カテゴリー
45 BELLATOR DEEP MMA MMAPLANET o ONE ONE FN06 PFL RIZIN RIZIN LANDMARK06 RIZIN46 Road to UFC Special UFC   キック キム・スーチョル フアン・アルチュレタ ライカ 井上直樹 佐藤将光 太田忍 朝倉海 海外 金太郎

【Special】J-MMA2023─2024、佐藤将光「ミュージックステーションにはアイドルも出れば、B’zも出る」

【写真】耳を傾ける者が、イメージで映像化できるようなクリアな言葉を佐藤将光はいつも発している(C)TAKUMI NAKAMURA

2023年が終わり、新たな1年が始まるなかMMAPLANETでは2023年に気になった選手をピックアップ──過ぎ去った1年を振り返り、始まったばかりの1年について話してもらった。
Text by Takumi Nakamura

J-MMA2023-2024、第十五弾はONEでの戦いにピリオドを打ち、新天地としてRIZINの舞台を選んだ佐藤将光に話を訊いた。

2023年は1月のONE Fight Night 6でキム・ジェウォンに勝利して、幸先のいいスタートを切った佐藤だったが、その後ONEから試合オファーが届くことはなく、自らリリースを希望してONEを離れる道を選んだ。様々な可能性があるなか、佐藤はRIZINに参戦して太田忍に勝利。2024年も継続してRIZINで戦うことを決め、3月のRIZIN神戸大会で井上直樹との一戦が発表されている。「RIZINは自分とは別世界の出来事」と思っていた佐藤がなぜRIZINでの戦いを選んだのか。

■2023年佐藤将光戦績

1月14日 ONE FN06
○3-0 キム・ジェウォン(韓国)

10月1日 RIZIN LANDMARK06
○2-1 太田忍(日本)


――佐藤選手にとって2023年はONEを離れ、RIZINに参戦するという大きな変化がある一年だったと思います。

「まさに戦う舞台が変わった一年でしたね。ONEを離れてから急きょRIZINに参戦して。2試合しかやっていないんですけど、どちらも勝つことが出来て。特に大事なRIZINのデビュー戦でしっかり勝って、期待外れにならなかったのはよかったなと思います」

――2023年の年始にはこんな1年になることは予想していなかったと思いますし、ONEを離れる選択は大きな決断だったと思います。

「僕はずっとONEで戦うつもりでしたからね。実際に1月の試合にも勝っていたので、次も試合があると思っていたら、なかなかオファーがなくて。ONE全体の流れとしてキックとムエタイが増えて、MMAの試合が少なくなる中で、そこで試合の枠をもらう評価はされていなかったんだなと思います。最終的にはしばらく試合はないということだったので、こちらからリリースをお願いして契約に区切りをつける形になりました」

――ONEを離れてRIZINで戦うことを選んだわけですが、契約がフリーになった時点で他のイベントも候補には上がっていたのですか。

「ONEからフリーになった時は、次もまた海外のイベントに出るにしても、国内で一試合やってからにしようと思っていたんです。それで色んな国内団体も考えていたなかで、大会直前でしたけどRIZINからオファーがきて、そういう出方も面白いなと思ってRIZIN参戦を決めました」

――そのRIZINデビュー戦では太田忍選手に判定勝利。試合後のインタビューではRIZINへの継続参戦とPFLを含む海外イベントへの参戦を示唆していました。最終的にRIZINへの継続参戦を選んだのはなぜですか。

「PFLはBellatorの買収もあって、バンタム級が今後どうなるかは分からない、と。Road to UFCは仮に開催されても自分が出られる保証がない。そういう状況で定期的に試合が組まれる可能性があって、ちゃんと団体側とコミュニケーションをとれるのがRIZINでした。しかも井上直樹選手という最高の相手を用意してくれたので、またRIZINで試合をしようと思いました。

あとは試合後にも話したことですが、実際に10月に試合をしてみてRIZINというイベントの魅力や良さを感じたんです。僕は実力派と言われるカードといわゆる数字を持っている選手のカードが一緒に行われることに抵抗がない。例えばミュージックステーションにはアイドルも出れば、B’zも出るわけじゃないですか。そうやってより多くの人に番組を見てもらうために出演アーティスト決めるわけだから、僕はそういうマッチメイクに否定的な意見はないです」

――僕も一記者としてRIZINを取材するようになり、ちゃんとMMAの試合を見る・楽しんでいるファンも多いことに驚きました。

「RIZINをちゃんと見ている“RIZINファン”がいますよね。その層でUFCまで追っている人もいるだろうけど、RIZINというイベントを好きなお客さんがいる。試合の前後でSNSのフォロワー数が激増して、反響の大きさも今までと違いました」

――実力派の選手と数字を持っている選手、どちらも受け入れられていますよね。

「どちらか一方ではイベントが成り立たないわけで、プロモーター目線で考えたらそういうイベント構成にするのは間違いじゃないと思いますね」

――まさに先ほどのRIZIN=Mステ理論ですね。

「ロックシンガーとアイドルのファンが共存することは難しいけど、アイドルファンがロックシンガーの曲を聞く機会にはなるわけじゃないですか。それきっかけでロックシンガーに興味を持ってくれる人も一部はいるだろうから、それでもいいと思います」

――そして2024年最初の試合が3月23日のRIZIN46神戸大会、対戦相手は井上直樹選手に決まりました。先ほど井上選手=最高の相手という言葉もありました。なぜそう思ったのでしょうか。

「彼はDEEPでデビューして、それからUFC→RIZINというキャリアだったので、僕とは全く接点がなかったんですよね。というよりも僕はONEでキャリアを終えるつもりだったから、井上選手に限らずRIZINに出る選手とは絡むことがないと思っていたんです。だから2021年にRIZINでバンタム級JAPANグランプリが行われていた時も自分とは別世界の出来事というか。その選手たちと交わる時が来るのかと思うと不思議ですよね。井上選手自体は小さい頃から空手をやっていて、10代でプロデビューして、UFCと契約して…というまさに格闘エリートですよね」

――対戦相手としての印象はいかがでしょうか。

「穴がないですね。もともとストライカーのイメージがありましたけど、試合映像を見るとRNCでフィニッシュしていることが多くて、バックを取ってからが上手いですよね。実は5年以上前に同じ柔術の大会に出ていたことがあって、彼が青帯で僕が紫帯だったのかな。『あっ、井上選手だ』と思って見ていたら、やっぱり明らかに動きが違いましたね」

――フィニッシュ力に打撃を上乗せしているタイプですね。

「ジャブもうっとおしいし、リーチも長い。ずっと映像を見て穴を探しているんですけど………穴がないんだよなぁ(苦笑)。これを攻略するのは難しいぞと思っています。それでも攻略法を見つけなきゃいけないんですけど、簡単な攻略方法はないです」

――それこそ井上選手は2021年のバンタム級GPではベスト4になっていますが、その通りの位置にいる選手だと思いますか。

「僕はRIZINのバンタム級で朝倉海、フアン・アルチュレタ、井上直樹、キム・スーチョル。この4人が抜けていると思っているから、本当に強敵ですよね。ただ今回は試合が決まって3カ月あるから、攻略とか対策を考える時間はあるんですよ。だから今まで以上にじっくり考えます」

――準備期間があるのは井上選手も一緒なので、今回は戦略・作戦も含めた総力戦になりそうですね。

「はい。ただ井上選手は比較的相手に付き合いますよね。アルチュレタ相手に組みでいったり、金太郎選手と打撃でやり合ったり。僕は相手の弱いところを探して、そこを突いていく戦い方なんですけど、井上選手は相手の強いところで勝負して勝とうとしますよね。それで勝てちゃうからすごいんですけど」

――発想そのものがエリート的なのかもしれないですね。

「僕からすると不思議なので、試合が終わったらどういうメンタリティでやっているのか聞いてみたいです(笑)」

――大晦日は朝倉海選手がアルチュレタに勝ってRIZINバンタム級の新王者になりました。今後は朝倉選手のベルトを狙うことになると思いますが、あの試合を見た感想はいかがですか。

「強かったですよね。朝倉海はこの階級で攻撃力が頭二つ抜けていると思います。ただ朝倉海とアルチュレタに関しては、これからどういう路線で試合をしていくかにもよると思うので、今は井上選手に勝つことに集中したいです。井上選手に勝たないことには始まらないので。僕は今回も…というか今回勝って初めて実力を認められると思うし、井上選手に勝てば一気に(上に)出られるし、負けたらそこまでの選手だと見られると思うので」

――RIZINでも一戦一戦意味のある試合を戦っていきたいですか。

「そうですね。そういうヒリヒリしたものを求めて試合をしているし、年を取るにつれて勝ち負けにこだわることよりも、自分がやってきたことや実力を試合で出し切りたいって気持ちが強くなっていますね。昔は勝てばなんでもよかったというか。もちろん実力を出し切って勝てれば嬉しいですが、ラッキーパンチで秒殺しても、それはそれで良かったんですよ。でも今は自分がやってきたことをすべてリングに置いていきたい。その方が勝ち負けよりも大事になってきていますね。それをたくさんの人たちに見てもらえるのはうれしいことです。次の試合でも自分を出し切ったうえで勝ちにいきます」


The post 【Special】J-MMA2023─2024、佐藤将光「ミュージックステーションにはアイドルも出れば、B’zも出る」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
DEEP DEEP JEWELS DEEP JEWELS43 DEEP Tokyo Impact DEEP Tokyo Impact2023#06 MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK06 SAINT Te-a YouTube キック チャンネル ハリーKIMURA 万智 松田亜莉紗 水野竜也

【DEEP JEWELS43 & DEEP Tokyo Impact2023#06】計量よもやま話。万智は林檎好き、SAINTは元海軍。

【写真】ガッチリ、バキバキ。ウェルター級の鈴木琢仁に注目(C)MMAPLANET

明日23日(木・祝)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS43とDEEP TOKYO IMPACTO2023#06の計量が、22日(水)に新宿区ホテルローズガーデンのオークルームで行われた。

午後12時45分からJEWELS、午後2時からTokyo Impactの計量が実施されたが、JEWELSのメインで暫定ストロー級王座を松田亜莉紗と争う万智は、10月1日のRIZIN LANDMARK06 の渡辺彩華戦から50日のインターバルで今回の試合を迎えた。そして「前の試合から8キロ体重が増えたので、8キロ落としたんです」──とどちらもストロー級マッチなので、当然のことをドヤ顔で話していた。


