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【Special】「あそこを目指して欲しい」。柏木信吾のこの一番から中央アジアの猛者たちへ、プロローグ

【写真】強さを目指すなら、中央アジア勢に目を瞑ることはできない (C)RIZIN FF

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。「柏木信吾が選んだ2024年6月の一番」からスピンオフ、そしてアジアの猛者特集に通じるインタビュー後編。
Text by Manabu Takashima

6月9日に行われたRIZIN47で強いインパクトを残したラジャブアリ・シェイドラフとダウトベック、RIZIN46のイルホム・ノジモフら中央アジア勢の来日について、その背景を柏木氏に語ってもらった。

そこには円安を要因とする現状に合致した最善の強い海外勢の招聘の最善策ともいえるが、同時に中央アジアの猛者を躊躇なく招聘できるのは、RIZINの日本人選手の力があるからだ。実際パンクラスもタジキスタンの選手を招聘しているが、IMMAFからプロデビューという選手たちがランカーを撃破し、GLADIATORへ外国人選手をブックする長谷川賢は「カザフスタンの選手を呼ぶと、今のグラジに出ている選手で勝てない」と断言している。

ダウトベック、シェイドゥラエフの招聘経由、そしてこれからについての柏木氏の言葉が、個々のインタビューへのプロローグとなる

<柏木信吾が選んだ2024年6月の一番はコチラから>


クレベル×ダウトベックは代替カードとして

――そういうなかでRIZIN47にカルシャガ・ダウトベック、ラジャブアリ・シェイドゥラエフの両者を同時に招聘したのは、何か意図があったのでしょうか。

「ダウトベックはもともと良い選手でした。ただ朝倉未来選手に一度負けています。それもあって疎遠になっていたことがあります。そこでTOP BRIGHTSで松嶋こよみ選手に勝って『RIZINで見たい』という声が聞かれるようになりました。

ダウトベックは打撃の選手でフィニッシュできます。マッチアップ次第では皆に喜んでもらえる試合をする選手です。だから、タイミングが合えばと思ってきました。それでも負けている選手を呼び戻すのには、なかなか踏ん切りがつかない……なので、随分と放置してしまっていましたね。

それがRIZIN47では堀口恭司×セルジオ・ペティスとクレベル・コイケ×フアン・アルチュレタという2つのカードが確定しているなかで、誰かが欠けた時にそこに当てはまるピースを考えるとクレベル×ダウトベックは代替カードとして成立する。本来は補欠的ぐらいだったのですが、カードがどんどん決まるなかで、ダウトベックの試合を組もうということになって。すぐに関鉄矢選手に連絡をした感じです」

――力は最初から買っていたということですね。

「ハイ。でも能面なので、なかなかストーリーが創り辛い。キャラが創り辛いというのはあったのですが、あの試合を続けてくれれば――それがキャラになるとは思っていました(笑)。で、実際に試合を見るとやっぱり強い」

――プレッシャーの掛け方、そして踏み込み。関選手が日本人選手のアベレージ的にリトマス試験紙の役割を果たすとすると、悔しいですが違いは明白でした。

「序盤から右に回らされていました。最初はアレ、どういうことだろうと思ったんですけど、それはもうダウトベックにそういう風に動かされていた。左回りができなかった。だからダウトベックはリングの方が良いんじゃいかと思うぐらい、追い足が良かったです。関選手の苦しみが、伝わってくるような試合でした。

上下を散らして、ローからハイを狙っていたと思いますが、あのプレッシャーの強さは……」

――被弾したらしたで、過去に経験したことがない拳だったかと。

「岩みたいだったと言っていました」

――左フックでよく立ち上がったと思いました。しかしフィニッシュの左ボディフックが、また強烈で。

「もっと見たいと思えるファイトでしたよね。寝技がどうなのかというのもありますが」

太田忍選手が手が付けられなくなった時の相手として、シェイドゥラエフは呼びたかった

――ではシェイドゥラエフに関しては?

