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Bu et Sports de combat サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─07─「転身が壱挙動『イチ!』になるには」

【写真】転身からのヒジを入れ、突かれないための一挙動とは──(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第7回は転身を分解組手をもって追求したい。

<サンチン解析第6回はコチラから>


究極の一挙動「イチ!」で振り向き、隙を創り辛くすることが求められる転身だが、足をずらしてから回ろうとすることで、歩幅が広くなったり、狭くなるということが起こる。そうさせないために、転身を分解組手で紐解きたい。

(01)相手が右で突いてきたとき、

(02)突きを受けるときには転身しており、

(03)その手のヒジを相手に入れると、相手の攻撃は被弾しない

(04)✖ しかし、相手が突いてきたとき、

(05)✖ 受けてから、

(06)✖ 転身をし、ヒジを入れても、

(07)✖ 一挙動「イチ」でなく、「イチ、ニ」となるため左の突きを受ける

【最重要】
サンチンの型にある転身が意味することを理解できると、型も変わってくる。結果、転身してもサンチンの構えを維持でき足が綺麗に揃うようになる。

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Bu et Sports de combat Interview ブログ 剛毅會 大塚隆史 安藤達也 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。大塚隆史✖安藤達也「MMA、ムエタイ、空手」

【写真】かつての教え子の蹴りを解析(C)KEISUKE TAKAZAWA

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──Shooto2020#07における大塚隆史✖安藤達也とは?!


──かつての教え子である大塚選手が、修斗初陣で安藤選手にTKO勝ちを収めました。最後はどういうことで安藤選手が負傷したのかは、傍で見ていると分からなかったですが、左右のローを幾度となく決めていました。

「私は以前、大塚を指導していたのですが、彼の打撃の質は空手ではなくムエタイだったんです。だから松嶋だとフルコン空手のミットを使って蹴りの練習をしていたのですが、大塚の場合はムエタイの皮のミットを使用していました。

ムエタイの場合は腰のキレでぶつけるような蹴りで、フルコンの蹴りはどちらかというとヒザでリードして突き刺す蹴りですね。私が想うにはMMAではフルコンのヒザでリードして突き刺す蹴りが向いている」

──それはなぜしょうか。

「最近のMMAの距離は、距離を取るフルコンの蹴りに似ています。そして、UFCでもフルコンをやっているということでなく、MMAの距離で蹴っているとフルコンの蹴りに近くなる選手が凄く増えています。

対してムエタイは、グローブが触れる位置を維持した距離での蹴りです。なので距離に関していえばフルコンは、キックやムエタイより豊富なんです。広くてロープがない場所で試合をしてきたので」

──それがMMAに近しい距離になっていると。

「ハイ。MMAは元々ノールールの時期に、ホイスやグレイシー一族がパンチの届かない距離を取り、打撃が認められた試合なのに殴り合わないことを前提に戦ったことがルーツです。その後、北米MMAの時代を迎える前にPRIDEの隆盛とともにシュートボクセが、殴り合いの距離の打撃を持ち込みました。彼らは柔術を習得したストライカーだったので、それが可能になったのです。

と同時に殴り合いが歓迎されるMMAにもなりました。その後、MMAの中心が北米に移り、寝技で下になると判定で勝てない、桁違いのレスリング力とケージ・レスリングの進化という状況下で、拳の届かない距離が持続します。そして、ボクシング&レスリングに蹴りが加わった。打撃も組技も、お互い貰うのを嫌い合う攻防となり、距離があるのが前提で──フルコンに近い蹴りになったのではないでしぃうか。

フルコンはいわゆる『男らしく蹴り合いなさい』という距離ばかりではないです。だからMMAにおいては打撃系の選手であれば、フルコン系の蹴りの選手が有利だと思います。だけど大塚はベースがレスリングなので、入って来られても問題ないですからムエタイの蹴りで大丈夫です。これもMMA全般にいえることですね。レスリングの強い選手は、ムエタイの蹴りで構わない。

つまり大塚もそうですが、多くのレスラーの打撃はテイクダウンに繋げるためです。私が指導している時は、大塚の打撃はあくまでもレスリングに生かすための打撃でした。だから空手の蹴りを蹴らすことはなかったです」

──大塚選手は随分とリラックスしていました。

「それは彼ももう長い間MMAを戦っていますし、立ち会った瞬間に安藤選手の質量が低いと感じ取っていたはずです。実際に大塚は試合になると固くなることが多かったです。ただし、概ね選手は皆そうです。そういう部分で、安藤選手と戦った時の彼は精神状態も良かった。結果、間は常に大塚でした。最初から最後まで。

それと安藤選手も腰の低い構えで、テイクダウンを狙っていると質量が上がったかと思いますが、打撃を続けてあの構えだと質量も大塚が上のままでした。そのなかで安藤選手が一発、良いカウンターを打っています。ただし、あの構えだと拳(けん)に力が伝わっていない。安藤選手は、本来はもっとパンチ力のある選手だと思います」