万智は計量直後に水分補給、何を飲んでいるのを尋ねると「なんか粉が入っています」とのこと……。実際はアミノ酸とグルタミンというごくごく普通のリカバリー飲料だった。さらに経口補水液を2本用意していたが、これがどちらもアップル味、ほかにもアップルジュースとオレンジ&マンゴーのジュースを用意していた。

その万智は明日はJR在来線で東京までやってきて、帰りはグリーン車で栃木に戻るそうだ。

栗山葵と注目のプロ2戦目を迎える斎藤百瑚は、EXFIGHTには女子選手が他に在籍しておらず、減量も厳しくないことで1人で計量会場に。ただし、当日の朝にも大将・髙谷裕之から体重の確認があり、試合に向けても指導を受けていたという。時代は変わった(笑)。

またこの日は計量後のマイクで関西弁率が高く、11試合=22人の出場選手中──松田、須田萌里、栗山、こゆき、チャッキールビの5選手が関西のジムから遠征組だ。

TOKYO IMPACT大会の計量では、メガトン級が3試合組まれるなかで体の大きさが目立っていたのが、鈴木琢仁だ。1年9カ月振りの実戦復帰で嶋田伊吹と戦う鈴木は、ライト級からウェルター級に階級を変更している。3年11カ月前にはフェザー級で戦っていたことを思うと、体のフレームから違っている。普段は80キロ代あるところ、減量をして創ってきた鈴木は健康体そのもの。ウェルター級でのパフォーマンスに注目だ。

メガトン級にはSAINTとトニーというY&Kスポーツアカデミーの元米軍関係コンビが揃い踏み。SAINTがネイビー、トーマスがマリーン。つまりSAINTは海軍で、トーマスは海兵隊に所属していたことになる。海軍は文字通り海の軍隊で、海兵隊は海外で任務につく専門部隊で陸・海・空の装備を持っている。

そしてMMAファイターは計量時にカルバン・クラインを着用する問題だが、確認できた限りでJEWELSでは栗山、熊谷麻理奈、山崎桃子の3選手。Tokyo Impactは島村優花と島次亜瑠というアマ選手の2名だけだった。MMAPLANETでは引き続き、この問題に向き合っていきたい。

■DEEP TOKYO IMPACTO2023#06視聴方法(予定)
11月23日(木・祝)
午後12時15分~DEEP チャンネル-YouTube、サムライTV、U-NEXT

■DEEP TOKYO IMPACTO2023#06計量結果

<メガトン級/5分3R>
水野竜也:103.15キロ
SAINT:111.2キロ

<メガトン級/5分3R>
赤沢幸典:107.2キロ
ハリーKIMURA:──キロ

<メガトン級/5分2R>
稲田将:104.3キロ
トーマス:107.2キロ

<ウェルター級/5分2R>
嶋田伊吹:77.55キロ
鈴木琢仁:77.4キロ

<フライ級/5分2R>
島袋チカラ:56.75キロ
京之介:57.15キロ

<フライ級/5分2R>
安永吏成:57.05キロ
坂本岳:57.05キロ

<ウェルター級/5分2R>
前田啓伍:77.15キロ
山田聖真:77.15キロ

<バンタム級/5分2R>
岩見凌:61.45キロ
生田大雅:61.35キロ

<ライト級/5分2R>
BAGGIO:──キロ
宮本誠一:70.2キロ

<メガトン級/5分2R>
JUICY:74.05キロ
Peach:──キロ

<アマチュア・キック52キロ契約/1分30秒2R>
横江明日香:51.6キロ
島村優花:51.5キロ

<アマチュア・フェザー級/3分2R>
森下智紀:65,4キロ
島次亜瑠:65.55キロ


■DEEP JEWELS43視聴方法(予定)
11月23日(木・祝)
午後12時15分~DEEP チャンネル-YouTube、サムライTV、U-NEXT

■DEEP JEWELS43計量結果

<DEEP JEWELS暫定ストロー級王座決定戦/5分3R>
松田亜莉紗:51.95キロ
万智:52.1キロ

<49キロ以下契約/5分3R>
須田萌里:48.55キロ
彩綺:48.7キロ

<フライ級/5分2R>
栗山葵:56.5キロ
斎藤百瑚:56.95キロ

<バンタム級/5分2R>
熊谷麻理奈:61.2キロ
Te-a:60.1キロ

<ミクロ級/5分2R>
山崎桃子:44.05キロ
こゆき:43.95キロ

<フライ級/5分2R>
奥富夕夏:56.75キロ
谷山瞳:56.15キロ

<バンタム級/5分2R>
MANA:60.8キロ
細谷ちーこ:61.3キロ

<無差別級/5分2R>
超弁慶:──キロ
ぽちゃん Z:73.8キロ

<グラップリング54キロ契約/5分1R>
横瀬優愛:53.5キロ
あきぴ:52.2キロ

<ミクロ級/5分2R>
ジャカ季美香:44.2キロ
チャッキールビ:44.35キロ

<アマ・50キロ契約/3分2R>
サラ:49.45キロ
横瀬美愛:49.65キロ

The post 【DEEP JEWELS43 & DEEP Tokyo Impact2023#06】計量よもやま話。万智は林檎好き、SAINTは元海軍。 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
AB ARAMI DEEP DEEP JEWELS DEEP JEWELS43 HIME MMA MMAPLANET NØRI o RIZIN RIZIN LANDMARK06 Te-a YouTube   キム・ユジョン チャンネル ライカ 万智 修斗 山崎桃子 手塚裕之 斎藤 斎藤百瑚 松田亜莉紗 栗山葵 渡辺彩華 須田萌里

【RIZIN LANDMAR07&DEEP JEWELS43】渡辺戦振り返り「ツンデレ」&松田戦展望「上を取る」──万智

【写真】4連勝のドヤ顔(C)MMAPLANET

10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06で、万智が因縁の渡辺彩華戦でスプリット判定勝ちを収めた。
Text by Manabu Takashima

そして間髪入れずに23日(木・祝)に港区ニューピアホールで開かれるDEEP JEWELS43で松田亜莉紗とDEEP JEWELS暫定ストロー級王座決定戦で戦うことが発表された。

自ら喧嘩を売った形で始まった渡辺とキャリア4戦目とは思えない攻防を繰り広げて勝利した万智は、あの試合で自信と得ると同時に課題を見出していた。そして、このタフな試合を経験したことで、松田戦とベルト奪取への自信を深めていた(※取材は10月21日に行われた)。


――改めてですが、渡辺選手との試合に勝って手に出来たモノは何でしょうか。

「自信です。あの試合は自信になりましたね。3Rをフルで戦い切れたこととストライカーを相手に組みに行けたことです。組めずに殴られ続けることも、考えていたので……。何気に自分も打撃もちょっと当たって」

──初めてのRIZIN。大会場で固くなることは?

「緊張しなくて、めっちゃ楽しかったです。絶対に勝たないといけない試合だったのに、なぜか楽しもうっていう気持ちになって。RIZINは自分の憧れていた場所だから、ここで絶対に勝たないといけないと思っていて」

──DEEP✖修斗だからではなくて?

「そういうのも一応ありますけど、RIZINという場だし。煽られていたのもあって」

──いやいやいや、それは……。

「自分が言ったから、煽られたんですけどね(笑)。でも今度からはちゃんと考えて喋ろうと思います。適当に喋っているから、そんなに深く考えていないことも凄く真剣に捉えられてしまって」

──適当に(笑)。

「アハハハハ。ちゃんと考えて、話そうと思います」

──では試合内容に関して質問しますので、しっかりと考えて返答してください(笑)。

「ハイ(笑)」

──組むところまでいっても、クリーンテイクダウンはなかなかできなかった。焦りはなかったですか。

(C)RIZIN FF

「全然、心は折れなかったです。

触れたことで安心できました。打撃も当たるし、触ることができる。

(C)RIZIN FF

つまり、距離は合っているんだと思えたので。

3Rは結構、体力的にはきつかったんですが……で、質問なんでしたっけ(笑)」

──テイクダウンできなくて、焦りはなかったかと……(苦笑)。

「あっ、ハイッ!! そこはもう普段から男の選手と練習をしていて、切られても組みつき続けるというのをやっているので。そこでキツイとか、焦ることはなかったです」

──ライス・ビースト手塚裕之選手と組み合ってきたぞ、と。

「ハイ。それに那須塩原のクロウフォレストでアマ修斗で戦っている男子選手とMMAのスパーリングをしているのも本当に今回の試合に役立ちました」

──自分も練習を見せてもらったのですが、10月15日の全日本アマ修斗で、菊池元選手はウェルター級、そして小磯圭佑選手はフライ級でプロライセンス取得推薦枠獲得者となっています。彼らも万智選手にテイクダウンを奪われてたまるかというスパーを繰り広げていました。

「あの前蹴りとか、マジで入れなくて……。半泣きになって練習していました。自分はあの子たちよりも打撃ができないから。それに男の子だし、上手いしパワーもついてきて。こっちは女なのに倒されてたまるかって、ガチでやってくるんですよっ!! 毎回、『はぁ、やりたくねぇ』って思いながらやっていて。

ホントにクロウフォレストであの子たちと練習するのがマジで嫌いで、行くのもめっちゃ嫌なんですけど。でも、本当に頑張らないといけないところで、あの前蹴り、ジャブ、ミドルに対して自分ができるのは組むことだけで。やられても、組みつく。クロウフォレストでやってきたことが、凄く今回の試合で役立ちました」

──そこは大きいですね。それでも大接戦でしたが、3Rを戦い終えて判定勝ちできるという自信は?

