【写真】左が本計量。右がセレモニアル計量時。イスラム・マカチェフは明らかに目の周囲が違っています(C)MMAPLANET
本日22日(土・現地時間)、UAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUFC 280「Oliveira vs Makhachev」のオフィシャル計量とセレモニアル計量が21日(金・同)に行われた。
ここでは数名のファイターをピックアップしたリカバリー前と8時間程度のリカバリーでどのような違いがあるのかを――見比べてみたい。
【写真】左が本計量。右がセレモニアル計量時。イスラム・マカチェフは明らかに目の周囲が違っています(C)MMAPLANET
本日22日(土・現地時間)、UAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUFC 280「Oliveira vs Makhachev」のオフィシャル計量とセレモニアル計量が21日(金・同)に行われた。
ここでは数名のファイターをピックアップしたリカバリー前と8時間程度のリカバリーでどのような違いがあるのかを――見比べてみたい。
【写真】将来的に平良との対戦が実現することも十分にありうるモカエフ――凄まじい僧帽筋だ(C)MMAPLANET
22日(土・現地時間)、UAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUFC 280「Oliveira vs Makhachev」のセレモニアル計量が21日(金・同)に同所で行われた。
昨日の会見以上にファンが集まったセレモニアル計量は、輪をかけてアラブ&ダゲスタンのイスラム連合の声援が大きくなっていた。
なかでもプレリミ2試合目のフライ級マッチでマルコム・ゴードンと戦うムハマド・モカエフ:への声援はPPVカード出場選手に見劣りしないものだった。
ダゲスタンで生まれ、幼少期を過ごしたモカエフは家族ともに英国に移住。英国籍も取得しているが、コーカサスの戦闘民族の血は確実に流れており、イギリスで始めたレスリングですぐに頭角を表し、パリ五輪候補ともいわれている。
IMMAFにユース時代から出場し、2度世界王者に輝くとアマMMA22連勝でバーレーンのKHKジム所属ファイターとなり、BRAVE CFでプロデビューを飾った。5連勝で今年の3月にUFCデビューを飾り、2戦目にはLFAフライ級王者だったチャールス・・ジョンソンを破っている。
そのモカエフ、大声援にすっかり気を良くしたのか、フェイスオフではゴードンに拳をつきつけ、ダナ・ホワイトが急ぎ割って入る場面も。
平良達郎のライバルになることは間違いないモカエフ、まだ喧嘩的な強さをオクタゴンの中で見せていたが、ゴードンを相手にしても淡々、堅実な試合展開に持ち込むことができるか――注目だ。
コメインのUFC世界バンタム級選手権試合は王者アルジャメイン・ステーリング、挑戦者TJ・ディラショーの両者にブーイングが送られるという珍しい状況に。
フェイスオフで激しく言葉を交わした両者、まずディラショーが「俺はケージの中で勝負にしにきた。あのマ〇ーフ〇ッカーを眠らせるよ」と話すと、さらに大きなブーイングを浴びたステーリングは「アブダビ、皆、来てくれてありがとう。凄いカードが揃ったグレートなショーだ。明日は〇ザー〇ァッカーを倒す」とコメントした。
メインのUFC世界ライト級王座決定戦に出場するイスラム・マカチェフを大チャントで迎えた会場のファン。そのマカチェフとシャーウス・オリヴェイラはフェイスオフでは鼻が触れるまで超接近していた。
まずマイクを握ったマカチェフは「アブダビ、思い切り応援してほしい。インシャラーラー(アラーの意思があれば)」と短いマイクに、対してオリヴェイラは「ライト級のライオンは、まだ吠え続けている」とポルトガル語でまくしたてると、訳を待たずにステージを下りた。
■視聴方法(予定)
10月22日(土・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
午前3時00分~PPV
午前11時00分~WOWOWプライム
■UFC280計量結果
<UFC世界ライト級王座決定戦/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ: 154.5ポンド(70.08キロ)
イスラム・マカチェフ: 154.5ポンド(70.08キロ)
<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]アルジャメイン・ステーリング: 135ポンド(61.24キロ)
[挑戦者]TJ・ディラショー: 135ポンド(61.24キロ)
<バンタム級/5分3R>
ピョートル・ヤン: 136ポンド(61.69キロ)
ショーン・オマリー: 135ポンド(61.24キロ)
<ライト級/5分3R>
べニール・ダリューシュ: 156ポンド(70.76キロ)
マテウス・ガムロ: 156ポンド(70.76キロ)
<女子フライ級/5分3R>
ケイトリン・チューケイギアン: 127.5ポンド(57.83キロ)
マノン・フィオホ: 125.5ポンド(56.92キロ)
<ウェルター級/5分5R>
ベラル・モハメッド: 170ポンド(77.11キロ)
ショーン・ブレイディ: 171ポンド(77.56キロ)
<ミドル/5分3R>
マフムド・ムラドフ: 185ポンド(83.91キロ)
カイオ・ボハーリョ: 186ポンド(84.37キロ)
<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オズデミア: 206ポンド(93.44キロ)
ニキータ・クリロフ: 206ポンド(93.44キロ)
<ウェルター級/5分3R>
アブバカル・ヌルマゴメドフ: 170.5ポンド(77.34キロ)
ガジシ・オマルガジシエフ: 171ポンド(77.56キロ)
<ミドル級/5分3R>
アルメン・ペトロシアン: 186ポンド(84.37キロ)
AJ・ドブソン: 185ポンド(83.91キロ)
<フライ級/5分3R>
ムハマド・モカエフ: 126ポンド(57.15キロ)
マルコム・ゴードン: 126ポンド(57.15キロ)
<女子バンタム級/5分3R>
リナ・ランズバーグ: 135ポンド(61.24キロ)
カロル・ホザ: 135ポンド(61.24キロ)
【写真】エネルギーが漲っているような本計量だったアルジャメイン・ステーリング(C)MMAPLANET
