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Bu et Sports de combat K-1 MMA MMAPLANET o Special ブログ 剛毅會 岩﨑達也 平本丈 武術空手 飴山聖也

【Bu et Sports de combat】武術的観点で見るMMA。飴山聖也✖平本丈「平本蓮に皆、惑わされている」

【写真】前傾姿勢で、腕だけが下がっている。これは危ない (C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た飴山聖也✖平本丈戦とは。


──平本蓮選手の弟ということで、必要以上に注目を集める環境にある平本丈選手。剛毅會の稽古も、昨年の夏以降続けてきた丈選手が、アマ2戦目でKO負けを喫しました。

「空手というのは型しかない。空手流で戦うというのは、型を形にしないといけない。型は皆、同じなんです。ただし形は人それぞれ、全部違います。平本蓮のことを空手、空手という風に言われている現状がありますが、やり始めて1年も経っていない人間の戦いが、空手にはならないです」

──蓮選手は岩﨑流MMA打撃術として、昨年11月は勝った。それが個人的な理解です。

「岩﨑流MMA打撃術とは何ですか──と問われると、源泉は間違いなく空手であり、意拳が加わっている。そして型を形にしないといけないという点において、平本蓮はある程度形ができているんです。だから指導者としては、平本蓮の場合は彼の形をアレンジするだけで良かった。

既に平本蓮というストライカーが存在しているので。ただし平本丈にしても佐藤フミヤにしても、形がまだできていない。一から空手をやり、型をやってきたわけでない2人が、武術空手を生かして勝つための稽古をしている。先ほども言ったように平本蓮にはある程度の形があった。

その形がない平本丈は限られた時間と相手が決まった中で戦うにはフォーマットを確立しておらず、どのように戦えば良いのか分からない部分がまだあります。今回の丈は打撃のフォーマットができていないということです。形ができない。そして、こういう過程を経てフォーマットができていく。

それは空手でなくても、どの選手にも当てはまることだと思います。平本蓮にしてもキッズの時からやって、負けを経験してフォーマットができてきました。丈は打撃に特化したMMAファイターでなく、ウェルラウンダーになるかもしれない。形って、結果論なんです。自分がどうしたいとか、指導者に言われたから──でなく、結果、こうなるという。結果として蓮はあの形に現時点でなっている。

対して丈は、その結果がでるまでやっていない。だから全然定まっていない。ただ言えることはパンチにしても、蹴りにしても才能はある意味、兄貴以上にあるんですよ。本当に」

──これ、喧嘩を売っているわけでなく、本当に確認したいからなのですが──そうなると、試合で結果を残すにはガードをしてキックボクシング&テイクダウンという戦いの方が手っ取り早くないですか。形ができていないのなら、手を下げて見切るよりも。

「その通りです。喧嘩を売るどころか、私も同じことを丈に言いました。平本蓮のローガードに、皆惑わされてしまっているんです。平本蓮の打撃はK-1じゃないです。お父さんの指導を受けたボクシングです。これがしっかりしているから、後はアレンジをすれば良いんです。

これはネタばからしでも、何でもない。次の試合もボクシングで戦えば良い。今後、平本蓮がどうなっていこうか、ボクシングという部分ではMMAでも世界と戦えます。丈は蓮の影響を受けている。だから弥益選手に勝った平本蓮の姿が絶対で。『それは違うよ。そうじゃないぞ』とは言っているんですけどね。これからしっかりとやらせますよ」

──手を下げているから剛毅會ということではない、と。

「まぁ、そう言われてもしょうがないですけどね。下げた方が良いところもあります。でも下げて殴れないならね……」

──ならキックボクシングで戦った方が、安全だったのかと。

「そのMMA用のキックボクシングの煮詰め方がまだ甘いんですよ」

──いやデビュー前の選手ですし、MMAを始めて間もないのですから煮詰め方は皆が甘い。そのなかで戦っていくなかで、即効性があるのが武術空手の叡智を生かすよりも、キックボクシングのアレンジなのではないかと思った次第です。いや、ここまで話を伺うと武術空手の英知ではなく、弥益戦の平本蓮の戦い方をするよりも──ですね

「大体、平本蓮の形だって昨年11月の弥益選手との試合と同じではないですからね。あんなこと、今回はやらないですから」

──いや、これからの試合についてのことは書けないですよ(苦笑)。

「いや、書いて構いませんよ。あんなことを次の試合でやるのはダメなんだから。アレじゃダメなので。ダメなモノはダメ。言うと、もっと良くなるってことなんですよ。弥益選手に勝った平本蓮で良しとするなら、それ以上良くならない。ダメだ、違うっていうから強くなる。

だから丈だってそういうことなんです。今回の負けがあったから、こういうことがあって見なおせる。それがアマチュアという試合で、プロになってからのレコードに関係ないところでやっているんで。丈やフミヤは型や基本稽古、站椿もしっかりとやっています。それは憧れの兄貴、大好きな先輩である蓮が一生懸命に取り組んでいるから。

だからこそ丈の今回の負けは、意味があります。これから平本丈の形ができて、強くなっていくためにも。その無限の可能性が、型にはあるんです。」

──いやぁ、インタビューの締め方も上達して、無限の可能性を感じますよ(笑)。

「アハハハ。それと一つ、言及させてください。丈の相手をしてくれた飴山選手、良い選手でした。凄く、これからが楽しみな選手だと思います。

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o ONE UAEW UFC   キック ボクシング ヴィニシウス・ジ・オリヴェイラ 剛毅會 吉野光 岩﨑達也 平本蓮 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。オリヴェイラ✖吉野光「組と打の回転力」

【写真】組んで攻勢に出られない時、打撃は必要。打撃があれば組みのアドバンテージが増える。これが組み技ベースのMMAではあるのだが、レスラーがジャブだけ勝つのもMMA (C)UAEW

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たヴィニシウス・ジ・オリヴェイラ✖吉野光戦とは。


──質量や間という武術的要素でMMAを見た場合、打撃だけでなく組みの展開にもあると思います。吉野選手は胸を合わせた状態からの小外、大内、そして払い腰という投げに絶対的な自信を持っている選手で。

「では、なぜ組みを続けることができなかったのか。もう、その一点に尽きるかと思います」

──思うに最初にテイクダウンをした後に立たれた。そして組んで倒せない展開があった。そこから組み疲れを考えたのではないかと。そうなると組みの選手の質量も落ちるのでしょうか。

「まず組みの回転数と打撃の回転数は別モノです。打撃の人間が組みの練習をすると打撃が劣化する。取返しがつかないほど劣化してしまう。ただし、MMAには組み技は当然のように存在しており、その対処も必要です。試合で組み技を使わない選手でも、組み技、寝技の練習は欠かせない。と同時に打撃を劣化させない必要性を最近は感じるようになってきました。打撃を劣化させない方法論は、あります。分かっています。だから最近指導している立ち技からMMAに転向してきた選手にはボクシング、キックボクシングのつもりでMMAを戦えと言っています。もちろん組みを対処できるうえで。

対して吉野選手は、組みの選手なのでしょうが打撃にセンスの良さを感じました。よく見えているし、動きも良い。だから、その目や動きがあるのだから得意の組みに行けば良かったのにと思いました。センスがあっても、打撃ができているわけではないので。相手の打撃に対して、打撃でなく組みで戦えば彼の回転数は上がる。そうなると、質量も大きくなります。回転数が質量を生むので。

その回転ですが、組み技はトルクで馬力を生む。対して、打撃は重力に逆らわずにそこを生かす戦い方が必要になります。

ボクシングとキック、レスリングと柔道の回転数は違っているので、ミックスする方法論はほぼ存在していないです。この2つの回転を両立させるのは、本当に難しいです。だから型が大切なんですよ。型には両方が養える」

