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【PJJC2022】ライト級─鉄壁のジョナタ・アウヴェスに敗れるも、アンディ・ムラサキ準優勝

【写真】一本勝ちも、序盤のスイープで得たポイントを守りきるのも完勝だ(C)IBJJF

6日(水・現地時間)から10日(日・同)まで、フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナにて、パン柔術選手権が行われた。レビュー最終回は、優勝候補最右翼のジョナタ・アウヴェスや、そして日本でティーン時代を過ごしたアンディ・ムラサキが出場したライト級の模様を、ムラサキの戦いを中心に紹介したい。

<ライト級1回戦/10分1R>
アンディ・ムラサキ(ブラジル)
Def.6分47秒 by 襟絞め
ジョニー・タマ(エクアドル)

ムラサキの初戦の相手は、2019年ノーギワールズを制覇する等、ノーギグラップリングでの活躍が目立つジョニー・タマ。引き込んで片襟を取ったムラサキは、タマの右足を掴んでシットアップに入る。が、それを片足立ちで堪えたタマは小手絞りでカウンター。ムラサキは自ら寝て回転して逃れたものの、タマが持ち味を発揮してアドバンテージを得た。

しかしタマの右足を離さずキープしたまま立ち上がったムラサキは、それを股間にはさんで固定すると、タマの左足を抑えつつ回してテイクダウンに成功。下のポジションを起点としたスイープの2点を先取した。

オープンから仕掛けようとするタマだが、ムラサキは左膝を入れて低い重心を取ると、左腕を伸ばして玉の帯の背中を取る。さらに重心を低くしてタマの両足を重ねて潰したムラサキは、左にパスに成功。さらにスクランブルを試みるタマのバックにまわり、9点目を獲得した。

そのまま4の字フックを入れたムラサキは、じっくり締めを狙ってゆき、残り3分少々のところでフィニッシュ。タマも持ち味のダイナミックな動きで見せ場を作ったが、ムラサキの反応の良さと盤石のベース、そして極めが上回った好試合だった。

<ライト級2回戦/10分1R>
アンディ・ムラサキ(ブラジル)
Def. 4-2
ヴィクトー・ニサエル(ブラジル)

ムラサキの2回戦の相手は、ムラサキ同様に昨年黒帯を取得し、サウスアメリカン王者に輝いたニサエル。オープンガードを得意とする選手だ。

まず座る両者。ここでなぜかニサエルは一瞬立ち上がってから改めて下に。ムラサキがその流れで上攻めを選択すると、一度上下が成立したということでムラサキに2点が与えられた。ニサエルとしては勿体ない失点だ。

下を得意とするニサエルは、片襟片袖から煽り、さらにムラサキの右足に絡んで内回りや外回りを狙ってゆく。ムラサキは持ち前のベースで対抗。たまに自ら背中を付けて絡みつく足を解除してから、立ち上がる動きも見せる。やがてムラサキはニサエルの足を捌いて左に侵攻し、アドバンテージを獲得した。

ニサエルが戻すと次は右に動き、さらにまた左へとパス攻撃を続けるムラサキ。低く重く、同時に速く鋭い動きだが、ニサエルもよく対応している。やがてムラサキは、ニサエルの左足を素早くレッグドラッグしてサイドに。ニサエルは右足を入れて隙間を作ると、ムラサキの股間に潜り込む形で背後に回る。対するムラサキは前転して下になると同時に、体をずらして50/50で絡む。この攻防でムラサキにアドバンテージが一つ、ニサエルに2点が与えられた。ポイントは同点だが、アドバンテージはまだムラサキが2つリードしている。

残り1分。ムラサキは下からニサエルのズボンの尻を掴んで、足の絡みを解除する。さらにニサエルの左足を掴みながら立ったムラサキは、背後から右足を刈ってテイクダウンに成功。スコアを4-2とした。時間のないニサエルは、下から強引に足を取りにゆく。すかさずそれを低い重心で潰したムラサキは、サイドを取りかけてからマウント狙い。なんとかニサエルが下から足を絡めるが、背後に付きかけたムラサキが、クロックチョークの体勢に入ったところで試合は終了した。

ニサエルのオープンガードにやや手を焼いたムラサキだが、それでもスコアは4-2、アドバンテージ5-0。上からの強烈なプレッシャーと鋭いパスに加えて、下の50/50ゲームでもバックを脅かし、上を取る強さを見せての快勝だった。

<ライト級準々決勝/10分1R>
アンディ・ムラサキ(ブラジル)
Def. 4分58秒by 肩固め
セルジオ・アントニオ(ブラジル)

背が高く懐の深いアントニオは、引き込むと同時にヒップバンプ。体勢を完全に崩されたムラサキは、あわやバックを許すかに見えたが、回転して正対し、アントニオのクローズドの中に入った。この攻防でアントニオはアドバンテージを2つ獲得した。

立ち上がったムラサキは、アントニオのガードを開けるとその右足を押さえつけて股間に挟んでの制圧を試みる。が、アントニオは、下からムラサキの右腕を取って脇にかかえると、左足を絡めてムラサキの腕を極めにゆき、さらにオモプラッタへ。右腕を伸ばされかけたムラサキだが、回転して体勢を立て直すと、アントニオの体をリフトしながら立ち上がり、あらためて落としながら腕を抜いた。この攻防でアントニオは、アドバンテージをさらに2つ追加した。

立ち上がったムラサキはパスのプレッシャーをかけるが、アントニオはシッティングからムラサキのラペルを自らの右足に絡めつつ、ムラサキの膝裏を通して掴んで対抗。リードを許したまま体勢を固定されかけたムラサキだが、強靭なベースを活かして前に低く体重をかけると、やがて左手でアントニオの首の後ろの襟を取ることに成功。

その襟を強烈に引きつけたムラサキは、左足を伸ばしてポストして安定した姿勢を作って低く強烈なプレッシャーをかけてゆく。やがてアントニオの左足を押し下げて超えると、ハーフガードで胸を合わせて抑えることに成功した。

改めて左で枕を作り、完全にアントニオの上半身を制圧したムラサキは、さらに右腕をセルジオの左脇に入れて開けせるとあけさせると、足を絡められていた右膝を抜いてサイドにつき、すぐにマウントへ。ここで7点を獲得したムラサキは、さらに開けさせた左脇に頭を入れて肩固めでフィニッシュした。

