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【RIZIN】神龍誠戦から、1カ月を経て──扇久保博正「負けていても、誠には一言謝ろうと思っていました」

【写真】時間を置いたからこそ、語られることがある (C)TAKUMI NAKAMURA

7月28日(日)に、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで行われた超RIZIN03にて、神龍誠と対戦した扇久保博正。師弟時代のエピソードがクローズアップされた因縁の一戦は、扇久保の判定勝利という結果に終わった。
Text by Takumi Nakamura

試合後のインタビュースペースでは扇久保が「今までの試合の中でもキツかった」とこぼしたほど、精神的にプレッシャーを感じていた一戦だが、その理由は神龍との因縁だけでなかった。

またRIZIN公式YouTubeチャンネルでのバックステージ動画RIZIN CONFESSIONSで公開された控室で神龍にかけた「全部俺が悪いから。ゴメンな」という言葉など、試合から約1カ月が経った今だからこそ、扇久保があの試合の裏側を語ってくれた(※取材は5日行われた)。


──神龍選手との一戦は扇久保選手の色んな感情や想いもあった試合だったと思います。改めてあの試合は扇久保選手にとってどんな試合でしたか。

「自分は試合を見直さない方で、記憶は薄れてきているんですけど…実は今回試合前にちょっと怪我をしていて、そこで少し難しい試合だったというのはありますね。その部分で自分の中ではキツい試合だったなと思います」

──試合後のバックステージインタビューでも「今までの試合の中でもキツかった」と言われていましたが、それは神龍選手と戦うことプラス、怪我があった中での試合という要素もあったんですね。

「かなりありましたね。練習がほとんどできないような怪我だったんですよ。あれだけお互い煽り合って、あいつには絶対負けたくないという試合で『この怪我か…』という感じでした」

──そんなに重傷を負っていたんですね。

「試合の1カ月半くらい前に怪我をしてしまって、怪我した箇所が全く動かせなくて。試合までの間はそういう状態で練習しないといけなかったんですよ。それで試合の1週間くらい前に軽く組み技ができるようになったくらいでした」

──欠場しかねないような怪我だったんですね。

「はい。怪我して最初に診察してもらった病院でCTを撮ったんですけど『2週間安静にすれば大丈夫です』と言われて。でも僕としてはとんでもない痛さだったんですよ。これは欠場レベルの怪我だろう、と。でもそういう診断結果だったので、それならやろうと思って準備していたのですが、結局試合当日まで治らず、という感じでしたね。

それで試合が終わって別の病院でMRIを撮ったら重傷だったことが分かって、そこでやっぱりヤバい怪我だったんだなって知りました(苦笑)」

──でもあのシチュエーションで欠場はできないですよね…。

「そうですね。あそこではあとに引けないというか、自分の中でやるしかねえなっていう感じだったんで、もう覚悟を決めてやった感じです」

──また今回は扇久保選手と神龍選手の過去の因縁がクローズアップされた試合で、双方に色んな想いや言いたいことがあったと思います。そのなかで、どうしても扇久保選手が年上で先生だったという部分で、扇久保選手が高圧的な態度を取っていたんじゃないかという見方が多かったように思います。扇久保選手は反論したい気持ちもあったと思いますが、どんな心境で試合までを過ごしていたのですか。

「あの時の記者会見、僕の中では誠………誠と言いますけど、誠は結構トラッシュトークをする子じゃないですか。だから初めてリングに並んだ時(4月29日RIZIN46)に『殺してやるよ』とか言われると思っていたんです。そしたら意外に『扇久保先生』みたいな、真面目な感じだったので、あの時はそういう感じで来るのかと思いました。

でも自分の中ではもっとドロドロした2人のストーリーがあるんで、それを言った方が盛り上がるのかなって思っていて、これは俺から言うしかねえなと思って、僕から会見で仕掛けたんですよ。そうしたら、僕が思っていた何倍も僕の方がヒールというか批判が来て(苦笑)。こういう風に受け取られるんだなと思って、最初は結構戸惑いましたね」

──怪我を抱えての調整という面でストレスもあったと思いますが、どのようなことを意識して練習を続けていましたか。

「怪我はあったんですけど、本当にやれることは全部やりきって。試合にもずっと集中していたので、そこは影響はなかったかなと思います」

──試合中は動ける範囲で勝つ術を見つけていこうという考えだったのですか。

(C)RIZIN FF

「左のパンチと蹴りで行くという作戦でした。

鶴屋(浩)さんとも蹴りで作っていこうというのは決めていました」

──蹴りを多用したのは作戦通りだったのですね。

(C)RIZIN FF

「そうですね。でも1Rにいきなり僕が思っていたより何倍もテイクダウンのスピードが速くて、あれでちょっと高い蹴りを打つのを警戒しちゃいましたね」

──もちろん怪我のことを知らずに試合を見ていて、扇久保選手が神龍選手の持ち味を出させないように、蹴りでコントロールしていた印象があったのですが、そこは自分でもコントロールできているという感覚はありましたか。

「そこはコントロールしている感じがありました。だから本当に今回の試合は経験で勝った感じですね」

──もしRIZINにランキングがあるとしたら、扇久保選手と神龍選手の試合はトップランカー対決だったと思うのですが、そこで勝ったということで自分の評価が上がる試合だったという意識はありますか。

「どうだろう。あんまり自分の中では(評価は)上がってないですね。怪我でいいパフォーマンスができなかったので、経験で勝ったなぐらいの気持ちで今はいますね。手放しで喜べる試合ではなかったです」

──怪我の状況としては今も引き続き治療を続けているのですか。

「はい。今も治療をしているのですが、まだ完治はしていないので、今月いっぱいは安静にしています」

――神龍戦をクリアして今後の展望としては海外の強豪と戦っていきたいですか。

「そうですね。強い外人選手とやりたい気持ちが大きいです」

──今、RIZINもイベント全体として海外の選手がどんどん増えてきています。強豪外国人が増えることで日本人選手の活躍の場がなくなるのではないかという意見もありますが、扇久保選手としては望むところですか。

「はい。むしろそう思うのが普通じゃないですか(笑)。僕は強い外国人がRIZINに来てくれて、それに日本人が勝つ姿を見せることが盛り上がると思っているんで、そういう選手を倒していってRIZINフライ級を世界一にしたいです」

──神龍戦は経験で勝ったという言葉がありましたが、年齢・キャリアを重ねて技の引き出しや戦いのバリエーションも増えて、いかなるタイプの相手が来ても勝っていけるという自信はありますか。

「僕ももう37歳になるんですけど、まだ強くなっているなというのは感じるし、特に試合での強さというのは上がってきているなって感じますね」

──それは試合運びという部分ですか。

「それもあると思うんですけど、練習方法を年齢に合わせて変えているので、それが自分的には大きいのかなって思っています。やっぱりこの1~2年で練習量が大幅に減りましたね」

──大幅に、ですか。

「練習の質は落ちていないんですけど、練習量は昔の半分以下ですね。スパーリングの本数も昔に比べたら半分以下になっています。やっぱり今は疲労が一番の敵というか、疲労が溜まった状態で動くと怪我もするので、そこの見極めも上手くなってきたかなと思いますね。昔だったら疲れていても決めた本数をやらないと納得できない感じだったんですよ。それが最近はこれ以上やったら怪我するって分かるんで」

──なるほど。ハードな練習を限られた回数やるよりも、継続して練習できる方が結果的にコンスタントに練習できるのかもしれないですね。

「そう思いますね。僕の中では格闘家は試合よりも練習でダメージが溜まっているというのが持論なので、いかに練習でダメージを溜めないか。それを考えながら練習しています………そんなことを言っておきながら、怪我してんじゃんって話なんですけど(苦笑)」

