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ONE169:第6試合・ケイド・ルオトロ vs. アフメド・ムジタバ

ライト級。

サブミッショングラップリングライト級王者ルオトロのMMA2戦目。サブミッションではONEで5連勝中で、8月に行われたクレイグ・ジョーンズ・インビテーショナルでは80kg以下級で優勝し、名実ともにグラップリング世界一の座に着く。が、その時の負傷により、9月のONE168でのマイキー・ムスメシ戦は欠場した。MMAは6月にブレイク・クーパー戦でデビュー。MMAキャリア4戦目のクーパーに対し、打撃もけっこう打ち合った末に、バックを取ってグラウンドに持ち込みチョークで一本勝ちした。

パキスタンのムジタバはMMA10勝4敗。ONEには2016年から出場し4勝4敗。4勝のうちには、後にRoad To UFCで準優勝するリー・カイウェン戦の反則勝ちも含まれている。昨年はセイジ・ノースカット、ハリル・アミールに連続フィニッシュ負け。前回の試合から1年ぶりとなる。31歳。

前回より対戦相手のレベルが上ったルオトロ。よりMMAの適正が測れる試合。

じわじわ詰めるルオトロ。ロー、ハイ。ムジタバは様子見。右オーバーハンドを見せたが、ルオトロが逆に右オーバーハンドでダウンを奪う。足にしがみつくムジタバにヒザ!さらにパウンドラッシュ!こらえるムジタバにダースチョーク!耐えていたムジタバだがタップ!

またも底を見せること無く勝利したルオトロ。ムジタバもグラウンドは出来る選手ではあるが、やはりルオトロ相手だと分が悪い。

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【Breakthrough Combat01】森戸新士の持つProgressウェルター級王座に挑戦、泉武志「触れれば倒せる」

【写真】森戸の下からの仕掛けに付き合わず、一本を取る──どのような組み技を披露してくれるのか非常に楽しみ (C)TAKUMI NAKAMURA

30日(水)会場非公開で開催される配信イベントBreakthrough Combat01にて、泉武志が森戸新士の保持するProgress暫定ウェルター級王座に挑戦する。
text by Takumi Nakamura

DEEPライト級のトップ戦線で活躍する泉は2016年全日本選手権グレコローマンレスリング66キロ優勝、2017年アジア選手権71キロ級優勝、同年の世界選手権出場などレスリングで輝かしい実績を残す。今回がグラップリング=Progressルールには初挑戦だが、MMA挑戦時からグラップリングへの関心が高く、グラップリングの技術を磨き続けていたという。

レスリングという競技そのものにこだわり・プライドを持つ泉は「ほとんどの人が『泉がポイントを取って、森戸に下から極められる』と予想していると思うんですけど、その予想をひっくり返してぎゃふんと言わせる」と語った。


――今回はBreakthrough Combat01でグラップリングの試合=Progress暫定ウェルター級選手権試合が決まりました。試合のオファーを受けた時はどんな心境でしたか。

「グラップリングの試合にも挑戦していきたいと思っていたので、ちょうどいいタイミングだったかなと思います。あとは、せっかくやるなら強い相手とやりたかったので、最高の相手を用意していただいた感じです」

――泉選手にとっては初めてのグラップリングマッチですが、どういった理由でグラップリングに挑戦したいと思ったのですか。

「MMAの試合ではトップコントロールして漬け切るのが得意なんですけど、まだ試合でフィニッシュするところを出せてなかったんですね。練習では極めたりはするんですけど、それを試合でも極められるようになりたいというところで、グラップリングの試合に出てみたいと思いました」

――取材前の練習はMMAのスパーリングでしたが、練習内容そのものはあまり変えていないのですか。

「あくまでも僕はMMAの選手なんで、そこは割り切って普段通りにMMAの練習もしつつ、グラップリングの練習をしています。ちょうどさっきの練習がMMAだったのですが、午前中はグラップリングの練習でしたし、割合的にグラップリングを増やしているイメージです」

――グラップリングの練習として定期的に行っているジムはあるのですか。

「MMAの試合前もそうなんですけど、カルペディエム青山の方にお世話になっていて、世羅智茂さんたちと練習しています」

――では新しいルールへのチャレンジではありますが、普段やっていることの延長としてグラップリングルールで試合をするという感覚ですか。

「そうですね。ただグラップリングでは使っていい技でも、MMAでは使えなかったり、技術体系が違うところがあるので、そこの調整はやっぱり難しいですね。グラップリングの練習をしていて『MMAだったら殴れるのにな…』と思っちゃうこともあるので。

ただ、その逆でグラップリングだから出来ることもあって、自分はMMAを始めた頃からグラップリングの勉強をしていて、練習で技術交換したり、YouTubeを見て研究したりしているので、MMAの試合では出来ない技にもトライしていこうと思います」

――例えば好きでよく見ているグラップラーはいるのですか。

「ルオトロ兄弟、クレイグ・ジョーンズ、ジョセフ・チェン、ゴードン・ライアン…色んな選手やチームの試合を見ますね。あとはADCCの試合も結構見たりします。だからMMAそのものは比較的近いところにあるかもしれないです」

――対戦相手の森戸選手にはどんな印象を持っていますか。

「昔からずっと活躍していて、色んな技もできる選手だと思います。それこそYouTubeで見ていた選手の一人です。グラップリングで森戸選手に勝ったら、めちゃくちゃオイシイですよね」

――どういった部分を警戒していますか。

「やっぱり下からの攻撃のところですよね。その展開にはなるべく付き合わずに、自分のレスリングをします。グラップリングの得意技もいくつか用意してあるので、それを仕掛けていく作戦です」

――言える範囲で構いませんが、グラップリングではどんな動きにチャレンジしたいですか。

「やっぱり自分はレスリング出身なんでテイクダウンはできると思います。なのでその後ですよね。おそらく僕が先にテイクダウンでポイントを取って、相手も焦らず下から作ってくるでしょう。それに僕が付き合ったらグラップリング歴の差でやられるのは自分でも分かっているので、相手には一切付き合わず自分のやりたいことをやる、というのは決めています」

――ProgressルールはMMAファイターもチャレンジしやすいルール&ポイント制になっていますが、そこは意識していますか。

「それはあると思いますね。でもなんて言うんだろう、MMAと同じことに徹したら ものすごくつまらない試合になると思うんで、一本を狙えるとこは狙いたいですね。勝つためにやるのは当然ですが、ポイントを取って逃げ切るんじゃなくて、一本を取りに行きたいです」

――グラップリング用の練習を続けたことで伸びている部分はありますか。

「MMAで使えるかどうかは分かりませんが、トップポジションからのパスの仕掛けの部分はかなり伸びていると思います。あとは今まで下からひっくり返されていた場面でも、そこの組み手がだんだん分かってきて。守るだけじゃなく、自分からも仕掛けられるようになってきたんで、そこは伸びている実感があります。結局MMAでもトップを取ってもバランスが悪かったらひっくり返されるし、この試合をやることはMMAをやるうえでも無駄ではないですね」

――例えば泉選手のように組み技競技で実績があるMMAファイターがグラップリングにチャレンジすることで、今ままでにはなかった化学反応が起きるのではないかと思うのですが、そういった予感はありますか。

「レスリング出身者がMMAやグラップリングに来ることは、日本の格闘技のそのものの底上げに繋がって面白いなと思います。そのなかでも僕はレスリング好きだし、それを活かしたMMAやグラップリングをやりたいです。ルールは違いますけど“組み技”という部分では共通点もあるし、自分は触れれば倒せる自信があるので、そういうところも見せたいです」

――泉選手の話を聞いていると、格闘技として色々なことにチャレンジすることがお好きなようですね。

「好きですね。いずれは柔術の試合にも出たいと思っているし。ただ僕はMMAファイターで、MMAが本業なので、そこが疎かにならないようにしたいです」

――ではその本業MMAでの目標を聞かせてもらえますか。

「今の僕はMMA戦績が5勝3敗で、少し成績が落ちたところもあると思います。ここからまた勝ちを積み上げて、レスラー最強と言われるようなファイターになりたいです。そして海外の大会にチャレンジしていきたいですね」

――泉選手はレスリングというものにも自信やプライドがあるようですね。

「そうですね。MMAファイターだけど、僕はあくまで組み技の選手だし、レスラーだと思うんですよ。そこはちゃんと活かしていきたいし、打撃が上手くなったからと言って、僕はストライカーにはならないです」

――MMAに転向するうえでバックボーンを活かすか、一度リセットするか。泉選手は間違いなく前者ですね。

「絶対にそうですね。僕がレスリングを捨てることはないです」

――ちなみにまたレスリングの試合に出たいと思うことはありますか。

「はっきり言って無理です(笑)! このあいだ久しぶりに大学でレスリングの練習をやったんですけど、アバラを痛めちゃって。それは何か危ない技をかけられたわけじゃなくて、相手にクラッチされたり、ローリングされたり…それだけで痛めたんです。

昔は全然それにも耐えられたんですけど、今はそこの耐性も弱くなっているので、レスリングをやるならもう一回体から作り直さないとダメですね。やっぱりアマチュアでトップを目指す選手の運動能力やフィジカルはすごいです」

――改めて今回の森戸戦、どのような泉武志を見せたいですか。

「今までのMMAの試合で見せられなかった動きをしっかり見せたいですし、ほとんどの人が『泉がポイントを取って、森戸に下から極められる』と予想していると思うんですけど、その予想をひっくり返してぎゃふんと言わせてやろうと思います。会場を沸かせます!」

■視聴方法(予定)
10月30日(水)
午後6時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル

■Breakthrough Combat01対戦カード

<バンタム級/5分3R>
吉野光(日本)
シンバートル・バットエルデネ(モンゴル)

<Progress暫定ウェルター級選手権試合/5分3R>
[王者]森戸新士(日本)
[挑戦者]泉武志(日本)

<58キロ契約/5分3R>
風我(日本)
オトゴンバートル・ボルドバートル(モンゴル)

<Progress72キロ契約/5分2R>
中原由貴(日本)
中川晧貴(日本)

<フライ級/5分3R>
チョ・ジュンゴン(韓国)
久保健太(日本)

