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【Road to ONE02】試合結果&コロナ時代の無観客大会について

Road to ONE02【写真】日本の格闘技界のパンドラの扉が今回は開けられた。再び開けられるのか、今は分からない(C)MMAPLANET

17日(金)、Road to ONE02が開催され、MMA2試合、グラップリング2試合、ムエタイ(MMAグローブ着用)2試合が無観客で行われた。

日程変更1度、会場変更2度。無観客大会となり、メディアも主催者が認めた最低限の人数=3名のみ。うち1人スチール撮影しない記者は、会場にいてもケージサイドにいることも許されない。競技運営陣とABEMAの中継カメラマン、ケージ回りには暗幕が張り巡らされ、その場にいる人間は全て防護服、マスク、手袋着用が義務付けられていた。

小径ケージの周囲と中に15人名ほど。それでも米国や英国で定められた人が集まる人数を上回るが、恐らくは国内でこのようなシチュエーションで格闘技のイベントが行われることは、もう2度とないかと思われる。もちろん、その普通でない大会となったのは新型コロナウィルス感染拡大の影響だ。

ここに書くまでもなく国内外で格闘技大会は軒並み中止、延期が続いている。そのなかでRoad to ONE02は開催された。当然のように批判の声は大会決行前から聞かれた。

その声は表現方法の良し悪しはあっても、正しい。今回のコロナ問題は東日本大震災の時と違い、「スポーツで元気になろう」という声を出せない状況にこの国を、全世界を陥れている。大会前には緊急事態宣言も出された。不要不急の外出は控えること、ステイホーム──の号令のなか、濃厚接触が絶対の格闘技大会開催にしても、その準備のための対人練習にも批判の声が挙がって当然だ。

と同時に、イベント関連の会社や格闘技ジムの経営者からは、すでに「生活できない」という声が多く聞かれるのも事実。このままではコロナに感染しなくても、人生を終える人たちが出てくることすら危惧される、逼迫された現実が既にある。

コロナ問題が長引くと判断した一部の人間が、そんなコロナと共存する時代に経済活動を格闘界で続けるために模索する──パーセンテージ的には圧倒的に少数派だが、そういう人間も世の中に必要だという意見さえ、全否定されるだろうか。

コロナ問題が起こってから、自分の取るべき立場は変わらない。大会を開く(現状、無観客のみ)、開かない。試合に出る、出ない。練習をする、しない。どちらを選択しようが、コロナ終息後の人の判断理由にしない。

格闘技で生きている人間にとって、格闘技は不要不急なモノではない。少なくとも、この現状でも不要ではない。だからこそ、感染を防ぐために最善を尽くして、少人数で練習し、ジムの外では不用意・無防備な行動は慎む。そう心掛けているのであれば、格闘家から格闘技を取り上げることはできない。それが自分の考えだ。

だからこのイベントも開催前、開催中、開催後と格闘技メディアの役割を果たすつもりでいた。とはいっても、この考えに同意できない人がいることも十分に承知しているし、批判は受ける。

今大会の主催者も同じ気持ちでいたと思う。とあるABEMAのスタッフは、これまでの付き合いで自己主張は極力なく、淡々と仕事をこなしているという印象だったが、向かい風が強くなれば強くなるほど、「大会を無事に終わらせる」という闘志が言動に表れるようになった。

選手とセコンドはタクシーで会場入りし、試合が終わるとタクシーで戻る。その費用も主催者が持つ。看護師でなく、ドクターが3名。イベントに関係する人間の数を最小限に留め、それ以外の人との接触を徹底して避ける。

それでもこの大会開催を正当化しようとは思わない。と同時に、この大会を開こうとしている人間の意思は、反対の立場を取っている人間より強かった。反対意見には世間の追い風がある。けれども、本気でイベント開催を阻止しようと努力した人間はいただろうか。

「UFCが止めたから、止めるべきだ」。そんなヤワな意見は誰にでも口にできる。この大会に何か欠けていたモノがあるとすれば、それは本気で大会中止を訴え、行動に移す人材だっただろう。

そういう人がいたかどうか、自分は聞き及んでいない。そして、大会は開かれた。試合開始は午後7時、午後6時前に現場近くのパーキングに車を止めた。普通に通勤帰りの人たちが最寄り駅に向かい、ガラガラというほどでないぐらいに人影が見られたバスを眺めつつ、先に記した暗幕が張られ、スタッフが既に防護服を着た異様な雰囲気の会場に。

