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【Shooto2021#07】女子Sアトム級王者・黒部三奈─01─「私はSARAMIちゃんのことが大好きですから」

【写真】SARAMIが挑戦者に決まった時ですら、ケージ内で自撮りをする黒部。SARAMIの表情からも両者の関係が伺える (C)MMAPLANET

6日(土)、東京都江東区のスタジオコーストで行われるShooto2021#07で、世界女子スーパーアトム級王者の黒部三奈が、挑戦者SARAMIを迎え撃つ。
Text by Shojiro Kameike

黒部にとっては昨年8月に獲得したベルトの初防衛戦であり、SARAMIは今年7月に修斗初参戦ながら中村未来との挑戦者決定戦に勝利して、今回の対戦に至った。両者は過去2度対戦し、いずれも黒部が勝利を収めている。同時に、普段は練習を共にしている間柄だ。SARAMIが王座挑戦権を獲得した直後には、ケージインした黒部との仲睦まじいやり取りが展開されていた。

そんな2人の激突直前、王者の黒部に現在の心境を訊いた。


――今年7月に中村未来選手を下したSARAMI選手を挑戦者に迎え、修斗女子世界スーパーアトム級王座の防衛戦を行うことになりました。そのSARAMI選手は、普段は一緒に練習している仲間なのですね。

「はい。日曜日にマスタージャパンで、他のジムの女子選手が集まって一緒に練習しているんですよ。何年も前から一緒にやっています。いつも参加しているのは、メイさん(V.V.Mei)、藤野(恵実)さん、富松(恵美)さん、それとSARAMIちゃんですかね」

――SARAMI選手とは過去に2度対戦し、いずれも黒部選手が勝利しています。2度目の試合は2018年3月に行われていますが、その時点では一緒に練習していたのでしょうか。

「いえ、2018年はまだ練習していなかったです。その試合がキッカケで、一緒に練習することになったのかな……。もう何年も前のことなので、詳しくは覚えていないんですけど」

――SARAMI選手も含めて、いま名前が挙がったのは階級も近く、対戦する可能性もある選手ばかりですが……。

「仕方ないですね。各ジム、そんなに女子選手っていないじゃないですか。特にプロで上のほうにいる選手が集まっているジムはなくて。すると、そこまでガッツリ練習できる相手がいないんですよ。自分のジムでは男性とも練習しているけど、やっぱり実戦に近いレベルの練習は、女性が集まってやらないと分からないこともあるので。だから週に1回ぐらいは――という気持ちで集まって練習しています」

――なるほど。

「そもそも、みんな対戦することもあるかな、と思って練習しているところもありますよ。でも、しょうがないよねって」

――実際に、9月のRIZINでは練習仲間でもある浜崎朱加選手と藤野恵実選手が対戦しました。今後、対戦する可能性がある選手と全力で練習できるものなのですか。

「私は、できます。手の内を見せたくないとか言う人もいますけど、私はもともと強くなりたくて格闘技を始めているわけだし、そんなことは気にしていないですね」

――では、そのSARAMI選手の練習はいつまで行っていたのでしょうか。

「挑戦者決定戦まで、ですね。前回のSARAMIちゃんの試合が、挑戦者決定戦と発表されて……そうなるとSARAMIちゃんが勝ったら対戦する可能性があるわけじゃないですか。そうしたら彼女から『次の試合が終わるまでは練習してもらっていいですか?』って連絡が来て。私も『もちろん、お願いします』っていう感じでした」

――そうした仲が、SARAMI×中村未来戦直後のやり取りに繋がっているわけですね。ほんわかした会話といいますか……。

「アハハハ! 私はSARAMIちゃんのことが大好きですから。もちろんSARAMIちゃんのことを思いっきりぶっ倒そうと思っているけど、それは試合の時だけ。会見とかの場では、普段の会話になっちゃいますね(笑)」

――普段の練習でも、そのような感じで。

「そうですね……いや、もしかしたら対戦するかもっていう流れになってきた時は、練習の時もバチバチだったことはありました。そこまで熱くなることはないけど、スパーリングでラウンドの最後とか、相手が打ってきても引かないで打ち返すとか(笑)」

――アハハハ、練習だから仕方ないですよね。今はUFCを中心としてMMAの世界では、女子のレベルが急速に上がり続けています。そんななかで、日本のトップ選手が一緒に練習してレベルを上げていかなければいけないのも、当然かと思います。その点でいえば、海外の女子の試合については、どのように見ていますか。

「……海外の選手と、そんなに凄く差があるとは思っていないんですけどね。スタンプ選手と対戦してみたかったなぁ、とは思いますけど」

――ONE女子アトム級GPに対して、思うところはありますか。

「別にイベント自体に、特に思うところはないです。女子だけのトーナメントとか、こだわりもなくて。私としては、試合ができればいいかなって(笑)。できれば知らない相手と試合がしたい。そうなると海外の選手と対戦したい、っていう気持ちはありますけど」

