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Bu et Sports de combat Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 ブログ 岩﨑達也 後藤丈治 祖根寿麻

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。後藤丈治✖祖根寿麻─弐─「コロナがチャンス」

Goto vs Sone【写真】MMA故に選択肢は多く、必死で練習してきたスクランブルMMA故に選択が限定されてやすい。これもMMAの妙(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻とは?!──後編では、質量の高い後藤に対し、祖根が取るべき手段について尋ねた。

<武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻Part.01はコチラから>

──祖根選手は一度は背中をつけて対処しましたが、またシングルにいってタップしました。

「そのシングルに行くのが失敗だとしたら、祖根選手はそれも分かっていたはずです。でも、トータルでMMAを経験値として覚えているから、試合ではあのようにハマるパターンの勝敗というのが起こると思います。

だからこそ、今、コロナの時期はチャンスなんです。自分が普段しないことをやる。日々に追われるとこなす稽古になってしまいがちです。強くなるためにブレない人が今だからでこそきることをする。それは対人練習でなくても、いくらでもあるはずです。

MMAファイターの人たち、試合がない今こそ──という気持ちでいてほしいです。例え1人でも強くなれる練習に没頭できます」

──ここまで話を聞いてなおですが、試合の立ち上がりというのはやはり大切ではないでしょうか。構え、間、質量、全てが後藤選手だった試合で、打で祖根選手が対応した。

「まあ、これも結果論ですが、結果論から学べることとして、いきなり前へ出るのではなく、先ずは距離を取って後藤選手に打たせそこに組みの圧力をかける、そしてパンチ、またはテイクダウン狙いからスクランブルなど、そういう手があれば祖根選手も自分の武器を使えたのかというのはあります。

何度も言っていますが、後藤選手の左のパンチはカウンターです。そこに打ちに行けば貰う確率は高くなる。ただ後藤選手の攻撃が、後の先を取れているかどうかは分からないです。後の先が取れていないのなら、祖根選手が先の先を取れれば後藤選手のカウンターを後手にさせることができ、自分のペースで試合を作ることも可能だったと思います」

──カウンターと後の先が違う、そこを今一度説明していただけますか。

「カウンターとはタイミングが取れた結果、起こる事象です。後の先とは、先が取れているという条件下でできることなんです。仮に後藤選手が後の先が取れていなかったとします。その場合、先の先を取られるとやられます。それは待ちの姿勢が後手に回るようになるからです」

──確かにカウンター狙いで、後手後手となる事例は少ないですね。

「逆に質問なのですが……祖根選手のシングルも、打からシングルでなく、MMAなのでシングルから打ということもありなわけですよね?」

──ハイ、デメトリウス・ジョンソンはそのパターンをMMAに持ち込みました。

「なるほど。では、それができなかった祖根選手はシングル狙いで居ついた(※一方向に意思が偏っている状態)ということですね。シングルに入って解除してパンチ、またシングルとか、祖根選手にも戦うパターンはあるはずですから」

──構え、間、質量で上回っている後藤選手を相手に、今言われたような攻撃が可能なのでしょうか。

Goto vs Sone02「後藤選手はしっかりと打とうして、足が決まることがあります。これは武術的にいえば、居ついている状態でもあります。それでも祖根選手が闇雲に突っ込んでいくと、あの左が待っていたでしょうね。だから前後の動きですかね。下がることができれば、後藤選手の戦力を低下させることができた可能性は高いです。逆に祖根選手は前に出ることで、後藤選手の戦力を上昇させてしまいました。

それが試合ってことなんです。アスリートは作品への完成度に拘ることを忘れて、ノルマをこなすようになります。青木選手がよく試合だけでなく、大会を通して自分のやることを作品と呼んでいるじゃないですか。あれがあるから、青木選手はパターン化しない。そして、強くなるために貪欲で、新しいモノを追い求めているのはMMAPLANETのインタビューを読んでいても分かります。

それが今、彼が良く口にしている岩本(健汰)選手とのグラップリングなんでしょう。そういう自分が強くなるために、斬新な『おっ!』となるモノがある選手は強いです。その時期は、かなり強くなれると私は思います」

──岩﨑さんも現役時代にそういう経験があったのでしょうか。

「まぁ自分ごとになりますが、極真をやっている時代に意拳に出会った時がそうでした。その時の全日本空手道選手権で数見肇に再延長で敗れたのですが、あの時が最後じゃないでしょうかね……」

──1997年の全日本ですね。準々決勝で優勝した数見選手に敗れたのですが、数見選手は準決勝が本戦判定、決勝は延長で一本勝ちでした。

「武術というモチーフが、私にキーワードを与えてくれたんです」

──そういうキーワードをMMA選手は今、この時期に手にするチャンスだと?

「ハイ。キーワードなのか、パズルのピースなのか。ただし、歴史から学ぶと──必ず大混乱の後に大成功を収める者がいます。それは大混乱の時に絶対にブレずに、没頭できるモノがある者です。そういう人間は強い。今、強くなるにはチャンスなんです。虎視眈々としている人間のコロナ後は楽しみですよ。

五輪アスリートなんて、4年に一度を人生の最大の目標にしていたから、今はもうパニックですよ。そういう彼らには今回の新型コロナウィルス感染拡大は非常に気の毒ですが、ここで一発逆転できる人間も出てくるはずです」

──それが祖根選手にも当てはまると。

「勿論です。祖根選手だけでなく、今、ブレることなく何かに取り組む選手は皆チャンスがあると自分は思っています」

──では逆に勝った後藤選手には何を期待したいですか。

「この強さを、どこまで見せてくれるのか。殴る実感が拳(ケン)にあるロシア人やブラジル人にも、アレができる選手になってほしいですね。その前に国内レベルでも組みが強い選手に、どう対応できるのか。パンチから組む選手、どっちも使って組める選手、パンチはダメだけど蹴りから組める選手、そういう組みの強い選手と後藤選手がどういう風に戦えるのか……特に蹴りもパンチもデキて、組んでくる選手との試合が見てみたいです。それを今回のように戦えると、後藤選手──凄く楽しみですね」

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Bu et Sports de combat Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 ブログ 岩﨑達也 後藤丈治 祖根寿麻

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。後藤丈治✖祖根寿麻─壱─「質量に差」

Goto vs Sone【写真】試合開始直後からキャリアも各も関係なく、構え、間、質量ともに後藤が祖根を上回っていた(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──後藤丈治✖祖根寿麻とは?!