──もちろんそこはケアしていても避けられないものなので。

「それこそ若い頃は練習をしすぎて、試合当日が一番ヘロヘロで試合したくねえなって感じる時もありましたからね(苦笑)。さすがにこれはまずいって思うようになって。それでいうと2016年にTUFで1カ月半アメリカに行った時、みんなあんまりスパーリングをやってなかったんですよ。それで『なんでやらないんだ?』ってコーチに聞いたら『練習で頑張るんじゃなくて、試合の日に頑張ればいいだろ?』みたいに言われて。あっ、そういう考えなんだなというのを学べたことは大きかったかもしれません」

──こうして話を聞いていると、キャリア的にも今が一番いい状況だと思うんですけど、だからこそ海外の強豪や世界的に扇久保選手の評価が上がるような相手、そういった意味のある試合をやっていきたいですか。

「そうですね。調子はいいですけど、いつ終わるか分からない年齢ではあるんで。それこそ大怪我をして、ここから2年くらい試合間隔が空くとなると、さすがに精神的にも厳しくなったりするんで。そういうことを考えると、一戦一戦強くて、この選手に勝ったら自分の名前が上がるという意味のある選手とやりたいとは思っています。だからこそ今回の試合で勝てたことは自分の中では大きいです。もしあそこで負けていたら、何もなかったんで。本当に勝って良かったなっていう」

──ちなみに試合の後もバックステージで神龍選手と話をされていましたけど、映像に残っていないところでも2人の間に会話は存在していたのでしょうか。

「あれ以外は話はしていないです」

──僕は控室で神龍選手にかけた「全部悪いから、ごめんな」という一言に全てが詰まっていたなと思いました。

「ああ……どうなんですかね?」

──全てというか、それ以上言い始めたら止まらなくなりそうじゃないですか。

「本当にあの言葉は嘘じゃなくて、仮に僕が負けていても、誠には一言謝ろうと思っていました。本当に色々あったし、僕も若くて頭がおかしかったんで(苦笑)。誠に優しくしてあげられなかったというのはあります」

──神龍選手側からすると、10代でジムに入った時の先生という見方ですが、扇久保選手側からすると20代の一番ギラついている時に10代の子たちの面倒を見て育てるというのもハードルが高いじゃないですか。

「……はい。なかなか難しかったです」

──しかも他のスポーツと違って格闘技の場合は実際にそういう選手たちが道場でコンタクトするわけで、それは衝突もするよなと思いました。

「そうなんですよ。でもそこがなかなか伝わらなかったです(苦笑)」

──だからこそ試合後に扇久保選手が余計なことを言わずに「ごめんな」とだけ言ったことで、扇久保選手と神龍選手のストーリーが一旦完結したなという気がしています。

「そうかもしれないですね。あと僕が誠に言葉をかける前にスタッフの人を押しのけていて、そこが切り取られて拡散されてましたけど、あの時のことは本当に記憶がないんですよ!」

──扇久保は人間的に難があるみたいな言われ方をしていた切り抜きですね。

「そうです、そうです」

――でも試合の直後の興奮している時に相手に声をかけようと思って、人とぶつかりそうになったらああなりますよね。

「ホントそうなんですよ!誠に一言言おうということしか頭になくて、アドレナリンもバンバン出ていたから、それ以外のことが頭になかったんですよ」

──しかもカメラのアングル的に、あの角度からだとグローブ係のスタッフということが分かりますが、扇久保選手からすると視界の外から知らない人が目の前に飛び込んできた感じですよね。

「そうなんですかね? とにかく記憶がなくて逆にビックリしました、俺、あんなことをしてたんだって。だからこのインタビューで改めて言わせてください。あの係の人には謝りたいです。すいません!」

──これはしっかりと書いておきます(笑)。今は怪我を治していただいて、次の試合に備えてください。

「早くて大晦日かなとは思っているんですけど、そこは本当に怪我次第ですね。どれぐらい回復するか状況を見ながら、次の試合の時期を考えたいと思います」

──それではまたその時に取材させてください。今日はありがとうございました!

■RIZIN48視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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【Special】「あそこを目指して欲しい」。柏木信吾のこの一番から中央アジアの猛者たちへ、プロローグ

【写真】強さを目指すなら、中央アジア勢に目を瞑ることはできない (C)RIZIN FF

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。「柏木信吾が選んだ2024年6月の一番」からスピンオフ、そしてアジアの猛者特集に通じるインタビュー後編。
Text by Manabu Takashima

6月9日に行われたRIZIN47で強いインパクトを残したラジャブアリ・シェイドラフとダウトベック、RIZIN46のイルホム・ノジモフら中央アジア勢の来日について、その背景を柏木氏に語ってもらった。

そこには円安を要因とする現状に合致した最善の強い海外勢の招聘の最善策ともいえるが、同時に中央アジアの猛者を躊躇なく招聘できるのは、RIZINの日本人選手の力があるからだ。実際パンクラスもタジキスタンの選手を招聘しているが、IMMAFからプロデビューという選手たちがランカーを撃破し、GLADIATORへ外国人選手をブックする長谷川賢は「カザフスタンの選手を呼ぶと、今のグラジに出ている選手で勝てない」と断言している。

ダウトベック、シェイドゥラエフの招聘経由、そしてこれからについての柏木氏の言葉が、個々のインタビューへのプロローグとなる

<柏木信吾が選んだ2024年6月の一番はコチラから>


クレベル×ダウトベックは代替カードとして

――そういうなかでRIZIN47にカルシャガ・ダウトベック、ラジャブアリ・シェイドゥラエフの両者を同時に招聘したのは、何か意図があったのでしょうか。

「ダウトベックはもともと良い選手でした。ただ朝倉未来選手に一度負けています。それもあって疎遠になっていたことがあります。そこでTOP BRIGHTSで松嶋こよみ選手に勝って『RIZINで見たい』という声が聞かれるようになりました。

ダウトベックは打撃の選手でフィニッシュできます。マッチアップ次第では皆に喜んでもらえる試合をする選手です。だから、タイミングが合えばと思ってきました。それでも負けている選手を呼び戻すのには、なかなか踏ん切りがつかない……なので、随分と放置してしまっていましたね。

それがRIZIN47では堀口恭司×セルジオ・ペティスとクレベル・コイケ×フアン・アルチュレタという2つのカードが確定しているなかで、誰かが欠けた時にそこに当てはまるピースを考えるとクレベル×ダウトベックは代替カードとして成立する。本来は補欠的ぐらいだったのですが、カードがどんどん決まるなかで、ダウトベックの試合を組もうということになって。すぐに関鉄矢選手に連絡をした感じです」

――力は最初から買っていたということですね。

「ハイ。でも能面なので、なかなかストーリーが創り辛い。キャラが創り辛いというのはあったのですが、あの試合を続けてくれれば――それがキャラになるとは思っていました(笑)。で、実際に試合を見るとやっぱり強い」

――プレッシャーの掛け方、そして踏み込み。関選手が日本人選手のアベレージ的にリトマス試験紙の役割を果たすとすると、悔しいですが違いは明白でした。

「序盤から右に回らされていました。最初はアレ、どういうことだろうと思ったんですけど、それはもうダウトベックにそういう風に動かされていた。左回りができなかった。だからダウトベックはリングの方が良いんじゃいかと思うぐらい、追い足が良かったです。関選手の苦しみが、伝わってくるような試合でした。

上下を散らして、ローからハイを狙っていたと思いますが、あのプレッシャーの強さは……」

――被弾したらしたで、過去に経験したことがない拳だったかと。

「岩みたいだったと言っていました」

――左フックでよく立ち上がったと思いました。しかしフィニッシュの左ボディフックが、また強烈で。

「もっと見たいと思えるファイトでしたよね。寝技がどうなのかというのもありますが」

太田忍選手が手が付けられなくなった時の相手として、シェイドゥラエフは呼びたかった

――ではシェイドゥラエフに関しては?

