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【WJJC2022】アンディ・ムラサキ、準優勝の快挙も強すぎるタイナン・ダウプラが二連覇達成

【写真】ランガカー越えを果たしたアンディ・ムラサキの準優勝は素晴らしい結果である一方で、ダウプラが頭抜けている印象を残したムンジアル黒帯ミドル級だった(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われた、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text Isamu Horiuchi

レビューは最終回は昨年優勝の大本命タイナン・ダウプラに対し、黒帯の部初出場の日系ブラジリアン、アンディ・ムラサキらが挑んだミドル級の模様をお届けしたい。


階級をライトからミドルに上げての世界初挑戦となったアンディ・ムラサキは、初戦のオースティン・オランデイ戦を上から一瞬で極めるトーホールドで突破。2回戦は4月のパン大会のミディアムヘビー級クローズアウト優勝者のマニュエル・ヒバマーと対戦。大外刈りで倒してバックを奪うと、送り襟締めで落として連続一本勝ちを収めた。

続いて迎えた準々決勝の相手は、昨年のブラジレイロを制したレオナルド・ララ。ここでムラサキは引き込んでからのスイープを三回決めて6-0で勝利。翌日の準決勝、2018年世界準優勝にして昨年の世界大会も3位入賞している北欧の極め業師、トミー・ランガカーとの大一番に駒を進めた。

<ミドル級準決勝/10分1R>
アンディ・ムラサキ(ブラジル)
Def. 2-0
トミー・ランガカー(ノルウェー)

スライディングして引き込み、クローズドガードを作ったムラサキ。ランガカーが立ち上がると、すかさずその右足を内側から掬ってのスイープで後ろに倒して2点先取してみせた。そのままニアマウントの状態になったことでアドバンテージも一つ獲得したムラサキだが、ランガカーも体勢を戻す。

オープンガードを取るランガカーに対し、ムラサキはその左足を押し下げにかかる。内側からムラサキの左足を抱えたランガカーは下から煽るが、ムラサキはバランスキープ。ランガカーは下からムラサキの左足を取ってトーホールドを狙うも、ムラサキは防いで体を起こす。ならばとランガカーはムラサキの左手にラッソーで絡み、一瞬で三角の体勢に。ムラサキが距離を取ろうとすると、すかさず左へのオモプラッタに変化させた。

ムラサキがステップオーバーして逃れようとすると、ランガカーは股間を抜けてのバック狙いに移行。それも反応したムラサキが正対すると、さらにギロチンチョークを合わせたランガカーだったが、ムラサキはここも頭を抜く。ここまで3分。世界超一流の極め業師ランガカーの矢継ぎ早の連続攻撃を、ムラサキは凌ぎ切ったのだった。

ランガカーは右足に絡んで半身のハーフ。ムラサキのラペルをヒザ裏を通して掴んでシッティングから煽るが、強靭なベースを誇るムラサキは崩れずに逆に前にプレッシャーをかけてゆく。その後一気に下がったムラサキは、右足に絡んだラペルグリップを断ち切ってみせた。

残り5分。ランガカーはムラサキの左足に手足で絡んで崩しを試みるが、ムラサキは巧みな重心移動でバランスをキープ。ならばとランガカーは右に絡むが、ムラサキは崩れず、その後も2点のリードを守り続けていった。

残り時間がいよいよ少なくなり、ランガカーは潜り込んでムラサキの右足を肩で抱えてズボンの尻を掴む。さらに下から股間に左膝を入れて煽るランガカーだが、ムラサキは腕でポストしてバランスキープ。残り15秒、ランガカーに背を向ける形でスイープに耐えていたムラサキは、うつ伏せになりながら左足を取ってのストレートフットロックを仕掛ける。こうしてムラサキは、相手に上になられても関節技を仕掛けている以上はスイープ成立とはみなされないルールをうまく利用し、最後の時間を過ごしてリードを守り切ったのだった。

序盤で先制点を奪うと、その後は自らの一番強い部分──トップキープ力──をもって、世界が恐れる極め業師の怒涛の攻撃を凌ぎきったムラサキ。大舞台で見事に作戦を遂行して大物食いを果たしたムラサキは、世界大会黒帯の部初出場にして決勝進出という快挙を成し遂げた。

もう一方のブロックを勝ち上がったのは、予想通り圧倒的な強さで勝ち上がった大本命タイナン・ダウプラだった。準決勝では、4月のパン大会ではパスガードできなかったホナウド・ジュニオールと再戦し、2度パスを決めたのちにバックを奪い――10対0で完勝。この階級で数少ないライバル候補のジュニオール相手に、さらに差を広げる勝ち方で2連覇に王手をかけた。

<ミドル級決勝/10分1R>
タイナン・ダウプラ(ブラジル)
Def.5分20秒 by 襟絞め
アンディ・ムラサキ(ブラジル)

道着を掴み合う両者、ダウプラが引き込む瞬間、ムラサキは見事なタイミングで大内刈りを合わせることに成功し、2点先取してみせた。

クローズドガードを取り、背中越しに帯を取るダウプラに対し、腰を上げるムラサキ。すかさずダウプラはガードを開いてムラサキの右足を肩で抱える。さらに中に入れた右足で下からムラサキを煽ったダウプラは、左手と両足でムラサキの右足をおしのけて崩す形で上になりスイープ完遂。1分経過の時点で、準決勝でトミー・ランガカーの怒涛の下からの連続攻撃を凌ぎきったムラサキをあっさり崩し、2-2の同点に追いついて見せた。

下になったムラサキは、ダウプラの左足にデラヒーバガードで絡む。が、ダウプラはしゃがんでムラサキの足を押し除けて絡みを解くとすぐに左足をドラッグ。そのままサイドに回る。なんとか下から動こうとするムラサキだが、ダウプラはそれを許さず押さえ込んでパス完成。試合開始後1分半で5-2と逆転してみせた。

右腕で枕を取ったダウプラは、ニーオンザベリーでアドバンテージを取ると、自分のラペルを引き出してゆく。ムラサキは下から動いて左足に絡むが、ダウプラはすぐにその足を抜いて8-2に。その後もう一度ムラサキは足を絡めるものの、ダウプラはラペルを右手で掴んで首を殺してから足を抜き、11-2とリードを広げた。

そこからダウプラは、右足でムラサキの頭をステップオーバーしてのチョーク狙いへ。耐えるアンディだが、ダウプラは先ほど引き出した自分のラペルを口でくわえ、ムラサキの首に回して右腕で掴んで、さらに締め上げる。ついにムラサキがタップ。5分20秒、ダウプラが圧倒的な強さでムラサキの挑戦を退けて2連覇を達成した。

問答無用のスイープ力、恐るべきパスの圧力と精度、そして強烈な極め。立ち、トップ、ボトムと全てに優れたムラサキをもねじ伏せ、黒帯2年目にして絶対王者の地位を築きつつあるダウプラのライバルとなる選手は、やはり今年のライト級を席巻し決勝を争った二人──ミカ・ガルバォンとタイ・ルオトロ──だろうか。

【ミドル級リザルト】
優勝 タイナン・ダウプラ(ブラジル)
準優勝 アンディ・ムラサキ(ブラジル)
3位 ホナウド・ジュニオール(ブラジル)、トミー・ランガカー(ノルウェー)

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【WJJC2022】至高の600秒=ミカ・ガルバォンがタイ・ルオトロを決勝で下し、最年少世界王者に

【写真】最年少、世界王者となったミカ・ガルバォン。タイ・ルオトロのライバルストーリーはミドル級に階級を上げて紡がれていくのか。そこにはもう一人、強力な男がいるだけに2023年のムンジアルが既に楽しみでならない(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われた、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text Isamu Horiuchi

レビュー第3回は、タイ・ルオトロとミカエル・ガルバォンという二大ニュースターの参戦により最注目区となったライト級の模様を、この2人の試合を中心に報告したい。


今回が道着着用ルールにおける黒帯デビュー戦となる19歳のタイ・ルオトロ。1回戦は相手の欠場により不戦勝で突破し、初戦にていきなり優勝候補のジョナタ・アウヴェスとの大一番を迎えた。

<ライト級2回戦/10分1R>
タイ・ルオトロ(米国)
Def. 4-2
ジョナタ・アウヴェス(ブラジル)

前に出て襟を掴むアウヴェス。対するタイは、ノーギでも多用する両腕で相手の頭を抱える形で対抗する。やがて豪快に引き込んだアウヴェスは、タイの右足をワキに抱えて回転して上を狙う。ズボンの足首部分を掴まれているため、ノーギのようには足を抜くことができないタイだが、それでも右手でポストしてバランスをキープする。

さらに50/50の形で右足に絡んだアウヴェスは内回転。が、タイは一緒に回転して対応するとすぐに前方に飛び込んでのバック狙いへ。ここをすぐに対処して距離を取ったアウヴェスは、タイの両足をまとめて左手で抱えて起き上がり、2点を先取した。

下になったタイはアウヴェスの右足を抱えるが、アウヴェスは左で巧みにステップオーバーして距離を作り、離れることに成功した。

中央からタイが座った姿勢で再開。ヒザ立ちで前に出るタイだが、リードしているアウヴェスは両腕を伸ばして襟を掴んで下がりながら距離を保つ。残り6分となった時点で、タイはアウヴェスの襟を取ってクローズドガードに引き込んだ。

この体勢で無類の防御の強さを誇るアウヴェスは、低く胸を合わせて密着。タイは、バギーチョーク、ループチョーク、クロスチョークと狙い。あるいは背中から手を伸ばしてアウヴェスの帯を掴んでの仕掛けを試みるが、重石の如きアウヴェスのベースは崩れない。途中で膠着ペナルティを受けたアウヴェスだが、構わず密着を続ける。

が、残り3分近くの時点でアウヴェスに2つ目の膠着ペナルティが入る。ここで少し動き始めたアウヴェスは、ヒジを入れてタイのタードを開かせて足を潰しにかかる。タイはなんとか隙間を作ると、残り2分少々のところで再びクローズドに引き込んだ。

タイのズボンを掴み、低くプレッシャーかけるアウヴェス。タイがクロスチョークを仕掛けるとすかさず距離を取る。再び引き込んだタイはオープンガードから攻撃を試みるが、アウヴェスはここも腰を引いて距離を取った。

