【写真】元UFCファイタでーZFNプロモーターのコリアンゾンビと、今年4月Ring Championship会場にて (C)SHINJI SASAKI
29日(土・現地時間)、韓国はソウル・ソンブク区にある高麗大学校(コリョ・テハッキョ)ファジョン体育館(チェユックァン)で「Z-Fight Night01」が開催される。コリアンゾンビことジョン・チャンソンがプロモートするこの大会で、佐々木信治がキム・サンウクと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
佐々木が韓国で戦うのは、2017年7月のアマチュシン・フーヘンフウ戦以来7年振り。翌2018年5月、北京でバオ・インカンと戦った佐々木は大怪我を追い、長期ブランクを余儀なくされる。そして2021年2月にグラジエイターで復帰した佐々木は「やり残したこと」としてTORAOとRIZINに出場し、最後の一つ——再び韓国で戦う機会を実現させた。佐々木が韓国での戦いにこだわる理由と、キム・サンウク戦について語る。
もう一回、韓国で応援してくれる人たちの前に戻りたい
――ZFNでキム・サンウクと対戦することが発表された時、驚きとともに「そうだったのか……」という想いもありました。佐々木選手の中では再び韓国で戦うということに、ずっとこだわっていたのですか。
「そうですね。Road FCで怪我をしてから……正確に言うと怪我をしたのはRoad FCの北京大会ですけど。ただ、そこで怪我をしたから、ということではなくて。Road FCで自分の格闘技キャリアが変わったというか、ステップアップできた気がするんです。何より韓国の人たちが僕のことを応援してくれていて。
最後が韓国で試合をしたわけではない。北京で大怪我して、韓国に戻ることもなく格闘技のキャリアがそこで一度ステップしてしまいました。もう一回、韓国で応援してくれる人たちの前に戻りたいという気持ちは、ずっと持っていました」
――韓国で応援してくれる人たちというのは、たとえばSNSのDMなども来たりするのですか。
「メッチャ来るんですよ。インスタライブをやったりすると韓国の方が入ってきてくれて、日本語と英語と韓国語が入り混じって大変なことになっています(笑)。その中で『また韓国で試合をしてほしい』と言われることも多くて」
――DEEPからBlack Combatで戦う大原樹理選手も同じような状況であると聞きます。
「あぁ、大原選手も韓国で人気が高いみたいですね」
――ZFN01の会場となる高麗大学校のファジョン体育館は、今年1月のBlack Combatで大原選手が戦った会場です。現地で取材しましたが、大原選手が入場してくると大声援が起こっていました。ちなみに佐々木選手は、ハングルを読むことができるのですか。
「それが全然読めないんですよ……。翻訳アプリを利用して回答したりしていました」
――2021年にグラジエイターで復帰して以降、ずっとRoad FCをはじめ韓国のプロモーションと交渉していたのでしょうか。
「復帰した時点では交渉していなかったです。というより、本格的な交渉は今までずっとしていなくて。まず復帰した時は、自分がどこまでできるか分からなかったですし。でも韓国で試合をしたいという気持ちが消えずに残っていたので、SNSとかでアピールしていました。すると韓国の団体からもお話が来るようになって。
あくまで自分が韓国で試合したいというだけで、できるかどうかは分からなかったです。あくまで韓国のプロモーターが僕を呼んでくれるかどうかで。そんな中で少しだけ『もう韓国で試合はできないかもしれないなぁ……』とは思っていました。RIZINでも負けてしまいましたしね。ただ、その後も練習し続けていたので良かったです」
――試合の話が来たのは、Road FCに限らず?
「はい。Road FCからも話はもらっていましたけど、なかなか話がまとまらなくて。そうしたら今回、ジョン・チャンソンの大会から話をもらい、第1回大会ということで出させてもらおうかと決めました」
――SNSでアピールしていたら韓国にも届く、とは凄いお話です。
「アハハハ、確かに。Road FCは関係者の連絡先を知っていたので、やり取りは続けていたんですよ。Road FCは『佐々木選手の引退試合を組みたい』と言ってくれて。嬉しいけど、まだ引退は――」
――ということは、このキム・サンウク戦も最後ではない、と。
「それは、どうなんですかね……」
――もちろん怪我もあり、体がもつかどうかの問題はあります。本人の気持ちとしては、いかがですか。
「気持ちですか。それは正直……、……、怪我をした時にベッドの上で『自分が格闘技でやり残したこと』を挙げていました。その時に挙げていたことの中で残っているのは、韓国で試合をすることだけです。だから、今回の試合が終わってみないと何とも言えなくて」
――MMAを続けられるものなら続けたい、気持ちはあるのですね。
「ファイターなら、その気持ちは誰もが持っているんじゃないですかね。だから今も長く続けている選手がいて、自分も復帰して……。だけど、どこかで最後を決めないといけないという気持ちもあります。『最後なんて決めなくていいよ』という意見もあるとは思いますよ。だけど自分の場合は他の選手と少し違っていて」
――というと?
