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AB o PANCRASE Pancrase350 UFC UFC310 エイドリアン・ヤネス カマル・ウスマン ギャリー ダナ・ホワイト パンクラス フェルナンド マネル・ケイプ

UFC on ESPN63:オッズ/予想と展望

コルビー・ コビントン 3.40
ホアキン・ バックリー 1.34
カブ・ スワンソン 2.36
ビリー・ クアランティロ 1.62
マネル・ケイプ 1.28
ブルーノ・ シウバ 3.85
ビトー・ ペトリーノ 1.32
ダスティン・ ジャコビー 3.50
エイドリアン・ヤネス 2.70
ダニエル・ マルコス 1.49
ナバホ・ スターリン1.14
トゥコ・ トコス 6.00
マイケル・ ジョンソン 1.49
オットマン・ アザイター 2.70
ヨエル・アルバレス 1.24
ドラッカー・ クロース 4.30
ショーン・ ウッドソン 1.60
フェルナンド・ パディーヤ 2.40
マイルズ・ ジョーンズ 3.00
フェリペ・ リマ 1.41
ミランダ・ マーベリック 1.18
ジェイミー・リン・ ホース 5.10
デイビー・ グラント 1.91
ラモン・ タヴェラス 1.91
ジョセフィン・ クヌットソン 1.42
ピエラ・ ロドリゲス 2.95

2024年UFC終戦。以前は年末または年始の年越しに最も近い週末にイベントを開催していたUFCだが、2018年の年末大会を最後に、12月半ば~1月半ばまで1ヶ月近い年末年始休みを挟むことが恒例となっている。

メインのウェルター級トップ対決は、両者ともに、先週のUFC310の防衛戦を王者ベラルが欠場した際に、代役での暫定王座決定戦に名乗りを上げていた選手。バックリーの場合は、すでにイアン・マシャド・ギャリー戦が発表されていた。結局暫定王座戦は組まれなかったが、ノンタイトル戦とはいえ、ラフモノフ vs. ギャリーの無敗対決がUFC310で組まれ、相手がいなくなったバックリーの相手をコビントンが務めるというカードシャッフルが行われた。

暫定王者コビントンは2019年に当時の王者カマル・ウスマンと対戦し敗戦すると、その後は年1試合ペースで、昨年末にはレオン・エドワーズのタイトルに挑戦したが、特に見せ場なく判定負け。ダナ・ホワイトからも「歳をとって遅くなった」と酷評された。ここ2戦勝った相手は、いずれも年上のウッドリーとマスヴィダル。そろそろトップクラスで戦うのは厳しくなってきており、この試合で負けるようだと、タイトル戦線からは大きく外れることになる。

KOアーティストのバックリーは、ウェルター級に落としてから5連勝中。特に前戦は、キャリアで1度しかKO負けのないディフェンスの固いスティーブン・トンプソンを飛び込んでのパンチでKO。ようやくトップ10ランク入りし、今回が初のメインとなる。

加齢とブランクで反応が鈍っているコビントンに、若くスピードのあるバックリーは厳しそう。バックリーKO勝ち。

セミ前にはマネル・ケイプが登場。UFCデビュー年の2021年は4試合したケイプだが、22年・23年は1試合ずつ。今年も7月のムハンマドモカエフ戦と、この試合でようやく2試合目となる。試合消滅が多いが、自身の体重オーバーや怪我によるものもあるので、あまり強く文句は言えない。

2連敗のあと4連勝していたケイプが、今年7月にムハンマドモカエフと対戦した際には、勝った方がタイトルマッチ挑戦か?とも思われていたが、勝ったモカエフがまさかの再契約されずでリリース。ケイプとしては、負けた相手がいなくなったことで、実質負けをなかったことにできるかもと思ったが、しっかり評価が落ちて、下位ランカーとの対戦に。

相手のブルーノ・グスタボ・ダ・シウバは、UFCデビューから3戦は勝ち星がなかったが、そこから4連続フィニッシュ勝利・4連続ボーナス獲得。前戦でランカーのコーディ・ダーデンを破ってランキング入りしたばかり。軽量級ながら打撃が重く、一発で試合の流れを変えられる。ケイプとは手が合いそう。

フライ級は挑戦者候補が不足しているだけに、この試合で勝った方に、次の試合で次期挑戦者決定戦が組まれてもおかしくない。

第1試合開始は15日朝9時から。メインカードは12時から。当日は12時30分からPANCRASE350があるので、それ以降の試合はパンクラスの速報終了後になります。

 

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【UFC308】展望  このスポーツの模範ロバート・ウィティカー×危険かつ情緒不安定カムザット・チマエフ

【写真】心技体の合計点。高いのどっちだ (C)Zuffa/UFC

26日(土・現地時間)、アラブ首長国連邦アブダビのエティハド・アリーナにてUFC 308「Topuria vs. Holloway 」が行われる。新王者イリア・トプリアにBMF王者マックス・ホロウェイが挑戦するフェザー級タイトルマッチをメインとするこの大会のコメインは、元世界王者のロバート・ウィティカーとプロ無敗のカムザット・チマエフが激突する大注目のミドル級トップコンテンダーマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi

ウィティカーは2017年の7月、ヨエル・ロメロとの5Rの激闘を制してミドル級暫定王者に就くと、同年末には当時の正規王者ジョルジュ・サンピエールのタイトル返上&引退を受けて正規王者に認定された。2019年10月にイスラエル・アデサニャに敗れて王座を失ったが、その後も常にミドル級トップ戦線で戦い続けている。

昨年7月には現王者のドリキュス・デュプレッシーに2RTKO負けを喫したものの、今年に入って2月にパウロ・コスタに判定3-0で快勝し、さらに6月にはUFC無敗のイクラム・アリスケロフと対戦。1R早々に必殺の飛び込んでの右ストレートを当てると、さらに右ハイ、そして右アッパーをスマッシュヒットして圧巻のKO勝利を飾っている。


対するチマエフはこれまでプロ13戦全勝。昨年10月には元ウェルター級王者のカマル・ウスマンに判定3-0で快勝し、UFC7連勝を飾った。ウィティカーとの試合は今年の6月に予定されていたが、チマエフの体調悪化により中止となり、上述のようにウィティカーは代役のアリスケロフに鮮烈な1RKO勝利。4ヶ月後の今回、両者の試合が改めて組まれた。

UFC王者✖BMF王者という豪華メインイベントに劣らぬ注目を集めているこの一戦。その理由は何よりもまず、チマエフが途轍もなく高い戦闘能力と心身の不安定さを併せ持つ、色々な意味で目の離せない存在であることだ。そしてウィティカーこそチマエフのキャリア上最強の相手であり、今回ついにその「底」が露呈する可能性が少なくないことだ。