タイを応援する客席からブーイングが起こる中、なんと残り54秒でアウヴェスに3つ目のペナルティ。これでタイは2点を獲得するとともに、受けたペナルティの数により逆転となった。

着実に勝利に向かっていたはずが一転、突然攻撃する必要が生まれたアウヴェスは、タイの左足を抱えて噛みつき。そのまま左に跨いでパスを狙うが、タイは距離を作ってアウヴェスの左足を下から掴むと、両足を絡めて50/50を作って上に。残り14秒で4-2としてみせた。

アウヴェスは最後の望みを賭けて足を取りにゆくが、極めることはできず。タイは道着着用の黒帯デビュー戦で、この階級世界最強の一角であるアウヴェスから勝利を奪うという快挙を成し遂げた。

最初にスイープで先制し、その後は持ち前のベースを利した漬物石戦法で守り切ろうとしたアウヴェスだが、レフェリーの厳しい判断によって予定を狂わされることに。パスも極めも世界最高峰の力を持つにもかかわらず、勝利にこだわるあまりにそれらを駆使することなく、結果として勝利自体も逃すという皮肉な形での初戦敗退となった。

一方、初日最大の難関アウヴェス戦を見事に突破したタイは、2019年ヨーロピアン&パン王者にして、道着着用柔術における最高峰のベリンボロ使いの一人、リーヴァイ・ジョーンズレアリーとの準々決勝に駒を進めた。

<ライト級準々決勝/10分1R>
タイ・ルオトロ(米国)
Def. 8-0
リーヴァイ・ジョーンズレアリー(豪州)

今年のWNOにおいてウェルター級タイトル戦=ノーギルールで対戦している両者。その際はタイがヒールから変化してのヒザ十字を極めて完勝しているが、道着着用ルールのおける黒帯での景観はリーヴァイに一日の長がある。現時点における黒帯でのタイの道着への対応力──初戦では、アウヴェスが膠着戦法を貫いたためあまり見ることができなかった──という点でも注目の再戦だ。

試合開始後すぐにスライディングして座ったリーヴァイは、タイの右足に絡むと直ちに鋭い回転のベリンボロへ。が、タイも合わせて回転。まるでボディボードに乗るかのうようにリーヴァイの上で腹這いになってバランスを保ってみせた。

タイのズボンを掴んだリーヴァイはそのまま上を狙うが、タイはリーヴァイの絡む足を押し下げつつ、後ろ向きにステップオーバーする形でバランスキープ。

やがて向き直ったタイは、前に体重をかけながら腹でリーヴァイの左足を潰してゆく。さらに圧力をかけるタイは、リーヴァイの右足首を踏みつけて固定する得意の形を作った。

卓越したボディバランスで上をキープし、パス攻撃を繰り出し続けて相手を疲弊させる。タイはノーギグラップリングと同様の戦い方を、道着の世界最高峰の舞台でも通用させている。

そのまま上四方の方向に回ったタイ。リーヴァイも足を効かせて守るが、タイは構わずプレッシャーをかけ続けて、再び足を踏みつけてのパスを試みる。リーヴァイはタイの襟を掴んで足を効かせて対抗するが、タイは先日のゲイリー・トノン戦のように両足首を押さえつけて再び上四方に回ると、そのまま低く重心をかけパスに成功。試合時間の約半分が経過したところで3点先制してみせた。

そこから左腕を狙うタイは、リーヴァイのラペルを引き出す動きを見せた後、ニーオンザベリーで2点を追加した。抑えられたリーヴァイは残り2分の時点でガードに戻すことに成功するが、タイはまたしてもリーヴァイの足首を踏みつけて圧力をかけてゆく。

諦めずにタイの右足に絡んだリーヴァイだが、タイはその足を抜いてはまた踏みつけると、大きく頭の方に回って再びパスに成功。最後に狙ったノース&サウスチョークこそ極めきれなかったものの、結局8-0でタイが勝利した。

道着着用ルールにおいても、ノーギ同様のノンストップパス攻撃を貫き、世界最高峰のオープンガードプレイヤーを疲弊させて制圧。競技間の違いを超え、常識を覆す驚愕のパフォーマンスを見せて、タイは翌日の準決勝に進出した。

反対側のブロックでは、もう1人のニュースター、ミカことミカエル・ガルバォンが登場。1回戦はアトスのパウロ・ガブリエル相手に先制点を許したものの、攻撃の数で明確に上回って勝利した。

2回戦でセルジオ・アントニオと対峙したミカは、両者座った状態から相手の片足を持って立ち上がると、いきなり横に飛んでバックを狙うという凄技を見せる。その後ハーフで腰を切って足を抜いてパスしてからマウントに入り、袖車で完勝。準々決勝、昨年度王者マテウス・ガブリエルとの世界が注目する大一番に駒を進めた。

<ライト級準々決勝/10分1R>
ミカエル・ガルバォン(ブラジル)
Def. 4-2
マテウス・ガブリエル(ブラジル)

ミカの道着を取った瞬間に座るガブリエルと、それにカウンターで飛びつこうとしたが退いたミカ。改めて近づいて左に回ったミカは、次の瞬間右に倒れ込みながらガブリエルの左足を掴んで変形のレッグドラッグのような形でパスへ。あっという間に上四方に付きかけるが、ガブリエルも両腕でフレームを作りつつ、足を入れて正対した。

次の瞬間には右足に絡もうとするガブリエルだが、凄まじい反応でその足を抜いて下がるミカは場外へ。ここでブレイクが入り、ミカにパスのアドバンテージが入った。ここまでわずか40秒、とんでもないスピードの攻防が展開されている。

再開後、ハーフで左に絡んだガブリエルは、鋭いスイープでミカを横に崩す。バランスを保つミカだが、ガブリエルはその右足を引きつけてシットアップ。見事に2点を先制した。

下から絡んだミカは右足を抱えて崩しにかかるが、ガブリエルはバランスを保つ。立っているガブリエルに対してガードを閉じたミカは、素早く左足を内側から抱えて倒す。が、ガブリエルはすぐに体勢を立て直してみせた。

ミカはガブリエルのラペルを右ヒザ裏を通して掴むと、前に崩してからのシットアップを狙うが、ガブリエルはここもポジションキープする。さらに右足に絡んだミカが前方に崩しを仕掛けると、ガブリエルはマットに頭をつけて耐えて横向きに。右足のズボンをしっかりと掴んで引きつけられたミカは、シットアップができない。

やがてもう一度下になったミカは、右ヒザ裏を通したグリップをキープしたまま、再びガブリエルを前に崩してからシットアップへ。ガブリエルは左足一本で立ち上がるが、ミカは軸足を刈ってのテイクダウン。ガブリエルはまた立ち上がり、んらばとミカが後ろに倒す。それでも諦めず立ち上がるガブリエルだが、ミカはまたしても軸足を刈って、豪快に舞わせてのテイクダウン。

場外際で立とうとするガブリエルに対し、ミカは中に引きずり込んで上のポジションを固定しにかかる。が、抵抗するガブリエルが下がり切って場外へ。この一連の攻防の中でミカのテイクダウンが認められ、残り3分のところでアドバンテージ差で逆転することとなった。

スタンドからの再開。ガブリエルの引き込み狙いを察知したか、ミカはしゃがんで低い姿勢に。警戒しあう両者に一度ペナルティが与えられる。その後も低く構えたミカは、素早く前に出て引き込むガブリエルに合わせるような形で上に。

これがテイクダウンとして認められ、4-2。アドバンテージでも上回っているミカは、残り2分の時点で大きなリードを得ることとなった。

座ったガブリエルは、ミカが近づくとすぐに左に回って必殺のベリンボロへ。座って腰を引いて距離を取ったミカは、左に動いてパスで反撃。攻防を回避してリードを守り切る気などさらさらないようだ。それを防いだガブリエルは、今度は右に絡んでのベリンボロを繰り出す。終盤まで両者が攻め合う凄まじい攻防だ。

残り1分。ミカの右に絡みつつ、ラペルを絡めて掴んだガブリエルは、最後の望みを賭けてベリンボロのアタック。ミカの体勢を崩して立とうとするが、バランスをキープしたミカは前方にドライブし、ガブリエルを押し倒した。

残り15秒。諦めずにシザースイープを狙うガブリエルだが、それを堪えたミカが左に大きくパスを仕掛けたところで試合終了。最後はミカがサイドポジションに入ったところで終わったが、これは勝負ありと悟ったガブリエルが力を抜いたせいだろう。

両者が上下から凄まじいキレの技術を繰り出し続ける至上の攻防の末、ミカが4-2で快勝。要所で上を取り切るスクランブルの強さにおいてミカが上回ったことが、勝敗を分けた要因か。

とまれ、現在世界最高の業師の一人ガブリエルをも凌駕した柔術の神の子が、翌日の準決勝へ進出。期待されるタイ・ルオトロとの新世代決勝戦が、俄然現実味を帯びてきた。

<ライト級準決勝/10分1R>
タイ・ルオトロ(米国)
Def. 4-0
ルーカス・ヴァレンチ(ブラジル)

大会最終日。準決勝に進んだタイの相手は、この階級で2019年世界準優勝、21年にも3位に入っているルーカス・ヴァレンチ。2019年の世界大会決勝では、当時の絶対王者ルーカス・レプリにすらパスを許さなかったオープンガードの名手だ。

意外にも先に引き込んだタイ。ヴァレンチの右足を抱えて横回転し、さらにシングルレッグへの移行を狙う。バランスを保ったヴァレンチは、上からクロスチョークを狙いながら右膝を抜こうとするが、タイはそのまま強引にスクランブルで上になると、立とうとするヴァレンチを倒し切って上を取って先制点を奪ってみせた。道着着用ルールで自ら下になり、ノーギの流儀を押し通してトップを取るのだから驚きだ。

上になったタイは、担ぎや得意の足を踏みつける形でプレッシャーをかけるが、オープンガードに定評のあるヴァレンチも距離を取り対処し、やがてタイをクローズドガードに入れた。

ヴァレンチは下からタイの手首やラペルを取りにゆくが、タイはその度に切る。またタイは時に腰を上げて前傾姿勢でプレッシャーをかけるが、ヴァレンチに下からギを掴まれそうになると無理せず座る。先制点を取っているからこそ余裕のある戦いぶりだ。