懐の深さを活かしたアントニオの強烈な先制攻撃に耐え、地力の差を見せつけての逆転勝ち。思わぬ攻撃を受けた時の反応の速さも目立ったムラサキ。攻撃力だけでなく、防御の強さも見せつけた一戦となった。

<ライト級準決勝/10分1R>
アンディ・ムラサキ(ブラジル)
Def. 5-0
イゴール・フィリズ(ブラジル)

準決勝でムラサキを待っていたのは、同じく昨年黒帯を獲得したフィリズ。今年のヨーロピアンで3位を獲得した新鋭だ。

いったん引き込んだムラサキが立とうとすると、フィリズはその右足を取ってのテイクダウン狙いへ。だが左足一本でバランスをとったムラサキは、カラードラッグでカウンター。前に崩れたフィリズの背中に回ってシングルバックに飛びついて、アドバンテージを獲得した。

そのままフィリズを後ろに引き倒して2点を獲得したムラサキは、バックをいやがるフィリズを胸を合わせて押さえ込み、さらに右に飛んでサイドを狙う。フィリズはなんとかその左足に絡んでハーフを死守した。

が、右脇を取って上半身を殺しているムラサキ。右の上腕と前腕でフィリズの首を殺すと、足を抜いてパスに成功。5点目を獲得した。

さらにマウントを狙うムラサキに対し、フィリズは動いてディーフハーフを作る。そこから体を翻してのスイープを狙うフィリズだが、ムラサキはうまく距離を取って離れてみせた。

スタンドになると、再び引き込んだムラサキ。フィリズはオーバーアンダーからの低いパスを狙うが、ムラサキは素早くシットアップして背中越しにフィリズの脇を取ると、さらに上体を起こしてクルシフィクスの形に入った。

対するフィリズはムラサキをリフトしながら立ち上がり、振り落とす。そのままサイドにまわりさらにバックを狙うフィリズだが、ムラサキは前転してスクランブルから立ち上がることに成功した。

残り2分。ムラサキはまたしても引き込んで、フィリズの右足首のズボンと片襟を取る得意の形に。フィリズはムラサキの左足を担いでパスをねらうが、ムラサキは落ち着いて防いで試合終了した。

持ち前のパスガードとスクランブルの強さに加え、ガードでの防御力も見せたムラサキ。ここまで4試合、攻撃、防御、トップ、ボトム、キワとどの局面でも強さを発揮した上で、宿敵ジョナタ・アウヴェス──ムラサキは昨年のこの大会の準々決勝、そして今年のLAオープン決勝でアウヴェスと当たりどちらも僅差で敗れている──が待つ決勝戦に駒を進めたのだった。

<ライト級決勝/10分1R>
ジョナタ・アウヴェス(ブラジル)
Def.2-0
アンディ・ムラサキ(ブラジル)

前年度王者にして優勝候補筆頭のアウヴェスは、初戦は3分少々で襟絞め、準々決勝は1分半でトーホールド、そして準決勝のナタン・シュアン戦も3分半ほどで襟絞めを極めてフィニッシュ。下からのスイープと極め、トップにおける安定感、相手の足を低く畳んでのパス、そしてバックからのフィニッシュと全局面で突出した力を見せつけての決勝進出だ。

まず引き込んだアウヴェスは、ムラサキの左足に絡むと、シッティングから膝裏を通してラペルを掴み、シットアップしてシングルレッグにつなげて2点を獲得。自ら仕掛け、ムラサキに対応する隙を与えずにやりたいことを一方的に完遂する形で先制してみせた。

右でラッソーを作るムラサキに対して、アウヴェスは得意の低いベースを作ってから左に動く。さらに噛み付いてのオーバーアンダーの形でプレッシャーをかけるアウヴェス。ムラサキはその侵攻を防ぐと、クローズドガードを取った。

ここでもアウヴェスは低い姿勢で胸を合わせて。ムラサキは背中越しに帯を持つが、しっかりと密着されて攻撃を仕掛けられない。しばらく攻防が止まった後、ムラサキの方にペナルティが与えられた。ムラサキはアウヴェスのラペルを取って、背中越しにラペルスパイダーを作るが、これも低いアウヴェスのベースの前には効果がない。

試合が後半に入り、ムラサキは下からオモプラッタを仕掛けようとするが、不発。いったんガードを開いての攻防を試みるムラサキだが、アウヴェスが低く侵攻を試みると、再びガードを閉じた。

もう一度ガードを開けたムラサキはラッソーへ。そこから右に崩そうとするが、バランスを保つアウヴェス。ムラサキは立ち上がってからまた引き込むが、低い姿勢を取るアウヴェスの密着度がとにかく高く有効な攻撃を仕掛けられない。やがてアウヴェスがプレッシャーをかけてくると、ムラサキはまたしても立ち上がった。ムラサキはアウヴェスにパスこそ許していないが、その低く重厚なトップゲームに対する突破口を見出せないままだ。

残り3分でスタンドから再開。頭をつけ合う両者。ムラサキは前に出るがアウヴェスは無理せずその力を流していく。やがてお互いにペナルティが与えられた。

残り2分。ここでアウヴェスが引き込んでクローズドに。ムラサキが立ち上がると、アウヴェスはその右足を抱えて、後転するように前に崩してから、ムラサキのズボンの尻を掴んでのバック狙いへ。リードされていて自分から展開を作らなくてはならないムラサキだが、アウヴェスのほうに作られてしまっている。

前転して逆にバックを狙いたいムラサキ。が、尻をつかんでいるアウヴェスはムラサキを引き戻し、右足に50/50で絡むことに成功。アウヴェスは絡めとったムラサキの右足を左手で抱えると、そのまま体勢を固定してムラサキの動きを止めて試合終了。

序盤早々に下からスイープを決めたアウヴェスは、トップを取るとムラサキに一切の攻撃の緒を与えず。そして最後は再び自ら下になり、ポジションを完全に制御下に置いての勝利。ムラサキとしては、同世代のライバルに3連敗だ。しかも今回は上下両方の攻防で上を行かれ、終始主導権を奪われての完敗となってしまった。

それにしても今大会、準決勝まで全て短時間で一本勝ちした上で、ライバルのムラサキにもはっきり差を付けて勝利したアウヴェスの戦いぶりは圧巻の一言った。凄まじい地力に加えて、確実にポイントゲームを支配する方法を練り上げて実行する点でも頭一つ抜けているあたり、師匠メンデス兄弟を彷彿させる。ミドル級を制したチームメイトのタイナン・ダウプラとのAOJコンビの時代が、今後しばらく続くのではないだろうか。

【ライト級リザルト】
優勝 ジョナタ・アウヴェス(ブラジル)
準優勝 アンディ・ムラサキ(ブラジル)
3位 ナタン・シュアン(ブラジル)、イゴール・フィリズ(ブラジル)

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【PJJC2022】ミドル級優勝は因縁のヒメネスに完勝、タイナン・ダウブラ。ムンジで✖ミカの実現に超期待!!

