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【Wardog44】関西フィーダーショー=ワードッグ柿原勇気代表に訊く─01─「一人前の選手に育ててプロに」

>【写真】日本のチャトリ=柿原勇気ワードッグ代表。その由来は――容姿を似せにいったから(C)SHOJIRO KAMEIKE

22日(日)、大阪市港区の弁天町世界館で関西インディ・ケージファイティングのWardogが、44回目の興行=WARDOG CAGE FIGHT44を開催する。
Text by Shojiro Kameike

2014年にスタートしたワードッグは小径ケージを使用し、ユニファイドルールを標榜してMMA大会を行ってきた。その後、関西インディ団体として活動してきたワードッグは、その出身選手が同じく関西で活動するグラジエーターなど他の興行に進出。「西のフィーダーショー」ともいうべき展開を見せているワードッグの歴史と現在について、柿原勇気代表に訊いた。


――MMAPLANETで初めてワードッグについて報じたのは、215年の第2回大会でした。柿原さんは第5回大会からワードッグの代表に就任されていますが、ここで改めてワードッグの歴史からご説明いただけますでしょうか。

ワードッグ設立当初の柿原代表。写真はブレていますが、とにかく若い!(c)GRACHAN

「まず『柿原勇気って誰やねん!?』というところからですよね(笑)。もともと僕はプロレスのリングアナウンサーをやっていて、第2回大会の頃はまだ代表ではなくリングアナを担当していました」

――懐かしい写真です! まだ柿原代表も若く、髪を後ろで結んでいる……。

「プロレスが縁で、ACFというプロレス&格闘技の興行を開催している近藤哲生社長と知り合い、さらにこのU.B.F.というジムがキッカケで初期の代表である永井明宏も加わって、ワードッグがスタートしました。実は、全てはU.B.F.から始まっているんです」

――というと?

大阪梅田の繁華街=兎我野にあるU.B.F.。全てはこの場所から始まった。(C)SHOJIRO KAMEIKE

「当時から僕は地下格闘技に関わっていました。でも僕が関わっている選手が試合に出ても、あまりにも勝たれへん。そこで選手がちゃんと練習できて、興行もできる環境を創ろうと思いました。それがU.B.F.――Umeda Battle Fieldやったんです。最初はここで地下格闘技やプロレスの興行も行っていたんですよ」

――えっ!? そうだったのですか。

「あの頃、僕は梅田で飲食店をやっていて。周辺の飲食店の店員さんを集めて、飲み放題にし、お客さんも入れてスパーリング大会を開催したのが最初だったと思います。その頃に近藤社長がウチのジムに来ていて――近藤社長は道頓堀プロレスを運営していて、自前のリングを持っている。だったらこのU.B.F.で行っていることを、外の会場でやってみようと始まったのがACFでした」

――そしてワードッグも……すべてはこのU.B.F.から始まったのですね。

「そこに永井が加わり、『ユニファイドルールを使ったMMAをやりたい』という希望があって、ACFとは別の興行として2014年11月にワードッグがスタートしました。でも最初の頃は素行の悪いチームも多くて、2015年7月の第5回大会から『素行の悪いチームは入れへん。ちゃんとMMAをやりたい人だけ出てもらおう』と決めたんです。永井に代わり、僕がワードッグの代表になったのも、その第5回大会からでした」

――第2回大会を取材した当時、専門誌には「地下格闘技に出ている選手がMMAを戦うのがワードッグ」という旨を記載しました。そのコンセプトは、今も変わりないですか。

「そうですね。もっと言えば、『MMAの底辺拡大』がワードッグのコンセプトでした。当時の大阪や近畿圏は、まだアマチュア修斗やアッマチュアパンクラスを経ないと、プロにはなれないという状況でした。プロのMMAファイターになるのは、それしか方法がなかったんです。一方で『格闘技をやりたいけど、どうやってアマチュアの大会に出ればいいのか分からない』という子たちもいて。そんな子たちが集まっていたのが、当時の地下格闘技でした。それと当時の大阪では、常にケージを使っているのはワードッグだけやったんです。まだ修斗、DEEP、パンクラスもリングでやっていて。パンクラスは東京でケージを使い始めた頃だったと思います」

――まだ修斗もVTJ、DEEPもDEEP CAGE IMPACTといった別興行として開催していました。新生グラジエーターの誕生も2016年6月ですから、当時の大阪ではケージ大会が珍しかったでしょうね。

「実は当時の大阪で、ケージを使っている大会といえば地下格闘技のほうが多くて。だからケージ=地下格闘技というイメージを持っていた人は多かったです。世界最高峰のUFCはケージで、大阪やとケージは地下格闘技という(苦笑)。すると地下格闘技出身でDEEPやパンクラスの大阪大会に出る選手のなかには、リングで試合をしたことがない子もいました。そういう子たちは『壁(ケージ)がないのに、テイクダウンされたら、どうやって立ち上がれば良いんですか?』って(笑)。そうしているうちに、地下格闘技から本気でMMAをやりたいという子たちが増えてきました。でもひとつ問題があって……」

――問題とは?

「それほど技術を持っていない子たちが5分2Rを戦っても、何もできずに膠着するだけなんですよ。試合が面白い、面白くないということではなく、まだプロとして試合ができるレベルになかった。そこで考え出したのが、5分1Rのセミプロ枠=NGFやったんです。今はブレイキングダウンが5分1Rでやっていますけど(笑)、ウチとしてはNGFで頑張った選手をプロに上げていく。そうやってプロとプロ以外を線引きしていこうと決めました」

――つまり、団体として選手をイチから育てていく。かつてプロレス団体が新弟子から採用していたように、ワードッグはプロレス団体の良い部分を取り入れたのですね。

小径ケージ、5分1R~5Rまでのルールなどワードッグ独自の選手育成がある(C)WARDOG

「そういうことですね。大会で選手を育てていかなアカン。ルール面でいえば、アマチュアMMAってパウンドグローブ、レガース、ヘッドギアを着けて試合をしているところが多いじゃないですか。でも『はい、明日からプロです。全部外して試合してください』と言われて、すぐに対応できる選手は少ない。あと、いきなり『プロデビューです。チケットを売ってください』と言っても、売れるわけがない。そこでウチはNGFを通じて、イチから『プロ選手って、こういうことやぞ』と教えていくことにしました。どうやって格闘技を始めればいいのか、どうやって大会に出ればいいのか分からない子たちを、一人前の選手に育ててプロにする。それが、僕たちにとって『MMAの底辺拡大』のひとつです」

――地下格闘技が流行していた時代の課題として、地下格闘技に出ている選手もレベルが上がり、もっと上のレベルが高い大会に出たくなる。しかし、何をやっていいか分からない選手を放っておけば、結果何をするか分からないわけで……。