2020年7月、チマエフは(コロナ禍による米国入国規制に対応して開催された)アブダビのファイトアイランドことヤス島大会に登場し、ジョン・フィリップスとのミドル級戦において2Rダースチョークで圧勝して鮮烈なUFCデビューを飾った。

その10日後には同会場に行われた大会にも欠場選手の代打としてウェルター級戦=リース・マッキー戦に登場。1RパウンドによるTKOで相手を葬り去り、10日で2勝という(ワンデートーナメント廃止以降の)現代UFCにおける最短記録を──しかも2階級をまたいで──樹立してのけた。

さらにその2ヶ月後には再びミドル級戦に登場し、今度はわずか17秒でジェラルド・マーシャートからKO勝ちを収め、66日で3連勝という新たな現代UFC記録をも達成した。

結果以上に圧巻だったのがこの3戦の内容だ。最初の2戦は試合開始と同時に距離を詰めてテイクダウン。そのまま相手を逃さず強烈なパウンドや肘で削り、一方的に攻撃してフィニッシュした。3戦目も試合開始直後から前に出て、テイクダウンを警戒する相手を右ショート一発で昏倒させた。

問答無用のテイクダウン力と相手に何もさせない圧倒的コントロール力、さらに精度と破壊力を併せ持つ打撃まで備えた男が、試合開始と同時に様子見を一切せず相手に迫り、一片の躊躇もなくフルスロットルで攻撃し続け、最短距離で粉砕する──見る者全てを戦慄させる戦いを披露したチマエフは、当然のようにデビュー3連続でパフォーマンス・オブ・ザ・ナイト・ボーナスを受賞した。

その言動も超攻撃的な戦い方に相応しく、二戦目の勝利後には「俺は全ての相手を破壊する!」と絶叫し、三戦目の前には「お前の顔面を粉砕してやる」と相手を挑発すると、17秒でその通りに実行。こうしてチマエフは、UFCデビューから僅か2カ月にて世界で最も熱い注目を浴びる若手MMAファイターの座に駆け上がったのだった。

3カ月後の12月には早くもウェルター級トップランカーのレオン・エドワーズとの対戦が組まれたが、両者とも新型コロナウィルスに感染して試合は延期に。その後この試合は二度リスケジュールされたものの、チマエフの回復が遅れて実現せず。21年3月にチマエフは肺の合併症を理由にSNSで「もう終わりだと思う。みんながっかりすると思うけど、僕の心と体が僕に全てを語っている」と引退の意志を表明し、洗面台に吐いた血を写したショッキングな写真を投稿した。

が、チマエフを治療のためにベガスに呼んだデイナ・ホワイトUFC代表は、これは一時的な気持ちの揺れによるものと説明して引退を否定。実際やがて症状が改善したチマエフは、2021年10月にリー・ジンリャンと対戦した。以前同様、開始同時に距離を詰めて組みついてチマエフは、ジンリャンをリフトしたままケージの中を歩きながらケージサイドのホワイト代表に向かって「俺が王者だ! 全員殺してやる!」と叫んでからテイクダウン。そのまま強烈なパウンドとチョークを織り交ぜて一方的に攻撃し、3分過ぎにジンリャンを絞め落として破天荒極まりない復活を遂げた。

が、その後チマエフは2022年9月に大会目玉カードのニック・ディアス戦を体重超過で飛ばしてしまう。そこで急遽組まれたケヴィン・ホランド戦に圧勝すると、試合後のインタビューでは謝罪するどころか「ウェイトオーバーなんてどうでもいい! 俺は落とせたのに医者に止められたんだ!」と前代未聞の開き直りを見せた。

次戦の昨年10月の元ウェルター級王者のカマル・ウスマン戦は快勝。が、今年6月に予定されていたウィテカー戦は、キャンプ途中で原因不明の体調不良に襲われて回復せず、キャンセルを余儀なくされた。

比類なき戦闘能力とアグレッシブネス、その激しさを反映するが如き精神面健康面の脆さも併せ持ったチマエフは、「次にいつ試合するのか」、「どんな戦いを見せるのか」、「そもそも本当に試合をするのか」とさまざまな形でファンの興味を掻き立て続ける存在だ。

ちなみに近年チマエフは、米国入国に必要なビザが降りないとのことで、昨年のウスマン戦はアブダビ大会、6月に予定されていたウィティカー戦はサウジアラビアのリヤド大会、今回改めて組まれたウィティカー戦は再びアブダビでの試合となる。ビザが降りない理由は、(18歳でスウェーデンに移住した)チマエフの生まれ故郷であるチェチェン共和国の首長ラムザン・カディロフ──米国当局からは人権侵害に関与したとして入国禁止の制裁対象とされている──とチマエフがごく親しい間柄であるためだと報道されている。

実際カディロフの二人の息子にMMAを指導し、長男のデビュー戦ではセコンドに付いたチマエフは、現在も頻繁にSNSでカディロフと親しくしている写真を投稿している。当然ファンからは批判の声も挙がっているが、本人は気にかける様子もなく、冗談めかして「(ホワイト代表と親しい)ドナルド・トランプが大統領になってくれない限り、僕は米国に入国できずにUFCタイトルに挑戦できないかもしれない。でも気にしないさ。僕はどこでも戦うし、ベルトなき王者というだけだ」と語る。このような政治的事情も、チマエフの激しくも儚く、そして危なっかしいイメージを増幅させている。

そんなチマエフの前に今回立ちはだかるウィティカーは、全く対照的なイメージを纏っている。常に若者のロールモデル(模範)であることを心がけ地域貢献活動にも精を出し、対戦相手へのトラッシュトークなどは一切行なわず、誰からも好かれ尊敬される存在だ。チマエフも以前ウィティカー戦との対戦可能性について聞かれた際に「できれば別の選手とやりたいよ。ロバートは良い人間で尊敬している。もっと憎むことのできる相手と対戦して殴りたい。彼とはむしろ一緒に練習したい」と語っており、両者の間には遺恨らしきものは存在しない。

下馬評では無敗のチマエフ(ミドル級ランキングは13位)が現在ランキング3位のウィティカーより有利と出ているが、チマエフ危うしとの声も小さくない。

最大の疑問は、チマエフの一番の強みであるテイクダウン&コントロールが、ウィティカー相手にどこまで通用するかだ。ウィティカーは、これまでウェルターとミドルを行き来してきたチマエフがはじめて戦う真のミドル級の体格のトップランカーだ。2014年から10年間ミドル級で戦い続けており、ヨエル・ロメロをはじめとする何人もの強力なレスラーのテイクダウンを凌いで勝利した実績がある。

