カテゴリー
45 AB BELLATOR o UFC アルマン・ツァルキャン イリー・プロハースカ ウマル・ヌルマゴメドフ キック クレイトン・カーペンター ショーン・オマリー ジョゼ・アルド ピョートル・ヤン ペイトン・タルボット ムイン・ガフロフ 中村倫也

UFC311:オッズ/予想と展望

イスラム・マカチェフ 1.28
アルマン・ツァルキャン 3.85
メラブ・ドバリシビリ 3.35
ウマル・ヌルマゴメドフ 1.34
イリー・プロハースカ 2.10
ジャマール・ヒル 1.77
ベニール・ダリウシュ 2.40
ヘナート・モイカ1.60
ケビン・ホランド 1.89
ライニアー・デ・リダー 1.93
ペイトン・タルボット 1.08
ハオニ・バルセロシュ 8.50
ジャイルトン・アウメイダ 1.21
セルゲイ・スピバック 4.60
ボグダン・グスコフ 1.33
ビリー・エレカナ 3.45
グラント・ドーソン 1.40
ジエゴ・フェヘイラ 3.05
ザカリー・リース 2.70
アザマト・ベコエフ 1.49
カロル・ホザ 1.39
アイリーン・ペレス 3.10
中村倫也 1.19
ムイン・ガフロフ 5.00
リッキー・トゥルシオ3.35
ベナルド・ソパイ 1.34
タギル・ウランベコフ 1.31
クレイトン・カーペンター 3.60

メイン・セミのタイトルマッチに出場する4人全員がコーカサス地方(ダゲスタン、アルメニアジョージア)出身。

メインのライト級タイトルマッチでは、ツァルキャンがタイトル初挑戦。両者はツァルキャンのUFCデビュー戦で対戦している。ツァルキャンがマカチェフ相手にレスリング勝負を挑み、マカチェフがUFCで初めてテイクダウンを奪われている(UFCで16戦した現在も2度のみ)。レスリングでマカチェフとやりあえる唯一の選手かもしれない。

前回は時間が経つにつれてマカチェフが上回っていき差が開いていった。今回は5Rマッチ。レスリング主体であることは変わりないが、打撃も強化してきているツァルキャン。前回はレスリング勝負を仕掛けたツァルキャンだが、同じ展開であれば、大きく差が開いていることはないだろう。マカチェフにとって数少ない、レスリングを警戒する必要があるツァルキャンであれば、タックルを餌にした打撃が突破口を開く鍵となるかもしれない。

マカチェフ判定勝ち。

セミでは王者ドバリシビリに対し、一族2人目のUFC王座獲得を狙うウマルが挑戦するバンタム級タイトルマッチ。ドバリシビリがタイトルを獲得した際、ランキング2位で無敗のウマルが当然挑戦者となることが予想されていたが、ドバリシビリはショーン・オマリーやピョートル・ヤンとの再戦に意欲を見せる発言をしており、さらに、防衛戦の時期として3月を示唆したため、ラダマンで3月の試合をラダマンで避けたいウマルの挑戦の機会が伸びるかと思われた。しかし、ウマルがSNS上で王者に逃げていると挑発すると、それが功を奏したのかは不明だが、1月にタイトル戦が実現することに。

ノンストップ・テイクダウンマシーンのドバリシビリだが、UFCで唯一テイクダウンを奪えなかったジョゼ・アルド戦では、ケージ押し込みでアルドを封じ込めて判定勝ちしている。また、ピョートル・ヤンとの対戦では、テイクダウンしてもすぐに立たれてコントロールする時間は短かったものの、スタンドでのカーフキック、タックルを餌にしたジャブを効かせて、ヤンの目を腫らせて完勝。タックルだけが引き出しではない。

ウマルは来週試合を控えているBellatorライト級王者ウスマンの兄で、弟同様ムエタイベースの打撃が強く、当然レスリングも強力。UFCでは6試合でテイクダウンを奪われたことがない。ドバリシビリの打撃が削っていくためのものなら、ウマルは倒せる打撃を持っている。

打撃もテイクダウンディフェンスもウマルが上かもしれないが、ドバリシビリが5R無尽蔵のスタミナで攻め続けた時、最後まで失速しないでいられるのか。あるいは、その前にウマルが打撃をヒットさせて大きなダメージを与えるのか。

ウマルKO勝ちと予想。

第3試合ではRoad To UFCシーズン1ウィナーの中村倫也UFC本戦3試合目を行う。前戦ではカーロス・ヴェラの引き込んで足関を狙ってくる、ある種負け覚悟の戦法に対し、完全に対応したものの、仕留めきることができず、1戦目に続いての判定勝ちに。今回の相手のムイン・ガフロフも1勝2敗と、ステップアップするための踏み台としては物足りない相手なので、今度こそフィニッシュ勝利したいところ。

第1試合開始は19日朝8時。アーリープレリムは8時~10時の2時間枠に5試合組まれているので、中村倫也の試合は前の試合が早めに終わった場合、9時よりも前に開始になる可能性もある。

速報します。

 

カテゴリー
45 AB BELLATOR MMA MMAPLANET o UFC UFC311 YouTube   イスラム・マカチェフ ウスマン・ヌルマゴメドフ ウマル・ヌルマゴメドフ コリー・サンドハーゲン ショーン・オマリー ジョゼ・アルド ピョートル・ヤン ヘンリー・セフード マラブ・デヴァリシビリ 朝倉海 空手

【UFC311】展望 世界バンタム級選手権試合。無尽蔵のスタミナ=王者マラブ×TD防御&蹴りの挑戦者ウマル

【写真】ロシア帽対決。世界最高峰のせめぎ合いが見られるに違いない(C)Zuffa/UFC

18日(土・現地時間)、カリフォルニア州イングルウッドのインテュイット・ドームでUFC 311「Makhachev vs Tsarukyan 2 」が行われる。二大タイトルマッチを売り物にしている2025年最初のUFCナンバーシリーズのコメインは王者マラブ・デヴァリシビリに、無敗の挑戦者ウマル・ヌルマゴメドフが挑むバンタム級タイトルマッチだ。
Text Isamu Horiuchi

(C)Zuffa/UFC

王者デヴァリシビリは、2018年9月から実に6年間にわたってUFC10連勝を記録。

ついに昨年9月、ラスベガスの球形建造物スフィアで行われたメガイベント「ノーチェUFC 306」のメインイベントにてショーン・オマリーへの挑戦を実現させた。この大舞台でデヴァリシビリは、持ち前の唯一無二の戦い方を見事に貫き──無尽蔵のスタミナを武器に常に動き続けると、オマリーの打撃を避けてテイクダウンを何度も成功させ、組技で圧倒し続けた末に3-0の判定で完勝。フェザー級元王者イリア・トプリアに続きジョージア共和国出身者として二人目のUFC王座に輝いた。


対するウマルは、そのファミリーネームが示すように29戦無敗のまま引退した元ライト級王者カビブ・ヌルマゴメドフの従兄弟にして、Bellatorで無敵を誇るライト級王者ウスマン・ヌルマゴメドフの兄。幼少時から取り組んできた打撃と、カビブの父である故アブドゥルマナプ門下で鍛え上げたレスリング力を武器にここまで18戦無敗、UFCでは6連勝中だ。

(C)Zuffa/UFC

あまりの強さが原因となったか、ウマルは上位勢から対戦がなくランキング上位に顔を出せなかった。

ようやく昨年8月にランキング2位のコリー・サンドハーゲン戦が実現。リーチに勝るサンドハーゲンの打撃を巧みに捌き、テイクダウンやバック取りを成功させスクランブルも制し、中盤以降は打撃でもペースを握って3-0で快勝し挑戦権を手にした。

さて同じ東欧系の両者だが、戦前は周囲が呆れるほど派手な言い合いを展開している。発端はウマルがSNS等で、新王者の座に就いたデヴァリシビリが自分以外の相手を挑戦者候補として挙げたことを受け「マラブは俺を恐れ、避けている」と書いたこと。これを見たデヴァリシビリは怒り心頭。先月の記者会見前の舞台裏でウマルを見かけるやいなや「お前はなぜ俺を侮辱する! こっちに来い!」と迫って関係者に制止された。

頭に血を昇らせたまま臨んだ記者会見にて王者は「俺はいつもウマルに敬意を表してきたのに、突然俺にトラッシュトークを仕掛けやがった!」、「こいつは苗字がヌルマゴメドフだというだけで、実績も資格もないのにタイトルマッチをプレゼントされたんだ。お前などレスリングがまったくできないサンドハーゲンに勝っただけじゃないか!」とまくし立てる。

対するウマルは笑って「カイ・アサクラなんてデビュー戦でタイトル戦を与えられたぞ。実績とか資格があるとか、誰も気にしないだろう」と、マラブの友人でもある朝倉海を引き合いに出して切り返す。が、王者は聞く耳を持たず「お前は男になりやがれ! お前は男じゃない。クソ野郎だ! お前へのリスペクトを完全に失った。本物の男はオンラインでトラッシュトークなどしない!」と声を荒げる。

ウマルが「ちょっと落ち着いてくれよ。俺はあんたの国についても、国民についても、あんたの性格について何か言ったか? 何も言っていないよな。ただあんたが俺を避けていると言っただけだぞ」と指摘するも、ますますヒートアップした王者は「嘘を言うな! お前は自分が書いたことを忘れたのか。お前の言葉は全て嘘じゃないか!」と止まらない。やがて両者とも母国語ではない英語でお互いの言葉に被せ合い収拾が付かない状況になると、見かねたデイナ・ホワイト代表が介入して「次の質問に行ってくれ」と強引に話を打ち切り、場内からは笑い声が漏れた。

が、その後も王者は──ノンストップでテイクダウンを仕掛け続けるオクタゴン上とまったく同じ要領で──甲高い声で挑戦者に罵声を浴びせ続け、ウマルも返すが、止まらない王者がそこに言葉を重ねて訳が分からなくなる展開が続く。結局両者は似たような口論を延々と繰り広げては、誰かが割って入って強制終了される場面を合計三度繰り返したのだった。