すぐに検温があり、それぞれの配置場所が決められる。第1試合と中継開始の40分前ごろには、会場でこの日2度目の消毒液が散布された。

いやおうになく緊張感が高まり、いつも以上に軽口を叩き続けた。イベント開始30分前、手順が説明され自分も防護服に足と袖を通した。同時に審判団が会場入りする。すぐに防護服とマスクで誰だか分からなくなるが、少しでも見知った顔が増えると、幾分気持ちも落ち着き、仕事モードに入ることができた。

ジャッジは他のケージ回りの人間と同様に防護服の着用が義務付けられている。防護服もマスクもしていないのは選手とケージ内のレフェリーのみ。セコンドはマスク着用、リングアナは防護服と防護メガネ、声が必要なためマスクはない。

当然のように「ここまでして、大会をやる必要があるのか」という声も聞かれた。逆に、そのような意見が聞かれないようでは、無観客といえども格闘技イベントを開いてはいけない。と同時に、全てが初体験のこと。大会を行って初めて気付くこともある。主催者の安全第一という絶対条件が、それでも参加者に浸透しきれてないのは今の日本の空気の表れだろう。

セコンドは1人という決まり事を、セコンドに就く人間は1人と捉え、控室までは2人、3人と同行者が出る選手もいた。試合後もシャワー使用の問題もあり、すぐに会場を離れられないで、控室に留まる選手も出た。今後、会場を変えようが無観客大会を徹底して接触を減らして行ううえで改善点でも見られた。

大会としては無事終わったといえるだろう。ただし、ここからだ大切だ。自覚症状のない感染者は、この会場に生まれたわけでなく、もともと存在する。それが誰かは分からない。よって新たな感染者が控室や会場で生まれる可能性は否定できない。

だからこそ大会に関わり、会場にいた人間の後追いチェックは不可欠だ。想像したくもないが感染者が出た場合、その経路をハッキリさせることが、コロナ時代の無観客格闘技イベントの肝になる。

手順通りに防護服を脱ぎ、頭から消毒液を散布され、カメラ機材、カメラ回りも、何か問題が起きるかもと案じるほど、消毒してもらい、最後に検温して会場を出た。そして、一番近くにあるレストランか食堂か、カフェか淡い光のスペースには、ケージ回りよりよほど密集状態で、笑顔で食事をする人たちがいて愕然としてしまった。

万全を期しても、万全はない。それでも、主催者とABEMAの施した対策で格闘技大会のみならず、小規模&無観客エンターテイメントが可能になるのか、その一歩を踏み出したことは確かだ。もちろん、早期終息に向けて──そんなモノは必要ないだろう。ロックダウンして、街中から人の声を失くせば良い。ただし現状では、この国はそうなってはいない。ならば早期終息がならない場合の経済活動を模索することだって必要だ。

有名ミュージシャンが自宅から、その歌声を届けることで世の中の閉塞感に風穴を開けることができるなら、格闘技だけでなくスポーツにもその力はあると信じている。

正解はない。誰もが考え、自分の信じた選択をするのみ。だから、重ねて言うが──無観客の格闘技大会には反対意見は必要で、その反対意見はもっともっと本気で熱がないといけない。そのような声があがり、さらに取捨選択がなされたうえで、それでも何かしらの格闘技の活動が可能になるならば、その形こそが今、我々に必要な格闘技の形である──と、格闘家ではないが、ファン時代を含めると45年、四半世紀を記者として格闘技と過ごしてきた自分は思っている。

最後に僕は歴史の証人になりたくて、あの場にいたわけじゃない。あの場にいることで、この件に対して堂々と意見できる人間でありたくて、一枠設けていただいた記者のスポットを活用させてもらった。そのことと家族の理解があって初めて、これが書けたということに心から感謝しています。

