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【Gladiator028】蹴り、突き、寝技——吉田開威が語る右回転ヒジKOへの道「技は打ち込みと度胸」

6日(日)、大阪府豊中市の176boxで開催されたGladiator028で、吉田開威が上田祐起を右スピニングバックエルボーでKOした。
Text by Shojiro Kameike

1Rから組みの展開で押されながらも、凌ぎ続けた吉田が2R残り6秒で逆転勝利。6月の中国WKG&M-1、ウー・シャオロン戦に続くKO勝ちの裏にあった自身の成長と課題とは――。試合翌日、吉田が道場主を務める空手道剛柔流朋武館高岳支部を訪ねた。


MMAでも思いっきり軸足を廻すことができるようになっています

――昨日は見事なKO勝ち、おめでとうございます。全試合終了後、上田選手のために救急車が呼ばれていました。試合終了後からしばらく経ってからダメージが表面化したようですが……。

「はい、それは聞きました。でもフィニッシュのスピニングバックエルボーではなく、足先蹴り(そくせんげり)がボディに入った時のダメージだったようですね。自分でも『温かい生肉を神経の通っているナイフで貫き通した』というような感触がありました」

――凄い表現ですが、感触のイメージは伝わってきます。ボディ、内臓のダメージであれば、時間が経って表れてくるのも理解できますね。

足先蹴りは1Rと2Rに一度ずつ確認できる。2Rの蹴りで感触があったという(C)SHOJIRO KAMEIKE

「ズボッと刺さってはいなかったけど、『これは効いたな』という感覚はありましたね。あれがズボッと刺さっていたら、その場で倒れていたと思います。外れていても、それだけ威力があることは分かったので、この蹴りを完成させていきたいです」

――6月は中国で一撃KO勝ちを収めています。あの時も左ハイをブロックされたものの、そのまま相手が倒れました。

「僕もあの左ハイで倒れるとは思っていませんでした。まず作戦として、距離を測るために出した左ハイだったんです。前日の公開計量で、相手がメチャクチャ度の強い眼鏡をかけているのを父が見て『これは遠いところは見えていない』と思ったそうなんです。

それを聞いて――試合前日から、ひたすら遠い間合いからの蹴りの打ち込みをやっていました。ただ、さっきも言ったとおり最初の左ハイで倒れるとは思っていなかったです。相手はブロックしていたし『蹴りを受けられてしまった』という感触で。と思っていたら、そのまま後ろに倒れていったので、『えっ!?』と思いました。

今まで空手で、面を付けている相手をKOする感覚は持っていたんです。面があるからメチャクチャ深く、ガッツリ当てて、ようやく倒れるという感覚で。でも面を付けていない相手を倒すことができた――自分の蹴りが思ったよりも威力があるんだな、って初めて知りました」

――シャオロン戦前のインタビューでは、「空手ではKOできているけど、MMAでは判定続きだから倒したい」と言っていました。これまでMMAの試合で出していた蹴りと、シャオロン戦の左ハイでは何か違いがあったのでしょうか。

「あの左ハイは、軸足を廻す空手の蹴りなんですよ。遠い間合いから軸足を180度廻して、ヒザをグイッと前に出して、真正面に蹴っていくいような感じです。

上田戦では左ミドル、右ハイと軸足を廻して打ち込んだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

以前はMMAで蹴りを出すと掴まれそうだと思って、アマチュアの頃から全く蹴りを出せませんでした。寝技を全くやっていなかったので『蹴りを掴まれて倒されたら終わりだ』と。寝技の練習をすることで、その気持ちはどんどん減ってきて、MMAでも思いっきり軸足を廻すことができるようになっています。腰を入れて軸足を廻すことによって軸が残っているから、すぐ体勢を戻すことができて組みにも対応できるように練習しています。そこは進化した部分ですね」