クローズドガードでなかなか突破口を見出せないヴァレンチは、タイの左ヒザに右腕を入れてラペルを取ると、さらに左でラッソーを作って内回りを仕掛ける。

が、強靭なバランスを誇るタイは崩れず。ラペルを左足に巻き付けられているタイだが、見事な体捌きでバランスを保ちつつ左足を上げ、解除に成功した。それでもヴァレンチは左のラッソーと右のラペルグリップを使っての攻撃を試みるが、可動域が増したタイはさらに動いて両方とも解除し、距離を取った。

残り2分。一旦立ち上がったヴァレンチはタイと組み合う。ここでタイはヴァレンチの頭を抱えてスナップダウンを仕掛け、さらに奥襟を取ると大内刈りのフェイントからシングルレッグへ。右手で足を取りつつ、左手でグリップした袖を引き寄せる形でヴァレンチを崩してテイクダウンを決めてリードを広げた。

そのまま攻撃の手を緩めないタイは、さらにプレッシャーをかけてヴァレンチの体を二つ折り。両足首を持って体重をかけ、さらに右足を踏みつけて固定してから自ら飛びこんでのバック取りを狙うが、ヴァレンチも防ぐ。

残り1分。立ち上がったヴァレンチはタイの道着を掴むが、変幻自在に体勢を変えつつ左右の手で頭を掴んでくるタイに攻撃を仕掛けることができない。それでもシングルを狙うヴァレンチだが、タイは軽くがぶると逆に長い左手を伸ばしてヴァレンチのかかとを掴んで崩す。

ここで深追いせずに引いたタイは、次の瞬間大きく跳躍しての飛び三角。ヴァレンチが反応して脇を締めると、タイはここも深追いせずにすぐに立ち上がる。

その後もヴァレンチの帯を背中越しにとって動きを止めたタイは、最後は引き込みスイープを狙って試合終了を迎えた。

自ら下を選んでからスクランブルでトップを取ると、その後はヴァレンチの道着を用いた攻撃を、持ち前のダイナミックな身体操作で完封したタイの完勝だった。道着着用ルールにおける世界屈指のテクニシャンのギを用いた妙技を、全て潰してしまう恐るべき19歳だ。

<ライト級準決勝/10分1R>
ミカエル・ガルバォン(ブラジル)
Def.6分27秒 by ボーアンドアローチョーク
ジョナタス・グレイシー(ブラジル)

準決勝に進んだミカエルの相手は、2020年ヨーロピアンのライト級覇者のジョナタス・グレイシー。いわゆるグレイシー一族と血縁関係はないが、昨年末の世界大会ではミドル級に出場し、準決勝でイザッキ・バイエンセにレフェリー判定で惜敗して3位入賞を果たしている世界的強豪だ。

下になりたいジョナタスは、ミカの道着を掴まずに座ってしまいペナルティをもらう。改めて引き込んだジョナタスに対し、ミカは左膝を入れてベースを作ると、すぐに動いてジョナタスの左足をかつぎ、右足を押し下げての噛みつきパス狙いへ。

低くプレッシャーをかけて右足を超えにかかるミカだが、ジョナタスも腕のフレームで懸命に距離を作る。やがてミカはハーフまで侵攻して胸を合わせると、左腕で枕を作って首を殺して腰を切る。

注目されがちな派手な切り返しではなく、ごくごくオーソドックスな動きで、世界トップどころのガードをゆっくりと殺してゆくミカ。重心の低さ、タイトな密着、圧力のかけ方といった柔術の地力が恐ろしく強いことの証左だろう。

ジョナタスは下からミカのラペルを掴んで揺さぶろうとするが、ミカの盤石のベースは揺るがない。やがて絡まれている右足を抜いたミカは3点を先制すると、さらにステップオーバーしてマウント狙い。ジョナタスはなんとか左足に絡むものの、ミカはジョナタスの左ワキに頭を入れて肩固めの体勢に。さらに袖車に移行するが、ここでジョナタスは回転して上になるとともに両者は場外へ。これが場外逃避とみなされ、ミカがさらに2点を追加した。

試合はスタンド&中央で再開される。ジョナタスが引き込むと、瞬時に反応して右ヒザを入れたミカは、グラウンドに状態なった瞬間にはもうニースライスを完遂してサイドに付いている。ジョナタスも下から足を入れるが、ミカは低く担ぎにかかる。それを凌いだジョナタスは右でラッソー、左でデラヒーバで絡む。

ここからベリンボロを狙って回転するジョナタスだが、ミカは一緒に回転して防御。さらにジョナタスがもう一回転を狙うが、すでにその尻を取っていたミカは前に飛び込んでのベリンボロ返し。あっという間にバックを取って足のフックを入れて9-0とリードを広げた。

ミカは右手でジョナタスの襟を掴み、ボーアンドアローチョークへ。先日2階級上の世界王者ルーカス・バルボーザを仕留めたのと同じ技をもって、約7分半のところでタップを奪ってみせた。

普段は上の階級において世界レベルの活躍をするジョナタスに対し、瞬時の反応や切り返しだけでなく、桁外れに強力な柔術ファンダメンタルから繰り出すオーソドックスなパスガードでも圧倒。柔術の神の子が、その渾名に相応しい力を見せつけて決勝進出し、誰もが待ち望むタイ・ルオトロとの新世代決戦に駒を進めた。

<ライト級決勝/10分1R>
ミカエル・ガルバォン(ブラジル)
Def.2-0
タイ・ルオトロ(米国)

19歳のタイと18歳のミカによる注目の決勝戦。青帯時代に道着着用ルール対戦した時は、グリップを有効に使ってスイープしたミカが完勝している。が、昨年のWNOチャンピオンシップ=ミドル級決勝ではお互いが警戒し合ってほぼ攻防がないまま時間が過ぎ、タイが僅差の判定をものにしている。

まず引き込んだのはミカの方。一瞬で右にオモプラッタに入るが、タイも即座に反応して前転して上に戻る。するとミカは下からタイの右足を取って両足で浮かせるが、タイはバランスをキープした。最初の攻撃でミカにアドバンテージが与えられた。

さらに下からボンをとったミカは尻を出させながらバックを狙うと、タイはここも上を保つ。やがて正対してオープンガードに戻ったミカは、内掛けでタイの右足に絡む。下から煽ってタイを前に崩すと、右足を掴んでトーホールドにゆくが、タイは回転して逃れる。これでミカは2つ目のアドバンテージを獲得した。

その後も下から煽り続けるミカと、守勢を余儀なくされながらも見事なバランスで上をキープするタイ。道着着用であるが故に、前回の対戦──お互い警戒するまま時間が過ぎ、終盤の数少ないミカの攻撃もタイがことごとく遮断した──とは全く違う展開となっている。

やがてミカはタイの右腕にラッソーで絡むが、タイは立ち上がってミカの右足を踏みつける得意の形を作ると、横に動いてのパスを仕掛ける。こうしてタイが反撃を開始したその刹那、ラッソーを利用してタイを前方に舞わせるミカ。下になるまいと頭で着地したタイが立とうとしたところで、ミカもその斜め後ろに付いて追いすがる。

諦めず逃げようとするタイに対し、ミカはそのバックを目掛けて豪快に旋回。遠心力でタイを倒すと、そのまま上になってみせた。

なんとか腕のフレームで距離を作ろうとするタイだが、ミカはしっかり重心を落として体勢を固定。残り5分半でついにミカが先制点を獲得。最初から怒涛の攻めを続け、耐えたタイがついに反撃に出たその瞬間を突いた見事なカウンターだった。

低く胸を合わせたミカは、タイの右足を押し下げて侵攻を図る。タイは下から小手絞りで反撃するが、ミカは構わずポジションを進めてハーフに。さらに腰を切ってサイドを狙うが、タイは小手絞りを解いて右腕で距離を作った。

が、ここでミカはすぐに右のニースライスに移行。タイがそれを押し戻そうとしたところで、巧みに右足を引いて足の絡みを解除したミカは、上半身で低く体重をかけたまま左にパス。暴れるタイを抑え込んでサイドを奪取した…と思いきや、まだ諦めず動き続けたタイが全力でブリッジしてうつ伏せに。見ているだけで力の入る凄まじい攻防だ。

ミカはぴったりその背中に付いて襷掛けを取ると、タイの上体をリフトし、胴体に両足を巻き付けてみせる。ポイントの入る両足フックではなく、足をクロスしてポジションキープするミカは、やがて襟を掴んでチョーク狙い。絶体絶命と思われたタイだが、体を反って動きポイントをずらし続けてなんとか耐える。

ミカは足を四の字に組むと、さらに左でタイの襟を掴んでチョークを狙う。諦めずにディフェンスを続けるタイは、両腕でミカの左腕を掴んで外すとそのまま回転。残り1分半のところで正対し、ミカのクローズドガードの中に入ることに成功した。ここまでポイントは2-0、アドバンテージは5-1でミカがリードしている。

残り時間が少なるなか腰を上げるタイだが、先日レアンドロ・ロのトップゲームを完封したミカのガードは開かず、時間だけが過ぎてゆく。残り35秒、タイはミカをリフトしながら改めて立ち上がり押し下げようとするが、それでもガードは開かない。残り20秒、まだ諦めないタイはミカの体を下ろしてから左腕でガードを押し下げにかかる。

が、内側からタイの左足を抱えたミカは、それと同時に右腕にゴゴからオモプラッタのカウンター。フックこそしきれなかったもの、キムラグリップを取って上下を入れ替える。ここからミカが右腕を極めにゆくなかで、タイが左腕をグリップしてそれを耐える中で試合終了した。

道着着用ルール世界一を賭けた舞台での再戦は、前回と違い両者が持ち味をぶつけ合う珠玉の展開に。形は異なれど共にきわめて強力なトップゲームを持つ両者だが、下になった時に最後はスクランブルが頼りのタイに対し、ミカは多彩なガードからの仕掛けと、相手の動きの先を行く天性のカウンターの勘を持つ。この差が、より相手の体をコントロールできる道着着用下でものを言ったようだ。