「シェイドゥラエフはアゼルバイジャン大会をやった時に、中央アジアからアゼルバイジャンに選手を呼ぼうということで、現地のプロモーションやマネージャーと繋がりができました。そのなかの1人が、シェイドゥラフの名前を出してきたんです。僕もRoad FCでヤン・ジヨン戦を見ていたので、ぜひ欲しいと思いました。

ただ最初はバンタム級として考えていたんです。バンタム級は太田忍選手がそろそろ手がつけられなくなってくると思うので。あと3試合、4試合と経験を積むと無双状態になるのではないかと僕は思っていて。太田忍選手が手が付けられなくなった時の相手として、シェイドゥラエフは呼びたかったです」

――おお、そういうことだったのですね。これはもう、今後のバンタム級戦線を見るうえで貴重な意見だと思います。

「そういうことで契約をしたのですが、Road FCでは63キロでも計量を失敗しているので、『62キロで本当に戦える?  RIZINは体重オーバーをした選手には凄く厳しいよ』という話をしました。そうしたら66キロで戦うという返事で、フェザー級になってしまったんですよ(笑)」

――一気に2人も……。こんなに強いの同時に要らないだろうという声が出るのも頷けます(笑)。

「そうですね……僕の中で予定が崩れたというか、フェザー級にはもうダウトベックとイルホム・ノジモフという中央アジア勢とビクター・コレスニックというロシア人選手がいる。もうこれ以上、突っ込む必要がない強烈な駒がバンタム級でなくフェザー級を選んだということなんです(苦笑)。

こういうことになったのですが、バンタム級に強い外国人選手を1人、2人と入れたいと思います」

――う~ん。バンタム要員の予定だったシェイドゥラフが武田光司選手に完勝したという事実は重いです。

「武田選手だったらフィジカル負けはしないだろうと思っていました。同じ生態の選手を当てるというイメージでした。シェイドゥラエフは本当に本物なのか。そういう意味で武田選手と戦うことで分かる。戦績がキレーで、パーフェクトでも実は、それほど強くない選手もいるじゃないですか」

――ハイ。

「ヤン・ジヨンに勝っていると言っても、そこで株が大いに上がるというわけではない。だから武田選手と打撃、フィジカル、四つ組みになった時にどうなるのか。圧倒されるようなことがあれば招聘した側のミスになるなという不安も、本当はあったんです」

――それが……。

「逆の意味でヤバいなと」

――結果的にフェザー級転向の武田選手の価値を落としたマッチメイクとなってしまいました。

「本当にそうなんです……。武田選手の強いところで、完敗を喫してしまったので。正直、『やっちゃったなぁ』という想いになりました(苦笑)。試合後の武田選手からは悔しさよりも、虚無感が見られて。ホント、どうしましょう……。

と同時に、打撃が得意な選手からすると全然いけると思ったところはあるとは感じています」

――とはいえレスリングができたうえでの打撃でないといけないので、やはり武田選手にあの勝ち方は驚異でしかないかと。

「そこなんですよ。あの組みに対抗できて、打撃を入れることができるのか。触れる怖さがあると、打撃の威力は半減してしまうでしょうね」

――武田選手はいわば日本人のなかでは、ヌルマゴ・スタイルというか。組みが強力で打撃を苦にしない選手です。繰り返しますが、その武田選手にあの勝ち方をした……これは……。

「とんでもない選手を呼んでしまいましたね。まぁ、あとはスタミナがあるのか。武田選手がどこまで引き出すことができるのかという気持ちでもいました。だってあの動きを15分間続けるなんて、できないですよ。それができるなら、すぐに解約するのでUFCに行ってほしいです」

――バックを取るためのパスの圧力、フリップにつられなかった動きも秀逸でした。

「いや判断力も良いし、体幹も強いんでしょうね。際が強いというか、シェイドゥラエフは楽しいMMAを見せてくれました。MMA特有の際の攻防が凄く出来ていて。見ていて楽しいというか、心地よかったです。相手が武田選手だから、あの攻防が生まれた。MMAの魅力が全面に出た試合でしたね。僕はそう思います」

強い選手と戦うことはデメリットでなく、メリットになる

――外国人選手は勝てば、もうタイトル挑戦と一直線で来ます。ただし、RIZINフェザー級タイトル戦線を考えると、この2人があと1勝を挙げても挑戦はないと考えるのが普通で。同時にあの強さを見せつけられ、来日が途絶えるようなことがあれば「逃げた」と思います。柏木さん個人的としては、9月からノジモフも含めて中央アジア3人衆はどのようにマッチメイクしていこうと考えていますか。

「どこかで潰し合いをしてもらわないと、困ります。アハハハハ」

――アハハハハ。

「でも強者と強者が戦うというマッチアップでも、今のRIZINファンは乗れると思います。キム・ギョンピョとスパイク・カーライルの試合も、そこそこ盛り上がっていましたし。そろそろ、そういうのがあっても良いんじゃないかと」

――「中央アジア3人衆、誰でもやってやるよ」と声を挙げる選手に出てきてほしいです。

「そうですね。強い選手と戦うことはデメリットでなく、メリットになる。それが格闘家ですからね。強い選手同士をぶつけるだけでは、日本の現状としてビジネスは成立しない部分はあるかとは思います。だからこそ、彼らが生きるマッチメイクもRIZINには必要になってきます」

――9月にいきなり潰し合いが組まれたら、色々な意味で逃げたと言わせてもらいます(笑)。

「そこはまだないです。そこでは(笑)。日本人選手が困るから、潰し合わせるということはしないです(笑)。中央アジア勢に勝てば強さの証明になる。だからタイトル挑戦に近づく。そういう状況にしたいですね。ファンの期待値が上がれば、そこは逃げられなくなりますから」

――日本国内にいて直視しない傾向もみられる円安と向き合う柏木さん、僭越ながら中央アジア勢の投入はgood jobだと書かせてください。

「ありがとうございます。シェイドゥラエフを呼んで、褒められたのは初めてかもしれないです(笑)。でも、攻略はできます。ダウトベックもシェイドゥラエフも完璧ではないので。強いけど、日本人選手にはあそこを目指して欲しいです。

なぜ、ファイターをやっているのか。そこをもう一度、自分に問いかけて欲しいです。格闘技って強くなりたいからやっているんじゃないですか――と。その原点は大切だと僕は思っています。強いヤツはたくさんいるので、そいつらに勝つことを目標にしてほしいです」

――MMAPLANETみたいなことを言っているじゃないですか。

「ホント、会社で村八分ですよ(笑)。本当に社内で浮いていますからね、僕。ビックリするほど」

――アハハハハハハ。

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【SUPER RIZIN03】危ないレベルの因縁、扇久保博正戦。神龍誠「言いたいことは山ほどあった」

【写真】本当に仲が悪いと、MMAは危険だ (C)TAKUMI NAKAMURA

28日(日)、大宮市のさいたまスーパーアリーナで行われる超RIZIN03で、神龍誠が扇久保博正と対戦する。
Text by Takumi Nakamura

4月のRIZIN46のリング上で決定した神龍と扇久保の一戦。かつての師弟対決としての注目を集めていたが、日を改めて行われた記者会見では扇久保の「なんでうちの道場を辞めたか言ってみろ」という言葉に対し、神龍が「俺とお前は合わないなって言いましたよね?それを指導員が言っていいんですか?」と返すなど、両者の遺恨が露になった。

このインタビューは会見直後に行われたもので、神龍は扇久保戦に対して抱く感情を露わにした(※取材は5月24日の超RIZIN03の会見終了後に行われた)。


当時の僕は本当にしゃべるのが苦手だった

――両者揃っての記者会見を終えた直後ですが、今の心境を聞かせてください。

「ムカついてます」

――会見で神龍選手から扇久保選手に対して「俺とお前合わないなって言いましたよね?それを指導員が言っていいんですか?」という言葉もありました。

「そういう人なんだなって感じですね。普通は先生が生徒に対して『俺と合わない』なんて言わないじゃないですか。でもはっきりそう言われたんですよ。あっちは覚えてないと思いますけど。そういうことを言う先生のことをどう思います?」

