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【WNO Championships】─09─大アップセット!! ヘビー級決勝でスプリッグスがカナンを外ヒールで破る

【写真】捻る方向に自らも回るオールドスクール外ヒールで一本勝ち。歴史的な勝利をスプリッグスが挙げた (C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

9月25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されたWho’s Number One Championships。ライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメント──は2021年グラップリング界の最大のイベントとなった。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第9回はヘビー級決勝戦の模様をお伝えしたい。


<ヘビー級決勝戦/30分1R>
ティム・スプリッグス(米国)
Def. 7分21秒by ヒールフック
カイナン・デュアルチ(ブラジル)

気合十分のスプリッグスに対し、優勝候補大本命のカイナンは、自信の裏付けかきわめてリラックスした表情でマットに上がる。

首を取りいなし合う攻防の後、引き込んだカイナンは、左足を中から入れてスプリッグスの右足に絡めてシングルレッグXを作り、後ろに倒す。

スプリッグスはすぐに体勢を立て直し、カイナンは右足に絡んで崩そうとしても正座するようにバランスを保ってゆく。

やがてカイナンは外掛けからの外ヒールを狙うが、スプリッグスは絡んでくる足を押し下げて背中を見せてエスケープを図る。

が、カイナンは許さないばとばかりにスプリッグスの右太腿を掴んで引き寄せて、右足を入れたヒザ固めの態勢に。

プレッシャーを和らげようとマットに横になったスプリッグスの動きに乗じて、カイナンはシットアップして上へ。ところが、次の瞬間スプリッグスは右足でカイナンの左足に足払い。

見事にカイナンに尻餅をつけさせ、自らも立ち上がる。

スタンドから、すぐに座ったカイナン。非常にリラックスした柔らかい動きでスプリッグスの左足に内掛けで絡む。

対するスプリッグスは体勢を低くして圧力をかけようとするが、カイナンは強力なニーシールドで侵攻を許さない。

やがてカイナンはスプリッグスの右足を内側から抱えてディープハーフに。

ここでスプリッグスがカイナンの体をステップオーバーし、右足を抱えてヒザ十字狙いのように倒れ込む。

足関節の対処には自信があるからか、必死に逃げようとはしないカイナン。対して左足を外掛けで絡めて深いサドルを作ったスプリッグスは、外ヒールのフックを創りにかかる。

ここでカイナンはかかとを内側に向けてディフェンス。そのまま足を抜こうとするが、スプリッグスは上腕でカイナンの右足先を引っ掛け、内ヒールのような角度で捕獲して抜かせない。

改めてストレートレッグロックの形を作り直したスプリッグスは、次の瞬間外ヒールのフックに移行。ここで慌てて回って逃れようとしたカイナンだが、強烈に極めに来たスプリッグスとともに一回転したところでタップアウト。

時間にして7分少々、昨年は1試合もせず、今年もこの大会以前は2戦2敗だったスプリッグスが、ゴードン・ライアンが活動停止中の現在、世界最強のグラップラーとみられるカイナンからまさかの一本勝ちを収めたのだった。

カイナンは初戦では足関節師ベームの、準決勝ではダナハー門下に加わったボドニの足狙いを完全にシャットアウト。どころか足関節の攻防でも優位に立って勝ち上がった。にもかかかわず、決勝でスプリッグスの繰り出すシンプルな外ヒールに屈してしまったのだから、勝負とは分からない。

歓喜の表情でマットを走り回ったスプリッグスは、勝利者インタビューのために実況席に向かうと、コナー・マクレガーばりに机に足を乗せてカメラに足の裏を見せながら

「現在の練習は週3回くらいだ。俺は3ヶ月前まで足関節なんか何も知らなかったんだ。でも友人に言われて練習してみたんだよ。そしたらどうだ。ヒールフックで2度極めて、ボーナス2つゲットだ。みんな俺はフィニッシュできないって言っていたよな。でも世界最強の相手をフィニッシュして見せたぜ! つまり、俺が世界最強ってことよ。俺の次の試合を見たいか? だったらマネーを積みな」と見事なアピールを決めた。

足関節に取り組んで3カ月とのことだが、実際にスプリッグスの前回の試合は5月、ヴィクトー・ウゴにヒールフックで敗れたもの。それまではトップキープに徹して判定勝ちを狙う印象が強かっただけに、ハイサムとカイナンは意表を突かれた形になったか。

ニッキー・ライアンやクレイグ・ジョーンズのような足関節技師がトップを取ってパスを決める技術を取り入れる一方で、スプリッグスのようなトップゲーム主体のグラップラーが足関節技を習得する。今後警戒を強めてくる相手に対し、狙われる立場となったスプリッグスはどのような戦いを見せるのか。

片やカイナン。2019年のADCC世界大会で階級下の伏兵ラクラン・ジャイルズのヒールに敗れた屈辱を経て、今年は足関節への完全対応を果たし、向かうところ敵なしかと思われた。が、ここに来て足関節初学者を名乗るスプリッグスのヒールに屈することに。リラックスしすぎ、油断しすぎという批判の声も上がるなか、いかなる復活劇を見せてくれるのか。

選手一人ひとりの進化を追うことで、グラップリングの世界はますます面白くなる。

【ヘビー級リザルト】
優勝:ティム・スプリッグス(米国)
準優勝:カイナン・デュアルチ(ブラジル)
3位:ハイサム・リダ(ガーナ)

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【WNO Championships】世界への扉、開くか。ハイサム・リダ─02─「日本の柔術を世界に証明したい」

【写真】動けるヘビー級ハイサムに、世界が驚く日がやって来る──のか(C)CLAYTONE JONES

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されるWho’s Number One Championships。5階級の2021年グラップライング最強を決めるノーポイント&サブオンリー、ジャッジ裁定有りのトーナメントに出場するハイサム・リダ・インタビュー後編。