戦い終えて、正座して握手した二人。今後10年――続くであろう至上のライバルストーリーの続きを見ることができるのは、ADCC世界大会の決勝戦か――。

18歳、最年少で黒帯のムンジアル王者となったミカは「最高の気分だよ。凄く良い経験になった。前回、僕を破ったタイに勝てたことも良かった。今回はより自分の試合ができたこともハッピーだよ。18歳で世界チャンピオンは最年少かもしれないけど、ずっとやってきたことだからね。父、母、スポンサー、ガールフレンド、チームメイト、試合にも出ているファブリシオ・ディアゴに感謝している。皆の心と一緒戦っていて、僕は1人じゃなかった。自分が目指す場所には、まだまだの距離がある。僕に勝っている2人がライト級で戦っていた。来年は体重を落とせないかもしれないからもしれないから、ライト級で戦うことにしたんだ。来年はミドル、あるいはミディアムヘビー級かもしれない。今からADCCに備えるよ」とポディウムで金メダルを掛けられた直後にFLOGRAPPLINGのインタビューで語っている。

【ライト級リザルト】
優勝 ミカ・ガルバォン(ブラジル)
準優勝 タイ・ルオトロ(米国)
3位 ジョナタス・グレイシー(ブラジル)、ルーカス・ヴァレンチ(ブラジル)

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MMA MMAPLANET o WJJC2022   イアゴ・ジョルジ ジオゴ・ヘイス ジュニー・オカシオ ブラジリアン柔術 メイハン・マキニ 嶋田裕太

【WJJC2022】メイハン・マキニ初制覇のライトフェザー級で、負傷を抱えた嶋田裕太はイアゴに一本負け

【写真】トーナメントウィークに負傷。今回の2試合で、今後に向けて何を得られたのかが大切だ(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われた、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text Isamu Horiuchi

レビュー第2回は、NYのマルセロ・ガウッシア道場で長期修行を行なっている嶋田裕太の戦いぶりを中心にライトフェザー級の模様をレポートしたい。


<ライトフェザー級1回戦/10分1R>
嶋田裕太(日本)
4-4 アドバンテージ4-2
ジュニー・オカシオ(米国)

まずは引き込み合う両者。お互い相手を掴まずに座ってしまい2度ペナルティを受けた後、嶋田は前に出て一瞬座ってから上を選択することで、アドバンテージを獲得した。

オカシオは嶋田の右足首に絡むが、嶋田は崩れない。ならばとクローズドガードを作ったオカシオは横回転で崩しにかかる。ここも嶋田はスプロールしてバランスをキープする。ガードを閉じているオカシオを持ち上げた嶋田は、左足を押し下げてから胸を合わせにかかるが、オカシオが対処してクローズドに戻る。

その後オカシオはガードを開いて足狙いも見せるが、ここも嶋田は回転して対処してみせた。ラッソーを作ったオカシオは、嶋田の右足を内側から抱えて回転すると、さらにベリンボロに移行を狙う。腰を切って抑え込もうとする嶋田だが、ここでオカシオはその勢いを使って回転して上に。

距離を取って立とうとする嶋田だが、オカシオはその背中を取りながら上になり、2点先制した。そのままサイドで嶋田を抑えたオカシオは、ニーオンザベリーさらに2点追加。嶋田は残り6分ほどのところで4点差をつけられてしまう。

嶋田はエビの動きでオカシオのヒザから逃れるが、ここで嶋田が苦しそうな様子をしたことで、レフェリーが一旦試合を中断。ワキ腹を抑えている嶋田だが、少々のやりとりの後で試合は再開された。

サイドに付いているオカシオは左腕で枕を取ると、嶋田の襟を引きつける。嶋田が足を戻そうとしたところで上からダイブしてのベリンボロ狙いへ。嶋田がマットに背中を付けて守ると、その左足にストレートフットロックを仕掛けてゆく。

それを防いだ嶋田が立とうとすると、オカシオはすかさず背中に回り、嶋田の襟を右で取ってコントロールする。嶋田は動いて体をずらそうとするが、襟を掴んでいるオカシオは巧みに背中に張り続け、キープしていった。

残り4分。それでも動き続けた嶋田は、なんとか距離を作ってクローズに戻すことに成功すうr。ここでオカシオのラペルをその右腕に巻きつけた嶋田は、下から腕十字一閃。うつ伏せになりながら極めにゆき、腕を伸ばし切ったかに見えたが、オカシオは回転して嶋田の体を跨いで脱出。

が、嶋田はその勢いで上になることに成功し、アドバンテージを獲得するとともに2点を返してみせた。さらにサイドを狙う嶋田だが、オカシオはスクランブルして上の体勢に。この動きはスイープではなくリバーサルとみなされ、得点は与えられなかった。

残り約3分で2点リードを許している嶋田。が、アドバンテージでは2つリードしている。シッティングからオカシオの右足に道着を通して掴んだ嶋田は、殿下の宝刀シングルレッグへ。距離を取ってがぶるオカシオだが、グリップをキープしている嶋田は再び勢いをつけてスクランブルから立ち上がる。そのままシングルにつなげる。粘るオカシオをついに倒し切って2点獲得。残り2分半にて逆転に成功した。

一度ガードを閉じたオカシオは、ラッソーに移行する。嶋田はワキを締めて守る。オカシオは回転して煽るが、嶋田はヒジをうまく使って腰を引いて防御する。その後も嶋田は終了まで上をキープし切り、アドバンテージ2つのリードを守り抜いた。

伏兵オカシオに先制点を許し、さらに中断を余儀なくされる状況に追い込まれた嶋田だが、執念の逆転勝利。勝負所で磨き抜いたシッティングからのレッスルアップを決め、最後はミヤオやソドレといった世界屈指のオープンガードプレイヤー達と凌ぎを削ってきた経験を活かして守り切った。

こうして苦境を克服した嶋田は、初日のヤマであるイアゴ・ジョルジ戦に駒を進めた。

<ライトフェザー級2回戦/10分1R>
イアゴ・ジョルジ(ブラジル)
Def.5分43秒 by 襟絞め
嶋田裕太(日本)

嶋田が前に出ると、ジョルジはすぐに引き込む。続いて左でラッソーを作ったジョルジは、そのグリップで強烈に引きつけて嶋田を左に崩してのスイープ。見事に2点を先制してみせた。

上を取ったジョルジは、左右に動いてのパスの猛攻へ。サイドに付けかけられた嶋田は、アドバンテージを一つ献上するもなんとか左足に絡んでみせた。

が、ジョルジはすぐにその左足でニースライスへ。ここも戻す嶋田だが、またしてもアドバンテージを取られてしまう。さらにジョルジは侵攻を続け、ついにヒザを抜いてパスに成功。開始僅か1分半で、点差を5-0と広げた。

サイドについたジョルジは、あえて左足を動かして隙間を作り、半ば意図的に嶋田がそこに絡むことを許してから、再びニースライスへ。さらに逆サイドに飛んでパスを決めて、8-0とリードを広げた。

その後ジョルジは、再び嶋田に一旦足を絡ませてから抜いてみせ、さらにニーオンザベリーも決めて13-0とすると、嶋田の襟首を右手で掴んで上体を起こさせてバックに付き、両足フックを入れて17-0とリードを広げる。ここから送り襟絞めに入ると、嶋田がタップ。5分43秒、一方的に嶋田を攻め続けたジョルジの完勝に終わった。

試合終了後もダメージでなかなか立てなかった嶋田。試合直前の練習で脇腹を負傷してしまっていたとのこと。今回は自分の力を出しきれずに終わってしまったが、その状況でマットに上がり、一回戦を逆転勝利した経験は必ずや今後の糧になるだろう。

嶋田を倒したジョルジは、次戦も突破して最終日へ。準決勝にて優勝候補のメイハン・マキニとのリベンジ戦に臨んだ。が、マキニはスタンドでは小内、小外でジョルジを倒し、上からは凄まじいスピードのトレアナパスを2度決め、最後は腕十字。僅か2分半、恐るべき強さを見せつけた末に圧勝して決勝進出した。

もう一方の山は、予想通り前年度覇者のパトことジエゴ・オリヴェイラとジエゴ・ヘイスの両者が勝ち上がった。この準決勝は、残り1分で50/50を作って上を取ったオリヴェイラがトップを守り切って作戦勝ち。

かくて決勝はマキニ×オリヴェイラ、昨年も死闘を繰り広げた両者の再戦となった。今年からオリヴェイラがドリームアートに移籍したため、同門同士の世界一決定戦だ。

上攻めのマキニと、下攻めのオリヴェイラ。凄まじいスピードと技のキレを持つ両者は、昨年に続いて互いに一歩も譲らない世界最高峰の凌ぎ合いを展開した。スコアは全くの同点、割れるかと思われたレフェリー判定は意外にもユナニマスでマキニを支持。21歳の新世界王者が誕生した。

マキニとオリヴェイラとヘイス──恐るべき強さを誇る新世代がライトフェザー級を席巻している。

そのとてつもなく高い頂に、今回の試練を戦い抜いた嶋田はいかに挑んでゆくのだろうか。

【リザルト・ライトフェザー級】
優勝 メイハン・マキニ(ブラジル)
準優勝 ジエゴ・オリヴェイラ(ブラジル)
3位 ジオゴ・ヘイス(ブラジル)、イアゴ・ジョルジ(ブラジル)

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MMA MMAPLANET o WJJC2022   カルロス・アルベルト タリソン・ソアレス ブラジリアン柔術 橋本知之

【WJJC2022】ルースター級準々決勝で橋本知之はアオキ・ロックで失格に。優勝はタリソン・ソアレス

【写真】橋本は失格に納得がいかず、抗議をした(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi

年に一回、道着着用柔術の世界一を決めるこの大会のレビュー第1回は、世界初制覇の期待がかかった橋本知之の戦いを中心に、最軽量ルースター級の模様を報告したい。


<ルースター級1回戦/10分1R>
橋本知之(日本)
Def. 3分11秒 by襟絞め
ケヴィン・マーティンコフスキー(米国)

両者引き込みによるダブルガード状態から、マーティンコフスキーが上を選択してアドバンテージを得る。橋本はすぐに相手の左足にデラヒーバで絡みベリンボロへ。座り込んで防ぐマーティンコフスキーに対し、2回転目で背中に手を回した橋本はそのまま上になり、2点を先取した。

マーティンコフスキーが右足に絡んでくると、立ち上がった橋本。そこから前方にダイブするようにして右足を抜きながら左脇を差して上半身を制すると、完全に右足を抜いてパスに成功し5-0とした。

