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【UFN228】展望──世界最高峰の異種格闘技戦。打=ラファエル・フィジエフ✖組=マテウス・ガムロ

【写真】UFCで戦うストライカー、そしてグラップラーがどういうストライカーであり、グラップラーなのか堪能して震えたい (C) Zuffa/UFC

23日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC ApexにてUFN228:UFN on ESPN+86「Fiziev vs Gamrot」が行われる。
Text by Isamu Horiuchi

その名称の通り、本大会のメインはライト級6位のラファエル・フィジエフと7位のマテウス・ガムロによるサバイバル戦だ。


フィジエフはカザフスタン生まれで、育ちはキルギス。現在は父親の地であるアゼルバイジャン国籍を有すストライカーだ。そのキルギスで11歳の頃からはじめたムエタイで国際的な活躍を見せ、2017年にはバンコクのムエタイエクストリーム大会にて、当時ルンピニースタジアムスーパーウェルター級王座を返上したばかりのヨドパヤック・シッソンピーノンからKO勝利を収めるなどの実績を挙げている。

同時に韓国のRoad FCなどMMAでも活躍し、プロ5戦全勝の戦績をもって2019年からUFC参戦。初戦は敗れたもののその後連勝を重ね、昨年9月には元ライト級王者のハファエル・ドス・アンジョスと5R戦で対決、最終Rに左フックをスマッシュヒットさせてKO勝利を挙げた。

続いて今年3月には当時ランキング3位のジャスティン・ゲイジーと3R戦で激突。事前の期待を裏切らないMMA最高レベルの打撃戦にて序盤は互角以上に渡り合ったものの、最終Rに失速してジャブやアッパーを被弾、0-2で惜敗している。

対するガムロはポーランド出身のグラップラー。10歳の頃に始めたレスリングではポーランドのジュニアナショナルチームの一員として国際的に活躍し、2012年にMMAデビュー。2016年5月にはフランスの寝技師マンスール・ベルナウイを倒してプロ11戦無敗のままKSWライト級王座に就いた。

(C)KSW

2018年12月にはクレベル・コイケとのフェザー級王座決定戦に臨み、クレベルの下からの仕掛けを完封して判定勝利して二冠王に輝いている。

ちなみにグラップリングにおいてもADCCヨーロッパ大会では複数回優勝を果たし、2019年にはADCC世界大会にも出場するも、初戦で3位入賞したゲイリー・トノンにチョークで敗れている。

KSWでノーマン・パークとの因縁に蹴りをつけ、コロナ禍の2020年10月からUFCに参戦開始。フィジエフと初戦は惜敗したもののその後連勝を重ねてランキング入りし、昨年10月の6位のベニール・ダリューシュ戦に臨んだ。1Rはポジションが目まぐるしく入れ替わるハイレベルグラップリング戦にて優位に立ったガムロだが、2Rから戦法を変えたダリーシュにテイクダウンを切られ、3Rに左ストレートでダウンを奪われ判定0-3で敗れた。

ガムロはその後、今年3月には僅か10日前のオファーを受けてランキング10位のジェイリン・ターナー戦に望んだ。ライト級屈指の長身ストライカーの繰り出す打撃を捌いてテイクダウンを何度も決め、2-1と判定は割れはしたもの実質完勝した。

現在ちょうど似たような立場にある──ともにランキングを上げてきたところで、上位勢の壁に跳ね返されてからの復活を狙う──両者の対決のきっかけは、実はSNS上で生まれている。5月末にフィジエフがツイッター(現X)上にて「8月に俺のダンスパートナーになるやつはいないか?」と英語で投稿したところ、それに真っ先に反応して「9月に5Rでやろう」と書いたのがガムロだったのだ。

フィジエフも早速応じて「9月でもいいぞ、兄弟よ。でも俺は3Rで疲れてしまうんだ。なぜ5Rを望む? 俺たちは友人だろ?」とユーモアある返答を返す。そこでガムロは「俺たち2人はメインイベント(=5R制)に出る資格があるし、ファンも25分間テクニカルヴァイオレンスを楽しむ資格があるじゃないか」と返し、熱心なファンたちが喜ぶ中で両者の対戦の機運が盛り上がり、実現に至ったのだ。

中央アジアと東欧出身の両者が、SNSで互いに母国語ではない英語を用いて対戦の契機を作ってしまうところに、21世紀のMMAの現実がある。ちなみにフィジエフの投稿に対して、実は以前フィジエフに敗れたヘナート・モイカノも「ぜひリマッチをやりたい」と反応をしたのだが、フィジエフがこちらに興味を示すことはなかった……。

そんな両者の対決は、誰もが考えるように典型的な「ストライカー対グラップラー」の構図となるのか。つまり、重心が低く腰の重いストライカー、フィジエフの強烈な打撃をガムロがいかにかいくぐってテイクダウンに入るか、逆に強力なレスリング系グラップラー、ガムロの多彩かつ執拗なテイクダウンをフィジエフがいかに凌いでスタンド戦に持ち込むかが鍵となる。

実際フィジエフも「この試合で、ガムロのようなエリートレスラーのテイクダウンを自分が止められるのかどうか、ぜひ知りたいと思う。今回のキャンプの焦点もそこに置いたよ。さらに、もし100回倒されても、101回立ち上がることをテーマとしてやってきたよ」と、──よく考えると立ち上がる回数は1回余計に多いのだが──力強いコメントをしている。

その際特に注目したいのは、フィジエフの蹴りの使い方だ。卓越したスピードを活かし左右からの強力な打撃を繰り出すフィジエフだが、特にオーソドックスからの右足の蹴りはミドル、ハイ、前蹴りとどれも抜群のキレを誇り予測が困難だ。これを警戒してガードが下がり気味となった相手に放つ左フックの威力は凄まじく、モイカノやドス・アンジョスを1発で沈めている。

前回のターナー戦では蹴りのタイミングを見切ってのテイクダウンを見事に決めたガムロ。パンチからテイクダウンにつなげる動きも得意としており、「フィジエフとの打撃の交換も恐れない」と自信をのぞかせている。

グラップリングMMAから、KSW後期にはジャブを多用するタッチキックボクシング的なMMAにスタイルチェンジをし、UFCでは原点回帰といえるグラップル勝負に戻ったガムロは、組むと見せて間合いを外す術も有している。とはいえ、フィジエフの蹴りはこれまで戦ってきたどの相手によりもはるかに速く鋭く強烈だ。そんなフィジエフの蹴りにいかに対処するのか、着目したい。

もう一つのポイントは、上述のSNSでのやりとりでも触れられていた通りフィジエフのスタミナだ。瞬発系ストライカーのフィジエフは、はじめての5R戦となったドス・アンジョス戦では4Rに動きが落ち、それまでは許さなかったテイクダウンを取られる場面があった。

5R早々に凄まじい爆発力を発揮して圧巻のKO勝利を収めたものの、もし最終R中盤まで試合がもつれ込んだ時、同じ動きができたかは分からない。そして前戦でのゲイジー戦でも、フィジエフは最終3Rに失速。それまでもらわなかったパンチを被弾し、最後は焦って前に出て強引に振った左フックをゲイジーに見切られてテイクダウンを許したことで、──実際にはきわめて接戦だったものの──「完敗」という印象を大きくしてしまった。

対するガムロはスタミナに絶対の自信を持ち、そのテイクダウン力は試合後半においても簡単には落ちないと見ていいだろう。切られても執拗に手を変え、品を変えテイクダウンを試み、組み伏せるのがその真骨頂だ。試合が長引いてフィジエフのスピードが落ちてくれば、それだけガムロが自分の得意なフィールド=グラウンドに試合を持ち込むチャンスは大きくなる。

また、フィジエフが蹴りを警戒させてのパンチを得意とするように、ガムロもテイクダウンを警戒させての強烈な右の一撃を持っている。

もっともフィジエフもそのへんは百も承知のはず。「前回のゲイジー戦では、自分の感情をコントロールすることを学んだよ。あの試合では、ファンをもっと沸かせたいという気持ちに任せて戦ってしまった」と語るフィジエフは、より冷静かつ計算づくに、そしてスタミナにも留意してガムロを攻略しにかかることだろう。

極上のストライカーとグラップラーの両者によるMMAならではの──最高峰のせめぎ合いを堪能したい。

■視聴方法(予定)
9月24日(日・日本時間)
午前5時~UFC FIGHT PASS
午前4時30分~U-NEXT

■UFN228対戦カード

<ライト級/5分3R>
ラファエル・フィジエフ(アゼルバイジャン)
マテウス・ガムロ(ポーランド)

<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
ダン・イゲ(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ロドリゲス(ブラジル)
ミッシェレ・ウォーターソン・ゴメス(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ブライアン・バトル(米国)
AJ・フレッチャー(米国)

<フェザー級/5分3R>
シャルル・ジョーダン(カナダ)
ヒカルド・ラモス(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
マイルス・ジョンズ(米国)
ダニエル・アルゲータ(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
アンドレ・フィアーリョ(ポルトガル)

<ミドル級/5分3R>
ジェイコブ・マルクーン(豪州)
コディ・ブランデージ(米国)

<ヘビー級/5分3R>
ジェイク・コレアー(米国)
モハメド・ウスマン(ナイジェリア)

<女子ストロー級/5分3R>
井上魅津希(日本)
ハナ・ゴールディ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
モンセラート・レンドン(メキシコ)
タミレス・ヴィダウ(ブラジル)

