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Interview Special UFC UFC250 コディー・ステーマン ブライアン・ケレハー ブログ 岡田遼

【Special】岡田遼が語りたい、UFCプレリミ戦─05─コディ・ステーマン✖ブライアン・ケレハー

【写真】とてもテイクダウンが強烈に強いようには見えなかったケレハー戦のステーマン (C)Zuffa/UFC

修斗暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼が語りたいUFCプレリミマッチ。

第5回からは6日(土・現地時間)のUFC250で行われた140ポンド契約マッチ=コディ・ステーマン✖ブライアン・ケレハー戦について話してもらった。


──過去1カ月、岡田選手が気になるプレリミ3試合目は?

「ステーマンとケレハーの試合が、この1カ月のプレリミで一番でしたね。いや……ステーマン、あの人ってレスラーなんですよね?」

──NCAAのD-2レスラーですね。でも、高校の時からボクシングもやっていてMMAはダロン・クルックシャンの下で習い、昨年からエクストリーム・クートゥアーの所属になっています。なんでもボクシングでもプロの経験があるようです。

「そうなんですか……。この試合でも解説が良いレスラーって話しているのに、全然レスリングなんてしていなくて。アレックス・ペレスもそうでしたけどね。ステーマンは正面から打撃を使って、スイッチをしてボディにもパンチを散らすことができていました。でも、蹴りも強力で完成度の高いストライカーでしたよ。アッハハハハハ。笑っちゃいますよね」

──ワンツーだけでなく、スリーまで出せる選手かと思いました。

「あの軸の強さは……3つ目に関して普通は、僕だったら体がブレブレになってしまうと思います」

──ソン・ヤードンと戦った時は、テイクダウンを5、6回決めてバックも制し、さらに蹴り上げの反則があったのにドローという意味不明な判定でした。とにかく、あの試合ではレスリング全開で戦っていました。

「なのに打撃があれだけ強い、と。ケレハー戦のテイクダウンは打撃で支配しておいてニータップだとか、本当にローエナジー、疲れないレスリングをしていましたね。楽に倒していました。

ATTで練習していた時に思ったのですが、日本ではレスリングって一番しんどいことをやるというイメージを皆が持っていると思います。でも、米国の連中はそんな気持ちではないですね。サァーって倒して。全体練習の時もマイク・ブラウンは、力を使わずテイクダウンするようにと口を酸っぱくして言っていたんです。

一生懸命頑張り過ぎないでテイクダウンできるような打ち込みもやりました。テイクダウンで疲れるなということは皆の共通項でした」

──例えばレスリングの試合で実力が拮抗している者と戦い、そんな風にエネルギーを使わず戦えるのは、もう達人かと思います。ただ、打撃もあるMMAではより可能になるのかもしれないですね。

「そうですよね。絶対に倒す必要がなく、倒せなくても打撃に自信があれば、打撃でやりあえば良いですし。ATTで経験してきたのも、そこでした。レスラーが決してレスリングありきではない。

打撃ありきだから、崩れたところでそのレスリング能力が生かせている。ステーマンもそうですよね。蹴り足をキャッチして、テイクダウンを取っていますし。押せば倒れる……一番疲れないことをしていました。なので無駄に自分のスタミナをロスしないで戦うことができる。

ただし、そういう試合をするためには打撃で優位に立つ必要があります。しっかりとストライキングの技術があることで、レスリングが生きていました」

──そして3Rは最初にテイクダウンを奪うと、グラウンドにもいかずスタンドで待ちのファイトをし、最後はテイクダウンを仕掛けてきたケレハーに対しギロチンで迎え撃って、時間を使っていました。

「巧かったです。1Rと2Rは打撃でしっかりと試合をリードして、最終回は時間を使う。ラウンド毎に戦い方を変えて、本当に考えて試合をしていると思います。同じバンタム級の選手ですし、凄く面白かったです。

でもアルジャメイン・ステーリングとやった時は、ここまでの完成度は高くなくてバックとられて負けているんですよね」

──あっ、スロエフ・ストレッチで!

「ホント、ステーマンにあんな技で勝って、サンドハーゲンは最初のテイクダウンでRNCを極めてしまうって……どんだけアルジャメインは強いだって話ですよね(笑)」

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Interview Special UFC UFC250 アレックス・カサレス チェイス・フーパー ブログ

【Special】岡田遼が語りたい、UFCプレリミ戦─04─アレックス・カサレス✖チェイス・フーバー

【写真】ジャブで突き放し、試合を支配したカサレス (C)Zuffa/UFC

修斗暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼が語りたいUFCプレリミマッチ。

第4回からは6日(土・現地時間)のUFC250で行われたフェザー級戦=>アレックス・カサレス✖チェイス・フーパー戦について話してもらった──流れで、田丸匠に対し、強烈な発言が聞かれた……。


──過去1カ月、岡田選手が気になるプレリミ2試合目は?

「カサレス✖フーパーです」

──!?