左腕で枕を取って胸を合わせて完全に相手を制している橋本は、やがて左手で相手の襟を掴んで引き寄せる。さらに橋本が左足で相手の頭をステップオーバーして締め上げると、すぐにマーティンコフスキーがタップ。わずか3分23秒での完勝だった。得意のボトムからの攻撃はもちろん、トップからの見事な体捌きによるパス、コントロール、そして極めと寝技の全局面で力を見せつけた橋本は、ほとんど消耗のない良い状態で初日のヤマ、カルロス・アルベルトとの準決勝に駒を進めた。

<ルースター級準々決勝/10分1R>
カルロス・アルベルト(ブラジル)
DQ 6分35秒
橋本知之(日本)

立ちでフェイントをかけ合った後、両者ともに前に飛び込んでから引き込み合う。アルベルトがすぐに上になってアドバンテージ獲得と思いきや、審判はこれをテイクダウンかスイープかは分からないが2点と判断した。

不可解な判定で先制点を許してしまった橋本は、アルベルトの襟と左足首を掴んで引き寄せ、尻餅を付けさせる。さらに左にベリンボロで回転してからシットアップして2-2の同点に。が、アルベルトも橋本の足首に絡んで浮かせると、すぐにシットアップで上を取り返して4-2と再リードした。

立ち上がったアルベルトに対し、橋本は左足を下から掴む。前に飛び込んできたアルベルトの左足に強烈なストレートフットロック。さらに回転した橋本は、アルベルトの左足を掴みながら勢いよく起き上がって4-4と追いついた。

上になった橋本は一旦立ち上がる。が、下から橋本の両足のズボンを掴んだアルベルトがシットアップ。上を取り返して6-4と再びリードした。

ならばと橋本は右にラッソーで絡むと、やがて片襟片袖に移行してアルベルトを引きつける。ここでアルベルトが尻餅をつくとすかさず立ち上がって上を取り返して6-6に追いついた。ここまでで試合時間の半分が経過。

橋本の左腕にラッソーで絡んだアルベルトは、橋本が腰を上げると右足にデラヒーバを作る。対する橋本は腰を引いて下がり、アルベルトの絡んでくる足を解除。さらに下がって距離を作った橋本は、すかさずそこに頭を潜り込ませるようにして上からのバック取りを仕掛ける。アルベルトも反応するが、一歩先んじた橋本はズボンを掴んで尻を出させることに成功。それでも距離を取ったアルベルトに対し、橋本は右足を取ってストレートフットロックへ。

すると、ここでレフェリーが試合をストップ。ストレートフットロックで締め上げている際、動いて防ごうとしたアルベルトのかかとが抜けかけた状態になったことで、内ヒールのような膝の靭帯への攻撃とみなされたようだ。いわゆるアオキ・ロックにレフェリーが橋本の反則を指摘すると、勝利を確信したアルベルトは思わず微笑みながらガッツポーズを作った。

橋本はレフェリーに抗議をするも認められず、6分35秒で反則負けを宣せられた。こうして橋本の世界初制覇の夢は、きわめて不運な形で潰えてしまったのだった。

終了時のスコアは6-6の五分だったが、前半お互い下になった時に攻撃を仕掛ける展開が続いた後、橋本がトップからも攻勢に転じて試合の流れを引き寄せはじめた矢先だっただけに、なおさらやりきれない結末だ。

試合後、橋本はSNSで「あの足関節技はここ数年流行っているもの。今回も他の選手たちが同じ技を使っていたのに、なぜ自分だけ失格にされるのか」、「あの技が反則になり得るということ自体が初耳。たとえ今回からルール改正が行われていたにしても、そのことは告知されていない」、「レフェリーに抗議したところ、最初から(アルベルトの)踵が出ていたからと説明を受けた。しかし動画で見直しても、最初は踵が入っていて後から抜けている。レフェリーは最初から見ていたわけではなく、相手のセコンドの指摘を受けてから状況を確認し、言いなりになった」等と不満の気持ちを綴った。

あの形から締め上げると、それが足首だけでなくヒザの靭帯を圧迫しかねない(=反則)のは事実だ。とはいえストレートフットロックからカカトが抜けた場合にレフェリーが流すということが過去になかったわけでもない。

IBJJFの足関節の定義として、ヒザが外側に捻られる攻撃はストレートフットロックでも反則となる。トーホールドでもヒザがもう片方のヒザの側に圧が掛かる場合は認められるが、逆側は反則だ。

今回、橋本が仕掛けたアオキ・ロックはヒザを外側に捻るモノで明確に反則といえる。と同時にIBJJFの審判団のなかでも「明確な反則だが、見極めが難しい」という意見がある。それは下を向け仕掛けているときなど、その状態に入っているかどうかの見極めが難しいということを意味している。

アオキ・ロックは反則か合法かの見極めが難しいということではない。と同時にカカトが抜けた状態で、捻りを加えれば反則というが、動きの中で攻撃者の意図しない危険が生まれてしまうのは、他の技にも見られる。よって、今回のケースはレフェリーも一瞬で反則負けとはしていない点にも注視しないといけない。

とはいえ橋本は、この状態が反則という認識がなく、他の試合でも見られたと指摘している。どれだけの選手にその認識がなかったのか。また、他のどれほどの試合でこの攻撃をレフェリーが見逃していたのか。

ここはIBJJFは競技会運営団体ではなく、競技管理団体として、ルール変更の徹底的な告知と審判の理解を深める活動が不足していると指摘されても致し方ない。見極めが難しい攻撃であるなら、詳細なルール上の規定・指導があって然るべきだ。

ましてや抗議に対して、レフェリーの不明瞭な説明でコトが収まることはあってはならない。これまで積み上げてきた努力が、曖昧さの犠牲になるようでは、アスリートはたまったものではない。

それでも橋本自身は、今大会の戦いには大きな手応えがあった模様だ。取り組みを改善したことで上達を実感できた、これからさらに強くなるし、そんな自分が楽しみだと前向きな姿勢を見せている。

なお、反則勝ちで橋本戦をクリアしたアルベルトは、翌日の準決勝でホドネイ・バルボーザと対戦。得意のハーフガードに引き込んだバルボーザに対し、両腕を伸ばして襟を掴んで立ち上がる形でその攻撃を無効化し、最初の8分間でお互い3回警告をもらってスタンドから再開。ここでバルボーザの引き込みに合わせて飛び込んで2点獲得。ほとんど攻防をせずに頭脳戦で勝利した。

決勝はそのアルベルトと、もう一つの山を順当に勝ち上がった第一シードのタリソン・ソアレスによる4月のパン大会決勝の再戦に。まず上を選択したアルベルトだが、ソアレスはラッソーから横に崩す見事なスイープで2点を取ると、そのまま上をキープして勝利。ソアレスは不運な裁定に泣いたパン大会の雪辱を果たすとともに、青帯から黒帯まで全ての帯で世界大会優勝という偉業を果たした。

試合後ソアレスは、今回は試合前にAOJでキャンプを張り、ギィ・メンデス師範の指導を受けた成果が出たと喜びの弁。特に今まではスイープ合戦をしがちだったが、今回は上からパスを狙ってプレッシャーをかけ続けた、これまではいろんな選択肢で迷うことも多かったが、ギィ師範のおかげで自分を信じることができたと語った。

若き新世界王者ソアレスをはじめ、トップ選手たちが日々進化を続けるルースター級。

今回は予測不能な形での敗退となりながらも、新たな自信とモチベーションを得た橋本が、今後彼らといかに対峙してゆくか、大いなる期待とともに見届けたい。

【ルースター級リザルト】
優勝 タリソン・ソアレス(ブラジル)
準優勝 カルロス・アルベルト(ブラジル)
3位 クレベル・ソウザ(ブラジル)、ホドネイ・バルボーザ(ブラジル)

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【WJJC2022】世界に立ち向かう日本の柔術家 橋本知之─02─ 「優勝し、シェアできる存在に」

【写真】結果として、彼を揺り動かしているのは柔術への想い。柔術愛なんだと(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われている。
Text by Shojiro Kameike

ルースター級にエントリーしている橋本知之が試合直前に語ってくれた世界で戦う意識と、柔術家として世界一になることとは? 本人によるルースター級トーナメントの分析も含め──必読だ。

<橋本知之インタビューPart.01はコチラから>


――ご自身の中で、昨年から今年のムンジアルまでの間、どのような部分が成長してきたと思いますか。

「技術的にはトップからのアタックとか。ボトムからのアタックのバリエーションも増えましたし、クオリティも上がったと思います。それ以上に、まず練習の取り組み方がだいぶ良くなってきました。昔から世界一を目指して取り組んでいたんですけど、まだ楽しさ優先だったというか」

――……それは意外です。

「楽しいのが一番、というのは変わらないんです。それが今は楽しいことと、世界一になるために突き詰めることが、自分の中でシンクロしてきたというか。昔は突き詰めることと、楽しむということが若干ズレていたんですよ。今はその部分を考えて取り組むことが楽しくなってきていて、そこは変わった気がします」

――これまでは、世界一になるための練習はツライものだという気持ちが先行しすぎていたのでしょうか。

「強くなるためにはツライ練習をしないといけない、という根性論みたいなものが自分の中にもあって。それは違うなっていうことに気づくことができました。米国でも世界大会前のファンとキャンプとかは、メッチャ根性論なんですよ。本当にキツイ練習で。それを何回もやっていると『これが本当に正しい練習なのかな?』という疑問が浮かんできて。ただ、トップ選手でも選手によって練習内容は違いますし。

あとは他競技のトップアスリートはどんな練習をしているんだろうか、と思って本を読みました。すると強度の高い練習だけが良いわけではない、ということをトップアスリートなら普通に理解していることだったんですよね。強度よりも効率が大事だと。考えてみれば当たり前のことなんですけど、その意識が低かったなと思って。

そこから効率を考えて練習するようになりました。あとは無理をしすぎると故障も増えるし、故障が多いと練習も楽しくなくなるんですよね。だから最近は常に良いコンディションで練習をして、どんどん上手くなっているように感じています。だから楽しいです」

――それもキャリアを重ねていかないと分からないことかもしれませんね。

「そうですね。そう思います」

――では今回のトーナメントについて触れていただきたいのですが、マイキー・ムスメシとブルーノ・マルファシーニがエントリーしていない点は、どう考えていますか。

「マイキーは最近、ADDCやグラップリングに集中しているので、今回出ないのは仕方ないのかなと思います。ブルーノに関しては……出てほしかったですね。マイキーには負けちゃいましたけど、そのパフォーマンスを見るかぎりは、今もルースターでベストに近い選手だと思いますし。そうやって強い選手が出ているほうが、注目度も高いので。

これで僕が優勝できたとしても、マイキーとブルーノが出ていたら結果は違っていただろうなって、みんな思うでしょうから。世界大会という名前であれば、みんな出ているほうが良いですよね」

――……。

「もちろん肩書は大事です。世界大会で優勝すれば世界一という肩書きは得られるし、生きていくうえでその肩書きを使うことはできます。でも……本当の価値があるのは、ちゃんと自分の柔術が強いということであって。ブルーノはグラップリングをやっているわけじゃないし、コンディションも悪くなさそうなので、出てほしかったですけど。

でもブルーノは、もう10回優勝していますからね(苦笑)。今出ている選手にはほとんど勝っているか、あるいは新しい世代の選手なので、ブルーノにとってはそれほどモチベーションが上がらないのは仕方ないかもしれないです」

――そのなかで、今回のトーナメント表が発表された時の印象は?

