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【Special】アジアの猛者たち─01─ヒザ神バヤンドゥーレン「あの足関節ではタップはしません」

【写真】迫力がある面構えのバヤンドゥーレン(C)MMAPLANET

UFC、RIZIN、北米フィーダーショー、日本のプロモーションと世界中のMMAを見渡してアジア勢が台頭しつつある。もちろん、アジアといっても広い。その勢いの中心は東アジアではなく、中央アジアだということも百も承知だ。MMAPLANETでは6月から日本人ファイターと肌を合わせた経験がある──あるいは今後その可能性が高いアジアのファイター達にインタビューを続けてきた。

題して「アジアの猛者たち」──第1弾はモンゴルからガントゥルム・バヤンドゥーレンのインタビューをお届けしたい。
Dedicated to Mr.Junichi Aarai
Text by Manabu Takashima

2022年世界サンボ選手権コンバットサンボ58キロ級優勝のバヤンドゥーレンは、MMA戦績も3勝0敗ながらONEでMMAでなくグラップリング世界戦をマキシー・ムスメシと戦った。左ヒザが異様な方向に捩じれ、バキバキと音が鳴り続けてもタップをしない対戦相手に対し、マイキーが困惑して技を解く場面も見られた一戦でバヤンドゥーレンは判定負けに終わり、交通事故なみの負傷を追い長期欠場を強いられた。

その後の情報は日本に届かず、選手生命が断たれたという見方もされていたが、実際にはバヤンドゥーレンは昨年の夏からモンゴル国内のアマ大会で腕試しを行っていた。

コンバットサンボやガルダントラン(徒手格闘技)のトーナメントで打撃と組みの融合、MMA前哨戦も済ませた。そんな──ある意味、ヒザ神バヤンドゥーレンを所属するガルーダMMAではなく、ガルダントランの本拠地であるDeasand Bambar Clubに尋ねた。

あくまでもMMAに拘っていたバヤンドゥーレンは、インタビュー後に今週末10日(土・現地時間)に中国はシャンシー省ルーリャンで開催されるJCK FN90に出場し、メインのフライ級マッチでDWCS、Rod to UFC、そしてUAEWに出場経験のあるチウ・ルェンと戦うことが決まった。

再び世界に向けて歩み始めた──バヤンドゥーレンが語ったマイキー戦、そのヒザの真実とは。


──バヤンドゥーレン選手、今日は取材を受けていただきありがとうございます。

「こちらこそ、わざわざ練習場所まで来てトレーニングを見てもらう機会が得らえて嬉しいです。ありがとうございます」

──バヤンドゥーレン選手といえば、やはり気になるのはヒザの具合です。昨年1月にONEでマイキー・ムスメシの持つサブミッショングラップリング世界フライ級王座に挑戦し、左ヒザがえげつない方向に捩じれるほど足関節を仕掛けられましたが、タップをしませんでした。なぜ、あの状況でタップをせずに戦い続けることができたのでしょうか。

(C)ONE

「あの足関節は完璧には極まっていなかったです。

だからタップをする必要がなかった。それに試合の時は最後まで勝負を諦めないというのが、自分のポリシーなのでタップをすることは絶対にないです。

途中で戦い方を切り替えられて、RNCを仕掛けられて落ちることはあるかもしれない。でも、あの足関節ではタップはしません」

──あのう……極まっていないと言われましても、あれだけヒザが捩じれていましたしマイキーは「20回はポップしていた」と言っていました。結果、交通事故並みの負傷だという情報も入ってきました。実際にタップをするだけの痛みもなかったということでしょうか。

「完全に入ったという感覚はなかったです。確かに最初に仕掛けられた時は痛かったですが、途中から麻痺したように痛みも感じなくなったのでタップでなく、どうやってこの状況から脱しようかと考えていまし」

──それは……感覚が麻痺してしまっていたということですよね……。

「まぁ結果として、ケガをしてしまったのは確かです。でも、自分としてはマイキー・ムスメシのように世界的に知名度がある相手に対して、どれだけ戦えるのかを試したかった。試合前は簡単に極められてしまうかと不安に思うこともありましたが、予想に反してそれほどでもなかったので、できる限り戦いたいという気持ちになっていました」

──今日は打撃の練習をされていましたが、左ヒザの状態はいかがですか。

「ヒザの方はケガをする前の状態に戻っています。5カ月後には回復していたので、去年の夏にモンゴルで開催された柔術の国際大会に出場して回復具合を確かめました。結果、問題はなかったです。

今年に入ってから試合勘を取り戻すために、柔術、グラップリング、コンバットサンボ、ガルダントランなど色々な試合に出ています。そのうち3大会で優勝をしているので回復もして、試合勘も戻ってきました」

──ONEにおけるマイキーとのグラップリング戦前にMMAの試合をカリフォルニアで3度戦っています。ONEでの組み技戦後、コンバットサンボやガルダントランという道着有りで打撃、投げ、寝技がある試合に出て如何に役立ちましたか。

「MMAの試合は1日に1試合です。コンバットサンボやガルダントランは1日に4試合ほど戦うので、さっきも言ったように試合勘を養うことができます。そして、対戦相手のタイプも違うので経験値を高めることにも役立っています」

──現状ではMMAで戦うことを念頭に置いているということでしょうか。

「ハイ。MMAファイターですし、世界中の全てのMMAファイターと同じようにUFCで戦いたいと思っています。UFCのチャンピオンになることが夢です。国内で様々なルールの試合に出て、もう準備は整っているので次は海外のMMAプロモーションと契約をしてUFCを目指したいです」