参加選手はカイナン・デュアルチ、メイソン・ファウラー、オーランド・サンチェス、カイル・ベーム、ティム・スプリッグス、ルイス・パンザ、テックス・ジョンソン。右を見ても左を見ても強豪だらけのトーナメント出場を関しては、ハイサムは「カイナン以外なら全員勝てる。」と断言した。

全てを変える──トーナメントへの意気込みとは。

<ハイサム・リダ・インタビューPart.01はコチラから>


──トーナメントで優勝を狙うには、カイナンが初戦の相手だとやはりリスクは高いです。

「決勝で当たるのが一番ですよね」

──ではトーナメント優勝を考えると、初戦で誰と戦いたいと思っていますか。

「最初はテックス・ジョンソン……なんというのか、正直なところカイナン以外では誰でもいけると思っています。なのでトーナメントで優勝することを考えても、カイナンとは決勝で戦うのが一番良いです。カイナンも1回戦で僕と戦うのは嫌だと思っているだろうし、カイナン以外だと最初に戦うのは誰でも良いです。」

──オーランド・サンチェス、ティム・スプリッグスなどよく言えば重厚、いわば動かない試合で勝つ選手です。そのなかでハイサムはヘビー級でもライト級のように動くことができる。それが世界に知れ渡って欲しいです。

「そこが自分の持ち味です。今、少しだけハイサム・リダがどんな選手なのか皆が気付き始めています。『あれだけ体重があって、身長も高いのに動ける』って。

(C)SATOSHI NARITA

オーランド・サンチェスのパワーはとんでもないはずです。ただ、言われたように動けない。ということは、試合が進めば僕の動きについて来られなくなります。これは絶対に。

それに米国に来てから、ずっとレスリングの練習をしてきました。ミシガンから五輪に出たジェイク・ハーバートから直接指導を受けています。ジェイクは2012年のロンドン五輪フリースタイルレスリング米国代表で、世界選手権で準優勝になったこともあります。

※ジェイク・ハーバートは2009年のレスリング世界選手権フリースタイル84キロ級で銀メダルを獲得。ノースウェスタン大学時代には2度のNCAA D1王者で、4度のオールアメリカンレスラー。2009年にはダン・ホッジ・トロフィー(年間ベスト・カレッジレスラー)を獲得している。

ジェイクとやってきたので、テイクダウンをバンバン取れるということではないですが、テイクダウンされない自信もついてきました。オーランドのような選手は、テイクダウンしてずっと上からプレッシャーを掛けてくるのですが、自分の動きにはついて来られなくなるという自信は持っています」

──テイクダウンポイントがない。引き込めることに関して、ADCCルールよりもテイクダウン&コントロール・グラップラーと戦いやすいということはないですか。

「下になっても構わないです。ただし、ジャッジ裁定になった際にテイクダウンやパスにはUFCのように評価される向きはあります。一本を取れないと、マットコントロールは重視されます。ただし、テイクダウンを取っても一本を逆に取られることもありますし。WNOルールは、自分に一番向いているルールです」

──カイル・ベームは10thPlanetスタイルで、足関節が巧みです。僅か1試合の印象でハイサムは足関節が課題と見続けられている面もあると思いますが、さきほど名前を挙げたテックス・ジョンソンもレッグアタッカーです。それはハイサムが足関節の防御に自信を持つようになった表れなのでしょうか。

(C)SATOSHI NARITA

「テックス・ジョンソンはガンガン足関節を狙ってきます。

でも、もう足関節の防御には、自信があります。自分の弱点だと思ったので、ここに来てから克服に努めてきました。デトロイトに来てからの練習でも、皆が上を取れないので凄く足関節を狙ってきました。

(C)SUG

最初は極められましたが、ずっと練習してきたので今は以前のように極められることはないです。

カイル・ベームとテックス・ジョンソンは、リバースデラヒーバから回って足関節を狙ってくると思うので、その対策練習はずっとやってきました。それに自分の課題は足関節だけでなく、他にもあります。なので足関節も含め、穴がなくなるよう練習してきました」

──それはスパーリングで身につけていくものですか。

「僕はまず打ち込みを徹底してやっています。1時間の打ち込みから、少し休憩してスパーリングという風にやっています。できることは全てやっています。自分の時間は強くなるために、全て使っています」

──それにしても凄くイキイキしていますね。

「本当に楽しみです。最初に言ったように、ADCCに出たこともない実績では一番下だと思っています。完全にアンダードッグですが、そんな評価をひっくり返したいです。それができる予感が凄くあります。凄く大きなチャンスを手にすることができました。アンダードッグだからこそ、一番目立てます」

──本当に楽しみしている日本のサポーターに一言、お願いします。

「ハイ。いつも同じことを言っていますが、試合が決まってからも本当に色々な人からメッセージを貰いました。皆が応援してくれています。6月の試合も、こんなに多くの人が日本で見ていてくれたんだと……嬉しいし、本当に皆に感謝しています。これからも日本の柔術を世界に証明したいです」

■WNO Championships出場選手

【ヘビー級】
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
メイソン・ファウラー(米国)
オーランド・サンチェス(米国)
カイル・ベーム(米国)
ティム・スプリッグス(米国)
ルイス・パンザ(ブラジル)
テックス・ジョンソン(米国)
ハイサム・リダ(ガーナ)

【ミドル級】
クレイグ・ジョーンズ(豪州)
タイ・ルオトロ(米国)
アンドリュー・ウィルツ(米国)
ウィリアム・タケット(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)
ジョン・ブランク(米国)、
ダンテ・リオン(カナダ)
ミカ・ガルバォン(ブラジル)

【ライト級】
マイキー・ムスメシ(米国)
ケイド・ルオトロ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)
ディエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
コール・アベート(米国)
イーサン・クレリステン(カナダ)
ジョシュア・シスネロス(米国)
ケネディ・マシエル(ブラジル)

【女子ストロー級】
マイサ・バストス(ブラジル)
ニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)
トゥディ・アレキン(米国)
グレース・ガンドラム(米国)
アレックス・グエン(米国)
ジェシカ・クラン(米国)
タミー・ムスメシ(米国)