「アレっ? ピンとこないですか?(笑)」

──カサレスが完封した。う~ん、その記憶しかないですね。

「ハイ、完封でした。チェイス・フーパーって20歳で、勢いがある。UFCも将来性を買っているような感じがする選手だったのですが、カサレスが引き出しの多さと、経験値からなるMMAとしての完成度の高さで完封したというのが凄く印象に残ったんです。僕はメチャクチャ好きな試合内容です」

──その完成度の高さはとは、どういうものだったのでしょうか。

「多分、距離を取るという戦術だったと思うのですが、近づいてきたら出鼻をジャブで潰し、ステップを踏んでの空間支配能力の高さに僕は痺れました。

結果、距離をしっかりと取ってフーパーのやりたいことを何もさせませんでした。凄かったのが、初回に前に出たフーパーに右アッパーを合わせてダウンを奪ったのに、そこで攻めなかったことですね」

──あぁ、ありましたね。立たせて迎え撃つという。

「『なんで追撃しないの?』と思ったのですが、それができるのが凄いなぁと」

──う~ん、仕留めにいかないスタイルでしたね。

「ハイ。ダウンを取っても、パンチを当てていても必要以上に近づかない。勝ちに徹する姿は美しいとさえ思いました」

──なるほどぉ。そういう見方もファイターならではなのですね。しかし、岡田選手は北米MMAに毒されていますね(笑)。

「あっ、タッチ・キックボクシングMMAだけは嫌いなんですよね(笑)」

──特に倒せる時に倒しに行かない。まさにカサレスの初回ですよね(苦笑)。倒せない相手、凄くテイクダウンや寝技が強い相手にソレをするのもMMAなのですが、倒せそうな時には倒せよ……いや、倒しに行けよとは思ってしまうんです。昭和のMMAファンですね(笑)。

「戦いという部分では、その意見も分かります。ただ、僕にアレができるかというと……あのゲームはできないんです。僕なら倒しに行く」

──まさにレスリングの強い倉本選手にパンチを効かせたとき、距離を取って待つようなことはなかったです。

「そうッスね。自分なら行っちゃいます。でも、カサレスはいかずに待った。なんかMMAだからこそ、許される戦い方だし……僕は凄く惹かれました。もちろん仕留めにいくのもMMAだし、いかないカサレスの戦い方もMMAならではだと思います。

ああやって待つことができるのも、自分の技量に自信があるからだろうし……怖いから行くっていう選手は意外と多いはずです。でもカサレスはそれを天秤に掛けて、いかない方が勝率が上がると判断して、実行できている。彼の強さだと思います」

──前に出るとジャブで突き放される。テイクダウンを狙っても、スプロールされる。そういう展開になった時、岡田選手ならどういう風に試合を動かしますか。

「自分の距離が取れないときは、もうブラジル人と同じで玉砕覚悟で組みつくという選択をすると思います。パンチを貰って良いからいく。フーパーは途中から諦めて、下になっていましたね」

──アレはポイント的には。北米MMAで一番勝てない選択ですね。

「ハイ、ソレです。あの時は期待の若手も、こういうモンなんだなって。まぁ、下になるのも面白いですけどね」

──自分は酷評覚悟で、そして判定負けがまだ決まっていない時点なら見てみたい反応があるんです。

「どういう反応ですか?」

──前に出ない。待つという戦いです。

「えっ? アハハハハ。前に出るから殴られる。なら、待ってみると。それは考えなかったですねぇ。それもMMAですね。他の格闘技にはない」

──まぁ、それで負けるとリリースかもしれないですが(笑)。

「確かに(笑)。そこで出ないと……厳しい評価が待っていますね。いやぁ相当な図太さが必要です、それは。でも、全然ありですよ。

それなら無観客の方がやりやすいですね。カサレスも客がいてブーイングが起きたら、もっとレフェリーが攻めるように言われ自分から前に出てしまったかもしれないですしね」

──最終ラウンドを取っても判定で勝てないから、出るしかないですけどね。

「いやぁ、でも選択肢としてありですよ。それがMMAなので」

──やはり毒されていますね(笑)。

「アハハハ。僕もカサレスのように当てて、待って、当てて。そういう側の人間になりたいです。フィニッシュに行けるのに、ニヤニヤ笑って待ってなぶり殺しにするような試合がしたいですね(笑)。そのまま5R、そういう風に戦いたい。それも本当の強さだと思っています」

──奇しくも5Rという言葉が出てきたので……敢えて振らせていただきますが、田丸匠選手が『ランクが2位になった』とSNSで発言していたのは……これは含みがある発言だなと感じたのですが。

「あのガキ……。MMAPLANETのインタビューでアイツ、俺のことを『ボコボコにする』って言いやがって」

──アハハハ。でもボコボコじゃなくて、パカパカだったかと……。

「いや、どっちでも良いですよ。あのクソガキ……。別にやる必要あるとは思っていないですけど、やるようなことがあれば絶対に仕留めないでボコボコにしてなぶり殺しにしてやりますよ」

──そこもインタビューで生かさせていただきます(笑)。

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Interview Special UFC UFC250 アレックス・ペレス ジョズエ・フォルミーガ ブログ 岡田遼

【Special】岡田遼が語りたい、UFCプレリミ戦─03─アレックス・ペレス✖ジョズエ・フォルミーガ

【写真】フォルミガを組ませず、ローで勝てるレスラー=ペレス (C)Zuffa/UFC

修斗暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼が斬る、UFCプレリミマッチ。

第3回からは──岡田遼の語りたいUFCプレリミマッチとして、6日(土・現地時間)のUFC250で行われたフライ級戦=アレックス・ペレス✖ジョズエ・フォルミーガ戦について話してもらった。


──岡田遼が話したいUFCプレリミマッチ、毎週のように開催されていたUFCからどの試合をピックアップしてもらいましょうか。

「ペレスとフォルミーガです。フォルミーガとはATTで一緒に練習した時に達人的な動きを見ていて、僕は彼が勝つと予想していたんです」

──達人的な動きとはどういうところでしょうか。組んでバックを取るのが上手いという印象が強い選手だったのですが。

「ハイ、それが必勝パターンじゃないですか。でも練習では、そこを使わずに幅広くMMAができる人なんです。絶対的な強さを持っているのに、それを使わない。打撃もかなり上手くてウェルラウンダーでした。そのフォルミーガがローで負けて……いや、ペレスも強いとは思っていました。思ってはいたのですが、あの勝ち方ができるとは驚きです」