──そして、吉野選手は組みで戦うべきだったと。

「吉野選手は序盤で、打撃のセンスがあるとすぐに分かりました。それはセンスという部分で。見えているし、動きも良い。でも、だからといって相手を倒せる決め手を持っているわけではないです。それに相手のオリヴェイラの打撃は、バーリトゥードの時のような打撃ですよね。粗い。だからこそ、世界で戦うという意志を持っているのであれば、あの精度の選手とは打撃で張り合えないと。

以前からMMAは寝技ができないと、『倒されてお終い』という風に言われてきました。今、レスリングやスクランブルができないと、『MMAでは勝てない』と言われます。それはそうでしょう。ただし、打撃ができない人はいくらでも戦っていますよね。なぜ、打撃で戦えるようにはしないのですか。

組み技と寝技で戦えるようにならないといけないのに。無暗に打ち合えってことじゃないですよ。打撃で攻防ができて、引かないで戦う。それはレスリングやグラップリングと同じことじゃないでしょうか。打撃で引いたら、世界では勝てないですよ。組みで引くと『ダメだ。引いちゃいけない』という正論が飛び交うのに、打撃は引いても良いのかと。

スクランブルで引くとバックを許し、あるいは下になって不利になりますよね。それは打撃も同じで。顔を殴られて、引いていちゃ勝てないって。平本蓮とスパーリングをして、ボコられている子がいました。そうしたら練習仲間が、『あの子は打撃ができないから、もっとやさしくしてください』って。

バカやろう、打撃ができないで何でMMAをやっているんだよって」

──ほとんどビートたけしの突っ込みじゃないですか(笑)。

「いや、だってホイス・グレイシーの時代だと打撃ができなくても勝てたかもしれないですよ。でも、今、打撃ができないでUFCで勝てますか? ONEで勝てますかって。でも、そのやさしくしてやってと言われた選手、試合を見ると良い左を持っていましたよ。良いモノを持っていても、練習しないと。優しくしていて、レスリングや柔術は強くなれるんですか」

──打撃はケガやダメージに直結する。だから、練習はより安全に行わないといけない。ただし、打撃ができないと上の舞台では勝てないのも確かです。

「致命的に打撃ができないのに、打撃をやらない」

──組みで勝つということかと。

「じゃあ、どこまでそれで勝てるのってことになっちゃいますよ。だって打撃の人間が、打撃だけやっていたらダメ出し食らうじゃないですか。もちろん、そうじゃない道場やジムの指導者もいると思います。打撃ができないと、勝てないよっていう。それでも、打撃を疎かにしていないかなって感じることは、試合を見ていても多々あります。

シャドーの段階から、自分より打撃が強くて、殺しに来ているという意識を持って練習している選手がどれだけいるのか。そういうことなんですよ。寝技の打ち込みも、動く相手を想定しているのと、ただ機械的に動くのとでは違うと思うんですよ。

そういう部分では、吉野選手はまた違っていて。彼はセンスが良いから、打撃ができていないという認識はそれほどないのかもしれないですね。これまでは、それで勝ててきたから。で、得意分野の組みで思い通りにならなかったから打撃戦をやってしまった。

日本人が国内に留まらず。アラブに行って戦う。UAEWで戦うという姿勢は素晴らしいです。だからこそ、自分の特性を生かして戦ってほしいですね。そして、とっかかりの部分でしっかりと打撃を学んでほしいと感じました」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o UFC UFC285 アレクサ・グラッソ キック タイラ・サントス ボクシング ライカ ヴァレンチーナ・シェフチェンコ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。グラッソ✖シェフチェンコ「居着く、2種」

【写真】ストライカーが、テイクダウンで攻めてはいけないのか……。MMAとは……。武術とは……。戦いとは…… (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

武術的観点に立って見たアレクサ・グラッソ✖ヴァレンチーナ・シェフチェンコとは。


──無敵のシェフチェンコが、まさかの一本負けでタイトルを失いました。

「居着いているとは何か。居着くという言葉自体は有名ですが、武術空手である剛毅會流では……車でいえばエンジンを切ってしまっている状態をいいます」

──相手の攻撃をまず考え、相手に合わせて自分の戦いができていない状態をではなく?

「その通りです。それで受けに回っている状態も居着くといいます。それとエンジンが切れた状態です。この試合でなくても質量が高いのに、居着いてしまって相手に中に入られるということはあります。この試合でも立って構えていると、質量が高いのはシェフチェンコです。でも中が止まってしまっている。グラッソは何から何まで、全部間違っているのに居着いていない。そういうことに関係なく、勢いがあって動いている。居着いて、中身が止まっているときに回転力のある攻撃をされると本当に危ないです」

──組みでも優勢ではあったのですが、打撃より組みが目立ったシェフチェンコでした。

「打撃は劣化します。同様にレスリングの強い選手が、MMAに転向するとレスリングだけの部分は劣化する。それはどうしようもないことです」

──去年の6月の防衛戦でタイラ・サントスの組みに苦戦し、打撃から組みに切り替えてスプリット判定勝ちという試合がありました。あそこで何か、シェフチェンコは変わったのか。

「そこなんです。そういう試合をしているのに、試合前に日本に来ていた。なぜ、なんだと思いませんでしたか」

──シェフチェンコはパラエストラ柏の練習で本当に強かったですよ。

「それは日本だからですよ。自分が最強の状態で練習していると、劣化してしまいます。ここがMMAの難しさですね。打撃でなく、組みで攻めると打撃は劣化しますぜって話です。ボクシングならボクシング、キックならキックでもこれしかできないというところが劣化する。そして、MMAはその劣化を防ぐ方法論が見当たらないです。

シェフチェンコの場合は素晴らしい打撃の使い手ですが、そうでない選手も組みがあるから打撃が上手にならない。なので打撃をやるMMAと、MMAをやるMMAはここからスパッと分かれていくような気がします。私は今、打撃の人間を指導していますが『MMAをやるな。打撃をやりなさい』としかいえなくて、そこをフィーチャーしたことをやっています。打撃が劣化して、組みにいってもどうなるのか──ということです」

──シェフチェンコに関しては組みで試合を優勢に進めていたと思います。

「でも結果的に負けているじゃないですか」

──それはあそこでスピニングバックキックを出して、バックを取られたからではないでしょうか。結果論ですが、組みだけでいけば後ろを見せることもなかったかと。

「だったら組みの練習をしっかりとやるべきです。そこにしても、居着いているので銅像と同じですよ。グラッソは手を出せば当たるのだから、そんな状態で組みに行ってもそれも居着いていると思いますよ」

──相手の攻撃有りきで組んでいたので。

「ハイ。居着いていないレスリングと、居着いてよっこいしょで動くレスリングは違いますし。だいたいガードワークが上手いグラッソにテイクダウンをすることが、戦術的にどうだかってことですよね。とはいっても、それはMMA的には間違っていない」

──その通りで3Rまでのスコアは29-28で取っている。なら間違いではないかと。

「打撃が上手く行かない。なら組みだというのは全然間違っていない。その一方で打撃がダメなことをどのように考えるのか。どの試合でも、MMAは離れた状態から始まります。胸を合わせてとか、相手が下なってという状況からは始まりません。

打撃がダメということは、先を取られていることが十分に考えられます。後手に回ったテイクダウン……でもMMAとしては間違っていない。いやぁ難しいですよ。もちろん、ストライカーも組みの練習は必要で、死ぬほどやらないといけないでしょう。でも、それを試合でわざわざ使う必要はない。