【女子ヘビー級】
ギャビ・ガルシア(ブラジル)
ハファエラ・ゲイジス(ブラジル)
エリン・ハープ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)
エリザベス・クレイ(米国)
アマンダ・ローウェン(米国)
ケンドール・リユージング(米国)
アマンダ・リヴェイ(米国)

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【WNO Championships】ヘビー級T出場、ハイサム・リダ─01─「カイナンは僕を止めることはできない」

【写真】目指すはグラップリング世界一、ハイサム・リダ(C)CLAYTONE JONES

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されるWho’s Number One Championships。男子ではライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメントが同大会では行われる。

世界のベストグラップラー、そして新進気鋭の若い選手が一堂に会す大会に、ハイサム・リダがヘビー級でエントリーされている。

カイナン・デュアルチ、メイソン・ファウラー、オーランド・サンチェス、カイル・ベーム、ティム・スプリッグス、ルイス・パンザ、テックス・ジョンソンという世界を代表する屈強なグラップラーと王座を争うメンバーに抜擢されたハイサムをZoomインタビューした。

全てを変える──トーナメントへの意気込みとは。


──WNOのヘビー級のリストが発表されたことは先週末(※取材は9月1日に行われた)に分かっていたのですが、仕事に追われていてチェックするのが週を明けてからになってしまいました。そうしたらリストにハイサムの名前を見つけて、メチャクチャ興奮しました。このメンバーに名前が連なるなんて、凄いビッグニュースです。

「正直、出たい気持ちはずっとありましたけど、自分でもこの8人の中に入れるようになるなんて思っていなかったです。米国に住むようになって、それほど時間は経っていないですし、レコード的にも……これから、どんどんタイトルを獲っていく自信はあるのですが、今はまだ他の出場選手と比較しても実績不足なのは明らかなので。だから、まだ入れないなっていうことは頭の中にありました。

なのでオーガナイザーからオファーが来た時は、自分でもビックリして嬉しかったです。自分の柔術を世界に証明するチャンスを手にしました。これまでやってきたことの全てをこのトーナメントに賭けていきたいです」

──オファーはいつ頃だったのですか。

「8月の後半になってからですね。発表までは少しありました」

──6月のWNOではキーン・コーネリアスと戦うという注目の試合が、キーナンの欠場で彼の弟子ミカ・ペルハヴェッツに対戦相手が代わり、本戦からプレリミに試合順も下げられてしまいました。あの時、ハイサムの名前を売る絶好のチャンスを逃してしまったと残念でならなかったです。それがプレリミでの勝利から、ここのメンバーに入った。大逆転ですね。

「キーナンとの試合は、僕もチャンスだと思っていました。レベル的にも自信もありましたし。それがミハとの試合になり、試合順もメインカードからプレリミに下げられた時は、頭に来ました。『マジかよ』って」

──ハイサムの責任ではないですからね。

「ハイ。メインカードに出たいとずっと思ってきたので。怒りというかフラストレーションは感じていました。あの試合は、自分は周囲が思っているよりも、ずっとできるといことを証明する試合にしたい……そういう試合を見せるという気持ちで戦いました。

そうしたら自分が期待していた以上に短時間で試合を終えることができて、WNOの人達に力を見せることができたと感じました。そして次の週にアメリカン・ナショナルがあって、そこでも優勝しました(黒帯スーパーヘビー級)。あの2大会はオーガナイザーにアピールできたと思います」

──結果、思い通りになったということですね。

「ただ、アメリカン・ナショナルのあとで連絡がきたときは、出場8人のなかで誰かケガをしたら代役で出てもらうという話だったんです。『100パーセントではないけど、準備はしていて欲しい』という感じで」

──なかなか微妙な状況ですね……それは。

「ハイ。そして、8月の後半になって『やっぱりハイサムに出てほしい』という風になりました。あの時は他にどんなメンバーが出るのか分かっていなかったですが、『YES。やるよ』と即答しました」

──その後、出場メンバーを見てどのように思いましたか。

「なんというのか……まぁ簡単な試合はないです。でも、自分は勝てるという自信はあります」

──おお、力強い言葉です。もうトーナメント枠は決まっているのでしょうか。

「トーナメント・ブラケットはファイトウィークになってから、抽選で決めるんだと思います。違うのかもしれないですけど(笑)。誰が相手になっても、大丈夫なように準備をして臨みます」

──優勝云々でなく、コンペティターとして誰と一番戦いたいですか。

「一番戦いたい試合は、一番困難になる試合です」

──つまりは……。

「ハイ、カイナン・デュアルチです。彼を倒すと、全てが変わると思います。カイナンには道着で2度戦って、2回とも負けています。でもノーギだったら、僕のスピードや勢いを止めることはできない。その自信はあります。道着ではなくて、ノーギの自分はカイナンにとって多分……いや、絶対に苦手なタイプです。それにフィジカルトレーニングを積んで体も大きくなっていますし、スピードもあって動けます。カイナンは僕を止めることはできない。カイナンと一番戦いたいです」

<この項、続く>

■WNO Championships出場選手

【ヘビー級】
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
メイソン・ファウラー(米国)
オーランド・サンチェス(米国)
カイル・ベーム(米国)
ティム・スプリッグス(米国)
ルイス・パンザ(ブラジル)
テックス・ジョンソン(米国)
ハイサム・リダ(ガーナ)

【ミドル級】
クレイグ・ジョーンズ(豪州)
タイ・ルオトロ(米国)
アンドリュー・ウィルツ(米国)
ウィリアム・タケット(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)
ジョン・ブランク(米国)、
ダンテ・リオン(カナダ)
ミカ・ガルバォン(ブラジル)

【ライト級】
マイキー・ムスメシ(米国)
ケイド・ルオトロ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)
ディエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
コール・アベート(米国)
イーサン・クレリステン(カナダ)
ジョシュア・シスネロス(米国)
ケネディ・マシエル(ブラジル)

【女子ストロー級】
マイサ・バストス(ブラジル)
ニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)
トゥディ・アレキン(米国)
グレース・ガンドラム(米国)
アレックス・グエン(米国)
ジェシカ・クラン(米国)
タミー・ムスメシ(米国)

【女子ヘビー級】
ギャビ・ガルシア(ブラジル)
ハファエラ・ゲイジス(ブラジル)
エリン・ハープ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)
エリザベス・クレイ(米国)
アマンダ・ローウェン(米国)
ケンドール・リユージング(米国)
アマンダ・リヴェイ(米国)

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【WNO Championships】ADCC&ノーギワールズ、SUG覇者らと共に。ヘビー級Tにハイサム・リダ出場!!!