──そして序盤から大塚選手のローが当たっていました。

「大塚も『インローで足を破壊しました』って言うんだけど、アレはテイクダウンを受けた時に足首を捻っていましたよね、安藤選手が。ただし安藤選手は構えた時の足の向きが、良くなかったです。爪先が内側に入り過ぎている」

──サンチンでいうと、外からの力に弱くなる足の向きですね。

「ハイ、ヒザが内側に回り過ぎる。そうなると足首、ヒザが弱くなってしまう。そういう爪先の向きでした。なので、あのようにテイクダウンを狙われた時に、捻ってしまうのも無理からぬことです。と同時にて安藤選手が足首を捻った時に、大塚はローの追撃を入れています。足首を捻ったところにローを入れられた安藤選手が、観念したように見えました。だからローで大塚は勝ったと言っても良いと思います。

先ほどから言われていますように、試合開始直後から大塚はアウト、インのローを蹴っていました。サウスポーに対して、オーソの選手は右を蹴りたくなるのですが、それではカウンターを受ける可能性が高くなります」

──ただ左のアウトサイドの蹴りは、それこそカウンターを受けそうですが……。

「それはきちんと左のアウトサイド・ローを蹴っていないからです。他に出せないから蹴るような感じで。対して、大塚の左のアウトサイド・ローは良かったです。右のインサイドローも蹴っていましたし。安藤選手は右足を両方から蹴られていました。

だからカットやチェックということでなく、蹴られて足がもっていかれていたんです。つまりは安藤選手は足を捻っていましたが、大塚も良い蹴りを出していたということなんです」

──かつての教え子の勝利は特別なモノでしょうか。

「そうですね……彼は私が稽古をつけてきた教え子のなかで、一番練習熱心でした。打撃の選手ではなくて、レスラー。その彼が打撃を使うということで、私もMMAの勉強を彼の指導することでさせてもらったと思っています。

この間の試合では私が指導している時より、ずっと良い戦い方をしていました。自分で考えるようになったから、ずっと良くなっている。今回のような試合ができれば、修斗でまた活躍してくれるのではないかと思っています。

そうですね……もっと厳しい試合になった時に、安藤選手との試合で見せた動きが出るか。それができるようになるためには、常に稽古で相手は自分より上だ、脅威を与えられていると思って取り組むことです」

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Bu et Sports de combat サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─06─「隙を作らず。回転動作の本質」

【写真】回転するときに注意すべきは、逆の方向(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第6回は両腕受けから転身を追求したい。

<サンチン解析第5回はコチラから>


(01)両腕受けから連載2回の足運びを同じ動作で、左前サンチン。そして連載3回と同じように右手をひき


(02)連載4回と同じ要領で右腕を突き出し、腕受け、両腕受けに。さらに右足を内側に円を描くように一歩前へ


(03)右前サンチンから左手を引き、左の突き、腕受けから


(04)両腕受けに


(05)これまで同じく体にこすりつけるようにヒジを引き


(06)この引手の拳甲を上へ向けながら


(07)右腕受けのヒジの下に拳を上に向けたまで移動させる


(08)ここから右前足を左の真横に移動させ


(09)後方に一気に振り向き、左前サンチンとなる

✖足をずらした時に歩幅が狭いと、振り向いた時にサンチン立ちではなくなってしまい、隙だらけになる

✖✖右足を横でなく、前方=縦に広げてしまい前後の歩幅が広くなり、これもサンチン立ちではなくなる。足をずらして回ることを意識しすぎていることで、生じる動作だ

【注意・上級編】✖✖✖左にずらした右前足、この移動させた力の反作用で回転させない。このような反動で回るということは、ずらした右足に溜めを作って回ることであり、右側に戻ることができなくなる。
ここで戻ろうとすると、右に傾き軸を失ってしまう。つまり振り向く方向に意識が集中し、逆側に意識が回らないで隙ができることに通じる。結果、一方向に対し、意識が偏った状態=居着いた状態となる。
サンチンで後ろを向こうという時に気を付けなければならないのは、実は逆の方向。移動した足に体重を乗せて反作用で回ると、回転動作の本質とは違う動きになる

反動を使わず右足をずらした時には、究極の一挙動「イチ!」で振り向くことによって隙を創り辛くする。サンチンは基本的に前後に隙を創らないための動き。振り向いたときに、後ろ側に隙があるかどうかが、この振りむいた時の動作で判断できる。

※次回、分解組手でこの振りむく動きを解説したい。

<この項、続く>

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Bu et Sports de combat ONE タン・リー ブログ マーチン・ウェン 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。タン・リー✖ウェン「MMAの妙、武の妙」

【写真】タン・リーに見るべきものがなかった──その真意は(C)ONE

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──ONE113におけるタン・リー✖マーチン・ウェンとは?!