戦いとMMAは違うなぁと、改めて思います。右足前、左手で殴るのが一番の武器の選手が、それだけとシングルレッグに入られる。だから、左足前で戦った。テイクダウンされないよう戦うのも選択肢の一つです。ただし結局はテイクダウンされた。それは先が取れていないから。自分の得意な攻撃を優先すると、先を取れてテイクダウンされなかったかもしれない。勿論そうならない時もある。MMAでは前者を選択することも間違っていない」

──それでいて、MMAもルールがある戦いです。

「そう。だから難しい。いずれにしてもシェフチェンコは相手の選手がやられて嫌なことを考えないと。グラッソはパンチ、蹴りが嫌だった。それなのにシェフチェンコは構えたまま止まっていました。回転が掛かっていない。打撃で良い練習ができていなかったのでしょう。行かないと殺されると思えば、自分から行くはずです。

でも、自分より格下の選手との練習は受けて返すということができてしまう。この出来てしまっているという感覚が稽古に体に染みつくことは厄介です。やられて、どうすれば良いのか考える稽古の方が、良い稽古で」

──う~ん、稽古と練習の違いでしょうか。やられてばかりで、攻めるイメージができていないと試合には向かないとも考えられます。

「もちろん、そこも必要です。ただし、練習であっても最悪な状況を想定しないと。居着いた状態で受けて何かしようとすると、後手に回るので。受けて何をするのか、スポーツ……格闘競技は受け返しが成立するようになります。本来は相手を動かファイトのチェフチェンコが、組んで倒したとしてもグラッソに動かされていた試合になってしまいます。それが居着いているということです。

動かしているのと、動かされているのでは、同じ技を出しても違います。正直、立った状態では大した取り柄のない相手選手にシェフチェンコは動かされていた。普通に殴って、蹴ればグラッソは嫌だったはずなのに。ただし、グラッソには回転力とスピードがあった。そこと攻防する打撃の練習ができていなかったのではないかと思います。

と同時にね、どれだけ強い選手──シェフチェンコのような選手も、どこまで自分を律し続けることができるのか。チャレンジャーだった時と、今は違ってきて然りです。彼女が今より良くなりたいと思っているのか。そういう意味では、1階級上のバンタム級王座に挑みたいという気持ちがあるなら、その時はまた違ったシェフチェンコが見られるのではないかと思います。

私は正直、女子のMMAは余り見ていなかったのですが、シェフチェンコの試合はチェックしてきたんです。それだけ素晴らしい選手なのに、今回は銅像のように見えてしまいました」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o UFC UFC283 カイ・カラフランス デイヴィソン・フィゲイレド ブランドン・モレノ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

お蔵入り厳禁【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。モレノ✖フェゲイレド「受けのため」

【写真】一見、激しい打撃戦に見えて──その実は (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

お蔵入り厳禁。武術的観点に立って見たブランドン・モレノ✖デイヴィソン・フィゲイレド戦とは。


──モレノ✖フィゲイレド、かなり観客席も沸いていたのですが、正直なところ4度目になるとこうなってしまうのかという試合に感じました。

「今回のモレノは構えが小さ過ぎました。顔を覆って、ガードをしていた。結果、空間が狭くなっていました。ただし、フィゲイレドの打撃は中間距離での打ち合いが全然ダメで。入ってきたところに合わせるアッパーは良いけど、自分から打ちに行くジャブ、ワンツーが全部悪い。

フィゲイレドの構えは、半開きになっていて横のラインがガラ空きなんです。正対している時は横のラインには強くて、縦のラインには少し弱い。それが半身に切った構え、斜めだと横の空間が細くなって相手のフック系のパンチ等が入りやすくなる

対してモレノの構えはパンチを意識して、受けのための構え。防御のための構えになっています。暫定王座戦でカイ・カラフランスと試合をした時は、私が追求している夫婦手での連動が見られ素晴らしかったです。夫婦手をきかせて捌き、返すことができていました。しかし、今回の試合は構えが凄く悪かったです。すっごい悪い。だから間が全てフィゲイレドになっていました」

──夫婦手をきかす。それこそが、攻防一体の動きですね。

「解説の水垣(偉弥)さんが、右の振りが大きいと言われていましたが、その通りでした。何の取り柄もないフックを振りまわして。なんで、カイ・カラフランスの時とこうも違うのか。顔面を殴られたくないという意識が大き過ぎたのかと思いました」

──自分は打撃だけでなく、パンチも含めて過去3試合のしんどさが影響して、もうああいう勝負をしたくないという意識が働いているのかという風に見えてしまいました。でも、まぁ打撃を出して客は騒いでお金は貰える。だけど打撃も組みも我慢や粘りがなかった。

「そう言われると、もうしんどいことはしたくない風な組みでもありましたね。殴られたくないと同じ、しんどいことをしたくない。簡単に下になってスクランブルがなかったです。まぁ人間なんてやる気満々で死力を尽くして戦えるって──そう長く続くとも限らない。そういうことかもしれないですねぇ。でも、お金は欲しいと(笑)。

モレノにしても、やっと掴んだチャンス。こんな場は一生に一度しかないっていう時とは、精神面が違って然りです。タイトルマッチで同じ相手と4度も戦うと、そうなりますよ。でも、最後だけ捌きからの左フックなんです。左ミドルを捌いて左フック、これは空手の動きに通じます。モレノに空手の概念があるかどうは分からないのですが(苦笑)。

しかもロングレンジから、もの凄い勢いで飛び込んで当てました。親指側が当たっている微妙なヒットの仕方でしたけどね」

──MMAグローブで親指側が当たるのは、打つ方として危なくないでしょうか。

「あれは鍛えていないと、自分の指がいくことはあります。それに握った拳が目に当たって文句をいうフィゲイレドは、お門違いです。そもそも、あんな風に痛さが顔に出てしまうと、その時点で一本負けです。

あの場面はどうしても当たったところが注目されがちですが、あの左ミドルを捌いた動きからの左フック、当たる前の動きが番素晴らしかった。そこに注目してほしいですね。一番重要なポイントです」

──つまりは攻防一体の動きが見られたわけですね。

「そうです。この試合で、モレノはずっとガードとパンチがバラバラでした。厳密にいうと捌いて→反撃というのは、武術的には攻防一体とはいえない技です」

──防御した時が、攻撃になっているのが武術で。

「ハイ。ただし、MMAで勝つために武術を生かすということで、競技のなかでは存在する──そういう技で。それでも、あの左フックは入魂の一撃でした。あとは全部、右を振りまわしてばかりで。あれを早く使えよ──と。カイ・カラフランスを倒した三角蹴りも、今回はバラバラでしたね。カイ・カラフランスには、それだけ打撃のプレッシャーがなかったから出来ていた。そんなにキツい戦いはしたくないと思うのであれば、カイ・カラフランスに見せた動きで戦えば良かった。

上手に戦いたいなら、手と足の連動や攻防一体という動きをすべきです。あれだけガードを意識すると、相手との衝突が増えますからね。衝突して返すという動きではなくて、相手の圧力が強いから捌いて返す方が効果的だったかと思います。ただし、勝ったから。何が良いのか、悪いのかはなかなか分からないところですよ。勝ったら、『これで良かった『』となりますしね。

でもモレノはガードで本当にパンチ力のある相手と戦うと、ガード越しに距離を取られてしまいます。パンチへの守りの態勢ができてしまっていて、逆に回し蹴りやヒザ蹴り、テイクダウンをズバッと入られる。違う攻撃の餌食になってしまいます」