レスリングの練習に余念のないウィティカーは「私はなかなかテイクダウンされないし、抑え付けるのも困難だよ」と自信を覗かせている。試合開始と同時に暴風雨のような攻撃を繰り出すチマエフは、これまで全ての相手から1R早々にテイクダウンを奪っている。が、仮に今回同じことをできたとしても、これまでのどの対戦相手よりも高い身体の出力を持つウィティカーをコントロールし続け、フィニッシュあるいは大ダメージを与えることができるのか。チマエフの攻撃力が最大値にある1Rの攻防こそ、一番の見どころだ。

もしウィティカーがチマエフの序盤の猛攻を凌いだ場合、ウィティカー有利説のもう一つの根拠=この試合が5R制だということが大きな意味を持ってくる。ウィティカーが何人ものミドル級トップ勢と5Rフルに戦い、制しているのに対して、チマエフはジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ戦とウスマン戦で3R判定の試合を二度経験しているのみ。この二戦ともに2R以降はノンストップラッシュを控えてペースを抑え、反撃をもらう場面もあった。試合が4、5Rに突入してもスタミナが残せるのか、フタを開けてみなければ分からない。

また、長期戦になればなるほどチマエフが距離を詰めてテイクダウンを取るのは困難となり、必然的にウィティカーが望むスタンドの攻防が多くなるだろう。そこでは近距離を得意とするチマエフの拳より、蹴りを多用して距離を保つウィティカーが、遠い間合いから一気にブリッツして(=飛び込んで)放つ必殺の右が炸裂する可能性が高い。チマエフも「もしロブがテイクダウンだけを警戒するのなら、僕のライトハンドでKOされる可能性もあるよ」と打撃戦にも自信を覗かせているが、どう出るか。

チマエフは前回の体調悪化を踏まえ、今回ロシアのコーカサス山中にある五輪選手用の訓練施設オゾン・ヴィレッジでキャンプを張った。世界レベルのレスラーやコーチ陣と練習を重ね、万全の調整ができた模様だ。試合前記者会見では、五分刈りではなく自然な短髪&眼鏡を着用して登場。今までのヤンチャなイメージから一変して、物静かにしてきわめて温厚な調子で受け答えをしたこと自体が反響を呼んでいる。

長年ミドル級世界トップに君臨する超実力者ウィティカーとの対戦で、底知れぬ強さを見せてきたチマエフの底が割れる日がついに来るのか、それとも予測不可能にして危険極まりない男チマエフがまたしても世界を震撼させるのか。興味は尽きない。

■視聴方法(予定)
10月26日(日・日本時間)
午後11時00分~UFC FIGHT PASS
10月27日 午前3時~PPV
午後10時 30分~U-NEXT

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AB MMA o RIZIN UFC カマル・ウスマン キック クリス・バーネット ジョニー・ウォーカー スダリオ剛 パーカー・ポーター ボクシング

UFC on ESPN+98:第4試合・ジュニア・タファ vs. ショーン・シャラフ

ヘビー級。

当初クリス・バーネット vs. ワルド・コルテス・アコスタが組まれていたが、先月末にアコスタが欠場し、代役としてタファの出場が決定。さらに、試合3日前にバーネットがハリケーンで自宅に被害を受けたために欠場。代役で、UFCデビュー戦となるショーン・シャラフが出場する。

RIZINでスダリオ剛をKOしたタファだが、UFCデビュー後はパーカー・ポーターに1RKO勝ちしたのみで、ここまで1勝3敗。MMAの前にキックやボクシングのキャリアがあるが、UFCデビュー戦では、カマル・ウスマンの弟モハメドにテイクダウンされると何もできないことを露呈し判定負け。前戦はジョニー・ウォーカーの弟ヴォルターに、まさかの1Rヒールでタップアウト負け。28歳。

シャラフは3年前、28歳でプロデビューすると、ここまで4戦全勝で全試合1RKO勝ち。が、相手のレベルも低く、現時点で海のものとも山のものともつかない。MMAファイターになる前はアメリカ海軍に所属していた。31歳。

オッズはバーネット戦ではタファが大幅フェイバリットだったが、相手がシャラフに代わるとアンダードッグに。

間合いを詰めてパンチを打ち込んでいくシャラフ。ケージまで下がったタファに連打を入れる。タファも打ち返して出ていくとボディ・顔面にパンチを打ち返す。シャラフ意表をついたタックル。ケージをがっつり掴んで防いだタファ。レフェリーから注意が入る。シャラフまたタックル。テイクダウンしたが、倒されながら巴投げで離して押さえ込まれる前に立ったタファ。シャラフ左ボディ。三日月蹴り。カーフキック。タファもワンツーも返す。シャラフが詰めるとケージを背負ったタファ。左右のパンチからタックル。切ったタファだがヒジを入れた。タファが左右のパンチを打ち込んで出る。ブロッキングで凌ぐシャラフ。シャラフ失速してきたか。右がヒットしぐらついたシャラフ。残り1分。またカーフから左を入れたシャラフ。タファが左右のパンチを返したが、シャラフがタックルでテイクダウン。上になったシャラフ。半身になったタファにヒジ・パウンドの連打。しかしホーンに救われた。

1R終盤のテイクダウンからの攻めでシャラフ。しかし後半はスタミナ切れで動きが落ちていた。最後のラッシュでさらにスタミナを使ったが、余力はあるかどうか。

シャラフキャリア初の2R。タファがパンチを打ち込む。明らかに疲れているシャラフ。タックルも切られた。左ボディからヒジを入れたが、タファのパンチを貰いケージまで後退。タファがパンチ連打を入れるがなんとか凌いだシャラフ。タファもガス欠でガードが下がった。しかし右フックをヒットさせるとシャラフケージまで後退。右でフック・アッパーを打ち込むタファ。シャラフのクリンチは引き剥がす。タファもバテバテだが、それ以上に消耗しているシャラフ。アッパーが入りシャラフがぐらついたところでレフェリーストップ。

アンダードッグの低評価を覆したタファだが、1R終盤にテイクダウンを取られてKO寸前まで追い込まれたところを見ると、相変わらずグラウンドの穴は埋まっていない。

シャラフは序盤パンチも鋭く、今まで見せていなかったテイクダウンも(相手がタファなので割り引く必要はあるが)見せるなど、意外と引き出しが多かったが、さすがに3日前の試合決定ではスタミナがもたないか。そんなこと関係なく、もともとスタミナがないのかもしれないが。

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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC307 カマル・ウスマン キック ジョアキン・バックリー スティーブン・トンプソン

【UFC307】プレッシャーをかけ続けたバックリーが、ジャンプイン&右フックでワンダーボーイをKO

<ウェルター級/5分3R>
ジョアキン・バックリー(米国)
Def.3R2分17秒by KO
スティーブン・トンプソン(米国)