──この試合はパンクラスではプレリミ中心でキャリアを積んできた4連勝中の後藤選手が、修斗で環太平洋王者になるもRIZINと修斗で4連敗中の祖根選手とのマッチアップでした。

「キャリア的には祖根選手が格上ということですね。この試合だけで見ると後藤選手の方が評価は上の選手と思うくらい、質量に差がありました。構えた時点で、完全に後藤選手の間でした」

──サウスポーの後藤選手が、前に出てくる祖根選手にパンチを当てる。序盤からそのような流れでした。

Goto vs Sone 02「後藤選手は構え、間、内面の質量と全て良かったです。あの場で見える質量の違いは、

明白でしたね。こうなるとキャリアとか、関係なくなってしまいます。それにあの左のパンチは一発でKOできます。それを後藤選手は打ち合いのなかで出せる。強かったです」

──途中、頭突きがあり再開後のみ祖根選手のパンチに真っすぐ下がり、組まれてケージに押し込まれました。不可抗力とはいえ反則です。それにより、受けた方の質量が下がるということはあるのでしょうか。

Goto vs Sone 03「頭突きでダメージがあったかどうかは画面では判別できなかったですが、後藤選手は決して下がったわけじゃないです。あれは祖根選手が入れたんです。下がると、入るはまた違うんです。

そういう風になったのは、あの直後だけ後藤選手の質量は下がったからです。金的にしても頭突きにしてもダメージのあるなしを抜きにして、された方が再開後は不利に動いてしまうことが多いです」

──そういうものですか。

「もらった側がリスタート後は、不利に動いてしまう。ここは選手やチームの人達も頭に入れて戦うべきだと思います」

──では祖根選手はあの場面ではケージに押し込むよりも、殴りに行った方が良かったのですか。

「ハイ、その通りです。正論を言えばその通りです。祖根選手の間だったのは、あの試合ではあの局面だけでしたから。とはいっても、殴りにいっても打撃は完全に後藤選手の方が上でした。だからテイクダウンに行くなら、テイクダウンを取り切る。そこは後藤選手の寝技や、祖根選手の寝技の技量によってくるのですが、あの試合を見る限りはそこに拘るべきではなかったのかと思います。

ただし、あの場面で組みに行って押し込んで、テイクダウンを狙うというのは、キャリアのある選手がパッケージでMMAを体に馴染ませ、パターンで攻めてしまうようなことかと。それってどの競技にもあることで。結果、組まれてケージを背負っている時に頭突きのダメージがあったとしても、後藤選手は休めたと思います。

Goto vs Sone 05それでも祖根選手はワンテイクがとれた。あそこのワンテイクは、祖根選手にとって非常に大切だった。

でも、MMAの王道のようにスクランブルの展開を疑いもせず受けいれた。倒してから、技術面はともかく絶対に抑えるという意識は見られなかったです。そして後藤選手が立ってアームロックから離れて、打撃の間合いに戻った。この時には、両者の関係は試合開始直後と同じになっていました」

──ここからは後藤選手は左だけでなく、右、そしてボディや前蹴りも入っていました。

「3月のプロ修斗で行われた内藤頌貴選手と渡辺健太郎選手の試合は、最後に渡辺選手の間になったのですが、今回の祖根選手にはそういうこともなかったです。パンチだけでなく、腹への右の前蹴りが効いていましたね。

Goto vs Sone 06後藤選手は蹴りもパンチも使える。ただし、蹴れる状態であっても強く蹴る気はなかった。それでも足も手も使える人間は、両方使えるようになります。そのなかで右の前蹴りは、祖根選手は見えていなかったですね。

左を当てて、右も当てていた。後藤選手は躍起になることなく、そのまま戦っていると左が当たって勝てるのが分かっていたと思います。

Goto vs Sone 07出て打つのか、その場で打つのか、下がって打つのか。

相手が来る時に、その場で打てば良い。相手が来る時に出ようとして、先の先を取られやられることは多いです。だけど後藤選手は前に出ない。その場で当てて倒せると分かっていた。

セコンドの長南さんも「打ち合うな」という指示も出していましたし、後藤選手もその場で打っていました。祖根選手が前に出てこうとしていたので、その場で打てば良かったので」

──祖根選手としては、間合を外すとかそういうことが必要だったのでしょうか。

「下がって逃げるのではなく、下がって打てば間を取れることはあったかもしれないです。それも、後藤選手が追いかけるようなことがある場合ですね。でも、後藤選手はその場で打っていたでしょう。あれは理想的です。

Goto vs Sone 09そして、祖根選手は前に出て打たれた。あの質量で前に出ると、やられます。そして後藤選手の間なのに、シングルレッグを仕掛けて、組み技のことは詳しく分からないですが、ニンジャチョークでやられてしまいましたね。

あそこでシングルレッグというのも、殴られてダメージがある状況でMMAのパターンですよね。もう後藤選手は準備できていました」

<この項、続く>

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J-CAGE News ONE Road to ONE02 ブログ

【Road to ONE02】Road to ONE実行委員会より、大会から2週間後の報告

Road to One【写真】ケージサイド・スタッフの防護服着用が義務付けられたイベントから2週間後の報告があった(C)MMAPLANET

2日(土)、Road to ONE実行委員会から4月17日(金)にRoad to ONE02から2週間を経て、感染者がなかったことが発表された。

以下、プレスリリースで記された文面を紹介したい。

「4月17日に行われた『Road to ONE :2nd』にご協力頂き誠に有難うございます。大会終了から2週間が経ち、選手並びに関係者全員から体調に異常がないと確認が取れましたのでご報告させて頂きます。また、大会開催時にはメディアの皆様に色々とご不便をお掛けした事をお詫び申し上げます。
 Road to ONE実行委員会は今回実施したコロナウィルス対策の経験を元に、選手や関係者の皆さんが更に安心して参加出来る様、次の大会に向けて尽力して参ります。皆様には引き続きご協力頂ければ幸いです。今後とも宜しくお願い致します」──Road to ONE実行委員会

