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【RIZIN47】仮想スーチョル=水垣偉弥が語る井上直樹「酷い目にあったので勝ってもらわないと困る」

18日(水)都内にて、29日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われるRIZIN48に出場する選手たちの合同公開練習が行われた。
Text by Takumi Nakamura


ファン公開形式で行われた今回の公開練習は全14選手が参加。新井丈のミット打ち&木下カラテによる空手の型からスタートし、RIZIN初参戦の秋元強真がJTTのエリーコーチとのミット打ちを披露する。

3組目から6組目までは対戦相手が見ている前での公開練習となり、宇佐美正パトリックのシャドー→矢地祐介ミット打ち、佐藤将光と高橋遼伍によるMMA形式のマススパーリング→牛久絢太郎のミット打ち、太田忍の気配斬り→元谷友貴のミット&打ち込み、浅倉カンナと重田ほのかのMM形式のマススパーリング→伊澤星花とCOROのグラップリングスパーリングと続いた。

そして練習仲間でもある高木凌と井上直樹は揃ってミット打ちを見せた。キム・スーチョルとのバンタム級王座決定戦を控える井上のミットを持ったのはMMAPLANET「今月の一番」シリーズでもおなじみの水垣偉弥。井上曰く、水垣が仮想スーチョルとしてトレーニングパートナーを務めているそうだが、公開練習のミット打ちはあくまで軽めのもの。

公開練習後に水垣にコメントを求めると「今回、仮想スーチョルとして頑張りました。最後の方は色々な攻撃を当てられまくって酷い目にあったので、仕上がりはいいと思います。これで仮想の相手を出来るのはもう最後かもしれないくらい出し切ったので、勝ってもらわないと困ります」と井上の仕上がりの良さを教えてくれた。

そして締めに登場したのはルイス・グスタボとの防衛戦を控えるライト級王者のホベルト・サトシ・ソウザ。柔術衣を着てマットに表れたサトシは原点回帰ともいえる柔術形式のスパーリングで「久しぶりの試合、タイトルマッチです。絶対にベルトを守ります。日本の名前とRIZINの名前を守ります」と意気込みを語った。

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45 ACA BELLATOR MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN47 RIZIN48 ROAD FC フアン・アルチュレタ ラジャブアリ・シェイドゥラエフ 原口央 武田光司

【RIZIN48】キルギスの無敗戦士シェイドゥラエフが再登場。アルチュレタと注目のフェザー級戦

【写真】6月のRIZIN初参戦で武田光司に一本勝ちしたシェイドゥラエフ。2戦目の相手は元RIZIN&Bellator王者のアルチュレタに決まった(C)RIZIN FF

29日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN48の追加対戦カードとして、フアン・アルチュレタ×ラジャブアリ・シェイドゥラエフのフェザー級戦が発表された。
Text by Takumi Nakamura


6.9「RIZIN47」でのRIZINデビュー戦では武田光司にRNCで一本勝ちし、ビッグインパクトを残したシェイドゥラエフ。注目のRIZIN2戦目では、早くも元RIZINバンタム級王者のアルチュレタとの対戦がマッチメイクされた。

キルギス共和国出身のシェイドゥラエフは地元キルギスのBatyr Bashyでプロキャリアをスタートさせ、ロシアのACA Young Eaglesに参戦。昨年は韓国のRoad FCが行った63キロ・グローバルトーナメントに出場するも、準決勝の原口央戦を計量遅刻・体重オーバーという規約違反による失格という形で姿を消した。その後はUAE Warriors45参戦を経て、RIZINへの参戦にたどり着いた。

これまでアジア圏で試合を重ね、キルギス、ウズベキスタン、ロシア、韓国、日本と選手と戦い、10戦10勝のレコ―ドを残しているシェイドゥラエフ。今回のアルチュレッタ戦はキャリア初となる北米ファイター、そしてRIZIN・Bellatorでベルトを巻いたことがあるファイターとの対戦で、北米基準におけるシェイドゥラエフの実力が試される一戦と言えるだろう。

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45 AB Brave CF MMA MMAPLANET o ONE RIZIN RIZIN47 ROAD FC Special UFC   アブディサラム・クバチニエフ コンバット柔術 ヤン・ジヨン ラジャブアリ・シェイドゥラエフ 柏木信吾 武田光司

【Special】アジアの猛者たち─03─ラジャブアリ・シェイドゥラエフ「基本的にバンタム級のファイターだ」

【写真】シェイドゥラエフと同様に、いや彼以上のノリノリだったマネージャー氏もスクショでしっかりと写り込んでくれました(笑)。そして――シェイドゥラエフ、まるまるしているぞ (C)MMAPLANET

UFC、RIZIN、北米フィーダーショー、日本のプロモーションと世界中のMMAを見渡してみると、明らかにアジア勢が台頭しつつある。もちろん、アジアといっても広い。その勢いの中心は東アジアではなく、中央アジアだということも百も承知だ。MMAPLANETでは6月から日本人ファイターと肌を合わせた経験がある──あるいは今後その可能性が高いアジアのファイター達にインタビューを続けてきた。

題して「アジアの猛者たち」──第3弾はキルギスからラジャブアリ・シェイドゥラエフのインタビューをお届けしたい。
Text by Manabu Takashima

6月9日のRIZIN47で武田光司をテイクダウンからバック奪取、ほぼワンアームでRNCを極め一本勝ち――初来日で、大きなインパクトを残した。日本のフェザー級トップファイターを圧倒したシェイドゥラエフに格闘家人生を振り返ってもらい、今後について尋ねた。

求められた階級で戦うが、武田に圧勝したフェザー級は本来の階級ではない――とシェイドゥラエフは断言した。


日本人と戦う僕に声援を送ってくれて、本当にビックリした

――RIZIN47での武田光司戦、大きなインパクトを残しました。改めてRIZINデビューを振り返ってもらえますか。

「日本で初めて試合をしたけど、大会自体を振り返ってもレベルの高い試合が多くて素晴らしかった。自分自身、凄く良い勝ち方ができたのでチャンピオンシップで日本に戻ることを期待している。

(C)ROAD FC

去年は韓国で1試合を戦って(6月にヤン・ジヨンにRNCで一本勝ち)、韓国も凄く発展した素晴らしい国だった。

日本は、とにかく人々が優しい。それが日本の印象だよ。そして街が凄く綺麗だ。日本のことが大好きになったよ」

――私は1度ビシュケクを訪れたことがあるですが、羊肉の美味しさと3泊の滞在で交通事故を3度目撃し、一度は自分が乗ったタクシーだったので、車の運転が危ないという印象が残っています(笑)。

