カテゴリー
Bu et Sports de combat K-1 MMA MMAPLANET o RIZIN UFC キック サンチン ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 平本蓮 弥益ドミネーター聡志 松嶋こよみ 武術空手 長谷川賢

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。平本✖弥益「空手の打ち方のボクシングです」

【写真】平本が何度も決めた左の突きは、空手の後の先ではなくボクシングのカウンターだった。そして返しの右が強かった (C)RIZIN

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──だけでなく、自ら稽古を共にする立場から見た平本蓮✖弥益ドミネーター聡志戦とは?!


──平本選手の打撃が変わった。「空手だ」、「後の先だ」、「カウンターだ」と様々な声があります。そのなかでこの2カ月、平本選手と稽古してきたなかでの初めての試合。そして、足の指の骨折も経験しました。

「試合が決まってすぐに前蹴りの練習をさせると、左足薬指の中足を折ってしまいました」

──やはり前蹴りから入ると。岩﨑さんは以前、剛毅會空手ルールを創るなら蹴りは前蹴りだけで良いというほど、前蹴りの重要性を説いていました。

「それはMMAだからですよ。しっかりと前蹴りで入って、両手と両足を連動させる。剛毅會の定石といえます。前蹴りが一番簡単だから。いや、蓮は蹴りも上手いです。回し蹴りでもロー、ミドル、ハイキックと全て上手いです。ただし、11月の頭に弥益選手とやる。もう1カ月少ししかないなかで、それらの蹴りは使わない方が良いと思いました」

──その故は?

「彼も分かっていたけど蹴った後、そして蹴る前にしても──蹴りを使うことで居着いてしまうので。そうしたら、ケガをした。だから、今回は何かをこうするということではなく、ミスをなくしていく選択をして、あの戦い方になったわけです」

──ほぼパンチのみでした。

「ケガをしてから、K-1時代の映像をチェックしました。その時に思ったのは、やはりパンチ力でした。蓮はボクシングなんですよ。キックボクシングではない。だから、彼の持つボクシング力、そこで徹底的に戦おうという選択をしました」

──途中「で後ろを使う」という戦いは、前に出て圧力をかけることができず逆にパンチを被弾し、テイクダウンを取られるかもという指摘が、セコンド陣からあったと聞きました。

「そこは大きかったです。ハセケン(長谷川賢)さんと赤沢(幸典)君は『それだと下がって危ないんじゃないか』と思った。蓮の良さがスポイルされるんじゃないかということだったんです。ただし、今回の試合に関しては彼が前に出ると弥益選手はテイクダウンを取ることができる。

パンチのインステップにテイクダウンを合わせるのが弥益選手。なら、その機会を無くして戦うことが勝利に近づくと踏みました。蓮はカウンターが得意だから。蓮は私の言わんとする真意をくんでいることが、彼らの指摘で理解できました。結果、ハセケンさんも赤沢君も分かった。彼らが蓮のことを心配して、尋ねてきてくれたからですよね。

それもあって……試合に関しては、やることがドンピシャにハマり、結果もでた。そんなことは10数年指導をしてきて初めてです。チームワーク……ハセケンさん、赤沢君、(平本)丈、練習に付き合ってくれた飯田(健夫)君、この全員が同じことを考え、こう戦わないといけないという部分で一致していました。陳腐な言い方ですが、チームが一丸となった。そこが勝因だと思います。

加えて蓮の舞台度胸ですかね。いよいよ追い詰められて、ホントに戦うことが決まったのは大会の1週間前のことで……決まってからの気合は半端なかったです。ハマり過ぎるほどハマった。ただし、そうなることは見えていた試合とも言えました」

──2カ月ほどの稽古で、平本選手は何が必要か理解度も高いのですね。

「そこでいうと理解度が高くても、試合でやるかどうかは別問題なんです。そういう意味でも、彼が今回は信じてああいう戦い方をしたということになりますね」

──ではハマったというのは弥益選手を研究して、当てはめていったのか。今回の稽古をすれば誰が相手もハマるということでしょうか。

「それ以前にMMAの選手として、どう戦うのか。彼にはそのベースがないということでした。レスリングができる。寝技が強いというベースがあれば、そこに向けて勝つ方法論で向かっていけます。それが無いから、分からない。でもケガをしてボクシングに絞ることで、戦略が立てやすかったです。もうそれ以外、選択肢がなかったから」

──そのためにどのような稽古を行ったのでしょうか。

「動かないで殴る。空手の基本稽古です。空手の基本稽古はその場でやります。動かないで強い力を出せるようになる。それができるようになると力を運ぶ。それが稽古の手順です。今回は動かないで突きを見せる。それができたら、下がりながらカウンターを取る。それだけです」

──では今回の平本選手の戦い方はカウンターで良いわけですね。後の先が取れていたわけではなくて。

「後の先なんて、まだ取れないです。言うちゃ悪いけど、そんなに甘いモノではない。あの試合はあくまでもカウンターです。打ち方は空手の。後の先ではなく、カウンターです」

──後の先とカウンターの違い。そこがまた難しい。後の先=カウンターというのが格闘技界の通例ですし。

「ハイ、後の先を経験している方は非常に少ないと思います。蓮の戦いは後の先ではなく、ボクシングのカウンターです。空手の打ち方でやっただけです。ひたすら右足前の左の逆突きの稽古をしました」

サンチン??

──平本選手は試合後の会見で、勢いがあるならオーソの構え。

技術的には戦うにはサウスポーの構え。今回は右足前で戦ったということを話していました。そこまで話しても大丈夫なのかと思ったほどです。

「全く問題ないです。手の内でもなんでもないですから。彼は空手に関しては初心者。まだ白帯です。茶帯ぐらいになった時はバカバカしくて、そんな話もしなくなるはずです。空手だと騒ぎ立ててもらえているのは、彼にネームバリューがあるからで。

とはいっても彼はUFCの世界王者を目指すと公言していますから。なるか、なれないかは別問題として、逆算してやっていく。目標がそこであるなら、これではダメです」

──あの戦いではダメですか。

「ダメですよ、全然。MMAも初心者で、経験値が足らないです。アマからプロ、もまれてランカー、そしてチャンピオンというところを飛ばして戦う状況にあるわけですからね。今、UFCのチャンピオンだと言っても絵空事です。そして本人もそこを理解しています。今回はボクシングを空手の打ち方でやったんだと。

と同時に、蓮はそういうのが好きなんですよね。この勝利で彼も道着を着て、白帯を巻くことができます。今後は渋谷支部、支部長代行ですから(笑)」

──えっ?

「これまで週に一度、蓮や丈との練習で使わせていただいていたFIGHT CLUB渋谷さんに、剛毅會空手のクラスを正式発足する運びになりそうです。ジムの会員さんは稽古に参加できないかと相談を受けました。ただし、蓮も黒帯を取らないと支部長になれないので」

──そしてあれだけの強さをMMAで見せても、平本蓮は白帯だと。

「ハイ。白帯です。松嶋こよみ師範代は黒帯二段です。武術空手への理解力は次元が違います。と同時に松嶋こよみはMMAにおいて打撃と組み、寝技と引き出しが多いです。平本蓮は打撃の専門家です。打撃の専門家にここまで私の空手を指導したのは、初めてです。蓮は打撃で苦労してきたからこそ、真意が理解できるのだと思います。

4月の初遭遇から7カ月、両者はチームになった

ただし、MMAファイターとしては平本蓮は松嶋こよみに遠く及ばないです。そこを蓮も後輩として分かっています。

2人はレスリングの稽古もやり、打撃の稽古も一緒にやる。これから2人でしのぎを削って世界を目指しますので、宜しくお願いします」

The post 【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。平本✖弥益「空手の打ち方のボクシングです」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ABEMA MMA MMAPLANET o RIZIN 剛毅會 岩﨑達也 平本蓮 弥益ドミネーター聡志 武術空手 海外

【Fight&Life】武術、MMA、打撃。平本蓮が触れた武術と、武術に依存せず勝つMMA打撃

【写真】弥益前日のstArt JAPAN MMAでの稽古。後ろ足の使い方、腕の伸ばし方、拳を置く位置の確認。記事では写真を掲載しなかったが、平本はシューズ着用で稽古を行っていた。もちろん、左足を守るためだ(C)MMAPLANET

