【写真】RTU準決勝敗退に終わった河名だが、UFCを目指すという想いは変わらない(C)TAKUMI NAKAMURA
14日(土・現地時間)、韓国はコヤンのキンテックス7AホールでZFN02が開催され、河名マストがユ・ジュサンと対戦する。
text by Takumi Nakamura
8月のRoad to UFC準決勝でシェ・ビンに敗れ、今シーズンでのRTUからUFC参戦という道が断たれた河名。再起の場に選んだのはジョン・チャンソンが主宰し、UFC Fight Passでの生中継されるZFNだった。年齢的にも決して残されたチャンスが多くはない河名は、それを自分でも理解したうえで「僕のUFCへの道はまだ終わっていません」と語った。
――8月のRTU準決勝以来の試合が決まりました。まず復帰戦は年内にやりたいという希望があったのですか。
「そうですね。ダメージもあったので、 八隅(孝平)さん的には年越したぐらいに試合を組んでもらうかということだったのですが、マネージャーから『12月にZFNがあるけどどう?』と話を振られて、僕としては一刻も早く今年の汚れは今年のうちに落としておきたくて、試合を組んでもらいたかったという感じでした」
――RTUが準決勝敗退に終わり、RTUからUFC本戦を目指すという道が断たれてしまい、次はどんな舞台で試合をするか。そこを考えている時期だったと思います。そのなかでZFNという選択をしたのはどういった心境からですか。
「以前、DWCSでダナ・ホワイトが2年連続出た選手に『お前は去年の方が良かった。俺は30歳までの選手じゃないと契約しないって言ってるだろう。それなのに今回のパフォーマンスはなんだ!』と言っているのを見て、明確に定められているわけではないですが、やはり30歳というのがUFCと契約する上で一つの足切りラインだと感じました。で、僕は今年30歳になる年で、来年は31歳になっている。だったらこの1年はもう少しもがこうと思い、とにかくUFCに出るための道を探して、ZFNに出るという選択をしました」
――ただシェ・ビン戦がKO負けということで、ダメージを含めたコンディション面での不安はなかったですか。
「それはありました。普段の試合だったら大体1カ月ほど休んで練習を再開するのですが、今回はダメージもあったので約2カ月はフルで休んでから再開したので。あとは初めてのKO負けで、なんて言うんですかね、 3Rフルにやって力を出し切ったけどやられたという負け方ではないじゃないですか。どこか不完全燃焼的なところもあったので、そこはもう早く試合したいという気持ちでした」
――八隅さんからは年明けの復帰を勧められていて、そこは自分の意思を押し通したところですか。
「そうですね。僕自身も年内にオファーがくるとは思っていなかったので、強制的に休む時間を作ることができるなと思っていたところに、ZFNの話が飛んできたんで。試合のオファーがあるからには受けたいなということは伝えました」
――改めてシェ・ビン戦のKO負けはどこに敗因があったと思いますか。
「シェ・ビン自体がフレームも大きかったし、そう簡単にテイクダウンできるとは思っていなくて。そんな気持ちの中で試合が始まって、試合序盤で一発でいいパンチが当たったんですね。思いっきりパンチを振りましたけど、僕自身は当たって倒れると思って振ってないんで、当てた自分が1番『うわ!当たっちゃった!』みたいな感じで、当てて倒す心の準備ができてなかったんです。だからパンチを当てて効かせたんだけど、逆に『どうしよう?』という気持ちの迷いが生まれてしまいました。そこで(スタンドで)体が開いてしまったり、テイクダウンに行くことができずに立ち会った結果、 相手の1番得意な形でパンチをもらってしまいました」
――ある意味、先にパンチのクリーンヒットがあった故に色々な狂いが生じてしまった、と。
「これまでは自分がやるべきことが1つ定まっていて、それをやるしかないと決めて戦っていたのに、パンチが当たったことで他の要素が入ってきて、 選択肢が増えたから迷ってしまうという」
――例えばパンチが当たったとしても、そこは無視して組みに行こうっていうマインドにはなれなかったですか。
「そうですね。パンチも先に当たったし、思ったよりもシェ・ビンのパンチも早くないと感じて…」
――KOできそうな予感があったのですか。
「なんか(パンチが)当たるなって。ただそれでエラーが起きた感じですね。体の動きと頭の動きがずれて、やるべきことが1つに固まっていませんでした」
――KO負けのダメージもあったと思いますが、試合後は率直にどんな心境でしたか。
「本当にもう…何もかもなくなった、何もねえなって感じでした」
――大きな喪失感や虚無感というか。