Road to ONE02
<グラップリング・ライト級(※77.1キロ)/10分1R>
△青木真也(日本)1R
Draw
詳細はコチラ
△世羅智茂(日本)
<ムエタイ72.5キロ契約/3分3R>
○緑川創(日本)3R
判定
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×西川大和(日本)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
○後藤丈治(日本)1R3分58秒
ニンジャチョーク
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×祖根寿麻(日本)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
○工藤諒司(日本)1R2分59秒
TKO
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×椿飛鳥(日本)
<グラップリング・フェザー級(※70.3キロ)/10分1R>
△宮田和幸(日本)1R
Draw.
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△田中路教(日本)
<ムエタイ・ストロー級(※56.7キロ)/3分3R>
○HIROYUKI(日本)2R1分33秒
TKO
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×ポン・ピットジム(タイ)


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Interview J-CAGE JJ Globo ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】青木と戦った世羅智茂─02─次があれば誰と戦いたい?「岩本(健汰)君とか……」

Road to ONE【写真】青木のマイクを眺め、青木に次いでケージを後にする世羅。この時の心境は…… (C)MMAPLANET

7日(金)に行われたRoad to ONE02でメインで青木真也とグラップリングマッチで戦い、10分時間切れとなった世羅智茂インタビュー後編。

世羅は柔術家として、グラップリングマッチに挑み、自分のやるべきことを試みた。そして、勝つつもりで戦った。噛み合わないのも格闘技。「貴重な体験をした」という世羅に、これから先に確かなモノがないなかで、今回のようなイベントがあることを前提で、参加の意思と戦いたい相手がいるのかを尋ねた。

<世羅智茂インタビューPart.01はコチラから>


──もう少し、青木真也の力を試合で感じたかったですか。

「技量を感じたいとか、そういうコトはあまりなかったです。ただ上からしっかりワキを差してパスを狙ってくるのかなって思っていたので、それがなかったのは意外でした」

──試合後、青木選手のマイクパフォーマンスが始まった時、とでも所在なげでしたね。

「ケージから出ていくタイミングを逃しましたね(苦笑)。マイクは僕個人的にはどうでも良いことで。ただ試合が引き分けだったこと、内容が残念だったなと自分のなかで思いつつ、青木選手のマイクは観客がいないし受けているのか、滑っているのか、どうなんだろうって気にはしていました」

──マイク後は間を置かず、2人でケージから出た形ですが暗幕の向こうで言葉は交わしましたか。

「ただ、ありがとうございましたと挨拶をした感じですね」

──なるほどぉ。貴重な体験はデキたけど、貴重な試合にはならなかった?

「貴重な試合にはなりましたよ。メインイベントでグラップリングをやらせてもらうこと自体が、『嘘だろう』って思っていましたし。お客さんもいないし普通の興行とは違って、練習試合のような雰囲気もありましたけど、メインでやるということは自分のなかないことで。

初めての無観客で、青木選手と試合ができたってことは僕のなかでは貴重な試合でした。あれだけ青木選手が盛り上げていたのに、凄い大凡戦になった(笑)。残念ですけど、う~ん、僕は半分ぐらい何かオモロイなって」

──オモロイな、ですか。世羅選手、良いですね。その感性。凡戦になったのも、それは格闘技だからで。

「純粋に勝ちたかった──。そこでお互いの価値観は合わなかったけど、お互いが勝ちたかった。そういうことだと思います」

──柔術、グラップリングもMMAやキックと同様にいつ活動再開するのか分からない状態です。

「ジムがどうなるのか……。カルペディエムのように物販があるジムなら、まだやるべきこともあるのですが……指導だけの道場は、本当に厳しいと思います」

──大会自体も再開の目途は立っていません。ブラジリアン柔術の軸は参加者を集めたトーナメントでありますしね。そういうなかでコロナがある時代の格闘技大会として、今回のイベントはたたき台になるかもしれないです。また、このような機会があれば世羅選手は参加したいでしょうか。

「もちろん、僕は出たいです。石川(祐樹カルペディエム代表)さんがOKなら、全然出たいですね。当分、柔術のグラップリングも大会は無理でしょうし。だから金曜日の大会がどのように捉えられているのかは気になります。きっとクレームを言ってくる人とかもいるでしょうしね。

なにより感染者がでればオジャンだと思いますし。これから、またこういう形の大会を開いてくれるとか話はあるのでしょうか」

──具体的には挙がっていないと思いますが、批判も織り込み済みで主催者もABEMAの中継も仕事をしたと思います。何より日々の状況が変化していますし、その状況に合わせた形で次もあるかもしれないし、できなくなるかもしれないということかと。