――すると、今の黒部選手にとってMMAを戦ううえでの目標は何なのでしょうか。

「うーん……私は自分の年齢のことは気にしていないですよ。気にしていないです。気にしていないけど――この先に何があるかは分からないじゃないですか。

もっと自分が若ければ、ONEで試合ができたかもしれないし、次の試合に勝ったらもっと上に行きたいとか思っていかかもしれないです。でも今の私にとっては、次の試合を本当に思いっきりやる。それだけなんですよ。今この年齢で試合の舞台に立てていること自体が、凄いというか(笑)」

――黒部選手は現在44歳、確かに凄いことだと思います。

「だからこそ……毎回、最後の試合のつもりで準備しています。できるかぎりのことを、本当に毎日やる。もしかして、明日はないかもしれないから。でも不思議だけど、今すごく元気なんですよ。本当に――若返っているなっていうぐらい(笑)」

<この項、続く>

■視聴方法(予定)
11月6日(土)
午後1時00分~ ABEMA格闘チャンネル

■ Shooto2021#07対戦カード
             
<修斗世界女子スーパーアトム級選手権試合/5分5R>
[王者] 黒部三奈(日本)
[挑戦者] SARAMI(日本)

<修斗暫定世界ストロー級王座決定戦/5分5R>
猿丸ジュンジ(日本)
黒澤亮平(日本)

<フェザー級/5分2R>
結城大樹(日本)
岩本健汰(日本)

<フライ級/5分2R>
高橋SUBMISSION雄己(日本)
山内渉(日本)

<インフィニティリーグ2022女子アトム級/5分2R>
中村未来(日本)
澤田千優(日本)

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感謝の気持ちを伝える斎藤裕LIVE!【質問回答】

※11月8日までの限定アーカイブになります!

RIZIN.31応援ありがとうございました。
今回は皆様に直接感謝を伝えさせてください!

【LIVE配信の決まり事】
・全質問には答えられません
・対戦予想は扱いません
・不快内容はブロックします

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【FORCE14, The Shooto Okinawa05 & TORAO26】闘裸男に佐々木信治出場。中国・四国、九州&沖縄のAdv

【写真】恐らくはこれが最後の闘裸男参戦になるであろう佐々木信治 (C)MMAPLANET

27日(水)、TORAO NATION STATEより12月5日(日)に広島市南区のBULE LIVE HIROSHIMAで開催される闘裸男26で佐々木信治がジョナタン・バイエスと対戦することが発表されている。

今年の2月にGLADIATOR013で2年9カ月振り、試合で大けがを負って以来のカムバック戦で暫定ライト級のベルトを巻いた佐々木が、2014年3月以来の修斗公式戦に出場。闘裸男に関しては2010年4月の闘裸男10以来、11年8カ月振りだ。


BORDER、そして闘裸男と修斗の地方大会でキャリアを積んできた佐々木にとって万感の思いを持った里帰りの相手は、パラエストラ沖縄所属のジョナタン・バイエス──当日計量のウェルター級マッチとなる。

この日は2部制興行で1部のTORAO GIG03には同じくパラエストラ沖縄から畠山隆弥も出場し、麻生祐弘との対戦も決まっている。

闘裸男、いやTOROA NATION STATEとThe パラエストラ沖縄の連携はこの2試合に限らず、11月から12月にかけての両グループが出掛ける3大会=5つの興行でもしっかりとみられる。

11月7日の四国・高松=FORCE14 & FORCE GIG01、11月14日の沖縄=Shooto OKINAWA05、12月5日=TORAO26 & TORAO GIG03では現時点で27試合の修斗公式戦とグラップリングが1試合、柔術マッチが1試合行われることが決まっている。

27試合、54人の出場選手は沖縄勢が11名、九州は9人(福岡8人、宮崎1人)、中国地方は15人(広島9人、山口5人、岡山1人)、四国が8人(愛媛3人、徳島3人、高知1人、香川1人)、そして関西は大阪が3人で兵庫と京都が2名ずつ、あとは東京から2選手、静岡と千葉から1選手ずつが試合機会を得ている。

沖縄では旭那拳が木内SKINNY ZOMBIE崇雅へのリベンジ戦、広島では奇天烈✖野瀬翔平などは首都圏で組まれてもおかしくないカードが、地元や地元に近い場所が行われる。

高松で高岡宏気、沖縄の当真佳直、南風原吉良斗という再起戦。サステイン興行や地元で躓いたキャリアの再出発の舞台を闘裸男、FORCE、沖縄大会が用意する。

中国・四国、九州&沖縄のMMAファイターはこれらのプロモ―ションが存在することが、確実にアドバンテージになることが分かる──11月から12月にかけてのプロ修斗公式戦戦線だ。

■TORAO26対戦カード

<フェザー級/5分3R>
野瀬翔平(日本)
奇天烈(日本)

<ウェルター級/5分2R>
佐々木信治(日本)
ジョナタン・バイエス(米国)

<グラップリング75キロ契約/5分2R>
田村ヒビキ(日本)
森戸新士(日本)

<フェザー級/5分2R>
神田T800 周一(日本)
キシシ(日本)

<フライ級/5分2R>
蒔田伸吾(日本)
坂本潤一(日本)

<フェザー級/5分2R>
麻植裕太(日本)
ふじい☆ペリー(日本)

<53キロ契約/5分2R>
宝珠山桃花(日本)
和田千聖(日本)