Road to ONE02
<グラップリング・ライト級(※77.1キロ)/10分1R>
△青木真也(日本)1R
Draw
詳細はコチラ
△世羅智茂(日本)
<ムエタイ72.5キロ契約/3分3R>
○緑川創(日本)3R
判定
詳細はコチラ
×西川大和(日本)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
○後藤丈治(日本)1R3分58秒
ニンジャチョーク
詳細はコチラ
×祖根寿麻(日本)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
○工藤諒司(日本)1R2分59秒
TKO
詳細はコチラ
×椿飛鳥(日本)
<グラップリング・フェザー級(※70.3キロ)/10分1R>
△宮田和幸(日本)1R
Draw.
詳細はコチラ
△田中路教(日本)
<ムエタイ・ストロー級(※56.7キロ)/3分3R>
○HIROYUKI(日本)2R1分33秒
TKO
詳細はコチラ
×ポン・ピットジム(タイ)
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Interview Road to ONE02 Special ブログ 西川大和 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その弐─緑川創✖西川大和「花が開く要素のある試合を」

Nishikawa vs Midorikawa【写真】 17歳のMMAファイターが、新日本キックとWKBA世界王者に臆することなく向かっていった(C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年4月──格闘技が、この惑星から消えかけた1カ月──の一番、第二弾は17日に行われたRoad to ONE02からムエタイ72.5キロ契約戦=緑川創✖西川大和の一戦を語らおう。


──2020年4月度、世界中から格闘技が消えた1カ月。青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「緑川創✖西川大和のムエタイの試合ですね。西川選手もレコードが汚いんですよ。彼も負けたり、ドローが多くて。でも17歳でしょ? ああいう風にプロモーションが彼を登用するのは危ないな、とも感じました。良い選手だけに」

──北のMMA=PFCで頑張って、韓国のTOP FCでも戦っています。

「勿体ないですよ。そして怖い。ああいう試合を受けていると、壊れてしまいます。今回のようにMMAで将来有望な若い選手とキックのトップランカーとやらせてしまうのは、怖かったです。緑川選手有りきだし。僕らからすると西川選手自身、キャリアを大切にしてほしいですね」

──ここで難しい試合を受けて、次の機会を得る。そういう選択が地方選手にはあるのでしょうね。

「日本のMMAは地方に対して、首都圏が強気でいける歴史がありました。地方の選手に対して、チャンスがないから『いつ、誰とでもやれよ』っていうのは……ちょっと業界の悪しき習慣ではありますよね。

だからこそ地方の選手は機会があれば、跳びついてしまう。まぁ日本のMMA業界が地方の選手まで大切にしてあげられる状況にないです。西川選手は17歳で素質があって、あれだけ頑張っている。それなのに首都圏のロジックで登用される。それが現実ですね」

──指導者の方も、チャンスが巡ってきたら掴ませてあげたいですし。

「ハイ。その通りです。それが日本の現状です」

──格闘技は特に地方都市と首都圏の差が大きいですね。プロ野球やJリーグのチームがある都市でも、格闘技の大会は数百人規模になります。大阪や名古屋、札幌、福岡なら1万人越えのイベントはK-1やPRIDE時代はあった。ただし、地上波がない大会は人口200万人都市圏でも一気に数百人規模になる。そういう意味でもRIZINの地方都市大会は価値があるかと。

「RIZINってなんだかんだ言っても大切なんです。TVは人口の多いボリューム・ゾーンが強い。そこと格闘技の東京中心は似ているかと。格闘技界は東京にだけ集中しているので。と同時に地方都市でもABEMAとか新しいメディアも浸透してきていると思います。

地上波とネットTVがあるように、格闘技界もね──新しいやり方というか……西川選手にしても東京にパイプを創って、試合前にキャンプみたいにできる状況とか持てたらなって感じますよ」

──そういうことになるのですね。

「それでも西川選手はKO負けもしなかったし、認められる試合ができた。だからこそ次は、こうでない試合が組まれて欲しいです。彼が切磋琢磨できる試合。少しでも花が開く要素のある試合に、ですね」

──そういう意味では時間の制約もあったRoad to ONEで見られた課題ですね。力の差があったマッチメイクは。

大会終了後、青木は西川を直接労っていた

大会終了後、青木は西川を直接労っていた

「これ言うとアレですけど、言うたらプロモーター側に強いプロレスみたいな大会になる。

それは格闘技としてはフェアじゃない。でも今回は特に時間もなかったし、それは仕方がなかったです」

──コロナの時代の格闘技大会として、それがニューノーマルになるのかもしれないですね。

「金策の部分も含めて、色々と皆が模索し始めた感じはします。ネットTVの需要が高まっている。ただし、企業は金を貯めておきたい。そこで広告とかどうなるのか。それが格闘技界、そして地方の選手の需要にも関係してくるでしょうね」

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Interview Road to ONE02 Special ブログ 後藤丈治 祖根寿麻 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その壱─後藤丈治✖祖根寿麻「ビックアップセットですよ」

Goto vs Sone【写真】格闘技は勝敗の結果が、勝っても負けても将来に影響することが大切だ (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年4月──格闘技が、この惑星から消えかけた1カ月──の一番、第一弾は17日に行われたRoad to ONE02から後藤丈治✖祖根寿麻の一戦を語らおう。


──2020年4月度、世界中から格闘技が消えた1カ月。選択肢が限りなく少ない状況で青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?