「シェイドゥラエフはアゼルバイジャン大会をやった時に、中央アジアからアゼルバイジャンに選手を呼ぼうということで、現地のプロモーションやマネージャーと繋がりができました。そのなかの1人が、シェイドゥラフの名前を出してきたんです。僕もRoad FCでヤン・ジヨン戦を見ていたので、ぜひ欲しいと思いました。

ただ最初はバンタム級として考えていたんです。バンタム級は太田忍選手がそろそろ手がつけられなくなってくると思うので。あと3試合、4試合と経験を積むと無双状態になるのではないかと僕は思っていて。太田忍選手が手が付けられなくなった時の相手として、シェイドゥラエフは呼びたかったです」

――おお、そういうことだったのですね。これはもう、今後のバンタム級戦線を見るうえで貴重な意見だと思います。

「そういうことで契約をしたのですが、Road FCでは63キロでも計量を失敗しているので、『62キロで本当に戦える?  RIZINは体重オーバーをした選手には凄く厳しいよ』という話をしました。そうしたら66キロで戦うという返事で、フェザー級になってしまったんですよ(笑)」

――一気に2人も……。こんなに強いの同時に要らないだろうという声が出るのも頷けます(笑)。

「そうですね……僕の中で予定が崩れたというか、フェザー級にはもうダウトベックとイルホム・ノジモフという中央アジア勢とビクター・コレスニックというロシア人選手がいる。もうこれ以上、突っ込む必要がない強烈な駒がバンタム級でなくフェザー級を選んだということなんです(苦笑)。

こういうことになったのですが、バンタム級に強い外国人選手を1人、2人と入れたいと思います」

――う~ん。バンタム要員の予定だったシェイドゥラフが武田光司選手に完勝したという事実は重いです。

「武田選手だったらフィジカル負けはしないだろうと思っていました。同じ生態の選手を当てるというイメージでした。シェイドゥラエフは本当に本物なのか。そういう意味で武田選手と戦うことで分かる。戦績がキレーで、パーフェクトでも実は、それほど強くない選手もいるじゃないですか」

――ハイ。

「ヤン・ジヨンに勝っていると言っても、そこで株が大いに上がるというわけではない。だから武田選手と打撃、フィジカル、四つ組みになった時にどうなるのか。圧倒されるようなことがあれば招聘した側のミスになるなという不安も、本当はあったんです」

――それが……。

「逆の意味でヤバいなと」

――結果的にフェザー級転向の武田選手の価値を落としたマッチメイクとなってしまいました。

「本当にそうなんです……。武田選手の強いところで、完敗を喫してしまったので。正直、『やっちゃったなぁ』という想いになりました(苦笑)。試合後の武田選手からは悔しさよりも、虚無感が見られて。ホント、どうしましょう……。

と同時に、打撃が得意な選手からすると全然いけると思ったところはあるとは感じています」

――とはいえレスリングができたうえでの打撃でないといけないので、やはり武田選手にあの勝ち方は驚異でしかないかと。

「そこなんですよ。あの組みに対抗できて、打撃を入れることができるのか。触れる怖さがあると、打撃の威力は半減してしまうでしょうね」

――武田選手はいわば日本人のなかでは、ヌルマゴ・スタイルというか。組みが強力で打撃を苦にしない選手です。繰り返しますが、その武田選手にあの勝ち方をした……これは……。

「とんでもない選手を呼んでしまいましたね。まぁ、あとはスタミナがあるのか。武田選手がどこまで引き出すことができるのかという気持ちでもいました。だってあの動きを15分間続けるなんて、できないですよ。それができるなら、すぐに解約するのでUFCに行ってほしいです」

――バックを取るためのパスの圧力、フリップにつられなかった動きも秀逸でした。

「いや判断力も良いし、体幹も強いんでしょうね。際が強いというか、シェイドゥラエフは楽しいMMAを見せてくれました。MMA特有の際の攻防が凄く出来ていて。見ていて楽しいというか、心地よかったです。相手が武田選手だから、あの攻防が生まれた。MMAの魅力が全面に出た試合でしたね。僕はそう思います」

強い選手と戦うことはデメリットでなく、メリットになる

――外国人選手は勝てば、もうタイトル挑戦と一直線で来ます。ただし、RIZINフェザー級タイトル戦線を考えると、この2人があと1勝を挙げても挑戦はないと考えるのが普通で。同時にあの強さを見せつけられ、来日が途絶えるようなことがあれば「逃げた」と思います。柏木さん個人的としては、9月からノジモフも含めて中央アジア3人衆はどのようにマッチメイクしていこうと考えていますか。

「どこかで潰し合いをしてもらわないと、困ります。アハハハハ」

――アハハハハ。

「でも強者と強者が戦うというマッチアップでも、今のRIZINファンは乗れると思います。キム・ギョンピョとスパイク・カーライルの試合も、そこそこ盛り上がっていましたし。そろそろ、そういうのがあっても良いんじゃないかと」