「日本では皆がルールを守っていることも驚いた(笑)。そして、物凄く大人しい。赤信号を無視している人もいない。東京はあんなに大都市なのに、大して交通渋滞もなかった。皆がルールを守っているからだよね。歩いている人も、信号が変わるのをジッと待っていて本当に驚かされたよ(笑)」

――そこまで交通ルールを守っているとは思わないですが、多くのドライバーが譲り合いの精神を持って車を運転しているのは確かですね(笑)。

「凄く我慢強くて、ビックリしたよ。それとRIZINで戦って人生で2つの初体験ができた。1つはあんなに大きなイベントで戦ったこと。過去最大のショーに参加することができた。少しナーバスになったけど、本当にエキサイティングだった。2つ目はファンの皆が歓迎をしてくれたことだ。日本人と戦う僕に声援を送ってくれて、本当にビックリしたし嬉しかったよ」

(C)RIZIN FF

――シェイドゥラエフ選手のファイトは、それ以上に日本のファンを驚かせたと思います。

あの武田選手にレスリングで勝ち、一本勝ちをしたのですから。ライト級から階級を下げた武田選手に対し、シェイドゥラエフ選手はバンタム級から上げてきたわけですし。

「タケダが70キロで戦っていて、優れたレスラーだとは聞いていた。もともと僕のベースはグラップリングと柔術で記者会見の時からRNCか何かで一本を狙うと宣言していた。特にRNCにこだわったわけではないけど、とにかくグラウンド戦に持ち込むつもりだった。その試合で一本勝ちができて、自分でも自信になったよ」

(C)RIZIN FF

――最後はRNグリップで終わらせましたが、ワンアームでほぼ極めていました。

「僕はワンアームでチョークを完成させることができる。

あの時はコーチからラウンド終了まで時間がないという指示があったから、RNグリップに切り替えたんだよ」

高校の頃までは自分でトレーニングをして、それをストリートで試すことしかできなかった

――あのフィニッシュで大きなインパクトを残したラジャブアリ・シェイドゥラエフ選手ですが、我々はまだまだ知らないことだらけです。最初の格闘技経験は何だったのでしょうか。

「柔術やグラップリングを始める前は、レスリングをやっていた。高校を卒業してからレスリングを始めたんだけど、それ以前は自分の家で自己流のトレーニングをしていた。腕立て伏せ、そして石を持ち上げていたんだ(笑)」

――石を!! それはファイターを目指すためのトレーニングだったのですか。

「そう、ファイターになるためだよ。実際にレスリングを始めたのは高校卒業後で、高校時代はサッカーと柔道をやっていた」

――柔道の経験もあったのですね。とはいえ高校を卒業するまでレスリングの経験がなかったのは意外です。

「実は僕の育った環境は少し変わっていて、タジキスタンとキルギスの国境付近の小さなジェルゲタウ村で生まれて、高校まではタジキスタンで生活をしていたんだ。そして高校を卒業して、国境を越えキルギスでプロフェッショナルを目指すためのトレーニングを積むようになった」

――国境の小さな村……シェイドゥラエフ選手は子供の頃から乗馬の経験は?

「もちろん、あるよ。僕らは皆、馬に乗って成長しているようなもので。いうと、もうプロ級だと思ってもらっても構わない(笑)」

――RIZINの柏木信吾さんの言う「羊肉を食べて、乗馬をしていたファイターは強い」説そのものです。ところでタジキスタンとキルギスの境にある村から、どのようにプロのMMAファイターになる過程が必要だったのでしょうか。

「ずっとMMAに興味はあった。でも高校の頃までは自分でトレーニングをして、それをストリートで試すことしかできなかったんだ。卒業後、ビシュケクに移りプロになるためにレスリングのトレーニングを本格的に始めた。イェラムというジムで、エラリアス・アカルベコフにレスリングを習った。3年後MMAに転じて、イーラスMMAに移って今も所属している」

――イーラスMMAはBRAVE CFライト級王者アブディサラム・クバチニエフ、ONE FFからBRAVEに転じたアジエット・ヌルマトフ、オクタゴン戦うルスラン・カシマリ・ウルルというキルギスのトップファイターが所属するジムですね。ところで、あれだけの組み力と極め力を持っているシェイドゥラエフ選手ですが、柔術では何帯を巻いているのですか。

「帯は持っていない。でもグラップリングも柔術もトーナメントは把握できないほど出ている。両方のスタイルで何度も優勝しているよ。それとは別に打撃も許されたコンバット柔術(Combat Jiu Jitsuではなく、Combat Ju Jutsu。コンバットサンボのようにスタンドで打撃、投げ、寝技で打撃も認められた道着有りの柔術)でも戦いアジア王者になっている」

――今もビシュケクで練習を続けているのですか。

「普段はビシュケクで練習をすることが多いけど、キャンプではタイ、ダゲスタンに行くこともある。タイやダゲスタンでスパーリングをすることで、成長の助けになる。経験値を高めることができるからね」

――ところで前回の日本での試合ではフェザー級で戦っていましたが、以前はバンタム級でも試合をしています。今後はどちらの階級で試合をしようと考えていますか。

「キャリアの序盤はバンタム級で戦っていた。でも、前回の日本での試合は体重を61キロまで落とすには十分な時間がなかった。だから66キロで戦ったんだ。体重を落とす時間があればバンタム級、なければフェザー級。どちらの階級でも構わない。オファーがあった階級で戦うよ。どちらの階級でも、誰とだろうが戦う準備はできている。チャンスが巡ってきた階級でチャンピオンを目指すよ。

だたし基本的に僕はバンタム級のファイターだ。フェザー級で戦うと、体格的に厳しい相手が時折り出てくる。だからRIZINでもバンタム級で戦っていきたいというのが本音だよ。前回の試合は66キロまでしか落とせないと思ったからフェザー級で戦った。継続参戦できるなら、バンタム級でやっていきたい」

――今の言葉を聞いたRIZINフェザー級とバンタム級のファイターの反応が知りたいです(笑)。

「アハハハハ。子供の頃から地元のローカルファイターやカビブ・ヌルマゴメドフの映像を視ていて、大きな会場で試合をすることを夢見るようになった。今、RIZINという世界で最大のプロモーションの一つで戦えるようになった。夢が実現して、神に感謝している。

日本のファンにも同様に感謝の言葉しかない。大会中の彼らの声援は本当に最高だった。少しでも早く日本に戻りたい。ファンの皆をガッカリさせない、最高の試合をしたいと思っている」