「後藤丈治✖祖根寿麻ですね。なんか僕、祖根って強いと思っていたんですけど、レコードを見るとこれで5連敗なんですよね。元谷(友貴)、岡田(遼)、根津(優太)、ジャスティン・スコッギンス、そして今回で。

まぁ、強い相手とやってきたというのはありますが、それにしてもコンディションが良くないのかと正直、思いました」

──それは自粛、非常事態宣言でどれだけの準備ができたのかということも影響してこないでしょうか。

「それを言えば、お互い様なんで。バンタム級だし、30歳を越えていると、中量級や重量級とは違って消耗しやすいのかというのも感じています」

──スタイルにもよるかと思いますが。

「まぁ、僕とはスタイルも違いますが……にしても消耗していないかと。ファイターのコンディションとして、ビジネスをしていたり、ジム経営と指導もあってプレーイング・マネージャーだから落ちてきているのか。

野村克也が南海ホークスで(※ダイエー・ホークスを経て福岡ソフトバンク・ホークス)プレーイング・マネージャーをやっていて凄く難しかったと言っていて」

──いや、青木選手はその時代に生まれていないじゃないですか!!(笑)。どちらかといえばヤクルト・スワローズの古田敦也さんの時代では? 自分なんて子供の頃、「なんで野村が4番で門田(博光)が3番なんだ。監督だからって、4番打つなよ」とか言っていましたよ(笑)。

「まるで分からないですよ(笑)。僕は野村監督の書いた本を読んで知った方です(笑)。選手兼監督は凄く大変で、優秀なヘッドコーチがいないとやらないって言ったとか。だから、祖根も難しいんだと思います」

──勝った後藤選手に関しては?

「一緒に練習しているんですけど、打撃の子ですね。でも祖根が有利だと試合前は思っていました」

──パンクラスでプレリミに出ていた選手が、修斗の前環太平洋王者でRIZINに出場している選手との対戦でしたからね。

「そう思いますよね。だからビックアップセットなんですよ。祖根のコンディションが悪かったとしても、この負けをこれから取り返すのは難しくなった。下手すると3年ぐらいかかるので、32歳とかっていう年齢でそこにもう一度向かい合えるのか。そうでない選択もできる状況がありますからね。

彼はそういう意味で優秀だと思うので。ただ後藤もレコードは決して良くない。最後の負けは米山(千隼)選手で、そこからはこれで5連勝なんですけどね。それまではパンクラスの札幌大会とかでも負けもある」

──だからこそ、この勝利が大きくないでしょうか。

「大きいですが、今回はRoad to ONEだから主戦場としているパンクラスでどういう風に評価されるのか。彼が修斗でやっているなら、元王者に勝ったから次は良いカードが来ますよね。修斗公式戦ではなくても、そのヒエラルキーを潰したので。『なら魚井(フルスイング)とやらせてみようか。いや手塚(基伸)かな?』ってなるのですが、パンクラスでも誰かとやらせてみるかってなるのか……分からないですよね」

──大会が再開されるとして、修斗の元王者にこの状況で試合をして勝った。そこはパンクラスも留意してほしいですね。きっと後藤選手がパンクラスで戦っていた試合よりも、今回の大会の方がABEMAで試合を視聴したファンが多いと思いますし。

「そこはありますよね。今回はパンクラスのプレリミよりも、視てもらっているだろうし。そこで結果も残しているし、すぐにアップして使われてほしいです。パンクラスにソレがないなら、修斗でも良い。とにかく次は、より上の選手と組んでもらいたいですね。彼は結果を残したので」

──確かにその通りですね。

「この試合で大きなチャンスを得る資格を得た。なら彼の言葉でメディアに対する発言が欲しいです。そうでないと、彼の人となりが見えてこないので。『誰とやりたい』、『どこでやっていきたい』とか。あの試合後は控室で取材をする状態ではなかったから、後追いで後藤丈治という選手を知りたいです」

──分かりました。それは青木選手からMMAPLANETへの宿題として捉えさせてもらいます。

「宜しくお願いします(笑)」

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Interview J-CAGE ONE other MMA Road to ONE02 ブログ 宮田和幸 田中路教

【Road to ONE02】田中路教─03─最初で最後のグラップリング戦の理由。「負けたくないんで、他の練習が」

Nori【写真】柔軟性のないまま、突っ走るしかない(C)MMAPLANET

17日(日)に開催されたRoad to ONE02で宮田和幸とグラップリングマッチを戦い10分間時間切れとなった田中路教インタビュー最終回。

グラップリングマッチを終え、MMAファイター田中にとって打撃なしの組みの重要性、そして未だに終着点が見えないコロナ感染拡大のなか、LFAでの活動をどのように捉えているのかを尋ねた。

<田中路教インタビューPart.02はコチラから>


──スクランブルにはならなくても、MMAに生きるグラップリングになったのですね。

「グラップリングの試合をして、自分の不器用さが浮き彫りになったと思います(苦笑)」

──田中選手の最大の特徴である、経験しないと分からないという流れですねか(笑)。

「一つのことにしか、なかなか集中ができないんで(笑)」

──ただ、SNSで『これが最初で最後のグラップリングマッチ』という話がありましたが、『これが最後の日本での試合』とはならないのですか。

「まぁLFAと契約は結べましたが、その契約書をもってビザの申請に行くのに、今は受け付けてもらえない状況ですからね。これがいつまで続くのか分からないので、あの試合が日本で最後の試合になるかというのは断言できなかったです。ただ、グラップリングの試合をもうすることはないと思います」

──MMAのためになったのに、なぜグラップリングに出るつもりはないのはどういうことでしょうか。

「純粋グラップリングの技術は、僕に必要です。それはもう絶対なんです。でも、グラップリングの試合があると、練習もそこに集中してしまって……他の練習が疎かになることが今回の試合で分かりました。

やっぱり、負けたくないんで完全にグラップリングの試合のための練習ばかりになって」

──えぇ? では打撃やMMAの練習はその間はしなかったということですか。

「試合が決まったころはやっていたんです。でも、打撃のミット打ちとかやっていても、本当に集中できないことが分かって……。グラップリングの試合で勝ちたいから、打撃の練習をすることを体が拒否してしまっているような感じで(苦笑)。