22日(土・現地時間)、UAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUFC 280「Oliveira vs Makhachev」のオフィシャル計量が21日(金・同)午前9時より、クラウンプラザホテル内ミーティングルームで行われた。
まず計量開始前に減量に問題があったとしてフェザー級のズベア・トホゴフ×ルーカス・アルメイダの中止が発表され、タイトルマッチ2試合を含む、12試合24選手が計量台へ。
女子フライ級でマノン・フィオホに戦うケイトリン・チューケイギアンがリミット125(+1)ポンドに対し、127.5ポンドで計量失敗となった。
その他のファイターは全員クリアーしており、メインで世界ライト級王座を賭けて戦う両者がいの一番に登壇し共に154.5でパスした。
昨日の会見時に比べると、イスラム・マカチェフはシャーウス・オリヴェイラよりも目のくぼみが目立ち、水抜きの影響がより強く感じられた。
一方、最も減量の影響が見られたのは、アルジャメイン・ステーリングの持つ世界バンタム級王座にチャレンジするTJ・ディラショーだった。
歩く姿も力なく、リミット丁度でパスしてもガッツポーズもない。うつむき加減でシャツを拾って、そのままステージを下りた。対してチャンピオンは、同じ135ポンドでパスの声を聞くと同時に大きく叫び声を挙げている。
もう一人シャウトしたのは、べニール・ダリューシュと対戦するマテウス・ガムロだった。やや時間を置き、ラスツーでステージに力を現したガムロは156ポンドのコールを受ける。
まず両手を高々と掲げたガムロはその手を振り下ろしつつ、ここからが本当の戦いの始まりと告げるような、雄叫びを見せたのだった。
■視聴方法(予定)
10月22日(土・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
午前3時00分~PPV
午前11時00分~WOWOWプライム
■UFC280計量結果
<UFC世界ライト級王座決定戦/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ: 154.5ポンド(70.08キロ)
イスラム・マカチェフ: 154.5ポンド(70.08キロ)
<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]アルジャメイン・ステーリング: 135ポンド(61.24キロ)
[挑戦者]TJ・ディラショー: 135ポンド(61.24キロ)
<バンタム級/5分3R>
ピョートル・ヤン: 136ポンド(61.69キロ)
ショーン・オマリー: 135ポンド(61.24キロ)
<ライト級/5分3R>
べニール・ダリューシュ: 156ポンド(70.76キロ)
マテウス・ガムロ: 156ポンド(70.76キロ)
<女子フライ級/5分3R>
ケイトリン・チューケイギアン: 127.5ポンド(57.83キロ)
マノン・フィオホ: 125.5ポンド(56.92キロ)
<ウェルター級/5分5R>
ベラル・モハメッド: 170ポンド(77.11キロ)
ショーン・ブレイディ: 171ポンド(77.56キロ)
<ミドル/5分3R>
マフムド・ムラドフ: 185ポンド(83.91キロ)
カイオ・ボハーリョ: 186ポンド(84.37キロ)
<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オズデミア: 206ポンド(93.44キロ)
ニキータ・クリロフ: 206ポンド(93.44キロ)
<ウェルター級/5分3R>
アブバカル・ヌルマゴメドフ: 170.5ポンド(77.34キロ)
ガジシ・オマルガジシエフ: 171ポンド(77.56キロ)
<ミドル級/5分3R>
アルメン・ペトロシアン: 186ポンド(84.37キロ)
AJ・ドブソン: 185ポンド(83.91キロ)
<フライ級/5分3R>
ムハマド・モカエフ: 126ポンド(57.15キロ)
マルコム・ゴードン: 126ポンド(57.15キロ)
<女子バンタム級/5分3R>
リナ・ランズバーグ: 135ポンド(61.24キロ)
カロル・ホザ: 135ポンド(61.24キロ)
【写真】ファイトウィーク、公開イベントはこの会見から(C)MMAPLANET
22日(土・現地時間)、UAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUFC 280「Oliveira vs Makhachev」の記者会見が20日(木・同)に同所で行われた。
Showdown weekとして、さまざまなUFC関連の催しが会場の外で実施されており、お祭り的な雰囲気だったアリーナ周辺。会見はロシア人ファンとローカル:ファンが一体化し、マカチェフ・サポート一色という空気で大いに盛り上がった。
メインカード出場10選手、プレリミからはベラル・モハメッドとショーン・ブレイディが出席し、1人ずつ登壇する形で会見はスタート。
まずパレスチナ系米国人のモハメッドが、米国大会では考えられない高いファンの支持を集めており、ブレイディには大きなブーイングが送られる。
質疑応答中もシャーウス・オリヴェイラやアルジャメイン・ステーリングにブーイングを送るファンに呼応し、何度両手を広げて煽るモハメッドの姿が確認されている。
べニール・ダリューシュと対戦するマテウス・ガムロはテンション高めでステージ上でTシャツを脱いで、ファンに投げ込む。
一投目はメディアシートにしか届かないと、わざわざ取り戻して、Tシャツを丸めて結い、二投目で目的を果たした。
ピョートル・ヤンも高い人気を誇る一方で、会場には欧州や米国、ブラジル人サポーターの姿もあり、対戦相手ショーン・オマリーにはブーイングだけでなく、かなりの声援が集まっていた。
グラサン、レザーのオマリーは「全ての局面で上回っている」とコメントした際、ヤンの表情は弱冠強張ったように見えた。
ヤンの天敵ステーリングは絶えることのないブーイングと野次のなかで、対戦相手のTJ・ディラショーのコメントに対し「聞こえない。男らしく堂々と話せ」とイチャモンをつける。
TJは「テストは口でするもんじゃない。『テスト、テスト、テスト1、2』って上手くいったか?」という返答をし、ファンの大声援を受けていた。
さらにライバルのヤンの隣に座っている状況には「今、この男のことは気にしてない。TJのことを考えている」と発言したステーリング、ここで会場はまたも大ブーイングに包まれることとなった。
オリヴェイラへの質問はブーイングでかき消され、マカチェフへの大声援で質問者が間を置く必要がある館内。体重超過でベルトを失ったオリヴェイラは「誰がチャンピオンか皆に聞けばよい」と立ち上がって手を広げると、ブーイングの雨に晒された。