――それはその時の状況もあるとは思いますが…………(💦)。

「しかもそれを15~16歳の生徒に対して言うわけですよ。僕はそういうことは言うべきではないと思います」

――例えば何かそう言われてしまう出来事があったのでしょうか。

「僕は何かやらかした記憶はないし、ただ単に気にくわなかっただけだと思います」

――やるなと言われたことをやってしまった、とか。

「それもないですが、当時僕が周りの人たちと馴染めなかったのは確かです。ただ僕だけ10代半ばで、周りに同世代の選手がいなかったし、みんな年上なわけですよ。そういうこともあって周りと馴染めなかったし、『お願いします』って練習に参加して、掃除して一番最初に帰るのが僕だったんです。

そういうなかで『お前は毎日便所掃除しろ』と言われて、僕はそれを一昔前のイジメみたいだなと感じていました」

――いわゆる師弟関係というものはないですか。

「そんな関係ではないです。一応、教えてもらっていたので感謝もしていたし、先生と呼んでいましたけど、綺麗な師弟関係はないですね」

――道場で指導する・指導を受けるだけの関係だ、と。

「そうですかね。だから僕は会見で(扇久保が)どっちの感じで来るかなと思っていたんですよ。そうしたらああいう感じで来たので、じゃあ僕もその感じでいきますよと思って言いました」

――扇久保選手の言葉を聞いて感情的になりましたか。

「僕も言いたいことは山ほどあったんですよ。それであっちが『しゃべれ』って言うから、しゃべりだしたら『しゃべんな』って言われて。ああいうところも理不尽ですよね」

――指導を受けている時から、いつかやってやりたいと思っていましたか。

「はい。当時からそう思っていました。色々言われてムカつくのもあるし、練習ではボコボコにされていたんで」

――ジムを離れたのもそれが原因の一つだったのでしょうか。

「ジムを離れたのはちょうどプロで初めて負けた時で、このままの環境で強くなれるのか?と疑問に思って辞めました」

――扇久保選手からするとジムが嫌で逃げたという捉え方をされているかもしれません。

「当時の僕にはそうするしかなかったです」

2018年2月、パラエストラ柏──夜の一般練習で内藤のび太とスパーリングをする神龍誠(当時は高橋誠)

――神龍選手の入門当時はどのよう状況だったのですか。

「もともと僕がジムに入ったのが中学一年生くらいの頃で、参加していた一般クラスで中学生は僕くらいでした」

――中学生の一会員としては色々と難しい環境かもしれないですね。

「それで周りに馴染むのが大変だったし、僕も人見知りだったんで、向こうからすると感じが悪かったんでしょうね。何か話かけても返事はするけど不愛想だっただろうし。今振り返るとそうだったんだと思います。でも当時の僕は本当にしゃべるのが苦手だったんで」

――今はそういう見方ができるかもしれませんが、当時はそこまで考える余裕がなかったのかもしれないですね。

「それでも優しくしてくれた先輩はいたし、大阪で試合をするときにセコンドについてきてくれた先輩や、周りに馴染めない僕に声をかけてくれた先輩もいたんですよ。あの人はそうじゃなかったってことです」

――人間的に合わないですか。

「はい。合わないです」

天才だからやらなくていいんだじゃなくて、基礎練習もやってプラスアルファにする

――話題を変えましょう。4月のRIZIN46のイ・ジョンヒョン戦は肩固めによる一本勝ちでしたが、あの試合を振り返っていただけますか。

「予想通りでしたね。年末に堀口(恭司)選手には負けましたけど、言っても僕は世界トップなので」

――心境的には勝って当然という試合でしたか。

「でもジョンヒョンは強いらしいですけどね。韓国ではトップ3に入ると言われているみたいなので。まぁ、僕は日本の器じゃないんで、そういう違いを見せられたかなと思います」

――堀口戦後は何を意識して練習してきたのですか。

「基礎に戻りました。強化しなきゃいけないところを見つめなおして。今まで雑にしていたところ、曖昧にしていたところを基礎からやる感じですね」

――新しいことを取り入れるよりも基礎を見直していると。

「そうですね。打ち込みの大切さだったり。どうしてもレベルが上がってくると練習がスパーリング中心になったりするじゃないですか。そういう部分で技が雑になっていたところもあったので、そこを振り返ったのが一番ですね」

――堀口選手と対戦して通用するところ・しないところが分かりましたか。

「相手の強みで勝負できるようにならないと先はないのかなと思いました。例えば堀口選手はすべてのレベルが高くて、何でもできるわけじゃないですか。それに対して僕がただ自分の強いところをぶつけるだけでは勝てなくて、相手の強いところでも勝負しながら、自分の得意なところに持っていくことが必要だなと思いました。堀口選手と再戦を狙っているので、このくらいしておきます」

――神龍選手の試合を見ているとMMA的なスクランブルの動きとサブミッションを取る動きが連動している印象があります。そこはご自身でも意識されているのですか。

「う~ん……身体能力。それが扇久保さんが言う『身体能力がある』なんじゃないですかね」

――なるほど。自分でもそこは武器だと思っていますか。

「逆にそこに頼りすぎていたってことだと思います。そういう意味で基礎に戻ったというか。自分は天才だから(基礎は)やらなくていいんだじゃなくて、基礎練習もやってプラスアルファにするということを堀口戦で考えるようになりました」

――あのタイミングで堀口選手と戦ったことは大きかったようですね。

「大きいです。あのタイミングでやれたことが大きいし、また強くなっちゃいますよ」

あの人もUFCに行ったらトップ5には入ると思う

――扇久保選手に対する感情は置いておいて、対戦相手としての印象は?

「フィジカルが強いパワー型で、テイクダウンしたらあまり動かずにパウンドで削って膠着することが多いですよね。そこにハマるのは嫌なので、そうさせないようにして僕の展開を作っていきます」

――攻略するイメージは出来ていますか。

「相手の対策ではなくて、今の僕なら全部で勝負できると思うので、特にないです」

――対扇久保ではなく、今の自分を出すことに集中していると。

「そうですね。確かに当時の僕は何もできなかったですけど、それは昔の話なんで。今は全部で勝負して勝ちます。あの人もUFCに行ったらトップ5には入ると思うので、世界一を目指す人間としてちゃんと超えたいなと思います」

――周りから様々な反響があると思いますし、お互いの色々な感情がぶつかる試合になりますね。

「そういう方が面白いんじゃないですか。あっちも家族もお子さんもいて、昔こういうことをされましたって言って下げるのもどうかなと思っていたんですけど、あの感じで来るなら僕も同じ感じでいきますよと。ファンのみなさんは試合を楽しみにしていてください」

■視聴方法(予定)
7月28日(日)
午後2時00分~ ABEMA格闘チャンネル

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【Special】月刊、柏木信吾のこの一番:6月 シェイドゥラエフ&ダウトベック=中央アジアの脅威<01>

【写真】これから数回に分けて、ノジモフ、タウトベック、シェイドゥラエフらの強さと、来日の経緯をお伝えしていきたい (C)RIZIN FF

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。
Text by Manabu Takashima

背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾という3人のJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。

今回は柏木信吾にMMAPLANETからリクエストした2024年6月の一番、6月9日に行われたRIZIN47からラジャブアリ・シェイドゥラエフ×武田光司カルシャガ・ダウトベック×関鉄矢の2試合を──月末を迎える前に、食い気味のタイミングで語ってもらった。

彼ら2人に加え、RIZIN46で山本空良を倒したイルホム・ノジモフというキルギス=シェイドゥラエフ、カザフスタン=ダウトベック、そしてウズベキスタン=ノジモフという中央アジア勢の強さを振り返り、「なぜ今、中央アジア勢なのか」を柏木氏に訊いた。