――「中央アジア3人衆、誰でもやってやるよ」と声を挙げる選手に出てきてほしいです。

「そうですね。強い選手と戦うことはデメリットでなく、メリットになる。それが格闘家ですからね。強い選手同士をぶつけるだけでは、日本の現状としてビジネスは成立しない部分はあるかとは思います。だからこそ、彼らが生きるマッチメイクもRIZINには必要になってきます」

――9月にいきなり潰し合いが組まれたら、色々な意味で逃げたと言わせてもらいます(笑)。

「そこはまだないです。そこでは(笑)。日本人選手が困るから、潰し合わせるということはしないです(笑)。中央アジア勢に勝てば強さの証明になる。だからタイトル挑戦に近づく。そういう状況にしたいですね。ファンの期待値が上がれば、そこは逃げられなくなりますから」

――日本国内にいて直視しない傾向もみられる円安と向き合う柏木さん、僭越ながら中央アジア勢の投入はgood jobだと書かせてください。

「ありがとうございます。シェイドゥラエフを呼んで、褒められたのは初めてかもしれないです(笑)。でも、攻略はできます。ダウトベックもシェイドゥラエフも完璧ではないので。強いけど、日本人選手にはあそこを目指して欲しいです。

なぜ、ファイターをやっているのか。そこをもう一度、自分に問いかけて欲しいです。格闘技って強くなりたいからやっているんじゃないですか――と。その原点は大切だと僕は思っています。強いヤツはたくさんいるので、そいつらに勝つことを目標にしてほしいです」

――MMAPLANETみたいなことを言っているじゃないですか。

「ホント、会社で村八分ですよ(笑)。本当に社内で浮いていますからね、僕。ビックリするほど」

――アハハハハハハ。

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【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:6月 シェイドゥラエフ&ダウトベック=中央アジアの脅威<01>

【写真】これから数回に分けて、ノジモフ、タウトベック、シェイドゥラエフらの強さと、来日の経緯をお伝えしていきたい (C)RIZIN FF

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Manabu Takashima

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾という3人のJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。

今回は柏木信吾にMMAPLANETからリクエストした2024年6月の一番、6月9日に行われたRIZIN47からラジャブアリ・シェイドゥラエフ×武田光司カルシャガ・ダウトベック×関鉄矢の2試合を──月末を迎える前に、食い気味のタイミングで語ってもらった。

彼ら2人に加え、RIZIN46で山本空良を倒したイルホム・ノジモフというキルギス=シェイドゥラエフ、カザフスタン=ダウトベック、そしてウズベキスタン=ノジモフという中央アジア勢の強さを振り返り、「なぜ今、中央アジア勢なのか」を柏木氏に訊いた。


ムサエフやラモフの息抜きって、アイスクリームを食べることなんです

――掲載が半年以上、取材は実に11カ月も空いてしまいましたが、この間にMMAPLANET内外のゴタゴタもようやく着地点が見えてきました。このタイミングで、柏木さんが選ぶ今月の一番を食い気味に復活させて頂きたいと思います。

「ハイ。いや、楽しみですね。また、こうやって話をすることができて」

──ところでZOOMの背景からすると、海外でしょうか。

「ハイ、昨日からアイルランドのダブリンに来ていまして。このあとはタイに寄る予定です(※取材は21日に行われた)」

──相変わらずお忙しいなか、復活した今月の一番ですが、今回はMMAPLANETからの要望としてRIZIN47で強烈なインパクトを残したラジャブアリ・シェイドゥラエフ、そしてカルシャガ・ダウトベックの両者の戦いを振り返り、同時に中央アジア勢やアゼルバイジャンというコーカサス勢の登用という部分に関して、話を聞かせていただければと思います。

「分かりました。まず、彼らを招聘した背景から話せば良いでしょうか」

──アッ、スミマセン。その前になぜ、中央アジア、コーカサス軍団は強いのか。そうなるとすぐにジューサーだ云々という話になるのですが、そこ以外でも要因を見つけたくて。自分はキルギスには行ったことはあるのですが、コーカサスは未踏の地で。アゼルバイジャンを訪れたことがある柏木さんは、現地で彼らを見て何か想うところがありましたか。