今まで「強いだけで面白味のない人間」としてスポットライトを与えられる機会が少なかった王者デヴァリシビリだが、今回の一件を経て「ヤバい奴」というイメージが完全に定着。良い意味でも悪い意味でもキャラが立ち、ファンの注目を浴びる存在となった。

ちなみに、このたび完全に貰い事故で王者にディスられてしまったサンドハーゲンは、今回の試合ではウマル応援派となることを宣言している…。

そんな因縁の両者による対決だが、下馬評ではウマルが大きくリードしている。挑戦者優位説の最大の根拠は、ウマルは王者の最大の武器であるテイクダウンを防ぐだけのレスリング力があると思われること、さらに打撃の技術で大きく王者を上回っているということだ。

この意見を代表するのが、前戦にてウマルに敗れたサンドハーゲンだ。「マラブの勝ち筋が見えないよ。打撃でも上回れないし、テイクダウンも取れるとは思わない。ウマルがテイクダウンを凌いで打撃の距離をキープして勝つだろう。ウマルはスナイパーさ。みんな彼がどれだけ速いか分かっていない。蹴りがどこから来るかも分からないんだよ」と、実際にウマルの強さを体験した者ならではの意見を披露している。(もっとも彼は、例の記者会見以来アンチ・デヴァリシビリであることを宣言しているので、そこは差し引く必要があるかもしれない)

ここで留意すべきは、王者の真の強さはテイクダウン技術の高さや成功率自体にあるわけではないということだ。むしろ、相手にどれだけ凌がれようが立たれようが、幾度でもテイクダウンを試み続けることのできる底無しのスタミナにこそ、デヴァリシビリの真骨頂がある。

2022年8月のジョゼ・アルド戦ではなかなかテイクダウンを取れなかったデヴァリシビリだが、ケージに押し込み続けてアルドにテイクダウンの防御以外何もさせずに勝利。続く2023年3月のピョートル・ヤン戦では、なんと5Rで合計49度テイクダウンに入るという目が眩むようなUFC記録を叩き出し、ヤンに反撃の機会を与えずに完勝している。

(C)Zuffa/UFC

続く翌年2月のフリースタイルレスリング五輪王者ヘンリー・セフード戦では、1Rに上を取られてコントロールを許したデヴァリシビリ。

しかし2R以降は持ち前の超ハイペースで攻め続けてセフードを消耗させ、やがてレスリングでも圧倒。最終3Rでは高々と抱え上げ叩きつける派手な場面まで作って快勝した。

驚異的なスタミナで動き続け、レスリング技術で自らに勝る相手をも波状攻撃で疲弊させ、最後には呑み込んでしまう。誰もが分かっているはずの戦い方を、まだ誰も攻略できていない。

誰よりもMMAレスリングを熟知するカビブ・ヌルマゴメドフの教えを受け、同日にメインで防衛戦を戦うライト級絶対王者イスラム・マカチェフらダゲスタンの超弩級レスラーたちと日々を過ごしているウマルは、王者のノンストップ・テイクダウン攻勢をどのような形で無効化するつもりなのか。

ウマルは前回のサンドハーゲン戦においてトラックポジションからバックに移行する等、コントロールの引き出しの多さを見せている。もし王者のテイクダウンを防ぐだけでなく、背中を制する、上を取ることができれば波状攻撃自体を止めることができる。が、それを序盤だけでなく中盤以降も続けることができるのか、それとも今までの対戦相手同様、後半には呑まれていってしまうのか。最高レベルのテイクダウン&スクランブルの攻防、その長期的展開がこの試合の最大の見どころとなる。

もう一つ着目したいのは、スタンドの攻防におけるウマルの蹴り技だ。弟のウスマンとともに幼少時からムエタイを習っていたとのことだが、むしろ空手を想起させるしなやかな二段蹴りや伸びのある前蹴りを使いこなす。もちろん、相手の片足を抱えて軸足を刈って倒すことを得意とする王者に対して、掴まれる可能性のある高い蹴りを放つことにリスクはある。

ところで前戦のオマリー戦においてデヴァリシビリが唯一ピンチに陥ったのは、5Rに前蹴りで腹を効かされた場面だった。挑戦者が王者のテイクダウンを封じ続け、やがてその波状攻撃の勢いが弱まった時、ウマルの蹴りが試合の行方を大きく左右するダメージを王者に与える可能性はありそうだ。

天下無敵のデヴァリシビリ・スタイルに、最高レベルの組技と打撃を併せ持つ、世界最強ヌルマゴメドフ一族のウマルがいかに立ち向かうか。限りなく高いMMAの頂点をめぐる戦いを、堪能したい。

■視聴方法(予定)
1月19日(日・日本時間)
午後8時00分~UFC FIGHT PASS
午前12時~PPV
午後7時 30分~U-NEXT

The post 【UFC311】展望 世界バンタム級選手権試合。無尽蔵のスタミナ=王者マラブ×TD防御&蹴りの挑戦者ウマル first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 MMA MMAPLANET o Special UFC   ショーン・オマリー ジョゼ・アルド ボクシング マラブ・デヴァリシビリ ライカ 大沢ケンジ 柏木信吾 水垣偉弥 良太郎

【Special】月刊、良太郎のこの一番:9月 マラブ×オマリー「二歩下がって一歩出る、マラブの制空権」

【写真】9月の一番は水垣・良太郎両氏ともにマラブ×オマリーをチョイス。ぜひ両者の言葉を読んだうえで、この一戦を再考していただきたい(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾、良太郎というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は良太郎氏が選んだ2024年9月の一番──9月14日に行われたNOCHE UFC 306のマラブ・デヴァリシビリ×ショーン・オマリー、水垣氏も選んだこの一戦を、水垣氏とは異なる目線で語ろう。

【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:9月
マラブ×オマリー「マラブは変な人? だからあれをやりきれる」

――9月の一番、良太郎選手にもマラブ・デヴァリシビリ×ショーン・オマリーの一戦を選んでいただきました。

「打撃という部分にフォーカスして、この企画をやらせてもらっていて、この試合はストライカーVSストライカーではないんですけど、僕は指導する立場でもあるので、ストライカーにとっては嫌な展開を作られた試合でした。しかもこの試合はUFCが誇る超スター選手のオマリーvsオマリーのような華がはないけど実力があるマラブという図式もあり、試合前のトラッシュトークも含めて、こういう試合展開になることは予想していた人も多かったと思うんですね。純粋な打撃だけのスキルとは違う部分で、打撃にフォーカスする試合としてセレクトさせていただきました」

――オマリーのようなストライカーからすると、テイクダウンを狙ってくる相手に対して、どう打撃を当てるか。これはMMAにおける永遠のテーマだと思います。

「多くの人がマラブが無限のスタミナでひたすらテイクダウンを狙って削る、もしくはカウンターパンチャーのオマリーが打撃を入れる、そういう試合をイメージしていたと思います。そこでいうと僕はスタンドの距離=制空権が鍵を握っていると思いました。

 オマリーはロングレンジを活かした打撃を当てたくて、5Rに三日月蹴りを効かせた場面もありましたが、あの時点でオマリー自身がスタミナ切れしていて追い足がなかったですよね。ああやって三日月蹴りで削って、そこから打撃で仕留める展開に持ち込みたかったと思うのですが、その三日月蹴りを当てたのが最終ラウンドで、試合の残り時間とお互いのスタミナを考えたら、あそこから仕留めないといけないオマリーよりも、最悪くっついて逃げ切ればいいマラブだったら、マラブの方が有利でしたよね。

 1Rはお互いスタミナもある状況ですが、マラブが上下のフェイントで揺さぶりをかけて組みついてテイクダウンを仕掛けて。あれを凌ぐ攻防のなかでオマリーはかなりスタミナをロスしたと思います。オマリーはカウンターパンチャーなので、あそこでロングレングのパンチを射抜いたり、カウンターのヒザ蹴りだったりを当てられればよかったのですが、それが出来なかったですよね」

――なぜオマリーはそれが出来なかったのでしょうか。

「これは対戦した選手にしか分からないと思うのですが、おそらくマラブはスタンドの距離が独特なんですよ。オマリーもVSストライカーだったら、スイッチを使って体の軸を色々と使い分けながらパンチを打ち抜くので打撃のゾーンが広くて、距離が独特なんですね。ただこれがVSマラブになると、マラブは打撃が当たらない距離でステップしていて、そこからダッシュ力を活かして入ってくる。相手からするとマラブはかなり遠い位置に感じると思います。

 それが特に分かりやすかったのが4Rにマラブがテイクダウンを奪った場面で、1~3Rまでの動きを見ていてもそうなのですが、オマリーが一歩前に出ると、マラブは二歩下がるんです。そしてすぐに一歩前に出る。そうするとオマリーが一歩下がったとしても、そこはマラブにとってはテリトリー内なんです。4Rにオマリーがフェイントをかけて前に詰めようとしたところで、マラブにジャブから綺麗にタックルに入られてテイクダウンされたのは、その距離のトラップに引っかかったからですね」

――あのテイクダウンはメラブの距離とステップに要因があった、と。

「スイッチする選手はステップせずに歩きながら前に出られる分、どうしても距離設定が緩くなる場面があるんですね。今回はそこにマラブが打撃ではなくカウンターのタックルを合わせたという形ですね。しかも今回は5Rマッチでお互いスタミナを消耗していて、特にオマリーは後半のラウンドになると下半身からの連動で強い攻撃を出せない・追い足がない状態に追い込まれていました。

 3Rあたりはオマリーも距離を探れているのかなと思ったのですが、いかんせんマラブがさっきのステップインでオマリーの体力とやることを削っていたので、オマリーとしてはマラブの泥沼にハマっていった感じですよね。どこまでマラブが意識していたか分かりませんが、2Rにオマリーにキスして余裕をアピールして挑発したじゃないですか。ああいう心理戦の駆け引きもあったと思います」