──空手を指導している松嶋こよみ選手にも関係してくるタン・リー✖マーチン・ウェン戦ですが、どのように見られましたか。

「青木選手の解説を聞かせて頂きながら視ていました。そして青木選手の話していることで非常に勉強させてもらったのと同時に、自分はMMAの妙味が分かっていないことが本当に痛感させられています」

──MMAの妙味ですか……。

「質量と競技の違いというのですか……、同じ試合を見ていてもここまで見方が違ってくるのかという部分でも、本当に勉強になりました。というのも、私からすればタン・リーに見るべきものがなかったからです」

──!! えっ? そんなことはあり得ますか!!

「言ってみると期待外れだったんです。それだけビビっていたということなんです。これまでONEで見せていた2試合からすれば、どれだけ凄まじい試合をするのかと楽しみにしていましが、期待外れでした。

タン・リーは完全に蹴りの選手で、ウェンはボクシング……パンチの人です。そして、この試合でのウェンは素敵、男だね。惚れちゃうねって。やっぱり腹が据わっているというか、男の中の男ですよ。

MMAでは前に出てやれる選手はいくらでもいますが、この人の前への出方は良いです。送り足で前に出て追い詰めることができた。それだけタン・リーがビビっていたということです」

──タン・リーがビビッていたと見ている人は少ないかと思います。

「ウェンのパンチにビビっていて、タン・リー良いところが一つもなかった」

──しかし、KO勝ちをしているのはタン・リーです。

「それはウェンの自滅です」

──タン・リーはペースを持っていかれそうだという時になると、しっかりと腹を蹴ることができウェンの間合いにならないように戦うことはできていなかったでしょうか。

「そんなモノはウェンは何も思っていないですよ。気合と根性があったから」

──いや気合と根性だけで勝負が決まるなら、MMAは面白くないですよ。気が弱くても勝てる。距離を取っても勝てる。真っ向勝負でなくて、工夫で勝てるのがMMAという競技なはずです。

「ビビり合戦なんです、試合って。どっちが嫌か、どっちが怖いか。どっちが強いのかで勝負は語られがちですが、戦いはどっちが怖がっているのかということになります。実際、2Rのタン・リーは、後半は試合を投げかけていました。攻撃をするために射程距離を作るために下がるのではなくて、避けるために下がっています。そしてウェンが追い込んでいく。

ただし、ウェンはカウンターの選手なのに3Rになって打ちに行った。後の先が取れる選手なのに、なぜか3Rはそれをしなかったです。カウンターを取れることは、全く悪いことではないのに、『カウンターだけだろ。待っているときは良いけど、自分から詰めることはできない』というような批判に対して、自分から詰めることを練習してきたのでしょう。

実際に1Rからウェンの質量が高かったです。でも本当に漢人なところで、自分が一番強いところを出さなかった。武器として、あの3Rは絶対的にカウンターを使うべきだったのに。前に出るから勇気があるということではないです。早く仕留めてしまおうと焦っていた。それは勇気ではないです」

──確かに、焦っていたようには見えました。

「だから3Rになって、ウェンも心の弱さがでました。「判定でも勝ちゃ良いじゃないか」って──私がセコンドなら言います。ウェンはちょっと勝ち急いでしまった。初回も2Rもウェンの試合でした。そして5Rあるのに、なぜ3Rでとどめを刺しに行ったのか。打ち方も悪くなってしました。中が残って、外が先に出てしまっていましたからね」

──??

「一番良いのは中……内面が先に動き、外面が後からついてくること。これは難しい話なのですが……例え話を用いると、内面という名の機関車が、外面である3両ぐらいの客車や貨車を同時に引っ張って走る形ですね。一番前の機関車だけで前に進み後ろの車両がついてきていないと、カウンターを被弾します。対して、機関車が車両を引っ張り同時に動いていると、カウンターを貰うことはありません。

加えていうと前進しながらのフックは、質量が下がりやすいです。前進は縦方向の動き、フックは横回転なので」

──力の方向性が一致していないわけですね。

「そうなんです。前蹴りからストレート系のワンツーと、前蹴り&左右のフックだと、カウンターを食らうのは後者が圧倒的に多いということなんです。前進しながらのフックは、少し沈み込むような動きから左フックを放つとか、相手の右に対して──左側に沈み込みながら右オーバーハンドという動きならまだしも、下がる相手に左右のフックは、カウンターを当ててくださいと機会を与えているようなものになります」

──そこを3Rにウェンがしてしまったと。

「彼は基本に忠実なボクシングをする選手だと思うのですが、あの動きはボクシングのセオリーからも外れていたかと感じました。結果、あまりストレート系のパンチに自信がないのかと思いましたね。カウンターでも倒しているのは右クロスか、オーバーハンドで直突き……ストレートでダメージを与えるという攻撃がない。それで倒す確信が拳(けん)にないのでしょうね。いずれにせよ、顔から突っ込んでいきました。カウンターのフックではなく、前に出てフック&フックですから……これは良くなかったと思います。

