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【CJI2024】レポート─02─80以下級、ケイド・ルオトロ&アンドリュー・タケット──躍進撃の21歳!!

【写真】躍動感あふれるファイトで、準決勝進出を決めたケイドとアンドリュー(C)SATOSHI NARITA

16日(金・現地時間)と17日(土・同)の二日間にわたって、ラスベガスのトーマス&マックセンターで開催されたクレイグ・ジョーンズ・インビテーショナル(CJI)。驚愕の優勝賞金100万ドルが用意されたこの大会のレビュー2回目は、80キロ以下級の後半ブロックの準々決勝までの戦いをレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi

一回戦第5試合は、双子の兄弟タイと並ぶ優勝候補であり、2022年ADCC世界大会77キロ以下級王者のケイド・ルオトロが登場、2019年ADCC世界大会級88キロ以下王者のマテウス・ジニスと新旧王者対決が実現した。

開始早々、ジニスが強烈に当てる足払いから頭を──「いなす」というよりむしろ──はたく動作を仕掛けてくると、なんとケイドは軽く掌打を3連打してお返し。もちろんこれはレフェリーから注意を受けたが、先日のMMAデビューを経て打撃勝負上等という姿勢を披露した。


その後もジニスの足払いにローキックを返したケイドは、突進してジニスの頭で顎を押し、傾斜壁まで押し付けて体勢を崩す。ジニスが横に逃げようとしたところでワキを差してのテイクダウン。相手を金網に押し付けるケージレスリングの技術を、傾斜壁がある今大会で利用した形だ。

ジニスはリバースハーフ下からのリバーサルを狙うが、卓越したバランスでこれを堪えるケイドは、四の字を組んだジニスの右足を引っ張り出してワキに挟むとそのままストレートレッグロックへ。

強烈に絞り上げるとすぐにジニスはタップ。残り18秒、階級差をまるで問題にせず、世界グラップリング界の先頭を走り続ける男の勢いを見せつけての勝利だった。

一回戦第6試合は、北欧の極め業師トミー・ランガカーがベテランのヘナート・カヌートと対戦。

上から飛び込んでのバック狙いや担ぎパスで終始圧倒したランガカーが、肩固めや腕十字狙いでカヌートを追い詰めて判定で完勝した。

一回戦第7試合は、2022年にADCC世界大会88キロ級において、レジェンドのシャンジ・ヒベイロやSUG王メイソン・ファウラーを連覇してブレイクアウト・スターの一人となった英国のエオガン・オフラナガンが登場。

(道着着用ルールでは)ベースボールチョークの名手として知られるマジッド・ヘイジと対戦した。

シッティングから相手の体を跳ね上げつつ後転するような動きで足を取ったオフラナガンは、そのままヘイジの両足を束ねて左ワキで抱える。

やがて右足を孤立させたオフラナガンがヒールを露出させて捻りかけたところで、ヘイジはすぐにタップした。

一回戦最終試合は、今大会の主催道場とも言えるB-teamの中量級エースであるニッキー・ライアンが道場し、今年のADCC西海岸予選を制し、またWNO大会でトミー・ランガカーにチョークで一本勝ちして波に乗る21歳のアンドリュー・タケットと対戦した。この注目の一戦は、1Rから両者のポジションが入れ替わる一進一退の凄まじい攻防が展開されたが、残り2分のところでタケットがノースサウスの形からニッキーのガードを超えて完全パスに成功。

足を戻したニッキーは必殺のレッスルアップで上を取り返すが、やがてまた上になったタケットは再びパス。初回を3-0でリードした。

その後のラウンドは動きの落ちたニッキーに対し、タケットが面白いようにパスを決めマウント、バックグラブから極めを狙う展開に。他大会のようにポイント制を採用していたら数十点差が付くほどの一方的な展開のなか、抑え込んだまま髪を整える仕草まで見せるほどやりたい放題のまま試合終了。

結局判定3-0でタケットの圧勝劇に。

ニッキーの実力を知る世界のグラップリングファン達に衝撃を与えたタケットは「僕のお母さんはヘアスタイリストだ! だから髪にはこだわりがあるんだ! 僕はまだ21歳さ! 相手を押さえる退屈な試合じゃなく、動き回ってどんどん狙っていかないとね!」と会心の笑顔を見せた。

