【写真】ジャブを制するものが試合を制す。この試合の流れを決めたのは中島のジャブだった。(C)RIZIN FF
9月24日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されたRIZIN44で、バンタム級キング・オブ・パンクラシストの中島太一が元修斗世界バンタム級王者の岡田遼に判定勝利を収めた。
text by Takumi Nakamura
試合は中島がジャブで間合いを制し、テイクダウンを許した場面も「岡田選手が力を使っていたのが分かったから」と振り返るほど、冷静に試合を支配したものだった。今回のインタビューではジャブ誕生秘話に迫りつつ、「この階級では負ける気がしない」というバンタム級での戦いについても訊いた。
――9.24RIZINさいたま大会では岡田遼選手から判定勝利を収めた中島選手です。少し時間も経って、改めてあの試合を振り返っていただけますか。
「修斗の元世界チャンピオンの岡田選手にああいう勝ち方が出来たのは少し自信になったんですけど、自分の試合を見直して全然力を出し切れてないし、KOしないといけない内容だったという反省があります」
――試合前はどんな試合を想定していたのですか。
「ずばりKO出来ると思ってました。すべてにおいて自分の方が強いと思っていたし、想像以上に手こずったという感想です。試合前は頭のなかでフィニッシュするイメージが完璧にできていたので、それができなかった自分にガッカリです(苦笑)、仕留めきれなかったという感想です」
――試合序盤は中島選手が左ジャブ・右カーフキックを当てる展開でした。まずはああいった攻撃で削って行く作戦だったのですか。
「そうですね。僕の得意な打撃で削りながら、どこかで倒せると思っていました。ただ僕の打撃は当たっていましたけど、仕留めに行くほどのダメージではなかったので、しばらくいかなくてもいいと思ってやったんです、でも映像を見直すと『もっといけよ!』と思いました(苦笑)。試合を通して、岡田選手は思ったよりタフでしたね」
――その中で1Rにテイクダウンを奪われる場面が訪れます。試合直後はテイクダウンされても問題なかったと発言されていましたが、実際はどういう状況だったのですか。
「岡田選手に組まれた時にフルパワーで組んできた感じがあったんですよ。結構力使ってるなって。逆に僕はここで力は使わずに少し休もうと思っていたら倒されちゃって。まあ倒されても逃げられると思っていたので、タイミングを見て逃げようと思っていました」
――中島選手が簡単にテイクダウンされたのが意外だったのですが、そういった考えがあったうえでのことだったのですね。
「やっぱり簡単にやられたように見えますよね(苦笑)。でも僕的には全然大丈夫でしたよ。むしろテイクダウンされたあとも、岡田選手がすごく力を使って抑え込んでいて。僕はただ何もしないで寝ていて立ち上がるチャンスを待っていて、テイクダウンはされましたけどダメージもスタミナのロスもなく、逆に岡田選手はあの攻防で結構スタミナを使ったと思います」
――1Rが終わったあとのインターバルはセコンドとどういった会話をしたのですか。
「僕からは『相手のパンチも見えているし、相手は組みたがっているから、このまま打撃でいきます』と伝えて、八隅さんの考えも同じで『打撃でいこう』と送り出されました」
――2Rは1R以上に中島選手の打撃が当たり始めます。ただタフな岡田選手に決定打を与えるまでには至りませんでした。
「効いてたんですよ、絶対!でもこの試合に倒する気迫と根性で立ち続けていたんだと思います」
――ジャブも左ストレート気味に当たっていましたが、拳の感触はいかがでしたか。
「どうだろうな…殴り応えはそんなになかったかな。むしろもっと(打撃を)当てたかったです」
――では3Rはどういった考えで戦っていたのですか。
「実は1・2Rで結構殴っていたので、僕が疲れてしまったところがあったんですよ。だから自分から倒しに行こうというよりも、このまま削り続けて倒れてくれたらいいなという頭になってしまいました。今インタビューを受けていて、その気持ちがダメだったような気がします(苦笑)。もっと自分から殴って勝つという気持ちでいく必要がありますね」
――打撃でなく肩固めを極めかける場面もありました。あの時の極まり具合はいかがでしたか。
「あれは今更ですけど絶対(一本)取れる形だったんですよ。でも僕はあのまま肩固めを極めるより、トップキープして殴った方がレフェリーが試合を止めると思ったんです。結果論ですが、言い訳しないで力を使い切って肩固めを極めればよかったです(苦笑)」
――肩固めとパウンドアウトの2択になった時にパウンドアウトの方を選んでしまった、と。
「そうは言っても肩固めの形は完璧だったので、あのままある程度力を入れていれば極まると思ったんです。でも岡田選手も我慢していたので、このまま力を使って極めるか、パウンドに切り替えるかを考えたとき、パウンドに行ってしまいましたね」
――終了間際には踏みつけとサッカーボールキックもありましたが。
「あれはもうパウンドアウトしようと思って思いっきりいきました。ただ練習で踏みつけをフルパワーでやることなんてないから、ほぼほぼ初めてだったんですよ。意外に踏みつけを当てるのって難しいですね、相手もガードポジションで暴れるんで(苦笑)」
――最終的には危なげない試合運びでの判定勝利でした。幾つかポイントはありましたが、やはりジャブで距離・間合いを支配したことが勝因だと思います。中島選手はどこで打撃の練習をやっているのですか。
「ボクシングは角海老ジム、ムエタイは東長崎のYKジム、等々力にあるコアズというトレーニングジムでもミットを持ってもらっていて、色んな角度から打撃を磨いています」
――3つのジムを拠点にしているのですね。打撃はトレーナーを変えずに、一人のトレーナーと一緒に練習を重ねて技術を練っていく選手が多いと思うのですが、中島選手の場合は全くの逆なのですか。
「そうですね。同じ人にずっとミットを持ってもらっていると息は合ってくると思うんですけど、息が合いすぎるのも良くないと思うんですよ」
――気持ちよくミットを打たせてもらったり、良い部分を出してもらうミットはマイナス面もある?
