【写真】UFCにあってもフィジカルモンスター=ゴリンボを相手に、どのような接近戦打撃MMAをルケは見せるころができるのか (C)Zuffa/ UFC
明日7日(土・現地時間)にネヴァダ州ラスベガスのTモバイルアリーナで開催されるUFC 310「Pantoja vs Asakura」。同大会でヴィセンチ・ルケが、テンバ・ゴリンボと戦う。
Text Manabu Takashima
魔裟斗に憧れK-1の距離でMMAを戦ってきたオクタゴンの激闘王ルケは、コロナ期の4連勝からその後は1勝3敗と調子を落としている。パンデミック期間中、名前のあるファイターは戦いを控え、上昇志向の強いファイターは次々と試合を受けた。
そんな時期に名を挙げたものの体は疲弊し、調子を落とした。ルケもその1人かどうかは分からないが、彼は負けが込む間に自身の戦い方を見つめ直してきたという。ニック・ディアス戦が流れることすら想定内、溢れんばかりの戦闘意欲を持ちながら落ち着いた様子のルケ。彼は再びタイトルに向けてウイニングトラックを駆けることができるのか──。
──ヴィセンチ、テンバ・ゴリンボ戦を週末に控えた今の調子を教えてください(※取材は4日に行われた)。
「100パーセントの状態で試合に挑めるよう、仕上げることができた。肉体的にも精神的にも、完璧な状態でバトルに向き合える。キルクリフFCという世界一の練習環境があるので、問題なく調整できている」
──ゴリンボは同門の佐藤天選手に勝っていますね。チームとしてリベンジを果たしたいところではないでしょうか。
「その件があるから、この試合は普段以上に高いモチベーションで臨むことができている。タカシ・サトーは僕にとって最高の友人だ。タカシは1週間後に韓国で試合があるから、今回はずっと一緒に練習してきた。リベンジを果たして、タカシに続いてほしい。
タカシは素晴らしい柔道テクニックの持ち主で、ゴリンボのテイクダウンについて凄く効果的なアドバイスをしてくれたんだ」
──ところでヴィセンチは8月にニック・ディアスと対戦予定でしたが今大会に延期され、さらに負傷欠場でゴリンボと戦うことになりました。どちらがタフな相手云々は問わずして、ただ注目度という点では圧倒的にニック・ディアス戦がゴリンボ戦を上回るのは事実です。このビッグファイトが流れて、気落ちすることはなかったですか。
「8月にディアスとの試合がなくなった時は、本当に落ち込んだよ。それから12月にリスケされたけど、ディアスとの試合を想定して練習をしつつ、今回も試合が組まれないもあると思ってやってきた。誰も何が起こるか分からない。だからディアス戦がまたなくなっても、気持ちをキープすることができていた。もう、これ以上オクタゴンに上がれない時間を過ごしたくなかった。対戦相手がゴリンボになっても、これまで培ってきたモノを全てぶつける。
これが8月の時だったら、代役と戦うことはできなかったかもしれない。あの時の精神状態では。でも、今回は全く問題ない。全力でゴリンボに向き合い、最高のバトルを繰り広げたい。今回のファイトキャンプではサウスポーだけでなく、色々なタイプのファイターとスパーリングを繰り返してきた。その頃から、何があっても大丈夫なように準備をしていたんだ。誰とでも戦えるように」
──ところで2020年と2021年の好調ぶりと比較すると、この2年は厳しい時間を過ごしてきたかと思います。
「確かに過去4試合で3つも黒星をついてしまっている。それも絶好調だった2020年と2021年のファイトとキャンプの繰り返しという日々の跳ね返りだ。ちょっと心身ともに疲れてしまっていた時に、プライベートでも問題があって……。
でも、なかなか勝てない日々こそ僕が進化できるチャンスだった。自分のミスに直視して、トレーニングを続けて成長できた。この3つの敗北の分、僕は強くタフになっている。今のヴィセンチ・ルケがどういうファイターか、土曜日の夜に明らかになるよ」
──この間、ヴィセンチの得意だったキックボクシングのような距離の打撃戦が近年のMMAでは増え、この距離で戦う術を身に着けたファイターが多くなっているように感じます。
「僕はMMAでも、K-1の距離でアグレッシブに戦うスタイルを貫いてきた。でもUFCで20試合以上も戦っていると、少しずつ対戦相手が僕の戦いを研究し、対策を練るようになってきたことは感じていた。だからこそ、この間に自分の打撃戦を見直してきたんだ。技術の幅を広げ、より多様性のある戦いができるように。でも、このトライはすぐにオクタゴンの中で成果が分かるモノじゃない。年単位で堅実な変化があるかどうか。それが今回の試合で見られるのか。新しいウェポンを持ってオクタゴンに上がり、微調整を加えたファイトをするつもりだよ」
──激闘王が、自制をしてアグレッシブ一本槍ではないファイトを心掛けるようになる?