【写真】パン柔術はステータスが世界に2番目に高く、かつムンジアルの最高の予告編になっている(C)IBJJF

6日(水・現地時間)から10日(日・同)まで、フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナにて、パン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi

レビュー第3回は、ミドル級の戦いの模様を、快進撃を続ける若き昨年度世界王者タイナン・ダウプラの戦いを中心に紹介したい。


<ミドル級2回戦/10分1R>
タイナン・ダウプラ(ブラジル)
Def. 2分00秒by 三角絞め
ロベルト・ヒメネス(米国)

ノーギシーンでルオトロ兄弟を連破する等、大いに活躍するヒメネスと、ギあり柔術で昨年の世界制覇等、快進撃を続けるダウプラ。今回ヒメネスが初戦を突破したことで、関係者・ファン注目の若手対決が実現した。ちなみに両者は色帯時代にも対戦経験があり、紫帯時代にはヒメネスがチョークでダウプラから一本勝ちを収めた後、尻に付けた「完全ナチュラル、ステロイドなし柔術」のバッジをアピールする行為をしたことで物議を醸したこともあった。

試合開始後前進するダウプラだが、そこにヒメネスがカウンターでダブルレッグ。ダウプラはあまり抵抗せずに下になり、まずヒメネスが2点を先制した。

ダウプラがクローズドガードを取ると、ヒメネスはすぐにその体をリフトしながら立ち上がる。ダウプラはガードを解きながら着地すると同時にヒメネスの右足にデラヒーバで絡み、すぐに後ろに倒して上に。一瞬の早技で上を取り返してみせた。

さらにダウプラはヒメネスの右足を押さえながら、右に回ってのパス。ヒメネスがそれを嫌がって背を向けると、素早くバックへ。だがヒメネスはそれを許さず体をずらして上になってみせた。ここまででスコアは2-2。アドバンテージはダウプラが2つリード。重厚な戦いで相手を圧倒することが目立つダウプラが、まるでヒメネスに付き合うかのように動きのある攻防を展開している。

さらに下から動くダウプラは、体をずらしてヒメネスの左足に絡んでトーホールドを仕掛ける。これをヒメネスが回転して逃れると、ダウプラは上を取りにゆくが、ヒメネスはスクランブルで上に。

しかしダウプラはそこにアームドラッグでカウンター。ヒメネスは動きに逆らわずに前転するとガードを取り、そしてすぐに立ち上がってみせた。WNOのノーギグラップリングマッチが道着着用ルールに出現したかのような攻防だ。

ダウプラはガードに引き込むと、ヒメネスの右足に絡んで煽る。百発百中のスイープ狙いかと思いきや、ヒメネスの体勢が崩れた瞬間、ダウプラはあっという間に三角絞めをロックオン。そのまま強靭な脚力で締め上げるとヒメネスはタップ、開始からわずか2分少々のことだった。

普段は堅実な戦いで盤石の強さを見せるダウプラが、ヒメネスの領域であるダイナミックな攻防にあえて踏み込むような戦いを見せた上で、圧巻の極めの強さを見せつけて完勝。大会前から注目されていたこの対決だが、ダウプラが道着着用における現役世界王者の力を見せつけた。

翌日、ダウプラは準々決勝のエドゥアウド・カウバーリョ戦も2分少々で襟絞めで圧勝。準決勝において、昨年の世界大会の雪辱を期すホナウド・ジュニオールとの再戦を迎えた。

<ミドル級準決勝/10分1R>
タイナン・ダウプラ(ブラジル)
Def. by 2-0
ホナウド・ジュニオール(ブラジル)

引き込んだジュニオールがクローズドガードを取ると、ダウプラはすぐにリフトして立つ。スパイダーに切り替えるジュニオールに対し、ダウプラはその足を捌いて右にパス攻撃。ジュニオールは右足をダウプラのラペルに引っ掛けて守るが、無類の重心とプレッシャーを誇るダウプラは意に介さず低く右への侵攻を続ける。

右のラペルスパイダーに加えて、左は通常のスパイダーを作ってなんとか距離を保って耐えるジュニオール。対するダウプラは全くバランスを崩さず、右に低くプレッシャーをかけ続ける展開が続いた。

試合時間が半分近く経過したところで、苦しくなったかジュニオールはついにスパイダーを解除してスクランブルへ。すかさず反応したダウプラはバック狙いへ。ジュニオールは体を翻して正対し、ガードを取って立ち上がるが、この攻防でダウプラに2つ目のアドバンテージが与えられた。

スタンドに戻ると、今度はダウプラの方が引き込み。デラヒーバやシッティングから仕掛けにかかるダウプラと、立った状態でそれを捌いてパスを狙うジュニオール。やがてジュニオールの足首を持ち股間に潜り込んだダウプラは、後転するような形でジュニオールを前に崩した。

お互いうつ伏せの状態から、フットロックを掛け合う両者。ここからダウプラがスクランブルで上を取り、2点獲得。こういう場面ではダウプラの鍛え上げた強靭な身体がものを言う。さらに足を捌いて左右に鋭いパスをダウプラだが、ここはジュニオールが凌いだ。

ブレイクを経て残り2分。ジュニオールは引き込んでから内回りを狙うが、ダウプラは、すかさず背中とマットの間に飛び込んでバック狙い。メンデス兄弟を師とダウプラだけに、この辺の反応は見事だ。凌いで立ち上がったジュニオールは再び引き込み、今度はシッティングガードから膝裏からラペルを捕獲。ここからダウプラを前に崩したジュニオールは、背中に回ることに成功。