「自分達が理解できない強さにぶち当たると、なんでもドーピングに結びつけるというのも…僕はどうかなという想いはあります。アゼルバイジャンだけでなく、隔離が必要だった2週間の間に見た──トフィック・ムサエフやヴガール・ケラモフは本当にストイックでした。イスラム教徒で酒も飲まないし、遊ばない。殆ど息抜きもせずにトレーニングに没頭しているんです。だって試合後の彼らの息抜きって、アイスクリームを食べることなんですよ。

試合が終わるとアイスクリーム・パーティーをやって、アイスとピザを食べる。翌日から、もう次の試合のことを考えた生活に戻っています。そんなストイックな生活を3年間、5年間と彼らはやってきています。食事にも本当に気を遣っていますし」

──中央アジア、そしてムスリムとなると豚肉は食せず、羊肉中心かと。羊の肉は低脂肪高たんぱく。鉄分や亜鉛も豊富で必須アミノ酸も含まれていて、栄養価が高い割にヘルシーだと一般的に言われています。

「ほかの肉と比べるとヘルシーということですよね。何と言っても彼らは1年中、3部練習をしているんですよ。日本人選手も彼らと同じ生活をしていると、彼らに近づくと思います。彼らの練習量、食生活、そしてストイックさを踏襲して、強くなれないのであればドーピングを疑うのも致し方ないですけどね」

羊肉と乗馬ですね。それが強さの鍵

──羊の肉に関していえば、もう20年も前の話ですがノルウェーに取材に行った時に、現地で伝統的な羊肉とキャベツの煮物を御馳走になりました。ユノラフ・エイネモのお母さんが創ってくれたのですが、ユノラフによると「これは人が歩いて移動をしている時に食べていた料理なので、車に乗るようになった現代人が食べると肥満体になる」とのことで。ただし、彼らは厳しい練習をしているから御馳走になるということでした。

「これは全く根拠のない僕の自論なんですけど、羊肉と乗馬ですね。それが強さの鍵だと思います。子供の頃から馬に乗って、羊を食っている人間は強い。そこがコーカサスや中央アジアの選手のベースにある。それが僕の自論です」

──柏木さん、モンゴルのウランバートルのジムへ行くと全てのジムの指導者が「ウランバートルの子供は体力も運動神経もない。彼らは地方の子供と違って馬に乗っていない。だから強いファイターは地方出身の選手ばかりだ。体幹、筋肉、反応全てが違う」と言っています。

「えぇ、そうなんですか!!」

──地方の子は遊びと生活が一体化していて乗馬とモンゴル相撲を続けているそうで。

「うわぇ、凄い。嬉しいです。ホント、モンゴルで馬に乗っている女性のS〇Xは凄いらしいですよ。気持ちが良いそうです」

──おっ、インタビュー終盤でないのにもう柏木節が炸裂ですか(笑)。しかし、男も女性も馬に乗っているカップルだとどうなるのか。

「……。スミマセン、いきなり、飛ばしちゃいましたね(笑)話を戻しましょう。RIZINが招聘している外国人選手の全てに言い当てはまるとは言わないですが、ケラモフとムサエフにドーピング疑惑が生まれるのは彼らが強いから。ずっとトレーニングをしてきて、今もピークに向かっているのだから……なかなか追いつけないと思います」

──押忍。そのなかでアゼルバイジャン勢に優るとも劣らないインパクトがあったRIZIN47……中央アジアの衝撃。シェイドゥラエフとダルベックの強さは、あの一夜でRIZINファンの脳裏に刻まれたのではないかと思います。

「そうですね。内部から戦犯って呼ばれています(笑)」

──アハハハハ。

「何してくれるんだって(笑)」

──そうなると別にMMAってことでなく、勝負だから勝つしかないです。

「ハイ。その通りなんです。箱庭派と開国派なんて、論議がありますけど……」

──えっ、そうなのですか。ペリーがやってきたのだから、もう鎖国はできないのでは。

「現実を見てしまったわけですからね。現実から目をそらしてきた結果が今なんじゃないかと。もちろん、お金が続かないと格闘技興行は打てない。だから箱庭を大切にするという気持ちも分かります。でも今のRIZINは、その狭間をやってきている。

