>【写真】日本のチャトリ=柿原勇気ワードッグ代表。その由来は――容姿を似せにいったから(C)SHOJIRO KAMEIKE
22日(日)、大阪市港区の弁天町世界館で関西インディ・ケージファイティングのWardogが、44回目の興行=WARDOG CAGE FIGHT44を開催する。
Text by Shojiro Kameike
2014年にスタートしたワードッグは小径ケージを使用し、ユニファイドルールを標榜してMMA大会を行ってきた。その後、関西インディ団体として活動してきたワードッグは、その出身選手が同じく関西で活動するグラジエーターなど他の興行に進出。「西のフィーダーショー」ともいうべき展開を見せているワードッグの歴史と現在について、柿原勇気代表に訊いた。
――MMAPLANETで初めてワードッグについて報じたのは、215年の第2回大会でした。柿原さんは第5回大会からワードッグの代表に就任されていますが、ここで改めてワードッグの歴史からご説明いただけますでしょうか。
「まず『柿原勇気って誰やねん!?』というところからですよね(笑)。もともと僕はプロレスのリングアナウンサーをやっていて、第2回大会の頃はまだ代表ではなくリングアナを担当していました」
――懐かしい写真です! まだ柿原代表も若く、髪を後ろで結んでいる……。
「プロレスが縁で、ACFというプロレス&格闘技の興行を開催している近藤哲生社長と知り合い、さらにこのU.B.F.というジムがキッカケで初期の代表である永井明宏も加わって、ワードッグがスタートしました。実は、全てはU.B.F.から始まっているんです」
――というと?
「当時から僕は地下格闘技に関わっていました。でも僕が関わっている選手が試合に出ても、あまりにも勝たれへん。そこで選手がちゃんと練習できて、興行もできる環境を創ろうと思いました。それがU.B.F.――Umeda Battle Fieldやったんです。最初はここで地下格闘技やプロレスの興行も行っていたんですよ」
――えっ!? そうだったのですか。
「あの頃、僕は梅田で飲食店をやっていて。周辺の飲食店の店員さんを集めて、飲み放題にし、お客さんも入れてスパーリング大会を開催したのが最初だったと思います。その頃に近藤社長がウチのジムに来ていて――近藤社長は道頓堀プロレスを運営していて、自前のリングを持っている。だったらこのU.B.F.で行っていることを、外の会場でやってみようと始まったのがACFでした」
――そしてワードッグも……すべてはこのU.B.F.から始まったのですね。
「そこに永井が加わり、『ユニファイドルールを使ったMMAをやりたい』という希望があって、ACFとは別の興行として2014年11月にワードッグがスタートしました。でも最初の頃は素行の悪いチームも多くて、2015年7月の第5回大会から『素行の悪いチームは入れへん。ちゃんとMMAをやりたい人だけ出てもらおう』と決めたんです。永井に代わり、僕がワードッグの代表になったのも、その第5回大会からでした」
――第2回大会を取材した当時、専門誌には「地下格闘技に出ている選手がMMAを戦うのがワードッグ」という旨を記載しました。そのコンセプトは、今も変わりないですか。
「そうですね。もっと言えば、『MMAの底辺拡大』がワードッグのコンセプトでした。当時の大阪や近畿圏は、まだアマチュア修斗やアッマチュアパンクラスを経ないと、プロにはなれないという状況でした。プロのMMAファイターになるのは、それしか方法がなかったんです。一方で『格闘技をやりたいけど、どうやってアマチュアの大会に出ればいいのか分からない』という子たちもいて。そんな子たちが集まっていたのが、当時の地下格闘技でした。それと当時の大阪では、常にケージを使っているのはワードッグだけやったんです。まだ修斗、DEEP、パンクラスもリングでやっていて。パンクラスは東京でケージを使い始めた頃だったと思います」
――まだ修斗もVTJ、DEEPもDEEP CAGE IMPACTといった別興行として開催していました。新生グラジエーターの誕生も2016年6月ですから、当時の大阪ではケージ大会が珍しかったでしょうね。
「実は当時の大阪で、ケージを使っている大会といえば地下格闘技のほうが多くて。だからケージ=地下格闘技というイメージを持っていた人は多かったです。世界最高峰のUFCはケージで、大阪やとケージは地下格闘技という(苦笑)。すると地下格闘技出身でDEEPやパンクラスの大阪大会に出る選手のなかには、リングで試合をしたことがない子もいました。そういう子たちは『壁(ケージ)がないのに、テイクダウンされたら、どうやって立ち上がれば良いんですか?』って(笑)。そうしているうちに、地下格闘技から本気でMMAをやりたいという子たちが増えてきました。でもひとつ問題があって……」
――問題とは?
