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【ONE FN14】ローマン、ジョン・リネケルの圧を打ち破れず。足を使い、回ってテイク狙いで0-3の完敗

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
Def.3-0
スティーブン・ローマン(フィリピン)

サウスポーに構えたローマンが、左インロー。リネケルが圧を掛けて前に出る。右フックで前に出たリネケルが左ボディを入れる。と、スッとレベルチェンジでダブルレッグを決めたローマンが、しっかりとハーフで抑える。エルボー、右で殴り、ケージ際でも手首を払ってバックを伺う。自ら後方に倒れ込みバック奪取を狙ったローマンに対し、リネケルが胸を合わせる。すぐにスクランブルで立ち上がり、ダブルレッグを仕掛けたローマン。ダブルアンダーフックのリネケルが、体を入れ替えてケージに押し込む。

離れ際に左を振るったリネケルがカーフ、ローマンはサイドキックを繰り出す。上中下と蹴りを出すローマンのハイを受けそうになりながら、キャッチしたリネケルはテイクダウンに行かずに足を抜かれる。リネケルの右オーバーハンド、踏み込んでの左をかわして時間となった。

2R、スタミナが気になるリネケルに対し、インローを2つ見せたローマンだがダブルを切られてボディを打たれる。ローマンが左ストレート、左ハイを繰り出し、リネケルも右インローを返す。ダブル、シングルを切られたローマンは右オーバーハンドを受けそうになる。一発の圧でひっくり返せるリネケルがジャブからオーバーハンドへ。ここでアイポークがあったとリネケルがアピールし、試合が中断される。再開後、ジャブとインローのローマンが圧負けしないように懸命に戦う。

そこに無意義ボディフックから左右のフックで前に出るリネケルに、ローマンのダブルレッグはもう通じない。顔を腹にフックを受けるローマンが、テイクダウン狙いからヒザを入れる。ここからのジャブをかわしたリネケルがハイキックを繰り出す。時間が来た時、ローマンはケージを背負っていた。

3R、何とかクラッチできたダブルレッグを切られたローマンは左ハイ、右ローを蹴る。リネケルが右ボディ、そして左フックで前へ。続くダブルレッグを切られたローマンが右ボディ、左フックを受ける。そのローマンが左ボディを繰り出し、フックのコンビに合わせた左ローが急所に当たる。再開後、両者の打撃の回転が上がり、リネケルがワンツーで前に出る。打ち終わりで左ハイを見せたローマンが左フックを打たれてダブルレッグへ。

懸命に押し込むも、切られそうになり下になってしまう。スタンドに戻ったリネケルが、来いとアピール。ローマンは左に回りながら選択はテイクダウン狙い――当然倒せることはなく時間を迎えた。


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【ONE FN14】暫定世界女子アトム王座決定戦へ。スタンプ「腕は金網で傷だらけになってしまった」

【写真】もう半日後には戦っている両者(C)ONE

30日(土・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムでONE Fight Night14「Stamp vs Ham」が開催され、ハム・ソヒがスタンプ・フェアテックスとONE暫定世界女子アトム級王座決定戦を戦う。
Text by Manabu Takashima

アンジェラ・リーの長期戦線離脱より設けられた暫定王座を狙うハム・ソヒは、今年の3月で36歳を迎えている。MMAデビューから15年が過ぎ、女子MMAの歴史を紡いできたと言える彼女にとって、このベルトの意味とは──。


――スタンプ、ハム・ソヒと暫定王座を賭けて戦います。今の気持ちを教えてください。

「2度目のタイトル戦だし、凄くエキサイティングしているわ。今回は絶対に勝ちたいから、プレッシャーも感じているけど(※英語で返答)」

――キャンプの出来栄えには満足していますか。

「ムエタイを含め、しっかりと調整してできたわ。ハム・ソヒは前に出て詰めてくると思うから、特にケージに押し込まれた時にいかに逃れることができるか。そこは重点的に練習できたわ」

――つまりケージレスリング、テイクダウンディフェンスを強化してきたということですね。その際、首相撲との融合などは考えていますか。

「リングだとコーナーを使っていたことを、今回はケージを使ってやってきたの。ケージに押し込まれた状態というのは、常に想定して練習してきているけど、今回はハム・ソヒのスタイルを考えてより力を入れてやってきたわ。だから今、私の腕は金網で傷だらけになってしまったの(笑)。

首相撲に関しては状況次第ね。MMAファイターは、しっかりと胸に頭をつけてくるので首相撲に取れるかどうか。でも、エルボーやヒザが大きな武器になるのは確かね」

――ではハム・ソヒの打撃に関しては、どのように評価していますか。

「彼女のパンチは常に効果的だし、とても危ない。私は過去6年、ほぼMMAの練習に専念したけど、彼女は私の人生ぐらいやってきたわけで。でも私は若くてエネルギーがあるから、彼女を倒すことができると思っている」

――ハム・ソヒは「年齢はただの数字。若い選手よりスマート」と言っていました。

「確かに年齢は、ただの数字という意見には同意するわ。どれだけ練習できているのかが大切になってくるわけだし」

――ではハム・ソヒに対し、スタンプのアドバンテージは何だと考えていますか。

「さっきもいったけど、若さ。それから、打撃は私の方が上ね。彼女のパンチは危険だけど、私はエルボーを織り交ぜて戦うことができるから」

――昨年3月にアンジェラ・リーに挑み敗れました。あれから18カ月、MMAファイターとして最も成長した部分はどこだと考えていますか。

「BJJとレスリング、テイクダウンのディフェンス面ね。アンジェラ・リーに負けてから、ディフェンスの練習に重点を置いてきた。防御面が伸びたことで攻撃がより強力になり、安全に戦えるようになったわ。でもハム・ソヒと戦うにあたっては、打撃に対するディフェンスも強化してきたの。彼女のパンチに対して、ね」

――ムエタイ、キックに続き、MMAの世界のベルトを巻く。この試合はどれだけ重要でしょうか。

「MMAのベルトを巻けば、世界で初めてキックボクシングとムエタイ、MMAのメジャーな世界タイトルを獲得した女性になり、歴史を創ることになるわ」

――ONE FFが始まり、賭けの無いファイトをムエタイ・トップファイターが歓迎の意を表しています。この変化をスタンプはどのように捉えていますか。

「今、ムエタイはリアルスポーツに昇華している最中にあるわ。ルンピニー・スタジアムで賭け事が行なわれないONEルンピニー大会は最高よ。見ている人は賭け事でなく、スポーツとして、アスリートとムエタイの技術を追うようになった。それは凄く嬉しいことよ。ONEルンピニーが賭け事を禁じたことで、ムエタイはスポーツとしての価値が上がったのは絶対よ」

――ムエタイのタイトルをルンピニーで再び手にしたい?