10月 28日(金)発売のFight&Life#93に、6日(日)に名古屋市中区のドルフィンズアリーナで開催された「RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA」で、弥益ドミネーター聡志を相手に新しいMMA打撃を披露し勝利した平本蓮と、彼と武術空手の稽古を行う剛毅會空手・岩﨑達也宗師の対談が掲載されている。

「人が拳を突きつけられているプレッシャーって、見ている人は分からないけど、対面していると分かるじゃないですか。あの(最初に向き合った)時、岩﨑先生から狂気的というか、殺しの雰囲気というか……何て言ったら良いのか分からないですけど、とにかく『怖い』と感じさせられたんです」

「岩﨑先生に教わっていることって、よく分からない人が見ると意味不明だと思います。でも練習に参加したら分かるというか……いや興味がないと、格闘技や武道をやってきた人間でも分からない」

「来られても受けるのではなくて、攻撃を止めない。そういう練習を今はやっています」

「まだ僕も全然自分のモノになっていないですけど、型をやって自分が変わってきたと思います。スパーリングで、アレがそのまんま出るわけではないですが、ホントにそれこそ内面的なモノなんです。意識はしているのですが、その内面的なものが無意識出るようになることが大切で。以前は考えて出していたものが、スッと気が付けば出ている。馴染ませるというか……何ていえば良いのか分からないのですが」

「今回の試合は相手が格上っていうのも関係しているかもしれないですけど、浮ついていないです。『もうできるでしょ』」みたいな(笑)。自信ではなく、安心が自分のなかにあるかもしれないです。『絶対KOする』とか言って、過信のような気持ちの持って行き方とは違うんですよね。凄く冷静に一歩引いて戦いを見ることができているなっていうのがあるので」

同対談には弥益戦の平本の打撃スタイル、戦い方のヒントになる言葉が話されていた。ここでは誌面のスペース上、掲載しきれなかった平本の言葉をお届けしたい。


──昨年末、ミルウォーキーでの練習の良さを話していました。準備が整えば、すぐにでもルーファスポートに戻りたいと。今、平本選手のなかで海外での練習をどのように捉えているのでしょうか。

「ミルウォーキーでの練習は凄く良かったです。レスリングや組みの部分では。正直、打撃という面ではMMAの打撃と僕がやってきた打撃は別物かもしれないですが、今は日本で岩崎先生とやっているモノが自分にとって必要だと思っています。

それでも米国で練習したいというのはあります。それはトレーニングというよりも、腕試しをしたいという感覚に近いです(笑)。今、自分のなかでなれる最大限の強さへの近道……近道でもないですね。求める強さっていうのは、今ここでやっていること。自分に必要なモノはここにあります。打撃も含め。凄く満足した練習はなかなかできることがなかったので。でも、今はあるから充実しています。凄く練習が楽しいです。

型とかやっていても、一見凄く地味なことをやっていると思われるはずです。でも自分のなかで武道の内面的な強さを全て掴めていないから、そこを求めている。だから『早く手に入れたい』という気持ちが強い。とにかく『一歩踏み出そう』というか。自分がこれまで持っていた打撃の技術に拘っていてもしょうもないじゃないですか」

──しょうもないですか(笑)。

「1日1日変わっていたい。昨日の自分と同じでいたくないです。同じでいたくないから上がったり、下がったりって凄くあると思うんです。でも、下がり続けることはない。自部のなかでチューニングができている。7月の僕の試合を見ても、何も参考にならないですよ」

※平本の感じる武術空手。その印象や問い掛けに対して岩﨑氏が返答することで、より武術空手をMMAで使うという意味合いが理解できるかと思われる──平本✖岩﨑対談が掲載されたFight&Life#93は10月28日(金)より発売中です。

The post 【Fight&Life】武術、MMA、打撃。平本蓮が触れた武術と、武術に依存せず勝つMMA打撃 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
K-1 MMA MMAPLANET o キック ボクシング 八巻建志 剛毅會 岩﨑達也 松井章圭 極真会館 武術空手 海外

【KYOKUSHIN】「価値観を否定しない」八巻建志復帰&剛毅會加盟会見で松井章圭館長がMMAについて語る

【写真】松井館長にMMAについて、しっかりと話してくれた(C)MMAPLANET

2日(水)、東京都渋谷区の国際空手道連盟・極真会館総本部代官山道場で八巻建志氏の極真会館復帰及び総本部師範就任と、岩﨑達也氏率いる剛毅會空手が賛助会員としての国際空手道連盟加盟に関する記者会見が行われた。

松井章圭館長の挨拶に続き、2002年に極真会館を退会し米国で八巻空手を興して活動してきた八巻氏は以下のように極真復帰について話した。

八巻建志
「20年振りに極真に戻って参りました。この20年間、極真を名乗ることはなくても心の中は極真で、大山総裁が常々言われていた『極真は最強でないといけない』という言葉を胸にやってきました。いつ、どんな相手であろうと、いかなる場所であろうと負けるわけにはいかないという気持ちで日々鍛錬をしてやってきました。私がやってきたものを少しでも伝えられれば良いと思っています」

続いて岩﨑氏は賛助会員として連盟入りについて語った。

岩﨑達也
「21年前に極真会館から自流を興し活動してまいりましたが、極真を否定して出て行ったわけでなく、自分の理想とする極真を自分なりに確立したいと思ってやってまいりました。そういった活動というものが少し松井館長に認めていただけて、今回こうやって賛助会員として加盟することになったのかと思うと、大変光栄に思います。極真というものは競技ではないと思います。価値観であり、思想であり哲学であるもの。それをやるにあたって大山倍達館長の後継人である松井館長を抜きにして語ることはできないと思っています。そういった方向に関して、自分が何らか協力できれば良いと思っています」

MMAPLANETでは場違いと自認しつつ、八巻氏の「いつ、どんな相手であろうと、いかなる場所であろうと負けるわけにはいかない」という言葉と、岩﨑氏が現在行っている武術空手をMMAに生かすという活動を鑑みて、極真の名の下においてMMAに挑戦することがあるかを尋ねた。3者の返答は以下の通りだ。


松井章圭
「これは私自身の話になってしまいますけど、私が話すので私自身の話としてしかできません。恐らく我々の年代が全てそうだったと思われるのは、我々は空手をやりたくて極真会館に入門したわけじゃないんですよね。とにかく強くなりたくて、言ったら変な話──当時少年でしたけど、子供の頃にいわゆる……こういう言い方をすると、昨今の世間ではどういう風に言われるか分かりませんけど、喧嘩に強くなりたくて。当然、喧嘩はノールールですから。そういうような意識で始めたことがこのような形になっています。

もちろん社会的に健全でないといけないというところで、極真会館というモノは本来、武道団体である。その延長線上というか、水面下でいえば社会体育団体であるというところに、原点を見直して、あるべき姿を追求する形にはなっていますけど、そういう意味においては試合の形状がどうであるかって関係ないんですよね。

だから組織である以上ルールがありますし、規律を守ってきちっとした秩序が大事になりますけど、そういうことをしっかりと守って行けるのであれば、現実、ウチはプロの選手……具体的に言うと、フランシスコ・フィリョ君がK-1に出て以降、プロの活動を是認していますし。今もキックボクシングのリングに上がっている選手もいますし、MMAの試合をしている選手もいます。

海外では、また複数いますし。それを一切否定するという気は全くないです。

だから岩﨑宗師が言われたように、そこを追求して結構ですし。例にも挙げられていましたけど昔、黒崎(健時)先生、藤平(昭雄)先輩……大沢昇先生、この人達が私たちのところを形的、組織的に離れて目白ジムを建てて、その道に邁進しました。そこに対して(岩﨑氏が)言われたように先輩たちが別門になったという意識は全くない。それこそ未だに黒崎先生や藤平先輩は自分達の大先輩、大きなアニキであったり、オジサンみたいな存在だし。

もっといえば当時の藤原(敏男)さんとか島(光雄)さんとか、岡尾(国光)さんという伝説的ファイターの人達を我々は先輩として認識していましたから。

そういう意味においては今、彼(岩﨑氏)がやろうとしていることで、そういった視点から我々に色々なアドバイスがあるだろうし。我々は便宜的に総裁から受け継いだ極真ルールやその武道性や実戦性を掘り下げて、そこは競技ですから競技性や安全性を追求していますけど、その限りではないということが実際のところなんです。