――ということは昨日の試合でも、組まれた時に凌げる自信はあったのですね。

まだまだグラウンドに課題は残るが、徐々に成長は見せている(C)SHOJIRO KAMEIKE

「自信はありました。たとえば1Rにバックを奪われた時も、まずは落ち着いてワンハンドを外すことができました。練習では元谷(友貴)さんのワンハンドを受けているんですよ」

――元谷選手が太田忍戦で極めたようなワンハンドのRNCを……。

「そうです。元谷さんや寒天(たけし)さんのワンハンドは本当に強くて。それを受けていたおかげで、バックを奪われて四の字フックの体勢は辛いけど『両手で取られなければ耐えられる』と思いました。だから落ち着いて片手を外していったんです」

――上田選手の四の字フックに対しては?

「1Rは割とフックが硬かったです。でもカーフが効いて、2Rは動きが落ちていましたよね。試合中はずっと我慢していたのかもしれないけど、試合後に話をしたら『カーフがメチャクチャ痛かった』と言っていました。自分も2Rにトップを取り返した時は結構、無理やりな形ではあって。だけど『カーフが効いているから四の字フックはズレる。これは無理やりでも脱出できる』と感じていたんですよ」

――1Rにスタンドでオタツロックを組まれた時も、吉田選手は落ち着いているように見えました。

この形に入る練習ではなく、逃れる方法を練習していたのか(C)SHOJIRO KAMEIKE

「実は寒天さんをはじめ巧い人に、練習であの形をやってもらったことがあるんです。平良達郎選手のようにガッチリと形に入れば、完全にヒザが壊れてしまうことは分かりました。本来、スタンドの状態でガッチリと入ってしまったら、座って解除しないといけないんですよね。でも完全な形にはなっていなかったので、スタンドで正対しました。NTT(Nagoya Top Team=寒天練習)で受けていたおかげです」

――練習でやられて分かることは多いと思います。吉田選手の場合、NTT後のSNSは「またやられた」「まだまだ弱すぎる」という内容しか投稿していません。

「もう本当にやられまくっていますよ。寝技の練習では、ひたすら技を掛けられ続けて、ひたすら負けています」

――しかし凌ぐ自信はついてきたことで、寝技で勝負しようとは思いませんか。

「それは考えていないですね。僕のゴールはスタンドだと決まっています。そのために寝技も凌げるようになってきました。グラップラーを相手に寝技で勝負しても意味がないですからね。相手が打撃主体の選手であれば、そこは考えますけど。

というのも、MMAにおいて寝技で実績を出している選手のレベルに僕が追いつくことはあっても、そのレベルを超えることはないんですよ。でも超えないと極めるまでにはいかない。組みでグチャグチャになった状態では、今は採点に影響を及ぼさないですし。だから最後も、回ってトップを取った時は絶対に立とうと思いました」

Ares王者ユヌソフの試合からインスピレーションを受けました

――なるほど。スタンドの打撃でいえば、今回はいつもよりストレート系のパンチを、踏み込んで打っていました。

「今回は前に出て、パンチを当てに行こうとしました。同じ大会に出ていた木村柊也選手とか、南友之輔選手もそうですけど……ああいう一撃KOをやってみたいんですよね」

――おぉっ、その2選手を意識しますか。

パンチも間合いも課題のひとつ(C)SHOJIRO KAMEIKE

「僕自身、今までは下がりながらパンチを合わせることが多かったんです。そのほうが得意なので。だけど、今までパンチでは倒し切れていない。自分のパンチに威力があったとしても、それを当てることができていない。だから今回は当てに行く、倒しに行くことをイメージして打ち込みをやっていました」

――ただ、そのパンチにカウンターを合わされる場面も多かったです。

「効いてはいなくても印象が悪いですよね。今までは完全に間合いを取り切ってかた動いていたのが、今回はだいぶ距離を近くしました。特に1Rは積極的にKOを狙いましたけど、ラウンドを取られてしまって。これは無理だと思い、2Rは間合いを取り切ってからスタートしたんです。1Rめは大きく振りすぎてしまったことが反省点でした。でも試してみたかったので。

