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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:9月 マラブ×オマリー「マラブは変な人。だからあれをやりきれる」

【写真】ファイトスタイルそのものは疲れるスタイル。それを5Rやりきってしまうのがマラブの強さだ(C)Zuffa/UFC

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾、良太郎というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2024年8月の一番──9月14日に行われたNOCHE UFC 306のマラブ・デヴァリシビリ×ショーン・オマリーについて語ろう。


――9月の一番はマラブ・デヴァリシビリ×ショーン・オマリーの一戦を選んでいただきました。この試合はマラブの強さが目立った試合だったと思います。

「色々と僕の中でも見どころがあった試合で、マラブのようなタックルマシーンに対して、オマリーのようなストライカーがどう戦うのか。そこは自分自身の現役時代からの永遠のテーマでもあり、この試合でもそこを主に見たい、もっと言うならオマリーがどういう戦い方をするのかを見たかったんですね。結果的にはオマリーがストライカー病というか、マラブのタックルを警戒して手が出ないという、よくあるパターンにハマっちゃったなっていう感じでしたね。と同時に、このテーマはまだまだ続くなと思ったのが正直な感想です」

――試合全体を通して見ると、1Rに2回組まれてテイクダウンを許してしまったことが、2R以降の試合展開に影響を与えたと思います。

「ずばりそれだと思いますね。1Rが始まってテイクダウンされるまでのオマリーは、割と前蹴りだったり攻撃が出ていたんですよね。逆にマラブはいつもよりちょっとな控えめで、タックルに行きにくそうに見えました。でもそこで1回マラブがテイクダウンを取ったことで、徐々にオマリーの手が出なくなってきて。オマリーからすると打撃を出すとマラブに触れる、警戒して打撃を出せないというパターンにハマっていった印象です」

――仮に組まれたとしてもマラブのクリンチをはがしたり、完全には寝かされない状況を作っていれば違ったと思うのですが、しっかり組まれてしまった印象があります。

「そうなんですよね。結構ちゃんと組まれてしまって、その後のラウンドもすぐに立ち上がることができない展開になってましたよね。それだけ1Rにテイクダウンされた時に、もうテイクダウンされたくないなというのがオマリーの中で出てきちゃったんだと思います。マラブは割とテイクダウンしても相手を立たせるタイプなんですけど、オマリーは一度組まれて尻餅をつかされると、そのまま動きが止まったり、下になる展開が長かったように見えました」

――もちろんオマリーもレスリング・組み技への対応はできる選手だと思いますが、マラブのような超トップ選手との対戦は少なかったと思います。

「まさにそれもあって、正直過去の対戦相手を見ると、あまりマラブのようなタイプとはやってないんですよね。アルジャメイン・ステーリングとやった試合が初めてレスリングが強力な相手とやった試合だと思うんですけど、アルジャメイン戦も2R開始直後にパコーン!と一発で倒しちゃったので、レスリングや組みの技術をちゃんと見ることが出来ないままだったんですよね。そういう部分で、マラブとやってどうなのかなと思っていたのですが、 やや安易にグラウンドで下になったり、ガードポジションを取ったりしていて。オマリーはグラウンドで下からガンガン戦えるタイプでもないと思うのですが、そこで立ちに行く感じでもなかったので、組まれる・テイクダウンされるとキツいというのが見えちゃいましたよね」

――どうしてもマラブクラスのレスリング力がある選手と対戦すると、その部分で差が出てしまいますよね。

「そこは相性の問題もあると思います。ストライカーとレスラーは、単純に言うとどうしてもストライカーは相性が悪くて、その相性の悪さがもろに出ちゃったのかなと。例えばジョゼ・アルドやピョートル・ヤンがマラブとやった時、アルドは下がりながらテイクダウンに対処する感じで、テイクダウンは許さなかったんですけど、その代わりにケージに押し込まれ続けたんですよね。で、ヤンはスイッチを使いながら対応しようとしたのですが、マラブにそこを上回られてしまうという試合でした。じゃあオマリーはどうなんだ?というところだったのですが、結果的にオマリーはアルドやヤンのところまではいかなかったなというのが正直なところですかね」

――見ている側からすると、テイクダウンをディフェンスできないなら、打撃を思い切り当てにいくという選択肢はなかったのかと思うのですが、そこはファイター側からするとどうなのでしょうか。

「あとは一発を当てに行きたいは行きたいんですけど、結局そこで組まれちゃうんで。一発を当てるタイミングを探っているうちに結局(試合が終わる)なんですよね。ようは一発を当てるための距離になる=組まれる距離なので、行ったら組まれるという感覚もあるんですよ、タックル系の選手に対しては。だから一発を当てるための行き方が難しいんですよね、単純に思いっきりいけないという」

――その一発を当てるためには組み立ても必要だし、そうしているうちに組まれるリスクが大きいということですね。

「一発にかけるということは、ある程度の強打を当てて、その一発でKOするなり、ダウンさせるなり、大ダメージを与えるのが欲しいじゃないですか。リスクを追う分の見返りが欲しいというか。それに見合う一発を当てる距離まで詰めるというと、またそこですごく難しくなってきますよね」

――あとマラブの方もテイクダウン以外でかなり細かいパンチのフェイントを入れたり、目線を散らしたり、体を上下させたり、常に動き続けていますよね。

「動きそのものが多いですよね。絶対打撃が届かない距離でもシャドーボクシングやスイッチしたり、地味な動きなんですけど、それをずっと繰り返している。ただタックルだけ狙っているより、こういう動きをやられると嫌ですよね」

――相手からすると、あれだけちょこちょこ動き続けられると、フェイントだと分かっていても引っかかってしまうものですか。

「あとはやっぱりああやって動いている中で、本物と偽物の(動きの)違い、本当に来る時と来ない時って、 何もしないでバッ!と来るより、色々と動いてる中でバッ!と来る方が、対応も遅れると思うんですよね。そういう部分はあると思います。だからあれだけ目の前で動き続けられていたら、やりにくいと思いますね」

――オマリーも5Rに三日月蹴りを効かせる場面がありました。メラブは試合後に「効いていない」と言っていましたが……。

「あれは効いていたと思います。分かりやすくお腹をさすってましたからね」

――右の三日月蹴りをもらったあとのシーンですが、あの前の左の三日月蹴りも効いていたと思います。

「あれも絶対効いてましたね。ボディが効いたかどうかは本人しか分からないし、効いていても『効いてない』って言い張ると思うんですけど、セラ・ロンゴ・ファイトチームで一緒に練習していた(井上)直樹くんの話だと、練習でもマラブは腹を効かされていたことが結構あると言っていたんで、マラブは腹が弱いんじゃないか説も出てますね。だから試合展開や相性もあるんですけど、あれがもっと早い段階で来ていたら、面白かったのかなという気もしますよね」

――それまでの打撃とは違い、明らかにオマリーのプレッシャーがかかっていた時間でした。

「そうですね。あれはオマリーが5Rに判定で勝つのがほぼダメだろうと思っていた中での開き直りがあったから、また前に出始めたんだと思います。もうテイクダウンされてたとしてもしょうがないって気持ちがあったからこそ、もう1回(打撃を)作り直したんじゃないかなと思います」

――5Rに弱みを見せたメラブですが、あのテイクダウンを軸にしたファイトスタイル&無尽蔵のスタミナは真似できないですよね。

「あのスタミナは異常ですね。ファイトスタイルそのものは疲れるスタイルだと思うんですよね。今回の試合はトップを取ってからキープする時間が長かったですが、他の試合では結構立たせるんです。で、また倒す。倒して、立たせて、倒して…を繰り返して倒してテイクダウンの数で印象つけるみたいな、めちゃめちゃしんどい戦い方をしているので、それが出来るスタミナは尋常じゃないですね。対戦相手=タックル受ける側としては、やっぱりしつこくタックルを切って切って、マラブが疲弊してきてタックルに入れなくさせるというのも1つの作戦としてあると思うんですよね。ただマラブは疲弊しないから、その希望がなくなってしまうという」

――あれだけスタミナがあるとテイクダウンの攻防でマラブを疲れさせるという作戦もチョイスできません。

「テイクダウンそのものもバーン!と入って綺麗に倒しちゃうじゃないですか。一回ケージに押し込んで、低い姿勢でケージレスリングを頑張って倒すという展開が少ない。テイクダウン能力の高さも、マラブがバテにくい要素だと思います」

――水垣選手はどういうタイプだったらマラブを攻略できると思いますか。

「攻略法がなかなかないですよね(苦笑)。それこそシャーウス・オリヴィエラみたいに打撃があって、グラウンドで下になっても戦えるとか。そういうファイターだったら可能性があるのかなっていう気はするんですけどね」

――マラブとレスリング勝負できるか、レスリングそのものを捨てて勝負するか。

「そうなんですよ。さっきも話したようにジョゼ・アルドはほとんどテイクダウンを許していないんですけど、テイクダウンディフェンスするためにずっと押し込まれたままで判定負けしているんです。テイクダウンされないことに集中すると打撃が出せないし、相手がバテない限りは押し込まれ続けるので、ポイントを取られちゃいますよね。だからメラブ攻略は本当に難しいです。