──レスラーですが、レスリングを使わずあの試合でフォルミーガに勝ってしまう。

「引き出しが多いですね。フォルミーガが負けたのはショックですし、ペレスが本当に強いところを出さずに勝ててしまうのも印象深いです。

カーフキックに関しては、当たり所もありますが……フォルミーガも効いたのは最後の3発ぐらいだったと思います。それにしても余りにも無策だったというか、最初から効いているとスイッチしたり、強みである組みにいくだとか対処したと思うんです。

実際、僕はいくらフォルミーガが練習であれだけ色々なことをやっていても、試合になると組んでバックを制すだろうと思っていました。打撃の攻防からテイクダウンして、上を取って殴り、背中を制してドミネイトするんだろうなって。

それがまぁ近づけない、入れない(苦笑)。打撃で敵わないとなると、思い切り組んで押し込むという戦い方はあると思うんです、ブラジリアン柔術の強い選手は。でも、フォルミーガが奥の手、その切り札を切ることすらできなかった」

──いきなり我慢できない蹴りが入ってしまったと。

「ATTには打撃のコーチがたくさんいて、タイ人もいるんです。ただ担当制でフォルミーガは、ヘッドコーチのコナン・シウヴェイラの指導を受けていることが多くて……。あまりそういう練習はしていなかったかもしれないですね。

それだけペレスが強いということなのですが、遠い距離ではあの蹴りがあり、近づくと素早いパンチを持っている。過去の試合を見ると、当然のように組みもできますし……完成度が高いです。いやぁ、あんな強い人間を見ると、ちょっと落ち込んでしまいましたね(苦笑)……早朝から。でも、あれがUFCなんですよね。痺れました」

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ABEMA Interview Special ブログ 北野雄司

【Special】ABEMA北野雄司に訊く、withコロナの格闘技─01─「欧州サッカーリーグの開催マニュアルを」

【写真】経済活動再開は決して新型コロナウィルス感染への警戒を怠ってはならない──それは格闘技イベントの開催でもいえることだ(C)MMAPLANET

新型コロナウィルス感染拡大は世界中に多大な影響を与え、日常を一変させた。日本の格闘技界でも3月からイベントの中止及び延期が相次ぐなか、4月17日にRoad to ONE02、5月31日にプロ修斗公式戦が会場非公開のABEMAテレビマッチとして行われた。

そして今──緊急事態宣言の解除と、経済活動の再開とともに格闘技界も動き始めた。withコロナの時代の格闘技界はフェーズ01からフェーズ02を迎えたといえる。

そんななかフェーズ01を経験したことで、これからの格闘技イベント及び中継はどのような方向へ向かっていくのか。この間の日本の格闘技を支えたといっても過言でないABEMA格闘chの北野雄司プロデューサーにフェーズ02に向けて、話しを訊いた。


──4月17日のRoad to ONE02、5月31日のプロ修斗。2つのABEMAテレビマッチを終え、ウィズ・コロナの格闘技大会及び中継もフェーズ01から、世の中の流れに沿いフェーズ02を迎えようとしています。そのなかで5月31日の修斗は、4月17日と比較して、どのような点に進歩を感じられましたか。

「4月と5月だと社会の新型コロナウィルスを巡る情勢が違っていました。5月は感染症拡大防止対策がステップ2になる直前で、新型コロナウィルスの感染予防に対する人々の知識が違っていました。

イベントに参加する人々の感染防止に対する知識量が4月とは比較にならないほど多くなっていたので、感染防止に関するお願いをすると、そこを正しく受け止めることができるようになっていました。そういう部分では4月よりも5月はモノゴトを進めやすかったです」

──それも4月があってこそですが、その4月大会はイベント開催に関しては当日の中止もあるのではないかと危惧していました。ライブ中継を行ったことに対して、何かネガティブな反応はありましたか。

「4月にあの大会をやることも、代表取締役社長の藤田(晋)に会議で報告しオーソライズ(承認)を得て行ったことですし、社内的には何もなかったです。ただし、社外からは様々な形で質問をいただくことはありました。

あの時は世論の合意や方向性が形成される前に中継するという部分で、5月よりも理解を得る大変さはありました」

──つまりは誰もがしなかった時に、踏み出したことになります。もちろん、賛成の声ばかりではなかったですが、とある修斗の選手に話を聞くと『あそこまで大会を開くために、多くの人が覚悟をもって臨んでいた。そのことを知ってから、自分も人として役に立ちたい。期待に応えたいと迷いを払拭できた』と言っていました。

「そう言ってもらえると、素直に嬉しいです。ただ、もう色々なことがあり過ぎて、若干記憶がボンヤリしてきています(笑)。

ただし、やって良かったという意見が多くなると、自分のチームであっても気の緩みが感じられました。だから、改めて注意喚起をすることにしました。時間が経ったり世間が柔らかくなると、携わる人の意識も、ある程度緩みますから。

でも、感染者が出ると多くの人に迷惑が掛かるし、色々な人に心配をかけることになります。やはり引き続き、1人も出してはいけないということを肝に銘じ続ける必要があります。それもあって過去に放送してきた大会を振り返り、アレがあったから今がある……というほど自己評価できないです。明日、1カ月後……と先々の心配をずっとしていないといけないですから」

──ライブで格闘技大会を中継する。感染はそこからスタートでない。いつ、どこで、誰が感染しているのかは分からないという現実に実は変化はありません。経済活動を再開したとしても。

「4月、5月、そして今も変わらないのは、会場に到着する前にご家族や限られた人としか会っていなくても、既に感染している可能性があるということです。だから僕たちに防ぎようがないことは起こりえます。