<Progressミドル級/5分2R>
林源平(日本)
有松息吹(日本)

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45 ADCC2024 CJI MMA MMAPLANET o YouTube   エライジャ・ドロシー クレイグ・ジョーンズ ジェイソン・ノルフ ホベルト・アブレウ リーヴァイ・ジョーンズレアリー ヴァグネウ・ホシャ

【ADCC2024】レポート─03─素晴らしき、G-World!! ミカがホシャを下しスーパーグランドスラム達成

【写真】(C)SATOSHI NARITA

8月17日(土・現地時間)と18日(日・同)の二日間にわたって、ラスベガスのT-モバイルアリーナにて、世界最高峰のグラップリングイベントであるADCC世界大会が行われた。今年は既報のように、破格の賞金100万ドルを掲げて日時と場所をあえて重ねて開催してきた対抗団体クレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル(CJI)に多くの有力選手を奪われた形となった。レビュー第3回は、元チームメイト同士にして、22歳もの年齢差対決となった77キロ以下級の感動の決勝戦と、3位決定戦の模様をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi

<77キロ以下級決勝/20分1R・延長10分>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def.19分05秒 by RNC
ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)

以前はマイアミのファイトスポーツにて一緒にトレーニングをしていた、親子並に年齢差のある二人。42歳のホシャが笑顔で両手を大きく広げると、20歳のミカも笑顔で歩み寄り両者はハグ。しばらくそのままの体勢で言葉をかけ合った両雄だった。

スタンドの探り合い。足を飛ばすミカ。ホシャが前にドライブすると、ミカはあまり抵抗をせずに倒れてクローズドガードを取った。

ハイガードを取るミカに対して、ホシャはその体を持ち上げ、ガードをこじ開けにかかる。ガードを解いたミカは下から足を絡めると、やがてホシャの左足を引き出して肩に抱える形を作る。が、ホシャは冷静に右足をミカの頭側に移動して足を引き抜いた。

その後も下から足を絡めるミカと、上からそれを捌くホシャという展開がしばらく続くが、6分過ぎにホシャが距離を取ったところでミカも立ち上がり、試合はスタンドでの探り合いに戻った。


7分近く。 ホシャが高めのダブルで前に出るとミカは瞬時に左でワキを差しながら支え釣り込み足。天才的な反応とタイミングで見事にホシャを舞わしてテイクダウンを奪い、サイドに付いたのだった。

さらにマウントを狙うミカだが、かろうじて左足に絡んだホシャは距離を作って立ち上がった。

その後はまたしても両者のスタンド戦となり、やがて10分が経過して試合は加点時間帯に突入した。

額をミカの額に擦り付けて押してゆくホシャは、左でワキを差す得意の姿勢を作る。さらに前に出ながらの小外刈りでミカを豪快に倒すホシャ。

が、ミカは倒された瞬間に右足でホシャの体を跳ね上げて立ち上がると、スクランブルを試みるホシャの背中に、まるで猫の如き俊敏さで飛びついてみせて、あっという間にフックを入れて3点を獲得してみせた。この動きもまた、尋常ならざるものがある。

さらにパームトゥパームで首を絞め上げにかかるミカ。ピンチと思われたホシャだが、後ろに倒れ込むと同時に体を捻って、チョークを振り解いて正対することに成功。

凄まじい攻防に大歓声が上がるなか、ミカのオープンガードの上になったホシャは、なんとも言えない味のある笑顔を作ったのだった。

ここから下のミカと上のホシャの攻防が続いた後、ミカが立って試合はスタンドに戻った。お互い何か言葉を掛け合い、時に笑顔を見せながらも厳しい組手争いを続ける両者。先程の攻防がリバーサルとして評価されたのか、ホシャにも点が入りポイントは3-2となっていた。

12分過ぎ、しきりに差しの体勢を狙うホシャが両ワキを差しにゆくと、ミカはすかさず外掛けでカウンターしテイクダウン。

動きを止めずに立とうとするホシャだが、ミカは再び素早く背中に飛びつきシングルフック。

が、ホシャは腰を上げてミカを前に落とすことに成功した。

上になったホシャは圧力をかけての侵攻を試みるが、ミカの強靭な足と上半身で作るシールドをフレームに阻まれる。やがて残り4分半の時点でミカが立ち上がった。

ここまで見事な攻撃で見せ場を作っているのはミカだが、点差はわずか1点と一瞬で逆転可能だ。どんどん前に出るホシャは左でワキを差すと、ミカが払い腰でのカウンターを狙う。しかしホシャの体は崩れず、すっぽ抜けてミカが下に。ミカはすぐさま立ち上がってみせた。

無尽蔵のエネルギーを誇るホシャはさらに前進を繰り返し、ミカの頭を両手で掴んでは下げさせにかかる。が、スタミナ十分のミカはそれを許さず、積極的にホシャの足に手を伸ばしてゆく。両者気力充実、一つのテイクダウンが勝敗を分けるスリリングな攻防が続いた。

残り2分。首を抱え合った状態から、おもむろに頭を下げて右手を伸ばしたミカは、内側からホシャの左カカトを掴んでピックしてバランスを崩したと思いきや、次の瞬間背中に回ってそのままフックを完成して6-2。凄まじい動きで決定的なポイントを奪うと、すぐさま深く左腕を食い込ませ、残り1分のところでホシャからタップを奪ってみせたのだった。

大歓声が上がるなか、体を起こしたホシャの肩に顔をうずめるミカ。

親子ほども年齢差のある両者は健闘を称え合った。

やがてホシャはミカの父にしてセコンドのメルキ・ガルバォンと抱き合い、ミカはホシャの盟友にして古巣ファイトスポーツの主であるサイボーグことホベルト・アブレウとハグ。さらにミカはガールフレンドであり、今年のパリ五輪女子フリースタイルレスリング68キロ級にて、米代表として金メダルを獲得したアミット・エロアとも抱き合ったのだった。

念願のADCC初制覇にして、2024年度スーパーグランドスラム(IBJJFユーロ、パン、ブラジレイロ、ムンジアル、ADCC全制覇)達成を果たしたミカは「すごく長い旅だったよ。僕の周りにいてくれた人たちなら、ここまで本当に何が起きたかを知っているんだ。ただこの大会に出られたということだけでも僕には大きな意味がある。2022年(のADCCでは、結果が準優勝で終わって)からADCCタイトルを取るためにずっとやってきた。このイベントに感謝したい。そして来てくれたみんなにもね。感謝したいのはまずダッドだ。僕はときには、あなたに相応しいような息子じゃないのは分かっている。でも約束するよ、これからベストを尽くして、あなたが育てようとしていたような息子になるから。(ガールフレンドのアミット・エロアに向けて)ベイブ、本当にありがとう。君はオリンピックで優勝したばかりで、時間をとってここにADCCを見にきてくれた。僕のハートの全ては君のものさ、僕は本当に恵まれているよ」とコメントを残した。

準決勝では思わぬ大苦戦を強いられた──判定に「救われた」とすら見えた──ミカだが、絶妙のタイミングとスピード、卓越した反応から繰り出されるテイクダウン、そして目にも止まらぬスピードと高い精度を兼ね備えたバックグラブは、組技を見る者に至上の喜びを提供してくれる。

選手の活躍する舞台が多様化するとともに、ときに自由な行き来が困難な場面も出てくるのが昨今のグラップリング界だ。それでもファンとしては、今回世界を獲ったミカと、CJIで輝いたルオトロ&タケット兄弟、リーヴァイ・ジョーンズレアリー、そしてタイと初戦で激闘を繰り広げた超エリートレスラーにして、後日グラップリング転向を表明したジェイソン・ノルフらの対戦の実現を心待ちにしたい。

また、強力なレスリングベースを持つ同士の3位決定戦となったPJ・バーチ対エライジャ・ドロシー戦では、ドロシーが自ら座って下からの勝負を挑んだ。一度腕ひしぎ腕固めでバーチの左腕を伸ばしかける等の見せ場を作ったドロシーだが、それを抜いたバーチは準決勝でミカからパスを奪いかけたのと同様の3点倒立の形を作ると、右ヒザをスライドしてパス。

さらにマウントを奪って見せたが、これは加点開始前。

やがて加点時間帯に入ると、ドロシーが立って勝負はスタンドレスリングに。ドロシーがシングルに入るが、それを切ったバーチが逆に深くシュートイン&ドライブする。

ドロシーは倒されながらアームインギロチンに入るが、バーチが首を抜き2点を先制した。

その後ドロシーの下からの仕掛けをしっかりワキを締め、また胸を密着させて防ぐバーチは、ドロシーが最後の望みを賭けて外ヒールを仕掛けてくるも、余裕の表情を見せる。

極めることに気を取られているドロシーの左足をクロスで捉えたバーチは、逆に一瞬で内ヒールで切り返して9分44秒、鮮やかな一本勝ちを収めた。

昨年はJTに殊勲の星を挙げるも4位に終わったバーチ。今年は準決勝でミカに限りなく勝利に近い判定負けを喫したものの、見事な3位入賞。 10thプラネット随一のレスリングベースを持つ男は、歴戦を重ねるなかで極め力と勝負勘、そして世界屈指と言っても過言ではないほどのパス技術を磨き上げ、34歳にして世界最強のグラップラーの一人へと成長した。

【リザルト・77キロ以下級】
優勝 ミカ・ガルバォン(ブラジル)
準優勝 ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)
3位 PJ・バーチ(米国)

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45 ADCC2024 CJI MMA MMAPLANET o YouTube エライジャ・ドロシー クレイグ・ジョーンズ ジェレミー・スキナー ジョナタス・ ジョナタス・グレイシー ダンテ・リオン ニッキー・ライアン ヴァグネウ・ホシャ

【ADCC2024】レポート─02─ステ投与を明言=ヴァグネウ・ホシャが優勝候補と新星下し、ファイナルへ

【写真】30代の時からステロイドの使用を公言。ADCCは検査なし、42歳の彼は6度目の出場で、5年ぶり二度目の決勝進出。これがホシャの人生(C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)と18日(日・同)の二日間にわたって、ラスベガスのT-モバイルアリーナにて、世界最高峰のグラップリングイベントであるADCC世界大会が行われた。今年は既報のように、破格の賞金100万ドルを掲げて日時と場所をあえて重ねて開催してきた対抗団体クレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル(CJI)に多くの有力選手を奪われた形となった。レビュー2回目は、最注目77キロ以下級の後半ブロックの準決勝までの模様をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi

前回大会3位。前回準優勝のミカ・ガルバォンや2017&2019年優勝のJTトレスに次ぐ優勝候補と言えるダンテ・リオンは、一回戦で新鋭エライジャ・ドロシーと対戦した。ロイド・アーヴィン門下にして強力なレスリングベースを持つドロシーは、今年の東海岸予選の覇者で同予選のファイナルではニッキー・ライアンを制圧している。

前半、ドロシーがダブルに入れば、リオンがギロチンで切り返し、また足関節を狙う白熱の攻防に。加点時間帯になるとリオンが座る。バタフライフックから座ってワキを差してボディロックを作り、そこから立ち上がってのテイクダウンを狙うリオンだが、ドロシーが堪えて両者は場外に。

再開後も差しからのテイクダウンを狙い続けるリオンだが、強靭な足腰を持つドロシーが、小手から内股で豪快に投げて上を取った。大きな流れの中で考えるともともと上のポジションにいたドロシーが上に戻ったという攻防だが、ブレイクを経て一旦両者がスタンドに戻ったと解釈されて、ドロシーに2点が入った。リオンとしては、改めてテイクダウンを狙うというよりスイープを継続していたつもりだっただろうから、痛恨の計算違いだ。

まさかのリードを許したリオンは再びバタフライ。そこから潜ってワキを差し、ドロシーの右足に二重絡みをかけて下から煽るが強靭なベースを誇るドロシーは崩れない。ダンテはさらに好転しながらドロシーの左足を肩で抱えて崩しにかかるが、ドロシーはここも足を抜く。その後もリオンはシッティングから崩し、チョイバーで左腕を伸ばしかける場面も作るが、ことごとくドロシーがディフェンス。結局ドロシーが2点のリードを守り切り、優勝候補を撃破する殊勲の星を挙げた。


勢いに乗るドロシーは続く準々決勝、JTトレスと対戦。ちなみにJTは以前(現在ドロシーが師事する)ロイド・アーヴィン門下だっただけに、その点でも因縁のある新旧対決だ。

レスリングに自信を持つ両者だけに、スタンド戦が続く。4分過ぎ、シュートインしたドロシーが組みつくと、JTが上から首を抱えにあかる。が、ドロシーは首の力でJTをリフトしながらボディロックを作り、そのままテイクダウンに成功。その後は下から足を絡めるJTと上からパスを狙うドロシーの攻防が続くが、加点時間開始前にドロシーが距離を取り、両者スタンドに戻った。

そして試合時間が5分を過ぎ加点時間帯になると、JTはすぐさまシュートイン。ここはドロシーがスプロウルしてみせた。逆にシュートインするドロシーがそのまま押してゆくと、JTは右でウィザーを作って対抗。そのまま内股で投げを狙うJTだが、ドロシーは崩れずJTの背中側に重心をかけてゆく。

ここでJTは方向を変え、仰向け方向に捨て身の形でドロシーを投げようとするが、ドロシーは機敏な反応でバランスを取り上をキープ。なんとか距離を作って立とうとするJTに重心を浴びせて押さえ続け、ついにハーフで固定。6分経過時点で2点を先取して見せた。

JTはハーフから仕掛けようとするが、ドロシーは動かず。残り3分のところで立ち上がったJTが前進するも、ドロシーはうまくいなし続ける。ならばとJTが両差しを作ってドロシーの体を掬い上げにかかると、差し返すドロシー。さらにJTは左ワキでドロシーの首を抱えようとするが、が、前半同様強靭な首の力を持つドロシーのバランスは崩せない。逆にここでドロシーがニータップから浴びせ倒し、再び上に。JTはギロチンのカウンターを狙うが、ドロシーに首を抜かれてしまいテイクダウンが成立。4-0とリードを広げた。

その後、上からパスのプレッシャーをかけ続けるドロシーに対し、JTが有効な攻撃を仕掛けないまま試合終了。若さに勝るドロシーが、JTの本領であるはずのスタンドレスリング&トップゲームで完勝。世代交代を印象付ける一戦となった。レスリングの優位性で勝利してきたJTだが、そのレスリングで勝てなくなってしまうと、ADCCルールにおいては厳しいようだ。

もう一つの山からは、42歳の大ベテランにしてやはり優勝候補のヴァグネウ・ホシャが気を吐いた。初戦ではジェレミー・スキナーからテイクダウンを取り、パスガードを決めた後に左腕を伸ばしかけ、最後にはバックも奪って6-0で完勝。

2回戦ではジョナタス・グレイシーと当たったホシャは、上からじっくりプレッシャーをかけて疲弊させ、延長戦で左でワキを指す得意の形から小内刈りを合わせてテイクダウンに成功。その後もジョナタスの口を手で塞ぐなど嫌がらせ攻撃も冴え渡り、自分より際も若い相手を疲労困憊させて完勝。自分より20歳若いエライジャ・ドロシーとの準決勝に駒を進めた。

<77キロ以下級準決勝/10分1R・延長5分>
ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)
Def. Referee’s decision
エライジャ・ドロシー(米国)

42歳✖22歳。実に20の年齢差のある両者はスタンドで首や腕を取り合い、そして頭を付けて、時に強くぶつけ合っての鍔迫り合いを展開する。そして2分半経過時に、ホシャが前に出てワキを差す得意の体勢から浴びせ倒してのテイクダウンに成功。ドロシーがクローズドガードを取ると、喉元に手をやりプレッシャーをかけるホシャは一度ハーフまで侵攻するが、ドロシーも戻す。

5分を過ぎて加点時間帯となっても、上のホシャと下のドロシーによる攻防が続いた。

残り3分のところでドロシーが距離を作って立ち上がり、試合はスタンド戦に。レスリングに自信を持つドロシーが前に出るが、ホシャは下がりながら受け流す。ドロシーはニータップも仕掛けるが、ホシャはここも巧みに下がって対応した。やがてホシャはまたしてもワキを差す得意の体勢に。

対するドロシーは小手に巻いての内股狙いに出るが、ホシャがこらえてみせた。残り45秒、ホシャがワキを差した形からの小外刈でドロシーを倒す。が、ドロシーはウィザーを効かせてすぐにたち、ポイント献上は回避した。結局そのまま0-0で本戦が終了し、試合は延長に持ち込まれた。

延長に入るとドロシーがシュートイン。

しかしホシャは素早く対応して受け止める。アタックを試み続けるドロシーは残り3分のところで深くシングルに。

そのままドライブしてのテイクダウンを狙うが、ホシャは右足を抱えられながらもスプロールし、重心を落として対応する。

やがてドロシーを押し返して距離を取った。若きレスラーが仕掛けるテイクダウンに対して見事なディフェンスを見せたホシャは、してやったりの笑顔を見せた。

その後も両者譲らないスタンドの展開が続く。残り1分を切っても反応速度が落ちず気力充実ぶりが伺えるホシャに対し、20歳若いドロシーは遠い距離から雑にシュートインしては防がれる場面が目立ってくる。ドロシーのテイクダウンを切っては押してゆくホシャは、笑顔を見せてからフェイント。さらに前に出て左でワキを差してドロシーを場外に押し出す等、底知れぬスタミナと地力を発揮するホシャが余裕を持ってドロシーのテイクダウンを防ぐうちに試合は終了した。

レフェリー判定は、本戦の前半で綺麗なテイクダウンを奪う場面も見せたホシャに。延長で何度もアタックを試みたのはドロシーの方だが、ペース支配という点では、上手く捌き続けては押していったホシャの方が優勢に見えてしまうような展開だった。

とまれ、ホシャは2019年大会以来二度目の決勝進出。リオンとJTという優勝候補二人をスタンドレスリングとトップゲームで上回った20歳下のドロシーを相手に、まさにその分野で渡り合い攻略するという驚くべき戦いぶりだった。準々決勝でドロシーは、2019年にホシャを決勝で倒した34歳のJTに完勝し世代交代を強く印象付けた。そのドロシーをさらに一世代上のホシャが倒したのだから、時代の流れを一人で引き戻す凄まじい活躍だ。

ただしホシャ本人は、ホルモン補充療法としてステロイド投与を30代半ばから続けていることを以前から明言しており、この「驚くべき」戦いに我々はどの程度驚くべきなのか、果たして「鉄人」、「中年の希望の星」等の賛辞を送るべきかどうかの判断は難しい。

が、このADCC大会の公式ルールには禁止薬物についての記載がなく、検査もされないことは公然の事実だ。つまりホシャはこの大会で他の選手たちと同じルールに則って戦っている。そして2011年の初出場以来6度出場、実に13年間かけて戦い続け、今回42歳にして5年ぶり二度目の決勝進出を果たした。他の追従を許さない並外れた業績であることは間違いない。

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【ADCC2024】レポート─01─それでも激熱=77キロ級で、元柔術の神の子ミカがPJパーチに苦戦も決勝進出

【写真】ある意味、ADCCの権威を守ったといえるミカの出場。そして、しっかりと決勝進出を決めた(C)SATOSHI NARITA

8月17日(土・現地時間)と18日(日・同)の二日間にわたって、ラスベガスのT-モバイルアリーナにて、世界最高峰のグラップリングイベントであるADCC世界大会が行われた。今年は既報のように、破格の賞金100万ドルを掲げて日時と場所をあえて重ねて開催してきた対抗団体クレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル(CJI)に多くの有力選手を奪われた形となった。
Text by Isamu Horiuchi

それでも世界の強豪が集まった今大会の中でも最注目と言える、77キロ以下級の前半ブロックの準決勝までの模様をレポートしたい。

この階級の最注目選手は、当然ミカ・ガルバォンだ。2022年の前回大会はケイド・ルオトロに敗れて準優勝に終わり、その数ヶ月前にタイ・ルオトロを倒して最年少で制覇したはずの世界柔術のタイトルも、禁止薬物の使用発覚によって剥奪されてしまった。