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45 AB Gladiator IMMAF MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN46 RIZIN47 ROAD FC Special TOP BRIGHTS UFC   イルホム・ノジモフ カルシャガ・ダウトベック ブログ ラジャブアリ・シェイドゥラエフ 柏木信吾

【Special】「あそこを目指して欲しい」。柏木信吾のこの一番から中央アジアの猛者たちへ、プロローグ

【写真】強さを目指すなら、中央アジア勢に目を瞑ることはできない (C)RIZIN FF

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。「柏木信吾が選んだ2024年6月の一番」からスピンオフ、そしてアジアの猛者特集に通じるインタビュー後編。
Text by Manabu Takashima

6月9日に行われたRIZIN47で強いインパクトを残したラジャブアリ・シェイドラフとダウトベック、RIZIN46のイルホム・ノジモフら中央アジア勢の来日について、その背景を柏木氏に語ってもらった。

そこには円安を要因とする現状に合致した最善の強い海外勢の招聘の最善策ともいえるが、同時に中央アジアの猛者を躊躇なく招聘できるのは、RIZINの日本人選手の力があるからだ。実際パンクラスもタジキスタンの選手を招聘しているが、IMMAFからプロデビューという選手たちがランカーを撃破し、GLADIATORへ外国人選手をブックする長谷川賢は「カザフスタンの選手を呼ぶと、今のグラジに出ている選手で勝てない」と断言している。

ダウトベック、シェイドゥラエフの招聘経由、そしてこれからについての柏木氏の言葉が、個々のインタビューへのプロローグとなる

<柏木信吾が選んだ2024年6月の一番はコチラから>


クレベル×ダウトベックは代替カードとして

――そういうなかでRIZIN47にカルシャガ・ダウトベック、ラジャブアリ・シェイドゥラエフの両者を同時に招聘したのは、何か意図があったのでしょうか。

「ダウトベックはもともと良い選手でした。ただ朝倉未来選手に一度負けています。それもあって疎遠になっていたことがあります。そこでTOP BRIGHTSで松嶋こよみ選手に勝って『RIZINで見たい』という声が聞かれるようになりました。

ダウトベックは打撃の選手でフィニッシュできます。マッチアップ次第では皆に喜んでもらえる試合をする選手です。だから、タイミングが合えばと思ってきました。それでも負けている選手を呼び戻すのには、なかなか踏ん切りがつかない……なので、随分と放置してしまっていましたね。

それがRIZIN47では堀口恭司×セルジオ・ペティスとクレベル・コイケ×フアン・アルチュレタという2つのカードが確定しているなかで、誰かが欠けた時にそこに当てはまるピースを考えるとクレベル×ダウトベックは代替カードとして成立する。本来は補欠的ぐらいだったのですが、カードがどんどん決まるなかで、ダウトベックの試合を組もうということになって。すぐに関鉄矢選手に連絡をした感じです」

――力は最初から買っていたということですね。

「ハイ。でも能面なので、なかなかストーリーが創り辛い。キャラが創り辛いというのはあったのですが、あの試合を続けてくれれば――それがキャラになるとは思っていました(笑)。で、実際に試合を見るとやっぱり強い」

――プレッシャーの掛け方、そして踏み込み。関選手が日本人選手のアベレージ的にリトマス試験紙の役割を果たすとすると、悔しいですが違いは明白でした。

「序盤から右に回らされていました。最初はアレ、どういうことだろうと思ったんですけど、それはもうダウトベックにそういう風に動かされていた。左回りができなかった。だからダウトベックはリングの方が良いんじゃいかと思うぐらい、追い足が良かったです。関選手の苦しみが、伝わってくるような試合でした。

上下を散らして、ローからハイを狙っていたと思いますが、あのプレッシャーの強さは……」

――被弾したらしたで、過去に経験したことがない拳だったかと。

「岩みたいだったと言っていました」

――左フックでよく立ち上がったと思いました。しかしフィニッシュの左ボディフックが、また強烈で。

「もっと見たいと思えるファイトでしたよね。寝技がどうなのかというのもありますが」

太田忍選手が手が付けられなくなった時の相手として、シェイドゥラエフは呼びたかった

――ではシェイドゥラエフに関しては?

「シェイドゥラエフはアゼルバイジャン大会をやった時に、中央アジアからアゼルバイジャンに選手を呼ぼうということで、現地のプロモーションやマネージャーと繋がりができました。そのなかの1人が、シェイドゥラフの名前を出してきたんです。僕もRoad FCでヤン・ジヨン戦を見ていたので、ぜひ欲しいと思いました。

ただ最初はバンタム級として考えていたんです。バンタム級は太田忍選手がそろそろ手がつけられなくなってくると思うので。あと3試合、4試合と経験を積むと無双状態になるのではないかと僕は思っていて。太田忍選手が手が付けられなくなった時の相手として、シェイドゥラエフは呼びたかったです」

――おお、そういうことだったのですね。これはもう、今後のバンタム級戦線を見るうえで貴重な意見だと思います。

「そういうことで契約をしたのですが、Road FCでは63キロでも計量を失敗しているので、『62キロで本当に戦える?  RIZINは体重オーバーをした選手には凄く厳しいよ』という話をしました。そうしたら66キロで戦うという返事で、フェザー級になってしまったんですよ(笑)」

――一気に2人も……。こんなに強いの同時に要らないだろうという声が出るのも頷けます(笑)。

「そうですね……僕の中で予定が崩れたというか、フェザー級にはもうダウトベックとイルホム・ノジモフという中央アジア勢とビクター・コレスニックというロシア人選手がいる。もうこれ以上、突っ込む必要がない強烈な駒がバンタム級でなくフェザー級を選んだということなんです(苦笑)。

こういうことになったのですが、バンタム級に強い外国人選手を1人、2人と入れたいと思います」

――う~ん。バンタム要員の予定だったシェイドゥラフが武田光司選手に完勝したという事実は重いです。

「武田選手だったらフィジカル負けはしないだろうと思っていました。同じ生態の選手を当てるというイメージでした。シェイドゥラエフは本当に本物なのか。そういう意味で武田選手と戦うことで分かる。戦績がキレーで、パーフェクトでも実は、それほど強くない選手もいるじゃないですか」

――ハイ。

「ヤン・ジヨンに勝っていると言っても、そこで株が大いに上がるというわけではない。だから武田選手と打撃、フィジカル、四つ組みになった時にどうなるのか。圧倒されるようなことがあれば招聘した側のミスになるなという不安も、本当はあったんです」