感染が起こった時のことを考えて、その前後の行動を把握するのは当然として、スタッフも極力重症化リスクの低い若い人員を手配していました。あわせて『業務経験よりも、感染予防への意識が高いスタッフを優先する』という指示をしていました。高齢者と同居している人は配置せず、真面目に予防対策をできるスタッフでやってきたという自負はありますね」

──スタッフの意識を高めると同時に、選手サイドも同様に現状をより理解する必要もあるかと2大会を終えて感じました。

「修斗でも『試合が終わった選手からどんどん帰宅する』というガイドラインを選手達に伝えていても、残って試合を見ているチームがありました。坂本(一弘サステイン代表)さんが、帰宅をするように伝えに行ってくださいましたけど」

──この2大会を経て、今後はどのようなスケジュールを組んでいくことになりそうですか。

「もともと修斗は7月に大会を開催予定で、その際は中継もするつもりなので、ぜひともサポートしたいです。またONEチャンピオンシップも再開すれば、渡航制限解除後スタッフを現場に派遣する必要も出てくるかもしれないです。

勿論、かねてからお世話になっているK-1さん、RISEさん、パンクラスさんほか、既に活動していますが……グループ内のプロレス団体であるNOAHさんやDDTさんと中継を創っていくことになります」

──安全対策は完全、満点がないといえますが、今後どのような部分でさらに力をいれていくべきだと考えていますか。

「今の時点で努力していることは、2つあります。世界のメジャーサッカー・シーンでは、ドイツのブンデスリーガが一番最初に活動再開をしましたよね」

──ハイ。無観客でTV中継を行っています。

「欧州のサッカーリーグの開催マニュアルが、大変厳しいというのをどこかの記事で読み、早速その規定書を入手して日本語訳を作成しました。

ぎっしり字で埋められた資料で、過去14日に発熱があったかなど基本的な確認はもちろん、ドアハンドルやリフトボタンを手で触れないでヒジを使う、……消毒剤は乾いた手にこすりつける必要があり、その後は水で洗ってはいけない……等とても細かい点まで指示されているんです。スタッフの間に立てるアクリルボードに関しても、しっかりと記載されていました」

──先日の修斗中継でも使われていましたね。いやぁ、でもそんな資料まで訳されているとは驚きです。

「興味深かったのが、ゾーニングが徹底されているということです。マスコミと選手たちは一切会わない動線になっていました。

修斗でも選手とメディアのゾーンは完全に分けていたのですが、そこは徹底できていなかったです。選手たちがメディアのゾーンに来ていましたからね」

──それは私も試合後の選手に取材をしているので、猛省すべき点です……。

「今後はもっと人の出入りが増えていく傾向にあるので、そこは守っていただくように団体と相談していきたいです。特にそのマニュアルではゾーンと時間帯が決められていて、どの時間帯に誰がどのゾーンにいたのか分かるようになっています。

スタジアム内、スタンド部分、スタジアムの外とゾーンを分けていて、それぞれのソーンに時間帯も記入されており、そこにいる人数も決められています。中継スタッフの上限まで規定されています」

──それは凄いですね。

「これは無観客が前提ですが、それでも感染は有りうることとして、そうなった場合に接触した人を迅速に割り出し、そこからの二次感染を抑えるための手段を講じています。

何時から何時まで、誰がどのゾーンにいたのかをハッキリさせて、ゾーンが違う人々との接触を避けています。今後の収録イベントに関しては、このゾーニングを考えています。先日、修斗の会場をとあるスポーツ・リーグの方が視察されていたのですが、『私たちはここまでできていない』とおっしゃっていただけました。

サッカーの大型アリーナに比べれば、格闘技の会場は構造が単純で比較的動線の工夫がしやすくなっています。あわせてスタッフの意識、対応レベルをさらに育て、欧州のサッカーリーグと同じような対応・準備ができるようにならなければいけないと思っています」

<この項、続く>

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DEEP Interview J-CAGE Special The Fight Must Go On チェ・ドゥホ ブログ 佐伯繁 昇侍

【The Fight Must Go On】Must Watch !! 佐伯繁のおススメ、DEEPケージファイト思い出の5番勝負─07─

【写真】現時点で最後の日本での試合。チェ・ドゥホはこの後、UFCでカブ・スワンソン、ジェレミー・スティーブンスとえげつない殴り合いをオクタゴンで魅せている(C)DEEP

全国的に緊急事態宣言が解除され、格闘技ジムの活動再開も伝わってくるなか──それでもMMA大会は中止及び延期が続いています。それでもUFCの活動再開や、国内でも無観客大会が開かれつつあるなか、引き続きThe Fight Must Go Onということで、第43弾はMust Watch!! このスポーツの著名人が、改めて視聴することを薦める試合を紹介したい。

佐伯繁代表がDEEPオフィシャルYouTubeチャンネルにアップされているケージマッチから、「今、まだアップしきれていないけど」思い出の5試合を振り返る──企画だが、「5試合にしぼり切れないんだよぉ」ということで、今回は第七弾(最終回)へ。

※ここで紹介する試合は、オフィシャルホームページやオフィシャルYouTubeチャンネルで誰もが無料で視聴できるファイトに限っており、違法でアップされた試合は含まれていません。


佐伯代表が選んだ「今、まだアップしきれていないけど、アップしているなかから思い出の5番」ながら、「どうしても絞り切れない」と選んだ最後の試合は2013年6月15日に行われたチェ・ドゥホ✖昇侍の日韓対決だ。

DEEPで5連勝中、キャリア11戦で日本での試合が10試合。日本のMMA界で育ったといっても過言でないチェ・ドゥホが、UFCに巣立つ前に戦った国内最後の一戦はDEEPにとって特別な大会のメインだった。