さらにグラウンドに持ち込んで逆転の両足フックを狙うが、スクランブルで無類の強さを持つダウプラは体を翻して立ち上がる。この攻防でジュニオールにアドバンテージが1つ与えられた。

残り20秒、前進して組むと激しく足を飛ばすジュニオールだが、ここでダウプラの指が目に当たってブレイクに。再開後、ダウプラはすかさずクローズドガードに引き込み、残り時間をやり過ごして終了。スイープの2点を守り切ったダウプラが、雪辱を期すジュニオールを返り討ちにした。が、ジュニオールもダウプラの無類の圧力に耐えてパスを許さず、最後はシッティングからダウプラの体勢を崩してみせる等、確実に爪痕は残したのだった。

<ミドル級決勝/10分1R>
タイナン・ダウプラ(ブラジル)
Def. by 3-0
ジェフェルソン・グアレシ(ブラジル)

ダウプラの決勝の相手は、ジェファーソン・グアレシ。ユニティ柔術の同門にして優勝候補のリーヴァイ・ジョーンズレアリーが対戦を棄権したこともあり、決勝進出。昨年の世界選手権でダウプラに一本負けを喫しており、今回雪辱を期してこの舞台に臨んだ。

引き込んだグアレシは、ラッソーガードを作る。強固なベースをキープするダウプラは、グアレシの足をさばきながら左右にパスのプレッシャーをかけてゆく。グアレシも足を効かせて守るが、ダウプラは攻撃の手を休めない。

やがてグアレシの右足を押さえつけたダウプラは、右に動いて体重をかけてサイドに付きかける。グアレシが左足を差し込んで守ると、その左足をドラッグ。これで背中を見せることを余儀なくされたグアレシが前転するその瞬間、ダウプラは飛び込んでバック狙いへ。

グアレシはスクランブルを試みるが、ダウプラはその右脇をフロントネルソンの形で前からすくい、そのままグアレシの体をひっくり返して背中を付けさせて押さえ込む。かろうじて右足にハーフで絡んだグアレシだが、ダウプラは脇を差し首をコントロールしてグアレシの上体を完全に殺すと、右足を抜いてパスを決めた。6分過ぎのことだった。

強烈な押さえ込みの前にしばし動けなかったグアレシだが、やがてスクランブルしてうつ伏せに。ここでダウプラはバックを取りにゆくが、グアレシはそれを前に落とすことに成功。が、下になっても安定感のあるダウプラ、その後はすかさず強固なオープン&クローズドを駆使して試合終了まで堅実に守り切り、試合終了。

昨年度世界王者のダウプラが、下馬評通りの強さを見せつけて優勝。特に初戦のヒメネス戦の立体的な動きと強烈な極めは、すでにその強さを熟知している者たちの予想すら超えるものと言えた。6月の世界大会の大本命であるこの若者を止める可能性があるのは、今回返り討ちに遭ったものの、唯一その牙城に迫ったホナウド・ジュニオールか、昨年の決勝を争ったイザッキ・バイエンセか、今回対戦が実現しなかったリーヴァイ・ジョーンズレアリーか。

あるいは昨年、驚愕の大激闘の末に黒帯としてダウプラに唯一の黒星を付けた「柔術の神の子」ミカ・ガルバォンか──?

【ミドル級リザルト】
優勝 タイナン・ダウプラ(ブラジル)
準優勝 ジェフェルソン・グアレシ(ブラジル)
3位 ホナウド・ジュニオール(ブラジル)、マチアス・ルナ(ブラジル)

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MMA MMAPLANET o PJJC2022   アイザック・ドーダーライン アレクサンドロ・ソドレ ケネディ・マシエル 嶋田裕太

【PJJC2022】ソドレ兄弟が金銀のフェザー級で、優勝したソドレ兄に惜敗──も肉薄の嶋田裕太にNY効果

【写真】同じ技にはめ込むことができている。それだけ高度かつ強度が高くなっていることが確認できた嶋田。微妙なアドバンゲームを制してこそのIBJJF競技柔術だけに──不明瞭なポイントボード問題はなんとかしてほしいものだ(C)IBJJF

6日(水・現地時間)から10日(日・同)まで、フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナにて、パン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi

レビュー第2回はNYの神童マルセロ・ガウッシア道場にて長期修行に励む嶋田裕太が出場したフェザー級の模様を、嶋田の戦いぶりを中心に紹介したい。


<フェザー級1回戦/10分1R>
嶋田裕太(日本)
Def. by 17-0
ティエリー・ファリア(ブラジル)

ガードに跳び付いたファリアに対し、すぐに嶋田は両足担ぎの体勢に。そのまま立ち上がって圧力をかけた嶋田は、ファリアの右足を抑えて右に動き、さらにファリアの右ワキを差して背中を付けさせて相手の上半身を殺すと、絡まれた左足を抜いてマウントへ。すぐにファリアが下から左足を嶋田の股間に入れたからか、嶋田にはアドバンテージに加えてパスの3点のみが与えられた。

ファリアは下から動いてディープハーフを作るが、右ワキを制している嶋田はバランスを保ちながら圧力をかけてアドバンテージを重ねる。やがて嶋田は絡まれている左足を抜き、再びマウントに。今度はパスガードの3点とマウントの4点が与えられ、10-0と大きくリードした。

その後も下から懸命に動いてディープハーフに戻すファリアと、ワキを殺してさらにパスを狙う嶋田の攻防が続く。一度クローズドガードに戻された嶋田だが、立ち上がってファリアをリフト。その足を押し下げてガードを開かせ、足を超えてまたしてもマウントを奪取。17-0 とリードを広げた。

その後嶋田は腕十字やギを絡めたチョークを狙ってゆくが、ファリアはしぶとくディフェンスして極めさせない。なんとか足を絡めて下からの反撃を試みるファリアだが、トップの嶋田はその度に素早い反応で足を捌きワキを制しては、極めを狙っていった。

結局ファリアの守りの前に極めきることはできなかったものの、トップから終始攻め続けた嶋田が17-0で完勝。今年に入ってフェザー級で連戦を重ねて臨んだこの大会で、動きの良さを見せつけた。