<80キロ以下級準々決勝/5分3R>
ケイド・ルオトロ(米国) 
Def.3-0:30-26.30-26.30-27
トミー・ランガカー(ノルウェー)

ONEサブミッショングラプリング・ライト級世界王座を賭けて、1年で3戦目となる両者。過去2試合はどちらも判定決着だったが、ケイドが圧勝している。

試合開始すぐにランガカーに突進していったケイドは、一回戦同様に傾斜壁にランガカーを押し付ける。が、ランガカーは傾斜を登って上からのギロチン狙いという斬新な返しを見せる。

それを凌がれたランガカーが小内からのテイクダウンを仕掛けると、ケイドは下になった瞬間にオモプラッタを仕掛ける。するとランガカーもすぐに抜くという見応えのある攻防を展開する。

スタンドに戻ったケイドはワキを差して再び壁までランガカーを押していってガードを余儀なくさせ、上の体勢でラウンド終了、ジャッジ3者とも10-9でケイドを支持した。

2R、立ちから素早くワキを潜ったケイドがボディロックを取り上に。

ランガカーもオクトパスの形からの形成逆転を試みるが、ケイドは持ち前の腰の強さで競り勝ち、強引に押し倒すような形で上を譲らない。さらにランガカーの背中に付いたケイドは、まるでストレートパンチの如き鋭さで腕を捻じ込んでのギロチン狙い。

さらに右腕を首に回してRNCの形で絞め上げるが、ランガカーは驚異的な耐久力で凌いでみせた。

しかし、一方的にケイドが攻めた5分間は10-8というビッグラウンドとなった。

3R、後のないランガカーはシングルレッグからボディロックに移行してのテイクダウンを狙う。

ケイドは左腕で小手を巻く得意の形から払い腰で豪快に切り返す。

再びランガカーの背後に付いたケイドは、その左腕を両脚で捕らえてクルスフィクスに。

そこからチョークを狙ってゆくがケイドだが、ランガカーはここも極めさせず、体をずらして上を取り返した。その後インサイドガードから仕掛けたいランガカーだが、ケイドが決めさせずに試合終了。判定は30-26が二人、30-27が一人でいずれもケイドがフルマークの判定勝ちを手にした。

躍動感溢れる動きで攻め続け、なおかつ際の競り合いも凄まじく強いという魅力爆発の内容で準々決勝に進出したケイドは「勝てたことで安心した。僕ら兄弟はいつも俺が強いいや俺だって言い合っているけど、本当に正直のところを言うとタイの方が60-40くらいで強いんだよ。タイは僕にとって最高のトレーニングパートナーだ。でもさっきの試合、彼は初回に大怪我をしてしまい力の全てを見せることができなかった。だけど僕がこの階級で一番怖かったのはタイなんだよ。僕ら兄弟にとって、お互いが負けるのを見るのはすごく辛い。特に兄弟がもっと強いって分かっているときはね。でもタイなら怪我をすぐに治してトップに返り咲いてくれるはずだ。タイとガルバォンがセコンドにいるとものすごく心強いね」と、自分をそっちのけで、リーヴァイ・ジョーンズレアリーにまさかの敗戦を喫した双子の兄弟タイへの想いを語ったのだった。

<80キロ以下級準々決勝/5分3R>
アンドリュー・タケット(米国) 
Def.3-0:30-27.30-27.30-27
エオガン・オフラナガン(英国)

1R、すぐに座ったオフラナガンは下から素早く腕狙いへ。これをタケットが抜くと、さらに一瞬で右足に絡んでの内ヒールをセットしていく。

あわや踵が露出する状態だったが、タケットは回転しながら左足をこじ入れて逃れてみせた。

オフラナガンはさらに内回りから三角へ。そのまま右腕を伸ばしかけるも、タケットはここも抜き、同時に担ぎの要領でパスしてサイドへ。

一回戦でも見せたお得意の髪をかきあげる姿勢を作ると、ノースサウスに移行した。その後オフラナガンが足を入れて戻すと、タケットは左にプレッシャーをかけておいて右に回ってパス。さらにもう一度パスを決めたタケットはさらにマウントを奪取し、初回を3者とも10-9のスコアで先制した。

2Rになるとさらに勢いを増したタケットは、ノースサウスの体勢からのパスや、左右に回って担ぐ形のパスを面白いように決めて圧倒。

ここは三者とも10-8のスコアが付いた。一回戦の圧勝劇の主因はニッキーの不調やスタミナ切れにあるのではないかという見方もあったが、何よりもタケットのパスガード力が突出しているということがまざまざと証明された。