佐伯繁のMust Watch 07、チェ・ドゥホ✖昇侍の選択理由は以下の通りだ。

佐伯繁
「後楽園で初めてケージでやって、その時のメインでした。チェ・ドゥホが快進撃を続けていて、1枚目のポスターはチェ・ドゥホのピンだったんです。外国人選手がピンのポスターは、あれ以外はないですね。赤コーナーのチェ・ドゥホは外国人でもエース的な期待感がありましたね。

試合内容的にも20数年やってきて、トップクラスの戦いでした。昇侍が本当に頑張って、蹴り上げのダウンから立ち上がって殴り合ってね。初の後楽園のケージで熱があって、昇侍も言い方は悪いけど予想を上回る力を出していました。チェ・ドゥホが危ないシーンもあった。そして外国人の彼が勝っても、お客さんは凄く歓声を送ってくれた。色々な想いが記憶に残っている試合ですね」

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Interview Special UFC ESPN09 ケイシー・ケニー ブログ ルイス・スモルカ 岡田遼

【Special】修斗チャンプ岡田遼が斬る、UFCプレリミ戦─01─ケイシー・ケニー✖ルイス・スモルカ

【写真】修斗暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼が受けたケイシー・ケニー✖スモルカ戦の衝撃とは?(C)Zuffa/UFC

今回より、正式スタートする新企画=修斗暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼が斬る、UFCプレリミマッチ。

第1回は5月30日(土)のUFC ESPN09で行われたバンタム級戦=ケイシー・ケニー✖ルイス・スモルカ戦について話してもらった。

タイトル戦を控えた朝、岡田の目にケイシー・ケニーはどのように映ったのか。

<修斗チャンプ岡田遼が斬る、UFCプレリミマッチ─序章─はコチラから>


──ケイシー・ケニーのどこに興奮させられたのでしょうか。

「僕、ATTでコーチに口を酸っぱくして言われていたのが、『チェンジ・レベル』、『チェンジ・アングル』、『チェンジ・スピード』の3つだったんです。高さ、角度を変えて緩急をつける。これをずっと言われていて、日本に戻ってきてからも気を付けていたんですけど、だからって簡単にモノにできることではないです。

それがケイシー・ケニーを見て、『これだ。コイツ、全部チェンジしてるじゃん!!』って思ったんです。緩急がついていて、角度も変える。で、高さも違いをつけて戦っていました。正直、これまでケイシー・ケニーのことを知らなくて、漫然と眺めていたら、『なんだ、この選手は?』ってなったんです。

しかも流れるように、ごく自然にできている。『これ、マイク・ブラウンに言われたわ』って(笑)。答を見ることができ、凄く興奮しましたね」

──UFCでの2試合はテイクダウン中心で戦っていたのが、LFA時代に戻ったような試合でした。

「ローとミドルを散らして、どっちも重い。レスラーのスタンスじゃないですよね、あれだけ重い蹴りを使えるなんて。パンチも下がりながら当てていて、メチャクチャ上手い。ちょっと衝撃的でしたね。最後も左から右の返しを決めて、そこからスモルカが、テイクダウンに逃げて」

──一旦切ってから、ギロチンに入りました。あれでスモルカのスクランブルを止めることができるのかと。

「普通はそのままアームインで入るのが定石で。受け止めてからハイエルボーを選択するというのは、僕の常識にはなかったです。いやぁ強いし、美しいとすら思いました」

──ダメージがあったのは確かですが、普通にアームインよりも念を押すかのようにハイエルボーに入ったのかと。確実に上を取るために。

「スモルカが逃げるために背中をつけて、隅返しみたいに返そうとしたけど、それもしっかりと潰してハーフでトップを取って極め切りました。あれで極めてしまうんですよねぇ」

──アームインで頭を抜かれると、下になることもありますしね。

「自分の試合がこれからあるので、『また、ちゃんと後で視よう』って思いました。凄い試合を見てしまったというのが正直なところでしたね……『うわぁ』って。で、会場ですれ違った時にUFCのプレリミと比べるからと言われて、食いついて話してしまったんです(笑)」

──食い気味だったから、驚きました(笑)。

「でも、試合後の共同インタビューで『ケイシー・ケニーと戦ったらどう?』って聞かれて……(苦笑)。情けない話だけど、『今やったら、絶対に勝てない』と思ったんです……もうギクッとして」

──いやぁ、申し訳ない質問でした。では、続いてブランドン・ロイヴァル✖ティム・エリオット戦をお願いします。

<この項、続く>

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Interview Shooto2020#03 Special ブログ 倉本一真 岡田遼 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その参─岡田遼✖倉本一真「素養はクラスBだけど……」

【写真】素質はクラスB、その岡田がUFCもあるという青木の真意は(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ4月の一番、第3弾は31日に開催されたShooto2020#03から岡田遼✖倉本一真の一戦を語らおう。


──5月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。

「岡田遼✖倉本一真ですね。岡田選手は5R制だから、あの戦いができました。それが一番大きいと思います。僕がマラット・ガフロフとやった時の組み方でした。主導権を握って攻めさせる。それを岡田選手がかしこくやりましたね。

倉本選手陣営をくさすことになってしまうかもしれないですが、あの試合運びは完全に作戦ミスです。」

──青木選手が倉本選手のチームなら、どのような作戦を立てましたか。

「ゆっくり見ろと僕なら言います。できる限り力を使わず、テイクダウン。あとはボディクラッチして岡田選手の動きに合わせておけば良いって。泳げってことですね。10-9.8で初回から3Rを取りましょうと言いますね」

──倉本選手はバックと比較して、トップの時の圧力がないように見えました。

「それはサブミッションですね。サブミッションがないから、ゴールがない。だから岡田選手としては、ずっとバックを取られても、グルグルと付き合ってたまにギロチンを狙う。そういう戦いができますよね。倉本選手は終わらせることができないから。