RIZINの人気はストーリーメイク、各選手達を主人公にしていく。それは世界にはないユニークなスタイルです。そのストーリーメイクも、日本人だけでなく海外勢まで広がって来てもRIZINのファンなら楽しんでもらえるんじゃないかと僕は思うようになっています。もちろん、彼らは日本人選手のように創り手側の意図をくめるわけじゃないですけど」

──創るって、別に目の前にある材料にスパイスを与えるだけも良いって思うことがあります。なんだが、最近は切り刻んで揚げて、焼いて、ソースを掛けてって。実際の本人と伝わってくる人間性が違うやんと思うことが多いです。

「う~ん、バランスですよね。『ファンなんて関係ない。観客なんて、どうでも良い』、『自分のためにやっているんだ』という感じの選手はなかなか売り出すのは難しいです。日本の格闘技で食っていくには。それが日本の格闘技の歴史だし。

仕事ってギブ&テイクですから、テイクばかりだと難しい。そういう選手はそれこそ修羅の道、UFCの道を往くと。そういう茨の道の一択しかなくなると思います」

馬のアキレス腱の煮凝り

──素でも面白くないですか。

もう12年も前の話なのですが、ジャダンバ・ナラントンガラグに「モンゴル人選手の強さの源は?」と尋ねると「馬のアキレス腱の岩塩です」と朴訥なまま返答してくれて。

「うわぁ、最高ですね。それがストーリーになっていくなら。でも、そこがストーリーになるって我々のようにはみ出ている人間なんですよ」

──えっ、我々ははみ出ているのですか!!

「そこは、そう思ってないですよね(笑)。マスに向けたコンテンツを創るには、分かりやすさですよね。キム・スーチョルが任天堂Switch発言で、人気者になっちゃったように。あの発言で共感できる人が、たくさん生まれたんだと思います。スーチョルは素なんですけど、そういう部分を見つけたあげることで、マスが共感できるアングルを創り上げるというやり方は全然有りだと思います」

──そのために創り手の方が、よりMMAを理解すれば拾い上げる要素を今よりも広がるかと。

「その通りですね」

感謝をしてくれて日本で戦ってくれる選手となると、中央アジアの選手

──そういう今後への期待を先に話してもらったのですが、改めてなぜ中央アジア勢だったのか。そこを柏木さんに伺いたかった次第です。正直なところ、彼らはRIZINも招聘している元UFCファイターよりもハングリーで、日本で成功するんだという強い意思が感じられました。

「彼らの来日は、円安の影響があることは隠せないです。だから元UFCファイターよりも、Road to UFCかRIZINかという若くて強い選手。そしてコストパフォーマンスの良い選手を招聘するということですね。それに元UFCといっても、至るところにいて。だから元UFCファイターでも資金を投入して呼ぶなら、最低限ランカーでないと。元UFCっていうだけでコストパフォーマンスの良くないファイターを呼んでも、ファンの人達に喜んでもらえないです。

そのファイトスタイルが特別で、どうしても戦って欲しいという風にならない限り、なかなか元UFCファイターというだけ円安の壁を乗りこえて飛びつけないですよね」

──円安の問題は輸入業からすると、本当に大問題です。

「ハイ、少しでもコストを抑えて強い選手。しかもオファーを喜び、感謝をしてくれて日本で戦ってくれる選手となると、中央アジアの選手になります。南米も本当は喉から手が出るほど、呼びたい選手がいます。特にLFAブラジル大会なんてチェックしていると、本当に魅力的な選手だらけです。皆、RIZINで活躍できるだろうって」

──確かにLFAのブラジル大会はフィーダーショーとしても頭抜けていますね。

「ハイ。本当にヤバいですし、全面対抗戦をすればRIZINは全敗するんじゃないかと思います。でも、渡航費がブラジルと中央アジアでは違います。それこそコスパに関係してくるので、ブラジル勢は呼びたい選手の数が本当に多いけど中々ハードルが高い。結果、才能があってダイヤの原石で継続して招聘できる選手となると、中央アジアになります」

<この項、続く>

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【SUPER RIZIN03】久保優太と対戦、斎藤裕「MMAファイターとしての完成度はまだまだ上げられる」

【写真】丁寧な言葉遣いのなかにも、MMAファイターとしての矜持が感じられた斎藤だった (C)TAKUMI NAKAMURA

7月28日(日)さいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、斎藤裕が久保優太と対戦する。斎藤にとって2023年大晦日のクレベル・コイケ戦以来の再起戦が決まった。これまでRIZINの舞台で様々なタイプの相手と戦ってきた斎藤だが、元K-1ファイターとMMAで戦うのは平本蓮に続いて2度目。斎藤は「平本戦に向けてやってきたことが間違いなく久保戦にも出る」と平本・久保戦は地続きの試合だと見ている。
Text by Takumi Nakamura