【写真】この面子のなかに選ばれることが、すでにハイサムのバリューだ(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

9月25日(土)と26日(日)の2日間に渡り5階級の8人制チャンピオンシップ・トーナメントが開催されるWho’s Number One。ライト級&ミドル級、女子ストロー級及び女子ヘビー級に続き、ヘビー級参加選手が発表されている。

そして世界のベストグラップラーが3万ドルを賭けて覇権を争うチャンピオンシップ・トーナメントにハイサム・リダの出場が決まった。


カイナン・デュアルチ、メイソン・ファウラー、オーランド・サンチェス、カイル・ベーム、ティム・スプリッグス、ルイス・パンザ、テックス・ジョンソンの7名。

ADCC2019とムンジアルを制した(※テストで陽性となり剥奪)カイナンを筆頭に、2015年ADCC99キロ以上級優勝のサンチェス、ノーギワールズ優勝経験者はスプリッグス、パンザ、ジョンソンの3選手、さらにいえばファウラーはSUG無差別級王者で、ベームはそのファウラーへの挑戦者を決めるトーナメントで優勝しており、ルカス・バルボーサに勝利している。

いってみればハイサムからすれば全員が格上だ。ただし、ハイサムの実績が及ばないのは北米を拠点にしてからまだ日が浅いからにすぎない。F2W、WNOのプレリミ出場からの今回の抜擢となったことはすでにハイサムのポテンシャルが認められているという表れでもある。

特にサンチェス、スプリッグス、ジョンソンなどはテイクダウン&コントールという渋い試合になることも予想され、ハイサムは動けるスタイルで一躍グラップリング界重量級のニュースターと認められるか可能性も大きい。

とはいえ足関スペシャリトのベームら、ハイサムが課題される部分で抜群に強さを発揮する選手も出場する。ポイント制ということも考慮すると、当然のように本命はカイナンだが、トーナメント枠次第でファイナル進出もあり得る。柔術家としては日本育ちのハイサムが、世界のトップグラップラーを相手にどのようなパフォーマンスを見せることができるか──心底楽しみだ。

■WNO Championships出場選手

【ヘビー級】

カイナン・デュアルチ(ブラジル)
メイソン・ファウラー(米国)
オーランド・サンチェス(米国)
カイル・ベーム(米国)
ティム・スプリッグス(米国)
ルイス・パンザ(ブラジル)
テックス・ジョンソン(米国)
ハイサム・リダ(ガーナ)

【ミドル級】
クレイグ・ジョーンズ(豪州)
タイ・ルオトロ(米国)
アンドリュー・ウィルツ(米国)
ウィリアム・タケット(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)
ジョン・ブランク(米国)、
ダンテ・リオン(カナダ)
ミカ・ガルバォン(ブラジル)

【ライト級】
マイキー・ムスメシ(米国)
ケイド・ルオトロ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)
ディエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
コール・アベート(米国)
イーサン・クレリステン(カナダ)
ジョシュア・シスネロス(米国)
ケネディ・マシエル(ブラジル)

【女子ストロー級】
マイサ・バストス(ブラジル)
ニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)
トゥディ・アレキン(米国)
グレース・ガンドラム(米国)
アレックス・グエン(米国)
ジェシカ・クラン(米国)
タミー・ムスメシ(米国)

【女子ヘビー級】
ギャビ・ガルシア(ブラジル)
ハファエラ・ゲイジス(ブラジル)
エリン・ハープ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)
エリザベス・クレイ(米国)
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【WNO Championship】女子ヘビー級は天敵不在のなかギャビが対本命。推定体重差45キロのハープも注目

【写真】写真は3度目のADCC制覇時。試合には敗れたが、先のデジェスス戦などスタンドのフットロックで足首を破壊するなど、今も頭抜けた強さを見せているギャビだ (C)SATOSHI NRIATA

9月25日(土)と26日(日)の2日間に渡り5階級の8人制チャンピオンシップ・トーナメントが開催されるWho’s Number Oneで、女子ヘビー級のロースターが明らかになっている。

この階級の本命はムンジアル6冠、ADCCを4度制したギャビ・ガルシアであることは間違いない。今年に入り、クレイグ・ジョーンズとの性別を越えた対決に向けて動き出し、話題となったが──これは実現に至っていない。

そのギャビだが、2月にWNO06でムンジアル3度優勝のナチアリ・デジェススの足をバキバキに破壊しながら、「ポッブして痛みがなかった」というデジェススの反撃を受け、バッククラブを取られ判定負けを喫している。

人類女子最強の座を守るには、デジェススが出場しない今回のトーナメントを圧倒的に勝ち抜きたいところだ。


他の出場選手はハファエラ・ゲイジス、エリン・ハープ、アナ・カロリーナ・ヴィエイラ、エリザベス・クレイ、アマンダ・ローウェン、ケンドール・リユージング、アマンダ・リヴェイの7名となっている。

(C)SUG

SUG王者アマンダ・ローウェンとF2W女子ヘビー級王者エリザベス・クレイの競演も興味深い。

ローウェンはポイント有り&道着の試合も経験豊富だが、最近は5分&OTとかなり偏向した状況でのSUGが主戦場となっており、トーナメントを勝ち上がる戦術とポジショニングへの対応力が問われるだろう。

