【写真】 右の突きが何度も江藤の顔面を襲った(C)MMAPLANET
16日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されたDEEP121 Impactで野村駿太が江藤公洋を破りDEEPライト級チャンピオンの座についた。
Text by Manabu Takashima
昨年7月にテイクダウン&コントロールで江藤に敗れた野村は、所属するBRAVE Gymや出稽古先のロータス世田谷で組みを磨き、組まれても構わないという自信を持ってMMAファイターとしてタイトル戦に挑んだ。
結果、江藤を入らせずに打撃を入れる。その打撃も伝統派空手のエッセンスを生かしつつ、MMAに昇華させた野村ならではの打撃となっていた。将来に関して、UFCという言葉も訊かれた試合後の合同インタビューから、MMAPLANETの問いへの返答を抜粋してお届けしたい。
「ありがとうございますっ!!」
──極端にいえば殴られるのが嫌な江藤選手と、組まれても構わない野村選手。その差が如実に出た試合になったかと感じました。
「完成度が高いという江藤選手の評価に、自分は疑問を抱いていました。去年戦った時はそういう風に思っていましたけど、ここのところは『そんなに完成度が高いかな?』って自分のなかで思うようになっていて。
自分が足りないと指摘されている組みの部分に関しても、かなり練習をしていますし。組みのトップの選手と、ずっとやりあえているんで。でも、江藤選手は打撃のトップの選手と打撃をやり合えるわけじゃないということが、自分の心のなかで余裕になってきていました。
自分は組みのトップの選手とずっと練習をしてきたことが心の支えになっていたので、落ち着いて戦えました」
──江藤選手が自分の距離とタイミングでないところから、組みつかないといけないほど圧をしっかりと掛けることができていました。
「イメージで言えばマクレガーとか、昨日、負けてしまったのですがショーン・オマリーのような戦い方が自分のなかでデキましたし、ジムの宮田先生だったり、指導をしてもらっている石渡さんからも、そこを創ることができれば今回はいけると言ってもらっていて。自分の意見も含め、全員の総意でした。チームと、自分の『これをやったら行けるんじゃないか』という意見が合致していたので、そこを淡々とやるだけっていう感じでした」
──上段回し蹴りも様子見ではなく、拳の攻撃と連動がありそうな雰囲気がして、これまで以上に有効に見えました。
「ローを警戒しているのが伝わってきたので。ローに対しては反応がメチャクチャ早かったです。そうですね、ローとストレートを気にしているなかで、天の声じゃないですけど『ハイを蹴ったら良いんじゃない?』って頭に浮かんだ形です。
セコンドが『下から』という風に声を出してくれていたので、江藤選手は下を凄く警戒していたのだと思います。だから、自分が何もしなくてもセコンドの声がフェイントになっていました」
──テイクダウンを何度目かに切った時に、ニヤッとかなり悪い笑顔を浮かべていました。
「していましたか?(笑)」
──ハイ。ただし、この勝利が100点満点にならないのは最終回です。テイクダウンされバックを取られた。あそこが守れなかったのは、どのようなことが原因だと思われますか。
「ただただ自分の弱さだと思います。動けたはずです。でも『このまま耐えておけば』と考えてしまって。1Rはアレで1分ぐらい過ごせたという気持ちが残っていて、このまま耐えたらエェかなっていう感じになっていました」
──つまり江藤選手が組んでくること有りきの受け方になってしまった?
「そうですね。そこまでにやってきたことが、最後に崩れて。それがまだ自分っぽいところなのですが、その当たりを修正できればもっと強くなれると思います。あの場面の自分に対しては『何してんねん!』という気持ちと、『もっと強くなれるな』という気持ちがあります」
──今後に向けて、世界へ行くという言葉も聞かれました。とはいえ、その道に明確な道筋は存在していないのが実情です。
「ハイ。目標はやっぱりUFCです。昨日(※UFC306)を視ていても『ここで戦えると、格闘家として最高やな』という気持ちになりました。そのなかで世界を代表するストライカーのショーン・オマリーがああいう形で負けたりして、自分もああなるのかっていう迷いも少し生じたのですが、この勝利で『俺も世界に行けるな』って気持ちがしています」
──空手家がグローブをつけると、拳の届く距離でボクシングやキックになることが多いと思います。今夜の野村選手は、右の突きが伝統派空手の動きながらしっかりと当たり、ダメージを与える突きになっていたように思いました。パンチがフック系になることはなかったかと。
「ジャブで自分の拳を伸ばしたところで、相手に当てることができ距離を創ることができたのが大きかったです。接近戦や頭を下げる場所で戦うという選択もったのですが、伸ばしたところで殴る距離が創れたことで右が当たり、だからこそテイクダウンが切れたということもあります。
あの距離を創ることができれば、自分の時間をずっと続けることができます。制空圏を創ることができた。これまでは打ち気になって浮き気味になっていたのに対して、ジャブが有効だったからストレートが生きました。
Road to UFCを視ていても倒せるかどうかが、問われていて。DEEPに来てから4試合、5試合前から他の選手にはないミッションを自分に課してきました。今回のミッションはケガをしても良いから、勝つということ。その気持ちがあったのでリラックスして戦えることができました」
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