ムサエフやラモフの息抜きって、アイスクリームを食べることなんです

――掲載が半年以上、取材は実に11カ月も空いてしまいましたが、この間にMMAPLANET内外のゴタゴタもようやく着地点が見えてきました。このタイミングで、柏木さんが選ぶ今月の一番を食い気味に復活させて頂きたいと思います。

「ハイ。いや、楽しみですね。また、こうやって話をすることができて」

──ところでZOOMの背景からすると、海外でしょうか。

「ハイ、昨日からアイルランドのダブリンに来ていまして。このあとはタイに寄る予定です(※取材は21日に行われた)」

──相変わらずお忙しいなか、復活した今月の一番ですが、今回はMMAPLANETからの要望としてRIZIN47で強烈なインパクトを残したラジャブアリ・シェイドゥラエフ、そしてカルシャガ・ダウトベックの両者の戦いを振り返り、同時に中央アジア勢やアゼルバイジャンというコーカサス勢の登用という部分に関して、話を聞かせていただければと思います。

「分かりました。まず、彼らを招聘した背景から話せば良いでしょうか」

──アッ、スミマセン。その前になぜ、中央アジア、コーカサス軍団は強いのか。そうなるとすぐにジューサーだ云々という話になるのですが、そこ以外でも要因を見つけたくて。自分はキルギスには行ったことはあるのですが、コーカサスは未踏の地で。アゼルバイジャンを訪れたことがある柏木さんは、現地で彼らを見て何か想うところがありましたか。

「自分達が理解できない強さにぶち当たると、なんでもドーピングに結びつけるというのも…僕はどうかなという想いはあります。アゼルバイジャンだけでなく、隔離が必要だった2週間の間に見た──トフィック・ムサエフやヴガール・ケラモフは本当にストイックでした。イスラム教徒で酒も飲まないし、遊ばない。殆ど息抜きもせずにトレーニングに没頭しているんです。だって試合後の彼らの息抜きって、アイスクリームを食べることなんですよ。

試合が終わるとアイスクリーム・パーティーをやって、アイスとピザを食べる。翌日から、もう次の試合のことを考えた生活に戻っています。そんなストイックな生活を3年間、5年間と彼らはやってきています。食事にも本当に気を遣っていますし」

──中央アジア、そしてムスリムとなると豚肉は食せず、羊肉中心かと。羊の肉は低脂肪高たんぱく。鉄分や亜鉛も豊富で必須アミノ酸も含まれていて、栄養価が高い割にヘルシーだと一般的に言われています。

「ほかの肉と比べるとヘルシーということですよね。何と言っても彼らは1年中、3部練習をしているんですよ。日本人選手も彼らと同じ生活をしていると、彼らに近づくと思います。彼らの練習量、食生活、そしてストイックさを踏襲して、強くなれないのであればドーピングを疑うのも致し方ないですけどね」

羊肉と乗馬ですね。それが強さの鍵

──羊の肉に関していえば、もう20年も前の話ですがノルウェーに取材に行った時に、現地で伝統的な羊肉とキャベツの煮物を御馳走になりました。ユノラフ・エイネモのお母さんが創ってくれたのですが、ユノラフによると「これは人が歩いて移動をしている時に食べていた料理なので、車に乗るようになった現代人が食べると肥満体になる」とのことで。ただし、彼らは厳しい練習をしているから御馳走になるということでした。

「これは全く根拠のない僕の自論なんですけど、羊肉と乗馬ですね。それが強さの鍵だと思います。子供の頃から馬に乗って、羊を食っている人間は強い。そこがコーカサスや中央アジアの選手のベースにある。それが僕の自論です」

──柏木さん、モンゴルのウランバートルのジムへ行くと全てのジムの指導者が「ウランバートルの子供は体力も運動神経もない。彼らは地方の子供と違って馬に乗っていない。だから強いファイターは地方出身の選手ばかりだ。体幹、筋肉、反応全てが違う」と言っています。

「えぇ、そうなんですか!!」

──地方の子は遊びと生活が一体化していて乗馬とモンゴル相撲を続けているそうで。

「うわぇ、凄い。嬉しいです。ホント、モンゴルで馬に乗っている女性のS〇Xは凄いらしいですよ。気持ちが良いそうです」

──おっ、インタビュー終盤でないのにもう柏木節が炸裂ですか(笑)。しかし、男も女性も馬に乗っているカップルだとどうなるのか。

「……。スミマセン、いきなり、飛ばしちゃいましたね(笑)話を戻しましょう。RIZINが招聘している外国人選手の全てに言い当てはまるとは言わないですが、ケラモフとムサエフにドーピング疑惑が生まれるのは彼らが強いから。ずっとトレーニングをしてきて、今もピークに向かっているのだから……なかなか追いつけないと思います」

──押忍。そのなかでアゼルバイジャン勢に優るとも劣らないインパクトがあったRIZIN47……中央アジアの衝撃。シェイドゥラエフとダルベックの強さは、あの一夜でRIZINファンの脳裏に刻まれたのではないかと思います。

「そうですね。内部から戦犯って呼ばれています(笑)」

──アハハハハ。

「何してくれるんだって(笑)」

──そうなると別にMMAってことでなく、勝負だから勝つしかないです。

「ハイ。その通りなんです。箱庭派と開国派なんて、論議がありますけど……」

──えっ、そうなのですか。ペリーがやってきたのだから、もう鎖国はできないのでは。

「現実を見てしまったわけですからね。現実から目をそらしてきた結果が今なんじゃないかと。もちろん、お金が続かないと格闘技興行は打てない。だから箱庭を大切にするという気持ちも分かります。でも今のRIZINは、その狭間をやってきている。

RIZINの人気はストーリーメイク、各選手達を主人公にしていく。それは世界にはないユニークなスタイルです。そのストーリーメイクも、日本人だけでなく海外勢まで広がって来てもRIZINのファンなら楽しんでもらえるんじゃないかと僕は思うようになっています。もちろん、彼らは日本人選手のように創り手側の意図をくめるわけじゃないですけど」

──創るって、別に目の前にある材料にスパイスを与えるだけも良いって思うことがあります。なんだが、最近は切り刻んで揚げて、焼いて、ソースを掛けてって。実際の本人と伝わってくる人間性が違うやんと思うことが多いです。

「う~ん、バランスですよね。『ファンなんて関係ない。観客なんて、どうでも良い』、『自分のためにやっているんだ』という感じの選手はなかなか売り出すのは難しいです。日本の格闘技で食っていくには。それが日本の格闘技の歴史だし。

仕事ってギブ&テイクですから、テイクばかりだと難しい。そういう選手はそれこそ修羅の道、UFCの道を往くと。そういう茨の道の一択しかなくなると思います」

馬のアキレス腱の煮凝り

──素でも面白くないですか。

もう12年も前の話なのですが、ジャダンバ・ナラントンガラグに「モンゴル人選手の強さの源は?」と尋ねると「馬のアキレス腱の岩塩です」と朴訥なまま返答してくれて。

「うわぁ、最高ですね。それがストーリーになっていくなら。でも、そこがストーリーになるって我々のようにはみ出ている人間なんですよ」

──えっ、我々ははみ出ているのですか!!