先ほども言ったようにウチは競技団体ではないので。武道性を追求するために便宜的にああいった舞台を創って、それを追求している。だからこそ全空連との友好化もありましたけど、ポイントルールも是認している。

だから我々組織が、組織ごとMMAに向かったり、キックに向かうということはないです、一切。K-1に行った時は『極真会館はプロになるぞ』、全空連と友好化した時は『極真会館はノンコンタクトになるぞ』って世間はよく言います。我々は一切そういうことはないし、組織としての根幹がぶれることはない。

ただ、その価値観を否定するモノではない──というところを皆さんに認識して頂けたら有難いですね。今後、そういう選手が出ていく可能性は大いにあります」

八巻建志
「MMAに出たいという選手は、その練習をやれば良いと思うし、自分の教えられることは教えたいと思います。MMAとか試合とかに拘らず──米国に暫らくいて感じたことは、何があるか分からないんです。いきなり襲われるかもしれないし。そういうのをいっぱい見てきたので、本当に使える空手じゃないとやっていて意味がないと思います。

本当に使える……危ない時に使えたりとか、自分の身を守れるような。そういう空手を教えていきたいと今は思っています」

岩﨑達也
「さきほど館長からお話が出ていたように、MMAの選手を育てています。育てていると色々な問題がある子もいて、さすがに風紀といった部分に相いれない子がいます(笑)。でも、そういう子こそやるべきだと僕は思います。教えている子にはSNS等でお騒がせしている子もいますけど、礼に始まり礼に終わるということをキチンとさせています。

『武道をやっているんだよ』ということは言っています。MMAをやる子には『君たちが大変な思いをして、この競技をやっているのだから、それが人生に生きないといけないよ』と常に言っていますし、そうあって欲しいと思っています。そういう道でないといけない。

『現役生活を辞めて引退した後の方が人生は大変なんだよ。そこでどうあるかで、君たちの評価は決まるんだよ』ということは、どんな子にも言っています。そこを理解しない子には私は教えません。確かに極真会館という枠組みの中には合わない子もいますけど、そういう子たちも稽古を通じてMMAを武道にしていってもらいたい。そこを常に意識して、今後も指導していきたいと思います」

The post 【KYOKUSHIN】「価値観を否定しない」八巻建志復帰&剛毅會加盟会見で松井章圭館長がMMAについて語る first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ABEMA MMA MMAPLANET o ONE Road to UFC SASUKE UFC   アンシュル・ジュビリ イ・ジョンヨン イー・チャア キム・ギョンピョ キム・ミンウ キ・ウォンビン サンチン シャオ・ロン トップノイ・キウラム パク・ヒョンソン ルー・カイ 中村倫也 剛毅會 平本蓮 木下憂朔 松嶋こよみ 武術空手 西川大和 野瀬翔平 風間敏臣

【RTU2022 ASIA Ep05】UFCへの道、松嶋こよみ─02─「1回、1回の練習の大切さを思い出させてくれた」

【写真】いうと、極めつけのMMAバカだ(C)MMAPLANET

23日(日・現地時間)にUAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるROAD TO UFC AISA2022 Episode05――フェザー級準決勝でイー・チャアと戦う松嶋こよみインタビュー後編。

武術を落とし込むが、武術に依存しない。松嶋のMMAにおいて欠かせない武術空手だが、彼のMMAは他の多くの練習の成果として形成されている。その一つの要素がレスリングだ。「気持ち良く打撃で戦いたいから、レスリングを学ぼう」と小学生の時に思ったナチュラル・ボーン・MMAファイターが、Road to UFC準決勝を前にMMAへの想いを語った。

<松嶋こよみインタビューPart.01はコチラから>、


──実は一昨日、岩﨑さんと平本蓮選手の稽古の模様を取材させていただいたのですが、テイクダウンがある人に対しての方が、MMAにおいては武術空手の指導はしやすいのではないかと感じた次第です。近い距離になった時に自分から組める選手の打撃、それがMMAの打撃ではないのかと。

「まぁ先生からすると、レスリングができない打撃だけの選手に打撃を指導することは、それだけ強い想いがあるはずです。これをいうと怒られてしまうかもしれないけど、きっとその裏では怖いことだと思っているはずです。

ただ僕がレスリングをやろうと思ったのは、気持ち良く打撃を使うにはレスリングをやった方が良いなと子供の頃に感じたからなんです」

──それを小学生の時に!! さすがナチュラル・ボーン・MMAファイターです(笑)。

「家族と話し合って決めて(笑)」

──松嶋選手のご両親は星一徹が2人いるような感じですね(笑)。

「アハハハハハ。そうやって始めたレスリングが、MMAに生きている。レスリングがあるからやれることはたくさんあるし、ちょっと失敗してもリカバリーできるのもレスリングのおかげです」

──打撃ではあれだけ間を重視し、先が取れているかどうか見極めている岩﨑さんが『組んでテイクダウンしろ!!』とレスリングの攻防になると、まるで違う叫び声を挙げていました。

「アハハハハ。打撃ではありえないことですよね。結局、MMAは勝つことが全てだから、北岡さんとセコンドに就いて、その勝つためという部分で2人が通じ合ってくれていました。先生も言っていますが、武術に依存して戦うとダメなんです。

武術は僕のMMAのアクセントです。それが全てじゃないし、僕がやってきたことは武術でできたわけじゃない。ただ武術は僕のなかにある。だから『空手をやれば強くなる』なんて言わないですけど、色々な練習のなかの一つであり、それを僕は生かして戦えていると思っています」

──平本選手が剛毅會空手に傾倒することをどのように思っていますか。

「先生も彼の打撃を見て、親近感がわいたと言ってはったんですけど……」

──なぜ関西弁に(笑)。

「ハハハハハ。僕にとっても良いことだと思っています。僕にだけ指導しているよりも、幅が広がる。先生が平本君を教えることで、僕に新しいエッセンスが入って来ることが絶対にあるだろうし」

──松嶋選手が武術をアクセントにできるのも、普段から稽古をしているからです。武術とか空手という言葉にマジックを求める人が多いなかで、平本選手がじっくりと取り組んでいるのは正直驚きでした。

「そうなんですよね。ミットだけお願いして──とか。『そんなもんで、何ができんねん』って」

──いやぁ、高校3年間の丹後地方で過ごした松嶋選手の関西弁が出まくりですね(笑)。

「平本選手がそうやって稽古をしているのは、僕と繋がる部分があります。僕だって……普通じゃやらないでしょって思われることをやってきたので。彼もそこに何かを見出せる目を持っているのではないでしょうか」

──その部分で以前は他の練習仲間の前でサンチンをやるのとか、少し恥ずかしそうにしていましたが、今日などもシャドーの合間に站椿のような動きや呼吸を普通にやっていましたね。

「勝手に出ちゃうんですよね。僕しかやらないから、良いかなって(笑)。もし『面白そう』と思ってくれれば、思ってくれれば良いし。僕自身、これの成果が出ているとまで言えないですけど結構落とし込めているので。僕を見て、誰かが真似をするという感じはしていないですけど……澤田(千優)だったり、(中村)倫也だったり、イズムの若い子も先生と稽古するより、僕がかみ砕いて伝えた方が入り込みやすい気はします。

僕は僕で、人に伝えることで自分の中に落とし込めている。そういうことはやれているのかと。そのおかげで僕は武術を落とし込めていると思います」

──Road to UFC準決勝に出場する日本人選手に共通して尋ねているのですが、コンテンダーシリーズから木下憂朔選手がUFCと契約を果たし、RTU準決勝の前日には西川大和選手がUFC280でUFCデビュー戦を戦う。この両者が一足先を進んだことに関して、どのように思っていますか。

「おめでとうございますと素直に言えます。木下選手はほとんど勝っているといってもおかしくない反則負けはあったけど、実質7連勝で。デビュー直後から強い選手が出てきたと思っていました。これからUFCで戦っていくことになって、しんどいこともあるだろうけど凄く頑張って欲しいです」

──羨ましいと思ったりは?