「はい。関東の人には誤解されているところもあるかもしれないけど、登っている格闘技という山は他と同じなんです。ただ、畑が違う――育て方が異なっているだけで」

<この項、続く>

■WARDOG44対戦カード

<WARDOGフライ級タイトルマッチ/5分5R>
[王者]MAGISA(日本)
[挑戦者]しゅんすけ(日本)

<ライト級/5分2R>
後藤丈季(日本)
そのまんまたなか(日本)

<ライト級/5分2R>
キンコンカンコンケンチャンマン(日本)
ユン・チュル(韓国)

<フェザー級/5分2R>
DAIGO(日本)
秋田良隆(日本)

<ウェルター級/5分2R>
前田慶次(日本)
SAIDER(日本)

<バンタム級/5分2R>
セイヤ(日本)
カーレッジユウキ(日本)

<フライ級/5分2R>
岩本尚(日本)
よしひと(日本)

<グラップリングマッチ ウェルター級/5分1R>
坂本オーズ昌良(日本)
ジャンジュオン(韓国)

<グラップリングマッチ ライト級/5分1R>
白樫忍者(日本)
ユ・エンホ(韓国)

<NGFライト級/5分1R>
だいち(日本)
REN(日本)

<NGFフェザー級/5分1R>
RYUSHI(日本)
TBA

<NGFバンタム級/5分1R>
アダチコウキ(日本)
それゆけケイタっち(日本)

<NGFバンタム級/5分1R>
涼河(日本)
将太(日本)

<NGFフライ級/5分1>R
小西澄斗(日本)
PANTHERBOYショウ(日本)

<NGFフライ級/5分1R>
太一(日本)
真鍋陸(日本)

<NGF女子ストロー級/5分1R>
プリンセス☆サアヤ(日本)
チャッキー☆ルビ(日本)

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【Grachan65】TSUNEと対戦――手塚基伸―01―「極めるのが浪漫」&「なんちゃって格闘技ではない試合」

【写真】前列左から2番目が若き日のTSUNE。後列中央が手塚、左端は藤田大和 in ドリーマージム時代(C)SHOJIRO KAMEIKE

15日(日)、東京都江東区のTFTホール100で開催されるGRACHAN65 「15th Anniv」で、TSUNEと対戦する手塚基伸のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

手塚が初めてグラチャンに出場したのは、2014年4月の中村謙作戦であった。あれから約9年が経った今の手塚にとってのグラチャンとは――。さらに今回対戦するTSUNEとの意外な関係についても語る。

<手塚基伸インタビューPart.01はコチラから>


――ここで手塚選手とグラチャンの歴史についてお聞きしきます。手塚選手のグラチャン初出場が2014年4月の中村謙作戦でした。当時、どのような経緯でグラチャンに参戦することになったのでしょうか。

「2012年からパンクラスを経てUFCに出たあと、VTJやROAD FGCを含めて4敗していました。その時にグラチャン代表の岩﨑(ヒロユキ)さんからオファーを頂いたんです。なぜあの時の自分に声が掛かったのか分からないんですけど(笑)。

グラチャンからのオファーを受けた理由は、一番はベルトが欲しかったからです。昔から沖縄の天下一ファイトや、パンクラスでもランキング上位には入るけどタイトルマッチが組まれなくて。だからベルトへの執着心もあったし、年齢的にも――当時は25歳ぐらいで、『ここらへんでベルトを獲っておきたい』と思っていました。その時期に来たグラチャンからのオファーはタイトルマッチやったんで、飛びつきました」

――当時のグラチャンの印象はいかがでしたか。

「今でこそグラチャンも大きくなったけど、当時は大会中ずっと音楽がガンガン鳴っていたり、他のMMA大会とは雰囲気が違っていたじゃないですか。そんなグラチャンに出ることが決まって、周りからはボロクソ言われましたよ。『手塚は堕ちた』って」

――国内MMAといえば修斗、DEEP、パンクラスなど「老舗」と呼ばれるプロモーションがあります。手塚選手がグラチャンに参戦した当時は、インディー系と呼ばれた他のプロモーションと老舗3プロモーションの序列が今とは違い明白でした。

「正直、自分もグラチャンを見たことがなくて。あと自分もまだUFCを捨てきれていなかったというか、またUFCに出られるんじゃないかという雰囲気もあったんです。まず国内でベルトを巻いて、もう一度UFCへ――という想いだったので、まさか自分のホームになるとは考えていなかったですね」

――ではグラチャンをホームだと考えるようになったのは、いつ頃でしょうか。

「俺がグラチャンを背負うと思ったのは、グラチャンンのベルトを巻いたあとにグラジエーターで大道翔貴選手に負けて(2016年7月に判定負け)、次にZSTで柏崎剛選手と対戦した頃(同年11月に判定勝ち)ですね。大道選手に負けて、現グラチャンン王者として申し訳ないという気持ちでベルトを返上しましたから。その頃からグラチャンへの愛が芽生えてきたのかな、と思います」

――2019年からは修斗に参戦しています。その時も、グラチャンの選手として修斗に出ているという気持ちは強かったのですか。

「グラチャンの10周年記念大会(2018年9月、GRACHAN36)で堀友彦選手に負けてベルトを獲れず、自分は一度引退したんです。当時は試合に出ながらアルバイト生活みたいな感じで。だけど子供が生まれたから……堀戦で負けたら引退して、ちゃんと仕事を始めようと思っていました。結果は負けて、とある会社の正社員になってMMAからは離れたんです。でも8~9カ月後ぐらいに復帰することになった際に、『自分はもうグラチャンには必要ない選手やな』と思って」

――というと?

「もうグラチャンのバンタム級では全員と対戦していましたから。それやったら新しい場所で、気持ちも新たにして戦おうと考えました」

――様々なベルトを獲得した手塚選手にとって、もう一度グラチャンのベルトを獲りに行ったことは、どういった意味を持っていたのでしょうか。

「子供にベルトを見せたかった――それが一番ですね。先ほども言ったとおり子供が生まれたばかりの時の試合で。そう考えると、僕のキャリアの節目には、常にグラチャンがあったような気がします。まずベルトが欲しいと思った時に最初のオファーがあって、子供が生まれた時にベルトを見せたい、負けたら引退しようというのが堀戦で」

――堀戦以降はグラチャンの試合を含めて7勝1敗の戦績で、グラチャンのベルトも取り戻しています。何再び上昇気流に乗っているような感覚はありますか。

「実は、ありますね(笑)。RIZINのヤマニハ戦は負けてしまいましたけど、その前には6連勝していますから。それも『格闘技と共存しよう』と思ってからですよね。格闘技も大事やし、家族もジムも大事。特に子供は――今5歳なんですけど、今この時間は戻らないものじゃないですか。だから、できるだけ子供と一緒にいる時間を増やしたいです。でも死ぬ時に後悔したくないから、MMAもしっかりやりたい。どれかが突出することなく、全てがうまく回り始めているのかなと思います。