■TORAO GIG03対戦カード

<2020年新人王決定Tストロー級1回戦/5分2R>
※当日計量により56.7キロで実施
横関タルト(日本)
わっしょい内田(日本)

<2020年新人王決定Tフェザー級1回戦/5分2R>
※当日計量により70.3キロで実施
HAMMER KATU(日本)
一水浩二(日本)

<2020年新人王決定ライト級1回戦/5分2R>
※当日計量により77.1キロで実施
スモーキー(日本)
貞永大輔(日本)

<2020年新人王決定フライ級1回戦/5分2R>
※当日計量により61.2キロで実施
水田大智(日本)
丸山幹太(日本)

<フライ級/5分2R>
麻生祐弘(日本)
畠山隆弥(日本)

■The Shooto OKINAWA#05対戦カード

<ストロー級/5分3R>
木内SKINNY ZOMBIE崇雅(日本)
旭那拳(日本)

<フェザー級/5分2R>
児山佳宏(日本)
工藤圭一郎(日本)

<ストロー級/5分2R>
当真佳直(日本)
金内サイダー雄哉(日本)

<2020年新人王決定Tバンタム級1回戦/5分2R>
南風原吉良斗(日本)
持田哲兵(日本)

<ストロー級/5分2R>
大城匡史(日本)
泰斗(日本)

<フライ級/5分2R>
若山達也(日本)
KJ・タイラー(日本)

<フライ級/5分2R>
梅木勇徳(日本)
新垣健司(日本)

<柔術茶帯ライトフェザー級/8分1R>
小生隆弘(日本)
清水慎也(日本)
           
■FORCE14対戦カード

<バンタム級/5分2R>
高岡宏気(日本)
寺島直人(日本)

<73キロ契約/5分2R>
CHAN-龍(日本)
山下康一朗(日本)

<フライ級/5分2R>
石原愼之介(日本)
坂本潤一(日本)

<フェザー級/5分2R>
麻植裕太(日本)
波平コング(日本)

<フェザー級/5分2R>
藤川智史(日本)
國頭武(日本)

■FORCE GIG01対戦カード

<フライ級/5分2R>
木村旬志(日本)
三輪勇気(日本)

<バンタム級/5分2R>
宇都宮伍(日本)
井口翔太(日本)

<バンタム級/5分2R>
堀川“55”滉介(日本)
當房桂(日本)

<ウェルター級/5分2R>
岡野”Garcia”史詩(日本)
KENZO(日本)

<フェザー級/5分2R>
梶原大悟(日本)
川北晏生(日本)

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MMA Shooto Shooto2021#08 VTJ

【Shooto2021#08】12/19に大阪大会=メルパルクホールOSAKA大会が1部制で開催。2022年は1月16日から

【写真】7月4日、平良達郎が修斗世界フライ級王座に就いたメルパルクホール大阪で12月に修斗公式戦の締め(?)が行われる (C)MMAPLANET

26日(火)にSustainより12月19日(日)に大阪市淀川君のメルパルクホールOSAKAでShooto2021#08を開催することが発表された。

コロナ禍のプロ修斗公式戦大阪大会の常打ち会場となったメルパオア来るOSAKA大会は修斗公式戦、修斗公式戦&TTFCという二部構成というイメージが強いが、今回は1部制で行われることが明らかとなっている。

対戦カードはこれからの発表となる大阪大会と同様に、2022年度のサステイン主催プロ修斗公式戦の年間スケジュールが発表されて、1月16日(日)、3月21日(月・祝)、5月22日(日)、7月17日(日)、9月19日(月・祝)、11月27日(日)と6度の後楽園ホール大会が行われる。

ともあれ、11月5日に開催を控えたVTJの追加カード発表をまずは待ちたい。


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【VTJ2021】EXFIGHT=宇佐美正パトリック✖BRAVE=野村駿太。若手のパワーハウス勢が激突

【写真】VTJ版Young Blood的なファイトが決まった(C)MMAPLANET

25日(月)、Sustainより11月6日(土)に東京都江東区のUSENスタジオコーストで開催されるVTJ2021で宇佐美正パトリック✖野村駿太というプロ2戦目同士のライト級マッチが組まれることが発表された。

格闘家育成プロジェクト『格闘DREAMERS』を経て、LDHmartialarts契約EXFIGHT所属プロフェッショナルMMAファイターとなったパトリックは、9月20日のShooto2021#06のヨシ・イノウエ戦で1R4分18秒に左ボディKO勝ちでプロ初陣を飾っている。

対して、BRAVE所属の野村は9月5日のGrachan50で前田啓伍を相手に判定勝ちしプロキャリアをスタートさせた。


野村は松山工業高校~自衛隊体育学校と伝統派のポイント空手で活躍してきた選手で、2020年の全日本空手道選手権では、愛媛代表として男子組手で5位(※ベスト8)入賞をしている。

MMA初戦でも伝統派競技空手特有の半身の構えを見せていた野村とパトリックのマッチアップは、空手✖ボクシングという見方を概ねされるだろう。とはいえパトリックはボクシングで高校6冠となる以前に極真空手、正道会館空手、新空手K-3のキッズ部門で蹴り有り、あるいはグローブ着用顔面有りルールで国内のトップとして戦ってきている。