「もちろんっ!! またムエタイのベルトをこの腰に巻きたい」

――ではルンピニーでのムエタイ世界戦、米国でのMMA。今はどちらを選ぶでしょうか。

「今は米国でMMAを戦うことを選ぶわ。タイは私の母国で、試合をする機会も多い。でも米国での試合は、そうじゃない。だから今は米国で試合をしたいと思っている」

――では、土曜日のお昼。何を世界に見せたいと考えていますか。

「ベルトを頭の上に高々と掲げているところかな(笑)」

■放送予定
9月30日(土・日本時間)
午前9時00分~ABEMA格闘チャンネル

■ONE FN14対戦カード

<ONE暫定世界女子アトム級(※52.2キロ)王座決定戦/5分5R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
ハム・ソヒ(韓国)

<ONEムエタイ女子世界ストロー級王座決定戦/3分5R>
スミラ・サンデル(スウェーデン)
アリシア・エレン・ホドリゲス(ブラジル)

<ONEサブミッショングラップリング世界女子アトム級(※52.2キロ)王座決定戦/10分1R>
ダニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)

<女子ストロー級スペシャルルール/3分3R>
シィオン・ヂィンナン(中国)
スーパーガール・ジャルーンサックムエタイ(タイ)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
スティーブン・ローマン(フィリピン)

<ムエタイ・ライト級/3分3R>
ドミトリー・メンシコフ(ロシア)
ルンラーウィー・シッソンピーノン(タイ)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
アミール・カーン(シンガポール)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
マウロ・チリリ(イタリア)
ポール・エリオット(英国)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ブレイク・クーパー(米国)
モーリス・アベビ(スイス)

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【ONE FN14】スタンプと暫定王座を賭けて戦う、ハム・ソヒ「36歳にして、辿り着いた」ベルトの意義

【写真】本当にいつも礼儀正しく、こちらを尊重して話してくれるハム・ソヒ。と同時に、しっかりと自分の意見を口にしてくれます(C)MMAPLANET

30日(土・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムでONE Fight Night14「Stamp vs Ham」が開催され、ハム・ソヒがスタンプ・フェアテックスとONE暫定世界女子アトム級王座決定戦を戦う。
Text by Manabu Takashima

アンジェラ・リーの長期戦線離脱より設けられた暫定王座を狙うハム・ソヒは、今年の3月で36歳を迎えている。MMAデビューから15年が過ぎ、女子MMAの歴史を紡いできたと言える彼女にとって、このベルトの意味とは──。


――ハム・ソヒ選手、今週土曜日にスタンプ・フェアテックスと暫定女子アトム級王座を賭けて戦います(取材は27日に行われた)。今の調子はいかがですか。

「凄く調子は良いですが、どの試合でもナーバスになるもので。今回もそういう緊張を乗り越えてきました」

──ここまで経験があっても、試合前にナーバスになるモノなのですか。

「確かにこれだけやってくると練習している日々のなかで、毎日のようにナーバスになるということはなくなりました。でも入場しているところ、ケージに入る瞬間を考えるとやはり緊張してしまいます。同時に適度に緊張することは大切で、全くリラックスしていると集中力が落ちるとも考えています。だからこ、この緊張している状態も戦う上でとても大切だと捉えています」

──3月に平田樹選手に完勝し、それから半年間試合がなかったです。これだけ試合が空いたことをどのように感じていますか。

「本来6カ月間も試合がないことは、私にとっては長すぎるインターバルです。ただ今回はこの半年の間に小さなケガを直し、家族との時間を創ったことで気持ちを休めることができました。それにこの試合は暫定王座が懸かった試合です。その分だけしっかりと休み、しっかりと準備ができたのでポジティブな期間でした。今回の6カ月間は、これまでのレイオフ期間とは違う意味合いでした」

──そのトレーニングキャンプの手応えは?

「私は年を重ねました。それだけ練習をしなければいけないです。年を取った今、若い頃より練習量は増えています。そうすることによって、常に自信を持ち続けることが可能になります。なので今回の試合は、凄く自信があります」

──今も韓国MMAは女子選手が多くなったとは言い難いです。そのなかでハム・ソヒ選手は女子選手とどれぐらい練習しているのですか。

「以前も今も同じです。韓国で女子選手が少ないという事情は変わっていないです。今回のトレーニングキャンプでも、男子のチームメイトと練習してきました。ただ、つい2年前まで韓国の女子MMAの状況に悲観的で、もっとレベルの高い女子選手が増えて一緒に練習したいという想いでいました。でも今は違います。自分がどういう風に練習すれば良いのか、しっかりとシステム化できるようになったんです。だから男の選手との練習で、十分な準備ができているようになっています」

──もう10年ぐらい前ですが、プサンに行ってチームMADの練習を取材させていただいた時に、ハム・ソヒ選手が男子選手とのグラップリングのスパーリングでヒジをケガした場面に出くわしました。そのまま病院に行き、練習も終了というあのシーンが忘れられなくて。

「あぁ……あの時にケガをしたヒジは、今も痛いです(笑)」

──おお、なんてことですか。

「若い時って、自分がずっと若いままだと想いがちです。だから体のこと、ケガのことなど気にしていなかった。すぐに直る、だからハードに練習する──そんな感じでいました。年を取ったり、体が弱くなるなんて考えたこともなかったので。でも、今ではトレーニングを一度するたびに、体が痛いです(笑)。さきほど、今の方がトレーニング量が増えたと言いましたが、それはスマートにトレーニングするようになったからです。体のことはしっかりとケアしていますし、休息も取るようにしています。だから練習量も増え、つまりは効果的な練習ができているということですね」