サウスポーのバックリーに対し、左回りのトンプソンはワンツーに組みつかれてダブルレッグでテイクダウンを許す。トンプソンはケージを使って立ち上がると、ワンダーボーイ・チャントの後押しを受ける。右を振るって離れたバックリーが圧を掛けるが、トンプソンはワンツーで前に出る。スリップしたバックリーが立て直し、トンプソンがハイキックを狙う。ステップインを捌き切れないトンプソンだが、右ミドルで距離を創ろうとする。構わず組んでケージにトンプソンを押し込むバックリーはボディを殴る。

このタイミングで回って距離を取り直したトンプソンは、バックリーの前進に右を合わせていく。バックリーはワンツーのコンビからダブルレッグで、テイクダウン。ヒザ立ちから起き上ったトンプソンをリリースも、常に圧をかける。回って外したトンプソンが右ハイキックを繰り出し、怒涛のダブルレッグ&ドライブにも倒されずに初回を戦い終えた。

2R、スイッチしたトンプソンが右リードフック、オーソに戻して右ショートのカウンターを繰り出す。スピニングバックキックをダッキングでかわしたバックリーが右を当てる。その右を振ってシングルに出たバックリーだが、頭部にエルボーを連打されて頭の位置を上げる。トンプソンは離れるが、ニータップで尻もちをつかされる。すぐに立ったトンプンに対し、バックリーはエルボーで流血に追い込まれているか。体を入れ替えてwんつー、離れて前蹴りのトンプソンが、カウンターで右を差す。バックリーの動きが見えてきたトンプソン、対して疲れたかバックリーの圧が弱まる。それでも左を当てたバックリーが、ワンツー、スリー&フォーで前に出て組みつくとバックに回る。

後方に倒さてたトンプソンが、即バックアップ。ここでバックリーのヒザが急所に入り、試合が中断される。直ぐに再開され、右ハイからサイドキックのトンプソンが、左ローを蹴る。と、手をマットについて左の蹴りを見せたバックリー。トリッキーな動きにもトンプソンは動じなかった。

最終回、すぐに前に出たバックリーが右フックから左フックを当てる。さらに右を振りながら前に出るバックリーに対し、トンプソンがハイキックを繰り出す。ケージに押し込まれた状態から脱したトンプソンは、右ハイをガードの上から蹴って行く。直後にパンチをふるいながらステップインしたバックリーが、まるでジャンプをするように飛び込んで右を放つ。この一発がトンプソンの顔面を捕え、勝負が決した。

勝者は「タイトルショットまであと1試合。カマル・ウスマンと戦いたい」と話した。


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45 MMA MMAPLANET o Special UFC カマル・ウスマン クレイ・グイダ コナー・マクレガー コルビー・コヴィントン ショーン・オマリー ダナ・ホワイト ネイト・ディアス ベラル・モハメッド ベンソン・ヘンダーソン レオン・エドワーズ 大沢ケンジ 柏木信吾 水垣偉弥

【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:7月 エドワーズ×モハメッド「モハメッドの良さを伝えたい」

【写真】決して派手なスタイルではない。だからこそモハメッドの試合にはMMAの奥深さが詰まっている(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾、良太郎というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2024年7月の一番──7月27日に行われたUFC 304「Edwards vs Muhammad 2」のレオン・エドワーズ×ベラル・モハメッドについて語ろう。


――7月の一番として、レオン・エドワーズ×ベラル・モハメッドのUFC世界ウェルター級選手権試合を選んでもらいました。この試合を選んだ理由を教えてもらえますか。

「僕はモハメッドの地味強感が好きというか、彼はフィジカル的にすごく優れているわけでもないし、リーチが長かったり、なにか特徴があるわけでもない。バックボーンはレスリングですが、決してエリートレスラーというわけでもなくて、そういう選手がMMAファイターとしてUFCのトップ戦線で戦っている。しかもフィニッシュするのではなくて、5Rフルに使って戦って勝つというのが非常に僕好みですね。

今回はエドワーズ相手にモハメッドの良さがすごく出ていて、こういう試合をみなさんに伝えられたらなと思って選びました。おそらくもっと派手な試合、例えばエドワーズのKO勝ちを期待したファンの方も多いと思うんですけど、僕的には見たいものを見ることが出来た試合です」

――この取材前にモハメッドのプロフィールを調べたら、モハメッドは高校時代にレスリングをやっていたくらいの経歴なんですよね。それで開始早々にモハメッドがテイクダウンするという展開でスタートしました。

「まずそこがすごく驚きました。エドワーズのここ数戦を見て カマル・ウスマンやコルビー・コヴィントンといったテイクダウンが強い相手に対して(エドワーズは)はほとんどテイクダウンを許してないんですよ。そのエドワーズ相手にモハメッドは開始早々テイクダウンをとってるんですよね。その作り方もすごく上手いですし、この最初のテイクダウンが活きて、その後のラウンドも有利に試合を進めていくので、試合の作り方の上手さも感じました。

もちろん1個1個の格闘技の技術もバランスよく使うものは持ってるんですけど、それ意外の部分での試合巧者というか、相手の心理を読むというか。そういう心理戦がすごい上手いんじゃないかなと思います。それがまさに最初のテイクダウンで、あれはほぼファーストコンタクトに近いようなタイミングでのタックルでしたが、おそらくエドワーズはああいうタックルはが来るとは思っていなかったと思います」

――結果的に最初にモハメッドがテイクダウンを取ったことで、エドワーズはモハメッドのテイクダウンを警戒せざるをえなくなりましたよね。逆にモハメッドはテイクダウンだけでなく打撃でもいけると踏んだと思いますし、まさにあの一発目のテイクダウンが25分間の試合の流れを決めたと思います。

「そうなんですよ。エドワーズはいきなり予想外のタックルに入られて、焦ってテイクダウンを取られてしまった。 それで打撃・スタンド勝負でも、モハメッドは楽になったと思うんですよね。それで1Rの終わりぐらいにモハメッドが打撃をまとめるシーンがあるんですよ。あれはおそらくエドワーズがテイクダウンを警戒して自分の打撃ができなかったところに、モハメッドがパンチを当てて、明らかにエドワーズが嫌がったんです。

ここでモハメッドは打撃で攻めるんじゃなくて、もう一回タックルに入るんですよ。で、そこでもまた1発でテイクダウンを決めました。そういった試合運びの巧さというかクレバーさ。フィッシュを狙うファイターであれば、打撃であそこまで行けたら そのまま打撃で行くと思うんですよね。でもそこで自分がやることを明確にして、打撃からテイクダウンに切り替えることが出来る。相手が打撃を嫌がって意識が上に行ったら、タックルに行くという。そこをパっと切り替えられることの凄さですよね」