「そこは、そう思ってないですよね(笑)。マスに向けたコンテンツを創るには、分かりやすさですよね。キム・スーチョルが任天堂Switch発言で、人気者になっちゃったように。あの発言で共感できる人が、たくさん生まれたんだと思います。スーチョルは素なんですけど、そういう部分を見つけたあげることで、マスが共感できるアングルを創り上げるというやり方は全然有りだと思います」

──そのために創り手の方が、よりMMAを理解すれば拾い上げる要素を今よりも広がるかと。

「その通りですね」

感謝をしてくれて日本で戦ってくれる選手となると、中央アジアの選手

──そういう今後への期待を先に話してもらったのですが、改めてなぜ中央アジア勢だったのか。そこを柏木さんに伺いたかった次第です。正直なところ、彼らはRIZINも招聘している元UFCファイターよりもハングリーで、日本で成功するんだという強い意思が感じられました。

「彼らの来日は、円安の影響があることは隠せないです。だから元UFCファイターよりも、Road to UFCかRIZINかという若くて強い選手。そしてコストパフォーマンスの良い選手を招聘するということですね。それに元UFCといっても、至るところにいて。だから元UFCファイターでも資金を投入して呼ぶなら、最低限ランカーでないと。元UFCっていうだけでコストパフォーマンスの良くないファイターを呼んでも、ファンの人達に喜んでもらえないです。

そのファイトスタイルが特別で、どうしても戦って欲しいという風にならない限り、なかなか元UFCファイターというだけ円安の壁を乗りこえて飛びつけないですよね」

──円安の問題は輸入業からすると、本当に大問題です。

「ハイ、少しでもコストを抑えて強い選手。しかもオファーを喜び、感謝をしてくれて日本で戦ってくれる選手となると、中央アジアの選手になります。南米も本当は喉から手が出るほど、呼びたい選手がいます。特にLFAブラジル大会なんてチェックしていると、本当に魅力的な選手だらけです。皆、RIZINで活躍できるだろうって」

──確かにLFAのブラジル大会はフィーダーショーとしても頭抜けていますね。

「ハイ。本当にヤバいですし、全面対抗戦をすればRIZINは全敗するんじゃないかと思います。でも、渡航費がブラジルと中央アジアでは違います。それこそコスパに関係してくるので、ブラジル勢は呼びたい選手の数が本当に多いけど中々ハードルが高い。結果、才能があってダイヤの原石で継続して招聘できる選手となると、中央アジアになります」

<この項、続く>

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45 BELLATOR Bellator CS2024#03 MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN46 RIZIN47 UFC フランチェスコ・ヌッツィ 佐藤将光 太田忍 朝倉海 海外 牛久絢太郎

【Bellator CS2024#03】対戦相手がヌッツィからブランケに変更、太田忍「今はMMAのMぐらいまでは」

【写真】日本を離れる時には、相当に絞れているように見えた (C)TAKUMI NAKAMURA

22日(土・現地時間)、アイルランドはダブリンのスリーアリーナで開催されるBellator CS2024#03にて太田忍がローゲル・ブランケと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

4月のRIZIN46で牛久絢太郎に判定勝利し、RIZINバンタム級における存在感を見せた太田。当初6月のRIZIN47へのオファーもあったが、最終的にBellator CS2024#03への出場が決定した。年内でのRIZINバンタム級王座挑戦を目指す太田がBellator参戦を決意したのは、対戦相手がフランチェスコ・ヌッツィだったことが大きい。

12戦10勝1敗1無効試合という圧倒的な戦績を誇り、強烈な打撃を武器とするヌッツィとの戦いを楽しみにしていた太田だったが、日本を出発する2日前にヌッツィの欠場が決定。急遽5勝5敗のスペイン人ファイター、ローゲル・ブランケと対戦することとなった。

このインタビューは対戦相手変更直後、日本を出発する当日(※16日(日))に行われたもの。対戦相手変更に戸惑いはありつつもBellatorでの勝利、そして改めてRIZIN王座への想いを語ってくれた。


誰が相手でもやることは変わらない

──Bellator初参戦、そしてMMAに転向して初の海外遠征が決まりました。最初にオファーを受けた時の心境から聞かせてください。

「ちょうどグアムで遊んでいるときにマネージャーから連絡があって、最初は6月9日の大会(RIZIN47)に出られないか?って話だったんですよ」

――初めはBellatorのオファーではなかったのですね。

「RIZINが盛り上がるならと思い、出るつもりで返事をしつつ、体重と対戦相手をどうするかって話になったんです。その時に候補で出てきた相手が、正直ピンと来なかったんですよ。盛り上がる試合になるのかなって相手だったり、自分的には普通に勝っちゃうでしょって思う相手だったりで。

そうしたら6月のBellatorに出ないかと話がきて、最終的にBellatorに出ることになりました。」

──紆余曲折があってのBellator参戦だったんですね。特に海外で試合をしたいという希望があったわけではないのですか。

「そうですね。自分は海外でやるとしたら、RIZINでやることやってからと思っていたんで。でも矢地(祐介)選手が5月にBellatorのフランス大会に出てたりして、今後はRIZINから海外に出ていく選手もいるのかなとは思っていたました。

まさか自分のところに話が来るとは思っていなかったですけど。今回はこういうオファーが来たから受けたって感じですね」

──早く試合をしたいというのもあったのですか。

「自分は次は9月くらいでいいかなと思っていたんですよ。そこでタイトルにつながる試合ができたらいいなって。だから久々にゆっくりできるなと思っていたところにオファーが来て、最終的に来た対戦相手(フランチェスコ・ヌッツィ)がめちゃ強そうで魅力的だったんでやりたいなと思いました。ただ相手が代わったの聞きました?」

──いえ、それは初耳です。

「ヌッツィじゃなくなったんですよ(苦笑)。一昨日の夜にヌッツィが怪我で欠場でキャンセルになって、あんまりよく知らない選手(ローゲル・ブランケ)になりました、スペイン人の。まあ試合やるからには勝たなきゃいけないんで、きっちり勝ってきますけど」

──MMAでは初の海外遠征ですが、レスリング時代には何度も海外遠征を経験していると思います。調整方法など普段と違いはありますか。

「大して変わらないかなって思います。レスリング時代もどの国でやっても調整方法は変わらなかったんで。今回は試合の5日前くらいに現地に入るんですけど、いつもと同じです」

──とはいえ、相手がこのタイミングで代わってしまうと、ゲームプランは変えなければいけないですよね。

「そうですね。でも僕のファイトスタイルは、誰が相手でもやることは変わらないんで。テイクダウンして、ボコボコにするみたいな。唯一スタンドに関しては、ヌッツィがサウスポーで左ストレート・左の蹴りとか、結構大きい技があるんで、そこを警戒していたんです。けどブランケはまるっきりタイプが違って、構えもオーソドックスなんですよ。そこがちょっと気になるくらいですかね。でももう開き直っています」

──太田選手自身は4月に牛久絢太郎選手に判定勝ちして、対戦相手に関係なく意識して取り組んでいることや強化していることはありますか。

「まあテイク(ダウン)してコントロールして…というところでは、牛久戦というか(2023年10月に)佐藤将光さんとやった試合、あれが大きいですね。あの時はテイクしてもキープしきれなくて。あの試合からテイクして、しっかり自分のいい位置でキープしてコツコツ当てて、極めにいくところを強化しています。だから牛久戦はその途中って感じでしたね」

──佐藤戦の反省点が大きかったようですね。

「将光さんはケージの使い方が上手かったし、ケージ際での小技とか、テイク以前の攻防ですよね。こっちはくっつきたいけど、くっつかせてくれないみたいな。腿へのカカト落としだったり、細かいヒジ打ちだったり、そういうところの攻防が本当に上手だったし、それで僕はやりたいことをやらせてもらえなかったんです。

それを頭に入れつつ自分がどうテイクしてコントロールして…という練習を一番やっています」

──今まで自分が経験していなかった攻防があって、そこがやりづらかった感想ですか。

「そうですね。今まではそこを突き詰めなくても、ある程度は試合で出来ちゃってたんですよ。練習ではなかなか上手くいかないけど、試合では上手くいっているから『まぁ、いいや』みたいになっていたところがあって。正直、あの試合は途中で自分の中で手詰まりではあったんですよね。だからそこを変えたいとは思っています」