昔は時間があったから、いろんなことをやろうとしすぎてパンクしかけていましたよね。でも今は『できないことは止めて、できることを伸ばそう』とかも考えることができる。たとえば以前は壁を使って立ち上がるとか……苦手なことを身につけようとして(苦笑)」

――苦手なことって、自分で言ってしまいましたね(笑)。

「アハハハ。それを練習しても、試合では使わなかったですしね。今は逆転の発想といいますか、引き込んで極めるという」

――特にグラチャンのベルトを取り戻した伊藤空也戦では、ケージを使ってテイクダウンするのではなくケージを使って極めるという、ある意味新しいスタイルを見せました。

「やっぱり僕にとっては極めることがMMAの浪漫で、僕に対してその需要があるかぎりMMAを続けていきたいです。最近は手の置き方、体の動かし方や重心移動とか、ようやく『力を使わずに極める』ということが分かってきました」

――そして迎える15周年記念大会でTSUNE選手と対戦します。TSUNE選手について、今まで対戦を意識したことはありましたか。

「対戦を意識したことはないけど、TSUNE選手が本名で戦っていた頃から試合は視ていました。年齢はTSUNE選手のほうが2歳上ですけど、やっぱり同じ時代を生きて来たファイターですからね。とにかくトップキープが強い選手で、お互いに『やることは決まっている』というタイプですよね」

――TSUNE選手の試合を視ていたのは、過去に繋がりがあったからですか。

「あぁ、岡山県のドリーマージムですよね」

――2008年ごろにTSUNE選手が格闘技を始めたのが岡山県倉敷市のドリーマージムで、手塚選手も当時ドリーマージムのMMAクラスで指導されていました。

「そのドリーマージムの食事会とかで、TSUNE選手と話をした記憶はあるんですよ(笑)。確かもともと野球をやっていて、ドリーマージムには一般会員さんとして入会していたと思います。それが食事会だったと思いますけど、いずれ東京でMMAをやりたいという話を聞きました。不思議なもんですよね。ここでその2人が試合をするとは……」

――本当に不思議な縁です。そのTSUNE選手との試合は、どのような内容になると思いますか。

「相手が何をしてこようと、何かしてきた時にパッと対処していきます。特に試合のプランがあるわけではなく、そこに足があれば足を極めるし、腕があれば腕を極めたい。僕って、直感型やと思うんです。何か考えながら動くよりも、パッパッと流れで動くことで、決められなくても次の流れに繋がっていくじゃないですか。自分も長いことMMAをやってきたので、その流れは身体に染みついています。

グラチャンの15周年記念大会で、パンクラスのベルトにも挑戦したことがあるTSUNE選手と対戦できるのは嬉しいです。お互い30代後半で、SNSで盛り上げるような『なんちゃって格闘技』ではない試合を見せることができると思います。ぜひ期待してください」

■視聴方法(予定)
10月15日(日)
午後2時00分~ GRACHAN放送局

■ Grachan65対戦カード

<バンタム級/5分2R>
手塚基伸(日本)
TSUNE(日本)

<ライト級/5分2R>
ルクク・ダリ(コンゴ)
岸本篤史(日本)

<ライト級/5分2R>
小谷直之(日本)
林RICE陽太(日本)

<ウェルター級トーナメント1回戦/5分2R+Ex1R>
渡辺良知(日本)
青木忠秀(日本)

<ウェルター級トーナメント1回戦/5分2R+Ex1R>
桜井隆多(日本)
上田拳翔(日本)

<J-MMA Rookies CUPフライ級決勝戦/5分3R>
金井一将(日本)
鈴木崇矢(日本)

<J-MMA Rookies CUPフェザー級決勝戦/5分3R>
黒井海成(日本)
人見礼王(日本)

<バンタム級/5分2R>
伊藤空也(日本)
高須将大(日本)

<フェザー級/5分2R>
大搗汰晟(日本)
中村京一郎(日本)

<ウェルター級/5分2R>
能登崇(日本)
芳賀ビラル海(日本)

<バンタム級/5分2R>
今村豊(日本)
YO-HEI(日本)

<ストロー級/5分2R>
朝日向大貴(日本)
牧ケ谷篤(日本)

<フェザー級/5分2R>
松田征也(日本)
ディオゴ・ロボ・トクナガ(ブラジル)

<バンタム級/5分2R>
萩原一貴(日本)
佐々木歩夢(日本)

<フライ級/5分2R>
宮内拓海(日本)
天野哲宏(日本)

<引退エキシビジョンマッチ/5分1R>
阪本洋平(日本)
山本琢也(日本)

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BELLATOR Bellator x RIZIN02 MMA MMAPLANET o ONE RIZIN VTJ   イリマレイ・マクファーレン ライカ ヴェタ・アーティアガ 宇野薫 渡辺華奈

【Bellator x RIZIN02】渡辺華奈と対戦、ヴェタ・アーティアガ「殴られて当然。私は殴られることは怖くない」

【写真】とにかく明るく。フレンドリーな人でした (C)MMAPLANET

30日(日)にさいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナでRIZINとBELLATORのOne day Two event制の大会=「超RIZIN02」が開催される。そして、5試合組まれたBellatorマッチでヴェタ・ヴェタ・アーティアガが渡辺華奈と対戦する。

元女子フライ級タイトルコンテンダーのアーティアガは、打撃で引かない喧嘩家のごときファイターだ。それでいて柔術で黒帯を巻き、ソフトなジェントルアーツかつ危険な技を駆使すると話す。

陽気で何事も動じない。そして一本を取らせない力の持ち主は、待望の日本での試合を前に既に気分が高揚しているような盛り上がりを見せていた。この勢いと前に出る力が合致すると、渡辺は母国で厳しい試合を強いられるかもしれない。


──今月末、渡辺華奈選手と日本で戦います。今の気持ちを教えてもらえますか(※取材は14日に行われた)。

「良い感じね。凄くエキサイティングしているわ。ずっと日本に行きたいと思っていたから」

──これまでマウンテンタイム・ゾーンで生活をしているヴェタはハワイを含め、時差は3時間という米国内で戦ってきました。対して日本とは15時間です。

「日本での試合に対しての準備は、自分のやるべきことやる。そこを第一にしているわ。もちろん時差のことは頭にいれているし、日本に到着して少しでも早く時差ボケをなくさないといけない。でも1日が過ぎることに楽になり、ファイトデーには関係なくなっているはずだから」

──既に体を動かす時間など、調整は始めていますか。

「私は午前、午後、夜と3度練習していて、それはいつも通りね。生活のリズムを崩して、いつも通りの練習ができないことの方が、時差ボケより良くないことだから。ところで今、ボイジーは午後1時45分だけど日本は何時なの?」

──午前4時45分です。

「えぇ!! ありがとう。こんな時間までインタビューをするのを待ってくれて!!」

──全然大丈夫です。日本のファンはヴェタのことを余り知らないのが現状で、こうやって米国にいるヴェタにインタビューできる機会をBellatorが与えてくれたわけですし。ヴェタはなぜMMAを戦うようになったのですか。