――スイッチヒッターに対して打撃ではなく、タックルのカウンターを合わせたということですか。

「そうですね。オマリーがスイッチして一歩前に出て、マラブが一歩下がるだけだったら、オマリーがプレッシャーをかけられるんですけど、二歩下がるとプレッシャーがかからないんですよね。しかもそこからすぐマラブがステップインしてきて、距離を取ろうと思った時には、マラブにタックルに入られる距離になっているという。

 もしオマリーが1Rから組まれる覚悟でローで足を潰すとか、ヒザのフェイントを入れるとか、そういう選択をしていたら展開は変わっていたかもしれないです。オマリーもどうしても自分のパンチに自信があるから、制空権を支配したいという気持ちがあったと思うんですよね。それが今回に関してはマラブに遠い距離に居座られて、あのダッシュ力で距離を詰められる=制空権を支配できないという時間が長かったように思います」

――オマリーにとっては自分のやりたい攻防に持ち込めなかったわけですね。

「オマリーからすると相当やりづらかっただろうし、試合をしながらイライラしていたと思います。最後は体力的にいけなかったのもあるし、どうしても1Rから4Rまでの攻防で、打撃が当たらなかったら組まれる→トップキープされて時間を使われる→判定になったら負けるということも頭に刷り込まれていたと思います」

――またマラブはテイクダウン以外でかなり細かいパンチのフェイントを入れたり、目線を散らしたり、体を上下させたり、常に動き続けていますよね。あれは打撃の観点から見ていかがですか。

「あれはうざったいですね。フェイントには動くフェイントと動かないフェイントがありますが、マラブは典型的な動くフェイントで、常に上下に体を動かして、基本的にテイクダウンにつなげる打撃なんだけど、必ず当たる打撃も混ぜてくる。それでいて遠い距離にいるなと思ったら、ものすごいダッシュ力で組んできて、試合後半になっても疲れることなく、それを延々と繰り返してくるわけだから…ストライカーからしたらたちが悪いですよ(苦笑)」

――あのファイトスタイルだけだったら対応できるかもしれませんが、あれを5R続けられるスタミナがあることが厄介ですよね。

「はい。もしかしたらオマリー陣営は、さすがに後半は動きが落ちるだろうから、そこで勝負しようとしていたところもあったのかなと思うんです。競技は違いますけど、ボクシングの井上拓真×堤聖也みたいに、みんなさすがに堤選手は後半ペースが落ちると思っていたら、結局最後まで落ちなかったじゃないですか。ああなると対戦相手からすると手遅れなんですよ。しかもオマリーのようなカウンターパンチャーは、玉砕覚悟で前に出て打撃を当てるのが決して得意ではないので、後半のラウンドで一気に逆転という形にはならなかったですよね」

――ちなみにもし良太郎選手の選手あマラブと戦うことになったら、どういう作戦を立てますか。

「僕だったら…1Rはイーブンに動かせますね。結局マラブのリズムに合わせちゃうからやられるわけで、だったらこっちもあえて乗っかる。マラブと同じことをやるわけじゃなく、こっちはこっちで色んな打撃のフェイんをかけて動く。もちろんスタミナはロスしますけど、その方がマラブもマラブでやりにくいと思うんです。オマリーはどちらかと言うとフワフワ~と動いてドン!と当てるタイプですが、逆に最初からパンチとかヒザ蹴りをどんどん見せていった方がよかったかもしれないです。これもすべてたらればの話ではあるんですけどね」

――最近のMMAは判定で打撃・ダメージが重視されやすくなっていますが、UFCのチャンピオンの顔ぶれを見ると組み技系の選手も多いですよね。

「やっぱり時代は回るんですよ。そういうなかでイリア・トプリアのような選手がチャンピオンになるところが面白いですよね。ただUFCのトップレベルの技術を10段階で評価したら、すべての技術が7~8はあると思うんですよ。そのうえで10ある技術で勝負しているというか。トプリアやジョゼ・アルドのような純ストライカーに見える選手でも、元は柔術黒帯だったりするわけじゃないですか。

 きっとそれは練習環境が以前よりも整備されていて、自分にあったスキルを学べるコーチや指導者がいるから、ベースにある格闘技を活かしながらMMAファイターとして完成度を上げられるからだと思うんですよね。そういう部分でもUFCの試合を見ていくのは興味深いですし、これだけレベルが上がったもの同士が戦うのに『嘘だろ?』『こんなのある?』みたいなフィニッシュも起こるわけだから、純粋にUFCは見ていて面白いですよ」

――今回もたっぷり語っていただき、ありがとうございます!

The post 【Special】月刊、良太郎のこの一番:9月 マラブ×オマリー「二歩下がって一歩出る、マラブの制空権」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 MMA MMAPLANET o Special UFC アルジャメイン・ステーリング ウマル・ヌルマゴメドフ コナー・マクレガー コリー・サンドハーゲン シャーウス・オリヴィエラ ショーン・オマリー ジョゼ・アルド ダナ・ホワイト ネイト・ディアス ピョートル・ヤン ボクシング マラブ・デヴァリシビリ ライカ 大沢ケンジ 柏木信吾 水垣偉弥 良太郎

【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:9月 マラブ×オマリー「マラブは変な人。だからあれをやりきれる」

【写真】ファイトスタイルそのものは疲れるスタイル。それを5Rやりきってしまうのがマラブの強さだ(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾、良太郎というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2024年8月の一番──9月14日に行われたNOCHE UFC 306のマラブ・デヴァリシビリ×ショーン・オマリーについて語ろう。


――9月の一番はマラブ・デヴァリシビリ×ショーン・オマリーの一戦を選んでいただきました。この試合はマラブの強さが目立った試合だったと思います。

「色々と僕の中でも見どころがあった試合で、マラブのようなタックルマシーンに対して、オマリーのようなストライカーがどう戦うのか。そこは自分自身の現役時代からの永遠のテーマでもあり、この試合でもそこを主に見たい、もっと言うならオマリーがどういう戦い方をするのかを見たかったんですね。結果的にはオマリーがストライカー病というか、マラブのタックルを警戒して手が出ないという、よくあるパターンにハマっちゃったなっていう感じでしたね。と同時に、このテーマはまだまだ続くなと思ったのが正直な感想です」

――試合全体を通して見ると、1Rに2回組まれてテイクダウンを許してしまったことが、2R以降の試合展開に影響を与えたと思います。

「ずばりそれだと思いますね。1Rが始まってテイクダウンされるまでのオマリーは、割と前蹴りだったり攻撃が出ていたんですよね。逆にマラブはいつもよりちょっとな控えめで、タックルに行きにくそうに見えました。でもそこで1回マラブがテイクダウンを取ったことで、徐々にオマリーの手が出なくなってきて。オマリーからすると打撃を出すとマラブに触れる、警戒して打撃を出せないというパターンにハマっていった印象です」

――仮に組まれたとしてもマラブのクリンチをはがしたり、完全には寝かされない状況を作っていれば違ったと思うのですが、しっかり組まれてしまった印象があります。

「そうなんですよね。結構ちゃんと組まれてしまって、その後のラウンドもすぐに立ち上がることができない展開になってましたよね。それだけ1Rにテイクダウンされた時に、もうテイクダウンされたくないなというのがオマリーの中で出てきちゃったんだと思います。マラブは割とテイクダウンしても相手を立たせるタイプなんですけど、オマリーは一度組まれて尻餅をつかされると、そのまま動きが止まったり、下になる展開が長かったように見えました」

――もちろんオマリーもレスリング・組み技への対応はできる選手だと思いますが、マラブのような超トップ選手との対戦は少なかったと思います。

「まさにそれもあって、正直過去の対戦相手を見ると、あまりマラブのようなタイプとはやってないんですよね。アルジャメイン・ステーリングとやった試合が初めてレスリングが強力な相手とやった試合だと思うんですけど、アルジャメイン戦も2R開始直後にパコーン!と一発で倒しちゃったので、レスリングや組みの技術をちゃんと見ることが出来ないままだったんですよね。そういう部分で、マラブとやってどうなのかなと思っていたのですが、 やや安易にグラウンドで下になったり、ガードポジションを取ったりしていて。オマリーはグラウンドで下からガンガン戦えるタイプでもないと思うのですが、そこで立ちに行く感じでもなかったので、組まれる・テイクダウンされるとキツいというのが見えちゃいましたよね」

――どうしてもマラブクラスのレスリング力がある選手と対戦すると、その部分で差が出てしまいますよね。

「そこは相性の問題もあると思います。ストライカーとレスラーは、単純に言うとどうしてもストライカーは相性が悪くて、その相性の悪さがもろに出ちゃったのかなと。例えばジョゼ・アルドやピョートル・ヤンがマラブとやった時、アルドは下がりながらテイクダウンに対処する感じで、テイクダウンは許さなかったんですけど、その代わりにケージに押し込まれ続けたんですよね。で、ヤンはスイッチを使いながら対応しようとしたのですが、マラブにそこを上回られてしまうという試合でした。じゃあオマリーはどうなんだ?というところだったのですが、結果的にオマリーはアルドやヤンのところまではいかなかったなというのが正直なところですかね」

――見ている側からすると、テイクダウンをディフェンスできないなら、打撃を思い切り当てにいくという選択肢はなかったのかと思うのですが、そこはファイター側からするとどうなのでしょうか。

「あとは一発を当てに行きたいは行きたいんですけど、結局そこで組まれちゃうんで。一発を当てるタイミングを探っているうちに結局(試合が終わる)なんですよね。ようは一発を当てるための距離になる=組まれる距離なので、行ったら組まれるという感覚もあるんですよ、タックル系の選手に対しては。だから一発を当てるための行き方が難しいんですよね、単純に思いっきりいけないという」