「もしまた大会を開いてもらえるのであれば……そうなれば選手として出たいです」

──では思い切って、誰と戦いたいかぶち上げてください。この場を利用して(笑)。

「えっ、ハイ。誰とやりたい? そうッスね。実はとある大会で戦う予定だったのですが、どうも延期になったみたいで。岩本(健汰)君とか。やりたいというか……皆、見たいと思うんじゃないでしょうか」

──青木選手との試合はある意味で、格闘技としての本質ではありましたが、次の機会はグラップリング、柔術といしての神髄を見せるような気持ちになりますか。

「それはないです。僕は神髄を見せたいとか、そういう格好良い目標はなくて。ただ強い人と戦いたい。皆が見たいと思ってくれるカードなら喜んで戦いたいという感じです」

をクリックすると、オンデマンドで試合が再チェックできます

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Interview J-CAGE JJ Globo ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】メインで青木真也と戦った世羅智茂に訊く─01─「僕は一本勝ちを目指していた」

Sera【写真】いきなりクローズドが取れたわけでなく、シッティングからハーフ。青木の動きに合わせてクローズドに入れた。ここも注目すべき点だ (C)MMAPLANET

7日(金)に行われたRoad to ONE02でメインで青木真也とグラップリングマッチで戦い、10分時間切れとなった世羅智茂。

ドローという結果よりも、7分間ほぼクローズドガードの攻防が続く動きの少ない試合になった。それでも青木は全局面で制したという言葉は言い放った。では、世羅はどのようにこの試合を捉えているのだろうか。大会から3日後、世羅に電話取材を試みた。


──かつてない状況下での青木選手との試合が終わり、3日が経過しました。改めてあの大会に参加したことをどのように振り返ることができますか。

Sera 02「大会自体、本当に良くできたなって思います。あそこまで厳戒態勢の状態で試合をするっていうのは、普通はないですし。

そういう意味でも貴重な体験ができました。何より、どこもイベントごとが開けない状況下で試合ができたことは幸運でした。選手としては嬉しく想い、運が良かったです」

──その意見すら、自分本位だと捉えられることもある世の中です。

「そうですね。僕のなかでは本当に良くないことですが、他の若者と同じようにコロナに対して甘く見ていた部分もあったかもしれないです。それと練習仲間から感染するのであればしょうがないという気持ちもどこかにありましたし。タクシーや電車に乗っていて、マスクもしない人の飛沫で感染すするのとは違うっていう感じではいましたね。

当日は、運営される方が如何にシリアスだったかも伝わってきましたし、あの大会で試合をさせてもらって貴重な経験を積むことができました」

──そんななか、試合は動きが少ない展開になってしまいました。

「格闘技を知らない人が見たら、つまらない試合に見えたと思います。いや格闘技が好きな人でも、そうだったかもしれないです(苦笑)。感情移入できない人はつまらないという感想を持ったでしょう。それはしょうがないです、そういう試合でした」

──作戦的には、どのような展開を考えていたのでしょうか。

「とりあえずクローズドガードに一度は入れたいというのはありました。そこからケージに押し込んでくることも考えていましたが、あの展開で全くガードを割ってこないというのは計算外でした。ここまで攻めないのかって。トップで固めることだけ集中してきたので……僕も甘かったです。あそこまで手首を掴んで、ただ上にいるというのは計算していなかったです」

──まずは引き込んでガードにいれること。青木選手に組まれてテイクダウンやバックを取られることは避けようということだったのですね。

「そうですね、一度は入れて。そこで青木選手がどうアクションしてくるのか、そこに合わせて動こくつもりでした」

──基本、青木選手が割ってくるのを待ち、自分から何か仕掛けることは序盤や中盤戦では考えていなかった?

「割ろうとしてきたときが、一番の攻め時だったので。あれだけ固められると、ガードからの攻めは難易度が上がってしまいます。ただし僕も見過ぎました。お互いに動けよと思っていた。僕は割って欲しくて、青木選手は僕から仕掛けてこいよって(笑)。噛み合わなかったですね」

──残り3分の段階で、世羅選手が一度ニーシールドハーフを見せました。

「このまま膠着して終わったら酷い試合になるので、自分から創っていくしかないと思いました。そこで動いてくるかと誘いましたけど、青木選手は攻めてこなかったです。でも僕もクローズドに戻してしまって。あそこでなぜ戻したのか、ちょっと覚えていないです」

──残り3分まで仕掛けることができかった要因は?