──スタンプは、まさに年を取るなんて思っていないでしょうね。

「きっと、後悔する日が来るでしょうね(笑)。小さなケガが続き、そんな風に練習毎に感じるはずです。まさに、今の彼女はあの頃の私のようで(笑)。スタンプのベースはムエタイで、キックとムエタイで世界チャンピオンになった後、MMAを戦うようになりましたが、スムーズに移行できたようには思えなかったです。

今も彼女はムエタイファイターであって、MMAファイターになり切っていない。だからといって私に明白なアドバンテージがあるわけではなくて。でも、この試合はMMAだし、MMAでいえば私の方がより完璧に近い。MMAは本当に予期できないことが起こるので、私はどのような状況にも、より自然と的確に対応ができると思っています」

──スタンプのフィジカル、フレームをどのように思いますか。

「えっ、彼女の方が大きいですか? 公式プロフィール的には違いがないはずですが」

──きっと彼女がナチュラルで、ハム選手はこの体重で戦うために大きくしてきたので、そんな風に思い込んでしまっているのかもしれないです。

「う~ん、公称で違いないですし、フィジカルやサイズの違いを気にすることはないです。試合の準備をしている時も、そこは考えてこずにやってきました」

──押忍。では女子MMAがまだ形になっていなかった頃から、このスポーツと共に人生を歩んでいたハム・ソヒ選手が、36歳になって挑むONE暫定世界アトム級王座の意味とは何なのでしょうか。

「確かに私がMMAを始めたころと比較すると、今は多くの若い選手が世界中で育っています。スターが生まれ、新しいチャンピオンが出てきます。だからこそ、36歳になってチャンピオンになるということに意味があります。私の周囲には引退を話題する人が多いです。そして実際に引退を考える、既に引退する人がいる年齢になりました。でも、このベルトを取ると、そういう空気を私の周りから取り払うことができます。

それが私のモチベーションにもなっています。年齢はただの数字です。36歳はまだ若いです。年齢に関わらずパフォーマンスに納得がいかずに敗北を重ねたり、自分が望む結果を手にすることができない選手には、私が戦ってベルトを取ることでモチベーションを保てるはずです。『まだまだ時間はある』、『やれる』、『諦めない』と。私は36歳にして、ここに辿り着いたのだから。そういう風に今、上手くいっていない選手に好影響を与えることができる。それこそが、今回ベルトを取る意義です」


■放送予定
8月5日(土・日本時間)
午前9時00分~ABEMA格闘チャンネル

■ONE FN14対戦カード

<ONE暫定世界女子アトム級(※52.2キロ)王座決定戦/5分5R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
ハム・ソヒ(韓国)

<ONEムエタイ女子世界ストロー級王座決定戦/3分5R>
スミラ・サンデル(スウェーデン)
アリシア・エレン・ホドリゲス(ブラジル)

<ONEサブミッショングラップリング世界女子アトム級(※52.2キロ)王座決定戦/10分1R>
ダニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)

<女子ストロー級スペシャルルール/3分3R>
シィオン・ヂィンナン(中国)
スーパーガール・ジャルーンサックムエタイ(タイ)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
スティーブン・ローマン(フィリピン)

<ムエタイ・ライト級/3分3R>
ドミトリー・メンシコフ(ロシア)
ルンラーウィー・シッソンピーノン(タイ)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
アミール・カーン(シンガポール)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
マウロ・チリリ(イタリア)
ポール・エリオット(英国)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ブレイク・クーパー(米国)
モーリス・アベビ(スイス)

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ABEMA BELLATOR MMA MMAPLANET o ONE ONE FN13 Road to UFC2023Ep05 Road to UFC2023Ep06 Special UFC UFC ESPN52 キム・ジェウン ジョン・リネケル ブログ

【Special】月刊、大沢ケンジのこの一番:8月―その弐―:リネケル✖キム・ジェウンからの日本✖世界

【写真】風間とともにオクタゴンへ向かう大沢氏(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Shojiro Kameike

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は大沢ケンジが選んだ2023年8月の一番、8月5日(日・現地時間)にONE FN13で行われたジョン・リネケル×キム・ジェウン戦から考える――日本と海外の違いについて語らう。さらに風間敏臣に同行し、現地シンガポールで目撃したUFC ESPN52とRoad to UFCから、日本MMAの問題点を提起してくれた。


――韓国や中国のファイターが、北米のファイターと打ち合い、勝利する試合も少なくない。そこで同じアジア人である日本人ファイターだけが「フィジカル差が……」「パンチ力や耐久力が……」とは言えなくなるわけですね。

「韓国はもちろん、中国人選手も至近距離が強いですよね。それはRoad to UFCでも明らかで。ONEを視ていると、フィリピンや他のアジア選手も前に出て、至近距離でも戦える。遠い距離だけで戦おうとしているのは、もう日本人だけじゃないですか。その理由にフィジカル差を挙げるのなら、それは違うと思います。日本人選手でも世界で通用するフィジカルをつくり上げている選手は多いので。

あとは組みや打撃の技術力の問題もあります。ひとつ思うのは――日本国内だと、一芸に秀でていたら勝てる場合が多いんですよ。寝技が強い、打撃が強いというだけで勝てることがあるから」

――寝技ができないストライカーも、身体能力があれば国内ではテイクダウンディフェンスができて、パンチで倒せることもある。その逆もまた然り、ですね。

「そうして勝ち続けていくと、綺麗な戦績であればUFCとかから声が掛かりやすいじゃないですか。でも世界に出てみると、みんな全ての要素が強いから、一芸に秀でているだけの選手は勝てない。本当にね……ストライカーのキム・ジェウンやサンドハーゲンが、あれだけテイクダウンも寝技も強いわけですよ。一芸に秀でているだけの選手って、相手からすれば怖さがないんです。何をやってくるかが分かるから」

――前回の取材では、「フィニッシュを狙わず、トップをキープするだけの相手は怖くない」と仰っていましたね。

「それと同じなんです。たとえば至近距離の打撃が強い選手にとっては、距離が近くなったら組むだけ――それが分かる選手が相手だと怖くない。だから自分は、もっと強くパンチを振るうことができる。至近距離で打ち合うこともできれば相手も下がるし、組みやすくなるんですけどね」