──相手有りきになっていると。

「ハイ。受けてから、何かしようとしていました。それが最後のところではフィゲイレドに左ミドルを蹴らせて、ソレを捌いて左フックと自分からの動きだったんです。先手を取っての受け──でしたね。ここ以外は受けてからの攻撃だったので、先手を取られている。そんな風に取らせる必要はなかったと思います。

戦いは必要以上に強いと思うと、それはそれで計算間違いを起こすことがあります。と同時に、だから良かったとなる場合もある。ここまで強い人同士の戦いになると、計算云々ではなくなってくる。そして考えれば、考えるほどMMAと戦いの間に違いが存在している。そんな風なことを考えるようになりました」

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Bu et Sports de combat MMA MMAPLANET o ONE UFC アレックス・ポアタン・ペレイラ イスラエル・アデサニャ キック ボクシング 剛毅會 岩﨑達也 平本蓮 武術空手

お蔵入り厳禁【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ポアタン✖アデサニャ「質量が凄い」

【写真】確かに近い距離での豪腕フックが何度も見られた (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

お蔵入り厳禁。武術的観点に立って見たアレックス・ポアタン・ペレイラ✖イスラエル・アデサニャ戦を約2週間後に迫った再戦前に改めて振り返りたい。


──アデサニャとポアタンなのですが、キックボクシング時代に引き続きMMAでもポアタンが勝ってしまいました。

「平本蓮という選手が、ああいう風に戦いたいから見てくださいとアデサニャのことを言ってきました。パッと見た時にポアタンの拳(けん)の質量が凄いんですよ、ともかく。こんなものを食らったら死んじゃうんじゃないかと思って見ていました。試合開始直後の印象でポアタンの質量が圧倒的なので、これはポアタンがKOすると思いました。というのもアデサニャがビビッて、いつもの老獪な感じが無かったですね。つまりアデサニャに対して、UFCであろうが打撃で伍する相手はいなかった」

──UFCで戦いだした当時は、アデサニャが何者か分からないので、相手も仕掛けて倒されていました。しかし、彼が強さを見せると打撃で圧し切れる相手はおらず、アデサニャも今言われたように倒すというよりもインサイドワークを駆使するだけで勝てていたように感じます。

「実はポアタンのような相手が出てくると、打撃でやりとりができないのかというぐらいに見えました。いわば打撃のスクランブル。MMAでは余り見られない、やりとりは」

──組みがあるので打撃の距離は、組みにいける距離で。劣勢な方が、打撃を続けるということはなくても良い競技です。結果、MMAでの打ち合いは、体力も精神力もギリギリになった状態での戦い、根性勝負の殴り合いになるような。

「打ち合いの中で呼吸を外す、しっかりとカウンターを取るというのはそこまで多くないです。アデサニャも前手を使って殴られないようにして、おずおずと下がるばかりでした。ただし、ポアタンも自分のリーチを生かした戦いはできていなかった。きっとボクシンググローブの戦いを続けているのだと思います。リーチがあるのに詰めてフックを打つ。拳の向きを見ると、素手よりもボクシンググローブの殴り方です」

──クリンチでボディを殴る時も、まさにそのように見えました。

「ハイ。ショートレンジのキックボクサーなんです。だからMMAに多い、少し離れた距離の打撃はまだ慣れていない。寄っていかないと当てられない。あれだけリーチがあるのに、その繰り返しでした。限定された距離で、人を殴るポアタンの質量が圧倒的にアデサニャを上回っていても、最初にアデサニャがダウンを奪います。アデサニャの打ち方は、MMAグローブの打ち方で、ピンポイントで捕らえている。

やはりボクシンググローブと、MMAグローブに違いがある。それだけ質量に差があっても、その通り反映しない。結果的にやりあうとダウンを取ったのはアデサニャでしたからね。ポアタンのパンチは止めないで、流れていても効きます。MMAグローブは止める……置くといっているパンチですね。

フォロースルーを創ると、あまり効かない気がします。ボクシンググローブは、大きさがあるのである程度スウィングさせて殴るとダメージを与えやすい。つまりボクシンググローブとMMAグローブで殴るポイントが違ってきます。手を伸ばしただけで効かせる突き……空手では決めと呼びますが、決めと打ち抜くパンチの違いですね」

──それでもポアタンにはあの勢いがあって殴られるのですから、相手は怖いかと。

「ハイ。その距離に入ってアデサニャは殴っていったので、それは勇気が必要だったと思います」

──ONEのMMAグローブのムエタイ。距離もスタンスも、そこに近い試合に見えました。

「だからこそ、ポアタンは凄まじい可能性を秘めていますよ。まだMMAに慣れていないので。まぁキックで結果を残し、MMAでもキャリア6戦や7戦でUFCの頂点で戦う。これはもう、とんでもないことです」

──とはいえMMAです。決して組みの選手ではないアデサニャの組み技で、疲れてしまいました。

「あれは組みだけでなく、全般的に疲れたんだと思いますけどね」

──打撃だけの展開で2Rにポアタンがテイクダウンを取れましたが、アデサニャがボディロックで倒すと、力で逃げていました。ただし、アデサニャもグラップリングで勝ち切れる力がなかった。ずっと踏ん張って、バテまくっていました。

「つまり打撃ではアデサニャは負けた。でもMMAでは上回っている。それでも打撃のMMA選手で、組み技をそこまで積んでいなかったかと。自分より打撃が強い相手がくる想定が、そこまでなかった。組んでくる相手にどう戦うのかという部分でやってきたのでしょうね。

打撃に関してはファイターのポアタンに詰められたボクサータイプという風になっていました。打撃だけになると、蓋を開けてみるまで本当に分からない。予測がつかない展開になることがありますね。アデサニャは足を負傷したのか、ひっくり返って。アレがないとアデサニャが勝っていた。

あれだけ質量に差があったのに──あのままだと勝てるところまで持って来られた。帳尻を合わせることができるアデサニャに感心させられました。それがMMAなのかと。我々が強くなるために、何を採り入れるのか。足をケガする前のアデサニャには学ぶことが多かったです。

もつれた試合で、どう勝てるのか。審判に勝敗を委ねると、どうなるか分からない。もつれないように戦うには、もつれた時にどう戦うのかを勉強しないといけない。同時にポアタンはああいう生き物。本能でぶん殴ることができるけど、そこに法則性はない。でも、その理を知らなければ勝てない。それがMMAだということを改めて感じた試合でした」

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【Bu et Sports de combat】「打倒極の回転では勝てない」武術的観点で見るバシャラット✖メンドンサ

【写真】KO、フィニッシュ、ドミネイトは目的。打倒極の回転は手段 (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

お蔵入り厳禁。武術的観点に立って見たジャビッド・バシャラット✖マテウス・メンドンサ戦とは?!