――またモハメッドは上(打撃)と下(テイクダウン)の散らしが絶妙ですよね。

「僕もモハメッドのテイクダウンの何がいいのかを考えて、僕は理由が2つあると思うんですよ。まず1つは位置取りですよね。モハメッドはたまにスイッチを使いながら、 ナチュラルに相手にケージを背負わせるんですよ。それで相手のバックステップを殺しておいて、パンチかタックルの2択にして、パンチを散らしてタックルって入っていますよね。あともう1つは左手=前手の使い方がすごく上手いです。ジャブだけじゃなく、アッパーも打ったり、左のパンチを散らすことができる。その2つの要素がモハメッドの試合の作りにすごく関係している気がします」

――エドワーズからすると知らないうちにケージに詰められていて、打撃を散らされてテイクダウンに入られていたわけですね。

「おそらく打撃の1発はそんなにないと思うんですよね。いざ打てば強いかもしれないですけど、そういう打ち方をしていない。相手としては(モハメッドのパンチを受けて)これなら大丈夫かなと自然にステップしていたら、いつの間にかケージを背負っていって『あっ!』と思った時には、目の前で左のパンチを散らされている。今度はそれを鬱陶しいなと思ったら、タックルに入られているみたいな。そういう作りが完成されている気がします」

――技術的なところで言えば、股下で腕をクラッチして相手を持ち上げるテイクダウンが目立っていました。

「僕はあれをクレイ・グイダ・スローと呼んでいるんですよ。クレイ・グイダがネイト・ディアスを投げた時の技があれだったので(笑)」

――確かにクレイ・グイダがやっているイメージがあります(笑)。

「ハイクロッチから股下でクラッチして持ち上げる技なんですけど、あれはサクラバアームロック(キムラロック)を取られた時のカウンターでやると有効なんですよね」

――モハメッドはバックを取った時でも、すぐに両足フックせずにレスリング的なコントロールで上手く時間を使っていました。

「時間の使い方もすごい上手いですよね。バックキープはしつつも、あまりそこには固執せず。下になったシーンもありましたけど、基本的にはもう1回上を取りに行っている。あの辺りのポジションコントロールも、いい意味でフィニッシュにこだわりすぎていない。 本人もインタビューで言っているように、ドミネイトして制圧して強さを見せることが好きなんでしょうね。僕もそういう戦い方は好きですね」

――しかもそういった試合運びをエドワーズにやったことがすごいと思います。

「エドワーズはウスマンやコビントンのテイクダウンを切って、逆にテイクダウンするぐらいの選手なので、このレスリング力で、あの打撃があったら、なかなか崩せる選手はいないだろうなと思っていたところで、モハメッドが開始早々にテイクダウンを取って。モハメッドがMMAというものを見せてくれた感じがして、すごくよかったです」

――年齢的にも36歳での王座戴冠でした。

「階級がウェルター級なので、軽量級よりも多少は競技寿命が長いと思うのですが、身体能力に頼った戦い方ではないですよね。反射神経や瞬発力に頼らず、試合運びや駆け引きを武器として戦ってる選手なので、基本的な技術プラス試合作りが上手いですよね。その試合作りで言うと、3Rにエドワーズにバックを取られた時点で、僕はモハメッドがラウンドを捨てたような印象があるんですよ。このラウンドを取られてもいいから、体力回復にあてよう、みたいな。だから僕は5Rこそモハメッドの良さが出る気がしています」

――ポイントを計算できるからこそ、そういった戦い方もできる、と。

「3Rも最初はモハメッドが攻めに行って、スクランブルの攻防でバックを取られちゃって、その瞬間に、フィニッシュさえされなければいいやと思ったんじゃないのかなと。僕は見ていてそう感じていて、そういったラウンドを捨てる潔さもいいなと思いました。

例えなハビブ(・ヌルマゴメドフ)の過去の試合を見てみると、試合中に休むんですよね。1・2Rを明確に取ったら3Rは休む、みたいな。ただハビブの場合はポジションを許して休むのではなくて、攻めのテンションを一旦落ち着けて休むみたいな戦法で。モハメッドの場合は先に攻めたんだけど、守勢に回る展開になって、そこで休むことを選択したように見えました。そこでの切り替えの良さというか、すごくクレバーだなと思いましたね」

――なるほど。3Rはサブミッションさえ凌いで休めればいいという判断だったんですね。

「僕はそう思いました。バックを取られて相手に首を絞められたり、うつ伏せで潰されてしまうとダメですが、モハメッドのようにエドワーズを下にして、自分が天井を見ているような状態でバックを取られている分には強い打撃をもらうことはないと思うんです。

だからダメージもそんなに受けないし、サブミッションだけ気をつけていれば意外に疲れないのかなと。もちろん寝技が超一流の相手にバックを許して休むのは危険ですけど、エドワーズからはそういった危険を感じなかったと思うんですよね。だから一本を取られないようにディフェンスして、休もうという感覚もあったのではないかと思います」

――少し話題はずれますが5Rにモハマッドがバックを取っていて、最後の最後にエドワーズが正対して肘で流血させたじゃないですか。ああいう展開でエドワーズにポイントが入ることもありえそうですね。

「それはあると思います、ダメージ重視の視点でいくと」

――バックを取られて相手に攻めさせないで守るというのも戦法の一つとしてありえるのかなと思いました。

「自分と相手の技量を比べて極められない自信があって、ポイント的にもリードしているという、非常に限定されたシチュエーションにはなりますけど、5Rマッチであればそういう選択もありなのかもしれません。

もちろんモハメッドがバックを取られた状態から粘るのが得意だったのかもしれないし、その辺も含めて自分が持ってる引き出しと使い方、それを完全に熟知して戦っていると思います。ずば抜けて特別なものを持った選手ではないけれど、自分が持っている引き出しをどう使えばいいかを分かっている。だから勝つ。そういう選手なんだと思います。僕もそういう戦い方をしたかったので、モハメッドにはすごく惹かれますね」

――今のUFCチャンピオンの顔ぶれを見ると、また新たな個性を持ったチャンピオンが誕生しましたよね。

「ぶっちゃけ人気は出ないと思うんですよ(笑)。PPVが売れなくて、ダナ・ホワイトがキレる姿を想像しちゃいますけど、間違いなく通好みの選手ではあるので。MMA好きはチェックすべき試合、選手だと思います」

――確かに派手さはないかもしれませんが、例えば選手サイドからすると参考になる点が多い選手かもしれませんね。

「この企画でも以前話したことですが、教科書にしていい選手としちゃいけない選手がいて、ショーン・オマリートやコナー・マクレガーを真似するのは相当難しいと思うんです。そういう選手に憧れる気持ちは分かりますが、僕のような凡人が(笑)憧れる選手、見本とする選手は今回のムハマッドだったり、僕は結構ベンソン・ヘンダーソン戦い方が好きだったんですけど、そういう真似できる可能性がある選手を見るべきだと思いますね」