あと試合とは関係ないですけど、メラブってちょっとおかしいじゃないですか。試合が始まった瞬間、オマリーのセコンドと言い合ったり、試合中にオマリーにキスしてハーブ・ディーンにめちゃくちゃ怒られたり。あとは試合前にインスタグラムで氷が張ってる湖に飛び込んで、練習でカットしたところを縫ってる動画をアップしてダナ・ホワイトに『アイツはレベルが違うバカだ』ってキレられてましたよね。普通はあんなことしないですよ(笑)」

――大分変わっていると言えば変わっていますね…。

「基本的に変な人なんだと思います(笑)。でも、だからこそああいうファイトスタイルをやりきれちゃうというか。普通は5Rマッチでああいう試合はやろうと思わないし、それをやっちゃうというのは何かぶっ飛んでる新しいタイプですよね」

――敗れた方のオマリーについても一言いただけますか。

「あと僕の中でオマリーとコナー・マクレガーを重ねていて、マクレガーもここで負けるだろうと思われている試合で勝ち続けて、オマリーもそういうキャリアだったと思うんですよ。マクレガーはネイト・ディアスに負けてライト級に上げてタイトルを獲っていますけど、最後はハビブ・ヌルマゴメドフにやられて、それからスーパーファイトを中心にやっていくスーパースター路線に行ったじゃないですか。じゃあオマリーはここで負けて、これからどうなっていくのかなと。そこにも凄く注目しています」

――さてマラブの次の挑戦者にとしてウマル・ヌルマゴメドフが噂されています。

「そこは僕、すごく楽しみなんですよ。ウマルもレスリング力があるから、そこでも勝負もできるし、打撃という部分ではウマルの方が上だと思うんですよね。だから打撃+レスリング力でどこまでマラブに対抗できるのかっていうところですよね」

――前回水垣さんにウマル・ヌルマゴメドフ×コリー・サンドハーゲンを解説していただきましたが、マラブよりもウマルの方が技の引き出しは多い印象です。

「例えばウマルが一回・一発のテイクダウン勝負で負けたとしても、そこからのスクランブル勝負で後ろに回るとか、下からでも組み勝つみたいなものを見せてくれたら面白いなと思います。何度か言っているようにマラブが立たせるタイプなので、仮にマラブに3回テイクダウンされても立ち続けて、逆にウマルがテイクダウンもしくはスクランブルで上を取ってキープする。それをしつこくやれば、ウマルも強いと思います。あとはクリーンテイクダウンできなくても、スタンドバックの攻防に持っていければ、ウマルがマラブにヒザをつけさせて殴って、もう一回立って打撃をやるとか、そういうことが出来れば、ウマルにもチャンスが出てくると思いますね。この試合はぜひ実現させてほしいです!」

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【UFC306】展望  チケット代250万円!! 史上最強のワンオフ大会メイン=世界バンタム級選手権試合を読む

【写真】これぞ、どちらが自分を通し切る我儘さを貫けるか──という一戦だ (C)MMAPLANET & Zuffa/UFC

14日(土・現地時間)、ラスベガス近郊のパラダイスにあるスフィアにて、NOCHE UFC 306が行われる。昨年9月にオープンしたばかり、世界中で話題の地球上最大の球形建造物におけるUFCの記念すべき初興行のメインを飾るのは、王者ショーン・オマリーに、ランキング1位のマラブ・デヴァリシビリが挑戦するバンタム級タイトルマッチだ。
Text by Isamu Horiuchi

ラスベガスに出現した巨大な輝く地球儀の如きアリーナ=スフィアは、NYのマジソン・スクエア・ガーデン社により、合計23億ドル(3200億円以上)という桁外れの建築費をかけて作られたエンターテインメント施設だ。建物の外壁、内壁ともに最高解像度の巨大LEDスクリーンが全面に張り巡らされている。


前代未聞の興行のメインイベンターとしてUFCが選んだのが、バンタム級王者のショーン・オマリー

常に何らかの形でライトアップされているその姿は、外から見ても壮観極まりない。昨年11月に実に41年振りに行われたF1ラスベガスGPでは、F1のオーナー企業であるリバティ・メディアはストリートコースが、スフィアが所有する土地を使用するためにレース期間中はこの奇抜な建築物に使用料を支払い、その間スフィアは閉館していたという逸話を持つ。F1ファンなら記憶に残っているだろうが、世界最速マシンが走るワキをこの球体上の建物は常に同GPのスポンサーの映像を流し続けていた。

さらに20000人収容可能なアリーナ内部においては、全視界を覆うスクリーンによる視覚効果だけでなく、あらゆる場所に響き渡る最高品質の音響システムと、風や香り、はたまた触覚までも刺激する4D技術を駆使した演出が可能で、誰もが人生で味わったことがないような「没入型」の体験が提供されるとのことだ。

そんな斬新すぎる巨大アリーナにおける初のプロスポーツ興行として、世界のエンターテインメント業界から注目を集めている今大会。ダナ・ホワイト代表の力の入れようも尋常ではない。サウジアラビアのリヤドで毎年開催される世界最大級の観光アトラクション「リヤド・シーズン」を開催する総合エンタータインメント庁をパートナーに得て、2000万ドル(約28億円)以上の金額を演出に注ぎ込んだという。

「これは一度きりのイベントだ。もう二度とないよ。ここでスポーツイベントを敢行した者は存在しない。私は今まで誰もやったことがないことを成し遂げたいんだ。不可能だと言われているけど、だからこそ最高に魅力的だ。そもそもスフィアは映画やコンサート用のシアターであり、我々が普段使っている照明設備も使えない。(スフィア初イベントとして行われた)U2のコンサートより、はるかに複雑な照明を使うことになる(※ちなみにU2のこけら落としライブは9月29日を皮切りに週に2、3回の頻度で2月まで実施されたが、F1ウィークの前後は11月4日から12月11日まで休演となっていた)」

昨年もメキシコ独立記念日に合わせて、ベガスのT-MobileアリーナでNOCHE UFC(ノーチェは古くからあるスペイン語で「夜」の意味。つまり「UFCナイト」といったところか)を開催したUFCだが、今回の大会の正式名称は「リヤド・シーズン・ノーチェUFC」となる。

「この大会は、メキシコのファイトカルチャーに向けた私からのラブレターさ」ともホワイト代表は語っている。選手たちも特殊効果の撮影に駆り出されているようで、照明設備や壁全面を覆うスクリーンがどう用いられるのか、入場シーン等で果たしていかなるスペクタクルが展開されるのか、それだけでも見逃せない注目のイベントとなっている。

チケットの最高価格は約250万円、一番安価の席でも約32万円という超高額の設定で販売開始したチケットはさすがに即完売とはいかず、変動価格制によって現在チケット代は半額ほどに下がっている。ゲート収入の見込みも大幅に下方修正され、演出費を賄うのがやっとの2100万ドルあたりを予想しているという(もっともこの数字でも、これまでの最高ゲート収入──UFC 205における1770万ドル──を大きく上回ってはいる)。素人目には果たして採算が取れるのかと心配になってしまうが、プロスポーツの枠を超越したイベントを開くことで新たなファンの獲得も期待され、長期的に考えれば大きな利益につながるという算段のようだ。

この前代未聞の興行のメインイベンターとしてUFCが選んだのが、バンタム級王者のショーン・オマリーだ。2017年のコンテンダーシリーズ2にて衝撃的なKO勝ちを収めてUFCとの契約を得て以来──薬物検査失格による2年のブランクはあったものの──順調にKO勝ちを重ねてボーナスの山を積み上げスターダムに駆け上がった。

2022年10月のアブダビ大会において元王者ピョートル・ヤンとの大激闘を判定2-1で制したオマリーは、昨年8月には長期政権を築いていた王者アルジャメイン・ステーリングとの大一番へ。

(C)Zuffa/UFC

2R、ステーリングのテイクダウンを巧みに凌ぐと強引に前に出てきた王者に対して、下がりながら完璧なタイミングの右ストレート一閃。

倒れ込んだステーリングに鉄槌とパウンドの追撃を浴びせ、鮮烈なTKO勝利をもって戴冠を果たした。そして今年3月の初防衛戦の相手には、UFCで唯一敗戦を喫しているチートことマルロン・ヴェラを指名。

(C)Zufffa/UFC

5ラウンドを通して打撃で一方的に試合を支配して判定3-0で完勝し、コナー・マクレガー以来のスーパースターへの道を着実に歩んでいる。

対するマラブ・デヴァリシビリは、ここまで10連勝中。底知れぬスタミナを武器にテイクダウンを仕掛け続け、相手が何度立ち上がろうと前に出て組み伏せ続ける、他には真似のできない戦い方を身上とする。2年前、ベガスのシンジケートMMAにて修行中の朝倉海と出会って意気投合したことで、朝倉のYouTube動画を通してその親しみやすい性格を知るファンも多いだろう。

デヴァリシビリは長いことトップコンテンダーの座にありながらも、チームメイトのステーリングが王座に君臨してきたためタイトル挑戦表明をせずにいた。英語を母国語としないジョージア共和国出身ということもあり、白星を重ねながらもなかなか北米のカジュアルファン層から注目を集められずにいた。

実は本人はUFCで初勝利を挙げた6年前からオマリーとの対戦希望を口にしていたが、オマリーは一切反応せず。昨年5月には、ステーリングと睨み合うオマリーのジャケットを背後から取り、自ら着用してケージに登ってアピールするという直接行動に出たデヴァリシビリ。

