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【ADCC2024】レポート─01─それでも激熱=77キロ級で、元柔術の神の子ミカがPJパーチに苦戦も決勝進出

【写真】ある意味、ADCCの権威を守ったといえるミカの出場。そして、しっかりと決勝進出を決めた(C)SATOSHI NARITA

8月17日(土・現地時間)と18日(日・同)の二日間にわたって、ラスベガスのT-モバイルアリーナにて、世界最高峰のグラップリングイベントであるADCC世界大会が行われた。今年は既報のように、破格の賞金100万ドルを掲げて日時と場所をあえて重ねて開催してきた対抗団体クレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル(CJI)に多くの有力選手を奪われた形となった。
Text by Isamu Horiuchi

それでも世界の強豪が集まった今大会の中でも最注目と言える、77キロ以下級の前半ブロックの準決勝までの模様をレポートしたい。

この階級の最注目選手は、当然ミカ・ガルバォンだ。2022年の前回大会はケイド・ルオトロに敗れて準優勝に終わり、その数ヶ月前にタイ・ルオトロを倒して最年少で制覇したはずの世界柔術のタイトルも、禁止薬物の使用発覚によって剥奪されてしまった。

驚異的な強さの秘密の一端が神から与えられた才能ではなく、人工的な薬物だったことが明らかとなった以上、「柔術の神の子」という渾名は使いにくい。(ちなみに本人はこの件について、ハードトレーニングに起因するテストステロンの減少の治療に、医者が禁止薬物を使用してしまったせいだと説明している)

それでも昨年は主にWNO等のプログラップリングで活躍し、変わらぬ強さを見せ続けたミカは、今年になってIBJJF系の大会にも復活。ヨーロピアン、パン、ブラジレイロ、世界柔術とミドル級を全制覇し、このADCC世界大会はいわゆる「スーパーグランドスラム」達成が賭かったものとなる。宿敵ケイドがCJIを選択してここにいない今回、20歳のミカが飛び抜けた優勝候補筆頭だ。


そんなミカの一回戦の相手は、ブラジル予選勝者のルイス・パウロ。ミカとは練習仲間でもある選手だ。シングルレッグで右足を掴ってから、あえて下になってのフットロック狙いを見せたミカは、それを凌がれた後も支え釣り込み足等を積極的に仕掛けてゆく。

さらに飛びつきガードも見せたミカは、下から腕や足を狙ってゆき、さらに後転してシングルレッグに移行して上に。場外に出て抵抗を試みるパウロから流れるような動きでバックを奪ってみせた。ここからミカは相手の右腕を右足で押さえて封じると、左手で相手の左手首をコントロール。こうして両手を封じた後、残った右腕でワンアームチョークに。わずか3分06秒、ミカが流石の技の切れ味を見せつけた。

続く準々決勝でミカは、技師オリバー・タザと対戦。初戦でヴェテランのダヴィ・ハモスをわずか55秒、前転からのヒザ十字で仕留めて勢いに乗るタザだったが、ミカは序盤からニータップでテイクダウンからパス、マウントへと移行し腕を極めかける等圧倒する。

そして5分経過して加点時間帯を過ぎた後、スタンドで足を飛ばしてタザを崩したミカが、背後から飛びついてグラウンドに持ち込んで先制。その後も立ち、寝技どちらも終始優勢に試合を進めたミカが、バックやマウントでポイントを重ねて8-0で勝利。順当に準決勝進出を果たした。

もう片方の山の一回戦では、ポーランドの足関節師マテウス・シュゼシンスキが大会常連のゲイリー・トノンと対戦。6月のポラリス28では、リーヴァイ・ジョーンズレアリーに競り勝ち勢いに乗るシュゼシンスキが、延長でオープンガードから一瞬で抱え十字を極めてみせた。

そのシュゼシンスキは続く準々決勝で、前回大会にて当時の絶対王者だったJTトレスを倒して世界を驚かせた10thプラネット柔術のPJ・バーチと対戦。得意のオープンガードで互角に渡り合ったシュゼシンスキは、加点時間が過ぎた後にスイープで上になりかける。が、場外側でバーチにスクランブルされてブレイクが入り、試合が(バーチの土俵である)スタンドから再開されてしまうという不運に見舞われてしまう。

結局、残り1分でダブルレッグを仕掛けたバーチが、シュゼシンスキが仕掛けてきたギロチンから頭を抜いて先制点を奪い、2大会連続の準決勝進出を決めた。

<77キロ以下級準決勝/10分1R・延長5分>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def. Referee’s decision
PJ・バーチ(米国)

前回大会準優勝のミカと、4位のバーチ。その時は顔を合わせなかった両者だが、その後昨年のWNO 20におけるウェルター級王座決定トーナメントの決勝で対戦が実現し──僅か45秒でミカの跳び抱え十字が炸裂して一本決着している。ミカの尋常でない極めを体感したバーチは、今回どう挑むのか。試合開始後いきなりシングルを仕掛けたミカ。右足を取るがバーチは片足立ちで堪えて抜く。さらにミカはダックアンダーやシングルを仕掛けるがバーチが凌ぐ。

3分を経過した時点で、これまで守っていたバーチが首を取り合う状態からミカを捻って崩すと、そのまま回り続けて最初のテイクダウンを奪ってみせた。

ハーフからクローズドを作ったミカが下から仕掛けるが、バーチは固くワキを締めて守る。やがて試合は加点時間帯に。ミカはシッティングから逞しい脚をシザースイープのような形で使ってバーチを崩す。