「実際試合が終わって意識が戻って我に返ったのが、ストレッチャーに乗せられて、救急車に乗る直前くらいからなんです。その時にUFCのスタッフから『今どこいるか分かりますか?』と聞かれて『RTUの試合で、アジアのどこかです』みたいなことは答えたのですが、対戦相手が誰で、どんな試合だったかは全く分からなくて。その状況のまま病院に行って色々と検査を受けているなかで、だんだんと記憶が戻ってきました。検査結果は異常なく、KOされた瞬間以外の記憶はあるのですが、改めて自分が負けたということだったり、負けた実感や喪失感が出てきましたね」
――練習を休んでいた期間はどんなことを考えて過ごしていましたか。
「これが挫折か…って感じですよね(苦笑)。まさに大きな挫折だなっていう。打ちひしがれた感覚は確実に自分の中にあったので、そこをどう乗り越えるかじゃないですけど、どうやって次にステップを踏んでいくのかっていうところで、試合が終わって色んな人たちとお会いして、自分がインタビュアーみたいな感じで『今までの人生の中で味わった一番大きな挫折はなんですか?』とか『挫折を味わったときにどう乗り越えましたか?』と質問して、みなさんから人生経験を聞かせてもらっていました。僕にとっては大きな挫折でしたが、みんなもそういう挫折を味わってるし、悲劇のヒーローなんていないじゃないですか。 結局やるしかない、やるしかないよなと思って戻ってきました」
――コンディション的な不安はあるにせよ、年内に試合オファーが来たことは気持ちを前向きにするきっかけになったかもしれませんね。
「それは間違いないです。僕らファイターの仕事は試合をすることだし、自分のことを必要としてくれる場所がある、仕事が来るんだったら『やるでしょ!』という感じでした」
――この試合に向けてはどんなことを意識して練習してきましたか。
「原点回帰というか、あの試合は自分に迷いが出たことが敗因だったと思うので、じゃあ俺は試合で何がしたいんだ?と考えたら、 とにかく組んで組み伏せて殴るのか、押さえて1本取るのか。そこにとにかく進んでいくことだと思うので、そこにフォーカスして練習してきました」
――ファイターとして出来ることが増えても、自分がやるべきことを明確にする、と。
「そうです。確かにMMAは上手になってるのかもしれないけど、上手になることが強くなることじゃないんだなというのは改めて感じました」
――対戦相手のユ・ジュサンにはどんな印象を持っていますか。
「テコンドーっぽいというか、前後のステップが早くて、相手を誘い出して誘い出して、 前手で仕留めてくる感じの選手だと思います。あとは組みに関しても、自分が攻める側の組み手に自信があるから、スクランブルもちゃんとやってるなという印象でした。ガードを下げて足さばきで動く感じなので、そこも含めて相手のペースを崩していこうと思います」
――先ほどの話にもつながりますが、河名選手としては組みを混ぜて削り勝ちたいですか。
「特に相手の試合の雰囲気を見てると、なんか 自分に自信がある感じというか。俺はどこでも勝負してやるぜっていうのは見て取れるので、 組み手を受けてくれたら、そこはめちゃくちゃチャンスですよね。もし組み手を切ってこられたら、それはそれでこいつやるじゃんとは思いますね」
――RTU敗退後、再びUFCを目指す戦いが始まります。ここからどんな試合を見せていきたいですか。
「改めて自分のやるべきこと、やらなきゃいけないことをとにかく突き通して、ぶつけて、なおかつ決着つけて勝ちたいと思います。今回はダナも試合を見に来るという話なので」(※取材後、韓国の非常戒厳令のためダナの訪韓見送りが発表された)
――それはUFC出場を目指す選手たちにとっては大きいですね。
「ダナが来るというのは試合が決まった後に聞いたんですけど。団体側からしたら無敗のジュサンをプッシュして、RTUに出したり、ZFN自体を大きくして、そのままダイレクトでUFCに送り出したいと思うんですよ。彼はそのくらいのタレントだと思うので。でもそうはいかないよ、というのをぶつけたいと思います。僕はRTUでソン・ヨンジェを倒して、今回の相手も韓国内では推されてる期待の選手だと思うので、そんな選手をやっつけたら、またそこで自分の株も上がると思います」
――今回の試合も含めて、ここからはUFCにつながる試合を選択していきたいですか。
「そうですね。特にこの1年は数字として30歳という一つの条件・ラインがあるので、だったらUFCにいく可能性がある間に勝負したいです。毎年RTUに出る年齢の条件みたいな話も出るし、若い選手の方が今後の可能性が高いのはもちろん理解したうえで、自分が出来る期間でUFCに向けて最短ルート・最善のルートを選んで戦っていきたいです」
――それではUFCへ向けて最終発する河名選手からファンのみなさんにメッセージをいただけますか。
「僕のUFCへの道はまだ終わっていません。マイ・ライフ・イズ・リベンジ。必ずUFCまで到達します」
■視聴方法(予定)
12月14日(土・日本時間)
午後6時30分~UFC Fight Pass