たとえば相手がチャンピオンや海外の強豪だと、その試合で試しはできないじゃないですか。今回は試す場であり、今は積み上げる時期だと思っていました。とにかく今回は、フィニッシュに繋がる手の技を試したいと思っていて。最後のスピニングバックエルボーも練習していたんですよ」

――1Rと2Rは組みで取られた。これは「たられば」ですが、もしそのスピニングバックエルボーが当たらず最終ラウンドに持ち込まれた場合は、どのような展開になっていたでしょうか。

「その場合、最終ラウンドは完全に空手をやるつもりでした。用意してきた技は、たくさんあったんです。寝技にならないことを前提に、用意してきた技の中からどれを使うか。そのまま行っても負けるので、一撃で倒すことを考えていたと思います。

そこで変にワーッと前に出ていくと、また組まれるリスクがありますよね。とにかく間合い感覚だけでいえば負けることはない。倒しに行かず、ポイントゲームに徹すれば負けることはない。そこに徹しながらKOできる筋を探そうという感じでした」

――それは組みの展開で凌ぐことができる手応えを得たと同時に、中国で倒す感触を得たからこそできる戦いですよね。では、いくつも技を用意してきたなかで、最後にバックエルボーを選択した理由は?

「あれは選択したのではなく、自然に出ました。上田選手の左は、序盤はジャブを突いてくるけど、疲れて来るとフックが多くなるんです。今回はそのフックを振ってくるところに合わせる練習をしていました。

フランス支部を持つ朋武館。今年8月、現地修行の際にソラヌフとMMAの練習も行っていた(C)GOJUーRYU HO-BUKAN

今回の試合の前にフランスへ練習に行ったんですよ。そこでAresバンタム級王者のアブバカル・ユヌソフと練習して。彼がベルトを獲得した時の試合映像を視たら、フィニッシュが右スピニングバックエルボーだったんです。『これをやりたい!』とインスピレーションを受け、自分の形に落とし込んで、ひたすら打ち込みをしました。

練習では和田教良さんや寒天さんに、大きく振ってもらって、その中に入ってバックエルボーかバックスピンキックを打つ。いろんな相手、いろんなシチュエーションでやってもらっていて、自宅でもミットで打ち込みをやりました。僕の中で技というのは、どれだけ打ち込むか――それと、度胸なんですよ」

――打ち込みと度胸!

「まず技は無意識で出るまで打ち込みをやります。あとはそれを出す度胸ですね」

――そこまでプランが固まっていたのであれば、上田選手にバックを取られた時も「とにかく疲れてくれ」と……。

「アハハハ。それはないけど――スタンドバックを取られたのは、半分わざとです。あまり良くないけど、『立った状態であれば負けない』とは思っています。でも考えていたより上田選手のテイクダウン能力が高くて、倒されてしまいました。『まだまだ全然ダメだ』と思って、今日は朝から柔術の練習に行ってきたんですよ」

――えっ、試合の翌日に!?

試合翌日から練習~空手の指導。昇段審査が近いため指導にも熱が入る(C)SHOJIRO KAMEIKE

「はい。朝は柔術、昼はMMAの練習をして、夜の指導に来ました(笑)」

――もう次に向けて進んでいるわけですね。上田戦後にはマイクを渡され、タイトルマッチについて発言しました。

「どうなんでしょうね? チャンピオンの竹中大地選手はRIZIN出場を希望していて、すぐグラジの防衛戦をやろうという雰囲気ではないですよね」

――順番でいえば7月にテムーレンをKOした南選手のベルト挑戦もありますし。11月にはRIZIN名古屋大会が行われますが、たとえばRIZINに興味はないのですか。

「そういえば今日、カードが発表されていましたよね(※取材開始直前、RIZIN公式YouTubeチャンネルでRIZIN LANDMARK10の対戦カードが発表されていた)」

――はい。

「一緒に練習している人の試合は聞いていましたけど……自分はRIZINより、開催されるならRoad to UFCを目指したいですね。海外で戦うならフライ級まで体重を落とせるかどうかもテストしています」