が、それでもオマリーは「なんとも馬鹿げた行動だよな。あの時俺は、どこかの従業員がこっちの上着を脱がしてくれているのかと思ったから、そのまま渡したんだよ。あれがマラブだったなんて気付きもしなかった。まあ、奴はこれでファンに少しは知られるようになったかもな。俺のジャケットを着ることができた人間という、ただそれだけの理由でね」とまるで相手にしなかった。

オマリー戴冠=ステーリング陥落により、ついにチャンスが巡ってきたかに見えたデヴァリシビリだが、新王者は話題性と自分のリベンジを優先し、ヴェラを初防衛戦の相手に指名した。その先にはフェザー級王者のイリア・トプリアとの対決を希望し「まあマラブのように注目度の低い選手の優先度は、どうしても低くなるよな」と語っていたオマリー。

(C)Zuffa/UFC

が、デヴァリシビリが今年2月にヘンリー・セフードに完勝し流れは変わった。

この試合結果を受けて、オマリーは自らのYouTubeチャンネルにて「俺はみんながイリア戦を望んでいると思っていたんだ。でもファンは『お前はマラブから逃げている』とか『次はマラブと戦うべきだろ』とかうるさく言ってくる。いいだろう、次はマラブだ。チートを倒したらね。KOしてやるよ。奴の動きは雑だ。対して俺は正確無比。奴には速すぎるし鋭すぎる。失神させてやる」と宣言した。

そして翌月オマリーは予告通りヴェラに完勝し、今回のスーパーイベントでの両者のタイトルマッチが決定したのだった。圧倒的な人気を誇るオマリーに先を越されてしまっていたデヴァリシビリだが、ひたすら勝ち続けることで説得力を得てファンの声を動かし、ついに実力で挑戦権を勝ち取った形だ。

UFC最大のスターである現王者オマリーと、自他ともに認める最強挑戦者デヴァリシビリによる頂上決戦となるこの一戦。自らを「スナイパー(狙撃手)」と呼ぶ王者オマリーは、卓越したタイミングで瞬時に相手の顎を撃ち抜く左右の拳を持つ。対するデヴァリシビリは、常に前に出て手を出してはテイクダウンを仕掛ける恐るべきハイペースの戦いを、5R完遂してしまう底無しの体力の持ち主だ。

つまりこの試合の戦いの構図は、先々月のエドワーズ対モハメッドのウェルター級タイトル戦、先月のデュプレッシー対アデサニャのミドル級タイトル戦と同様──圧をかけ間合いを潰しグラップリングに持ち込みたい総合格闘家と、フットワークと打撃を駆使してその圧力を無効化したいストライカーによる凌ぎ合いということになる。

上述の二戦ではいずれも圧力をかけて組みに持ち込んだ側が勝利しているが、だからと言って必ずしも今回デヴァリシビリが有利ということにはならない。たとえば先日モハメッドは、巧みなスイッチと打撃を用いてエドワーズを金網側に追いやり、逃げ場を塞いでからテイクダウンを決めてみせた。しかし──同様に打撃を駆使して組みに持ち込むタイプではあっても──デヴァリシビリの戦い方はまた異なるものだ。

常にオーソドックスから思い切り良く踏み込んでパンチを放ってゆくデヴァリシビリ。打撃勝負上等の姿勢を見せておいて、その距離から上体を下げて(レベルチェンジして)シングルを取りにゆく。あるいはワンツー等で踏み込んだその勢いのままレベルチェンジして組みにゆく。

つまり、先日のモハメッドのように打撃で圧をかけ相手の逃げ場を封じてからテイクダウンに行くのではなく、デヴァリシビリはテイクダウンをまるで打撃のコンビネーションの一部であるかの如く放つ。そして、何回振り解かれようがそれを続け、やがて相手を呑み込んでしまうのが真骨頂だ。

無敵のデヴァリシビリ・スタイルがオマリー相手には命取りになる?!

(C)Zuffa/UFC

昨年3月のピョートル・ヤン戦では、5R中に何と48回テイクダウンに入るという前人未到のUFC記録を達成。

その上で判定3-0完勝している。

(C)Zuffa/UFC

これまで、このデヴァリシビリの「打撃の如くテイクダウンを放ち続ける」戦い方を止めることができた者は一人として存在しない。

上述のヤンやセフード以外にもジョゼ・アルドという元UFC世界チャンピオンが達がことごとくその軍門に下っている

しかし、まさにこのスタイルがオマリー相手には命取りになるのでは、という見方も成り立つ。たとえば同じバンタム級トップコンテンダーのコリー・サンドハーゲンは、この試合について「マラブは距離を詰めるのがすごく上手いわけではないよね。特に試合やラウンドの序盤はそうだ。それは本当にマズいことだと思う。なぜなら、ショーン・オマリーは距離を保つことにおいてベストの一人だから。同時に、相手が自分に距離に入って来ようとしたところで、酷い目に合わせることにおいても彼はベストだ」とオマリー有利を予想している。

オマリーのヘッドコーチのティム・ ウェルチも「マラブのように足を残してバランスを崩した状態で振り回してくる相手をKOするのは、ショーンには難しいことではないよ」と語っている。

実際、昨年8月にオマリーがステーリングを仕留めたのは、2R、打撃を放つステーリングが──デヴァリシビリがよくやるように──強引に体を伸ばして前に出てきた瞬間だった。卓越した距離感とタイミング、一撃必殺の左右の拳を持つスナイパー=オマリーが「まあマラブがレスリングで戦おうとしてこようが、打撃で戦おうとしてこようがどっちでもいいよ。早いうちに奴の顎を捕らえるよ」と自信を覗かせるのには確固たる根拠があるのだ。

が、その試合をステーリングのセコンドとして目の当たりにしたデヴァリシビリもまた、「オマリーは優れたフットワークとスピードの持ち主で、下がりながらのカウンターも打てて確かに危険だ。でも僕がやるべきはオマリーではなく、自分であることに集中すること。奴が勝つには僕をKOする必要がある。それさえ起きなければこの試合はこっちのものだ。スタミナには自信があるし、パンチもテイクダウンもある。防がれても構わない。今までいくらでも経験済みだ。殴られてもいい。僕はそれで目覚めるだけだ。今まで誰にもKOされたことがない。奴をブレイクする(心身を打ち砕く)よ」と揺るぎない自信を見せている。

他の追従を許さないスピードとフットワークに加え、体の微妙な動きを用いたフェイントの精妙さも天下一品、そして侵入者はたちまち撃ち落としてしまうオマリーの制空圏。そこにノンストップ・カーディオモンスターのデヴァリシビリがいかに侵入し、突破を試みるのか。一瞬たりとも見逃せない。

■視聴方法(予定)
9月15日(日・日本時間)
午前8時30分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前8時00分~U-NEXT

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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC ESPN60 アルジャメイン・ステーリング コディ・ギブソン パッチー・ミックス ブライアン・ケレハー

【UFC ESPN60】コディ・ギブソンが、打と組みで圧を掛け。エルボー→肩固めでケレハーを一蹴

<バンタム級/5分3R>
コディ・ギブソン(米国)
Def.1R3分58秒by 肩固め
ブライアン・ケレハー(米国)

ジャブのケレハーに右を当てたギブソンは、スイッチから左ミドルを蹴って圧をかける。ケレハーも右カーフを蹴り、ギブソンは前蹴りを繰り出す。ワンツーから組んだギブソンはバックに回ると、胸を合わせてきたケレハーをボディロックテイクダウン。ギロチンを防いで、スクランブルでバックへ。ケレハーもすかさず胸を合わせるが、いなされば背中を取られる。胸を合わせて離れたケレハーに対し、ギブソンはボディショットからエルボーを決める。

さらにケージに押し込んでバックを取るり、正対してきたケレハーに右エルボーを打ち込む。効かされたケレハーは組みの中でギロチンを狙うが、頭を抜かれて下に。ギブソンはすかさず肩固めをセットアップして、一気にタップを奪った。

「ベガスにやってきてパッチー・ミックスやアルジャメイン・ステーリングがサポートしてくれた。今ではベガスがホームだよ」と勝者は話した。


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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC300 アルジャメイン・ステーリング カルヴィン・ケイター

【UFC300】パワーボムも決めた!フェザー級転向のステーリングがTD&コンロールでケイターに判定勝利

<フェザー級/5分3R>
アルジャメイン・ステーリング(米国)
Def.3-0:30-27.30-27.30-27.
カルヴィン・ケイター(米国)

サウスポーに構えるのステーリングが右カーフと左ミドル、オーソに構えてタックルのフェイントから右フックにつなげる。ケイターはじりじりとプレッシャーをかけてジャブ、右ストレートを見せる。ステーリングはケイターのジャブにシングルレッグを合わせてケージに押し込み、ケイターに尻餅をつかせる。さらにステーリングは立ち上がるケイターの腰をコントロールしてバックへ。左足をフックしてコントロールを狙うが、ケイターが完全に立ち上がると離れる。

ステーリングはタックルのフェイントからスピニングバックエルボー。ケイターのパンチに関節蹴りを合わせ、回転系の技のフェイントを見せる。そして再びケイターの打撃にシングルレッグを合わせてテイクダウンするとパンチを落とし、サイドをとったところでラウンドを終えた。

2R、ステーリングが右カーフ、左ミドルから組み付いて、ケイターをケージに押し込む。ケイターの左足にシングルレッグに入って膝立ちにさせ、奥の足を束ねて寝かせようとする。ケイターが立ち上がると、ステーリングは右腕を深く差してボディロックし、足とボディにヒザ蹴りを入れる。