「何も考えていなかったです。取りあえず終わった、やり切ったと。でも判定でアッチに入った時に『あぁ』って思って。でも、自分に2つ入ったから(笑)」

──改めてどのような自信がつき、またどのような課題が残ったと思っていますか。

(C)RIZIN FF

「3Rで動きが急激に落ちたことは、反省点です。

それで打撃も当てられるようになって。疲れて、距離設定が鈍くなりました。1、2Rは相手が距離を掴めていなくて、組むことができていたいけど、3Rにそれができなかったのは疲れて、集中力が切れてきたからで」

──その疲れは、なぜ出たのでしょうか。

「1Rと2Rに頑張ったからです」

──2Rは中盤にテイクダウンからバック奪取。終盤も踏みつけ、サイド奪取と猛攻を仕掛けました。その反動もあったかと。ただし、アレがあって判定を取れたという見方もできますし。

(C)RIZIN FF

「そうなんです。アレは大きかったかなって。

顔を踏みつけにいったのは、印象良かったと思います」

──もう字面だけみると、もの凄く怖い印象を与えていると思います(笑)。

「アハハハハ。でも、大きな勝利です。本当に自信につながりました。打撃も当たりましたし。そこは自信というか、不安なところから抜け出せました。試合前は藤野(恵実)さん、黒部(三奈)さん、ライカさん、富松(恵美)さん……皆にやられ過ぎて打撃が嫌だという意識がついてしまっていたんです。

藤野さんには相手にならないぐらい、やられて。もともと苦手意識はパク(シウ)ちゃんとの練習で植え付けられちゃって。それで、もう恐怖症のまま練習で殴られて……。でも、試合で自分の打撃が当たったことで、そこから抜け出すことができました。打撃恐怖スランプ脱出です。それに……何だかんだと言って相手も戦績は変わらないけど、チャンピオンだし。一応、階級が下だったので負けるわけにいかなくて。結構、プレッシャーがあったんですよ」

──自分で蒔いた種かと(笑)。メディアって自分がいうのもなんですが、試合が注目されるなと思えば、そこを強調するものなので。

(C)RIZIN FF

「そうですね……。

あっちも乗って来たし……。でも、戦って分かりあえたかなって思います。渡辺選手はツンデレだから、そういう風には口にしないと思いますけど。私より6歳上なんで、お姉さんって感じを出そうとうするんですよ。まぁツンデレですね。私は戦っていて、分かりました(笑)。

あと試合後のインタビューで『もう一度戦いたい』って言ったんですけど、余り戦いたくないです……。こんなこと言うと、また怒られちゃいますね(爆)。やりたくない、勝ち逃げしたいです。アッハハハハハ」

──あのう……これ記事になると私が言わせていると思われるかもしれないですが、全く誘導していないですからね。そこは強調させていただきます(笑)。

「アハハハハ。でも、渡辺選手とだからできた試合だと思います。大会のベストバウトだと言ってくれる人も多くて。本当に渡辺選手としか、あんな感じの3Rの間ゴチャゴチャになる試合はできなかったと思っているので、そこは感謝です。ありがとうございます」

──現状、キャリア4戦目でも万智選手のテイクダウンを止めることができる選手が、国内にはどれだけ残っているのかと。

「でも、そんな風に褒められる試合じゃないと思っています。あそこで一本勝ちしないと、トップとは差がある。そう感じました。キャリアの少ない者同士だから、良い試合になっただけで。(伊澤)星花ちゃんやパクちゃんとは差があります」

──トップに向けて、試合の1週間後には11月23日に松田亜莉紗選手とDEEP JEWELS暫定ストロー級王座決定戦が組まれるという発表がありました。

「12月かと思っていましたけど、11月だからビックリしました。でも万智の目標は成人式までにベルトを取ることだったので。これが一番大切です。RIZINも一番だったけど、とにかくコレ。コレが私の本命です。コレが万智の今年の大一番です。会場の大きさなんて関係ないです。この試合を組んでもらえて、受けてくれた松田さんにも『ありがとうございます』です」

──松田選手とアマチュアで戦った時は54キロ契約でした。アマチュアで負けた事実を踏まえて、今の松田選手の印象は?

「凄くMMAができる──ジムで男の人とちゃんとしたMMAをやっている選手だと思います。基礎、基本、際の部分ができているMMAの選手です。それと正反対で、アマチュアの時の私は柔道しかできなかった。MMAで柔道をやっていて。それにバスターをやったり、グラウンドで殴るような反則までして。バックを取られるとか、松田さんは上手なMMAをやっていて、私は負けました」

──男子と比べると、今でも日本の女子MMAはベースとなる格闘技の強さがMMAの強さに比例していることが多いと思います。対して松田選手は、野球というアスリートとしての基礎があっても格闘技は真っ新だったことが強さに通じているかと。

「逆に私は柔道を悪い方に使って。あの試合で、首投げは止めました。首投げを卒業して、首を巻かない、必ずワキを差し、小手を巻くということをやっています。MMAって全然違うと。そこは梅田さんに教え込んでもらいました。壁しかやらないし、首を巻くことは絶対的にダメだと注意されて。

アマで松田さんと戦った時は梅田さんに習い始めたばかりで、そこが分かっていなかったです。柔道家が野球選手に負けないって正直、思っていたし。でも松田さんはちゃんとMMAをやってきたから」

──次の試合のルールが、あの時と同じであれば今の万智選手は圧倒的に強いと思います。ただし、松田選手がプロのケージで見せてきたのは、強烈なパウンドです。組みと合体したMMA打撃の威力は、すでに女子MMAの国内トップにあるかと。

「パウンドが凄いですね。メチャクチャ凄いです。ただプロデビュー戦の長野(美香)選手以外の対戦相手はそれほど強くない人とやっている……かと。だからこそ、渡辺選手との試合が役立ちました」

──なぜ、過去形に……。

「いや、役に立ちます(笑)。私は初戦でARAMIさん、2戦目でHIME選手、3戦目は韓国人選手(キム・ユジョン)。そして4戦目が渡辺選手。強い相手としかやっていないです」

──すっごくドヤ顔ですね(笑)。

「マジで過酷な人としか、当てられていません!! 渡辺選手との試合で、自分が上回れなかったのは柔道の技なんです。柔道の人に柔道の技を仕掛けて、効果がなかった。次の試合はもっとテイクダウンが取れるし、松田さんがやりたいことはできないです。

自分が下にならなければ、パウンドはない。壁で低く入っても、私はそのまま上に上げていくので。そこでも組みのパンチは打てないと思います」

──この試合で思う様な結果が出た場合、その先に何か見据えていますか。

「試合に関して言えば、この試合のことしか考えていないです。本当にベルトが欲しいので。ただ、この試合が終わればフィジカルを改善していきたいと思っています。階級を下げることも考えましたが、それだと世界に階級がない。いずれ、外国人と戦っていくための体創りはしようと考えています。筋肉がマジでないので、水抜きも下手くそで。そういう部分も改善していきたいんです」

──では最後に松田選手とのタイトル戦に向けて、意気込みの方をお願いします。

「今回は私がパウンドを打つ試合です」

■視聴方法(予定)
11月23日(木・祝)
午後12時15分~DEEP チャンネル-YouTube、サムライTV、U-NEXT

■DEEP JEWELS43対戦カード

<DEEP JEWELS暫定ストロー級王座決定戦/5分3R>
松田亜莉紗(日本)
万智(日本)

<49キロ以下契約/5分3R>
須田萌里(日本)
彩綺(日本)

<フライ級/5分2R>
栗山葵(日本)
斎藤百瑚(日本)

<バンタム級/5分2R>
熊谷麻理奈(日本)
Te-a(日本)

<ミクロ級/5分2R>
NØRI(日本)
斎藤百瑚(日本)

<ミクロ級/5分2R>
山崎桃子(日本)
こゆき(日本)

<フライ級/5分2R>
奥富夕夏(日本)
谷山瞳(日本)

<バンタム級/5分2R>
MANA(日本)
細谷ちーこ(日本)

<無差別級/5分2R>
超弁慶(日本)
ぽちゃん Z(日本)

<グラップリング54キロ契約/5分1R>
横瀬優愛(日本)
あきぴ(日本)

<ミクロ級/5分2R>
ジャカ季美香(日本)
チャッキールビ(日本)

<アマ・50キロ契約/3分2R>
サラ(日本)
横瀬美愛(日本)

<アマ49キロ契約/3分2R>
須田美咲(日本)
槇原未来(日本)

The post 【RIZIN LANDMAR07&DEEP JEWELS43】渡辺戦振り返り「ツンデレ」&松田戦展望「上を取る」──万智 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
AB DEEP DEEP JEWELS DEEP JEWELS43 MMA MMAPLANET NØRI o RIZIN RIZIN LANDMARK06 Te-a YouTube キック チャンネル ボクシング 万智 修斗 山崎桃子 斎藤 斎藤百瑚 杉本恵 松田亜莉紗 栗山葵 渡辺彩華 藤野恵実 須田萌里

【RIZIN LANDMARK06】渡辺彩華が振り返る─万智戦「修斗で2階級制覇し互いにベルトを巻いて再戦」

【写真】右目が大きく腫れていた渡辺(C)MMAPLANET

10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06にて、渡辺彩華が万智に判定負けを喫した。
Text by Shojiro Kameike

渡辺にとってはMMAファイターを志すキッカケとなったRIZIN初出場――しかも地元・愛知県で開催された大会だった。敗れたものの激闘を展開した渡辺が試合を振り返るとともに、今後の目標について語ってくれた(※取材は10月16日に行われた)。


――リモートの画面が繋がった瞬間、驚きました。右目の腫れはどうしたのですか。

「右目の眼窩底骨折で入院、手術して昨日退院しました。このタイミングで取材というのは、MMAPLANETさんは持っていますよ。アハハハ」

――笑いごとでは……そんな時にインタビューを受けていただき、ありがとうございます。

「MMAPLANETさんだから、インタビューを受けることにしたんですよ! ……なんて、あえて言っておきます(笑)。万智戦の前から右目は負傷していました。実は試合前のインタビューの時も、右目の調子は良くなかったんです。さらに試合で3Rに左フックをもらってから二重に見えるようになったので、試合後に病院へ行くと『格闘技は引退しますか?』と聞かれて。私は続けたいから手術することになりました」

――えっ!? 驚くことが多すぎて、こちらも頭の中を整理できていません。

「まず試合の2カ月前から右目の異常は感じていて、治療はしていました。まだ万智戦が確定していなかったけど、なんとなく出場の話は来ていて――私としては『地元の愛知県で開催されるRIZINには絶対に出る』と決めていました。相手が誰でも、階級が違っていても関係ない。だから右目の負傷が悪化しないように、スパーリングや激しい練習はしていませんでした。でも、できる限りのことはやっていたので、別に悔いはないです。万智戦は、そんな状況でも頑張ったなぁっていう感じですね(笑)」

――今はそれだけ笑顔で語ることができるなら良かったです。ただ、RIZIN名古屋大会に対しては「負傷していても絶対に出る」という気持ちが大きかったのですね。

「はい。私が無名の頃から応援してくださっている方、スポンサーの方たちは地元の愛知県に多いんです。そういう方たちにできる最大の恩返しって何かといえば、今の私にとっては愛知県で大きなイベントに出場することであって。修斗のベルトを獲ったのが5月で、RIZIN LAMDMARKが10月――スケジュール上はうまくハマるなと考えていました」

――それだけの想いを持って挑んだ万智戦について振り返っていただきたいと思います。まず契約体重が普段のスーパーアトム級ではなくストロー級でしたが、調整には何か影響がありましたか。

「調整は何も問題なくて、試合内容も――今回が初めてMMAの試合になったと思います」

――今回が初めてのMMA、というのは?