蹴りへの慣れは、プロデビュー戦でのローの切れを見ても分かる通りだ。

既にJ-MMA界有数の拳の攻撃を有しているパトリック。その象徴的な攻撃は左ボディショットだ。

プロデビュー前からDREAMERS内で見られたアマMMAでもその威力を如何なく発揮してきたが、忘れてはならないのはなぜあの距離に入れるのかということだ。

MMAであの距離でボディショットを放つことができるのは、右オーバーハンドや左リードフックの鋭さがあるからに他ならない。

野村がこの2つのパンチの勢いで真っ直ぐ下がるようなことになれば、ケージを背負い腹を抉られる距離になる。

その野村はデビュー戦を見る限り、伸ばせば拳が届く位置で空手特有の構えでアゴを守ることがなく連打を見せていたが、この距離は完全にパトリックの制空権といえる。と同時に野村、構えは左手前貴重でヒザ蹴り後などに足を前方に着地させ、スイッチするとサウスポーからもオーソと同じ攻撃を繰り出すことができる。

ポイント空手の当てる……届かせることを主体にした突きから、ダメージを与えることに軸を置くMMAでは野村のパンチ自体は多分にボクシング化している。よって低い位置にあった拳を一度、肩の位置に持って来るようになる。

溜め、反動、筋力で打つパンチはパトリックが野村を上回ることは否定できないので、この距離になる野村は圧倒的に不利だろう。

と同時に、野村は腰上の位置から繰り出すパンチも見られる。この軌道から伸ばされる突きは、結果として関節の接続で放たれるモノで空手特有だ。

この突きがパトリックの圧力に負けず、その制空権で放たれると勝負はどう転ぶか分からない。そんな一撃、そしてパトリックの詰めをJKA空手のステップで外すことができるのか──小外刈りなど、力以上にタイミング=空手の足払い的な動きが見られるか。この3点に注目すると、より興味深くなるパトリック✖野村のルーキー対決はEXFIGHTとBRAVEというポテンシャルの高い若い選手が集まる、J-MMA界の新パワーハウスのぶつかり合いとなる。

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ABEMA MMA ONE SASUKE Shooto Shooto2021#07 VTJ VTJ2021   エンセン井上 中村倫也 佐藤ルミナ 修斗 原口央 坂本一弘 堀口恭司 宇野薫 海外 石原夜叉坊 西川大和

【VTJ2021&Shooto2021#07】坂本一弘代表に訊く、VTJ─02─「VTJはずっと続けるモノではない」

【写真】今や伝説、Vale Tudo Japan99のTeam Japan登場シーン(C)SUSUMU NAGAO

11月6日(土)に東京都江東区のUSENスタジオコーストでVTJ2021とShooto2021#07を主催するSustainの坂本一弘氏インタビューPart.02。

歴史の節目に修斗に表れる裏歴史=VTJを1997年から指揮し、その前年の10月よりワールド修斗~サステインを母体に修斗公式戦を開いてきた坂本氏にVale Tudoとのパーセプションから、日本最弱を経て修斗のレコンキスタ、そして世界と遭遇する大航時代の象徴となったVTJを振り返ってもらい、11月のVTJ2021が果たす役割について話してもらった。

<坂本一弘インタビューPart.01はコチラから>


──カーロス・ニュートン!!  今も中村倫也選手と親交があるそうですよね。

「カーロスは倫也のお父さんの晃三社長にお世話になっていましたからね。あの時、カーロスは初来日で修斗ライトヘビー級王者だったエリック・パーソンに腕十字で一本勝ちしたんですよね。トム・エリクソンもフリーウェイトでエド・デ・クライフに勝っていますね」

──日本勢ではプロデビュー2年目で桜井マッハ速人選手も出場している。凄い面子ですね。

「凄いですねぇ、そう考えたら。今、誰に通じるんかいって話ですけど(笑)、エェ選手が集まっていますよね。まぁ、この年はやっぱりルミナがジョン・ルイスにリベンジを果たしたってことですかね。試合結果でいえば、ドローから一本勝ちなので決着をつけたということになるのですが、97年の公式戦からVJTと結果を残せたのも、ルミナだけは96年に仕留められずに引き分けたから。そういう違いは大きかったんだと思います。

そうですね……94年、95年から96年の日本最弱と呼ばれた大会を経て、VTJもグレイシー柔術への挑戦から、97年と次の年の98年では対世界という部分が色濃くなりましたね」

──なんといっても1998年は……。

(C)SUSUMU NAGAO

「エンセン井上✖ランディ・クートゥアーですね。

90年代のVTJと、その後のVTJ──性格も時代背景も違いますが、ベストバウトという見方をすると1位も2位もなくエンセン井上✖ランディ・クートゥアー、それと堀口恭司✖石渡伸太郎──この2試合しか出てこないです。3位以下はもう皆頑張った、エェ試合で選べない。でも、この2試合は別格。デカいです」

──とはいえ90年代VTJの集大成、1999年のVTJはイベント自体として印象に強く残っているモノではないでしょうか。

「あの年は原点回帰というか、世界を知った修斗が打倒バーリトゥードの母国に挑む。そういうコンセプトでしたね。試合前のセレモニーのチームJAPANの入場シーンは、未だに『格好良かった』と言われますね」