そのオリヴェイラがメディアデーで「マカチェフがタイトルに挑戦できるのは、ヌルマゴメドフの力だ」と言ったことに尋ねられると、マカチェフが「マイケル・チャンドラーに勝ってタイトルを獲ったけど、その前に誰と戦ってきた。教えてくれ」と答えるだけで、ファンは拍手喝采だった。
さらにオリヴェイラがアブダビがマカチェフのホーム状態であること関しては「いつも彼を僕のホームに招待しているけど、一度も来なかった。ここで戦いたかったんだろう」と言えば、マカチェフは「俺はブラジルで行くとダナに伝えている。何度もブラジルで戦うと言ってきた。この男は英語を話さないから、誰も何を話しているのか分からない」と粗い口調になる。
ここからは両者はマイクを掴み、身を乗り出して顔を合わせると、食い気味にトラッシュトークを続けた。
会見中から最前列に座るヌルマゴメドフ・チャントが起こるなど高い人気を維持する元世界王者は、会見終了後からフェイスオフまでの間、ファンの注目を一身に集め、その様子を携帯で撮影するや、マカチェフに負けない大声援がわき起こった。
フェイスオフでは意外にも胸を押して一触即発状態になったのはピョートル・ヤンで、対応が遅れたオマリーはやり返すことはなかった。
ステーリングとオリヴェイラがブーイングの矢面に立っていたフェイスオフが終了すると、ファンは会場外のアトラクションへ一目散。
昼は35度以上のアブダビも、日が落ちると28度ぐらいで海風もあり、やや涼しく感じられる。そんななか、ファンはベルトを手に写真撮影、Esportsブースでもしっかりと列を作るなど、会見中とは様子でファイトウィークを満喫、砂漠の決戦に向けエティハド・アリーナは夜の帳が下りても、さらに熱が帯びていた。
■視聴方法(予定)
10月22日(土・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
午前3時00分~PPV
午前11時00分~WOWOWプライム
■対戦カード
<UFC世界ライト級王座決定戦/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
イスラム・マカチェフ(ロシア)
<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]アルジャメイン・ステーリング(米国)
[挑戦者]TJ・ディラショー(米国)
<バンタム級/5分3R>
ピョートル・ヤン(ロシア)
ショーン・オマリー(米国)
<ライト級/5分3R>
べニール・ダリューシュ(米国)
マテウス・ガムロ(ポーランド)
<女子フライ級/5分3R>
ケイトリン・チューケイギアン(米国)
マノン・フィオホ(フランス)
<ウェルター級/5分5R>
ベラル・モハメッド(米国)
ショーン・ブレイディ(米国)
<ミドル/5分3R>
マフムド・ムラドフ(ウズベキスタン)
カイオ・ボハーリョ(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オズデミア(スイス)
ニキータ・クリロフ(ウクライナ)
<フェザー級/5分3R>
ズベア・トホゴフ(ロシア)
ルーカス・アルメイダ(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
アブバカル・ヌルマゴメドフ(ロシア)
ガジシ・オマルガジシエフ(ロシア)
<ミドル級/5分3R>
アルメン・ペトロシアン(アルメニア)
AJ・ドブソン(米国)
<フライ級/5分3R>
ムハマド・モカエフ(英国)
マルコム・ゴードン(カナダ)
<女子バンタム級/5分3R>
リナ・ランズバーグ(スウェーデン)
カロル・ホザ(ブラジル)
【写真】アッパレ過ぎるほど、アッパレな返答のオンパレードだったチューケイギアン(C)MMAPLANET
22日(土・現地時間)にUAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるUFC280でケイトリン・チューケイギアンが、マノン・フィオホと対戦する。
UFC在籍6年、タイトル挑戦経験がありオクタゴンで戦績11勝5敗というチューケイギアンにアブダビという地で戦うこと、新鋭フィオホの印象とタイトルショット、そしてNYでの女子選手のトレーニング環境について話を訊くと、彼女のMMAに対する向き合い方こそ、これだけのキャリアを残せる要因だと確信できた。
──ファイトウィークに入り、現地入りして間もないタイミングでインタビューを受けていただきありがとうございます。
「大丈夫よ。昨夜、アブダビ入りしてしっかりと睡眠をとることができたし、今日も問題なく体を動かすことができたわ……って、あなたのこと見覚えあるわ。確か……」
――7月の終わりにセラBJJで平田樹選手に関して、日本のABEMA用にインタビューをさせていただきました。
「ああ、そうね。Zoomで顔を見て、アレって思ったの(笑)」
――あれから3カ月、本来は9月のパリ大会で対戦予定だったマノン・フィオホと今週末に戦うことになりました。
「マノンのホームタウンであっても、すっごくパリで戦いたかったわ。ただパリを訪れたい、そういう感じだけど。大会終了後に数日間パリで過ごすつもりでいたから。それが凄く楽しみだったの」
――勝負云々でなく、パリを楽しみたかったということですね(笑)。
「それだけじゃないわよ(笑)。彼女は唯一のフランス人女子UFCファイターで、試合順もコメインだった。マノンのホームタウンで戦うという経験を楽しみにしていたし。でも、コーチ陣は中立の土地で戦うことを歓迎しているわね。彼女のケガでパリでの試合はなくなったけど、一度はパリで試合を戦ってみたいと今も思っているわ」
――ところで米国国内で3時間の時差で戦うのと、アブダビに来て8時間の時差で戦うのは体調的に違いは感じられますか。地球は自転しており、西に移動するのと東に移動するのではバイオリズムが違うという医学的見解を以前に読んだことがありまして。
「う~ん、その疑問に答えるにはまだこっちに入って早すぎる気はするけど、現時点で私は何も問題はないわ。飛行機とアブダビで睡眠をとったわけだけど、すこぶる好調よ。それに2020年にファイトアイランドで試合をしていて、アブダビへの遠征も初めてじゃないから、問題なく過ごせているしね。
あの時は朝の4時からの試合だったのが、今回は午後10時からだし。戦う環境としては、今回の方が良くなっているから不便が感じられないのかもね。だからベガスで戦うことではなくて、前回のアブダビで戦うことと比較すると今回は楽になっているのは確かよ」