「私って今まで、キックボクシングのような試合をしていたんですよ。とにかく殴って蹴ることが中心で。でも今回はストロー級の試合で、万智選手はストロー級の中でもフィジカルが強いほうじゃないですか。その選手に組まれても、意外に対応できたと思います。万智選手の得意なポジションに持ち込まれても冷静に対処できましたから。去年のプロデビュー戦で藤野恵実戦に負けた時よりは、自分の中では手応えを感じています。この1年で成長できているなって思いました」

――敗れたとはいえ渡辺選手のテイクダウンディフェンスや、寝かされても立ち上がる動きが目立っていました。あれほど組まれてもスルッと抜けて離れる、あるいは立ち上がる。それは今までも練習していたことなのか。あるいは万智戦に向けて練習してきたことだったのでしょうか。

「それほど練習で壁に押し込まれることがないんですよ。練習相手から打撃のプレッシャーを感じることが少ないので。もちろん練習だから、相手がテイクダウンのアクションを起こしても、一度こちらがカットしてしまえば続けないですし。

(C)RIZIN FF

ただ、試合では最初から万智選手が組んでくると思っていました。

でも遠い距離で攻めて来たことは誤算でしたね。もっと打撃を散らしながら距離を詰めてくると考えていたけど、遠い距離から左ミドルハイを出して、そこから組みに来たじゃないですか」

――万智選手の蹴りから試合が動きましたね。

「そうなんです。最初は私のパンチに合わせて組みに来ると思っていました。でも万智選手が左ミドルハイを出して、パンチよりも遠い距離から入ってくる。それは私の蹴りの距離でもあり、自分がパンチだけでなく蹴りを出しても入ってくるわけで――組みのプレッシャーがあって1R、2Rはやりづらかったです。

(C)RIZIN FF

もともと万智選手が私の蹴り足を狙っていることは分かっていました。

そこにプラス、私にとっては相手の打撃にも注意しなければいけなくなっていた。そのために私が不利な体勢で組まれてしまい、ケージに押し込まれてしまったということですね」

(C)RIZIN FF

――ケージ際での差し合いではブレイクが掛かりました。

あの状態はブレイク待ちだったのですか。それとも万智選手の組みから抜け出せずにいたらブレイクが掛かった、という状況だったのでしょうか。

「最初は抜け出したかったです。組んでいても、テイクダウンされるほどではないなと感じて。ただ、思っていたよりも万智選手のクラッチが強くて、『どうしようかな……』と考えていたところでした。何もしなかったら印象は悪くなってしまうので、私のほうからアクションは起こす。でもクラッチを切ることができない。だから最後はブレイク待ちでした。結局、1Rは私のやりたい距離で戦えていなかったです。ずっとやりづらさを感じていて――どうしようかな、とインターバル中に考えていました」

――いかにして状況を打開すべきなのか。インターバル中に結論は出たのですか。

「まず『組まれてはいけない』と、それだけでした。テイクダウンされることはないけど、組まれたらクラッチを切ることができないので。そうなると押し込まれて、自分が思っているような試合はできなくなってしまう。私にとって、こういう試合は初めてだったんですよ。打撃戦ではなく、組みの展開でやりたいことをやらせてもらっていない。『どうしよう?』という状態で2Rに入りました」

――2Rに入ると、万智選手が距離を変えてきたのではないですか。

「近い距離から組んでくるようになりました。とにかく、やりづらい。万智選手が目指すのは、寝かせて極めることだったと思うんです。そのために、まずは組む――ということにフォーカスしていて。そのフォーカスに対してブレがなかったんでしょうね。こちらの打撃には一切付き合わずに、とにかく組むという覚悟が強かったような気がします。万智選手って今までの試合を視ても、自分のやりたいことを押し通してくるタイプじゃないですか。1Rと2Rは、そういう万智選手の強さを感じました」

――2Rに入ると、渡辺選手が組まれても離れることができるようになり、徐々に自分の展開に引き込み始めていたのではないでしょうか。

「1Rよりは、だいぶ動けるようになっていました。相手の組みのプレッシャーとテイクダウンのレベルは1Rで把握したので、自分の中でも『これなら大丈夫』という安心感が生まれていたんですよ。だから少しずつ自分がやりたいことを出せていたのが、2Rの前半です。

(C)RIZIN FF

でも2Rの後半に、自分が蹴った時にタイミングが悪くて、そのままコケてしまいました。

もともと組みに関しては、万智選手が得意なのはバックテイクと、その後の展開ですよね。

(C)RIZIN FF

だから組まれてもバックに回られていなければ――という考えはありました。なのに2Rの最後で、上から踏みつけられるとか印象が悪い状態で終わってしまいましたよね」

――結果、2R終了後のインターバルでは……。

「3Rにフィニッシュするしかない、と思いました。修斗のチャンピオンとして出場して、こんなツマラナイ試合で負けたくないし……と」

――ご自身の中では「ツマラナイ試合」だと感じていたのですか。日本女子MMAの歴史を振り返ってみても、プロキャリア4~5戦目の女子選手が、あれだけのMMAを展開するとは考えていなかったです。それだけ予想をはるかに上回る展開でした。

「えー、そうだったんですね。私としては『とにかく3Rは行くしかない』としか考えていなくて。『極められるもんなら極めてみろよ』と。そんな感じで私の気持ちがハイになった時、ファイターとして万智選手の気持ちと交錯したような気がするんですよ。だから私も『来いよ!』ってアピールしたり(笑)

私自身が『ここで行くしかない!』と思った時に、万智選手もテイクダウンに来ることができる覚悟があって――どんな状況になっても、自分のやりたいことを遂行できる。試合が終わって、万智選手に対して『やっぱり皆に評価される選手なんだな』って思いました」

――2-1で万智選手の勝利、という判定結果については?

「判定については妥当だと思いました。むしろ私につくんだと感じたぐらいで。私としては、1Rと2Rはツマラナイ試合でしたし。それでも評価してくれるジャッジがいて、ちょっと嬉しかったです(笑)」

――結果、ゴキブリ呼ばわりしていた万智選手とは気持ちが通じ合えたわけですね。

(C)RIZIN FF

「通じ合えましたけど、嫌いなのは変わらないです」

――えぇっ!?

「みんな試合前はいろいろ言っていても、試合をしたら『ありがとう』って仲良くなったりするじゃないですか。もちろん万智選手に対して『試合してくれて、ありがとう』という気持ちはあります。でも、嫌いなんですよ。試合前と印象は変わりましたけどね。もっとブッ飛んでいる子かと思っていたら、思っていたよりも人間で」

――思っていたよりも人間だった! 凄い表現ですね(苦笑)。

「ファイターとしての強さは感じました。意外と冷静に戦うタイプで、だから――再戦すれば勝てます。やっぱり私の中でラスボス感があるのは、藤野恵実さんで。藤野さんとの再戦までは無敗でいく、というのが私のシンデレラストーリーでした。でも組まれる相手がどんどん強くなっていくなかで、そう簡単にはいかないものだなって思いました」

――藤野選手にラスボス感があるのは、何となく分かります。

「最後に倒すべき相手は藤野さんというのは、万智選手に負けたあとも変わらないです。今、藤野さんは修斗の女子ストロー級インフィニティ・リーグに参戦しているじゃないですか。同じチームの杉本恵さんも出ていますけど、もし藤野さんが優勝したらストロー級で再戦して、勝って2階級制覇したいです」

――今後の修斗での展開にも注目ですね。では改めて万智戦を振り返って、どのような感想をお持ちですか。

「良い試合だったと言ってもらえるのは嬉しいです。お互いにまだ粗いところがあって、その粗さが噛み合ったというか。万智選手は次、DEEP JEWELSのストロー級タイトルマッチが決まっているじゃないですか(23日、松田亜莉紗との同ストロー級暫定王座決定戦に臨む)。そこでベルトを獲ってもらって、私も修斗で2階級制覇したあと――すぐじゃなくて何年かあとに、お互いにベルトを巻いた状態で再戦したいですね」

――それは夢が膨らむストーリーです。

「試合直後にも万智選手に言ったんですよ。『また試合してね』と言ったら、『もうやりたくないです!』って――いやいや、絶対に勝ち逃げさせませんよ。まぁ、再戦で私が勝ったら勝ち逃げしますけど(笑)。再戦で勝った直後に、マイクを握って『万智、仲良くしようぜ!』と言って、1勝1敗でも3度目の対決はしません」

――……実際は万智選手と仲良くなりたいのではないですか(笑)。

「SNSでは『この2人はMMAで出会っていなかったら、仲良くなっているよな』って書かれていました(笑)。いやいや、お互いにMMAやっていなかったら出会っていません!」

――だからこそ、そんな2人が出会えたことがMMAの奇跡なのだと思います。

「たぶん万智選手は、私のことを好きですよ。試合後にSNSでコメントすると、『IGLOOの練習で待っています!』とか送ってくるから、『行かない。嫌い』と返信して。あと試合でもクラッチがメチャクチャ強かったのは、私を抱きしめたかったからじゃないですか。人生で一番ギューッと抱きしめられましたもん。でもね、その気持ちは一方通行の恋で終わります。私は万智選手を嫌いだから!」

■視聴方法(予定)
11月23日(木・祝)
午後12時15分~DEEP チャンネル-YouTube、サムライTV、U-NEXT

■DEEP JEWELS43対戦カード

<DEEP JEWELS暫定ストロー級王座決定戦/5分3R>
松田亜莉紗(日本)
万智(日本)

<49キロ以下契約/5分3R>
須田萌里(日本)
彩綺(日本)

<フライ級/5分2R>
栗山葵(日本)
斎藤百瑚(日本)

<バンタム級/5分2R>
熊谷麻理奈(日本)
Te-a(日本)

<ミクロ級/5分2R>
NØRI(日本)
斎藤百瑚(日本)

<ミクロ級/5分2R>
山崎桃子(日本)
こゆき(日本)

<フライ級/5分2R>
奥富夕夏(日本)
谷山瞳(日本)

<バンタム級/5分2R>
MANA(日本)
細谷ちーこ(日本)

<無差別級/5分2R>
超弁慶(日本)
ぽちゃん Z(日本)

<グラップリング54キロ契約/5分1R>
横瀬優愛(日本)
あきぴ(日本)