対してタン・リーはボクシングでない、直突きです。前進して回し蹴りをして、直突き。彼のパンチはボクシング的なリズムには落とし込めていない。だからボクシングだとウェンだし、タン・リーの遠間からの攻撃がどういう風に見られるのかというのに着眼していたました。結果、全くウェンがその動きをさせなかった。そして自ら質量を下げていきました。質量の高いウェンに対して、いつものようなミドルを出すこともできなくなっていた。

どっちが強いのかいう点でなく、どっちが退くのか。そういう風に見ると、タン・リーはこれまでとは違い──見るべきものがない動きになりました。自分の動きを駆使するのではなく、相手の武器は使わせない戦いをしていたんです。

武術的にMMAを見る場合──、自分の戦いができると勝てます。自分より弱い相手だと、それができる。ただし強い相手を戦った時にどうなるのか。タン・リーはマーチン・ウェンを相手にして、自分の戦いができなかった。強い相手に対し、自分の戦いを見せることはなかったです」

──なのにウェンは3Rに前に出て、フック&フックで顔面を晒してしまった。

「焦りなのだとしたら、やはり怖かったのでしょう。タン・リーも一発が絶対的にありますからね。そして、それがMMAです。ウェンの自滅だろうが、自分の持ち味など関係ないけど、勝ちが起こる。自分の強さは出せなくても、勝てることがある。それはMMAの妙で、武術の妙は自分より強い相手にいかに自分を出すか──なのです」

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Bu et Sports de combat サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─05─「僅かに吸うと呼吸が体を通り……」

【写真】サンチン、型の分解。今回はここまでの動きに関する呼吸について触れたい (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせないモノであって、その形で戦うことではない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第5回──用意の姿勢から突き、受け──ここまで紹介した動きの間に見られる、呼吸を振り返りたい。

<サンチン解析第4回はコチラから>


(01)サンチンをする際の呼吸、まず用意の姿勢の時に息を吸うが、呼吸そのものは大きく見せることはしない。

特に吸うときは、通常の呼吸と同じように息を吸っていることをことさら強調しない。

基本的に武術は呼吸を見せないモノで、サンチン以外の型では隠し呼吸といって、外には見せないようになっている
  
(02)用意の姿勢から始めの声が掛かり、足は結び立ちから内八の字立ちとなり、手の甲を交錯している状態から正拳を握り体側に開き下ろす時に息を吐く。

✖ 動作に合わせてハッと息を吐く。

肩を上げて息を吐く動作はガク引きと呼ばれ、よく見られている。しかし、このガク引きのような大きな動作と大きな呼吸は必要ない

【重要】吸った時を特に見せないようにするのは隙だらけになり、その瞬間に腹を突かれると相当に効かされてしまうから。

吸う呼吸を見せることは健康法ではあっても、武術ではありえない

(03)01:右足を内に回しながら前に進めるとき、両腕が交差し足は内側にある時点まで息を吸い、

(03)02:両腕受け&右足が外に踏み出した時に息を吐く。ここでもガク引きはせず、腹を圧縮するようにし、

(03)03:ごくごく小さく発声するように吐く

(04)左手を引きながら、吸い

(05)突きながら吐く

✖腕を突く時に、大きくヒザでタメを作り同時にハッと大きく発声しながら息を吐いてはいけない

(06)腕受けの際は、外側に下がっている時に吸い

(07)内側を挙がってくるときから、両腕受けになるまで吐く

サンチンの息の吐き方を身につけると息が長くなる。呼吸が長くなるとサンチンに掛る時間も長くなる。

【最重要ポイント】新しい空気を入れるよりも、古い空気を出していないことの方が疲れに通じる。大きく吸って、大きく吐いてという動作をしていると、実際には体の中に呼吸が通っておらず人間の体は軽くなる。少し口を開き、僅かに吸うと呼吸が体を通り、強い状態になる。つまり吸って、吐いてという呼吸を学ぶことで、最終的には吸ったり吐いたりするのではない、体の内面に流れる呼吸を身につけていく。

<この項、続く>

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Bu et Sports de combat カビブ・ヌルマゴメドフ ジャスティン・ゲイジー ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。ヌルマゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジー

【写真】予想外の一方的な展開になったのは──なぜか(C)Zuffa/UFC

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──UFC254におけるカビブ・ヌルメゴメドフ✖ジャスティン・ゲイジーとは?!