――今回は中立の地です。基本的にケイトリンは米国での試合が多く、USチャントの後押しがあってもブーイングを受けて戦うことはないです。
「ブーイングされて戦うことを考えると、凄くワクワクするわね。もう7年も前になるけど、UFC以前にHungarian FCっていう大会に出場して、ブダペストで試合をしたの。トーナメント戦で決勝がハンガリーの選手が相手だったから、少しブーイングを受けたわ。でも観客の数自体がとても少なかったから、ブーイングも小さくて(笑)。
きっとパリの大観衆にブーイングされると、最高のクールだったでしょうね。でも、今はアブダビでのファイトを楽しみにしているわ」
――マノンはUAEW出身ですし、ひょっとすると彼女の応援が多いかもしれないですね。
「いずれにしても彼女のファイトスタイルはファンにも受けるし。私はアンダードッグだけど、しっかりと戦うわ」
――確かにマノンはUFCで4勝0敗ですが、ケイトリンも現在4連勝です。アンダードッグに納得していますか。
「確かに彼女はジェニファー・マイアに勝ったけど、フライ級契約でも本来はストロー級の選手との試合も多いわ。5連勝、6連勝、7連勝をしようが対戦相手にどれだけの価値があるのか、大切なことはそこよね」
――マノンのカラテ流ファイトにはどのような印象を持っていますか。
「体が強いわ。そして、あの動きをする選手は凄く少ないわね。ただし、マノンが戦ってきた相手で私のようなフットワークを使って戦える選手はいなかった。真っすぐ前に出て、攻撃が当たる相手ばっかりだったわ。これまでの彼女の試合は、スタイル的に戦いやすい相手が多かった。でも、私はちょっと違う戦い方ができるから」
――マノンのようなスパーリング・パートナーを今回は見つけることはできましたか。
「レフティでキックをたくさん使う。スパーでもドリルでも、そこを頭に入れて練習してきたから大丈夫よ。とにかく蹴りの数が多い。そこは十分に対策を練ってきたわ」
――ところで冒頭で話したようにセラBJJでケイトリンに会った取材は、いつ以来のイーストコーストでのジム取材かというぐらい久方ぶりでした。西海岸やミッドウェスト、あるいはラスベガスやフロリダで取材をしていると米国のジムは一つの場所で、全てのトレーニングをこなせるという印象が強かったです。でもNYで平田選手はマンハッタンやロングアイランドなど、公共交通を使ってクイーンズから1時間もかけて移動していました。
「そうね、ほんとソレがNYのクレイジーなところだわ。私はニュージャージー出身だけど、今はロングアイランドに住んでいて。だからセラBJJはすぐに行けるけど、週に2度ニュージャージーまで車で2時間かけて、スパーリングに行っているの」
――!!!!!! それって片道っていうことですか。
「そうよ。往復で4時間ね。私たちも一か所で練習できないことはないけど、納得できる練習をするには、それだけの移動が私は必要なの。特に女子選手はベストなトレーニング・パートナーを見つけることは男の人より難しいから。
全ての局面で練習パートナーがいる男子選手と、私たちは違うからね。まぁ不満には思うところもあるけど、ベストなトレーニングができないより良いからオプションがあって良かったと思っている。車で片道2時間かけても、マーク・ヘンリーの指導やニュージャージーでのジムメイトとの練習は私に欠かせない。納得できる練習をすることが、一番大切なことだから」
――それだけの想いでケイトリンはMMAを向かい合っているのですね。では、その想いをどのように土曜日の試合でぶつけたいと思っていますか。
「UFCで長く戦い、常に成長してきた姿を見せたい。そして、今も新しい武器を携えていることもね」
――おそらくはUFCはマノン・フィオホのようなニューウェーブの台頭を望んでいるかと思います。ただしこの4連勝対決、勝てばケイトリンにももう1度タイトルショットを戦う機会が巡ってくるのではないでしょうか。
「そうね、5連勝したらそのチャンスがあって然りよね。でも、それは勝ってからの話で、また交渉が必要だし、今回も良い勝ち方が求められるはずよ」
――ケイトリン、今日はありがとうございました。日本のファンに一言お願いできますか。
「私だけでなく、UFCを応援してくれてありがとう。日本からNYにガールズたちが練習に来るんだけど、大歓迎よ。彼女たちとの練習はとても楽しいわ。そして日本のファンの皆には土曜日のショーを楽しみにしてほしい。サポート、ありがとう」
■視聴方法(予定)
10月22日(土・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
10月23日(日・同)
午前3時00分~PPV
午前3時00分~WOWOWプライム
■UFC280対戦カード
<UFC世界ライト級王座決定戦/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
イスラム・マカチェフ(ロシア)
<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者]アルジャメイン・ステーリング(米国)
[挑戦者]TJ・ディラショー(米国)
<バンタム級/5分3R>
ピョートル・ヤン(ロシア)
ショーン・オマリー(米国)
<ライト級/5分3R>
べニール・ダリューシュ(米国)
マテウス・ガムロ(ポーランド)
<女子フライ級/5分3R>
ケイトリン・チューケイギアン(米国)
マノン・フィオホ(フランス)
<ウェルター級/5分5R>
ベラル・モハメッド(米国)
ショーン・ブレイディ(米国)
<ミドル/5分3R>
マフムド・ムラドフ(ウズベキスタン)
カイオ・ボハーリョ(ブラジル)
<ライトヘビー級/5分3R>
ヴォルカン・オズデミア(スイス)
ニキータ・クリロフ(ウクライナ)
<フェザー級/5分3R>
ズベア・トホゴフ(ロシア)
ルーカス・アルメイダ(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
アブバカル・ヌルマゴメドフ(ロシア)
ガジシ・オマルガジシエフ(ロシア)
<ミドル級/5分3R>
アルメン・ペトロシアン(アルメニア)
AJ・ドブソン(米国)
<フライ級/5分3R>
ムハマド・モカエフ(英国)
マルコム・ゴードン(カナダ)
<女子バンタム級/5分3R>
リナ・ランズバーグ(スウェーデン)
カロル・ホザ(ブラジル)
【写真】ちょっとした瓶底眼鏡のガムロは、ケージの中の獰猛さとはかけ離れた学者風の表情をしている(C)MMAPLANET
22日(土・現地時間)にUAEはアブダビのエティハド・アリーナでUFC280「Oliveira vs Makhachev」が行われ、マテウス・ガムロがベニール・ダリューシュと戦う。