<ミクロ級/5分2R>
ジャカ季美香(日本)
チャッキールビ(日本)

<アマ・50キロ契約/3分2R>
サラ(日本)
横瀬美愛(日本)

<アマ49キロ契約/3分2R>
須田美咲(日本)
槇原未来(日本)

The post 【RIZIN LANDMARK06】渡辺彩華が振り返る─万智戦「修斗で2階級制覇し互いにベルトを巻いて再戦」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
AB ABEMA ANIMAL☆KOJI BELLATOR MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK06 UFC イゴール・タナベ キック パンクラス ブラジリアン柔術 ホベルト・サトシ・ソウザ メルヴィン・マヌーフ ヨエル・ロメロ ライカ 海外 矢地祐介 阿部大治

【RIZIN LANDMARK06】「初めてパウンドで人の顔を殴りました(笑)」イゴール・タナベが前戦を振り返る

【写真】『神は抱えきれない責任を負わせることはない』。そういうモノが身の内に宿る。無神論者としては、素晴らしいなと感じます(C)TAKUMI NAKAMURA

10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06にて、ANIMAL☆KOJIと対戦したイゴール・タナベ。
Text by Takumi Nakamura

フィニッシュは三角絞めでの勝利だったが、スタンドで自信を持って左ミドルを蹴り、パウンドで削るなど、同じ一本勝ちでもプロセスは違って来た。MMAに挑戦する柔術家ではなく、柔術で勝つMMAファイターになるために――。イゴールがMMAへの取り組みについて語った。


――先月RIZIN LANDMARK06でのANIMAL☆KOJI戦では三角絞めによる一本勝ちでしたが、あの試合の一週間後にJBJJFの全日本ブラジリアン柔術選手権2023にも出場されていましたね。

「ちょうどRIZINの一週間後に全日本大会があって、事前にエントリーはしていたんです。それで怪我がなければ出ようと思っていました」

――今はMMAファイターとして試合をしているイゴール選手ですが、柔術の大会には出ていきたいと思っているのですか。

「はい。柔術は子供の頃からやってきたものだし、最後に柔術の試合に出たのもちょうど1年前だったんです。年内に一度は柔術の試合には出たいと思っていたのでタイミングがよかったです」

――優勝したシャビエル・シウバ選手に敗れて3位という結果でしたが、それについてはどう捉えていますか。

「勝てた試合だったと思うので率直に悔しいです。柔術の試合に出たことは後悔していないし、むしろ楽しかったんですけど、結果を出せなかったことは……悔しかったです(苦笑)。これからもMMA中心ではあるんですけど、タイミングが合えば柔術の大会にも継続して出ていきたいですし、いつも言っていることなのですが、僕はまだ黒帯になって柔術の世界大会に出たことがないので、そこには挑戦したいです」

――それではANIMAL戦について聞かせてください。改めて試合を振り返ってみていかがですか。

「7月の阿部大治戦に比べると打撃は良くなったと思います。阿部戦で初めて打ち合って怖さがなくなったというか。今回は打ち合う場面はなかったですが、自分から前に出られたと思います。あと初めてパウンドで人の顔を殴りました(笑)」

――阿部戦はまだ相手の打撃を受けることを警戒しながらの打撃だったと思うのですが、今回は自信を持って打撃を出しているように見えました。

「ちょうど阿部戦から良太郎先生(※初代KNOCK OUT-BLACKウェルター級王者で、多くのファイターの打撃を指導)に打撃を見てもらうようになったんです。阿部戦の時点で打撃は成長していたのですが、まだ打撃をやることに緊張や恐怖心があったんです。でも阿部選手と打撃の攻防をやったことで、打撃に対する怖さがなくなって、練習でも変化を感じるようになりました」

――練習ではスパーリングの回数も増やしているのですか。

「基本的にはミットですね。良太郎先生に週5回ミットを持ってもらって、スパーリングは週2回です」

――MMAグローブで強度の高い打撃のスパーをやるのはラウンド数が限られると思うので、試合で得た経験が大きかったのですね。

「はい。どんぴしゃでクリーンヒットをもらわなかったというのもあるんですけど、殴られることへの恐怖心はなくなりました」

――また試合後にも質問させてもらいましたが、左ミドルがフォームも綺麗で非常によかったと思います。かなり練習では蹴り込んでいたのですか。

「阿部戦は良太郎先生と練習する期間が短かったので、先生からは『今は阿部戦に必要なことだけをやろう』と言われて、パンチとカーフキックに限定して練習していたんです。それで阿部戦が終わった後、練習を再開することになったのですが、阿部選手のスネを蹴って右足を怪我していて。それで『右を蹴れないなら、左ミドルを練習しよう』ということで、ひたすら左ミドルを蹴っていたら、いつの間にか右よりも左の方がいい感じなりました(笑)」

――スパーリングだけでなく反復練習で技を磨く。それは柔術でもキックでも同じですね。ミドルを蹴るようになって、MMAとしてはどこが変わりましたか。

「スタンドの距離感が良くなって、タックルにも入りやすくなりました。良太郎先生が常に僕に言うのが『組み技の選手が打撃の練習を始めると、ストライカーみたいな動きをすることが多い。でもイゴールは打ち合う練習をするんじゃなくて、打撃の駆け引きとか寝技に持っていきやすくするための打撃を練習しよう』ということなんです。ANIMAL戦も試合前にずっと練習していたパターンでテイクダウンを取れました」

――なるほど。良太郎選手とはいい師弟関係が築けているようですね。

「はい。良太郎先生は知識もすごいし、僕に必要なものを教えてくれるし、本当に最高の先生ですね」

――また今回はグラウンドでのパンチも的確に入っていました。スタンドの打撃と同じように練習していたものだと思っていたので「初めてパウンドで人の顔を殴った」というコメントは意外でした。

「ハーフガードになった時にヒザが入ったままになっていて、動きにくかったんですよね。それでどうしようかなと思っていたら目の前に顔があったんで、殴ってみようと思って殴りました。そしたらANIMAL選手がすごく嫌がって動きが止まったので、そのまま殴り続けたという感じですね」

――練習していないにも関わらず非常に安定感のあるパウンドでした。

「あそこで変に動くとバランスを崩すので、足を抜くことよりも殴ることを優先しました。意外とスムーズにパンチを打てたし、効かせることも出来たので新しい武器になりそうな気がします」

――柔術で培ったグラウンドにおけるバランス感覚が活きたようですね。

「間違いなくそれはありますね。ホベルト・サトシ・ソウザが矢地祐介選手とやった時にマウントから殴っていて、みんな『あそこでバランスを崩さずに殴るのはすごい』と言っていたんです。当時僕はMMAをやっていなかったので、あまりピンとこなかったんですけど、今になって思うと柔術で培ったバランスの良さなんだろうなと思います」

――柔術家は自然にグラウンドでバランスをとることが身についているのでしょうね。

「簡単にいうと脱力なんですけど、相手がこちらに動いてきたら、自分はこちらに動く。そうすればバランスをキープできる。そういうことが体に染みついているんだと思います」

――フィニッシュはマウントポジションから腕十字を狙い、最後は三角絞めという流れでした。

「あれはもう『もらった!』という感じですね」

――MMAデビューから4連続一本勝ちとなりましたが、今回はスタンドの打撃やパウンドも出すことが出来て、今までにはない経験が出来たのではないですか。

「本当にそうですね。それまでの3試合とは違う試合内容だったと思います」

――イゴール選手はプロ2戦目でメルヴィン・マヌーフ、3戦目で阿部選手と対戦していて、柔術のバックボーンがあるとは言え、普通はそのキャリアで戦う相手ではないですよね。

「僕も思い返してみて、よくやったなと思います(笑)。マヌーフ戦のオファーが来たときは、正直めちゃくちゃ怖くて、自分が勝つ姿なんて想像できなかったんです。でもここで逃げちゃったら、逃げ癖がつくというか。一度でも“逃げる”壁を超えると、また厳しい試合のオファーが来たときに逃げる選択をしてしまいそうな気がしたんです。僕はキリスト教徒で、キリスト教えの中に『神は抱えきれない責任を負わせることはない』というものがあるんですね。だからマヌーフ戦も乗り越えられると思って試合を受けました」

――結果論ですがものすごい経験値を得ることが出来ましたよね。

「マヌーフは引退してからの復帰戦ということだったんですけど、僕とやる3カ月前にヨエル・ロメロとやっていて、その時点でBellatorのランキングでも8位くらいでしたからね。『全然復帰戦じゃないじゃん!』と思いました(笑)」

――試合のペースとしては普通ですね(笑)。

「それで2戦目でマヌーフとやったから、当分試合で怖いと思うことはないだろうと思ったら、3戦目のオファーが元UFCファイターでパンクラスでもチャンピオンになっている阿部選手と言われて、『えーーー!!』みたいな(笑)。僕はマヌーフより阿部選手の方が怖かったんです。阿部選手はRIZINでもマルコス・ソウザやストラッサー(起一)さんの寝技にも対処して勝ってるし、マヌーフは一か八かの試合ができる選手でしたけど、阿部選手はそういうわけにはいかないですか」

――僕も阿部選手の方がMMAファイターとして完成度が高く、マヌーフ選手よりも手ごわい相手だと思っていました。

「そういう相手に一本勝ちできたというのは自分の中では大きかったですね」

――イゴール選手を見ていると、ただ柔術で勝負するだけでなく、MMAファイターとして強くなってMMAで勝とうとしているところがうかがえます。そこは意識していますか。

「はい。僕は柔術の技術だけでMMAで勝っていけるとは思っていないんですよ。僕も子供の頃からUFCを見ていて、柔術だけでチャンピオンになった選手はいないと思っていて。MMAをやる柔術出身選手として、何々が出来ないからって壁を作りたくないんです。打撃の壁、レスリングの壁、フィジカルの壁……そういうリミットを自分で作りたくないし、MMAをやるならMMAファイターとしてレベルを上げて試合をしたいです」

――次の舞台として狙うはRIZIN大晦日だと思いますが、そこに向けた想いを聞かせてもらえますか。

「やっぱり僕はRIZINで戦っているので、大晦日の大会には出たいですね。あまり海外で試合をしたいとか、どこどこに出たいという気持ちはなくて、今戦っているRIZINでトップに立ちたい。そうすれば自然にチャンスが巡ってくると思っています。組まれた試合を勝ち続けて、色んな扉を開いていきたいです!」

The post 【RIZIN LANDMARK06】「初めてパウンドで人の顔を殴りました(笑)」イゴール・タナベが前戦を振り返る first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK06 北方大地 岩﨑ヒロユキ 海外 荒東“怪獣キラー”英貴 貴賢神