Sera 03「ケージ際で仕掛けてハーフで固められるのが嫌だったというのはあります。

ケージに押し込まれていると、首が曲がっていて窮屈な姿勢になるので、あそこで動いてもいつものようには動けないです」

──なるほど、柔術の試合場ではない状況でしたね。それでも最終的にはハーフから潜って足関節を仕掛けました。

「結果論として、もっと早くから攻めるべきだった。そう思います」

──世羅選手の試合で、あそこまで止まるというのは記憶になかったです。

「まぁ……柔術だと青木さんにルーチが掛かるので(苦笑)。柔術のルーチって、膠着を防ぐためにあるじゃないですか。柔術ルールであれば、青木さんが攻めていないということになります。ただ、今回の試合は柔術ルールでもMMAルールでもない。判定もポイントもないので、どっちもどっちだった。そんな試合です。

ルーチもアドバンもないわけですし、それが大前提のルールなので柔術の人が、柔術ならっていう意見も聞かれましたが、それは言ってもしょうがないです。MMAの人も上取っていたのは青木選手だっていうかもしれないし」

──ブレイクがあっても良かったと、試合中に思いましたが、青木選手はでも同じ展開になるという意見でして。そこに関しては、世羅選手はどのように考えますか。

「ブレイクですか、確かにそうですね。ブレイクというのは頭になかったですけど、今から思えばブレイクで仕切り直しがあっても良かったと思います。クローズドはダメだと切り替えたかもしれないです……が、それは結果論ですけどね。それがあっても、どう考えたかはブレイクがなかったので分からないです」

──青木選手が全局面で制していたというのも、青木選手の理論であって、世羅選手には世羅選手のグラップリング論があると。ところで掛け逃げと指摘されたことに関しては、どのように思っていますか。

Sera 04「それは違うと思います。僕は掛け逃げのつもりで仕掛けた技は一つもないです。

青木さんはそう感じたかもしれないけど、それは別に知らない。青木さんがどういう価値観であの試合に臨んでいたのか分からないですけど、僕は一本勝ちを目指していました。前半と中盤はああはなりましたが、後半は一本を狙いにいったのは間違いないです。

でも青木さんにそれがあったかというと、なかったと思います。僕もそうだし、見ていた人もそう感じるんじゃないですか。ノーポイント、サブオンリーだから僕は一本を目指していました」

<この項、続く>

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Interview J-CAGE JJ Globo ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】試合直後の青木真也の話。魅せるためにリスクは? 「格闘技をやっているということ」

Aoki Shinya【写真】試合直後、控室となった会議室で (C)KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET

7日(金)に行われたRoad to ONE02。MMAPLANETでは1日を経てからメインで世羅智茂と対戦し、時間切れドローとなった青木真也にマイクの意図などを尋ね、彼の言葉を掲載した。

ここではクローズドショー、開催場所さえアナウンスされないという異様な状況での試合を終えた直後の青木の談話から、試合に関しての部分だけを抜粋してお送りしたい。


──世羅選手とのグラップリングマッチ、時間切れドローとなりました。

「語れるものじゃない」

──語れるものじゃないというのは?

「人に見せられるものじゃなかったですよね。攻めないから、試合が動かないッスよね。あぁ、こういうのかって。動かなくて、負けない試合をされた感じですよね。まぁまぁ、それで良いなら、それで良いけど。勝負はしたかった感じはしましたね」

──青木選手も手堅かったですよね。

「手堅かったです。来ないもん。カウンター待ちされているから、試合にならないですよ」

──そこで隙を見せようが、自分から動くことはできなかった?