そのままがぶってみせたミカは、倒れ込みながらのギロチンへ。しかしバーチは強靭な首で耐えて姿勢を崩さず、やがて頭を抜いてみせた。

残り3分。下のミカに対して右でワキを差したバーチは右ヒザも入れてニースライスに。ミカは左足で跳ね上げようとするが不発で、バーチがヒザを抜く。ピンチに陥ったミカはすかさず背中を向けて凌ぎ、さらに向き直る際に足を絡めてハーフに戻す。

ワキを差して胸を合わせているバーチは再びニースライスを狙うが、ミカが足を入れてバタフライに戻してみせた。

難を逃れたかに見えたミカだが、残り20秒のところでバーチが両ワキを差し、3点倒立の姿勢でニースライスの形を作る。上半身を完全に制して侵攻するバーチは、残り10秒でニアマウントまで持ち込み、残り1、2秒のところでついに足の絡みを解いてヒザを抜いたバーチが完全マウントを達成…したところで本戦終了を迎えた。

バーチ大殊勲の勝利かと思いきや、ポイントが成立するにはポジションを安定させてから数秒必要ということで、スコアは0-0のまま。試合は延長戦に持ち込まれた。それにしても、これまで階級上の世界王者たちを相手にした時でさえ鉄壁であり続けたミカのガードが、同体格のバーチに完全攻略されかけた場面は衝撃的だった。

延長戦。一つの失点が命取りになるとあって、両者譲らないスタンドの攻防が続く。バーチがシュートインを試み、ミカも積極的にアームドラッグ等を仕掛けるが崩し切るには至らない。

このままでは敗色濃厚のミカは、残り15秒のところでシングルからドライブ。

バーチに切られて腹這いになるミカだったが、次の瞬間体を起こしてワキをくぐって背中に回る。

ミカはここから瞬く間に飛びついてグラウンドに持ち込む。

残り10秒を切る中、ミカは柔軟な股関節を使ってまず左足をフックし、残る右足も入れようと試み、バーチがそれを手で凌ごうとしている時に試合終了。まだ完全にバックグラブの体勢に入り切っていないということで、ここはノーポイント。試合はレフェリー判定に持ち込まれた。

本戦終了寸前にマウントポジションの形を作り切ったバーチと、延長終了寸前にテイクダウンからバックグラブ狙いまで持ち込んだミカ。予想が難しい判定は…ミカに挙がった。

これはバーチにはなんとも気の毒な判定だ。試合終了寸前のミカのバック狙いよりも、本戦終了寸前のバーチのマウントの方がはるかにポイント獲得/完全制圧に近かった。加点時間前に見事なテイクダウンを決めたのもバーチのほうだ。前戦での秒殺負けを経て、今回は隙のない試合運びを見せながら、要所で有効な攻撃を繰り出して互角に渡り合った。さらに桁外れの攻撃力を持つミカのガードを正面突破するという、世界の同階級の誰もなし得ないような偉業を成し遂げる寸前まで迫る、出色の──おそらくキャリア最高の──パフォーマンスだった。

とはいえ、敗色濃厚だったこの試合にて、最後の最後で見事な瞬発力を技のキレをもって大反撃を見せて強引に勝利を引き寄せたミカもまた、改めてその非凡さを見せつけたと言える。人工的な手段に現在も頼っていようがいまいが、やはりこの選手は柔術の神から──ついでに審判からも──特別な愛を受けている…とこちらが思ってしまうような形で薄氷の勝利を得たミカが、昨年に続いて決勝進出を決めた。

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MMA MMAPLANET o YouTube ウィリアム・タケット オリバー・タザ ジョセフ・チェン トミー・ランガカー 岩本健汰

【ADCC2024 European Trial01】ジョセフ・チェンが77キロ級を制し、初の世界大会出場を決める!!

【写真】危なげないといっても過言でない戦い振りで、世界大会出場を決めたジョセフ・チェン。11月25日にはオセアニア・アジア予選が実施される (C) FLO GRAPPLING

16日(土・現地時間)、ポーランドのワルシャワにあるアレナ・ウルシヌフ・ホールで第一次ADCCヨーロピアン予選が行われ77キロ級でジョセフ・チェンが優勝を果たしている。
Text by Takashima Manabu

台湾人の父と南アフリカ系ドイツ人の母を持つジョセフは、ドイツのパスポートを保有しており、中東及びアフリカ諸国のグラップラーも出場できるヨーロピアン・トライアルに出場した。


ジョセフは1回戦で昨年のADCC世界大会でウィリアム・タケットをストレートフットロックで破ったマテウス・シュゼシンスキと対戦し、序盤から代名詞といえる上攻めを続ける。シュゼシンスキに足関節をセットさせなかったが、本戦7分で足を越すこともできず試合は3分間の延長戦へ。

ジョセフは小内刈りからダブルレッグで尻もちをつかせ、バックへ。フックをさせなかったシュゼシンスキが、引き込んだことでポイントは獲得ならなかったがレフェリー判定をモノにし準決勝に駒を進めた。

セミファイナルの相手は欧州柔術界、北欧グラップリング界の雄トミー・ランガカーだ。まずランガカーが座り、ジョセフのパスのプレッシャーに負けじと足関節、スイープのセットをする。そんなランガカーに対し、ジョセフはポイント獲得時間になるとまずハーフから足を抜いてマウント奪取で、3 Pを奪取。足を戻され、もう一度抜いてマウントで3Pを追加したジョゼフは、バックマウントも奪い9-0でランガカーに快勝した。