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【RIZIN44】横山武司戦へ、摩嶋一整―02―「リングは足元に空間があるので戦いやすい」

【写真】半年前になるが立川での金原、平田直樹との出稽古。これは良い練習になっただろう(C)KAZUMASA MAJIMA

24日(日)、さいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44で、横山武司と対戦する摩嶋一整インタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

摩嶋は同業者、つまり選手からの評価が高いファイターだ。昨年対戦した金原正徳も試合後に「摩嶋君は強い」とベタ褒めしていた。一方の摩嶋も金原の強さを体感し、なんと対戦後に金原のジムへ出稽古に行ったという。さらに、これまでは「ケージのほうが得意」と言っていた摩嶋だが、リングMMAへの意識も変わってきたという。2023年、摩嶋一整が大きく変わる。

<摩嶋一整インタビューPart.01はコチラから>


――これは都市圏以外のジムあるあるですが、摩嶋選手レベルとなると練習で追い込まれることはないですよね。練習相手との実力差があるために、スパーリングでも摩嶋選手が不利な状況に陥ることが少なかったのではないですか。

「試合の時のように追い込まれることはないです。でも、やり方次第で変わります。練習仲間にガンガン来てもらって、自分は休まずにスパーリングしていたら追い込まれてきますし。あるいは森戸さんのようなトップ柔術家とスパーしていると、本当に疲れますから」

――これから新しく取り組みたいことはありますか。

「もっとトップ選手と肌を合わせたいですね。そのためには出稽古も必要じゃないかなと思っています。今年に入って金原さんのジムに行かせてもらったんですよ」

――昨年対戦した金原選手の立川ALPHAで練習したのですか!?

「はい(笑)。スパーリングもさせてもらって、すごく刺激になって助かりました」

――立川ALPHAへ行ったのは、いつ頃のことなのでしょうか。

「2月ぐらいですね。毛利道場の選手が東京で試合をするので、僕もセコンドに就くことになったんです。東京に行くなら練習したいと思って、金原さんに連絡したんですよ。やっぱり金原さんはフェザー級のトップ選手で、実際に試合すると本当に強かったので。それに1度対戦して、もう2度と試合することはないだろうと(笑)」

――摩嶋選手が勝ち上がっていけば、再び対戦することもあるでしょう。それでも金原選手としてはウェルカムだったのでしょうか。

「快く受け入れてくれました。自分が立川ALPHAに行った時は、金原さんと平田直樹選手がいて。3人でグルグルとスパーを回すことができて、本当に良かったです。金原選手は強いし、巧いし。平田選手も強かったですよ。腰が重くてグラップリング力も高いし、もっと上の舞台で戦う選手になるだろうなって感じました」

――その東京出稽古で何を感じましたか。

「金原さんと試合をして1年近く経っていました。負けてから体力をつけたり、柔術の練習に取り組んできました。だから試合をした時よりは成長した自分を見せることができたと思います。実際に試合をした相手ともう一度組むからこそ、自分自身もそういうことが分かりますし。今回は同じ大会で金原さんがクレベル選手と試合をしますよね。自分としても楽しみです」

――今回はご自身の試合もあるので難しいとは思いますが、金原選手が摩嶋選手のセコンドに就くことはあるのでしょうか。

「セコンドはないと思います。でも前回の試合では勝ったあとに、リングサイドにいた金原さんが抱きしめてくれました。すごく嬉しかったです(笑)」

――本当に嬉しそうですね。ただ、お互いに勝ち続けていれば再戦もあるかもしれません。

「もちろんです。その時はその時で、金原さんを超えたいですね」

――なるほど。金原選手との試合はケージで行われ、芦田戦も次の横山戦もリングで戦います。摩嶋選手はケージのほうが得意だと仰っていましたが、RIZINではどうしてもリングの試合のほうが多くなります。1週間後に行われるLANDMARK、つまりケージのほうに出たいという気持ちはなかったですか。

「確かにケージの試合は魅力的ですけど、さいたまスーパーアリーナで試合ができるのは嬉しいです。最近はリングとケージ、どっちでも良いかなと思うようになりました。実はリングでも試合をするために、壁を使わないことを意識して練習しているんですよ。だから今は、壁があってもなくても関係ないです。リングは足元に空間があるので戦いやすい面はあって」

――というと?

「マットとロープの間にスペースがあるので、ロープやコーナーに押し込んでからも足をかけやすいですよね。ケージだと、そのスペースはなくて。前回の試合もコーナーに押し込んでから大外刈りでケージ中央に投げることができたのは、そういう理由もあるんです」

――そうだったのですか! 次の横山選手は柔術ベースのMMAファイターである一方、これまでキャリアのほとんどをケージで戦ってきました。摩嶋選手にとってリングで戦うことにアドバンテージはありますか。

「僕も柔術を習い始めて、リングでの試合にも慣れてきました。ここで今までの経験が生きるんじゃないかと思っています」

――では対戦相手の横山選手について印象を教えてください。

「本当に柔術家らしく、下からでも上からでも極めることができる。しかも一発で極められる力を持っているので、そこは脅威だと思います。あとは結構、蹴ってきますよね。MMAの試合なので、打撃戦になっても寝技になっても、どちらでも戦うつもりで準備しています。スタンドとグラウンド、どちらで来てくれても構わないです」

――森戸選手と練習することで、横山選手の対策も考えやすいですか。

「森戸さんはトップ柔術家なので、上からでも下からでも強いです。だから横山選手対策とかは関係なく、森戸選手と練習していたら勉強になることは多くて」

――その森戸選手は9月30日に、グラジエーターで世羅智茂選手と対戦します。摩嶋選手とノーギの練習をし始めたことで、森戸選手にも変化は見られますか。

「最初は引き込んで下から攻めるイメージが強かったです。でもプログレスの試合に出始めてからはスタンドレスリングやテイクダウンの力をつけてきて、今はケージレスリングもすごく巧いです。もちろん下からも強いし、いずれMMAでも戦えるんじゃないかと思っていますよ。次の試合も森戸さんに完封勝利してもらいたいですね」

――では最後に、ご自身の試合への意気込みをお願いします。

「自分はまだまだ成長過程です。どんどん成長していって、いずれはRIZINのベルトを山口に持ち帰りたいです。これからも見守ってください。応援よろしくお願いします」

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<キック70キロ契約/3分3R>
安保瑠輝也(日本)
宇佐美正パトリック(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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【RIZIN44】ついにクレベル・コイケと対戦、金原正徳「一緒にするなよ!という気持ちはありますよ」

【写真】RIZIN LANDMARK05で山本空良に勝利した時の会見での金原。RIZINで戦うことで、これだけのメディアの質問を試合後に受ける。彼の言葉が、一般メディアに少しでも届くことはMMA界のためになる(C)MMAPLANET

24日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44にて、金原正徳がクレベル・コイケと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

ビクター・ヘンリー戦後の引退表明を撤回し、RIZINで芦田崇宏,摩嶋一整 、山本空良と日本人相手に3連勝している金原。今大会でいよいよRIZINフェザー級トップ戦線の一角、元王者のクレベルとの一戦に臨む。金原はクレベル戦を己の格闘技人生を貫く試合と位置づけ、自分がやってきたことを証明したいと話した。


――RIZIN44でのクレベル戦が迫ってきました(取材日は9月15日)。クレベルは元RIZIN王者であり、RIZINフェザー級トップの一角です。日本人相手に3連勝して、そろそろこのクラスの相手と戦いたいという希望があったのですか。

「本音で言ってもいいですか?」

――ぜひ本音を聞かせてもらいたいです。

「自分の中でUFCへの挑戦が終わった時点で、気持ちが続いてなかったというか。トップを目指すという意味では、やっぱりUFCが一番であって、UFC以外はどの山を目指すにしても富士山だと思うんですよ。自分が格闘家としての終着点として、どこを目指すかを考えたときに、富士山を目指すという気持ちにはなれなくて。

もちろん簡単に富士山の頂上まで登れる=日本一になれるわけではないし、そのためにやらなければいけないことはあります。でもそこにモチベーションを向けたり、パワーを注ぐことができなかったというのが正直なところでした」

――RIZIN参戦当初は、こういったキャリアは考えてなかったんですね。

「僕がRIZINに出始めた時期はちょうどコロナ禍と重なっていて、外国人を招聘できないから、日本人同士の試合が増えている状況だったんです。自分の実力的に、コンディションを100パーセントに近い状態まで持っていければ、日本人には負ける気はしなかったし、自分の立ち位置が分かったうえで試合をしていました。だからRIZINで3連勝したからといって、自分の実力が上がっているとか、そういう勘違いはしていないつもりです」

――では僕も本音で質問させてもらうと、日本人選手のマッチメイクが中心とはいえ、金原選手からすると実績・キャリアに差がある、もしRIZINにランキングがあれば下位の選手を迎え撃つという試合が続いたことに対して「なぜ?」という気持ちはなかったですか。

「それはありましたよ、特に前回4月の山本空良戦の時は。今まで自分が積み重ねてきたものを全て否定されたような気持ちになった部分はあります。でも年齢を重ねて若い選手と戦って、踏み台にされることも自分の宿命なのかなとも思ったし。そんな気持ちがあった上で、いざ蓋を開けてみたら、自分が思った通り実力差があることを見せることができたと思うんです。だったら、これからは自分が強いと思える相手とやりたいと思って、その時はヴガール・ケラモフを指名させてもらいました」