一方クレイはノーギワールズで紫&茶帯を制しており、前述したF2Wでサブオンリーも戦うなど、ADCC特有の前半と後半での戦い方のアジャストが上手くいえば、面白い存在になりそうだ。

またケンドール・リユージングは2019年のノーギワールズ黒帯世界王者、今年もパン・ノーギを制しており、アマンダ・リヴェイは紫&茶帯のノーギワールズ・チャンピオンでキムラ・スペシャリストだ。

道着で2019年ムンジアル茶帯優勝、黒帯になってからはパン柔術で優勝しているハファエラ・ゲイジスは、道着ではラッソー、ノーギではクローズドガードが基本姿勢──だけに、引き込みマイナスがどのように作用するか。

柔術の実績でいえばギャビ以外の参加者のなかで、アナ・カロリーナ・ヴィエイラが群を抜いている。ムンジアルではミドル級で3連覇中のヴィエイラだが、ギャビと比較すると体格的なハンデはあるか。

女子はストロー級とヘビー級、ライト級以下のハープは適正階級がない(C)CLAYTON JONES

体格的なハンデでいえば、Invicta FCにも出場しているエリン・ハープはWNOではゲイジスとフェザー級で戦い勝利こそしているが、MMAではバンタム級ファイターだ。

通常体重だとギャビとの体重差は推定45キロ以上になるかと思われる。

ヘビー級というよりも、ミドル級以上のオープンクラスといえる同トーナメント。小兵のハープがどのような動きを見せるか。マーク・ケアー✖レオジーニョの再現を期待したい……とまでは言えないが、彼女の出場はグラップリングならでの醍醐味を見せることになるかもしれない。

■WNO Championships出場選手

【ミドル級】
クレイグ・ジョーンズ(豪州)
タイ・ルオトロ(米国)
アンドリュー・ウィルツ(米国)
ウィリアム・タケット(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)
ジョン・ブランク(米国)、
ダンテ・リオン(カナダ)
ミカ・ガルバォン(ブラジル)

【ライト級】
マイキー・ムスメシ(米国)
ケイド・ルオトロ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)
ディエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
コール・アベート(米国)
イーサン・クレリステン(カナダ)
ジョシュア・シスネロス(米国)
ケネディ・マシエル(ブラジル)

【女子ストロー級】
マイサ・バストス(ブラジル)
ニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)
トゥディ・アレキン(米国)
グレース・ガンドラム(米国)
アレックス・グエン(米国)
ジェシカ・クラン(米国)
タミー・ムスメシ(米国)

【女子ヘビー級】
ギャビ・ガルシア(ブラジル)
ハファエラ・ゲイジス(ブラジル)
エリン・ハープ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)
エリザベス・クレイ(米国)
アマンダ・ローウェン(米国)
ケンドール・リユージング(米国)
アマンダ・リヴェイ(米国)

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MIKE MMA ONE WNO11 ウィリアム・タケット クレイグ・ジョーンズ グレース・ガンドラム ケイド・ルオトロ ケネディ・マシエル ジオ・マルチネス タイ・ルオトロ ダンテ・リオン マイキー・ムスメシ マイサ・バストス ロベルト・ヒメネス

【WNO11】2021年、組み技の祭典。No-P&Sub Onlyの頂点が決まる5階級8人制Two DaysT開催!!

【写真】タイ・ルオトロ、ラミレス、ガルバォン、そしてジョーンズ。ノーポイント&サブオンリーの頂点が決まる (C)/WNO

ADCC世界大会が延期された2021年、グラップリング界をリードしているWho’s Number Oneが、9月25日(土)と26日(日)の2日間に渡り5階級の8人制チャンピオンシップ・トーナメントを開催し、女子ストロー級、ライト級及びミドル級のランナップが既に明らかとなっている。

2年に1度開催のADCC世界大会は16名参加で男女7階級と無差別級の9人の世界チャンピオンを輩出しているが、コロナパンデミックで1年延期されることが決まっている。

この間のグラップリングの盛り上がりが反映し、かつ8人制Tの実施により、精鋭が揃うという見方ができるロースターが階級ごとに発表が始めっている。


ミドル級は──クレイグ・ジョーンズ、タイ・ルオトロ、アンドリュー・ウィルツ、ウィリアム・タケット、ロベルト・ヒメネス、ジョン・ブランク、ダンテ・リオン、ミカ・ガルバォンの8名だ。まさに豪華絢爛、道着の実績でなくノーギで選ばれた8人のグラップラーといえる。

ライト級では──マイキー・ムスメシ、ケイド・ルオトロ、ジオ・マルチネス、ディエゴ・オリヴェイラ、コール・アベート、イーサン・クレリステン、ジョシュア・シスネロス、ケネディ・マシエルがリストアップされた。

圧倒的な存在感を誇るのが、道着から本格的にノーギに活躍の場を移したマイキーであることは間違いない。

この階級はADCCの66キロと77キロの中間、道着と並行して活躍してきた選手も少なくないだけに、ミドル級と比較するとビッグネーム感に欠けるきらいもある。が、その分AOJの青帯で16歳のアベートを筆頭に若い選手が目立っている。

マイサ・バストス、ダニエル・ケリー、ジェッサ・カーン、トゥディ・アレキン、グレース・ガンドラム、アレックス・グエン、ジェシカ・クラン、タミー・ムスメシの8人の参加が決まった女子ストロー級トーナメント。

2019年ムンジアル女子ルースター級王者でEBI女子ストロー級Tを制しているバストスと筆頭にムスメシ姉が大舞台に復帰、エレクトリックチェアーの王女ガンドラムらと粒揃いの女子グラップラーが集まっている。情勢が許すことはなかったのだろうが、バストスやケリー、そしてガンドラムというライバルや過去に対戦経験のある湯浅麗歌子の名前は見たかったのは偽らざるところだ。

とはいえ、これぞ2021年のグラップリング界の頂点を決めるワールド・ザ・ベスト決定戦といっても過言ないTwo Daysトーナメント、他の階級の出場選手のアナウンスが待たれる──組み技の祭典だ。