MMAの練習でもパウンドも打つことができなくて……。止まってしまうんですよ」

──なんともまぁ、本末転倒じゃないですか。

「本当に……。だから、本気でグラップリングの技術を向上させるつもりはあっても、グラップリングの試合に出ることはMMAファイターである限り、止めようと思います。

練習に関しては続けます。グラップリングも打撃も僕はもって一つの局面を深堀りする必要があります。グラップリングに関しては嶋田君もそうだし、八隅(孝平)さんにセコンドについてもらって、その指示にしても凄く知識が深くて。

八隅さんのアドバイスがなければ、どんな試合になっていたか。八隅さんはきっと宮田さんがどう動くのか、全て見えていたと思います。嶋田君も1回、動画を見ただけメチャクチャ細かく指摘しれくれました。2人に比べると、僕のグラップリングの知識は全然で。結局のどれだけ自分が近視眼的にMMAをやっていたのかが分かりました。

だからこそ、この時期にグラップリングの試合ができたのはベストでした。今、MMAの練習を試合モードでしている選手なんて世界にほぼいない。そのなかで組み技でも実戦に向かうという日々を送れたのは大きいです」

──LFAの活動再開も、ビザの申請がいつから再開するのも見えないなか、今後はどのように過ごしていこうと考えていますか。

「やれることをやるしかないです。現状を見て……ここからコロナの感染が続き、格闘家だけでなく社会が疲弊してくると思います。活動を続けられなくなるプロモーションも出てくるだろうし。

結果的にファイターの需要が少なくなっていくかもしれない。なので、いつ、どこで、誰とでも戦える選手が求められる時代になる。僕自身ももっと覚悟が必要です。いつでも戦える心身状態にしておかないといけないです。

ただし、人に迷惑をかける行動はできない。そこは頭において、最大限に気を付けていきます」

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Interview J-CAGE ONE other MMA Road to ONE02 ブログ 宮田和幸 田中路教

【Road to ONE02】宮田和幸と組技戦を終え、田中路教─02─「内股を狙ったのですが、ビクとも……」

Nori vs Miyata【写真】試合序盤の立ちレスで、田中は宮田から何を感じ取ったのか(C)MMAPLANET

17日(日)に開催されたRoad to ONE02で宮田和幸とグラップリングマッチを戦い10分間時間切れとなった田中路教インタビュー第2弾。

試合直後に嶋田裕太に連絡を取り、寝技での展開での改善点を尋ねた田中だが、試合序盤のスタンド戦に関してはどのような経験ができたのか。

また嶋田の教えをMMAに生かすことができるのかを訊いた。

<田中路教インタビューPart.01はコチラから>


──嶋田選手に指摘してもらった寝技の攻防になる以前に、まずは立ちレスの展開になりました。試合前にはテイクダウンを取る宣言もありましたが……。

「レスリングでテイクダウン、柔道の投げという2つの選択肢があったのですが、実際に宮田さんを正面に見てレスリングをしようとはならなかったです。もう、これは感覚ですね。あの時、何を考えていたとか覚えていないので。隙がないって直感したんだと思います。ダブルやシングルに入ることができる軌道が見えなかったですから」

──宮田選手もその距離でテイクダウンを仕掛けるということはなかったですね。

「ハイ。なので組手勝負になりました。それもあると試合前から思っていたので、そこでもしっかりと勝負しようとは考えていたんです」

Nori vs Miyata 02──そこから投げを狙おうと。

「ハイ。最初は牽制ですね。投げることができるとは考えずに、先手をとるために出しました。

2度目は入るという感覚があって内股を仕掛けました。引手が不十分な状態でしたが、思い切り仕掛けました。いやぁビクともしなかったです。タイミングも良かったのに……。崩れるぐらいはあると思ったのですが、全く動かなかったです(苦笑)。練習ではそういうことがあっても、試合ではあれだけ崩せなかったことは過去になかったですね」

Nori vs Miyata 03──その後、もう1度仕掛けても投げられず右ワキを差されテイクダウンを奪われました。

「ビックリしました。ヒザがついたか、バランスを崩した時なんです。根本から僕の投げとは種類が違う。

僕の投げは浮かすというか、瞬間的に飛ばすモノなんです。でも宮田さんの投げは、合気道チックというか遠心力を使っているみたいな」

──達人系じゃないですか。

「そうですね、あまり食らったことのない投げでした。

力も使っているんですけど、そこ以外の要素が凄いと思います」

──そのテイクダウンからバックを許しましたね。

「上手かったですねぇ。一度、首を極めにこられて……。正直、バックを取られても早い段階で逃げる自信はあったんです」

──出ました。またバック取らせて、落とす理論。それでバックを取り続けられる選手が世界にいるというのが、もう8年ぐらい前から勝村(周一朗)さんが指摘していた部分ではないですか(笑)。

「アハハハ。2度目の投げを防がれた時点で、立ちレスで時間を費やすのは良くないって判断したんです。あのままではドン詰まりになって勝てない。なら投げられても、グラウンドになった方が良いと思いました。矢継ぎ早に動いて、宮田さんを休ませないというのが理想的な試合展開だったので。

Nori vs Miyata 04でもバックを取られて、すぐに胸を合わせることはできなかったですね。バックチョークが入る位置ではないですが、宮田さんの体にあった絞めです、アレは……。

レスリングのコントロールを利用した極めというか。

すぐには上を取れなかったですが、あのままバックを制され続けられるとも思わなかったです。逃げる自信はありました。思ったより時間が掛かっただけで」

──そして上になってからやるべきこと、その部分で嶋田選手の指摘が入ったような展開になったと。

「ハイ。本当はスクランブルの展開になってポジションを取る。それが理想の展開でした。そこから極めに移行していければと」

──宮田さんは下になると、あのまま下から仕掛け──柔術になりましたね。

「それをさせないことが大切だったのですが、やられてしまいました。僕が宮田さんをもっと動かせるまで、持ち込めなかったです」

Nori vs Miyata 05──あの時点で、MMAグラップリングでなくグラップリングになりました。

「それも想定していたのですが、隅返し風に返されてすぐに起き上った時はスクランブルになると思っていたので……あそこで宮田さんが下を続けたのは意外でした」

──もうレスリングをやり続けたから、今はスクランブルとかよりも柔術的なグラップリングを宮田さんは追及しているようでしたね。それでもオモプラッタはともかく、糸通しを狙ったのは驚きました。