驚異的な強さの秘密の一端が神から与えられた才能ではなく、人工的な薬物だったことが明らかとなった以上、「柔術の神の子」という渾名は使いにくい。(ちなみに本人はこの件について、ハードトレーニングに起因するテストステロンの減少の治療に、医者が禁止薬物を使用してしまったせいだと説明している)

それでも昨年は主にWNO等のプログラップリングで活躍し、変わらぬ強さを見せ続けたミカは、今年になってIBJJF系の大会にも復活。ヨーロピアン、パン、ブラジレイロ、世界柔術とミドル級を全制覇し、このADCC世界大会はいわゆる「スーパーグランドスラム」達成が賭かったものとなる。宿敵ケイドがCJIを選択してここにいない今回、20歳のミカが飛び抜けた優勝候補筆頭だ。


そんなミカの一回戦の相手は、ブラジル予選勝者のルイス・パウロ。ミカとは練習仲間でもある選手だ。シングルレッグで右足を掴ってから、あえて下になってのフットロック狙いを見せたミカは、それを凌がれた後も支え釣り込み足等を積極的に仕掛けてゆく。

さらに飛びつきガードも見せたミカは、下から腕や足を狙ってゆき、さらに後転してシングルレッグに移行して上に。場外に出て抵抗を試みるパウロから流れるような動きでバックを奪ってみせた。ここからミカは相手の右腕を右足で押さえて封じると、左手で相手の左手首をコントロール。こうして両手を封じた後、残った右腕でワンアームチョークに。わずか3分06秒、ミカが流石の技の切れ味を見せつけた。

続く準々決勝でミカは、技師オリバー・タザと対戦。初戦でヴェテランのダヴィ・ハモスをわずか55秒、前転からのヒザ十字で仕留めて勢いに乗るタザだったが、ミカは序盤からニータップでテイクダウンからパス、マウントへと移行し腕を極めかける等圧倒する。

そして5分経過して加点時間帯を過ぎた後、スタンドで足を飛ばしてタザを崩したミカが、背後から飛びついてグラウンドに持ち込んで先制。その後も立ち、寝技どちらも終始優勢に試合を進めたミカが、バックやマウントでポイントを重ねて8-0で勝利。順当に準決勝進出を果たした。

もう片方の山の一回戦では、ポーランドの足関節師マテウス・シュゼシンスキが大会常連のゲイリー・トノンと対戦。6月のポラリス28では、リーヴァイ・ジョーンズレアリーに競り勝ち勢いに乗るシュゼシンスキが、延長でオープンガードから一瞬で抱え十字を極めてみせた。

そのシュゼシンスキは続く準々決勝で、前回大会にて当時の絶対王者だったJTトレスを倒して世界を驚かせた10thプラネット柔術のPJ・バーチと対戦。得意のオープンガードで互角に渡り合ったシュゼシンスキは、加点時間が過ぎた後にスイープで上になりかける。が、場外側でバーチにスクランブルされてブレイクが入り、試合が(バーチの土俵である)スタンドから再開されてしまうという不運に見舞われてしまう。

結局、残り1分でダブルレッグを仕掛けたバーチが、シュゼシンスキが仕掛けてきたギロチンから頭を抜いて先制点を奪い、2大会連続の準決勝進出を決めた。

<77キロ以下級準決勝/10分1R・延長5分>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def. Referee’s decision
PJ・バーチ(米国)

前回大会準優勝のミカと、4位のバーチ。その時は顔を合わせなかった両者だが、その後昨年のWNO 20におけるウェルター級王座決定トーナメントの決勝で対戦が実現し──僅か45秒でミカの跳び抱え十字が炸裂して一本決着している。ミカの尋常でない極めを体感したバーチは、今回どう挑むのか。試合開始後いきなりシングルを仕掛けたミカ。右足を取るがバーチは片足立ちで堪えて抜く。さらにミカはダックアンダーやシングルを仕掛けるがバーチが凌ぐ。

3分を経過した時点で、これまで守っていたバーチが首を取り合う状態からミカを捻って崩すと、そのまま回り続けて最初のテイクダウンを奪ってみせた。

ハーフからクローズドを作ったミカが下から仕掛けるが、バーチは固くワキを締めて守る。やがて試合は加点時間帯に。ミカはシッティングから逞しい脚をシザースイープのような形で使ってバーチを崩す。

そのままがぶってみせたミカは、倒れ込みながらのギロチンへ。しかしバーチは強靭な首で耐えて姿勢を崩さず、やがて頭を抜いてみせた。

残り3分。下のミカに対して右でワキを差したバーチは右ヒザも入れてニースライスに。ミカは左足で跳ね上げようとするが不発で、バーチがヒザを抜く。ピンチに陥ったミカはすかさず背中を向けて凌ぎ、さらに向き直る際に足を絡めてハーフに戻す。

ワキを差して胸を合わせているバーチは再びニースライスを狙うが、ミカが足を入れてバタフライに戻してみせた。

難を逃れたかに見えたミカだが、残り20秒のところでバーチが両ワキを差し、3点倒立の姿勢でニースライスの形を作る。上半身を完全に制して侵攻するバーチは、残り10秒でニアマウントまで持ち込み、残り1、2秒のところでついに足の絡みを解いてヒザを抜いたバーチが完全マウントを達成…したところで本戦終了を迎えた。

バーチ大殊勲の勝利かと思いきや、ポイントが成立するにはポジションを安定させてから数秒必要ということで、スコアは0-0のまま。試合は延長戦に持ち込まれた。それにしても、これまで階級上の世界王者たちを相手にした時でさえ鉄壁であり続けたミカのガードが、同体格のバーチに完全攻略されかけた場面は衝撃的だった。

延長戦。一つの失点が命取りになるとあって、両者譲らないスタンドの攻防が続く。バーチがシュートインを試み、ミカも積極的にアームドラッグ等を仕掛けるが崩し切るには至らない。

このままでは敗色濃厚のミカは、残り15秒のところでシングルからドライブ。

バーチに切られて腹這いになるミカだったが、次の瞬間体を起こしてワキをくぐって背中に回る。

ミカはここから瞬く間に飛びついてグラウンドに持ち込む。

残り10秒を切る中、ミカは柔軟な股関節を使ってまず左足をフックし、残る右足も入れようと試み、バーチがそれを手で凌ごうとしている時に試合終了。まだ完全にバックグラブの体勢に入り切っていないということで、ここはノーポイント。試合はレフェリー判定に持ち込まれた。

本戦終了寸前にマウントポジションの形を作り切ったバーチと、延長終了寸前にテイクダウンからバックグラブ狙いまで持ち込んだミカ。予想が難しい判定は…ミカに挙がった。

これはバーチにはなんとも気の毒な判定だ。試合終了寸前のミカのバック狙いよりも、本戦終了寸前のバーチのマウントの方がはるかにポイント獲得/完全制圧に近かった。加点時間前に見事なテイクダウンを決めたのもバーチのほうだ。前戦での秒殺負けを経て、今回は隙のない試合運びを見せながら、要所で有効な攻撃を繰り出して互角に渡り合った。さらに桁外れの攻撃力を持つミカのガードを正面突破するという、世界の同階級の誰もなし得ないような偉業を成し遂げる寸前まで迫る、出色の──おそらくキャリア最高の──パフォーマンスだった。

とはいえ、敗色濃厚だったこの試合にて、最後の最後で見事な瞬発力を技のキレをもって大反撃を見せて強引に勝利を引き寄せたミカもまた、改めてその非凡さを見せつけたと言える。人工的な手段に現在も頼っていようがいまいが、やはりこの選手は柔術の神から──ついでに審判からも──特別な愛を受けている…とこちらが思ってしまうような形で薄氷の勝利を得たミカが、昨年に続いて決勝進出を決めた。

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【CJI2024】レポート─04─己を貫きあった80以下級決勝。優勝はケイト・ルオトロ。リーヴァイが準優勝

【写真】ONEでのファイトマネーを含めると、試合だけケイドの2024年の年収は2億円越えか!!(C)SATOSHI NARITA

16日(金・現地時間)と17日(土・同)の二日間にわたって、ラスベガスのトーマス&マックセンターで開催されたクレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル(CJI)。同大会のレビュー第4回は、80キロ以下級の決勝戦をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi

<80キロ以下級決勝/5分5R>
ケイド・ルオトロ(米国)
Def.3-0:49-46.48-47. 48-47
リーヴァイ・ジョーンズレアリー(豪州)

卓越したガードワークと足関節をもってケイドの双子にして優勝候補筆頭のタイを倒したリーヴァイと、グラップリング史上最高の名勝負と呼べるような準決勝の大激闘を勝ち上がり、タイの仇を取らんとするケイド。現在のグラップリング界の風潮に反旗を翻すが如くスタンドを避け、徹底して下からの戦いを貫くガードプレイヤーと、それに真っ向から意を唱えスタンドでもグラウンドでも上からも下からも攻撃を仕掛け続けるダイナミックグラップラー。

二つの異なるスタイルの頂点を究めた両者による大注目の決勝戦だ。試合開始早々座るリーヴァイ。すると客席からはブーイングが。ケイドも少し離れたところであえて座り込み、そのまま尻で前進するガードプレイヤーの仕草を真似してみせる。そこでリーヴァイが立ち上がって距離を詰めようとするとケイドは立ち、ならばとリーヴァイはまた座ってみせた。観客の声も現在の風潮も一切気にせず、自分の戦いを貫く姿勢だ。


リーヴァイは近づいてきたケイドの右足に下から絡むと、回転してクラブライドの形を作りかける。ここでケイドは豪快にバク転するように体を翻し、振り解くことに成功。ルイトロ兄弟の哲学を象徴するかのごときガード対処法を見せた。さらにリーヴァイがケイドの右足に外から絡むが、ケイドは振り解く。次に左足に絡んだリーヴァイは、股下に潜り込み後転するようにケイドの体を崩しにかかる。