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BJJ BET02 MMA カイナン・デュアルチ ガブリエル・アウメイダ クレイグ・ジョーンズ レアンドロ・ロ ヴァグネウ・ホシャ

【BJJ BET02】新旧の強豪が揃うノーギ88キロトーナメントに、レアンドロ・ロが4年振りのノーギ参戦

【写真】4年前の時点では、クレイグ・ジョーンズに敗れることは不覚だったレアンドロ・ロ(C)SATOSHI NARITA

8月1日(日・現地時間)ブラジルのサンパウロにて大型プロ柔術・グラップリングイベント「BJJ BET 02」が行われ、Flograpplingにて中継される。

BJJBETは昨年9月に第1回大会が行われたプロイベントで、IBJJFルールに基づいたポイント制柔術と同じくポイント制でIBJJFより一足早くヒールを解禁していたノーギの両方が、10分✖1Rで組まれている。

その第1回大会ではサイボーグこと、ホベルト・アブレウがカイナン・デュアルチの50/50を内ヒールで切り返し一本勝ちしたことで注目された。そんなBJJ Bet第2回大会の目玉は、なんといっても8人参加の88キロ級のノーギトーナメントだ。当初参戦が予定されていたヴァグネウ・ホシャは残念ながら欠場となってしまったが、北米&ブラジルのノーギグラップリングシーンではお馴染みのトップスターが顔を揃えているが、なんといっても注目は4年ぶりのノーギの試合となるレジェンド、レアンドロ・ロ だろう。


怪物ロは道着着用の柔術では世界4階級制覇、現在31歳にしてすでに全てを成し遂げた存在だ。近年は試合出場数を大きく絞っているが、先月のBig Deal 03にて今年2度目の実戦の場に登場すると、道着着用ルールでヘンリケ・セコーニ相手に終始ペースを支配して勝利、健在ぶりを見せつけている。

そんなロは今回、2017年のADCC世界大会──88キロ級初戦で、クレイグ・ジョーンズに敗れ、ジョーンズの名前が一気に浸透することになった──以来実に4年ぶりのノーギグラップリング参戦となる。普段は相手の道着をコントロールしてのオープンガードワークやパスガードを主な攻撃手段とするが、重量級の相手を一瞬でなぎ倒す爆発的なテイクダウンも使いこなすだけに、ノーギ適性も高そうだ。

上からでも下からでも戦える万能グラップラーのロ。ノーギではまずスタンドレスリングで勝負をするのか、それとも引き込んでガードワークを見せるのか。どのような戦いをするか予想が付かず、またどんな光景も新鮮に映るだけに楽しみだ。

対戦相手のハファエル・パガニーニはアリアンシ所属の26歳。2019年のノーギ・ブラジレイロで無差別級優勝、同年のノーギワールズのミディアムヘビー級では、準決勝でガブリエル・アウメイダのガードを攻略できず、後転スイープをもらって敗れて3位となった。ロを攻略するのは容易ではないと思われるが、それだけにこの1回戦は、その名を世界に轟かせるチャンスだ。

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MMA ONE Road to ADCC ウィリアム・タケット クレイグ・ジョーンズ ルーカス・バルボーザ

【Road to ADCC】えげつないバルボーサの加点殺法でタケットを返り討ち、改めてクレイグ戦呼びかける

【写真】20分間、特にポイントの入る後半10分にこれをやられ続けるとそれは苦しい(C)CLAYTON JONES/ROAD TO ADCC

17日(土・現地時間)にテキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンでRoad to ADCCが開催された。来年開催予定のノーギグラップリングの祭典=ADCC世界大会への前哨戦として位置付けられたワンマッチ大会は、注目の対戦が並んだ。
Text by Isamu Horiuchi

Road to ADCCプレビュー最終回は、クレイグ・ジョーンズとの注目の対戦を負傷欠場で逃したルーカス・バルボーザが、ポイントルールの特徴を生かした足を戻させて、得点加算方式のえげつない試合を代役ウィリアム・タケットにやってのけた一戦を振り返りたい。

<88キロ級/20分1R>
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
Def. 34-0
ウィリアム・タケット(米国)

当初バルボーザと対戦予定だったクレイグ・ジョーンズの手の負傷により、実現したこの試合。昨年バルボーザに抑え込まれ完敗したタケットとしては、進歩を見せてリベンジを果たしたいところだ。開始時から引き込むとペナルティを取られることもあり、まずは両者ともスタンドレスリングで戦う。

アトスの代名詞である、相手の首をつかんで押さえつける動きを多用して前に出るバルボーザは、4分過ぎにダブルレッグに入り豪快にテイクダウンに成功した。クローズドガードを取ったタケットがやがてガードを開くと、バルボーザは低く入ってボディロックへ。

強大な上半身でタケットの腰を固定したまま片足を越えようとするが、距離を作られる。その後もバルボーザは低い体勢からの侵攻を試みるものの、タケットは足を利かせ腕でフレームを作り、または掌で口を塞ぐという手段で守っている。

やがて蹴って距離を取ることに成功したタケットは、再びバルボーザが入ってくるところに、インバーテッドの形から左足を掴んで足を絡めることに成功。ヒールを嫌がって背中を向けたバルボーザのバックを狙うが、反転を許し正対される。

前回の対戦ではバルボーザのボディロックパスを許したタケットだが、ここまでは譲らず渡り合っている。

低く入ったバルボーザは、再びボディロックへ。タケットはラバーガードのロンドンの形で自らの右ヒザ裏を通してグリップを組み、バルボーザの体を押し戻そうとするが、動かざること山の如し。

やがてタケットがグリップを解くと、すかさずバルボーザはその左足を跨いでハーフで胸を合わせたのだった。

最重要ディフェンスラインをついに超えられて動きを封じられたタケットは、足の力を抜いてマットに投げ出してバルボーザのパスを誘う。いったんそれに乗ったバルボーザはサイドに出るが、残り約30秒で加点時間帯ということを悟ってか、タケットの上半身をがっちり固めたまま再びハーフの中に入った。