――山本戦が王者クラスとやりたいと思うきっかけだったんですね。

「きっかけというか、どうしても選手って試合が近づいてくるとメンタル的に不安になってくるんですよ。僕が山本選手とやった大会は同じ階級のダブルメインイベント(斎藤裕×平本蓮・牛久絢太郎×朝倉未来))の注目度が高かった。自分ではその4人のなかでも俺が一番強いと思っているのに、この4人が注目されるのが日本のMMAの現状だなと思って。フラストレーションやイライラは溜まっていました。

はっきり言えば実力以上に人気がある選手がフューチャーされてしまうこの時代に、俺の格闘家としての存在価値はなんなんだろうって。だったら僕は注目されなくてもいいから、自分が強いと思う相手と戦って、自分が満足してキャリアを終えたいと思いました。僕はずっとそういう道を通ってきた格闘技人生だったから、最後もそれで終わるのがいいんじゃないかなと思います」

――自分が歩んできた道を全うする、金原正徳の道を貫く試合をやる、と。

「僕らの世代は器用じゃないし、SNSを使って上手いことやるとかできないですよ。でも人生をかけて一生懸命、格闘技をやってきた。だったらそれを少しでも多くの人に見てもらいたいという気持ちが強くなってきていますね」

――一方でここ3試合を見て、金原選手の戦い方がより洗練されてきたと感じています。

「外国人選手に勝つためにやってきたことを日本人相手にやっているだけで、もともとの地力に差があるというのは感じます。そこも含めて自分のなかで余裕やゆとりを持って戦えているとは思います」

――摩嶋一整戦のバックステージ映像では、かなり冷静に試合を振り返っていましたよね。試合展開としては逆転勝ちだったにも関わらず、一切慌てていなかったことが印象的でした。

「そこはRIZINルールとユニファイドルールの違いはありますよね。RIZINルールは仮に1・2Rをとられても、3Rに逆転できるルールで、僕はファイトスタイル的に1・2Rとることもできるし、3Rに逆転することもできるので(RIZINルールに)噛み合うと思っています。実際に練習でもRIZINルールを意識したものはやっているので、そこは大きいかなと思います」

――今回のクレベル戦、カード発表会見で「心機一転」という言葉を使っていましたが、そう感じた理由は教えてください。

「クレベルは本当に強い選手だと思うし、今までの感覚でやっていたら絶対に勝てない相手だと思います。20代、30代前半の頃の挑戦者の気持ちを思い出して、身体を作っていこうという意味での心機一転ですね」

――直近3試合のように実力&地力に差がある中で、コンディションを100パーセントに近づけて勝つという試合ではない、と。

「今回は試合に向けた考えが全く違います。ここ3試合は、正直80パーセントくらいのコンディションでも何とか勝てる相手だっと思うんですよ。でもクレベルは120パーセントまで持って行かないと勝てる相手じゃない。だから怪我を恐れず練習量を増やしました。若い頃のように2部練、3部練とやって『疲れた』とか『どこどこが痛い』は関係ない。それで怪我したらそれまでだと思って、厳しく自分を追い込んできました。それがいい方向に出るか、悪い方向に出るかは試合にならないと分からないです。でも最後はやらないよりはやった方がいいと決断して、タイ(タイガ―ムエタイ)にも行きました」

――タイでの練習は今どう影響していますか。

「試合前は不安になることが多い中、『俺はこれだけやってきたから大丈夫だ』と思うことができますよね。まさに昔の僕はそうやって自分に言い聞かせてきた部分があって、今回はそれが出来ていると思います」

――先日公開練習の様子が動画や記事で各メディアにアップされていましたが、僕は試合前にも関わらず芯をついたコメントだったと思いました。

「あれはド正論ですよ」

――公開練習後の囲み取材で「スタンド」と「先手を取る」ことをポイントとして掲げていましたが、僕もこの2つが勝負の鍵だと思っていて。

「はい。そう思ってます」

――そこまで言い切ってしまうこと、それを相手が事前に目にすることは気にならないですか。

「全然気にならないです。僕もクレベルも今更何かを隠してやるようなタイプじゃないし、それがバレたところでお互いどうにかなる選手じゃないんで。自分が試合前にあれをやりたい、これをやりたいと考えるより、リングで実際に向かい合って組んで、そこでどう感じるかのほうが大事です」

――ではそこについても聞かせてください。クレベル選手はレスリングやテイクダウンのアプローチがそこまで積極的ではない分、逆にスタンドの打撃を思い切りやっている印象があります。その意味で金原選手もスタンドが重要という認識なのですか。

「それは少し違って、こちらがスタンドで行き過ぎると組まれるリスクもあるし、逆に間合いが遠くなってクレベルの距離になるのもよくない。だからこそ、そこは試合前の決め事ではなくて、向かい合ってどう感じるかなんですよ」

――なるほど。

「その時の自分の感覚とセコンドが客観的に見たときの距離感とリズム。そこをしっかり把握して戦うことが大事で、それはもう現場合わせでしかできないことですね。僕はそれだけのキャリアも積んできたし、ラウンドごとに修正する引き出しもあるので、あまり試合前に決めきらずにやろうと思います」

――あともう一点、クレベル選手はサブミッションが強い。それは対戦相手なら誰しも分かっていることで、みんな対策を立てて試合をしていると思います。ただそのせいで試合運びがクレベル選手の寝技対策ばかりになり、結果的に受け身になってクレベル選手のサブミッションに捕まるパターンが多い。だから金原選手は「先手を取る」という言葉を使ったのではないかと思いました。

「それはクレベルに限らず、ですね。僕は基本的に先手を取って戦うタイプで、後手にならずに自分からプレッシャーをかけていきたい。仮にテイクダウンされても自分からアクションを起こした結果ならしょうがないよね、と。そうすることで、そのあとの寝技の攻防でも先手がとれるし。最初から後手に回るとテイクダウンされる、背中をつけずにエスケープしようとする…と、どんどん後手後手になるんです。それよりも自分から相手に触りに行って、展開を作っていくことが自分の理想です」

――分かりました。とはいえ過去の戦績を振り返ると金原選手の一本負けは2試合だけなんですよね。

「デビューしてすぐの頃にZSTで佐東伸哉にアームロックを極められたのと、UFCでマイケル・マクドナルドにRNCを極められただけですね。だいぶ対戦相手のレベルが違いますけど(笑)」

――確かに(笑)。ただし金原選手がサブミッションを極められる印象がないのも事実です。

「でもクレベルの試合映像を見れば見るほど『コイツ強いなぁ…』と思いますよ。だからそう感じてからは一切映像は見てないです。クレベルの動きのイメージだけ頭に残しておいて、それ以外にネガティブになる要素には触れないようにしました。勝ちパターンと負けパターン、どちらもイメージしているので、自分の動きを勝ちパターンに近づけることが出来たらベストだと思います」

――これから外国人選手の参戦が増えてくれば、RIZINの見え方や世界観も変わってくると思います。ちょうどその過渡期において、金原選手は自分がやってきた格闘技が何なのかを試合で見せたいですか。

「はい。自分が今までやってきたことは、今のRIZINファイターがやってきたこととは違う。そこを一緒にするなよ!という気持ちはありますよ。で、今回は実際に強い選手とやってみろと言われて、まさに自分がやってきたことの答え合わせだと思うんです。ここであっさり負けるようだったら、お前がやってきたことは他の選手と変わらないじゃんとなるだろうし。クレベルといい試合をして勝つことで、自分がやってきたことの証明ができると思っています」

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<キック70キロ契約/3分3R>
安保瑠輝也(日本)
宇佐美正パトリック(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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【RIZIN44】「フライ級GPで優勝し、次の相手がアーセン君で『やった!』という選手は少ない」──福田龍彌

【写真】表題の発言をしても、全くアーセンを軽視することがないのが福田だ(C)TAKUMI NAKAMURA

24日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44にて、福田龍彌が山本アーセンと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

2021年10月からDEEPに参戦し、今年5月にDEEPフライ級グランプリ優勝&DEEPフライ級暫定王座獲得を果たした福田。グランプリを前に勤めていた会社を退社し、プロ格闘家として生きる道を選んでのグランプリ制覇だった。2度目のRIZIN参戦でアーセンと拳を交える福田は、アーセンと自分を「ホンマに真逆。月と太陽」と例え、その胸の内を明かした。


──昨年3月以来のRIZIN参戦で山本アーセン選手と対戦が決まりました。対戦相手がアーセン選手だと聞いた時には率直にどう思いましたか。

「自分はもっと違う相手を想像してたんですけど。アーセン君は伊藤(裕樹)君に勝ってるから、それもあるかなとは思ってました……って感じでした」

──対戦相手については改めて聞かせてください。福田選手は昨年8月からスタートしたDEEPフライ級グランプリ優勝&DEEPフライ級暫定王座獲得を経てのRIZIN凱旋となります。グランプリが終わってからはどのようなことを意識して練習しているのですか。

「普段と変わらずという感じですね。結局、毎日やることって変わらないんですよ。減量があるかないかとか、それぐらいで」

──福田選手は昔からそういうスタンスなんですか。試合の有無や対戦相手のことは関係なく。

「自分がどう強くなるかっていうのは、日常の過ごし方やどんな練習をするかやと思うんですけど、DEEPに出るまでは試合が年1回とかだったんで、毎日自分を突き詰めて継続して練習するというのができなかったんです。でもDEEPでは試合数も増えて、サラリーマンの仕事も辞めて、毎日一生懸命練習やるようになりました」

