・ヒメネス、ニッキー・ライアンという強豪ぞろいといえども過去5戦で1勝4敗と大きく負け越してしまっている。

上ではニースライスパス、下では強固なニーシールドと攻撃力も防御力も高いリオンは、一本勝ちよりもポイント、レフ判定での勝利が多く──IBJJF柔術的な戦い方の方が、サブオンリーよりも向いているという見方もできる。

一方、ハモスもレプリから飛び込み十字、ドゥリーニョをRNCで下したこともがあったが、ADCCではテイクダウンポイントが認められる後半に強さを発揮して頂点に立ったイメージが強い。そのテイクダウン&スクランブルゲームでMMAではロシア勢に遅れを取ってしまっているが、ノーギ&サブオンリーとはいえジャッジ裁定があるF2Wだけに、テイクダウン&パスの攻防を堪能したいラモス✖リオンの一戦だ。

セミではSUGでMMAファイターのジェレミー・ケネディにOT勝利も、F2W180ではジョニー・タマのヒールに一本負けを喫したエドウィン・ナジミが、チェックマット所属のジャクソン・ナガイと対戦する。パスに強いナガイにナジミが跳びつくことができるか。ネームバリューではナジミだが、拮抗した勝負になりそうだ。

さらにサミール・シャントレ✖ジアニ・グリッポという渋い一戦も実現する。過去1勝2敗と負け越しているシャントレだが、オズワルド・ケイシーニョとのシェアを含め3度のノーギワールズ王者になっており、ノーギでの経験は上だ。

一方グリッポも本格的にノーギに進出し、先のエメラルシティ・インビテーショナルでEBI/OTながらケネディ・マシエルを決勝で下し優勝するなど、道着無しで極められない強さを持っていることはすでに証明している。

足関節とバックテイクの攻防のなかで、上下が入れ替わる。そんな攻防がタイトな距離で繰り広げられることに期待したい両者のノーギマッチだ。

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MMA ONE Road to ADCC ダンテ・リオン ニッキー・ライアン

【Road to ADCC】ADCCで頂点に立つために進化。ニッキーがレスリングアップ&パスでリオン下す

【写真】レスリングアップからリバーサル、そしてパスというのはADCCで最高のポイントアウトといえる。ここがあることで、足関節等もさらに仕掛けやすくなるだろう (C)CLAYTON JONES/ROAD TO ADCC

17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられたワンマッチ大会は、注目の対戦が並んだ。
Text by Isamu Horiuchi

Road to ADCCプレビュー第2回は、後半はポイント有りのADCCで勝てるよう進化の過程にあるニッキー・ライアンとダンテ・リオンの一戦の模様をお届けしたい。

<175ポンド契約/20分1R>
ニッキー・ライアン(米国)
Def. 5-0
ダンテ・リオン(カナダ)

前回のヒカルド・アウメイダ戦においてスタンドレスリングで勝負したニッキーは今回も積極的に前に出ては、リオンの首に手をかけていなしにゆく。

そしてダブルレッグテイクダウンを仕掛けるが、リオンががぶって体重をかけるとニッキーは頭を抜く。

約3分経過時点で、ニッキーが再び飛び込んでダブルへ。リオンは倒されながらもすぐにオモプラッタを狙うが、ニッキーが正対して防いでクローズドの中へ。

すぐに立ち上がったニッキーは、リオンのガードを開かせると、左足を狙って足を絡めて倒れ込むが、リオンは落ち着いて絡みを外しながら立ち上がった。

右ヒザを前にパスのプレッシャーをかけるリオンに対し、ニッキーは内掛けで右足に絡むと内回りを狙うが距離を取られる。

リオンが再び前にプレッシャーをかけ、ニッキーは後転するように前に崩すと、その刹那、立ち上がってダブルへ移行し見事にテイクダウンを決める。上になったニッキーは再び倒れ込んで50/50&内ヒールを狙うが、ここもリオンは距離を取って立ち上がった。

ニッキーは、スタンドレスリングとガードからのレスリングアップという、まさに最近の試合で試してきた動きでリオンと堂々勝負している。対するリオンの方も、ニッキーの足関節にしっかりと対処。両者との進化が窺える攻防だ。

もともと得意のシッティングガードを取ったニッキーに対して、リオンはヒザを入れての侵攻を試みるが、巧みな腕のフレームと左ヒザのシールドに阻まれて攻め込めない。やがて左手のフレームで距離を取ったニッキーが、瞬時にシットアップしてダブルへ。またもや見事にレッスルアップして上を取ってみせた。