「強い選手がバランス良く分かれているので、フェアな組み合わせだなと思いました。まず2回戦のベベト(カルロス・アルベルト)はレベルが高い選手ですよね。パンでもタリソン(・ソアレス)に勝って優勝していますし。メチャクチャ段違いにレベルが高いっていうわけじゃないですけど、全体的なレベルが高いので。

そこで僕がベベトに勝ったら、次はジョナスでしょうね。ジョナスはディフェンシブな選手で固い試合をするので、難しい相手なんですよ。怖さはないけど、ちゃんと勝つのが大変な相手です。でも一回対戦して、相手がどういうことをしてくるかは分かっているので。対策もしてきていますし、実際に戦ってみて、いろいろ試していきたいですね。

決勝の相手はタリソンになると思うんですけど、新しい世代で強い選手たちもいるので、どうなるか」

――詳しい解説、ありがとうございます。では最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

「日々の練習の中で、自分が工夫しながら取り組んでいることがあります。それは技術的にも、フィジカル的にも。その結果、世界大会で優勝できたら、自分の取り組み方も説得力を持って日本でシェアできる。そうやって日本の人たちの力になれますよね。

日本国内には世界トップの選手がいないし、英語も得意ではないから情報も少ないと思うんです。それは世界で戦ううえでは、すごく不利じゃないですか。自分が世界大会で優勝することによって、そうやってシェアできる存在になれればと思っています。もちろん自分が楽しみたいという気持ちもありますし、頑張ります」

■黒帯ルースター級放送予定
6月5日(日・日本時間)
午前3時00分~ FLOGRAPPLING

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MMA MMAPLANET o WJJC2022 アンディ・ムラサキ ケネディ・マシエル ジアニ・グリッポ ジョナタ・アウヴェス セルヴィオ・トゥリオ タイナン・ダウプラ トミー・ランガカー ブラジリアン柔術 ホナウド・ジュニオール マテウス・ガブリエル ミカエル・ガルバォン レオナルド・ララ

【WJJC2022】アンディ・ムラサキ、なるかストップ・ザ・独走状態=タイナン・ダウプラ

【写真】50/50ゲーム中に尻を出されたバイエンセがいないなか、誰がダウプラと拮抗した勝負を挑むことができるか(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われる、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text by Isamu Horiuchi

プレビュー最終回となる第4回は、日本でティーン時代を過ごしたアンディ・ムラサキが黒帯として世界初挑戦に挑むミドル級の見どころを紹介したい。


この階級の大本命は、昨年初出場初優勝を飾ったAOJの21歳タイナン・ダウプラ。オープンガードからの強烈なスイープと、盤石のトップゲームをもちあわせ、その圧倒的な強さは師のハファエル・メンデスを想起させる。昨年に黒帯デビューを果たした後、敗れたのはライト級レビューでも触れた「柔術の神の子」ことミカエル・ガルバォンとの死闘のみ。あとは50戦近くの大半を一本勝ちしており、仕留めきれなかった試合もはっきりと差をつけて勝利している。

今年は、昨年の世界大会決勝を争った──そしてこれまでのダウプラの黒帯キャリアにおいて、唯一接戦の勝利となった──イザッキ・バイエンセが不出場ということもあり、このダウプラこそ男子黒帯アダルト全階級の中でもっとも盤石の優勝候補と言えるだろう。

ダウプラの対抗としては、4月のパン大会準決勝でダウプラにパスを許さない健闘を見せたホナウド・ジュニオールや北欧の極め業師トミー・ランガカーらが挙げられるが、どちらも昨年から今年にかけてダウプラに連敗を喫しており、その牙城を崩すのは困難だろう。

そこで我々日本人が期待をかけたいのが、これが世界大会初挑戦となる22歳の日系ブラジリアン、アンディ・ムラサキだ。

十代の頃を日本で過ごし、やがて渡米してカイオ・テハの教えを受けた後にアトス所属となったムラサキ。昨年のEUG1のトーナメントにて、ケネディ・マシエル、ジアニ・グリッポ、マテウス・ガブリエルという超大物黒帯を三連破して衝撃の黒帯デビューを果たした。特にグリッポ戦では難攻不落と見られたそのオープンガードを完全に制圧してパスに成功、そのままステップオーバーしての三角締めを極めての圧巻の勝利だった。

パワフルかつ鋭いパスガードと極めを中心に活躍しているムラサキだが、現在ライト級の世界のトップを走るAOJのジョナタ・アウヴェスだけには分が悪い。特に4月のパン大会では、見事な戦いで決勝まで進出して雪辱戦に挑んだものの、スイープをもらった後トップをキープされての敗戦。ライバルにはっきり差を付けられての3連敗となってしまった。

今回は階級を上げてのミドル級で世界初挑戦となるムラサキは一回戦を突破すると、4月のパン大会にて一階級上のミディアムヘビー級でクローズアウト優勝を果たしたマニュエル・ヒバマー戦を迎える。重い階級における世界トップにムラサキの柔術がどこまで通用するか、まずはこの試合が紫金石となりそうだ。

ここを越えた後に準々決勝でおそらく待っているのは、同門アトスの先輩の(今回はアトス・インターナショナルで出場する)レオナルド・ララか。ムラサキと当たった場合に戦うのか──どちらかが譲るのかは定かではないが、その先の準決勝で当たるのはランガカーとセルヴィオ・トゥリオの勝者なる公算が高い。

そして決勝まで駒を進めれば、AOJにおけるアウヴェスの練習仲間にして、世界最強のタイナン・ダウプラに辿り着くことになりそうだ。

ムラサキを含めた挑戦者たちは、若くして既にあまりに強大な存在となりつつあるダウプラを攻略することはできるのか。今後しばらくはダウプラ時代が続くことが容易に予想されるだけに、今回はライト級で世界を狙うミカ・ガルバォンに続いて──その牙城に迫るライバルの出現を期待したいところだ。

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MMA MMAPLANET o UFC WJJC2022 ブラジリアン柔術 橋本知之 筋トレ

【WJJC2022】世界に立ち向かう日本の柔術家 橋本知之─01─ 「昨年はカイオの指示に身を委ね過ぎた」

【写真】現地入りしてから取材を受けてもらい感謝の限りです(C)SHOJIRO KAMEIKE

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われている。
Text by Shojiro Kameike

4日(土・同)からはアダルト黒帯のトーナメントがスタートするが、ルースター級には日本から橋本知之がエントリー。今年4月のパン大会ではライトフェザー級で3位を獲得した橋本が、そのパン大会から現在までの変化を語ってくれた。


――現地入りしてから試合直前にインタビューを受けていただき、ありがとうございます。日本時間では6月3日の0時、ロスは6月2日の朝8時です。6月4日の試合に向け、減量も順調に進んでいるのでしょうか。

「日本を発つ時が59キロ半ばで、今は58キロぐらいです。ルースターが道衣込みで57.5キロなので、道衣なしで56.2~56.3キロぐらいまで落とします」

――今年のパン選手権はルースター級ではなくライトフェザー級で出場し、3位となりました。そのなかで筋量も増えていたそうですが、それは意識的に増やしていたのでしょうか? それとも練習していて自然と増えていたのですか。

「ライトフェザー級に出る時は、食事や筋トレで意識的に増やしていました。ライトフェザー級だと自分は、身長は低いほうではないですけど、サイズは小さいので」

――ライトフェザー級で戦うための体づくりを行った結果だったのですね。

「はい、そうです」

――ということは、ムンジアルもライトフェザー級でエントリーする予定だったのですか。

「それは迷っていました。自分としてはルースターかライトフェザー、どちらでもよかったです。それでパン選手権はライトフェザー級で出場してみて、どんな感じなのかを試してみようと。あとはパンからワールドまで減量が続くと、ストレスになってしまうので。だから、そんなにコンスタントに減量したくなかった。その2つが、パンはライトフェザー級に出た理由でした」

――そのパン選手権で3位入賞となりました。橋本選手にとって、手応えのある3位だったのか、何か新しい発見がある3位だったのか。

「3位という順位については、世界大会に出るためにはポイントが必要なので、そのポイントを獲得できたという意味では良かったです。あとはライトフェザー級のトップ選手とも試合ができたし、どんな感じなのかはチェックできたので。そのうえで、世界大会まで2カ月でライトフェザー級の体を作って出場するよりは、ルースター級のほうがクオリティの高い状態で試合をすることができるのかな、と思いました。どちらかといえば、という感じなんですけど」

――試合内容、技術面はライトフェザー級で感じた内容を、ルースター級で出場する世界大会までの2カ月間で修正してきたのでしょうか。

「そうですね。たとえばパン大会の1回戦(ライトフェザー級準決勝でペドロ・クレメンチにアドバンテージ差で勝利)は、自分の中で早く極めようという意識が強すぎたんです。それで力みすぎて、初戦なのに消耗してしまいました。それはシンプルなミスじゃないですか。だから気を付ければ修正できる。

普段の練習から――もちろんリラックスしすぎるのは良くないですけど、力みすぎないように練習していくとか。もちろん技術的な部分で修正すべきところは山ほどあるし、そこは突き詰めればキリがないので、世界大会に向けて完成しきったという感覚は今もないです。でもその時その時で、試合に向けてスタイルを作って戦ってきたという感じですね」