「いやぁ、握力もそうだし力が強かったです」

──田中選手もMMAなら、あれだけパスを狙うこともないですしね。

「狙わないですね。だからこそ、しっかりとパスできる技術が僕には必要なんだと思いました。青木さんの言葉じゃないですが、これまでMMAグラップリングに偏っていました。だから、あそこで攻防が止まってしまう。

それ以降の攻防ができるためにも、しっかりとグラップリングの技術を身につけないといけない。それは今回の練習から試合までを通じて感じていたことです」

──パスガードにしても、純粋グラップリングとMMAでは違いもあるかと思いますが。

「それでも嶋田君が指摘されたことができるようになれば、それはMMAに生きると思います。また、しっかりとかみ砕いてこれからの練習に生かせるようにしたいですね。

嶋田君に教えてもらったことを踏まえて、ヒジとパウンド有りの目線を加えることで、その先を探っていけるんじゃないかと思っています。

それを考えると、世界的にみてもMMAの流れが現実として、止まっている中で、このグラップリングマッチを戦えたことは良かったです。試合に向けて一つの行程をこなすことができましたし、そのなかで学びが多くあり試合で改善点も見られた。

マットでのグラップリングでなく、スクランブルにはならなくても金網際での試合が続いたので、それも良い経験になりました。金網際で自分の動きにどれだけ制限が加わるのか、またどういう風になら動けるのかを実践で試すことができたので。金網があるプラス面、マイナス面を試合で理解できることも貴重な経験になりましたね」

<この項、続く>

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Interview J-CAGE JJ Globo ONE Road to ONE02 ブログ 嶋田裕太 田中路教

【Road to ONE02】宮田和幸とグラップリング戦を終え、田中路教─01─「嶋田君に改善点を尋ねました」

Michinori Tanaka【写真】最初で最後のグラップリングという発言の意図も、続編で語られた (C)MMAPLANET

17日(日)に開催されたRoad to ONE02に、田中路教が宮田和幸とグラップリングマッチを戦い10分間時間切れとなった。

試合前には五輪レスラーを相手にテイクダウンを奪い、一本勝ち宣言もあったが、どちらも公約を守ることはできなかった。LFAとの契約も終えビザを取得すると、日本を離れる予定だった田中だが、コロナ禍によって今はまた足踏み状態だ。そんななかで戦った宮田との組み技マッチで田中は何を感じ、何を学んだのかを尋ねた。


──Road to ONE02で宮田和幸選手とグラップリングマッチを戦って6日が過ぎました。試合後はどのように過ごしていたのですか。

「外に出ないようにしていました。軽く肉離れをしてしまったのですが、それでもランニングなどはできるので外に出たそれぐらいですね。あと一度、両親のところを訪ねたくらいで」

──アレっ、田中選手は米国から戻ってきてからは、ご両親と同居していたのでは?

「実はコロナの感染が広まってから、実家を出て知り合いの家に身を寄せています。うちは医療関係じゃないですか?  僕は自分の判断で練習をして、試合にも出たけど、それで親が僕から感染するようなことが起こると、どれだけ社会に迷惑をかけることになるのかと考えて、3月の途中から家を出ていたんです」

──なるほど、そこは田中選手としても気になっていたのですね。

「それでも格闘技をやっている人間は、自分は元気だから一般の人よりも大丈夫と思いがちなところもあるかと思います。それにあの大会に参加して、主催してくれた人たちの努力を無駄にしちゃいけないと強く思いましたね。試合を見ていた知り合いからも慎重に行動をした方が良いという進言もあり、大会後は大人しくしていました」

──大会前、青木選手が彼自身がメインで戦うことに若い選手は危機感を持て──というようなコトを発した時に田中選手は「試合前だから偉そうにいえないけど、終った時に僕の方が印象に残る勝ち方をする」と言っていました。

「ソレ言っちゃうんですか?(苦笑)。でも見事に返り討ちにあいましたね」

──青木選手は自ら塩試合だと振り返ってもいます。

「まぁ動きは僕の試合の方が多かったですけど、勝っていないので、まるでダメです」

──まるでダメだと思った試合、大人しくしていた期間に振り返ることは?

「まぁ、振り返るというか……今、NYから嶋田(裕太※昨年までプライベートでグラップリングの指導を受けていた)君がコロナの影響で帰国しているので、映像を見てもらって何がいけなかったかを尋ねました」

──へぇ、嶋田選手はどのようなことを指摘してくれましたか。

「凄く丁寧に返答をくれたので、僕にはまだ説明ができなし、嶋田君が送って来てくれたテキストを見せますよ」

──構わないのですか?

「構いません。その方が僕も頭に残りますし……。今、送りますね」

【嶋田裕太の田中路教へのアドバイス】

「試合も見て何よりも感じたのは、焦りすぎているということです。10分かけて、宮田選手を疲れさせようという意図も理解できましたが、初めてのグラップリングマッチで、ペース配分の感覚が掴めていなかったというのはあるかもしれません。でも焦ることによって以下のような事態を招いていました。

01 :パスガードを狙っているのですが、動きが中途半端になっていて崩し切れていないため失敗してしまう。
Tanaka vs Miyata 02
オープンガードに対して足を横に捌いたり、担ぎパスを仕掛けるのは良いのですが、一か八か一気にパスを狙うのではなく、仕掛けから50パーセント、60パーセント、70パーセントというように少しずつポジションを進めてみてはどうでしょうか。

それには形に応じて技のバリエーションを増やす必要がありますし、落ち着いて何ができるのか考えられるようにならないといけないです。

02:宮田選手のハーフガードやバタフライガードに対して、足を制する前に上半身にアプローチしてしまい、結果オモプラッタ、すみ返しスイープ、糸通しなど反対に上半身をコントロールされてしまう
Tanaka vs Miyata 01