──バシャラット×メンドンサ、ここでもアフガン出身のバシャラットの精神面という部分が際立った戦いとなりました。

「メンドンサという10勝0敗の選手、初めてのUFCで分かりやすくバテていましたね(笑)。前半の動き、メンドンサはそれは良かったです。動きそのものを見ても、メンドンサの方が殺傷能力もあるように感じました。ただし、バシャラットは動き云々より眼です」

──眼……ですか。

「ハイ。眼に関心しましたね。バシャラットは眼が絶対に動かないです。ジャブを合わせるのも、しっかりと相手を見ています。実は相手を見ないで、動く選手が少なくないです。車でも事故を起こしてしまう時は、前方や後方不注意、つまり見ていない時ですよね。それは戦いも同じです。見ていれば、事故を起こす確率はとても低くなります。この当たり前のことが結構できないんですよ。

例えばニータップとか、テイクダウンをしようとしたときに、相手を見ないで仕掛けるとどれだけ危ないですか? 片方は肩、もう一方は足を触りに行って顔面はがら空きです。それを見ないで仕掛けるとどうなるのか。でも、案外とそういうことが往々に見られます。対してバシャラットはずっと見ている。そしてジャブを合わせることができています。このジャブの合わせ方は、地味ですが素晴らしかったです」

──やはり淡々と戦っているように見えました。

「ハイ。正直、取り立てて凄い動きじゃないんです。技術的には何が素晴らしいということではない。でも、やはりこの選手は生きてきた背景とファイトがどう結びついているのかが、興味深いですね。

アグレッシブな相手を動かせて、疲れさせる。言葉では簡単です。同時に相当に勇気がいることです。だってアグレッシブなヤツを動かすと、そのままやられることだってあるわけですから。だから、どれだけ太々しいのかって話です」

──なので、興味深いのはピンチになった時にどういう風に戦えるのか。現状、まだそのようなシーンはないわけですが。

「何度も言いますが、技術的にはシンプルなんです。ただし、下がるのではなくて、相手を出させています。下がる……後ろに行く、足を後ろにやるという表現になる動きでないと。それは相手を前に出させている動きなので。でも、下げられるとダメなんです。

メンドンサは前に出さされていた。バシャラットが、そういう風に戦っていました。これは胆力がいることです。それこそが彼の歩んできた人生、生き残るために生きてきた人間が持つ胆力。そんなものは、なかなか日本では身につかないです。私も、そこを本当に考えないといけないと思っています。

この試合でも肉体的にはメンドンサの方が優秀だったと思います。でも、彼は自滅していった。メンドンサとバシャラットでは、苦しさへの捉え方が違うのでしょう。だから、いたって冷静にバシャラットはメンドンサを自滅に追い込むことができる。前に出させてパンチ、ミドル、前蹴りを合わせることで。ただし、惜しむらくは打撃の技術力がそれほどではないこと。だからこそ、MMAとしてバランスが取れているのだと思います」

──全てを消化して打撃だけで勝つMMAもあれば、打撃だけでは勝てないけどMMAだから勝てるMMAもある。バシャラットは後者ですよね。

「そうやって総合力で勝つって、実はできていないですよ。打撃、テイクダウン、寝技を回すことを目的にしてはいけない。勝つための手段として、回さないといけない。回せるから勝てる──ではないんです。そういう選手は、回らないで負けてしまう。

ただし、バシャラットは回していますよ。いや、結果として回っているけど相手の動きに合わせて、その上をいっているから回って見えるんです。UFCレベルで、こうやって勝てるのはなかなかでしょう。

なによりも上を取った時の眼つきが、これがまた怖いから。もう1度、確認してみてください」

──分かりました(笑)。

「凄い眼をしていますよ。そして立たれた時のシングルレッグに入る所作。流れるように入っていますが、別に回していない。これも相手の動きに合わせて、さらにその先をいく動きをしているということ。回すとかいっても、自分で動こうとして回らないことばかりです。

対してバシャラットはまさに水が流れるように戦っていました。それが回って見えるということです。だから回転じゃないんです。流れと回転は違います。これは私の持論ですが、回転を目指すと──それは回転を目指す一つの動きになってしまいます。全てに対応するMMAでは、回転という一つの動きを目指すと勝てない。流れだと、回転させないで反応して勝つということで。

戦いの根本は、相手の嫌なことをやり続けること。だから回転させようとしても、それをさせない戦いを相手がしてきます。そうやって一つ、一つの局面で技術力が上がってくると、ウェルラウンダーの異種格闘技戦になる。MMAはそういうところまで昇華されてきたように思います。そのなかでバシャラットが見せた戦いは、MMAだった。異種格闘技ではない。一つ一つの要素は突出していなくても、バランス良く戦っている。でも回しているわけではない。いやぁバシャラットとトップ10、トップ5の戦いが楽しみですね」

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MMA MMAPLANET o UFC UFN217 アブドゥル・ラザク アラン・ナシメント ウマル・ヌルマゴメドフ エイドリアン・ヤネツ カーロス・ヘルナンデス クリス・グティエレス ケトレン・ヴィエイラ シャーウス・オリヴェイラ ショーン・ストリックランド ジミー・フリック ジャビッド・バシャラット ダニエル・アルゲータ ダン・イゲ トニー・グレーブリー ナソーディン・イマボフ ハオーニ・バルセロス マテウス・メンドンサ ロマン・コピロフ 武術空手

【UFN217】戦禍が生んだ精神的な強さ。常に冷静沈着、ジャビッド・バシャラット「生き残る意志」

【写真】(C)MMAPLANET

14日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFN217:UFN on ESPN+75「Stricklandr vs Imavov」でジャビッド・バシャラットが通算14連勝、オクタゴン3連勝を賭けて──10勝0敗、今大会がUFCデビュー戦となるマテウス・メンドンサと戦う。

内戦状態のアフガニスタンから、パキスタン経由で英国に逃れた過去を持つバシャラットは高いフィニッシュ力を誇りながら、フィニッシュに走らないファイターだ。血で血を洗う母国の歴史が創り上げた──生き残るためのメンタルがDNAに存在し、日頃のトレーニングから気持ちの強さを養っている。

アグレッシブであることが気持ちが強いわけではない。常に自分を律し落ち着き払って戦う姿勢こそ、バシャラットの最大の強味だ。


──マテウス・メンドンサ戦が迫ってきました(※インタビューは現地時間の10日に行われた)。今の体調はいかがですか。

「調子は良いよ。今は最後の減量に向けて、たくさん水分を摂ってウォーターローリング中だよ。全てにおいて問題ないよ」

──昨年9月にインタビューをさせていただいた時、ジャビッド自身だけでなく弟のファリドに関しても、試合に向けてのメンタルの創り方を話してくれて凄く印象深かったです。

「あぁ、覚えているよ」

──あの直後のファイトで、ジャビッドはトニー・グレーブリーと頭がぶつかり、相当な出血があったにも関わらず顔色一つ変えずに、やるべきことをやり抜きました。

「クレイジーな経験だったよ。でも皆は僕の考え方が分かっていない。僕は皆のようにフィニッシュしようと自分にプレッシャーを掛けることが嫌いなんだ。カットしようが2Rも3Rもやるべきことをやるだけで。そういう風でいられるほうが心が強いと思わないんだよ、誰も。

練習ではあんな風に頭が当たりカットして、そのまま動き続けることはない。そこで練習は終わる。ただし、ファイトは違う。戦い続けないといけない。だから、そういうシナリオも用意していないといけないんだ。ああいうことが起こった時にいかに平静を保っていられるか。その部分は普段から準備してきた」

──焦ることはなかったですか。

「ないよ。これ以上、傷を深くしないようにはどうすれば良いのかを考えた。あそこから戦い方を少し変えた。それが戦いには必要なんだ。カットすることもあるし、拳を折ることもある。そういう時にアジャストする力が求められる。そのためには気持ちを強く保つことが最も重要だ。それだけだよ。カットが深かったし、頭は何度も当たった。もう当たらないように、構えを変える必要があった。また頭が当たっても、傷と同じ個所にぶつからないようにするためにね。焦りはないし、チームもしっかりと状況を把握していたよ」

──日本の武術空手のマスターが、「どれだけ高い技術に対しても技で対抗できるが、こういう精神の持ち主には技術では崩せない」と言っていました。

「そう言ってもらえると、有難いよ。その通りなんだ。『スキルより強い意志を持てるようになれ』とモハメド・アリも言っているようにね。僕はこの言葉が好きなんだ。あれだけの技術の持ち主が、そういう風に思っていたんだよ。