また4月・6月と外国人選手たちの躍進が目立つ中、斎藤は「自分自身に可能性を感じて試合をして、強い自分を見せて勝って、もっと先を見ていけるように。お客さんにも期待を持ってもらえるような試合をしたい」と語った(※取材は5月24日の超RIZIN03の会見終了後に行われた)。


シバター戦をやったことで、結果的に確実にキャリアを積めている

――昨年大晦日のクレベル・コイケ戦後はどのように過ごしていたのですか。

「今後どうするかはすぐ決めなくてもいいかなと思いつつ、太らないように気をつけながらラーメン活動だったり、発信活動だったり、色んなことをやっていました」

――少し試合モードから離れたいという気持ちもあったのでしょうか。

「僕の中ではクレベル選手に勝ってタイトル戦線に行くつもりだったんですけど、そこで負けてしまって。あとは自分がやりたい選手がパッと浮かばなくて、自分は年齢やキャリア的にも一つの勝ちと負けが大きく状況が変わる中で、すぐ次をどうするか決められないなと思っていました」

――斎藤選手はフェザー級の選手と一通り対戦しているので、対戦相手以外の部分で自分にネジを巻くことが簡単ではないのかなと思っていました。

「戦う理由が欲しくなるし、頑張る目的がないと、ですよね。相手は誰でもいいから(試合を)やりますとはどうしてもなりにくい。それで対戦相手と興行のことも考えつつ、4月・6月に大会はあるけど、とりあえずそこで試合するというのもどうなのかな…と思っていました。それで(試合を)決めきれずにいたという部分はありますね」

――その斎藤選手が戦うモードになったのは、7月に超RIZINが開催されるということが大きいのでしょうか。

「それはあります。会見でも言った通り、今回は15年ぶりの(さいたまスーパーアリーナの)スタジアムバージョンで、僕自身その景色を会場で見たことがないんです。この15年間で格闘技を続けられなかった選手もたくさんいて、自分は今でも現役でいるということを改めて考えた時に、自分がそこで試合をやりたいと思って実際にできるんだったら、自分にもファイターとしての役割があるんだと思い始めましたね。もう5年くらい早かったら…と思うこともなくはないですが、今がそのタイミングなんだなと思いますね」

――ちなみに15年前はまだアマチュアでしたか。

「当時はプロを目指してアマチュアで実績を積んでいた頃ですね。まだ東京にも来ていなかったです」

――では超RIZINでの復帰に向けて準備を続けていたのですか。

「色々と試合のタイミングをRIZINサイドともやり取りさせてもらうなかで、最終的にここで決まりました」

――対戦相手として久保選手のことは想像していましたか。

「3月に高橋(遼伍)選手に勝たなければ候補に挙がってくることはなかったと思うので、もしかしたらあるかなくらいです」

――久保選手はK-1での実績を踏まえて、普通のMMAファイター選手とは違うキャリアを積んできた選手だと思います。斎藤選手とは真逆のキャリアだと思うのですが、久保選手のことはどう見ていましたか。

「デビュー2戦目がシバター戦でしたからね(※正式結果としてはエキシビションマッチ)。そのあとがプロレスラーの奥田啓介選手で、木下カラテ戦を挟んで、安保瑠輝也戦じゃ
ないですか。なんとも言い難いキャリアですよね(苦笑)。

ただ言い方を変えればシバター戦をやったことで、飛び級で試合ができない=一から試合をやらなければいけない状況になって、結果的に確実にキャリアを積めているんだなと思い
ます」

――その積み重ねが一つの形になったのが高橋戦だと思います。

「あの試合は相性もあったと思います。高橋選手の得意なローキックを久保選手がちゃんとディフェンスできたという。しかも久保選手はディフェンスだけでなく、自分から攻撃する・得意の形を作りながら、テイクダウンされない技術も試合で見せましたよね。接戦だったと思いますが、確実に力をつけてきている印象はあります」