「そうですね……最後は少し動かせたけど、そういう風にしても乗ってこないですよね」

──世羅選手のクローズドが、オープンになった瞬間も青木選手はスッと動くことはなかった。そして、セコンドからもオープンになっているという指示がなかったです。

「そうですか? 僕はクローズドで待たれた感じがします。でも、セコンドの声がなくてもそれは分かりますし。オープンにしても仕掛けはなかったですからね。そのままステイ、ステイ、ステイにされましたね」

──この試合、グラップリングを普段見ていないファンも視聴する機会だったと思います。そして、その視聴者は『青木、攻めろよ』という印象を持ったかもしれないです。

「そうですね、僕はこれで全局面で圧倒しちゃっているから。僕の概念では。僕が上からコントロールしていて、相手が掛け逃げをしている。まぁ、意識の差ですよ。この1つの試合じゃなくて、大会ごと背負って見ているつもりだから。全部まとめて大会を見ているつもりだから、もうちょっとお互い良いモノを創れたとは思います」

──う~ん、ただそこで足関節に入るとかやってしまうと、実は青木選手らしくない。あのままステイし続ける、それが青木真也の格闘技だと思います。

「ずっとステイ、相手が掛け逃げしてもステイする。これはこれで我慢比べなんです」

──我慢比べになるとになると譲れない?

「根負けはしないです」

──逆にブレイクがあっても良いのかもしれないですね。そういう意味では。仕切り直すために。

「良いかもしれないけど、それは戦うほうの意識だからブレイクがあっても同じ形になるんじゃないですかね。だから結論としてEBIはオーバータイムの決着戦があるという。そこに行き着くってことで」

──それでも魅せたいモノは見せられましたか。

「もうチョットかな。とりあえず及第点です。こういう時は仕方がない。だからマイクで誤魔化しました。そういうことです」

──繰り返しますが、良いモノを創るために勝負から外れるリスク、魅せるためのリスクは試合でおかさないと。

「それが、ちゃんと格闘技をやっているということだし」

──では、このような状況が続くとすれば青木選手は次は何を目指しますか。

「ここでMMAをやるかも。それはあるかと思います。もう寿命が短いから、勝負したいかな。もう別にいつ死んだって、いつ辞めたって良いって言いましたけど、本当に思っていますから。だから試合しても、良いのかなって思います」

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Interview J-CAGE ONE Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】大会決行から1日を経て、試合後のマイクを青木真也に尋ねた「種明かしをすると……」

Shinya Aoki【写真】試合終了直後の青木の表情。彼の話を訊く限り、これは苦笑いだったか(C)MMAPLANET

昨日、7日(金)にRoad to ONE02のメインで世羅智茂と対戦し、時間切れドローとなった青木真也

MMAPLANETでは試合直後に試合内容に関して、青木に話を訊いた。その前にここではマイクアピールへの反応に対し、今夜、電話取材を行った時の青木の返答を紹介したい。


──昨日のマイク、まずキ〇〇イという放送禁止用語を使ったこと。アレはまずくないですか?

「言わないなら、言わない方が良かったと思います。でも、もう言ってしまったことなので。放送禁止用語かどうかでいえば、ネットTVで。その辺は地上波ではないですし。

あと、こういうのはその時に伝わらないとしょうがないんですけど、別に悪い意味で使ったんじゃない。最高の連中っていう文脈で使った言葉ですからね」

──Fucking Coolのような感じだと。

「そこにセンシティブに引っ掛かる人がいるんでしょうね」

──マイクの内容はあらかじめ考えているのですか。

「だいたい何を話すかは、こんな感じでっていうのはあるんだけど、昨日は試合内容がアレだったんで、あのまま終わるわけにはいかないと思って話していて。なんかやらないといけない、締めないといけないなって(苦笑)」

──「いつ死んだって良いんだよ」と「なぁ」を連呼していたのは、次のセリフを考えているから?

「そうっ! そうなんですよ。分かっちゃいましたか(笑)」

──アハハハハ。

「大仁田(厚)さんとか、真壁(刀義)さんとかも(笑)。長州さんが、『うんうん、そうだな』っていう時とか考えているの(笑)。で気負った時こそ、連呼するんです」

──青木選手も昨日はマイクで気負っていた?