ファリドも同じだよ。実は前回の試合、弟は2週間前にエルボーをケガをしていたんだ。それでも試合を戦い、強い気持ちを保ち続けた。メンタルの強さ、ここが一番大切なんだよ」

──空手マスターとはジャビッドたちの強さは、領土を奪い合って来た欧州やユーラシアの民族だからこそ。強い意志を持って戦うDNAはフィジカルだけでなくメンタルに備わっているという話になりました。

「100パーセント同意するよ。我々には生き残るという意志がDNAに刻まれている。強い精神力は気持ちから創られる。脳みそが創るわけじゃないんだ。アフガニスタンで生まれ育った僕は家族や友人が戦闘に巻き込まれないという選択がなかった。逃げるか、反撃するか。戦うか、死ぬか。いつもそんな環境にいた」

──そのサバイブするために戦うというDNAはジャビッドをアグレッシブにさせるのではなくて、落ち着かせている。そこがまたすさまじいと思いました。試合中も、本当に落ち着き払っています。

「ファンは我を忘れて、ひたすら殴り合うようなファイトを望んでいる。選手も同じだ。考え無しに攻撃することがある。でも、僕はそれがどういうことになるか既に知っていた。どの試合ももの凄くシリアスに捉えている。だから、落ち着いて戦うことができるんだ。そういう風に戦えるように、トレーニング中からメンタルを鍛えている。落ち着いて戦えるように」

(C)Zuffa/UFC

──では今回、UFCデビュー戦となるメンドンサとの試合になりました。

前回の試合で勝って上位ランカーと戦いたいと言っていましたが、真逆の立ち位置となるファイトです。

「エイドリアン・ヤネツ、クリス・グティエレス、トップ15と戦いたいかった。そういう試合は実現しなかったけど、ラマダーンが来るまで最低でももう1試合戦いたいから、今回の試合を受けた。そして3月の終わりにラマダーンが始まるまでにもう1試合、ここで勝って次はトップ15と絶対に戦いたい。

ただ意味のない試合なんて存在しない。対戦相手は10勝0敗だ。そんな相手と戦うのはチャレンジングだよ。UFC初戦だろうが、彼のスキルをリスペクトしている。なんせ、無敗なんだ。シュートボクセという偉大なチームで、シャーウス・オリヴェイラらとも練習している。良いファイターに決まっているよ。次はトップ15と戦うために、僕は彼との試合を受けたんだ」

──アグレッシブなウェルラウンダーで、攻める意識が強い選手で殴られても殴るという戦いが、過去の試合映像では多かったです。

「そういう相手と戦うと皆は危ないと言うけど、僕は動くから彼に捕まることはない。ジャブを使って、強引に入って来るならカウンターで迎撃する。まぁ典型的なブラジルの若いファイターでワイルド過ぎる嫌いがある。対して僕はクリーンで、高い安定感を誇っている。来るなら捕まえるよ。いくつかのパターンを用意しているから、どれかを当てはめる。ところで、君はどういう試合になると思う?

──正解を狙いにいくと、ジャビッドは1Rメンドンサを動かして疲れさせる。そして2Rと3Rにドミネイトするのではないかと予想します。

「なるほどね。アハハハ。その通りだ。でも、僕ら2人の秘密だからね」

■視聴方法(予定)
12月18日(日・日本時間)
午前6 時00分~UFC FIGHT PASS

■UFN217計量結果

<ミドル級/5分5R>
ショーン・ストリックランド: 204ポンド(92.53キロ)
ナソーディン・イマボフ: 194ポンド(87.99キロ)

<フェザー級/5分3R>
ダン・イゲ: 145.5ポンド(66.0キロ)
デイモン・ジャクソン: 145.5ポンド(66.0キロ)

<ミドル級/5分3R>
プナヘラ・ソリアーノ: 185.5ポンド(84.14キロ)
ロマン・コピロフ: 185ポンド(83.91キロ)

<女子バンタム級/5分3R>
ケトレン・ヴィエイラ: 136ポンド(61.69キロ)
ラケル・ペニントン: 135.5ポンド(61.46キロ)

<バンタム級/5分3R>
ウマル・ヌルマゴメドフ: 135ポンド(61.24キロ)
ハオーニ・バルセロス: 135ポンド(61.24キロ)

<ミドル級/5分3R>
アブドゥル・ラザク: 185.5ポンド(84.14キロ)
クラウジオ・ヒベイロ: 183ポンド(83.00キロ)

<ライト級/5分3R>
マテウス・レンベツキ: 155.5ポンド(70.53キロ)
ニック・フィオーリ: 155ポンド(70.31キロ)

<バンタム級/5分3R>
マテウス・メンドンサ: 134.5ポンド(61.0キロ)
ジャビッド・バシャラット: 136ポンド(61.69キロ)

<フライ級/5分3R>
アラン・ナシメント: 125.5ポンド(56.92キロ)
カーロス・ヘルナンデス: 125ポンド(56.7キロ)

<フェザー級/5分3R>
ダニエル・アルゲータ: 146ポンド(66.22キロ)
ニック・アギーレ: 145.5ポンド(66.0キロ)

<フライ級/5分3R>
ジミー・フリック: 126ポンド(57.15キロ)
チャールス・ジョンソン: 126ポンド(57.15キロ)

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お蔵入り厳禁【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。バシャラット✖ベゴッソ「生きる為」

【写真】バシャラット兄弟、兄のジャビッドは今週末。弟のファリドは3月4日に試合が決まっている。要注目だ (C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑師範とともに見てみたい。

お蔵入り厳禁。武術的観点に立って見たファリド・バシャラット✖アラン・ベゴッソ戦とは?!


──この試合、同じ週の週末にUFCで2勝目を挙げたファリドの兄ジャビッドにインタビューをしたのですが、「フィニッシュを狙う必要はない。自分の動きをしていれば美しいのだから無理に狙って崩す必要はない」とアドバイスしたと言っていました。フィニッシュ絶対のコンテンダーシリーズを前にして、このアドバイスができるということが凄いと感じた次第です。技術の前の精神力、彼らのバックボーンも踏まえてそこを岩﨑さんがどのように見ているのか。

「アフガニスタンを離れ、パキスタンの難民キャンプから英国に渡ったという選手ですよね」

──ハイ。試合になると、兄弟揃って淡々と表情も変えずに、やるべきことをやっている。そのように感じた次第です。

「それこそキーワードですね。やるべきことに徹しています。ある意味、パンチが凄い、蹴りが凄い、テイクダウンが凄いとかいっても技術で何とかなります。でも、そういう精神構造を技術で崩すことはできないです。無理、無理です。

それはもう出自が違うというのが、まずあります。『自分の国にいて安全だと思ったことはない』とお兄さんがインタビューで言っていましたし、タリバンと北部同盟(アフガニスタン救国・民族イスラム統一戦線)の争いのなかで幼少期を過ごしていたわけですよね……。

この試合に関して理解してほしいところは、ファリド・バシャラットは特別なことは何もしていません」

──ハイ。

「技術的なことを論じるにはどうしようかと思って視ていました。でも3Rが終った時に、これは真似ができねぇと。こういうヤツと戦った時は、どうすれば良いんだと思いましたよ」

──レフェリーがいないと、人が死ぬまで攻めることができるんじゃないかと。

「それをやらないと自分が死ぬっていうことです。これはユーラシア大陸の歴史の法則性です。好き好んで領土を奪いに行っているのではなくて、領土を取らないと命を取られる。UFCだ、世界だと言っている人達はそういう連中と殴り合うということをもう少し自覚する必要があります。