――DEEP参戦後はフライ級グランプリも含めると、約1年半で8試合と試合数が激増しました。そこは大きな変化でしたか。

「めちゃくちゃ変わりましたね。仕事を辞めて戦うことで生計立てることもできるようになったし、ずっとこういう生活をしたいと思っていたんで。年に1回しかライブしてへんアーティストより、毎月ライブしているアーティスト。年に1回しか家を建てへん大工より、毎月家を建てている大工。後者の方がパフォーマンスもステータスも上がるじゃないですか。今そういう生活を謳歌している感じですね」

──しかもただワンマッチを重ねるのではなく、DEEPフライ級グランプリがあったというのは大きいですよね。

「実はグランプリがあるから会社を辞めたんですよ」

──グランプリがきっかけだったのですね。

「ちょうど拳を怪我していて手術、リハビリをしている途中でグランプリの話があって。会社を辞めるんだったら、このタイミングしかないなと思いました」

――葛藤や躊躇はなかったですか。

「葛藤はずっとありました。正直ちゃんと練習して戦うことに身を置けば、もっと結果を出せるって自信があって、自分が仕事さえしいひんかったら、グランプリでも優勝できると思ったんです。それでグランプリに出るとなった時、会社員をやりながらグランプリに出たら絶対後悔すると思って決断しました」

──それだけグランプリで優勝できるという自信があったのですか。

「ありましたね。グランプリには色んな団体から選手が出るって話で、実際そういうメンバーが集まったんですけど、自分だったら優勝できるなって。逆にそこで自分の存在や自分の強さを知らしめたいと思っていました」

──まさに人生を変えるグランプリ優勝でしたね。

「毎日なんやかんや忙しく練習もたくさんできて、何よりもメンタル的に楽になりました、試合前に焦ることもなくなったし」

──それだけ自信を持てる練習ができているということですか。

「僕は修斗時代から『試合やったら上のやつらに負けへんぞ』と思って、地方大会で勝ちまくっていたんですよ。そうすれば後楽園の興行にも呼んでもらえると思って。僕が見てきた先輩たちが、そうやったんで。でも僕の世代はそうじゃなくて、地方で勝ち続けても、なかなか後楽園に呼んでもらえない。そういう悔しさを人一倍感じてやってきたんです。かませ犬扱いでもいいから、俺とやらせてくれよって」

――DEEPフライ級グランプリは、まさにそういった想いをぶつける舞台でもあったんですね。

「はい。自分の実力を証明する場所を作ってもらえたと思います」

──そんな福田選手からするとデビュー戦がRIZINで常に脚光を浴びる位置で試合をしてきてアーセン選手のことはどう見えていたのですか。

「ホンマに僕とは真逆。太陽と月みたいな感じですよ。その流れで言うと、一つ言えるのは『君とは潜ってきた修羅場はちゃうで』と。『俺は地方からたくさんの修羅場を潜って、屍の山を築いてここまで来ましたけど、君はどうなん?』って。きっとアーセン君はアーセン君で、ずっと注目され続けてきた人間やからこその悩みもいっぱい経験して、あの場にいると思うんですよ。だからそれが試合でどうなんのかなみたいなところは楽しみですね」

──福田選手が考える自分のファイターとしての一番の強みはどこにあると思いますか。

「う~ん、どんなところやろう。逆にどう思います?」

──スタンドの打撃が一番の武器でありつつ、その強みを福田選手が自分で理解して、それを軸にゲームプランを組み立てているなと思いました。

「なるほど、なるほど。ありがとうございます」

──MMAはやることも多い競技なので、自分が何が強くて、何が得意なのか分からないまま、戦っている選手も多いので。

「ずっと自分もそうだったんですよ。というか途中からそうなるんです。キャリアを積むと、いろんな情報も入ってきるし、いろんな技術も覚える。選択肢が多くなるんです。でもMMAの根本は何をやってもいいという条件下で“戦う”ってことじゃないですか。だから僕は相手が何をやられたら嫌か。それを試合中に相手から感じて、自分に当てはめていく感じです」

──リングで相手と向かい合った時の感覚やフィーリングを大事にしているのですか。

「はい。そんなに作戦も立てへんし、相手と向かい合った時にどんなことを感じるかですね。フライ級グランプリの時は全部そうやったし、DEEPで神龍(誠)君とやった時もそう。DEEPに来てからは作戦もゲームプランもないし、そのための対策もないし、ゼロでやってきました。だから即興なんですよ。簡単に言うとぶっつけ本番です」

──試合で福田選手の動きがばっちりハマっているので、しっかり対策・戦術を練っていると思いました。

「逆です。対策・作戦ゼロだから、自分の動きがハマるんですよ」

――というと。

「どんな相手にもすぐに合わせられるような練習をするんです。今日はこういうことをやるって決めるんじゃなくて、相手に合わせる練習です。練習パートナーも日によってコンディションもちゃうし、気分もちゃうわけじゃないですか。そういうのに柔軟に対応するための練習をするんですよ。その日のフィーリングで自分が感じたことや頭に浮かんだことを実践できるようにするために日々練習するって感じです」

──なるほど。そういう考えで練習している選手であれば、試合経験を積めば積むほど適応力も上がって強くなるんじゃないですか。

「そういうことなんですよ。僕はそれが強くなるってことやと思うし、次の練習相手がめちゃくちゃ打撃が強いからって自分のファイトスタイルを押し曲げて戦うと、それは僕じゃなくなるじゃないですか」

──相手がこうだから自分はこうするというのは相手主導の試合になりますからね。

「はい。僕は『俺はこうなんだけど、君はどうなの?』という感覚で試合を楽しんでいるんで。音楽で言うとジャムセッションみたいな感じです」

──ちなみに福田選手は音楽が好きなんですか。音楽での例えが多いと感じたのですか。

「音楽も好きやし、現場仕事も好きやし、そういうのもひっくるめて職人さんが好きなんですよ。例えば僕、楽器を触る人の手つきとか好きなんです。ギターリストとかピアニストの指の動きとか、ドラマーのスティックを持つ指の動きとか。何か一つのことをやり込んでいる人の手の動きってキレイじゃないですか」

──まったく業種は違いますが、寿司職人さんの寿司を握る手つきとか。

「そう、そう。たこ焼き屋のおっちゃんがたこ焼きをひっくり返しているところとか、板前さんの包丁さばきとか(笑)」

──そういう熟練の技、練り上げられた技が好きなんですね。

「はい。格闘技をやり込んでいる人って、テイクダウンの動きとか、パンチや蹴りのフォームがきれいじゃないですか。そういうものに美を感じるというか。で『この技を出しますよ!』じゃなくて自然に出るところがすごいと思うんです。だから僕もそこまで技の精度を上げていきたいですね」

──福田選手は職人、達人志向なのですね。

「あとは純粋に格闘技が楽しいなっていう。僕も長く格闘家をやらせてもらって、そういう魅力を感じ始めたのかなと。昔は何も考えずに勢いだけでやってましたけど、選手生活を通してだいぶ成長して、そういう感性にも目を向けられるようになったと思います」

──次の対戦相手がアーセン選手ということで、今まで以上に試合を見る人の数も増えると思います。当日は、どのような試合をしていきたいですか。

「あんまり目立つのが好きじゃないし、ちょっと小っ恥ずかしいんですよ(笑)。でも戦うことが大好きで、会社を辞めちゃうぐらい好きなんで(笑)、こいつ本当に戦うのが好きなんやろうなっていうのを見てくれる皆さんには見せたいなと思います」

──大舞台で戦う選手にはそれぞれモチベーションがあると思いますが、例えば福田選手の場合は普段戦えない選手たちと戦えることがモチベーションですか。

「そうですね。あとRIZINでは修斗にいた時にできひんかった扇久保(博正)さんとやりたいという気持ちはあります。僕もそう若くないから、あと何年できるかだと思うんですよ。フライ級でやるのもしんどくなってきているし、長いことフライ級でやってられへんと思うし。それを考えると、フライ級でやる貴重な1試合、もっとワクワクしたり、自分にしかできひんようなカードをやりたいです。

アーセン君、きっといい選手やし、素晴らしい選手で人柄もいいんでしょうけど『DEEPフライ級グランプリ優勝したから、次の相手はアーセンです』と言われて『やった!』という選手は少ないと思うんです。僕はあのメンバーが参加した過酷なトーナメントを優勝してここにいる。アーセン君は3年ぶりくらいの復帰戦でグランプリでベスト4止まりやった伊藤君に1回勝って、グランプリの優勝者とやれる。それに対して思うことはありますよ」

──福田選手は自分がやってきたこと、残してきた実績にそれだけ自負があるということですね。

「アーセン君も久しぶりの試合で伊藤君に勝つわけやから、それはそれですごいことだと思うんですけどね。まぁ僕は元々PUREBRED京都所属やったんで、アーセン君とはいわゆる同じ大和魂一族なんですよ」

──確かに遠い親戚のような間柄ですね。

「そうです。そういう意味では歴史を知ってはる人、PUREBRED京都から追っかけてくれる人は、そういう見方で盛り上がってくれはるなみたいなのはありますね。そういうところでも負けれへんなとは思ってます」

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<キック70キロ契約/3分3R>
安保瑠輝也(日本)
宇佐美正パトリック(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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【RIZIN44】白川陸斗戦へ、中原由貴 in 剛毅會「空手をやったからと言って、使えるようになると思うな」