「全くないです(笑)。僕は自分のこれまでのキャリアを悲観しているわけじゃないんで。僕には僕の道があり、そこを進むだけで。だからそういう気持ちは全くなくて、ただ本当に頑張って欲しいと思っています。あと西川君ですよね、チャンピオンで連勝もしているので選ばれて当然かなぁぐらいです。

アッチ出たい、こっち出たいということは記事とかで読んでいたので『ああ、そうなの?』というのはありますが、それでUFCに出られるのだから持っているんだと思います。僕が彼の立場だったら、話が来た時に『お願いします』の一言です。あと2週間で試合だと言われても出たいと伝えます。だから西川選手も、ただただ頑張って欲しいと思います。

僕は僕でトーナメントで優勝して、トーナメント優勝者としてUFCと契約する。だから、このトーナメントに優勝すること以外のことに関して、何も思わないです。2人には頑張ってくださいと記事を通して伝えてください」

──ところでONEを離れ、将来が不透明だった時の練習と、目標が定まった今の練習は何か精神的に違いがあるのでしょうか。

「あの頃と比べると精神的に楽といえば、楽です。ただし、しんどいことはやるのに変わりはないので。今は目標のために頑張れているという充実感があります。本当に自分のためにしんどいことができている。先が見えているからこそ、1度1度の練習を大切にしようと思えます。先が見えていなかった時より、追い込めています。だから、この状況を終らせないためにもしっかりと次の試合は勝たないといけないです。

と同時にに練習に関していえば、あの頃はあの頃で試合に向けてではない強くなるための練習が出来ていたという部分はあります。空手の型や基本の稽古もロータスに行った後にできていたし。あの頃はあの頃で楽しかったなという気持ちで今はいます。

試合のためでない練習って楽しいんですよね。僕は練習をして技術が身につくと、何よりも嬉しい。対して試合のための練習はしんどくて、辛いです。でも目標があって、ついてくる結果が見えている状況は自分を奮い立たせるエネルギーになります。そういう気持ちがあれば、練習の精度も高まります。試合に向けての練習は1回、1回の練習の大切さを思い出させてくれました」

──そんななか昨日はT-GRIPで大塚隆史選手指導のMMAレスリング・クラスに出ていたのですが、その大塚選手が今日は横浜までやってきて松嶋選手とスパーリングを3本して帰っていきました。ここまで来て、思い切り腹を蹴られて悶絶し、それでも松嶋選手をテイクダウンする。素直になんて献身的な人なのかと。

「去年、大塚さんの試合前にずっと一緒に練習して、セコンドもしていました。そうしたら大塚さんが『今度はこよみのために俺がやるよ』と言ってくれて。本当に申し訳ないというか(苦笑)、申し訳ないぐらいやってくれるんです。

40分間のイズム滞在で5分のスパーを3本付き合ってくれて。終わると、サッと東京に戻る。スミマセンって言いたいです。大塚さんの『愛』的なモノや、勝って欲しいという気持ちも伝わってきます。北岡さん、岩﨑先生、大塚さんとチームとしてやっていけています。

火曜日のT-GRIPでのレスリング練習は、やっぱり大学とかに練習に行くとレスリングのためのレスリングになってしまうところが、あそこではMMAのためのレスリングができるので本当に役立っています。あそこの練習って、実はしんどくてやらないところなので。あの練習は皆、絶対に出た方が良いです。

あそこにいる人達、ちゃんとしんどいことをやりに来ているんですよね。皆、毎週来ています(笑)。だから僕が伝えられることは伝えますし、逆に中原(由貴)君なんかにも聞きたいことを尋ねています。良い練習ができています。所属は違えどチーム、皆で上げられるような練習です」

──やはり松嶋こよみはMMAバカです。どれだけMMAが好きなのかということが伝わってきました。最後に次の試合に賭ける気持ち、意気込みをお願いします。

「ホントにコレに対する想いは人一倍だと思っています。自分が今デキる練習を死ぬ気でやって、コレにちゃんと挑めるように準備してきたので。試合と練習は違いますが、その部分を出していきます。ちゃんと出します」

■視聴方法(予定)
10月23日(日・日本時間)
午後8時00分~UFC FIGHT PASS
午後8時00分~ABEMA格闘Ch

■ROAD TO UFC AISA2022 Episode05対戦カード

<Road to UFCフェザー級T準決勝/5分3R>
イー・チャア(中国)
松嶋こよみ(日本)

<Road to UFCフライ級T準決勝/5分3R>
チウ・ルェン(中国)
チェ・スングク(韓国)

<Road to UFCフライ級T準決勝/5分3R>
トップノイ・キウラム(タイ)
パク・ヒョンソン(韓国)

<Road to UFCバンタム級T準決勝/5分3R>
風間敏臣(日本)
キム・ミンウ(韓国)

<ライト級/5分3R>
SASUKE(日本)
パラチン(中国)

■ROAD TO UFC AISA2022 Episode06対戦カード

<Road to UFCフェザー級T準決勝/5分3R>
イ・ジョンヨン(韓国)
ルー・カイ(中国)

<Road to UFCバンタム級T準決勝/5分3R>
中村倫也(日本)
野瀬翔平(日本)

<Road to UFCライト級T準決勝/5分3R>
キ・ウォンビン(韓国)
ジェカ・サラギ(インドネシア)

<Road to UFCライト級T準決勝/5分3R>
アンシュル・ジュビリ(インド)
キム・ギョンピョ(韓国)

<バンタム級/5分3R>
シャオ・ロン(中国)
フィリッピ・リマ(ブラジル)

The post 【RTU2022 ASIA Ep05】UFCへの道、松嶋こよみ─02─「1回、1回の練習の大切さを思い出させてくれた」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o UFC キック ボクシング マーヴィン・ヴェットーリ ロバート・ウィティカー 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ウィティカー✖ヴェットーリ「後ろ足」

【写真】 この写真は左ジャブだが、ウィティカーの攻撃は右が中心だった(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たロバート・ウィティカー✖マーヴィン・ヴェットーリ戦とは?!


──遠い距離から蹴り、近い距離ではヘッドムーブ。ヴェットーリの攻撃をほぼ完封したウィティカーが判定勝ちを収めました。

「ウィティカーのスタンスが素晴らしかったです。ヴェットーリがサウスポーで、ウィティカーがオーソ。ウィティカーは常に蹴ることができるスタンスでした。ただし、なぜか1Rは全く蹴りを出さなかったです。そうなるとただ広いスタンスで動く、これでは一歩間違えると殴られやすい何の取柄もないスタンスになってしまいます。

だから何のためにこういうスタンスをしているのかと思っていたのですが、蓋を開けて見れば2Rから右の前蹴りを軸にして、右の突き、そして右のハイキックという3つの攻撃だけでヴェットーリを圧倒しました。ヴェットーリは蹴りなのか、突きなのか。何が来るのか分からない状態で貰っていたと思います。

当然、そこにはヴェットーリの打撃の質がそれほどでないから、好きなように攻めることができるということはあったと思います。とはいえウィティカーは長い間トップで戦ってきた選手なので、自分の勝ちどきが分かっていて展開をどんどん創ることができますね。

ところで、ウィティカーのベースは何なのですか。伝統派空手か何かですか」

──確かに幼少期から10代の半ばまで剛柔流空手をやっていて、そこからハップキドーに。その道場がMMAジムに代わりMMAを始めたということを聞いたことがあります。かつてMMAPLANETのインタビューで「規律のある動き、タイミングの取り方、スピードは剛柔流空手から来ている部分が多い」と言っていました。スタンスやフットワークも。ただし、「そういう動きが西洋のスポーツで育めないかといえば、それは難しい質問だ」と。

「彼はいつも、あれだけ当てることができていますか」

──ハイ。貰わず当てることが多いと思います。勝っている試合では。ただし、アデサニャ戦ではより長いレンジを崩せず、テイクダウン狙いに切り替えて倒せずに負けました。そんなウィティカーですが、近い距離になると頭を振ってボクシングになる。それは武術空手的には蹴りに対応できない危ない動きということになりますよね。