――経験という意味では、中村倫也選手がプロ3試合目で修斗ブラジル王者のアリアンドロ・カエタノと対戦し、大苦戦しながらも勝利した経験は大きかったように思います。

「あの経験は大きい。もともとレスリングの力があって、打撃も身につけたうえに、あの経験を得たのは大きいです。そういえば佐藤将光選手はキム・ジェウンに勝っていますよね(今年1月に判定勝ち)。リネケルとあれだけの試合をしたキム・ジェウンに佐藤選手が勝っている――佐藤選手だって、それまでにどれだけ苦しい道を通ってきたかっていうことですよ」

――だとすれば、世界で戦う前に国内でもっと鎬を削るべきということですか。

「それもありますけど、実際に試合だけじゃなくて練習や戦術の面も考えていかないといけませんよ。2006年のサッカーW杯で、日本はアジア予選を圧倒的な強さで1位通過したのに、本戦では1回も勝てなかったんです。2敗1分という結果で――ジーコが監督、チームには中田英寿や中村俊輔とか錚々たるメンバーがいたのに」

――……はい。

「あの時はアジアで勝てる戦術を重視していて、いざ本戦のW杯では世界との差が出てしまったと言われているんです。その後はアジアで勝つ戦術と世界で勝つ戦術を分けて考え、結果も残してきていますけどね。MMAでも、国内で勝てたからといってアジアで勝てるとは限らない。アジアで勝ったからといって世界で勝てるとは限らないわけです」

――サッカーの例でいえば、日本代表チームは国内でアジアだけでなく欧州や南米の代表チームとの試合経験を積むことができる。同様にMMAでも世界で勝つためには、まず国内で海外選手の試合経験を経る必要があるのか。国内のイベントでもっともっと海外選手を招聘してほしいと思いますか。

「そこでプロモーターに頼りきってはいけないですよ。言い方は悪いかもしれないけど、他人の金で強くなって海外へ――というのは、あまり好きじゃなくて。まずはジムで、選手と指導者がするべきことがある。ジムで選手を強くして初めて、選手にはチャンスが与えられるものなので」

――なるほど。まずはジムでの練習……まさにスタートラインが重要となりますね。

「スタートラインは本当に重要です。見据える先がUFC、Bellator、ONE、国内でいえばRIZINでも同じですよ。どこを、そして何を見据えて練習するのか。キャリアの積み方も大切ですよね。勝ち続けて、綺麗な戦績だからって声が掛かっても、ちゃんと選手のキャリアのことを考えていかないといけない。今回はシンガポールでUFCとRTUを見て、『日本人は海外の選手に勝てない』とは思わなかったです。まだまだ日本のMMAもやるべきことが多いけど、やるべきことをやれば――必ず勝てると信じています」

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【Special】月刊、大沢ケンジのこの一番:8月―その壱―:リネケル✖キム・ジェウン「言い訳はできない」

【写真】ここ前後の距離でやり合うということ(C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Shojiro Kameike

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は大沢ケンジが選んだ2023年8月の一番、8月5日(日・現地時間)にONE FN13で行われたジョン・リネケル×キム・ジェウンの一戦から、前回の内容が繋がる距離感について――さらに日本人と海外勢のフィジカルについて語らおう。


――大沢さんが選んだ2023年8月の一番は、どの試合ですか。

「ONE FF13のジョン・リネケル×キム・ジェウンです」

――リネケルが試合時間残り1秒で逆転KO勝ちを収めた試合ですね。

「あの試合のキム・ジェウンが良かったです」

――てっきりリネケルのKO勝ちをピックアップするのかと思いました。キム・ジェウンの良かった点を教えてください。

「もともとキム・ジェウンってストライカーじゃないですか。キム・ジェウンのほうからテイクダウンに行くのは、自分もほんの数回しかなくて。でも今回はまずキム・ジェウンからテイクダウンに行きましたよね」

――1Rにダブルレッグでクリーンテイクダウンを奪いました。

「まずストライカーであっても、あれだけのテイクダウンを持っている。今までキム・ジェウンは打撃が目立っていて、あのカードは切っていなかったと思うんですよ。それはロブ・フォントを組みで完封したコリー・サンドハーゲンも同じで」

――ストライカーのサンドヘーゲンがテイクダウンでフォントを完封しきって勝ちました。

「マルロン・ヴェラ戦もそうですけど、それまで打撃のイメージが強かったサンドハーゲンがテイクダウンで完封する。当たり前のことだけど、やっぱり全部できるから強いんだなって思います。サンドヘーゲンとキム・ジェウンだと、距離の取り方は違いますけどね。サンドヘーゲンは距離をぼやかしながら組む、みたいな感じで」

――ではキム・ジェウンの距離というのは……。

「前回の話の延長みたいになりますけど、まず至近距離で戦える。それとリネケル戦では中間距離でも強いところを見せた。だから組みにも行ける。キム・ジェウンも途中から、リネケルの打撃に対して少し気持ちで押されていたと思いますよ。でも至近距離だけでなく中間距離でも打ち合えることが分かって、また盛り返したじゃないですか」

――フィニッシュの一撃をもらうまでキム・ジェウンの展開でした。

「前回MMAPKLANETで、『日本の選手は遠い距離で戦おうとすることが多い』と言いましたよね。一発も食らわないように――よく言うのは『ダメージが溜まると危険だから』って。確かに遠い距離で戦い、勝つ日本人選手もいますよ。平良達郎君とか。でも平良君の場合は圧倒的な組み技の強さがあるから、近い距離になっても戦えるわけです。

木下憂朔君がビリー・ゴフに負けたのは、勿体なかった。遠い距離で戦うようになり、相手との距離が詰まってきたらプッシュで押して離れる。プッシュするのって、実は結構疲れるんですよ。それで最後はボディブローを食らってKO負けに」

――大沢さんは日頃から、ボクシングやキックボクシング競技と比べれば、MMAは頭部にダメージが溜まらないと仰っています。一方で、MMAに限らずボクシングでも日本人選手が海外の選手と対戦する時、海外のファイターのほうがパンチ力も強いから打たれないようにする傾向にありませんでしたか。

「いろんな選手がいるから傾向は分からないけど、その意識はありますよね。『外国人選手が相手だと一発食らったら終わってしまう』って。日本人と外国人ではフィジカルの差があるから――と」