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UFC on ESPN60:第1試合・モハメド・ウスマン vs. トーマス・ピーターセン

ヘビー級。

ウスマンは2022年のTUF30ヘビー級ウィナー。TUF後もジュニア・タファ、ジェイク・コリアーに判定勝ちしたが、前戦のミック・パーキン戦はカーフを効かされ、攻撃が単発で見切られるようになり判定負けでUFC初黒星。元ウェルター級王者カマル・ウスマンの弟で、兄同様レスリングがバックボーン。ここまで3勝1敗だが、試合内容を見る限り、スピードやスタミナはトップ選手になるには不足している。35歳。

ピーターセンはローカルイベントで全KOし、昨年コンテンダーシリーズで勝利してUFCと契約。今年2月のデビュー戦ではUFC1勝1敗のジャマール・ポーグス相手に前半はシングルレッグでテイクダウンして攻めるも、後半はスタミナ切れでテイクダウンが奪えなくなり判定負け。バックボーンはレスリング。29歳。

オーソのウスマンにピーターセンはサウスポー。パンチから首を抱えたピーターセンだが、ウスマン引き剥がした。詰めていくピーターセン。パンチを入れながら下がるウスマン。ピーターセンパンチで出てワンツーがヒット。距離を取るウスマン。ピーターセンタックルで突っ込んだ。受け止めたウスマンのボディにヒザを入れ離れる。またパンチで出たピーターセン。首相撲。引き剥がして離れるウスマン。残り1分。またパンチを打ち込み組み付いたピーターセン。引き剥がしたウスマン。ホーン。

1R手数でピーターセン。

2R。また詰めるピーターセン。左がヒット。ウスマンもジャブの手数を出してきたが、また左をもらう。1Rとは違い下がらないウスマン。セコンドの指示か。アッパーから飛び込んだピーターセン。ウスマンもパンチを返したが、ピーターセンが飛び込んでタックルに。テイクダウン。体を起こして立とうとしたウスマンを押さえ込む。ウスマン亀になり立った。ピーターセンがバッククリンチからテイクダウンを狙ったが、引き剥がして離れたウスマン。またパンチで出たピーターセン。ジャブを入れるウスマンにピーターセンは左ミドル。残り20秒でシングルレッグに入ったウスマンだが切られる。ピーターセンが飛び込んでパンチの連打をヒット。ホーン。

2Rもピーターセン。

3R。詰めてパンチを打ち込むピーターセン。ウスマンも下がらずに手数を出していくが、やや疲れが見える。パンチも大振り気味に。ピーターセンも疲れで手数が減っている。ピーターセンのタックルを切ったウスマン。残り1分。ピーターセンの左がヒット。さらにジャブを打ち込む。残り30秒を切ったところでピーターセンタックル。テイクダウン。パウンドを打ち込むピーターセン。ウスマン下で抜け出せないままタイムアップ。

三者フルマークでピーターセン勝利。

ウスマンはUFC0勝1敗のピーターセンに完敗で2連敗。計量で110kgなく、体格差もあった。かといってスピードがあるわけでもない。体格的にはライトヘビーが適正か。落としても通用するかは微妙だが…。

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お蔵入り厳禁【Special】月刊、大沢ケンジのこの一番:10月 チマエフ✖ウスマン~のミドル級戦線

【写真】既にミドル級に転向していたチマエフは、パウロ・コスタの代役出場となったウスマンより心身ともに優位にあったとはいえ……(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Shojiro Kameike

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は何と大阪ケンジ氏が、水垣偉弥氏と同様に2023年10月の一番として、10月21日に行われたUFC294におけるカムザット・チマエフ×カマル・ウスマン戦をチョイス。

お蔵入り厳禁。メディアとしてご法度の同じマッチアップから今後のUFCミドル級戦線──『ショーン・ストリックランドとチマエフ、もし戦わば……』というトピックを語らおう。


――今回もよろしくお願いいたします。まずは大沢さんが選んだ2023年10月の一番を教えてください。

「カムザット・チマエフ×カマル・ウスマンですね。あれ、ヤバくないですか!」

――10月21日(現地時間)、UFC294でチマエフがウスマンに判定勝ちを収めた試合ですね。もうUFCの試合時間が5分3Rでは足りない、5分5Rを標準としたほうが良いのではと思わせるぐらい動き続けていました。

「本当にそうですね。5分3Rをずっとアタックし続けても、まだ体力が余っているぐらい(笑)。だからこそ、2Rにチマエフが攻めなかった理由が分からなくて」

――チマエフにしてみれば、ウスマンのほうがもっと出て来ると思ったのか。あるいはウスマンが終始チマエフの足を触る、つまりテイクダウンを狙っていたので警戒していたのか。

「確かにチマエフは警戒していたと思います。ただ、チマエフのほうも触ったら即倒せるようなテイクダウン力を持っているじゃないですか。1Rはタイミングで倒した要素もあるとは思うけど、あの展開の中で『完全にコントロールできる』と考えたはずですよね。でも2Rはチマエフが攻めず、ジャッジ2人がウスマンにつけていて」

――1Rはジャッジ3者とも10-8でチマエフのビッグラウンドとし、2Rは2者がウスマンの10-9。そして最終ラウンドはジャッジ2人がウスマンにつけるという採点結果でした。

「3Rは微妙なところでしたよね。ウスマンも寝かされていたけど、チマエフにはついていない。それでも何が凄いかっていうと、今までレオン・エドワーズ戦(今年3月、ウスマンが判定負けでベルトを失う)しか背中を着かされたことのないウスマンに対して、チマエフが相手の良いとこを出させずに組みで勝った。

しかも1Rは遠い距離から入って、足を掴んでから2度3度動かれても、しっかりとバックを取った。『とんでもなく組みの強いヤツが出て来た』と思いましたよね。本来、スタンドのバックコントロールから、背中に張り付いてバックマウントを奪いに行くとか。そういうことができないと、あの状態からテイクダウンディフェンスが強い相手を倒すって難しいんです。何といっても相手はウスマンですからね。そのウスマンを相手に、何度も何度も足を入れながら崩していく。ミドル級なのに軽量級のファイターが見せるような組み技の細かさで」

――ケージ際でバックを奪いながらも、展開できずに離れる選手は多いです。スタミナをロスしないためには、必要な戦術だと思います。軽量級でもそのような攻防が多いのに対し、チマエフはミドル級でもあれだけアタックし続けているのが驚きです。