「20歳の時に本当に小さな町からボイジーに引っ越してきて、兄のフレディがMMAを戦っていたの。彼の練習を見に行って、楽しそうだったから習いたいと思って。それでクラスに出て、しばらくすると『1試合だけ経験しよう』っていう気持ちが芽生えてね。で、試合に出てみるると楽しくてしょうがなかった。あれからアマチュアの試合に出続けるようになったの。これを続けていると、私はどこに辿り着けるのかなって。で、15年が過ぎて日本で戦うことになったというわけ」

──まさにローング・ジャーニーですね。MMAを始める前に他に格闘技の経験はなかったのですか。

「ベースボールとバスケットボールをやっていただけで、マーシャルアーツの経験は全くなかったわ。逆にバックグラウンドがなかったから、打撃も寝技もできるファイターになれたと思う。パンチ力があり、プレッシャーをかけることができる。柔術は黒帯だしね」

──ところでプロで1試合をしただけで、Bellatorと契約しました。ビッグプロモーションとサインして、不安はなかったですか。

「ノー。心配なんてなかったわ。2試合目でBellatorで戦い、4試合目はTVカードだった。しかもサンノゼのSAPセンターなんていう大きな会場で!! Bellatorのような大きなプロモーションで戦い続けることができて、本当に感謝しているわ」

──柔術黒帯ということですが、柔術やノーギの試合も出ていたのでしょうか。

「MMAを始めたころ、もの凄く柔術の練習をしてグラップリングのトーナメントにも出ていたわ。柔術でもグラップリングでもメダルを取っているし。ただ、私の柔術はMMAのためにあって。柔術やグラップリングのためじゃないことは自分でも分かっている」

──対戦相手の渡辺選手は、柔道ベースで非常に力強い寝技の持ち主です。ヴェタとは違った類の寝技の使い手ですが、彼女のグラウンドでの攻撃力をどのように思っていますか。

「彼女は素晴らしい競技者よ。試合が寝技の展開になった時、良い攻防が見られるでしょうね。彼女の寝技はとてもパワフルで、私は柔術がベースだから、ソフトでジェントルアート。だけど危険なスタイルで戦うから。攻撃面だけでなく、ディフェンス面もキャンプで磨いてきたから準備はOKよ」

──過去に一本負けがない選手同士の対戦でもあります。

「カナの攻撃力は抜群よ。でも、大丈夫。私は自分の寝技に自信を持っているから。彼女が攻撃的だから、私がサブミットできる機会も巡ってくるんだし」

──渡辺選手は組でくることが予想できますが、そこでギロチンが勝負に影響を与えるかと。ヴェタのノーアームギロチンは、グリップの仕方に色々とバリエーションがあります。ギロチンが得意技と捉えて良いでしょうか。

「得意技の一つね。でもほかのサブミッションだって使えるし、RNC、ダース……も。ギロチンは頭を抱えた瞬間に、どれだけ深く入っているから感知できるの。グリップに関しては最初のグリップで極め切れそうにないなら、次を試す。練習で色々なパターンを試し続けてきたから、グリップの種類が多いことがギロチンの精度を高くするのは絶対よ。ギロチンには自信を持っているし、寝技全般に自信があるわ。

カナから打撃戦からテイクダウンを狙った来た時、どこの彼女の首があるのか。カナだって私にはギロチンがあることは分かって戦うわけだし。その状況を見て、自分のやるべきことをやるだけね。それに組む前に打撃の攻防があるわけだし、そこに関しては私の方が上。殴れば、彼女のミスを誘発できる。殴って勝つことが、私の勝利の方程式よ」

──ヴェタは渡辺選手より優れたストライカーというよりも、個人的には強いブロウラーという印象です。

「アハハハハハ。私は殴られることは怖くないから。だってファイトだから、殴られて当然。殴られても、前に出ていくわ。凄く痛いけどね(笑)」

──渡辺選手は4月にイリマレイ・マクファーレンに敗れましたが、試合内容で圧していたこともあり評価は落ちていないかと。ここで、彼女に勝つことでヴェタも2度目の王座挑戦が見えてくる。キャリアアップに向けて、この試合をどのように捉えていますか。

「私もハワイで負けた立場で、カナと戦えるチャンスを手にできた。彼女はランク3位だから、絶対に負けられないっていう気持ちでいるでしょうし。それに私はアンダードックよ。ただランキングもアンダードッグも気にしていない。日本に行って戦うだけ。カナのような強い相手と戦って勝利を続けることで、またタイトルショットを手にできると考えているから。それが私のやるべきことで、望んでいることよ」

──では日本での試合、楽しみにしています。確かに日本は渡辺選手のホームですが、ヴェタにブーイングが起こることは決してないはずなので。

「皆、私のことを愛してくれるってことよね(笑)。実は私をMMAに導いてくれた兄のフレディが日本で試合をしたことがあって」

──えっ、そうなのですか。

「そうよ、VTJで日本に行ってるの(※2014年2月のVTJ4th。フレディ・アルティーガの名前で来日し、カナ・ハイアットに判定負け)、コーチの一人もそうで(※ジェシー・ブロック。同大会で宇野薫と対戦)。この2人から、日本のMMAカルチャーのことは聞かされてきたから。2人とも『最高の経験ができた』って。凄くファイターをリスペクトしてくれて、歓迎してくれると聞いてきたから、私にもそうしてもらえると嬉しい。でもね、ブーイングがあっても平気よ(笑)。

とにかく日本で戦うことは凄く意味があって。この機会が訪れたことを、本当に素晴らしいと感じていて。私の精神も、日本での戦いを経験することで違う面が芽生えると信じている。そして日本のファンの皆に、私の持っている力の全てを見てもらいたいと思っているわ」

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ABEMA DEEP MMA MMAPLANET o ONE Shooto Shooto2023#05 VTJ ブログ ヤックル真吾 内藤頌貴 安芸柊斗 山内渉 新井丈 竹中大地 藤井伸樹 藤野恵実 関口祐冬

【Shooto2023#05】7年4カ月振りの竹中大地が藤井伸樹と。安芸、CHAN-龍、里見=阿波シューター揃い踏み

【写真】大会が引き締まるカードが、ここにきて発表された!! (C)MMAPLANET

4日(火)、サステインより23日(日)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2023#05に竹中大地が出場し、藤井伸樹と対戦することが発表された。

同大会は5月大会の会場で修斗世界ストロー級選手権試合=チャンピオン新井丈✖チャレンジャー安芸柊斗、インフィニティリーグ女子ストロー級で修斗初陣となる藤野恵実✖エンゼル☆志穂──など5試合がカード第一弾として明らかとなっていた。