――大沢さんから見て、それだけ日本人選手と海外選手の間には、パンチ力と耐久力に差があると思いますか。

「フィジカル面で言うと同じ階級で同じ筋量であれば、そんなに差はないと思いますよ。バズーカ岡田さんって知っていますか? 岡田さんは日本体育大学の教授で、スポーツトレーナーかつボディビルダーでもあるんです。その岡田さんが2012年から柔道の全日本男子チームのトレーナー(体力強化部門長)を務めていて、オリンピックで柔道男子のメダル獲得数が増えました。その岡田さんとお話する機会が会って、筋量について訊いたんですよ」

――それは興味深いです。岡田さんは何と仰っていましたか。

「みんな人種の違いで、日本人と海外勢ではフィジカル差があると言いますよね。でも岡田さんは『同じ階級で同じ筋量であれば――80キロぐらいまでの階級なら、日本人と海外勢でフィジカル差はなくなる』と。柔道でも、それまで筋肉の上に少しぜい肉を付けるような感じだった体つきから筋量を増やしてみると、パフォーマンスも向上したそうです」

――あの日本柔道の復活劇の陰には、要因としてフィジカル強化もあったのですね。

「MMAの話に戻ると、『韓国人選手はフィジカルが強い、日本人選手とはフィジカル差がある』と言う人は多いじゃないですか。でもそれは、筋肉の付け方や筋量の問題であって。日本人と韓国人選手の間に根本的なフィジカル差はない。で、韓国のキム・ジェウンが元UFC世界ランカーのジョン・リネケルを相手に、あの試合をやってのけた。もう日本人選手は言い訳できないと思うんですよ」

<この項、続く>

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Column MMA MMAPLANET o ONE ONE FN13   ウマウ・ケニ・ログログ エンフオルギル・バートルフー ジョン・リネケル タイ・ルオトロ ブログ マイキー・ムスメシ

【ONE FN13】試合結果 MMAは3試合、エンフオルギルとログログがボーナス獲得!!

【写真】平均月収6万~8万円ともいわれるモンゴルで、ボーナス5万ドルは本当に人生が変わる(C)ONE

5日(日・現地時間)にタイはバンコクのルンピニースタジアムでたONE FN13「Allazov vs Grigorian」開催された。

メインのONEキックボクシング世界フェザー級選手権試合=チンギス・アラゾフ×マラット・グリゴリアンを始め10試合中、立ち技マッチが5試合でグラップリングが2試合、MMAも3試合というイベントは柔術世界王者マーカス・ブシェシャ・アルメイダを破ったセネガル相撲王者オマル・ログログ・ケニ、ジャンロ・マーク・サンジャオを下したエンフオルギル・バートルフーが、5万ドルを獲得。

サブミッショングラップリングではマイキー・ムスメシとタイ・ルトロの両者もボーナスを得ているが、キム・ジェウンに大逆転勝ちを収めたジョン・リネケルはボーナス獲得を哀願マイクの効果もなく、計量失敗で5万ドルを手にすることはなかった。

10試合のコンパクト興行、MMAサイドから見るとなかなかタイトル戦線のストーリー創りは難しいというのが、現状のONE MMAに関する偽らざる印象だ。

■ONE FN13
<ONEキックボクシング世界フェザー級選手権試合/3分5R>
○チンギス・アラゾフ(アゼルバイジャン)5R
判定
×マラット・グリゴリアン(アルメニア)
<ONEサブミッショングラップリング世界フライ級(※61.2キロ)選手権試合/12分1R>
○マイキー・ムスメシ(米国)7分30秒
腕ひしぎ腕固め
詳細はコチラ
×ジャレッド・ブルックス(米国)
<キック・フェザー級/3分3R>
○タワンチャイ・PKセンチャイムエタイジム(タイ)3R0分29秒
TKO
×ダビット・キリア(ジョージア)
<151ポンド契約/5分3R>
○ジョン・リネケル(ブラジル)R4分59秒
TKO
詳細はコチラ
×キム・ジェウン(韓国)
<118ポンド契約/3分3R>
○スーパーガール・ジャルーンサックムエタイ(タイ)3R
判定
×ララ・フェルナンデス(スペイン)
<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
○オマル・ログログ・ケニ(セネガル)3R
判定
詳細はコチラ
×マーカス・ブシェシャ・アルメイダ(ブラジル)
<ムエタイ135.25ポンド契約/3分3R>
○エリアス・マムーディ(アルジェリア)1R1分38秒
KO
×エドガル・タバレス(メキシコ)
<サブミッショングラップリング180ポンド契約/10分1R>
○タイ・ルオトロ(米国)2分37秒
RNC
詳細はコチラ
×ザイード・フセイン・アサラナリエフ(トルコ)
<ムエタイ174ポンド契約/3分3R>
○ムエタイ174ポンド契約/3分3R3R
判定
×ナウゼット・トルヒーリョ(スペイン)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
○エンフオルギル・バートルフー(モンゴル)2R2分53秒
キムラ
詳細はコチラ
×ジャンロ・マーク・サンジャオ(フィリピン)
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【ONE FN13】リネケルが残り1秒でキム・ジェウンに逆転KO勝ち――だからこそ待たれる佐藤将光の次戦

<135.5ポンド契約/5分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
Def.3R4分59秒 by TKO
キム・ジェウン(韓国)

1月に佐藤将光に敗れているジェウン。佐藤にはONEから次戦のオファーが届かない中、格上のリネケルと試合する機会を得た。一方のリネケルは今回も計量をクリアできずにキャッチウエイトでの試合実施となる。

ジェウンはジャブとインローを見せながらプレッシャーをかける。リネケルは右ローを蹴り返し、左フックを見せる。ジェウンはリネケルの右にダブルレッグを合わせてテイクダウンを奪う。首を抱えるリネケルに対し、ジェウンはハーフガードでトップキープし、頭を抜いてヒジを落とす。

リネケルは脇を差して足をすくって立ち上がろうとするが、ジェウンが体を起こしてヒジ打ちを落とす。ジェウンはリネケルのバックをうかがいつつ、再びハーフガードで上になってヒジと鉄槌を落とす。ジェウンが肩固めを狙うと、リネケルがタイミングよくブリッジを利かせてトップポジションを取り返す。この試合初めて下になったジェウンだが、リネケルに有効打を許さずにラウンドを終えた。