「僕も、スタンドのバックコントロールが巧くない選手に対しては『そこで勝負せずに、離れ際だけ注意して離れろ』と言ったりします。しかもウスマンは、その際の処理がメチャクチャ巧い。なのに、そのウスマンが警戒して組みの対処が後手に回っている。勝負せずに相手の組みを受け入れて、そこからどうしようかと考えているような感じでしたね。あの展開で3Rをウスマンにつけるジャッジがいるんだってことにも驚きましたけど、そんなことは関係ないほどの衝撃を受けた試合でした」

――ウェルター級以上で、あれほど細かい組み技を見せる選手が増えると、日本人ファイターはどうなってしまうのでしょうか。

「中量級以上で戦っている日本人選手がどうなるか、ということですよね。それは難しいんじゃないですか。ただでさえ軽量級に比べたら中量級以上の選手層が薄い日本で、チマエフほどの細かい技術を持つファイターを生み出すのは――。岡見勇信みたいに、一人だけ世界のミドル級で戦える選手が突然出て来ることもあるし、一概には言えないですけどね」

――チマエフが飛び込むスピードも、ミドル級の中では速すぎるように思いました。

「ミドル級では抜けているスピードですよね。一方で、打撃は少しディフェンスが甘い。ただ、ウスマンの左ジャブだから食らってしまう――というのはありますけど」

――チマエフの登場で、今後のUFCミドル級が大きく動きそうですね。

「ミドル級はイスラエル・アデサニャがトップどころを一掃して、そこにアレックス・ペレイラ(※取材後の11月11日にUFC世界ライトヘビー級王者に)とストリックランドが出て来た。そこにチマエフが現れて……誰が勝てるかなぁ。

チマエフは体格も理想的なミドル級だし、打撃も綺麗なジャブとストレートを打つ。スイッチもできる。しかもチマエフって、MMAを始めたのは最近ですよね。2018年までレスリングをやっていて、その少し前——2017年あたりからアレクサンダー・グスタフソンのジムで練習し始めたとか。5年であれほど打撃ができるというのも、レスリングとバランスの良さがあってのもので」

――チマエフのアドバンテージとして、バランスの良さと圧の強さがあると思います。打撃の攻防の中で、ウスマンがハイを見せながら体勢を崩しました。それだけチマエフのプレッシャーが強かったのではないかと。

「ウスマンって相手と向かいあったらすぐにジャブを出すし、テイクダウンにも行く。それだけアタックの回数が多い選手なのに、2Rは――チマエフもそうですけど、ウスマンのアタックは少なかった。あのウスマンが引くぐらいの圧なんだろうなって思います。

チマエフはヌルマゴ(カビブ・ヌルマゴメドフ)に近いタイプかもしれませんね。ただ、ヌルマゴのほうが早く組みに行く。チマエフは結構、打撃の攻防をやりますから。今の時点で組みの力は図抜けているので、打撃も含めてこれから成長していくと、どこまで強くなるんだろう?』と思わせるファイターです」

――チマエフは現在ランキング9位です。まだ先の話ではありますが、現世界ミドル級王者のショーン・ストリックランドと対戦した場合は……。

「そういえばDJがインターネットのインタビューで、ウスマン戦を視て『チマエフの弱点が見えた』というようなことを言っていたんですよ。ショーン・ストリックラウンドのようにアタックの回数を多くして、ガス欠を起こさせたら――と。でもガス欠を起こさせたとしても……ですよね。

ウスマンがスクランブル出場であったとしても、あれだけチマエフはテイクダウンできたわけですよ。少しでも触ったら倒せる。だからもしチマエフがベルトを獲ったら結構な長期政権を築くんじゃないのかな、とも思っています」

――ストリックランドの圧に対しても、チマエフはウスマン戦と同じ展開に持ち込めるでしょうか。

「どうでしょうね……。まずストリックランドのジャブと前蹴りに対して、正面に立つのは嫌ですよね。しかも自分に考える暇も与えず、ストリックランドが攻めてくる。1Rは攻めあぐねたとしても、2R、3Rと猛追してくるじゃないですか。それができるのって、テイクダウンディフェンスと立ち上がる技術があるからで。ただ、チマエフもストリックランドを相手にしても触れば倒せると思います。そこからストリックランドが立ち上がることができるかどうか。今のUFCミドル級でも、チマエフの組みから逃れることができる選手は見当たらないから楽しみですよ」

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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:10月 ウスマン×チマエフ「スタンドのバックキープは山の五合目」

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2023年10月の一番──10月21日に行われたUFC294でのカマル・ウスマン×カムザット・チマエフ戦について語らおう。

――取材がギリギリになって申し訳ありません!10月の一番として、水垣さんにはUFN228でのカマル・ウスマン×カムザット・チマエフを選んでいただきました。

「まずチマエフはまだ底を見せ切れていないというか、ギルバート・バーンズ戦で大分見えていた部分もあったけど、最終的には競り勝った。では本来の階級は下だけど、ウスマン相手にチマエフの実力がどうなのかを見たいという興味がありました。あとはテイクダウンされないウスマンと最強のテイクダウン技術を持つチマエフが戦ったらどうなるのかなという好奇心もありましたね」

――いざ蓋を開けたらチマエフが開始早々テイクダウンしてバックを取るという衝撃的な展開でした。

「あれはビビりましたね(笑)。改めて見直すとチマエフがテイクダウンしてバックを取るまで1分くらいなんですよ。あの攻めの速さは尋常じゃないです。ただ2Rになるとチマエフがテイクダウンにいけなくなるんですよ。少し休みながら戦っているようにも見えて、もしかしたら1Rにテイクダウンとバックは取っていたけど、あの攻防のなかで『今までの相手とは違う』という感覚があったのかもしれないですね」

――意図したものかどうかは分からないですが、1Rと2Rのチマエフは別人のようでした。

「そこがまだチマエフの分からないところなんですよ。スタミナが切れてしまったのか、あえてそうしたのか。3Rに入ると何度かテイクダウンに成功しているし、結局チマエフの全貌が分からない(笑)」

――3Rはウスマンのパンチも当たりだしたので、このままウスマンが前に出て、チマエフが弱気になると思ったんです。そうしたら打撃でも打ち返していましたよね。

「それはバーンズ戦でも感じたことで、僕はチマエフは試合終盤の競り合いになったら弱気になるタイプだと思っていたんですよ。でもバーンズ戦はそういう競り合いでも勝負強さを見せたんですよね。今回も2Rを見終わって、3Rはこのままウスマンの流れるになるかなと思っていたら、最後はチマエフが盛り返して勝っている。2試合連続ちゃんと競り勝っているわけだから勝負弱くはないと思うんですけど、1Rの圧倒ぶりからすると、もっと圧勝できる気もするじゃないですか。でも最終的に接戦になってしまっているので『結局、チマエフどうなの?』と思われてしまいますよね」