――それが……。

「逆の意味でヤバいなと」

――結果的にフェザー級転向の武田選手の価値を落としたマッチメイクとなってしまいました。

「本当にそうなんです……。武田選手の強いところで、完敗を喫してしまったので。正直、『やっちゃったなぁ』という想いになりました(苦笑)。試合後の武田選手からは悔しさよりも、虚無感が見られて。ホント、どうしましょう……。

と同時に、打撃が得意な選手からすると全然いけると思ったところはあるとは感じています」

――とはいえレスリングができたうえでの打撃でないといけないので、やはり武田選手にあの勝ち方は驚異でしかないかと。

「そこなんですよ。あの組みに対抗できて、打撃を入れることができるのか。触れる怖さがあると、打撃の威力は半減してしまうでしょうね」

――武田選手はいわば日本人のなかでは、ヌルマゴ・スタイルというか。組みが強力で打撃を苦にしない選手です。繰り返しますが、その武田選手にあの勝ち方をした……これは……。

「とんでもない選手を呼んでしまいましたね。まぁ、あとはスタミナがあるのか。武田選手がどこまで引き出すことができるのかという気持ちでもいました。だってあの動きを15分間続けるなんて、できないですよ。それができるなら、すぐに解約するのでUFCに行ってほしいです」

――バックを取るためのパスの圧力、フリップにつられなかった動きも秀逸でした。

「いや判断力も良いし、体幹も強いんでしょうね。際が強いというか、シェイドゥラエフは楽しいMMAを見せてくれました。MMA特有の際の攻防が凄く出来ていて。見ていて楽しいというか、心地よかったです。相手が武田選手だから、あの攻防が生まれた。MMAの魅力が全面に出た試合でしたね。僕はそう思います」

強い選手と戦うことはデメリットでなく、メリットになる

――外国人選手は勝てば、もうタイトル挑戦と一直線で来ます。ただし、RIZINフェザー級タイトル戦線を考えると、この2人があと1勝を挙げても挑戦はないと考えるのが普通で。同時にあの強さを見せつけられ、来日が途絶えるようなことがあれば「逃げた」と思います。柏木さん個人的としては、9月からノジモフも含めて中央アジア3人衆はどのようにマッチメイクしていこうと考えていますか。

「どこかで潰し合いをしてもらわないと、困ります。アハハハハ」

――アハハハハ。

「でも強者と強者が戦うというマッチアップでも、今のRIZINファンは乗れると思います。キム・ギョンピョとスパイク・カーライルの試合も、そこそこ盛り上がっていましたし。そろそろ、そういうのがあっても良いんじゃないかと」

――「中央アジア3人衆、誰でもやってやるよ」と声を挙げる選手に出てきてほしいです。

「そうですね。強い選手と戦うことはデメリットでなく、メリットになる。それが格闘家ですからね。強い選手同士をぶつけるだけでは、日本の現状としてビジネスは成立しない部分はあるかとは思います。だからこそ、彼らが生きるマッチメイクもRIZINには必要になってきます」

――9月にいきなり潰し合いが組まれたら、色々な意味で逃げたと言わせてもらいます(笑)。

「そこはまだないです。そこでは(笑)。日本人選手が困るから、潰し合わせるということはしないです(笑)。中央アジア勢に勝てば強さの証明になる。だからタイトル挑戦に近づく。そういう状況にしたいですね。ファンの期待値が上がれば、そこは逃げられなくなりますから」

――日本国内にいて直視しない傾向もみられる円安と向き合う柏木さん、僭越ながら中央アジア勢の投入はgood jobだと書かせてください。

「ありがとうございます。シェイドゥラエフを呼んで、褒められたのは初めてかもしれないです(笑)。でも、攻略はできます。ダウトベックもシェイドゥラエフも完璧ではないので。強いけど、日本人選手にはあそこを目指して欲しいです。

なぜ、ファイターをやっているのか。そこをもう一度、自分に問いかけて欲しいです。格闘技って強くなりたいからやっているんじゃないですか――と。その原点は大切だと僕は思っています。強いヤツはたくさんいるので、そいつらに勝つことを目標にしてほしいです」

――MMAPLANETみたいなことを言っているじゃないですか。

「ホント、会社で村八分ですよ(笑)。本当に社内で浮いていますからね、僕。ビックリするほど」

――アハハハハハハ。

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45 CORO DEEP DEEP JEWELS DEEP120 MMA MMAPLANET o PRIDE RIZIN RIZIN47 Road to UFC UFC YouTube イー・チャア リー・カイウェン 中村大介 佐藤洋一郎 修斗 嶋田伊吹 斎藤 朝太 木下カラテ 松根良太 泉武志 海外 瀧澤謙太 牛久絢太郎 石塚雄馬 神田コウヤ 誠悟 野村駿太 鈴木槙吾 阿部大治 青井人

【DEEP120】初の連敗から復帰、木下カラテ戦へ。神田コウヤ「MMAのMがミックスではなくメルトに」

【写真】Bushidoというニックネームとともに、神田のMMAへの探求心は増す一方だ(C)SHOJIRO KAMEIKE

14日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP120で、神田コウヤが木下カラテと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

神田にとってはRoad to UFC準決勝のリー・カイウェン戦、青井人とのDEEPフェザー王座防衛戦と連敗からの復帰戦となる。この2試合を通じて神田が得たものとは。自分の中にあるMMAの変化とマインドを語ってくれた。


連勝している時より今のほうが好奇心は旺盛です

――SNSでは神田「Bushido」コウヤというニックネームが付いています。いつからBushidoをつけるようになったのですか。

「Road to UFCに出場してから、ですね。海外で戦う時に、単に名前だけよりもニックネームがあったほうがインパクトも大きいかなと思って。海外ではPRIDE武士道も知られていますし、UFCでもまだ誰も付けていない日本語を探して『Bushido』にしました」

――なるほど。そのRTUで敗れ、続いてDEEPのベルトも失いました。試合直後には、どんな想いでしたか。

「直後、ですか。不甲斐ない負け方ではなかったと思いますし、防衛戦の義務も終わったので次はRIZINに出たいと思いました」

――SNSでは6月9日のRIZIN47出場をアピールしていたようですね。

「そうなんですよ。本来はアピールしないで出場できるのが一番なんですけど。ただ、最近は海外の選手も増えて日本人の出場枠も減っていると思うので、SNSでアピールしてみました」