<フェザー級2回戦/10分1R>
アレクサンドロ・ソドレ(ブラジル)
2-2 アドバンテージ2-1
嶋田裕太(日本)

初戦を10分間フルに戦った嶋田は、その後同マットで1試合が消化された後に再び登場。対戦相手は、シード故にこれが今大会初戦となるソドレ。19年に2連敗を喫しているこの若き強豪と、わずか10分少々の休憩時間で対峙するという厳しい戦いだ。

試合後両者同時に座るや、嶋田はすぐ上に。これが嶋田のアドバンテージではなく、ソドレの引き込みと判断されてしまいアドバンが入らない。

すぐに左で得意のラッソーを作ったソドレはそこからの仕掛けを試みるが、嶋田もワキを閉めてうまくソドレの攻撃を遮断する。ソドレが煽ると素早くスプロウルする等良い反応を見せる嶋田は、横に動いてのパスを見せるがソドレも対処。鋭い動きの両者による緊張感のある攻防が続いた。

4分過ぎ、下から嶋田の右足を抱えたソドレは、そのまま引き付けて嶋田のバランスを崩してシットアップ。相手を後ろに崩す得意の形で2点を先制した。嶋田もソドレの右足を抱えて起き上がってのシングルレッグを狙うが、ソドレはそれを跳ね返してニースライスの体勢を作った。

右足にハーフで絡む嶋田と、上体を起こして嶋田の首に道着を巻きつけてチョークのプレッシャーをかけつつ侵攻を試みるソドレ。嶋田はシッティングガードからソドレの右足にラペルを巻きつける形でテイクダウンを狙うが、ソドレは巧みに嶋田の左脇をすくいながら動いて防御。結局両者は離れた。

残り3分半。シッティングを取る嶋田は素早くソドレの体を引き付けて前に崩してから右足を抱えてディープハーフへ。そのまま素早く立ち上がってシングルに移行すると、片足で堪えようとするソドレの軸足を刈りながらのテイクダウンに成功。切れ味鋭い見事な動きで2-2とした。

そのままガードを閉じるソドレと、それを開けにかかる嶋田。画面に表示されている得点表は同点だが、動こうと試みる嶋田と体勢キープを試みるソドレという攻防になっている。

残り1分半。ソドレは再び下から嶋田の右足をキャッチ。動きを作りたい嶋田が上体を起こしたところで、ソドレは右足を強烈に引き寄せながらシットアップし、先ほどと似た形で上を狙う。ここで下にはなれない嶋田が背中を見せて距離を取ろうとしたところで、ソドレはその背中に付くと、跳び付いてシングルバックに。終盤のこの攻撃で、ソドレは大きなアドバンテージを一つ追加した。

場外際のブレイクを経て再開。時間のない嶋田は、絡みつくソドレの足を腕で押し下げて解除すると、上体を低くしてソドレを前に落とすことに成功する。ここからテイクダウンを仕掛けるがソドレは下がって場外へ。このように不利なときは無理せず下がって場外に出るインサイドワークは、常に前に出て攻め続ける嶋田の戦いにはあまり見られないものだ。

残り29秒で再度、中央でリスタートに。この時、ソドレが取ったアドバンは実は(それまでの掲示どおりの1つではなく)2つだったと得点表が修正された。下がるソドレに迫る嶋田は、背負いの仕掛けから引き込んでシッティングを作ると、ソドレの襟を強烈に引き付けてから右足に絡み付いてのシングルへ。

逃げようとするソドレの右足を抱えて前に出た嶋田は、両者が場外に出そうになると、ソドレの体を回して方向転換して試合場内で倒すことに成功。が、次の瞬間ソドレは跳ね立つ。それでも右足を離さない嶋田はさらにソドレを倒そうと前進するが、ここで両者の体が場外に出るとともに時間切れ。最後に嶋田にアドバンテージが入ったが、一歩及ばず。

嶋田、三度ソドレの軍門に降る──が、3回同じスイープで点を許して2-8で敗れた19年の世界大会と比べ、今回ははるかに競った内容だった。しかも前戦をフルに戦った後、僅か10分程度のインターバルを経ての戦いだったにもかかわらずだ。

シッティングからの鋭い仕掛けを起点とし、ソドレの軸足を刈って倒した1度目のシングル、そして結局は逃げられたものの、場外に出そうなソドレを引き戻しながら倒した2度目のシングル等、嶋田の特性を活かした動きがいよいよ世界最高峰に通じるレベルとなってきたことが見て取れた。

また、ソドレに2度目のスイープを仕掛けられた際、背中に廻られてアドバンテージは失ったものの、最終的にポイントを献上しなかったことも収穫と言えるだろう

1度目のスイープの後にニースライスを仕掛けられたこと(画面では表示されなかったが、ここでソドレにアドバンテージが与えられたのだろう)や、最後に倒しきれずに逃げられてしまったこと等、課題は見られた。が、嶋田は必ずこれらの課題を克服してさらに強くなるはず──そう思わせてくれるこの日の戦いぶりだった。

さて、嶋田に辛勝したソドレは、続く準々決勝で難敵アイザック・ドーダーラインと対戦。得意の後ろに崩すスイープで先制すると、終盤にもスクランブルで競り勝って取った上のポジションを守り切り、4-2で勝利。

続く準決勝では、優勝候補ディエゴ・パト・オリヴェイラの欠場もあって勝ち上がってきたチアゴ・マセドと対戦。ここでもやはり後ろに崩すスイープを決めて先制すると、その後50/50シーソーゲームを経て取り返した上のポジションを試合終了まで巧みにキープ。オープンガードから後ろに倒す必殺のスイープと、終盤にポジションを守って勝ち切る勝負強さを存分に発揮して決勝進出した。

そしてもう一方の決勝進出者は、なんと弟のジエゴ・ソドレ。ジエゴは準決勝で、ケネディ・マシエルやシェーン・ヒルテイラーといったビッグネーム相手にレフェリー判定で勝利して勝ち上がったヒカ・ノゲイラ相手と対戦。こちらもレフェリー判定にもつれ込む接戦を制したのだった。