「ハイ。ハイキックをもらう危険があります。そこは本当に危ないです。相手が蹴りを使わないから良かったですけど、蹴りのある相手には危ないです」

──つまりはボクシングも蹴りのない選手には有効になるわけですね。

「パンチをかわす技術ですから。なのでMMA全般にいえることですが、そこまで蹴りを使いこなせる選手が多くないので、頭を振って戦っていても危なくないように映る試合は多いです。

ただし蹴りのある選手に対しては穴になる。私が稽古している選手には、その穴をついていこうという風にしています。蹴りの対応に関しては、UFCにあってもまだ知識が行き届いていない。これだけハイキックによるKO決着が見られても、未だにそこを重要視していない。深刻に捉えていない部分があるように感じます。本当にあの頭を振ってパンチをかわそうとするのは、危ないです」

──攻める方の技術が上がらないと、防御の技術も上がらないと。

「その通りです。だからといって、皆がやらないから自分もやらないというのは違います。グレイシーだけが持っている柔術という技術を知らなかったから、他の競技の選手は柔術家に負けていました。それと同じで、蹴りに対しては空手が持っている技術がまだ浸透していない部分が多い。受け返しなどフルコンタクト空手で数十年前から繰り返されてきた技術が、MMAにないのであれば──それは知っている方が有利です。

当然、寝技ができてテイクダウンの攻防ができる。顔面直接殴打、パンチに対応しているうえで蹴りの受け返しがあれば──ということです。それがないのにMMAで、フルコンタクト空手の受け返しといっても始まりません。

同時に顔面のあるなしはあっても、あのウィティカーの間合いと飛び込みはフルコンタクト空手で日本人が外国勢に苦しめられた距離なんです。あの戦い方が日本の空手家は当時、できなかった。

それがアデサニャには通じないとなると、カウンターが取れないのだと思います。自分よりリーチのある選手と戦って入って行けない。長い距離にカウンターが取れないのでしょうね。堀口選手なんて、そういう風に攻めることができていましたよね。

でもウィティカーは後ろ足で距離をコントロールしています。そこは是非とも日本のMMAファイターの皆さんにも見習ってほしい点です。前に攻めようとする時に、どうしても前足で動いて、前足で距離を取ろうとしがちです。

対してウィティカーは後ろ足で、一度深さを創って前蹴りから右の突きを打っています。相手としては遠くから飛んできたと感じます。これが動かないで、半四股立ちの幅が間違う──つまりは前足でコントロールしたりすると、右を出してもカウンターを打たれやすいです。型通りに後ろ足に引くことができる──正しい状態から拳(けん)を伸ばしていくと、相手の攻撃を受けずに自分の攻撃を当てることができます。つまりは後ろ足でコントロールすると相手の攻撃を受けずに、自分の攻撃が入りやすくなるということです。そこまで考えてはいないと思いますが、ウィティカーはそういう動きを使っています。

だから定番となっている外を取るという動きとは、逆で内側でも攻撃を当てることができていました。ヴェットーリが右足前で、ウィティカーは左足が前。ウィティカーはヴェットーリの前足の中に入っている。外を取っても、中に入れないといけない。そういう部分でもウィティカーの動きは注目すべきモノです。

スタンスが蹴られる状態で、後ろ足で相手との距離や自分が反撃するタイミングをコントロールしている。跳ねる前後移動とは、明らかに別モノでした。ウィティカーも跳ねます。でも、後ろ足を少し引いているんです。これはデキるようでデキない。前に出ようとする時に、後ろ足を引く。これはデキないんですよ。

ただしタイ人やミルコがKOしている時は、それをやっていました。右足前で、左足を少し引いて左ミドルを蹴る。倒せる時のミルコは、その場で蹴ることはなかったです。ただしUFCで倒された時は前足で踏み込んで──のされてしまいました。

1Rは何をしているのかまるで分からなかったですが、2R以降はウィティカーのスタンスの広さの意味、この動きがあるからあの広さなんだと理解できました。凄く興味深いです」

The post 【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ウィティカー✖ヴェットーリ「後ろ足」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ABEMA MMA MMAPLANET o RIZIN Road to UFC SASUKE UFC アンシュル・ジュビリ イ・ジョンヨン イー・チャア キム・ギョンピョ キム・ミンウ キ・ウォンビン サンチン シャオ・ロン トップノイ・キウラム パク・ヒョンソン パンクラス ルー・カイ 中村倫也 剛毅會 北岡悟 松嶋こよみ 武術空手 野瀬翔平 風間敏臣

【RTU2022 ASIA Ep.05】イー・チャア戦へ、松嶋こよみ─01─「MMAはスパーでは思い切りできない」

【写真】ミット打ちという名の戦い。凄まじい闘志が伝わってくるミットだった(C)MMAPLANET

23日(日・現地時間)にUAEはアブダビのエティハド・アリーナで開催されるROAD TO UFC AISA2022 Episode05――フェザー級準決勝で松嶋こよみがイー・チャアと戦う。

UFCとの契約に向けて、最後の勝負──つまりMMAファイター人生の正念場となるトーナメント。その準決勝の相手は初戦でSASUKEを破った中国のイー・チャアだ。今も未知数という表現が当てはまる対戦相手との戦いに向けて、6月の1回戦突破から松嶋はどのよう自らのMMAを練り上げてきたか。

MMAファイターとして異端といっても過言でない剛毅會・武術空手を採りいれた松嶋に、ムエタイにいち早く着眼したラディカルMMAファイター=マモル教祖が首相撲のワンポイント指導を行う。唯一無二のスタイルの構築する松嶋をパンクラスイズム横浜でのプロ練習直後にインタビューを試みた。そこには追い込みのピークで疲労が蓄積するなかで、常に戦意を保ち続ける松嶋がいた。


──イー・チャア戦まで2週間強、パンクラスイズムでのスパーとミット打ちを見させていただきました。正直、疲れている。でも研ぎ澄まされている。そのような風に感じました。

「今回、試合までが凄く長く感じるというか……。早い段階からかなりハードなことをやってきたので、全然動けていないと思っていても、ある程度は動けるようになっているのかと思います」

──6月に対戦相手が決まっていました。そこからどのように練り上げ、対策練習をしてきたのでしょうか。

「最初は前回の試合を反省して、見直す。それから自分を上げるための練習をしてきた感じです。そうやってきて、ここ1カ月半ぐらい武田光司選手にパンクラスイズム横浜に週に1度来てもらって対策練習の相手をしてもらいました」

──まず前回の試合の反省点とはどういう部分だったのでしょうか。

「実際の試合での距離感とスパーリングでの距離感の違いですね。試合から遠ざかっていた分、見定めることができなかった。そこが自分のなかで一番反省しているところなので、一度丁寧にやり直そうと思いました。それと組みの部分ですね。結論として一本を取ることができる選手ではないので、どうコントールするのかを打ち込みなどで再確認してきた感じです。

T-Gripのレスリング練習でそこを試したり、T-Gripでの剛毅會空手の稽古でも大塚(隆史)さんに受けてもらったりしてやってきました」

──一本をとらずに勝つ。覚悟を決めて、しんどいことを3R続けるということでしょうか。

「まぁ今までもそうだから、変わりないといえば変わりないんですけどね(笑)」

──ギロチンやダースで極めることができればなという気持ちは?