3分間流れたブラジル国歌、この日の第1試合で佐藤ルミナと戦ったのは、今やKINGS MMAの総帥ハファエル・コルデイロだ

──あれは語り継がれるべき、登場シーンだったと思います。

「そしてブラジル国歌がフルバージョンで流れ、ブラジル勢をブックしてくれたエリオ・グレイシーの愛弟子ジョアン・アルベルト・バヘットさんの挨拶が延々と終わらない。それに友情の印で木刀のプレゼントですよ(笑)」

──色々な意味で伝説です。

「1999年のVTJはVale Tudoからの卒業、集大成であるのと当時に僕らがやることも修斗に舵取りをするという時期にきていたんだと思います。VTJはずっと続けるモノではない。だから10年後に再開したり、今回も5年2カ月振りになりますしね。99年のVTJを終えて、修斗という競技をしっかりと確立していく……あの前後で米国、豪州、欧州、ブラジルでアマ修斗があり、プロ公式戦が開かれるようになった。VTJというモノがあり続けると、そういう活動に支障が出ていたかもしれないです。

それは言い方を変えると、それだけのテンションを持って続けられなかったということにもなります。99年のVTJは、やはりイベント全体として最高でした」

──修斗、MMAが確立する以前の決闘の雰囲気が残っていた大会です。

「2000年からNKホール大会が公式戦に変り、あの時代における一つの役割を終えたということですよね」

──それから22年を経て、世界、世界、海外、海外と口にはできますが、全くもって国内の情勢は厳しくなっています。

「あの頃とMMAが行われている国の数が全く違います。選手も世界中で生まれ、育っている。とはいえ日本のレベルも上がっています。絶対論でいえば日本も世界も上がっている。そして後発でMMAが始まった国の選手たちの力の伸び様や、MMAの市場規模の成長という部分で日本と海外を相対的に比較すれば、海外の方が力をつけているということで。

やはり次のステップ、ネクストステージに進むときに、何か楔となるモノが必要です。平良(達郎)、SASUKEも西川大和もそうです。次のステップに行くまでに経験しておくべきことってあると思うんです。それが修斗でできることもあれば、VJTでなければできないこともあります。そういうことを踏まえた上で、結論として『やっていた方が良くない?』という試合、場を提供したいということです。先輩風を吹かせると、ですね(笑)。

もっと華やかな世界はあります。海外で戦うという場合にしても、これはやっていた方が良い、コイツは越えておいた方がエェというのは常にありますよ」

──とはいえ現状、コロナ禍において外国人の招聘が難しく、スポーツ庁などに働きかけてもそれこそ90年代のVTJのような海外勢が半分出てくるというイベントは開けないです。今後ということも含め、どのような国から海外勢を招聘したいと考えていますか。

「まずお隣の韓国は外せないです。強い選手が多いのは当然ですし、地理的にも招聘しやすい。ただ、ワクチン接種が選手の世代にはなかなか回ってこないという事情があるようで。今回のVTJに関しては、韓国勢の招聘は見送ることにしました。そうなってくると北米になりますね。ワクチン接種が進んでいますし」

──対して日本勢というのは?

「僕が出てほしいのは平良、西川、SASUKE。彼らにはやはり出てほしいと思っています。『お前らが何か変えろよ』と、彼らには変える力がありますからね。そういう選手に海外から選手を招聘できるようなら、外国勢を当てたいですね。もしくは海外を経験してきた選手を。そういう選手と戦うというのも、現状のVJTの一つの要素ですね」

──ただし現在の修斗で海外を知る選手というのは、思い当たるのは宇野選手を筆頭にして、夜叉坊選手ですか。それとONEと契約している選手ですかね。

「ONEと契約している選手は、ONEとまず話をしてクリアーにならないといけないですが、そのパターンも視野にはいれています。あと石原夜叉坊はVTJ前に米国で試合があるようで(※10月17日にFury FCに出場しドローだった)。『決めてまいましたわぇ。このままじゃ、帰られまへんねん』ということでしたね」

──『帰られまへん』とは言わないでしょう(笑)。

「アハハハ。まぁ、夜叉坊も意地があるでしょうしね。そういうことで夜叉坊の出場はないですが、宇野薫(インタビュー後に原口央との対戦が決定)以外にも、ここはVTJですし修斗に出場経験のない選手の試合というのも考えています」

──VTJと修斗の昼夜興行というのも興味深いです。

「以前は一つのイベントで公式戦とVTJルールの試合を前後にわけて組んだことがありますが、イベントを並べるのは初めてですね」

<この項、続く>

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MMA PFL RIZIN Shooto Shooto2021#06 Special ブログ 川名雄生 西川大和 青木真也

【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編01─西川大和✖川名雄生「辛くなってしまいます」

【写真】本人はライト級で世界を目指すと明言しているが、先人・青木真也の指摘は── (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年9月の一番─番外編第一弾─は9月20日に行われたShooto2021#06 から修斗世界ライト級選手権試合=西川大和✖川名雄生戦について語らおう。