相手を抑えたら動かさない、自分も無駄な動きはしない。見る者には優しくないが、優れて合理的な戦い方だ。

そして加点時間帯が始まると、バルボーザは絡まれている左足を抜いてサイドに出て3点。胸を合わせられて動けないタケットに、さらにニーオンザベリーの体勢を作って加点する。その後サイドに戻ったバルボーザは、あえて一度ハーフの中に入ってからパスし、マウントへ。

こうして上半身のロックは解かないまま、バルボーザはどんどん点を重ねていった。

17点を失った後、タケットはやっとインバーテッドから距離を作ることに成功。一旦離れたバルボーザだが、再び低く入ってボディロックを作った。

その後は同じことの繰り返し。バルボーザが上半身のプレッシャーでタケットの動きを封じたまま、試合終了までパス、マウント、ニーオンザベリー等で加点を続けていき、実に34-0というスコアで勝利した。

動きたいタケットにそれを許さず完勝したバルボーザは「良い気分だ。クレイグ、俺はいつでもいい、今からやろうぜ。ウィリアムはタフキッドだけど、クレイグと同じ戦い方をするから準備に問題はなかったよ。俺は88キロのほうが速く動けるし、スタミナも全然あるし、よりテクニックを使えるから気に入ったよ。本当はフィニッシュしたくて、ノースサウスチョークやキムラ、ヘッド&アームのカタグルマ(肩固めの間違いか?)を狙ったけど、ウィリアムはすり抜けるのが上手かったんだ」と、欠場したクレイグ・ジョーンズとの対戦を呼びかけた。

見ていてあまり面白いとは言い難いバルボーザの戦い方だが、きわめて強力にして打開が困難な壁を相手にジョーンズはどう動きを作るのか、傷が癒え次第、対照的なスタイルの両者の対戦に期待したい。


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MMA Road to ADCC カイナン・デュアルチ クレイグ・ジョーンズ ブログ マテウス・ジニス

【Road to ADCC】世界王者対決=上も下も鉄壁の支配カイナン・デュアルチ✖閃光マテウス・ジニス

【写真】カイナン✖ジニスの階級を越えたワールチャンプ対決。世界大会は1年延期されたが、このようなワンマッチ大会の開催は嬉しい限りだ (C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)、テキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンにてFlograppling主催のRoad to ADCCが開催される。
Text by Isamu Horiuchi

今大会はその名の通り、パンデミックの影響で来年に延期されたADCC世界大会の前哨戦となる。ルールは、ADCCのスーパーファイトに基づいたものだが、延長戦はなく本戦20分のみ──前半はスコアがカウントされず、選手は一本勝ちのみを目指し、10分経過時から加点時間帯が開始する。

ただし、引き込みに関しては試合開始時からマイナスポイントが与えられることなっている。そんなRoad to ADCCのメインを飾るのは、2019年のADCC世界大会99キロ以上級優勝のカイナン・デュアルチと、同大会88キロ以下級優勝のマテウス・ジニスによるチャンプチャンプ対決だ。


本来デュアルチの適正は一つ下の99キロ以下級だろうが、それでもジニスとはひと回り以上体格が違う。デュアルチは、来年のADCC世界大会無差別級優勝の最有力候補とみられる選手で、昨年末のWNO 05ではホドウフォ・ヴィエイラとの新旧頂上対決にてチョークで圧勝している。

今年に入っても3CGグラップリングにてテックス・ジョンソン、メイソン・ファウラー、ヴィクトー・ウゴといった強敵を退けて優勝するなどここまで全勝だ。

対するジニスは、今年の試合出場はこれまで先月末のBJJ Stars におけるルーカス・バルボーザとのノーギ戦のみ。テイクダウンで先制されたものの、終盤にアームドラッグで崩して斜め後ろを取ることに成功し、RNCをセットしバルボーザを失神に追い込んだが、タイムアップ後と判断され惜敗している。

それでも今年の柔術世界王者相手に大きなインパクトを残してみせた事実に変わりないジニスは、師マルセロ・ガウッシア譲りのウェルラウンデッドな技術を持つ。

最大の強みはトップゲーム。19年ADCC準決勝のジョシュ・ヒンガー戦(カニバサミを仕掛けて下になったヒンガーに対し、試合終了寸前にパスを決めて勝利)と決勝のクレイグ・ジョーンズ戦(ジョーンズのテイクダウン狙いを切り返してポイントを奪って勝利)、前述のバルボーザ戦等、超強豪との試合では決して自ら下になることはなく、トップからの戦いに徹して勝利している。

対してデュアルチは自ら下になることも辞さない。前述した2019年ADCCでは準決勝のブシェシャ戦、決勝のニック・ロドリゲス戦と強靭な足腰を活かした鉄壁のニーシールドで相手の勢いを止め、胸を蹴ると同時にシングルに移行して瞬時に反撃に転じてみせた。

加えてデュアルチはスタンドレスリング自体も得意にしており、19年にはブシェシャの雪崩の如きテイクダウンを見事な足捌きで防ぎ後半は有利に戦い、また昨年のホドウフォ戦ではスタンドでの一瞬の崩しから見事にバックを奪って勝利している。

体格的にも、トップからもボトムからも戦える戦術の幅という点でもデュアルチの有利は動かないと思われるこの試合だが、ジニスはワンチャンスをモノにする術が秀でている。

ばかりか2019年のADCC世界大会のように、相手が見せた少しの隙も逃さず確実にポイントを取り勝ち切る勝負勘の持ち主だ。一つのミスが命取りとなる緊張感のある攻防が期待できるワールドチャンプ対決だ。

■視聴方法(予定)
7月18日(土・日本時間)
午前9時00分~Flo Grappling

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MMA Report WNO10 クレイグ・ジョーンズ タイ・ルオトロ ブログ