2R、リネケルは右ストレートと右ボディ、右カーフキックを蹴る。ジェウンは右のスーパーマンパンチ。リネケルの右にダブルレッグを合わせるが、リネケルがそれを切って上になる。ジェウンはガードポジションから三角絞めを狙い、リネケルはトップキープにこだわらずに立ち上がる。

リネケルはジャブを当てて、右カーフキックと右フック。ジェウンは無理に打ち合わずにシングルレッグからボディロック、そしてバックへ。正対したリネケルはジャブを飛ばすが、ジェウンもリーチを活かしたジャブと左ミドルを当てる。さらにジェウンはシングルレッグも織り交ぜつつ、やはりジャブ・左ミドルでリネケルに距離を詰めさせない。徐々に手数を増やすジェウンはインロー、左ハイ、前蹴り。リネケルもボディブローを放つが、それをバックステップでかわす。

3R、ここもジェウンがジャブ・左ミドルで機先を制す。リネケルが右フック・右カーフを返すと、ジェウンは右ストレートを合わせる。ジャブから右ストレート、左フック、左ミドルにつなげるジェウン。リネケルもボディを打ち返すが、どうしても後手に回る。逆にジェウンはジャブ・前蹴りでリネケルの前進を止め、カウンターの右ストレート。さらにジェウンはダブルレッグや組みを見せつつ、離れ際のヒザ蹴りにつなげ、リネケルの大振りのパンチに膝を突き刺す。

このままジェウンが試合を支配するかに思われたが、前に出続けたリネケルが右フック。ジェウンのダブルレッグを切ると、右ボディを打ち込み、その右ボディから顔面への左フック。これでジェウンの顔面を打ち抜き、一気にパウンドを連打して、試合時間残り1秒での逆転KO勝利を呼び込んだ。

試合後「マスターはいつも、自分を信じろって言っていて。そしてKOできた。いつもベストを尽くしている。ベルトをもう1度巻くために3Rにカムバックした」と語ったリネケル。敗れたジェウンも最後の左フックをもらうまで試合をリードして実力を証明した試合―――だからこそ佐藤の次戦が待たれる。

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【ONE FN13】ラカイの新エースと対戦、遅れてきた草原のルーキー=エンフオルギル「少し緊張しています」

【写真】34歳のオルギル、既に非常に多くのことを経験してきたように見える(C)ONE

5日(日・現地時間)にタイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE FN13「Allazov vs Grigorian」のオープニングマッチでエンフオルギル・バートルフーが、ジャンロ・マーク・サンジャオと戦う。
Text by Manabu Takashima

大量離脱後にチームラカイのエースとしての自覚が芽生えたジャンロと、ジャダンバ・ナラントンガラグ門下のオルギルことエンフオルギル──一回り以上違う、ジャンロとの戦いの前に話を訊くと、やはりそこはモンゴル勢、非常に朴訥とした返答のオンパレードだった。


──土曜日の朝、ジャンロ・マーク・サンジャオとの試合が控えていますが、今、どのような気持ちですか。

「少し緊張はしていますが、もの凄く緊張しているわけではないです」

──オルギルは昨年のRoad to ONE Mongoliaで優勝してONEと契約、ONE FFで2連勝してから本戦デビューとなりました。同じルンピニーでの試合ですが、何か気持ちで違いはありますか。

「FFで2度戦った時は、それほど緊張はしなかったです。今回はONEの大きな大会になるので、皆の期待も大きいです。相手が期待の若手ということもあり、FFの時より少し緊張しています」

──その期待が大きいというジャンロは6勝0敗、全て1Rでフィニッシュしています。彼の実力をどのように評価していますか。

「全ての試合で1Rで勝っている強い相手です。自分にそのような経験がないので、自分にはない何か良いモノを持っているのでしょう。ただし、そういう強い選手と戦うので負けないようにしっかりと準備はしてきたつもりです」

──ではオルギルは、自身のどこがジャンロに勝っていると言えますか。

「そこは実際に肌を合わせたわけではないので、相手の実力がどのようなものが分からないのというのが正直なところです。試合が実際に始まって、初めて分かるモノかと思うので、今の段階では自分のどこが彼より優れているのかは答を持ち合わせていないです」

──ONE FF初戦の相手アドニス・セビジェーノはジャンロと同じチームラカイの選手でした。ラカイではオルギルのことを研究するのも2度目度のはずです。

「アドニスには判定勝ちをしましたが、もうジャンロは自分のことを理解しています。同時にジャンロはアドニスよりも自分の方が強いと思っているだろうし、苦も無く勝てると自信を持っているはずです。私としては負けているところはないと思っているので、頑張ります」

──4月と5月の試合の合間はタイで練習していましたが、今回は?

「今回に関してはモンゴルで準備をしてきました。ナラントンガラグ先生の下、チームメイト……若い選手たちと練習してきました。今、モンゴルは凄く良い季節ですし、しっかりと練習できたと思います」

──シャンダスMMA所属選手には日本のグラジで活躍するダギースレンがいて、ニャムジャルガルがRoad to UFCのワンマッチながら2大会連続で試合をします。彼らとオルギルと海外で戦う選手もいて、ジムには勢いがあるのではないでしょうか。

「チームの雰囲気は凄く良いです。今、海外で試合をしている選手だけでなく、将来は外国で戦いたくて練習をしている若い選手もいます。互いがパートナーとして力を出し、ナラントンガラグ先生も経験に基づいた指導をしてくれるので、チーム全体で強くなっています」

──FFより重要になる一戦かと思います。どのような試合を皆に見せたいですか。

「きっと激しい試合になると覚悟しています。ナラントンガラグ先生の指示をしっかりと訊いて、自分の持っているモノ全てを出して戦います」

──ニャムジャルガル、テムーレン、ダギースレンの活躍でモンゴル人ファイターに注目ししている日本のファンに一言お願いします。

「モンゴルの選手に興味を持ってくれて、感謝しています。良い試合をしたいと思うので、期待してください」

■放送予定
8月5日(土・日本時間)
午前9時00分~ABEMA格闘チャンネル

■ONE FN13対戦カード

<ONEキックボクシング世界フェザー級選手権試合/3分5R>
[王者] チンギス・アラゾフ(アゼルバイジャン
[挑戦者] マラット・グリゴリアン(アルメニア)

<ONEサブミッショングラップリング世界フライ級(※61.2キロ)選手権試合/12分1R>
[王者] マイキー・ムスメシ(米国)
[挑戦者]ジャレッド・ブルックス(米国)