――ということは、DEEPのベルトを失ったあともRIZINなりRTUへの意欲は失っていなかった、と。

「もちろんです。RTUも出られるうちは出たいです。連敗していたので今年のRTUは難しいと思いましたけど、チャンスがあるうちは出たいですね」

――RTUは神田選手に勝利したリー・カイウェンが、決勝でイー・チャアに敗れました。

「しかも計量もオーバーで(苦笑)」

―カイウェンに対して「自分に勝っておいて、決勝でそれはないだろう」とは思いますか。

「う~ん……、やっぱりトーナメントは大変ですよ。短期間で何試合もするから、途中で気持ちが切れることもあると思います。減量も大変だし、怪我もあったりして」

――神田選手はRTUが終わったあと、すぐに気持ちを切り替えることはできましたか。

「はい。RIZINにしろRTUにしろ、次の試合で王座防衛できないとチャンスはないと思っていました。それと、ベルトを巻いたら防衛戦をやるのは義務じゃないですか。僕の場合は、前の王者の牛久絢太郎選手があまり防衛戦をやっていないことに対して、良くは思っていなかったので。王者としての義務は果たすべきだし、果たせないなら返上すべきというのが僕の考えです」

――RTUと青井戦を経て、自分の中でプラスになったことはありますか。ファイターとして黒星はマイナスとなるかもしれません。しかし、そのマイナスを糧にどう生きるのか。

「連敗したのが初めてだったので、初心に戻る良い機会だなって捉えています。連勝している時より今のほうが、『自分はどこまでできるのか』という好奇心は旺盛ですね」

――その好奇心は、どのようなところに表れているのでしょうか。

「今は練習していて、『どんどんMMAになってきている』と思っています」

左右の乖離を少なくしていけば海外の選手にも負けない

――どんどんMMAになってきている……とは?

「MMAのMが、自分にとってはミックス(Mixed=混ざった)ではなく、メルト(Melted=溶けた)になってきています。全ての要素が溶けて一つになる。それは打投極という要素だけではなく、左右の乖離も少なくなってきたと思いますね」

――左右の乖離というのは、構えやスイッチということですか。

「そうです。自分の性格的に、オーソドックスで構えた時とサウスポーで構えた時に差があるのは好きじゃなくて。そういう差をなくしたかったんですよ。海外の選手と戦うためには必要だと感じていました。海外の選手と比べてもフレームやリーチはあると思うので、その左右の乖離を少なくしていけば負けないかな、と」

――確かにもうMMAはスイッチという概念すら無くなりつつあります。

「UFCとかだと、絶え間なく自然と構えが変わりながら動いていますからね。それがミックスではなくメルトということなんですよ」

――後悔などではなく「カイウェン戦や青井戦の時に、これができていれば……」と思えるほど、今は仕上がっている状態ですか。

「その自負はあります。あとはコンディション次第ですね。でも自分は、コンディションづくりは上手いほうだと思うので」

――コンディションや減量方法も含めて、神田選手は研究者タイプのように感じます。

「あぁ、そうなんですかね。常に情報に対してはアンテナを張っておくようにはしています。自分が興味あるものだけですけど……やっぱり格闘技は自分のビジネスですから」

――格闘技が自分のビジネスである。その感覚は以前から持っていましたか。

「デビューした頃は、そう思えなかったですね。やっぱりデビュー当時はファイトマネーも安かったし。だけど今はファイトマネーも、デビューの頃と比べたら遥かに高いです。そういうことの積み重ねで意識は変わっていきますよ。

僕はプロのファイターとして、常に高い品質のものを提供していきたいです。今の環境に全然満足していないし、もっと成功したい。もっと稼ぎたい。そうなることで自分の発言にも説得力が増していくじゃないですか」

――もう神田選手もプロデビューして6年が経ち、ジムで後輩たちが増えていることも影響していますか。

「ジムの後輩たちは……、僕はライバルとして見ていますね」

――えっ!?

「刺激し合えるライバルというか。結果って、自分の努力の成果じゃないですか。僕のほうが長くMMAをやっているのに、ここで後輩に越されてしまうと――という感じで『絶対に負けたくない』と思っています。お互いにそう考えることができると、ジム全体が良くなりますし。後輩たちもそう考えて頑張ってほしいです」

――ジムの先輩である松根良太さんのTHE BLACKBELT JAPAN沖縄にも行ってきたそうですね。

「修斗沖縄大会の時には選手のセコンドで行っていましたけど、大会がある時は松根さんも忙しくて、なかなかお話できない。だからジムをリニューアルされたということもあり、大会がない時に沖縄に行ってきました。

沖縄に行ったのは、練習よりもマインドの部分が大きいです。自分を鼓舞するために――連敗して気持ちが落ちている時に、沖縄で松根さんと話すと気持ちも上がるかなと思って。おかげで気持ちも落ち着きました」

――そうした経験と変化を踏まえ、次の木下戦はどんな試合を見せたいですか。

「木下選手は一撃必殺の打撃を持っていて、勝ちっぷりも負けっぷりも良い選手だと思います。最近は構えが変わりましたよね。HEARTS特有の、ガードを固めて前に出るスタイルが最近のKO勝ちに繋がっているのかなって思います。

自分も構えというか、左右の差がなくなって良い感じになってきています。フィニッシュを狙う木下選手が相手なら、自分もフィニッシュできる確率は上がる。自分もピンチから逃げずにチャンスを掴みに行きたいですね」

■視聴方法(予定)
7月14日(日)
午後5時45分~U-NEXT, サムライTV, YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ

■DEEP120 対戦カード

<DEEPウェルター級選手権試合/5分3R>
鈴木槙吾(日本)
佐藤洋一郎(日本)

<バンタム級/5分3R>
CORO(日本)
瀧澤謙太(日本)

<フェザー級/5分3R>
中村大介(日本)
白川Dark陸斗(日本)

<ウェルター級/5分3R>
阿部大治(日本)
嶋田伊吹(日本)

<フェザー級/5分3R>
神田コウヤ(日本)
木下カラテ(日本)

<ライト級/5分3R>
野村駿太(日本)
泉武志(日本)

<メガトン級/5分2R>
誠悟(日本)
朝太(日本)

<ライト級/5分2R>
石塚雄馬(日本)
佐々木大(日本)

<68キロ契約/5分2R>
太田将吾(日本)
相本宗輝(日本)

<フライ級/5分2R>
木村琉音(日本)
斎藤璃貴(日本)

<アマチュアルール フェザー級/3分2R>
菅涼星(日本)
平石光一(日本)

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【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:6月 シェイドゥラエフ&ダウトベック=中央アジアの脅威<01>

【写真】これから数回に分けて、ノジモフ、タウトベック、シェイドゥラエフらの強さと、来日の経緯をお伝えしていきたい (C)RIZIN FF

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Manabu Takashima

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾という3人のJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。