あのギロチンも岡田選手が上手いわけじゃない。あれだけ抱き着いてドミネイトしていると、まぁギロチンは食らいますよ。MMAとして完成度が低い倉本選手が、終らせることができたとすれば、それはテイクダウンのフェイントからぶん殴ってKO。それしか今はないと思います」

──今はそれだけしかできない選手が、ここからMMAを突き詰めていくとUFCで勝てるようにならないでしょうか。

「う~ん、身体的素質が高い選手ならUFCにはいくらでもいますよ。倉本選手はいうても、まだ7試合とか8試合しかやっていない。それで修斗の世界王座に来ること自体が、人材難なんです。だから岡田選手も倉本選手も、この試合でUFCが見えてくるということではないと思います。

皆が世界、世界って言っている時に……まぁ、その世界ってどこなんだよっていうなかで、修斗王座を狙う。そこに愛ある物語があったのが良かったですね、岡田選手は。他と差別化もできて」

──そして、UFCで戦いたいと口にしました。

「良い話ですよ。ATTに行って、そういう気持ちになるって」

──UFCに行きたい、その気持ちは青木選手も持っていましたよね。

「僕も思っていますよ。あのう……何て言うんだろうな、次なる格闘技の人生のなかで機会があって、もう一度北米で何かできれば楽しい……豊かになれるなって思います。僕はUFCに出ている選手へのリスペクトはメチャクチャありますからね。

岡田選手がUFCを目指したいっていうのは良い話ですね。だってさぁ、策士じゃん?」

──アハハハ。

「そもそも……こんなこといったらアレですけど素質的にはクラスBですよ。素養としては。それをアレだけ考えて、整理整頓できて、自分がどこにフォーカスして努力すれば良いのか正解を見出している」

──最高の誉め言葉ではないですか!!

「だから、僕はあると思いますよ。岡田選手のUFCは。UFCのチャンピオンになるとかっていうことは、現実離れしています。でも、UFCに加入して勝ったり負けたりすることは、彼の思考能力からすればあると思います。

やりくり上手じゃないですか。倉本選手との試合で、露骨にのんびりしようぜってできるほど性格は悪いし。1Rと2Rはお前にやるけど、俺は5Rという試合タイムをフルに利用するからよって、戦えるんですよ」

──それって図太いということですよね。

「図太いです。頭が良いし、腹黒い。図太さでいえば、鶴屋門下ですね。倉本選手の方が絶対に良い人ですよ(笑)。なんかKIDさんっぽさがあって。でも策士が勝っちゃうんですよ、良い人に」

──自分は一つ、岡田選手が凄いなと思ったことがあるんです。当日は2階の記者席から写真を撮っていたのですが、試合後にそれに気づいて2階に視線を送ってきました。正直、後楽園やディファのバルコニーで写真を撮影していて、そこに気付いた選手は過去に1人としていなかったです。

「それは凄いッスね。ちゃんと周囲が見えている。自分がコントロールできているんですね」

──それに受験勉強ができる人って、コツコツできる根性があると思いませんか。

「あぁ、ハイ、ハイ、ハイ。だって意味ないですからね。そのゲームを越える以外に。要はセンター試験を越えるって、部活動を頑張るとかよりも、根性ありますよ。だって甲子園に出るとか、サッカーで国立だっていう風に注目を集めるわけでもなく、別に大学に受かっても有名になれるわけでもない。凡人としての強さですね。それがヤツにはあります」

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Interview Special UFC ESPN09 ジルベウト・ドゥリーニョ タイロン・ウッドリー ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その弐─ドゥリーニョ✖タイロン・ウッドリー

【写真】ウッドリーの消耗とドゥリーニョは覇気、対照的な精神状態だったか (C) Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年5月の一番、第2 弾は29日に開催されたUFC ESPN09からジルベウト・ドリーニョ・バーンズ✖タイロン・ウッドリーの一戦を語らおう。


──5月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「ドリーニョ✖ウッドリーです。タイロン・ウッドリーも年齢なんだなって。38歳で、ちゃんと年を食っている。それと優しいというか、弱いというか。ローリー・マクドナルドに完封された試合を思い出しましたね。

手詰まりになると、ずっとそのままなんですよね。絶対的なテイクダウンの強さを持っているのに、逆にテイクダウンまで取られてしまって」

──初回のダーティボクシングでダウンし、萎んでしまったのでしょうか。

「クリンチアッパーで」

──セコンドのディーン・トーマスが、4R前のインターバルで『全部取られているから、行くしかない』という指示をしていたのに、まるで出なかったです。

「行かなかったですねぇ。最後のラウンドでも、あそこで組みに行くって謎ですし。もう、この試合に関してだけでなく色々と疲れているのかなって感じました」

──30代後半で世界王座から転落し、ダイレクト・リマッチでなくトップ5に勝ってチャンスを掴めよ──という状況になると、もうしんどいのかなと。

「ドゥリーニョを当てられているということが、どういう意味が分かるわけですしね。『お前、もうイイよ』って言われているようなもので」

──青木選手はプロモーターと協力しあって、イベントを創る選手ですが、その役割を求められなくなると気持ちが落ちるということはあるのでしょうか。

「それは落ちますよ。『あぁ、そういう気なのね』みたいになって」

──では日本大会でホノリオ・バナリオと戦えとなると、張りはなくなったのですか。

「そこは、何て言うのか……仕事になりますよね。『じゃ、やりますか』って。そこで僕はウッドリーの今回の試合のように一発を貰っていないので分からないのですが、頑張れなくなる人もいるでしょうね。ただ、ウッドリーはそれよりも性格のような気がしました」