「それほど技術を持っていない子たちが5分2Rを戦っても、何もできずに膠着するだけなんですよ。試合が面白い、面白くないということではなく、まだプロとして試合ができるレベルになかった。そこで考え出したのが、5分1Rのセミプロ枠=NGFやったんです。今はブレイキングダウンが5分1Rでやっていますけど(笑)、ウチとしてはNGFで頑張った選手をプロに上げていく。そうやってプロとプロ以外を線引きしていこうと決めました」
――つまり、団体として選手をイチから育てていく。かつてプロレス団体が新弟子から採用していたように、ワードッグはプロレス団体の良い部分を取り入れたのですね。
「そういうことですね。大会で選手を育てていかなアカン。ルール面でいえば、アマチュアMMAってパウンドグローブ、レガース、ヘッドギアを着けて試合をしているところが多いじゃないですか。でも『はい、明日からプロです。全部外して試合してください』と言われて、すぐに対応できる選手は少ない。あと、いきなり『プロデビューです。チケットを売ってください』と言っても、売れるわけがない。そこでウチはNGFを通じて、イチから『プロ選手って、こういうことやぞ』と教えていくことにしました。どうやって格闘技を始めればいいのか、どうやって大会に出ればいいのか分からない子たちを、一人前の選手に育ててプロにする。それが、僕たちにとって『MMAの底辺拡大』のひとつです」
――地下格闘技が流行していた時代の課題として、地下格闘技に出ている選手もレベルが上がり、もっと上のレベルが高い大会に出たくなる。しかし、何をやっていいか分からない選手を放っておけば、結果何をするか分からないわけで……。
「はい。関東の人には誤解されているところもあるかもしれないけど、登っている格闘技という山は他と同じなんです。ただ、畑が違う――育て方が異なっているだけで」
<この項、続く>
■WARDOG44対戦カード
<WARDOGフライ級タイトルマッチ/5分5R>
[王者]MAGISA(日本)
[挑戦者]しゅんすけ(日本)
<ライト級/5分2R>
後藤丈季(日本)
そのまんまたなか(日本)
<ライト級/5分2R>
キンコンカンコンケンチャンマン(日本)
ユン・チュル(韓国)
<フェザー級/5分2R>
DAIGO(日本)
秋田良隆(日本)
<ウェルター級/5分2R>
前田慶次(日本)
SAIDER(日本)
<バンタム級/5分2R>
セイヤ(日本)
カーレッジユウキ(日本)
<フライ級/5分2R>
岩本尚(日本)
よしひと(日本)
<グラップリングマッチ ウェルター級/5分1R>
坂本オーズ昌良(日本)
ジャンジュオン(韓国)
<グラップリングマッチ ライト級/5分1R>
白樫忍者(日本)
ユ・エンホ(韓国)
<NGFライト級/5分1R>
だいち(日本)
REN(日本)
<NGFフェザー級/5分1R>
RYUSHI(日本)
TBA
<NGFバンタム級/5分1R>
アダチコウキ(日本)
それゆけケイタっち(日本)
<NGFバンタム級/5分1R>
涼河(日本)
将太(日本)
<NGFフライ級/5分1>R
小西澄斗(日本)
PANTHERBOYショウ(日本)
<NGFフライ級/5分1R>
太一(日本)
真鍋陸(日本)
<NGF女子ストロー級/5分1R>
プリンセス☆サアヤ(日本)
チャッキー☆ルビ(日本)