「ないです(笑)。それができてもラッキーでしかない。つまり、それを使うということは一か八かということになる。もちろん、練習のなかで極めることができることもあります。でも、それは自分の武器としては使えない。自分がやるべきことはそこじゃないので、これからも変わらずにこのままで行こうと思っています」

──今日、RIZINの会見で武田選手がイズムに来ることができなくなり、2人のスパーリングを見ることができなくて残念だったのですが、なぜ対策練習の相手が武田選手だったのでしょうか。

「距離を関係なく詰めてくる。イー・チャア選手はそういうイメージで、あの四つ組みの強さというのは絶対にあると思います。そういう部分を練習する時に、武田選手と練習したいと思いました。打たれ強い部分、打たれても入って来るところですね。相手のことを気にしないで入って来る。そういうところがイー・チャアに一番近い選手が、武田選手でした」

──ただイー・チャアは、どこが本当に強いのか未だに分からないところもあります。

「分からないです。1回戦を見て凄く強い選手だという人もいますけど、どちらかというと『SASUKE君がどうしちゃったの?』という感じで僕は見ていたので。打撃も別に何か怖いという感覚もない。それをいえば打撃がもっと怖い相手や組みが怖い相手と僕は試合をしてきているので。だからといって舐めてかかるわけではないです。

それでもちゃんとSASUKE選手を極めているし、ちゃんとテイクダウンを取っている。その部分では強いんだろうし侮ることができない相手です。でも、自信を持って勝負できる相手だという風には思っています」

──つまり自分を貫くための対策練習をしてきたということでしょうか。

「そうですね。相手がこうしてくるから、こっちはこうするとかでなく、『何をしてこようが関係ないよ』と言えるぐらいの練習をしてきたつもりです。ただ、試合になると空回りしちゃうし、戦闘意欲が異様に上がることもあります(苦笑)。だからこそ、そういう部分とも向き合って戦わないといけない。勿論5分3R、しんどい試合をして戦うなかでいつでもKOできる気持ちで戦います」

──岩﨑さんとのミット打ちは凄まじい一方で、スパーだと本気で打ちこめない打撃の難しさも感じられました。

「レスリングはかなりガチガチでやってきましけど、MMAはスパーでは思い切りできない攻撃が多いです。ただそのレスリング時代でも練習では強くて、試合ではそうでないという選手はいました。そのなかで思い切りミット打ちをやる。岩﨑先生は組手と言っていますが、一つひとつの強さや精度はアレをやることで完成度が上がります。

スパーリングのなかで切り取って、テンポなどダメだったところをミット打ちで修正しています。岩﨑先生にミットを持ってもらうことは僕にはとても大切なことになっています」

──シャドーでも拳をしっかりと握り、手を使って下がる動きなど武術空手の片鱗が伺えました。スパーにしても、構えを変えてからの攻撃や足と拳の連係でも空手らしさもあります。ただし、ミット打ちは移動稽古や型で知る武術空手の理がどこにあるのかは外面では見えなかったです。

「今日はヒジ打ち、ヒザ蹴りが主だったので。でもやる時はやっています。下がる動きを重視するときは、もっと空手の動きになっているでしょうし。下がってコンビネーションというのも普段にやっています。

でも今日のミットにしても、あの距離と高さ引き出したところで、相手を前に出させるという動きを実はやっていました」

──なるほどぉ。

「それにパンチ1つを取ってみても、流れてしまうのではないということも意識しています。言ったら、打ち抜くというよりもサンチンの突きという感覚でやっています」

──とはいえ周囲からはパンチを打ち抜けというアドバイスは当然のように飛んでいます。自分自身の意識と周囲の意見の隔たり……これは従来のMMAやコンバットスポーツを見る目として当たり前のことで、そこに岩﨑さんとのミットと周囲との違いが顕著になると感じることはないですか。

「結局、やるのは自分ですから。人の声に惑わされずという感覚でもいます。そのなかで武術空手だけでなく、フルコンタクト空手で使える部分もありますし、ムエタイから使える部分もある。色々なことを指導してもらって、自分で責任をもって戦うということですよね。

自分の戦いに当てはまるのか、当てはまらないのか。その取捨選択は自分でやります。そのなかで先生とのミットをすることで、回転速度や切れ、精度が上がるので試合に向けて良い状態になっていると感じています」

──岩﨑さんとマモル選手がイズムで首相撲の技術交流、技術談義をしている。非常に興味深かったです。

「実はあんな風に2人が話し込んでいたのは、珍しいことです。普段は先生とマモルさんが鉢合わせになることがなかったので。僕自身、マモルさんのヒザの出し方やヒジ打ちが先生の出し方や打ち方と違うことは分かっていました。それを僕が先生に説明するよりもマモルさんに説明してもらった方が絶対に分かりやすいと思います。そういう風にマモルさんと先生がすり合わせてくれるのは凄く有難いです」

──北岡悟率いるパンクラスイズム横浜が、MMAの梁山泊になっているようですね。面白いのが岩﨑さんと松嶋選手のやりとりのなかで、指導を受けている松嶋選手が「これは使えないです」とハッキリと口にしている点でした。それが岩﨑さんも指導でなくて、自分の稽古になっているという部分なのかと。

「ハイ。僕は『これは使えない』としか言えないことを、マモルさんがその理由を先生に論理的に説明してくれる。

もちろん、僕にとってマモルさんの技術が全てではないです。それこそ僕が自分でやるといっていた取捨選択を2人が理解を深めてしてくれると……僕にとっては一番楽なことで(笑)」

<この項、続く>

■ROAD TO UFC AISA2022 Episode05対戦カード

<Road to UFCフェザー級T準決勝/5分3R>
イー・チャア(中国)
松嶋こよみ(日本)

<Road to UFCフライ級T準決勝/5分3R>
チウ・ルェン(中国)
チェ・スングク(韓国)

<Road to UFCライト級T準決勝/5分3R>
キ・ウォンビン(韓国)
ジェカ・サラギ(インドネシア)

<Road to UFCバンタム級T準決勝/5分3R>
風間敏臣(日本)
キム・ミンウ(韓国)

<ライト級/5分3R>
SASUKE(日本)
パラチン(中国)

■ROAD TO UFC AISA2022 Episode06対戦カード

<Road to UFCフェザー級T準決勝/5分3R>
イ・ジョンヨン(韓国)
ルー・カイ(中国)

<Road to UFCバンタム級T準決勝/5分3R>
中村倫也(日本)
野瀬翔平(日本)

<Road to UFCフライ級T準決勝/5分3R>
トップノイ・キウラム(タイ)
パク・ヒョンソン(韓国)

<Road to UFCライト級T準決勝/5分3R>
アンシュル・ジュビリ(インド)
キム・ギョンピョ(韓国)

<バンタム級/5分3R>
シャオ・ロン(中国)
フィリッピ・リマ(ブラジル)

The post 【RTU2022 ASIA Ep.05】イー・チャア戦へ、松嶋こよみ─01─「MMAはスパーでは思い切りできない」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
ABEMA K-1 MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK04 キック ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 平本蓮 弥益ドミネーター聡志 松嶋こよみ 榊原信行 武術空手 長谷川賢

【RIZIN LANDMARK04】弥益ドミネーター聡志と対戦、平本蓮が武術空手を学ぶ理由。「素手の感覚」

【写真】 何が違うのか、明確だが瞬間を切り取っても分からない。試合で出るかでないか──だ(C)MMAPLANET

11月6日(日)に名古屋市中区のドルフィンズアリーナで開催される「RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA」で、平本蓮が弥益ドミネーター聡志と対戦する。

MMA戦績1勝2敗の元K-1ファイターのJ-MMA界における存在感は、頭抜けたモノがある。その存在感を弥益は9月30日の会見で「インフルエンサー」と称した。

SNSは「アンチを生むことで、話題になる」とその効用を語り、榊原信行CEOとのやり取り漫才と言う平本。自らを見せる術を知るルーキーは、その一方でファイター仲間からの期待度がMMAキャリアの少なさとリング上のパフォーマンスと不具合なほど高い。それは周囲が平本蓮の戦いへの探求心の強さを知っているからだ。


その平本が8月より、武術空手=剛毅會・岩﨑達也と稽古を行っている。練習仲間の長谷川賢を介して、平本は4月に松嶋こよみの剛毅會の稽古を見学、そして体験した。そこで岩﨑の指導する立ち位置、間合い、実際に向き合った者だけが感知できる「怖さ」を体感し、指導を受けたいと思うようになったという。

7月に試合があったことで、中途半端になりたくないという考えから定期的に指導を受けるようになったのは8月、まだ2カ月の稽古期間でも、平本は「確実に違うモノが見せられる」と言い切る。

週に一度、渋谷・道玄坂のFIGHTCLUB428で行われる練習に対して、岩﨑自身は「指導でなく、一緒に稽古し私も得られるものが非常に多い」と捉えている。

「でも、実際に練習をMMA選手が見ても『何をやっているんだ?』って分かってもらえないことが多いだろうし、バカにされることもあると思います。実際『そんな時間があったら、違う練習をしたら』とも言われました」と平本。