――特にあの試合は首相撲的な技術が光っていました。

「首相撲のフレームの作り方ですよね。組まれても相手に対応できることが実力の証明だと思います。もちろんまだ穴はあると思いますが、自分ができることを明確にして勝つための試合運びを組み立てているんだなと思います。ただ僕とやったら色々と分かるんじゃないですかね。彼の良いところと悪いところが如実に出ると思います」

――カード発表会見では「最短で終わらせる」という言葉もありました。斎藤選手の口からそういった言葉が出るのは意外でした。

「MMAにおける最短ルートをやるということなんですけど、仕留めるべきときに仕留める。自分からやらないとやられる。その気持ちを持っていないと、ああいう打撃に長けている選手なので、試合が長引いた時に一発ガツンともらったら効かされてしまいますよね。そういう意味では理想を言うと1秒も一瞬も隙を与えない、そういうイメージです。スタンドで立ち会う時間を1秒でも長くしたいのが向こうの作戦だと思うので、それに対する自分の答えを持って試合をしたいと思います」

――久保選手をフィニッシュするイメージはできていますか。

「はい。勝ちパターンも3~4つは考えています」

自分が良くなるためにできることはたくさんある

――改めですがK-1王者の久保選手とMMAで試合することは想像していなかったですよね。

「はい。でも斎藤VS平本蓮もそうですよね」

皇治と芦澤竜誠の乱闘劇の際の斎藤。彼のやってきたMMAのポジションを表しているかのような表情だ

――それが実現してしまうのがRIZINという舞台でもあると思います。

「我ながらすごいキャリアになってきたなと思います。直近3試合でいったら平本、クレベル、久保優太。その前には朝倉未来やヴガール・ケラモフともやっていますからね。これだけ振れ幅がある選手はなかなかいないと思います。でも言い方を変えればRIZINに来て、対戦相手には困らなかったというか、色んなタイプの相手と色んなシチュエーションで戦ってきたなと思います」

――競技者としても色々なファイターと戦うことはプラスになりますか。

「今回は平本戦に向けてやってきたことが活きてくると思います。先ほども話したように平本戦の次がクレベル戦で、対戦相手のタイプが真逆じゃないですか。平本戦でやったことをクレベル戦に活かす・アジャストするのが難しかったんです。

でも平本選手と久保選手は同じストライカーで、平本選手は(久保と同じ)サウスポーにも構える。だから平本戦に向けてやってきたことが間違いなく久保戦にも出るだろうし、その次の試合にも活きてくると思います。だから無駄な試合は一つもないし、一戦一戦ステップアップしていきたいと思うので、久保戦もすごくやりがいがあります」

――僕はMMAは経験が重要な競技だと思っています。色んな練習をして、色んな選手と試合経験を重ねることがプラスになって、コンディションを整えることができたら、年齢を重ねても強くなることができる。外から見ていて斎藤選手はそういうモードに入っているような気がするんですよ。

「実は結構色んな人にそれを言われるんですよ。例えばクレベル戦に負けたあと、ずっと自分の試合を見てくれている人に『君のMMAは完成したの?』と言われて。まだ完成はしてないよなと思いながら、『こういうことをやったらもっとよくなるんじゃない?』という話を聞いたりすると、自分が良くなるためにできることはたくさんあるなと思って。

そのためには練習だけじゃなくて、試合も必要だし、意味のある相手とやることも大事。MMAファイターとしての完成度はまだまだ上げられると思いますし、今回は新しい取り組みも考えているので、それもプラスにできるようにしたいと思います」

――その新しい取り組みというのはなんでしょうか。

「実はタイのバンタオ・ムエタイ&MMAで一か月間練習することが決まっているんですよ。慣れ親しんだ東京を離れて練習するのは初めてのことで、不安も半分・希望も半分ですが、吸収できるものはすべて吸収したいと思います」

――ここからの斎藤選手のファイターとしての目標を聞かせてください。

「タイトル戦線ではクレベル×アルチュレタの勝者が鈴木(千裕)選手に挑む図式になると思いますが、ほかの海外ファイターもどんどん増えていますよね。4月のビクター・コレスニックやイルホム・ノジモフも強かったですし、6月にはカルシャガ・ダウトベックも出て、武田選手と対戦する選手(ラジャブアリ・シェイドゥラエフ)も相当戦績がいいですよね。これからはそういう選手たちとやっていくことになると思います」

