【写真】「Road to UFCは自分のような1度リリースされた30代の選手が戦う場所ではなくて。そこを意識することはないです。あそこは若い選手を発掘する場だと思っています」と田中は話していた (C)MMAPLANET
9日(土)に東京都港区のニューピアホールで開催されるPancrase336で田中路教が、シンディレ・マネンゲラと対戦する。
とにかくUFCと再契約すること。その一点に全てを捧げてきた田中も、現実を受け入れる時が来ようとしている。ビザ更新を待つ間、パンクラスで2度目の試合が決まり──古巣ではかつて袂を別った師が全面的に田中をサポートしている。
必要とされるところで、力を発揮したい。そんな風に想えるようになった田中だが、それでもUFCは諦めていない。目指すところは、ベストの自分になることだから。
――ビザの更新まで滞在、その間は日本で試合をするということでしたが、4月30日の笹晋久戦に続き、2カ月と10日というスパンで再びパンクラスで戦うことが決まりました。
「ビザの更新に関しては書類を3月に提出済みで、ここからはもう僕は何もしようがない。あとは移民局が、いつ更新してくれるのか。もう、それだけです。4月の試合後に坂本(靖)さんと話した時に、あと2カ月は掛ると思いますという話をした時に、『なら、もう1試合できるじゃないですか』と言ってくださって。そこでお願いした次第です。
繋ぎで試合をさせてもらっていたのですが、ここまでパンクラスに良くしてもらうと今後も出場し続けることも考えています。僕の立場を考慮してくれたような試合を組んでくれて、僕もパンクラスの役に立ちたいという気持ちになります。何よりも、それは次の試合で結果を残すことなんですが」
──ならば4月の試合、戦う前は昨年11月に長年の体の不調が治り、20代前半の頃のような動きができるようになったという話をしていましたが、試合後は一転「全然ダメだ」と。一体どういうことでしょうか。
「いやぁ全然ダメでした。試合への入りから集中できていなくて、動きも練習してきたモノが全くでなかった。練習してきたスタイルが試合に出なくて、自分にガッカリしました。構えから、違っていました。ただし、体は戻ったと思います。練習では凄く動けていたので。
でも、試合とは別モノでしたね。試合で使えるような感じではなかったかもしれないです。今の体とLFAで試合をした時の体は、本当に全然別で。それが試合中に迷いを生んで、考えながら戦っていた感じです。次のアクションが全く出てこなかった。沁みついている技術で、何とか戦うことができただけで。ただし、試合ができたことでその感覚と練習での動きを照らし合わせることができます。そこから、もう1度創っています」
──それでも結果としては、危なげのない勝利でした。ただし、これから上を目指すことを考えると、その動きというのは?
「通用しないですね。一番は今の技術をもって、昔の集中力、勝負勘がある動きと合致させることです。実は昔の方が、試合が怖かった。だけど4月の試合は一切怖くなくて、なんの緊張感もなかったです。逆に、あんな風で戦うのは良くない。リラックスし過ぎて、体もダラダラでした。言うと、今と同じようなテンションに金網の中に入っていた。それはヤバいですよ。どこかでスイッチが入ることがなくて。
集中力でいえば各々で捉え方も違うかもしれないですが、リラックスしているということは集中はできている。だから、体もリラックスしている。これが相手と戦う様な仕事をしていない人だと、凄く良い状態だったかもしれないです。気負いもなく、動くことができているのでストレスがなく、逆に溜まったストレスを爆発させることができなかった。
ちょっと思うのは……この何年間か、メンタルを鍛えることにフォーカスし過ぎてストレスに強くなり過ぎたような気がします。以前はもっと色々なことに敏感で、繊細でした。だから試合が怖いのは当然で、練習ですら怖かった。それを集中力に変換できていた。怖いからこそ、戦える気持ちになっていたというのが昔の感覚ですね。戦うための集中力は、怖いからこそ創ることができていた」
──アルファメールで練習することに拘り、そのためにビザが取れるようLFAとも契約をした。それが国内に留まることになって練習環境は満足できていますか。
「ハイ。グランドスラム横浜では、自分の好きなことをやらせてもらっていて。勝村(周一朗)さんには本当に感謝しています。僕の我儘をきいてくれて、サポート体制を創ってもらっています」
──となると、ビザが取れた後の練習場所というのは?