【写真】稽古をして、中原の打撃を試合に生かすこと。それが武術空手だ (C)TAKUMI NAKAMURA

24日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44にて白川陸斗と対戦する中原由貴。
Text by Takumi Nakamura

昨年大晦日に鈴木千裕に敗れた後、平本蓮のトレーニングキャンプに参加したことをきっかけに剛毅會空手での練習をスタートさせた。白川戦の約2週間前、剛毅會空手での練習を終えた中原に話を訊いた。


──今回剛毅會空手での練習風景を取材させていただきました。いつからここでの練習をスタートしたのですか。

「大晦日で負った怪我が治った3月くらいですね。もともとT-GRIP TOKYOには毎週火曜日に出稽古に来させてもらっていて、ちょうど(平本)蓮くんの斎藤裕戦に向けたトレーニングキャンプに参加させてもらったんです。そのときに蓮くんと一緒に岩﨑先生も練習に来られていて。僕も岩﨑先生の指導に興味があったので、剛毅會空手の練習に参加させてもらうようになりました」

──練習内容を取材させてもらい、一般的に言われている打撃の技術や理論とは異なる独自のものが多いと感じました。最初に剛毅會空手の練習に参加したときの第一印象はいかがでしたか。

「もともと僕はメンタル的な話や武術的な考えが嫌いではなくて、岩﨑先生のMMAPLANETでの記事も好きでよく読んでいたんですよ。実際に岩﨑先生の話を聞かせてもらったり、指導を受けたりして、シンプルに面白いなと思いましたね」

──剛毅會空手を学んで、最初に変化と感じたのはどこですか。

「変化ではないんですけど、大晦日の敗因は僕がイケイケになってしまったことなんですね。練習でもそうなのですが、僕は理性が働いて自分の戦いができている時は、自分の長所を活かせているんです。でも何かのきっかけで試合でも練習でもイケイケになってしまう。大晦日はまさにイケイケになってしまった典型的なパターンで、事前の作戦も全部ひっくり返しちゃって、前に行きすぎてやられました。剛毅會空手を学ぶことでそうならないように自制できるようになりましたね」

──大晦日の敗因を分析・理解することで、自分の戦い方に変化があったのですか。

「去年7月に関鉄矢選手に勝った時、僕の戦い方にSNSで賛否両論あったんですよ。ファンの人からは『つまらない』と否定的な意見が多く、格闘技の知識がある人からは『距離が抜群で、打撃の打ち分けがよかった』と肯定的に言ってもらえて。あの試合がつまらないと思っている人たちには大変申し訳ないんですけど、僕の中で関戦は歴代の自分の試合のなかでもトップクラスにいい試合だったんです」

――自己評価と一般的な評価に乖離があったわけですね。

「僕としては関戦の自分が理想のはずなのに、大晦日ではそれと全然違うことをやっちゃうという(苦笑)。最初からすべてが同じではなかったですが、自分と岩﨑先生の思想が合っていたと思うし、岩﨑先生の教えを請いたいと思いました」

──そこから技術的なことや実践の動きのなかで『これがでハマった!』と『よくなった!』と感じるのはどこですか。

「なんだろうな…自分の長所に磨きがかかったところじゃないですかね。岩﨑先生と練習を始めた頃、岩﨑先生が『数年空手をやったからと言って、空手を使えるようになると思うな。俺もまだその途中なんだ』とおっしゃっていて。それがすごく印象的だったんです」

──そんな簡単なことではない、と。岩﨑さんはご自身の技術を指導する一方、岩﨑さんからも練習参加メンバーに「これはどうなの?」と質問する場面もあって、あのバランスが選手にとっては大きいなと思いました。

「そうなんです。僕の場合は剛毅會空手を始めて数カ月で、今回の試合が決まった時に『いろいろ教えたけど、自分が出来ないと思ったことは捨てなさい』と言ってもらえて。今それがちょうどハマってるんですよね」

──中原選手のスパーリングを見て、凄く“大きく”見える。そう感じました。

「あっ、本当ですか? 純粋に身体がデカいとかではなく、ですか?」

──純粋なデカさもあるかもしれないですが(笑)、対戦相手は向き合ったときに身体のサイズ以上の大きさやプレッシャーを感じるのではないかと思いました。

「どうだろうなぁ……ここの練習ではちゃんと先生に見てもらっているので、多少強く殴っていいよって言われるんです。それもあって(相手に)プレッシャーがかかっているように見えるかもしれませんが(笑)。そこも含めて自分の長所に磨きがかかっているなというのは感じます。関選手とやった時を一つの理想にしつつ、そこに打撃の破壊力が乗っているというか」

──また今日の練習を見て、中原選手の技の引き出しが増えているような気もしました。

「ああ…そうかもしれないです。次の試合で色々とやろうとしていることはありますね」

──それと同時に打撃の引き出しが増える、打撃の技術が伸びたことでMMAにおける戦い方の幅も広がったのではないですか。

「少し前に打撃だけじゃなくて組みに関しても、ちょっと迷子になっていたところがあったんです。RIZINに来る前、ONEでのエミリオ・ウルティア戦なんかではいい感じに出来ていたものが、最近の試合ではできなくなっていて。ちょうどその原因になっていたところを岩﨑先生に修正してもらって、それで一気に全て変わりました」

──では結果的に試合間隔が空いたこともいい方向に出そうですね。

「本当は4月~5月に復帰戦のオファーをいただいていたのですが、3月末までコンタクトする練習ができなくて(フィジカル)トレーニングだけだったので、それで体重だけ落として試合するのは周りの人に申し訳ないと思い、お断りさせてもらったんです。

じゃあ6月か7月という話も出たのですが、剛毅會空手の練習を始めてすぐだったし、まだ教わったことを試合で使えないと思っていて。その話は流れて最終的に9月になりました。最初は焦りもありましたが、練習期間が伸びた分、パフォーマンスが上がっていたので、この時期に復帰戦が決まって良かったです」

──その復帰戦の相手の白川陸斗選手の印象は?

「白川選手は試合そのものが2年ぶりですけど、シンプルに根性が凄いし、打撃も上手いし、素晴らしい選手だなと思います。ただ2年も空いていると、過去の試合は何も参考にならない。2年もあれば人は別人になれますからね。だから事前の情報がほとんどない相手と戦うイメージで、あとは試合中に起きたことに臨機応変に対応します」

──白川選手のブランクの有無はあるにせよ、今の中原選手にとっては×対戦相手よりも、自分のパフォーマンスがどうなっているのかに興味があるのではないですか。

「今回はそれがデカいですね。なんか楽しみというか。白川選手ほどじゃないけど、自分も期間が空いているし、大晦日に出しきれずに終わったもの、用意していて出せなかったものもあるし。今回は相手に対してだけでなく、新しくなった自分のパフォーマンスに集中したいです」

──この復帰戦をクリアして、ここからどこを目標に戦っていきたいと思いますか。

「焦るのも良くないんですけど、やっぱり強い選手とやりたいし、海外勢にいいようにされていてムカつくところもあるんですよ。今のRIZINは外国人たちの『(RIZIN)に出ればベルト獲れるんじゃない?』という雰囲気が伝わってくるし。フアン・アルチュレタなんてポンポンとRIZINに出て、ベルトを獲って次はフェザー行くみたいな話を軽くしてたりとか。『ちょっとナメすぎだろ?こいつら』という想いがあります。

もちろん今フェザー級のトップでやっている選手に頑張ってもらわないとって気持ちはあるんですけど、やっぱりそこに自分が行きたいと思うんで。白川戦も含めて勝ちを重ねて、早く発言権を得たいです。RIZINとBellatorとの対抗戦でも、お互い強い選手を出し合ってるからしょうがないかもしれないけど、Bellatorにやられちゃったことは悔しいし。僕はそういう試合に出ても白星をとれる選手になりたいし、RIZINを代表して外(海外)に日本人で強い選手がいるぞというところを見せたいですね」

──中原選手はONEで戦っていたことも含めて、海外での試合や×世界を常に意識していたと思うし、そこで結果を出すことへのこだわりはありますか。

「僕は自分の限界を知りたいんですよね、自分がどこまでやれるか。もちろん日本人相手でも限界を知ることはできると思うんですけど、やっぱまだ世界の団体を見ても日本人の名前がトップにない状況があって。日本より海外の方が強い選手が多いわけじゃないですか。それは競技だけじゃない、人口的な問題があるのかもしれないですけど、僕たちは日々必死に練習しているので、ちょっとでも強い相手とやりたいという気持ちが強いですね」

──RIZINのフェザー級は中原選手が欠場している間に王座交代もあり、大きな動きがあった階級です。RIZINフェザー級の現状をどうとらえていますか。

「色々と動きはありましたけど、トップどころのメンバーは変わってないですよね。上の選手になればなるほど試合数も減っていて。今のままではマッチメイクも難しいと思うし、試合を選んでいるとは思わないですけど、みんなメリットのある試合をやりたがるじゃないですか。

それは当然のことだと思うんですけど、今の状況を変えるには僕らみたいに下から上に上がる選手がいて、上をかき回すことが大事。RIZINファンにつまらないと思わせないためにも、僕には下から突き上げる使命もあると思っています」

──確かにトップ戦線に一人新しい選手が入るだけで組み合わせも含めて、いろんな動きが出てくると思います。

「トーナメントをやるのも一つの手段だと思うんですけど、結局それで上のメンバーが団子状態になる可能性もあるわけで。だったら下から上がってきた選手が一人ポンと入って、一人ずつ倒していけば面白いと思うんですよ。自分がそうなりたいですね」