──9月の3試合のピック以外で、青木選手が言及したい選手がいるということですが。

「ハイ、西川大和選手なんです」

──川名雄生選手を破り、修斗ライト級の頂点に立ちました。

「西川選手はヨアキム・ハンセンですよね。ただし、ヨアキムは2000年代から2010年の選手です。今、あの西川選手の戦い方を見て、じゃあ下からの打撃がMMAで有効なのかと言われると、う~むってなるじゃないですか」

──それはある意味、MMAをずっと追求してきた身として、あの下からのコントールが通用していることについて一言あるということなのではないでしょうか。ただし、先日の試合後などは私の下には『凄い戦い方』、『凄い試合だった』という連絡がままありました。

「いや、全く凄いと思っていないから。その周囲の反応も含めて、温度差がありますよね。そうじゃないですか?」

──西川選手や最近の若い選手の力が測れないのは、国内で国際戦がないこととと同時に、団体のチャンピオンが防衛戦が限られて、海外とRIZINに行くということで。決して、西川選手の力が査定できないのは、彼には何も責任がないというのがあって。

「もちろん。もちろん、そうです。全く西川選手に非も責もないです。そこでいえば川名選手ですよね……でも、このところの戦績を見ると負けるべきして負けたような。PFLで3連敗して、帰国後もそんなに良い試合はしていない」

──川名選手もロータスに来ていた選手ですが、対青木選手とのスパーということでなく、他の選手とのスパーでテイクダウンをした後、足を一本抜いてハーフを取るということはないのでしょうか。

「グラウンドは強くないです。ケージレスリングの選手です。今の日本のMMAファイターですよね」

──ならばガードの中でエルボーを受けるよりも、立たせてテイクダウンを狙うというしんどい試合を選択するのも手だったかと。コーナーも三角に気をつけろと連呼し、逆に追い込まれているような印象を与えました。

「立って打撃になるのが、嫌だったんでしょうね。まぁ、要はムエタイクリンチ的な動きにやられた。MMAとして川名選手には懐の深さがなかった」

──西川選手は足を一本抜かれると、あのエルボーができるのか。それと足を戻す力がどれだけあるのか。つまりは、どうなのか?という印象が強く残ってしまいました。

「いや、寝技が強い相手にはアレは通じないですよ。誰と戦っても、足を抜かせないとかってことはないと思いますし……。それと彼のインタビューとか読んでいて、見えていないなって感じます」

──見ていないとは?

「世界や社会、周囲が見えていないので、辛くなってしまいます。現状で既に自分に殻を持ってしまっている。このままじゃ良い素材だとしても、磨けなくなっちゃいます。国内のライト級って、もうこんな感じだし。

今、海外って考えるとしっかりと考えないと、磨くんじゃなくて潰すってことになる可能性もある」

──誰が得をするのかって話になるのですが、小金翔選手や大原樹里選手と戦って、この間の試合ができるのか。

「まぁ、小金と大原だってそこまでじゃないし。でも、相性的には西川選手は良くないってなりますよね。可哀そうとは思わないけど、気の毒っていうのはあるかな。時代がそうなったという部分で。

川名選手が教えてあげることができなった。それが、この試合ですね」

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11.6『VTJ 2021』で宇野薫と原口央が対戦


VTJ 11.6 USEN STUDIO COAST:デビュー25周年・宇野薫が出場。GLADIATORフェザー級新王者・原口央と対戦(バウトレビュー)

 11月6日に新木場のUSEN STUDIO COASTで開催する『VTJ 2021』で宇野薫 vs. 原口央が行われるとのこと。

 宇野は5月16日の『PROFESSIONAL SHOOTO 2021 Vol.3』で内藤太尊に2R KO負けして以来の試合。原口は9月26日の『GLADIATOR 15』でMIKEに2R TKO勝ちしフェザー級王座を戴冠して以来の試合。

11.6 プロフェッショナル修斗・USEN STUDIO COAST大会決定カード 今、トレンドはグラップリング?! 国内屈指のグラップラー岩本健汰が連続参戦! に続き高橋SUBMISSIONも参戦決定! 世界ランカー・結城、ハードストライカー・山内と激突!(日本修斗協会公認サイト)
◎フェザー級5分2R
結城大樹(同級世界9位/マスタージャパン福岡)
vs
岩本健汰(ロータス世田谷)

◎フライ級5分2R
高橋SUBMISSION雄己(和術慧舟會HEARTS)
vs
山内 渉(FIGHT FARM)

◎女子世界スーパーアトム級チャンピオンシップ5分5R
黒部三奈(王者・初防衛戦/マスタージャパン東京)
vs
SARAMI(挑戦者・同級1位/パンクラスイズム横浜)

◎世界ストロー級暫定チャンピオン決定戦5分5R
猿丸ジュンジ(同級1位/修斗GYM東京)
vs
黒澤亮平(同級5位/パラエストラ松戸)

 この日は同会場で昼に『PROFESSIONAL SHOOTO 2021 Vol.7』が開催され、以上のカードが決定しています。続きを読む・・・
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【VTJ2021&Shooto2021#07】坂本一弘代表に訊く、VTJ─01─「日本最弱……、胸を張って良い敗北」

【写真】25年前の格闘技通信──VJT96増刊号を手に、坂本一弘代表。思えば、当時は格闘技雑誌もガチだった。このタイトルで販売数が伸びることは考えづらい、皆が真っすぐだった時代の象徴だ(C)MMAPLANET