キャリア21勝1敗、UFCでも4勝1敗のガムロは高い極め力を背景に、ATTで打撃とレスリングを磨きスクランブルゲームで底力を発揮する根性ファイターに成長した。前回、ガムロは格下ながら十分に食われる可能性があったアルマン・ツァルキャンとの激闘を制し、次期挑戦者決定戦といっても過言でないダリューシュ戦に繋げた。
言葉の端々からポジティブなエネルギーが感じられるマテウス・ガムロは、「ダリューシュを破り、イスラム・マカチャフに挑戦する」と断言した。
──ベニール・ダリューシュ戦が迫ってきました。
「精神的にも肉体的にも最高だよ。体重もしっかりと落ちている。全てにおいて完璧にモノゴトが進んでいる。あとは土曜日にベニール・ダリューシュと戦うだけだよ。トレーニングキャンプも最高だった。最初はポーランドの自分のチームであるレッド・ドラゴンでスタートを切り、試合の7週間前にATTに移って準備を進めてきた。
世界のベストジムでダスティン・ポイエー、ホルヘ・マスヴィダル、ジョシュ・シルヴェイラたちと練習してきた。スーパータフなトレーニングと最高の睡眠、最高の食事を摂ってこれ以上ないほどスーパーに仕上がっている」
──アブダビはUFCデビューを戦った思い出の地でありながら、キャリア唯一の敗北を喫した場所であります。その辺りに関して想うところはありますか。
「2年前の話だ。何の関係もない。会場もホテルも別の場所だったし、僕自身が2年前とは別人だからね。アブダビでの僕の物語を書き換えるだけだ」
──ダリューシュ戦に向けて、先ほど挙げられた選手たちが特定の練習パートナーだったのでしょうか。
「そうだね。あとはフランシスコ・トリナルドも凄く助けてくれたよ。それから名だたる柔術家がグラップリングの練習相手を務めてくれた。その全てをマイク・ブラウンがしっかりとチェックして、アドバイスをしてくれた。自分のできることは、全てやり尽くしたよ」
──ところで前回のアルマン・ツァルキャン戦は凄まじい激闘で、5Rのうち3Rを取って判定勝ちを収めました。上のランクの強い選手と戦うことは誰もが望みますが、マテウスの凄いところは自身が上位戦線間近という状況で下から突き上げてくる超強豪と戦ったことです。
「僕がUFCとサインをした時、ゴールは世界のベストファイターと戦うことだったんだ。僕の後ろを追いかけてくる選手たちのなかで、最強の1人と最高の戦いができてハッピーだったよ。アルマンは本当にタフな選手だった。
確かにダリューシュ戦は自分より上のランカーとの戦いだから、それは大歓迎だ。それもアルマンのような選手に勝ったからだと思う。僕が試合に応じるのは、タフになるファイトだけだよ。
アルマンとは5Rをノンストップ、スクランブルが続く最高レベルの試合ができたと思う。あの試合をしたことで、僕のポジションとスキルはレベルアップした。今はもう3カ月前とは違うアニマルだ。ベニール・ダリューシュ戦もよく似た激しいファイトになるだろう。
ただし、今回は3Rだ。常に燃料が満タンの状態で戦うことができる。前回の試合がマラソンなら、ダリューシュ戦は100メートル走だよ。全速力で戦い続ける。初回から全開で攻めることができるはずだ。そしてこの試合に勝てば、僕はタイトル戦線に辿り着くことになる」
──ダリューシュ戦がアルマンとの試合のようになるというのは、試合展開ということでしょうか。それともタフになるという点においてでしょうか。
「技術的にもダリューシュはレスリングと柔術が強いから、アルマンに似ている。とはいえダリューシュはどの局面で戦えるオールラウンダーだよ。パンチ力があって、圧を掛けてくる。そしてノンストップアクション、止まることを知らない。毎試合でテイクダウンを奪っているようにレスリングも強い。それ以上に柔術が強いんだ。どの局面、どの瞬間も気が抜けない。
だからこそ、楽しみなんだよ。彼はまた僕をやる気にさせて、エネルギーを与えてくれた。結果的に僕を強くしてくれる。だからこそ、ヤツをぶっ倒すんだよ」
──フィジカル的にはダリューシュをどのように捉えていますか。
「フィジカルは最も大切な部分だ。今、僕はキャリアのピークにある。31歳、スタミナもパワーも技術も過去最強だから、どんなタフな相手と当てられても大丈夫だよ。ここで勝って、来年はイスラム・マカチェフと戦うよ」
──つまり今大会のメインでマカチェフが、シャーウス・オリヴェイラを下してチャンピオンになると予想しているということですね。
「そうだよ。マカチェフの方がグラウンドコントロール、打撃ともにオリヴェイラの上を行く。レスリングでもそうだ。もちろんオリヴェイラの柔術は、とても危険だよ。彼ほどUFCでフィニッシュ力がある選手もいない。オリヴェイラはバックをとるため、チョークを極めるため、腕を極めるために多くの罠を仕掛けるだろう。そこでマカチェフが対処を間違えると、極められてしまうに違いない。
どうなるだろうね。凄く興味深いよ。でも、僕はマカチェフが勝つと思っている。そしてダリューシュを破った僕が次の挑戦者になるんだ。UFCはタイトル戦と同じ階級の試合をPPVカードで組むと、そこの勝者がチャレンジャーになる傾向がとても強いからね。
そのために僕はスポーツマンらしく正々堂々と戦い、最高級のMMAを皆に見せたい。素早いスクランブル、止まることのないファイト。その結果、僕がベニール・ダリューシュを打ちのめす。ファイトは何が起こるか分からない。僕が一発のパンチでKOすることもある。ただし3Rぶっ通しで、厳しい展開になることは覚悟の上だよ」
■視聴方法(予定)
10月22日(土・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
10月23日(日・日本時間)
午前3時00分~PPV
午前11時00分~WOWOWプライム
【写真】平良の往く道の困難さを、経験値をもって予測できる点で水垣偉弥の言葉は説得力に満ちている(C)ZUFFA/UFC
過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ水垣偉弥氏が選んだ2022 年5月の一番。お蔵入り厳禁──5月7日に行われたUFC274で組まれた変則UFC世界ライト級選手権試合=シャーウス・オリヴェイラ×ジャスティン・ゲイジー戦から、同14日のUFC ESPN36で行われた平良達郎カーロス・キャンデラリオ戦について語らおう。
<月刊、水垣偉弥のこの一番:5月:シャーウス・オリヴェイラジャスティン・ゲイジー戦はコチラから>
──いやあヌルマゴメドフがオリヴェイラのトップを取った展開、見てみたいですねぇ!!