ケイドはあえてその動きに乗ってダイブするよう下になると、次の瞬間三角絞めのロックを完成。

ピンチと思われたリーヴァイだが、すぐに腰を上げて右足でケイドの体をまたぎながら回転して脱出。再び下に戻ってみせた。

リーヴァイは再び右足にからむと、Kガードから回転してケイドを崩しその足を狙う。

が、ケイドもすかさず動いてヒザの支点をずらす。それでも足を狙い続けるリーヴァイだが、ケイド回転して脱出しラウンドは終了した。

採点は二人が10-9でリーヴァイを支持し、一人が10-9でケイド。これを聞いた観衆からはブーイングの声もちらほら聞かれた。

しかし「有効な攻撃を先に仕掛けること」が今大会の最優先の採点基準であるので、何度かケイドを下から崩したリーヴァイ優勢と見ることはおかしくないだろう。また、そこは両者互角と見て第二基準の「ポジションの進行やサブミッションの試み」、さらに第三基準の「ポジションにおける優位やペースを支配」を検討したところで、考え方次第でどちらに付けることも十分可能。下からの仕掛けと上からのパスのどちらを優先するか、きわめて採点の難しいラウンドだ。

2R、横への動きを見せるケイドに対し、リーヴァイは左絡んでKガードを作り崩すと、そのままケイドの片足を持って立ち上がる。ここでケイドが片足で立つと、リーヴァイは深追いせずにその足を抜かせてすぐに座ってみせた。タイ戦と同様、無理にトップを取るための深追いはせずあくまで下からの勝負を貫くようだ。

その後も、ケイドがリーヴァイのガードの突破を試みるが、攻めあぐねる展開が続く。左右に動きニースライスも狙うケイドだが、その度にリーヴァイは巧みに足を絡めて、また腕を張って距離を作って防ぐ。

逆にリーヴァイが深く足を絡めてケイドを崩し、足関節を狙いかける場面もあるが、ケイドはそのたびにニーラインをクリアする。ならばとケイドも上からのトーホールドを狙うが、効果なし。こうして終了したこのラウンドは、三者とも10-9でリーヴァイを支持した。

ここ数年、ダナハー流の足関節の使い手等やリーヴァイをはじめとするガードプレイヤー達をことごとく打ち破り、自らのスタイルの優勢を確立してきたルオトロ兄弟。が、二年前にタイに敗れたリーヴァイはそれでもガードワークと足関節を磨き続け、ついにはルオトロ兄弟の攻撃に下から互角以上に戦うまでにその技術を高めるに至ったことが、決勝のここまでの攻防で改めて明らかとなった。

3Rもリーヴァイが下から足を効かせる展開が続く。ケイドはわざと背中を見せてクラブライドを作らせ、そこから側転してのパスを狙うが不発。残り1分、リーヴァイの頭側に回ったケイドは、インヴァーテッドガードを使うリーヴァイの足と胴体に自らの体を捩じ込む形で圧力をかけ、さらにリーヴァイの左足を抱えることに成功する。

そのまま対角線に流してのレッグドラッグを狙うが、リーバイも動いて隙間を作って防いでみせた。その後は両者特に攻め手のないまま終了。このラウンドは、終盤の攻撃が評価されて3者とも10-9でケイドに。リーヴァイのガードワークでケイドが手を焼いている状況は変わりないが、ここに来て上からのさまざまな試みとプレッシャーが、ガード=防御線をわずかにだが押し込みはじめているようにも見える。

4Rも座って下から絡むリーヴァイと、上から突破を試みるケイドによる攻防が延々と続く。ときにリーヴァイが深く足を絡めるとケイドは対処し、逆にケイドはアオキロックを見せたり、わざと背中を向けて足を取りにゆくが有効な場面は作れない。ラウンド終盤、リーヴァイが下からケイドの背中側に付きかける。

と、ケイドは下になりながらもリーヴァイの右足に外側から右腕をこじいれてのヒザ固め狙い。が、深く入らずこのRは終了。

最後のこの攻撃が評価されたか、はたまたケイドが崩される場面が少なくなっていると判断されたか、このラウンドは3者とも10-9でケイドを支持した。

中盤以降若干流れがケイドに傾きかけているように見えるものの、ここまで両者決定打なし。採点もほぼ互角という状況で、決着は最終5Rに持ち込まれた。最終回も開始早々座るリーヴァイ。するとケイドも逆に座る。

リーヴァイが立ち上がり近づいてゆくと、ケイドは立たずに下にステイ。

初めて上下逆での攻防がはじまった。低く入ったリーヴァイはケイドの左足を取ってレッグドラッグ狙い。これを距離を取って防いだケイドは立ち上がり、リーヴァイが座って結局試合は元の展開に戻った。

ケイドは上から手を伸ばし、リーヴァイの口を塞いでの嫌がらせ。さらに頭側に回ったケイドは、3R終盤同様にインヴァーテッドの中に身体を入れようとプレッシャーをかけてから、さらに足側に戻って担ぎの体勢に。しかしリーヴァイは腕でフレームを張って凌いだ。

ややケイドが攻撃する場面が増えてきている中、リーヴァイも下からケイドの足をすくうが、ケイドは距離を取って対処。

ケイドがニースライスを仕掛けるも、上の足で侵攻を止めるリーヴァイ。ならばケイドはその足を取ってのアオキロック狙いを見せる。

残り時間が少なくなるなか、ケイドはさらに激しく動き胸でプレッシャーをかけにゆくが、リーヴァイも足と腕のフレームを効かせて対処し続ける。残り20秒でケイドはバク転しながらのパスを仕掛け、リーヴァイが対処して5Rの激闘が終了した。

判定は、49-46 48-47 48-47の 3-0でケイドに。25分間、両者どちらも決定的な場面を作らせない接戦となったが、後半になるにつれ、ケイドが攻めこむ場面がやや増えてきていたこともあり、おかしな採点ではないだろう。

2022年のADCC世界大会に続いてCJIも制覇。改めてグラップリング界の頂点の座に立つとともに破格の優勝賞金を得たケイドは「信じられない。これで俺は金持ちだ! なんてね。このお金はコスタリカに創っているジムに使うよ。道場本体はもうすごく綺麗に建ったから、次はみんなが泊まれる場所を作るのさ! タイは『誇りに思う』って言ってくれたよ。今大会の顔ぶれで、僕よりタフな選手はタイだけだった。でも昨日の2試合目(リーヴァイ戦)の1Rで怪我してしまって力を発揮できなかったんだよ。タイこそが僕を倒せる唯一の人間なんだよ」と、最後まで双子の兄弟への想いを口にした。

優勝ケイドとアンドリュー・タケットによる準決勝の超激闘の印象が強烈すぎる今大会だが、決勝で惜敗したリーヴァイの活躍にも一言触れておきたい。二年前、本人がタイに完敗を喫したこともあり──ルオトロ兄弟によってガードプレイヤー達や足関節師達は完全攻略されてしまったという印象が確立しかけていた状況下で、今回下からの戦いを貫いてタイに雪辱を果たした。そして決勝ではケイドの上からの攻撃も全て遮断し、3R戦なら勝っていたのでは、と思えるほどの戦いを見せた。

ケイドの言葉にもあるように、準々決勝でのタイ戦のリーヴァイの勝利は、序盤でタイが足を負傷したが故のアップセットだという見方もあった。が、決勝のケイド戦を経て改めて明らかになったことは、リーヴァイがガードゲームとそこからの足関節等の仕掛けを、階級上の怪物王者バルボーザを制し、世界を席巻するルオトロ兄弟を脅かすところまで磨き抜いたということだ。世界中の下派のグラップラーたちに勇気を与え、今後のグラップリング界の展開にも影響するような素晴らしい戦いぶりだった。

ADCCへの対抗軸としてはじまったCJI第一回大会の軽量級は、歴史的な名勝負を生み出すとともにグラップリングのさらなる進化も告げる、極めて意義深いものとなった。

【リザルト 80キロ以下級】
優勝 ケイド・ルオトロ(米国)
準優勝 リーヴァイ・ジョーンズレアリー(豪州)
3位 アンドリュー・タケット(米国)、ルーカス・バルボーザ(ブラジル)

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【CJI2024】レポート─03─80以下級準決勝。堅実なリーヴァイ、ケイドはアンドリューとの歴史的バトル制す

【写真】静✖動、陰と陽というべき対象的なファイナリストが誕生した(C)SATOSHI NARITA

16日(金・現地時間)と17日(土・同)の二日間にわたって、ラスベガスのトーマス&マックセンターで開催されたクレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル(CJI)。驚愕の優勝賞金100万ドルが用意されたこの大会のレビュー3回目は、80キロ以下級の準決勝2試合をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi

<80キロ以下級準決勝/5分3R>
リーヴァイ・ジョーンズレアリー(豪州)
Def. 3-0 30-26. 29-27.30-26
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)

前日同様にすぐに座ったリーヴァイ。

バルボーザは横に動いてのパスを仕掛けるが、リーヴァイは足を効かせて対処する。

さらにバルボーザが重心低くプレッシャーをかけてゆくが、リーヴァイが侵攻を許さないまま1R終了。このラウンドの判定は一人が10-9でバルボーザ、二人が10-9でリーヴァイと割れた。

ちなみに今大会の採点基準は、まず最優先事項として(1)「有効な攻撃を先に仕掛けること」があり、次に(2)「そこからさらにポジションを進めたりサブミッションを試みること」。もし、それらで優劣が付かないなら最後に(3)「ポジションでの優位性やペースの支配」が判断される。


そこを考えた場合、最初の採点基準である「先に仕掛ける」ことをしていたのはバルボーザの方だろう。だから彼に付けるべしという見解はあり得るが、その仕掛けが「有効」だったと言えるかは疑問だ。ならば(2)のポジションの進行やサブミッションの試みを見ることになるが、これらは両者ともに見られなかった。そこで(3)のポジションやペース支配が最後の判断基準となるが、きわめて拮抗したこのラウンドはここでも明確な勝者は存在せず、最終的にはジャッジ一人一人のグラップリング観やその時の視点により判断が分かれることだろう。かくしてジャッジが割れたことに不思議はない。

2Rも当然のように下のリーヴァイと上のバルボーザの展開が続く。

このラウンドはリーヴァイが内回りや内側から相手のヒザ下に腕を通して引きつけてのKガードの形から崩す場面が散見された。

また低く入ってくるバルボーザの首元に、リーヴァイが左足首を突っ込んでのゴゴプラッタ狙いを見せることもあった。

バルボーザも危なげなく対処はしていたものの、上記の採点基準で考えた場合、どちらが取ったかの判断はそこまで難しくない。ジャッジ3者とも3-0でリーヴァイを支持した。