――その一発を当てるためには組み立ても必要だし、そうしているうちに組まれるリスクが大きいということですね。

「一発にかけるということは、ある程度の強打を当てて、その一発でKOするなり、ダウンさせるなり、大ダメージを与えるのが欲しいじゃないですか。リスクを追う分の見返りが欲しいというか。それに見合う一発を当てる距離まで詰めるというと、またそこですごく難しくなってきますよね」

――あとマラブの方もテイクダウン以外でかなり細かいパンチのフェイントを入れたり、目線を散らしたり、体を上下させたり、常に動き続けていますよね。

「動きそのものが多いですよね。絶対打撃が届かない距離でもシャドーボクシングやスイッチしたり、地味な動きなんですけど、それをずっと繰り返している。ただタックルだけ狙っているより、こういう動きをやられると嫌ですよね」

――相手からすると、あれだけちょこちょこ動き続けられると、フェイントだと分かっていても引っかかってしまうものですか。

「あとはやっぱりああやって動いている中で、本物と偽物の(動きの)違い、本当に来る時と来ない時って、 何もしないでバッ!と来るより、色々と動いてる中でバッ!と来る方が、対応も遅れると思うんですよね。そういう部分はあると思います。だからあれだけ目の前で動き続けられていたら、やりにくいと思いますね」

――オマリーも5Rに三日月蹴りを効かせる場面がありました。メラブは試合後に「効いていない」と言っていましたが……。

「あれは効いていたと思います。分かりやすくお腹をさすってましたからね」

――右の三日月蹴りをもらったあとのシーンですが、あの前の左の三日月蹴りも効いていたと思います。

「あれも絶対効いてましたね。ボディが効いたかどうかは本人しか分からないし、効いていても『効いてない』って言い張ると思うんですけど、セラ・ロンゴ・ファイトチームで一緒に練習していた(井上)直樹くんの話だと、練習でもマラブは腹を効かされていたことが結構あると言っていたんで、マラブは腹が弱いんじゃないか説も出てますね。だから試合展開や相性もあるんですけど、あれがもっと早い段階で来ていたら、面白かったのかなという気もしますよね」

――それまでの打撃とは違い、明らかにオマリーのプレッシャーがかかっていた時間でした。

「そうですね。あれはオマリーが5Rに判定で勝つのがほぼダメだろうと思っていた中での開き直りがあったから、また前に出始めたんだと思います。もうテイクダウンされてたとしてもしょうがないって気持ちがあったからこそ、もう1回(打撃を)作り直したんじゃないかなと思います」

――5Rに弱みを見せたメラブですが、あのテイクダウンを軸にしたファイトスタイル&無尽蔵のスタミナは真似できないですよね。

「あのスタミナは異常ですね。ファイトスタイルそのものは疲れるスタイルだと思うんですよね。今回の試合はトップを取ってからキープする時間が長かったですが、他の試合では結構立たせるんです。で、また倒す。倒して、立たせて、倒して…を繰り返して倒してテイクダウンの数で印象つけるみたいな、めちゃめちゃしんどい戦い方をしているので、それが出来るスタミナは尋常じゃないですね。対戦相手=タックル受ける側としては、やっぱりしつこくタックルを切って切って、マラブが疲弊してきてタックルに入れなくさせるというのも1つの作戦としてあると思うんですよね。ただマラブは疲弊しないから、その希望がなくなってしまうという」

――あれだけスタミナがあるとテイクダウンの攻防でマラブを疲れさせるという作戦もチョイスできません。

「テイクダウンそのものもバーン!と入って綺麗に倒しちゃうじゃないですか。一回ケージに押し込んで、低い姿勢でケージレスリングを頑張って倒すという展開が少ない。テイクダウン能力の高さも、マラブがバテにくい要素だと思います」

――水垣選手はどういうタイプだったらマラブを攻略できると思いますか。

「攻略法がなかなかないですよね(苦笑)。それこそシャーウス・オリヴィエラみたいに打撃があって、グラウンドで下になっても戦えるとか。そういうファイターだったら可能性があるのかなっていう気はするんですけどね」

――マラブとレスリング勝負できるか、レスリングそのものを捨てて勝負するか。

「そうなんですよ。さっきも話したようにジョゼ・アルドはほとんどテイクダウンを許していないんですけど、テイクダウンディフェンスするためにずっと押し込まれたままで判定負けしているんです。テイクダウンされないことに集中すると打撃が出せないし、相手がバテない限りは押し込まれ続けるので、ポイントを取られちゃいますよね。だからメラブ攻略は本当に難しいです。

あと試合とは関係ないですけど、メラブってちょっとおかしいじゃないですか。試合が始まった瞬間、オマリーのセコンドと言い合ったり、試合中にオマリーにキスしてハーブ・ディーンにめちゃくちゃ怒られたり。あとは試合前にインスタグラムで氷が張ってる湖に飛び込んで、練習でカットしたところを縫ってる動画をアップしてダナ・ホワイトに『アイツはレベルが違うバカだ』ってキレられてましたよね。普通はあんなことしないですよ(笑)」

――大分変わっていると言えば変わっていますね…。

「基本的に変な人なんだと思います(笑)。でも、だからこそああいうファイトスタイルをやりきれちゃうというか。普通は5Rマッチでああいう試合はやろうと思わないし、それをやっちゃうというのは何かぶっ飛んでる新しいタイプですよね」

――敗れた方のオマリーについても一言いただけますか。

「あと僕の中でオマリーとコナー・マクレガーを重ねていて、マクレガーもここで負けるだろうと思われている試合で勝ち続けて、オマリーもそういうキャリアだったと思うんですよ。マクレガーはネイト・ディアスに負けてライト級に上げてタイトルを獲っていますけど、最後はハビブ・ヌルマゴメドフにやられて、それからスーパーファイトを中心にやっていくスーパースター路線に行ったじゃないですか。じゃあオマリーはここで負けて、これからどうなっていくのかなと。そこにも凄く注目しています」

――さてマラブの次の挑戦者にとしてウマル・ヌルマゴメドフが噂されています。

「そこは僕、すごく楽しみなんですよ。ウマルもレスリング力があるから、そこでも勝負もできるし、打撃という部分ではウマルの方が上だと思うんですよね。だから打撃+レスリング力でどこまでマラブに対抗できるのかっていうところですよね」

――前回水垣さんにウマル・ヌルマゴメドフ×コリー・サンドハーゲンを解説していただきましたが、マラブよりもウマルの方が技の引き出しは多い印象です。

「例えばウマルが一回・一発のテイクダウン勝負で負けたとしても、そこからのスクランブル勝負で後ろに回るとか、下からでも組み勝つみたいなものを見せてくれたら面白いなと思います。何度か言っているようにマラブが立たせるタイプなので、仮にマラブに3回テイクダウンされても立ち続けて、逆にウマルがテイクダウンもしくはスクランブルで上を取ってキープする。それをしつこくやれば、ウマルも強いと思います。あとはクリーンテイクダウンできなくても、スタンドバックの攻防に持っていければ、ウマルがマラブにヒザをつけさせて殴って、もう一回立って打撃をやるとか、そういうことが出来れば、ウマルにもチャンスが出てくると思いますね。この試合はぜひ実現させてほしいです!」

The post 【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:9月 マラブ×オマリー「マラブは変な人。だからあれをやりきれる」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 MMA MMAPLANET o Report UFC UFC307 ジョゼ・アルド ブログ マリオ・バウティスタ

【UFC307】ケージに押し込み続けたバウティスタが、TDは奪えず大ブーイングもアルドからスプリット勝利

<バンタム級/5分3R>
マリオ・バウティスタ(米国)
Def.29-28.29-28.28-29
ジョゼ・アルド(ブラジル)

バウティスタが右カーフを蹴る。さらに左のローとハイを狙う相手に、アルドが右ろーを蹴る。手数の多いバウティスタがワンツー、左インローからボディを殴って行く。バウティスタは右を見せて組みつくと、ケージにアルドを押し込む。このままケージ際の攻防が続き、その他の試合と同様に容赦ないブーイングが浴びせられる。バウティスタがヒザ、ボディを殴るアルドが回って離れる。アルドは右ローを蹴るが、右を被弾する。続く組みは即離れたアルドは右ハイをガードした直後に、組まれてケージに再度押し込まれる。

ここも回って距離を取り直したアルドが、パンチで前に出るように。スイッチしたバウティスタは、オーソに戻してローから右ストレートを当てる。アルドが右フックを返す。バウティスタは左ミドル、スピードと手数で上回っている。それでアルドがワンツーで、右ストレートを打ち込む。ハイをスウェイでかわしたアルドに大きな歓声が起こり、初回が終わった。

2R、右のヒザを狙ったアルド。バウティスタはテイクダウンのフェイクから左を当てる。アルドはスピードのあるジャブを当て、組み狙いにヒザを突き刺す。取られた足を抜くと、リードフックからガードを固めて左のヒザ、ジャブを伸ばす。そして前に出てワンツーのアルドに対し、流血のバウティスタは素早いコンビから組みつく選択をする。肩パンチのバウティスタは、シングルを狙うがテイクダウンを奪えない。結果離れたアルドが、カウンターのヒザからワンツーを放つ。

バウティスタはジャブ、アルドもジャブを返すとバウティスタはここも組んでケージへ。残り1分からのケージ際での攻防は、35秒続いた。打撃の間合いに戻り、跳びヒザを見せたバウティスタはすぐにテイクダウンを狙い、時間となった。

最終回、直ぐにワンツーを仕掛けたアルド。届かなったが、ジャブの差し合いで、右フックを振るう。動き続けるバウティスタが、そこには強振がないという一面が隠れている。逆にアルドは、疲れつつも倒すパンチの機会を伺っている。と、バウティスタは左を見せてシングル。7度目のテイクダウン狙いも、クリンチ戦となって時間を使う。右腕を差し上げ、ヒザ立ちに持ちこもうというバウティスタ。アルドはそれ以上は許さず、立ち上がる。