続いて6月23日に山内渉✖ヤックル真吾、関口祐冬✖内藤頌貴のフライ級生き残り合戦と、加藤ケンジ✖スソンのバンタム級、ライト級では格闘DREMAERS出身オーディンの修斗初陣=結城大樹戦と濃密なカード第2弾に、最終カードは元チャンプの凱旋となった。


元環太平洋バンタム級王者の竹中にとってプロ修斗出場は2016年3月以来7年4カ月ぶりとなる。また修斗系イベントでは大阪でのVTJに2017年6月以来、その後は、ONEと契約しアジアを舞台に戦ってきた。

実質1階級上のONEバンタム級ではタイトルコンテンダーのキム・デフォンとレアンドロ・イッサからフィニッシュ勝利を奪うも、マーク・アベラルド戦は優勢に試合を進めながら唇のカットによりドクターストップで敗れ、接戦のユーサップ・サーデュラエフ、フライ級に階級を落とし日本=Road to ONEで戦った和田竜光には共にスプリットで星を落としている。

結果、ONE系の大会では3勝3敗と潜在能力の高さがリザルトに反映できなかった竹中が、心機一転──古巣に戻り、どのような再スタートを切るのか。対戦相手はかつて自身が巻いていたベルトの現在の持ち主である藤井だ。

藤井は石井逸人、齋藤翼、加藤ケンジ、後藤丈治ら修斗バンタム級の現有勢力に勝利しており、この一戦は竹中にとって掴みにくい現在のポジションが明らかとなる戦いといえる。

また本日のプレスリリースではストロー級でパラエストラ千葉の高校生シューター根井博登が、里見拓磨と対戦することも発表されている。

DEEP、パンクラス、修斗と若い力を輩出し続ける鶴屋浩一門。対して里見は徳島のMMA Zジム所属だ。タイトルチャレンジャーの安芸、インフィニティリーグ2023フェザー級出場のCHAN-龍と徳島から3選手が揃い踏み──「ヤットサーヤットサー」が後楽園にこだまするか、要注目だ。

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KTT MMA MMAPLANET o RYO TSUNE UFC UFC ABC05 VTJ クレイジソン・ホドリゲス クレベル・コイケ 中村倫也 修斗 平良達郎 海外 鈴木千裕

【UFC ABC05】ホドリゲス戦前の平良達郎─02─「自分ならUFCのベルトを獲れる。その自信が深まりました」

【写真】アイム・ハッピー。センキュー!!Tシャツを着て、NARUTOポーズで決める平良。暴力的にすら映る、曇り空に相応しい???!!(C)RYOTA MATSUNE

24日(土・現地時間)、フロリダ州ジャクソンビルのヴィスター・ベテランズ・メモリアル・アリーナで開催されるUFC ABC05「Emmett vs Topuria」でクレイジソン・ホドリゲスと戦う平良達郎インタビュー後編。

オクタゴン4連勝が懸かった一戦は、平良にとってランカーとの対戦~タイトル戦に近づくための試金石となる。

<平良達郎インタビューPart.01はコチラから>


──ホドリゲス、過去の試合を見ていると自身の強さをハッキリと試合中に押し出してくる。分かりやすい動きのようにも感じました。

「そうッスね、ミドルとか一発でも入れば攻撃を纏めてくるかと思います。何か自分が効いているように判断したら、そのままの勢いで攻めてくる。僕としては生足、MMAグローブで蹴られたり、殴られるということがまだ試合でないので、慣れていない部分があります。だからこ、今後は受け返しの時間も必要になってくるかと。相手のペースには付き合わないつもりだし、そういう意味でもしっかりと見て返すことが、この試合のテーマではあります」

──平良選手は試合のことを考える時に、マイナスから組み立てていくほうですか。

「僕はどっちかというと、そっちの方ですね」

──無敗のファイターでは、珍しい気がします。

「前の試合でも、カーフ一発で転んじゃっていますからね(笑)。練習ではそういうことがなかったけど、試合では起こる。試合と練習との違い……自分のペースで試合を終らせることが多いタイプなのでシーソーゲームが少ない。そこがちょっとした弱みだと思ってもいます。だから、自分が劣勢になる展開はイメージして試合に臨んでいます」

──そのイメージという部分ですが、今は情報が溢れかえっていて、技術にしてもメンタル的なことに関しても目や耳から色々なことが入ってきます。目と耳から得た情報をイメージして、練習に臨むことで成長が早いとも言われています。平良選手はそういう動画などをチェックする方なのでしょうか。

「技術動画とはよく視ていますね。教則モノも買うこともあります。最近では青木(真也)さんの肩固めのやつとか。興味があったり、必要だなって思う技術は英語で検索をして視るようにしています。それを道場に行って、試していますね」

──日進月歩のMMA界、海外での練習が欠かせないといわれるなかで鈴木千裕選手がパラエストラ沖縄で出稽古を行いました。東京に練習拠点を置いている選手が、大切な試合を前にして沖縄にやってきたことをどのように受け止めていますか。

「嬉しかったです。沖縄で練習をしていると、どうしても相手が限定されてきます。そのなかで千裕君が来てくれて、やっぱり緊張感のあるスパーリングができますし。3Rで互いに疲れ果てるようなこともありました。寝かせても立たれると打撃が来る。なら、もっと削らないといけない。もっと疲れさせないといけないとか、色々と考えながら緊張感のあるスパーリングができました。

道場の仲間と練習をすると良くも悪くも、手の内が分かっています。そうなると立たれても、またリセットして倒せば良いという感覚に自ずとなっていました。それが千裕君とは。試合に近い感覚の練習ができましたね」

──実質3階級違いますが。

「だからこそ、良い練習になりました」

──これ、もうさんざっぱら聞かれたと思いますが、クレベル・コイケ✖鈴木千裕──平良選手の見立ては?

「アハハハハハ。クレベル選手はシングルやダブルレッグでなく、四つで倒しに行くと思うんです。ボディロック系に関しては、千裕君は自信を持っていると思います。ただ打撃といっしょで組みも攻撃的なんですよ。四つでも切って離れるよりも、自分が倒しに行くのが得意で。

そこは松根(良太)さんもアドバイスしていたのですが、そういう局面になった時に上手く離れること。それができれば千裕君がパンチで勝つと思っています。まぁ、当たり前ですけど、上を取られると千裕君は厳しい。ブリッジは強いですけどね」

──鈴木選手は平良選手に「三角絞めを掛けてぇ」というような感じもあったのでしょうか。

「そんなダイレクトには言わないです(笑)。ただ三角からスタートのシチュエーション・スパーはやりました。そこを特定するわけでなくシチュエーションも5分3RのMMAスパーもあったし、2週間という限られた期間ですが濃密な練習になったと思います。

ホント千裕君に限らず、どんどん出稽古に来てほしいですね。沖縄旅行のついでに寄ってくれても、全然ありがたいです」

──いやぁ、今回はファイトウィークに現地に入ってからのインタビューでないので、クレベル✖鈴木戦に関して尋ねることができる空気感があり良かったです。やはり、ファイトウィークはピリついているのが伝わってきますしね。