11月6日(土)に東京都江東区のUSENスタジオコーストでサステイン主催VTJ2021とプロ修斗公式戦=Shooto2021#07が昼夜2部制で開催される。

UFCとグレイシー柔術の出現以前、修斗にはパウンドがなく、パウンドを実践するためのポジショニングの概念が存在しない総合格闘技だった。

同様に1993年に第1回大会が開催されたUFCのように、多分に危険性をアピールするようなイベントの概念も、異種格闘技という要素も存在していなかった。UFCとグレイシー柔術との出会いは、修斗にパウンドとポジショニングをもたらしただけでなく、世界には同じような総合的な格闘技が行われているという事実との邂逅でもあった。

それは日本より強い海外勢がいる──という事実を受け入れることに通じていた。

当時はVale Tudo(※ポルトガル語で何でもあり)、NHB(No Holds Barred ※英語でやってはいけないことはない=制限なし、無条件)と呼ばれたMMAを競技として整理し、スポーツ化を推し進めた90年代後半の修斗。

修斗として競技を確立する一方で、グレイシー柔術とVale Tudoに真っ向から向かい合い、世界と戦うブランドとしてVale Tudo Japanが立ちあげられた。グレイシーのイントロダクションのようだった1994年と1995年のVJTを経て、1996年のVTJは公式戦でパウンド解禁後の修斗の精鋭たちによる世界への挑戦という舞台に昇華していた。

しかし、勝利は女子プロレスラーの堀田祐美子が挙げた1勝のみ。男子選手はルール上、時間切れはドローということでジョン・ルイスに病院遅れにされた佐藤ルミナ以外、朝日昇、エンセン井上、菊田早苗、葉山“湘南”智昭の全員が敗れた。

結果、格闘技通信の増刊号の表紙には『日本最弱』というショッキングな文字が躍った。思えばVJT96より修斗は本格的に世界と向き合うこととなり、公式戦で本格的に海外勢を招聘、世界にネットワークを広める期間となった。そして──1999年度大会でVale Tudo王国ブラジルとの対抗戦で勝ち越した。

公式戦で総合格闘技の内需拡大と富国強兵に努め、年に1度世界に挑戦する舞台がVJTだった。坂本一弘サステイン代表によると、この両者はレコードでいえばA面とB面──表裏一体であったという。そのVTJが5年2カ月振りに公式戦とダブルヘッダーで行われる。

再び、海外と明確な距離が存在するようになった、2021年のJ-MMA。1996年から1999年の4度のVTJ開催と、その間の修斗の状況を鑑みながら、『今、なぜVTJなのか』。そして『2021年の修斗』について黒豹の話を訊いた。


──坂本さん、なぜ、このタイミングでVTJなのでしょうか。

「なぜ、このタイミングなのか……。そういう風に考えると、これまでVTJが行われて来た時は、常に何かを欲している時だったと思います。言い換えると何かを求められている時で。この1年半、コロナ禍において繰り返される緊急事態宣言の下、無観客試合、制限のある有観客大会と、修斗でも色々な試みが行われてきました。

そのなかで海外の選手を、もうそろそろ招聘したい。それが可能になるのか、無理なのか。この間にハッキリすることです。ただし、ハッキリするまで指を咥えて待っていることはできない。もちろん、外国人選手を招聘できるよう働きかけます。同時に、それがやはり無理であった時も海外との対戦というキーワードを用いた大会を開きたい。

それは修斗公式戦ではなく、VTJだと。今はもうA面、B面とは言わないんでしょうけど(笑)、もうCDもない時代ですからね。でも公式戦とVTJは修斗にあって表裏一体、海外という存在を追求するために裏面を使ってみようかと思ったんです」

──それが今だったと。

「もうそこは直感ですよね」

──チャンピオンになった選手が、あれだけ海外と口にする。そこは関係していますか。

「それはあります。僕自身、選手上がりですし。『コイツとやりたい』という気持ちを持つことは十分に理解しています。逆にそこがない選手の方が、どうなんやろうってなりますよね。そこをやるのが、VTJを開催する真意ですよね。

公式戦が修斗内という表現を使うと、それも絶対的なことではないですけど、どこの団体、どの大会にも優秀な選手、強い選手はいます。そういう選手たちと修斗の選手が戦うとどうなるのか。それはファンの皆さんも興味を持ってくれるだろうし、僕自身も興味を持っています。

現状、なかなか選手たちも海外で試合をすることはできないです。これが参加費を払って出場するアマチュア大会ならまだ、そういうチャンスもあるかもしれないですが。プロとして呼ばれて、試合に出る。それが可能なのはUFCとONE、Bellatorなど一部の舞台で。日本人選手にとってハードルが高いなら、僕らが何とかせなアカンと」

──親心でもあるわけですね。

「親心……う~ん、そうしないといけない。そうするための努力をすることが、自分の役割だと思います。ABEMAや長南(亮)君とRoad to ONEを開いた。トライ……トライするということですよね。次が海外の選手招聘なら須藤元気参議院議員を訪ね、スポーツ庁を紹介頂き、隔離措置の緩和にはオリンピックのような公益性が必要なのでレスリング協会へもお願いに上がっています。