21歳という年齢を考えるとまさに恐るべしだ。

3Rには側転パスを仕掛けたタケット。オフラナガンは、それを三角でキャッチして大逆転の望みを賭けて右腕を伸ばしにゆくが、タケットは1Rと同じ要領の体捌きで担いでパスを決める。

こうしてオフラナガンの最後の攻撃も潰したタケットは、その後も好き放題にパスを決めてマウントも取り、最後まで圧倒したまま試合を終えた。判定は3者とも30-26。ニッキー・ライアンとオフラナガンという二人の超技巧派プレイヤーのガードゲームを完膚なきまでに破壊するという衝撃的な強さを見せつけた若者は「いやあ、もう夜の1時だぜ! みんなが帰れるように短くするよ。明日も行くぜ!」と叫ぶと、会場に設置されているトーナメント表の準決勝進出者の欄に、自らの名前のかわりに”I want sleep”と書いて去って行ったのだった。

こうしてもう一つの準決勝は、期待通りの動きで実力を見せつけた優勝候補タイ・ルオトロと、この日最大の衝撃と言えるほどの強さを見せつけたアンドリュー・タケットという二人の21歳による、グラップリングの未来を体現するような組み合わせが実現することになった。

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ADCC2022 K-1 MMA MMAPLANET o   アイザック・ミシェル エオガン・オフラナガン ゴードン・ライアン ジェイ・ロドリゲス ジャンカルロ・ボドニ ジョシュ・ヒンガー タイ・ルオトロ ニック・ロドリゲス ペドロ・マリーニョ ルーカス・バルボーザ ヴァグネウ・ホシャ

【ADCC2022】88キロ級決勝 現代グラップリングの完成形=ジャンカルロ・ボドニがハルクを破り世界一に

【写真】投げとテイクダウン、上も下も極めもあるジャンカルロ・ボドニ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第13 回からは88キロ級決勝ジャンカルロ・ボドニ×ルーカス・バルボーサ戦の模様をお伝えしたい。

緻密な技術で決勝に進んだボドニを決勝で待っていたのは、優勝候補の一人ルーカス・ハルク・バルボーザだ。

バルボーザは1回戦はフィンランドのサンテリ・リリアス相手に加点時間前から積極的に極めを狙ってゆき、中盤にテイクダウンからバックを奪取。極めることはできなかったものの3-0で完勝した。

2回戦でバルボーザはアトスの同門にして40歳の大ベテラン、ジョシュ・ヒンガーと対戦。

ヒンガーは初戦、やはり同門にして21歳も年下のタイ・ルオトロと両者総力を尽くした大激戦を展開。延長にてダブルレッグで先制点を取られるものの、オモプラッタの仕掛けからスクランブルで背後に付いてフックを入れ、3-2で驚愕の逆転勝利を収めている。

そのヒンガーを相手にバルボーザは、加点時間帯に入ってからシュートイン。ダブルからシングルに移行して左足を抱えてテイクダウンに成功。亀を取られて加点はなかったものの、そのまま上からじっくり低く体重を預けて侵攻し、足を超えてパス、そしてマウントまで奪って7-0で完勝した。

迎えた準決勝の相手は、やはり大ベテラン40歳のヴァグネウ・ホシャ。こちらは初戦でオセアニア予選の覇者のアイザック・ミシェルに、2回戦ではペドロ・マリーニョ相手に得意のスタンドでの持久戦を展開。延長で加速して判定勝利を収めている。

ちなみにマリーニョは一回戦、ニック・ロドリゲスの弟ジェイ・ロドリゲスにワキをくぐられてバックを奪われたものの、自ら前転してスクランブルして上のポジションを奪取。そのままニースライスパスを決めて3点を先制し、終盤テイクダウンを奪われるものの終了まで足を絡めて逃げ切る形で激闘を制していた。

そんなホシャとの準決勝。バルボーザは前半バックを取りかける等優勢に進めるものの、後半は恐るべきスタミナと尽きない闘争心を持ち、ヘッドバット上等で前進してくるホシャに精神的にも肉体的にも疲弊させられる展開に。最後はテイクダウンを奪われかけたものの背中を向けて終了まで耐え抜き、前半の優勢を評価される形でレフェリー判定勝利。死闘の末に薄氷の決勝進出を果たした。