三たび上になったニッキーは、今度は足を狙わずに横にパスを狙うが、リオンは対応してデラヒーバガードに。やがてリオンが距離を取って立つと、ニッキーは座り込む。加点時間帯に入る前にスイープを取らせて下になろうという考えだったのかもしれないが、自ら座ったことは明らかだったのでニッキーに引き込みのペナルティが与えられた。

試合は10分を経過して加点が開始。シッティングのニッキーは、再びリオンを前に崩してからのダブルレッグを仕掛ける。が、これまであまり抵抗せずに倒されていたリオンが踏ん張る。それでも前に出たニッキーはリオンの背中を付けさせるが、動きが止まらないうちにリオンは振りほどいて立ち、両者は場外となりブレイクが掛った。

再開後、逆にリオンが右にシングルを仕掛けるが、ニッキーは距離を取る。今度はニッキーがダブルへ。尻餅をつかされたリオンだが、ここでも勢いが止まらないうちに距離を取り、場外際で立ち上がる。

再びスタンドに戻った両者。ニッキーはまたしてもダブルに入る。深く入ってクラッチを組んだニッキーは今度はゆっくり倒して勢いを作らせず、ついに上を取ることに成功した。

倒すと同時に、ニッキーはハーフ&ボディロックの状態と取る。腰を固められたリオンは足を使って浮かそうとするが、ニッキーはすかさず右足を超えてサイドに。テイクダウンとパスガードのあまりに見事な融合を見せたニッキーが、5-0とリードした。

さらに上四方から逆側のサイドに回ったニッキーは、右腕でリオンの顔面を圧迫する。嫌がったリオンが上体を起こしたところで、すかさずバックを狙うという理詰めの攻めを見せるニッキー。対してリオンもすぐに動いて、下のリオンと上のニッキーがお互いにバックを狙い合うような格好にとなり、揃って距離を取り立ち上がった。

残り6分でスタンドに戻るが、ここで右足をひきずりはじめたニッキーは、二つ目のペナルティを承知ですぐに座り込んでシッティングガードへ。

リオンは右ヒザから侵攻を試みるが、ニッキーの強固なニーシールドと左腕のフレーム阻まれ、形を作れない。先ほどまで何度も下からのレスリングアップを決めたニッキーは、足の負傷を受けて防戦に徹している。

怪我をしてなおかつ鉄壁のガードを見せるニッキーの前に、リオンは攻撃の糸口を見出せないまま時間が過ぎてゆく。最後は足を狙って自ら倒れ込んだリオンだが、この分野の専門家のニッキーは難なく防御して試合終了。

立ち上がって勝ち名乗りを受けたニッキーは、歩くのも困難で、師ダナハーらセコンドに肩を借りて試合場を去った。

放送席でインタビューを受けたニッキーは「上になろうとして、自分のかかとが尻に食い込むような形になったんだけど、その時スプロールされて外側に異変を感じたんだ。右ヒザさ。試合内容自体はすごくハッピーだよ。前の2戦では、僕がジムでやってきたことのほんの一部しか見せられなかったけど、今回はそれが見せられた。途中で怪我してしまったのは残念だけどね。怪我してからはもうレッスルアップできないと分かったから、防御に徹して、足を狙うくらいしかなかったんだ。でもADCCルールでは、僕の新しいスタイルはすごく有効だと思う」と語った。

実際、負傷するまでは強豪リオンに凄まじい強さを見せつけたニッキー。今回の試合で見せた進化の意味は大きい。以前は完全に下派だった彼が、スタンドレスリングとレスリングアップの二つを徹底強化。引き込みがマイナスになるルールにおいてスタンドで相手と渡り合う力と、上から膠着を試みる相手への強力なカウンターの手段を手に入れたことになる。

また、途中で見せたダブルレッグとボディロックパスの融合や、パスを決めてから相手に逃げ道を作っておいてバックを狙う動き等も、きわめて理詰めの素晴らしい展開だった。何より負傷して新しい武器が使えなくなった後は、以前からの強みであるシッティングガードを用いて鉄壁の防御は見事なばかり。

もし今後も大怪我等をすることなく進化を続けるようなら、世界最強の兄ゴードン以上に完成された組技師──師のジョン・ダナハーが言うところの「スーパーグラップラー」──へと成長する可能性さえ感じさせたニッキー・ライアン。負傷が癒えた後の、この20歳の若者のさらなる戦いに目が離せない。

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MMA Road to ADCC   ウィリアム・タケット カイナン・デュアルチ ケイド・ルオトロ ジオ・マルチネス ダンテ・リオン ニッキー・ライアン マイキー・ムスメシ マテウス・ジニス ルーカス・バルボーザ ロベルト・ヒメネス