──今はより戦い方に隙がなくなっていますか。

「隙がなくなっているかどうかは分からないですけど、自分のやりたいことをもっと相手に押し付けられるようになってきたと思います。今はMMAのMぐらいまではできるようになってきたんじゃないですか」

ヌッツィとはやってみたかったです(苦笑)

──太田選手の中ではまだM止まりですか。僕はMMぐらいまで来たのかなと思っていたんですけど。

「まだMですね。実際、牛久戦はスタンドの打撃を一切やってないんですよ。際での打撃とかパウンドはやりましたけど。スタンドで対峙した時にジャブすら出してないんで」

──なるほど。いわゆる打撃の交換も、まだ試合では出してないことなんですね。

「まだ出せないです。練習ではいっぱい手数を出していますけど、カウンターをもらうリスクを考えたら、どうしても自分の安全圏で戦おうとするし、まだスタンドの打撃でいくという選択肢は取れないです」

──それこそ試合を重ねていくうちに色んな選択肢を選べるようにもなるわけですし、なおさらヌッツィとはやってみたかったんじゃないですか。

「それです。ヌッツィとは本当にやりたかったし、対策にも自信があったんですよ。すごく強い選手で穴が少ない選手だとは思いますけど、やってくることは結構明確だから、自分が勝てるという明確なゴールを何個か見つけることができていたんで。だからやっぱり……ヌッツィとはやってみたかったです(苦笑)」

──今RIZINでは日本人の海外遠征であったり、新規の外国人選手が増えたり、新しい流れもできつつあります。その中で太田選手はどんな試合をやっていきたいですか。

「対海外選手や海外遠征というのもありますけど、僕の今年の目標はタイトルに絡むこと。去年からずっとそれを言い続けてきたし、RIZINのタイトルを獲ってから、対海外かなと思っています。自分の希望は秋頃に一戦やって、大晦日にタイトルに挑戦することで、そこに向かう中でBellatorの試合や国際戦を求められるならやりますよというスタンスです」

──ベルトに対して、どういったアプローチができるのか。太田選手にとってはそこが一番なのですね。

「そうですね。チャンピオンになったらギャラも上がるだろうし(笑)」

──プロである以上、そういう話にもなってきますよね。

「もちろんそれだけじゃないですよ。チャンピオンになれば発言権も出てくるし、選択肢も増える。朝倉海くんが防衛戦をせずにUFCに行って、あれは特例だと思いますけど、そういう選択もできるようになってくると思うんで、チャンピオンになったら」

──そういった意味では海選手がバンタム級のベルトを返上する形になって、ベルトを狙うにしても以前とは標的が変わってくると思います。ベルトに挑戦する・王座決定戦に臨む…形に関係なくベルトが欲しいですか。

「はい。そこ(ベルト)は最低条件かなと思います」

──分かりました。これ以上、対戦相手が代わったり、トラブルが起きないことを願っております。

「これ以上カードが変わったら、本当に訳が分からないですよ。今の時点で最初に出る予定だった選手が誰もいないから(笑)。まぁ何とかなるでしょと思ってやってきます」

──頼もしい言葉ありがとうございます。そして出発前のお忙しい時にありがとうございます!

■視聴方法(予定)
6月23日(日)
午前0時45分~ U-NEXT

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MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN46 ヴガール・ケラモフ 朝倉未来 金原正徳 鈴木千裕

お蔵入り厳禁【RIZIN46】鈴木千裕が振り返る、金原正徳戦「倒すために必死だったらミリ単位の隙も逃さない」

【写真】鈴木が対戦相手を仕留められる理由には様々な要因が隠されている(C)RIZIN FF

4月29日(月・祝)、東京都江東区の有明アリーナで開催されたRIZIN46でRIZINフェザー級王者・鈴木千裕が金原正徳を1RKO勝利で下し、王座初防衛に成功した。
Text by Takumi Nakamura

昨年11月にヴガール・ケラモフに勝利して、第5代RIZINフェザー級の座に就いた鈴木。初防衛戦となった金原戦では序盤に金原のテイクダウンをディフェンスし、最後は持ち前の強打で金原をマットに沈めた。細かい技術はもちろん鈴木の“倒しどころ”を逃さない嗅覚や試合の流れを読む力はどうやって磨かれたのか。

──今回はRIZIN46の振り返りを中心に話を聞かせていただければと思います。鈴木選手は試合が終わると、自分の試合を何回も見る方ですか。

「試合が終わったその日に見て、反省点と良い点を見つける感じですね。SNSで(ダイジェスト映像が)勝手に流れてくるじゃないですか。なんか恥ずかしいなみたいで感じで(笑)、そこまで見ないです」

──金原戦に関しては、鈴木選手のイメージしていた通りの展開でしたか。

「やりたいことがバチッと100%ハマりました。頭で考えて、それを形にすることがちゃんとできたという確信を持って終わることができたので、またこれと同じことを試合でやろうと思いました」

──鈴木選手は試合が決まって、どのタイミングで相手と戦うイメージが出来上がるのですか。

「試合が決まって対策を練って10%、15%、20%、50%となって、試合当日に98%ぐらいまで持っていく。それでリング上で向かい合った時に相手の体の仕上がりや体調が分かるので、そこでバチッと100%になる感じです」

──しっかり事前準備をしつつ、最終的に対戦相手と向かい合った時のフィーリングや相手を見た感触も大事にしているのですね。

「はい。例えば相手がヒザにテーピングしていたら『ヒザを故障しているんだ』と思うし、もしヒザ蹴りが得意な選手だったら、戦い方も変わってくると思うんですよ。そういうことも分かりますよね。あとは前日計量と当日で印象が変わることもあるし、そこばかり意識するわけではないですけど(当日見た印象は分析する)一部ではありますよね」

──金原戦で言えば、組んでくるであろう金原選手のコンタクトを切って、どれだけ自分の得意なスタンドを長くするか。そこを一番イメージしていましたか。

「そうですね。相手がやってくることに付き合う必要はないし、そこで自分の得意なカードを切れる状態に持っていくことが総合格闘技における強さなんで。なので、相手の特技を消して、自分の個性を活かす戦い方、それがやっぱり今回バッチリハマったんじゃないですかね。周りが見ていても『鈴木が打撃主体で行けるのか?』というシチュエーションになった時に、僕が打撃で持っていった。逆に金原さんは序盤で寝技に持っていけなかった。だからそこで勝敗がついたのかなと思います」

──鈴木選手を取材させてもらうようになって、試合の流れを読む力というか、ここが勝負どころだというところを逃さない力に長けているなと思いました。それは野生の勘なのか、それとも経験から来るものなのか。ご自身ではどう思っていますか。

「みんなが必死に戦ってないんじゃないですかね。例えばですけど、山で猪を刈ることになって、猪の足を狙って撃ち抜いたら、あとは仕留めるだけじゃないですか。どう考えても勝負をかけた方がいい状態なのに、みんなそこで『あれ…まだ走れるのかな?』『走り出したら、仕留められないかな?』みたいなことを考えちゃうんですよ。顎とボディを殴って効いていると思ったら、相手は反応も鈍っているしテイクダウンにも行きにくい。そういうチャンスが来たと思ったら一気に勝負を懸ける。

僕がやっていることはそれだけだし、本当に必死に戦っている選手はミリ単位の反応や隙も見逃さないと思うんで。結局、そうやって倒すチャンスを逃すのは判定に媚びてるんですよ。倒しに行くのは労力がかかるし、集中もしていないといけない。そこを妥協して『このチャンスを逃しても俺の判定勝ちだな』『ここまで優勢だから、このラウンドを凌げばポイントを取れるな』という甘い考えでいるから倒せないんです。本気で勝負にかけている選手は一分一秒でも早く勝負を終わらせることにこだわっているというか、本気で相手を倒すことに固執する人は一瞬の隙も逃さないはずです」