――そんな謎多きチマエフではありますが、シングルレッグからテイクダウンしてバックコントロールという流れは素晴らしかったです。ここ最近のロシアや中央アジア出身の選手が得意にしているムーブです。

「シングルレッグ、テイクダウン、相手が立ってきたらバックキープ、仮に立たれてもスタンドでバックをとる、そこからテイクダウン……この流れが完全に出来上がっていますよね。チマエフはハビブ軍団とは別チームなので指導者やトレーナーが同じということはないと思うんですけど、あの地域のレスリング系の選手の技術体系や動きが似ているというのは不思議な部分ではあります。これは推測ですけど“組み伏せて殴る”ことを突き詰めていくと、バックコントロールに行きつくんじゃないですかな、と」

――スクランブルの攻防が増えて、組みの展開で選手が立つという選択をするようになった。グラウンドで両足をフックする柔術的なバックコントロールよりも、レスリング的な足をフックしないバックコントロールの時間が長くなっていることも影響していると思います。

「その方が殴りやすいというのもあるでしょうね。あとは立たれるリスクもあるけれど、スタンドでバックについていればOKという感覚もあると思うんですよ。立たれて正対されるのはダメだけど、バックについていれば仕切り直しできるみたいな」

――スタンドのバックキープがイーブンではなく有利な状況ということですね。

「山登りでも五合目にベースキャンプを置いて、登山途中に天候が悪くなったら一旦ベースキャンプに引き返すじゃないですか。そのベースキャンプがスタンドのバックキープというか。テイクダウンして完全にバックコントロールするのがベストだけど、その攻防で自分が下になる・立たれて距離を取られるリスクがあるなら、立たせてバックキープする方がいい。スタンドのバックキープは6:4で有利だけど、正対されたら4:6で不利になる。だから6:4で有利でいられるところまで戻されることはよしとする感覚なんだと思います」

――なるほど。“立たれた”ではなく“立たせた”という見方もできる、と。そう考えるとポジショニングの概念も選手のファイトスタイルや技術によって変わってきますね。

「もちろんスタンドのバックキープからテイクダウンする&組み伏せる技術ありきですが、彼らにとってはグラウンドのポジションキープよりも体力の消耗も少ないんだと思います。そこまで展開に幅を持たせることが出来たら体力的にも精神的にも余裕を持てますよね」

――逆にショートノーティスで出場が決まって、本来はウェルター級ながら、ミドル級のチマエフとあれだけ出来たウスマンの強さも再確認しました。

「チマエフのテイクダウンを切って、捌くところは捌いてましたからね。UFCは試合中にテイクダウンの成功率が出るじゃないですか。確かにテイクダウンを取られてはいるんですけど、防いでいると言えば防いでいる。その数字は『あれだけチマエフのテイクダウンを防いだウスマンはすごい!』なのか『結果的にウスマンからテイクダウンを取っているチマエフはすごい!』なのか。チマエフが未知数な部分を残している分、どっちなんだろうなと思ってしまいますね(笑)。もちろんウスマンをテイクダウンするチマエフの能力はすごいですんですけど」

――チマエフは前回の試合が13戦目ですし、まだまだ伸びしろはありそうですね。UFC自体も完成された選手が集まるというより、UFCで戦っていくなかでキャリアを積んで伸びていく選手たちが増えそうです。

「例えばDWCS(Dana White’s Contender Series)から無敗のまま上がってくる選手もいますけど、正直『えっ?』と思うような選手もいるんですよ(笑)。でも今のUFCはそれもありというか。戦績がいい選手を30~40選手くらい集めて、その中にダイヤの原石が1人いればいいという考えで、昔と比べるとふるいのかけ方が変わってきているんだと思います。とりあえず戦績がいい選手を数で集めて、UFNのアンダーカードで削って行くみたいな」

――以前は他のプロモーションで勝ち上がった選手がUFCを目指していましたが、今はUFCというプロモーション自体がもう一つ大きなふるいを持ったイメージですよね。それがRoad to UFCやDWCSでもあると思いますし。

「とりあえず履歴書を送って、書類選考は通過みたいな(笑)」

――まずはバイトから始まって正社員まで険しい道のりが続く、と(笑)。言い方を変えれば間口が広がった分、UFCに引っかかる可能性やチャンスは増えましたよね。

「まだDWCSに日本人が出る機会は少ないですけど、木下憂朔選手の例もありますからね。ただそれは他の国にも言えることで、アジア圏でも色んな国から選手が出てきているじゃないですか。来年はUFCとしてインドから選手を育成するプログラムをスタートさせるという記事も見ましたし、Road to UFCに出ている選手たちも1年間で急成長していますからね」

――UAE Warriorsに参戦中の藤田大和選手を取材したのですが「国全体でMMAが盛り上がっている空気を感じるので、これからすごい選手が出てくる可能性もあると思います」と話していました。

「UAEWやBRAVE CFを経由してUFCに出る選手たちは一味違いますよ。あとはムハマド・モカエフのようにIMMAFに出ている選手たちは、アマチュアだけどめちゃくちゃレベルが高いところで試合をしてきているから、先ほどとは逆で『この強さでこの戦績?』と驚くような選手も出てきますよね。MMAという競技の発展という意味では、そういった動向も見ていきたいと思います」

――もしかしたら数年後にインドやUAEがMMA大国になっているかもしれない。そんな言葉で今月の一番を締めさせていただきます!

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『UFC 294』カムザット・チマエフ vs. カマル・ウスマンを見たファイター・関係者の反応

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 『UFC 294: Makhachev vs. Volkanovski 2』カムザット・チマエフ vs. カマル・ウスマンを見たファイター・関係者のSNSでの反応。続きを読む・・・
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『UFC 294』カムザット・チマエフ vs. カマル・ウスマンのジャッジの採点/主要サイトの採点

採点者の心をつかむ 合格する小論文の書き方


Khamzat Chimaev defeats Kamaru Usman(MMA Decisions)

 『UFC 294: Makhachev vs. Volkanovski 2』カムザット・チマエフ vs. カマル・ウスマンのジャッジの採点。Derek Clearyが1Rチマエフ10-8、2Rウスマン、3Rチマエフで29-27チマエフ勝利。David Lethabyが1Rチマエフ10-8、2,3Rウスマンで28-28ドロー。Vito Paolilloが1Rチマエフ10-8、2Rチマエフ、3Rウスマンで29-27チマエフ勝利でした。

 主要サイトの採点は30-26チマエフ支持1人、30-27チマエフ支持3人、29-26チマエフ支持1人、29-27チマエフ支持11人、29-28チマエフ支持5人、28-28ドロー支持4人、28-29ウスマン支持4人でした。続きを読む・・・