漫画家の板垣恵介さんが言っていたエピソードに、ジェラルド・ゴルドーが『お前らは顔を殴るのに躊躇するだろう』というのがあります。まさにその通りなんです。我々日本人は人の顔を殴って良いという教育は受けていないんです。日本人で格闘技を始めて、いきなり人の顔をぶん殴れるヤツの方がマイノリティなんです。実は」

──あぁ、なんとなく言われていることは分かります。

「でもユーラシア大陸、ヨーロッパ、朝鮮半島は『やらなきゃ、やられる』という歴史と風土が息づいているんです。好き好んで相手をボコボコにしているんじゃなくて、そうしないと自分が生きていけないという数千年に渡る歴史です」

──その歴史の末に今を生きている人と、その歴史が続いて生き残ってきた人間も違いがあるかと思います。バシャラット兄弟は試合中に感情が見えない。ポーカーフェイス云々でなく、感情がないのかと。

「紳士的に相手をぶっ殺すというやつですね(笑)」

──確かにジャビッド・バシャラットはインタビューの受け答えは、凄く穏やかでした。

「想像できます。アフタニスタンで北部同盟を率いた英雄的な指導者のアフマド・シャー・マスードという人の言っていることなんて、常に愛と慈愛に満ち溢れています。そこには愛しかない。もう詩集ですよ。

でもソビエト連邦を追い返したのはこの人たちで、マスードの最後はアルカイダの自爆テロで暗殺され、その2日後に9.11が起こったんです。米軍のアフガン撤退を機に、息子さんのアフマド・マスードが今のタリバンに抵抗するようになっていますね」

──もちろん、だからといってアフガンの皆がマスードのようではないのでしょうが、バシャラット兄の弟への想いと淡々とした攻めには、何か通じるものがあるようです。

「マスードという人はソ連を撤退させ、その後の捕虜の開放でロシアの支持を得るなど、勇猛さと慈愛を兼ね備えていた人物だったんです。愛情に溢れ、でも向かってくる敵には一切の容赦がない。そういうことをこのバシャラットの戦いを見て、思い出しました。

あの当たり前のことしかしない戦いをしたがらない選手は多いです。なぜか、『疲れるから』です。疲れるのが嫌なら、格闘技やるなよって。でもバシャラット兄弟は、疲れるなんて屁でもないですよ。命を落とすから国を離れる。きっと着の身着のままだったでしょう。それをね、真似をするのは無理ですよ。我々、日本人には。でも、その精神性を理解して試合に臨めば、我々だってやってやれないことはない」

──4日後にトニー・グレーブリーを破ったジャビッド・バシャラットも、頭突きで流血しながら表情も変えず戦っていた。その淡々さが怖かったです。

「そうですよ、怖いですよ。でもね、バシャラットが怖くないかといえば──彼だって怖いんですよ。でも生きるためにやっているんですよ。ああいう選手に勝つのは、本当に大変です。しかし、このところのUFCはコンテンダーシリーズとかプレリミの試合は、なぜかPPVカードよりも考えさせられることが多いです」

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ABEMA MMA MMAPLANET o RIZIN Road to UFC UFC サンチン ボクシング ライカ 剛毅會 岩﨑達也 平本蓮 弥益ドミネーター聡志 松嶋こよみ 武術空手 澤田千優

【Fight&Life】空手着を着た平本蓮が、松嶋こよみと合流。『サンチンはMMAに役立つのか』

【写真】このタッグは最強幻想が、幻想でなくなる期待感に満ちている (C)MASAKI KIKAWA

10月のRoad to UFCフェザー級準決勝でまさかの判定負けを喫した松嶋こよみと、11月のRIZIN LANDMARK 04で弥益ドミネーター聡志に勝利した平本蓮、剛毅會空手の稽古で初合流を果たした。

これまでG-GRIPで行われているMMA打撃練習、同じくG-GRIPのMMAレスリングクラスで肌を合わせ、拳を交えたことがある両者が空手着の袖に腕を通し、型、基本、そして組手の稽古を大塚隆史、澤田千優らと共に行った。


松嶋はこれらの稽古を何年にも渡り行っており、黒帯を巻き師範代という地位にある。一方、平本はMMA界随一のストライカーであるが、武術空手においては白帯を巻く初心者だ。これまで岩﨑達也・剛毅會宗師により試合に勝つための打撃の指導を受けてきた平本にとって、型や基本はミット打ちやスパーリングの後に行うモノであった。その平本が12月1日の稽古よりサンチンからの型稽古、四股立ちでの突き、腕受けから逆突きなど基本稽古、そして両拳を腰の横に置き、蹴りは前蹴りのみ、顔面寸止めの剛毅會流の組手に軸が置かれた武術空手の稽古を始めた。

松嶋と比較すると平本のサンチンは正直、おぼつかない。移動稽古も見様見真似の域は出ていない。ただし四股立ちからの突きになると、既に道着から風切り音が聞かれ、寸止めの組手では松嶋と息を飲む、怖さがにじみ出た立ち合いを行った。

稽古後、両者に話を訊くと7月と11月に挙げた平本の2つの勝利、その打撃の違いに関して松嶋は「平本君自身の武器はそれほど変わっていないはずです。それがちょっとしたニュアンス、見方の違いで変わるもの。それを体現していた。僕がまだ体現できていないので嫉妬心もあるし、ああして戦えるのは素晴らしいです」と分析した。

この言葉に平本も「変えたのは細かい部分です。岩﨑先生が教えてくれることってチョットのことなんです」と同調したうえで、「あとは素手の真剣勝負というか、試合を想定した練習……何て言うんですかね。刺し合いができた。そこは空手の強味だと思います。練習ではできない、試合の練習をやってこられたのが大きいです。あの薄いMMAグローブでやり合う……試合に近い練習を空手でやってきました」と言葉を続けた。

ボクシンググローブとMMAグローブ、そして拳と違いについて松嶋も「やっぱりMMAスパーって本気で殴れないです。練習相手を壊すと練習ではなくなってしまうので。そういう部分では自分で打っている感覚というのは基本稽古で感じたり、先生とのミットも試合に近いモノをやれている」と殴る感覚の大切さを説いた。

平本もミット打ち、基本稽古から武術空手の理を理解できる状態にあってもサンチンがMMAに役立つのかという問い掛けには、以下のような返答が見られた。

「直ぐに答え入らないけど、変化が出てくると思っています。型には意味がないと思った人はやらないです。でも、僕の中で意味を感じることができています。サンチンは全然できていないけど、できるようになったら分かるはずです。だから今は良く分からないけどやっている(笑)。答はそのうち出てくるだろうなって」。「まだ分からないけど、やる」と分かった風でなく素直な平本とは対照的に、型稽古とMMAの関連、武術をフルコンタクトスポーツに生かす答を松嶋は既に持っている。

「そもそも型は教科書のようなもので、それを練っていくものです。型があって覚えてきたら、どのタイミングでヒジから拳を返していくのかとか。そういう自分にフィットしてくるものを見つけることができる。視線はこっちになるとか。そこを自分で見つけていくのが、型の稽古です。教科書にある流れを読み解いていく。それが基本の突きで生きてきて、その基本の突きが実戦での突きに生きてくる。基本だけやるんじゃないし、組手だけやるわけじゃない。型があって基本、組手がある。