【Road to ADCC】計量終了 メインのカイナン・デュアルチ✖マテウス・ジニスの体重差は8キロ弱

【写真】Tシャツ着用では、それほど体格差は感じられないカイナンとジニス。20分の長丁場、スタミナ配分と後半のポイント加算が如何に勝負に影響をあたえるのか(C)COREY STOCKTON/FLOGRAPPLING

16日(金・現地時間)、17日(土・同)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンで開催されるRoad to ADCCの計量が行われた。

世界規模の新型コロナウィルス感染拡大を受け、開催が1年延期されたADCC世界選手権。この間の穴埋めとなるワンマッチ形式の大会は本戦20分のみで延長なし、10分が経過してからポイントが与え、引き込みのマイナスPのみ試合開始がカウントされるというルールセットとなっている。


メインの無差別級=カイナン・デュアルチ✖マテウス・ジニス、前者が7.8キロ重いが無差別級としては、極端な体重差とはなっていない。

88キロ級のケイド・ルオトロは80キロ、対するロベルト・ヒメネスは84キロでルオトロは77キロ級でも十分に戦えるだろう。

■視聴方法(予定)
7月18日(日・日本時間)、
午前9時00分~Flo Grappling

■Road to ADCC計量結果

<無差別級/20分1R>
カイナン・デュアルチ:101.2キロ
マテウス・ジニス:93.4キロ

<175ポンド契約/20分1R>
ダンテ・リオン: 175ポンド(79.37キロ)
ニッキー・ライアン: 172ポンド(78.01キロ)

<66キロ級/5分3R>
マイキー・ムスメシ:65.7キロ
ジオ・マルチネス:66.0キロ

<88キロ級/5分3R>
ウィリアム・タケット:86.4キロ
ルーカス・バルボーザ:87.9キロ

<女子60キロ以上級/5分3R>
エリザベス・クレイ:72.0キロ
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ:71.7キロ

<88キロ級/5分3R>
ケイド・ルオトロ:80.0キロ
ロベルト・ヒメネス:84.0キロ

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MIKE MMA Road to ADCC ウィリアム・タケット カイナン・デュアルチ ガブリエル・アウメイダ ジオ・マルチネス ダンテ・リオン ニッキー・ライアン マイキー・ムスメシ マテウス・ジニス ルーカス・バルボーザ ロベルト・ヒメネス

【Road to ADCC】攻撃、受け、77キロ級の行方が決まる? ニッキー・ライアン✖ダンテ・リオン

【写真】ここはADCCならではのポイント制が、勝利の鍵を握ることになるか(C) MIKE CALIMABS/WNO&SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)、テキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンにてFlograppling主催のRoad to ADCCが開催される。
Text by Isamu Horiuchi

文字通り、来年開催のADCC世界大会へ向けた今大会。ニッキー・ライアン✖ダンテ・リオンは77キロの軸となる若い力の激突だ。


先月20歳になったばかりのニッキーは、日本では今成正和や所英男から一本勝ちをしたことでも知られる。最近は増量とパワーアップに励むとともに、ジョン・ダナハー軍の代名詞でもある足関節技を封印し、自らの引き出しを増やす戦いに挑んでいる。

4月のWNO 08におけるPJバーチ戦ではシッティングからシングルレッグテイクダウンにつなげる展開を狙い続け、制圧することはできなかったものの、主導権を取り続けて勝利を手にした。続いて5月のWNO 09のガブリエル・アウメイダ戦ではトップから勝負し、ここも一本勝ちは逃したがボディロックパスやクリーンテイクダウンを決めてウィナーコールを受けている。

そんなニッキーに立ちはだかるのは、2019年のADCC世界大会77キロ級にて、競技柔術の絶対王者ルーカス・レプリを倒して世界を驚かせたカナダのダンテ・リオンだ。

注目したいのは、この一戦でのリオンの勝ち方だ。レプリの必殺のニースライスパスをシッティングガードやニーシールドで防いだリオンは、そこから一瞬でシットアップしてシングルレッグを仕掛け、そのままレプリのバックについて勝利を決定付ける4ポイントを獲得した。

つまりリオンは、ニッキーがバーチ戦で試みたシッティングガードからシングルへの移行──最近「レスリングアップ」という名称で改めて脚光を浴びているムーブ──を、世界最高のパスガード・マイスターのレプリに決めてみせたほどの使い手なのだ。自分がトップにいる時の防ぎ方や対処も当然熟知しているだろう。