FIGHTCLUBで行われる稽古は、実に地味だ。組手になるとさすが、特に実弟の丈を相手にした時は打撃の勢いはさすがとしか言いようがなく、目を見張るものがある。とはいえ、それはキックボクシングを忘れないために必要なことであって、武術空手を採り入れるための地ならしのようなモノだ。

数センチの誤差、特に重視されるのは自ら攻撃したあとの姿勢と位置取り。MMAだからといって平本が組み技を駆使する必要はない。もちろんレスリングも柔術も練習は必要だ。ただし、試合で出さなくても構わない。

組み技の練習の成果は必要に応じて出てくるものであって、組み技ありきで試合に臨むと、平本の最大の強味である打撃が生かせず、相手の間になっている。

そんな思考の修正から両者の稽古は始まり、今は姿勢と距離に取り組んでいる。平本は「実はボクシンググローブからMMAグローブに変わった時から、素手を意識するようになっていました。だから空手に興味を持って。岩﨑先生の話を聞いて、全てが理解できているわけでもないし、型をやっても分からないことばかりです。でも、長い間『打撃はできるでしょ。自分でやって』という感じで、教えてもらえることがなかった。そんな僕が、ダメだしをしてもらえる感覚は本当に久しぶりです」と地味な動作を繰り返す。

対して岩﨑は「武術、空手に興味を持ってもらっても依存しちゃいけない。あくまでも平本蓮の打撃をMMAで使えるための修正であり、空手といっても空手なんてやる必要はない。平本蓮として戦えば良いんです」と、武術空手の位置づけが明確にできている。

次戦に向け、平本はMMAファイターとして、弥益がどれだけ格上かも理解してなお「今回はこれまで違って、煽って自分の気持ちを上げて戦うという精神でなく、ひたすら練習の成果が出せるか楽しみなんです」と言う。対して岩﨑は「畏れる者が勝つ試合になる。そういう意味で弥益選手は手強いです」と言い切った。

「内側」、「目に見えないもの」、「間」、「先」という言葉が普通に出てくる平本蓮。彼が武術空手の理をいかに学び、MMA──自らの打撃に生かそうとしているのか──。

※その詳細は10月28日発売のFight&Life#93に掲載される平本蓮×岩﨑達也対談で確認を。

The post 【RIZIN LANDMARK04】弥益ドミネーター聡志と対戦、平本蓮が武術空手を学ぶ理由。「素手の感覚」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
DEEP MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK04 キック 剛毅會 岩﨑達也 平本蓮 弥益ドミネーター聡志 松嶋こよみ 武術空手 牛久絢太郎

【RIZIN LANDMARK04】ランドマークが初ケージ大会。武の理を学ぶ平本蓮が、弥益ドミネーター戦へ

【写真】基本稽古から平本が何を得ているのか、非常に気になるところだ(C)MMAPLANET

昨日25日(日)、RIZIN FFより11月6日(日)に名古屋市中区のドルフィンズアリーナで「RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA」の開催と、同大会で弥益ドミネーター聡志✖平本蓮のフェザー級マッチが組まれることが発表された。

今大会はRIZIN LANDMARKとして初のケージ使用大会となる。今年3月のLANDMARK出場時にも平本はケージでのファイトを要望していたが、ついに国内いやキャリア初の金網での実戦を戦うことになった。


対戦相手の弥益、すっかりRIZINに欠かせない存在となったファイターにとっても、今回の試合は2年2カ月ぶりのケージMMAとなる。

キャリア4戦目、戦績1勝2敗の平本は以前から弥益戦を熱望していたが、元DEEPフェザー級王者は現DEEP&RIZIN二冠王者である牛久絢太郎に敗れてベルトを失ったとはいえ、勝つチャンスも十分にあった実力者。平本にとっては過去最強の相手になることは間違いない。

シャッフル打撃&確かなケージグラップリングの強さを持つ弥益に対し、平本がどれだけ熱望した金網でMMAファイターとして完成度が上がったことを証明できるのか。と同時にMMAだからMMAを戦うという思考でなく、持ち味の打撃を最大限に生かすスタイルに移行した平本は現在、剛毅會空手の岩﨑達也氏に武術空手の指導を受けている。

今年の4月に一度、平本は松嶋こよみとT-GRIPの剛毅會プロ練で手合わせをしたのをきっかけに、GENに岩﨑達也氏を招き、その格闘論に興味を持った。

岩﨑氏によると「平本君は素直。そして考えて、武術の理をMMAに生かそうとしています。と同時に素直過ぎて、空手により過ぎることもあるので、週によってキック寄りの日、空手寄りの日というふうに稽古をしている」とのこと。

実際に移動稽古を立ち合いに生かすために活用し、基本稽古も行う姿がFight Club渋谷で確認されている。果たして、あの平本のMMAの完成に武術の理がどう生かさせるのか──という楽しみもあるが、それを確認するには厳しすぎる弥益とのマッチアップといえる。

The post 【RIZIN LANDMARK04】ランドマークが初ケージ大会。武の理を学ぶ平本蓮が、弥益ドミネーター戦へ first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
Bu et Sports de combat ONE160 タン・カイ タン・リー ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。タン・カイ✖タン・リー「恋愛と同じ」

【写真】飛び込んで、打たれる。なぜ、タン・リーはタン・カイを相手にそのような動きを繰り返すことになったのか…… (C)ONE

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たタン・カイ✖タン・リー戦とは?!


──教え子の松嶋こよみ選手が離脱したONEフェザー級戦線、その世界戦ですが非常に興味深い顔合わせでした。

「ハイ。それだけにタン・リーにガッカリでした。どうしてしまったのか。対して、タン・カイは良い意味で狡猾でした。ホント感心させられました」

──まずタン・リーがオーソに構えて、左足をカーフで壊されました。なぜ、最初からサウスポーでいかなかったのか。

「確かに左の蹴りが良い選手ですが……。あの試合だけ見ると、その良さやそもそもどのような選手だったのかを忘れてしまうほど、崩れていました。それだけ動きが冴えなかったです」

──左ミドルで踏み込んでからスイッチして追いつき、あるいは右フックなど注目していた攻撃が見らなかったです。

「追わされました。タン・カイが追わせて戦っていた。恋愛と同じでね、追うより追わせた方の勝ちです(笑)。試合は追った方が不利。それだけ追うのは難しいんですよ。タン・カイはそれをやらせました。

そしてタン・リーは自分を見失った。ダニエル・ウィリアムスとツオロンチャアシーとの試合のツオロンチャアシーと同じで、どういう理由を持ってその攻撃に出ていたのか。そういう動きに終始してしまいましたね。

あのテイクダウン狙いやバック狙いなど、懸命だったのは伝わってきましたが、理もなくタン・リーは動いていたように見えました」

──タン・カイは相手を見て、右でも左でも倒せる。それにしても入ってきたタン・リーに当てる攻撃は見事でした。

「上手いです。もともとカウンターは上手いですが、今回はそこにサークリングが加わっていました。タン・リーを中心にして円を描くという動きをタン・カイが続けていました。一つ言えるのは、攻防としてタン・リーが打つ。タン・カイが返す。ここで終わっていたということです。

そうなると返した方が有利になる一方です。タン・リーが打って、打たれて、また打っていく。そこまで続けると、タン・カイも攻撃を止めることができずに、次の局面というものが生まれていたはずです。

ただし、この試合はソレが最後までなかったです。タン・カイはマネージメントがデキていましたね。武術的にMMAを捉えると、その部分は私も弱いところなので参考になりました」

──それはどういう部分で、ですか。

「試合だから、勝てば良いという部分で参考にしたいのですが、それはあくまでも試合に勝つという前提があってのことで、全面的に良いわけではないことを前提にして──。3Rからもうタン・カイは手を抜き始めましたね。無理にいかない。無理しない。それは現実問題として、そういうことも試合中は必要なのかと思います。

同時にマネージメントができた。だから良かったという結果論になります。ではマネージメントができない状況に陥ったら、どうなったのかと」

──ならなかったので結果論として、良しということですね。

「そういうことです。つまりタン・カイはタン・リーに対して、余裕があったということですね。タン・リーはもっと制空権が深く、相手が入ってきたところに攻撃を入れるというイメージがありましたけど、全くなかったです」