今回は柏木信吾にMMAPLANETからリクエストした2024年6月の一番、6月9日に行われたRIZIN47からラジャブアリ・シェイドゥラエフ×武田光司カルシャガ・ダウトベック×関鉄矢の2試合を──月末を迎える前に、食い気味のタイミングで語ってもらった。

彼ら2人に加え、RIZIN46で山本空良を倒したイルホム・ノジモフというキルギス=シェイドゥラエフ、カザフスタン=ダウトベック、そしてウズベキスタン=ノジモフという中央アジア勢の強さを振り返り、「なぜ今、中央アジア勢なのか」を柏木氏に訊いた。


ムサエフやラモフの息抜きって、アイスクリームを食べることなんです

――掲載が半年以上、取材は実に11カ月も空いてしまいましたが、この間にMMAPLANET内外のゴタゴタもようやく着地点が見えてきました。このタイミングで、柏木さんが選ぶ今月の一番を食い気味に復活させて頂きたいと思います。

「ハイ。いや、楽しみですね。また、こうやって話をすることができて」

──ところでZOOMの背景からすると、海外でしょうか。

「ハイ、昨日からアイルランドのダブリンに来ていまして。このあとはタイに寄る予定です(※取材は21日に行われた)」

──相変わらずお忙しいなか、復活した今月の一番ですが、今回はMMAPLANETからの要望としてRIZIN47で強烈なインパクトを残したラジャブアリ・シェイドゥラエフ、そしてカルシャガ・ダウトベックの両者の戦いを振り返り、同時に中央アジア勢やアゼルバイジャンというコーカサス勢の登用という部分に関して、話を聞かせていただければと思います。

「分かりました。まず、彼らを招聘した背景から話せば良いでしょうか」

──アッ、スミマセン。その前になぜ、中央アジア、コーカサス軍団は強いのか。そうなるとすぐにジューサーだ云々という話になるのですが、そこ以外でも要因を見つけたくて。自分はキルギスには行ったことはあるのですが、コーカサスは未踏の地で。アゼルバイジャンを訪れたことがある柏木さんは、現地で彼らを見て何か想うところがありましたか。

「自分達が理解できない強さにぶち当たると、なんでもドーピングに結びつけるというのも…僕はどうかなという想いはあります。アゼルバイジャンだけでなく、隔離が必要だった2週間の間に見た──トフィック・ムサエフやヴガール・ケラモフは本当にストイックでした。イスラム教徒で酒も飲まないし、遊ばない。殆ど息抜きもせずにトレーニングに没頭しているんです。だって試合後の彼らの息抜きって、アイスクリームを食べることなんですよ。

試合が終わるとアイスクリーム・パーティーをやって、アイスとピザを食べる。翌日から、もう次の試合のことを考えた生活に戻っています。そんなストイックな生活を3年間、5年間と彼らはやってきています。食事にも本当に気を遣っていますし」

──中央アジア、そしてムスリムとなると豚肉は食せず、羊肉中心かと。羊の肉は低脂肪高たんぱく。鉄分や亜鉛も豊富で必須アミノ酸も含まれていて、栄養価が高い割にヘルシーだと一般的に言われています。

「ほかの肉と比べるとヘルシーということですよね。何と言っても彼らは1年中、3部練習をしているんですよ。日本人選手も彼らと同じ生活をしていると、彼らに近づくと思います。彼らの練習量、食生活、そしてストイックさを踏襲して、強くなれないのであればドーピングを疑うのも致し方ないですけどね」

羊肉と乗馬ですね。それが強さの鍵

──羊の肉に関していえば、もう20年も前の話ですがノルウェーに取材に行った時に、現地で伝統的な羊肉とキャベツの煮物を御馳走になりました。ユノラフ・エイネモのお母さんが創ってくれたのですが、ユノラフによると「これは人が歩いて移動をしている時に食べていた料理なので、車に乗るようになった現代人が食べると肥満体になる」とのことで。ただし、彼らは厳しい練習をしているから御馳走になるということでした。

「これは全く根拠のない僕の自論なんですけど、羊肉と乗馬ですね。それが強さの鍵だと思います。子供の頃から馬に乗って、羊を食っている人間は強い。そこがコーカサスや中央アジアの選手のベースにある。それが僕の自論です」

──柏木さん、モンゴルのウランバートルのジムへ行くと全てのジムの指導者が「ウランバートルの子供は体力も運動神経もない。彼らは地方の子供と違って馬に乗っていない。だから強いファイターは地方出身の選手ばかりだ。体幹、筋肉、反応全てが違う」と言っています。

「えぇ、そうなんですか!!」

──地方の子は遊びと生活が一体化していて乗馬とモンゴル相撲を続けているそうで。

「うわぇ、凄い。嬉しいです。ホント、モンゴルで馬に乗っている女性のS〇Xは凄いらしいですよ。気持ちが良いそうです」

──おっ、インタビュー終盤でないのにもう柏木節が炸裂ですか(笑)。しかし、男も女性も馬に乗っているカップルだとどうなるのか。

「……。スミマセン、いきなり、飛ばしちゃいましたね(笑)話を戻しましょう。RIZINが招聘している外国人選手の全てに言い当てはまるとは言わないですが、ケラモフとムサエフにドーピング疑惑が生まれるのは彼らが強いから。ずっとトレーニングをしてきて、今もピークに向かっているのだから……なかなか追いつけないと思います」

──押忍。そのなかでアゼルバイジャン勢に優るとも劣らないインパクトがあったRIZIN47……中央アジアの衝撃。シェイドゥラエフとダルベックの強さは、あの一夜でRIZINファンの脳裏に刻まれたのではないかと思います。

「そうですね。内部から戦犯って呼ばれています(笑)」

──アハハハハ。

「何してくれるんだって(笑)」

──そうなると別にMMAってことでなく、勝負だから勝つしかないです。

「ハイ。その通りなんです。箱庭派と開国派なんて、論議がありますけど……」

──えっ、そうなのですか。ペリーがやってきたのだから、もう鎖国はできないのでは。

「現実を見てしまったわけですからね。現実から目をそらしてきた結果が今なんじゃないかと。もちろん、お金が続かないと格闘技興行は打てない。だから箱庭を大切にするという気持ちも分かります。でも今のRIZINは、その狭間をやってきている。

RIZINの人気はストーリーメイク、各選手達を主人公にしていく。それは世界にはないユニークなスタイルです。そのストーリーメイクも、日本人だけでなく海外勢まで広がって来てもRIZINのファンなら楽しんでもらえるんじゃないかと僕は思うようになっています。もちろん、彼らは日本人選手のように創り手側の意図をくめるわけじゃないですけど」