──序盤の打撃戦はともかく、テイクダウンから試合はヌルマゴメドフの一方的なモノになりました。

「ボクシングだけでいえばゲイジーの方が良かったです。1Rに右を当てて、ヌルマゴメドフをふらつかしていますし。ヌルマゴは上下で攻めてくる人間に対して、苦手にしている部分があります」

──ただし、ゲイジーは強烈なローキックの持ち主ですが。ローでKO勝ちもしています。

「まぁ武術的な理の話は理論であったり、技術の話になりがちですが、そこを突き詰めていくと今回の試合のように──そこを動かしているのは人間性、精神、思考ということになります。人間力が結果として質量を上げるということを感じます。

どこを目指してやっていくのか……何を目指しているのか。不利な試合に挑むというのは、指導をするにあたって非常に役立つことがあります。今回、ゲイジーはもう怯えていました。あのトニー・ファーガソン戦の強さはどこに行ったのかというほどに。なぜ、あのパンチをヌルマゴに打てなかったのか。

ヌルマゴのレスリングと寝技に対して自信がなかったので、あれほどまでにビビってしまったのではないかと思います。つまりは──ヌルマゴの凄まじいレスリング力とコントロール、そしてフィニッシュ力に対し、最悪の想定をしていなかったのではないかと。

試合でビビるというのは、自分を信じることができていないからです。では、どうすれば自分を信じることができるのか──まずは自分にとって不都合なことばかりを想定することです。最悪な状況を想定する。

そうなったときにトレーニングと稽古の違いが見られます。トレーニングは本人が最高のパフォーマンスを発揮するために行うモノです。最高のパフォーマンスが10だとすれば、トレーニングではパフォーマンスが12の人との溝は永遠に埋まらないです。しかし、10の人間が8しかない、7しか出せない状況に追い込めば、10を超えて12、15という力を出せることがあります」

──それが稽古ということですか。

「ハイ。稽古ですが、相当に厳しい稽古です。毎日が憂鬱になるような。ただし、そこを経験すれば試合前の恐怖や緊張はなくなります。緊張やプレッシャーは誰にでもあるからこそ、自分の心も体もぶっ壊れるような稽古をする。ただし、これは1人では無理です。選手と指導者の間にそこまでやる信頼関係があれば勇気を持って上がって行けると思っています。

ゲイジーはNCAAの強いレスラーをパートナーに練習をしていたとも聞きました。ヌルマゴの動きを想定して、そういうトレーニングをしたのでしょう。でも、そういうパズルが上手く組み合わさることは余りないです。

そういう方法論は通じない。方法論を動かすのは人間です。だから、どこまで想定していたのか。稽古の修羅道というのですが、挫折して嫌になるような修羅を何度見たかで、フッと乗り越える瞬間があります。

ゲイジーもレベルの高い練習はしていたはずです。ただし、修羅を見るまでの稽古をしていたのか。していたようには、私には見えなかったです。これは彼が負けたからではないですよ。負けても、それが見える選手はいます。ヌルマゴは子供の頃から、お父さんとやってきたのでしょう。息子だから、ダメなところをどんどんついていたでしょうしね。

ゲイジーがあそこまでビビっていたのは、稽古でそこまで追い込んでいないから。そうなると怖くなってくるんです。この試合で圧倒的にヌルマゴの質量が高くなったのですが、それはゲイジーがそうさせてしまったんです。ゲイジーの質量がいつもと比較して、全くなかった。怯めば、質量は下がります。そうなるとヌルマゴの質量は上がる一方です。

相手が自分にとって、そこまで強いと容易に分かる相手の時は、やはりそういう稽古をしなければならない。それはトップ・オブ・ザ・トップのUFCの世界戦かもしれないし、海外で戦う試合かもしれない。日本の大会でベルトに挑む試合、あるいは2回戦かもしれないです。でも、強大な敵と対することが分かっているなら、自分の限界から始める稽古を行い、乗り越えた自信がつくと試合でそこまでの精神的なプレッシャーには掛からない。そうなることで質量は下がらないです。

相手より自分の質量が低い場合は、相手の質量を上げさせないで戦うことが重要になってきます。つまり、いかに自分の質量を下げないで戦うのか。それは怯まないこと。その怯まないで戦う精神は、自分の限界を超える稽古で養われます。ただし1人では無理です。だからMMAの場合は、チームでやれるのか。そういう稽古をしているようには感じられなかったゲイジーは、大勝ちするか、一方的にやれるのか。そういう選択しか、ヌルマゴと戦うことでなかったように見えました」

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Bu et Sports de combat サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─04─「チンクチのかかった状態の突き」

【写真】当たった時の形はサンチンでなくても、状態はサンチン。それが武術のMMAにおける、活かし方だ(C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型を使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第4回──突きを追求したい。

<サンチン解析第4回はコチラから>


(01) 拳を出す時は

(02) ヒジが体側から離れる位置にあるところから、

(03) ヒジを中心に円を描き、

(04) ゆっくりと回転して拳甲が上を向くように打つ。拳先からカラダ全体が一つに繋がった状態、すなわちチンクチのかかった状態の非常に強い突きとなる。✖肩甲骨を意識して打っても強い突きは打てない