3R。後のないバルボーザは右に動いてプレッシャーを掛け、さらにリーヴァイの頭側に回る。

インヴァーテッドの形で対処したリーヴァイは、下からバルボーザの右腕を抱えると、そのまま右足をファーサイドに回してワキにねじ込んでチョイバーへ。

腕を伸ばされまいと腹這いになって耐えるバルボーザ。ここでリーヴァイはそのまま体を旋回させて続けてバックに着くと、四の字フックを完成。ラウンド序盤に圧倒的な有利なポジションを確立してみせた。

その後バルボーザは腕で足のフックを解除しては懸命に体をずらそうと試みるが、リーヴァイはバックをキープ。再び四の字を組み直してそのままの体勢を保ったまま試合終了。このラウンドは大差が付き、リーヴァイが判定で完勝となった。

階級上の怪物バルボーザの恐るべき体圧を見事なガードワークで捌き切り、さらには見事なサブミッションの仕掛けからバックを奪って完勝したリーヴァイ。ルオトロ兄弟の台頭に代表されるように、トップゲームで圧力をかける戦い方が主流になってきている昨今のグラップリング界において、あえて下からのガードゲームを貫いて超大物を制してみせたことの意義は大きい。この世界は多様な方向で進化を続けるのだ。

<80キロ以下級準決勝/5分3R>
ケイド・ルオトロ(米国)
Def. 2-1 29-27.29-28.29-27
アンドリュー・タケット(米国)

前日素晴らしい戦いで観衆を魅了した21歳同士による、大注目の準決勝戦。まずはタケットが思い切り良くダブルに入るが、ケイドもすかさず必殺の小手に巻いての投げで豪快に切り返す。

すぐに立ったタケットはさらに前に出るが、ケイドはまたしても小手に巻いての内股へ。

再び大きく宙を舞わされたタケットだが、その体が傾斜壁に跳ね返って着地に成功すると、ボディロックをキープして突進。

またもや小手から投げを試みるケイドだが、両者の体が壁にぶつかる勢いで腕が抜けてしまい、すかさずタケットがバックに。

壁際ですぐにボディトライアングルを作ると、壁の傾斜にもたれかかった両者の体が滑り落ちて試合はグラウンドに移行した。開始早々、傾斜壁に囲まれた新しい舞台にて、恐るべき思い切りの良さとアグレッシブさを身上とする二人の若者による、ダイナミックにしてアンプレディクタブルな、今まで誰も見たことがないような攻防が展開されている。

とまれグラウンドで有利な体勢を奪ったタケットは、強烈なフェースロックへ。が、ケイドは体をずらして起き上がって正対に成功。するとタケットも立ち上がり、会場からは大歓声があがった。

ケイドは支え釣り込み足で崩すが、持ち直すタケット。すると今度は先ほどとは逆にケイドの方が差しからタケットを押してゆき、逆にタケットが投げに。

それをなんとか持ち堪えるケイド。

またしても差しにゆくタケットに対して、ケイドはその腕を一瞬でスタンディングのフランク・ミア・ロック(かつてUFCでフランク・ミアがピート・ウィリアムスを極めた形)に捉えて絞り上げるが、タケットは腕を抜く。

その後もお互い激しく組み合って足を飛ばしあい、バランスを保つ展開に。グラップリング試合においてレスリングの攻防が続くととかく退屈なものになりがちだが、この二人にはまったく当てはまらない。残り30秒、ケイドはタケットの体を崩して横に付くと、さらにワキを潜ってバックを狙う。

タケットはここでまたしても豪快に投げるが、ピッタリと背中に付いていったケイドはハーフ上の体勢でグラウンドに。

タケットがクローズドガードを取り、ケイドはその首を抱えてカンオープナーを仕掛けるなか驚愕の1Rが終了した。

判定は3者とも10-9でタケットに。2022年のADCC世界大会にて、神童ミカ・ガルバォンを倒して頂点に立ったケイドの真骨頂は、誰にも付いてゆけないほどダイナミックに動き続けることにある。しかし、タケットはまさにケイドの土俵であるはずのウルトラハイペースの混沌状況の中で動き勝つという離れ技をやってのけた。とはいってもラウンド終盤に近づくにつれケイドの勢いが増し、相対的にタケットの動きはやや落ちはじめてきているようにも見えた。

2R、引き続き激しくいなし合い崩し合う両者。ケイドは前に出るタケットの首を掴んで引き倒すと上からクルスフィクスを狙うが、タケットは立って凌ぐ。ならばとケイドはスタンディングからキムラに入るが、ここもタケットは腕を抜いてみせた。

さらに組み合う両者。やや体の軸がぶれてきたかのように見えるタケットだが、手四つに組んだ両手を上げてスペースを作ると同時にシュートインしてシングルへ。

ケイドの右足を抱えてタケットが立ち上がると、片足で堪えるケイドは豪快に飛んでカニバサミへ。

そのままタケットの右足に絡んで内ヒールを狙うケイド。ヒールを露出させられかけたタケットだが、回転して足を抜いて立つ。

と同時にまたワキを差してケイドを押してゆく。するとここでまたしてもケイド必殺の小手からの内股が豪快に炸裂。ハーフで上を取ってみせた。驚愕のノンストップバトルはまだ止まらないが、まるで動きの落ちないケイドが徐々にタケットを呑み込み始めているようだ。

ケイドは右を深く差してウィザーに。長い腕を用いて得意のダースを狙える体勢だが、ケここで一瞬逆に左腕を深く入れてアナコンダグリップを作る。そこから改めて右を深く入れ直して再びダースへ。

回転して逃げるタケットに対して、ケイドはノースサウスチョークに移行。絶体絶命と思われたタケットだが、右腕をケイドの顔の前に捻じ込んでスペースを確保して決して諦めない。やがて隙間を作ってガードの中にケイドを入れた。

タケットはそこから三角を狙うがケイドが防ぐ。

ならばとタケットは内側からケイドの左足を引き寄せると、外掛けからヒザ固めに。

しかしケイドは動じず、左足にトーホールドを仕掛け、上をキープしてこのラウンドを終えた。

判定は一人が10-8 残り二人が10-9でチョークを極めかけたケイドに。徐々に差を付けられはじめたタケットだが、勝負を諦める様子は毛頭ないようで、力の限りの攻撃を仕掛け続けている。

3R、いきなりシュートインしたタケットは、そこからワキをくぐってバックへ。ケイドが前転するがタケットは背中から離れない。それでもケイドは仰向けになり体をずらすと、タケットはケイドのガードの中に入って上のポジションを取った。

ケイドは下からバギーチョーク狙いを見せると、すかさず距離を取って立ち上がる。

が、その瞬間背中に飛びつくタケット。

ケイドはその足を両手で押し落としながら反転して上に。ならばとタケットも素早くワキを差して立ち上がる。ケイドが右で小手を巻くと離れる両者。残り3分。さすがにケイドの動きもやや落ちてきたように見えるが、会場を震撼させ続けているインクレディブル・ウォーはまだまだ止まらない。

ケイドはまたしてもスタンディングでミアロックを狙う。

凌いだタケットはダブルに入るが、ケイドは強靭な腰で受け止めると逆にダブルレッグのお返し。受け止めようとしたタケットだが、ケイドの勢いは止まらず。

キャンパスに雪崩れ込むような形でテイクダウンに成功した。上からケイドは右ワキを差してニースライスを狙うが、ニーシールドで耐えるタケット。グラウンドにおけるポジション争いの鍔迫り合いにおいても、両者の攻防は全く目が離せない。2Rを失ったタケットとしては、なんとかここを脱出して上を取り最後の攻撃を仕掛けたいところだ。

やがてガードの中に入ったケイドはタケットの首を抱えて圧をかける。立ち上がってタケットのガードをこじ開けると、すぐにタケットはスクランブルに。するとすかさず反応したケイドはスプロールしてアナコンダのグリップを作る。

そのまま傾斜壁に座るような形で絞り上げるケイド。さらにクローズドガードに移行してフィニッシュを狙うが、タケットは首の力と執念でケイドの全体重を持ち上げて抜いてみせた。

残り10秒、最後まで諦めないタケットがパスを狙いにゆくが、ケイドは右足首をタケットの喉元に捻じ込んでゴゴプラッタでカウンターするうちにタイムアップ。

立っても寝ても両者止まらない攻防のダイナミックさと激しさという点で見るなら、文句なくグラップリング史上最高の名勝負と呼べる試合が、ついに終了した。立ち上がってハグする両者。グラップリングの明るい未来を象徴するが如き、驚きに溢れた大激闘を展開した21歳の若者二人を、会場はスタンディングオベーションと大歓声で称えた。さらには「One more round!」という無茶なチャントまで発生するが、これほどの試合をこなしてなお余力十分、まさに無尽蔵のエネルギーの持ち主のケイドはこれを両手で煽り立てたのだった。

判定は29-27, 27-29, 29-28でケイドに。勝者は「まずタケット兄弟二人に敬意を表したい。これが本物の柔術さ! リアルなテクニックとアンリアルなスクランブルだ! こんな試合は一人じゃできないからね。(前日上の階級で大健闘を見せた)ウィリアム(タケット)も凄かったよね! 決勝戦に向けてものすごく気分が上がっているよ! ただ彼(決勝の相手のリーヴァイ)が、何をやりにここに来ているのか分からない面もあるよ。もうちょっと膠着に対する警告の仕方を変えた方がいいんじゃないかな! 最初からガードで座っているのって簡単すぎるじゃないか。ただの僕の意見だけどね。まあ僕だってガードをプレイするのは大好きだけど、もし僕が(腰を引いた姿勢を見せて)スタンドでこうやって下がって、相手が無理に仕掛けてくるのを待っているだったら、膠着の傾向を受けるべきだよね。まあともかくリーヴァイのガードは凄いよね! 決勝がものすごく楽しみだ!」と語る。