【RIZIN LANDMARK06】荒東“怪獣キラー”英貴が貴賢神戦を振り返る─02─「効かせるより、まとめる」

【写真】逆転KO、激勝で饒舌に(C)SHOJIRO KAMEIKE

10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06にて、貴賢神にTKO勝ちした荒東“怪獣キラー”英貴の試合振り返りインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike

格闘技、特にMMAにおけるレフェリーストップのタイミングについては、しばしば議論が巻き起こる。もちろんレフェリーが試合を止める理由は存在している。では荒東が考えた、「レフェリーに止めてもらう理由をつくる」とは――

<荒東“怪獣キラー”英貴インタビューPart.01はコチラから>


――そう考えるようになり、ご自身の中で出た結論とは……。

「要はパウンドを連打して、効いていてもまだ相手に動ける余裕があったら止めない。ああいう場面では『効かせる』というよりも『パンチをまとめる』ほうが正しいと思いました」

――なるほど! パウンドの連打が細かいほうが、相手は動けなくなる。すると動けない選手を見て、レフェリーが試合をストップすると。

「はい。それが『試合をストップする理由をつくる』ということやと思ったんです。自分の中でレフェリーストップに対する視点が変わったからこそ、貴賢神戦でも1Rの終盤にヒザをついたあと、ガードも固めながら足を動かしてストップされないようにすることができた気がしますね」

――そう聞くと、荒東選手がパンチをまとめてレフェリーストップを呼び込んだシーンが、より理解できます。効かせようと大きなパンチを出すのではなく細かくまとめて、試合をストップする理由をつくったわけですね。

「それはそうなんですけど、実は……」

――えっ、違うのですか。

「いやいや、そういうわけじゃないです。ただ、実は相手がガードを固めたところに右アッパーを突き上げるところまで狙っていました。そうしてキッチリ仕留めようと思っていたら『ここで止めるんかーい!』って(笑)」

――アハハハ。ご本人としてはストップではなく、完全にKOしたかったわけですね。

「でも勝つことができて、結果的にはOKです。1Rの終盤でいえば、ヒザを着いた僕に対して貴賢神選手は立ったまま殴るのではなく、ケージに押し込むかトップから抑え込んでパウンドをまとめていたら、レフェリーが試合を止めていたかもしれないです。僕は最後にまとめることができていた。それは経験の差やったと思いますね。まぁ、正直言うと――時間に助けられたというのもありますけどね。あのままラウンドが終了したので(苦笑)」

――それも勝負のうちです! 2Rに入ると、荒東選手の三日月蹴りが入り始めましたね。

「以前から吉鷹先生には『お前は三日月を蹴れ』と言われていて、それは実践していました。貴賢神戦でも最初から三日月蹴りはトライしていたけど、距離が合わなくて。でも2Rになると――相手は190センチ以上あって、ボディが開いているから三日月蹴りがズボズボ入りましたね。三日月蹴りで揺さぶってからの左ミドルも効いていたと思いますし。でもこれは申し訳ないんですけど……2Rのことは、あまり覚えていないんです。僕も2Rは必死すぎて。とにかくシバき倒すことしか考えていませんでした」

――それだけ焦るか、余裕はなくなっていたのでしょうか。

「焦りというよりは『ここで喧嘩せんかったら、俺は何のために試合しとるんや』と思っていました。あんな展開のまま判定まで行ったら、絶対に勝てないじゃないですか。とにかく自分がやれることを全部やる。まず顔面に当てて効かせる、そのために何をすべきか――と必死でした。三日月蹴りを出したのも、そこまで深くは考えていなくて。ただ、当たっている感覚はあったから『よし、このまま攻める』という気持ちは強くなりましたよね。

あとは、とにかく攻撃に緩急をつけることだけは意識していました。ずっと貴賢神選手は距離を取ろうとしていたので、自分は遠い距離から細かく打つ。そうやって相手に休ませず、距離を詰めていこうとは考えていました」

――ここ最近の荒東選手の試合といえば、ローで崩して右で決めるという展開が多かったと思います。貴賢神戦では、そこにボディ攻撃が加わりました。

「もっともっとボディブローを練習せなアカンな、って思いました。練習でもミット打ちでは『ボディへの攻撃が巧い』と言われていたんです。でもスパーになると、相手は体格が小さいからボディを攻めることが少なくなっていて。とはいえ今回の試合で、苦しい時に攻撃が顔面に集中するのではなく、そのボディ攻撃が出た。『今まで積み上げてきたことは意味があったんやな』と実感しましたね。あとはセコンドの北方大地さんも、試合中に『ボディ! ボディ行け!』と言ってくれていたので、北方さんにも助けてもらいました」

――貴賢神戦で気になったのがもう一つ、2R中盤に荒東選手がテイクダウンを奪ったところです。

「実はグラップリングを教えてもらっているカルペディエム芦屋の岩﨑宏寛さんからは、ずっと『シングルレッグで入ればいいやん。取れるよ』と言われていました。実はクラッチが逆だったんですけどね(苦笑)」

――えぇっ!?

「それでも押して、引いて、押して――で倒すことができていましたよね。あとで試合映像を視て『俺って天才ちゃうかな』と思いました(笑)」

――よほど激闘と勝利が嬉しいのか、少しずつ自慢が増えてきていますね(笑)。

「アハハハ! でもテイクダウンしたのに、自分が殴りに行きすぎて。あと相手は立ってからバテているのは分かっていたので、僕がもう1回テイクダウンに行ったら良かったかもしれないですね。それはメッチャ反省しています」

――ここで反省も!

「あの場面で緩急というか、テイクダウンも混ぜて相手の気を散らすことができていれば、もっとパンチも当たったでしょうし。とにかく今後の課題も見えたし、いろんな意味で最高の試合でした。貴賢神選手も成長していたし、やっぱり良い原石だっていうことも証明できたんじゃないですか」

――結果、MMA無敗ロードを守ることができました。ここまで10戦全勝で、次の目標はありますか。

「やっぱり海外で試合がしたいです。グラチャン代表の岩﨑ヒロユキさんにも、海外で試合をしたいという話をしています。僕もキャリアは10戦ですけど35歳という年齢もあって、そろそろ勝負したいですね」

The post 【RIZIN LANDMARK06】荒東“怪獣キラー”英貴が貴賢神戦を振り返る─02─「効かせるより、まとめる」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
Grachan MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK06 パンクラス 北方大地 瓜田幸造 荒東“怪獣キラー”英貴 貴賢神

【RIZIN LANDMARK06】荒東“怪獣キラー”英貴が貴賢神戦を振り返る─01─「試合をストップする理由とは」

【写真】貴賢神戦直後、怪獣キラーポーズ!?(C)MMAPLANET

10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06にて、荒東“怪獣キラー”英貴が貴賢神にTKO勝ちを収めた。
Text by Shojiro Kameike

GRACHAN王者としてRIZINに参戦した荒東は、貴賢神のパンチに大苦戦する。1R終盤にはストップされてもおかしくない状況に陥りながら、2Rに逆転KO勝ちしたのだった。予想以上の貴賢神の成長とともに、なぜ貴賢神のラッシュでレフェリーは試合を止めず、2Rには荒東がレフェリーストップを呼び込むことができたのか。荒東本人は試合を振り返りながら語る。


――大激闘&大逆転KO勝ちを収めた貴賢神戦を振りかえっていただきたいと思います。

「あの日は盛り上がりましたね! でも素人受けは僕の試合が一番やったと思いますけどね(笑)」

――アハハハ。「素人受け」という言葉が出ましたが、そう考えられる要因としては「打ちつ打たれつ」の展開になったことも大きいでしょう。つまりご自身も打たれているわけです。

「自分が打たれたことは良くないし、やっぱり選手としてはサクッと倒して勝ちたいですよ。『シロウト受け』というのも、あの試合内容に対して周りの人たちが喜んでくれていて――自分から『あの試合、良かったやろ?』とは絶対に言えません。それに試合前のインタビューで言っていたじゃないですか」

――打撃の練習ではディフェンスに注意しているということですね。

「はい。僕が殴られるような話はしていなくて。ディフェンスの技術が云々と言っておいて、結果的にブサイクな試合してもうたなぁと思っています(苦笑)」

――では、序盤に貴賢神選手のパンチをもらってしまった要因は何だったのでしょうか。

「まず貴賢神選手が巧くなっていましたよね。特にジャブが巧くて。これは僕の勝手な印象ですけど、ジャブが巧い人って手ではなく、肩甲骨を動かすじゃないですか。それで貴賢神選手もジャブがしなっていたし、しっかり打ち分けることができていたと思います。『今までの試合では、そんなの出来てなかったやん!』と思いました。今まで何やったんやって(笑)」

――確かに貴賢神選手の成長が目立つ試合でした。

「試合後のインタビューも、みんな主語が『貴賢神選手が――』でね。『もっと僕のことを褒めてよ!』と思いました。アハハハ」

――あれだけ左ジャブが伸びて来ると、荒東選手としては中に入りづらかったですか。

「日本のヘビー級で、あれだけ左の使い方が巧い選手は少ないですよね。でも左ジャブ自体は見えていたし、当たる前提で前に出ました。それより左アッパーを入れてきたんですよね。僕が左ジャブに対してガードすると、空いたところに下から左アッパーを入れてきて……。結果論ですけど、自分も左手でジャブを受けながら、右手でアッパーに対するディフェンスしたほうが良かったなと思いました」

――前回のインタビュー時に、吉鷹弘さんが貴賢神選手について「右のパンチは強いし、伸びて来る」と仰っていました。その右を生かすために、左を鍛えてきたのかもしれません。

「やっぱりジャブはあくまでジャブなので、絶対に最後は右を狙ってくる。その右を食らわずに自分の右を当てるために、吉鷹先生のミットで練習していて。吉鷹先生のミットのおかげで、左をもらいながらも自信を持って前に出ることができました」

――激しい打撃戦の結果、ダメージはいかがでしたか。
「翌日には顔の腫れは引きましたけど、首は痛かったです。自分としては首の力で耐えていたんでしょうね。貴賢神選手は拳が大きいので、パンチの衝撃も大きかったんだと思います」

――試合の作戦としては、相手のパンチに右を被せることと、右ローで崩していくことだったのでしょうか。

「そうです。でも逃げ足が速くて、右を蹴ることができなかったですね。貴賢神選手は正面で構えてくれるのではなく、ずっと距離を取っていたじゃないですか。だから僕は左ミドルから入りました。相手の足を止めて、もっと足に重心を残しておいてくれないと、右ローを蹴っても意味がないので。離れる相手に右ローを打って、自分の足が流れた時に左ジャブを合わされたら最悪ですからね」