──ウッドリーの立場だと、自分を育ててくれたスコット・コーカーのBellatorでたくさんお金が欲しいとなるのではないかと。

「あぁ、もうUFCはイイやってことですね。そうだ、StrikeforceのChallengerとかでキャリアを積んできたんだから。まぁウッドリーにそう思わせるかもしれないぐらいの試合をドリーニョがやったということです。ショートノーティスでウェルター級に階級をあげてから、岡見選手に勝ったアレクセイ・クンチェンコをブッ飛ばした。どれだけウェルター級の方が体調が良いのかって。

ライト級ではトップどころと絡まなかったわけですからね。今回の試合でも体がムチムチしていたし、ウェルター級が合っているのでしょうね」

──道着を着たムンジアルの世界王者が、打撃でウットリーに勝つ。考えてみるととんでもないことですね。

「ドゥリーニョは今もグラップリングだけでなく、道着を着て試合に出ていますしね。競技柔術出身で、UFCでも最初は大切にされていなかった。でもウェルター級転向後はデミアン・マイア戦でもジャブにフックを合わせていましたし、アレはサンフォードMMA(ハードノックス)が使うパンチですよね。それとオーソドックスで右手、奥の手のアッパーが使えるのが大きいです。

右手のアッパーって、一番距離が遠くなるパンチじゃないですか? 自信がないと、怖くて打てないですよ。遠いところからアッパーって、キックボクシングでいえば大月晴明さんみたいな攻撃です。そこからダブルレッグを狙うという見方もできますが、それ以上の強振です。あの勢いはテイクダウンにいくパンチではない。なんか昇龍拳みたいに打っています」

──昇竜拳のごとく、戦力で殴ってダメージを奪うという。

「ドンドンって追撃して。あれも謎です。打撃で打ち勝って、柔術を使う。UFCで1年に4試合もしていて、その合間にグラップリングや柔術の試合に出ている。それがドリーニョの凄さです」

──試合後、サンフォードMMAの同門カマル・ウスマンに挑戦することをアピールしました。

「あれはぁ、チームといってもドゥリーニョはブラジル人のコミュニティがあるのかなって思います。それぞれの人種にティがあって、ノヴァウニオンのドゥドゥ・ダンタス✖マルコ・ロウロの初戦のような……勝った方が泣いて、勝利を喜べないという悲壮感はもうないんじゃないかと。

ファイトキャンプが同じということで、皆はUFCでトップになることを考えているので。でも、ウスマンは強い時のウッドリーですからね。ドゥリーニョは組んでも切られるし、打撃でもウスマンが上でしょう。

面白い顔合わせだけど、面白くない試合になる。ウスマン✖デミアン・マイアGSP✖ジェイク・シールズみたいな。面白くない試合のままならウスマンで、面白くなればドゥリーニョにチャンスもあるかなって思います。ドゥリーニョは打撃を振るようになっているので、チャンスは十分にあります。人生をひっくり返すかもしれないです」

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Interview Special UFC249 ジャスティン・ゲイジー トニー・ファーガソン ブログ 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その壱─ジャスティン・ゲイジー✖トニー・ファーガソン

【写真】青木の好きだったゲイジーは、このゲイジーではなかった?! (C) Zuffa / UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年5月の一番、第一弾は9日に行われたUFC249からジャスティン・ゲイジー✖トニー・ファーガソンの一戦を語らおう。


──2020年5月度、世界的見るとUFCが4大会、そして日本で修斗、韓国でARCが行われました。そのなかで青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?

「ジャスティン・ゲイジー✖トニー・ファーガソンですね。UFCがあれだけ大会をやっても、米国中心なので印象がやや薄い感じがしてしまって。そして、このPPV大会ではこれまでと比較して、ゲイジー✖ファーガソン戦、ヘンリー・セフード✖ドミニク・クルーズ戦と揃ってストップが早かったと思います。

ゲイジーの試合に関しては、本来はタイミングもジャストで良いストップでした。でも、倒れていない。だから観客がいたら続いていたんじゃないかと。セフードとドミニクも歓声があったら、もう少し見ただろうなって。レフェリーも人の子なので、観客がいると見ちゃうと思います。

と同時に盛り上がるが欠けるなかで、客の声に影響されないから判定が割れないのかとも感じました。ONEのフィリピン大会みたいなことはないですよね。無観客はデメリットとメリットがあり、デメリットの方が多いですが、ジャッジが目の前のコトに集中できるメリットがあることが分かりました」

──逆にマイクアピールは味気ないですね。

「無理ですよね。客がいないのにマイクは。そのなかで、あのセフードの空気の読まなさは凄いです。あの場で引退を言ってしまう。アレはちょっと壊れていますよ。良くも悪くも」

──試合内容についてはどのように思いましたか。

「試合前はワンサイドでファーガソンかと思っていたのですが、ゲイジーの圧力を侮るとダメだ……格闘技だなって」

──攻めすぎることはないスマートさが出ていました。

「それでもローをパカパカ蹴っていましたけど、お前のスネは大丈夫かって思いました(笑)。あれだけ蹴っていたら、ファーガソンはチェックもするし、自分のスネが痛いときもあるはずです。特にカーフキックとかでは……どうしちゃったんだって。ムエタイだと相手がカットしてくると、危ないから緩めたりするけど、ゲイジーは全くなかった。

そういう攻防も、も客の声がないからパンパンやっていたとしても──悪く言うとスパーリングのようにも見えてしまいます」

──と同時にファーガソンがあそこまで、一方的にやられるとは思いもしませんでした。要因はどこにあったと思いますか。

「タッチボクシングが凄くて距離感が良い、攻撃を貰わない選手なのでゲイジーは触ることができないと予想していたんです。それが思った以上に、ずっと近い距離で試合が展開されましたよね」