「ヤバイ、これ。何とかしないとって(笑)。これ帳尻合わせられるかなとは思っていました。世羅とは掛け合いできないし。いやぁ、考えているの、まさか……バレていましたか(笑)」

──あとですね、昨日の発言内容に関しても、大会を開催したことを含めて賛成意見ばかりでなく、しっかりと反対意見があったことが良かったと思いました。

「逆にないとヤバイですよね、世の中として。やっちゃダメだっていう声がないと。バランスは取れないですからね」

──「死にたくねぇ。負けたくねぇだったら、試合しなきゃ良いし、ずっと家に居ろよ。ステイ・ホームってずっと書き込んでいろっ!」という言葉に対し、逆上したような反応でなく、『分かるけど、今じゃないんだよ』という反応がありました。

「ハイ……」

──あの強い言葉があり、反論でも反応がある。自粛に関して「耐えて、終息したら──こんなことやりましょう」という優しい言葉は、逆に頭を麻痺させますよ。青木選手の劇薬のような言葉は、皆にまた考える機会を与えることになったのではないかと。

「それは種明かしすると、考えていました。僕が本当に言いたいことは家にいろ、出てこい、自粛バカヤローっていうことじゃない。自分で考えろってことだから。だから、考えないで……ただ試合の機会があるからって、このタイミングで試合をするヤツも同じ。

何も考えず、このままどうなるのか、家にいると終息するなんて思っているのはダメ。家にいるなら自分の価値観を持って家にいて欲しい。自分でもっと考えようよってことなんです。ちゃんと考えて自粛するのも、考えて何かをアクションを起こすのも同じことで。それはホントに。僕がズレているとか、おかしなヤツって思われるのは構わないけど。

でも今、それすら考えられず、明日のご飯も食べられない人がいる。これが終息しないと、国全体、国民全体が貧しくなっていく。格闘技界も、社会もそう。このままじゃ、コロナは終息なんてしなくて長引く。そんな時にこのままジリ貧で良いのかて、色んなことを自分で考えた人が、昨日はあの場に集まった。

コロナが続くなかで、無観客大会のノウハウを創ろうとした。これが続くと覚悟した連中が一緒になって、一体感を持って創り上げたんです」

──青木選手も思い入れがあったと。

「アントニオ猪木が世間とプレロスをしていましたが、そういうモノと戦った大会でした。世間とか常識と戦った。やって良かったと思います。何より夜明けが見えないなかで、ここで何か一つ動かしてもらったのはありがたかったです」

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J-CAGE ONE Report Road to ONE02 ブログ 世羅智茂 青木真也

【Road to ONE02】青木vs世羅はドロー、「このイベントをやってくれた●●●●、ありがとう!」(青木)

<グラップリング・ライト級(※77.1キロ)/10分1R>
青木真也(日本)
時間切れドロー
世羅智茂(日本)

自ら座って引き込む世羅。青木もそれに付き合い、半身になる世羅の腰を抑える。世羅は青木の手を両手で持ち、青木は上体を固めてトップポジションをキープする。インサイドガードの青木は世羅の頭を金網側に移動させ、上体を起こして攻めの一手をうかがう。世羅は金網側から脱出しようとするが、青木はそれをさせない。青木は上体を密着させ、腰をコントロールして展開を変えようとするが、世羅のガードは固い。

世羅は肘を使って青木の顔を突き放し、腰を切って半身になる。距離を取る青木は世羅の腰を抑えてパスガードを狙う。世羅は青木の左足に両足で絡みつき、身体を回転させて上のポジションをうかがう。さらに世羅はガードポジションから腕十字を狙うと、青木もトップポジションは許さず、再びインサイドガードで上になる。ここで試合終了となり、両者の一戦は時間切れドローとなった。

試合後、マイクを持った青木は「俺はいつ死んだっていいんだよ!いつ格闘技を辞めたっていいんだよ!負けたくねえ?死にたくねえ?だったらずっと家にいろよ!生きるってことはそういうことじゃねえんだよ。日々嫌なことと戦うんだよ!このイベントをやってくれた●●●●なやつらに一言だけ言っておく、ありがとう!」と思いのたけを語った。

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J-CAGE ONE Report Road to ONE02 ブログ 緑川創 西川大和

【Road to ONE02】緑川がキャリアの差を見せて判定勝ち、西川の健闘も光る

<ムエタイ72.5キロ契約/3分3R>
緑川創(日本)
Def.3-0
西川大和(日本)

構えをスイッチしながらローと前蹴りを見せる西川。緑川はオーソドックスに構える西川に右ロー、右フックを当てる。西川が前に出ると、緑川はショートの左フックを当てる。西川のローに右ストレートを合わせる緑川。蹴りのフェイントを入れつつ、右フック・右ヒジと手数を増やして前に出る。