──中原選手をインタビューさせてもらい、競技者としてどうあるべきか。またプロとしてどう見られているか。本当に色んなことを考えている選手だと思いました。そのうえで今回は何を一番意識していますか。

「自分のパフォーマンスに集中することですね。今まで色々と考えすぎていたんですよ。それも対戦相手ありきというか、相手といい試合を作ろうとか。今はそうじゃなくてもっと我を出していこうじゃないけど、俺さえ良ければいいみたいなマインドに変えようと思って。海外の選手の発言を聞いていると、そんなヤツばっかりじゃないですか(笑)」 

──確かに常に主語は自分になっているような気がします。

「当然僕も相手にリスペクトは持つし、その信念は捨てないです。でももっと自分のことに集中してみようかなと。何をするにしても、視点を変えるじゃないですけど、一人称を自分にするというか。そうやって相手に合わせないことで、明らかにパフォーマンスが変わったんで、それを試合で見せたいです」

──前回の試合から変わった中原選手の姿が見られると思います。それではこの試合を楽しみにしているファンの皆様に締めのメッセージをいただけますか。

「自分でも自分を楽しめるというか、どんなパフォーマンスが出るか自分でも分かっていないので、そこも楽しみにしてもらいながら。どんな結末になるのか、手に汗握りながら見てもらえたらと思います」

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<キック70キロ契約/3分3R>
安保瑠輝也(日本)
宇佐美正パトリック(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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ABEMA MMA MMAPLANET NEXUS o RIZIN RIZIN44 クレベル・コイケ スパイク・カーライル 中島太一 堀江圭功 山本アーセン 岡田遼 征矢貴 摩嶋一整 森戸新士 横山武司 牛久絢太郎 福田龍彌 筋トレ 芦田崇宏 萩原京平 金原正徳

【RIZIN44】新スタイルへ進化中、摩嶋一整―01―「フルラウンド動いてフィニッシュを狙い続ける」

【写真】明らかに前回のインタビュー時と表情が違う。すっきり爽やかな笑顔だ(C)SHOJIRO KAMEIKE

24日(日)、さいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44で、摩嶋一整がNEXUSフェザー級王者の横山武司と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

今年5月に芦田崇宏を下して連敗を脱した摩嶋。昨年4月の金原正徳戦は敗れたものの大激闘となり、摩嶋自身も学んだものが多かったという。横山戦を控える摩嶋が目指す、理想のMMAスタイルとは――


――9月24日に横山武司戦を控えている摩嶋選手です。本日は宜しくお願いします。

「宜しくお願いします! そういえばMMAPLANETって、国内のリングMMA取材を解禁したんですね」

――はい。そこで次はリングで試合をする摩嶋選手のインタビューと相成りました。

「MMAPLANETは特に選手が多く見ていると思うので、リングMMAも扱ってくれるのは嬉しいです」

――ありがとうございます。それにしても前回のインタビュー……、昨年4月の金原戦の前と比べると、表情も柔らかいですね。

「心の余裕がありますから。やっぱり3連敗中は、しんどかったです(苦笑)」

――では心に余裕が生まれた要因でもある、芦田戦の勝利の感想から教えてください。それまで摩嶋選手は3連敗中でした。

「ようやくRIZINで勝てたことは僕にとっても、あと地元にとっても嬉しいことだと思うので、とりあえずホッとしています」

――地元である山口県の方からの期待を感じますか。

「山口県からRIZINに出ている選手は僕しかいませんし、自分が出たらそれだけ地元でも盛り上がるので。最近は仕事の現場でも声を掛けられるようになりました。あと道を歩いていると『試合を視ました!』と言われることもあって――特に勝った後は。自分の試合を視てくれているんだなぁって感じます」

――その状況では、3連敗中だと心に余裕がなかったのも仕方ないかもしれません。

「結果を出すことができていなくて、地元の人たちに対して申し訳ない気持ちはありました。でも自分としてはもっとできると思っていたし、しっかり練習して勝てたことは嬉しいです」

――その芦田戦の前に、金原選手との試合は敗れたものの大激闘を展開しました。あの試合内容に対して手応えはなかったのですか。

「練習内容の割には戦えたのかな、と思います」

――練習内容の割には(笑)。

「アハハハ。でも、もっとできることはあるかなと思いました。ここは攻める、ここは休むというペース配分とか。3連敗しましたけど、大舞台でそういう経験ができて自分も変わることができましたね」

――摩嶋選手の場合、どうしても練習環境が取り上げられることが多いです。仕事の関係で、練習できても週4日ほど――そのなかで広島と山口で活動している柔術家の森戸新士選手と、ケージレスリングの練習に取り組んでいるとのことでした。金原戦で、その練習の成果は出ていたのでしょうか。

「今考えると、まだまだだなって思うことは多いです。ただ、あの後もずっと森戸さんと練習させてもらっていて、自分に合った戦い方が分かってきました。それはケージレスリングだけでなく、グラウンドの面でも」

――金原戦の直後には「スタミナがなく、3R戦えない。最後は心が折れた」と仰っていました。

「金原さんとの試合に限らず、いつも1Rで極めるつもりで戦っていて最初からガンガン攻めていました。でもトップレベルの選手と対戦すると、全て防がれてしまう。すると自分が消耗していくという試合ばかりでしたよね」

――19戦というキャリアの中で判定決着が2試合しかない摩嶋選手です。1Rからガンガン攻めていくのも摩嶋選手の魅力かもしれません。一方で3連敗を喫した時に学んだものとは、3Rずっと攻め続けるためのスタミナをつけることなのか。あるいはペース配分を考えることなのか――どちらでしょうか。

「今は両方ですね。スタミナをつける練習もやっていますし、無駄なところでは力を抜くというペース配分も考えながら戦っています」

――これまで最大で週4日という練習スケジュールのなかで、スタミナをつける練習よりも技術練習やスパーリングに時間を割くことのほうが多かったのですか。

「筋トレやフィジカルトレーニングをしたことは、ほとんどないです。ほとんど技術かスパーリングで。30歳を迎える頃には仕事も忙しくなってきて、全く練習できない時期が1~2カ月もあったりしました。ずっと休みなく、毎日働くことになるので。それも3連敗してから、仕事が忙しい時期と試合をずらすことにしました。仕事が忙しい時期は、だいたい決まっているので」

――そうして練習と試合に集中できる時間を増やしたということですね。――体力をつけるために、どんなトレーニングをしているのでしょうか。

「走り込んだりもしますが、基本は道場での練習のみです。でもスパーリングで追い込むようにしてもらっています。どんどん体力を使って、追い込まれた時に自分がどうするかっていう練習は増えました」

――摩嶋選手のスタイルで3R攻め続けることができれば、それは強いですよね。

「それが理想ですし、その理想を求めてきました。ただ、ずっと早い段階でフィニッシュできていたので、スタミナ面はあまり考えてこなかったんです。でも対戦相手のレベルが上がってくるにつれて、試合の後半でフィニッシュすることを考えなくちゃいけなくなった。もちろんチャンスがあれば1Rで極めることですけど、ベストはフルラウンド動き続け、フィニッシュを狙い続けることです」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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【RIZIN44】中島太一戦へ、岡田遼─02─「MMAを深く見ている方に楽しんでもらえる試合にしたい」

【写真】岡田さんもここでバックを奪取して、RNCで切って落とした──ことはありませんでした(C)MMAPLANET

9月24日(日)、さいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44で、中島太一と対戦する岡田遼のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

RIZIN初出場で敗れ、続いて修斗のベルトも失った時、このまま岡田が引退すると考えた人も少なくないだろう。しかし、彼は再び戦いの舞台に戻ってきた。MMA愛、そして修斗愛とともに――1年半振りに実戦の舞台に立つ岡田が、現役生活の最終章と中島戦について語る。


――修斗のベルトを失った直後と今では、気持ちも違ってきていますか。

「全然違います。修斗のチャンピオンは憧れで、あのベルトを巻くことが夢でした。そしてベルトを巻いたあとも、チャンピオンらしく振舞わないといけない――つまり必ず防衛戦はしないといけないと考えていて。でも、そこで一つの目標は達成してしまっているんですよ。松根さんと扇久保さんが巻いていたベルトを、再び鶴屋さんのところに持って帰る。それが僕のMMA人生で最大の目標でした。それを達成してしまうと、『試合がしたい』『試合が楽しみだ』という気持ちよりは、『試合をしなきゃいけない』なんて義務感のほうが強かったです」

――では修斗のベルトを獲得したあと、望んでいたUFCとの契約が叶わなかった岡田選手にとって、MMAを続ける理由は何だったのでしょうか。

「うん、そうですね……うん」

――正直なところRIZINで元谷選手に敗れ、さらに安藤選手に負けて修斗のベルトを失った時、このまま岡田選手はフェードアウトするかと思っていました。

「皆、そう思っていたでしょうね。確かに修斗のベルトを失った直後は、戦う理由がなくなっていました」

――経営者としても成功していますし。

「まぁ、そうですね(笑)。あとは結婚するだけだと思っていました」

――ちなみにご結婚のほうは……。

「アハハハ! そっちは全然ダメですね」

――結婚はご縁のものなので……。改めて戦う理由を見つけたのは、何かキッカケがあったのですか。

「戦う理由はなくなっても、このままフェードアウトするつもりはなかったです。ちゃんとケジメとして最後に――これまで応援してくださった方に試合を見せて終わりにしようと考えていました。だから、この期間もずっとトレーニングは続けていて。