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【Gladiator028】計量終了 中国で16秒KO勝ち&8月に硬式空手世界2冠王の吉田開威が上田祐起と対戦

【写真】メインカード第1試合はスタイルが対極の両者(C)SHOJIRO KAMEIKE

明日6日(日)に大阪府豊中市の176boxで開催されるGladiator028の計量が、5日(土)に同市のSMOKER GYMで行われ、出場選手全員がパスした。
Text by Shojiro Kameike


メインカードの中でチハヤフル・ヅッキーニョスとバン・ジェヒョクは、最初に体重計に乗った時はわずかにオーバーしていたものの、ともにショーツを脱いでクリアしている。ギリギリの状態で計量に臨んだと思われるが、コンディションに問題はなさそうだ。結果、メインカード4試合+プレリミ10試合+オープニングファイト5試合=全19試合の計量がわずか1時間強で終了した。

今大会のメインカードは全4試合中、3試合が国際戦に。もう1試合は吉田開威が上田祐起と対戦する。吉田はプロデビューから5戦無敗で、今年6月には中国でウー・シャオロンをわずか16秒、左ハイでKOした。8月2日から4日にかけて東京で行われた世界硬式空手道選手権大会では、個人-65キロ級と団体戦の2冠を達成している。対する上田祐起は7月大会で福井達郎をRNCで下し、連敗から脱出。互いに打撃と組み、得意なところはハッキリとしているが、3Rの中でMMAとしての進化が求められる。

プレリミには5月大会で山上幹臣をKOした今井健斗が出場し、現在3連勝中の宮川日向と激突する。前回のインタビューで、沖縄遠征の際に松根良太THE BLACKBELT JAPAN沖縄代表からUFCジャージを貰ったことを明かした今井。計量会場にもそのUFCジャージ着用で登場した。計量後のルール説明で「頭部への塗布物禁止」を聞いたあと、レフェリーにしっかりパーマをかけた頭を触って確認してもらっていた。

■Gladitator028 視聴方法(予定)
10月6日(日)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル

■Gladiator028 計量結果

<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
チハヤフル・ヅッキーニョス:66.2キロ
ダギースレン・チャグナードルジ:66.0キロ

<Gladiatorフェザー級挑戦者決定T準決勝/5分3R>
水野翔:66.1キロ
パン・ジェヒョク:66.2キロ

<フェザー級/5分3R>
木村柊也:66.1キロ
キム・ウィジョン:65.9キロ

<バンタム級/5分3R>
吉田開威:61.3キロ
上田祐起:61.6キロ

<ウェルター級/5分2R>
森井翼:77.3キロ
チョモランマ1/2:77.4キロ

<フライ級/5分2R>
宮川日向:57.1キロ
今井健斗:57.0キロ

<フェザー級/5分2R>
野口蒼太:65.6キロ
福田泰暉:66.2キロ

<バンタム級/5分2R>
ルキヤ:60.9キロ
しゅんすけ:61.5キロ

<フライ級/5分2R>
澤田政輝:56.7キロ
荒木凌:57.0キロ

<フェザー級/5分2R>
田口翔太:65.9キロ
藤井丈虎:65.2キロ

<ウェルター級/5分2R>
後藤丈季:77.3キロ
趙大貴:77.2キロ

<ライト級/5分2R>
磯嶋祥蔵:70.4キロ
キンコンカンコンケンチャンマン:69.3キロ

<フライ級/5分2R>
古賀珠楠:56.9キロ
藤原浩太:56.3キロ

<フライ級/5分2R>
田中義基:57.0キロ
村田和生:56.0キロ

<ライト級/5分1R>
LUCKYBOY慶輔:70.3キロ
健椰:69.5キロ

<フライ級/5分1R>
岩崎圭吾:55.7キロ
古賀琉斗:57.0キロ

<バンタム級/5分1R>
原田康平:60.8キロ
菱田景太:61.2キロ

<55キロ契約 5分1R>
伊藤瑛大郎:53.3キロ
枦山祐気:54.8キロ

<バンタム級/5分1R>
川口彪弥:61.5キロ
高橋風我:61.2キロ

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45 MMA MMAPLANET o ウー・シャオロン 吉田開威