「だから完璧なヌルマゴメドフが戻って来るならオリヴェイラ戦が見たいですけど、アレっていう彼は見たくないです」
──いうと今のマクレガーですかね……。
「そうですね(苦笑)。マクレガーはフェザー級時代、ライトになってからはエディ・アルバレスまで……ですね。だから、ブライアン・オルテガをテイクダウンして上から殴る技術とメンタルを持っているヴォルカノフスキーとオリヴェイラでライト級王座決定戦を戦って欲しいです。
イスラム・マカチェフだけが新しい血というのは、ライト級は潰し合いが進み過ぎて一回りした感があるからで。ただしビッグネーム揃いのライト級で、UFCがマカチェフを押し切れるのか。戦績でいえば2015年に1度負けただけで、10連勝しているんですよね。でも対戦相手がそこまでビッグネームじゃなくて、ダン・フッカーぐらいで。これは、上がぐるぐる回っていた影響を受けているのでしょうけど。だからヴォルカノフスキーですかね。やっぱりテイクダウンして殴ることがデキるので(笑)」
──スタンドで殴ることできる。その殴る相手がテイクダウンを仕掛けてくることを常に想定していたからこそ、水垣さんは組みの怖さと、組みがあるからこそMMAという気持ちを強く持ち続けているのが終始伝わってきます。
「テイクダウンも寝技もある。それが僕らがWEC時代にUFCに負けないぞってやってきたMMAなので。MMAのストライカーはテイクダウンのある相手を殴ることができないといけないという気持ちはやはりあります。そういう戦いの最高峰がUFCで」
──そのUFCに平良達郎選手が、約2年振りに日本人男子として新規契約を果たし、デビュー戦で勝利を飾りました。
「まず試合内容云々の前に、僕がWECでデビューをしてから13年が過ぎて……僕自身は国内で断トツだったわけじゃないですけど、一応ケージフォースのチャンピオンになって最初の試合でWEC世界王座に挑戦できました。ウルシ(漆谷康宏)さんも修斗のチャンピオンからUFC世界フライ級王座決定トーナメントに出ています(※2012年3月)。
ウルシさんのUFC初戦から10年ですよね、今年で。平良選手は修斗世界フライ級王者で、国内で抜けている存在です。その彼が当初はプレリミの第1試合、試合が延期されて第2試合で戦った。フライ級でも今や世界と日本は差が広がったんだと感じさせられました。
日本はこの10年で、世界に置いていかれた。僕らの時代は日本である程度のところで戦っていると、割と世界のトップで戦えるという認識でした。それがWECが軽量級に力を入れるようになり、UFCに合流した11年でこの状況になってしまったんだなと」
──実力という部分では、フライ級などは世界の頂点と日本のトップ選手の差はそこまで広がっていないと実は感じています。ただし、そこまでの層が厚くなった。この間にあらゆる国の選手がフライ級にもいる。それがUFCにベルトがある階級なのかと。
「僕らの頃は正直、英国やアイルランドの選手がここまで強いと思っていなかったですし、ニュージーランドや豪州もそう。ロシアやブラジルはともかく、カザフスタンとか南アフリカの選手をチェックすることなんてなかったです。
今はトップと15位の差がF1でなくてインディカーですね(笑)。どこでもUFCの試合映像がライブで視聴できて、世界中でMMAの大会が開かれるようになったわけですしね。だから10勝0敗でも、どんな選手と戦っているのか分からない。結果、UFCもまずはコンテンダーシリーズで──という感じになっているんだと思います。でも、それだけMMAが世界に広まったのは嬉しいです」
──その意見も水垣さんらしいです。とはいえ、フライ級はバンタム級やフェザー級ほどではない……とは思います。
「数は少ないですよね。それでも平良選手が無敗できても、『相手は誰?』という風にUFCでは思われてしまう。僕より前だと平良選手の師匠の松根(良太)さんがシャードッグでランキング1位だったりしていたのに。昔だったら修斗のチャンピオンなら、即チャレンジャーだって言われていた。でも日本の評価が相対的に落ちている中で、平良選手はデビューをして……とにかく勝てて良かったです。
日本で彼の試合を見ていた人たちは、バシッと一本勝ちを期待したかもしれないですけど、僕は逆に3Rをドミネイトできた勝利に価値があると思います。今後に向けて良い経験になったし、あまりに鮮烈な勝ち方をすると、すぐにトップと組まれるかもしれないですしね。
将来的にタイトルを獲るという目標があるなかでは、ここ1年ぐらいは試合をしっかりとこなした方が良いと思います。そういう意味でも、いきなり上にパッと引き上げられるよりも、じっくり戦っていく方が良いですし」
──UFCで戦うことで、さらに強くなっていけると。
「そうですね。あの勝利に注文をつけることは何もないです。一本やKOでなくても、完勝です。だから、そうやって一つ一つ勝っていって欲しいです。平良選手自身はどういう風に思っているのか分からないですけど、ランク外の選手と1、2試合戦って。そしてトップ15、トップ10と上がっていって欲しいです」
──水垣さんとしてはあの時代と今を比較して、中央アジアやオセアニア、中東の選手なんか出てくるMMAで戦ってみたかったですか。
「どうですかねぇ。ベルトを賭けて戦ったり、トップ選手と一通り戦えたのでタイミング的には良かったと思っています。スタイル的には今は打撃が多くて、戦いやすいのかという想いも有りますけど……。ヘンリー・セフードとか、五輪金メダリストだった選手やそこに準ずる選手がドッと流入してきたので、そうなると僕は埋もれてしまう可能性が高かったと思います。
何より僕の時代は軽量級で食べていけると思っていなかったです。好きだからMMAを戦っていた。僕自身、できるだけ現役を続けて。その後は細々と暮らすことができれば良いやって思っていました(笑)。それがユライア・フェイバー先輩のおかげで、今もMMAに関わっていられて、家族と楽しく生活ができるようになりました。だから、タイミング的にあの時で良かったです(笑)。
今はそうじゃないかもしれない。でも、平良選手はそういうなかで埋もれず、上を目指して頑張って欲しいです」
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過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、水垣偉弥氏が選んだ2022 年5月の一番。お蔵入り厳禁──5月7日に行われたUFC274で組まれた変則UFC世界ライト級選手権試合=シャーウス・オリヴェイラ×ジャスティン・ゲイジー戦について語らおう。
────水垣さんが選ぶ5月の1番は?