ケイターも粘り強くテイクダウンディフェンスし、今度はステーリングが左腕を差してケージに押し込むが離れる。試合がスタンドに戻るとステーリングは左ストレートから右フック、左ボディからダブルレッグでテイクダウンしてサイドポジションへ。ボディにヒザ蹴りを入れた。

3R、ステーリングが右ロー、左ストレートを見せてシングルレッグに入ってテイクダウンする。ケイターが立ち上がるとバックにつき、ケージへ押し込む。ケイターも正対するが、ステーリングはシングルレッグで押し込み、バックを狙うステーリングを寝かせる。

ハーフガードでトップキープするステーリングは上体を固めてサイドポジションへ。ケイターが反転してダブルレッグに入ると、ステーリングはそのまま持ち上げてパワーボムで叩きつけてパンチを落とす。トップキープを続けるステーリングはケイタ―が脇を差して来るとニンジャチョークを狙う。フェザー級転向のステーリングがケイターに判定で圧勝した。


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【UFC300】ケイラ・ハリソンと対戦、女子格レジェンド=ホーリー・ホルム「少しでも成長しようと」

【写真】落ち着き払っているホルムだった (C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ホーリー・ホルムがケイラ・ハリソンと対戦する。
Text by Manabu Takashima

2017年にボクシングの殿堂入りを果たしたホルムだが、ボクシングでの活動が9年間だったのに対し、MMAは13年目を迎える。そしてボクシングよりも、キックの印象が強い被弾しないMMAストライカーは42歳になっても衰えることを知らない。

ハリソンと戦うことで、ロンダ・ロウジー戦が思い起こされるホルムだが、日進月歩の女子MMAで2011年から戦い続けてきたホルムこそ、今はベルトを巻いていなくともUFC300で戦う相応しいファイターに違ない。


――今週末UFC300という大舞台で戦うこと、どのように考えていますか。

「現役チャンピオンと元チャンピオンが揃って出場している大会に参加できて、本当にワクワクしているわ。この大会で戦うメンバーの1人に選ばれて光栄よ。でも、出場するからにはしっかりと勝たないといけないから」

2009年、MMAデビューの2年目にジャクソンズMMAでMMAファイターとスパーリングをしていたホルム

──ボクシングで世界のベルトを15本も巻いた。

そんなホーリーが、Legacy FCに出場し始めた頃からファイトを見させてもらってきましたが、あの頃ここまでMMAにのめり込むと思っていましたか。

「こんなに長く戦うなんて、思っていなかったわ。ファイト毎に自分の限界を見極める必要があると思って戦ってきて、それが1年、1年と続いてきた感じね。それにしても、ここまで長いキャリアになるとは全く想像もしてなかった」

──ここまで戦うことができる要因はどこにあると思っていますか。

「やっぱり精神面の影響が大きいと思うわ。ファイトでも、ビジネスでもフィジカルよりもメンタルに依るところが大きいから。もちろん肉体的にヘルシーでないといけないけど、メンタルもそうね。心身ともに健康で、しっかりと考えることができる状態でいないと。それに他の選手が負ったような大きなケガとは無縁というのも、やっぱり大きいわね。だからこそ、前進できる。今も、前を見続けて戦うことができているわ」

(C)Zuffa/UFC

──ところで今回のケイラ・ハリソンとの一戦は、多くの人がロンダ・ロウジーとの戦いを連想しているかと思います。

「2人ともバックグラウンドは柔道だから。皆が、あの2人を比べるのはしょうがないこと。でもロンダとケイラは全然違う。ロンダの方が立ち技で戦いたがっていた。それにロンダは柔道で戦っていたけど、ケイラはレスリングで戦っている。何よりロンダはオーソドックスで、ケイラはレフティ。そこからして違っているわ。だから、ロンダ云々でなくケイラの動きに集中する必要があるの。

同時にロンダと戦ったことで、私は本当に色々なことを手にすることができたのは事実よ。メンタル的にもあんなに凄いプレッシャーのなかで戦ったことはなかった。それでもポジティブに乗り越えることができた。ケイラは、MMAでそういう経験していないでしょうね。何よりロンダと戦った時と比べると、MMAは凄く進化している。それは私も証明してきたし、多くのガールズがケージのなか見せてきた。今もそう。少しでも成長しようと、練習を続けているから」

──では、ケイラとの試合でカギを握る攻防はどこになると思いますか。

「とにかく集中することよ。ケイラの想うような試合展開にさせないためにも、集中して戦うこと。ファイターなら誰もそうだけど、距離のコントロールは絶対よ。望むような試合をするには、絶対的に自分の距離で戦わないといけない。

どれだけ相手との間に距離があるのか。そして、どれだけ空間をコントロールできるのか。それがMMAというゲームで、自分のパズルで埋めていく必要があるの」

──簡単に伝わることではないでしょうが、そこも踏まえてどのような試合をファンに見せたいと考えていますか。

「今も私がこの階級の実力者だと、証明したい。私の持つ、全ての技術を駆使して戦うわ。とにかくケイラとの試合はビッグファイトよ。この試合で勝利を手にすれば、またタイトルに挑戦できると思っている。どうなるかしらね」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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【UFC300】展望。ゲイジー×ホロウェイ、Baddest Motherfuckeを超越したBMFタイトル戦!!

【写真】両者とも156ポンドで計量を終えている。最高の駆け引きのあとで、最高の殴り合いに発展する可能性も?? (C)Zuffa/UFC

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催される。プレリミ含めて全試合がメインイベント級と呼べるスーパー・メガ・ヒストリカルショーで、UFC認定の非公式タイトル=BMF(Baddest Motherfucker=最高にヤバい奴)現王者であるジャスティン・ゲイジーにマックス・ホロウェイが挑む一戦もラインナップされている。
Text by Isamu Horiuchi

もともとこのBMFタイトルが創設されたのは、2019年11月のネイト・ディアズ×ホルヘ・マスヴィダル戦だ。その3カ月前のアンソニー・ペティス戦に勝利したネイトが「俺は真のBaddest Motherfuckerの座を賭けてマスヴィダルと戦いてぇんだ。ただ相手を抑え込んでルール上の勝利を狙うような連中じゃなくな」と発言。この言葉にダナ・ホワイト代表も大いに乗り気となり、BMFの文字が大きく刻まれたベルトを本当に作成、両者による決定戦を敢行したのだった。


試合は1Rに右ハイでネイトの右目上をカットしたマスヴィダルが終始優勢に試合を進め、3R終了時にTKO勝利。元WWEスーパースターのザ・ロックことドウェイン・ジョンソンにBMFベルトを巻かれたのだった。

その後4年近く封印されていたBMF戦だが、初代王者のマスヴィダルが引退を表明した3カ月後の昨年7月、ゲイジー×ダスティン・ポイエーにて復活。ここでゲイジーが右ハイでポイエーを沈め2代目王座に輝いた。この勝利でイスラム・マカチェフの持つライト級王座の挑戦権を得たと思われたゲイジーだが、その話がなかなか具体化しないまま、今回元フェザー級王者のホロウェイを相手に史上初のBMF王座防衛戦に臨むこととなった。

挑戦者のホロウェイは、現在アーノルド・アレン戦とコリアンゾンビことジョン・チャンソン戦と2連勝中。ライト級のゲイジー同様、こちらもフェザー級タイトル挑戦に最も近いところにいると思われる選手だが、新王者イリャ・トプリアの都合や前王者アレックス・ヴォルカノフスキーとのダイレクトリマッチが優先されているせいか、なかなかタイトル戦の話が挙がらない。

そこで今回──ある意味正式のタイトルよりも世間的な注目は高いかもしれない──BMFタイトル戦に出陣を決めた。

現BMF王ゲイジーはこれまで25勝のうち20KO、実に80パーセントのKO率を誇る。名だたる強豪たちと対戦経験を持つ前ライト級王者シャーウス・オリヴェイラをして「自分が対戦した中で最もパンチ力があったのは断然ゲイジー」と言わしめるライト級屈指のハードヒッターだ。対する挑戦者ホロウェイは、これまでUFCの試合中に誰よりも数多く有効打を当てているとされるボリュームストライカー。(有効打かどうかの判断に厳密さはないと思われるが)昨年のアレン戦のライブ中継の途中で合計3000発ヒットという記録を達成したと伝えられ、2位に1000発以上の差をつけていると説明された。

そんな両者の「ヤバい奴決定戦」である以上、期待されているのがド派手な打撃戦であることは言うまでもない。実際にゲイジーはこの試合について「理想的には、KOして眠らせるよりも目をカットするとか、彼の腕が折れてしまうとか、何らかの形で歩けなくすることで試合が終わってくれる方がいいとは思う。でも実際に向こうはこっちをKOしようと向かってくるだろう。だからこっちも向こうがどうなろうが、完全に眠らせてしまおうがまったく良心の呵責は感じないよ」と彼流の静かな言い方で凄絶な展開を予告している。

対するホロウェイも「僕なりにBMFを一言で言い表すなら”violence(暴力)”だ。ゲイジーはバイオレントな男だ。この試合は暴力そのものとなる。最高だ。生きがいだ。考えるだけで満面の笑みが浮かんでしまうよ」と真っ向から打撃戦を挑む姿勢を見せている。