──ファーガソンは、ヌルマゴメドフ戦が流れた影響は心身ともになかったでしょうか。

「それは当然あります。ファーガソンはずっとヌルマゴドフとやる予定で、ゲイジーに変わってしまった。さらに試合の日程も変わった。体重のこともあるだろうし、もう体のフレッシュさがなかったかもしれないです。ゲイジーの方がフレッシュで。こういう違いっていうのは、選手にしか分からないところかもしれないです。まぁファーガソンは運がなかったですね」

✖ブライアン・コップ(C)DAVE MANDEL

──しかし、ゲイジーがUFCで世界王者になるファイターという風には正直なところ見ていなかったです。

「いやっ、本当にそうなんですよ。僕らがゲイジー論を語ると超面白い、普通じゃないって話で。ブライアン・コップをローで蹴りまくって勝った。

✖ルイス・パロミーノ(C)DAVE MANDEL

ルイス・パロミーノと意味不明な殴り合いをした。

✖メルヴィン・ギラード(C)WSOF

体重オーバーのメルヴィン・ギラードに分の悪いスプリット判定勝ちだった。そういうことだったわけじゃないですか?」

──だからUFCではエディ・アルバレスとダスティン・ポイエーに殴り負けたと。

「そこから3試合連続で1RKO勝ちをしちゃって、謎でしたよね。嫌らしいのはチャンピオンシップだと、勝ちに来たってことです。強烈な打ち合いじゃないし、テイクダウンのフェイクまで入れて。なんか面白さがなくなりましたよ」

──アハハハハ。

「なんだろうなぁ。ゲイジーは休憩明けとかで『OK、KO』みたいな」

──それは俺だけのゲイジーが、皆のゲイジーになってしまったという感じではないですか(笑)。

「そうなんですよ。WSOFでギャアギャアやっていた時のゲイジーが一番面白かった。メインストリームにいない価値というのか。この試合ではスマートになっちゃいました。エディ・アルバレスとかもUFCに来たらスマートになっていましたし、UFCのレベルがそうさせるんでしょうね。そういうゲイジーになったのだろうけど、だからって次にガビブ・ヌルマゴメドフとかっていう想いを馳せることができないんですよ」

──ゲイジー✖ヌルマゴメドフは楽しみではない?

「勝負論まで行き着かない。ヌルマゴ先生には敵わない。それならファーガソンの方が、何ができたと思います。だから、ゲイジーのことを穿って見ているのかもしれないですね」

──ゲイジーのレスリング力が真価を発揮するかもと思います。

「いやぁ、でもヌルマゴメドフは誰でもテイクダウンしますよ。だから、テイクダウンの攻防を楽しみにしたいのは分かりますが、ヌルマゴメドフは抜けすぎています。それならゲイジーはマクレガーかな。マクレガーとは見たいです。お祭りファイトなら、そっちの方が良いです」

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DEEP Special The Fight Must Go On ビョン・ジェウン ブログ 佐伯繁 元谷友貴

【The Fight Must Go On】Must Watch !! 佐伯繁のおススメ、DEEPケージファイト思い出の5番勝負─06─

【写真】この話を聞くと、ビョン・ジェウンの試合が見たくてしょうがなくなる (C)DEEP

全国的に緊急事態宣言が解除され、格闘技ジムの活動再開も伝わってくるなか──それでもMMA大会は中止及び延期が続いています。それでもUFCの活動再開や、国内でも無観客大会が開かれつつあるなか、引き続きThe Fight Must Go Onということで、第42弾はMust Watch!! このスポーツの著名人が、改めて視聴することを薦める試合を紹介したい。

佐伯繁代表がDEEPオフィシャルYouTubeチャンネルにアップされているケージマッチから、「今、まだアップしきれていないけど」思い出の5試合を振り返る──企画だが、「5試合にしぼり切れないんだよう」ということで、今回は第六弾へ。

※ここで紹介する試合は、オフィシャルホームページやオフィシャルYouTubeチャンネルで誰もが無料で視聴できるファイトに限っており、違法でアップされた試合は含まれていません。


佐伯代表が選んだ「今、まだアップしきれていないけど、アップしているなかから思い出の5番」ながら、6試合目は2018年2月24日に行われた元谷友貴✖ビョン・ジェウンの日韓対決だ。

このセレクトは意外にも、佐伯代表のビョン・ジェウンへの想いが詰まった選択理由があった、

佐伯繁のMust Watch 06、元谷✖ビョン・ジェウンの選択理由は以下の通りだ。

佐伯繁
「俺ね、試合だけ見ちゃうと技術的なことはあんまり分からないんだけど(笑)、ビョン・ジェウンってこの前に2016年にフェザー級で戦って今成選手に勝っちゃっているんです。でもそれからケガをしていて、1年半ぶりの試合でバンタム級のウチのトップの元谷君と戦う。

ビョン・ジェウンはもともと寝技の選手なのにガンガン殴り始めて。結構なパンチを振りまわして、元谷も危ない時があった。でも、時間が経つと元谷のパンチが当たり始めて──結果、元谷が勝った。でも戦い続け、パンチを打ち続けた結果、それから4度も拳の手術をするようなダメージを負ってしまったんです。

それだけの怪我をしながら、最後まで戦い切った。凄く記憶に残っている試合です。試合に出られない間も彼は『DEEPのチャンピオンに絶対になります』って連絡をくれていてね。そのビョン・ジェウンが3月のDEEPで復帰戦を戦う予定だったけど、テグでクラスターが起きて入国できなくなってしまいました。時が許せば、またビョン・ジェウンはDEEPで頑張って欲しいです」