──昔からその考えで戦っているのですか。

「だって判定に行くより、KOした方がどう考えても楽じゃないですか(笑)。もちろん僕だって判定まで行っちゃうことありますよ。でも極力倒した方がいいと思うし、僕は格闘技の魅力は自分の力で試合を終わらせられることだと思うんですよ。プロ野球はどれだけ点差がついても9回までやりますし、サッカーも90分やる。格闘技は唯一最後までやらなくていい競技なんです」

──確かにプロ野球やサッカーはどれだけ点差がついても最後まで試合をやりますからね。

「それって地獄じゃないですか。格闘技はバンバン!と倒しちゃえば、そこで試合終了なんで。それは行くに決まっていますよね」

──もちろんそれが出来るのは、一つ一つの攻防に対する必死さ・集中力・労力がほかの選手とは桁違いだからだと思います。

「でもそれはフィニッシュできる選手には共通していて、(ヴガール)ケラモフ、クレベル(・コイケ)、(パトリシオ)ピットブル…この3人は全員そうなんです。例えばケラモフと朝倉未来選手がやった試合、普通は序盤のあのタイミングで極められないですよ。でもケラモフはあそこが勝負だと思って必死に極めに行くから一本勝ちできる。クレベルもどれだけ追い込まれていても、最後の最後で1本勝ちするじゃないですか。あれは必死に戦っているからなんですよ。それができない選手というのは、1VS1の戦いに勝つことに固執してない。それだけだと思います。そこを判定に委ねるというのは、1VS1の戦いに勝つ気がないというか。ゲームに勝ちたいみたいな感じなんだと思います」

──確かにKO・一本を狙うことはリスクがあるだけではなく、試合を途中で終わらせられる・相手に反撃する隙を与えないという意味では最良の勝ち方という考えもできます。

「そうです、そうです。もちろんポイントアウトの戦いを美学としてやる人もいますし、判定勝ちが悪いというつもりはないですが、僕はそれをやった(KO・一本勝ちする)方がいいという考えでKOすることに美学を持っています」

──それで言うと金原戦は最初のテイクダウンをディフェンスした、ボディブローを効かせたところが試合の流れを決めたポイントですか。

「そこが起点ですね。あとは金原さんコールが起きた後に、それを千裕コールが掻き消してくれたんですよ。それを聞いてやるしかねえだろうと。それで行きましたね。あのまま終わらせられるつもりで勝負を懸けましたし、逆襲されるのは怖いですけど、それが怖かったら格闘技なんてやらない方がいいですよ」

──やはり鈴木選手は試合まで緻密に準備する力と試合になった時に勝負をかける2つのスイッチを両方持っているようですね。

「僕も格闘技キャリアは長いですし、分かるんですよ。行かなきゃいけない時が。その時が妥協しないで行くだけなんで、そういう嗅ぎ分けは得意なのかもしれないですね。あとはチャンスじゃなくてもチャンスに変える力をつけるというか。どう考えてもチャンスじゃない場面でも、それを強引にチャンスに変える力を僕は持っているのかなと思います」

──ケラモフ戦の下からのカカト落としはまさにチャンスじゃない場面をチャンスに変えた瞬間でしたね。あと鈴木選手は解説も話題になっていますが、それを言語化できているし、格闘技において頭の中が整理されているんだろうなと思います。

「ありがとうございます(笑)」

──さて鈴木選手の次戦は6.23KNOCKOUT代々木大会での五味隆典戦です。この試合はKNOCKOUT特別ルール=パンチのみのルールとなります。鈴木選手にとっても初めてのルールだと思いますが、普段との違いはありますか。

「いや、ないですね。戦いの1つに過ぎないです。相手が誰であろうとリングの上では格上格下はないんで。五味さんと金原さんは年齢的には4歳しか違わないし、その金原さんがRIZINで勝ち続けてタイトルマッチまで来たわけじゃないですか。金原選手はテクニックがあるから勝ち続けることが出来て、五味さんには誰が相手でも試合を終わらせる1発がある。しかも当日は体重差も10kgくらいあると思うので、僕は五味さんのことを1ミリも舐めてないし、警戒しています」

──記者会見で五味さんの言葉を隣で聞いていて感じるものはありましたか。

「五味さんらしいなと思って安心しましたし、五味さんの覚悟も決まっているなと思ったので、あとはリングの上で答えが出ると思います」

――五味選手がそこまで覚悟を作ってきてくれたことは、嬉しい部分もありますか。

「そうですね。嬉しいです。先生と戦えるっていうのは一番の恩返しなんで、その時が来たなって思うと嬉しいです」

──先生や師を超えるというのは鈴木選手の中で一つのモチベーションですか。

「そうです、そうです。師を超えるっていうのは、なかなかできない、みんなができることではないんで。あとは“稲妻ボーイ”の名前をもらっておきながら、ずっと『五味さんの…』と言われることが嫌なんですよ。そこに俺がいないじゃないかよって。俺が五味さんの“火の玉ボーイ”を受け継いだんでしょって。僕は五味さんを超えた“稲妻ボーイ”にならないとずっと二番手のまま。格闘技は常に一番じゃなきゃいけないし『五味さんを超えた“天下無双の稲妻ボーイ”鈴木千裕だね』と言われたい。でも、五味さんが引退してしまったら、それが叶わなくなる。幻想で終わる五味さんの継承者じゃなくて、五味さんを超えた継承者にならないと。それができないと時代を引っ張っていけないし、それはカッコよくないと思うんですよね」

──思い出は美化されるもので、思い出に勝つことは難しいですからね。

「はい。五味さんが現役じゃなかったら戦うことはできないし、きっとみんな『五味さんには勝てなかった』って言うと思うんですよ。だから五味さんが現役でいるうちにやっておきたいと思いました」

──そういう想いがあるからこそ、鈴木選手にとっては大事な試合で、エキシビションマッチではなく勝ち負けがつく試合としてやりたいという想いも伝わりました。6月の試合も楽しみにしています。

「押忍!」

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始まるぞ


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はじまったぞ


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378: 実況厳禁@名無しの格闘家 2024/05/01(水) 11:07:11.84 ID:MaECMGaO0
おぎちゃんが誠俺を殴れるのかって言った時
誠がめっちゃ殴りたそうな顔してたな


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【RIZIN46】鈴木千裕が金原正徳に1RTKO勝利!王座防衛で「みんなで痺れる人生を生きようぜ!」

【写真】絶対的な自信を感じさせる戦いぶりで鈴木が王座防衛を果たした(C)RIZIN FF

<RIZINフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]鈴木千裕(日本)
Def.1R4分20秒 by TKO
[挑戦者]金原正徳(日本)

ジャブとインローで前に出る鈴木。金原は左フックを返す。鈴木が右ストレートに合わせて金原が組みつくが鈴木はテイクダウンを許さず。金原をロープに押し込む。ここで鈴木のヒザ蹴りがローブローとなり、金原にインターバルが与えられる。再開後、鈴木がジャブとインロー、金原は右ストレートのフェイントを見せる。

鈴木は前手のフェイントからインロー、金原が左フックを返す。鈴木は右カーフ、金原が間合いに入ろうとするところに右ストレートを狙う。鈴木はジャブと右カーフとインロー。金原は左ジャブとフック、右ストレートを伸ばす。鈴木も左フックとインロー、右ボディストレート、金原の前足にローを集める。金原が左フックを打てば、鈴木が左ボディを返す。

そして鈴木が右ストレートから前に出てヒザ蹴り。左フックを皮切りに一気にパンチで前に出て右フックからヒザ蹴り、再び左アッパー。これで金原が崩れ落ち、鈴木が一気にパウンドを連打。金原がガード一辺倒になったところでレフェリーが試合を止めた。

試合後、鈴木は「これで絶対王者に近づけたと思います。日本のRIZINを俺が世界のRIZINに変えます!俺についてこい!」と絶叫。マイクの最後を「みんなで痺れる人生を生きようぜ!」で締めた。


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