わざわざ階級上の超弩級のハードパンチャーとの殴り合いに嬉々として臨むホロウェイの精神性は、確かに常識を超越したBMFさ(ヤバさ)に溢れている。しかし、近年の両者の戦いぶりやMMAファイターとしての進化を考えた場合、この戦いで重要なのはBMFな要素のみではないと思われる。むしろBMFを超えたお互いの格闘家としての成熟度こそ、今回問われているのではないだろうか。

前回ポイエーを倒してBMF王座に就いたゲイジーだが、その勝因が本人の成熟ぶりにあったのは自他ともに認めるところだ。2018年4月にポイエーと対戦した際には、序盤から体を振って距離を詰めて殴りに行ったゲイジー。最後も強引に前に出たところにカウンターをもらってマットに沈んだ。以降この試合を教訓として忍耐強く戦う術を身に付け、5年を経た再戦となった前回のBMF戦ではまるで違う戦い方を見せた。

前に出てくるポイエーの打撃に柔らかく体を使って反応しては強烈なカウンターを何度も当て、最後もポイエーが近づいてきたところに右ストレートから右ハイ一閃。見事なコンビネーションをもってゲイジーは鮮烈なKO勝利を収めた。

2018年のポイエー戦と並んでゲイジーが「大きな教訓となった」と認めているのが2022年5月のシャーウス・オリヴェイラ戦だ。序盤からお互いに効かせ合う凄絶な展開となった1R。チャンスと見るや我を忘れて大振りの一発狙いを繰り出していったゲイジーは、逆にオリヴェイラの一撃を貰ってダウンし、チョークで仕留められてしまった。

その後ゲイジーは、次戦となる昨年3月のラファエル・フィジエフ戦でこの敗戦の学びを生かしてみせた。最終3R、やや動きの落ちたフィジエフに対してゲイジーは急くことなく強烈なジャブで出鼻をくじき続けてペースを握る。終了寸前、後のないフィジエフが勝負を掛けて振り回してきた左右のフックを見切ったゲイジーは、見事なカウンターのテイクダウンに成功。最後まで冷静さを保ち勝負どころを見極めての完勝だった。

昨年のフィジエフ戦とポイエーとの再戦でゲイジーが見せた冷静さと忍耐強さこそ、今回の対ホロウェイBMF戦の勝利に向けても、最重要視される。一発の威力より圧倒的な手数で勝負するホロウェイだが、相手が強引に前に出たところに放つカウンターには一撃必殺の威力が宿る。前戦にて手負いのコリアンゾンビが強引に詰めてきた時に巧みにバックステップして距離を作り、右オーバーハンドをスマッシュヒットして劇的なKO勝利を挙げたのは記憶に新しいところだ。

5年前、急遽のオファーを受けて短い準備期間で敢行したライト級戦(2019年4月、ポイエーとライト級暫定王者決定戦にて5R判定負け)の時とは違い、今回は十分に時間を掛けて筋肉量を増やしてきたというホロウェイ。減量苦からも解放され「スピードは落ちず、パワーは上がって体調は100パーセントさ」と語っており、過去最高に力強い姿が期待できそうだ。

仮にBMFを期待する雰囲気に流されて、ポイエー初戦やオリヴェイラ戦の向こう見ずなゲイジーが現われるようなことがあれば、ホロウェイが世間を驚かせる可能性も高まるだろう。

当然ゲイジー本人もそこは十分承知しているようで「確固たる技術を用いて、距離を支配し、角度を作って素早く反応して戦う」と予告している。おそらく今回のタイトル戦で我々が見るのは、闇雲に前に出て相手を殴りにゆくのではなく、冷静に相手を見て反応し、有効な打撃を繰り出してゆくゲイジーの姿だろう。

その上で勝負所を見極め凄まじい威力の打撃を爆発させる、前戦に続くゲイジー流進化版BMFを期待したい。

今回のBMF戦で進化が求められるのは、ホロウェイも同様だ。この試合でまず警戒すべきはゲイジーの強烈な右のカーフキックだろう。オーソドックスに構えて絶妙の間合いを保ちつつボクシングで勝負するホロウェイは、以前から相手の右ローを被弾する傾向が見られる。2019年末のヴォルカノフスキーとの初戦では序盤からカーフを何度も貰ってペースを握られ、2年後のジャイー・ロドリゲス戦の序盤でもローを効かされる場面が目立った。

そこで鍵となりそうなのが、昨年4月のアレン戦でホロウェイが見せた新しい戦い方だ。普段とは逆にサウスポー中心に構えたホロウェイは、スイッチや横への動きも随時に交えて多彩な角度を作り、強打を誇る新鋭アレンに動きを読ませずに判定勝利した。

昨年の来日時にこの試合について筆者が質問した際「MMAは常に進化するスポーツだから、自分も進化しないと置いていかれてしまうんだよ」と答えてくれたホロウェイだけに、今回も危険極まるゲイジーの蹴り、そして凄まじい破壊力の拳を捌くための新しい姿を期待したい。

ちなみにゲイジー陣営もこのアレン戦のホロウェイの新しい戦い方を警戒しているらしく、公式予告番組「UFC 300 Countdown」カウントダウンでも、ゲイジーがコーチたちとともにこの試合のホロウェイの立体的な動きを熱心に分析研究する姿が映し出されている。ホロウェイが見事なタイミングでアレンにワンツーを入れた場面を見たゲイジーは「もし俺がローを蹴ることで、彼のこの動きを誘い出すことができたなら、そこにカウンターを合わせることができるよな」とコーチに語っている。

やはり──この試合はただのBMF決定戦ではない。お互いが最も進化した状態の対戦相手を想定し、勝つための緻密な策を組み立て最高の状態に仕上げた上で、死力を尽くして戦うのだ。

すでに長きにわたって世界トップで戦いつつ、なおかつMMAファイターとしての進化を見せてくれるゲイジーとホロウェイ。この階級を超えたBMF戦は、彼らがそれぞれの階級で頂点に登ってゆくための道筋としても興味深い。

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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【UFC300】UFC100、200&300出場。オクタゴン44戦目ジム・ミラー「予想も期待もしていなかった」

【写真】1983年8月30日生まれ。MMA戦績37勝17敗1NC。UFC戦績26勝16敗1NC。いぶし銀な鉄人(C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ジム・ミラーがオクタゴン44戦目をボビー・グリーン相手に戦う。
Text by Manabu Takashima

ジム・ミラーはUFC100、UFC200 、UFC300を戦う──この惑星でたった1人の存在だ。UFC100は25歳の時、UFC200は32歳だった。そして40歳になってUFC300を戦う。功労賞的な出場ではない。今も世界最高峰にあってコンペティティブな存在だから、あの場に立てる。世界チャンピオンという肩書はない。それでも紛れもなくMMA界のオンリーワン、ジム・ミラーに話を訊いた。


――今週末、UFC300でボビー・グリーンと対戦します。今の調子は?

「キャンプも最高だったし、凄く調子が良い。後は戦うだけだよ。UFC300に関しては、数年前から出たいという気持ちは口にしていた。でも、自分の立ち位置によってUFC300のようなビッグショーで戦えるか否か状況次第だった。でも、このところのファイトが認められたのか出場オファーが届き、拘って来た甲斐があったよ。

トレーニングキャンプを経て、ボビーと戦う。つまり、ここからということ。ボビーに勝って、このまま正しい方向に進んでいくつもりだよ」

──ところでジムはUFC100、UFC200、そしてUFC300を戦う唯一のファイターです。心の底から、自らを誇れることかと。

「そうだね。自分でも凄いことだと思っている(笑)。ただ、本音をいえば少しプレッシャーも感じているんだ。第1試合からメインイベントまで凄い試合が並んでいるなかで、チャンピオンと元チャンピオンの名前をいくらでも見ることができる。18人もの世界チャンピオンが出ているショーで、僕は彼らに繋げるためにもしっかりとファンの気持ちを温めたい。自分の役割を果たすつもりだ」

──そんな……UFC300は試合順こそあっても、全員がヘッドライナーですよ。この大会は過去の名声だけで戦える場所ではないはずです。UFC100でマック・ダンジグと、UFC200では五味隆典選手と戦った。UFC100は2009年で、UFC200は2016年でした。そして2024年となった今も、ジムはコンペティティブな存在です。だから出場権利を得ることができたに違いない。

「サンキュー。本当に色々と努力を続けてきた。と同時に、幸運でもあったんだ。大きなケガをすることなく、キャリアを積みかさねることができた。ライム病との診断を受けて頭を悩ますこともあったけど、症状を軽減させる努力をして……楽しく、ここまで戦い続けることができた。そして、今回のような大きな大会で大勢のファンの前で試合ができることが凄く嬉しい。コロナ後、今回のような大観衆のなかで戦うのは2度目なんだ。ファンが僕の名前を叫ぶなかで戦うことが楽しみでならない」

──そして今回のファイトが、UFCで実に44戦目になります。信じられないような試合数です。

「アッハハハハハ。こんな風なキャリアを送ることになるなんて、予想もしていなかったよ。期待もしていなかった。年老いたライト級ファイターとして、いかにトレーニングをして、いかに戦うのか。その方向性を見つけ出せたことが大きい。40歳のライト級って、ヘビー級では50歳のようなモノだからね(笑)。