【WKG&M-1】わずか10秒で会心の一撃! 吉田がガード越しに左ハイを効かせてウーにKO勝ち

<バンタム級/5分3R>
吉田開威(日本)
Def.1R0分10秒 by KO
ウー・シャオロン(中国)

八角形のリングで行われる試合、サウスポーの吉田に対し、ウーが距離を詰める。吉田は下がりながら左ハイ! ウーはブロックしたものの、ガード越しに効いたのか背中からダウンする。動けないウーに吉田がパウンドを連打すると、レフェリーが試合を止めた。わずか10秒、吉田が衝撃のKO勝ちを飾った――のだが、まるで放送事故でも起こったかのように撤収し、次の試合のアナウンスが始められたのは如何ともしがたい。これもアウェイというべきか。とにかく吉田自身が最も欲していたKO勝利だった。


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45 MMA MMAPLANET o UFC YouTube ウー・シャオロン フェルナンド 吉田開威

【WKG&M-1】中国でウー・シャオロンと対戦、硬式空手&MMA 吉田開威「アウェイのほうが力を出せる」

【写真】ウー戦の次は8月に東京で行われる硬式空手の世界大会に出場するという吉田 (C)SHOJIRO KAMEIKE

8日(土)、中国は新疆ウイグル自治区アクス市のアクス市で開催される「WKG&M-1 MMA FIGHT in アクス」で、吉田開威が中国のウー・シャオロンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

硬式空手での実績を引っさげてグラジエイターでデビューした吉田は、ここまでプロ4戦無敗。しかしMMAで勝利するまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。「硬式空手をメジャースポーツにしたい」という想い、MMAと強さ、そしてウー・シャオロンについて語りつくすMMAPLANET初インタビューです。


硬式空手の間合い感覚はMMAと似ていてる

――吉田選手は「硬式空手出身のMMAファイター」というよりも、現在もMMAと硬式空手の試合に並行して出場しているのですね。

「そうですね。今MMAでもセコンドについてくれている父が空手をやっていて、僕も3歳の時に空手を始めました」

――空手に関して所属道場は「剛柔流」で、出ている大会は「硬式空手」ということですか。

「ここは難しいところで――もともと空手の流派と、組手(試合)のルールというのは別モノなんですよね。簡単に言うと、『どの流派をやっているのか』と『どの組手をやっているのか』が分かれているということです。僕は剛柔流という流派をやっていて、硬式空手という組手のルールを使って練習し、硬式空手の試合に出ています。

本来の空手は流派だけで、その技術を使うためには組手のルールが必要だから、どの組手の大会に出るのかというお話で。剛柔流をやりながらフルコンタクト空手の大会に出たり、剛柔流から伝統派といいますかオリンピック空手のルールに出ている選手もいますから」

――なるほど! ルールのお話でいえば、硬式空手には組みや投げがあるのですね。

2019年のアジア・チャンピオンシップで優勝(C)KAI YOSHIDA

「はい。硬式空手のルールとしてはスーパーセーフと呼ばれる硬い面と胴を着けて、昔は足のサポーターは無しでした。今は手と足にサポーターを着けます。海外の大会ではサポーターを着けてはいけないところもありますね。

そこから腰から上の投げ……柔道のような投げ技は無しです。掛け、その場の投げ=持ち上げて倒すことはできます。あとはヒジ打ちもある程度は有りで、比較的『何でもあり』の側面を持っているのが硬式空手です。防具を着けて、しっかり当てることもできるのは硬式空手の良い点だと思います。2017年にロシアで行われた世界大会は『その場の投げ』以外のテイクダウンも有りでした。