「僕は格闘技を始めた時から道場長だったじゃないですか」
――はい。当時でいうところの格闘技サークルから始めて、本格的に練習していくために自身でBURSTを立ち上げました。
「でも現役の間は道場生の練習も見ながら、どうしても自分の練習がメインになってくるじゃないですか。試合前は特にそうなりますよね。でも最近はウチの若い選手たちも頑張って、結果を出してきている。だから自分の練習よりも彼らの練習に比重を置いたほうが良いのかな、っていう気持ちも芽生えてきています」
――ご自身だけでなく、國頭武選手や古賀愛蘭選手も韓国で試合に出場しています。
「そうなんです。もう自分のやりたいことが終わるのであれば、ずっと僕を支えてきてくれた教え子の試合に力を入れてあげたいとも思っています。RING Championshipのトーナメントも8月ぐらいに準決勝を開催したい、という話もありますし」
相手が殴ってくるなら、殴り合ってブッ倒してやる
――今年4月に國頭選手と古賀選手の試合に同行した際も、現地でファンから声をかけられたりしたのですか。
「ありましたね。ジョン・チャンソンも控え室まで会いに来てくれて。一緒に写真を撮って、今回の試合について話をしました。その時はキ・ウォンビンも来てくれて――今回の試合、最初はキ・ウォンビンと対戦する予定だったんですよ」
――えっ!? そうだったのですか。
「Road FCで何度か同じ大会に出ていたこともあって、キ・ウォンビンは昔から知り合いだったんです。4月の会場では『今回は敵になっちゃうね』なんて話をしていて。でもその後にキ・ウォンビンがRoad to UFCのワンマッチに出ることが決まり、今回はキム・サンウク選手と対戦することになりました」
――その前に昨年12月のグラジエイターで田中有選手がグスタボ・ショーマン・ウーリッツァーに勝利し、佐々木選手の持つ同ライト級王座に挑戦するという流れもありました。
「実はその頃にちょうどRoad FCとコンタクトを取っていていたんですよ。櫻井(雄一郎グラジエイター会長)さんには、自分が韓国で試合をしたい理由も説明して――櫻井さんもRoad FCを優先させてくれました。結局Road FCは決まらず、今回のZFNで戦うことになりましたけど、韓国で勝ってもう一度ベルトの防衛戦について話をしたいです」
――話を戻すと、韓国での試合が発表されると現地のファンからも反応はありましたか。
「驚いた、という感じのメッセージが来ましたね。バオ・インカン戦は北京で、韓国で試合をしたのは2017年だからもう7年前で、改めて『そんなに経っていたんだな』と実感がわきました。何より『7年も自分のことを待ってくれていたんだ』と思って」
――愛されていますね。
「本当に嬉しいです。7年間も韓国で試合をしていない自分のインスタライブに参加してくれる人がいて。しかも日本語が分かるわけでもないのに」
――しかし今回も敵地で強豪と対戦する。6年前の大怪我のことは頭をよぎりませんか。
「それはね、ありますよ。今回だけでなく復帰してから毎試合……。敵地で試合となったら『また同じことになるかも』と思ったりもします。この試合が決まって、周りからも『頑張って勝ってきてね』とは言われることは少なくて、ほとんどの人が『無事に帰ってきて』と」
――……。
「もちろん自分も不安はあります。でも僕の中では、その不安よりも『韓国で試合ができる』という嬉しさのほうが若干上回っていて」
――周りから心配されるのは、キム・サンウク戦が決まったあとにSNSで「これで悔いなく死ねる」とか書くからでしょう。6年前のことがあるのに。
「あぁ、それは……(苦笑)。6年前のことがあるからこそ、自分も後悔のないように生きたいと思って。今はただただ、周りの人の優しさが身に染みています」
――なるほど。では対戦するキム・サンウクの印象を教えてください。
「ウェルター級で戦っていた時期も勝っているし、去年はライト級でRoad to UFCに出て、準決勝で優勝したロン・チュウに判定負けで。打撃を食らっても諦めずに向かっていく気持ちの強さが見える。良い選手だと思います。今は30歳で、絶好調でしょう。
韓国ではテレビ番組か何かで、キム・サンウク選手が『今回は打撃で行く』とか言っているらしいんですよ。それは寝技で分が悪いと思っているのか、僕は打撃が弱いと思っているのか……。どちらにしても、自分はありがたいですけどね」
――そこで打ち合う気はない?
「いや、あります」
――打ち合うつもりなのですか。
「アハハハ。試合映像を視るかぎり、自分がグラウンドでやられることはないと思っています。テイクダウンされることはあってもパウンドアウトや、極められることはない。一方で相手も、それほど打撃が巧いという感じでもなくて。それで向こうから打ち合ってきてくれるなら――自分のパンチも当たったら倒れると思っています。KO負けが怖い、という気持ちはないです。相手が殴ってくるなら、殴り合ってブッ倒してやりますよ」
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【ZFN01】韓国でキム・サンウクと対戦、佐々木信治「6年前のことがあるからこそ、後悔のないように」 first appeared on
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