また、ニッキーがアウメイダ戦で試みたスタンドレスリングの攻防もまた、リオンがもともと得意とするところだ。今年2月のF2W 174におけるマニュエル・ヒバマー戦においても、リオンは階級上の相手に何度も気迫十分のテイクダウンを仕掛け、スタンドレスリングで優勢に試合を進めた。物議を醸した判定で惜敗したものの、リオンの充実ぶりは十分に伝わった。ニッキーが現在強化を試みている分野において、リオンはもともと強い。

このことを踏まえて考えると、今回ニッキーがどのような攻防を挑むかは興味深い。選手が武器を増やすことの主な目的は、試合において相手の弱い分野で戦って勝率を上げることにある。だとするならば、今回あえてリオンが得意とする攻防を挑むのは賢い策とは言えないだろう。だが最近のニッキーが、目の前の相手に対する勝利は目指しつつも、さらにそれ以上の大きな目標を見据えて試合に臨んでいることも明らかだ。そしてこの大会の名称、”Road to ADCC”が示唆するテーマはまさにそれである。

同様の見方は、前回大会にて世界を驚かせつつも4位に終わり、次こそ優勝をと心に誓っているであろうリオンに当てはめることができる。前回の3位決定戦において、ニッキーの兄弟子ゲイリー・トノンと激闘の末外ヒールに屈したリオンは、そのトノン同様に危険な足関節の使い手であり、来年の本戦でも自分に立ちはだかる可能性の高いニッキー相手にどのような攻防を挑むのか。

本戦そのものではなく、それに向けた前哨戦であるということを念頭にこの試合の攻防を味わいたい。

■視聴方法(予定)
7月18日(日・日本時間)、
午前9時00分~Flo Grappling

■ Road to ADCC対戦カード

<無差別級/20分1R>
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
マテウス・ジニス(ブラジル)

<175ポンド契約/20分1R>
ダンテ・リオン(カナダ)
ニッキー・ライアン(米国)

<66キロ級/5分3R>
マイキー・ムスメシ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)

<88キロ級/5分3R>
ウィリアム・タケット(米国)
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)

<女子60キロ以上級/5分3R>
エリザベス・クレイ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)

<88キロ級/5分3R>
ケイド・ルオトロ(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)

<1R20分・88キロ以下契約>
ロベルト・ヒメネズ(米国)
ケイド・ルオトロ(米国)

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MMA ONE WNO10 クレイグ・ジョーンズ タイ・ルオトロ ニッキー・ライアン ルイス・パンザ

【WNO10】クレイグ・ジョーンズ✖タイ・ルオトロ。ストップ・ザ・ダナハー流足関は、ベリンボロ?!

【写真】この形にさせないこと、それがルオトロの勝利への道だ(C)MIKE CALIMBAS/WNO

18日(金・現地時間)、テキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンにてWNO 10が開催される。レビュー第2弾はクレイグ・ジョーンズ✖タイ・ルオトロの一戦を深掘りしたい。
Text by Isamu Horiuchi

4月のWNO 08で実現予定だったものの、ジョーンズの欠場によって流れた一戦が実現する。最大の焦点は、足関節技をめぐる攻防だろう。


ラクラン・ジャイルズ、ジョン・ダナハーという世界が誇る二大足関節理論家から学んだジョーンズは、2月のWNO 06でホナウド・ジュニオールを、そして5月のWNO 09では、IBJJF系の足関節師ルイス・パンザを必殺の内ヒールで秒殺。その切れ味をまざまざと見せつけて復活を遂げている。

しかし今回の相手タイ・ルオトロは、近年猛威を振るう足関節技への対策において最先端を行く選手といえる。昨年ニッキー・ライアンの足関節を素早く対処して潰し、レッグドラッグでパスを奪って完勝したタイは、WNO 08ではジョーンズの代役にして、同じく足関節技を得意とするウィリアム・タケットと対戦した際も足関節を完封している。

その方法が、上から飛び込んでのベリンボロを駆使してタケットの足関節を潰すというもの。ここからパスの連続攻撃でタケットの足を何度も超えて完勝して見せた。

注目すべきは、同日にタイの双子の兄弟のケイドもまた、ジョーンズと同門のイサン・クレリンステン相手に完勝していることだ。

タイ同様に上から飛び込んでのベリンボロでクレリンステンの足関節技を封じ込めたケイドは、さらにクレリンステンがバタフライガードから足を抱えにきたところに、逆にダースチョークを極めて完勝。この日のルオトロ兄弟は、ダナハー一門の十八番であるバタフライガードからの崩しや足関節の仕掛けに対し、きわめて完成度の高いカウンターで上を行った。