迎えた決勝戦。ボドニが2020年に黒帯を取得して以来、両者はノーギで5度対戦。いずれも僅差だがバルボーザが4勝1敗と勝ち越している。


<88キロ下級決勝/20分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
Def.14分10秒 by RNC
ルーカス・バルボーザ(ブラジル)

まずはスタンドレスリングで争う両者。お互い頭を掴んで下げさせようとする重厚な攻防が続く。ボドニがバルボーザの右腕をドラッグしようとしたところで、バルボーザがシュートイン。

しかしスプロールしたボドニは、上体を起こすバルボーザをフロントヘッドロックで捕らえて投げを放つ。が、バルボーザはうまく左腕をマットにポストして堪え、そのまま上になった。

低く入るバルボーザは、左右に方向を変えながら侵攻を試みるが、ボドニも左右のニーシールドとフレームを使って止める。ここでレフェリーにバルボーザにもっと積極的に動くようにと警告。これはトップからじっくり圧力をかけていくのがバルボーザの持ち味なだけに、気の毒なコールだ。

さらにプレッシャーをかけるバルボーザだが、ボドニは下から入れた右ヒザでバルボーザの体を引き寄せてその右足を抱えると、そのまま足を伸ばしにゆく。バルボーザは自ら横回転しボドニの背後に。さらに前方にダイブしたバルボーザは、ボドニの背中をマットに付けさせてからバックを狙う。

嫌がったボドニをボディロックで固定したバルボーザはサイドへ回ろうとする。ボドニも両腕を張って距離を作って足を入れて抵抗する。

それでも巨大な上半身で圧力をかけてせり上がるバルボーザは、ニアマウントから肩固めへ。そのまま絡んでいる足を外し、サイドに回るバルボーザ。絶体絶命かと思われたボドニだが、ポジションが固まる前に全身の力を使ってスピンして亀に。そのままバルボーザを振り解いて立ち上がってみせた。バルボーザの世界随一の圧力から脱出したのだから、素晴らしいタイミングと力の集中のさせ方だ。

試合はスタンドから再開され、またしてもいなし合いを展開する両者。やや疲弊したバルボーザが、ボドニに手をかけられて頭を下げさせられる場面が増えてきている。

8分過ぎ、再び頭に手を伸ばすかと思われたボドニがダブルレッグに。反応の遅れたバルボーザの懐に深く入ってテイクダウンに成功し、そのまま上のポジションを取った。加点時間帯に入っていないこともあり、バルボーザは無理にスクランブルをせず下になった形だが、試合の流れが、スタミナを残しているボドニに傾きはじめた感がある。

ボドニがクローズドガードの中から立ち上がると、その右足にデラヒーバで絡むバルボーザ。盤石のバランスを誇るボドニは、慌てず騒がず絡んでくる左足を下から押し下げ、ヒザでピン。さらにボドニはバルボーザの右足も抑えてサイドを狙うが、ここでバルボーザは腕で距離を取り、立ち上がった。

スタンドに戻る両者。いなし合う中で試合は加点時間帯に。ボドニに頭を押さえられたバルボーザがシュートイン。しかしボドニにがぶられてしまう。序盤同様に上体を起こそうとするバルボーザだが、ボドニは体重をかけてそれを許さず、そのまま左足を巻き込んでクレイドルの形でグリップを作る。

ここでバルボーザは力を込めてボドニのグリップを切りながら、上体を起こすことに成功する。バルボーサはさらに両差しの状態から大内でドライブしてのテイクダウンを狙うが、ボドニは腰を引いて防御。次の瞬間、バルボーザの右腕を小手で巻いたボドニが内股へ。前に崩されつつ、バルボーサはうつ伏せで耐えきった。

力のこもった攻防に場内から歓声が上がるなか、ボドニはさらにバルボーザの足を跳ね上げて投げ切りにいく。バルボーザは自ら前転し、勢いをつけてスクランブル。場外ブレイクとなった。動きが落ちているバルボーザだが、ここ一番で出力を上げられるのはさすがだ。

この場面、解説のショーン・ウィリアムスが「いま、彼(ボドニ)がニューウェーブでサトシ・イシイのようなトレーニングパートナーを持っていることが役に立っているんだ。内股の使い方だよ。柔道はこのようにレスリングに対して素晴らしいディフェンスとして機能するんだ」とコメントした。