押し込み続けるバウティスタはブレイクを命じられるが、やるべきことはやっているという見方も成り立つ。リスタート後にダイレクトにダブルレッグで組みつたバウティスタに、大きなブーイングが送られる。ブーイングもどこ吹く風のバウティスタから離れたアルドが、前に出てパンチを振るう。それでも徹底して組んでいくバウティスタは、最後の10秒で離れた跳びヒザも空を切る。そのまま手は出しても、クリーンヒットが無かった両者──試合はタイムアップとなり、バウティスタがスプリット判定勝ちを手にし──地鳴りのようなブーイングを浴びる。

「たくさん動いて、アクティブでい続けること。ただケージ際の攻防が続いたのは、僕の責任だ。ただし、彼が何もできなかったのも事実。押し込み続けたのは作戦、僕はここに勝ちに来たんだ」という勝者に、ブーイングが止むことはなかった。


The post 【UFC307】ケージに押し込み続けたバウティスタが、TDは奪えず大ブーイングもアルドからスプリット勝利 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 AB MMA MMAPLANET o UFC UFC307 YouTube アレキサンダー・ヘルナンデス アレックス・ポアタン アレックス・ポアタン・ペレイラ イアズミン・ルシンド イホール・ポティエリア オヴァンス・サンプレー オースティン・ハバート カーラ・エスパルザ ケイラ・ハリソン ケトレン・ヴィエイラ ケヴィン・ホランド ジュリアナ・ペニャ ジョアキン・バックリー ジョゼ・アルド スティーブン・トンプソン セザー・アルメイダ ソルト ティム・ミーンズ マリオ・バウティスタ マリナ・ホドリゲス ラケル・ペニントン ロマン・デリツ 澤田千優

【UFC307】ラストファイトへ、カーラ・エスパルザ「長い旅路の終わり。でも楽しむためにココに来た」

【写真】ファイトウィークとは思えない幸せな過ぎる家族の一コマ (C)MMAPLANET

5日(土・現地時間)、ユタ州ソルトレイクシティのデルタ・センターで開催されるUFC307「Pereira vs Rountree」でカーラ・エスパルザが1年11カ月振りにオクタゴンに戻ってくる。
Text by Manabu Takashima

昨年9月に母になったエスパルザが、出産後に初ファイトをテシア・ペニントンと戦う。2度のUFC世界ストロー級王者は何を想い、母としてケージに足を踏み入れるのか。彼女の心境を尋ねたくインタビューを試みると、エスパルザは「この試合が最後」と話し、その心境を語ってくれた。


――カーラ、ZOOMの画面からトレーニングを終えたばかりに見えますね。

「そうね。ホテルの練習スペースで汗を流して、気分は爽快ね」

――少しZOOMに入ってくるのが遅れていたので、てっきり授乳中かと思っていました。

「アハハハ。練習をしながら、ファイトウィークになってもベイビーの世話をしているのは確かね(笑)」

――2022年11月以来のオクタゴンとなりますが、この間には昨年の9月に出産を経験しています。お母さんとなって、ファイトに戻ってきた心境を教えてください。

「最高ね。でも、本当に毎日が目が回りそうなほど大変で。強いファイターと、良き母の両立は大変だわ。でも、試合をするのだからやり切るしかないわよね」

――私の妻は3度出産をして、格闘家ではないですが出産の度に体の具合が変わると言っています。カーラの場合は、何かフィジカルの違いを感じますか。

「そうね、ファイターには細かいケガがつきものだったけど、いうと一晩休むと大丈夫っていうモノも今ではしっかりと体を休める必要が出たかなと思う。それが出産とどれだけ関係しているか、確かなことは言えないけど。私自身の体の変化は見られるわ」

――赤ん坊は泣きたいときに泣いて、時間の理念など吹っ飛んでしまった日々を思い出します。まさに忍耐の日々でした。

「ホントにその通り。ベイビーはベイビーに必要なことを、必要な時に私に求めてくるわ。ただ、私には凄くサポートしてくれる主人がいてくれて。そこは本当に助かっているから感謝の限りね」

――出産を経験すると、メンタルが強くなるということは?

「絶対的にね。何かハードなことがあっても、ベイビーが困難を乗り越えるモチベーションになっているから。この子の存在が私のメンタルを強くしてくれるし、ボディケアにも神経が行き届くようにしてくれているわ」

――その一方で日本の女性アスリートは妊娠を機に、現役を退くというケースが多かったです。

「私がこの子を授かった時、もうキャリアは15年を迎えていて2度のUFC世界チャンピオンも経験していたから、やり切った感はあったの。MMAにおける夢は達成したし、これからはベイビーと共に生きていこうと思ったわ。特にベルトを取り返した時に、はっきりと達成感を感じていたし。私の人生はネクストチャプターに入り、24時間ずっとこの子の母親でいようと思うようになったわ」

――もうベストファイターの座に戻ろうとは思わない?

「ノー。もう自分のキャリアには満足しきっているから、今が引退のタイミング。私は人生の第2章を歩むことにしたの」

――えっ、つまりは今回が引退試合ということですか。

「そうよ」

――スミマセンでした。全く知らなくて。それは……試合前ですが、おめでとうと言わせてください。

「ありがとう(笑)。そう、今が潮時よ。最高のタイミングで、最後の戦いに臨むことができるわ」

――最後にもう一度、母親になってから戦おうと思ったのは?

「そうね……妊娠をして、出産を経験して……でも、区切りをつけたかったのかもしれない。とにかく、土曜日の試合が私にとって最後のMMAになることは間違いないわ。そう、人生の区切りのファイトね」

――試合前からエモーショナルになることはないですか。

「もちろん。長い旅路を終えようとしているのだから。それは感傷的になるわ。でも、私はここに楽しみに来たわけで。息子の前で戦って、グローブをケージに置くまで全力で戦うわ。

もうMMAと一定の距離を置いて、家庭に入る。でも、時々セミナーとかできれば良いわね」

――実は昨年の春にチーム・オーヤマでトレーニングをしていた澤田千優選手が、たった2度だけカーラがトレーニングセッションに姿を見せてくれた時に受けた教えが凄く勉強になったと言っていました。そのカーラの知識をチーム・オーヤマで後進の指導に生かすことはないのかと。

「彼女とのトレーニングセッションは覚えているわ。私も凄く楽しかった。彼女もそうだし、他の選手にも何かを伝えることはできると思う。もちろん、チームメイトの役に立ちたい。役に立てるだろうし。でも、人生のプライオリティは良き母であること。だから常駐の指導者になることはないだろうし、さっきも言ったようにセミナーなんかで私の知識をシェアできれば良いかなと思っている感じね」

――今回の引退試合、カーラが全てを出し尽くしたファイトを楽しみにします。

「試合に出る限り、私のゴールは勝利を手にすること。最後の試合でも自分の手が挙げられるために戦う。テシアはリマッチで絶対に勝ちたいと思っているでしょうけど、今回も私が勝つ――絶対にね。これまで打撃を見せる機会が少なかったから最後の試合で、私のストライキングを見せることができれば楽しい時間になるかなって(笑)」

――素晴らしい意気込みです。引退試合の前にありがとうございました。

「こちらこそ、ありがとう。私の現役最後の声を日本のファンに届けてもらえて嬉しいわ。2010年……私がデビューした年にメグミ・フジイと戦って以来、日本のファンが応援し続けてくれたことは本当に嬉しかった。長い間、ありがとう」

■視聴方法(予定)
10月6日(日)
午前7時30分~UFC Fight Pass
午前11時00分~PPV
午前7時00分~U-NEXT


■UFC307対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] アレックス・ポアタン・ペレイラ(ブラジル)
[挑戦者] カリル・ラウントリー(米国)

<UFC世界女子バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ラケル・ペニントン(米国)
[挑戦者] ジュリアナ・ペニャ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ジョゼ・アルド(ブラジル)
マリオ・バウティスタ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ケイラ・ハリソン(米国)
ケトレン・ヴィエイラ(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
ロマン・デリツ(ジョージア)
ケヴィン・ホランド(米国)

<ウェルター級/5分3R>
スティーブン・トンプソン(米国)
ジョアキン・バックリー(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
イアズミン・ルシンド(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
イホール・ポティエリア(ウクライナ)
セザー・アルメイダ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
アレキサンダー・ヘルナンデス(米国)
オースティン・ハバート(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
カーラ・エスパルザ(米国)
テシア・ペニントン(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
オヴァンス・サンプレー(タヒチ)
ライアン・スパン(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
コート・マッギー(米国)

The post 【UFC307】ラストファイトへ、カーラ・エスパルザ「長い旅路の終わり。でも楽しむためにココに来た」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 F1 MMA MMAPLANET o UFC UFC307 YouTube   アイリーン・アルダナ アマンダ・ヌネス アレキサンダー・ヘルナンデス アレックス・ポアタン アレックス・ポアタン・ペレイラ イアズミン・ルシンド イホール・ポティエリア オヴァンス・サンプレー オースティン・ハバート カーラ・エスパルザ ケイラ・ハリソン ケトレン・ヴィエイラ ケヴィン・ホランド ジュリアナ・ペニャ ジョアキン・バックリー ジョゼ・アルド スティーブン・トンプソン セザー・アルメイダ ソルト タラ・ラロサ ティム・ミーンズ マイラ・ブエノ・シウバ マリオ・バウティスタ マリナ・ホドリゲス ミーシャ・テイト ラケル・ペニントン ロクサン・モダフェリ ロマン・デリツ 大成

【UFC307】TUF18以来、11年間も続く因縁に決着の刻。UFC女子世界バンタム級選手権ペニントン×ペニャ

【写真】オンナの意地が、世界の頂点を争う場で爆発。こ、こわい (C)Zuffa/UFC

5日(土・現地時間)、ユタ州ソルトレイクシティのデルタ・センターにて、UFC 307「Pereira vs Rountree」が行われる。アレックス・ポアタン・ペレイラがカイル・ラウントリー・ジュニアの挑戦を受けるライトヘビー級タイトル戦をメインとするこの大会のコメインは、新王者ラケル・ペニントンに元王者ジュリアナ・ペニャが挑戦する女子バンタム級タイトルマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi

ペニントンは2018年5月、当時の絶対王者アマンダ・ヌネスに初挑戦するも終始圧倒され、5Rに背後からのパウンドでTKO負けを喫した。しかしこの敗戦が自分を見直すきっかけとなり、2020年6月から連勝を重ね、今年1月にマイラ・ブエノ・シウバとの王座決定戦に漕ぎ着けた。ここで相手の組技を凌ぎ主武器のパンチを当てて削ったペニントンは、5R判定3-0で激闘を制して新王座に就いた


対するペニャは、2021年12月にヌネスに挑戦。圧倒的不利という下馬評のなか初回の猛攻を耐え抜くと、2R突然雑になった王者の打撃にことごとくカウンターを合わせて大反撃に。怯んだヌネスに組みつき投げ倒すと、背後からチョーク一閃。世界を震撼させる大番狂わせを引き起こしてみせた

しかし8カ月後のリマッチでは、2Rに不用意にパンチで前に出たところにカウンターを合わされる形で3度のダウンを喫してしまう。その後も前に出続けたペニャだが、ことごとくヌネスにテイクダウンを合わされてしまい、5R判定で大敗して初防衛に失敗した。

2023年5月に予定されていたヌネスとの3度目の対決は、ペニャが肋骨を骨折してキャンセル。この時に代打のアイリーン・アルダナに完勝して防衛に成功したヌネスは、王者のまま引退を発表した。こうして空位となったタイトルを今年一月の決定戦でモノにしたのが、ペニントンというわけだ。

TUF18以来、11年間のドロドロ

今回が初対決となる両者だが、二人の因縁は11年前2013年に行われたTUFシーズン18シーズンまで遡る。この年初頭、UFCはロンダ・ラウジーを初代バンタム級王座に認定して初の女子試合を開催している。新設された女子部門の拡大を目論み、各チームに女性監督(ラウジーとそのライバルだったミーシャ・テイト)を迎えて女性選手たちを競わせるというはじめての試みが行われたのが、このTUF18だった。

予選を勝ちハウス入りを果たした8人の女子選手のなかで、チーム・テイトのドラフト1位に指名されたのがペニャ、3位指名がペニントンだった。ペニャはトーナメント一回戦にて、当時頭一つ抜けた実績&知名度を誇っていたベテラン、シェイナ・ベイズラーと1位指名対決に臨んだ。幾度となくテイクダウンを奪われても柔術流のスクランブルを駆使して動き続けたペニャは、突出した体力と圧力とアグレッシブネスをもってベイズラーを呑み込んでゆき、2Rにチョークで一本勝ち。

陽の当たらないところで長年努力を重ね、ついに大舞台で輝くチャンスを掴んだベテラン──日本流に「ジョシカク第一世代」とも呼べるだろう──を、新世代が若さと勢いで打ち砕く。あまりにも残酷かつ鮮やかに新時代の到来を象徴する一戦となった。

このシーズンにおいては予選でタラ・ラロサ、トーナメント一回戦&フィナーレでロクサン・モダフェリといったジョシカク勢も敗れ去り、時代の移り変わりを色濃く反映した。ただしモダフェリがその後階級を落として戦い続け、2017年には新設のUFCフライ級王座決定戦に出場、その後も2022年までUFCで活躍したことは特筆に値する。

閑話休題。

対するペニントンは、一回戦で長身のムエタイ使いジェサミン・デュークと対戦。デュークの強烈な前蹴りや膝や肘をもらいつつ、強烈なパンチを打ち返す大激闘の末に判定勝利を収めた。この試合はデイナ・ホワイト代表も絶賛し、ファイト・オブ・ザ・シーズンを受賞。「女性版フォレスト・グリフィンvsステファン・ボナー(※)」という声まで出るほど、今まで女子MMAに触れてこなかった層にその可能性を知らしめる試合とされた。

(※第一回TUF決勝のグリフィン×ボナーは、壮絶な殴り合いによってUFCの魅力を一般大衆に伝え、その後の人気爆発に大きく貢献したとされる試合。ホワイト代表は、30年を超えるUFC史上ベストバウト1位を聞かれた際には常にこの試合を挙げる。それほどその歴史的意義は高く評価されている)

素晴らしい内容の初戦を経て、決勝での対決が期待されたペニャとペニントンだが、ペニントンは試合前の右手の負傷の影響もあって準決勝で敗退。両者の対戦は実現しないまま、ペニャが準決勝&フィナーレともにその組み力を如何なく発揮して圧勝してシーズン優勝を果たしたのだった。(ペニントンはフィナーレの前座試合に出場してモダフェリに勝利

ちなみに両者は単にチームメイトというだけでなく、ハウス内の狭い二人部屋の二段ベッドの上下に陣取り生活を共にする仲でもあった。ペニャはこの種のリアリティショーの盛り上がりには欠かせない「自己中迷惑キャラ」を地で行く女性。常に自分の好きなように振る舞い、ハウス内の男女から煙たがられても一切気にせず、自分に向けられる非難を平然と他人に転嫁しては視聴者のヒートを誘っていた。

もっともシーズン序盤の二人は、(自分が同性愛者であることを公言し女性的な所作は好まない)ペニントンにペニャが「プリンセス風」メイキャップを施し、ドレスを着せてモデルウォークを教えるというコミカルな場面も見られ、関係は良好だった模様だ。

しかしペニントンはやがて、常に騒音を立て続けるペニャに耐えられなくなり本人に直接対峙する。が、ペニャは笑って「そんなことしてないわ」と全否定。呆れ気味のペニントンが「あんた精神安定剤が必要なんじゃない?」とこぼしても、ペニャは「私は至って冷静よ。みんな揃ってそうやって、私がしてもいないことを言って責め立てる嘘付きなのよ」と返したのだった。

とまれペニントンとペニャはともに、UFC女子部門の創設期にその未来を担う若手として登場し、先行世代を容赦無く打ち破り新時代の到来を告げた選手たちだ。そしてすっかり女子部門が確立した現在、11年の時を経てその頂点を──お互い30代半ばという円熟期に入った──二人が競い合う。オールドファンには感慨深い構図がこの試合には存在する。

当然両者とも11年前来の確執は意識しており、ペニントンは「あれからアイツと連絡を取ったことがあるかって? あるわけないでしょ。ジュリアナと同じ部屋に住むのは本当に苦痛だった」、「やっと11年前の話に決着を付けることができる」と語れば、ペニャの方も「ラケルは私がメイクしてあげたおかげで、彼女の生涯で最も美しい見た目になれた。なのにそんな私に感謝するどころか文句を言うなんて、なんて酷い人間なのでしょう。みんなで私の陰口を叩いて、私の生活を生き地獄にしたのはあいつらよ」とまったく譲らない。

さらにUFC女子勢では群を抜いたトラッシュトーク力を誇るペニャは、返す刀で(4月に鮮やかなUFCデビューを飾り、ペニントン×ペニャ戦の試合の勝者への次期挑戦者の有力候補である)ケイラ・ハリソンにも言及し「お注射はもうやめておきなさいね。今はやっていないだろうけど、アイツは昔は間違いなく打っていたわよね。昔ATTに練習に行った時にある人に言われたのよ『ATTの女子選手たちは、シャワー室でお互いにケツに注射を打ち合っているんだぞ』ってね」と、一部男性ファンの想像力まで掻き立てながら挑発してみせた。

当然ハリソンが「私は柔道で12歳の頃から検査を受けてきて、一度も陽性になったことはない。使っていないからよ!(次の対戦相手について聞かれて)別に誰でもいい。もっともそれがジュリアナなら喜んでタダで頭にエルボーを叩き込んでやるけどね」と反応すると、ペニャは「まあなんて怖い。典型的なロイドレイジ(ステロイドの副作用で激昂すること)の症状だわ!」と見事に切り返したのだった。

絶対女王ヌネスが去って話題が少ない女子バンタム級へのファンの興味を繋ぎ止めるのに、根拠など一切気にせず放言するペニャの口が一役買っていることは否定できない。

一方でペニントンとペニャのオクタゴンのなかでの振る舞い=パフォーマンスに目を転じると、試合はまずはパンチで突進して組みつきたいペニャとスタンド戦をキープしたいペニントンのせめぎ合いとなる可能性が高そうだ。前戦でペニャは、ワキを開けてパンチを振り回して前に出ては、ヌネスに面白いようにカウンターを合わされ何度も倒されている。が、ヌネスほどの圧倒的な破壊力の拳やリーチの長さを持ち合わせていないペニントンは、いかにペニャの突進を止めるのか。

ペニャが組みつくことに成功すれば、次はペニントンの安定したディフェンスを、いかにペニャが攻撃的グラップリングでいかに切り崩すかの攻防となる。

もっとも技術的なこと以上に、互いの精神と肉体のタフネスのぶつかり合いこそがこの試合最大の見どころだろう。女子有数の頑丈さを誇り、被弾するたびに倍打ち返しては相手を削り続け、体力&根性の判定勝利を重ねるペニントン。やはり被弾上等の恐れを知らぬ突進と、問答無用の組みの圧力とノンストップ攻撃で相手を呑み込んでしまうペニャ。引退したヌネス、下の階級のシェフチェンコやグラッソのような洗練された技術を持っていない両者だからこそ、あのハウスでの日々以来、お互いが歩んできた11年間の集大成をぶつけ合うような闘いを期待したい。

■視聴方法(予定)
10月6日(日・日本時間)
午前7時30分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前7時00分~U-NEXT


■UFC307対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] アレックス・ポアタン・ペレイラ(ブラジル)
[挑戦者] カリル・ラウントリー(米国)