<キック・フェザー級/3分3R>
タワンチャイ・PKセンチャイムエタイジム(タイ)
ダビット・キリア(ジョージア)

<135.5ポンド契約/5分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
キム・ジェウン(韓国)

<118ポンド契約/3分3R>
スーパーガール・ジャルーンサックムエタイ(タイ)
ララ・フェルナンデス(スペイン)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
マーカス・ブシェシャ・アルメイダ(ブラジル)
オマル・ログログ・ケニ(セネガル)

<サブミッショングラップリング180ポンド契約/10分1R>
タイ・ルオトロ(米国)
ザイード・フセイン・アサラネリエフ(トルコ)

<ムエタイ174ポンド契約/3分3R>
ルンラーウィー・シッソンピーノン(タイ)
ナウゼット・トルヒーリョ()

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ジャンロ・マーク・サンジャオ(フィリピン)
エンフオルギル・バートルフー(モンゴル)

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【Finish10】石橋佳大戦前の上久保周哉=MMAファイター─02─「今年、Road to UFCが無かったら……」

【写真】その視線の先は──(C)MMAPLANET

5日(日)に東京都港区のリバーサル田町芝浦スタジオで開催されるFinish10で石橋佳大と対戦する上久保周哉インタビュー後編。

Unrivaled02での勝利を経て、1週間後の石橋戦では吉岡戦とは違うテーマを持って臨むという。

グラップリングを戦うことでMMAファイターとして強くなると考える上久保、ONEとの契約が快勝された今、続くMMAの舞台はどのように考えているのか。

<上久保周哉インタビューPart.01はコチラから>


──では勝手ながらADCC66キロにチェレンジすることがMMAで強くなることなら、本当に上久保選手の挑戦が見てみたいですね。

「あぁ……そうですねぇ。ADCCにはそうやって出ている強い人もいますしね。出たいと言っちゃあ、出たいです。前回の予選は豪州で、今年はシンガポールですよね。以前のように気軽に出ることはできないですけど……。いつもタイミングが悪くて、出られなくて。

苦手なポジション、怖いポジションがなくなれば良いなと思ってやっています。急に足関節ができる選手になれなくても、仕掛けられた時に対処できるようにならないと」

──そのようななか、次のFINISHはケージで。ただし、トップを取るポイントはないサブオンリーです。

「ケージは戦いやすいですけど、今日とは違ったテーマを持ってやらないといけないなって思っています。漠然と戦うのではなくて」

──では石橋選手の印象を教えてください。グラップリングになるとMMAの激闘振りとは違い、要所を抑えてくるテクニシャンという風にも感じます。

「組み技のイメージは丁寧ですよね。頂柔術の人と試合をしたことがあって、意識をするということではなく普通に試合を見たことがあります。そうですね……MMAのイメージとは真逆かと勝手に思っています。強そうだし、練習で会う機会がなかったので組んでみたかった選手です」

──サブオンリー、5分✖3R。一本を狙うのか、ドミネイトしていれば時間切れでも構わないのか。MMAで強くなるために、どちらの思考で戦いますか。

「5分3Rにしてほしいとお願いしたんです。MMAを意識して。ただ一本は狙っていないといえば嘘になるし、狙っているかというとそれも違います。攻め込んだ末、それが一本になる。今日も一本を狙っていなかったわけでなくて、相手を削っていった先に一本があると考えています」

──打撃でも一発KOでなく、当て続けた先にKO勝ちがあるケースもあります。先日のONEのファブリシオ・アンドラジがジョン・リネケルを倒した試合のような。

「そういうイメージです。一緒だと思います」

──ということでFINISHの先、MMAの方はどうなっているのかと(笑)。

「MMA、やりたいですよ。やりたいと思い続けて、1年以上が経ちました。でも、練習を続けています」

──ONEとの契約が正式に切れて、他と交渉できるようになったのはいつからですか。

「実質、試合後から8、9カ月が過ぎてフリーになれた感じですね」

──狙いはRoad to UFCですか。

「Road to UFC……Road to があれば良いなと思っています」

──ちらほら出場選手の名前も聞かれ始めています。

「マジすか。誰が出るのですか?」

──〇〇〇〇〇選手。×××××選手とか△△△△選手、交渉している選手はその数倍はいるかと。

「あぁ、〇〇〇〇〇選手の名前は聞いています。Road toがなければ、今年はどこででも試合をします。欲を言えば、ローカルでも構わないので海外のどこかでやりたいですが、そこは自分がやりたいからといって戦えるわけでもない。そうやって考えると、国内でも戦います」

──リングでも戦いますか? 完全に誘導尋問ですが(笑)。

「少なくともこの1年間、1度も声が掛かっていないので僕のことは興味ないですよ(笑)」

──アハハハ。ところでUFCを狙うことで、試合の機会が逸する。それがファイターにとって不幸という、大沢ケンジ理論も正しい一面があると思います。だからこそ、上久保選手のMMAが見たいですね。FINISH後は。朗報お待ちしています。試合が決まるのが、朗報ってどういうことかと思うのですが……。

「いや、ホントそうですよね(笑)。でも、フリーランスになってまだ4カ月ほどで。半年ぐらいは掛かるモノだと思って動き出しているので。ファイターに試合は必要です。でも田中(路教)選手とか、米国に住んでいてLFAもあれだけ試合を組んでくれないモノなのですか?」

──そこは近々、田中選手に現状を尋ねようと思っています。何か動きはあったようなので。

「田中選手はRoad toは無理なのですか?」

──やはりバンタム級は気になりますか(笑)。最近自分の耳に入って来るのが30歳ではなく32歳という数字なんですよね。

「32歳ですか……。30歳ぐらいまで取りたいってことですね(笑)」

──いやぁ、そこも思うんですよ。ジェンダーレスが当然の世の中で、なぜ年齢の区別があって良いのか。もちろん格闘技なので、考慮される点はありますが、一律っぽく通例になっているのは世の中に逆行しているかと。メディカルに掛かる費用が違うというのも、ではそのメディカルの費用が高くなる年齢も、これだけ医学が発達し人生100年と言われるようになっても20年前と同じなのかと。