──創るって、別に目の前にある材料にスパイスを与えるだけも良いって思うことがあります。なんだが、最近は切り刻んで揚げて、焼いて、ソースを掛けてって。実際の本人と伝わってくる人間性が違うやんと思うことが多いです。

「う~ん、バランスですよね。『ファンなんて関係ない。観客なんて、どうでも良い』、『自分のためにやっているんだ』という感じの選手はなかなか売り出すのは難しいです。日本の格闘技で食っていくには。それが日本の格闘技の歴史だし。

仕事ってギブ&テイクですから、テイクばかりだと難しい。そういう選手はそれこそ修羅の道、UFCの道を往くと。そういう茨の道の一択しかなくなると思います」

馬のアキレス腱の煮凝り

──素でも面白くないですか。

もう12年も前の話なのですが、ジャダンバ・ナラントンガラグに「モンゴル人選手の強さの源は?」と尋ねると「馬のアキレス腱の岩塩です」と朴訥なまま返答してくれて。

「うわぁ、最高ですね。それがストーリーになっていくなら。でも、そこがストーリーになるって我々のようにはみ出ている人間なんですよ」

──えっ、我々ははみ出ているのですか!!

「そこは、そう思ってないですよね(笑)。マスに向けたコンテンツを創るには、分かりやすさですよね。キム・スーチョルが任天堂Switch発言で、人気者になっちゃったように。あの発言で共感できる人が、たくさん生まれたんだと思います。スーチョルは素なんですけど、そういう部分を見つけたあげることで、マスが共感できるアングルを創り上げるというやり方は全然有りだと思います」

──そのために創り手の方が、よりMMAを理解すれば拾い上げる要素を今よりも広がるかと。

「その通りですね」

感謝をしてくれて日本で戦ってくれる選手となると、中央アジアの選手

──そういう今後への期待を先に話してもらったのですが、改めてなぜ中央アジア勢だったのか。そこを柏木さんに伺いたかった次第です。正直なところ、彼らはRIZINも招聘している元UFCファイターよりもハングリーで、日本で成功するんだという強い意思が感じられました。

「彼らの来日は、円安の影響があることは隠せないです。だから元UFCファイターよりも、Road to UFCかRIZINかという若くて強い選手。そしてコストパフォーマンスの良い選手を招聘するということですね。それに元UFCといっても、至るところにいて。だから元UFCファイターでも資金を投入して呼ぶなら、最低限ランカーでないと。元UFCっていうだけでコストパフォーマンスの良くないファイターを呼んでも、ファンの人達に喜んでもらえないです。

そのファイトスタイルが特別で、どうしても戦って欲しいという風にならない限り、なかなか元UFCファイターというだけ円安の壁を乗りこえて飛びつけないですよね」

──円安の問題は輸入業からすると、本当に大問題です。

「ハイ、少しでもコストを抑えて強い選手。しかもオファーを喜び、感謝をしてくれて日本で戦ってくれる選手となると、中央アジアの選手になります。南米も本当は喉から手が出るほど、呼びたい選手がいます。特にLFAブラジル大会なんてチェックしていると、本当に魅力的な選手だらけです。皆、RIZINで活躍できるだろうって」

──確かにLFAのブラジル大会はフィーダーショーとしても頭抜けていますね。

「ハイ。本当にヤバいですし、全面対抗戦をすればRIZINは全敗するんじゃないかと思います。でも、渡航費がブラジルと中央アジアでは違います。それこそコスパに関係してくるので、ブラジル勢は呼びたい選手の数が本当に多いけど中々ハードルが高い。結果、才能があってダイヤの原石で継続して招聘できる選手となると、中央アジアになります」

<この項、続く>

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『RIZIN CONFESSIONS』第153回動画

Fight&Life (ファイトアンドライフ) 2024年 8月号 [雑誌]




 『RIZIN CONFESSIONS』第153回動画。今回は『RIZIN.47』から堀口恭司 vs. セルジオ・ペティス、スパイク・カーライル vs. キム・ギョンピョ、ジョニー・ケース vs. “ブラックパンサー”ベイノア、徳留一樹 vs. 宇佐美正パトリックの舞台裏です。続きを読む・・・
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【Bellator CS2024#03】対戦相手がヌッツィからブランケに変更、太田忍「今はMMAのMぐらいまでは」

【写真】日本を離れる時には、相当に絞れているように見えた (C)TAKUMI NAKAMURA

22日(土・現地時間)、アイルランドはダブリンのスリーアリーナで開催されるBellator CS2024#03にて太田忍がローゲル・ブランケと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

4月のRIZIN46で牛久絢太郎に判定勝利し、RIZINバンタム級における存在感を見せた太田。当初6月のRIZIN47へのオファーもあったが、最終的にBellator CS2024#03への出場が決定した。年内でのRIZINバンタム級王座挑戦を目指す太田がBellator参戦を決意したのは、対戦相手がフランチェスコ・ヌッツィだったことが大きい。

12戦10勝1敗1無効試合という圧倒的な戦績を誇り、強烈な打撃を武器とするヌッツィとの戦いを楽しみにしていた太田だったが、日本を出発する2日前にヌッツィの欠場が決定。急遽5勝5敗のスペイン人ファイター、ローゲル・ブランケと対戦することとなった。

このインタビューは対戦相手変更直後、日本を出発する当日(※16日(日))に行われたもの。対戦相手変更に戸惑いはありつつもBellatorでの勝利、そして改めてRIZIN王座への想いを語ってくれた。


誰が相手でもやることは変わらない

──Bellator初参戦、そしてMMAに転向して初の海外遠征が決まりました。最初にオファーを受けた時の心境から聞かせてください。

「ちょうどグアムで遊んでいるときにマネージャーから連絡があって、最初は6月9日の大会(RIZIN47)に出られないか?って話だったんですよ」

――初めはBellatorのオファーではなかったのですね。

「RIZINが盛り上がるならと思い、出るつもりで返事をしつつ、体重と対戦相手をどうするかって話になったんです。その時に候補で出てきた相手が、正直ピンと来なかったんですよ。盛り上がる試合になるのかなって相手だったり、自分的には普通に勝っちゃうでしょって思う相手だったりで。

そうしたら6月のBellatorに出ないかと話がきて、最終的にBellatorに出ることになりました。」

──紆余曲折があってのBellator参戦だったんですね。特に海外で試合をしたいという希望があったわけではないのですか。

「そうですね。自分は海外でやるとしたら、RIZINでやることやってからと思っていたんで。でも矢地(祐介)選手が5月にBellatorのフランス大会に出てたりして、今後はRIZINから海外に出ていく選手もいるのかなとは思っていたました。