試合はスタンドで再開されボドニのダブルレッグに対し、ワキをすくって押し返すバルボーザだが、疲弊のあまりその時に両ひざをついてしまう。すかさずボドニは突進して肩を押し倒し、スクランブルを試みたバルボーザの背後に付いてみせた。

亀の体勢のバルボーザに覆いかぶさって襷を取ったボドニは、そのままバルボーザの体を仰向けに返しながら四の字フックを完成させ、大きな3点を先取した。大歓声が沸き「USA」チャントが沸き起こるなかチョークを狙うボドニだが、バルボーザも諦めずに両腕でディフェンスする。

が、足を組み替えてさらに6点を追加したボドニは、左手でバルボーザの顎を掴んで上げさせてから、右腕を深くこじ入れることに成功すると──マタレオンの形で絞め上げてタップを奪った。昨年のWNOチャンピオンシップの重量級では3戦全敗、優勝候補に挙げられることは少なかったボドニが、初出場初優勝を決めた。しかも4試合全てを完勝(3つの一本勝ち)。その強さは、他の出場選手たちより頭一つ以上抜けていた。

決勝のバルボーザだけでなく、スタンドレスリングの強さで世界の頂点に立ったディニズをも制した、粘り強いスタンドレスリング。トップゲームで世界柔術の頂点に立ったバルボーザとバイエンセにパスを許さない優れたガードワーク。今回旋風を巻き起こしたオフラガナンの足関節攻撃を的確に捌き、逆に極め返した正確な技術。そして盤石のバランスを礎に段階を踏んで相手の動きを潰し、やがて完全制圧する緻密なトップゲーム──スピード感こそやや欠けるものの全ての局面で抜群の安定感を持ったボドニの戦いぶりは、同門の先輩ゴードン・ライアンを彷彿させる強さを見せつけた。

実際、ニューウェーブに加入してからの練習について「毎週のように自分が上達しているのが感じられる。特に僕は2、3ヶ月ごとに全く違うレベルの選手になっていることが分かるんだ」と語ったボドニ。26歳にして急成長を続ける彼は現在、ライアンとともにダナハーのグラップリングシステムをもっとも高いレベルで体現している選手と言っていいだろう。

これで66キロ級、77キロ級に続き88キロ級も初出場選手が初優勝。ADCCに新しい風が吹いている。

なお3位決定戦は、そんな風など何するものぞ──とばかりにベテラン40歳のヴァグネウ・ホシャがいつもの如く闘争心を前面に出す戦いを展開。

今大会一躍名を挙げたエオガン・オフラナガンに上のポジションから仕掛けるトーホールドを極めてみせ、準優勝の前回に続いてメダル獲得を果たした。

88キロ以下級リザルト
優勝 ジャンカルロ・ボドニ(米国)
準優勝 ルーカス・バルボーザ(ブラジル)
3位 ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)

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【ADCC2022】88キロ級 次々と現れる組み技界の未来=ジャンカルロ・ボドニ─準決勝までの勝ち上がり

【写真】柔術とレスリングが見事に調和されたボドニ。上でも下でも勝てるスタイルは、ADCCルールとサブオンリーの両ルールでも同様の活躍が見込める選手だ(C)SATOSHI NARITA

9月17日(土・現地時間)&18日(日・同)にラスベガスのトーマス&マック・センターにて開催された2022 ADCC World Championshipが開催された。
Text by Isamu Horiuchi

ADCC史上、他のグラップリングイベントの追随を許さない最高の大会となったADCC2022を詳細レポート。第12 回からは88キロ級──まずはジャンカルロ・ボドニ×エオガン・オフラナガンの準決勝の模様と両者の勝ち上がりをお伝えしたい。

北米予選覇者のジャンカルロ・ボドニは、ベウナウド・ファリアの教えを受けてアリアンシの黒帯を取得し、昨年からジョン・ダナハー門下に移った選手。昨年のノーギパンナムでルーカス・バルボーザを倒した実績が光る。