そんななかで平良達郎や鶴屋怜、ジムの後輩たちのサポートを通じて、先ほども言ったとおり新しい発見がありました。まだ自分も向上しているところがある。ベルトを失ってから時間が経ち、冷静に考えてみた時に『もう一度MMAをやりたいな』という気持ちが芽生えてきたんです。そのタイミングで、RIZINから良いオファーを頂きました」

――「ケジメとして最後に試合を……」というのは、次の中島戦をラストファイトと考えているのでしょうか。

「それも皆に訊かれるんですよ。『次の試合で辞めるの?』って。でも中島戦が最後ではないです。これを最後にするつもりは一切ないですね。いつか来るであろう、ケジメの日の前哨戦です」

――すでに選手としての最後は決めているのですね。

「最後は絶対に修斗で試合をする。引退試合は修斗でやると決めています」

――最後は修斗で……もう「シューター」という言葉は廃れてしまいましたが、修斗出身選手の修斗愛は一体どこから来るものなのでしょうか。

「うーん、自分でも分からないですね(苦笑)。でもRIZINで戦っている扇久保さんや斎藤裕選手、UFCに行った平良達郎にしても『みんな修斗が好きなんだよな』と思いますよ」

――岡田選手としては次の試合について、元とはいえ修斗王者とパンクラス王者の対決として考えていますか。

「もちろんです。そのつもりで試合を受けましたから。別に修斗の選手と試合をするのであれば、修斗でやれば良いわけで。やっぱり団体対抗戦は燃えますよ。僕は勝手に修斗を代表しているつもりでいます」

――では最初に中島戦のオファーが来た時の気持ちを教えてください。

「断る理由がなかったです。昔から試合を視ていて、中島選手が強いことも分かっています。本当に願ってもない良い相手で」

――お互いにキャリアが長いなかで、今まで絡みはなかったのですか。

「同い年だけど、面識もなかったです。でもずっと試合は視ていました。ソツの無い選手で、総じてレベルが高い。特に打撃が鋭いと思います。もしかしたら一般の方に対しては知名度がないかもしれないけど、MMAを深く見ている方に楽しんでもらえる試合にしたいですね」

――前回の試合から約1年半ぶりとなりますが、ブランクに対する不安はないですか。

「この約1年半の間に、心身ともにリフレッシュできました。痛めていた箇所も治したし、疲弊していた心も回復しました。すごく良い感じでファイトキャンプに取り組むことができています。おかげで今は、『こんなにMMAって楽しかったっけ?』と感じるぐらいですよ。久しぶりに――始めた頃のようにMMAと向き合うことができています」

――それは期待したいです。最後に、次の試合への意気込みをお願いします。

「とにかく良いパフォーマンスを見せたいです。後先を考えて、計算して勝ちに徹する試合は一旦、横に置いておきます。とにかく今のMMAを全身全霊で感じながら、お客さんに楽しんでもらうことが次の試合のテーマです。ありがたいことに、休んでいる間も『いつ試合するの?』『岡田遼の試合が観たい』と言ってくださる方がいました。そんな応援してくれている皆さんに楽しんでもらいたい。そのためには、まずは自分が楽しくないといけないと思っています」

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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【RIZIN44】1年半振りの実戦、中島太一戦へ。岡田遼─01─「もう一度MMAを楽しみたいと思っています」

【写真】我々はファイター岡田の言葉が聞きたかったわけです(C)SHOJIRO KAMEIKE

24日(日)、さいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44で、元修斗世界バンタム級王者の岡田遼が現パンクラス同級王者の中島太一と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

昨年3月に修斗のベルトを失って以降、岡田は平良達郎や鶴屋怜など後輩ファイターのサポートに回っていた。その10カ月間で、客観的に自身を見つめることができたという。岡田遼が語る、岡田遼のMMAとは。


――昨年3月の安藤達也戦以来、1年半ぶりの試合を迎えます。その間、岡田選手は平良達郎選手や鶴屋怜選手などをサポートする姿が目立っていました。岡田選手にとっては現役のファイターと、セコンドやトレーナーとしてのサポートでは、どちらのほうに重きを置いているのでしょうか。

「この1年ぐらいの間は、8-2で後輩たちのサポートに回ってきました。でもRIZINで復帰戦が決まってからは、8-2で選手としての僕を優先してきたつもりです」

――他の選手のサポートに回った理由は、岡田選手自身の試合がなかったことですか。それともサポートにシフトし始めていたので、ご自身は試合をしなかったのでしょうか。

「前者ですね。まず修斗のベルトを失った時点で、少し休もうと思っていました。その結果として自分は試合をしない、ならば後輩たちのサポートに回ろうと。鶴屋浩さん(パラエストラCNW代表)や松根良太さん(Theパラエストラ沖縄代表)のお手伝いをしたいと思いました」

――岡田選手がトレーナーとして重要視していることはありますか。

「主役はトレーナーではない、ということですね。あくまで選手やクライアントさんが第一です。なかには自己満足みたいに、自分がやらせたいメニューをやらせる方もいるじゃないですか。それではダメですよね。まず選手やクライアントさんがやりたいことを聞き、その日のコンディションを見ながら、相手の希望に寄り添う形で僕のほうからトレーニングメニューを提案する。だから、やる気のない人に当たっちゃうと全然伸びないんですよ。『やる気がないなら、やらなくて良いんじゃないですか』という感じなので(笑)」

――指導を受ける側が丸投げしてきては、何も伸びないですよね。

「アハハハ。僕も最初に『丸投げはしないでください』って言います」

――ではトレーナーやセコンドとしての活動から、ファイターとしての岡田選手にフィードバックされているものはありますか。

「ありますね。主観と客観の差って大きいじゃないですか。今まで僕は、自分のことだけを考えて選手活動をしてきました。そこで一歩引いてセコンドやサポートで後輩たちを見た時に、『意外と乖離があるなぁ』と思いました。

選手たちは試合前になると、どんどん視野が狭くなってくる。考えていることも堅くなる。傍から見ていると、『もっと柔らかく考えたら良いのに』と思うことがあって。でもコレって、自分も選手の立場では『今日はこの練習をしなきゃいけない』、『こうしないと勝てない』、『この食事を摂らないと絶対に計量オーバーする』とか堅く考えがちでしたよね」

――そこで自分のことを客観的に捉えることができたわけですね。

「自分も選手としてMMAを続けていくうえで、思考が柔軟になりました。いろんな選手がいて、いろんな方法がある。それこそ平良達郎のUFCに同行して、他の選手の水抜きをチラ見したり(笑)。結果、『これしかない』というものはなくて。おかげで選手としての引き出しも増えたと思います」

――岡田選手の試合は、良い意味でしっかりとプラン通りに遂行されているものだと思います。そしてプランAがダメならプランB、プランBがダメなら……と、いくつものプランが枝分かれで用意されている。一方で、それだけ綿密にプランを立てることが弊害になったケースはありましたか。

「あります、あります。こちらが用意しているプラン以上のことを相手がやってきた時、それに対処しないといけないじゃないですか。やっぱり戦いなので。でもその状態になると、自分が何をすれば良いのか分からくなるということはありました」

――岡田選手は思考もスマートですし、器用だから何でもこなせる。しかし何でもこなせるからこそ、器用貧乏に陥ってしまっていたのでしょうか。

「それこそが、まさに最近の僕の試合ですよ(苦笑)。自分の試合を視て、本当にそう思います。直近でいうと安藤達也戦は、1Rにバックを奪うなど僕が良いポジションにいました。そこで、いくつもの選択肢が浮かんだんです。『ここで攻めても良いけど、5Rあるしな……』とか、いろんな展開を考えてしまって。そういうことを試合中に考え込んでしまうんです。

元谷戦でもそうでしたね。『ここでどうしようかな』と考えているうちに、試合が終わってしまって。突破力や爆発力といったものが足りないというか。やることを決めて『ここはコレしかない!』というふうに戦う相手には、勢いで押し負けることがあります。そういうところは修正しないといけないと思っていました」

――安藤選手と元谷選手が、まさに自由な戦いを見せるタイプですからね。岡田選手としては、そういった自由に戦うファイターに憧れはなかったですか。

「自分は全くタイプが違いますからね。自分の場合は『シチュエーションごとに感覚で戦うようなスタイルだと上に行けない』と思っていました。全部キッチリと綿密にファイトプランを立てて試合に臨むことで、修斗のチャンピオンになることができたんです。でも、上に昇っていくにつれて――試合をしていて楽しくないんですよ」

――……。

「それで結果も芳しくなくて。今はベルトも巻いていないし、失うものは何もないから、ここでもう一度MMAを楽しみたいと思っています。今まで走ってきた路線とは違うMMAをやってみたい。違う路線のMMAに興味がある、というのが今の僕なんです」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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【RIZIN LANDMARK07】アゼルバイジャン大会でケラモフ×鈴木千裕のタイトル戦、5カードが決定

14日(木・現地時間)アゼルバイジャン・バクーにて記者会見が行われ、11月4日(土)同所にあるナショナルジムナスティックアリーナにて開催される「RIZIN LANDMARK 7 in Azerbaijan」の第1弾対戦カードが発表された。

RIZIN初開催となるアゼルバイジャン大会でヴガール・ケラモフの持つRIZINフェザー級王座に鈴木千裕が挑む一戦が決まった。

RIZINフェザー級は6月のRIZIN北海道大会で当時王者だったクレベル・コイケと鈴木の間でタイトル戦が組まれていたが、クレベルが計量失敗により王座剥奪。試合ではクレベルが鈴木に一本勝ちしたものの、王座は空位となっていた。