仮に型という教科書がないでやっていると、その場で良くなるかもしれないけど、言ってしまえばその場でしか良くならない。だから僕は平本君が剛毅會の空手の稽古をやるって聞いても、ミットの部分だけとか、一部だけを知りたいのかと思っていました。でも平本君は型をやり、基本もやるから共感を持つことができたし、そこに気付ける人って少ない。型をダンスだと思っている人が多い。だから平本君のような人が空手をやってくれるのが嬉しい」

※ボクシングのパンチ、空手の突き、グローブと素手、殺しのある寸止め稽古論など、両者が武術空手とMMAの接点を語りあった対談は12月23日発売のFight&Life#94に掲載されます。

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DEEP DEEP111 DEEPフライ級GP MMA MMAPLANET o RIZIN ボクシング 伊藤裕樹 修斗 剛毅會 宇田悠斗 安谷屋智弘 岩﨑達也 島袋チカラ 本田良介 村元友太郎 松場貴志 武術空手 澤田千優 福田龍彌 長谷川賢 風我

【DEEP111】フライ級GP準々決勝宇田悠斗戦──直前に出稽古。村元友太郎「宇田の底が知れる試合に」

【写真】月曜朝10半からの武術空手稽古。平本丈と前夜に修斗世世界女子アトム級王者になったばかりの澤田千優も稽古に参加していた (C)SHOJIRO KAMEIKE

12月11日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP111 Impactではフライ級GPの準々決勝が実施される。ビョン・ジェウン✖伊藤裕樹、本田良介✖松場貴志、福田龍彌✖安谷屋智弘とともに村元友太郎が宇田悠斗と対戦する。

修斗からの刺客といっても過言でない宇田は、初戦で島袋チカラにケージに押し込まれた状態でエルボーを連打し失神に追い込むという衝撃的な勝利を手にした。対して村元は試合前に新スクランブル宣言をしたものの、初回にダウンを喫するという厳しい戦いを持ち味であるスクランブル戦で競り勝った。

宇田戦を直前に控えた状況で、村元は東京で出稽古を敢行──午前中は剛毅會空手、午後は田牧ボクシングの指導を受けている。そんな村元を練習の合間に取材すると、直前の出稽古の是非、宇田の評価を尋ねると元気いっぱい、いつも通り自信に満ちた答が返ってきた。


──13日後にDEEPフライ級GP準々決勝、宇田悠斗選手との試合を控えている(※取材は11月28日に行われた)状況で、東京まで来て出稽古を行った村元選手です。午前中に剛毅會の岩﨑達也氏に指導を受け、午後はGENで田牧一寿トレーナーのボクシング指導があるということですか、東京入りは昨夜だったのですか。

「いえ、朝にやってきました。昨日は石川で太田翔一郎さんに伝統派空手の指導を受けていたので。田牧トレーナーとの練習が終わったら名古屋に戻ります」

──田牧トレーナーや太田さんとの稽古はこれまで続けていていたことなので、そこは時間と距離との兼ね合いなのでしょうが、このタイミングで岩﨑さんに武術空手を習う。それはどういう理由からなのでしょうか。

「今回が稽古は2度目なのですが、11月の最初に岩﨑さんがRIZIN LANDMARKで平本(蓮)選手のセコンドで名古屋に来ていた時に、ハセケン(長谷川賢)さんから誘いがあって一緒に食事をさせてもらったんです。

その時に『東京に来た時に練習に参加しても構わないよ』と言っていただいて。僕も田牧さんとの練習もあり、東京に来ることがあるので実際に教え欲しいと思いました」

──平本選手の試合を見て、そうしようと思ったのではないですか(笑)。

「それもあったのですが、ホントに試合前日に食事をしている時に岩﨑さんの打撃論を伺って興味深かったのと、合点のいくことがありました。いくら平本選手の試合を見ていても、その時の話が納得できるものじゃなかったら指導を受けたいとは思わないです。フィーリングも合ったというか……そもそも岩﨑さんのことを、それまで知らなかったのですが……」

──ハハハハハ。重ねてお伺いしますが、だからといって試合まで1カ月を切って2度指導を受けただけの技術や動きが試合に生きるのですか。

「生きます。指導をお願いした際に、『次の試合のためだから』ということで相手の映像と、僕の映像を見せてほしいと岩﨑さんに言っていただきました。自分が技術的に問題点として捉えていたことに対して、LINEと電話でまず相談をしました。それから実際に動きを見てもらったので。

1度目の練習のあと、名古屋に戻ってALIVEのスパーリングで試した動きを動画に撮って岩﨑さんに送りました。そこでまた修正箇所を指摘してもらって、そうしていくことでスパーリングのなかで課題だったというか……欠点が、解消されていったんです。

同時にそれが全てでなく、自分がこれまでやってきたこととの兼ね合いでどういう風に生かすかを自分でも考えています。いずれせよ、分からないことはどんどん尋ねていますし。全てを理解できないことも分かって、試合直前であってもこうやって指導を受けに来ています」

──そこまでの気持ちでいるのかと感心させられた一方で、その志をもってなお試合前の理想と試合のパフォーマンスのギャップが……。

「アハハハハ。前の試合もそうでしたね。進歩したところを試合に出そうと思ったら、結局これまでと同じで(笑)。風我選手がイメージと違っていて、凄く強くなっていました」

──初回にピンチがあり、試合前に言っていた「極めに繋げるコントロール、これまでと違うスクランブル」という動きはできなかったです。それでも、これまで通りのスクランブル戦になると勝ち切れる。やはりそこが村元友太郎の強味でもあるかと。

「でも、それでは先に進むと勝てなくなります。このままではいけないので、今日の稽古もそうですが色々と足を運んで模索しています。今のままでは危うい感じなので、明確に倒し切ったり極め切れるようにならないといけないです」

──同時にああなった時は、気持ちで負けないという想いは?

「そこは誰とやっても負けないっていう気持ちはあります」

──では宇田戦で向けて。抽選では、結構選手が会話をして対戦が決まった感がありました。

「そうですね。福田(龍彌)と宇田が残っていて。僕はどっちでも良かったです。決勝に進めば、どちらかと当たると思っていた2人だったので、どっちでも良かった。で、最後に残っている安谷屋(智弘)さんに尋ねたんです。『僕はどっちでも良いから、どっちとやりたいですか』って。そうしたら安谷屋さんは前に福田に勝っているから、福田が良いって(笑)。福田も『安谷屋とやりたいです』って言って2人が盛り上がっているから、『なら宇田で良いです』という感じで」

──宇田選手は置いてけぼりじゃないですか(笑)。

「『あっ、ハイ。お願いします』みたいな感じでした(笑)」

──アハハハ。では、その宇田選手の印象を教えてください。

「修斗の1位でしたね。う~ん、フィジカル的にはパワーとかスピードが速い雰囲気はありますけど……まぁ、見せかけかなって思っています」

──おぉっ!!

「打撃の質とかも、パンチもパッと見は踏込みも早くて威力もヤバいのかと思うかもしれないですけど、完璧で倒している試合もないし。なんか……質は低いんじゃないかと。僕は貰わないですし、貰っても前に出て根性で……ここまでやってきたことも違うし、気迫も含めて全てで圧倒したいと思っています」

──島袋チカラ選手との試合では、ケージに押し込まれた状態でヒジ打ちの連打でTKO勝ちを収めました。あのような予想外、あるいは想像の範囲を越えた何かを持っているかもしれないという警戒心は?

「ないです。あれはあそこで止まっているからもらうだけで。僕はあんなにのんびりしていなくて動き続けます。ポテンシャルとか、底がまだ余り見えていない選手だと思いますけど、宇田悠斗の底が知れる試合になりますよ」

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