✖ヒジが体側から離れる前に拳が回転し始めると、腕の伸びる距離が短くなる

✖拳を高い位置からスタートさせると、弱い突きになる

✖上に向かって突きを出すと、弱くなる。チンクチが掛かっていない状態になっている

【重要】
サンチンで正しい突きの打ち方、腕の伸ばし方を習得すると、実際の試合で使うスピードが乗ったパンチも同じ原理・原則で打てるようになる。「それ以外のパンチは、体が嫌がって打たなくなります」(松嶋)。当たった時の形はサンチンでなくても、状態はサンチンになっている。動作と決め、つまり当たったときにカラダ全体が繋がっているのが空手の命である。ただし決めだけではボクシングや、MMAなど実際の格闘で使うことができない。型で養成した突きをボクシング的な練習で自分のリズムに落とし込むことが必要となる。ここに型を格闘に使う際の難しさがある。型で突きを養成し、ボクシング的練習で自分のリズムに落とし込むことで誰でも強烈かつ実戦的なパンチを身につけることができる

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Bu et Sports de combat サンチン ブログ 剛毅會 岩﨑達也 武術空手

【Bu et Sports de combat】武術で勝つ。型の分解、サンチン編─03─「引くという動きが一番難しい動作」

【写真】この拳を引いた構えのなかに、サンチンを知る要素が非常に多く含まれている (C)MMAPLANET

武術でMMAを勝つ。空手でMMAに勝利する──型を重視する剛毅會の武術空手だが、岩﨑達也宗師は「型と使って戦うということではない」と断言する。型稽古とは自身の状態を知り、相手との関係を知るために欠かせない。

サンチン、ナイファンチ、セイサン、パッサイ、クーサンクーの型稽古を行う剛毅會では、まずサンチンから指導する。そんな剛毅會の稽古には站椿が採り入れられている。5種類の型稽古にあって、唯一サンチンのみが意味を吸いて吐くという意味での呼吸を学ぶことができる。

全ての根幹となる武術の呼吸を学ぶことができる──サンチンの解析、第3回──両腕受けから、最も難しいといえる拳を引く動きを追求したい。

<サンチン解析第2回はコチラから>


✖両腕受けで、ワキの下に拳ひとつ入るぐらいのスペースがないと、手の位置が低くなり、相手の攻撃が入りやすくなる

✖拳が前に出過ぎると、さらに入りやすくなる。顔面だけでなく、禁的攻撃を受ける

(01) 正しい構えだと、非常に遠く感じ攻撃は届かなくなる。禁的蹴りも入りづらくなり、何より安心して構えることができる

(02) 両腕受けから左で突く。突くためには拳を引く動作が必要だが、この引くという動きがサンチンで一番難しい動作になる

(03) 拳を引くヒジをしぼって、力をいれないように引く。力をいれないでも、締まるようになる

(04) 引いた拳の位置は、肋骨の一番下に鉄槌が軽く食い込むように持ってくる

この引いた時に、ヒジがやや内側を向いている。これによって、筋肉が背骨側に締まり、縦と横に筋肉を締めることになる。この筋肉の収縮をヒジを出すことで開放する。骨を動かしていると、筋肉がついてくる動きによって、ガマクがかかった突きとなる

【重要】肩を下げて、ヒジを締める。サンチンでは、どの状態でも重要な点

✖ヒジを引いた時の注意点は肩が上がらない、ワキをあけない、締まらないからといって無理やり締めるようにしない。ヒジが内側を向いていなく真後ろに引かない──という4点だ

✖ヒジを内側に入れようとして、腰を捻ると筋肉の横への収縮が弱くなり力は入らない。腰の横回転で打つと、もともとパンチ力の強い人間のパンチは強く、そうでない人間のパンチは弱い。誰もが強く打てる原理・原則の下、威力のある突きが打てる武術空手の突きとは違う

<この項、続く>

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Bu et Sports de combat Interview アブドゥルラクマン・ドゥダエフ ダニエル・オリヴェイラ ブログ 岩﨑達也

【Bu et Sports de combat】武術的な観点で見るMMA。オリヴェイラ✖ドゥダエフ「横蹴りバランス」

【写真】肉弾相打つといった消耗戦を制したオリヴェイラ、彼の勝利はドゥダエフの正面と横蹴り、2つのバランスの違いにあった(C)ACA

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点でMMAマッチを岩﨑氏とともに見てみたい。

武術的観点に立って見た──ACA112におけるダニエル・オリヴェイラ✖アブドゥルラクマン・ドゥダエフとは?!