簡単なことではない。でも、MMAの戦い方をずっと研究してきた。マーシャルアーチストとして、自分のスタイル、自分の力に合った方法論を見つけてきたんだ。そうやって積み重ねてきたことが、合致して実を結んだとは思っているよ。なんといってもファイトだけでなく、僕の人生に合致したんだ」

──素晴らしいです。

「UFC100の翌年に生まれた子供がもう14歳だ。以前は子供達は、僕が何をしているのかはちゃんと理解できていなかった。それが今では、より深く理解できている。この時間、経験を子供達と共有できて幸せな限りだ。子供達も土曜日の試合を観戦することを楽しみにしている。本当に喜ばしいことだよ」

──そんな記念すべき夜も、対戦相手はジムをぶっ飛ばしに来ます。

「その通りだ(笑)。ボビーは素晴らしくタフなファイターだよ。彼もまた長い間、UFCで戦ってきた。過去に何度か戦う話もあったけど、実現には至らなかった」

──2022年7月に対戦予定でしたが、グリーンがドラックテストに陽性反応が出てキャンセルとなりました。

「その通りだね。ただ、あれからもいつかは戦う時が来るとずっと思って来たんだ。ボビーのようなユニークなスタイルの選手と、こうやって戦うことができて嬉しいよ。ヤングキッズと戦う時は、何も知らない。本当に何も分からない相手と拳を交えることになる。でもボビーは違う。彼は彼で、色々なことを積んできている。ボビーのようなUFCで20数試合(※23試合)も戦ってきた選手と戦えることが楽しみでしょうがない」

──押忍。ところでUFC100に出場していた選手で現役を続けているのはジムに以外、ジョン・ジョーンズ、そして秋山成勲選手がいます。秋山選手は48歳になった今も試合に出ていますが、ジムが秋山選手の年齢に近づく頃にUFC400が開かれるはずです。

「ノー、ノー(笑)。待ってくれ、UFC400で戦うつもりはないよ(笑)。だから、僕はライト級だからセクシーヤマとは違う。ライト級ファイターが48歳で戦うなんて、あり得ない」

──可能性はゼロとは思えなくて。

「う~ん……。UFCが僕と同じようにリタイアしている選手との試合を組んで、ショーの役に立てるなら……その時は考えるよ(笑)」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

The post 【UFC300】UFC100、200&300出場。オクタゴン44戦目ジム・ミラー「予想も期待もしていなかった」 first appeared on MMAPLANET.
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45 MMA MMAPLANET o UFC UFC300   アルジャメイン・ステーリング アルマン・ツァルキャン アレックス・ポアタン アレックス・ポアタン・ペレイラ イェン・シャオナン イスラエル・アデサニャ イリー・プロハースカ カルヴィン・ケイター キック グローバー・テイシェイラ ケイラ・ハリソン シャーウス・オリヴェイラ ジェイリン・ターナー ジェシカ・アンドラーデ ジエゴ・ロピス ジム・ミラー ジャスティン・ゲイジー ジャマール・ヒル ジャン・ウェイリ ダナ・ホワイト デイヴィソン・フィゲイレド ヘナト・モイカノ ホーリー・ホルム ボクシング ボビー・グリーン ボー・ニコル マゴメド・アンカラエフ マックス・ホロウェイ マリナ・ホドリゲス ライカ

【UFC300】展望─01─ポアタン✖ヒル。記念大会のメインはKO必至。瞬き厳禁=近距離の打撃戦?!

【写真】KO必至。MMA的にはヒルという見方も成り立つが、近い距離のポアタンの振りにどう体が反応するか (C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催される。プレリミ含めて全試合がメインイベント級と呼べる豪華カードがズラリと揃ったこの記念大会のメインを飾るのは、二階級制覇を達成した王者アレックス・ポアタン・ペレイラに、前王者のジャマール・ヒルが挑むUFC世界ライトヘビー級選手権試合だ。
Text by Isamu Horiuchi

この試合は、約1年半続いてきたUFCライトヘビー級戦線の混迷状況に完全に終止符を打ち、ついに誰もが認める──”Undisputed”王者を決定する戦いといえる。


同級の混乱は2022年11月、当時の王者イリー・プロハースカが右肩の負傷によりタイトルを返上したことに端を発する。これを受けて翌月、2位のヤン・ブラボヴィッチと3位のマゴメド・アンカラエフの試合が急遽王座決定戦に格上げされて行われた。

しかしこの試合が、直後の会見でダナ・ホワイト代表が「酷い試合だった。ファッ○ンな3ラウンドが終わった後、私は卒倒しそうになったよ」と得意のFボムを投下し吐き捨てるような内容の末にドロー、王座は空位のままとされた。呆れた表情のホワイト代表はその場で、年明けの2023年1月リオ大会にて、元王者のグローバー・テイシェイラと当時6位のヒルの間で新たな王座決定戦を行うと発表したのだった。

(C)Zuffa/UFC

突然の大抜擢を受けて敵地に乗り込む形となったヒル。

地元の英雄に対して多彩な打撃でスタンド戦を支配。5Rにはテイシェイラ執念のテイクダウンからマウントを奪われたものの、股間を抜けてスクランブルして上を取り返し、文句なしの判定勝利を収めた。デビュー後14戦にして見事世界の頂点に立ち「俺のような境遇からここまで来られるなんて」とマットに突っ伏して感涙にむせんだヒル。

そこから顔を上げて「多くの人間が俺には無理だとぬかしやがった。チャンスは1Rしかなく、5Rは戦えないとかな。見たかこのクソ野郎ども!!」とアンチに大見栄を切ったが、思わぬ展開が重なった末の「棚ボタ的」戴冠という印象は拭えず、ヒルをまだ真の王者としては認め難いという声が消えることはなかった。

防衛を果たすことでそんな声を黙らさんと意気込んでいたヒルだが、半年後の7月に悲劇が襲う。なんとファイトウィークの催しで行われたファイターたちによるバスケットボールの試合にてアキレス腱断裂の大怪我を負ってしまい、タイトル返上を余儀なくされたのだ。

(C)Zuffa/UFC

そこで同年11月、この一年間で実に三度目の王座決定戦へ。

前王者プロハースカと二階級制覇を目指して階級を上げてきたアレックス・ポアタン・ペレイラ。1Rに強烈な右カーフでダメージを与えたポアタンは、2Rに強引に詰めてきたプロハースカに左右のフックをヒット。崩れたところに追い討ちをかけてTKO勝利。キックボクシングとMMAの両方で世界二階級制覇という大偉業を達成してみせた。

今回の記念大会ではその新王者ポアタンに、手術とリハビリを経て復活したヒルが挑む。正規王者と、敗れることなく王座を失った前王者による真の世界の頂点を決める戦いが、ついに実現するというわけだ。

ヒルにとってこの試合は、戴冠後も自分を認めようとしない世間に対して自分を証明する戦いでもある。対戦相手の悪口を言わないストイックな求道者ペレイラのことを「クールな男で、ああいうやつは好きだ」と認めているヒルだが、自分のことをビッグマウスと罵るペレイラファンたちのことは我慢がならない様子だ。

「俺はアレックスを立ち技でKOしてやる。そしてその事実を奴のファンどもの目の前に突きつけてやるぜ。アレックス本人に対してはやらないけどな。俺のことを侮辱しやがる奴ら、お前らより俺の方が遥かに優れた存在だ。俺は自分の本職で世界のトップに上り詰めたんだ。それと比べてお前らは何様だ? たかが百人くらいの規模の工場で月間優秀社員に選ばれたとか、そんな程度でお前らは自慢し、自分を特別だと思ってたりするんだろ? 

お前らなとど違い、俺は選ばれた1パーセントの中の1パーセントの中の1パーセントだぞ。そんな俺の達成や努力に唾を吐きかけクソぶっかけるような真似しやがって。その理屈で行けばお前らなど、人生において誇れることなど何一つありはしないということを理解するがいい。お前らがどう足掻こうが、俺はこの3年間で、ほとんどの人間が生涯で稼ぐ額より遥かに多くを手にしたんだ。そいつらの子供が稼ぐ金を含めてもな。俺はお前らの言葉をモチベーションにして、お前らが崇め奉るアレックスを眠らせてやるぜ」と、対戦相手ではなくそのファンに対して身も蓋もないトラッシュトークを展開する前王者だ。

それはさておき、この試合で期待されているのは凄まじい殺傷能力を持つ両者による大打撃戦だ。グローリー2階級制覇という輝かしいキックボクシングの実績を持つポアタンは、当然のようにMMAでも9勝中7フィニッシュの全てがKO勝利だ。対するヒルも、7つのフィニッシュの全てがKO。しかし高校時代までバスケットボールに励んでいたというヒルは、MMAを始めるまで特に格闘技経験はない。まったく異なるバックグラウンドとスタイルを持つMMAストライカー同士の対決という意味でも、興味深い頂上決戦だ。

まず注目なのは、ポアタンの主武器である右カーフキックを巡る攻防だ。腰を捻らないコンパクトな蹴り方でありながら強烈無比な威力を持つこの右カーフを駆使し、序盤に相手の足を殺すのがポアタンの常套手段だ。ほぼノーモーションから放たれるため、相手にとっては反応が極めて困難となる。

ヒルのヘッドコーチであるチャド・ポメロイも「我々はローキックの対策を重点的に行っていて、強いムエタイ選手たちにスパーでローを蹴ってもらっている」と発言しており、挑戦者陣営がこの技を最も警戒していることは間違いない。ヒルとしては、スタンドでいかにプレッシャーをかけて王者のローを封じるかが勝利への大きな鍵となりそうだ。