「シャーウス・オリヴェイラ×ジャスティン・ゲイジー戦ですね。あの計量オーバーなんですけど、セレモニアル計量と本計量に分けられるようになって、ガラッとルールが変わったんですよね。
それまでは夕方4時ぐらいの計量だったのが、朝の9時ぐらいになって。本計量の時のスケールって一度乗ると乗り直すことがでないんですよ。だからステージの裏にもう一つ、計量台があって。それは同じだからということで、そこでダメだと落としに行く。でも、ステージの上のヤツに1度乗ると、もう測り直しはできないんです」
──もう乗れないって凄い話ですね。
「こないだも確認したのですが、乗れないという規則は続いているようでした。ただ全ての大会に共通でもないようですね。そこはちょっと分からないのですが、オリヴェイラの場合は推測ですが、裏のスケールで大丈夫だったから、表の体重計に乗ったんだと思うんですよ。1/2オーバーなら落とせるはずですし。だから裏と表に、オリヴェイラに限っては誤差があったんじゃないかと。
基本、計量失敗はもう何の言い訳もできないモノですけど、このオリヴェイラの失敗だけは、微妙なルールが仇になってしまったんじゃないかと。いずれにしても、そんな計量失敗でタイトルまで没収されたのに、しっかりと勝てるメンタルを創ってこられる。凄まじいですね」
──確かに、不信感も手伝って緊張の糸はプツンと切れてもおかしくないですよね。
「あのメンタルはなかなか創れないです。その一方で、ゲイジーはどういうプランで戦っていたのか、分からない。ダウンを取ってから、パウンドに行かなかったのは分かります。それだけオリヴェイラは下が強いですから。ただし、あの後からゲイジーのパンチがどんどん大振りになっていきました。
最終的には空振りして、自分で転んでしまうほどに強振して。パウンドの追撃をしないのに、KOを狙っている。どういう風に試合の組み立てを考えていたのか分からないです。ホントにどうするつもりだったのかなって。
パンチを重ねて、それでオリヴェイラが力尽きればKOでも良いです。KOできなくても判定勝ちすれば良いですし。なら、あの大振りは何なのかと。パウンドを少しも落とさずに、スタンドに戻ってワンパンKOを狙うなら、倒してから少しは殴った方が良いだろうと思うんです」
──本当にワンパンKOを狙っていたのかしれないですね。自分は立ったままでレフェリーが試合を止めるというような。
「それだけの技術があると思っていたのか……それはさすがに無理だろうって。せっかくダウンを奪って試合を有利に進めることができたのに、なんだかノープランで落としてしまったなと。過信というのでもなく、勝利のために細かいところまで詰められていないのかもしれないですね。
力の差が圧倒的にあれば何とかなりますけど、ここまでレベルが高くなっているところで、あんな風に戦うのは勿体ないですよね」
──ゲイジーのスタイルで、UFCで世界挑戦まで行けるのも稀有な存在ではあるのですが……。あそこまで粗くて今のポジションまで行けるとは、WSOFからUFCと契約した時には思えなかったです。
「UFCが打撃をガンガンと押すようになった時代背景と重なったことはあったと思いますが、それでもエディ・アルバレスとダスティン・ポイエーに負けた時は、『そうだろうな』とは思いました」
──ハイ。
「オリヴェイラはガンガン行くとはいっても、やはり抑えるべきところは抑えています。技術があって、自分の戦い方があるので……打ち合い上等とは違います。自分の勝ち方をちゃんと持っている選手相手には、ボロが出てしまうかと。でも、マイケル・チャンドラーやトニー・ファーガソンに勝っていますしね」
──乱打戦になるのは寝技は付き合わず、テイクダウンも許さない力があるからなのか……。
「ゲイジーに関してはレスリング能力が高いから、ああなるのだと思います。攻撃には使わないですけど、ゲイジーからテイクダウンを奪うのは大変でしょうし。ただし、受けの強いレスラーに多い、ジャブ&テイクダウン防御型にならずにガンガンと戦う。テイクダウンを取らせない選手は、やはりそこが第一にあって、あんな風に攻めることはないですよね。ゲイジーは違って打ちに行く。あれもテイクダウンを取られない自信があるからこその戦い方だと思います。
ただし、ゲイジーがレスリング力を攻めで生かしてきた方が相手は嫌だと思います。ゲイジーの打ち合いって、ファンとかは喜ぶからもしれないですけど、本当にしんどいのは組んで勝つこと。それができるのにしないのは、しんどいことを避けているからという風にも見えます。
あのしんどさを選手は知っていますからね。打ち合っている方がハードな試合をしているように見えますけど、やる方のメンタルとしては、打撃をビビるタイプでなければ殴り合いよりもテイクダウンに行くほうがしんどいですから。
だからこそ、組まずに勝てるから、ゲイジーも粗くても打撃で戦っているんだと思います」
──さすが殴り合いが怖くないタイプだった水垣さんらしい、MMAの見方ですね。
「打ち合うのって……こういうとアレなんですけど、楽なんです。それよりガス欠、疲れる怖さのほうがありました。僕は一番怖いのはバテることだったんです。そうなるとテイクダウン勝負って、練習から自分を徹底的に苦しめるわけで。それをやきるだけの体力をつけることが、まず相当な覚悟がいります。ヌルマゴはそれをやり続けたんです。だから、彼もスパッと引退したんだと思います。
試合はあんな風に強さばかり見せて勝っていても、その状態に持っていく練習は本当にハードの極みだったはずです。しんどいことを承知で、それだけハードな練習をして。
ゲイジーがスマートに戦うには、それこそそれ以前の準備段階で自分をいかに苛めることができるか。だから、あんな風に戦うのは勿体ないなぁと思います」
──対してオリヴェイラの強さというのは、水垣さんから見てどこでしょうか。
「下があれだけできる。だから、相手がトップですら寝技をしたくない。そうなると相手は組んでこないので、そこで削られることがないですよね。
打撃も下になっても良いという想いがあって、使っています。だから今後、オリヴェイラとの対戦が楽しみなのは、フェザー級王者のアレックス・ヴォルカノフスキーですね。ブライアン・オルテガにパウンドを落とせる彼なら、上を取って殴って行けるんじゃないかと。
あとダメもとなんですが、今だからこそヌルマゴとオリヴェイラが見たかったです」
<この項、続く>