「そうなんですよぉ。口数も減りますしね(苦笑)。それは自分でも分かっています。スミマセン、気を使わせてしまって」

──いえいえ、いつも取材に協力いただいて有難い限りです。ところでこれも直接、次の試合に関係ないことなのですが。韓国でKTT、モンゴルでシャンダスMMAとマザーライMMAというジムで練習した中村倫也選手が「チームでケツを叩く存在がいて、愛ある厳しい指導があり、仲間と共に頑張るというジム単位で練習している人がUFCで勝つこと。平良選手、鶴屋選手が結果を残すことが日本のMMAにとって必要」ということを言っていました。

「松根さんも似たようなことを言っています。『フリーでなく、しっかりと育てる人がいないと俺はダメなような気がするんだよね』と。最後のひと踏ん張りができるような声は、やっぱり大事だと思います」

──押忍。では日本のMMAを発展させるための勝利が掛かった──クレイジソン・ホドリゲス戦に向け、一言お願いします。

「今、色々と米国で練習をして日本に戻り、自分が結構伸びていることを感じています。これからは今までとは違うペースで強くなれる。自分ならUFCのベルトを獲れる。その自信が深まりました。絶対に獲る、そういう気持ちでいます。

そのためにも今はランキングに食い込みたいですし、早くタイトルマッチにこぎつけたい。なので今回の試合は、これまで以上に楽しみでもあります。何より、自分にガッカリしたくない。だからこそ、圧倒したい。圧倒することで、僕の自信も一段上がって次はランカーに挑めると思います。そのためにもしっかりと差を見せつけて、初めてたくさんのお客さんの前で試合をするので会場を盛り上げたいと思います」

──去年の4月のジャクソンビル大会は1万5000人近くの観客が集まっています。

「僕はこれまで修斗の後楽園ホール大会とか、VTJの時が一番多くのお客さんの前で戦った試合なので、今回の大会は本当に楽しみにしています。入場する時とか、どんな気持ちになるのかなって」

──にしても、そろそろメインカード出場という期待もあったのですが、第1試合。3連勝しているというのに。

「1試合目は、実は緊張します。プレリミでも第2試合だとまだ大丈夫なのですが(苦笑)。最初は第3試合だったんです。でも、大会が日本の深夜にスタートなので少しでも日本の人達が視聴しやすい時間にということで、最初になったんだと思います」

■視聴方法(予定)
6月25日(日)
午前0時30分~UFC Fight Pass
午前0時00分~ U-NEXT

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【RIZIN LANDMARK05】「長くは続けないことはハッキリしています」浅倉カンナ戦前のV.V Mei─02─

【写真】3月3日の会見で、顔を合わせている両者。3週間後にはケージで相対する(C)MMAPLANET

29日(土・祝)に代々木第一体育館で開催される『RIZIN LANDMARK05』で、浅倉カンナと対戦するV.V Meiのインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

RIZIN参戦の理由を訊くと、V.V Meiは「キャリアの最後」という言葉を口にした。ONEでの3連敗から国内復帰だからといって、彼女の中に決してマイナスな感情はない。明るい未来のために――ハッキリとそう語るV.V Mei。そんな彼女は次の対戦相手である浅倉や、RIZIN王者の伊澤星花など新世代の女子ファイターを、どのように見ていたのか。そして、新世代ファイターと戦う先に見るものとは。ここからV.V Meiの最終章が始まる。

<V.V MeiインタビューPart.01はコチラから>


――ONEで戦っていた間、日本国内の女子MMAはどのように見ていましたか。

「RIZINで女子の試合が行われて、それを視て格闘技を始める女の子も増えたと思うんです。そうして競技人口が増え、RIZINを視て育った選手たちが芽を出し始めている。日本の女子MMAにも明るい未来がある、と思っていました」

――そこに自分自身が絡むことになるとは想定していましたか。

「その意識は、なくはなかったです。ただ、それよりも『強い選手がたくさん出てきて、面白くなってきた』と思っていましたね」

――RIZINが誕生したのは2016年の大晦日で、ヴィー選手がONEで戦い始めた後でした。そのRIZINで注目を浴びた浅倉カンナ選手は、ヴィー選手も交わったことのない新しい世代の選手です。

「あぁ、そうですね。実は2年前ぐらいに、カンナちゃんとは一度練習したことがあって。まだまだ日本では女子選手も少ないし、お互いに知っている選手もいて、水道橋のマスタージャパンでやっている女子練習会にカンナちゃんが来たんですよ」

――マスタージャパンの女子練習会ですか。今月はヴィーさんをはじめ、藤野恵実選手や端貴代選手も試合を控えています。まだまだベテラン勢が戦い続けていますね。

「凄いですよね。私は引退する時期を見据えていて、そんなに長くは続けないことはハッキリしています。でも藤野さんは60歳ぐらいまで試合に出ているんじゃないかと思います。もう日課のような感じで練習に来ていて。

黒部三奈さんも藤野さんも『暇だから』みたいな感じで、日曜日の朝から殴り合っています。私は『引退したら日曜の朝から殴り合うことなく、ゆっくりと過ごすことができるんだな』とか考えるわけですよ。あの人たちには、そういう考えは一切ないですよね(笑)」

――アハハハ。そのような方々と一緒に練習しているなかで、ヴィー選手が引退を考えた理由とは何なのでしょうか。

「体力は落ちていないし、技術的にも向上していると思います。でも2年後に同じ状態をキープできるかどうか……。今は関節が痛いです(苦笑)。大きな怪我ではないですけど、やっぱり肉体は消耗されていきますからね。それに私は趣味が多いこともあるし、アスリートとして経験してきたことを生かして、いろんなことに貢献していきたいと考えました」

――その一つが、リングアナウンサーのD.J Meiなのですか。

「D.J Meiをやるのが結構楽しいんですよ(笑)。今はキックボクシングのRISEでやらせていただいていて、今年からグラジエーターでも――他からも声をかけていただいていて、D.J Meiも売れっ子で困っています。アハハハ」

――引退後はRIZINから、選手ではなくリングアナウンサーとしてのオファーが来るのではないですか。

「いやいや、レニー・ハートさんがいますから(笑)」

――まずは選手として、ですね。試合の話に戻りますが、浅倉選手の印象を教えてください。

「打撃も寝技も淡々とやってくるし、殴られても、ひるむような姿は見せずに前に出て来る――しぶとさのある選手だと思います」

――先ほどお話のあったとおり、世代が異なる選手です。これまでのキャリアを考えると、ヴィー選手のほうが格上となります。

「いやぁ、どうなんですかね……。戦ってきた舞台も違いますし、簡単に比較することはできないと思います。私自身がいろんな団体で戦ってきて、それを乗り越えてきた力を生かして泥臭く戦ったとしても、それをパッとテクニックで切り返されたら終わりですし(苦笑)。