続いて10分&延長4分となる決勝でオリバー・タザと相対したジョセフは、支えつり込み足をシングルレッグで切り返してトップを取ると、過去2試合以上に強いパスの圧をかける。

タザもスクランブルに持ち込み、トップを取れずとも50/50 に入れるなど下からコントロールをはかり、両者譲らず試合は延長へ。ジョセフはテイクダウン狙いの際に、バランスを崩して場外でタザにバックを譲ると、足をフックさせていない状態&仰向けでマット中央で試合が再開される。

その刹那、ジョセフは一気に胸を合わせてバックを狙う。前方に落とされながら、ジョセフは両ワキを抱えた状態で頭を支点に、後転するようにタザのバックを制し両足をフックしてみせる。これで3Pを手にすると、タザの反撃を遮断して昨年は、オセアニア&アジア予選で岩本健汰に阻まれた世界大会出場の切符を19歳&茶帯で成し遂げた。

この他の階級で最速世界選手権出場を決めたのはジョセフ以外の選手は──66キロ級で英国のオーウェン・ジョーンズ。88キロ級はフィンランドのサンテリ・リリウス、99キロ級は南アフリカ国籍のルーク・グリフィン、そして+99キロ級もフィンランドのヘイキ・ユシラと北欧勢が2つの枠を獲得している。

女子は新設された55キロ級でノルウェーのヨセフィーナ・ムーテ、65キロ級はフィンランドのサニ・ブランフォルス、65キロ超級でノルウェーのアーネ・スヴェンソンが世界大会出場を決めた。オーウェンとブランフォルスが紫帯、グフィリスとムーデがジョセフと同様に茶帯で欧州予選を制している。

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MMA MMAPLANET o UFC オリバー・タザ ルーク・グリフィス

【UFC FPI03】確かなポジション奪取とタイトな抑え。体格差も明白、タザがグリフィスのRNCに下る

<アブソリュート級T準決勝/8分1R>
ルーク・グリフィス(米国)
Def.7分08秒by RNC
オリバー・タザ(カナダ)

座ったタザの足を捌きにいくグリフィスは、足の取り合いに付き合って50/50 を作る。タザは右足を抱えて50/50を解き、外掛けへ。グリフィスはロールして足を抜くと、正座状態で、タザノツーオンワン&アームドラッグを潰しボディロックへ。背中をマットにつかされたタザはハーフから潜ろうとするが、足を抜いてグリフィンが上四方で抑える。

正対し足を取りに行ったタザをギロチンで抱え、ロールしたグリフィスが3/4マウントに。足を戻したタザだが、アームドラッグは明白な体格差の前に潰され、パスのプレッシャーを受ける展開に。それでも足関を狙うタザに対し、立ち上がったグリフィスがパスを決める。足を絡ませず、上四方で再度抑えたグリフィスはマウントへ。

足を戻そうとしたタザの体が浮くと、一気にバックに回ったグリフィスが両足をフックする。懸命に暴れるタザだが、シートベルトからRNCにタップしか道は残されていなかった。


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JJ Globo Report UFC UFC Fight Pass Invitational03 オリバー・タザ ブログ リッチー・マルチネス

【UFC FPI03】ブギーマンにラバーを取らせず。オリバー・タザが外ヒールでタップを奪う

<アブソリュート級T準々決勝/8分1R>
オリバー・タザ(カナダ)
Def.5分36秒by ヒールフック
リッチー・マルチネス(米国)

ブギーマンことマルチネスにラバーガードを取らせないことが先決、タザが引き込んで下を取る。とはいえブギーマンにはダースチョークもある。タザはクローズドガードからニーシールド、尻をずらして距離を取り直す。バタフライからハーフバタフライのタザがアウトサイドアシから足関を狙うが、ブギーマンが対応してダースへ。すぐに察知したタザは、残り5分を切ってスタンドに戻る。

シングルから肩を押されたブギーマンが引き込んで下に。ヒザ立ちでハーフも取らせないタザは、足を捌いてパスを狙う。半身でハーフ、腰が切れないブギーマンは頭の方向に移動してスペースを作り直す。そうなるとタザは、すかさず足を抱えにいく。外掛け、アンクルロックから外ヒールに移行したタザがブギーマンからタップを奪った。


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ADCC2022 MMA MMAPLANET o UFC アンディ・ヴェレラ オリバー・タザ ニック・ロドリゲス ハイサム・リダ パット・シャウゴリ パトリック・ガウシオ ブログ マイク・ファウラー リッチー・マルチネス

【UFC FPI03】無差別級Tにハイサム・リダ出場。本命はニッキー・ロッド。ヒザ破壊神童=シャウゴリに注目

【写真】果たしてハイサム✖ニッキー・ロッドの決勝は実現するのか。それとも怖い16歳が割って入るのか (C)SATOSHI NARITA

15日(木・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFC Fight Pass Invitational 03。ゴードン・ライアン✖ヴィニー・マガリャエスが組まれた同大会では賞金2500ドル=約340万を賭けたアブソリュート・トーナメントが実施される。

その出場メンバーは以下の通り。

ハイサム・リダ(ガーナ)
パトリック・ガウジオ(ブラジル)
メイソン・ファウラー(米国)
パット・シャウゴリ(米国)
ニッキー・ロドリゲス(米国)
アンディ・ヴェレラ(米国)
リッチー・マルチネス(米国)
オリバー・タザ(カナダ)