当然ソドレ兄弟は決勝では戦わず、弟が兄に譲る形でクローズアウト。25歳と23歳、若き兄弟は世界大会クローズアウトという偉業を達成する可能性も秘めている。そのソドレ兄と互角の攻防を繰り広げた嶋田、既に1カ月半後に迫っているムンジアルに向け──NYでの生活のよる成果は如実に表れている。

【フェザー級リザルト】
優勝 アレクサンドロ・ソドレ(ブラジル)
準優勝 ジエゴ・ソドレ(ブラジル)
3位 チアゴ・マセド(ブラジル)、ヒカ・ノゲイラ(ブラジル)

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MMA MMAPLANET o PJJC2022   ケヴィン・カラスコ ジュニー・オカシオ メイハン・マキニ ルーカス・ピニェーロ 橋本知之

【PJJC2022】橋本知之、ライトフェザー級でも3位獲得。優勝は橋本を下した、メイハン・マキニ

6日(水・現地時間)から10日(日・同)まで、フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナにて、パン柔術選手権が行われた。世界の強豪が集結し、6月の世界大会の行方を占う上でもきわめて重要なこの大会。
Text by Isamu Horiuchi

レビュー第1回は、世界一に最も近い日本人選手、橋本知之が出場したライトフェザー級の模様を、橋本の戦いぶりを中心に紹介したい。


<ライトフェザー級準々決勝/10分1R>
橋本知之(日本)
Def.2-2 アドバンテージ1-0
ペドロ・クレメンチ(ブラジル)

橋本は、初日に行われるはずだった初戦を対戦相手のジュニー・オカシオが欠場したために不戦勝。2日目のクレメンチとの準々決勝が今大会初登場となった。

両者引き込みから、橋本はすぐに左足にベリンボロを仕掛ける。マットに背中を付けるクレメンチに対し、クラブライドからサイドに付きかける橋本。クレメンチが後転して逃げようとしたところで、橋本はファーサイドの腕十字狙いへ。右腕を伸ばされかけたクレメンチはうつ伏せになって耐え、やがて腕を抜くことに成功。が、ここで橋本にアドバンテージが一つ入った。

さらに橋本はベリンボロで追撃を試みるが、ここでブレイク。両者にダブルガードのペナルティが与えられてスタンド再開となった。極め切ることはできなかった橋本だが、強豪相手に見事な先制攻撃で先行してみせた。

再開後、橋本はシッティングからクレメンチの右足にウェイターガードで絡む。さらに下に潜り込んだ橋本は後転してするようにクレメンチを崩し、ズボンの後ろを取って上を狙う、が、クレメンチはズボンをひきさげられながらも立ち上がり、ブレイクに。

再開後、再び左足に絡んだ橋本は、そのまま外回転でクレメンチを崩して上になることに成功。2点を獲得した。が、下になったクレメンチはすぐに強烈なカラードラッグを仕掛けて上を取り返し、ポイント2-2に。クレメンチはそのまま橋本の足を捌いてのパスを狙うが、橋本はインヴァーテッドで対応して戻した。

その後も橋本が下でオープンガードを取る展開が続く。アドバンテージ1つ負けているクレメンチは、橋本のスイープに耐えつつ足を捌こうとするが、高い柔軟性を誇る橋本の足と両腕のフレームを超えられないまま時間が過ぎていった。

終盤、橋本の右足に足関節を仕掛けるクレメンチ。極まらないと見るやさらにその足を流しにかかるが橋本は許さず、時間切れ。

先制攻撃でリードを奪った橋本が、その後も得意のオープンガードで相手にペースを取らせずに快勝。国際大会常連のクレメンチに対して、改めて世界トップレベルの実力を見せつけた。

<ライトフェザー級準決勝/10分1R>
メイハン・マキニ(ブラジル)
Def.0-0 アドバンテージ1-0
橋本知之(日本)

準決勝で橋本を待っていたのは、強力なトップゲームを誇る優勝候補の新鋭メイハン・マキニ。初日にいきなり実現したジエゴ・ヘイスとの大一番において、スイープで先制後、延々と展開された50/50シーソーゲームで最後に上をキープして勝利。二日目の準々決勝はケヴィン・カラスコに上から圧力をかけて背後に回ると、ギチョークで2分足らずで一本勝ち。消耗度は前戦で10分戦った橋本より少なそうだ。

試合開始後両者引き込むが、マキニはすぐに上を選択してアドバンテージ1を獲得。トップのマキニとボトムの橋本、お互いが強い面をぶつけ合う展開となった。

下から左足に絡もうとする橋本だが、マキニは絡んでくる右足を押さえつけて足を抜いて距離を取る。さすがのバランスと捌きだ。シッティングから近づく橋本に対し、マキニはその体を二つ折りにするように両足首を上から押さえつけ、マットと橋本の背中の間に体を入れてのバック狙い。マキニじゃ右手で橋本の帯の背中を取って起き上がりながら、左足をレッグドラッグの形に流して掴む。

強烈に橋本の体を引きつけて浮かせてから、再びバックを狙うマキニ。が、橋本は背中をマットに付けて距離を取って凌いでみせた。

橋本は下からマキニの左足をアキレスグリップで捉え、立ち上がったメイハンのバランスを崩しにかかる。が。マキニはここも強靭なバランスを発揮すると、橋本の両足を押し下げて左にパス狙い。橋本も柔軟な体を利用したインヴァーテッドで防ぐと正対してみせた。ここまでで2分半。お互い譲らずに持ち味を発揮した攻防だが、橋本の方が守勢を余儀なくされているのは否めない。

その後も橋本はシッティングで近づき、またラッソーや内掛けガードからの攻撃を試みるが、マキニはバランスを保って上から圧力をかけ、また絡んでくる橋本の足を捌きつつ左右にパスを仕掛けてゆく。そのたびに橋本もガードワークで対抗。世界最高峰のマキニのトップからの攻撃に対し、ニアパスまで持っていかれることなく見事に防いでみせている橋本だが、アドバン1つリードされている状況で反撃の緒をなかなか掴めないまま時間が過ぎていった。

後半に入り、橋本はウェイターガードから潜り込んで後転するようにマキニのバランスを崩す。が、マキニはすぐに体勢を立て直して足を抜いて離れることに成功した。

残り2分。距離を取り気味のマキニに対し橋本がシッティングで近づいて左足に絡むと、マキニはカウンターで飛び込んでのバック狙い。それはエビで凌いだ橋本だが、またしても崩せずに距離を取られてしまった。