ハーフガードに近い態勢からオモプラッタを食らうことが多かったですが、1度掛けられた技は同じ試合で2度と食らってはいけません。試合で出す技というのは相手の得意技である可能性が非常に高いです。1度目で逃げることができたら必ず頭に入れておいて、再び形にならないように動きを修正します。

03:クローズドガードを立ち上がって割るときのバランスが崩れる
Tanaka vs Miyata 03
クローズドガードに対して、立ち上がることは腕で足を抱えられたりするリスクとセットなので、あそこで慌てず、もっと時間をかけて腕を足から遠ざけてからエスケープを狙っても良かったと思います。

クローズドガードを立ち上がって割る際は、しっかりと腹を突き出して胸を張ること。前のめりでは相手の足を強く押したりできません。また腰を反るくらい身体を起こすことで、クローズドガードを組んでいる相手の足自体にプレッシャーをかけることに繋がります。

その一方で、ハーフガードで足を越えてからの動きは良かったです! アンダーフックと首への攻撃を同時にすることで結果的にハーフガードからエスケープできていました。腹固めのセットアップは理想的だったと思います。

足で腕を踏んでコントロールしようとしている場面も見受けられて、以前紹介した動きをやってもらえて嬉しかったです」

──最後には帳尻合わせのように褒めてくれていますが、なかなか手厳しいですね。

Tanaka vs Miyata 04でもその後にABEMAの画面を貼ってくれて(※ここでは同じシーンの写真を使用)、また解説してくれたんです。それがこのやりとりですね」

『このシーンでは下半身を制す前に上半身にアプローチしてしまいカウンターを食らってしまいました』

<この項、続く>

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Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 SARAMI ブログ 鈴木祐子

【Road to ONE02】Road to ONEを欠場した鈴木祐子─02─「なんで、そんな風に伝わっていたのか」

Suzuki Yuko【写真】写真は2018年10月のバンコクで。立場を変えて、ONEに出場することが彼女の目標だ(C)MMAPLANET

Road to ONE02を欠場した鈴木祐子インタビュー後編。

SARAMIと対戦予定だった鈴木祐子はコロナ禍と自粛要請のなか欠場を決めた。そして試合が流れたSARAMIは同サイトの取材で不満を述べ、さらにSNSでも言葉を重ねた。

Road to ONE02の終了後、鈴木から欠場理由も含め彼女の言い分を記事にして欲しいという連絡がMMAPLANETにあった。インタビュー後編では、実行委員会という名前で開かれる共同開催に難しさも伝わってくるミスコミュニケーションの存在も明らかとなった。

<鈴木祐子インタビューPart.01はコチラから>


──もう、その状況では出る、出ないは個人の判断によるかと思います。

「ハイ」

──と同時にSARAMI選手も鈴木選手と同じであの状況で試合があるのか、ないのかという部分で精神的に不安定だったと思います。それでもやるつもりで練習を続けているところに、『ジムが閉まるから練習できなくて、欠場する』という風に聞いたから、インタビュアーに乗せられてついつい話してしまったというのはあるかと思います。これは私の責任でもあります。

「でもその後のSNSでの言い方は正直、感情を逆なでされるようなことが多かったです」

──そこですね。鈴木選手の欠場の発表は4月3日でしたが、私が取材をした3月30日の夕刻にはそのような理由で欠場になったと北岡選手らに伝わっていたようでした。

「なんで、そんな風に伝わっていたのか。ジムが休館になったのは非常事態宣言があってからですし。宮田先生もそんな風には伝えていないということだったので、何がどうなってそんな風になってしまったのか……」

──プレスリリースも明確な欠場理由が明記されていなかったので、道場閉鎖で云々という話が定着したというのは考えられますね。

「そこは私も思いました。世の中がこのような状況なので、分かるだろうということで、ああいう風に発表されたのかなとは思うようにしましたが……」

──インタビューをした時は、代替選手を探すという状況でした。そこから1週間、ギリギリの状態でSARAMI選手も練習をして、大会の10日前までに相手が決まらないなら、試合はできないという風に追い込まれていたと聞きました。彼女も精神的に厳しく、気持ちのはけ口を鈴木選手に求めたところはあるかと思います。

「でも、あまりにも言い方が……」

──あの発言をしているのだから、当然のように鈴木選手から反論があることも心得ているでしょう。

「あの動画は『責任感がない』とか『ONEに上がる資格はない』って話していて……格闘家を辞めた方が良いぐらいの感じだったので。ここまで言われるなら、自分も言わないといけないって思いました」

──SNSのやりとりは自己の存在アピールが多分に入っているので、どこまでがリアルで、どこからは虚像なのか分からなくて難しいですよね。ところでRoad to ONEは視聴されましたか。

「ハイ。宮田先生の試合もありましたし。あそこで輝いている選手もいて、私は半年も試合をしていないので、試合がしたいと思ったのも事実です。でも、試合に出なかったという判断に関しては、これで良かったと思っています。大会が終わって安心しました。そういう部分でも」

──これから……次の試合に関して、考えることはできますか。

「現時点では終息してからでないと、試合はできないかなと思います。今回、しなかったのと同じ理由で。ただでさえ試合をするのが怖いのに、コロナと二重で怖くなってしまう間は……」

──感情のもつれがあるようですし、コロナ終息後にSARAMI選手と改めてオファーがあっても試合はできそうにないですね。試合で決着を何て言うのはありがちですが、格闘技は性善説で成り立っているので、本当にしこりがある場合は危険です。

「う~ん、ちょっとやりたくないとは思っています。逃げているかと思われるでしょうけど。今は関わりたくないっていう感じです。でも、試合ってなったら……ONEに行くために戦っているんで、どうしてもSARAMI選手と試合をしないといけなくなったらやります。それだけONEに行きたいという気持ちですし。そのために練習は続けています。旦那がいるんでっ!!」