「時には距離を取って戦う必要は、あるだろう。ただ、積極的に戦うことが僕のファイトの軸にある。それは変わらない。積極性を失うことは、自分を見失うこと。そうなると戦えない。ヴィセンチ・ルケとして、僕は自分の戦いを全うするつもりだよ」
──では改めてゴリンボの印象を聞かせてください。
「彼は打撃もできるし、グラップリングも強い。スタミナもあるウェルラウンディットな対戦相手だ。人並外れたフィジカルの持ち主で、そのパワーで勝利を手にして来た。打撃にしても、組み技にしてもパワフルで粗い。それがここまでは、功を奏してきたといえる。
ああいう戦い方をされると、リズムが狂ってしまうことが多々あるんだ。ただ、彼はまだ僕と同じレベルの厳しい戦いを経験したことがない。この試合で、ゴリンボはソレを知ることになるだろう。キルクリフFCには様々なタイプのファイターが練習している。だから自分のリズムで戦えない時のアジャストの仕方、想定外の事態に陥った時の対処方法を身に着けている。土曜日の試合はゴリンボにとってビッグファイトになるだろうし、全力で向かってくることは間違いない。でも、僕はその全てに対応できるだろう」
──再起へ、どのような試合をしたいと思っていますか。
「前回の試合で、僕はもう下り坂を転がり始めたと思う人がたくさんいたようだ。でも、僕のピークはこれからだよ。33歳を迎えてフィジカル、メンタル、テクニックと全てにおいて成長している。来年、ウェルター級をドミネイトするだけの力があることをゴリンボとの試合で証明する。大きくジャンプをする前には、一度屈むことが必要だろう? 前回のまでの試合が、それだったんだ」
──押忍。ではヴィセンチの復活を期待する日本のファンに一言お願いします。
「日本の皆の応援に、いつも感謝している。僕のママは実は黒帯の空手家なんだ。子供のころから、ずっと日本の武道の規律を教わってきた。僕の夢は日本で戦うこと。いつの日か、実現させたい。そのためにUFC310で皆が楽しめ、納得いく試合をして勝利を手にすることを約束するよ」。
■視聴方法(予定)
12月8日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS
午前12時~PPV
午前7時 30分~U-NEXT
■UFC310対戦カード
<UFC世界フライ級選手権試合/5分5R>
[王者] アレッシャンドリ・パントージャ(ブラジル)
[挑戦者] 朝倉海(日本)
<ウェルター級/5分5R>
シャクハト・ラクモノフ(カザフスタン)
イアン・ギャリー(アイルランド)
<ヘビー級/5分3R>
シリル・ガンヌ(フランス)
アレキサンダー・ヴォルコフ(ロシア)
<フェザー級/5分3R>
ブライス・ミッチェル(米国)
クロン・グレイシー(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
ネイト・ランドヴェール(米国)
チェ・ドゥホ(韓国)
<ライトヘビー級/5分3R>
アンソニー・スミス(米国)
ドミニク・レイエス(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ヴィセンチ・ルケ(ブラジル)
テンバ・ゴリンボ(ジンバブエ)
<フェザー級/5分3R>
モフサル・エフロエフ(ロシア)
アルジャメイン・ステーリング(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ランディ・ブラウン(ジャマイカ)
ブライアン・バトル(米国)
<195ポンド契約/5分3R>
クリス・ワイドマン(米国)
エリク・アンダース(米国)
<フライ級/5分3R>
コディ・ダーデン(米国)
ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)
<ウェルター級/5分3R>
マイケル・キエーサ(米国)
マックス・グリフィン(米国)
<ライト級/5分3R>
クレイ・グイダ(米国)
チェイス・フーパー(米国)
<ヘビー級/5分3R>
ケネディ・ンゼチェクウ(米国)
ウーカシュ・プジェスキ(ポーランド)