――未知の強豪外国人選手が続々参戦するという意味では、RIZINの戦いも新しいフェーズに入ったと思います。

「僕もそう思います。外国人も日本人も選手は相当増えたので、そういう意味では対戦相手はたくさんいますよね。まずは7月しっかり勝ちます」

――大晦日以来の斎藤選手の試合を楽しみにしている人たちにどのような試合を見せたいですか。

「自分がやってきたものは格闘技で、それをデビュー戦からずっと変わらず積み上げてきました。今回で32戦目なのですが、たくさんの人に自分の試合を見てもらえる機会だと思っています。まだまだ自分自身に可能性を感じて試合をして、強い自分を見せて勝って、もっと先を見ていけるように。お客さんにも期待を持ってもらえるような試合をしたいです。何が何でも勝ちます」

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【RIZIN.46】篠塚辰樹、初ベアナックル戦で衝撃KO勝利 試合中に感じた“ボクシングとの違い”を明かす 『Yogibo presents RIZIN.46』試合後インタビュー

29日に開催された格闘技『Yogibo presents RIZIN.46』(有明アリーナ)の試合後インタビューに選手たちが応じた。

●『Yogibo presents RIZIN.46』(有明アリーナ)
・第10試合 フェザー級タイトルマッチ
【王者】鈴木千裕 vs. 【挑戦者】金原正徳
・第9試合 バンタム級
牛久絢太郎 vs. 太田忍
・第8試合 日韓対抗戦3番勝負 バンタム級
中島太一 vs. キム・スーチョル
・第7試合 日韓対抗戦3番勝負 フライ級
神龍誠 vs. イ・ジョンヒョン
・第6試合 日韓対抗戦3番勝負 バンタム級
倉本一真 vs. ヤン・ジヨン
・第5試合 ライト級
“ブラックパンサー”ベイノア vs. 井上雄策
・第4試合 フェザー級
中原由貴 vs. ビクター・コレスニック
・第3試合ベアナックルルール(2分5ラウンド)60キロ
篠塚辰樹 vs. ジャスティン・マルティネス
・第2試合 フェザー級
山本空良 vs. イルホム・ノジモフ
・第1試合 フェザー級
高木凌 vs. 西谷大成

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45 MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN46 イルホム・ノジモフ キック 山本空良

【RIZIN46】右を効かせたノジモフが、サブミッションを狙う山本をヒジ&鉄槌の連打でストップ

<フェザー級/5分3R>
イルホム・ノジモフ(ウズベキスタン)
Def.2R3分39秒 by TKO
山本空良(日本)

ノジモフがプレスをかける。コーナーを背負った山本が右カーフキックを受けて足を滑らせる。山本はノジモフの足首に手をかけにいくが、ここはノジモフが下がる。パンチを振るいながら組んだ山本が、ダブルレッグからボディロックで押し込んでいく。左腕を首にかけた山本はバックを狙いつつ、立ち上がるノジモフを肩固めの形で潰していく。しかしノジモフは左腕を山本の首にかけて立ち上がった。山本はノジモフの左足に左足を掛けている。そのままノジモフの体をよじ登っていく山本だが、ノジモフに潰されてしまった。ボトムの状態でコーナーに押し込まれた山本は、ノジモフの右腕を十字で取るも、踏みつけの連打を受けてしまう。十字に失敗した山本はノジモフの左足を取りに行くが、ノジモフがパンチを上下に連打する。さらに左ヒジを落とす。ノジモフは左足を抱えたままダースチョークを狙い、これは極まらずもトップをキープした。

2R開始前、ノジモフにロープ掴みの警告が与えられたことが発表される。ラウンドが始まると、ノジモフの右を受けた山本がフラつく。遠い距離からテイクダウンを狙う山本。ノジモフは長いリーチを生かしたパンチを利かせる。組付けない山本は下になったがノジモフはグラウンドに付き合わずスタンドのまま、レフェリーがブレイクを掛けた。山本はダブルレッグでグラウンドに持ち込んだが、ノジモフの左ボディ、顔面への連打を受けてダウンする。ノジモフがパウンドで追撃すると、山本は三角絞めで捕らえたがすぐにノジモフが立ち上がった。スタンドに戻るとノジモフが右でダウンを奪う。山本もノジモフの足を抱えるも、パスしたノジモフがヒジと鉄槌の連打を浴びせてレフェリーストップを呼び込んだ。

TKO勝利を収めたノジモフは「フェザー級のチャンピオンになることを約束する」と挨拶した。


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