――それは実際に試合、特に世界レベルの選手とのトーナメント戦を経験しないと分からないことですよね。

「試合をイメージして練習していても、実際に試合をしてみるとギャップがあったり、自分のイメージと合っていないこともありますからね。そこは自分のイメージが正しいのかどうか確かめるためにも、ある程度は定期的に出たほうが良いなと思いました」

――パン大会はムンジアルの2カ月前に行われます。そのためムンジアルの前哨戦の意味合いも強くなるでしょうし。

「世界大会に向けて、全試合でベストなパフォーマンスを出そうとしている感じはありますよね。でも、世界大会は特別なものですけど、そこで優勝したからって全てがメチャクチャ変わるっていうわけでもないので」

――えっ!? どういうことでしょうか。

「世界大会で優勝したら、大きなプロの大会に呼ばれたりとか。そうやって続いていくものなので」

――ここ十数年で大きく環境が変わりましたよね。柔術でもグラップリングでもプロの大会が増え、UFCファイトパスなどインターネットを通じて世界中に配信されたりと。

「まず競技人口が増えました。子供の頃から柔術をやっている選手は、昔からいたと思うんです。でもその人数が違うし、子供の頃からしている練習のクオリティが高くなっていますよね。その結果、10代の頃から強い選手が出てきていて。どんどん競技レベルは上がっているし、それは良いことだと思います」

――なるほど。試合の話に戻ると、パン大会の初戦で早く極めようと意識したのは、昨年の世界大会の結果も影響しているのでしょうか。昨年は準々決勝のジョナス・アンドラージ戦で、残り45秒で膠着のペナルティが入り敗れました。

「うーん……いや、パン大会の初戦は、トータルで見て僕のほうが上だと思っていたので。だから『ちゃんと差を見せつけよう』という意識が強すぎた結果で、昨年の負けと違うんですよね。昨年の反省点としては、カイオ(・テハ)がセコンドに就いてくれていたんですけど、僕がカイオの指示に身を委ねすぎたというか」

――というと?

「自分自身でその時の状況を細かく考えていなかったんです。もっと動けという指示もなかったし、このまま対処していれば良いかなと考えていたら反則のルーチが入ったので……。それは予想外ではあったんですけど、自分自身でそのシチュエーションを理解していれば、もうちょっと上手く戦えたのかなと。もちろん簡単なことではないですが、もうちょっと戦い方はあったかなと、今は思います」

<この項、続く>

■WJJC2022 黒帯ルースター級放送予定
6月5日(日・日本時間)
午前3時00分~ FLOGRAPPLING

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BJJ STARS08 MMA MMAPLANET o ONE ONE Championship WJJC2022 アンディ・ムラサキ アンドレ・ガルバォン エスペン・マティエセン ゲイリー・トノン ジョナタ・アウヴェス タイナン・ダウプラ タイ・ルオトロ ニュース ブラジリアン柔術 マテウス・ガブリエル ミカエル・ガルバォン リーヴァイ・ジョーンズレアリー ルーカス・バルボーザ レアンドロ・ロ

【WJJC2022】柔術の神の子ミカ・ガルバォンと神童タイ・ルオトロ、New Wave Jiu-Jitsuがムンジに挑む

【写真】夢のティーン対決が実現するか。そんなに甘いモノではないのか──見所だらけのライト級だ(C)FLOGRAPPLING & ONE

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われる、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text by Isamu Horiuchi

プレビュー第3回は、タイ・ルオトロ、ミカ・ガルバォンという柔術グラップリング界の二大ニュースターのエントリーにより最注目区となったライト級の見どころを紹介したい。


昨年はヘナート・カヌートとマテウス・ガブリエルのチェックマット勢によるクローズアウトとなったこの階級。今年はカヌートの姿がないものの、2019年のフェザー級世界王者でもあるガブリエルは出場する。

下からは長い足を活かした切れ味抜群のベリンボロを駆使し、上を取れば卓越したバランスから強力なパスガードを繰り出すガブリエルは、まぎれもなく優勝候補本命の1人だろう。

このガブリエルと並ぶ優勝候補と言えるのが、AOJのジョナタ・アウヴェスだ。

(C)FLOGRAPPLING

4月のパン大会では準決勝までは全試合短時間で一本勝ちし、決勝でもライバルのアンディ・ムラサキ相手に上下どちらからも試合を支配して、付け入る隙を与えずに完勝。

頭一つ抜けた強さを見せつけている。が、ガブリエルとは昨年のEUG1トーナメントの初戦で戦い、ベリンボロでポイントを奪われて惜敗している。師匠メンデス兄弟の必殺技でもあるこの技の対策を、アウヴェスが今回いかにアップデートして再戦に臨むのか。

ベリンボロと言えば、今回はオーストラリア出身のリーヴァイ・ジョーンズレアリーと、ノルウェーのエスペン・マティエセンという2人の名高いベリンボロ使いもエントリーしている。両者ともにメダル獲得の可能性を十分に持った強豪だ。

しかし、今回は上記の選手たちを超える注目を集める若手が2人エントリーを果たしている。1人は、先日のONE CHAMPIONSHIPにてゲイリー・トノンとグラップリング戦を行い、僅か97秒にてダースチョークで圧勝したタイ・ルオトロだ。

双子の弟ケイドと共にティーンの頃から脚光を浴びてきたタイは、2019年のADCC世界大会に若干16歳で出場。無尽蔵のスタミナをもって動き続け、ブルーノ・フラザトとパブロ・マントバーニという同門の大先輩2人を連破してベスト4に進出し、世界にその名を轟かせた。

その後もタイはケイドとともにノーギシーンを中心に大活躍し、昨年のWNOチャンピオンシップでも優勝。現在19歳にして既に今年のADCC世界大会の優勝候補本命とまで言われている。

ONEグラップリング以前に、今年の1月にはリーヴァイ・ジョーンズレアリーをヒザ十字で下しミドル級に続きウェルター級でWNOのベルトを巻くなど──ノーギではすでに疑いなく世界最強クラスのタイだが、道着着用ルールでの試合も厭わない。

昨年末の世界大会では茶帯ライト級出場し、決勝で弟ケイドと真っ向勝負。やや押され気味だったものの終盤にダースからバックに回り、後ろ三角から腕十字に移行という見事な流れで一本勝ちを収めて優勝を果たした。数日後、両者は師匠のアンドレ・ガルバォンから黒帯を授与された。

ノンストップ攻撃と圧倒的な極めでグラップリング界を席巻する19歳が、道着着用の大舞台でどのような戦いを見せるのか。今回はまさに世界が注目する黒帯デビュー戦だ。

タイが一回戦を突破すると、アウヴェスとの対決が実現する。スタンドでもグラウンドでも動き続けるタイを、タイトな柔術を身上とするアウヴェスが道着を用いていかに封じ込めるのか。低重心で抜群の安定感を持つアウヴェスに上になられた時、タイはどのように抵抗して活路を見出すのか、興味は尽きない。

そして今回タイに劣らず、むしろそれ以上に大きな期待を集めている初出場選手が、さらに年下の18歳「ミカ」ことミカエル・ガルバォンだ。幼少時よりルタ・リーブリとブラジリアン柔術の両方を修め、突出した反応速度を用いたカウンター、一瞬の閃きと極めの強さをもってノーギ&道着着用の両ジャンルにて見る者を魅了する「柔術の神の子」だが、その才能の凄まじさがより如実に発揮されるのは道着着用ルールの方だ。

昨年のEUG第2回大会のトーナメントに茶帯ながら参戦したミカは、準決勝で現在世界最強のミドル級柔術家であるタイナン・ダウプラと対戦。驚異的な反応と体捌きでダウプラの強力なオープンガードを封じ込め、終盤は一瞬で形に入った三角絞めを極めかけて判定勝ち。決勝ではダウプラの兄貴分アウヴェスの執念の膠着戦法の前に惜敗したものの、世界を驚嘆させる黒帯デビューを果たした。

黒帯昇格後に出場したアブダビ・ワールドプロ大会では、ブラジル予選& 本戦の6試合中5試合で一本勝ちして圧倒的に優勝。前述のマティエセンとジョーンズレアリーの2人も極めている。

さらなる驚きは、今年4月末のBJJ Stars08大会のトーナメント。1回戦で世界5階級制覇のレアンドロ・ロとのドリームマッチに挑んだミカは、クローズドガードからの攻撃でロのトップゲームを封じ込めて完勝してみせた。

さらに決勝ではミディアムヘビー級の世界王者ルーカス・バルボーザと対戦。スタンド戦で互角以上に渡り合って疲弊させると、終盤にテイクダウンからあっという間にバックに回ってボーアンドアローチョーク一閃。2階級上の怪物世界王者からも一本勝ちを収め、一夜にして柔術界の二大レジェンドを連破するという大仕事をやってのけたのだった。

その後、5月に入っても8日(日・同)にサンパウロで開かれた最も歴史と伝統があるといっても過言でないブラジレイロでも黒帯ミドル級で1回戦こそ対戦相手が失格だったが、その後の3試合では絞め、横三角、腕十字と一本勝ちを収め頂点に立っている。

今回、アウヴェスやタイとは逆のブロックに位置しているミカ。順当に勝ち上がれば準々決勝で前回優勝のガブリエルとの大一番が実現する可能性が高い。トップからもボトムからも無類の切れ味を持つ両者だが、攻撃の仕掛けが鋭いガブリエルに対して、ミカは切り返しの鋭さを誇る。両者の特性が噛み合えば想像を超えるような名勝負となる可能性もあるだろう。

アウヴェス対タイ、そしてガブリエル対ミカ。仮に両強豪を打ち破り、ファイナルでタイ✖ミカのNEW WAVE Jiu Jitsuの一戦が実現することになれば、昨年9月のWNOミドル級王座決定トーナメント戦以来の顔合わせとなり、その時はタイが辛勝しえいる。

誰が勝ち上がっても、さらに興味深い対決に続くこのライト級こそ、今年の世界大会で最も熱い期待を集める場であることは間違いない。

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MMA MMAPLANET o WJJC2022   タリソン・ソアレス ブラジリアン柔術 丹羽怜音

【WJJC2022】茶帯ルースター級。丹羽怜音&飛龍「色帯最後のムンジアル、勝ちを狙っていく」

【写真】新たなスポンサーも付いた二人。米国内での知名度も上がっている証左だ (C)NIWA BROS / HYPERFLY

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われる。
Text by Satoshi Narita

黒帯で世界の頂点を獲るために色帯で最高の結果を残す――その意志を貫くために茶帯に留まったAOJ所属の丹羽兄弟。4月のパンナムでは弟・飛龍はライトフェザー級3位、兄・怜音は同ベスト8と、あと一歩が届かなかったが、積極参戦してきたオープントーナメントでは常に表彰台に絡み、経験値を着実に積み上げてきた。

今年、ライトフェザー級を主戦場としてきた怜音は階級を下げ、弟・飛龍とともに茶帯最軽量級の頂を目指す。色帯最後のビッグトーナメントを間近に控える中、二人に話を聞いた。


――Zoomでのインタビューとなりましたが、モニター越しで見ても怜音選手はかなり絞れているようですね。減量はどんなかたちで進めてきたのですか。

怜音 本格的に減量を始めたのは2月くらいからです。栄養士の人に付いてもらって、パンナムの減量と合わせて落としていった感じです。

――ライトフェザーから階級を落とそうと思ったのは?