──モンゴル人ではニャムジャルガル・トゥメンデムベレルがGLADIATORからRoad to UFCワンマッチ戦を経てUFCファイターになりました。そのグラジにはオトゴンバートル・ボルドバートルがタイトルマッチ出場を決めています。

「自分としては米国で戦いたいです。ただし日本でチャンスがあるなら当然、日本で戦うことになります」

──ONEではMMAを戦うということは考えていなかったのですか。

「実はグラップリングだけの契約だと思って、サインをしました。でも、ONEとの専属契約になっていたので、MMAもONEで戦わないといけない状況だったんです。なので復調してからMMAの試合を組んで欲しいと打診をしているのですが、芳しい返答はないままです。

ONEのジャッジにはモンゴル人も1人いるので、その人を通しても試合がしたいと尋ねました。それでも返事がなくて、相手にされていないようです。無視をされているように感じるので、正直なところ心穏やかではないです。

これからONEとの契約を見直して、どういう風にしていくのかを進めていくつもりです。モンゴルはMMA人気が高まっていて、良い指導者も増えています。モンゴル人はもともとファイターです。この強い気持ちがあって練習環境も整ってきているので、もっともっとモンゴル人ファイターは海外で活躍できると信じています。自分たちのファイター気質は、そういうプロモーターたちにも気に入ってもらえるはずです」

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MMA MMAPLANET o Road to UFC RTU ASIA2022 Ep05 UFC キック チウ・ルェン チェ・スングク ボクシング

【RTU ASIA2022 Ep05】チェ・スングクが打撃&TDのコンビネーションでチウ・ルェンを完封しT決勝へ

【写真】チェ・スングクが流血も安定した試合ぶりで判定を制した(C)MMAPLANET

<Road to UFCフライ級T準決勝/5分3R>
チェ・スングク(韓国)
Def.3-0:29-28.29-28.29-28.
チウ・ルェン(中国)

サウスポーのチウ・ルェンが左ミドル。サークリングするチェ・スングクのローにローを返したチウ・ルェンは、チェ・スングクの右ミドルに左ストレートを合わせた。チウ・ルェンの左ミドルをキャッチして右を放つチェ・スングクが、そこから距離を詰めていく。ローの探り合いから、チェ・スングクが右ミドルを当てる。さらに右ローを受けたチウ・ルェンがバランスを崩した。チウ・ルェンがプレッシャーをかけると、チェ・スングクが下がったあとニータップで組みつくも、テイクダウンはできず。

打撃のフェイントから、チェ・スングクが右ハイを繰り出す。チウ・ルェンの左ミドルハイをかわしたチェ・スングクが右をヒット。さらに右ショートをカウンターで当てると、チウ・ルェンのパンチが届かない距離へ。ここでチウ・ルェンの左ストレートの打ち終わりに右ストレートを突き刺し、相手をグラつかせた。チウ・ルェンは左ストレートを連続で放つも届かない。チウ・ルェンの左ローを払うチェ・スングク、残り20秒でテイクダウンを奪ってバックに回るが、ここは前に振り落とされた。

2R、左右に回りながらローを放つチェ・スングク。チウ・ルェンは左ストレートから距離を詰める。左ロー、左ミドルと蹴りを散らしながら、中に入ってくるチェ・スングクに右フックを合わせた。チェ・スングクは足に組みつき、ケージまでドライブすると、右腕を差し上げてテイクダウンを奪う。チウ・ルェンはハーフガード。相手のブリッジに合わせてバックマウントを奪ったチェ・スングクだが、ここで取り切ることができない。

再び右腕を差し込み、切り返してグラウンドに持ち込んだチェ・スングク。パスからバックに回るも、チウ・ルェンがガードに戻した。すぐさまパスしたチェ・スングクがチウ・ルェンの左腕を狙う。立ち上がったチウ・ルェンを押し倒したチェ・スングクがトップをキープ。チウ・ルェンは下から右ヒジを打ち込む。チェ・スングクは右の鉄槌を落としていく。チウ・ルェンが半身になるとバックに回り、右足を差し込んだチェ・スングク。左腕を相手の首に回すもRNCは難しいか。そのままパウンドで削りながら、バックマウントを奪った。

最終回、チウ・ルェンが左ロー。チェ・スングクもローを返す。チウ・ルェンが左ミドルから右フックを当てて、プレッシャーをかけていく。左インローを当てるチウ・ルェン。相手の左ストレートをかわしたチェ・スングクがニータップを狙うも、これはチウ・ルェンがカットした。蹴りを散らすチウ・ルェンに対し、チェ・スングクは距離を詰めていく。チウ・ルェンは左のテンカオ。ワンツーで相手を追い立てる。チェは遠い距離からテイクダウンを狙ったが、チウ・ルェンが突き放した。

チウ・ルェンの左ミドルを捌いたチェ・スングクだが、これまでのラウンドより手数が減っている。チウ・ルェンは右サイドキックをチェの顔面に伸ばした。ローの交錯のあと、チェ・スングクはテイクダウンを狙うが決まらない。これまでのラウンドを取っていると判断し、テイクダウンにこだわらないのか。チウ・ルェンの左ストレートがチェ・スングクの顔面を捉えた。チェ・スングクは組みついても、しつこく狙っていかない。右ミドルからアウトボクシングを徹底するチェ・スングクが逃げ切った。

裁定はチェ・スングクが1Rと2R、チウ・ルェンが3Rを取ったか。ジャッジ3者とも29-28でチェ・スングクの勝利を支持し、チェ・スングクがトーナメント決勝進出を決めた。


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