「確かに、そうッスよね。選手寿命は長くなっているし、40歳越えてUFCチャンピオンになる選手がいるのだから……年齢差別(笑)。まぁ、強い選手はそこを越えて行けるのでしょうけど。

でも30歳から32歳には伸びた。僕は今年で30歳になるので、ここでRoad toがなければドサ回りする覚悟はできています」

■視聴方法(予定)
3月5日(日)
午前8時55分~ツイキャスLIVE
             
■対戦カード

<ライト級/5分3R>
日沖発(日本)
土屋大喜(日本)

<ライト級/5分3R>
上久保周哉(日本)
石橋佳大(日本)

<ライト級/5分3R>
寒河江寿泰(日本)
森戸新士(日本)

<IREコンバット柔術66キロ契約/10分1R>
村田卓実(日本)
杉山廣平(日本)

<73キロ契約/5分2R>
白木アマゾン大輔(日本)
竹内稔(日本)

<フェザー級/5分2R>
竹浦正起(日本)
江木伸成(日本)

<73キロ契約/5分2R>
小野隆史(日本)
大嶋聡承(日本)

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【ONE FN07】リネケルのフルパワーを受け、見切り、いなしてジャブ&ヒザでアンドラジがバンタム級王者に

<ONE世界バンタム級(※65.8キロ)王座決定戦/5分5R>
ファブリシオ・アンドラジ(ブラジル)
Def.4R5分00秒 by TKO
ジョン・リネケル(ブラジル)

ルンピニー初のMMA世界戦はブラジル人対決、リネケル×アンドラジだ。すぐに距離を詰めるリネケルがボディフック、そこにアンドラジがヒザを合わせていく。リネケルはヒザ蹴りをキャッチしてテイクダウン、バックに回る。立たれても後方への投げでテイクダウンを取るリネケルが、胸を合わせたアンドラジにダブルレッグ。立ち上がったところでボディにパンチを集中させる。

コーナーに詰まっていたアンドラジはフックで、腰が落ちるシーンもあったがヒザを見せて逃れ、右ローに右を合わせる。アンドラジは左ミドル、リネケルは右フックから組んでテイクダウン&ボディロックで殴っていく。首相撲にも左フックを打っていくリネケル、アンドラジがジャブを繰り出す。右オーバーハンドを空振りしたリネケルに、アンドラジがワンツー、カーフ、そして前蹴りが極まる。リネケルの左フックに、左ヒザをボディに突き刺したアンドラジ。リネケルはヒザを貰っても前に出る。右ヒザから、左ヒザを突き上げるアンドラジはフックのリネケルに右カーフを蹴る。

リネケルの右カーフ、アンドラジがボディを返す。ボディから顔面のリネケルが、ワンツーで右を打ち抜かれ動きが止まる。さらに左を入れ、パンチをまとめたアンドラジが最後にヒザを繰り出し──ダメージを与えたうえで、スコア的にも試合をリードした。

2R、直ぐに距離をつめたリネケルのフックがヒット、アンドラジがヒザで何とか距離をつくる。ダブルレッグを切ったアンドラジは、カーフを連続で蹴られるがジャブを伸ばす。アンドラジのジャブ&カーフが入り、リネケルはフックから組んでボディロックへ。アンドラジはウィザーで耐えようとしたが、前方に崩され右のパンチを連打される。

胸を合わせて離れたアンドラジは、右ロー。フックを振るうリネケルだが、疲れたか動きが落ちる。それでもローを繰り出すリネケルにジャブを当てるアンドラジは、攻め急がずジャブ&ストレートで攻撃を組み立てていく。アンドラジはダブルを切っって離れると、右三日月、左ジャブ、そして右ヒザを繰り出す。リネケルも左ジャブを振るうが、ワンツーを受けて下がる。腹を守って回るリネケルは、ジャブで前進を阻まれる。パンチの威力も落ちたリネケル、切れ&スピードも陰りが見える。

3R、直ぐにワンツーフック&カーフのリネケルに対し、アンドラジはジャブを伸ばし右エルボーを狙う。リネケルもジャブを当て、ボディフックを打ち込む。足を使うアンドラジは、ジャブを見せてヒザ狙いか。とにかく前に出るリネケルはボディを2発打つが、威力がやはり落ちているか。と、ダブルレッグをスプロールしたアンドラジにフックを当てる。

アンドラジがワンツー、左ジャブ、リネケルの拳の距離に入っていく。ジャブを当て、右カーフのアンドラジはリネケルのカーフはチェックする。ジャブの差し合いから前に出たリネケル、アンドラジはここでヒザを狙う。圧を掛け、パンチを見切ろうとするアンドラジは、パンチを受けても左ジャブを返し、フックをブロックする。右のカウンターを入れたアンドラジに対し、リネケルはそれでも右を振るいダブルレッグへ。スプロールされ、体が伸びたリネケルがガードを取ってラウンドをラウンドが終わった。

4R、アンドラジがジャブを連続で見せるが、リネケルの右オーバーハンドが頭に入りバランスを崩す。ここで攻撃を纏められないリネケルは、やはりスタミナが厳しくなっているようだ。ジャブを続けるアンドラジは、左ヒザをボディに突き刺しパンチを纏める。さらに左ストレートを受けたリネケルが左を打ち返す。左フックへのヒザが急所に入り、リネケルがブレイクを要求する。すぐに試合は再開され、リネケルが組みに行くがヒザを貰って離れる。アンドラジは左ミドル、右ジャブ、そしてシングルを切る。

ロングフックに左ヒザを受けたリネケルの動きが止まる。アンドラジは左ミドル、テンカオ、左ストレート、さらに左フックと猛攻を仕掛ける。足がふらつくリネケルは、右ジャブから左フックを襞しコーナーにつまる。アンドレジはここで左アッパーと容赦なく攻め続けた。

最終回──と思いきや、インターバル中にリネケルは試合続行不可能を伝える。ベルトを肩にかけ涙の新チャンピオンは「このベルトの意味は、言葉にできない。長い旅だった。ここで世界チャンピオンになる夢を追い続けてきた。チャンピオンになれば人生が変わる。家族も信じてくれた。なんて言えば良いのか……。次? スティーブン・ローマンが来るなら戦うよ。リネケルは前に出てきた、でも全て懸けて戦いベルトは僕の手にある。人生で最高の瞬間、凄く幸せだ」と話した。


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