スタンドでもグラウンドでも攻撃を仕掛け続ける、現代グラップリングの魅力の全てを集めたような戦い方で大観衆を魅了したケイドは、このアピールを通して、自らとは対極的な──しかし別の意味で洗練を極めた──ガードの使い手であるであるリーヴァイとの興味深い対立軸までしっかり観客に提示してみせたのだった。

究極のダイナミックグラップラー=ケイド・ルオトロと究極のガードプレイヤー=リーヴァイ・ジョーンズレアリー。組技格闘技に深く拘っているあらゆる人間たちにとって興味深い、対照的なグラップリングスタイルとフィロソフィーの頂点を窮めた両者による対決
が実現することとなった。

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【ONE FN23】タイ・ルオトロ戦へ、ジョセフ・チェン「完璧な技術より、確実な技術が重要に」

【写真】なぜ、19歳でここまで理路整然としているのか。データと実戦に戻づいた強さ、ルオトロ兄弟はそこに発想の自由さがある。本当に楽しみにな一戦だ (C)MMAPLANET

6日(土・現地時間)、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催されるONE FN23「Ok vs Rasulov」で、ジェセフ・チェンがタイ・ルオトロと対戦する。
Text by Manabu Takashima

ONEサブミッショングラップリング世界ウェルター級王者にして、グラップリング界最高のアイドルといっても過言でない21歳のタイに、19歳のジョセフが挑む。

この一戦の僅か2週間前の時点でジョセフはWNOではADCC米国東海岸予選77キロ級優勝のアライジャ―・ドーシーをRNCで下し、他の大会でアンディ・ヴァレラに勝利している。そのジョセフ、ADCC欧州&アフリカ一次予選の77キロ級を制しているが、世界大会でなくB-TEAMの盟友であるクレイグ・ジョーンズ率いるCraig Jones Invitational出場を選択した。

組み技ファン垂涎のタイ×ジョセフだが、当のジョセフにとってはこの試合も結果が全ての勝負の時に向けてのプロローグ──。そう割り切ることができるからジョセフとの戦いだからこそ、タイにとってもONEで初めて苦戦する可能性が生まれてくる。


あのダイナミックな動きこそルオトロ兄弟の持ち味

――ジョセフ、今もまだオースチンなのですか(※取材は6月29日に行われた。

「明日、テキサスをでるよ。香港経由でタイまで、24時間のフライトが待っているんだ(笑)」

──おお……それは大変です。タイ・ルオトロとの戦いが迫っていますが、直近でも試合に出て続けていますね。

「先週の木曜日にWNOではアライジャ―・ドーシー、日曜日にアンディ・ヴァレラと戦ったよ」

──WNOの方は映像をチェックさせていただきました。ADCC米国東海岸予選77キロ級優勝者を相手に、見事な大内刈りからパス、そしてワンアームからRNグリップを組んでチョークで一本勝ち。でも、その3日後にもう1試合戦っていたとは……。

「メインキャラクター柔術っていうローカルショーに出て、ウェルター級のベルトを賭けて戦ったんだ。ポイント勝利だけどベルトを巻いたよ」

──それはおめでとうございます。

「ありがとう。予行演習を兼ねた実戦もこなし、しっかりとB-TEAMで練習もできているし、凄く調子は良いよ。技術的なことを磨くだけでなく、ハイペースで戦うことにも重点を置いてきた」

──仮想タイとなる練習相手は、B-TEAMでもなかなかいないのではないかと思ってしまうのですが……。

「そんなことはないよ。チームではハイペースの練習をしてきたんだ。タイはスピードがあって、凄くアグレッシブな柔術家だから。ダースもそうだし、肩固めも本当に強い。そこの対策もB-TEAMでしっかりとできているよ。タイの試合運びにも十分に対応できるはずだよ」

──タイもケイドも、あれだけ積極的なのにミスがないように見えます。ただしONEでのルオトロ兄弟は、観客にグラップリングの面白さを見せるために、必要以上に動くというか。そこまでしないで良いだろうというぐらい動いています。

「アハハハハ。それでミスをしてくれることを願っているよ(笑)。でも、あのダイナミックな動きこそルオトロ兄弟の持ち味で、それこそリスクのある攻撃をしている。それは本当に防御能力が高いから可能になるんだ。

下になっても、ずっと攻めているからね。そうだね、そういう展開になってミスがあれば良いけど、とにかくディフェンスも固いから。ルオトロ今日は受けに回っても、本当に強い」

──日本のグラップリングファンは、今もProgressルールでの森戸新士選手との試合。そしてQuintetで見せた動きを忘れていないです。パスの強さ、トップゲームの的確さが特に印象残っています。あの頃と比較して、今のジョセフはどこか一番進化しているのでしょうか。

「あの頃と比べると、レスリングは相当に伸びたと思う。以前は引き込んでガードゲーム、Kカードなんかと多用していた。でも、今はレスリングの組手が強くなり、あの頃よりも全然クリンチが得意になった。

タイは基本的にトップゲームを仕掛けてくるだろう。いずれにせよ、トップもボトムもしっかりと練習を重ねてきた。試合になっても、その時の判断で上でも下でも戦うつもりさ」

──ではリングでの戦いというのは?

「リングで試合をするのは始めてだし、リングを使った練習はしたことがあっても、普段からやってきたことではない。でも90度のコーナーがある戦いがどうなるのか、楽しみだよ(笑)。

ロープがあることで、どのような展開になるのか。リングでの試合が僕にとって最高の戦いやすい環境になる必要はないし、どんどん動き回るつもりだよ。でもルンピニーで戦うことも、とても興味深い」

──グラップリングの超新星もルンピニーに想い入れがあるのですか。

「うん? ないよ。ムエタイのメッカで、僕が戦ことが面白なって思っているだけで(笑)。でも歴史のある有名な会場だから、戦えて光栄だよ」

精度の高い動きで、非効率的にならないよう

──なるほど。ところで84キロという契約体重は、77キロ以下で戦うことが多いジョセフにとっては重くはないですか。

「最初はもっと軽い体重で話は進んでいたんだ。たしか80キロとか81キロで。そうしたら急に86キロになるって話が変わって。ノーノ―(笑)。それだと重すぎるから、83キロでは──とか、色々をあった。その結果、84キロになったんだ。

今もそうだけど、僕は普段から82キロだから通常体重で戦うことになるね。僕の柔術をタイにぶつけたい。ルオトロ兄弟ほど派手に動き回ることはないかもしれないけど、精度の高い動きで、非効率的にならないように戦う僕のスタイルを貫きたいね。

戦術的にはパーフェクトなテクニックが重要になってくるのではなくて、絶対的に確実な技術が重要になってくる。それこそが、最高レベルの相手と戦う時に必要なことだから」

──タイとの試合は楽しみでならないですが、8月にADCCでなくCJIを選択した理由を尋ねても構いませんか。

「理由はいくつかある。もちろん、マネーもその一つだ。そしてCJIが何をしようとしているのか。そこに関心があった。柔術の試合に出て、出場するだけで1万ドルが支払われる。こんなに素晴らしいことはない。そして、多額の資金がグラップリングに投入され、アスリートにも回って来る。そんな背景があるトーナメントだから、心が搔き立てられるよね」

──意義のある大会に出場すると。

「ADCCは1990年代から、優勝賞金が変わっていない。しかも貨幣価値は変わっているんだから、事実上の減額だよ。クレイグは出場費を払うことで、グラップリングの規模の拡張にトライしている。

それにクレイグはYouTubeでの無料配信を決めた。よって、より多くの人がグラップリングのトーナメントを視聴することになるに違いない。彼は他にないグラップリングのトーナメントを開こうとしている。Flo Grapplingはグラップリングの発展に大いに役立ってくれたけど、ファンを増やすという点において、無料配信は大きいよ。

プレーはしないけど、ただグラップリングを見るだけのファンがこのスポーツが大きくなるために欠かせないんだ。見る人が増えること。それがグラップリングの発展に欠かせないことだから」

──盟友の岩本健汰選手を始め、ADCCに残る選手もいます。

「ケンタは僕の上の部屋に寝泊まりしているんだ(笑)。まだ朝の8時過ぎだから、きっと寝ているね。本当にテイクダウンとスクランブルが強くて。ケンタは僕にとって最高のトレーニング・パートナーだよ。

ケンタがADCCに残ることは理解できる。僕も悩んだし、両方の良さが分かっているから。だからCJIの80キロ以下級も、ADCCの77キロ級も良いメンバーが集めっているんだ。どちらもハードなトーナメントになることは間違いない。

前回のADCCウィナーのケイド・ルオトロはCJIに出る。ただし準優勝のミカ・ガルバォン、3位のダンテ・リオンはADCCに出場する。出場選手のアベレージはCJIの方が高いだろう。でも頂点はとても似通っている。

ケンタがADCCに出ることで、僕的には彼と戦う可能性がゼロになった。そこは気が楽だよ。これは凄く個人的なことだけど、ケンタは必ずやってくれる。それが楽しみで。WNOのミカ・ガルバォン戦を見る限り、ケンタが世界のトップにあることは間違いからね。

ファンの立場からすると金曜日はCJI、土曜日は見たい試合をピックして視聴する。日曜日はADCCと、最高の試合を3日連続で楽しむことができるし、良いことじゃないかなって。ライブで観戦するにしても、会場は車で7分しか離れてないしね」

クレイグが動いたことで、過去には見られなかった変化が、既に起こっている

──いやジョセフ、そこに関していうと77キロの真の世界一は2024年には生まれないことになります。結果、どこかでADCCウィナーとCJIウィナーの戦いが組まれそうですが。

「う~ん、クレイグが同じ週末にCJIをぶつけたのは、ADCCに異議を唱えているということなんだ。ADCCという組織が、これでどう変わっていくのか。このままADCCの独占状態だったら、選手の待遇はずっと変わらないだろう?」

──我々のなかで、グラップリング競技で食べていくことは難しいという風に固定概念になっていたことを、クレイグは崩そうとしているのですね。

「そうなんだよ。クレイグが動いたことで、ADCCは出場費として2500ドルを選手に支払うことを決めた。過去には見られなかった変化が、既に起こっている。このスポーツにとって、素晴らしいことだよ。

これまで世界トップのグラップラーが試合をするのに出場費が支払われないばかりか、参加費を払う必要があったんだ。そうでなくショーペイがあるなら、選手は大歓迎さ。僕は、この方向にこのグラップリングが進んで欲しいと願ってやまないよ」

──純粋にアスリートとして、CJIで戦っておきたい相手は誰になりますか。

「う~ん、そうだなぁ……PJ・バーチとダンテ・リオンはADCCに残ったし──そうだねっ、アンドリュー・タケットとは戦いたいと思っている。彼とは1勝1敗で……まぁCJIに限らず、アンドリューとはこれから何度も顔を合わせることになるだろう」

──タイとONEで戦うという経験が、CJIで戦う時に武器になると考えていますか。

「そうなって欲しいね。僕は試合によってプライオリティが違う。勝つことが大切な試合と、そこで経験を積むことを重視している試合があるんだ。勝つことが絶対的な目標なのはADCCであり、今回はCJIなんだ。そのために、どれだけ自分を仕上げることができるか。ADCCはトーナメントに勝って、スーパーファイトで戦う。それが一番価値のあることだから、そこを目指していて。

ONEでタイと戦うことで、凄く確かな情報が僕に入ってくる。結果、CJIで最高の動きができるようになるはずだから」

──今回の試合の位置づけもそこなのですね。ところでONEで戦うと、ADCCやCJI以外の試合に出られなくなるのでは?