怜音 去年のムンジアルが終わってから考え始めました。もともと黒帯になったらルースターに行くのも一つの手段かなとは考えていて、去年のムンジアルで負けて、もう一回茶帯で出ると決めた時、練習やテクニックを磨くのもそうですけど、やれることは全部やってムンジアルを絶対獲りたいと思ったので、ルースターに行こうと。

――その話を聞いて、飛龍選手はどう思いました?

飛龍 最初に「行こうか迷っている」と聞いた時は、ライトフェザーでも勝てる実力があるので、賛成って感じではなかったです。ただ、去年は二人とも優勝した選手に僅差で負けて(怜音はライトフェザー級3位、飛龍はルースター級準優勝)、色帯でムンジアルを獲らないまま黒帯になりたくなかったし、今年は最後のチャンスになると思うので。より確実に獲れるならルースターに行ったほうがいいと思って、サポートするようになりました。

――サポートとは?

飛龍 例えば、試合前になると減量のために有酸素をやらないといけないので、スパー相手がいない時は僕ができるだけやったり。そういう感じですね。

――昨年のムンジアル後のインタビューでは「ムンジアルで勝つために、小さな大会にたくさん出て経験を積みたい」と話していました。その言葉通り、今年1 月のオースチン・ウインターオープンを皮切りに、米国各地の大会にコンスタントに参戦していましたね。

怜音 オープントーナメントにはけっこう出ましたね。パンナムの後もサンディエゴオープンに出ましたし(ライトフェザー級でクローズアウト)。

――今時点で、そうした取り組みから何か得られたと感じるものはありますか。

怜音 今はオープントーナメントのレベルも上がっていて、パンナムやムンジアルで結果を残している選手もたくさん出ているので、そういう選手と試合することで、勝っても負けても自分たちの良い経験になっているとは思っています。

飛龍 単純にオープントーナメントに出るのが楽しかったです。ムンジアルとパンナムはプレッシャーが強いというか、「絶対に今年こそは」と思って今まで負けてきてしまったので。でも、ムンジアルが自分のすべてを出す集大成だとすれば、オープントーナメントは「気軽」というわけじゃないですけど、新しいことを試したり、いろんな実験ができるので、楽しいんですよね。ムンジアルは「試す」とかはなくて、これまでやってきたことの中から「一番勝てること」をやるだけなので。

――可能性を広げられるような経験を積む一方で、練習環境の変化もあったと思います。特にこのひと月は、タリソン・ソアレスがAOJを拠点にするようになりました。

飛龍 コンプクラスでタリソンと同じグループだったので、めっちゃ練習しましたね。黒帯のトップでやっていく自信を強くしました。僕は、今年のムンジアルはタリソンが獲る可能性が高いと思っているし、来年もし自分たちが黒帯になってムンジアルに出たら、一年目で優勝できる自信が付きました。

怜音 僕はルースターに下げるとみんなに知らせたのが最近だったので、体重で分けるコンプクラスではライトフェザーやフェザーの選手と練習することが多かったんですけど、ファンダメンタルクラスでは自由にスパーできました。現役の軽量級で黒帯トップの選手と練習したのは初めてだったので、未知の部分もあったけれど、新鮮な経験でした。

飛龍 彼が来て5週間くらい経つんですけど、すごく成長したと感じます。僕もタリソンの成長を感じたし、向こうも僕の成長を感じていると思います。

――今年のムンジアル、茶帯ルースター級トーナメントは大会初日です。2人は別の山に分かれました。

怜音 エントリーリストで大体の選手はリサーチして、ランキングポイントを取っている選手がトーナメントのどの位置に行くかは予想できたし、その通りのブラケットが出たので。僕の山には今年のヨーロピアン、パン、ブラジレイロを獲った選手(シャイ・アナンダ/ECJJA)がいますけど、彼の対策もずっとしてきました。

飛龍 僕はムンジアルで一度対戦して勝っているし(※2019年ムンジアル紫帯ルースター級準々決勝)、怜音も必ず勝ち上がってくれると思うので、お互いに「反対ブロックは任せたぞ」って感じですね。色帯では最後のチャンスになりますから、勝ちを狙っていきます。

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MMA MMAPLANET o WJJC2022 アレクサンドロ・ソドレ イアゴ・ジョルジ ジオゴ・ヘイス ブラジリアン柔術 マラチ・エドモンド メイハン・マキニ ルーカス・ピニェーロ 今成正和 嶋田裕太 橋本知之

【WJJC2022】嶋田裕太の茨の道=ライトフェザー級。オカシオ,イアゴ&昨年準優勝者撃破で表彰台&三強戦

【写真】嶋田のハーフ、レッスルアップ、スイープはワールドクラスだ(C)SATOSHI NARITA

2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて行われる、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権。
Text by Isamu Horiuchi

プレビュー第2回は、NYのマルセロ・ガウッシア道場で長期修行を続ける嶋田裕太が出場するライトフェザー級の見どころを紹介したい。


強豪揃いのこの階級だが、他の選手から頭一つ抜けた優勝候補と呼べる選手が3人いる。まずは前回優勝のパトことジエゴ・オリヴェイラ。

続いてそのパトと昨年の準決勝で大死闘を演じ、4月のパン大会で優勝を遂げたメイハン・マキニ。3人目は、ADCCブラジル予選にてノーギながらパトを下したジオゴ・ヘイスだ。

ヘイスとマキニは昨年のワールドプロ予選で対戦。この時はヘイスが競り勝ちそのまま本戦優勝を果たしているが、4月のパン大会での再戦時には、50/50シーソー戦の末に12-10でマキニが勝利し、その後も優勝を果たしている。パトが23歳、マキニは21歳、そしてヘイスに至ってはまだ20歳になったばかり。すでに圧倒的な若き力により席巻されているのがこの階級の現状だ。

この3人に加え、昨年の世界大会で組み合わせに恵まれたこともあり決勝進出を果たした米国のマラチ・エドモンドも出場。そして19年の世界大会優勝者の一人である──この時は前人未到の同門4人によるクローズアウトだった──イアゴ・ジョルジ、4月のパンナムにてそのジョルジにストレートフットロックを極めて準優勝を果たしたルーカス・ピニェーロら強力ベテラン勢もエントリーしている。

このような過酷なトーナメントに挑む嶋田は、4月のパン大会以来の試合となる。同大会ではひとつ上のフェザー級にエントリーし、一回戦を順当勝ちした後、僅か10分少々のインターバルで過去2連敗を喫している強豪アレクサンドロ・ソドレと対戦。最初の上選択をアドバンテージと判定してもらえない不運もあり惜敗したが、シッティングガードからの鋭い仕掛けからシングルに移行して倒し切る等、その動きが世界最高峰に十分通じるところまで来ていることが見て取れる内容だった。

(C)FLOGRAPPLING

今回の嶋田の一回戦の相手は、ユニティ柔術のエドウィン・オカシオに決まった。

ジュニーの愛称でWNO等ノーギグラップリングの大会での活躍し、ジオ・マルティネスや今成正和等のビッグネームから勝利を挙げている。シッティングガードから足を絡めてのヒールフックを最も得意とするが、今大会はそれが禁止された道着着用ルール。この分野の頂点を目指す嶋田としては負けられない相手だろう。ちなみにオカシオは4月のパン大会にもエントリーし、初戦で橋本知之と戦う予定だったが欠場している。

次に嶋田を待っているのは、第5シードのイアゴ・ジョルジだ。

2019年には前述したクローズアウトでの世界制覇を含め、メジャー5大会全制覇という偉業を成し遂げた経験を持つ世界的超強豪だ。近年マキニ&ヘイスの超新星2人には連敗を喫しているが、その実力は健在だ。強烈なパスガードの持ち主のジョルジに対し、やはり上攻めを得意とする──同時にシッティングからのレッスルアップにも一段と磨きがかかっている──嶋田がいかに自分のペースで試合を運べるか。

今から9年前、2013年のブラジレイロ紫帯ライトフェザー級決勝で、ジョルジに勝利している嶋田だが、茶帯以降は対戦がなくても実績という点でリードを許している感は否めない。翌日の準決勝進出=世界のメダル獲得に向けて、最初にして最大の山場がこの試合となりそうだ。

このジョルジを倒せて、はじめて準々決勝に進める嶋田に立ちはだかる可能性が高いのは、昨年準優勝のマラチ・エドモンド。楽な相手であるはずはないが、エドモンドは黒帯での試合経験がまだ少なく、4月のパン大会でもルーカス・ピニェーロにチョークで完敗している。ジョルジに比べれば与し易いと言えるかもしれない。

ここも超えることができた場合、翌日の準決勝で嶋田を迎え撃つのはおそらくメイハン・マキニ、そしてさらに決勝で当たるのはパトことジエゴ・オリヴェイラとジオゴ・ヘイスの勝者だろう。つまり最終日には、現在この階級を席巻する真のトップの3人のうちの2人との連戦が嶋田を待っていることとなる。

頂点への道のりは目眩がするほど険しいが、4月の見事な戦いぶりから判断する限り、最終日に世界最高峰と渡り合う嶋田の勇姿を我々が見られる可能性は大いにあるだろう。

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