──それは意地の発言ですね。

「だってマットも買いましたし、家でも練習できます」

──なるほど(笑)。今日は連絡をくれて、ありがとうございました。

「こちらこそ、聞いていただきありがとうございます。もうこれで、言いたいことは言えたので、気にしていないでやっていけると思います」

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Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 SARAMI ブログ 鈴木祐子

【Road to ONE02】Road to ONEを欠場した鈴木祐子─01─「私の考えが記事になり伝わればと」

Yuko Suzuki【写真】欠場理由を説明し、伝えたいと鈴木祐子からアクションがあった(C)MMAPLANET

17日に開催されたRoad to ONE02。同大会は元々12日(日)に東京都港区のニューピアホールで行われる予定だった。

そこでSARAMIと対戦予定だった鈴木祐子は、無観客で17日に場所も変更されて開かれることが発表されたプレスリリースで欠場が明らかになった。3月30日、MMAPLANETではSARAMIの取材をABEMAとの共同で行うことが決まっており、約束の時間に映像スタッフとともにパンクラスイズム横浜に到着するや──。その雰囲気がどんよりと曇っているのは明らかで、SARAMIに鈴木の欠場が伝えられた直後であった。
SARAMIは鈴木への不満を素直に口にし、当サイトでは欠場決定の方を待って彼女の言葉を掲載した。

そしてRoad to ONE02の翌日、鈴木からMMAPLANETに同大会の欠場に関して、彼女の意見を聞いてほしいと連絡が入った……。


──今回、鈴木選手から連絡があり、Road to ONEの欠場に関してファンに伝えて欲しいことあると。

「ハイ。最初にMMAPLANETでSARAMI選手のインタビューを読んで、欠場理由が『練習環境なら旦那と練習すれば良いじゃないですか。家で』という発言があって、欠場理由は練習環境じゃないのに、なぜなんだろうと思っていて。

そこが気になりはしたのですが、特にSARAMI選手に思うことはそれほどなかったんです。でも、それからことあるごとにコメントをつけてリツイートしているのを見てから気になるようになりました。

なぜ、そこまでする必要があるのかなっていうのが自分のなかで感じるようになって。大会の前日には動画まで挙げていて。私も見なきゃ良いんですけど、見てしまったので……私の方の言い分もMMAPLANETに載せて欲しいと思って連絡させていただいたんです」

──SNSで反論を述べるということは考えなかったですか。

「それは格好悪いですし。このまま放置しても、分かってくれる人は分かってくれるのですが、私の考えが記事になり伝わればと考えたからです。SNSではファンとか、他の人を巻き込むことになるので。そういうことはしたくなかったです。SARAMI選手と喧嘩をしたいわけではなく、私の考えが伝わって欲しかったので」

──なるほど。まず、今回の試合ですが、オファーはいつ頃だったのですか。

「3月3日です。それはすぐに『出ます』って返答しました。私も4月のウォリアーシリーズに出ることになっていたのですが、大会がなくなってしまってので……」

──鈴木選手は10月の日本大会で見事な逆転一本勝ちをして、すぐにでも試合が組まれるかと思っていました。

「ハイ、あの試合後もマッチメイカーの方はすぐに組むよと言ってくれたのですが……12月には組まれなくて。でも2月の大会でナイリーン・クローリーとやるという話になっていたんです」

──2月にウォリアーシリーズでなく、本戦で平田樹選手と戦った?

「ハイ。あの時、1カ月あったのにクローリーは『準備ができない』という理由で断られたんです」

──えっ? 準備が?!

「そうなんです(苦笑)。で、本戦のオファーだったら出て……『どうなってるの、この人』って思いました。でも彼女は樹ちゃんに勝てなかったから、またウォリアーに戻ってくることになったんです」

──それはONEもシビアですね。

「それで4月にクローリーとやる方向になっていたら、大会自体がなくなってしまって」

──そんな背景があったのですね。ならばRoad to ONEのオファーに即答でYESを言いますね。その時にSARAMI選手が相手という要請ではなかったのですか。

「いえ、相手はまだ決まっていない状況で試合はできますかということでした。10日ぐらいしてSARAMI選手もウォリアーがなくなったので、Road to ONEに出場することになったのでどうか?という連絡をもらいました」

──正直なところSARAMI選手は同じウォリアーシリーズで試合をしていても、国内での実績などは鈴木選手とはかなり差があります。いわば工藤諒司選手と椿飛鳥選手のマッチアップのようです。

「ハイ、日本のなかでもトップクラスの選手だったので、実は返事をするのに2日ぐらい掛かりました。キャリアも違うし、自信もなかったです。SARAMI選手が言われていた『戦う相手じゃない』というのは分かります。逆の立場の私がそう思っていたので。でも、周囲に説得されました。宮田先生は『自分で決めなさい』って(笑)」

──ぶっちゃけて言っていただき、ありがとうございます。

「いえ……その間も練習して、行けるかなとか考えて。やるって決めました。それが3月の中旬ぐらいで、そこから世の中が変わったというか。感染者が増えて、土日の自粛が呼びかけられるようになりました」

──ハイ。

「3月も終盤になってきても大会があるのか、ないのか。そういうことがハッキリしないなかで練習を続けていました。それで……3月29日の修斗の大会で、実はケージから挨拶をすることになっていたんです。

でも結果的に2日前とかに大会がなくなって。その時ですね。大会まで2週間を切って、あるのかないのか分からない。コロナの感染者もどんどん増えている。急激に状況は悪くなっているので、不安でいっぱいになっていったんです。

1度は戦うと言ったのですが、そこからの社会の変わりようが早くて……。キッズ・クラスでの指導もしていて、子供たちに感染させるようなことがあればと、考えるようになりました。

私だけなら指導を止めれば良いのですが、旦那と一緒にやっていて。彼は指導を続けるわけだし、私から彼、彼から子供たちに感染とか考えると、大会をやらない方が良いんじゃないかと願うようになっていました。

旦那も試合をすることは反対気味でしたし、家族は大反対で。これはもう世の中の状況もあるし、家族の反対を押し切ってまで試合はできないと決断しました」

<この項、続く>

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