MMAファイターの名前がない──ガチすぎ、まさに純粋グラップラーの祭典となっている。


このなかにハイサムの名前があることが、まず嬉しい限りだ。もとはQuintetのベガス大会出場により、米国で入国が可能になるビザが下りたことで、ハイサムは日本を離れて世界的に活躍する第一歩を踏み出した。その彼がUFC FPIで重要視されるだけの力と認知度を米国でつけたことになる。

道着、ノーギともにIBJJF系のトーナメントで結果を残すだけでなく、優勝の二文字は手にしていないがWNOやADCCというビッグトーナメントで記憶に残る活躍をハイサムはしてきた。9月のADCC世界大会も2回戦敗退ではあったが、初戦で2013年のADCC無差別級優勝及びノーギワールズ7度優勝(※先週末にウルトラヘビーを制し8つめのタイトル奪取)のホベルト・アブレウを僅か75秒腕十字で下している。

この一勝はいわば表彰台の2番目や3番目に負けない価値があり、ハイサムの名は北米グラップリング界で絶対なモノになったといえる。

既にトーナメント枠は発表されており、ハイサムが初戦で戦うのはブラジルのパトリック・ガウジオだ。ムンジアル優勝経験はないがミディアムヘビー級で2度準優勝になっているガウジオは、カーウソン・グレイシー系の黒帯柔術家ファビアノを父に持つ、生まれつき柔術家だ。とはいえノーギでは、今年のADCCで注目のエルダー・クルーズにレフ判定で敗れ、初戦敗退するなど、オープンガードの名手もハイサムにとっては、手堅くクリアしたい相手といえる。

トーナメント全体を見て、ハイサムの最大のライバルはニッキー・ロッドことニック・ロドリゲスになることは間違いないだろう。

ADCCではハイサムと同階級の99キロ超級に出場し、決勝でゴードン・ライアンのヒールに敗れたものの、フィリッピ・ペナを破るなど既に実力的には真のワールドトップクラスにある。D3レスラーだったニッキー・ロッドは、2018年の夏に柔術を始めると3カ月後にはダナハースクワットに合流、今やB-TEAMとなったため袂を別ったゴードン・ライアンらとのトレーニングにその才能が一気に開花した。

ADCC米国東海岸予選は3位に終わるが、西海岸予選を勝ち抜き世界大会へ。2019年のADCC世界大会99キロ超級でカイナン・デュアルチにファイナルで敗れたものの青帯で準優勝という金字塔を打ち立てている。その後もPolarisでルーク・ロックホールド、WNOでユーリ・シモエスらを下し、今大会に出場するメンバーではADCC2022でヴェレラに17-0で圧勝している。

レスリングと柔術を融合させ、トップゲームや下からのリバーサルにも絶対的な強さを持つニッキー・ロッドは初戦の相手がヴェレラで、準決勝も10thPlanetのベテラン=リッチー・ブギーマン・マルチネスと最軽量オリバー・タザ戦の勝者が相手となるために、ファイナル出場は固いと思われる。

だからといってハイサム✖ニッキー・ロッドの決勝戦が簡単に実現するかといえば、ここに要注目の選手が割って入る。それがパット・シャウゴリだ。EBI20=アブソリュートでは2回戦のOTで敗れたが、その敗戦後に紫帯を贈られた16歳。シャウゴリは10thPlanet内予選でチームの同朋を50/50 からヒールフックで破壊しまくり本戦出場を手にした。

あまりにえげつない内ヒールで、チームメイトを負傷に追い込むスタイルが論争を呼んだシャウゴリは、体系的には完全に太っちょ、あんこ型でサブオンリーどころか足関ゲームに適したパワーグラップラーという見方が成り立つ。とにかく50/50に取り、逆足を狙いつつ一瞬でも隙を見せるとカカトを捻り上げて、即・ヒザを破壊する。

当然相手の攻めを凌ぐディフェンス能力もアカデミー内予選では見せていたが、その防御力が今回の出場選手に通用するレベルかどうかは不明だ。ルール的に90秒膠着が続くと、コイントス→下を選ぶとバタフライガード&ダブルアンダーフックという形を取れることはシャウゴリに優位に働くという見方も成り立つが、果たして──。

16歳のヒザ破壊神童は超破壊力のある一発屋、ホームランか三振の可能性もあるだけに、その力を見極めるには1回戦で当たるSUG無差別級王者マイク・ファウラーは最適といえるだろう。

■視聴方法(予定)
12月16日(金・日本時間)
午前10時00分~UFC Fight Pass

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ADCC2022 MMA MMAPLANET o YouTube   オリバー・タザ ニッキー・ライアン ヘナート・カヌート

【ADCC2022】77キロ級 ミカ・ガルバォンの1回戦&準々決勝。柔術の神の子の神技=腕十字

【写真】レスリングの強くなり、かとって守勢ではなく攻め続けたミカ・ガルバォン。準決勝新出を決めた(C)SATOSHI NARITA

17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第3 回は77キロ級──最注目、柔術の神の子ミカ・ガルバォンの1回戦と2回戦の模様をお伝えしたい。


<77キロ以下級1回戦/10分1R>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def.5-0
オリバー・タザ(カナダ)