さらに橋本は左足に絡んでベリンボロを狙うが、ここもバランスを保つマキニ。ならばとウェイターで潜り込んでマキニの体勢を崩しかけた橋本だが、マキニは右腕をポストして巧みにポジションキープし、離れることに成功。それでも追いすがる橋本だが、時間切れ。

圧倒的なトップゲームを誇るマキニ相手によく渡り合い、改めて世界トップの実力を示した橋本だが、崩しきることはできず。結局、最初の上選択のアドバンテージを守り抜かれる形での惜敗となった。

試合後の動画で橋本は、初戦のクレメンチ戦で力を使い過ぎたこともあり、30分ほどのインターバルで臨んだこの試合では、当初計画していたように序盤から攻撃姿勢に入ることはできなかったと明かした。さらに国際大会の舞台で世界のトップと肌を合わせることで、6月の世界大会に向けて具体的な肉体的・技術的改善点が見えてきたと語った。

現状では、6月は本来のルースター級での参戦に心が傾きかけている様子の橋本。ライトフェザー級の最高峰でこの堂々たる戦い、そして試合後の冷静かつ前向きな本人の姿勢からすると、日本人男子初の黒帯世界王者誕生の可能性は、十分にあると見て良さそうだ。

さて、橋本に勝利したマキニを決勝で待っていたのは、ルーカス・ピニェーロ。準決勝で優勝候補のイアゴ・ジョルジからテイクダウンでリードを奪うと、最後はうつ伏せになってのフットロックで一本勝ちして決勝進出を果たしている。

マキニはノーギでも活躍するピニェーロのテイクダウン狙いをことごとく切ると、やがて引き込んだピニェーロの足を捌いてパスガードに成功、さらにマウントで7-0とリードを広げた。一度ピニェーロにガードに戻され、終盤残り15秒ほどで無理せずスイープを許して2点を失ったマキニだが、結局そのままガードをキープ。7-2で完勝してパン大会制覇を果たした。

【ライトフェザー級リザルト】
優勝 メイハン・マキニ(ブラジル)
準優勝 ルーカス・ピニェーロ(ブラジル)
3位 橋本知之(日本)、イアゴ・ジョルジ(ブラジル)

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MMA MMAPLANET o PJJC2022 アンディ・ムラサキ アンデウソン・ムニス エリキ・ムニス クレイグ・ジョーンズ グーテンベルギ・ペレイラ ジョナタ・アウヴェス タイナン・ダウプラ タリソン・ソアレス ダンテ・リオン ディヴォンテ・ジョンソン ブルーノ・マルファシーニ ペドロ・マリーニョ ホベルト・アブレウ リーヴァイ・ジョーンズレアリー レアンドロ・ロ ロベルト・ヒメネス 嶋田裕太 橋本知之

【PJJC2022】パン柔術見所。ライト級のムラサキ✖アウヴェス。ミドル級はダウプラ、ヒメネスらに注目

【写真】昨年のパンナムは8ファイナル敗退だったアンディ・ムラサキ。今年はどうなる?!(C)EUG

フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナで6日(水・現地時間)から、IBJJFパン柔術選手権が10日(日・同)の日程で始まっている。

世界の強豪が集結し、6月の世界大会の行方を占う上でもきわめて重要なこのパン柔術。プレビュー最終回は橋本知之が出場するライトフェザー級、嶋田裕太が出場するフェザー級以外について考察したい。


【ルースター級】
本命は2020年のヨーロピアンでブルーノ・マルファシーニ越えを果たし(その年は惜しくも決勝で橋本知之に敗れたものの)、今年のヨーロピアンで優勝を果たしているタリソン・ソアレスか。ソアレスと決勝で対峙する有力候補としては、2019年のヨーロピアンで芝本幸司に快勝したカルロス・アルベルトが挙げられるだろう。

(C)EUG

【ライト級】

この大会2連覇中、AOJのジョナタ・アウヴェスがエントリー。昨年のEUG2のトーナメント決勝にて、柔術の神の子ことミカ・ガルバォンと対戦し、一度トップを取ったら這いつくばってでもキープする執念の戦いぶりでリードを守り切って優勝した姿が印象深い。

そして別ブロックには、ティーン時代を日本で過ごし、昨年のEUG1で世界的黒帯を3タテして衝撃の黒帯デビューを果たしたアトスのアンディ・ムラサキがいる。

23歳のアウヴェスと22歳のムラサキは今年のLAオープンの決勝でも対戦し、この時は8-8のアドヴァンテージ差でアウヴェスが勝利している。柔術界の未来を背負う新世代のライバル対決が、今回決勝でまた見られる可能性は高そうだ。

(C)SATOSHI NARITA

【ミドル級】

大本命は、昨年の世界大会初出場にて初優勝を果たしたタイナン・ダウプラ。鍛え上げたフィジカルを武器に、万力のオープンガードで相手をたちどころにスイープして上を取ると、問答無用の圧力で相手のガードを潰して極めまで持ってゆく戦い方は圧巻だ。

(C)FLOGRAPPLING

そのミドル級、ダウプラの初戦が要・注目だ。

1回戦シードのダウプラが初戦で当たる可能性が高いのが、WNO等のノーギシーンでも目覚ましい活躍を見せるロベルト・ヒメネスだ。見事なバックグラブの技術とどこからでも極めを狙うダイナミックな戦いを身上とするヒメネスが、ダウプラの盤石の戦いぶりを崩せるか、注目したい。

ここをダウプラが順当に勝ち上がれば、おそらく準決勝で当たるのはホナウド・ジュニオール。昨年はパン大会、世界大会とどちらもダウプラの軍門を下っているだけに、雪辱に向ける気持ちは強いだろう。

もう一つのブロックにも強豪選手が散見されるが、ダウプラとの決勝を期待したいのは豪州出身のリーヴァイ・ジョーンズレアリー。抜群の切れ味のベリンボロ・ゲームの持ち主で、以前絶対王者ルーカス・レプリの必殺ニースライス・パスを凌駕してみせて世界を驚かせた。レアリーのベリンボロは、ベリンボロを世界に広めたメンデス兄弟を師に仰ぐダウプラにどこまで通用するのだろうか。