2R、西川は距離を取りながら前蹴りとローを飛ばす。緑川は構わずプレッシャーをかけて前に出て、右ストレートと右ローを当てる。右ローを軸に左フックや右ボディストレートとパンチを散らしていく緑川。西川を金網まで下がらせると右ヒジを叩き込む。終盤、緑川は右ローと右ヒジで猛攻し、バックスピンキックも繰り出した。

3R、西川はバックスピンキックを繰り出すも当たらない。緑川は構わずプレッシャーをかけて右ローを効かせ、距離が詰まると右ヒジを振るう。下がる西川を追いかけて、緑川は右ボディと右ヒジ。西川も必死に距離を取ってバックブローやパンチを返す。判定は3-0で緑川の勝利となったものの、立ち技にチャレンジした西川の健闘も光る一戦だった。

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J-CAGE ONE Report Road to ONE02 ブログ 後藤丈治 祖根寿麻

【Road to ONE02】左を効かせた後藤がフロントチョークで祖根からタップを奪う

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
後藤丈治(日本)
Def.1R by フロントチョーク
祖根寿麻(日本)

サウスポーの後藤に対し、オーソドックスの祖根。祖根は左右のフックで前に出て、後藤は距離を取ってハイキックで迎え撃つ。ここで祖根の頭が後藤のあごに当たり、試合は一時中断となる。再開後、祖根がパンチで後藤を金網まで押し込み、テイクダウンを奪う。一度は倒された後藤だが亀になって立ち上がり、アームロックを狙いながら正対する。ジャブ・左ストレートで前に出る後藤。パンチの打ち合いで右フックを効かせると、返しの左フックで祖根からダウンを奪う。祖根もタックルでテイクダウンを狙うが、後藤は首だけに手を回す形のフロントチョークへ。これががっちりと極まり、後藤が一本勝ちを収めた。

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J-CAGE ONE Report Road to ONE02 ブログ 工藤諒司 椿飛鳥

【Road to ONE02】工藤、全局面で椿を圧倒してTKO勝利

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
工藤諒司(日本)
Def.1R2分59秒 by TKO
椿飛鳥(日本)

打撃の交換から工藤がテイクダウンを奪う。工藤は椿の背中をしっかりマットにつけてV1アームロックを狙いながら、マウントポジションへ移行。確実に椿の動きを制しつつ、肩固めを狙う。これがかなり深く入ったように見えるが、椿も身体をずらして頭を抜いて脱出する。チャンスを逃した工藤だったが立ち上がった椿に右フックから襲い掛かって一気に連打。距離を取ろうとする椿にパンチの連打を浴びせて、最後はレフェリーストップでTKO勝利を呼び込んだ。

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Report Road to ONE02 ブログ 宮田和幸 田中路教

【Road to ONE02】トップの田中vsガードの宮田、白熱のグラップリングバウトは時間切れドロー

<グラップリング・フェザー級(※70.3キロ)/10分1R>
宮田和幸(日本)
時間切れドロー
田中路教(日本)

左構えの田中が組み付いて投げを狙う。それを踏ん張った宮田が田中をケージまで押し込むが、田中は距離を取る。再び宮田が組み付いて田中をケージに押し込み、そこからテイクダウンの攻防になり、宮田がグラウンドでバックを奪う。正対して田中がインサイドガードで上になると、立ち上がってパスガードを狙う。田中は宮田の頭をケージまで押し込むと、宮田は田中の頭と手をコントロールしてフックガードからスイープを狙う。バランスをとってトップポジションをキープした田中は宮田のガードを飛び越えるようにパスガードを仕掛ける。それを阻止した宮田はオモプラッタへ。これは形にならなかったものの、宮田は田中のパスガードを阻止しつつ、再びオモプラッタを狙う。

 田中が中腰から左右に動いてパスガードを仕掛けるが、宮田のガードを超えられず。宮田はクローズドガードに田中を捕獲。田中が腰を上げてガードを外して側転パスガードを狙うが不発。その後も田中がトップポジションからパスガードを仕掛け、宮田がガードポジションで凌ぐ展開が続く。ここで宮田が背中越しに田中の腕に足をひっかけ、バックポジションを狙うが、田中もすぐ正対する。田中はパスガードを狙い、亀になる宮田に腹固め。最後は宮田が上のポジションを取り返したところで試合終了。白熱したグラップリングバウトは時間切れドローに終わった。