今年初出場でムンジアルを制し、史上最年少王者となった注目のミカの相手は、オリヴァー・タザ。両者は昨年のWNO 10でも対戦しており、当時17歳だったミカはやや体力で押されつつも、要所で非凡な切り返しを見せて判定勝利している。

前回とは違いスタンドで積極的に前に出るミカ。下がりながら対処するタザは、前転しつつ足を取りに。ミカはその動きに逆らわず、マットとタザの背中の間に体を滑りこませてのバック狙い。あいかわらず流れに身を任せつつの見事な体捌きだ。が、タザは体をずらして正対するとバタフライガードに入った。

ハーフで低く体を預けるミカは、やがてヒザを入れての侵攻を狙う。タザは腕のフレームと左のニールドで防ぐ。

ボディロックをとったミカは、横に体を滑り込ませるように再びバック狙いへ。そして、それを嫌うタザの動きに反応してマウントを奪ってみせた。動き続けるタザだが、ミカは四の字ロックを入れる。それでもタザは動き続けて正対すること成功、やがて両者は座って向き合った。

加点時間開始の直前に一旦シットアップしたタザは、改めてミカの足を狙う形で下に。失点かと思いきや、ポイントは宣告されず。ミカが上からプレッシャーをかけてゆくが、タザはフレームとニーシールドで防いで距離を取り、両者は立ち上がった。スタンド戦。またしても前に出るミカに対して、タザはミカの首を弾きながら下がる。

残り2分で、お互い頭を抱え合う近い距離から飛び込んだミカは、タザの左足を抱えて立ち上がる。片足で耐えるタザだが、ミカは前にドライブしながら右足でタザの両足を刈ってテイクダウンに成功する。右手でマットをポストして距離を作ろうとするタザだが、重心の低いミカはしっかり密着し、背中をマットにつけさせた。

それでも動き続け、タザはなんとか4点ポジションへ。しかしレフェリーは3秒以上コントロールが成立したと判断し、ミカに2点を与えた。

残り1分。背中につくミカに対し、動かなくてはならないタザが腰を上げるが、瞬く間にバックに飛びつかれたフックを完成される。

0-5で劣勢のタザが首を守りながら動こうとすると、ミカはその左腕に十字狙いへ。うつ伏せで極めに来るミカに一瞬腕を伸ばされかけたタザだったが、ステップオーバーして脱出した。

上になったタザは足を捌こうとするが、脱力したミカは柔軟な両足を使って無難に対処。そのまま試合終了した。

一本勝ちこそできなかったものの、ポジショニングで完全に制圧してみせたミカの完勝。一昨年の対戦時にはまだ両者の身体の完成度に差があり、ミカは後半は下がり気味となりカウンターの切り返しに頼っていた。対して、今回は積極的に前に出て圧力でタザを下がらせた上で、反撃に来たタザの動きに合わせたカウンターを決めるなど、自ら攻撃を仕掛けて試合を有利に進めた。

17歳から18歳の身体的な成長を感じさせつつ、さらに待ちのカウンターから攻めのカウンターへと打撃選手のような進化も見せ、ミカが二回戦へと駒を進めた。

<77キロ級2回戦/10分1R>
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
Def. 1分59秒by 腕十字
ヘナート・カヌート(ブラジル)

ミカの準決勝の相手は、2021年の世界柔術王者ヘナート・カヌート。

一回戦では打倒JTの有力候補の一人と目されていたニッキー・ライアンと対戦。レスリング力の向上で注目されていたニッキーとスタンドで互角に渡り合ったカヌートは、終盤になるにつれて勢いを加速。終盤にシングルレッグからバックフックを奪って5-0で快勝している。

一回戦と同様、首を取って前に出るミカ。30秒経過時、一瞬のアームドラッグのフェイントから小内でドライブしてカヌートを崩したミカは、立ち上がりかけたカヌートの背後に凄まじいスピードで飛び乗る。そのまま首を狙うミカだが、カヌートは頭を下げてミカを前に落としてみせた。

下になったミカは対し、ヒザを入れて侵攻を試みるカヌート。が、ミカは右足首を自らの足首に引っ掛けて浮かすと、自らの左足を絡めて外掛けを作りそのまま外ヒールへ。危険を悟り、横回転を繰り返すカヌートに付いていくミカ。場外際に来たところで、カヌートは足を引き抜くことに成功した。

中央から再開。シッティングを取るミカは、下からカヌートの右ヒザをたぐる。

それに反応したカヌートが鋭いニースライスに出ると、ミカは一瞬でファーサイドにあるカヌートの右腕に絡み、一気にその腕を伸ばす。

すぐにまたいで逃げようとしたカヌートだが、次の瞬間タップ。極められたカヌートが悔しそうに両手を打つリアクションをして離れたのを見て、はじめて何が起きたかを悟った場内から大歓声が挙がった。

試合序盤から恐るべきキレの連続攻撃を繰り出した挙句、最後はあまりの速さに、見る者には何が起きたのかすら分からせないフィニッシュ。これぞ神技──ベテランの柔術世界王者相手に圧巻の極めの速度と精度と威力を見せつけ、ミカが準決勝進出を決めた。

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MMA ONE WNO Championships WNO13 オリバー・タザ クレイグ・ジョーンズ タイ・ルオトロ ダヴィ・ハモス ドナルド・セラーニ ペドロ・マリーニョ リーヴァイ・ジョーンズレアリー