【ミディアムヘビー級】

最大のビッグネームは、階級世界制覇のレジェンド、レアンドロ・ロ。ユニティのムリーロ・サンタナ門下に入ったロと、別ブロックにいる師のサンタナによるクローズアウトが実現するかどうかが注目だ。

この二人を止める候補としては、メンデス兄弟の弟子にして昨年の茶帯世界王者マテウス・ホドリゲスや、昨年のF2W 166でダンテ・リオンに勝利する等ノーギで活躍するマニュエル・ヒバマーらが挙げられる。

【ヘビー級】
第1シードはポーランド出身、今年のヨーロピアン王者のアダム・ワルジンスキ。準々決勝では2019年のADCC世界王者にして、世界柔術でも二度3位入賞しているマテウス・ディニズと当たる可能性が大きく、この対戦がトーナメント序盤の大きなヤマとなりそうだ。

別ブロックでは、素晴らしい切れ味のヒールやギロチンを武器にノーギシーンで活躍し、1月のWNOではクレイグ・ジョーンズを破る殊勲の星を挙げたペドロ・マリーニョがエントリー、道着着用での戦い方も注目だ。

【スーパーヘビー級】
昨年の世界柔術初出場初優勝を果たしたエリキ・ムニスが大本命。長いリーリを活かしたスパイダーガードはまさに難攻不落、別ブロックにいる兄のアンデウソン・ムニスとともにクローズアウトを狙う。

が、アンデウソンのブロックには、エリキと昨年の世界大会決勝を争い僅差で敗れたフィリッペ・アンドリューや、そのアンドリューに道着着用の世界大会では敗れたものの、ノーギ・ワールズではアナコンダ・チョークで一本勝ちを収めて優勝したディヴォンテ・ジョンソン等の有力選手が控えている。

(C)SATOSHI NARITA

【ウルトラヘビー級】

最大のビッグネームは、サイボーグことホベルト・アブレウ。13年にADCC世界大会無差別級を制し、昨年もノーギ・ワールズで優勝する等その強さは健在だ。ノーギ専門家というイメージが強いが。その必殺のトルネードスイープは、道着着用にてグリップを確保することで威力が増すはずだ。準々決勝で当たる、昨年サウスアメリカンを完全制覇しているワラス・コスタとの試合がまずはヤマとなりそうだ。

もう一つのブロックには、強靭なベースを誇り、昨年、今年とワールドプロ大会を2連覇しているグーテンベルギ・ペレイラがいる。ちなみにペレイラとコスタは今年のグランドスラム・ロンドンの決勝でも当たり、僅差でコスタに凱歌が上がっており、今回の決勝で再戦が実現する可能性は大いにあるだろう。

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MMA MMAPLANET o PJJC2022 アイザック・ドーダーライン アレクサンドロ・ソドレ ケネディ・マシエル 嶋田裕太 橋本知之

【PJJC2022】まさにプレ・ムンジアル。フェザー級=嶋田裕太を待ち受ける、超難関・棘の道

【写真】ここまで実戦経験を積んで、パン~ムンジアルに向かうのは紫帯以来か(C)SATOSHI NARITA

パン柔術選手権が6日(水・現地時間)から、フロリダ州キシミーのシルバー・スパーズ・アリーナでスタートを切り、10日(日・同)まで開催されている。

世界の強豪が集結し、6月の世界大会の行方を占う上でもきわめて重要なこのパン柔術。プレビュー第2回はフェザー級と嶋田裕太に焦点を当てたい。


橋本知之と並ぶ日本のもう一人の雄、嶋田裕太もまた以前より一階級上げてフェザー級にエントリーしている。NYのマルセロ・ガウッシア道場で長期修行中の嶋田は、今年に入って精力的にローカル大会に参戦しているが、いずれもフェザー級での出場だった。オクラホマ・オープンでは優勝、続くアトランタ・ウィンターオープンでは決勝でケネディ・マシエルに敗れて準優勝、インディアナポリス・オープンで優勝し、チャールストン・オープンでは、決勝において前大会で辛勝したマティアス・エステヴァンにレフェリー判定で惜敗するも、常に表彰台に上がる好成績を収めてパン大会を迎える。

そんな嶋田が挑む今回のフェザー級だが、ライトフェザー級にも増して超強豪がズラリと顔を揃え、世界大会にも劣らないほどの超激戦区となっている。

嶋田の初戦の相手は、黒帯になって日の浅いGFチームのティエリー・ファリア。まだ目立った実績は挙げていない選手だけに、ここは落としたくないところだ。

次のベスト16での相手が、アレクサンドロ・ソドレ。19年のブラジレイロと世界大会の両方で嶋田に連勝した天敵だ。特に世界大会では4度のスイープを決めて8-2での完勝。当時はライトフェザー級だったが、近年は階級を上げフェザー級、さらにはライト級でも戦うソドレは、今大会嶋田が挑む最初の大きな壁となりそうだ。

この難敵ソドレにリベンジを果たした場合、準々決勝で嶋田を待っているのは、色帯時代のライバルでもあるアイザック・ドーダーラインになる可能性が高い。黒帯としても19年ブラジレイロや20年のヨーロピアン制覇という大きな実績を挙げており、世界大会では常に優勝候補の一人として数えられる超強豪だ。

嶋田がここもクリアできたとして、おそらく準決勝で待っているのは昨年のライトフェザー級世界王者パトことジエゴ・オリヴェイラだ。その世界大会の2回戦では嶋田と対戦し、変幻自在のガードゲームで終始ペースを握って4-2で完勝している。このパトこそは現時点における真の世界最高峰、嶋田にとっては恐るべき厚い壁だ。

もう片方のブロックを制するのは、18年世界王者シェーン・ヒルテイラーか、19ADCC準優勝のケネディ・マシエルか。あるいは今年のヨーロピアンでドーダーラインを倒して優勝した新星ディエゴ・ソドレ(アレクサンドロの弟)か。いずれにせよ嶋田が優勝するためには、1回戦後に超強豪との4連戦を勝ち抜く必要があるわけだ。これ以上ないほどの過酷極まる修羅の道──とはいえ、これぞプレ・ムンジアルという戦いが嶋田裕太を待っている。

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