その点本人は、11月のポアタンの戴冠をケージサイドで目撃した直後にすでに「1Rはスローな展開だった。イリーは広いスタンスでローに対処せずにダメージを受けてしまったが、俺にはアレックスが対処できないようなスキルと特性がある。奴は俺が試合に持ち込むスピードとボリュームに対抗できないよ」と自信を覗かせている。

実際ヒルは王者と同じ193センチという長身を誇り(201cmのリーチは王者のそれを1センチ上回っている)、前手での多彩な攻撃を軸に、足技も交えてプレッシャーをかけることを得意とする。さらに相手のジャブにカウンターを合わせるタイミングにも天賦の才を持ち、サウスポーを基本としつつスイッチも駆使するが故に、ローのダメージを両脚に分散させることもできる。

王者のローの距離を殺しケージ際に詰めるために必要な適性に恵まれているのは確かだ。さらに誰よりもポアタンをよく知るイスラエル・アデサニャとの練習も敢行したヒルは「彼は俺の質問に全て隠すことなく答えてくれて、(打倒ポアタンのための)素晴らしいインサイトを授けてくれたよ」と語っている。

もっともポアタンとしては、ローを嫌がる相手が前に出てくるのはいつものこと。前戦でも、プロハースカが2Rに強引に詰めてきたところを待ち構えていたように強烈な左右のフックを当てて沈めている。近距離からでも異次元の破壊力を発揮する拳こそ、ポアタンの真の怖さだ。

が、挑戦者はむしろそこにポアタンの弱点を見出しているようだ。「奴のディフェンスは、自分のオフェンスに依存しているんだよ」とヒルは言う。「守るときには、自分の攻撃の背後に隠れる形になっている。だからディフェンスを余儀なくさせるように追い込んでいけば、そこに弱点が出てくるはずだ」と。

実際ポアタンは、相手が距離を詰めてきた時に上半身を動かさず腕を伸ばして下がる傾向があり、その際に相手のパンチを被弾する場面も見られる。ケージ際からの一撃必殺のカウンターは持っているが、巧みなディフェンスワークを披露することはあまりない。対してヒルは柔らかく体を使ったスウェイも得意とする。前戦の4Rにテイシェイラをケージ際まで詰めると、リーチに勝る自分の打撃だけが当たる絶妙な距離を保ち、反撃を巧みなボディワークでかわしつつ多彩なコンビネーションで滅多打ちにしてみせた。「オフェンスに依存したディフェンス」を攻略する術を、ヒルは確かに持っている。

しかし──この師と仰ぎ敬愛する存在がヒルに打ちのめされる光景を、ポアタンはセコンドとして間近で目撃している。打撃戦で師と同じ轍を踏むつもりは毛頭ないはずだ。

今回の試合に向けてテイシェイラの道場で共に練習し、攻略法を伝授される日々を過ごしてきた王者は「ヒルの打撃は確かにパワーがあって危険だ。でも技術レベルを見ると(自分が倒した)イリーの方が優れていると思う」と静かに語り、自信を覗かせる。両者の間合いが蹴りの距離からパンチの距離へと移行した時、射程距離の長いヒルの拳と短いポアタンの拳、二つの凄まじい殺傷能力はどのように交錯するのか。

お互いのことを熟知し、研究し尽くした最高峰のMMAストライカー二人による決戦。意表をついてどちらかがテイクダウンを仕掛けてゆく可能性も含め──真のライトヘビー級の頂点を決める、記念大会に相応しい至上の攻防を堪能したい。

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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【UFC300】ホルムとUFC初陣、ケイラ・ハリソン「70歳になった時、自分の人生を後悔したくなかった」

【写真】柔道時代ともPFL時代とも明らかに違う、バンタム級で戦うケイラ・ハリソン。計量まで3日、声に力があった(C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」で、ケイラ・ハリソンがオクタゴンデビューを迎える。
Text by Manabu Takashima

2度五輪を制した柔道家は2017年にMMA転向を果たすと、2019年&2021年のPFL女子ライト級シーズンウィナーとなった。2022年はMMA初黒星の喫し準優勝に、昨年は女子フェザー級が実施されたがケイラは参加しなかった。

そんななか11月にワンマッチで元UFCファイターのアスペン・ラッドを下すと、今年の1月になりダナ・ホワイトからケイラとの契約、UFC300で初戦を戦うことが発表された。UFCに転じた理由、そしてホルム戦とこれからに関して、ケイラ・ハリソンに尋ねた。


――UFC300という歴史に残る舞台で、オクタゴンデビューを果たすケイラです。今、どのような気持ちですか。

「凄く楽しみだし、この機会を得られたことに感謝しているわ。新しい舞台で、新しい階級のファイトを伝説になるようなショーで戦う。大きなリスクを伴っているけど、見返りの大きな試合はワクワクするわ」

──ケイラがUFCと契約したと知った時、凄く驚きました。PFLがBellatorを買収したことで、女子フェザー級のシーズンが楽しみだったので。いつ頃から、UFCで戦うことを考えていたのでしょうか。

「いつ頃からということでいえば、ずっと前からよ。MMAを始めた時からゴールはUFCチャンピオンだった。それでもPFLを離れることは、簡単な決断じゃなかったわ。PFLがスタートした時から、共に歩んできたわけだし。でもUFCこそがMMA界におけるオリンピックなの。

きっと、今回のコントラクトが私のキャリアにとって恐らくは最後の契約になるはず。70歳になった時、自分の人生を後悔したくなかった。『あの時、チャレンジしていれば』って。後々「あの時、なぜトライしなかったの?」と自分を責めたくなかったから、UFCに挑戦することを決めたの」

──素晴らしいですね。本当に素晴らしい。ケイラは既に五輪で2階級を制し、PFLでは100万ドルを2度も手にしている。ダブル・ゴールドにダブル・ミリオンなわけですよ。

「アハハハハ。ダブル・ミリオン(笑)」

──それなのにベストファイターになることを渇望しているのですね。

「そうね、それが私なんだと思う。とにかく好きなことに邁進し続けたい。MMAはただの仕事じゃないから。凄く大変よ。多くを犠牲にして取り組む必要がある。自分で背中を押して、成長する必要がある。それがファイターとして、人としての成長に繋がるわけで。常に自分を次の段階、ニューレベルに引き上げたいの。それこそが、私の人生を完成させるピースになるの。毎朝、目を覚まして──その日をベストバージョンの自分でいたい。誠実さ、尊敬心、献身、規律──全てをひっくるめて、自分を成長させる。そこに安らぎが存在しているから」

──深いです。そんなケイラですが、実はフェザー級に落とすということで減量がハードでインタビューがキャンセルされることもあると思っていました。そもそも柔道時代は78キロで戦っていて、8年後に65キロで戦う……。いや、常識では考えられないだろうと。

「柔道時代は、ピザやクッキーも食べ放題だったわ(笑)。真剣にダイエットにはとりくんでいなくて、食べたいモノを何でも食べていたの。今は違う。栄養士、ダイエットの専門家とチームを創って減量に取り組んでいる。チームだけでなく、UFCもサポートしてくれる。無理なく体重を落とせているから、ボディもメンタルもコンディションは最高で。気持ちもデキているし、いつでも戦えるわ」

──しかし、ピザやクッキーを好きなように食べていたとは。この事実をケイラに敗れた柔道時代のライバルが知ると……。

「アハハハ。まだ若かったのよ。16歳から一人で生活してきて、料理もできなかった。回りには常にダイエットコーク、ピザ、ハンバーガー、フレンチフライがあったから(笑)」

──ところで2017年の秋、MMAデビュー前の日本でインタビューさせていただいた時に「ロンダのことを聞かれなかったのは初めて」とケイラは言っていました。

「そうそう。あのときは誰もが私にロンダのことを尋ねてきて、少しフラストレーションがたまっていて(笑)。でも、あなただけがロンゴと比較するようなことを聞いてこなかったの」

──あの言葉は凄く印象に残っていて。ただし今回、UFCがケイラに用意した相手はホーリー・ホルムです。どうしてもホルム✖ロンダを思い出せるマッチアップではないかと。

「皆がロンダとホーリーの試合を連想するのは、もう仕方のないことだと思う。ロンダ=柔道、ケイラ=柔道というイメージは絶対で。でも私はロンダとは違う種類のファイターで、人間も違う。正反対よ。だから、土曜日の夜は試合結果も違ってくるわ」

──女子MMAもロンダが活躍したころと、今では相当に違っています。払い腰から腕十字が取れると、もうハイライトリールの極みです。

「別モノね。私は柔道でなく、MMAを戦う。ウェルラウンディッド・ファイターで、ビギナーじゃない。17試合を戦ってきたわ。ドミネイトするのが一番だけど、皆が楽しめる試合をしたい。そういう意味ではPFLでは禁じられていたエルボーを使えるのが、凄く楽しみで」

──いやぁケイラにエルボーがあれば、まさに鬼に金棒です。

「たくさんの人を驚らかせることができるはず。絶対に(笑)」

──とはいえホーリー・ホルムはあれだけのストライカーですが、MMAで結果を残せたのはその距離の取り方にあると思います。彼女の印象を教えてください。

「とにかくホーリーのことは凄く尊敬していて。素晴しく高いファイトIQの持ち主で。素晴しいフットワークから、最高の打撃を繰り出すことができる。グラップリングも常に成長している。あんな風に瞬く間に成功すると、その場に踏み止まってしまうアスリートが多い中で、彼女は常に成長してきた。変化を厭わない強い気持ちで、強くなり続けている。そこが一番尊敬できる点ね。

彼女のフットワークは女子バンタム級でも最高。そこに立ち向かうことが、私にとって最大にタフな挑戦になるはず。あのフットワークが、ホーリーの最高の武器であることは間違いないわ」

──対してケイラのアドバンテージは?