。入って倒して極める(相手を制した状態からの突き)はポイントになります。やはりロシアの選手は投げまで全部できます。日本で硬式空手をやっていて、テイクダウンまでできる選手は少ないですよね。ウチの道場は全日本チャンピンを何人も輩出していて、硬式空手の中では強い道場だと言われています。他の道場とは何が違うかといえば、投げを練習している点です。組みも練習したうえで、硬式空手の試合に出ています」

――吉田選手も空手を始めた時から、組みや投げの練習も行っていたのでしょうか。

「昔からやっていました。MMAを始めてまたMMA独特の投げを教わりましたが、それもまた硬式空手にも使えますし。その場の投げは、世界に出る前から練習していましたね。

ウチは父が合気道、柔道など様々な武道や流派を学んでいました。自分が小さい時は、父が一人で沖縄に行って空手を学んできたり。投げに特化しているわけではないけど、一通りは何でも知っているし、その点では今もセコンドについてもらい、助けてもらっています。あとは柔道をやっている方が出稽古で来られた時に、こちらも投げを教わったりという交流からも技術を吸収しています」

――では今の吉田選手にとっては、空手家としてMMAを戦っているということですか。

「MMAで成功することも目標ではありますが、硬式空手の認知度を上げてメジャースポーツにしたいという気持ちは強いですね。そのためにも硬式空手の試合は必ず出ますし、硬式空手を背負ってMMAにも出続けたいです。

硬式空手は間合いがすごく特徴的な競技で、しかも打撃は当てる。当てたらポイントになる、と初めて見る方でも分かりやすいルールで。投げる技術も残っていますし、そのルール自体がMMAでも通用するものです。さらに言えばMMAよりも安全に行えるルールだから、もっとメジャーになって良いものだと思っています」

――MMAを戦う選手がベースとしている格闘競技は様々ですが、お聞きするかぎり子供たちにとって安全なMMAの入り口にもなりそうです。

「そうだと思います。もちろんMMAをやる場合は別途、寝技の技術を練習する必要はあります。でも、まずMMAをやるための基礎としては良いルールだと思うんですね。一番良いのは間合い感覚です。僕にとっても一番の武器なのですが、硬式空手の間合い感覚はすごくMMAと似ていて。いかに自分の打撃を当ててポイントを取り、相手の攻撃は当たらないように徹底するか。その間合い感覚はMMAでも役に立ちます」

アマチュアMMAは8年間無勝

――吉田選手の場合は、さらにNAGOYA TOP TEAM……いわゆる寒天練習にも赴いているのですね。

「僕がNTTに辿り着くまでの道のりも長かったです。中学生の時にMMAを始めたいと思ったのですが、父は『自分が教えたことだけでMMAに出てみよう』という感じでした。でも寝技は全くできないままアマチュアMMAの大会に出続けて、全て負けていたんです」

――全て、というのは……。

「中学から高校、専門学校に行くぐらいの8年間で、何十戦したかは分からないですが全て負けました。8年間無勝です(苦笑)。毎試合、漬けられたり投げられたり……。僕の打撃を受けて相手が鼻血を出していても、テイクダウンされて負ける試合が続きました。

そんな中でまず柔術を始めてみようと思い、細川顕先生に柔術を習うようになりました。それでもアマチュアMMAでは、なかなか勝てなかった。MMAの練習をしていなかったので仕方ないですよね。

父としては、柔術はOKだけどMMAのジムに行くのは――自分の技術でMMAを戦ってほしいという気持ちが強かったようです。でもそこは振り切って、まず和田教良さんのガイオジムへ『パーソナルトレーナーをやらせてください』と応募しました。トレーナーを続けていると『一般MMAクラスに参加して良いよ』と言われて。最終的にグラジエイターのオープニングファイトで勝ったあたりで、和田さんの紹介でNTTに参加させてもらうようになりました」