「ONEとの契約に関しては、本当に慎重に判断をした。だから1試合契約で、ノンタイトル戦なんだ。チャンピオンになると契約が延長されるから。その結果のキャッチウェイト戦だし。そこはクレイグを始め、色んな人が進言してくれたよ」

──ではCJI後にまたジョセフの雄姿が日本で見られるかもしれないですね。

「本当は柔術のアジアオープンに出たかった。来年のアジアには出場するつもりだ。それにProgress、あのケージで戦うグラップリングはルールやポイント制も凄く楽しかった。僕はいつだって、日本を訪れたいという気持ちでいる。試合に出るかどうか分からないけど、ケンタと練習するためにも年内にはまた日本を訪ねたい」

■放送予定
7月6日(土・日本時間)
午前8時45分~U-NEXT

■ONE Fight Night23対戦カード

<ONEライト級暫定王座決定戦/5分5R>
オク・レユン(韓国)
アリベグ・ラスロフ(トルコ)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ニコ・カリーロ(英国)
セーマーペッチ・フェアテックス(タイ)

<サブミッショングラップリング186ポンド契約/10分1R>
タイ・ルオトロ(米国)
ジョセフ・チェン(ドイツ)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
カン・ジウォン(韓国)
キリル・グリシェンコ(ベラルーシ)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
ルーク・リッシ(米国)
バンパラバムパラ・クヤテ(フランス)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
和田竜光(日本)
シェ・ウェイ(中国)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
アリ・サルドエフ(ロシア)
ブラック・パンサー(タイ)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
箕輪ひろば(日本)
ジェレミー・ミアド(フィリピン)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
アリーフ・ソー・デチャパン(マレーシア)
エリス・バルボーサ(英国)

<キック・ヘビー級/3分3R>
オマル・ログログ・ケニ(セネガル)
ブシェ・ケチャップ(セネガル)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
アレクセイ・バリカ(ロシア)
ステファン・コロディ(アイルランド)

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BELLATOR o UFC キック クレイグ・ジョーンズ ドゥグラス・リマ マイケル・ペイジ

UFC on ABC6:第4試合・リナト・ファクレトディノフ vs. ニコラス・ダルビー

ウェルター級。

ロシアのファクレトディノフはUFCデビューから3連勝でランキング入り。昨年11月の前戦はエリゼウ・ザレスキと対戦したが、2Rまでテイクダウンと大振りな打撃で攻めたものの、3Rに消耗してザレスキの猛攻を受け、なんとか凌いで3Rを10-8で落としてのドロー。今年に入ってからはグラップリングマッチで2試合しており、元Bellatorミドル級王者のドゥグラス・リマに判定勝ちしたが、クレイグ・ジョーンズには三角絞めで一本負け。その間、マイケル・ペイジらがランキングに入ってきたため、ランキングから押し出されている。コンバットサンボがバックボーンで、ロシア選手権準優勝。32歳。

デンマークのダルビーは、一度リリースされた後、2019年のデンマーク大会でUFC再デビュー。それ以降6勝1敗1NCと大きく勝ち越し。前戦ではキャリア無敗のボンフィム兄弟の弟と対戦。事前のオッズでは大幅なアンダードッグだったが、序盤のボンフィムの攻めを凌ぐと、失速したボンフィムをケージに追い込んでパンチ・膝を打ち込み、最後はボンフィムが足関を狙ってきたところにパウンドを打ち込みビッグアップセット勝利。現在4連勝中。39歳。

オーソドックスのファクレトディノフに対し、スイッチを繰り返すダルビー。パンチから四つに組んだダルビーがダブルアンダーフックでクラッチするとケージに押し込む。ヒザをボディに入れるダルビー。首相撲から入れ替えたファクレトディノフが離れる。ダルビーは左右のパンチからカーフキック、左ハイ、前蹴りと繋ぐ。ファクレトディノフがタックルへ。ダルビーの左足をキャッチしてテイクダウンを狙うが、ダルビーはケージでこらえる。入れ替えて離れるダルビーだが、ファクレトディノフの右フックをもらってヒザを着く。すぐに立ち上がるも、ファクレトディノフがケージまで追い込んで左右のフックを連打。クリンチで凌いだダルビー。残り30秒で離れると、ダルビーが左右のパンチを出していくが、徐々に圧を掛けられケージまで後退。そこに飛び膝を放ったファクレトディノフ。1R終了。

1Rはダウンも奪ったファクレトディノフのラウンド。

2R。ダルビーが左右のパンチで先手を取るが、ファクレトディノフがプレッシャーを掛けてケージまで下がらせる。前に出ようとしたダルビーにカウンターのタックルでテイクダウンを奪うが、ダルビーはケージを使って立つと、両脇を差して入れ替える。引き剥がしたファクレトディノフ。ファクレトディノフの右フックをかいくぐってタックルに入ったダルビーが両脇を差してケージに押し込む。押し込みながらヒジを入れるダルビー。放して左右のパンチを打ち込んだダルビー。さらに首相撲からヒザを入れ離れる。ファクレトディノフは消耗したのかスローダウン。ダルビーが左右のパンチを打ち込むとまたケージに押し込む展開へ。離れたダルビーに左右のパンチをヒットさせたファクレトディノフ。ダブルレッグへ。ケージ際で倒したファクレトディノフに対し、ダルビーはケージを背負って立ち上がろうとする。ダルビーが立ち上がった直後に2R終了。

2Rはほぼ互角。

3R開始直後にタックルに入ったファクレトディノフ。スタンドバックを奪うが、ケージ際で正対したダルビー。押し込んでテイクダウンを狙うファクレトディノフに首相撲からヒザを入れたダルビー。ファクレトディノフ再びタックルへ。ダブルレッグで尻もちをついたダルビー。ケージを使って立ち上がるダルビー。離れ際にパンチを入れたファクレトディノフ。ダルビーがすぐにパンチで詰めてくるが、ファクレトディノフが再びタックルでテイクダウン。ダルビーがスイッチでバックを取り返すも、ファクレトディノフはすぐに立ち上がり離れる。再びタックルに入るファクレトディノフ。ケージに押し込むが入れ替えたダルビー。残り40秒で離れた。またタックルに来たファクレトディノフにヒザを合わせたダルビー。四つでケージに押し込む。残り15秒で離れ、両者ともに大振りの打撃を放つ。打ち合いのままタイムアップ。

29-28ダルビー、29-28ファクレトディノフ、29-28ファクレトディノフ。スプリットでファクレトディノフがUFC戦績を4勝1分とした。ダルビーは連勝が4でストップ。

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【CJI】フィオン・デイヴィスの相手は、何とマッケンジー・ダーンに。ランガカー&ジョーンズレアリーも

【写真】2月のUFC298のアマンダ・レモス戦の激闘で敗れはしたが、3度目となるファイト・オブ・ザ・ナイトを獲得しているマッケンジー(C)Zuffa/UFC

18日(火・現地時間)、8月16日(金・同)と17日(土・同)の両日、ネヴァダ州ラスベガスのトーマス&マック・センターで開催されるCraig Jones Invitationalに元ADCC世界チャンピオンで、現UFCファイターの出場が発表されている。
Text by Manabu Takashima

80キロ以下&以上の2階級16人制トーナメント──優勝賞金100万ドル、出場すれば1万1ドルのファイトマネーが確約されるCJI、この発表に先立ち13日(木)には-80キロ級にトミー・ランガカーとリーヴァイ・ジョーンズレアリーの出場が明らかになっていた。


つまり欧州予選77キロから一次予選を制したジョセフ・チェンに続き、二次予選優勝のランガカーと2人の地区トップが世界大会に進まなかったことになる。対してアジア&オセアニア予選からは二次だけに出場し頂点に立ったジョーンズレアリーがCJIに鞍替え、一次優勝の岩本健汰はADCC世界大会にトライする。

この他、いわゆる中堅どころのCJI出場の発表が続く中、18日(火・同)に既に出場を明言していた女子グラップリング界のP4P=フィオン・デイヴィスのスーパーファイトの相手が、マッケンジー・ダーンになることがSNSで発表された。

2015年のADCC世界選手権では女子60キロ級を制しているマッケンジーは、UFC女子ファイターのなかでも特にタフな試合を繰り返しており、現在は連敗中だ8月3日にルピタ・ゴディネスと対戦することが決まっている。

加えて、UFC出場2週間前に2017年のADCC以来となるグラップリング戦を、そのADCCに新設された55キロ以下級で行うことが公表されていた。それが一転してCJI出場。CJIは女子トーナメントが実施されないため、女子グラップラーの転出は少ないと見られていたがデイヴィスに続き、65キロ超級で招待選手枠の1人だったギャビ・ガルシア(何とCJIでクレイグ・ジョーンズと男女マッチに興ずる)、さらにマッケンジーと3つのピナクルを失うこととなった。

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