「まさにそれですね。代わりに言ってくれてありがとうございます(笑)。だから僕は色んな人にミットを持ってもらって、その時々でベストなパンチを打てるようにしたいし、誰にミットをもらってもいい距離感やいいインパクトでパンチを打てるようにしたいと思ってやっています」
――中島選手がそういった考えでやっているのは意外でした。あのジャブはてっきりボクシングジムのトレーナーさんとマンツーマンで練習して作り上げたジャブだと思ってたので。
「あと僕は一人で練習するのが好きなんですよ。具体的にはシャドーとサンドバックで、それだけで1時間半とかやります。打つパンチも左だけとか限定することもあって、あのジャブはそうやって創り上げたものなので年季が違います」
――興味深い話をありがとうございます。あれだけジャブが当たって間合いをコントロールできていれば、テイクダウンの攻防でも有利になりますよね。
「僕もそう思ってジャブを磨いてきたんですけど、今の悩みはジャブで距離を支配することを意識しすぎちゃってるんですよね。やっぱり相手をKOしたり、倒しに行く時って、多少強引に仕留めに行かないといけないと思うんで、岡田戦はそこが足りなかったです」
――こうしてお話を聞いていると、反省点が多かった試合のようですね。
「もうそればっかりですよ(苦笑)僕はまだ自分の強さを見せられてないと思うし、今回の試合でも仕留めてアピールしたかったんですけど、それが出来なかったんで本当に悔しいです」
――KO勝ちではないにせよ、フルラウンド通して試合をコントロールすることも強さのアピールだと思います。
「いやいや、まだまだあれじゃ足りないですし、同じように相手を圧倒していてもKO勝ちと判定勝ちでは周りの反響が全然違うんですよ。もちろん判定勝ちでも僕の強さを分かってくれる人は分かってくれるんですけど、評価してくれる人の数で言ったらKO勝ちよりも少ない。だから悔しいし、そこを一つ超えたいのでKOで勝たないといけないと思っています。自分は強い選手とやれば、もっと自分の強さが分かってもらえると思うので、早く強い人とやりたいです」
――試合後のマイクでも「バンタム級では負ける気がしない」という言葉がありましたが、その自信は今も変わらないですか。
「それは昔からずっと思っています。ロシアのACBでもフェザー級でやってきたし、ロシアから帰ってきてパンクラスでも本当に強い人たちとやってきたし、その中でレコード的に負けた試合もありますけど、内容的に勝っていた試合をやってきた自負はあるので、バンタム級だったら絶対負けないです」
――振り返れば当時のキャリアでロシアで定期的に試合を重ねたことは大きなプラスになっているようですね。
「色んな巡り合わせでACBと契約させてもらって、あのタイミングで海外で試合をやらせてもらったことは本当に大きな財産ですし、あの経験は今の自信につながっています」
――次の舞台として狙うはRIZIN大晦日だと思いますが、そこに向けた想いを聞かせてもらえますか。
「僕がやらせてもらえる相手は限られていると思うし、その選手たちが大晦日に試合できる状況か分からないので、僕は大晦日に試合があると信じて練習するので、正式オファー待っています!」
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【RIZIN44】中島太一が語る岡田遼戦「シャドーとサンドバックだけで1時間半。僕のジャブは年季が違う」 first appeared on
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