【WNO13】2022年のWNOはクレイグ×ノーギワールズ2冠マリーニョ、タイ・ルオトロ×リーヴァイから

【写真】反応という部分をとっても、若いマリーニョがクレイグを食う可能性は十分にある (C)MMAPLANET

1月21日(金・現地時間)にテキサス州フリスコにあるスポーツ・アカデミー・アット・ザ・スターでWNO13が開催され、WNOライトヘビー級王座決定戦=クレイグ・ジョーンズ×ペドロ・マリーニョ、WNOミドル級選手権試合=王者タイ・ルオトロ×挑戦者リーヴァイ・ジョーンズレアリーという2つのタイトル戦が組まれることが発表されている。

ムンジアルが2年振りに開催された今も、北米でのグラップリング熱は収まらず、MMAファイターも多く参戦するなか、純粋グラップラーの活躍でこのジャンルをリードするWNOが2022年も早速注目カードを揃えてきた。


新設されるライトヘビー級王座を争うクレイグとマリーニョは揃って9月に行われたWNO Championshipsのミドル級王座決定トーナメントを欠場しているが、翌月にクレイグはPolarisノーギ・ミドル級王座をダヴィ・ハモスを相手に防衛し、今月19日には──なんちゃってコンバット柔術でドナルド・セラーニを下している。

一方、グレイシーバッハの黒帯マリーニョは10月に開催されたノーギワールズで無差別級とヘビー級を制し、ポイント有りノーギで──黒帯初年度にして世界最強グラップラーの地位を獲得している。

レスリング力もあり、足関節も使いこなしながら、ギロチンというスクランブル系の極めを持つマリーニョ。ADCCイヤーの戦い初めでクレイグを相手に、どのような試合を見せることができるのか、非常に興味深い。

(C)CLAYTON JONES/WNO

そんなクレイグとマリーニョが欠場したトーナメントを制し、ミドル級王者となったタイの初防衛戦の相手=ジョーンズレアリーは10月のWNOに初参戦し、オリバー・タザを判定で下している。

その後、アブダビ・ワールドプロ、ムンジアルを経てWNO王座挑戦という機会を得た。

(C)CLAYTON JONES/WNO

オープンガードとベリンボロのユニティらしいコンビネーションで、10代の百戦錬磨=タイへの攻略は可能か。

ノーギにおけるベリンボロ攻防が、どのようなグラップリングの未来を見せてくれるのか──見逃せないミドル級選手権試合だ。

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MMA ONE UFC WNO12   オリバー・タザ ゴードン・ライアン ビア・メスキータ フィリップ・ロウ リチャード・アラルコン リーヴァイ・ジョーンズレアリー 青木真也

【WNO12】引退撤回ゴードン・ライアンがUFCファイターと勝敗つかずのエキシビションに出場

【写真】ちょっとなぁ、実戦で良いだろうというのは誰もが思うところ (C)SATOSHI NARITA

20日(水・現地時間)、テキサス州オースチンでWNO12が開催され、エキシビションながらゴードン・ライアンが出場する。

2019年ADCC無差別級&99キロ級二冠王、その前年にはノーギワールズでも二冠達成とグラップリング界の頂点にあったライアンはONEと契約し、青木真也と8月27日(※イベント自体がロックダウンの影響でその後、キャンセルとなった)にケージグラップリングマッチを行うことが決まっていたが、胃不全麻痺により競技生活から退くことを5月に発表した。


その後、来年のADCCでアンドレ・ガルバォンと試合で復帰することを早々に明言したライアンは、今回ビア・メスキータ✖ルイサ・モンテリオ=女子バンタム級王座決定戦、フリオン・デイヴィー✖ナサリエ・ヒベイロ=女子フライ級王座決定戦、リーヴァイ・ジョーンズレアリー✖オリバー・タザ、そしてマキシー・ムスメシ✖リチャード・アラルコン=バンタム級王座決定戦を従え、非公式戦ながら最終試合に登場する。

真剣勝負、勝敗無しのエキシビションは15分1R制で終了まで、どれだけタップがあっても続けられるとのこと。そんなエキシでライアンの相手を務めるのは、UFCファイターのフィリップ・ロウだ。

柔術ベースとはいえ茶帯で、WNOやSUG出場も結果が残せていないロウ。何といってもUFCではウェルター級で戦っており、ライアンとの体格差は明らかだ。引退発言から復活はともかく、今回の実戦形式のエキシ出場にはさすがのグラップリングファンもブーイングを送っている。

大会記者会見でライアンは「復帰までのことを考えると、今回のエキシはベストの選択だ。現状でも世界のトップと戦える自信はある。ただし、自分の100パーセントで戦えない状態で試合をするのはプロ失格だ」と話している。

(C)Zuffa/UFC

対してロウが「なぜ、俺がこのエキシを受けたか?  世界最強のグラップラーと相対することができるのに、断るわけはないだろう」とコメントした。

勝敗抜き、勝敗がつくほうが話題にならなかったかもしれない今回のエキシ、ライアンにしてやられている感はあるがやはり気になる。

■視聴方法(予定)
10月21日(木・日本時間)
午前9時00分~FLOGRAPPLING

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【WNO Championships】レポート─04─群雄割拠、柔術の神の子たちの競演。ミドル級準々決勝~準決勝

【写真】柔術の神の子が決勝進出、タイ・ルオトロ戦 (C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されたWho’s Number One Championships。ライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメント──は2021年グラップリング界の最大のイベントとなった。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第4回はミドル級の準決勝までの流れを整理したい。