<UFC世界女子バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ラケル・ペニントン(米国)
[挑戦者] ジュリアナ・ペニャ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ジョゼ・アルド(ブラジル)
マリオ・バウティスタ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ケイラ・ハリソン(米国)
ケトレン・ヴィエイラ(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
ロマン・デリツ(ジョージア)
ケヴィン・ホランド(米国)

<ウェルター級/5分3R>
スティーブン・トンプソン(米国)
ジョアキン・バックリー(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
イアズミン・ルシンド(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
イホール・ポティエリア(ウクライナ)
セザー・アルメイダ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
アレキサンダー・ヘルナンデス(米国)
オースティン・ハバート(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
カーラ・エスパルザ(米国)
テシア・ペニントン(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
オヴァンス・サンプレー(タヒチ)
ライアン・スパン(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
コート・マッギー(米国)

The post 【UFC307】TUF18以来、11年間も続く因縁に決着の刻。UFC女子世界バンタム級選手権ペニントン×ペニャ first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
AB K-1 o UFC アマンダ・ヌネス ケイラ・ハリソン ジョゼ・アルド ジョニー・ウォーカー ティム・ミーンズ

UFC307:オッズ/予想と展望

アレックス・ペレイラ 1.21
カリル・ラウントリーJr. 4.70
ラケル・ペニントン 1.59
ジュリアナ・ペーニャ 2.42
ジョゼ・アルド 2.24
マリオ・バティスタ 1.68
ケトレン・ヴィエラ 7.00
ケイラ・ハリソン 1.11
ロマン・ドリーゼ 2.36
ケビン・ホランド 1.62
ティーブン・トンプソン 2.70
ホアキン・バックリー 1.49
マリナ・ロドリゲス 2.42
ヤスミン・ルシンド 1.59
オースティン・ハバード 2.75
アレクサンダー・ヘルナンデス 1.49
セザル・アウメイダ 1.25
イーホル・ポティエリア 4.10
ライアン・スパン 1.36
オヴィンス・サン・プルー 3.25
カーラ・エスパルザ 2.50
テシア・ペニントン 1.56
コート・マクギー 2.70
ティム・ミーンズ 1.49

メインは7ヶ月で3度目の防衛戦となるライトヘビー級王者ペレイラ。4月・6月は元王者との対戦だったが、今回は下位ランカーのラウントリーとの対戦。

ラウントリーは現在5連勝中で、うち4KO。UFCでの9勝のうち7KOのストライカー。元K-1ファイター・グーカン・サキにもKO勝ちしている。6月にジャマール・ヒル戦が組まれていたが、サプリメント会社の手違いで禁止薬物を取得してしまい、出場停止となり欠場。その欠場明けで、タイトルマッチが組まれる幸運に恵まれた。挑戦に最も近いと思われていたマゴメド・アンカラエフが、先に今月のアブダビ大会への出場が決まっているというめぐり合わせにも助けられている。

ジョニー・ウォーカーには首相撲からのヒジでダウンしてのKO負け、イオン・クテラバにはテイクダウンされてからのパウンドでKO負けしているが、離れた体勢の打撃戦ではまだ打ち負けたことがないラウントリー。確かに他の下位ランカーに比べたら、ペレイラに勝つチャンスはあるかもしない。

とはいえ、オッズも大差でペレイラがフェイバリットで、ペレイラの圧倒的優位は動かないか。ペレイラKO勝ち。

セミはアマンダ・ヌネスの引退により注目度が大きく下がった女子バンタム級のタイトルマッチ。今年1月に、ヌネスが返上したベルトの王座決定戦で勝利してタイトルを獲得したペニントンと、唯一ヌネスを破ってタイトルを獲得したことがあるペーニャ(ダイレクトリマッチでは判定負け)の対戦だが、それよりメインカードで組まれている同じ女子バンタム級のケイラ・ハリソンのUFC2戦目が気になる。

柔道2タイムオリンピック金メダリストのハリソンは、4月のUFCデビュー戦で初めてバンタム級に落とし、元王者のホリー・ホルムに完勝。今回の相手ヴィエラはテイクダウンからの押さえ込みが主体の選手で、ハリソンにとっては相性がいい相手だが、それよりも本人のコンディション次第。前回は初のバンタムでも動きが良かったハリソンだが、本当に継続してバンタム級で動ける体を作れるのか。ヴィエラUFCでの11戦で判定決着が9回のしぶとい選手だけに、長期戦になった場合、ハリソンが15分間動き続けられるかどうかもポイントとなる。

なお、第2試合に出場する初代&第7代女子ストロー級王者のカーラ・エスパルザは、この試合が引退試合になることを表明している。

第1試合開始は6日7時半から。速報します。

カテゴリー
45 AB F1 MMA MMAPLANET o UFC UFC306 YouTube   アルジャメイン・ステーリング コナー・マクレガー コリー・サンドハーゲン ショーン・オマリー ジョゼ・アルド ダナ・ホワイト チャンネル ピョートル・ヤン ヘンリー・セフード マシン マラブ・デヴァリシビリ マルロン・ヴェラ ライカ 朝倉海 総合格闘家

【UFC306】展望  チケット代250万円!! 史上最強のワンオフ大会メイン=世界バンタム級選手権試合を読む

【写真】これぞ、どちらが自分を通し切る我儘さを貫けるか──という一戦だ (C)MMAPLANET & Zuffa/UFC

14日(土・現地時間)、ラスベガス近郊のパラダイスにあるスフィアにて、NOCHE UFC 306が行われる。昨年9月にオープンしたばかり、世界中で話題の地球上最大の球形建造物におけるUFCの記念すべき初興行のメインを飾るのは、王者ショーン・オマリーに、ランキング1位のマラブ・デヴァリシビリが挑戦するバンタム級タイトルマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi

ラスベガスに出現した巨大な輝く地球儀の如きアリーナ=スフィアは、NYのマジソン・スクエア・ガーデン社により、合計23億ドル(3200億円以上)という桁外れの建築費をかけて作られたエンターテインメント施設だ。建物の外壁、内壁ともに最高解像度の巨大LEDスクリーンが全面に張り巡らされている。


前代未聞の興行のメインイベンターとしてUFCが選んだのが、バンタム級王者のショーン・オマリー

常に何らかの形でライトアップされているその姿は、外から見ても壮観極まりない。昨年11月に実に41年振りに行われたF1ラスベガスGPでは、F1のオーナー企業であるリバティ・メディアはストリートコースが、スフィアが所有する土地を使用するためにレース期間中はこの奇抜な建築物に使用料を支払い、その間スフィアは閉館していたという逸話を持つ。F1ファンなら記憶に残っているだろうが、世界最速マシンが走るワキをこの球体上の建物は常に同GPのスポンサーの映像を流し続けていた。

さらに20000人収容可能なアリーナ内部においては、全視界を覆うスクリーンによる視覚効果だけでなく、あらゆる場所に響き渡る最高品質の音響システムと、風や香り、はたまた触覚までも刺激する4D技術を駆使した演出が可能で、誰もが人生で味わったことがないような「没入型」の体験が提供されるとのことだ。

そんな斬新すぎる巨大アリーナにおける初のプロスポーツ興行として、世界のエンターテインメント業界から注目を集めている今大会。ダナ・ホワイト代表の力の入れようも尋常ではない。サウジアラビアのリヤドで毎年開催される世界最大級の観光アトラクション「リヤド・シーズン」を開催する総合エンタータインメント庁をパートナーに得て、2000万ドル(約28億円)以上の金額を演出に注ぎ込んだという。

「これは一度きりのイベントだ。もう二度とないよ。ここでスポーツイベントを敢行した者は存在しない。私は今まで誰もやったことがないことを成し遂げたいんだ。不可能だと言われているけど、だからこそ最高に魅力的だ。そもそもスフィアは映画やコンサート用のシアターであり、我々が普段使っている照明設備も使えない。(スフィア初イベントとして行われた)U2のコンサートより、はるかに複雑な照明を使うことになる(※ちなみにU2のこけら落としライブは9月29日を皮切りに週に2、3回の頻度で2月まで実施されたが、F1ウィークの前後は11月4日から12月11日まで休演となっていた)」

昨年もメキシコ独立記念日に合わせて、ベガスのT-MobileアリーナでNOCHE UFC(ノーチェは古くからあるスペイン語で「夜」の意味。つまり「UFCナイト」といったところか)を開催したUFCだが、今回の大会の正式名称は「リヤド・シーズン・ノーチェUFC」となる。

「この大会は、メキシコのファイトカルチャーに向けた私からのラブレターさ」ともホワイト代表は語っている。選手たちも特殊効果の撮影に駆り出されているようで、照明設備や壁全面を覆うスクリーンがどう用いられるのか、入場シーン等で果たしていかなるスペクタクルが展開されるのか、それだけでも見逃せない注目のイベントとなっている。

チケットの最高価格は約250万円、一番安価の席でも約32万円という超高額の設定で販売開始したチケットはさすがに即完売とはいかず、変動価格制によって現在チケット代は半額ほどに下がっている。ゲート収入の見込みも大幅に下方修正され、演出費を賄うのがやっとの2100万ドルあたりを予想しているという(もっともこの数字でも、これまでの最高ゲート収入──UFC 205における1770万ドル──を大きく上回ってはいる)。素人目には果たして採算が取れるのかと心配になってしまうが、プロスポーツの枠を超越したイベントを開くことで新たなファンの獲得も期待され、長期的に考えれば大きな利益につながるという算段のようだ。

この前代未聞の興行のメインイベンターとしてUFCが選んだのが、バンタム級王者のショーン・オマリーだ。2017年のコンテンダーシリーズ2にて衝撃的なKO勝ちを収めてUFCとの契約を得て以来──薬物検査失格による2年のブランクはあったものの──順調にKO勝ちを重ねてボーナスの山を積み上げスターダムに駆け上がった。

2022年10月のアブダビ大会において元王者ピョートル・ヤンとの大激闘を判定2-1で制したオマリーは、昨年8月には長期政権を築いていた王者アルジャメイン・ステーリングとの大一番へ。