──今回は日本や北米なく、ロシアからブラジル人とロシア人ファイターの対戦です。

「まず、この試合は最近のUFCの5分✖5R戦で見られる燃費合戦とは違い面白かったですね。ドゥダエフって、チェチェン人ですよね。チェチェン……カフカスという地域は、僕らにはまだ幻想を抱かせる響きを持っています。ドゥダエフなんて、ソ連崩壊時の極真のチェチェン支部長の名前ですからね(笑)」

──アハハハハ。

「まぁ、こういう選手は強いですよ。ただしドゥダエフはパンチが打ちたくてしょうがない構えなのに、良いのは蹴りという一風変わった選手でした。横蹴りバランスと私は呼んでいるのですが、サイドキックを出せるような構えで。最初はガードが高くて、小さな構えだったのでフック系の選手かと思いましたが……。

そういうフック系の選手かと思っている間は、オリヴェイラの間でした。あまり良いパンチを打っていないから。オリヴェイラは圧力とか余り感じていなかったと思います。それが、いきなり後ろ蹴りをスコンと入れて。その途端に間がドゥダエフになりました。そうすると、オリヴェイラが急にガクンとなって。

その時に気付いたのですが、ボクシングの構えだとあんな風にスムーズに蹴りを出すことはできないんです。前蹴りにしても、回し蹴りにしても。特に彼が器用に使っていた後ろ蹴りなんかは。後ろ回し蹴りも使うし、直線的な後ろ蹴りをよく使っていました。これは横蹴りバランスだと。横蹴りバランスは、骨盤の動きがスムーズになって上手く蹴ることができるんです。フルコンタクト空手とか散打が盛んだからなのか、ロシアにはこういう選手は多いですね」

──確かに北米系の選手では、そういう傾倒の選手は極端なサイドキックを使う選手ぐらいで、あまり見ないです。

「それは逆に横蹴りバランスだと、MMAでも見られる勢いのあるフックとか打てないからでしょうね。横蹴りバランスは……ジョン・ジョーンズぐらいですかね、米国では。TJ・ディラショーなんかは正面バランスでパンチから蹴り、蹴りからパンチをしています。そういう上下の攻撃をどちらも見せることができる選手は、米国ではまだとても少ないです。どうしてもMMAは蹴りが得意、パンチが得意という風に分かれる傾向にありますから」

──そしてドゥダエフは蹴りの選手だったと。

「そうですね。ドゥダエフはパンチから蹴り、蹴りからパンチという風に連係されておらず、完全に蹴りとパンチがバラバラです。そして後ろ蹴りや回転系の蹴りを出すときは横蹴りバランスになっています。

横蹴りバランスは先を取るのに適しています。よって横蹴りバランスの時は自分の間だったのに、彼はパンチを打ちたがっていた。パンチの時は正面バランスになり、そのまま左のハイキックを出した時に、右ストレートを合わされてダウンを喫しました。横蹴りバランスで回転系の蹴りを出している時はドゥダエフの質量が高いですが、正面を向くとオリヴェイラになっていました。結果、ここぞという時にドゥダエフが正面バランスになるので、逆にオリヴェイラが要所を抑えるような試合という風になっていきましたね」

──オリヴェイラの攻撃は、遠くからオーバーハンドを放り込むようなことが多くなかったでしょうか。

「後ろ蹴りを被弾してから、間合が遠くなりました。それからもオリヴェイラのスピニングバックブローの直後に、ドゥダエフが後ろ回し蹴りを狙うなどフルコンタクト空手のような間合で戦う場面もありましたが、徐々にドゥダエフが下がるようになっていったんです。

ダウンもあってバックを取られ、RNCを狙われた。スクランブルの攻防が入ると、オリヴェイラの方が上でした。それもシングルレッグで倒されたときは、ドゥダエフは正面バランスなっていて、オリヴェイラの間だったんです。ドゥダエフは横蹴りバランスから二段蹴りを使うなど入りは良かったのですが、すぐに正面バランスを取ってしまう。そこで勝つなら組みだっていう勢いで、オリヴェイラが飛び込んでいました」

──それでいて、オリヴェイラの腹へのヒザ蹴りで勝負は決しました。

「最後のヒザは完全に顔面だと思ったところで、腹に入りましたね。ただし、チェチェン人なら腹で倒れちゃダメですよ(笑)。お前、そこは耐えろよと。まぁ、あの構えは腹が弱いです。少し前傾、お腹を引いてガードを固める。猫背になっていて、距離は遠く感じるのですが、あの構えは間が完全に蹴りになってしまいます。

それとドゥダエフは正面になった時の技がなかったように見えました。正面になるとテイクダウン、右ストレート、そして最後のヒザ蹴りと、攻撃を受けていました。横蹴りバランスの時と比較して先が取れなくなっている。正面バランスでは武器がなかったからだと思います。

しかしACAは面白いですね。と同時に米国で練習しているロシア人と比べて、ロシアがベースのロシア人選手は強いからこそ、試合の組み立てがない。もう自分の強さを100パーセント信頼している。こういうところでブラジルや米国人選手に遅れを取っているかと感じました──MMAとしては。ただ、元々の強さはロシア人です」

──ACAはUFCに次ぐレベルにあるといっても過言でないです。軽量級のチャンピオン達がUFCに進出し、ピョートル・ヤン、ザビット・マゴメドシャリポフ、アスカル・アスカロフと完全にトップですし。