ライト級同様、ミドル級の1回戦でも大波乱が起きた。優勝候補本命のロベルト・ヒメネスが、最後の最後にトーナメント代役出場が決まったジェイコブ・カウチに一本負けを喫した(別稿で詳述)。

同ブロックのもう一つの1回戦では、世界の注目を集める柔術の神の子ことミカ・ガルバォンが登場。コロナ禍の北米グラップリング界の隆盛を象徴する存在ウィリアム・タケットとの新世代対決が実現した。

(C)MIKE CALIMBAS/FLOGRAPPLING

まずはミカがきれいな小外掛けでテイクダウンを奪うと、タケットも下からの足関節の仕掛けで反撃。

タケットが逃れるミカのバックを狙ったところで、一瞬の反応で体を翻してニアマウントに入るなど、序盤から両者の持ち味が発揮される展開となった。その後もミカが主導権を握り、タケットがシットアップした刹那のタイミングでニーカットパスを決め、次の瞬間マウントに入るといった素晴らしい動きを随所で披露した。結局一本こそ取れなかったものの、その天性の能力を存分に発揮したミカが判定3-0で完勝を収めた。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

続いてミカは準決勝で、1回戦でヒメネスを倒す大殊勲を挙げたカウチと相対した。

下からのスイープを狙うカウチが頭を抱えてきた瞬間に、ダイブしながらその右腕をすくいあげて伸ばしてアームバーに入るという離れ技を炸裂させ、3分弱で決勝進出を決めた。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

もう一方のブロックでは、ヒメネスと並んで優勝候補のタイ・ルオトロが登場、1回戦でジョニー・タマ──オリバー・タザの代打として急遽出場が決定──と対戦した。

タマが下から足を絡めてくるとすかさずベリンボロで切り返してバックを奪ったタイは、脱出したタマがシッティングから仕掛けようとしたときにダイブしてダースチョーク一閃。足関節にはベリンボロ、シッティングにはダースチョークというルオトロ兄弟の黄金カウンターパターンを見事に決めて1回戦を突破した。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

同ブロックもう一つの1回戦を勝ち上がったのはダンテ・リオンだった。

ジョン・ブランク相手にスタンドからのシングルレッグと下からのレスリングアップを何度も決めて優位に立ったリオンは、終盤にはブランクのフレームを手で押し除けて前にドライブして後ろ三角絞めへ。極めきることこそできなかったものの、文句なしの判定3-0で勝利した。

(C)CLAYTON JONES/FLOGRAPPLING

タイとリオンによる注目の準決勝は、スタンドレスリングでダブルレッグを何度も決めたタイが、上から攻撃を仕掛け続ける展開に。

リオンも鉄壁のニーシールドからのレッスルアップという得意の流れを試みるが、タイはそれをことごとく遮断して上をキープ、ノンストップ・パス攻勢でリオン削っていった。終盤、ついに側転パスからサイドを取りかけたタイは、亀になったダンテの背後に付く。すかさず左腕をダンテの肩口から入れて首をワキで抱え、ギロチンと肩固めの融合のような形で絞め上げると、ダンテはすぐにタップ。のこり10秒ほどのところで見事な一本勝ちを収めた。

かくてミドル級決勝の顔合わせは、18歳のタイ・ルオトロ✖もうすぐ18歳のミカ・ガルバォンに。圧巻の強さと輝きをもって勝ち上がった柔術界の未来そのもののような二人による、大注目の新世代決戦が実現することとなった。

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【WNO Championships】高橋サブミッション&堀内勇がWNOを深掘り─03─。カイナン盤石? ハイサムは?

【写真】(C)絶対的な本命カイナン・デュアルチ

いよいよ25&26日(土&日・現地時間)にテキサス州オースチンのパーマー・イベンツセンターで開催されるWho’s Number One Championships。男子ではライト級、ミドル級とヘビー級、女子はストロー級及びヘビー級で賞金3万ドルとチャンピオンベルトを賭けた2days 8人制トーナメントが同大会では行われる。

世界のベストグラップラー、新進気鋭の若い選手が一堂に会す大会。その中から3階級を日本のグラップリングをネクストステージに引き上げようという高橋サブミッション雄己、そしてMMAPLANETでグラップリングシーンを執筆中の堀内勇氏に水先案内人となってもらった。

最終回となる今回は、ヘビー級の行方は?

<高橋サブミッション雄己&堀内勇、WNO Championship対談Part.02はコチラから>


──ライト級、ミドル級に続き、ヘビー級の行方を占ってもらえますでしょうか。

(C)SUG

高橋 優勝候補的なことを言えば、無難にカイナン・デュアルチです。

で次点では僕はメイソン・ファウラーが強いと思っているんですよ。高島さんがOT芸人感が出ているという風にFight&Lifeで書かれていましたけど、正直SUGに出ている限りしょうがないし。5分でOTルールで、勝ち切ってチャンピオンに居続けるのだから強いのだろうと。カイル・チェンバースやリッチー・ブギーマン・マルチネスに、しっかりと何もさせずに一本勝ちしているのも評価の対象になると思います。それに下からも上手い。僕はファウラーに期待しています。

──3CG(Third Coast Grappling)でカイナンに、ゴールデンスコアで敗れたのですが、ヒマバーにRNCで一本勝ちと7分でポイントありでも、そこそこ以上に良かったです。ただ、メイソン・ファウラーに本当の意味で勝つというのはSUGで勝つことと思っています。