(C)Zuffa/UFC

2R、ステーリングのテイクダウンを巧みに凌ぐと強引に前に出てきた王者に対して、下がりながら完璧なタイミングの右ストレート一閃。

倒れ込んだステーリングに鉄槌とパウンドの追撃を浴びせ、鮮烈なTKO勝利をもって戴冠を果たした。そして今年3月の初防衛戦の相手には、UFCで唯一敗戦を喫しているチートことマルロン・ヴェラを指名。

(C)Zufffa/UFC

5ラウンドを通して打撃で一方的に試合を支配して判定3-0で完勝し、コナー・マクレガー以来のスーパースターへの道を着実に歩んでいる。

対するマラブ・デヴァリシビリは、ここまで10連勝中。底知れぬスタミナを武器にテイクダウンを仕掛け続け、相手が何度立ち上がろうと前に出て組み伏せ続ける、他には真似のできない戦い方を身上とする。2年前、ベガスのシンジケートMMAにて修行中の朝倉海と出会って意気投合したことで、朝倉のYouTube動画を通してその親しみやすい性格を知るファンも多いだろう。

デヴァリシビリは長いことトップコンテンダーの座にありながらも、チームメイトのステーリングが王座に君臨してきたためタイトル挑戦表明をせずにいた。英語を母国語としないジョージア共和国出身ということもあり、白星を重ねながらもなかなか北米のカジュアルファン層から注目を集められずにいた。

実は本人はUFCで初勝利を挙げた6年前からオマリーとの対戦希望を口にしていたが、オマリーは一切反応せず。昨年5月には、ステーリングと睨み合うオマリーのジャケットを背後から取り、自ら着用してケージに登ってアピールするという直接行動に出たデヴァリシビリ。

が、それでもオマリーは「なんとも馬鹿げた行動だよな。あの時俺は、どこかの従業員がこっちの上着を脱がしてくれているのかと思ったから、そのまま渡したんだよ。あれがマラブだったなんて気付きもしなかった。まあ、奴はこれでファンに少しは知られるようになったかもな。俺のジャケットを着ることができた人間という、ただそれだけの理由でね」とまるで相手にしなかった。

オマリー戴冠=ステーリング陥落により、ついにチャンスが巡ってきたかに見えたデヴァリシビリだが、新王者は話題性と自分のリベンジを優先し、ヴェラを初防衛戦の相手に指名した。その先にはフェザー級王者のイリア・トプリアとの対決を希望し「まあマラブのように注目度の低い選手の優先度は、どうしても低くなるよな」と語っていたオマリー。

(C)Zuffa/UFC

が、デヴァリシビリが今年2月にヘンリー・セフードに完勝し流れは変わった。

この試合結果を受けて、オマリーは自らのYouTubeチャンネルにて「俺はみんながイリア戦を望んでいると思っていたんだ。でもファンは『お前はマラブから逃げている』とか『次はマラブと戦うべきだろ』とかうるさく言ってくる。いいだろう、次はマラブだ。チートを倒したらね。KOしてやるよ。奴の動きは雑だ。対して俺は正確無比。奴には速すぎるし鋭すぎる。失神させてやる」と宣言した。

そして翌月オマリーは予告通りヴェラに完勝し、今回のスーパーイベントでの両者のタイトルマッチが決定したのだった。圧倒的な人気を誇るオマリーに先を越されてしまっていたデヴァリシビリだが、ひたすら勝ち続けることで説得力を得てファンの声を動かし、ついに実力で挑戦権を勝ち取った形だ。

UFC最大のスターである現王者オマリーと、自他ともに認める最強挑戦者デヴァリシビリによる頂上決戦となるこの一戦。自らを「スナイパー(狙撃手)」と呼ぶ王者オマリーは、卓越したタイミングで瞬時に相手の顎を撃ち抜く左右の拳を持つ。対するデヴァリシビリは、常に前に出て手を出してはテイクダウンを仕掛ける恐るべきハイペースの戦いを、5R完遂してしまう底無しの体力の持ち主だ。

つまりこの試合の戦いの構図は、先々月のエドワーズ対モハメッドのウェルター級タイトル戦、先月のデュプレッシー対アデサニャのミドル級タイトル戦と同様──圧をかけ間合いを潰しグラップリングに持ち込みたい総合格闘家と、フットワークと打撃を駆使してその圧力を無効化したいストライカーによる凌ぎ合いということになる。

上述の二戦ではいずれも圧力をかけて組みに持ち込んだ側が勝利しているが、だからと言って必ずしも今回デヴァリシビリが有利ということにはならない。たとえば先日モハメッドは、巧みなスイッチと打撃を用いてエドワーズを金網側に追いやり、逃げ場を塞いでからテイクダウンを決めてみせた。しかし──同様に打撃を駆使して組みに持ち込むタイプではあっても──デヴァリシビリの戦い方はまた異なるものだ。

常にオーソドックスから思い切り良く踏み込んでパンチを放ってゆくデヴァリシビリ。打撃勝負上等の姿勢を見せておいて、その距離から上体を下げて(レベルチェンジして)シングルを取りにゆく。あるいはワンツー等で踏み込んだその勢いのままレベルチェンジして組みにゆく。

つまり、先日のモハメッドのように打撃で圧をかけ相手の逃げ場を封じてからテイクダウンに行くのではなく、デヴァリシビリはテイクダウンをまるで打撃のコンビネーションの一部であるかの如く放つ。そして、何回振り解かれようがそれを続け、やがて相手を呑み込んでしまうのが真骨頂だ。

無敵のデヴァリシビリ・スタイルがオマリー相手には命取りになる?!

(C)Zuffa/UFC

昨年3月のピョートル・ヤン戦では、5R中に何と48回テイクダウンに入るという前人未到のUFC記録を達成。

その上で判定3-0完勝している。

(C)Zuffa/UFC

これまで、このデヴァリシビリの「打撃の如くテイクダウンを放ち続ける」戦い方を止めることができた者は一人として存在しない。

上述のヤンやセフード以外にもジョゼ・アルドという元UFC世界チャンピオンが達がことごとくその軍門に下っている

しかし、まさにこのスタイルがオマリー相手には命取りになるのでは、という見方も成り立つ。たとえば同じバンタム級トップコンテンダーのコリー・サンドハーゲンは、この試合について「マラブは距離を詰めるのがすごく上手いわけではないよね。特に試合やラウンドの序盤はそうだ。それは本当にマズいことだと思う。なぜなら、ショーン・オマリーは距離を保つことにおいてベストの一人だから。同時に、相手が自分に距離に入って来ようとしたところで、酷い目に合わせることにおいても彼はベストだ」とオマリー有利を予想している。

オマリーのヘッドコーチのティム・ ウェルチも「マラブのように足を残してバランスを崩した状態で振り回してくる相手をKOするのは、ショーンには難しいことではないよ」と語っている。

実際、昨年8月にオマリーがステーリングを仕留めたのは、2R、打撃を放つステーリングが──デヴァリシビリがよくやるように──強引に体を伸ばして前に出てきた瞬間だった。卓越した距離感とタイミング、一撃必殺の左右の拳を持つスナイパー=オマリーが「まあマラブがレスリングで戦おうとしてこようが、打撃で戦おうとしてこようがどっちでもいいよ。早いうちに奴の顎を捕らえるよ」と自信を覗かせるのには確固たる根拠があるのだ。

が、その試合をステーリングのセコンドとして目の当たりにしたデヴァリシビリもまた、「オマリーは優れたフットワークとスピードの持ち主で、下がりながらのカウンターも打てて確かに危険だ。でも僕がやるべきはオマリーではなく、自分であることに集中すること。奴が勝つには僕をKOする必要がある。それさえ起きなければこの試合はこっちのものだ。スタミナには自信があるし、パンチもテイクダウンもある。防がれても構わない。今までいくらでも経験済みだ。殴られてもいい。僕はそれで目覚めるだけだ。今まで誰にもKOされたことがない。奴をブレイクする(心身を打ち砕く)よ」と揺るぎない自信を見せている。

他の追従を許さないスピードとフットワークに加え、体の微妙な動きを用いたフェイントの精妙さも天下一品、そして侵入者はたちまち撃ち落としてしまうオマリーの制空圏。そこにノンストップ・カーディオモンスターのデヴァリシビリがいかに侵入し、突破を試みるのか。一瞬たりとも見逃せない。

■視聴方法(予定)
9月15日(日・日本時間)
午前8時30分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前8時00分~U-NEXT

The post 【UFC306】展望  チケット代250万円!! 史上最強のワンオフ大会メイン=世界バンタム級選手権試合を読む first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
45 F1 IRIDIUM MMA o UFC UFC Fight Night   エドゥアルダ・モウラ ガストン・ボラノス ジョゼ・アルド

11.16『UFC 309』でジョナサン・マルティネス vs. マーカス・マクギー、ヴェロニカ・ハーディー vs. エドゥアルダ・モウラ



 UFCが11月16日にニューヨーク州ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで開催する『UFC 309』でジョナサン・マルティネス vs. マーカス・マクギーのバンタム級マッチが行われることを確認したとのこと。

 マルティネスは5月の『UFC 301: Pantoja vs. Erceg』でジョゼ・アルドに判定負けして以来の試合。その前までは6連勝していました。現在UFCバンタム級ランキング13位。マクギーは1月の『UFC Fight Night 234: Ankalaev vs. Walker 2』でガストン・ボラノスに3R TKO勝ちして以来の試合で5連勝中(UFC3連勝中)。


 同じくヴェロニカ・ハーディー vs. エドゥアルダ・モウラの女子フライ級マッチが行われることを確認したとのこと。

 ハーディーは5月の『UFC on ESPN 56: Lewis vs. Nascimento』でJ.J.アルドリッチに判定勝ちして以来の試合で3連勝中。モウラは6月の『UFC on ESPN 57: Cannonier vs. Imavov』でデニシ・ゴメスに判定負けして以来の試合。続きを読む・・・