「日本人選手には、ACAは出るなって言いたいですね(苦笑)。青木選手も以前、ロシアは掘るなと言っていましたけど、本当にそういうプロモーションです。危ない。でも、ここに挑もうとした日本人選手は覚悟決まっていますね。

それと横蹴りバランスなんですが、MMAで相当に使えるはずです。やれることが、かなりあるんです。私たちは70年代、80年代の極真空手だったから正面バランスだったけど、フランシスコ・フィリョやブラジル人は横蹴りバランスでした。

そしてK-1にいってからも、横蹴りバランスからの突きでアンディ・フグをKOしたのですが、キックボクシングを習うようになって正面バランスになると、フィリョのパンチの威力は落ちしてしまって。本当に面白いモノです。股関節の固い人っていうのは蹴りがなかなか難しいのですが、骨盤の使い方で足は上がります。だから回し蹴りだと難しくても、横蹴りバランスにすると色々なことができるようになるんです。で、横蹴りバランスというのはナイファンチなんです」

──そこは非常に興味深いです。是非また、教えてください。

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Interview ONE ONE Reign of Dynasties II ONE112 ブログ 岩﨑達也 澤田龍人

【ONE112 II】半年間、グラップリング無し──澤田龍人に旧師からエール「顔を八つ裂きにされようが」

【写真】レスラー、そしてMMAファイターの澤田。会話の端々で聞かれる言葉は『押忍』だ(C)MMAPLANET

16日(金・現地時間)に配信されるONE112「Reign of Dynasties II」でミャオ・リータオと対戦する澤田龍人。

その澤田がコロナ禍の影響で3月の終わりから組み技の対人練習をしないで、今回の試合に臨むことをインタビューで明かした。

このような前代未聞の状態で戦う澤田に、かつての師である剛毅會の岩﨑達也氏からエールを送ってもらった。そこには連綿を受け継がれる──「千日を以って初心とし、万日を以って極とす」の精神が宿る言葉が澤田に届くか。


──かつての教え子、澤田龍人選手が半年間グラップリングの対人練習ができなくて、試合に挑むことになりました。こういう状況で元師匠として、澤田選手にどのようなアドバイスを送ることができますか。

「まぁ、MMA選手が組み技の練習ができなくて試合をするってなると、本来は私なら出場させません。でも、龍人はもうEvolve MMAの所属選手で給料をもらって練習し、試合をしている。そういう環境を彼は手に入れたんです。だから、言われればやるしかない。

そして、そのやるしかないという状況が彼にとってチャンスだと思います。龍人に欠けていたのは『絶対に負けない』っていう意識でした。気持ちじゃないです。意識です。ずっとMMAをやってきたんだから、組み技で勝負するんだ。半年間やってなくても、組んだら絶対に離さないんだ。そういう気持ちではなく、Evolve MMAの一員として意識としてそういう風になれるのか。なるしかないんだから、もうそういう意識で戦うだけです。

相手の中国人選手より、テイクダウンは強いだろう。なら5分3R、ずっとテイクダウンして抑える。立たれても倒して抑える。テイクダウンの評価が低いといっても、倒して抑えて、殴らせない。とにかくガムシャラに組みついて。もちろん、その前に打撃を見せる必要がありますけど、ガキの頃からやっているレスリングで死んでも負けねぇって、そうやって戦えば良いんです。顔を八つ裂きにされようが、組みつく。それでも組みに行って負ければしょうがないです。それが勝負です。

でも、それもせずに平気に負けるなよって。食らいつく。修斗でできなかったことを、今、この試合でやる。Evolveの一員として、AACC時代になかったところを見せる。お前、そのためにシンガポールに行ったんだろ。やるしかないという意識でやるしかない」

──分かりました。記事を通して、澤田選手に元師匠からのエールを送らせていただきます。

「死んでも負けるな。それだけです。能力はあるんです。この状況が龍人を強くさせることを願っています。小賢しいクソの役にも立たない技術でなく、やるしかないという意識で戦ってくれということです」

■視聴方法(予定)
10月16日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE App
毎週木曜、26時05分~テレビ東京「格闘王誕生! ONE Championship」

■ONE Reign of Dynasties II対戦カード

<キックボクシング・バンタム級/3分3R>
秋元皓貴(日本)
ジャン・チェンロン(中国)

<ムエタイ・フェザー級/3分3R>
サゲッダーオ・ペットパヤータイ(タイ)
ジャン・チュンユ(中国)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ケアヌ・スッバ(マレーシア)
タン・カイ(中国)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
アズワン・チェウィル(マレーシア)
ワン・ウェンフェン(中国)

<ストロー級(※61.2キロ)/5分3R>
澤田龍人(日本)
ミャオ・リータオ(中国)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
モハメド・ビン・マムード(マレーシア)
ハン・ズーハオ(中国)

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