――1Rの中盤以降、荒東選手から距離を詰めることができていました。あの時点で手応えはありました。

「いや、そんな余裕はなかったです。試合後の顔を見ても、貴賢神選手はダメージが無さそうだったじゃないですか。僕のほうもパンチの手応えがなくて。貴賢神選手も身長が高いし、後ろ重心だから届いていなかったかもしれない。距離を詰めることができたとはいえ、もっと殴っておきたかったです。もちろん相手からも前に出てきてくれたほうが、接点を作れるのでコチラとしては良かったですけどね。でもそうしないのが相手の巧さというか、僕にとってやりづらかったことは間違いないです」

――あの時点で、何か試合展開を変えたかったのですか。

「ああいう時に変えるのは、オフェンス面ではなくディフェンス面ですね。まず一発目をもらわないようにすること。細かくは言えませんが、今はパンクラス稲垣組の北方大地さんと一緒に、ディフェンスからオフェンスに繋げる新しい形を作っています」

――なるほど。そして今回の試合において最大のポイントとなる、1Rの終盤ですが……。

「あれは効きました。効いたぁ~」

――右ストレートを受けた荒東選手がヒザを着き、ガードは固めつつも貴賢神選手の連打を受けたシーンです。あのシーンは最大のピンチではなかったですか。

「あれは僕が攻め急いで、ガードが下がったところで右ストレートをブチ抜かれてヒザが落ちたんですね。あのパンチは天晴れでした。ただ、僕がヒザを着いたあとの展開は天晴やなかったけど……」

――あの連打を受けているシーンは、レフェリーストップが入るのではとも思いました。

「ガードを固めてパンチを受けながらも、立とうと足を動かしていたんですよ。ああやって足を動かしているのを見たら止めない、と思っています。と同時に、貴賢神選手は『レフェリーに止めてもらう理由をつくる』ということができていませんでした」

――レフェリーに止めてもらう理由……、どういうことでしょうか。

「去年の5月に、グラチャンで瓜田幸造さんに判定勝ちしたじゃないですか。あの時、バックヒジを受けたあとに右フックを入れて、ダウンした瓜田さんにパウンドを連打してもストップしてもらえなかったんですよ。そのあと、瓜田戦を視ていた他のレフェリーの方と話す機会があって。『あれはストップにならないんですか?』と聞いたら、『あのパウンド連打は、試合をストップする理由として弱いかもしれない』と言われました。で、僕も『試合をストップする理由とは?』って考えるようになりました」

<この項、続く>

The post 【RIZIN LANDMARK06】荒東“怪獣キラー”英貴が貴賢神戦を振り返る─01─「試合をストップする理由とは」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
F1 MMA MMAPLANET o ONE PFL RIZIN RIZIN LANDMARK06   キック 佐藤将光 太田忍 海外

【RIZIN LANDMARK06】佐藤将光が振り返る、太田忍戦─02─「小技が僕の真骨頂。今後はRIZINもしくは…」

【写真】RIZIN初参戦でその実力を存在感を見せた佐藤。これからの動向が気になるファイターの一人だ (C)TAKUMI NAKAMURA

10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06にて太田忍に判定勝利した佐藤将光インタビュー後編。
text by Takumi Nakamura

前編では組技に焦点を当てたが、後編では打撃と判定を含む試合の振り返り、佐藤の達人MMAがいかにして生まれたのか。また今後の戦いの舞台をどう考えているかも訊いた。

<佐藤将光インタビューPart.01はコチラから>


――打撃についても聞かせてください。今回は太田選手に組ませないためのプレッシャーをかけていて、いい意味で行き過ぎないようにしているなと感じました。

「それでもまだ距離は近かったですね。ジャブ・ストレートに反応できていない感じだったので、あれをもっとポンポン当てつつ、もっと強い打撃を当てて行きたかったのですが、その前に組まれてしまいました。ちょうど僕が構えているところ=フレームを作っているところの下から潜り込まれて。もう少し離れた位置に入れば、太田選手が潜り込むところに腕を差し込んで打撃を当てる距離を作れたのですが、そこを潰されてしまいました。あれは太田選手の上手さであり、自分の距離が近かったからだと思います」

「行き過ぎない」ことでプレッシャーをかけてジャブ・ワンツーを当てた(C)RIZIN FF

――こういった話を聞くと、太田選手に組まれつつもしっかり対処は出来ていたんだなと思います。

「テイクダウンディフェンスは出来ていたし、テイクダウンされてからの対処法も準備していたので、焦る展開ではなかったです。ただテイクダウンの対処で終わらず、自分が攻めている場面を作らないと、周りには伝わらないんだなと思いました。さっきのツー・オン・ワンの場面でも、手を持っているだけでなく、クラッチが切れたらギロチンを狙ったり、もっと明確に打撃を当てたり。そこまで持っていかないと、いくら対処できていても僕が相手に押し込まれていると判断されかねないなと」

――判定はスプリットになりましたが、佐藤選手としては意外な判定でしたか。

「僕的には思いっきり判定3-0で勝ったと思ったんで、判定を聞くときにヘラヘラしちゃっていて(苦笑)。ジャッジが1人太田選手につけても『あっちにつくんだ。でも俺の負けはないだろ』という変な余裕がありました。RIZINの判定基準はダメージが50%、アグレッシブネスが30%、ジェネラルシップが20%という優先順位でポイントがついていて、ダメージでは自分が取ったと思ったんです。でもジャッジペーパーを見返すと、ジャッジ3名ともダメージはイーブンだったんですよね」

佐藤自身は3Rの左ハイなど明確に差をつけ「自分にポイントがつくと思った」と振り返る(C)RIZIN FF

――あの展開でのダメージ=スタンドの打撃はイーブンと評価されるの?という感覚ですか。

「他の試合のジャッジペーパーを見てみると、ダメージに関してはニアフィニッシュに近い状況、スタンドだったら相手がガードを固めて亀になったところを殴り続けたり、そのくらい一方的な差をつけないとポイントに反映されないんですよね。僕としてはヒザ蹴りも当たっていて、3Rに左ハイキックも効かせたので、自分にポイントがつくと思ったのですが…。今後RIZINに参戦する場合は、もっと判定基準を理解しないといけないし、ルールミーティングの際に細かい部分まで確認しようと思います」

――判定が割れた部分もありますが、改めて今回の試合は佐藤選手の技の引き出しの多さやMMAにおける勝ち方が出た試合だったと思います。ご自身ではいかがですか。

「僕はあの試合内容でもRIZINのファンの人たちは評価してくれるんだなと思いました。試合自体は超地味で小技しか出していないような展開だったのに(苦笑)、そこを理解してくれているんだなって。もし同じことを海外でやったらブーイングされてたと思うんですよ、もっと打ち合えって。そうじゃなくてちゃんとMMAの細かい攻防を見てもらえるのはうれしかったですね」

個別の戦力では劣っていても、試合運びと技術のチョイスで勝てるのがMMAだ(C)RIZIN FF

――試合発表の際、佐藤選手は「僕には36年、紆余曲折・試行錯誤して、ずっと戦ってきた自信があります。

それをレスリングエリートの太田選手にぶつけることが楽しみです」と話していて、まさにそうなった試合だったと思います。

「小技が僕の真骨頂ですからね(笑)」

――その小技を効かせつつ、自分が勝っている部分で勝負する。その戦い方はどうやって身に着けたのですか。

「これはもう経験ですね。自分より力がある相手にどうすれば勝てるかを考えて、映像を見て研究して、練習で試して…その繰り返しで少しずつ今のファイトスタイルが出来上がっていきました」

結果はスプリット判定となり、佐藤は「今後RIZINに参戦する場合は、もっと判定基準を理解しないといけない」(C)RIZIN FF

――佐藤選手は格闘技経験なしでMMAを始める=坂口道場に入門したんですよね。

「高校までサッカーをやっていて、それから坂口道場に入門しました。だからどうしても柔道やレスリングの経験者と試合をすると、テイクダウンされて漬けられて負けることが多かったんです。でもそれを経験して『このタイプにはこうしよう』や『あのタイプにはこれでいこう』というのを少しずつ覚えて、それから勝ち星が増えるようになりました。だから今のファイトスタイルは時間をかけて積み重ねてきたもの、作り上げられたものだと思います」

――MMAは経験を積むことがより重要な格闘技ということですね。

「それこそ金原(正徳)さんがクレベル(・コイケ)選手に勝ったり、MMAはやればやるだけ技術が伸びる競技だから、若いうちに始めるに越したことはないですけど、色んな技術を体に入れていくことで強くなれるものだと思います。一点突破で勝つ選手もいますが、どこかで壁にぶつかると思うし、MMAで勝ち続けるにはあらゆるタイプの選手に対応できなければいけない。その経験をどれだけ積んでいるかが必要で、試合中にどこで山を作って、攻めどころ・詰めどころを作るか。対戦相手と自分を比べたときに、自分が勝っている局面をどう見つけて、臨機応変にそこを突いていけるか。僕はそこを追及して強くなったファイターだと思います」

――それでは今後についても聞かせてください。これからはRIZINを中心に戦っていくことになりそうですか。

「まさに今それを考えているところで、一つはRIZINの継続参戦、もう一つはPFLですね。まだPFLとは具体的に話をしているわけではなく、これからコンタクトをとる段階ですが、契約期間中の縛りも含めて、どういう条件なのかを知りたいです」

現状、RIZINへの継続参戦とPFL参戦を視野に入れている佐藤。達人MMAの次の舞台はどこだ?(C)RIZIN FF

――まだ海外で試合することも視野に入れているのですか。

「はい。今回ONEをリリースしてもらってフリーになって、次の道を探している段階で急遽RIZINからオファーをいただいたんです。僕も試合から遠ざかっていたので、まずは試合をやりたいというところでオファーを受けて、先のことはまだ考えられなかったので、今回は単発契約にしてもらいました。だから今は改めてこれからのことを考えたいと思っています。もちろんそこにRIZINという選択肢はありますし、RIZINに関して言えば、出る前と出た後では、出た後の方がRIZINの魅力や団体としての安定感やファンの熱を感じることができました。そういった経験も踏まえて次自分が戦う舞台を考えていきたいです」