高橋 確かにその通りですね。クレイグとやった時に5分間逃げ回って。

──10分でなく、5分限定だから極めさせないでもつ。そういうことではないのか、と。

高橋 その見方は成り立つと思います。クレイグのようにボトムが強い人とは、勝負できない。と同時にOTがないルールだと、勝負に行ったかもしれないし、そこは分からないですよねSUGルールにおける戦略的判断とも捉えられるし、ちょっと未知数ですね。

──一つ言えることは、ファウラーが暴れることでヘビー級はより面白くなるかと。

高橋 テックス・ジョンソンとか足関節技師もいるので、その辺りに完パスとかしてくれたら、凄く嬉しいですね。

堀内 僕もカイナンが間違いなく本命だと思います。ラクラン・ジャイルスとサイボーグ・アブレウにヒールで負けた以外は、勝ち続けている。自身がクローバーリーフという不思議な足関節で一本勝ちしたり、足関でも勝てるようになっています。もともとレスリングは強いし、下もニーシールドが圧倒的に強くてパスをさせない。足の弱点がなければ、誰がこの人に勝てるんだろうと。

高橋 僕もそう思います。

(C)MIKE CALIMBAS/FLO Grappling

──そのなかでハイサム・リダが出場します。

高橋 ハイサムって、現代グラップリングでなくて。ギの文化の日本の柔術を継承している点でも、心を込めて応援しちゃいます。日本の柔術文化が、ナウなグラップリング文化の最高峰に通じるのか。そういう意味でハイサムを日本代表として応援したいです。柔術家じゃない俺が、こう言うのはアレなんですけど(笑)。

──自分はハイサムは米国に行ってから、フルパワーで制限なしで練習できるという環境をようやく手にできた。そこでグンと強くなったと思うんです。以前、一緒に練習していた岡見勇信選手はハイサムのフルパワーを知っているのか、凄く強かったと舌を巻いていたんですよね。

(C)SUG

堀内 ハハハハハ。岡見選手が。トーナメントのオッズで驚いたのが、カイナンに次ぐのがカイル・ベームなんです。

──えぇっ!!

堀内 僕もあまり知らない選手だったのですが、ヒールばかりで勝っている10thPlanetの選手で。細かな仕掛けからということではなく、50/50やサドルから取っています。パスカードを仕掛けて、上からもヒールにも入っています。ルーカス・バルボーザとも1勝1敗で、そういう部分で評価が高いのかと思います。

──ベームはずっと10thPlanetなのでしょうか。

堀内 そうみたいです。大学でラグビーをやっていて、MMAから柔術に来たようで。

──一つ思うのですが、IBJJF系の柔術をしっかりやる道場で茶帯や黒帯になっている選手が10thPlanetに移り、エディ・ブラボー系の技術を学ぶと、グラップリングで相当に強くなれるのではないかと。

高橋 そうですね……。10thPlanetだけでは、IBJJF的なポイントゲームに重きを置いていないから学べないですよね。

堀内 ならマイキーが10thPlanetに行けば、最強ですよね(笑)。今でも最強ですけど。

──アハハハ。そうなるとダークサイドとハイな世界の共有になって、人格が崩壊してしまうのではないかと。

堀内 ハイなラバーガードとか使うようになって(笑)。

──それにしても楽しみなトーナメントです。

高橋 客観的な意見を語らせてもらったのですが、僕も足関節技師として技術の潮流についていくために試行錯誤している最中です。全階級を通して、主に自分もサドル系が得意な方なので──そういう部分でトップグラップラーが今、何を考えて。どう進化しているのかを着目して、参考にさせてほしいと思っています。

堀内 僕はマイキーがジオに怒ったとか大好きなんです。物凄く強い奴が、物凄く幼稚な振る舞いをする。それも本気の戦いだから、ああいう風になるものだし。そういう部分も期待したいですね。

■WNO Championships出場選手

【ヘビー級】
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
メイソン・ファウラー(米国)
オーランド・サンチェス(米国)
カイル・ベーム(米国)
ティム・スプリッグス(米国)
ルイス・パンザ(ブラジル)
テックス・ジョンソン(米国)
ハイサム・リダ(ガーナ)

【ミドル級】
タイ・ルオトロ(米国)
ウィリアム・タケット(米国)
ロベルト・ヒメネス(米国)
ジョン・ブランク(米国)、
ダンテ・リオン(カナダ)
ミカ・ガルバォン(ブラジル)
ジェイコブ・カウチ(米国)
オリバー・タザ(カナダ)

【ライト級】
マイキー・ムスメシ(米国)
ケイド・ルオトロ(米国)
ジオ・マルチネス(米国)
ディエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
コール・アベート(米国)
デミアン・アンダーソン(米国)
ジョシュア・シスネロス(米国)
ガブリエル・ソウザ(ブラジル)

【女子ストロー級】
マイサ・バストス(ブラジル)
ダニエル・ケリー(米国)
ジェッサ・カーン(米国)
アマンダ・アレキン(米国)
グレース・ガンドラム(米国)
アレックス・グエン(米国)
ジェシカ・クラン(米国)
タミー・ムスメシ(米国)

【女子ヘビー級】
ギャビ・ガルシア(ブラジル)
ハファエラ・ゲイジス(ブラジル)
エリン・ハープ(米国)
アナ・カロリーナ・ヴィエイラ(ブラジル)
エリザベス・クレイ(米国)
アマンダ・ローウェン(米国)
ケンドール・リユージング(米国)
アマンダ・レヴィ(米国)

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