自分の経験が若手の勢いを潰せるとは考えていないです。でも私は私で、RIZINで一発良いものを見せたいし、カンナちゃんももう一度勝ちたい気持ちが強いと思います。そういう意味では、良いマッチメイクじゃないですかね。どちらも勝ちたい気持ちを見せなきゃいけない状況で、それがお互いに良い刺激になりますから」

――良いマッチメイク……何より、この試合がケージで行われることが最も注目したいです。ヴィー選手はこれまでONEだけでなくヴァルキリー、パンクラス、VTJ、DEEPからPXCまで含めて、日本人女子選手としては誰よりもケージで戦ってきました。対して浅倉選手のスタイルも、ケージでこそ生かされる部分もあるかと思います。

「そうですね。私自身はレスリングが強い選手が相手なら、ケージのほうが立ちやすいです。万が一テイクダウンを取られても、ケージを使って立ち上がることができますし。リングではロープが滑るし、動きづらいところもあるので。私としては、ケージで行われることになって良かったです。カンナちゃんもケージを使えるところが多いでしょうし」

――今回の浅倉戦から始まる最終章で、ヴィー選手が見据えているものとは何でしょうか。

「RIZINのタイトルに絡むことができたら面白いし、周りの人たちも喜んでくれると思います。チャンピオンの伊澤星花さんは浜崎朱加さんとパク(・シウ)ちゃんにも勝っていて、どれだけ強いのか――手を合わせてみたいです。そのRIZINに参戦ということで、久々に日本のファンの皆さんの前で試合をします。思っていた以上に反響も大きくて、それに応えられるような試合をしたいと思います」

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【RIZIN LANDMARK05】V.V Mei、朝倉カンナ戦前─01─「この国で何かできることがあるんじゃないか」

【写真】ONE以外のプロモーションで、MMAルールの試合を国内で戦うのはほぼ8年振りとなる(C)SHOJIRO KAMEIKE

29日(土・祝)、東京都渋谷区の代々木第一体育館で開催されるRIZIN LANDMARK05で、V.V Meiが浅倉カンナと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

2007年にスマックガールでプロデビューしたV.V Meiはヴァルキリー、パンクラス、VTJ、DEEP、PXCと様々なケージで戦ってきた。そしてONEでの6年間に及ぶキャリアを終え、今回RIZINのケージに入る。日本女子MMAファイターとして、誰よりも海外で、そしてケージで戦ってきたV.V Meiが、なぜここでRIZIN参戦を選択したのか。その理由に迫る。


――今回はZoomでインタビューをお願いさせていただきましたが、背景に映っているのは大森のゴールドジムサウス東京ANNEXですよね。取材後にトレーニングが控えているのでしょうか。

「今日はボクシングのパーソナルトレーニングです。もう1年以上、野木丈司トレーナーのパーソナルを受けているんですよ」

――野木トレーナーは男子選手だけでなく、多くの女子選手が指導を受けていますね。

「はい。対戦する選手がお互いに野木さんに教わっているとか、よくありますからね(笑)。私自身、ボクシング技術の細かいところを学びたいなと思って。もうパンチの打ち方の基礎から。今までキックボクシングはやっていましたが、ボクシングの細かいところまではカバーしていなかったので」

――野木トレーナーの指導を受けてから変わったところはありますか。

「パンチ一つひとつの打ち方が、より狙いが明確になりました。位置取りとかも、今までは漠然と――コンビネーションとかは考えたりはするけれども、漠然とパンチを放っていました。それが自信を持って出せるようになったところはありますね。

たとえば相手と身長差がある場合、どうやって距離を詰めていけば良いのか分からないこともあったんです。それは試合が始まれば勢いで行って、結果オーライになることも多くて。でもそれを結果オーライにはしたくない。ずっと『何となく成功していた』ものを、もっと自信を持って確実にやりたい、という部分が打撃には多かったんですよね。そこで距離の詰め方――こういう角度から入っていくとか、自分の中で謎だったことを明確にしていく作業ができています」

――以前は空手の距離をベースとしていたのでしょうか。

「おそらく試合が始まってしまえば空手の距離になっていました。結果的に、それは良かったと思います。キックボクシングをやりすぎてしまうと――キックボクシングの距離のほうが楽というか。打撃のやり取りが楽になる部分があるんですね。空手の遠い間合いから踏み込むのと、キックボクシングのように近い距離でガードを固めて触り合うのを比べると、どうしても距離が近いほうが楽で。それに慣れてくると、どうしても試合でも近い距離になりがちなんですよね。それだけではダメなので、やはり空手の距離を入れたりという調整はしてきました」

――ONEの試合時に、そんな野木トレーナーの指導の効果を出すことはできていたのでしょうか。

「前々回のジュリー・メタバルザ戦の前から野木さんに教わっていて、ボクシングに関してはだいぶ良くなっていました。ただ、それをいかに自分のMMAに組み込むか、というところですよね。そこは今後、まだまだ成長すると思っています。ボクシングをしすぎることなく、MMAをやりながらボクシングを入れていく。そういう部分を調整していけば、攻め方の細かい部分も成長していくと考えています」

――なるほど。そのONEですが、今回RIZINに出場するということは、もうONEとの契約は満了したということですか。

「アーリー・ターミネイションですね。まだ契約試合数は残っていたのですが、リリースしてもらいました」

――アーリー・ターミネイション……その選択をした理由を教えていただけますか。

「……、……、最後のほうは判定について納得のいかない試合もありました。それと、私もそんなに長く現役を続けられるとは思っていません。『最後は日本で試合をしてキャリアを終えたい』という気持ちがありました。理由は、この2つですね。

ただ、最後のほうは納得のいかない判定があったとしても、ONEで過ごしたキャリア全てをマイナスに捉えることはないです。本当に良い経験をさせてもらいました。ONEで得たものを心の中に置きながら、明るい未来に向かっていきたいと思って、早期リリースをお願いしました」

――ONE初出場が2016年5月、アンジェラ・リーとのアトム級王座決定戦でした。ONEで戦ってきた約6年間のキャリアは、ヴィー選手に何をもたらしたのでしょうか。

「最初にアンジェラ・リーと対戦する時に、ONEのスタッフから言われて、印象に残っていることがあります。『あなたはアジアの女性の代表としてMMAを戦っている。アジアの代表として、全ての女性に向けてメッセージをください』と。アジアの代表だなんて、そんな大それたことを考えたこともないので困りました(苦笑)。でもONEは本気だったんです。本気でアンジェラ・リーと私をツートップにして、アジアの女性たちに勇気を与えるというか。