7月のWNO15におけるジェイ・ロドリゲス戦ではグラップリングの未来といえる柔術とレスリングの融合体を見せてジャッジ3人の支持を得て勝利した試合も印象深い。

そのボドニは1回戦で元柔術世界王者のイザッキ・バイエンセと対戦。

巧みなシッティングガードやハーフガードでバイエンセの上からのプレッシャーに対抗。足関節合戦からのスクランブルで背後に回ってフック入れて3点を先取すると、一度フックを緩めてから入れ直してさらに3点追加。バイエンセの左腕を足で封じた状態でチョークを狙い続けて6-0で完勝した。


続く2回戦では前回王者にして優勝候補筆頭と見られたマテウス・ジニスとボドニは相対することに。

序盤にアームバーからニータップにつないでテイクダウンを奪いパスまで決めたボドニは、加点時間帯に入ってから場外際のスクランブルでボディロックを取り、ブレイク後に中央から再開されると直後にテイクダウンに成功。さらにニアマウントから腕十字を狙い、最後は三角絞めを完全にロックオンして本戦で一本勝ちを収めた。

バイエンセ&ジニス、柔術&グラップリング界の超ビッグネーム2人に完勝という驚くべき快挙を成し遂げて、絶好調のボドニは準決勝進出を決めたのだった。

そのボドニの相手はヨーロッパ予選覇者にして、こちらも前日に2戦連続で大物食いを果たして世界を驚かせた英国のエオガン・オフラナガンだ。

1回戦、下から柔軟なガードでレジェンド中のレジェンドであるシャンジ・ヒベイロのプレッシャーに対処したオフラナガンは、足関節攻撃でむしろ優位に本戦を終えた。

延長ではシャンジのタックルをギロチンで切り返したオフラナガンは、バックにまわってフックを入れて先制点。その後シャンジに脱出されるも、柔軟性を存分に活かしたガードワークと巧みな足関節の仕掛けをもってシャンジに反撃を許さず、3-0で完勝した。

続く2回戦も、オフラナガンは柔軟性を利したガードワークをもってメイソン・ファウラーのトップからの攻撃に対処。ファウラーが上から外ヒールを仕掛けてきたところを内ヒールで切り返し、最後は両腕を組むような形で極めてみせた。

世界的には比較的無名の存在ながら、大ベテラン世界王者のシャンジ、SUG王ファウラーを連覇したオフラナガンは、今大会のブレイクアウト・スターの1人といえるだろう。

<88キロ級準決勝/10分1R>
ジャンカルロ・ボドニ(米国)
Def. 2分18秒by トーホールド
エオガン・オフラナガン(英国)

揃って大物2人を撃破し勢いに乗る両者の準決勝。試合後すぐ座ったのはオフラナガンの方。自分の両足の間にあるボドニの右ヒザ裏を外から抱え、崩しながら下の足を抜いてサドルに入るフォールス・リープを狙うが、ボドニは同時に回転し、絡んでくる左足を両手で押し下げて回避する。

さらに絡もうとするオフラナガンの足を丁寧に捌くボドニは、やがて体勢を低くして上半身でオフラナガンの足を潰しにかかる。が、オフラナガンはインバーテッドから柔軟な股関節を利用して足をこじ入れて、回転しながらサドルを作る。

ここからが足関節を熟知しているダナハー門下のボドニの真骨頂だった。アフラナガンの動きに冷静に付き合うと、絡まれている足の支点をヒザより下に持ってきてから、改めて手で押し下げて絡みを解除し、再び低く体重を預けてゆく。オフラナガンは再びインバーテッドから鋭く回転してサドルへ。が、ここもボドニは落ち着いて回転しつつ、外掛けで絡むフラガナンの左足を右手で抑えて防御する。

それでもオフラガナンが左足を絡めようとするが、ボドニはその左足を左手で抱えて自らの胸部にかかとを付けると、右手を内側から入れて(自らの胸部とかかとの接着面を支点に)足首を捻りあげる。フリーだった左足首を突然極められたオフラガナンはすぐにタップ。ボドニはしてやったりと言わんばかりにニヤリと笑ってみせた。

今大会一躍注目の的となったオフラガナンの下からの攻撃に対し、抜群の安定感のベースを軸に慌てず騒がず、きわめて落ち着いた様子で対処し、段階を踏んで着実に潰していったボドニ。

その姿は、技の一つ一つの工程を丁寧に説明する師匠ジョン・ダナハーの教則映像の如しであった。そして最後は、人体の関節の構造を知り尽くしたかのようなカウンターの足関節。この階級では今まで見たことがないような類の緻密な技術を披露し、ボドニが決勝に進出した。

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