まさか自分のところに話が来るとは思っていなかったですけど。今回はこういうオファーが来たから受けたって感じですね」

──早く試合をしたいというのもあったのですか。

「自分は次は9月くらいでいいかなと思っていたんですよ。そこでタイトルにつながる試合ができたらいいなって。だから久々にゆっくりできるなと思っていたところにオファーが来て、最終的に来た対戦相手(フランチェスコ・ヌッツィ)がめちゃ強そうで魅力的だったんでやりたいなと思いました。ただ相手が代わったの聞きました?」

──いえ、それは初耳です。

「ヌッツィじゃなくなったんですよ(苦笑)。一昨日の夜にヌッツィが怪我で欠場でキャンセルになって、あんまりよく知らない選手(ローゲル・ブランケ)になりました、スペイン人の。まあ試合やるからには勝たなきゃいけないんで、きっちり勝ってきますけど」

──MMAでは初の海外遠征ですが、レスリング時代には何度も海外遠征を経験していると思います。調整方法など普段と違いはありますか。

「大して変わらないかなって思います。レスリング時代もどの国でやっても調整方法は変わらなかったんで。今回は試合の5日前くらいに現地に入るんですけど、いつもと同じです」

──とはいえ、相手がこのタイミングで代わってしまうと、ゲームプランは変えなければいけないですよね。

「そうですね。でも僕のファイトスタイルは、誰が相手でもやることは変わらないんで。テイクダウンして、ボコボコにするみたいな。唯一スタンドに関しては、ヌッツィがサウスポーで左ストレート・左の蹴りとか、結構大きい技があるんで、そこを警戒していたんです。けどブランケはまるっきりタイプが違って、構えもオーソドックスなんですよ。そこがちょっと気になるくらいですかね。でももう開き直っています」

──太田選手自身は4月に牛久絢太郎選手に判定勝ちして、対戦相手に関係なく意識して取り組んでいることや強化していることはありますか。

「まあテイク(ダウン)してコントロールして…というところでは、牛久戦というか(2023年10月に)佐藤将光さんとやった試合、あれが大きいですね。あの時はテイクしてもキープしきれなくて。あの試合からテイクして、しっかり自分のいい位置でキープしてコツコツ当てて、極めにいくところを強化しています。だから牛久戦はその途中って感じでしたね」

──佐藤戦の反省点が大きかったようですね。

「将光さんはケージの使い方が上手かったし、ケージ際での小技とか、テイク以前の攻防ですよね。こっちはくっつきたいけど、くっつかせてくれないみたいな。腿へのカカト落としだったり、細かいヒジ打ちだったり、そういうところの攻防が本当に上手だったし、それで僕はやりたいことをやらせてもらえなかったんです。

それを頭に入れつつ自分がどうテイクしてコントロールして…という練習を一番やっています」

──今まで自分が経験していなかった攻防があって、そこがやりづらかった感想ですか。

「そうですね。今まではそこを突き詰めなくても、ある程度は試合で出来ちゃってたんですよ。練習ではなかなか上手くいかないけど、試合では上手くいっているから『まぁ、いいや』みたいになっていたところがあって。正直、あの試合は途中で自分の中で手詰まりではあったんですよね。だからそこを変えたいとは思っています」

──今はより戦い方に隙がなくなっていますか。

「隙がなくなっているかどうかは分からないですけど、自分のやりたいことをもっと相手に押し付けられるようになってきたと思います。今はMMAのMぐらいまではできるようになってきたんじゃないですか」

ヌッツィとはやってみたかったです(苦笑)

──太田選手の中ではまだM止まりですか。僕はMMぐらいまで来たのかなと思っていたんですけど。

「まだMですね。実際、牛久戦はスタンドの打撃を一切やってないんですよ。際での打撃とかパウンドはやりましたけど。スタンドで対峙した時にジャブすら出してないんで」

──なるほど。いわゆる打撃の交換も、まだ試合では出してないことなんですね。

「まだ出せないです。練習ではいっぱい手数を出していますけど、カウンターをもらうリスクを考えたら、どうしても自分の安全圏で戦おうとするし、まだスタンドの打撃でいくという選択肢は取れないです」

──それこそ試合を重ねていくうちに色んな選択肢を選べるようにもなるわけですし、なおさらヌッツィとはやってみたかったんじゃないですか。

「それです。ヌッツィとは本当にやりたかったし、対策にも自信があったんですよ。すごく強い選手で穴が少ない選手だとは思いますけど、やってくることは結構明確だから、自分が勝てるという明確なゴールを何個か見つけることができていたんで。だからやっぱり……ヌッツィとはやってみたかったです(苦笑)」

──今RIZINでは日本人の海外遠征であったり、新規の外国人選手が増えたり、新しい流れもできつつあります。その中で太田選手はどんな試合をやっていきたいですか。

「対海外選手や海外遠征というのもありますけど、僕の今年の目標はタイトルに絡むこと。去年からずっとそれを言い続けてきたし、RIZINのタイトルを獲ってから、対海外かなと思っています。自分の希望は秋頃に一戦やって、大晦日にタイトルに挑戦することで、そこに向かう中でBellatorの試合や国際戦を求められるならやりますよというスタンスです」

──ベルトに対して、どういったアプローチができるのか。太田選手にとってはそこが一番なのですね。

「そうですね。チャンピオンになったらギャラも上がるだろうし(笑)」

──プロである以上、そういう話にもなってきますよね。

「もちろんそれだけじゃないですよ。チャンピオンになれば発言権も出てくるし、選択肢も増える。朝倉海くんが防衛戦をせずにUFCに行って、あれは特例だと思いますけど、そういう選択もできるようになってくると思うんで、チャンピオンになったら」

──そういった意味では海選手がバンタム級のベルトを返上する形になって、ベルトを狙うにしても以前とは標的が変わってくると思います。ベルトに挑戦する・王座決定戦に臨む…形に関係なくベルトが欲しいですか。

「はい。そこ(ベルト)は最低条件かなと思います」

──分かりました。これ以上、対戦相手が代わったり、トラブルが起きないことを願っております。

「これ以上カードが変わったら、本当に訳が分からないですよ。今の時点で最初に出る予定だった選手が誰もいないから(笑)。まぁ何とかなるでしょと思ってやってきます」

──頼もしい言葉ありがとうございます。そして出発前のお忙しい時にありがとうございます!

■視聴方法(予定)
6月23日(日)
午前0時45分~ U-NEXT

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