このルオトロ兄弟流の足関節対処は、体格・実績で大きく上回るジョーンズにも通用するのか。またジョーンズは、たとえ足関節を封じられても精度の高いバックテイクや強烈な三角絞め等の極め技を持ち合わせている。常にサブミッションを狙うジョーンズと、相手が疲弊するまでノンストップでパスを狙ってゆくタイの戦いは、世界最高峰、最先端のエキサイティングな攻防になることは間違いないだろう。

■視聴方法(予定)
6月19日(土・日本時間)
午前9時00分~ FloGappling

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JJ Globo Preview WNO09 ガブリエル・アウメイダ ニッキー・ライアン

【WNO09】ゴードン去りて、ニッキー躍進──となるか。ニッキー・ライアンがアウメイダ戦へ

thumbnail image【写真】1年8カ月前──66キロまで減量して試合に出ていた頃…

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JJ Globo PJ・パーチ Report WNO08 ニッキー・ライアン ブログ

【WHO08】ニッキー・ライアン、重厚さ増した組みでBJ・パーチに「なぜか」スプリット勝利

4月30日(金・現地時間)、テキサス州オースチンのJWマリオットで、限定有観客大会として開催されたWNO 08。

レビュー第4回は若手の台頭が目立つグラップリング界にあって忘れてはならないニッキー・ライアンが、10thPlanetのPJ・バーチを相手に見せた重厚な一戦の模様をお届けしたい。
Text by Isamu Horiuchi


<175ポンド/15分1R>
ニッキー・ライアン(米国)
Def. 2-1
PJ・バーチ(米国)

当初「自分はいつも下から足関節を極めて勝つから、今回はできる限りそうせずにレスリングで勝負したい」と語っていたニッキー。すぐに座ると、バーチの右足に両足を絡めて崩しながら左足を取って立ち上がり、シングルレッグ狙いに。バーチはすかさずキムラロックのグリップから後方へ投げてカウンター。その動きについていってバックを取りかけるニッキー。だがバーチもすかさずスクランブルで振りほどいて距離を取ってみせた。

再び座ったニッキー。今度はバーチの右足を取ってのシットアップを狙うが、バーチはすかさず距離をとって回避。バーチは改めて右ヒザを前に出してのパスを狙おうとするが、ニッキーがそこにすかさず足を絡めてゆくと、距離を取ることを余儀なくされる。

その後もニッキーが下から足を絡めて仕掛けてゆき、バーチがそのたびに回避する展開が続く。バーチの方はニッキーのヒザと腕のフレームに阻まれてほとんどパスを仕掛けられない。ニッキーはバーチが立つと常に足でコネクションを作って崩し続け、逆にバーチが低く攻めようとすると鉄壁のシールドとフレームで距離を取る。そして常にニッキーはバーチに正対してそのセンターを取り続けている。

途中、ニッキーが下からバーチの左腕を肩にかけて伸ばしかける場面を作るが、バーチは距離を取って回避。またニッキーは下からバーチの右ヒザを抱えて立ち上がってシングルレッグで上を取りかけるが、D1レスリングベースを持つバーチはそのたびにスクランブルに成功した。

残り時間が少なくなっていくが、バーチはニッキーのシールドとフレームを超えられない。逆にニッキーの方も下から足を取りに行くものの、バーチに早めに距離を取られていい場面を作れない状況が続くなか、試合は終了した。

ジャッジは2-1でニッキーを支持。フィニッシュに迫る場面こそ両者ともなかったものの、ニッキーが常に相手のセンターを取って試合を支配し、何度かバーチを崩して上を取りかけ、さらに一度バーチの左腕を伸ばす体勢まで作ったことを考えると、割れたのが意外な判定だった。

試合後勝者は「こちらのテイクダウンに対する彼(バーチ)の反応が予想以上に良かったんだ。キムラロックを狙ってくるのは分かっていたんだけど。僕は練習では相手を抑え込めるんだけど、彼のことは抑えこめなかった。正直この試合の出来には満足できないよ。僕の最悪のパフォーマンスの一つだったと思う。サブミットできなかったし、脅かす場面すらも作れなかった。今後はもっと抑え込みを強くしないと」と語った。

確かに今回派手な勝ち方はできなかったものの、それは得意技に頼らず、試合を通して課題を克服しようとした結果。強豪を相手に目先の勝利だけでなく将来まで見据えた戦いをし、完勝してなお反省する19歳の未来は、明るい。

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