【WNO10】上でも強いんです──クレイグ・ジョーンズが、タイ・ルオトロに盤石のチップゲームで勝利

【写真】ビクトル投げからヒザ十字、何でもできる (C)MIKE CALIMBAS/WNO

18日(金・現地時間)、テキサス州オースティンのJWマリオット・オースティンにてWNO 10が開催された。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー最終回はメインイベント、クレイグ・ジョーンズ✖タイ・ルオトロの一戦──ジョーンズがトップゲームで強さを見せた試合の模様をお届けしたい。


<ノーギ200ポンド契約/15分1R>
クレイグ・ジョーンズ(豪州)
Def. 3-0
タイ・ルオトロ(米国)

タイが徐々にウェイトアップしているとはいえ、10キロほどの体重差がある両者の戦い。試合開始後、ジョーンズはいつものように引き込むことはせず、タイと首を取り合い、足を飛ばしてスタンドの攻防を挑む。

やがてタイの左腕を両腕で掴んで体を寄せたジョーンズは内股を仕掛け、バランスを崩したタイの背中に素早く付く。

タイはすぐに前転するが、ジョーンズは重心を低くしてそこからのスクランブルを許さず、タイの背中をマットにつけさせてバタフライガードの中に入った。

腕を伸ばして距離を作りたいタイだが、ジョーンズは低く体重をかけて密着。タイはバタフライフックでジョーンズの右足を浮かせると、外掛けで絡んでの足関節狙いへ。いつもは下から足関節を狙うジョーンズが上を取り、普段は決して下にステイせずに上攻め専門のタイが下から足関節を仕掛けるという、通常とは逆の光景が展開されている。が、望まない攻防を強制されているのはタイの方だ。

足関節の攻防はお手のもののジョーンズは難なく足を抜くと、その後もバランスをキープする。

さらに上半身を低く密着させボディロック作ったジョーンズは、左にステップオーバーしてタイの右足を超えてパスガードを決めた。このボディロックパスは、足関節技やバタフライからの仕掛けと並ぶダハナー一門の得意パターンだ。

(C)CLAYTON JONES

が、次の瞬間タイは自らの左腕で左脚をフックして三角絞めのように下から締めるバギーチョーク狙いへ。

嫌がるジョーンズはタイの口を手で塞ぎ、さらに顔面を前腕で圧迫してディフェンス。そこでスペースができたところで、タイはバタフライガードに戻してみせた。

その後もタイが下からジョーンズを浮かそうと試みるが、体格に勝るジョーンズが密着し続ける展開が続く。タイは両足でジョーンズの鼠蹊部を蹴って距離を作って立とうとするが、ジョーンズはそれも許さない。さらにタイはデラヒーバフットロックや内回りを仕掛けるが、その度にジョーンズは容易くディフェンスをして上をキープする。

それでも、ついにバタフライでジョーンズのバランスを崩したタイは、両腕を伸ばしてジョーンズのワキを押して隙間を作って立つ。

追いかけるジョーンズを振りほどいたタイは、残り8分の時点でついにスタンドに戻ることに成功した。スタンドでタイはジョーンズの右足に触れてから、両差しをとる。が、ジョーンズはオーバーフックから内股へ。

タイが堪えると、ジョーンズはそのまま前転してビクトル投げに移行する。左足をワキに挟むと強烈なヒザ十字を仕掛けたジョーンズだが、タイは角度をずらしてみせた。

そこからジョーンズは50/50の体勢を作って必殺のヒールを狙ってゆく。最大のピンチを迎えたと思われたタイだが、捕らえられている左足を深く伸ばして防御する。

その後もジョーンズがフックを作ろうと動くたびに、タイは先に左に回転してそれを許さない。やがてジョーンズは自ら足の絡みを解き、上を選択した。

またしても下を余儀なくされたタイは下から浮かせたり、フレームを作って距離を作ろうとするが、ジョーンズは重心を低く保ってバランスキープし、やがて体を巧みにずらして再びボディロックへ。

ここでも下からのバギーチョークで抵抗するタイだが、ジョーンズは上から前腕でタイの顔を圧迫する。

やがてハーフに入ったジョーンズは、頭をタイの右ワキにこじ入れると、右腕で枕を作ってグリップを作り、右肩でタイの首を強烈に圧迫してゆく。続いて腰を切ったジョーンズは、タイの両足を重ねて潰すことに成功する。再びパスガードかと思いきや、タイは下から動いて体をずらしてエスケープ。

ジョーンズの右足に下から外掛けで絡んでゆく。が、ジョーンズはその絡みを難なく外して上をキープした。

その後もタイは下から足関節やスイープを仕掛けるものの、体重で勝り足関節の攻防を熟知しているジョーンズには通じず。結局ジョーンズが上をキープしたまま時間切れとなった。

判定は3-0でジョーンズに。笑顔でタイと健闘を称えあったジョーンズは、タイのセコンドにして、チームメイトのゴードン・ライアンと因縁のあるアトス総帥のアンドレ・ガルバォンとも笑顔で挨拶を交わした。

試合後のインタビューでジョーンズは、普段と違って上からの戦いを選択したことについて聞かれ、「いやあ、試合前にキミらが『クレイグは引き込む』、『あいつがやることは予想できる』って言いまくるから、『じゃあ違うことやってやるぜ!』って思ったんだよ。まあ俺たちはいつも全ての局面を練習し、ウェルラウンデットな選手を目指している。だからどんな体勢でも戦えるんだ。バキーチョークはちょっとヤバかったけど、ああいう技にはこっちも大袈裟なくらいにディフェンスするもんだ。だってあんな技で極められちまったら赤っ恥だろ。一番フィニッシュに近かったのは、(自分が仕掛けた)ヒザ十字だよ」と語った。

自身の一番得意な形をあえて使わず、相手に不得手なボトムでの戦いを余儀なくさせたジョーンズ。足関節だけではなく、スタンドでの内股からのテイクダウンと強力なトップゲームを披露し、引き出しの広さを見せつけた。このジョーンズの戦いは、一芸に秀でるだけでなく、全ての面で強いウェルラウンデッドであることの重要性を改めて教えてくれるものだった。

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