先ほども言ったように指を咥えて状況が変化することを持つのではなく、何かトライすることが大切なんです。そこを乗り越えてこそ、『やった』ことになるので。何がベストか分からないですけど、ベストを尽くすことは絶対です。

それって練習も試合も同じですよね。ベストを尽くそうとする……ベストを尽くす、ことを全うする。別に完璧じゃなくても、そこはやらないといけないです」

──だからこそ、あえてB面を持ちこむ。思えば2021年は日本最弱から25年になります。

「1996年のVTJは、僕は修斗から離れている時期で外から眺めていました。ただ言えることは、結果は結果なんです。これは変えることはできない。でも、その結果からあとを変えていかないといけない。技術的にもそうだし、意識的にもそう。UFCまで修斗にパウンドはなかったです。

ただし、佐山(聡)先生はブラジルにバーリトゥードがあり、寝技で打撃が許されている試合があることは知っていました。知っていたけど、佐山先生はレスリング、ボクシング、キックボクシングと先生の知っている寝技を合わせて総合格闘技を創っていました。そこにはパウンドという要素はなかったんです。

それでも佐山先生はボディへのパウンドを導入したり、試行錯誤はしていました。結果、ボディへのパウンドも必要ないという結論を出されていましたけど。

総合格闘技の確立ではなくて、果たし合いとして何でも有りという概念を持つグレイシー。その文化の違いを明確に感じていて、それでも取り入れようと決めた時に、先生はいきなり取り入れるのではなくて……皆がパウンドがあるかどうかということばかりに頭が云っている時に、まずガードポジションにポイントを与えるというルールを導入しているんですよね」

──ハイ。田中健一選手に九平選手がテイクダウンを取られる。でも、その度に九平選手に加点される。当時、「何だ、これは!」と思って見ていました。

「殴られないための技術をまずは覚える。次のステップのため、先生は批判を浴びても粛々と続けていました。あとから振り返ると意味がある、皆が分かることを。本当に先見の明があるというか。

先生の指導は本当に細かかったです。なぜか、『お前らを強くしたいのが50パーセント。残りの50パーセントは、お前らに良い指導者になってほしい』と言われていて。『そうしないと、この競技は広まらないからね』と……」

──何とも、凄い人です。そうやって公式戦でパウンドを解禁し、海外勢との試合も増えた。結果、1996年の惨敗。直後に坂本さんが修斗に戻ってきてワールド修斗、サステインと1997年から1999年までVJTを開催し、公式戦も米国、ブラジル、欧州、豪州と海外勢を発掘&招聘するようになっていました。

(C)SUSUMU NAGAO

「グレイシーから始まり、世界中でMMAが行われるようになり、エェ目標というか対抗意識はやはりありましたよ。

当時、可能な限り強い選手を呼んできたというのは思っています。だから負けている。弱いヤツを呼んでいたら、勝てますからね。それは1996年のVTJも同じかと。

(C)SUSUMU NAGAO

あの時は日本最弱って肩を落としていたけど……日本最弱、やっぱり負けても胸の張れる大会やったはずです。

エンセンが(イゴール)ジノビエフにパウンドアウトされ、朝日さんがホイラーに絞め落とされ、ルミナは顔面がボコボコになり眼窩底骨折し入院しました。それは強い選手と戦ったからで。胸を張って良い、敗北やったんです」

──続く公式戦から、坂本さんがタクトを振るい修斗の興行を仕切ることになりました。そして、年間のスケジュールをVTJに向けて強化大会を組むようになっていきました。

「まず僕が受け持つようになった公式戦で、エンセンがVJTで菊田早苗選手に勝ったムスタファ・アブドゥーラに勝ちました。年が明けて97年の1月には、ルミナがヒカルド・ボテーリョに足関節で勝った。公式戦で結果を残し、VTJに向かっていった。選手はひとつずつ与えられた相手を潰して、VTJの舞台に上がっていたんですよね。

そしてVTJ97でルミナがジョン・ルイスにリベンジし、エンセンはフランク・シャムロックに負けました。でも1998年にランディー・クートゥアーに腕十字を極めて勝ちましたからね」

──いやぁ、今更ながら世界のトップとタメを張っていたことが思い出されますね。

「1997年のVTJは中尾受太郎がUSWFのスティーブ・ネルソンに勝ち……スティーブも修斗に対応できる選手を探しに、アマリロまで行って。

あの時、ゲストとしてリングで紹介されると、テキサスのファンからずっとブーイングをされて──『何やね、これは!』って思いましたよ(笑)。メインでスティーブが勝った時に手を挙げると、その時にだけようやくブーイングが収まって(笑)。

USWFで発掘したポール・ジョーンズとか招聘して、VTJに大将のスティーブとフランク・トリッグを呼びましたね。あとはジョン・ルイスから繋がりができたノヴァウニオンからジョン・ホーキが来て、巽宇宙と戦いました」

──ルイス・ペデネイラス柔術ですね!!

「そこからデデ(アンドレ・ペデネイラス)と縁ができて、彼が修斗ブラジルの大会を開くようになる。今からすると、色々なことの潮流があって原点になっていますね。カーロス・ニュートンが出たのも、この1997年だったはずです」

<この項、続く>

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