──ハイ。だからこそタン・リーが、来ないタン・カイを相手にしてどのように詰めるかという楽しみがあったのですが……。タン・カイは来ないばかりか回り、タン・リーは自らの戦いがまるでできなくなった。あそこでタン・リーも行かないという選択は、あり得ますか。

「試合ですから、全く行かないということはできないでしょう。ただし、タン・リーが出ないとなるとタン・カイが行かないといけなくなる。つまりは先の取り合いなんです。先が取れないで入っていくと、食らいます。

タン・リーは今回、先が取れていなかった。ブランドン・モレノ×カイ・カラフランス戦でモレノは先を取れていました。あの両手の動きで先が取れているので、自分から攻めることができます。対してタン・リーは、先が取れる動きがなかった。本当に少しのことで、ここは変わります。少し右足を引くとか、それだけでタン・カイを反応させる。そういう動きが見られなかったです。

同時にカーフを効かされたことは大きいです。

その影響が出たのか、タン・リーの動きをするというよりも、タン・カイにやられない動きに終始していました。本来は相手のことなどお構いなしに自分勝手に蹴って、殴る選手なのに。だからタン・リーの試合では、ミドルを蹴っているのにヒザが顔面に入るKO勝ちなどが生まれました」

──タン・リーは居着いていたということでしょうか。

「そうですね。居着いていると言って良いかもしれないです。居着くというのは色々な意味がありますが、その一つに受けに回っているということがあります。受けて何かをすることを居着いているとも言いますからね。相手の動きを第一に考えて、自分軸で動かない。良い時は自分の動き、自分軸で戦っています。

それが良くいわれる見えない部分での主導権の奪い合いで、今回はタン・カイが主導権を握ったということです。見える部分でジャブが当たった、蹴りが当たったというのは結果論でしかなくて。武術的に質量などを踏まえて考察していくと、エネルギー的に主導権をどちらが握っているかということになります。

ただし主導権を握っているのに、パッと離してしまう選手もいます。試合は結果論を得るために戦うので、主導権を握っていることが分からなくなることが選手には往々にしてあるんです。そこを指導の現場で指摘することが、指導者としての役割だと心得ています。

つまりタン・カイは行かない部分を含めて、自分のペースを守り切った。そこは考えさせられる部分でした。あと、やはりONEの裁定基準という部分は大きいかと思います。2度ダウンを奪ってもラウンドマストの5回戦だと、あと1つはラウンドを取らないといけない。でも、ONEなら2度ニアフィニッシュがあれば、もう何もさせなければ勝てます。フィニッシュを狙わせる裁定基準の裏をいった──タン・カイのマネージメント能力でした」

The post 【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。タン・カイ✖タン・リー「恋愛と同じ」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o UFC デメトリウス・ジョンソン ドミニク・クルーズ ナイファンチ ナイファンチン マルロン・ヴェラ ユライア・フェイバー 剛毅會 岩﨑達也 松嶋こよみ 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ヴェラ✖ドミニク「いけないオンパレード」

【写真】ドミニクはドミニクであろうとし、ヴェラに敗れた (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たマルロン・ヴェラ✖ドミニク・クルーズ戦とは?!


──マルロン・ヴェラ×ドミニク・クルーズ。一つの時代が終わった。そんな印象のドミニクのKO負けでした。

「その一時代を築いたドミニク・クルーズのことをリスペクトされているようですが、私はこの試合だけに限って話をさせていただくと……戦いとしてやってはいけないことばかりのオンパレードでした。

これは止めましょうというオンパレードです。動くために動いている。その動きが、1Rの2分過ぎでピタッと止まってしまっていました。バテてしまったのですかね」

──あの時間帯で背中が光るほど汗が出る。過去になかったかと思います。

「とにかくあれだけ体が浮いてしまうと、自分の攻撃は全てが軽くなりますし、相手の攻撃を被弾すると効いてしまいます。対してヴェラがどっしり構えていつでも倒せるぞという戦いをしていれば、早々にパンチで倒せていたと思います。でも、そうでもなくのんびり構えていましたね。もっと早く倒せたはずですが、エンジンの掛かりが遅かった。

ただ、この試合はドミニク・クルーズがマルロン・ヴェラにKO負けしたというよりも、ドミニク・クルーズが自爆した。そういう試合だったと思います」

──もうドミニクが、ドミニクではなかった。だから岩﨑さんの指摘は正しいのでしょう。それでも、ドミニクをぶった切られると良い気分はしないです。正直。

「それは、松嶋こよみ師範代も言っていましたよ。『この試合だけでなく、ドミニクのWEC時代やUFCでのデメトリウス・ジョンソン戦、ユライア・フェイバー戦を見て評価してください』って。そんなもん、いくら昔が凄かろうが今、負けていたらどうしようもない。基本に戻る必要があるんだって言っても、師範代は納得しないんですよ(苦笑)」

──それはそうですよ。ドミニクが基本通りの動きをして、ファイター人生の余生を永らえるなんて見たくもないです。もうドミニクではなかったかもしれないけど、ドミニクはドミニクであろうとして散ったんです。昔、凄かった。そう言われる選手が、どれだけMMAに存在しているでしょうか。

「アハハハハハ。いやぁ、それだけ愛されるって凄い選手なんでしょうね。あなたもそうだし師範代もそう。相当にリスペクトされているドミニクですけど、私はガーブラントにやられた時ぐらいからしか見ていないので。逆にどう凄かったのでしょうか」

──この試合でいえばドミニクっぽくはありました。ただし、前の動きも後ろへの動きももうドミニクではなくなっていた。前に関しては、あそこで止まるならそりゃパンチを合わされるよなと思います。

「つまりは、あそこでは止まっていなかったということですね。もっと遠かったということですか」

──遠いというよりも、近づいても遠くなる。前に出るなら相手の横を通り抜けて、攻撃を受ける位置にはいないぐらいで。当てた時も、その場にはいない。そして相手を翻弄してテイクダウンを奪っていた。それと下がる動きが、まさに変幻自在でした。

「そこまでだったのですね。下がれるのは凄いことです……MMAを戦ううえで。そして自分の攻撃を当てることができていたのは。ただし、この試合では下がった時のステップが、足がバッテンになるんですよね。アレは絶対にやってはいけないです」

──足がクロスするということですね。

「縦のバッテンと横のバッテンがあって、縦のバッテンがあると歩幅が狭くなってしまって。あれではすぐに相手の距離になってしまいます。バランシングといって、歩幅は一定で横に動くことが必要で。でも、クロスしてしまっていますからね。そこでパンチを貰うと、非常に効きます。最後は横のバッテンなんですよ。あのステップになると、相手が見えなくなります。だから、そのためにナイファンチンの型稽古があります。

足がクロスした時にも、相手を見られるようになるためには。そういう部分もナイファンチンにはあるんです。でも話を伺う限り、以前はあのステップでも攻撃を貰わなかったのでしょうね」

──ハイ。以前は、その足がクロスするステップでも相手の攻撃を受けなかったです。まさに唯一無二の存在でした。

「そこまでできていたことが、できなくなる。それはなぜ、デキていたのかが分かっていないとデキなくなりますよね」

──……。誰もできない動きをしていた。だから、靭帯を負傷したのかもしれないです。

「そういうことだと思いますよ。人間として、やるべきではない動きで負荷が掛かっていたのでしょう。ただですね、指導者として見るとドミニク・クルーズは人ができないことができたファイターということだけで、もう放っておいて構わない選手です。それだけ才能がある選手ですから。

でも才能がない人は真似をしてはいけないです。だから基本があって、そこが大切になってくる。基本を身に着けたうえで、応用をやる。ドミニク・クルーズのような才能がある人間は、ほぼ存在していないんですよ。

昔、私が指導していた人間でドミニクの真似をして、全くダメになった人がいたんです。蹴りが凄く強くて、その蹴りを伸ばそうと練習をしてきたのにドミニクに感化されて。全くバラバラになりました。

ドミニクを真似るなら、そういう分かりやすい部分ではなくて──相手の動きが見えているところや……きっとそれって、相手の動きを予見して当たらない方向に動いていたんだと思います。その動きをするためには、徹底的な反復練習が必要だったはずです。そういう部分を真似て欲しい。そういうことなんです」

The post 【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ヴェラ✖ドミニク「いけないオンパレード」 first appeared on MMAPLANET.