「アルファメールでの練習は続けます。特にファイトキャンプは向うでやることになるかと。それ以外の時期は、僕も子供ができて奥さんがこっちで育てているので、ずっと向うにいることはできない。子育てには僕も必要ですし。
あと日本の方が僕を必要としてくれている。役に立てる部分があって、そこが僕のなかで大きくなってきました。後輩たちをもっと強くしたいという想いも含めて。だから普段は日本にいて、ファイトキャンプは向うでやるのがベストかと考えています。ただし、そうじゃないかもしれないので。そこはやってみて、決めていこうと思います」
──そのなかで次の対戦相手は南アフリカのシンディレ・マネンゲラに決まりました。田中選手との試合を日本人選手が受けなかった。その結果のアフリカンの投入だと聞きました。試合を受けなかった選手に対して、どのように思っていますか。
「そこは彼らの人生なので、好きにやってください(笑)。僕も好きにやってきました。彼らの人生なので、自分の想うように僕と戦いたくなければ戦わなければ良い。ホント、特に何も思わないです。以前の僕ならムカついていたかもしれないけど。だから、どこを目指して何をしようとしているのかですよね」
──ちなみにその選手がUFCを目指しているのであれば?
「それなら、戦えよとは思います(笑)」
──押忍。そういうなかで戦うことが決まったマネンゲラの印象を教えてください。
「とりあえずデカい。普通に嫌な相手です。デカくて反応も良い。世界中にMMAが広まった今、南アフリカのEFC Worldでチャンピオンになる選手なのだから、例え戦績が7勝7敗でも弱いわけがない。絶対的に体は強いでしょうし。
パワーがあって雑という見方をされる選手はいますけど、雑さはバカにできないですよ。フランシス・ガヌーは雑ですから。荒い方が綺麗に戦う相手より、戦い辛いこともあります。ただ、いうても負けていられないです」
──それなのに戦い方がとか、リラックスし過ぎているとか聞くと不安が大きくなってしまいます。
「そうッスね」
──そうっすね……ですか(苦笑)。
「とにかくガムシャラにやっています。一度、落ちたモノ……抜けたモノを取り戻すために。本来、脱力することは柔軟になって良い面もあります。でも、自分のファイトスタイルを考えると、それではダメで。4月の動きでは、次の試合は危ない。しっかりと取り戻さないと、マネンゲラに負ける可能性はいくらでもある。
身体能力で来る相手なので──4月のようにふにゃふにゃでは、テイクダウンも取れない。細長いかと思っていたら、普通に上半身がデカいし。でも手応えは感じています。そう感じる自分を信じています」
──厳しい勝負になることが予想されるマネンゲラ戦ですが、ここを乗り越えてから目指す舞台はやはりUFCとなるのでしょうか。
「う~ん、UFCのことを考えると、米国で試合をする方が良いに決まっています。でも、現実的なことを考えると可能性はかなり低い。そうですね、本当にここからUFCに行くことは難しい。いずれにせよ、海外のメジャーと契約をしたいのでやることは変わらない。それは米国の試合で連勝をすることです」
──海外のメジャーとなるとUFC、Bellator、PFLになります。そこでUFCが難しいとなると狙いは?
「今、興味があるのはバンタム級ができるといわれているPFLですね。一番惹かれます。他の階級に出ているメンバーを見ても、ガチですし。バンタム級ができるなら、楽しそうだなって思います」
──単刀直入に、UFCはほぼほぼ諦めたということでしょうか。
「いや諦めているというわけじゃないです。ただし全力でやってダメならしょうがない。そういう風に思えるので、以前のような執着心はないかもしれないですね。前は弾かれても、弾かれてもUFCしかなかったので」
──ならば条件面でいえば、国内メジャーのRIZINの方が田中選手を好待遇で迎え入れてくれるかもしれないです。
「目標はお金を稼げるようになることじゃないので。MMAを続けていて……UFCに行けなくても、どこまで強くなれるのか。ベストの自分になりたい。日々、自分を向上させたい。自分がどこまでやれるのか、やり切りたいんです。
そのなかで戦えるところで戦っていく。それがPFLでも他の大会でも、一番になればUFCに通じている。年齢的に厳しいといわれても、PFLを取れば引っ掛かる可能性はゼロじゃない。だから、自分が行けるところまで行きたいだけですね」
──では改めてマネンゲラ戦への意気込みをお願いします。
「自分の強かった部分をしっかりと取り戻して、そこを見せたい。それだけです。感覚は自分にしか分からないですが、違うという感覚があるので。そこは取り戻さないといけないです」
■視聴方法(予定)
2023年7月9日(日)
午後12時15分~ PANCRASE YouTube メンバーシップ、U-NEXT
午後5時15分~ ABEMA PPV ONLINE LIVE