最初は、それも大げさだなと思っていました。でもONEのスタッフから本気度が伝わってきて。私もアジア各国――特に発展途上の国々で、『あなたの試合を視て、勇気をもらいました』とか、現地の人たちがONEや出場選手を本気で応援してくれているが分かったんです。それまでは自分がやりたいから格闘技をやってきた。でも海外に出て、そういうふうに言ってもらえるとは、思ってもみませんでした。その世界観をONEは創っていたんですよね。そして私も、MMAファイターというものが価値のある職業なんだと感じました」

――それがまさに、ONEのコンセプトではありましたね。その気持ちは、日本のRIZINで戦うことになった今も変わりませんか。

「はい。今は日本も格差が広がっていて、苦しい生活を送っている人も多いと思うんです。特に女性はシングルマザーだったり、働いても働いても生活は苦しいままだったり。そういう女性が増えている状況のなか、自分が生まれたこの国で私にも何かできることがあるんじゃないかと考えています。だからキャリアの最後はもう一度、日本で試合をしたいと思いました」
<この項、続く>

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【Shooto2023#02】RTUから帰還、野瀬翔平が新人王=新井拓巳と対戦。同門菅原はMAXと─続く茨の道

【写真】新井としても、野瀬を食うことで未来を変えることができる一戦だ(C)MMAPLANET&ONE

3月19日(日)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2023#02の追加カードがSustainより発表されている。

SASUKE✖飯田健夫の世界フェザー級選手権試合、新井丈×関口祐冬、澤田龍人×安芸柊斗等が組まれている同大会にライト級のマックス・ザ・ボディ×菅原和政、バンタム級の野瀬翔平×新井拓巳の2試合が加わった。


HEATで岡野結城、VTJで西川大和、修斗公式戦で宇佐美正パトリックと3連敗後、昨年10月にエドモンド金子を破り約1年7カ月振りに勝利を挙げた菅原だが、ここでマックス・ザ・ボディとのマッチアップ、まだまだ茨の道が続く。

ここまでのハードな相手との対戦、勝ち負けを抜きにして、その経験を生かすのはこれから。そういう意味で、フィジカル・モンスター=マックス・ザ・ボディとの対戦は、菅原の今後を占う上で非常に大切な一番になってくる。

そんな菅原の同門、野瀬はRoad to UFCを経験し修斗に戻って来ることとなった。対する新井は昨年の新人王、なんともシビアなマッチアップとなる。野瀬と新井、ここまで接点がないように見えるが、両者揃って中村倫也に大敗を喫したという共通点がある。

新井は一昨年の4月にアマチュアマッチとして、格闘DREAMERS最終選考試合で中村と対戦し、42秒でKO負け。野瀬は昨年11月にRTU準決勝で、2分21秒で同じくKO負けを喫している。中村戦後の新井は1勝1敗1分、とにかく組んでしつこく攻めるという戦いを貫いている。

野瀬としては、その執拗な組みを遮断、あるいは自分の形で組むことができるか。RTU出場前に野瀬の師匠である弘中邦佳は「契約できれば御の字。そうでなくて、RTUで得られる経験が野瀬のキャリアに大切になってくる」と明言していた。

RTU初戦で元UFCファイターのウリジブレンと向き合ったことも、現状の日本ではなかなか経験できないことだ。Road to UFCを戦ったアドバンテージは確実に存在する。それを生かせるかどうかは本人次第。野瀬のMMAファイター人生の第2章がこの新井戦から始まるといっても過言でない。

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【DEEP Tokyo Impact2023#01&#02】野村駿太、鹿志村仁之介が昼夜のメインで川名とDJ.taiki越えに挑む

【写真】スタイルも恐らくは性格も相当に違うであろう野村と鹿志村。キャリア6戦目と8戦目──なるかJ-MMA界の新陳代謝 (C)ONE

7日(火)にDEEPより3月25日(土)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP Tokyo Impact2023#01&#02の対戦カードが発表されている。

今月4日にBlack Combatとの対抗戦、11日の後楽園ホール大会=DEEP112、そして18日に新宿FACEでDEEP JEWELS40が開かれるDEEPにあって、各階級トップ下の潰し合いが繰り広げられるTokyo Impact大会第1&第2弾のカードはメインで、ストライカーとグラップラーの新鋭がベテランに挑むマッチアップが用意された。


まず昼の部となる正午開始の1st round=#01は野村駿太が川名TENCHO雄生に挑むライト級マッチが決まった。帝京大空手部出身、全日本空手道選手権で5位の実績を持つ野村は、2021年9月にグラチャンでプロデビューし、VTJからグラチャン、そしてDEEPで戦績を積み、現在4勝1敗の戦績を残す。唯一の敗北はキャリア2戦目にVJTで宇佐美正パトリックに喫した判定負けだ。

伝統空手特有の距離からの踏み込みだけでなく、近距離でボクシング、さらにレスリングと総合力を高める野村は、昨年12月には小金翔太を『打』で圧倒し、元修斗世界王者との対戦する権利を得た。

一方の川名は2020年9月のRIZINでの武田光司戦より、悪夢の4連敗を経験。特にDEEP初陣となった石塚雄馬のKO負けは、進退を考えるべき敗北となっていた。その川名は昨年11月の高橋Bancho良明戦で涙の復活勝利を挙げ、新鋭の挑戦を受けることとなった。

午後5時半スタートの2nd round=#02のヘッドライナーは鹿志村仁之介が抜擢され、DJ.taikiと対戦するバンタム級戦となった。

Road to UFCの緊急チャレンジからDEEPに戦場を移し、階級を下げた鹿志村は初戦で雅駿介をRNCで下し、元バンタム級王者越えを狙うマッチアップを手にした。NY修行中、現地に関して「向うの選手は簡単に極めることができない」と米国MMAファイターの防御能力の高さを実感していた鹿志村は、その分だけ極めの精度を上げてくることが予想される。

とはいえDJに対して、打撃が見えていないと組みの展開に持ち込むことは簡単ではない。殴られても組むというスタイルから殴られずに組むことが不可欠になってくる。DJとしてもCOROとの暫定王座決定戦で敗れからの再起戦で、5勝2敗の21歳に遅れを取ると再浮上は難しくなる。ばかりか総合力で力の差を見せつけることが、欠かせない。

いずれにせよ、野村と鹿志村ともここを越えるとタイトル戦も見えてくる。そしてタイトル戦線がより活発化する起爆剤となり、ナンバーシリーズにつながる対戦といえる。修得すべき技術が多いMMAではファイターとしてのピークはやや高くなる。とはいえ、常に新しい力は生まれてくる。キャリア10戦に満たない選手が、一度は頂点を究めたファイターと対戦が無謀に感じられなくなってきたJ-MMA界だ。

この他、#01では雅駿介✖内山拓真、泉武士✖井上竜旗戦、#02では駒杵嵩大✖風我のフライ級サバイバル戦が改めて組まれ、女子ではアトム級で須田萌里と桐生祐子の再浮上へ世代を越えた連敗は許されない者同士の試合が決まっている。

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