――もしかして2023年3月にグラジのオープニングファイトで藤井丈虎選手を下した時が、MMA初勝利だったのですか。

写真は2023年12月のフェルナンド戦。間合いの取り方に特徴があることはもちろん、蹴りやヒザの打点も高い(C)MMAPLANET

「8年間ずっと勝てなくても試合に出続け、ようやく勝つことができました。僕はプロルールのほうがやりやすいし、特に顔面へのヒザ蹴りが認められているのは大きいです」

――2023年はプロデビューから4連勝を収めています。その中で印象に残っているのは毎回、試合後に悔しそうな表情を浮かべている点です。せっかく勝ったのだから、もっと喜べば良いのに……と思ってしまいます。

「プロデビュー戦以外、3試合は全て判定決着ですよね。MMAでもストライカーとしてやっていくなら、KOしないといけないと思っています。だから毎試合、KOできず『打撃で漬けた』という試合内容になっているのが悔しいんです」

――「寝技で漬ける」という言葉は聞きますが、「打撃で漬ける」というのも言い得て妙ですね。

「先ほども言ったとおり自分は、相手に入らせないとか間合いの取り方が得意です。そこから倒し切れていません。硬式空手で倒し切ることはあるけど、まだMMAではKOする感覚がないんです。他の空手出身のMMAファイターを見ると、しっかり振り抜いて倒し切っている。でも自分はその面が足りず、倒し切れない試合が続いてしまいました。そんな試合内容に納得いっていないんですよ」

空手で経験してきたからこそ、次の試合もいつもどおり戦える

――今回はグラジではなく、中国の新疆ウイグル自治区で試合に臨みます。

「自分にとってはグラジが主戦場です。でも自分自身の試合内容に納得がいかず、ここは一度、場所を変えたほうが良いのかなと思いました。今まで空手でもアウェイや逆境のほうが、力を出すことができていました。

たとえば『全日本極真護身空手道選手権』という、いろいろな流派の選手が集まる無差別の大会で優勝したことがあります(2022年4月、第1回大会で優勝)。あの時はすごくアウェイな空気を感じましたけど、そこで絶対に勝ち切りたいという気持ちがあって。それだけアウェイなところに身を置いたほうが力を出せると思いましたね。

海外で試合をしたのは、ロシアが初でメチャクチャ気持ちも浮いていました。すごいプレッシャーに押しつぶされそうになって。そんな状況を乗り越えたからこそ、次にカザフスタンでアジアチャンピオンシップに出場した時は、落ち着いて試合をすることができたんです(結果は優勝)。

やっぱり一回経験しておくと違いますよね。もし今回が初の海外試合だったら、ものすごく緊張していたはずです。そういったことを空手で経験してきたので、次の試合も落ち着いて、いつもどおり戦うことができると思います」

――今回対戦するウー・シャオロンについては、どのような印象を持っていますか。

「まず情報が少なくて……。サンボがバックボーンで、あとは打撃とレスリングという、まさにMMAという感じですね。打撃主体で、テイクダウンにも行くけど寝技師というわけではなくて。自分としては間合い感覚を生かして、相手を入らせない自信はあります。

今回はリングの試合なので何とも言えない部分はありますが、それでも壁レスから立ち上がることについても問題ないと思っています。どちらかというと自分の打撃の精度を、どれだけ高めていくことができるか。打撃のドリルや打ち込みで精度を高めてきました」

――試合を楽しみにしています。では最後に、MMAを戦っていくうえでの目標を教えてください。

「UFCに行きたいです。MMAを見始めた時から、UFC世界王者になることが一番の目標でした。ただ、UFCへ行くまでにMMAで稼げるようになることが今の目標です。格闘技で生きていくというのは、まず強さを追い求めていくことは当然で。同時に格闘技で稼げるようにならないといけない。そのためには、やはり認知度は欲しいですし、まだまだ国内でやるべきことはあると思っています。

かといって『話題性だけで別に強くない』という選手にはなりたくないです。強さだけでファンを増やしている堀口選手には憧れます。あそこまで強さだけで人気があるのは凄いことだと思うんですよ。格闘家として一番の理想は、堀口選手です」

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