――ありがとうございます。次の舞台がどこになるかは分かりませんが、どの舞台に立つことになっても佐藤選手の熟練の技を楽しみにしています。

「僕らしい試合を見せて、それを喜んでくれる人がいれば、どんどん試合をしていきたいと思います」

The post 【RIZIN LANDMARK06】佐藤将光が振り返る、太田忍戦─02─「小技が僕の真骨頂。今後はRIZINもしくは…」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
MMA MMAPLANET o RIZIN RIZIN LANDMARK06 UFC トニー・ファーガソン 佐藤将光 太田忍 海外

【RIZIN LANDMARK06】佐藤将光が振り返る、太田忍戦─01─「あのカカト落としはめっちゃ効くんですよ」

【写真】トニー・ファーガソンにインスパイアされたカカト落としは嫌がらせではなく効かせる技だ (C)RIZIN FF

10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06にて太田忍に判定勝利した佐藤将光。
text by Takumi Nakamura

スクランブル発信となった一戦では、これまでのキャリアで培った「小技」を随所に効かせ、強力なレスリング力を誇る太田をMMAで攻略してみせた。試合当日には伝わりにくかったら組みの攻防で何が起きていたのかを紐解きつつ、佐藤の今後のキャリアについても訊いた。


――RIZIN初参戦で太田忍選手から勝利を収めた佐藤将光選手です。試合後の反響はいかがですか。

「色んな人に声をかけられるし、しばらく連絡を取っていなかった学生時代の知り合いからもたくさんメッセージが来て、試合が終わったあともSNSのフォロワーが増え続けています。あと僕が思ったのはRIZINにはRIZINファンがいるということ。UFCをはじめ海外のMMA団体を見る人もいると思うんですけど、RIZINだけを見て楽しむファンがいるんだなと思いました」

――今回の試合で佐藤選手の存在を知ったファンも多かったと思います。

「試合後のマイクでも触れた“にわか”論争ですね(笑)。でも実際に僕はRIZINファンの人の目に留まらないところで試合をしてきたので、急遽試合が決まって挨拶で出てきたら『誰?』となるのは仕方ないかなと思います」

――試合そのものは大会1週間前の発表で、実際にオファーがあったのは大会2週間を切った頃だと聞いています。試合に向けた練習や準備の状況はどうだったのですか。

「僕は試合の有無で練習スケジュールが変わる方ではないので、体力的な問題はあまりなかったです。練習そのものも木曜日(28日)までがっちりやって、金曜日(29日)に名古屋に移動して。試合中は普段より多少疲労感を感じたので、ちょっと脱力して(体力を)コントロールしてやらなきゃなぁと思ったくらいです。対戦相手の対策に割く時間はなかったですが、それは太田選手も同じ条件だったと思います」

押し込まれることを想定し、クラッチを外す動きで太田を消耗させる作戦だった(C)RIZIN FF

――短い準備期間でどんな対策を練っていたのですか。

「太田選手はやってくることが予想がつくというか、強い部分=組み&レスリングが突出しているので、そこの対応をどうするかを考えていました」

――試合そのものは佐藤選手の想定内の展開でしたか。

「組まれてケージまで押し込まれるだろうなと思っていたので、そうなった時の腕のクラッチを切る動きと投げられたあとのリカバリー、そこは準備していたものが出せたと思います」

――佐藤選手は太田選手に組まれた時、ケージに身体を預けつつ、半身・もしくは背中を見せてテイクダウンをディフェンスしていました。正面から組まないことは意識していたのですか。

「そうですね。一本でも脇を差せていればいいんですけど、脇を差せずに正面でボディロックされたら、フロントスープレックス系の危ない投げ技を喰らったり、テイクダウンされたらそのまま動けない状況になってしまう。だったら半身になって正面で組まれないようにしていました。あとは背中を見せた時は相手の腕のクラッチを下げて親指から剥がすようにして、相手に力を使わせるもしくは腕をパンパンにさせようと思ったんです。そういうプレッシャーをかけながらギロチンチョーク、アームロック、ネルソン系の動きにつなげようと。仮にがっちり組まれてしまったら抵抗はせず、自分から膝をついて、そこから展開を作るつもりでした」

正対せずに、ツー・オン・ワンで太田の片手をコントロールする。これが佐藤の狙いだった(C)RIZIN FF

――では序盤はケージに押し込まれたとしても、太田選手のスタミナをロスさせようと思っていたわけですね。

「はい。ただ相手もさすがで予想以上にスタミナがありました」

――ケージを背にして正対したとき、足へのカカト落としを多用していました。試合後に太田選手もダメージがあった攻撃として、あのカカト落としを挙げていました。

「嫌がらせくらいにしか見えないと思うのですが、実際にやられるとめっちゃ効くんですよ。多分僕の練習仲間はあれを見て『いつものやつをやってる!』と思ったでしょうね。僕は太田選手があれを嫌がって、もっとテイクダウンを狙って動いてくると思ったんです。でも意外にそのままの態勢で我慢してくれたので、僕としてはそのまま蹴り続けました」

――実際に効いている感覚もありましたか。

「太田選手が立っている場所や足の位置がかなり遠くになって、僕にもたれかかるような形になったので効いていたと思います。あの立ち位置・足の位置だったら、投げられることはないだろうなと思いました」

――相手の動きを制するという意味では確実にダメージを与えていたようですね。ちなみにどのくらい前から使っているのですか。

「技そのものは結構前から使っていて、確かトニー・ファーガソンがやっていた技で、それを真似してやってみたんですよ。そしたらみんな嫌がってくれたので、組まれる・押し込まれる展開で使おうと思っていました。僕は対戦相手と比較して、自分の方がレスリングが強いことはほぼないんで、ああいう小技をやりながら動きを作って、その動きの中で自分が有利なところを取る意識でやっています」

1R終盤のネルソンは極めというよりも、ここからのスイープを狙っていた(C)RIZIN FF

――もう一点、佐藤選手は両手で太田選手の片の手を持ってクラッチさせない動きも多様していましたよね。

「あれは力が強い相手に対してツー・オン・ワンで=相手の片手を両手で持って、ボディロックさせないようにしていたんです。しっかり片手をコントロールできていれば、相手は腕一本でテイクダウンは出来ないし、そこから正対すれば僕の方がヒザ蹴りやアームドラッグで逆にバックを狙える。そういう形を狙っていました」

――1R終盤にネルソンのような形で引き込みましたが、あの狙いは何だったのですか。

「あのまま極めるというよりもひっくり返してマウントを取りたかったんです。マウントを取って削る、もしくは肩固め。でも太田選手の頭が抜けてしまって返せなかったですね。あと太田選手は上半身がごついので、ああいう体系の人にはちょっとかかりづらいっていうのもあります」

――想定通りに試合が進んでいたと思いますが、試合中に修正すべきだと思った点はありますか。

「自分からプレッシャーをかけすぎて、距離が近くなって簡単に組ませすぎたのは良くなかったですね。もっとフェイントをかけて、相手が組みに来たところを切って打撃を当てる。もしくは後半になったら組みを切ってがぶって殴る。そこまで持っていければよかったです」

<この項、続く>

The post 【RIZIN LANDMARK06】佐藤将光が振り返る、太田忍戦─01─「あのカカト落としはめっちゃ効くんですよ」 first appeared on MMAPLANET.
カテゴリー
DEEP DEEP JEWELS DEEP JEWELS43 HIME MMA MMAPLANET NØRI o RIZIN RIZIN LANDMARK06   サダエ☆マヌーフ パンクラス ボクシング 万智 修斗 山崎桃子 斎藤 松田亜莉紗 栗山葵 渡辺彩華 青野ひかる 須田萌里

【DEEP JEWELS43】万智✖松田亜莉紗でストロー級暫定王座決定戦!!  これぞ、今のGirls J-MMA

【写真】上を取った時の頭の位置が、明白に違う両者。殴ることができる隙間、スぺースの有無。寝技、上下に関わらず組みの展開は、そこに注目したい(C)MMAPLANET

6日(金)、DEEPより11月23日(木・祝)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP JEWELS43の対戦カード第一弾が発表されている。
Text by Manabu Takashima

10周年記念大会を終え、次の10年に向かう第一歩となる今大会のメインは、万智と松田亜莉紗の間で争われるDEEP JEWELS暫定ストロー級王座決定戦に決まった。


万智は1日のRIZIN LANDMARK06で修斗スーパーアトム級王者の渡辺彩華をスプリット判定で下したばかり。その万智にとってタイトル戦が行われる11月23日は、1年前のデビュー戦と同じ日時になる。その日は松田もプロ2戦目を戦っており、今回の暫定王座決定戦はキャリア4戦目の松田と5戦目の万智がプロ2年目でベルトを争う一戦──日本の女子MMAの急成長が顕著になった戦いとなる。

この両者、2021年12月にアマチュアルール55キロ契約で対戦しており、バックを取る場面が目立った松田が判定勝ちをしている。とはいえパウンド有りとなると、試合は別モノ。加えていえば、松田のパウンドの強さは日本女子ファイターのなかで群を抜いている。

元女子プロ野球トップ選手、身体能力と運動神経の高さとMMAの知識がなかったことで、ピュアMMAファイターとして急激に力をつけている松田。いってみるとアマで対戦した時は、柔道というストロングベースがMMAにとっては障害になっていた万智を、松田がMMA力で下した一戦だった。

対して今の万智は組みの強さを最大限に生かすMMAスタイルを構築中で、背中を簡単に許すことはまず考えられない。とはいえ、松田が持つパウンド、ダーティボクシングの強さは未体験、ここは練習で経験値を上げることができないパートだ。

一方で渡辺戦だけでなく、HIMEや韓国勢との国際戦を経ている万智はフィッシュを目指すスタイルで、ケージ・ジェネラルシップも考慮したファイトができている。絶対的な怖さがある松田と、徹底した組みの圧力を上げてきた万智。1年11カ月前と別人になった2人のタイトル戦は、世界のある階級としても要注目だ。

なお同大会では2回戦で49キロ契約=須田萌里✖彩綺、フライ級で栗山葵✖斎藤ももこ、49.5キロ契約で青野ひかる✖サダエ☆マヌーフ、ミクロ級の山崎桃子✖こゆきが組まれている。9月のデビュー戦でパンクラスではタイトル挑戦までいったNØRIにスプリットで惜敗した斎藤が、キャリア4年の栗山と2戦目で戦いマッチアップも、今の女子J-MMAを象徴する一戦といえる。

The post 【DEEP JEWELS43】万智✖松田亜莉紗でストロー級暫定王座決定戦!!  これぞ、今のGirls J-MMA first appeared on MMAPLANET.