そのベルトをかけてケラモフと朝倉未来が7月30日の超RIZIN.2で対戦。ケラモフが朝倉にRNCで一本勝ちして王座戴冠を果たした。クレベルに敗れた鈴木は7月の超RIZIN.2でパトリシオ・ピットブルと70kg契約で対戦し、下馬評を覆すKO勝利を収めて王座挑戦のチャンスを掴んだ。

会見の冒頭で榊原信行CEOが「アゼルバイジャンで大会を開催するにあたり、アゼルバイジャンのリーダーシップ、青年スポーツ省のサポート、RIZINというワールドクラスのイベントをともに作り出すBCCのみなさんに、こうした機会をいただけたことを心から感謝しています。アゼルバイジャンの選手はもちろん、世界中からトップクラスのアスリートを招聘して、みなさんがワクワクドキドキしてたまらないイベントを創りたいと思います」と挨拶。

続いて榊原CEOよりケラモフと鈴木のタイトル戦をはじめ、トフィック・ムサエフ×武田光司、ナリマン・アバソフvsアリ・アブドゥルカリコフ、メイマン・マメドフ×ジャスティン・スコッギンス、トゥラル・ラギモフ×キム・ギョンピョの5試合が発表された。

榊原CEOのカードを発表のあと、マイクを持った鈴木は「アゼルバイジャンのみなさん、日本を背負ってきた鈴木千裕です。俺はチャンピオンになるためにここに来てます。(ケラモフは)気が抜けた顔してるけど、俺はいつでもエンジンがかかってるし、今ここで試合やってもいいぐらい覚悟を決めて来てるんで、楽しみにしていてください!」と興奮気味に語る。

この鈴木の言葉を受けたケラモフは「私が言いたいことは、このベルトは借り物ではないということ。鈴木がこのベルトを欲しいんだったら、これからバックステージでやってもいいぞ。鈴木は前回の試合でピットブルに勝ったかもしれないが、アゼルバイジャン人のチャンピオンを軽く見るなよ?」と挑発的に言い放った。

すると鈴木も「あの試合はたまたまでもなんでもない。俺は確実に勝ちに行った。俺はRIZINにチャンピオンになるためにピットブルに勝った。あれは余興にすぎない。これが本番。絶対KOしてやる!」と鼻息荒く語る。

さらに鈴木は「さっき『裏で戦おう』って言ってましたよね? 俺はいつでも戦える。俺は今ここでやってもいいぜ!」とポケットから取り出したマウスピースをつけると、ケラモフの席からRIZINのベルトを強奪。ベルトを肩にかけたまま「俺が絶対チャンピオンになってやるからよ!覚えとけよ!」と絶叫し、ケラモフにベルトを返して、自分の席へと戻った。

会見では苦笑いのケラモフだったが、会見後のフォトセッションでは鈴木に掴みかかってスタッフが両者を分ける一幕も。ベルトを掲げてチャンピオンは俺だと言わんばかりのパフォーマンスを見せた。

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【RIZIN44】牛久絢太郎戦へ、岸本泰昭と合体=萩原京平「よく今まであれで試合をやってたなと」

【写真】MMAは理解し始めた時に、自身の本質とのバランスの取り方という課題がスタートするが、萩原はいかに消化できているだろうか――楽しみだ(C)TAKUMI NAKAMURA

24日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44にて、萩原京平が牛久絢太郎と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

昨年は弥益ドミネーター聡志、クレベル・コイケ、鈴木千裕に3連敗を喫した萩原。しかし今年4月RIZIN41のカイル・アグォン戦では見違えるようなパフォーマンスでアグォンを下して連敗脱出に成功した。そこには自分の弱さと向き合い、練習環境を見つめ直す萩原の姿があった。トレーナー&参謀役として信頼を置く存在=岸本泰昭との出会い、そして「牛久戦の後のことは考えていない」という真意を訊いた。


――24日RIZIN44で牛久絢太郎選手と対戦する萩原京平選手です。まず牛久戦のオファーを受けた時の心境から聞かせてください。

「自分にとって相性がいい相手だと思いました。4月に朝倉未来選手とやった時にも、そのうち当たるだろうなと思っていたし、元チャンピオンなんで、勝ったらオイシイ相手ですね」

――どこに相性の良さを感じたのですか。

「どちらかと言えばグラップラーだけど極めがない。そういう選手は相性がいいんですよ。あとは打撃のスタイル、身長、距離感……それも含めて戦いやすいです」

――かなり牛久選手のことを分析できているようですが、萩原選手は対戦相手の映像など細かくチェックするのですか。

「僕は軽く映像を見るくらいで、何回も見ないんですよ。細かい部分は僕以外のメンバーが見てくれています」

――では萩原選手はどういった部分を見るのですか。

「僕は最初に映像を見た時の第一印象で、自分の武器と相手の武器、自分の弱点と相手の弱点、それを照らし合わせて、自分と相性がいいかどうかを考えます。その最初の感覚は大事にしていますね。あとは試合当日に向かい合った時の感覚。どれだけ作戦や戦略を立てていても、試合で向かい合って自分が感じたことが第一優先だと思っています」

――事前に映像を見た直感、実際に向き合った時の直感、そのどちらも重要にしているんですね。

「そうですね。あんまり試合前に考えすぎてもよくないんで。試合映像といっても、過去のものだから試合当日までに技術もアップデートされていると思うんですよ。特に牛久選手は試合ごとに新しい技や引き出しが増えているから、最近の試合の印象プラス向き合った時の感覚で試合をしています」

――萩原選手自身は今回どのようなことを意識して練習しているのですか。

「まずは寝かされないこと、寝かされてからのエスケープ、寝かされても極められないことですね。僕の一番の武器は打撃で、そこを殺さずに強みとして出せる練習を意識しています。グラウンドを警戒して、自分の強みが出せなかったら勝てないし、それを出して寝かされたらしょうがないと思うんですよ。それを考えた上での練習です」

――4月RIZIN41のカイル・アグォン戦前には近畿大学のレスリング部にも出稽古に行っていました。今回も出稽古は行っているのですか。

「大阪と東京で練習していて、東京では土居(進)さんのフィジカルトレーニングと走り込み、大阪ではSMOKER GYMと岸本(泰昭)さんのジムのプロ練に参加させてもらっていて、そこで打ち込みや作戦の確認をしています。僕と岸本さんは牛久選手の組みに関する視点が変わるんですけど、そういう見方もあるんだと気づくことも多くて、お互いの意見をすり合わせながら練習しています」

――岸本選手にはどういった経緯で練習を見てもらうようになったのですか。

「もともと大阪で一緒に練習することがあって面識はあったんですよ。で、僕がカルペディエムで岩﨑(正寛)さんと練習していた時に『萩原くんにはMMAのコーチが必要。岸本選手とかいいんじゃないですか?』と言われたことがあって。ただ、正直その時は腑に落ちてなくて、岸本さんに練習を見てもらおうとは思わなかったんです。

でも鈴木千裕に負けて、練習環境や練習のやり方を見直そうと思った時に岸本さんのことを思い出して連絡させてもらいました。そしたら岸本さんは快く自分のことを受け入れてくれて、僕のために個別の練習時間を取ってくれたり、調整に付き合ってくれたり。打ち込みのパートナーとして身体を貸してくれて、今では自分にとってなくてはならない存在です」

――なるほど。実はアグォン戦を見た時に萩原選手の個々の技術がMMAとしてつながった印象があったのですが、そこは岸本選手の存在が大きかったんですね。

「今まではMMA特有の打撃からレスリング、レスリングから寝技、そのつなぎの部分を教えてくれる人がいなかったんです。だから打撃・レスリング・寝技を練習しても、うまくMMAとしてつなげることが出来なくて。でも岸本さんはそこを理論的に教えてくれるので、一気に伸びた感じがしますね。例えば東京でMMAスパーをして、全く歯が立たなかった相手を圧倒できるようになったり、自分の成長が目に見えて分かります」

――MMAの理解度が高まりましたか。

「それもあるし、よく今まであれで試合をやってたなと思います(苦笑)。逆にその分、自分のポテンシャルを感じたし、ここからの自分はもう負けないなって思います」

――今回の牛久選手も自分が勝つイメージは明確にできていますか。

「もちろんしんどい試合になる準備もしてますよ。牛久選手も強いファイターだからそう簡単にいくとは思ってないし。倒すパターンも用意しつつ、それが通用しなかったことも考えています」

――RIZNフェザー級はクレベル・コイケの王座剥奪に始まり、ヴガール・ケラモフが王座戴冠など混沌している階級です。萩原選手にも大きな期待がかかると思うのですが、牛久戦も含めたこれからの展望も聞かせてください。

「RIZINのベルトが目標ですけど、牛久戦の後のことは考えてないです。牛久戦に全集中しています。牛久選手を倒せば自然に次のことが見えてくるだろうし、今は9月24日に勝つことしか頭にないです」

――周りからは誰々とやってほしいと言われることもあると思いますが、萩原選手自身は牛久戦に集中しているようですね。

「そういう話をしてくる人は多いんですけど、周りの声に流されていい結果が出なかったことを経験しているし、それが僕が過去の失敗から学んだことです。牛久選手は先のことを考えて勝てるような相手じゃないから、目の前にいる敵を倒す。それ以外はないです」



             
■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ 対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリー)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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