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過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。3人の論客から、柏木信吾氏が選んだ2022年4月の一番。23日に行われたBELLATOR279よりパッチー・ミックス堀口恭司戦──からの9日のUFC273で組まれたマッケンジー・ダーンティーシャ・トーレス戦について語らおう。
<月刊、柏木信吾のこの一番:4月:パッチー・ミックス堀口恭司はコチラから>
──おおついにマッケンジー♡の柏木さんが、彼女について熱い想いを話してくれる時がきましたね。
「いやぁ、面白い試合でした。ミノタウロ・ノゲイラやジャカレ・ソウザにしてもUFCに行くと柔術家がボクサーになるじゃないですか。柔術のスペシャリストが柔術を使っちゃいけない空気というのか。クロン・グレイシーもカブ・スワンソンと戦った時は、ほぼ寝技に行かなかったですし」
──ハイ。寝技を拒否する相手と戦い、組んで倒すという疲れる戦いをせずに、打撃を効かせて柔術で仕留める。シャーウス・オリヴェイラもそうですが、それがMMAにおける柔術家の戦い方になっています。
「そんななかマッケンジーは、超能力というか一番の能力……他人が持たない武器で戦うことの大切さを見せてれくれました。もちろん、それが柔術で」
──マッケンジーって、めちゃくちゃ柔術を信じていますね。
「ハイ。と同時に女子MMAの傾向が、まだそれを許してくれているというのはあると思います。男子のようにMMA化していなくて、バックボーンの強さがまだ反映される余地がある。ベースの格闘技の技術に頼って戦えるのが、女子のMMAですよね。
それに柔術って、男子のMMAだと圧倒的なフィジカルの前では真価を発揮できない部分があるじゃないですか」
──はい。
「ただし、女子だとまだそうでもない。だからマッケンジーの柔術も見事にMMAにハマる。そういうスタイルをマッケンジーは構築しているので、本当に試合が面白いです。
良い意味で異質と言いますか。新鮮なファイトを見て、米国のファンも堪能していると思います」
──それでもUFCでは女子も相当にMMA化し、異種格闘技っぽい戦いから脱却してきているので、マッケンジーの異質さが際立っています。
「仰る通りです。そういうなかでMMAに慣れたお客さんに、新しいモノとして柔術主体のMMAを提供している。時代に逆行しているような柔術特化ファイターとして、マッケンジーは試合を盛り上げています」
──というか……柏木さんもめっちゃくちゃ、盛り上がっていますね(笑)。
「いやぁ、だって凄いですもん──マッケンジーのMMAは」
──逆行しているのは精神面も当てはまるかと思います。多くのファイターがリスク管理をして、マネージメントをしているなかで、あれだけ攻めていく姿勢を持つというのは。
「皆が隙を与えず、効率的な練習をしていると思います。そのなかでマッケンジーは、相手の腕にぶら下がっていましたからね。そういう風に戦えた2Rが、勝負の分岐点になりました。
試合序盤は遠い距離から大振りで突っ込んでいたので、カウンターを貰って終わるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしながら見ていました。当然のように初回はトーレスのラウンドになって。でも2Rになると柔術地獄というか、寝技地獄に持ち込むと、3Rの打撃の展開がまるっきり初回とは変わりましたね。トーレスは組まれるのが嫌で、下がるようになって」
──組の強さを打撃の圧に加えることができる。まさにMMAですね。
「それがメチャクチャ面白かったです。組みの強さを見せたことで、打撃の圧になった。グラウンドしかやっていなくても、打撃力のアップに繋がる。この3回戦はMMAの面白さが詰まっていましたね。3Rの出だしの打撃でマッケンジーが圧しているのは、僕はもう感激しました!!
マッケンジーは心と技が一体化していますし。MMAは全てが繋がっていることを教えてくれましたよ。マッケンジーに学べ、ですよ。日本人選手は」
──柏木さん、そんなマッケンジーのどこが一番好きですか。「お尻ですっ!!」
──ありがとうございます!!! 100点満点の返答、いただきました!!と言いつつ、2人で読者の皆さんとマッケンジーに謝りましょう(笑)。
「ハイ。スミマセン。冗談です(笑)。決して、そういう目でMMAを見ているわけじゃありませんので。マッケンジーはファイトスタイルを含めてファイターとしてとても魅力的ですからね。でもお尻もおっぱいも富士山と同じなんです。あったら、見ちゃうんです」
──確かに。何百回と東名や新東名、中央自動車をドライブし、新幹線や飛行機からでも富士山が見えると『富士山だ』って同乗者といってしまいますもんね。
「そう、それと同じなんですよ!!」
The post お蔵入り厳禁【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:4月:マッケンジー・ダーン💛✖ティーシャ・トーレス first appeared on MMAPLANET.<155.5ポンド変則UFC世界ライト級選手権試合/5分5R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
Def.1R3分22秒by RNC
ジャスティン・ゲイジー(米国)
オリヴェイラの計量失敗により、ゲイジーが勝利した場合のみチャンピオンに認定される変則タイトル戦。いきなり右を決めたオリヴェイラが、首相撲からヒザ蹴りと攻勢に出る。さらに右オーバーハンドを当てたオリヴェイラだが、直後にゲイジーのショートの右アッパーでダウンを喫する。スタンドで待ち構えたゲイジーは、ショートの右オーバーハンドを当てるとオリヴェイラが引き込む。ここもグラウンドには移行しないゲイジーは、立ってきた流血のオリヴェイラのジャンピングガ―ドにも即スタンドに戻る。
オリヴェイラはボディに右をヒットさせると、ゲイジーは左の空振りで腹ばいになるほど姿勢を乱す。首相撲にパンチを打ってきたゲイジーに右ストレートを当てたオリヴェイラ。ダウンを奪うとバックに回り後ろ三角へ。体を起こしてスケープしたゲイジーだが、即背中に回ったオリヴェイラが、バックグラブからRNCを極めてタップを奪った。
勝者オリヴェイラは、オクタゴンの外に出て何やらダナ・ホワイトに話しかけた。スケールに問題がある主張したオリヴェイラは、「おかしなことが起こったけど、チャンピオンの名はシャーウス・オリヴェイラだ。僕がチャンピオンだ。ベルトはここにあるべきだ。誰とでも戦う。コナー・マクレガー、来るか?」とマイクで話した。