「それは……凄くたくさんある(笑)。自分ではそう思っているわ。MMAを始めた時、知識も経験も凄く僅かだった。柔道の力で限界を突破して、勝利を手にすることができていたけど今の私はより強く、より大きく、より速くて経験豊かなファイターになった。この1年でさらに成長できたという感覚もあるから、全ての動きに注目してほしいわ」

──会場の雰囲気はPFLとUFCでは違うかと。あの盛り上がり方はUFC独自なモノで。

「それこそ、凄く楽しみにしているポイントよ。何度もUFCの会場を訪れたけど、あれはもうマジックね。凄くオリンピックや日本での柔道世界選手権に似ているわ。2010年、私が初めて世界選手権で優勝したのは東京だった。あの時も会場(国立代々木競技場)の雰囲気は特別だったわ。あんな空気の中で、最高の自分でいる。毎晩、頭のなかでイメージしているの。自分があの場に立つことを」

──UFCでの第一歩。これからのケイラ・ハリソン、特別な存在の雄姿を追うのが楽しみでならないです。

「ありがとう。そう、私はスペシャル・ファイター。今回の試合は新たな章に向かう、第一歩。私はすぐにUFC世界バンタム級チャンピオンになるから」

──では最後に日本のMMAファンに一言お願いします。

「日本、柔道。柔道は日本の皆のマーシャルアーツで、私の初恋だった。今はMMAを心から愛している。皆、応援ありがとう。UFC300で皆に私の試合を見てもらえることが凄く嬉しいわ。アリガトゴザイマシタ」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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【UFC300】フェザー級転向、前バンタム級王者アルジャメイン「全てやりきったから新しいゴールを」

【写真】300回のスーパーイベントは現地時間の月曜日から水曜日までメディアデーが設けられている (C)MMAPLANET

13日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC 300「Pereira vs Hill」は、実に新旧12人のUFC世界王者が出場するスーパー・メガ・アニバーサリー・ショーだ。
Text by Manabu Takashima

プレリミ出場となった6人の元世界王者に前UFC世界バンタム級王者アルジャメイン・ステーリングが含まれている。昨年8月にショーン・オマリーに敗れて以来の再起戦は、フェザー級二階級をカルヴィン・ケイターと戦うアルジャメインに、この間に出場したグラップリング戦、そして当たらな階級で戦う胸の内を尋ねた。


――UFCでは初めて、実に12年ぶりにフェザー級で戦うアルジョです。今の心境を教えてください。

「良い感じだよ。階級を上げいるから、これまでとは食事も変わり違った体験をしている。凄く状態も良くて、フェザー級でも自信をもって戦えるよ。体の強度も全く落ちていないからね」

──UFC300という記念すべきショーで戦うことに関して、どのような気持ちですか。

「これらのカードに自分の名前が入っていることに、ワクワクするね。現役のチャンピオンと元チャンピオンが揃っている。こんな凄い試合が並んだショーは、これまでになかったはずだ。ファンのためにも良い試合をしたい。ただ勝ちに徹するようなファイトではなくて」

──5年振りにプレリミで戦うことになりますが、そこに何か想うことはありますか。

「全然、気にしていない。早く家に帰ることができるじゃないか(笑)。友人を集めて乾杯して、一杯やるのも早くなる。それが今から楽しみで仕方ないんだ」

──ハハハハ。昨年8月にバンタム級のベルトを失って以来、この8カ月でグラップリングマッチで3度戦いました。組み技の試合に出た目的は何だったのでしょうか。

「試合に出ていたかったんだ。グラップリングも好きだし、自分より大きな相手と手合わせができる。3試合中、2試合は大きな相手と戦うことができた。試合にでることで、実戦感覚を失いたくなかった。それがグラップリングを戦った一番の理由かな。顔を殴られる心配はないし、良い経験になっている。

グラップリングといえども実戦を戦うことで、体が錆びつかないし、技もしっかりとシェイプできる。それにプロの試合だ、ちゃんと稼げたからね(笑)。例え組み技でも、フリーで戦おうとは思わない。色々と試せたし、モチベーションを保つことができた。そんなことを全て含めて、チャレンジしたってことだよ」

──なるほどです。ところでファイトウィークになっても、やはりバンタム級時代と違って肌に張りがあって元気そうです。

「とにかくメンタル面で違いがある。凄く良い感じだ。肉体的にもベターだ。何よりエナジー・レベルは明らかにバンタム級時代より高い。もう2019年には、あと数試合戦ったら階級を上げようとは思っていたんだ。それがバンタム級でタイトルコンテンダーになったから、135ポンドでの戦いを続けていた。ワールドベストにもなれた。結果的にバンタム級世界王者として、試合に勝つたびにもう一度バンタム級で戦うということを繰り返していたんだ。

でも前回は、試合をすることを凄く急いでいた。今回は時間をかけて調整してきたし、全てがポジティブに動いている。自分に誰よりも厳しい減量を課すことで、自らの可能性を高めてきた。それがバンタム級で戦うということだったんだ。脂肪が少なく、ほぼ筋肉のボディなのにギリギリの減量を強いてきた。今回からフェザー級で戦うことで、自分の体の可能性をさらに探りたい」

──アルジョだと、フェザー級でも全く見劣ることはないかと思います。ただし、やはり対戦相手はバンタム級時代と比較すると大きくなるかと。

「カルヴィンに関しては、身長も変わらない。そして、ショーン・オマリーは4インチ(※約10センチ)も背が高かった。細かったけどね。それに練習で長身の選手とやってきたし、相手が大きくなっても構わない」

──では体格面でなく、技術面でケイターのことをどのように思っていますか。

「ボクシングの基礎がある。フットワークも良いし、ジャブも良い。右クロスが特に良いね。ただ、いくら威力のあるクロスを持っていても、その威力が発揮できるような攻防にはならない。そんな場所に留まることがない。すぐに移動するからね。

それでも自分の力を試すファイトになるだろう。今回は過去2試合と比較しても、しっかりと調整できた。過去最高の体調だといえる。だから、ファンの皆に喜んでもらえるよう戦界、その腕でこの手が挙げてもらうファイトをするよ。それからフェザー級タイトルに向けて、動き始める。

正直なことをいえば、現時点でもう自分がやりたいことは全てやってきた。やり切った。もうゴールに辿り着いている。だからこそ2024年は新しいゴールを目指し、新しい挑戦を始めるんだ。今回の試合で、他のフェザー級のタフ・ファイター達にアルジャメイン・ステーリングの存在を認識させるつもりだ」

──ところで、今ではずっとラスベガスでキャンプをしているのですか。

「そうだね。NYに戻る理由がない。最高のトレーニング・パートナーに囲まれていて、より整備された環境で練習ができているからね。NYよりもラスベガスの方が、必要なピースが簡単に手に入るんだ。可能な限り、最高の練習がしたいからベガスでやっている」

──アルジョ、今日はインタビューを受けていただきありがとうございました。最後に日本のファンにメッセージをお願いできますか。日本ファンは井上姉弟のチームメイトだったアルジョのことを少し身近に感じていると思います。

「そうなんだ。ありがとう。そして、いつも日本のファンのサポートに感謝している。そんな皆に伝えたいことは、大変な時を迎えても顔を上げて前に進んで欲しいということ。どんな困難にぶちあたってもダイジョウブ、ダイジョウブ(※日本語で)」

■視聴方法(予定)
4月14日(日・日本時間)
午前7時分~UFC FIGHT PASS
午後11時~PPV
午前6時30分~U-NEXT

■UFC300対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者]アレックス・ポアタン・フェレイラ(ブラジル)
[挑戦者] ジャマール・ヒル(米国)

<UFC世界女子ストロー級選手権試合/5分5R>
[王者]ジャン・ウェイリ(中国)
[挑戦者] イェン・シャオナン(中国)

<BMFタイトルマッチ・ライト級/5分5R>
ジャスティン・ゲイジー(米国)
マックス・ホロウェイ(米国)

<ライト級/5分3R>
シャーウス・オリヴェイラ(ブラジル)
アルマン・ツァルキャン(アルメニア)

<ミドル級/5分3R>
ボー・ニコル(米国)
コディ・ブランデージ(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
イリー・プロハースカ(チェコ)
アレクサンドル・ラキッチ(オーストリア)

<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
アルジャメイン・ステーリング(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ホーリー・ホルム(米国)
ケイラ・ハリソン(米国)

<フェザー級/5分3R>
ソディック・ユースウ(米国)
ジエゴ・ロピス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジェイリン・ターナー(米国)
ヘナト・モイカノ(ブラジル)

<女子ストロー級/5分3R>
ジェシカ・アンドラーデ(ブラジル)
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ボビー・グリーン(米国)
ジム・ミラー(米国)

<バンタム級/5分3R>
デイヴィソン・フィゲイレド(ブラジル)
コディ・ガーブラント(米国)

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